(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】タイヤバルブ
(51)【国際特許分類】
B60C 29/02 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B60C29/02
(21)【出願番号】P 2022552762
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033924
(87)【国際公開番号】W WO2023042298
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】杉野 匠生
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-143344(JP,A)
【文献】特開2014-113854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0064791(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102259566(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 29/02
B60C 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤホイールのリムを貫通するバルブ装着孔に前記リムの内側から通されて、前記リムの外側でナットと螺合するバルブステムと、
前記バルブステムの基端部から側方に張り出す抜止部と、
前記抜止部の外側に嵌合する連結部を有する電子機器と、
前記バルブステムに通され、前記ナットの締め付けにより、前記抜止部と前記バルブ装着孔の開口縁との間に、前記連結部の一部と共に挟持される支持リングと、
前記支持リングの外周面の一部を切除してなり、前記タイヤホイールのうち前記バルブ装着孔の近傍のホイール壁部に隣接配置される干渉回避部と、
前記支持リングと前記電子機器とに設けられ、前記バルブステムを中心とする前記支持リングと前記電子機器との相対回転位置が正しい正規回転位置からずれているときに、前記ナットの締め付けに伴う前記支持リングと前記電子機器との接近により互いに摺接して前記支持リングと前記電子機器とを前記正規回転位置に案内するガイド部と、を備えるタイヤバルブ。
【請求項2】
前記支持リング及び前記電子機器の前記ガイド部同士が互いに摺接して前記支持リング及び前記電子機器を前記正規回転位置に案内可能な最大許容ずれ角を超えて、前記支持リング及び前記電子機器が互いにずれたときに、前記支持リング又は前記電子機器の一方の前記ガイド部が他方の前記ガイド部以外の部位と干渉して、前記支持リング及び前記電子機器の互いの接近を禁止する請求項1に記載のタイヤバルブ。
【請求項3】
前記干渉回避部は、前記支持リングの外周面の180度離れた2箇所に形成され、
前記干渉回避部及び前記ガイド部は、前記支持リングに回転対称に形成されている請求項1又は2に記載のタイヤバルブ。
【請求項4】
前記抜止部は、前記バルブステムの軸方向である第1方向と直交する第2方向で、前記バルブステムの基端部を挟んで両側に延び、
前記連結部には、前記バルブステムの両側の前記抜止部に回動可能に嵌合される1対の円弧溝部が含まれ、
前記1対の円弧溝部は、前記ナットの締め付けにより前記第1方向で前記抜止部と前記支持リングとの間に挟まれて回り止めされる請求項1から3の何れか1の請求項に記載のタイヤバルブ。
【請求項5】
前記バルブステム及び前記支持リングは金属製である一方、前記1対の円弧溝部は樹脂製であり、
前記1対の円弧溝部のうち前記支持リングと前記抜止部に挟まれる部分には、金属製の1対の円弧形板が埋設されかつ、それら1対の円弧形板の円弧状の内側面と外側面とが、前記1対の円弧溝部の円弧状の内側面と外側面とに露出している請求項4に記載のタイヤバルブ。
【請求項6】
前記電子機器の前記ガイド部には、前記1対の円弧溝部の互いの対向面に形成されて、前記抜止部に向かうに従って前記バルブステムに接近するテーパー面が含まれ、
前記支持リングの前記ガイド部には、前記1対の円弧溝部の間に受容される筒形突部と、前記筒形突部のうち180度離れた2箇所に形成されて、前記抜止部に接近するに従って互いに接近するように傾斜しかつ前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向と平行な1対のガイド斜面と、が含まれ、
前記支持リング及び前記電子機器が前記正規回転位置に配置された状態で、前記第3方向から見ると、前記1対のガイド斜面と前記テーパー面とが隣接又は重なる請求項4又は5に記載のタイヤバルブ。
【請求項7】
前記支持リング及び前記電子機器が前記正規回転位置に配置された状態で、前記第3方向から見ると、前記1対のガイド斜面と前記1対のテーパー面との間に隙間が形成されている請求項6に記載のタイヤバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤホイールのリムを貫通するバルブ装着孔にリムの内側から通され、外側でナットに螺合されるタイヤバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のタイヤバルブとして、バルブステムの基端部に電子機器が取り付けられているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-276799号公報(
図2、段落[0026])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したタイヤバルブでは、遠心力を考慮して、タイヤホイールに対してバルブ装着孔を中心とする電子機器の回転位置が、予め定められる正規回転位置に配置されることが求められるが、そのようにタイヤバルブをタイヤホイールに取り付ける作業には熟練を要していた。そこで、本開示では、タイヤホイールに対して電子機器が正規回転位置に配置されるようにタイヤバルブを取り付ける作業を容易に行うことが可能な技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本開示の第1の態様に係るタイヤバルブは、タイヤホイールのリムを貫通するバルブ装着孔に前記リムの内側から通されて、前記リムの外側でナットと螺合するバルブステムと、前記バルブステムの基端部から側方に張り出す抜止部と、前記抜止部の外側に嵌合する連結部を有する電子機器と、前記バルブステムに通され、前記ナットの締め付けにより、前記抜止部と前記バルブ装着孔の開口縁との間に、前記連結部の一部と共に挟持される支持リングと、前記支持リングの外周面の一部を切除してなり、前記タイヤホイールのうち前記バルブ装着孔の近傍のホイール壁部に隣接配置される干渉回避部と、前記支持リングと前記電子機器とに設けられ、前記バルブステムを中心とする前記支持リングと前記電子機器との相対回転位置が正しい正規回転位置からずれているときに、
前記ナットの締め付けに伴う前記支持リングと前記電子機器との接近により互いに摺接して前記支持リングと前記電子機器とを前記正規回転位置に案内するガイド部と、を備えるタイヤバルブである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るタイヤバルブが取り付けられたタイヤホイールの断面図
【
図4】
図2のA-A切断面におけるタイヤバルブの側断面図
【
図5】電子機器を(A)上方から見た斜視図、(B)下方から見た斜視図
【
図6】タイヤバルブがリムに取り付けられた状態の斜視断面図
【
図7】支持リングを(A)先端側から見た斜視図、(B)基端側から見た斜視図、(C)側断面図
【
図8】第2実施形態の支持リングの(A)斜視図、(B)側断面図
【
図9】第3実施形態のタイヤバルブの電子機器を下方から見た斜視図
【
図11】支持リングの(A)先端側から見た斜視図、(B)基端側から見た斜視図、(C)側断面図
【
図12】第4実施形態の支持リングの(A)先端側から見た斜視図、(B)基端側から見た斜視図
【
図18】支持リングの(A)先端側から見た斜視図、(B)基端側から見た斜視図、(C)側断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図7を参照して、本開示の第1実施形態のタイヤバルブ10Aについて説明する。
図1に示すように、本実施形態のタイヤバルブ10Aは、バルブステム11の一端部に電子機器50を備えた構造をなし、タイヤホイール90のバルブ装着孔92にバルブステム11を通され、電子機器50がタイヤ93内に位置するように取り付けられる。
【0008】
そのタイヤホイール90は、例えば、ディスク部94の外側にリム構成部95を備える。リム構成部95は、例えば、ディスク部94の外側に嵌合されて溶接される筒部91Bの両端部から1対のリム91が側方に張り出した構造をなしている(
図1には、一方のリム91のみが示されている)。また、リム91は、筒部91Bの端部から側方に屈曲して張り出すフランジ部91Cの先端にタイヤ装着部91Aを備えてなる。そして、一方のリム91のフランジ部91Cにおける筒部91B寄り位置をバルブ装着孔92が貫通している。また、フランジ部91Cは僅かに外側に傾斜し、
図2に示すように、バルブ装着孔92の開口縁における周方向の一部が、フランジ部91Cと筒部91Bとの間の内側角部に位置し、その内側角部には、例えばバルブ装着孔92の軸方向と平行な平坦面を有する切欠部96が形成されている。
【0009】
なお、本実施形態では、上記したタイヤホイール90の切欠部96が、後述する支持リング30Aの干渉回避部33と隣接する特許請求の範囲の「ホイール壁部」に相当する。また、干渉回避部33と隣接する「ホイール壁部」は、タイヤホイール90の一部を切除して形成されたものでなくてもよく、例えば、切除されていない筒部91Bの一部であってもよい。また、タイヤホイール90は、鉄製、アルミ製を問わない。
【0010】
バルブステム11は、金属製であり、
図3に示すように、円筒状のステム本体12の一端部から両側方に1対の抜止部13が延びた構造をなし、全体が対称形状をなしている。なお、バルブステム11は、樹脂製でもよく、非対称形状でもよい。以下、タイヤバルブ10Aの各部位の説明において、ステム本体12の中心軸の軸方向を第1方向H1といい、1対の抜止部13が延びる方向を第2方向H2というと共に、第1方向H1のうち抜止部13を有する側を「基端側」といい、その反対側を「先端側」ということとする。
【0011】
図2に示すように、ステム本体12の内側には、バルブコア20が収容されている。バルブコア20は、所謂、逆止弁構造をなし、空気が、バルブステム11の内側の流路12Rを基端側から先端側に通過することを規制し、それとは逆向きに通過することを許容している。
【0012】
図3に示すように、ステム本体12の外側は、軸方向の中間部のテーパ部12Cを挟んで基端側が大径部12Aをなす一方、先端側が小径部12Bとなっている。小径部12Bは、軸方向の中間部に環状溝12M1を有し、その環状溝12M1より先端側に螺子部12Gを有する。そして、螺子部12Gに、ステム本体12の先端開口12Kを覆うバルブキャップ25(
図1参照)が螺合される。
【0013】
大径部12Aも軸方向の中間部に環状溝12M2を有し、環状溝12M2より先端側に螺子部12Eを備える。そして、
図2に示すように、螺子部12Eに、バルブステム11をタイヤホイール90に固定するためのナット40が螺合される。また、大径部12Aのうち環状溝12M2より基端側は、嵌合部12Fになっていて、そこには、支持リング30Aとグロメット46とワッシャ45とが嵌合される。そして、タイヤバルブ10Aがリム91に取り付けられたときには、嵌合部12Fの中間部がリム91のバルブ装着孔92を貫通し、リム91の外面側の開口縁にワッシャ45が宛がわれる一方、リム91の内面側の開口縁に支持リング30Aが宛がわれ、さらには、グロメット46がリム91の内面側からバルブ装着孔92に押し込まれて嵌合部12Fの外面とバルブ装着孔92の内面とに密着する。支持リング30A及びグロメット46の形状は、後に詳説する。
【0014】
図3に示すように、1対の抜止部13は、前述の通り、ステム本体12の基端部から両側方向に張り出している。また、1対の抜止部13の外面のうちステム本体12の先端側を向く側は半円状の円弧面13Bをなしている。また、1対の抜止部13の外面のうち円弧面13Bの反対側は、1対の抜止部13に跨がって連続する平坦面13Aになっている。そして、平坦面13Aの中央にステム本体12の内側の流路12Rが開口している。なお、抜止部13は、外面全周に円筒面を備えた円柱状をなしていてもよい。
【0015】
電子機器50は、例えば、無線回路とタイヤ93の状態を検出するセンサとを備え、センサの検出結果を、図示しない車両本体のタイヤ監視装置に無線送信する。タイヤ監視装置は、受信した検出結果に基づいてタイヤ93の状態の異常の有無を監視する。なお、センサの具体例としては、例えば、タイヤ93の内圧を検出する圧力センサや、タイヤ93内の温度を検出する温度センサ、タイヤホイール90が受ける振動を検出可能な加速度センサ等が挙げられ、センサは、これら以外のものであってもよく、複数でも単数でもよい。
【0016】
電子機器50は、上記したセンサ及び無線回路を含む電気回路を樹脂製のハウジング50Hでパッケージしてなる。ハウジング50Hには、電気回路を収容するケース部51と、電子機器50をバルブステム11に結合するための連結部52Aとが備えられている。また、ケース部51は、第2方向H2に長くかつ第2方向H2と直交する方向に扁平になっている。以下、電子機器50においては、ケース部51の扁平方向を上下方向といい、その一方側を上側等というと共に、他方側を下側等ということとする。また、ケース部51の扁平方向と第2方向H2との両方向に直交する方向を電子機器50の前後方向ということとし、その一方側を前側等というと共に、他方側を後側等ということとする。
【0017】
図5(B)に示すように、ケース部51の下面は、平坦になっている一方、
図5(A)に示すように、ケース部51の上面は凹凸を有している。また、連結部52Aは、全体が上面開放の溝形構造をなして、ケース部51から前側及び上側に接続されている。
【0018】
具体的には、連結部52Aは、ケース部51の前面の下縁部から前方に張り出しかつ円弧状に湾曲して上方に迫り上がる湾曲壁53と、湾曲壁53の第2方向H2における両端部とケース部51の前面と上面前部との間を連絡する1対の連絡壁55とを備える。1対の連絡壁55は、ケース部51のうち第2方向H2における一端寄り位置と他端寄り位置とに配置されている。なお、1対の連絡壁55の互いの対向面の裏側となる面からは、第2方向H2に1対のL形脚部51Lが張り出している。それら1対のL形脚部51Lは、ケース部51から第2方向H2の両側方に離れた位置まで延びてから下側に屈曲し、それらの先端はケース部51の下面より下方に位置している。また、1対のL形脚部51Lは、ケース部51の前面とも一体になっている。
【0019】
湾曲壁53における第2方向H2の中央には、下端寄り位置から上端寄り位置に亘って延びる長孔53Nが形成されている。そして、ステム本体12が長孔53Nに通され、バルブステム11の1対の抜止部13が、湾曲壁53のうち長孔53Nを間に挟んだ両側部分である1対の円弧溝部54の内側に嵌合する。
【0020】
図6に示すように、1対の円弧溝部54の内面は、上下の両端部を除く全体が、1対の抜止部13の円弧面13Bと同じ曲率半径の円弧面である内側円弧面54Aになっている。また、1対の円弧溝部54の外面のうち上下の両端部を除く全体は、内側円弧面54Aと同心の円弧面である外側円弧面54Bになっている。さらには、
図5(B)に示すように、1対の円弧溝部54には、金属製の1対の円弧形板56が埋設されている。各円弧形板56は、各円弧溝部54における長孔53N寄り位置に配置され、円弧溝部54の上端から下端まで延びる円弧状をなし、内側円弧面54Aの一部を構成する内面と、外側円弧面54Bの一部を構成する外面とを有する。また、
図6に示すように、円弧形板56の内面は、内側円弧面54Aの一部として抜止部13の円弧面13Bに当接する。さらには、円弧形板56全体には、複数の貫通孔56Aが形成されている。
【0021】
なお、1対の円弧形板56は、インサート成形にて1対の円弧溝部54に埋設されているが、例えば、1対の円弧溝部54に1対のスリットを備えた状態にハウジング50Hを成形してから、1対のスリットに1対の円弧形板56を差し込んでもよい。また、湾曲壁53全体を金属製とし、その湾曲壁53を構成する金属部品をハウジング50Hにインサート成形してもよい。さらには、円弧溝部54が、金属製部品を含まず、樹脂(グラスファイバー等の強化材にて強化された樹脂も含む)のみで構成されていてもよい。
【0022】
図5(B)に示すように、1対の円弧溝部54のうち長孔53Nを間に挟んだ1対の対向面には、特許請求の範囲の「ガイド部」に相当する1対のテーパーガイド面57が形成されている。具体的には、長孔53Nの孔内面と湾曲壁53の外面とが交差する開口縁は、例えば、孔内面における貫通方向の中間位置まで面取りされ、その面取り面53Mのうち1対の円弧溝部54に位置する部分が1対のテーパーガイド面57になっている。そして、それら1対のテーパーガイド面57は、1対の円弧溝部54の外面側から内面側に向かう従って互いに接近するように傾斜している。また、長孔53Nの孔内面のうち貫通方向の中間位置より湾曲壁53の内面側は、内側円弧面54A及び外側円弧面54Bの円弧の径方向と平行になっている。
【0023】
図7には、前述の支持リング30Aが単体状態で示されている。支持リング30Aは、例えば、金属製であり、第1方向H1と平行な中心軸を有し、
図6に示すように、前述の通り、バルブステム11に嵌合されてリム91の内側に配置される。そして、リム91と電子機器50の連結部52Aとの間に挟まれる。
【0024】
具体的には、
図7(B)に示すように、支持リング30Aは、外面における軸方向の途中位置に、軸方向と直交する平坦な当接面36を備える。そして、支持リング30Aの外面のうち当接面36より先端側(リム91側)が大径部31をなす一方、当接面36より基端側(電子機器50側)が小径部34になっている。また、
図7(C)に示すように、大径部31の内面における軸方向の途中位置には、テーパー面31Mが備えられ、支持リング30Aの内面のうちテーパー面31Mより基端側は小径孔部34Aをなし、テーパー面31Mより先端側は大径孔部31Aになっている。さらには、
図7(A)に示すように、支持リング30Aの先端部には、外面側と内面側とにテーパー状の面取り面31C,31Dが形成され、
図7(B)に示すように、支持リング30Aの基端部には、外面側にテーパー状の面取り面34Cが形成されている。
【0025】
図7(A)に示すように、大径部31の外面には、周方向で180度離れた2箇所を切除して、大径部31の第1方向H1と平行な平坦面33Aを有する1対の干渉回避部33が設けられている。また、1対の干渉回避部33の平坦面33Aは、大径部31の第1方向H1の全体に亘って形成されると共に、大径部31の径方向では、大径部31の内側の面取り面31Dにまで及び、その結果、大径部31の先端部のうち1対の干渉回避部33が形成された部分には、1対の円弧状の切欠部33Kが形成されている。
【0026】
図7(B)に示すように、小径部34の外面には、周方向で180度離れた2箇所を切除して、小径部34の第1方向H1に対して傾斜した平坦面である1対のガイド斜面35が形成されている。1対のガイド斜面35は、特許請求の範囲の「ガイド部」に相当し、小径部34の外面における当接面36寄り位置から小径部34の先端面に亘って形成されている。また、
図4に示すように、1対のガイド斜面35の第1方向H1に対する傾斜角は、前述の電子機器50において、内側円弧面54A及び外側円弧面54Bの円弧の径方向(
図4の上下方向)に対する1対のテーパーガイド面57の傾斜角と略同一になっている。さらには、
図7(B)に示すように、1対のガイド斜面35と、1対の干渉回避部33とは支持リング30Aの周方向において90度ずれた位置関係をなし、支持リング30A全体は、180度の回転対称形状をなしている。
【0027】
支持リング30Aは、バルブステム11の螺子部12Eにナット40が締め付けられていない状態では、電子機器50に対して、バルブステム11を中心に回転し得る。そして、
図4に示すように、支持リング30Aの1対のガイド斜面35が並ぶ方向と、電子機器50の1対の円弧溝部54の並ぶ方向とが一致する位置が、支持リング30Aと電子機器50との正しい相対回転位置である正規回転位置になっている。その正規回転位置に支持リング30Aと電子機器50とが配置され、支持リング30Aが第1方向H1で電子機器50側に押されると、支持リング30Aの当接面36が1対の円弧溝部54の外側円弧面54Bに当接し、支持リング30Aの小径部34が1対の円弧溝部54の間に受容され、1対のガイド斜面35が電子機器50の1対のテーパーガイド面57に対して僅かな隙間を空けて隣接する。また、この状態で、1対の円弧溝部54に埋設されている1対の円弧形板56は、バルブステム11
の1対の抜止部13と支持リング30Aとの間に挟まれる。
【0028】
グロメット46は、エラストマー製であって、
図2には押し潰される前の状態が示され、
図4には、押し潰された状態が示されている。押し潰される前の状態のグロメット46は、
図2に示すように、均一径の内面と外面とを有すると共に、第1方向H1に対して直交する先端面と基端面とを有し、先端面の内縁部から突出する環状突部46Aを備える。環状突部46Aは、外面がテーパー状になっている。そして、グロメット46は、支持リング30Aの大径孔部31Aに嵌合されて基端面をテーパー面31Mの端部に宛がわれ、先端面が支持リング30Aから先方に位置している。
【0029】
本実施形態のタイヤバルブ10Aの構成に関する説明は以上である。このタイヤバルブ10Aは、以下のようにしてタイヤホイール90に取り付けられる。タイヤバルブ10Aは、バルブステム11からナット40とワッシャ45とを外された状態で、タイヤ93が取り付けられていないタイヤホイール90のバルブ装着孔92にリム91の内側から挿入される。そして、バルブ装着孔92からリム91の外部に突出するバルブステム11に、ワッシャ45とナット40とが装着されてナット40が軽く締め付けられる(即ち、仮締めされる)。
【0030】
このとき、グロメット46の環状突部46Aがリム91の内面側からバルブ装着孔92に受容されると共に、支持リング30Aの一方の干渉回避部33がタイヤホイール90の切欠部96に隣接するように配置され、さらには、電子機器50の下面がタイヤホイール90の筒部91Bに対向した状態に配置される。また、この段階では、電子機器50は、バルブステム11の抜止部13を中心に傾動可能であるので、予め規定された正規傾動姿勢になるように調整される。具体的には、本実施形態では、例えば、電子機器50の下面がタイヤホイール90の回転中心と平行になる姿勢が正規傾動姿勢であり、そのような姿勢となるように調整され、1対のL形脚部51Lの下面がタイヤホイール90の筒部91Bの外周面に突き合わされる。
【0031】
そして、ナット40が規定の締め付けトルクで締め付けられると(本締めされると)、バルブステム11の1対の抜止部13とリム91の内面との間に、支持リング30Aと電子機器50の1対の円弧溝部54とが挟まれて、電子機器50が一定の傾動姿勢に固定される。また、グロメット46は、支持リング30Aとリム91との間に押し潰されて、
図4に示すように、バルブ装着孔92の内面とリム91の開口縁とバルブステム11における嵌合部12Fの外面等に密着し、バルブ装着孔92が密閉される。以上を以て、タイヤバルブ10Aの取り付けが完了する。
【0032】
ところで、タイヤバルブ10Aがバルブ装着孔92に通され、ナット40が締め付けられる前の状態では、支持リング30Aは、干渉回避部33と切欠部96との隣接によってバルブ装着孔92に対して一定の回転位置に配置されるが、電子機器50は、支持リング30Aに対する正規回転位置からずれる事態が生じ得る。このような場合、本実施形態のタイヤバルブ10Aでは、ナット40がバルブステム11に締め付けられて、支持リング30Aと電子機器50の連結部52Aとが互いに接近していく過程で、支持リング30Aの1対のガイド斜面35と電子機器50の1対のテーパーガイド面57とが互いに摺接し、電子機器50が支持リング30Aに対する正規回転位置に案内され、正規回転位置からのずれが自動的に解消される。このように、本実施形態のタイヤバルブ10Aは、タイヤホイール90に取り付けられる過程で電子機器50が自動的に正規回転位置に案内される自動整列機能を有するので、タイヤバルブ10Aの取付作業が容易になる。
【0033】
また、支持リング30A及び電子機器50を正規回転位置に案内可能な最大許容ずれ角(本実施形態では、例えば、30度)を超えて支持リング30A及び電子機器50が互いに大きくずれたときには、支持リング30Aのうちガイド斜面35を有していない部分が電子機器50の1対のテーパーガイド面57に当接し、支持リング30Aと電子機器50の互いの接近が禁止される。これにより、作業者は、支持リング30Aと電子機器50とが正規回転位置から大きくずれていることに気づき、支持リング30A及び電子機器50が互いにずれた状態で放置されることが防がれる。
【0034】
また、支持リング30Aは、1対の干渉回避部33と1対のガイド斜面35とを含んだ全体が回転対称形状に形成されているので、支持リング30A及び電子機器50を正規回転位置に案内可能な最大許容ずれ角を超えて支持リング30A及び電子機器50が互いにずれたときに、支持リング30Aと電子機器50とを相対的に任意の回転方向に回転させて正規回転位置まで容易に回転させることができる。支持リング30Aが回転対称形状になっているので、バルブステム11に支持リング30Aを挿入組み付けする際に、電子機器50と支持リング30Aとを容易に正規回転位置に配置することができ、タイヤバルブ10Aの組み立て作業も容易になる。
【0035】
また、電子機器50は、バルブステム11の軸方向(バルブ装着孔92の軸方向でもある)と直交する軸を中心に傾動可能であるので、バルブ装着孔92の位置が異なる様々なタイヤホイール90の内面に対して電子機器50が干渉しないように傾動姿勢を適宜変更してタイヤバルブ10Aを各タイヤホイール90に固定することができる。
【0036】
しかも、電子機器50の樹脂製のハウジング50Hに設けられた1対の円弧溝部54には、金属製の1対の円弧形板56が埋設されているので、電子機器50を任意の傾動姿勢に固定するときに、金属製のバルブステム11の1対の抜止部13と金属製の支持リング30Aとの間に金属製の1対の円弧形板56が挟まれることになり、強度のバランスが図られて、電子機器50の任意の傾動位置での固定が安定する。
【0037】
また、上述の自動整列機能のため設けられた電子機器50の1対のテーパーガイド面57と支持リング30Aの1対のガイド斜面35との間には、電子機器50の支持リング30Aに対する正規回転位置で、隙間が形成されるようになっているので、ナット40の締め付けによって1対のガイド斜面35と1対のテーパーガイド面57とに大きな力がかかることが防がれる。
【0038】
[第2実施形態]
本実施形態は、
図8に示されており、支持リング30Bの構造が第1実施形態のタイヤバルブ10Aの支持リング30Aと異なる。即ち、第1実施形態の支持リング30Aは、
図7に示すように、当接面36より基端側に小径部34を有し、その小径部34に1対のガイド斜面35が形成されていたが、本実施形態の支持リング30Bは、
図8に示すように、小径部34を有さず、当接面36の開口縁の一部から突片37が張り出し、その突片37に1つのガイド斜面35が形成された構造になっている。また、干渉回避部33は、ガイド斜面35から90度離れた一箇所にのみに設け設けられている。その他の構造は、第1実施形態と同じとなっている。
【0039】
この支持リング30Bを第1実施形態のタイヤバルブ10Aに使用しても第1実施形態で説明した自動整列機能を奏し、タイヤホイール90へのタイヤバルブ10Aの取付作業が容易になる。なお、電子機器50の連結部52Aにおいて、正規回転位置で支持リング30Bのガイド斜面35と重なるテーパーガイド面57を有する円弧溝部54とは反対側の円弧溝部54にはテーパーガイド面57が形成されていない構造とし、電子機器50が支持リング30Bに対して正規回転位置から180度ずれた位置で突片37が円弧溝部54と干渉するようにしてもよい。
【0040】
[第3実施形態]
本実施形態は、
図9~
図11に示されおり、電子機器50の連結部52Cと支持リング30Cの構造が第1実施形態とは異なる。即ち、
図9に示すように、本実施形態の連結部52Cは、1対の円弧溝部54の外側円弧面54Bから突出する1対の円弧突条58を有する。それら1対の円弧突条58は、外側円弧面54Bの周方向に沿って円弧溝部54の下端部から上端部に亘って延びている。また、1対の円弧突条58は1対の円弧溝部54のうち1対の円弧形板56が埋設されている部分より長孔53Nから離れた側に配置されている。そして、
図10に示すように、1対の円弧突条58のうち互いの対向面が、1対のテーパーガイド面57Cになっている。また、この連結部52Cには、長孔53Nの開口縁に、第1実施形態で説明した1対のテーパーガイド面57を一部に含む面取り面53M(
図5(B)参照)は形成されていない。
【0041】
上記した連結部52Cに対応して、本実施形態のタイヤバルブ10Cの支持リング30Cは、
図11に示すように、当接面36より基端側に小径部34を有さず、当接面36が基端面になっている。また、支持リング30Cには、1対の干渉回避部33からそれぞれ90度ずれた2箇所に1対のガイド斜面35Cが形成されて、全体が回転対称形状をなしている。さらには、1対のガイド斜面35Cは、支持リング30Cの外周面における基端部に位置しかつ支持リング30Cの軸方向に対して傾斜し、その傾斜角は、1対のテーパーガイド面57Cの外側円弧面54Bの径方向に対する傾斜角と同じになっている。そして、電子機器50が支持リング30Cに対して正規回転位置に配置されると、当接面36が1対の円弧溝部54の外側円弧面54Bのうち1対の円弧突条58の間部分に当接し、1対のテーパーガイド面57Cと1対のガイド斜面35Cとが隣接する。
【0042】
本実施形態のタイヤバルブ10Cによっても第1実施形態で説明した自動整列機能を奏し、タイヤホイール90へのタイヤバルブ10Cの取付作業が容易になる。
【0043】
[第4実施形態]
本実施形態は、
図12に示されており、第3実施形態のタイヤバルブ10Cの支持リング30Cから1つの干渉回避部33と1つのガイド斜面35Cとを排除した構造の支持リング30Dを備える。それ以外は、第3実施形態と同じになっている。本実施形態の構成によっても、第2実施形態と同様に、第1実施形態で説明した自動整列機能を奏する。
【0044】
[第5実施形態]
本実施形態のタイヤバルブ10Eは、
図13に示されおり、電子機器50の連結部52Eと支持リング30Eの構造が第3実施形態とは異なる。即ち、本実施形態の連結部52Eでは、1対の円弧突条58が、1対の円弧溝部54のうち1対の円弧形板56が埋設されている部分より長孔53Nに近い側に配置されると共に、1対の円弧突条58のうち互いの対向面と反対側に1対のテーパーガイド面57Eを備える。
【0045】
一方、支持リング30Eは、1対の干渉回避部33(図示せず)の並び方向(
図13の紙面と直交する方向)に延びる溝部39を基端部に備える。その溝部39の1対の内側面が支持リング30Eの軸方向に対して傾斜した1対のガイド斜面35Eになっている。そして、電子機器50が支持リング30Eに対して正規回転位置に配置されると、当接面36が1対の円弧溝部54の外側円弧面54Bに当接し、1対のテーパーガイド面
57Eと1対のガイド斜面35Eとが隣接する。これにより、本実施形態のタイヤバルブ10Eによっても第1実施形態で説明した自動整列機能を奏する。
【0046】
[第6実施形態]
本実施形態のタイヤバルブ10Fは、
図14及び
図15に示されている。
図15に示すように、本実施形態のタイヤバルブ10Fの支持リング30Fは、第1実施形態の支持リング30Aの小径部34における1対のガイド斜面35の代わりに、軸方向と平行で平坦な1対の回転規制壁35Sを備える。これに対応して、連結部52Fにおける長孔53Nの開口縁には、1対のテーパーガイド面57を一部に含む面取り面53M(
図5(B)参照)は形成されていない。
【0047】
そして、
図14に示すように、電子機器50が支持リング30Fに対して正規回転位置に配置されると、当接面36が1対の円弧溝部54の外側円弧面54Bに当接し、1対の回転規制壁35Sと1対の円弧溝部54の対向面54Sとが隣接する。本実施形態のタイヤバルブ10Fは、第1実施形態で説明した自動整列機能を奏しないが、回転規制壁35Sと対向面54Sとの対向によって電子機器50の支持リング30Fに対する相対回転が規制され、電子機器50が正規回転位置に安定する。
【0048】
[第7実施形態]
本実施形態は、
図16に示されており、第1実施形態と第2実施形態との関係と同様に、第6実施形態の支持リング30Fから小径部34を排除する代わりに突片37を当接面36から突出させてその突片37に回転規制壁35Sを備え、さらに、一方の干渉回避部33を排除した構造の支持リング30Gを有する。この構成によっても、第6実施形態と同様な効果を奏する。
【0049】
[第8実施形態]
本実施形態のタイヤバルブ10Hは、
図17及び
図18に示されている。
図17に示すように、本実施形態のタイヤバルブ10Hの電子機器50が有する連結部52Hは、第3実施形態の連結部52Cにおける1対の円弧突条58の対向面を、互いに平行で平坦な1対の回転規制壁58Sに変更した構造になっている。一方、支持リング30Hは、
図18に示すように、前述の小径部34を有さず、当接面36が基端面をなすと共に、外周面を4等分する4箇所に干渉回避部33が形成された構造をなしている。そして、何れか1つの干渉回避部33がタイヤホイール90の切欠部96(
図2参照)に対向配置され、その干渉回避部33の両側の1対の干渉回避部33の平坦面33Aが、
図17に示すように、1対の円弧突条58の回転規制壁58Sに隣接配置される。本実施形態の構成によっても、第6実施形態と同様に、電子機器50の支持リング30Hに対する相対回転が規制され、電子機器50が正規回転位置に安定するという効果を奏する。
【0050】
[第9実施形態]
本実施形態は、
図19に示されており、第3実施形態と第4実施形態との関係と同様に、第8実施形態の支持リング30Hから隣合う2つの干渉回避部33を排除した構造の支持リング30Iを有する。この構成によっても、第8実施形態と同様な効果を奏する。
【0051】
[付記]
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0052】
10A,10C,10E,10F,10H タイヤバルブ
11 バルブステム
13 抜止部
30A~30I 支持リング
33 干渉回避部
34A 小径孔部
35,35C,35E ガイド斜面(ガイド部)
40 ナット
50 電子機器
52A,52C,52E,52F,52H 連結部
53 湾曲壁
54 円弧溝部
56 円弧形板
57,57C,57E テーパーガイド面(ガイド部)
90 タイヤホイール
91 リム
92 バルブ装着孔
96 切欠部(ホイール壁部)
H1 第1方向
H2 第2方向