(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】バックアップ部材の配置支援装置および配置支援方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
H05K13/04 P
(21)【出願番号】P 2022556801
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2020039072
(87)【国際公開番号】W WO2022079889
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 勉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168540(JP,A)
【文献】特開2005-302833(JP,A)
【文献】国際公開第2018/158888(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/033399(WO,A1)
【文献】特開2013-58509(JP,A)
【文献】特開平11-340693(JP,A)
【文献】特開2014-120670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の対基板作業を実行する対基板作業機に適用され、
前記対基板作業機の機内において基板を下方から支持するバックアップ部材が載置される対象領域の全域をカメラにより撮像して取得された画像データに基づいて、前記対象領域における前記バックアップ部材の現在位置を認識する認識処理を実行する画像処理部と、
前記認識処理の結果、および次回の前記対基板作業に設定された前記バックアップ部材の配置位置を示す指令情報に基づいて、前記バックアップ部材ごとの移動先である目標位置を設定する目標設定部と、
前記目標位置へと前記バックアップ部材を移動させる配置部と、
を備えるバックアップ部材の配置支援装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記対象領域に作業者による前記バックアップ部材の仮配置が実行された場合、または前記バックアップ部材ごとの前記現在位置を示す位置情報の信頼度が所定値以下となった場合に、前記認識処理を実行する、請求項1に記載のバックアップ部材の配置支援装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記認識処理により前記位置情報が最後に更新されてから現在までに前記対基板作業機の機内に作業者がアクセス可能な状態があった場合に、前記位置情報の信頼度が所定値以下となったものとして、前記認識処理を実行する、請求項2に記載のバックアップ部材の配置支援装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、移動装置による前記バックアップ部材の可動領域のうち前記対象領域のみを前記認識処理の対象とする通常モードと、前記可動領域の全域を前記認識処理の対象とする全域モードとを、作業者の要求または前記位置情報の信頼度に基づいて切り換えて、前記認識処理を実行する、請求項2または3に記載のバックアップ部材の配置支援装置。
【請求項5】
前記配置支援装置は、前記対象領域に作業者による前記バックアップ部材の仮配置の作業指示をするとともに、前記作業指示において前記バックアップ部材の数量、種類、および前記配置位置の少なくとも一つを案内する指示部をさらに備える、請求項1-4の何れか一項に記載のバックアップ部材の配置支援装置。
【請求項6】
前記指示部は、前記作業指示において、複数の前記対基板作業機により構成された生産ラインの上流側から順に前記バックアップ部材の仮配置を行うように指示する、請求項5に記載のバックアップ部材の配置支援装置。
【請求項7】
前記対基板作業機には、前記基板の支持に使用されない予備の前記バックアップ部材が載置される退避領域が設けられ、
前記目標設定部は、前記認識処理の結果、前記指令情報、および前記退避領域に載置された予備の前記バックアップ部材の現在位置を示す予備情報に基づいて、前記バックアップ部材ごとの目標位置を設定する、請求項1-6の何れか一項に記載のバックアップ部材の配置支援装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記認識処理において、前記バックアップ部材が載置されるバックアッププレートの上の異物の有無を認識し、
前記配置支援装置は、前記画像処理部により前記バックアッププレートの上に前記異物があると認識された場合に、作業者に報知する報知部をさらに備える、請求項1-7の何れか一項に記載のバックアップ部材の配置支援装置。
【請求項9】
前記対基板作業機は、前記基板に部品を装着する部品装着機であり、
前記部品装着機は、
移動台を水平方向に移動させるヘッド駆動装置と、
前記移動台に設けられ、供給される前記部品および前記バックアップ部材を保持可能な装着ヘッドと、を備え、
前記配置部は、前記ヘッド駆動装置および前記装着ヘッドの動作を制御することによって前記目標位置へと前記バックアップ部材を移動させる、請求項1-8の何れか一項に記載のバックアップ部材の配置支援装置。
【請求項10】
前記カメラは、前記移動台に設けられ、前記基板に付された基準マークを撮像する基板カメラ、または前記基板に装着された前記部品を撮像する検査カメラである、請求項9に記載のバックアップ部材の配置支援装置。
【請求項11】
所定の対基板作業を実行する対基板作業機に適用され、
前記対基板作業機の機内において基板を下方から支持するバックアップ部材が載置される対象領域の全域をカメラにより撮像して取得された画像データに基づいて、前記対象領域における前記バックアップ部材の現在位置を認識する認識処理を実行する画像処理ステップと、
前記認識処理の結果、および次回の前記対基板作業に設定された前記バックアップ部材の配置位置を示す指令情報に基づいて、前記バックアップ部材ごとの移動先である目標位置を設定する目標設定ステップと、
前記目標位置へと前記バックアップ部材を移動させる配置ステップと、
を備えるバックアップ部材の配置支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックアップ部材の配置支援装置および配置支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バックアップ部材は、所定の対基板作業において、搬送方向の所定位置に位置決めされた基板を下方から支持するバックアップ装置に適用される。特許文献1には、バックアップ装置を備え、対基板作業として基板に部品を装着する部品装着機が開示されている。バックアップ部材は、実行予定の対基板作業や基板の種別、基板の裏面(位置決めされた基板の下面)の状態に応じて、数量、種類、および配置位置などが適宜設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バックアップ部材の配置作業は、設定された配置位置に所定誤差の範囲に収まるように所定の精度が要求されることがある。例えば、基板の裏面に多数の部品が高密度で装着されている場合には、部品とバックアップ部材の干渉を防止するために、バックアップ部材が正確に配置されることが求められる。一方で、バックアップ部材の配置作業は、対基板作業の段取り作業の一部として実行され、生産性向上の観点からは所要時間の短縮が求められる。
【0005】
本明細書は、バックアップ部材の配置作業の所要時間を短縮して、段取り作業の効率化を図ることが可能なバックアップ部材の配置支援装置および配置支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、所定の対基板作業を実行する対基板作業機に適用され、前記対基板作業機の機内において基板を下方から支持するバックアップ部材が載置される対象領域の全域をカメラにより撮像して取得された画像データに基づいて、前記対象領域における前記バックアップ部材の現在位置を認識する認識処理を実行する画像処理部と、前記認識処理の結果、および次回の前記対基板作業に設定された前記バックアップ部材の配置位置を示す指令情報に基づいて、前記バックアップ部材ごとの移動先である目標位置を設定する目標設定部と、前記目標位置へと前記バックアップ部材を移動させる配置部と、を備えるバックアップ部材の配置支援装置を開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によると、バックアップ部材の配置作業において、対象領域における作業者によるバックアップ部材の任意位置への配置を許容することができる。これにより、例えば作業者が次回の対基板作業に設定されたバックアップ部材の配置位置の近傍にバックアップ部材を仮配置すれば、移動装置が対象領域と退避領域との間でバックアップ部材を個々に移動させる態様と比較して、バックアップ部材の移動距離を短縮することができる。結果として、バックアップ部材の配置作業の所要時間を短縮して、段取り作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態におけるバックアップ部材の配置支援装置を適用された生産ラインを示す模式図である。
【
図3】基板搬送装置のバックアップ装置を示す側面図である。
【
図4】バックアップ部材を移動させる移動装置の可動領域を示す模式図である。
【
図6】対基板作業の段取り作業を示すフローチャートである。
【
図7】段取り作業における再配置処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.バックアップ部材50の配置支援装置70の概要
配置支援装置70は、基板91を下方から支持するバックアップ装置15(
図2を参照)に適用されるバックアップ部材50の配置作業を支援する。バックアップ部材50の配置作業は、例えば対基板作業の段取り作業において必要に応じて実行される。本実施形態において、バックアップ装置15を備える対基板作業機としての部品装着機2に配置支援装置70が組み込まれた態様を例示する。
【0010】
2.生産ラインLnの構成
上記の部品装着機2は、基板91に部品を装着する装着処理を、所定の対基板作業として実行する。生産ラインLnは、
図1に示すように、複数の対基板作業機を基板91の搬送方向に複数設置して構成される。複数の対基板作業機のそれぞれは、生産ラインLnを統括して制御するホストコンピュータ80に通信可能に接続される。生産ラインLnは、複数の対基板作業機としての印刷機1、複数の部品装着機2、リフロー炉3、および検査機4を備える。
【0011】
印刷機1は、搬入された基板91における部品の装着位置にペースト状のはんだを印刷する。複数の部品装着機2のそれぞれは、生産ラインLnの上流側から搬送された基板91に部品を装着する。部品装着機2の構成については後述する。リフロー炉3は、生産ラインLnの上流側から搬送された基板91を加熱して、基板91上のはんだを溶融させてはんだ付けを行う。検査機4は、生産ラインLnにより生産された基板製品の外観または機能が正常であるか否かを検査する。
【0012】
本実施形態において、基板製品の工場には、複数の生産ラインLnが構成されていてもよい。なお、複数の生産ラインLnのそれぞれは、例えば生産する基板製品の種別などに応じて、その構成を適宜追加、変更され得る。具体的には、複数の生産ラインLnには、搬送される基板91を一時的に保持するバッファ装置や基板供給装置や基板反転装置、各種検査装置、シールド装着装置、接着剤塗布装置、紫外線照射装置などの対基板作業機が適宜設置され得る。
【0013】
3.部品装着機2の構成
部品装着機2は、
図2に示すように、基板搬送装置10、部品供給装置20、部品移載装置30、部品カメラ41、基板カメラ42、および制御装置60を備える。以下の説明において、水平方向であって部品装着機2の前後方向(
図2の左下から右上に向かう方向)をY方向とし、Y方向に交差する水平方向であって部品装着機2の左右方向(
図2の左上から右下に向かう方向)をX方向とし、X方向およびY方向に直交する鉛直方向(
図2の上下方向)をZ方向とする。
【0014】
基板搬送装置10は、Y方向に並んで設置された複数の搬送機構11などにより構成される。複数の搬送機構11は、一対のガイドレール12,13、およびコンベアベルト14をそれぞれ有する。一対のガイドレール12,13は、基板の搬送方向(X方向)に延伸し、コンベアベルト14に載置されて搬送される基板91の周縁を支持する。一対のガイドレール12,13の少なくとも一方は、Y方向に移動可能に基台9に設けられる。
【0015】
基板搬送装置10は、基板91を搬送方向へと順次搬送するとともに、基板91を機内の所定位置に位置決めする。基板搬送装置10は、位置決めされた基板91をクランプするバックアップ装置15を有する。基板搬送装置10およびバックアップ装置15の詳細構成については後述する。基板搬送装置10は、部品の装着処理の実行後に、基板91を部品装着機2の機外に搬出する。
【0016】
部品供給装置20は、基板91に装着される部品を供給する。部品供給装置20は、X方向に並んでセットされたフィーダ21を備える。フィーダ21は、多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、部品を採取可能に供給する。また、部品供給装置20は、例えば比較的大型の部品を、パレットに載置されたトレイ上に並べた状態で供給してもよい。上記のような構成において、部品供給装置20は、複数のパレットを収納する収納装置から装着処理に応じて所定のパレットを引き出して部品を供給する。
【0017】
部品移載装置30は、部品供給装置20により供給された部品を、基板搬送装置10により機内に搬入された基板91上の所定の装着位置まで移載する。部品移載装置30のヘッド駆動装置31は、直動機構により移動台32を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。移動台32には、図示しないクランプ部材により装着ヘッド33が交換可能に固定される。装着ヘッド33には、種々の保持部材が着脱可能に取り付けられる。上記の保持部材は、部品または後述するバックアップ部材50(
図3を参照)を保持する。
【0018】
吸着ノズル34は、供給される負圧エアを用いて部品を吸着して保持する。また、装着ヘッド33には、部品をクランプするチャックを取り付けることができる。さらに、装着ヘッド33には、例えばバックアップ部材50の所定部位と係合することによって、バックアップ部材50を保持する保持部材を取り付けることができる。上記のように、部品移載装置30は、バックアップ部材50を保持可能に構成され、バックアップ部材50を移動させる移動装置として機能する。部品移載装置30は、バックアップ部材50の配置作業(増減および位置の変更を含む)に用いられる。
【0019】
部品カメラ41、基板カメラ42、および検査カメラ43は、CMOSなどの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ41、基板カメラ42、および検査カメラ43は、制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを送出する。部品カメラ41は、装着ヘッド33の吸着ノズル34に保持された部品を下方から撮像可能に構成される。基板カメラ42および検査カメラ43は、移動台32に設けられ、移動台32の移動に伴って装着ヘッド33と一体的に移動する。
【0020】
基板カメラ42および検査カメラ43は、基板91を上方から撮像可能に構成される。基板カメラ42は、主として基板91に付された基準マークを高解像度で撮像することが求められ、比較的狭いカメラ視野に設定される。検査カメラ43は、主として基板91に装着された部品や、装着前の基板を所定範囲で撮像することが求められ、基板カメラ42と比較して広いカメラ視野に設定される。
【0021】
制御装置60は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置60は、基板91に部品を装着する装着処理を実行する。制御装置60は、装着処理において、各種センサから出力される情報や画像処理の結果、予め記憶された制御プログラムなどに基づき、部品移載装置30の動作を制御する。これにより、装着ヘッド33に支持された複数の吸着ノズル34の位置および角度が制御される。また、制御装置60は、装着処理において基板搬送装置10が基板91を下方から支持するのに用いるバックアップ部材50の増設または除去、およびバックアップ部材50の位置の変更を含む配置作業を実行する。
【0022】
制御装置60は、
図2に示すように、記憶部61を備える。記憶部61は、ハードディスク装置などの光学ドライブ装置、またはフラッシュメモリなどにより構成される。この記憶部61には、制御プログラムや指令情報M1、位置情報M2、予備情報M3などの各種データが記憶される。上記の「指令情報M1」は、
図5に示すように、次回の対基板作業(装着処理)に設定されたバックアップ部材50の配置位置を示す。
【0023】
本実施形態において、指令情報M1は、バックアップ部材50の配置位置、およびバックアップ部材50の種別(ピンタイプ)を示す。指令情報M1には、上記に加えて、配置位置に対するバックアップ部材50の配置の許容誤差が含まれてもよい。さらに、指令情報M1には、基板91とバックアップ部材50の接触位置(バックアップ位置)が含まれてもよい。
【0024】
上記の「バックアップ位置」と「配置位置」とが相違し得るのは、バックアップ部材50における基板91との接触位置(バックアップ位置)と、配置に係る基準部位(例えば、保持される部位であり配置位置に相当)とがXY方向にずれている場合があるからである。なお、指令情報M1は、基板91の種類(大きさや硬度を含む)や生産する基板製品の種別(部品の装着位置を含む)、生産工程などに応じて設定される。位置情報M2および予備情報M3の詳細については後述する。
【0025】
制御装置60は、表示装置62を備える。表示装置62は、作業者が視認可能に設けられ、各種情報を表示する。本実施形態において、表示装置62は、タッチスクリーンおよび複数のボタンを有するとともに、図示しないマウスなどの入力デバイスと連携し、作業者による操作を受け付ける。
【0026】
4.基板搬送装置10およびバックアップ装置15の詳細構成
基板搬送装置10は、上記のように複数の搬送機構11を備えるダブルトラックコンベア方式である。搬送機構11を構成する一対のガイドレール12,13は、Y方向に相対移動可能に基台9に設けられる。これにより、複数の搬送機構11は、基板91のY方向の寸法に対応して、一対のガイドレール12,13の間隔を調整される。
【0027】
バックアップ装置15は、搬送機構11により搬送された基板91を下方から支持するとともに、一対のガイドレール12,13との間で基板91をクランプする。本実施形態において、バックアップ装置15は、基板91の下面にバックアップ部材50を接触させて基板91を支持する。これにより、バックアップ装置15は、一対のガイドレール12,13との間で基板91をクランプするとともに、バックアップ部材50が接触した部位の高さを維持することで基板91の撓みを防止する。
【0028】
バックアップ装置15は、
図3に示すように、バックアッププレート16、および昇降装置17を備える。バックアッププレート16は、搬送機構11により位置決めされた基板91の下面に対向して配置される。バックアッププレート16は、Z方向に昇降可能に基台9に設けられる。本実施形態において、バックアッププレート16は、矩形状に形成される。バックアッププレート16の上面には、バックアップ部材50が着脱可能に配置される。
【0029】
昇降装置17は、バックアッププレート16を基台9に対して昇降させる。本実施形態において、昇降装置17は、ロッド18およびシリンダ本体19を有する複数のエアシリンダにより構成される。各エアシリンダのロッド18は、バックアッププレート16の四隅に着脱可能に固定される。各エアシリンダのシリンダ本体19は、空気圧に応じてロッド18をZ方向に進退させる。
【0030】
バックアップ装置15の昇降装置17は、基板91が搬入または搬出される際に基板91の裏面からバックアップ部材50を下方に退避させる。これにより、昇降装置17は、基板91の裏面に装着された部品(裏面部品)とバックアップ部材50とが干渉しない準備高さTpまでバックアッププレート16を下降させる(
図3の二点鎖線にて示す)。また、昇降装置17は、装着処理の実行中において、バックアッププレート16をバックアップ高さTb(
図3の実線にて示す)まで上昇させる。これにより、バックアップ装置15は、基板91を下方から押し上げて支持する。
【0031】
ここで、バックアップ部材50は、バックアッププレート16の上面に脱着可能に配置される。本実施形態において、バックアップ部材50には、先端部が比較的硬い部材(例えば金属部材)で構成されているハードピン51と、先端部が比較的軟らかい部材(例えばゴム部材)で構成されているソフトピン52とが含まれる。ハードピン51およびソフトピン52は、下端に位置する基部に磁石が埋設され、磁力によいバックアッププレート16に固定される。また、ハードピン51およびソフトピン52は、基部の上方に同形状の係合部を形成される。係合部は、装着ヘッド33に取り付けられた保持部材と係合する。
【0032】
5.バックアップ部材50の配置作業の概要
部品装着機2の制御装置60は、例えば所定の基板製品に対応する装着処理(次回の対基板作業)を実行する前に、バックアップ部材50の移動装置として機能する部品移載装置30を用いて、指令情報M1に基づくバックアップ部材50の配置作業を実行する。配置作業を実行する目的は、例えば基板91の寸法や装着する部品の数量や位置に応じて変動し得るバックアップ部材50の種別および配置すべき位置に対応するためである。
【0033】
なお、基板91の寸法が大きく、また装着時に基板に比較的強い押付力が加えられるなどの事情により基板の撓みが懸念される場合に、バックアップ部材50としては、基板の下面における被支持部の変位を最小限にできるハードピン51が適している。一方で、装着処理においてバックアップ部材50により支持される基板の下面に前工程で部品が既に装着されている場合に、バックアップ部材50としては、基板の下面の凹凸を吸収しつつ支持可能なソフトピン52が適している。
【0034】
そのため、部品装着機2は、生産する基板製品の種類が変わる際に、段取り作業の一つとしてバックアップ部材50の配置作業を必要に応じて変更する。この配置作業には、バックアップ部材50を基板91の下方に位置するバックアッププレート16に固定することの他に、バックアップ部材50の除去(基板91の支持には用いられない予備のバックアップ部材50が載置される退避領域Ae(
図4を参照)への移動)が含まれる。
【0035】
制御装置60は、バックアップ部材50の配置作業を実行するに際して、装着ヘッド33にバックアップ部材50を保持可能な保持部材を取り付ける。上記の保持部材は、例えば複数の吸着ノズル34を収容するノズルステーション(図略)に収容され、装着ヘッド33に取り付けられている吸着ノズル34と交換される。制御装置60は、部品移載装置30を駆動させて、対象のバックアップ部材50を指令情報M1により示される位置に適宜移動させる。
【0036】
ここで、上記のような構成からなる部品装着機2は、段取り作業においてバックアップ部材50の配置作業を全て自動で実行することが可能である。具体的には、制御装置60は、次回の装着処理の段取り作業に際して、上記の指令情報M1、今回の装着処理に使用されたバックアップ部材50ごとの現在位置を示す位置情報M2、および退避領域Aeに載置された予備のバックアップ部材50の現在位置を示す予備情報M3に基づいて、バックアップ部材50を個々に移動させる。
【0037】
そして、制御装置60は、全てのバックアップ部材50の配置が完了した後に、ノズルステーションに保持部材を収容させて配置処理を終了する。また、制御装置60は、部品装着機2の機内においてバックアップ部材50が載置される対象領域At、および退避領域Aeに配置されたバックアップ部材50の現在位置を示す位置情報M2および予備情報M3を更新し、記憶部61に記憶する。これにより、制御装置60は、作業者による移動を介さずにバックアップ部材50の配置作業を行うことができる。
【0038】
しかしながら、上記の配置作業において移動対象となるバックアップ部材50が多かったり、移動距離が比較的長かったりする場合には、配置作業の所要時間が長くなるおそれがある。これに対して、作業者による配置作業は、一度に複数のバックアップ部材50移動させることが可能である点で効率的であるものの、バックアップ部材50を所定位置に所定の許容誤差に収まるように配置することに時間を要する。
【0039】
そこで、本実施形態は、作業者による効率的なバックアップ部材50の仮配置を許容しつつ、移動装置による正確な所定位置へのバックアップ部材50の再配置を行う構成を採用する。具体的には、制御装置60には、
図2に示すように、バックアップ部材50の配置作業を支援する配置支援装置70が組み込まれている。配置支援装置70は、一例として作業者による効率的な配置作業を部分的に取り入れ、段取り作業の効率化を図るものである。
【0040】
6.配置支援装置70の詳細構成
6-1.画像処理部71
配置支援装置70は、画像処理部71を備える。画像処理部71は、対象領域Atの全域をカメラにより撮像して取得された画像データに基づいて、対象領域Atにおけるバックアップ部材50の現在位置を認識する認識処理を実行する。ここで、対象領域Atとは、
図4に示すように、移動装置(本実施形態において、部品移載装置30)によるバックアップ部材50の可動領域Am(即ち、バックアッププレート16の上面)のうち基板91を支持するためにバックアップ部材50が載置され得る領域に相当する。
【0041】
また、上記のカメラとしては、移動台32に設けられた基板カメラ42または検査カメラ43を適用することができる。認識処理に必要とされる画像データの解像度や撮像範囲に応じて、適用する基板カメラ42および検査カメラ43を切り換えてもよい。また、画像処理部71は、例えばカメラ視野が広い検査カメラ43の撮像による第一の画像データを取得し、バックアップ部材50の概ねの現在位置を認識してもよい。そして、バックアップ部材50の概ねの位置に基づいて位置決めされた基板カメラ42の撮像による第二の画像データを取得し、バックアップ部材50の正確な現在位置を認識してもよい。また、画像処理部71は、カメラ視野が比較的狭い基板カメラ42を移動させながら撮像して取得された画像データに基づいて、認識処理を実行してもよい。
【0042】
なお、画像処理部71は、上記の認識処理において、まず取得した画像データに対して二値化処理やエッジ検出処理などを実行し、上方視におけるバックアップ部材50の特徴部の画像データ内の位置を認識する。そして、画像処理部71は、上記の画像データを取得した際の移動台のXY方向の位置情報と、バックアップ部材50の特徴部の画像データ内の位置とに基づいて、機内におけるバックアップ部材50の現在位置を算出する。画像処理部71は、
図5に示すように、算出したバックアップ部材50の現在位置を仮位置情報M4に記憶する。
【0043】
ここで、画像処理部71は、種々のタイミングで上記の認識処理を実行する。例えば、画像処理部71は、対象領域Atに作業者によるバックアップ部材50の仮配置が実行された場合に、認識処理を実行する。つまり、配置作業において作業者による仮配置が許容される場合には、その作業によってバックアップ部材50が指定の位置に指定の数量だけ概ね配置された後に、画像処理部71は、実際の位置、数量、および種別を認識すべく認識処理を実行する。
【0044】
また、画像処理部71は、バックアップ部材50ごとの現在位置を示す位置情報M2の信頼度が所定値以下となった場合に、認識処理を実行してもよい。ここで、位置情報M2の信頼度とは、何らかの原因によってバックアップ部材50が変位(転倒を含む)または増減していないことの確からしさを示す指標である。本実施形態において、画像処理部71は、認識処理により位置情報M2が最後に更新されてから現在までに部品装着機2の機内に作業者がアクセス可能な状態があった場合に、位置情報M2の信頼度が所定値以下となったものとして、認識処理を実行する。
【0045】
部品装着機2の機内に作業者がアクセス可能な状態とは、例えば部品装着機2の前面扉が開閉されたり、部品装着機2の電源がOFFとされたりし、作業者が機内において作業可能な状態である。このような状態を経ると、バックアップ部材50が変位または増減する可能性が増大するため、位置情報M2の信頼度は低下する。そこで、画像処理部71は、このような場合に、実際に作業者によるバックアップ部材50の移動の有無に関わらず、認識処理を実行するようにしてもよい。
【0046】
また、バックアップ部材50は、装着処理の実行に伴う振動や、個別に相違し得る基板91の撓み量などよって、基板91から外力を受けて僅かに変位し得る。そこで、画像処理部71は、位置情報M2が最後に更新されてから現在までの経過時間や、部品装着機2に生じた事象(前面扉の開閉など)、実行した装着処理などに応じて信頼度を算出し、信頼度が基準である所定値より高く維持されているかを監視してもよい。
【0047】
ここで、画像処理部71は、バックアップ部材50の可動領域Amのうち少なくとも対象領域Atの全域が含まれるように認識処理を実行する。これに対して、画像処理部71は、バックアップ部材50の可動領域Amの全域が含まれるように認識処理を実行してもよい。つまり、画像処理部71は、対象領域Atの全域に加えて、退避領域Aeの全域が含まれるように認識処理を実行する。本実施形態において、退避領域Aeは、
図4に示すように、対象領域Atに隣接する領域であり、部品装着機2の機内において、搬送される基板91の下方から前後方向にずれた位置に設けられる。
【0048】
なお、上記のように画像処理部71が退避領域Aeを含めた可動領域Amの全域を認識処理の対象とするのは、例えば位置情報M2と同様に予備情報M3の信頼度が低下したなどの事情が想定される。なお、予備情報M3の信頼度は、位置情報M2の信頼度と同一であるものとして算出してもよいし、位置情報M2の信頼度とは独立して算出してもよい。
【0049】
また、画像処理部71は、対象領域Atのみを認識処理の対象とする通常モードと、可動領域Amの全域を認識処理の対象とする全域モードとを、作業者の要求または位置情報M2の信頼度に基づいて切り換えて、認識処理を実行してもよい。このような構成によると、撮像および画像処理される領域の大きさが必要に応じて切り換えられるため、画像処理の効率化を図ることができる。
【0050】
さらに、画像処理部71は、認識処理において、バックアップ部材50が載置されるバックアッププレート16の上の異物の有無を認識してもよい。なお、上記の異物とは、正常に載置されているバックアップ部材50以外のものであり、バックアップ部材50の載置を妨げ得るものである。異物には、例えばバックアッププレート16上に落下した部品や、転倒したバックアップ部材50が含まれる。
【0051】
6-2.目標設定部72
配置支援装置70は、目標設定部72を備える。目標設定部72は、画像処理部71による認識処理の結果(即ち、仮位置情報M4)、および次回の対基板作業に設定されたバックアップ部材50の配置位置を示す指令情報M1に基づいて、バックアップ部材50ごとの移動先である目標位置を設定する。本実施形態において、目標設定部72は、さらに退避領域Aeに載置された予備のバックアップ部材50の現在位置を示す予備情報M3に基づいて、バックアップ部材50ごとの目標位置を設定する。
【0052】
詳細には、目標設定部72は、
図5に示すように、例えば作業者の仮配置によってバックアッププレート16に載置されたバックアップ部材50の現在位置を示す仮位置情報M4と、指令情報M1とに基づいて、仮配置された複数のバックアップ部材50について指令情報M1における何れの配置位置へと移動させるかを設定する。これにより、バックアップ部材50ごとの移動先である目標位置が設定される。原則的に、目標設定部72は、それぞれのバックアップ部材50の移動距離が最短となるように、目標位置を設定する。
【0053】
また、仮位置情報M4においてバックアップ部材50に不足がある場合には、
図5に示すように、必要なバックアップ部材50を退避領域Aeから補うべく予備のバックアップ部材50の目標位置を設定する。一方で、仮位置情報M4においてバックアップ部材50が過剰である場合には、不要なバックアップ部材50を退避領域Aeに退避させて予備のバックアップ部材50とするように目標位置を設定する。
【0054】
6-3.配置部73
配置支援装置70は、配置部73を備える。配置部73は、目標位置へとバックアップ部材50を移動させる。本実施形態において、配置部73は、移動装置(部品移載装置30)のヘッド駆動装置31および装着ヘッド33の動作を制御することによって目標位置へとバックアップ部材50を移動させる再配置処理を実行する。これにより、仮配置されていたバックアップ部材50のうち基板91の支持に用いられるものは、それぞれ指令情報M1に示される配置位置へと移動される。
【0055】
また、対象領域Atn仮配置されていたものの基板91の支持に不要と判断されたものは、退避領域Aeへと移動され予備のバックアップ部材50とされる。さらに、配置部73は、上記のように、仮配置されたバックアップ部材50を目標位置に移動させた後に、対象領域Atにおけるバックアップ部材50の現在位置を示す位置情報M2、および退避領域Aeにおけるバックアップ部材50の現在位置を示す予備情報M3を更新する。
【0056】
6-4.指示部74
配置支援装置70は、指示部74を備える。指示部74は、対象領域Atに作業者によるバックアップ部材50の仮配置の作業指示をするとともに、作業指示においてバックアップ部材50の数量、種類、および配置位置の少なくとも一つを案内する。ここで、配置支援装置70は、上記のように、段取り作業の効率化を図るために、作業者による仮配置を許容する。そこで、指示部74は、作業者による仮配置の作業指示を行う際に、指令情報M1に基づく案内を行う。
【0057】
詳細には、指示部74は、例えば次回の装着処理に設定されたバックアップ部材50の配置位置を作業者にテキストや画像により案内する。その際に、指示部74は、バックアップ部材50の数量や種類を併せて案内する。なお、この案内は、表示装置62に表示してもよいし、作業者が所持する端末装置に表示させてもよい。これにより、作業者は、バックアップ部材50を手作業により移動させて、指令情報M1における配置位置の近傍にバックアップ部材50を効率的に仮配置することができる。
【0058】
ここで、生産ラインLnを構成する複数の部品装着機2は、直接的にまたはホストコンピュータ80を介して間接的に連携し、次に生産予定である基板製品の段取り作業を必要する。そして、それぞれの部品装着機2は、自機の段取り作業が終了した時点で、仮に他の部品装着機2の段取り作業が終了していなくても自機に割り当てられた装着処理を実行することが可能である。
【0059】
本実施形態において、指示部74は、作業指示において、生産ラインLnの上流側から順にバックアップ部材50の仮配置を行うように指示する。このような構成によると、作業者による仮配置が上流側から順次行われ、この仮配置が終了するとバックアップ部材50の再配置が順次行われる。さらに、バックアップ部材50の再配置が終了して段取り作業が終了すると、その部品装着機2による装着処理が開始される。
【0060】
つまり、上記のような手順で仮配置が行われると、生産ラインLnの全体では仮配置、再配置、および装着処理が並行に実行し得る状態となる。つまり、作業者は、概ねの位置へのバックアップ部材50の配置が許容されるため、効率的な仮配置を行うことができる。また、配置支援装置70は、画像処理部71による認識処理や目標設定部72による目標位置の設定処理、配置部73による再配置処理を要するものの、これらは下流側の仮配置作業、および上流側の装着処理と並行して実行されるため、全体としては段取り作業の効率化を図ることができる。
【0061】
6-5.報知部75
配置支援装置70は、報知部75を備える。報知部75は、画像処理部71によりバックアッププレート16の上に異物があると認識された場合に、作業者に報知する。ここで、画像処理部71による認識処理において、バックアッププレート16の上の異物の有無が認識される。そして、報知部75は、認識処理の結果に基づいて、異物の有無、異物がある場合には位置や大きさを併せて報知してもよい。
【0062】
また、報知部75は、上記の報知処理において、各種情報を表示装置62に表示してもよいし、作業者が所持する端末装置に表示させてもよい。これにより、作業者は、バックアップ部材50の載置を妨げ得る異物を早期に発見し、除去することができる。結果として、異物による生産効率の低下を防止することができる。
【0063】
7.バックアップ部材50の配置支援方法
バックアップ部材50の配置支援について、
図6および
図7を参照して説明する。生産ラインLnは、今回の基板製品の生産が上流側から順次終了すると、次回の基板製品の生産のための段取り作業を必要とすることがある。この場合に、配置支援装置70は、
図6に示すような各種処理を実行して、バックアップ部材50の配置作業を支援する。
【0064】
配置支援装置70は、基板製品の種類、および生産順序を示す生産計画に基づいて、次回の基板製品の生産に応じた指令情報M1を取得する(S11)。次に、指示部74は、作業者に対して仮配置の作業指示をする(S12、作業指示ステップ)。このとき、作業者には、バックアップ部材50の数量、数量、および配置位置が案内される。作業者は、作業指示および案内の内容を参照して、生産ラインLnの上流側から順にバックアップ部材50の仮配置を行う(S13)。
【0065】
配置支援装置70は、自己が組み込まれた部品装着機2に対する仮配置が終了した後に、バックアップ部材50の再配置処理を実行する(S14)。部品装着機2は、バックアップ部材50の再配置処理(S14)を含む段取り作業が終了した場合に、自機に割り当てられた装着処理を開始する。具体的には、部品装着機2は、上流側からの基板91の搬入を許容し、基板搬送装置10による基板91の搬送および位置決めを行う。そして、部品装着機2は、部品供給装置20により供給される部品を採取するとともに、基板91の所定の装着位置に部品を装着するピックアンドプレースサイクルを繰り返す。
【0066】
ここで、上記の再配置処理(S14)では、
図7に示すように、先ず画像処理部71は、設定されている運転モードの種類を判定する(S21)。運転モードが通常モードの場合には(S21:Yes)、配置支援装置70は、対象領域Atの撮像を指令する(S22)。一方で、運転モードが全域モードの場合には(S21:No)、配置支援装置70は、可動領域Amの全域の撮像を指令する(S23)。画像処理部71は、撮像処理(S22,S23)により取得された画像データに対して、バックアップ部材50の現在位置を認識する認識処理を実行する(S24、画像処理ステップ)。
【0067】
画像処理部71は、認識処理(S24)において、仮配置されたバックアップ部材50の画像データ内の位置を認識するとともに、画像データを取得した際の移動台のXY方向の位置情報に基づいて、機内におけるバックアップ部材50の現在位置を算出する。画像処理部71は、算出したバックアップ部材50の現在位置を仮位置情報M4に記憶する(
図5を参照)。
【0068】
なお、画像処理部71による認識処理において、バックアッププレート16の上の異物の有無が認識される。異物が認識されなかった場合には(S25:Yes)、目標設定部72は、指令情報M1、および仮位置情報M4に基づいて、バックアップ部材50ごとの移動先である目標位置を設定する(S26、目標設定ステップ)。なお、目標位置の設定処理では、運転モードが通常モードである場合には(S21:Yes)、さらに予備情報M3に基づいてバックアップ部材50ごとの目標位置を設定する。
【0069】
続いて、配置部73は、目標位置へとバックアップ部材50を移動させる(S27、配置ステップ)。配置部73は、移動装置として機能するヘッド駆動装置31および装着ヘッド33の動作を制御することによって目標位置へとバックアップ部材50を移動させる。これにより、対象領域Atに仮配置されていたバックアップ部材50を含む可動領域Am内の全てのバックアップ部材50のうち基板91の支持に用いられるものは、それぞれ指令情報M1に示される配置位置へと移動される。残りのバックアップ部材50は、基板91の支持に不要とされ、退避領域Aeの所定位置に移動される。
【0070】
最後に、配置部73は、対象領域Atにおけるバックアップ部材50の現在位置を示す位置情報M2、および退避領域Aeにおけるバックアップ部材50の現在位置を示す予備情報M3を更新する(S28)。これにより、制御装置60は、可動領域Amにおける複数のバックアップ部材50のそれぞれの位置を把握することができる。
【0071】
また、画像処理部71による認識処理(S24)において、バックアッププレート16の上に異物が認識された場合には(S25:No)、報知部75は、異物があること、および異物の位置や大きさを併せて報知する(S29、報知ステップ)。これにより、作業者は、表示装置62や所持する端末装置を介して、異物の除去を促される。なお、配置支援装置70は、異物が除去されたことを作業者より通知されると、再配置処理(S14)を最初から再度実行する。
【0072】
上記のような構成によると、バックアップ部材50の配置作業において、対象領域Atにおける作業者によるバックアップ部材50の任意位置への配置(仮配置)を許容することができる。これにより、例えば作業者が次回の対基板作業(装着処理)に設定されたバックアップ部材50の配置位置の近傍にバックアップ部材50を仮配置すれば、移動装置が対象領域Atと退避領域Aeとの間でバックアップ部材50を個々に移動させる態様と比較して、バックアップ部材50の移動距離を短縮することができる。結果として、バックアップ部材50の配置作業の所要時間を短縮して、段取り作業の効率化を図ることができる。
【0073】
8.実施形態の変形態様
8-1.指示部74について
本実施形態において、指示部74は、段取り作業に際して、作業者に対して仮配置の作業指示をするものとした(S12、作業指示ステップ)。これに対して、配置支援装置70は、作業者に対する指示を省略し、作業者によるバックアップ部材50の任意位置への配置を許容してもよい。
【0074】
また、指示部74は、上記のように仮配置の前の作業指示に加えて、例えば認識処理(S24)や目標設定処理(S26)の後に、作業者に対して作業指示をさらに行ってもよい。つまり、配置支援装置70は、認識処理や目標設定処理の結果において、複数のバックアップ部材50の移動量が基準値を超える場合、または必要なバックアップ部材50が不足する場合に、指示部74により再度の仮配置を行うように作業指示をしてもよい。
【0075】
8-2.対基板作業機について
実施形態において、対基板作業機は、基板91に部品を装着する部品装着機2であるものとして説明した。これに対して、配置支援装置70および配置支援方法は、種々の対基板作業機のうち所定の対基板作業の実行中においてバックアップ部材50を用いて基板91を支持するものに適用することができる。具体的には、対基板作業機は、基板91にはんだを印刷する印刷機としてもよい。なお、部品装着機2や印刷機などの対基板作業機において、バックアップ部材50を移動させる移動装置は、それぞれの機内に配置される専用装置であってもよい。
【0076】
8-3.その他
実施形態において、画像処理部71、目標設定部72、配置部73、指示部74、および報知部75の各部は、制御装置60に組み込まれる構成とした。これに対して、上記の各部71-75の少なくとも一部は、制御装置60の外部に設けられてもよい。例えば、上記の各部71-75の一部または全部は、対基板作業機と通信可能なホストコンピュータ80や専用の外部装置に組み込まれる構成としてもよい。これに伴って、各種情報M1-M4は、各部71-75がアクセス可能な記憶装置に記憶される。
【符号の説明】
【0077】
1:印刷機(対基板作業機)、 2:部品装着機(対基板作業機)、 10:基板搬送装置、 15:バックアップ装置、 16:バックアッププレート、 30:部品移載装置(移動装置)、 31:ヘッド駆動装置、 32:移動台、 33:装着ヘッド、 34:吸着ノズル、 41:部品カメラ、 42:基板カメラ、 43:検査カメラ、 50:バックアップ部材、 60:制御装置、 61:記憶部、 62:表示装置、 70:配置支援装置、 71:画像処理部、 72:目標設定部、 73:配置部、 74:指示部、 75:報知部、 80:ホストコンピュータ、 91:基板、 M1:指令情報、 M2:位置情報、 M3:予備情報、 M4:仮位置情報、 Am:可動領域、 At:対象領域、 Ae:退避領域、 Ln:生産ライン