(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】反射偏光子および光学システム
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20231214BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231214BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231214BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231214BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231214BHJP
【FI】
G09F9/30 349E
G02B5/30
G09F9/30 365
G09F9/00 313
H10K59/10
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2022519109
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2019108348
(87)【国際公開番号】W WO2021056372
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】シウ,フグォ
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,アダム,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】デンカー,マルティン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ネヴィット,ティモシー ジェイ.
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-038014(JP,A)
【文献】特開2006-145884(JP,A)
【文献】特表平09-506984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0028600(US,A1)
【文献】国際公開第2018/163009(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0078392(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0021239(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105388625(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
G02F 1/13-1/141
1/15-1/19
H05B 33/00-33/28
44/00
45/60
H10K 50/00-99/00
G02B 5/00-5/32
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を発するように構成された発光ディスプレイであって、青色光を発するように構成された青色ピクセルを備え、前記発せられた青色光が、青色波長λ
bに青色ピークを有する、発光ディスプレイと、
前記
発光ディスプレイ上に配置された直線吸収偏光子層と、
前記直線吸収偏光子層と前記
発光ディスプレイとの間に配置され、前記
発光ディスプレイによって発せられた前記画像を受光するように構成された反射偏光子と、
を備える、光学システムであって、実質的な垂直入射光について、
前記青色波長λ
bについて、前記反射偏光子が、第1の偏光状態を有する前記
垂直入射光の少なくとも30%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する前記
垂直入射光の少なくとも75%を透過すると共に、
λ
1-λ
b≦50nmである、λ
bより大きい少なくとも1つの波長λ
1について、前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態の各々について、前記
垂直入射光の少なくとも75%を透過し、
前記青色波長λ
bについて、前記反射偏光子が、第1の入射角度で入射する光に対して最大光透過率T
maxを有し、かつ前記第1の入射角
度よりも約50度未満だけ大きい第2の入射角
度で入射する光に対してT
max/2の光透過率を有する、
光学システム。
【請求項2】
前記発光ディスプレイが、少なくとも約420nm~約650nmにわたる可視波長範囲内の画像を発するように構成されており、実質的な垂直入射光について、かつ前記第1の偏光状態について、前記反射偏光子の光透過率が帯域端を含み、前記帯域端の少なくとも一部分が、前記可視波長範囲内にあり、前記光透過率が前記可視波長範囲における前記反射偏光子の最大透過率の約20%から、前記可視波長範囲における前記反射偏光子の前記最大透過率の約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、波長に前記光透過率を相関させる、前記帯域端に対する最良の線形近似が、約7%/nmより大きい傾斜を有する、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記第1の入射角
度が約ゼロ度である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項4】
赤色波長λ
rを有する実質的な垂直入射光について、前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態の各々について、前記
垂直入射光の少なくとも40%を透過し、赤色波長λ
rを有し、かつ約20度を超える入射角
度で入射する光について、前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態を有する光の少なくとも50%を反射し、かつ前記第2の偏光状態を有する光の少なくとも50%を透過する、請求項1に記載の光学システム。
【請求項5】
観察者による観察のための画像を発するように構成された発光ディスプレイであって、青色波長λ
bに青色ピークを有する青色光を発するように構成された青色ピクセル、緑色波長λ
gに緑色ピークを有する緑色光を発するように構成された緑色ピクセル、および、赤色波長λ
rに赤色ピークを有する赤色光を発するように構成された赤色ピクセルを備える、発光ディスプレイと、
前記発光ディスプレイ上に配置された反射偏光子と、
を備える、ディスプレイシステムであって、実質的な垂直入射光について、
前記青色波長λ
bについて、前記反射偏光子が、第1の偏光状態を有する光の少なくとも60%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する光の少なくとも60%を透過するとともに、
前記緑色波長λ
gおよび前記赤色波長λ
rの各々について、前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態の各々について、前記
垂直入射光の少なくとも40%を透過し、
前記赤色波長λ
rを有し、かつ約20度を超える入射角
度で入射する光について、前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態を有する光の少なくとも50%を反射し、かつ前記第2の偏光状態を有する光の少なくとも50%を透過する、
ディスプレイシステム。
【請求項6】
実質的な垂直入射光について、かつ前記第1の偏光状態について、前記反射偏光子の光透過率が帯域端を含み、前記帯域端の少なくとも一部分が、可視波長範囲内にあり、前記光透過率が前記可視波長範囲における前記反射偏光子の最大透過率の約20%から、前記可視波長範囲における前記反射偏光子の前記最大透過率の約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、波長に前記光透過率を相関させる、前記帯域端に対する最良の線形近似が、約7%/nmより大きい傾斜を有し、前記光透過率が前記最大透過率の約20%から前記最大透過率の約70%まで増加する前記波長範囲が、前記青色波長λ
bと前記緑色波長λ
gとの間にある、請求項5に記載のディスプレイシステム。
【請求項7】
実質的な垂直入射光について、かつ前記緑色波長λ
gおよび前記赤色波長λ
rの各々について、前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態の各々について、前記
垂直入射光の少なくとも60%を透過する、請求項5に記載のディスプレイシステム。
【請求項8】
少なくとも約430nm~約640nmにわたる可視波長範囲内の画像を発するように構成された発光ディスプレイであって、青色波長λ
bに青色ピークを有する青色光を発するように構成された青色ピクセル、緑色波長λ
gに緑色ピークを有する緑色光を発するように構成された緑色ピクセル、および、赤色波長λ
rに赤色ピークを有する赤色光を発するように構成された赤色ピクセルを備える、発光ディスプレイと、
前記
発光ディスプレイ上に配置された反射偏光子と、
を備える、光学システムであって、実質的な垂直入射光について、
前記波長λ
bについて、前記反射偏光子が、第1の偏光状態を有する前記
垂直入射光の少なくとも30%を反射し、かつ前記第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する前記
垂直入射光の少なくとも75%を透過し、
前記波長λ
rについて、前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態を有する前記
垂直入射光の最大40%を反射し、
前記可視波長範囲における各波長について、前記反射偏光子が、前記第2の偏光状態を有する
前記垂直入射光の少なくとも60%を透過し、
λ
b-λ
uv≦100nmである、λ
bより小さい1つの波長λ
uvについて、前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態の各々について、前記
垂直入射光の少なくとも40%を透過する、
光学システム。
【請求項9】
実質的な垂直入射光について、かつ前記青色波長λ
bについて、前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態を有する前記
垂直入射光の少なくとも20%を透過する、請求項8に記載の光学システム。
【請求項10】
λ
b-λ
uv≦50nmである、請求項8に記載の光学システム。
【請求項11】
可視波長範囲内の画像を発するように構成された発光ディスプレイであって、青色波長λ
bに青色ピークを有する青色光を発するように構成された青色ピクセル、緑色波長λ
gに緑色ピークを有する緑色光を発するように構成された緑色ピクセル、および、赤色波長λ
rに赤色ピークを有する赤色光を発するように構成された赤色ピクセルを備える、発光ディスプレイと、
前記
発光ディスプレイ上に配置された反射偏光子と、
を備える、光学システムであって、実質的な垂直入射光について、
前記波長λ
bについて、前記反射偏光子が、第1の偏光状態を有する前記
垂直入射光の少なくとも60%を反射し、
前記波長λ
bおよびλ
rの各々について、前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態を有する前記
垂直入射光の少なくとも60%を透過し、
前記可視波長範囲における各波長について、前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する前記
垂直入射光の少なくとも60%を透過し、
前記第1の偏光状態について、前記反射偏光子の光透過率が、帯域端を含み、前記帯域端の少なくとも一部分が、前記可視波長範囲内にあり、前記光透過率が前記可視波長範囲における前記反射偏光子の最大透過率の約20%から、前記可視波長範囲における前記反射偏光子の前記最大透過率の約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、波長に前記光透過率を相関させる、前記帯域端に対する最良の線形近似が、約7%/nmより大きい傾斜を有する、
光学システム。
【請求項12】
前記傾斜が、約10%/nmより大きい、請求項11に記載の光学システム。
【請求項13】
各層の平均厚さが約400nm未満である複数の交互する第1のポリマー層および第2のポリマー層を含む多層ポリマー反射偏光子であって、実質的な垂直入射光について、
第1の偏光状態に対する前記
多層ポリマー反射偏光子の光透過率は、第1の波長範囲と第2の波長範囲とを分離する帯域端を含み、前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲の各々の少なくとも一部分は、可視波長範囲内にあり、
前記第1の波長範囲における少なくとも1つの波長λ
bについて、前記
多層ポリマー反射偏光子が、前記第1の偏光状態を有する前記
垂直入射光の少なくとも70%を反射し、
前記第2の波長範囲における各波長について、前記
多層ポリマー反射偏光子が、前記第1の偏光状態を有する前記
垂直入射光の少なくとも60%を透過し、
前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲における各波長について、前記
多層ポリマー反射偏光子が、前記第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する前記
垂直入射光の少なくとも60%を透過し、
前記
多層ポリマー反射偏光子が、前記第1の偏光状態の前記第1の波長範囲および第2の波長範囲において最大透過率を有し、
前記光透過率が前記最大透過率の約20%から前記最大透過率の約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、前記光透過率を波長に相関させる、前記帯域端に対する最良の線形近似が、約7%/nmを超える傾きを有
し、
前記第1の波長範囲の少なくとも一部が420nmから480nmの青の波長範囲内にある、
多層ポリマー反射偏光子。
【請求項14】
λ
b-λ
uv≦100nmである、λ
bより小さい少なくとも1つの波長λ
uvについて、かつλ
1-λ
b≦100nmである、λ
bより大きい少なくとも1つの波長λ
1について、前記
多層ポリマー反射偏光子が、前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態の各々について、前記
垂直入射光の少なくとも40%を透過する、請求項13に記載の多層ポリマー反射偏光子。
【請求項15】
λ
b-λ
uv≦50nmである、λ
bより小さい少なくとも1つの波長λ
uvについて、かつλ
1-λ
b≦50nmである、λ
bより大きい少なくとも1つの波長λ
1について、前記
多層ポリマー反射偏光子が、前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態の各々について、前記
垂直入射光の少なくとも40%を透過する、請求項13に記載の多層ポリマー反射偏光子。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、典型的には、ディスプレイからの周囲光の反射を低減するために円偏光子を含む。
【発明の概要】
【0002】
本明細書のいくつかの態様では、発光ディスプレイと、ディスプレイ上に配置された直線吸収偏光子層と、直線吸収偏光子層とディスプレイとの間に配置された反射偏光子と、を含む、光学システムが提供される。発光ディスプレイは、画像を発するように構成され、青色光を発するように構成された青色ピクセルを含み、発せられた青色光は、青色波長λbに青色ピークを有する。反射偏光子は、ディスプレイによって発せられた画像を受光するように構成される。実質的な垂直入射光について、青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも30%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも75%を透過すると共に、λ1-λb≦50nmである、λbより大きい少なくとも1つの波長λ1について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について、入射光の少なくとも75%を透過する。青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の入射角で入射する光に対して最大光透過率Tmaxを有し、かつ第1の入射角よりも約50度未満だけ大きい第2の入射角で入射する光に対して光透過率Tmax/2を有する。
【0003】
本明細書のいくつかの態様では、発光ディスプレイと、発光ディスプレイ上に配置された反射偏光子と、を含むディスプレイシステムが提供される。発光ディスプレイは、観察者による観察のための画像を発するように構成される。発光ディスプレイは、青色波長λbに青色ピークを有する青色光を発するように構成された青色ピクセル、緑色波長λgに緑色ピークを有する緑色光を発するように構成された緑色ピクセル、および、赤色波長λrに赤色ピークを有する赤色光を発するように構成された赤色ピクセルを含む。実質的な垂直入射光について、青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する光の少なくとも60%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する光の少なくとも60%を透過し、緑色波長λgおよび赤色波長λrの各々について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について、入射光の少なくとも40%を透過する。赤色波長λrを有し、かつ約20度を超える入射角で入射する光について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する光の少なくとも50%を反射し、かつ第2の偏光状態を有する光の少なくとも50%を透過する。
【0004】
本明細書のいくつかの態様では、発光ディスプレイと、ディスプレイ上に配置された反射偏光子と、を含む光学システムが提供される。発光ディスプレイは、少なくとも約430nm~約640nmにわたる可視波長範囲内の画像を発するように構成される。発光ディスプレイは、青色波長λbに青色ピークを有する青色光を発するように構成された青色ピクセル、緑色波長λgに緑色ピークを有する緑色光を発するように構成された緑色ピクセル、および、赤色波長λrに赤色ピークを有する赤色光を発するように構成された赤色ピクセルを含む。実質的な垂直入射光について、波長λbに対ついて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも30%を反射し、かつ第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも75%を透過し、波長λrについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の最大40%を反射し、可視波長範囲における各波長について、反射偏光子は、第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過し、λb-λuv≦100nmである、λbより小さい少なくとも1つの波長λuvについて、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について、入射光の少なくとも40%を透過する。
【0005】
本明細書のいくつかの態様では、発光ディスプレイと、ディスプレイ上に配置された反射偏光子と、を含む光学システムが提供される。ディスプレイは、可視波長範囲内の画像を発するように構成されている。ディスプレイは、青色波長λbに青色ピークを有する青色光を発するように構成された青色ピクセル、緑色波長λgに緑色ピークを有する緑色光を発するように構成された緑色ピクセル、および、赤色波長λrに赤色ピークを有する赤色光を発するように構成された赤色ピクセルを含む。実質的な垂直入射光について、波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を反射し、波長λgおよびλrの各々について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過し、可視波長範囲における各波長について、反射偏光子は、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過し、第1の偏光状態について、反射偏光子の光透過率は帯域端を含み、帯域端の少なくとも一部分が、可視波長範囲内にあり、光透過率が可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率の約20%から、可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率の約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、波長に光透過率を相関させる、帯域端に対する最良の線形近似が、約7%/nmより大きい傾斜を有する。
【0006】
本明細書のいくつかの態様では、多層ポリマー反射偏光子が提供される。反射偏光子は、複数の交互する第1のポリマー層および第2のポリマー層を含み、各層の平均厚さは約400nm未満である。実質的な垂直入射光について、第1の偏光状態に対する反射偏光子の光透過率は、第1の波長範囲および第2の波長範囲の各々の少なくとも一部分が可視波長範囲内にある、第1の波長範囲と第2の波長範囲とを分離する帯域端を含み、第1の波長範囲における少なくとも1つの波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも70%を反射し、第2の波長範囲における各波長について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過し、第1の波長範囲および第2の波長範囲における各波長について、反射偏光子は、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過し、反射偏光子は、第1の偏光状態の第1の波長範囲および第2の波長範囲において最大透過率を有し、光透過率が最大透過率の約20%から最大透過率の約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、波長に光透過率を相関させる、帯域端に対する最良の線形近似が、約7%/nmより大きい傾斜を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1B】
図1Aの反射偏光子のセグメントの概略斜視図である。
【
図2】異なる入射角で反射偏光子に入射する光を示す、反射偏光子の概略断面図である。
【
図5】様々なピクセルの発光スペクトルの概略プロットである。
【
図6A】遮断偏光状態および透過偏光状態の実質的な垂直入射光についての、波長に対する反射偏光子の光反射率の概略プロットである。
【
図6B】遮断偏光状態および透過偏光状態の実質的な垂直入射光についての、波長に対する反射偏光子の光反射率の概略プロットである。
【
図7A】実質的な垂直入射光についての、および約20度を超える入射角で入射する光についての、遮断偏光状態の波長に対する反射偏光子の光反射率の概略プロットである。
【
図7B】実質的な垂直入射光についての、および約20度を超える入射角で入射する光についての、遮断偏光状態の波長に対する反射偏光子の光反射率の概略プロットである。
【
図8】遮断偏光状態の波長に対する反射偏光子の光透過率の概略プロットである。
【
図9】反射偏光子に垂直に入射する遮断偏光状態を有する光の透過率をOLEDディスプレイ内の青色ピクセルの放射輝度に重ね合わせたプロットである。
【
図10】様々なディスプレイからの周囲光反射率のプロットである。
【
図11】入射角の変化に伴う様々なディスプレイからの周囲反射のCIE1931xy色度空間における色ずれのプロットである。
【
図12】反射偏光子内の光学繰り返し単位の厚さプロファイルのプロットである。
【
図13】垂直入射、および60度の入射角についての反射偏光子の反射係数のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本明細書の一部を形成し様々な実施形態が例示として示されている添付図面が参照される。図面は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。他の実施形態が想到され、本明細書の範囲または趣旨から逸脱することなく実施されてもよい点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0009】
本明細書のいくつかの実施形態によれば、可視スペクトル内に帯域端がある反射帯域を有する反射偏光子が提供される。そのような反射偏光子は、反射偏光子がディスプレイの光出力を受光するように配置される場合に、ディスプレイシステムの性能を改善するために有用であることが見出された。例えば、この反射偏光子を、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ上に配置された円偏光子で使用して、ゴーストまたは他の画像の劣化を引き起こすことなくディスプレイの輝度および/またはディスプレイの色域を改善することができる。光リサイクルによってディスプレイの輝度を増加させるために広帯域反射偏光子をOLEDディスプレイの円偏光子に利用することが、米国特許第9,773,847号(Epsteinら)に記載されている。国際特許出願第CN2018/105712号(Xuら)に記載されているように、可視スペクトル内に帯域端を有するノッチ反射偏光子を利用して、ディスプレイの輝度および/または色域を増大させると共に、広帯域反射偏光子を使用する場合と比較してゴーストを実質的に少なくし、もしくは実質的になくし、かつ/または広帯域反射偏光子を使用する場合と比較して周囲光の反射を低減できることが見出された。
【0010】
本説明のいくつかの実施形態によれば、垂直入射の青色波長に対して単一の可視反射帯域を有する反射偏光子を使用することにより、実質的な望ましくない周囲反射を生成することなく、かつ実質的なゴーストを生成することなく、青色ピクセルからの光のリサイクルが増加することが見出された。OLEDデバイスの青色ピクセルは、典型的には、他のエミッタよりも効率が悪く、かつ/または寿命が短い。したがって、青色におけるリサイクルによって、全体的な効率および/またはディスプレイの寿命を改善することができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイシステムからの周囲光の反射を低減するために、反射帯域の強度は制限されてもよい(例えば、約80%未満、または約70%未満の反射率)。いくつかの実施形態では、反射帯域の幅は、周囲光の反射を低減し、かつ/または入射角を有する反射周囲光の色ずれを低減するように制限される。反射帯域は、400nmの波長と青色ピクセルのピーク発光波長との間に左帯域端を有してもよく、かつ/または青色ピーク発光波長と緑色ピクセルのピーク発光波長との間に右帯域端を有してもよい。いくつかの実施形態では、反射帯域は、青色波長と緑色波長との間に急峻な帯域端、および/または、青色波長とより短い青色波長または近紫外波長との間に急峻な帯域端を有してもよい。急峻な帯域端を使用することにより、反射波長をエミッタの波長に制限し、周囲光の反射を低減することができる。いくつかの実施形態では、反射偏光子は、垂直入射における近赤外反射帯域を更に含んでもよく、これは垂直から外れた入射では赤色波長に移行し、視野角に伴うディスプレイの全体的な色ずれを低減するために、より高い視野角で赤色におけるリサイクルを提供する。いくつかの実施形態では、反射偏光子は、コリメート反射偏光子であってもよい。青色に反射帯域を有するコリメート反射偏光子を使用することにより、より大きい視野角よりも垂直に近い視野角で青色におけるより大きなリサイクルが提供され、これによって、いくつかの実施形態によれば、視野角の増大に伴うディスプレイの色ずれを低減することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の反射偏光子は、所定の波長範囲内の光を選択的に透過および反射するように構成された複数の光学層(例えば、干渉層ならびに/または交互する第1および第2の層)を有する多層ポリマー反射偏光子として特徴付けられてもよい。例えば、
図1Aは、複数の層102を含む反射偏光子100の概略斜視図である。
図1Bは、交互する第1のポリマー層102aおよび第2のポリマー層102bを示す、反射偏光子100のセグメントの概略斜視図である。
図1Aおよび
図1Bは、x方向、y方向、およびz方向を定義する座標系を含む。使用中、入射光110として示される、反射偏光子100の主表面(例えば、表面104)に入射する光は、反射偏光子100の第1の層に入り、複数の層102を通って伝搬することができ、入射光110の偏光状態に応じて、光干渉による選択的な反射または透過を経る。入射光110は、互いに相互に直交する第1の偏光状態(b)および第2の偏光状態(a)を含んでもよい。第2の偏光状態(a)は、「透過」状態と考えることができ、一方で第1の偏光状態(b)は、「反射」すなわち「遮断」状態と考えることができる。入射光110が複数の層102を通って伝搬するとき、第1の偏光状態(b)の光の一部分は、隣接する層によって反射され、その結果、第1の偏光状態(b)は、反射偏光子100によって反射されるが、第2の偏光状態(a)の光の一部分は、集合的に反射偏光子100を通過する。第1の偏光状態(b)は、x軸すなわち延伸軸120に沿った電界を有してもよく、第2の偏光状態(a)は、y軸すなわち非延伸軸122に沿った電界を有してもよい。いくつかの実施形態では、層102は、一連の2層の単位セルまたは光学繰り返し単位として特徴付けられてもよい(例えば、各光学繰り返し単位は、第1のポリマー層102aおよび第2のポリマー層102bのペアによって画定される)。各単位セルの厚さは、所定の波長範囲内の目標波長を反射するように構成されてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、反射偏光子100は、約1200(N)未満の干渉層102を含み、各干渉層102は、主に光干渉によって入射光110を反射または透過する。いくつかの実施形態では、反射偏光子100は、約1000未満、約700未満、または約400未満の干渉層102を含む。1200以上の干渉層102が反射偏光子100に含まれてもよく、一方で、いくつかの場合では、ディスプレイアセンブリの全体の厚さを減少させることが多くの用途において好ましいことから、フィルムの全体の厚さを減少させるために、より少ない総層を用いて所望の光学性能を得ることが望ましい場合がある。いくつかの事例では、遮断状態の漏れを少なくすることが望ましい場合、より多くの数の干渉層102を含むことが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、干渉層102の総数Nは、約50超、約100超、約150超、または約200超である。例えば、いくつかの実施形態では、反射偏光子は、約100~約1000の範囲内の複数の交互する第1のポリマー層および第2のポリマー層の総数を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、交互する第1のポリマー層102aおよび第2のポリマー層102bの各々の層は、約400nm未満の平均厚さ(層の厚さにわたる非加重平均)を有する。いくつかの実施形態では、交互する第1のポリマー層102aおよび第2のポリマー層102bは、干渉層である。干渉層は、干渉層の反射率および透過率が光干渉によって合理的に説明できる場合、または光干渉の結果として合理的に正確にモデル化できる場合、主に光干渉によって光を反射および透過すると説明され得る。異なる屈折率を有する隣接する干渉層のペアは、そのペアが、光の波長の1/2の合成光学厚さ(遮断軸に沿った屈折率×物理的厚さ)を有するときに、光干渉によって光を反射する。干渉層は、典型的には、約400nm未満または約200nm未満の物理的厚さを有する。いくつかの実施形態では、各ポリマー干渉層は、約45ナノメートル~約200ナノメートルの範囲内の平均厚さ(層の物理的厚さにわたる非加重平均)を有する。非干渉層は、光学厚さが大きすぎて、干渉による可視光の反射に寄与できない。非干渉層は典型的に、少なくとも1マイクロメートルまたは少なくとも5マイクロメートルの物理的厚さを有する。いくつかの実施形態では、反射偏光子は、干渉層のパケットを含み、隣接するパケットは、1つ以上の非干渉層によって分離されている。
【0014】
反射偏光子は、任意の好適な光透過性材料を用いても製造できるが、多くの事例で、低吸収性ポリマー材料を使用すると有益である。そのような材料により、可視波長および赤外波長における反射偏光子の吸収率を小さくすること、またはごくわずかにすることができ、これにより、所与のどのような波長においても、また指定されたどのような入射角および偏光状態に対しても、反射偏光子の反射率および透過率の合計は100%、すなわち、R+T≒100%となる。
【0015】
例示的な反射偏光子は、ポリマー材料から構成され、共押出成形プロセス、キャスティングプロセス、および配向プロセスを使用して製作され得る。交互するポリマー層のための好適な材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、PENおよびポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)または二安息香酸)を含有するコポリマー、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート(PC)、またはこれらクラスの材料の混合物が挙げられる。米国特許第5,882,774号(Jonzaら)「Optical Film」、米国特許第6,179,948号(Merrillら)「Optical Film and Process for Manufacture Thereof」、米国特許第6,783,349号(Neavinら)「Apparatus for Making Multilayer Optical Films」、および米国特許出願公開第2011/0272849号(Neavinら)「Feedblock for Manufacturing Multilayer Polymeric Films」を参照されたい。多層光学フィルムは、前述の参照文献のいずれかに記載されているようにポリマーの共押出によって形成することができる。簡潔に要約すると、製作方法は、(a)完成フィルム中に使用される第1および第2のポリマーに対応する樹脂の少なくとも第1および第2のストリームを提供することと、(b)好適なフィードブロックを使用して、第1および第2のストリームを複数の層に分割することと、(c)複合材料ストリームを押出ダイに通して、各層が隣接する層の主表面に対して概ね平行である多層ウェブを形成することと、(d)キャスティングホイールまたはキャスティングドラムと呼ばれる場合があるチルロール上に多層ウェブをキャスティングして、キャスト多層フィルムを形成することと、を含むことができる。キャストフィルムの層は、典型的には全て等方性である。多層ウェブは、チルロール上で冷却された後に、引き延ばすか、延伸して、層の少なくともいくつかが複屈折性になるようにフィルムを配向することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、複数の交互するポリマー層は、交互する第1のポリマー層および第2のポリマー層を含み、第1のポリマー層は実質的に一軸配向であり、これは、第1の面内方向の屈折率と厚さ方向の屈折率が、互いの0.02以内であり、直交する第2の面内方向の屈折率と第1の面内方向の屈折率の絶対差が少なくとも0.05であることを意味すると理解され得る。いくつかの実施形態では、第2のポリマー層は、実質的に等方性である。実質的に等方性であることは、相互に直交する3つの方向の各々の屈折率が、互いの0.02以内であることを意味すると理解され得る。いくつかの実施形態では、反射偏光子は、長さ方向の屈折率および厚さ方向の屈折率が実質的に同じ(例えば、0.02以内、または0.01以内)であるが、幅方向の屈折率が実質的に異なる(例えば、少なくとも0.05、少なくとも0.1、または少なくとも0.15の差)少なくとも1つの層を有する。このような実質的に一軸配向された多層光学フィルムは、例えば、米国特許出願公開第2010/0254002号(Merrillら)に記載されており、例えば、多層フィルムを配向するためにパラボリックテンターを使用することによって作製することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、光学繰り返し単位は、実質的に連続的に変化して反射帯域を提供する光学的厚さを有する。厚さの変化は、例えば、米国特許第6,157,490号(Wheatleyら)に記載されているように急峻な帯域端を提供するように選択されてもよく、または、高反射率から低反射率へのより緩やかな遷移を提供するように選択されてもよい。急峻な帯域端は、本明細書の他の箇所で更に説明するように、例えば、約7%/nm超、または約10%/nm超の傾斜を有する最良の線形近似を有してもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、反射偏光子は、コリメート反射偏光子である。コリメート反射偏光子は、垂直入射に近い光に対しては高い光透過率を有し、垂直入射から遠い光に対しては低い光透過率(高い反射率)を有する。入射角に対する透過率の依存性は、隣接する層の間のx方向、y方向、およびz方向の屈折率差を調整することによって(例えば、z方向の屈折率の差を、p偏光透過率の入射角依存性を制御するように選択することによって)、および/または、例えば、米国特許第9,551,818号(Weberら)、9,322,967(Weberら)、ならびに9,441,809(Nevittら)に記載されているように、層の厚さプロファイルを(例えば、アポダイズされた厚さプロファイルを使用して)調整することによって、調整され得る。いくつかの実施形態では、
図2に概略的に示すように、少なくとも1つの波長について(例えば、青色波長λ
bについて)、反射偏光子100は、第1の入射角θ1で入射する光111に対して最大光透過率T
maxを有し、かつ第1の入射角よりも50度未満だけ小さい第2の入射角で入射する光113に対して光透過率T
max/2を有する(すなわち、θ1<θ2<θ1+約50度)。いくつかの実施形態では、θ1<θ2<θ1+50度、またはθ1<θ2<θ1+40度である。いくつかの実施形態では、θ1は約ゼロである(例えば、約10度未満または約5度未満)。入射角は、反射偏光子の法線に対して測定される。いくつかの実施形態では、光111および光113は各々、第2の(透過)偏光状態を有する。遮断状態の偏光されていない光の部分の透過率は、ごくわずかであるので、入射角θ2での透過率に対する入射角θ1での透過率の比率は、第2の偏光状態を有する光と偏光されていない光とでほぼ同じであり得る。
【0019】
図3は、(例えば、観察者179による観察のために)画像221を発するように構成された発光ディスプレイ220を含む光学システム200(ディスプレイシステムとも称され得る)の概略断面図である。光学システム200は、ディスプレイ220上に配置された直線吸収偏光子150と、直線吸収偏光子150とディスプレイ220との間に配置された反射偏光子100とを含む。図示された実施形態では、光学システム200は、反射偏光子100とディスプレイ220との間に配置されたリターダまたはリターダ層145を更に含む。いくつかの実施形態では、円偏光子250が反射偏光子100と、直線吸収偏光子150と、リターダ145を含み、反射偏光子100は、直線吸収偏光子150とリターダ145との間に配置される。いくつかの実施形態では、ディスプレイシステム200は、発光ディスプレイ220と、リターダ145が発光ディスプレイ220に面するように発光ディスプレイ220上に配置された円偏光子250とを含む。ディスプレイシステムまたは光学システム200に含まれる反射偏光子100は、本明細書に記載のどのような反射偏光子であってもよい。例えば、反射偏光子100は、多層ポリマー反射偏光子であってもよく、および/または、第1のポリマー層および第2のポリマー層のそれぞれの平均厚さが約400nm未満である複数の交互する第1のポリマー層102aおよび第2のポリマー層102bを含んでもよい。直線吸収偏光子150および反射偏光子100は、実質的に互いに位置合わせされた(例えば、20度以内、10度以内、または5度以内に位置合わせされた)透過軸を有してもよい。発光ディスプレイ220は、例えば、OLEDディスプレイであってもよい。ディスプレイと観察者との間に反射偏光子を有利に配置できる他のディスプレイもまた、利用されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、リターダ145は、可視波長範囲における少なくとも1つの波長(例えば、400nm~700nmの範囲の少なくとも1つの波長)に対する1/4波リターダである。リターダ145は、反射偏光子100および/または直線吸収偏光子150の透過軸に対して約45度に位置合わせされた速軸を有してもよい。いくつかの実施形態では、リターダ145は、複数の層(例えば、速軸が互いに回転した状態で方向付けられた1/2波リターダ層および1/4波リターダ層)を含む。1/4波以外のリターダンス(例えば、波長の5/4)もまた使用されてもよい。好適なリターダが当該技術分野で知られており、Meadowlark Optics(Frederick,CO)から入手可能なものなどの複屈折ポリマーフィルムリターダ、およびROLIC Technologies Ltd.(Allschwil,Switzerland)から入手可能なものなどのアクロマティックリターダが挙げられる。有用なリターダが、例えば、国際特許出願公開第2018/178817号(Steinerら)に記載されている。
【0021】
層150および/または145は、任意選択的に、光学システム200から省略されてもよい。ただし、多くの場合、例えば、光学システム200からの周囲光の反射を低減するために、OLEDデバイス内にこれらの層を含むことが好ましい。
【0022】
図4は、複数のピクセルグループ222を含む発光ディスプレイ220の概略図である。図示した実施形態では、各ピクセルグループ222は、青色ピクセル222b、緑色ピクセル222g、および赤色ピクセル222rを含む。他の実施形態では、各グループには、より少ないピクセルが含まれてもよい、または、より多いピクセルが含まれてもよい。例えば、各ピクセルグループ222に2つの緑色ピクセルが含まれてもよい。別の例として、各ピクセルグループ222は、白色ピクセルを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、青色ピクセル222bは、青色波長λ
bに青色ピークを有する青色光223bを発するように構成される。いくつかの実施形態では、緑色ピクセル222gは、緑色波長λ
gに緑色ピークを有する緑色光223gを発するように構成される。いくつかの実施形態では、赤色ピクセルは、赤色の波長λ
rに赤色ピークを有する赤色光223rを発するように構成される。
【0023】
図5は、様々なピクセルの発光スペクトルの概略図である。緑色ピクセルの発光スペクトル341、青色ピクセルの発光スペクトル343、および赤色ピクセルの発光スペクトル345が概略的に示されている。青色ピクセル、緑色ピクセル、および赤色ピクセルのピーク発光波長λ
b、λ
g、およびλ
rがそれぞれ示されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、発光ディスプレイ220は、少なくとも約430nm~約640nm、または少なくとも約420nm~約650nmの可視波長範囲内の画像を発するように構成される。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、可視波長範囲における各波長に対し、反射偏光子100は、第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%を透過する。いくつかの実施形態では、青色波長λbは、約420nm~約480nmの範囲内にある。いくつかの実施形態では、緑色波長λgは、約510nm~約580nmの範囲内にある。いくつかの実施形態では、赤色波長λrは、約590nm~約650nmの範囲内にある。
【0025】
図6Aおよび
図6Bは、それぞれ、第1の(遮断)偏光状態および第2の(透過)通過)偏光状態の、実質的な垂直入射光(例えば、垂直入射の10度以内または5度以内)についての、波長に対する反射偏光子の光学反射率を概略的に示す。いくつかの実施形態では、光透過率Tは、おおよそ、100%から光反射率Rを減算したものである。
【0026】
反射偏光子は、所望の青色のリサイクルを提供すると共に、ディスプレイからの更なる青色の周囲反射を制限するように選択された、青色における反射率を有してもよい。いくつかの実施形態では、高度のリサイクルを提供するために、反射偏光子の青色における反射率は高くてもよい(例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%)。いくつかの実施形態では、反射偏光子が望ましくない青色の周囲反射を増大することのないように、青色における反射率が制限されてもよい(例えば、80%以下、70%以下、60%以下、または50%以下)。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%を反射する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも30%を反射し、かつ、いくつかの実施形態では、直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも75%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも40%を反射し、かつ、いくつかの実施形態では、直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも65%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも50%を反射し、かつ、いくつかの実施形態では、直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも55%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつ青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の50%超を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する入射光の50%超を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつ青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつ青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも70%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも70%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつ青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも80%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも80%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつ青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも20%、または少なくとも30%を透過する。
【0027】
反射偏光子は、発光ディスプレイがその範囲にわたって画像を発するように構成された可視波長範囲(例えば、少なくとも約430nm~約640nm、または少なくとも約420nm~約650nm)内の実質的な垂直入射光について、第1の(遮断)偏光状態に対し、少なくとも20%または少なくとも30%の平均透過率を有してもよい。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも20%、または少なくとも30%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、可視波長範囲における各波長に対し、反射偏光子は、第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%を透過する。
【0028】
いくつかの実施形態では、青色の反射率を制限することに加えて、またはその代わりに、反射偏光子は、青色における反射率と、より長い波長の透過率との間に急峻な遷移を有する。これは、反射偏光子によって反射される波長の範囲を制限するために行うことができ、反射偏光子を含むディスプレイシステムからの周囲反射を低減することができる。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつλ1-λb≦100nm、またはλ1-λb≦50nmである、λbより大きい1つの波長λ1について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について入射光の少なくとも40%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつλ1-λb≦100nm、またはλ1-λb≦50nmである、λbより大きい1つの波長λ1について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について入射光の少なくとも50%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつλ1-λb≦100nm、またはλ1-λb≦50nmである、λbより大きい1つの波長λ1について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について入射光の少なくとも60%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつλ1-λb≦100nm、またはλ1-λb≦50nmである、λbより大きい1つの波長λ1について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について入射光の少なくとも70%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつλ1-λb≦100nm、またはλ1-λb≦50nmである、λbより大きい1つの波長λ1について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について入射光の少なくとも75%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつλ1-λb≦100nm、またはλ1-λb≦50nmである、λbより大きい1つの波長λ1について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について入射光の少なくとも80%を透過する。
【0029】
いくつかの実施形態では、青色における反射率と、より長い波長の透過率との間の急峻な遷移の代わりに、またはそれに加えて、青色反射帯域の左側で透過と反射との間に急峻な遷移がある。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつλb-λuv≦100nmである、λbより小さい1つの波長λuvについて、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について入射光の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも75%を透過する。λuvは、紫外線波長であってもよい、またはλbより小さい青色波長であってもよい。いくつかの実施形態では、λb-λuv≦100nmである、λbより小さい1つの波長λuvについて、およびλ1-λb≦100nmである、λbより大きい1つの波長λ1について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について入射光の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも75%を透過する。いくつかの実施形態では、λb-λuv≦50nmである。いくつかの実施形態では、λb-λuv≦50nmである、λbより小さい1つの波長λuvについて、およびλ1-λb≦50nmである、λbより大きい1つの波長λ1について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について入射光の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも75%を透過する。青色反射帯域の左側で透過と反射との間に急峻な遷移を含めることは、低い波長(λbより小さい)の青色光の周囲反射を低減すると共に、λbに近い波長を有する望ましい青色光の反射を提供することができるので、いくつかの事例では有利である。
【0030】
光学システム200のいくつかの実施形態では、波長λ
bについて、反射偏光子100は、第1の入射角θ1で入射する光に対して最大光透過率T
maxを有し、かつ第1の入射角よりも約50度未満だけ大きい第2の入射角θ2で入射する光に対して光透過率T
max/2を有する(例えば、
図2を参照)。いくつかの実施形態では、第1の入射角は、約ゼロ(例えば、0度の10度以内、または5度以内)である。
【0031】
いくつかの実施形態では、垂直入射における緑色および/または赤色の波長に対する反射偏光子の反射率は制限される。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつ波長λrについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の最大40%、最大30%、または最大20%を反射する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつ緑色波長λgおよび赤色波長λrの各々について、反射偏光子は、第1の偏光状態の入射光の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%を透過する。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつ緑色波長λgおよび赤色波長λrの各々について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について入射光の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%を透過する。
【0032】
図7Aおよび
図7Bは、実質的な垂直入射光についての、および約20度を超える入射角で入射する光のそれぞれについての、第1の偏光状態の波長に対する反射偏光子の光反射率を概略的に示す。図示する実施形態では、垂直入射において、反射偏光子は、青色反射帯域161および近赤外反射帯域163を有する。反射偏光子の反射帯域は、一般に、入射角の増大に伴い、より低い波長に移行する。いくつかの実施形態では、増大した入射角において、近赤外反射帯域163は、可視波長に移行する。いくつかの実施形態では、赤色波長λ
rを有する実質的な垂直入射光について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について、入射光の少なくとも40%(少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも75%)を透過し、赤色波長λ
rを有し、かつ約20度を超える入射角で入射する光について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する光の少なくとも50%を反射し、かつ第2の偏光状態を有する光の少なくとも50%を透過する。いくつかの実施形態では、赤色波長λ
rを有し、かつ約20度を超える入射角で入射する光について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する光の少なくとも60%を反射し、かつ第2の偏光状態を有する光の少なくとも60%を透過する。いくつかの実施形態では、赤色波長λ
rを有し、かつ約20度を超える入射角で入射する光について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する光の少なくとも70%を反射し、かつ第2の偏光状態を有する光の少なくとも70%を透過する。いくつかの実施形態では、赤色波長λ
rを有し、かつ約20度を超える入射角で入射する光について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する光の少なくとも30%を反射し、かつ第2の偏光状態を有する光の少なくとも75%を透過する。いくつかの実施形態では、赤色波長λ
rを有し、かつ約20度を超える入射角で入射する光について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する光の少なくとも40%を反射し、かつ第2の偏光状態を有する光の少なくとも65%を透過する。約20度を超える入射角は、例えば、約30度~約60度の範囲内であってもよい。
【0033】
図8は、第1の偏光状態(遮断状態)の波長に対する反射偏光子の光透過率の概略プロットである。帯域端の急峻さは、帯域端への線形近似(例えば、線形最小二乗近似)の傾斜によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光について、かつ第1の偏光状態について、反射偏光子の光透過率は、帯域端125を含み、帯域端125の少なくとも一部分は、可視波長範囲内にあり、光透過率が可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率Tmの約20%から、可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率Tmの約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、波長に光透過率を相関させる、帯域端125に対する最良の線形近似136が、約7%/nm、または約10%/nmより大きい傾斜を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、帯域端125は、第1の波長範囲124と第2の波長範囲126を分離し、第1の波長範囲124および第2の波長範囲126の各々の少なくとも一部分は、可視波長範囲内にある。いくつかの実施形態では、第1の波長範囲124における少なくとも1つの波長λ
b(例えば、青色波長)について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%を反射する。いくつかの実施形態では、第2の波長範囲126における各波長について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%を透過する。いくつかの実施形態では、第1の波長範囲124および第2の波長範囲126における各波長について、反射偏光子は、第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%を透過する。いくつかの実施形態では、反射偏光子は、第1の偏光状態について、第1の波長範囲および第2の波長範囲において最大透過率Tmを有する。いくつかの実施形態では、光透過率が最大透過率の約20%から最大透過率の約70%まで増加する波長範囲は、青色波長λ
bと緑色波長λ
gの間にある。例えば、
図8に概略的に示されるように、λ
bは第1の波長範囲124内にあってもよく、λ
gは第2の波長範囲126内にあってもよい。
【0035】
以下は、本明細書の例示的な実施形態の列挙である。
【0036】
第1の実施形態は、
画像を発するように構成された発光ディスプレイであって、青色光を発するように構成された青色ピクセルを備え、発せられた青色光が、青色波長λbに青色ピークを有する、発光ディスプレイと、
ディスプレイ上に配置された直線吸収偏光子層と、
直線吸収偏光子層とディスプレイとの間に配置され、ディスプレイによって発せられた画像を受光するように構成された反射偏光子と、
を備える、光学システムであって、実質的な垂直入射光について、
青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも30%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも75%を透過すると共に、
λ1-λb≦50nmである、λbより大きい少なくとも1つの波長λ1について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について、入射光の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%を透過し、
青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の入射角で入射する光に対して最大光透過率Tmaxを有し、かつ第1の入射角よりも約50度未満だけ大きい第2の入射角で入射する光に対してTmax/2の光透過率を有する。
【0037】
第2の実施形態は、発光ディスプレイが、少なくとも約420nm~約650nmにわたる可視波長範囲内の画像を発するように構成されており、実質的な垂直入射光について、かつ第1の偏光状態について、反射偏光子の光透過率が帯域端を含み、帯域端の少なくとも一部分が、可視波長範囲内にあり、光透過率が可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率の約20%から、可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率の約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、波長に光透過率を相関させる、帯域端に対する最良の線形近似が、約7%/nmより大きい傾斜を有する、第1の実施形態の光学システムである。
【0038】
第3の実施形態は、第1の入射角が約ゼロである、第1または第2の実施形態の光学システムである。
【0039】
第4の実施形態は、赤色波長λrを有する実質的な垂直入射光について、反射偏光子が、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について、入射光の少なくとも40%を透過し、赤色波長λrを有し、かつ約20度を超える入射角で入射する光について、反射偏光子が、第1の偏光状態を有する光の少なくとも50%を反射し、かつ第2の偏光状態を有する光の少なくとも50%を透過する、第1~第3の実施形態のいずれか1つの光学システムである。
【0040】
第5の実施形態は、
観察者による観察のための画像を発するように構成された発光ディスプレイであって、青色波長λbに青色ピークを有する青色光を発するように構成された青色ピクセル、緑色波長λgに緑色ピークを有する緑色光を発するように構成された緑色ピクセル、および、赤色波長λrに赤色ピークを有する赤色光を発するように構成された赤色ピクセルを含む、発光ディスプレイと、
発光ディスプレイ上に配置された反射偏光子と、を備える、ディスプレイシステムであって、実質的な垂直入射光について、
青色波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する光の少なくとも60%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する光の少なくとも60%を透過すると共に、
緑色波長λgおよび赤色波長λrの各々について、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について、入射光の少なくとも40%を透過し、
赤色波長λrを有し、かつ約20度を超える入射角で入射する光について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する光の少なくとも50%を反射し、かつ第2の偏光状態を有する光の少なくとも50%を透過する。
【0041】
第6の実施形態は、実質的な垂直入射光について、かつ第1の偏光状態について、反射偏光子の光透過率が帯域端を含み、帯域端の少なくとも一部分が、可視波長範囲内にあり、光透過率が可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率の約20%から、可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率の約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、波長に光透過率を相関させる、帯域端に対する最良の線形近似が、約7%/nmより大きい傾斜を有し、光透過率が最大透過率の約20%から最大透過率の約70%まで増加する波長範囲が、青色波長λbと緑色波長λgとの間にある、第5の実施形態のディスプレイシステムである。
【0042】
第7の実施形態は、実質的な垂直入射光について、かつ緑色波長λgおよび赤色波長λrの各々について、反射偏光子が、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について、入射光の少なくとも60%を透過する、第4または第5の実施形態のディスプレイシステムである。
【0043】
第8の実施形態は、
少なくとも約430nm~約640nmにわたる可視波長範囲内の画像を発するように構成された発光ディスプレイであって、青色波長λbに青色ピークを有する青色光を発するように構成された青色ピクセル、緑色波長λgに緑色ピークを有する緑色光を発するように構成された緑色ピクセル、および、赤色波長λrに赤色ピークを有する赤色光を発するように構成された赤色ピクセルを含む、発光ディスプレイと、
ディスプレイ上に配置された反射偏光子と、を備える、光学システムであって、実質的な垂直入射光について、
波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも30%を反射し、かつ第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも75%を透過し、
波長λrについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の最大40%を反射し、
可視波長範囲における各波長について、反射偏光子は、第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過し、
λb-λuv≦100nmである、λbより小さい1つの波長λuvについて、反射偏光子は、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について、入射光の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%を透過する。
【0044】
第9の実施形態は、実質的な垂直入射光について、かつ青色波長λbについて、反射偏光子が、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも20%を透過する、第8の実施形態の光学システムである。
【0045】
第10の実施形態は、λb-λuv≦50nmである、第8または第9の実施形態の光学システムである。
【0046】
第11の実施形態は、
可視波長範囲内の画像を発するように構成された発光ディスプレイであって、青色波長λbに青色ピークを有する青色光を発するように構成された青色ピクセル、緑色波長λgに緑色ピークを有する緑色光を発するように構成された緑色ピクセル、および、赤色波長λrに赤色ピークを有する赤色光を発するように構成された赤色ピクセルを含む、発光ディスプレイと、
ディスプレイ上に配置された反射偏光子と、を備える、光学システムであって、実質的な垂直入射光について、
波長λbについて、反射偏光子が、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を反射し、
緑色波長λgおよび赤色波長λrの各々について、反射偏光子が、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過し、
可視波長範囲における各波長について、反射偏光子が、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過し、
第1の偏光状態について、反射偏光子の光透過率が帯域端を含み、帯域端の少なくとも一部分が可視波長範囲内にあり、光透過率が可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率の約20%から、可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率の約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、波長に光透過率を相関させる、帯域端に対する最良の線形近似が、約7%/nmより大きい傾斜を有する。
【0047】
第12の実施形態は、傾斜が約10%/nmより大きい、第11の実施形態の光学システムである。
【0048】
第13の実施形態は、各層の平均厚さが約400nm未満である複数の交互する第1のポリマー層および第2のポリマー層を含む多層ポリマー反射偏光子であって、実質的な垂直入射光について、
第1の偏光状態に対する反射偏光子の光透過率は、第1の波長範囲と第2の波長範囲とを分離する帯域端を含み、第1の波長範囲および第2の波長範囲の各々の少なくとも一部分は、可視波長範囲内にあり、
第1の波長範囲における少なくとも1つの波長λbについて、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも70%を反射し、
第2の波長範囲における各波長について、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過し、
第1の波長範囲および第2の波長範囲における各波長について、反射偏光子は、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過し、
反射偏光子は、第1の偏光状態の第1の波長範囲および第2の波長範囲において最大透過率を有し、
光透過率が最大透過率の約20%から最大透過率の約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、光透過率を波長に相関させる、帯域端に対する最良の線形近似が、約7%/nmを超える傾斜を有する。
【0049】
第14の実施形態は、λb-λuv≦100nmである、λbより小さい少なくとも1つの波長λuvについて、かつλ1-λb≦100nmである、λbより大きい少なくとも1つの波長λ1について、反射偏光子が、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について、入射光の少なくとも40%を透過する、第13の実施形態の多層ポリマー反射偏光子である。
【0050】
第15の実施形態は、λb-λuv≦50nmである、λbより小さい少なくとも1つの波長λuvについて、かつλ1-λb≦50nmである、λbより大きい少なくとも1つの波長λ1について、反射偏光子が、第1の偏光状態および第2の偏光状態の各々について、入射光の少なくとも40%を透過する、第13の実施形態の多層ポリマー反射偏光子である。
【実施例】
【0051】
実施例1~4
反射偏光子フィルムを以下のように作成した。単一の多層光学要素パケットを共押出した。このパケットは、90%のポリエチレンナフタレート(PEN)および10%のポリエチレンテレフタレート(PET)から構成されるポリマーである90/10 coPENと、屈折率が約1.57であるように、および、フィルムを一軸配向すると実質的に等方性を維持するようにポリカーボネートとコポリエステルの混合物(PC:coPET)で作製された低屈折率等方性層との183の交互する層を有する。PC:coPETのモル比は、およそ42.5モル%のPCおよび57.5モル%のcoPETであり、摂氏105度のTgを有していた。この等方性材料は、延伸後に、2つの非延伸方向における等方性材料の屈折率が、非延伸方向における複屈折材料の屈折率と実質的に一致したままであり、延伸方向においては、複屈折層と非複屈折層との間に屈折率の実質的な不一致があるように、選択された。90/10 PENおよびPC:coPETのポリマーを、約0.5の目標f比で別個の押出成形機から多層共押出フィードブロックへと供給し、183の交互する光学層のパケットへと組み立て、両面にPC:coPETのより厚い保護境界層を加えて、合計185の層とした。フィルムの層の厚さプロファイルは、フィルムが一軸配向後に、
図9に示す透過スペクトルを生成するように選択された。次いで、多層溶融物は、ポリエステルフィルムに関する従来の方式で、フィルムダイを介してチルロール上にキャスティングされ、キャスティングされた際に、急冷された。次いで、キャストウェブを、2006年6月4~9日にカリフォルニア州San FranciscoでのSociety for Information Displays(SID) International Conferenceにおいて発表された、著者Denkerらによる「Advanced Polarizer Film for Improved Performance of Liquid Crystal Displays」と題するInvited Paper 45.1、に記載されているものと同様のパラボリックテンターで延伸した。このフィルムの結果的な物理的厚さは、静電容量ゲージで測定して約12.8マイクロメートルであった。
【0052】
実施例1~4の反射偏光子の透過スペクトルを、遮断偏光状態の垂直入射光について測定し、
図9に示す。
図9には、OLED TVディスプレイの青色ピクセルの発光スペクトルも示す。実施例1~4の反射偏光子の各々について、光透過率が、可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率の約20%から、可視波長範囲における反射偏光子の最大透過率の約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって、波長に光透過率を相関させる、帯域端に対する最良の線形近似(線形最小二乗近似)は、約13%/nmの傾斜を有した。
【0053】
Sanritz5518吸収偏光子とAPQW92-004-PC-140NMHE(American Polarizers)1/4波リターダとの間に、吸収偏光子の透過軸と反射偏光子の透過軸が整列した状態で、かつ、1/4波リターダの速軸が透過軸に45度の角度をなした状態で、反射偏光子を配置することによって、反射偏光子を円偏光子に組み立てた。OLED TVディスプレイの円偏光子を取り外し、実施例1、2、および4の各々の反射偏光子を含む円偏光子で置き換えた。オリジナルのOLED TVディスプレイ、ならびに実施例1、2および4の各々の反射偏光子を含む円偏光子を含むディスプレイについて、8度の入射角の偏光されていない光に対する周囲光視感反射率を測定し、
図10に示す。オリジナルのOLED TVディスプレイ(反射防止(AR)層を含むオリジナルの偏光子)について、Sanritz偏光子および1/4リターダを含むが反射偏光子を含まないディスプレイについて、Sanritz偏光子、1/4リターダおよびそれらの間に配置された広帯域APF反射偏光子(3M Company,St.Paul,MNから入手可能)を含むディスプレイについて、ならびに、実施例1、2、および4の各々の反射偏光子を含む円偏光子を含むディスプレイについて、白色および青色の輝度利得および、視感平均(可視波長にわたる)周囲反射を測定した。結果を、以下の表に報告する。
【0054】
【0055】
入射角が8度から60度まで変化したときの周囲反射のCIE1931xy色度空間における色ずれを、様々な試料について測定し、
図11に示す。
【0056】
実施例5
計算モデルを使用して、反射偏光子の反射特性および透過特性を計算した。計算モデルを、Berrimanアルゴリズムに基づいて4×4のマトリックスソルバルーチンによって実行した。このアルゴリズムでは、各層が物理的厚さおよび分散屈折率テンソルによって定義された1次元層の任意の積層体について反射および透過のマトリクス要素を計算することができ、屈折率テンソルの各主要要素は波長(λ)の関数である。この計算モデルを使用して、発光ディスプレイを表す1次元積層体構造を定義し、その反射特性および透過特性を計算した。
【0057】
計算モデルの座標系を、
図1Aに示すx軸、y軸、およびz軸の直交座標セットで定義し、ここで、x軸は、「遮断軸」として任意の吸収偏光子の高吸光軸および任意の反射偏光子の高反射軸に一致し、y軸は、吸収偏光子の低吸収、高透過軸および任意の反射偏光子の低反射軸に一致する「透過軸」であった。x軸から方位角Φおよび、z軸から極角θを測定した。
【0058】
この計算スタックモデルを使用して、有機LED(OLED)ディスプレイの観察者側の反射特性を、1/4波(λ/4)リターダ上に重ねたディスプレイ品質のヨウ素系吸収偏光子からなる円偏光子の上に重ねたガラス層(ディスプレイの外面)の積層体構造でモデル化し、ここでリターダは、吸収偏光子の主要面内軸間の中間に存在する異常軸を有し、λは緑色波長であるように選択された。更にリターダ層の下には、薄膜封止材(TFE)を表す誘電体層があり、次いでこの誘電体層は、電圧駆動の青色、緑色、赤色の発光「ピクセル」領域の空間的に編成されたアレイを含むOLED発光面上に重なっており、当該領域は、ディスプレイを形成する発光ピクセルのドライバとして機能する金属様のトランジスタ素子および導電素子に取り囲まれている。
【0059】
コンピュータによる積層体モデルからの入力を使用して計算を行い、OLED発光面からの青色、緑色、および赤色ピクセルが発する光の強度の輝度増加の程度を予測した。これらの予測は、OLED発光面の反射スペクトルの理解と合わせて、積層体モデルで計算した反射および透過の係数スペクトルの解析に基づく。解析表式を導出し、モデル化されたOLEDディスプレイ積層体の円偏光子に反射偏光子が含まれるときに結果として生じるピクセル発光色および輝度変化を予測した。
【0060】
交互する90/10 coPENと低屈折率等方性マイクロ層からなるようにモデル化された合計44個の光学繰り返し単位(ORU)を含む多層光学フィルム反射偏光子をモデル化した。等方性層を、以下のように作製してモデル化した。まず、ポリカーボネートとコポリエステルとの混合物(PCTg)を、屈折率が約1.57であり、フィルムを一軸配向した際に層が実質的に等方性のままであるように、米国特許第10,185,068号(Johnsonら)に記載されているように、作製する。PC:PCTgのモル比は、PCが約85モル%、PCTgが15モル%である。次いで、PC:PCTgを、85:15の重量比((PC:PCTg):PETg)でPETgと混合する。高屈折率材料90/10 coPENを材料Aと称し、低屈折率材料を材料Bと称する。
【0061】
マイクロ層Aとマイクロ層Bのペア、すなわちORUの厚さプロファイルを、数学的に生成した。最初のA/B層ペアの位相厚さは、1/2λ0(波長)として定義され、λ0は、濃い青色における約420nmの波長である。隣接するA/B層のORUは、1/2λiの位相厚さを有するように調節された物理的厚さを有し、ここで、λiは、λよりも漸増的に大きかった。更に隣接するA/B層ペアは、1/2λNの位相厚さを有する光学フィルム積層体全体を通して、最後のA/B層ペアに達するまで、位相厚さ1/2λi+1であるように調節され、ここで、λNは約580nmであった。この計算例では、フィルム積層体は、単調で非線形のA/B ORUプロファイルに合計44個のA/B層ペアを含んでいた。加えて、各A/B層ペア内では、A層およびB層の両方が、1/4λiの個々の位相厚さを有した。
【0062】
ORUの物理的厚さプロファイルを
図12に示す。ORUの厚さプロファイルの両側を、1500nmの厚さを有する低屈折率材料の保護境界層によって境界付けた。
【0063】
以下の表に、x、y、z軸に沿ってそれぞれNx、Ny、Nzで示される高屈折率光学(HIO)層(複屈折90/10 coPEN)の屈折率および、等方性低屈折率光学(LIO)層の屈折率(等方性屈折率を示すためにNisoが使用される)の代表的な値を示す。
【0064】
【0065】
更に、モデル設定により、400マイクロメートルのガラス層、続いてディスプレイ吸収偏光子を多層光学フィルム反射偏光子の上に定義した。ガラス層および、OLED発光面のすぐ上の誘電体層の屈折率を以下の表に示す。
【0066】
【0067】
Sanritzディスプレイ偏光子の後に吸収偏光子をモデル化して、10マイクロメートルの厚さであると仮定した。吸収偏光子の屈折率(Niso)および損失(Kx、Ky、Kz)を以下の表に示す。
【0068】
【0069】
このモデルでは、1/4波リターダ層の異常軸Noを、x軸とy軸との間の中間で45度に位置合わせした状態で、1/4波リターダ層を反射偏光子の下に配置した。リターダの屈折率値を、代表的な波長における1/4波からの偏差値Δ(ナノメートル)として、以下の表に示す。これらのリターダ特性を、リターダの厚さを変化させることによってモデル内で操作した。
【0070】
【0071】
OLED発光面を、反射時に金属様の相回転特性を有し、以下の表に示す反射係数値を有するようにモデル内で定義した。
【0072】
【0073】
吸収偏光子を除き、OLEDモデルの全ての層についての吸収係数を、わずかに小さくとった。
【0074】
図13は、x軸に位置合わせされた電界について、ならびに0度および60度の極角について、空気内の多層光学フィルム反射偏光子の計算された反射係数(反射される光である入射の割合)を示す。y軸に位置合わせされた電界については、約430~850nmの波長について、反射係数は、それぞれ0度および60度の極角について、約0.1および0.33の平均値の周りで振動した。
【0075】
円偏光子の周囲反射を計算するように計算モデルを設定した。この計算にD65光源を組み込んだ。D65光源のCIE1931xy色度座標は、x=0.3127、y=0.3291であった。D65周囲入射光についての垂直入射視感反射率は、5.24%であった。
【0076】
「約」などの用語は、これらが本明細書に使用および記載されている文脈において、当業者によって理解されよう。特徴部のサイズ、量、および物理的特性を表す量に適用される「約」の使用が、本明細書に使用および記載されている文脈において、当業者にとって明らかではない場合、「約」とは、特定の値の10パーセント以内を意味すると理解されよう。約特定の値として与えられる量は、正確に特定の値であり得る。例えば、それが本明細書に使用および記載されている文脈において、当業者にとって明らかではない場合、約1の値を有する量とは、当該量が0.9~1.1の値を有することを意味し、当該値が1であり得ることを意味する。
【0077】
上記において参照された参照文献、特許、または特許出願の全ては、それらの全体が参照により本明細書に一貫して組み込まれている。組み込まれている参照文献の部分と本出願との間に不一致または矛盾がある場合、前述の説明における情報が優先される。
【0078】
図中の要素の説明は、別段の指示がない限り、他の図中の対応する要素に等しく適用されると理解されたい。特定の実施形態が本明細書において図示および説明されているが、図示および記載されている特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な代替的実施態様および/または等価の実施態様によって置き換えられ得ることが、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書に論じられた特定の実施形態のいずれの適応例または変形例も包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図されている。