(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/21 20060101AFI20231214BHJP
G01N 21/41 20060101ALI20231214BHJP
G01N 21/552 20140101ALI20231214BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
G01N21/41 101
G01N21/552
(21)【出願番号】P 2022565873
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(86)【国際出願番号】 KR2020012705
(87)【国際公開番号】W WO2022059824
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0121427
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516151597
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ スタンダーズ アンド サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヒョン モ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェガル、ウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨン ジェ
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2056971(KR,B1)
【文献】特開平11-326193(JP,A)
【文献】特開2018-025528(JP,A)
【文献】国際公開第2019/197308(WO,A1)
【文献】特開2006-133744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 37/00
G01J 3/00 - G01J 3/52
G01J 4/00 - G01J 4/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台と、前記支持台上に形成され、試料を検出するための生体結合物質が固定化された試料検出層とが形成された少なくとも1つ以上の微細流路を含む微細流路構造体;
前記試料を含む緩衝溶液を前記微細流路に注入する試料注入部;
プリズム、及び前記プリズムの底面に鏡面反射コーティングされて形成される反射体を備えるプリズムユニット;
偏光(polairzed light)を発生させる偏光発生部;及び、
反射光の偏光変化を検出する偏光検出部;を含み、
前記偏光は、前記プリズムを透過して、前記プリズムと前記緩衝溶液とが接するプリズム-緩衝溶液の界面に入射する入射光を形成し、
前記入射光の一部が前記プリズム-緩衝溶液の界面で反射された後、前記プリズムを透過して第1反射光が形成され、前記入射光の他の一部が前記プリズム-緩衝溶液の界面を透過した後、前記試料検出層と前記反射体によって複数回の反射及び入射を繰り返す多重反射を行った後に、前記プリズムを透過して第2反射光が形成され、
前記第1反射光と前記第2反射光とが前記多重反射によって空間的に完全に分離される
ことを特徴とする多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置。
【請求項2】
前記入射光の他の一部は、前記緩衝溶液を透過してp-偏光波無反射条件を満たす入射角で前記試料検出層に入射する透過光を形成し、前記透過光は、前記試料検出層で反射され、前記プリズム-緩衝溶液の界面で前記反射体によって鏡面反射されることで、前記多重反射を行った後に前記プリズムを透過して第2反射光を形成する
請求項1に記載の多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置。
【請求項3】
前記試料検出層は、
基板、
前記基板の上部に形成された誘電体薄膜、及び、
前記誘電体薄膜の上部に形成された吸着層を含み、
前記吸着層には、前記試料を検出するための前記生体結合物質が固定化された
請求項2に記載の多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置。
【請求項4】
前記多重反射により前記試料で光が複数回反射して、前記p-偏光波無反射反射率が低くなる場合、前記誘電体薄膜の厚さを増加させることで、前記透過光の信号強度低下を防止する
請求項3に記載の多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置。
【請求項5】
前記多重反射により前記試料で光が複数回反射して、前記p-偏光波無反射反射率が低くなる場合、s-偏光波無反射条件を満たす入射角で前記試料検出層に入射する前記透過光を形成することで、前記透過光の信号強度低下が防止される
請求項3に記載の多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置。
【請求項6】
前記基板は、シリコン、誘電体又は半導体のうちから選択されるいずれか1つ以上の物質で形成された
請求項3に記載の多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置。
【請求項7】
前記偏光検出部は、前記第2反射光の偏光変化に基づいて、前記吸着層に吸着された前記試料の厚さ又は濃度を算出する
請求項3に記載の多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置。
【請求項8】
前記偏光発生部は、前記プリズムを介して入射する前記入射光の光量を調節し、前記プリズム-緩衝溶液の界面上に形成される前記入射光のビームスポット(beam spot)の形態を制御する
請求項1に記載の多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置。
【請求項9】
前記試料注入部は、空気や気体に含まれたバイオマーカーを測定するために、前記緩衝溶液の代わりに気体を前記微細流路に注入する
請求項1に記載の多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置。
【請求項10】
前記気体が前記微細流路に注入される場合、前記偏光が前記プリズムを透過して、前記プリズムと前記気体とが接するプリズム-気体の界面に入射する入射光が形成され、
前記入射光の一部が前記プリズム-気体の界面で反射された後、前記プリズムを透過して前記第1反射光が形成される
請求項9に記載の多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置。
【請求項11】
請求項1に記載の多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定装置を用いた測定方法
であって、
試料注入部が前記試料を検出するための前記生体結合物質が固定化された前記試料検出層が形成された少なくとも1つの微細流路を含む前記微細流路構造体に緩衝溶液を注入する第1段階;
前記緩衝溶液に含まれた前記試料が前記試料検出層の抗体に吸着する第2段階;
前記偏光発生部が偏光を発生させる第3段階;
前記偏光が前記プリズムを透過して、前記プリズムと前記緩衝溶液とが接する前記プリズム-緩衝溶液の界面に入射する入射光を形成する第4段階;
前記入射光の一部は、前記プリズム-緩衝溶液の界面で反射されて前記プリズムを透過する前記第1反射光を形成し、前記入射光の他の一部は、前記緩衝溶液を透過して偏光波無反射条件を満たす入射角で前記試料検出層に入射する透過光を形成する第5段階;
前記透過光は、前記試料検出層で反射され、前記プリズム-緩衝溶液の界面で前記反射体によって鏡面反射されることで複数回の反射及び入射を繰り返す多重反射を行った後に、前記プリズムを透過して第2反射光を形成する第6段階;
前記偏光検出部が前記第2反射光の偏光変化を検出する第7段階;及び、
前記第2反射光の偏光変化に基づいて前記試料検出層に吸着された試料の濃度を検出する第8段階;を含み、
前記プリズムユニットの外部に放出された前記第1反射光と前記第2反射光とが前記多重反射によって空間的に完全に分離される
ことを特徴とする多重反射液浸シリコン基盤の微細流路測定
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重反射シリコン基盤の液浸微細流路測定装置及び測定方法に関し、より詳しくは、多重反射により試料検出層で反射される第1反射光と、プリズム-緩衝溶液の界面で反射される第2反射光とが完全に分離されるようにし、多重反射により複数回入射させることで測定感度を増幅させるための、多重反射シリコン基盤の液浸微細流路測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射率測定法(Reflectometry)とエリプソメトリー(Ellipsometry)は、試料の表面で反射された反射光の反射率変化又は偏光状態を測定し、その測定値を分析することで、試料の厚さや光学的物性を求める光分析技術である。
【0003】
これを用いた計測装備として、反射率計(Reflectometer)とエリプソメータ(Ellipsometer)がある。これらは、半導体産業のナノ薄膜製造工程において、様々なナノオーダーの薄膜の厚さと物性を評価することに活用されている。また、バイオ産業にその活用範囲を広げて、タンパク質、DNA、ウイルス、新薬物質などのようなバイオ物質の界面分析に応用しようとする努力が続いている。
【0004】
従来の反射率計は、数ナノメートル(nm)以上の大きさを有するナノ薄膜の厚さと物性を評価するには十分であるが、約1~0.001ナノメートル範囲の感度が必要な低分子バイオ物質の分析においては測定感度が低く、信頼性が低下するという問題点がある。反射率計に比べて、エリプソメータの場合は、0.01nm以下の測定感度を有し、特に高屈折率の半導体基板上の半導体に比べて相対的に屈折率の小さい酸化膜の厚さ測定のように屈折率対比が大きい条件で測定感度が高い。
【0005】
しかし、エリプソメータの場合、低分子バイオ物質まで分析するためには感度が向上した測定方法が求められる。
【0006】
バイオ物質の分析時に測定感度を改善するための従来の技術として、反射率測定法と表面プラズモン共鳴(SPR;Surface Plasmon Resonance)技術が混合した形態の表面プラズモン共鳴センサ(以下、「SPRセンサ」という)がある。
【0007】
表面プラズモン共鳴(SPR)現象は、光波(light waves)によって金属表面に存在する電子が励起されて、表面の縦方向(normal)に集団揺動(collective vibration)し、このとき光エネルギーが吸収されることを言う。SPRセンサは、光の偏光特性に敏感な表面プラズモン共鳴現象を用いて、金属表面に接するナノ薄膜の厚さ及び屈折率の変化を測定できるだけでなく、バイオ物質の吸着濃度の変化を、蛍光物質を用いない非標識方式(non-labeling)でリアルタイムに測定できると知られている。
【0008】
SPRセンサは、その構造において、ガラスなどの材質に数十ナノメートルの金属薄膜を塗布し、その上に生体物質が接合できるセンサを作り、緩衝溶液に溶けている試料がセンサに接合することになると、共鳴角が変わる原理を用いたものであり、共鳴角は反射率の測定により行われる。SPRセンサに光が入射すると、ガラス材質が入射媒質となり、生体物質が接合する薄膜層を通過して最終的に緩衝溶液が基板に該当する。
【0009】
このような構造では、測定しようとする試料の接合による生体薄膜層の変化と同様に、基板物質に該当する緩衝溶液の屈折率が共鳴角の移動に直接的に影響を与える。したがって、純粋な接合動特性だけを測定するためには、緩衝溶液の屈折率を独立に測定して補正しなければならない。
【0010】
緩衝溶液の屈折率変化を補正し、試料と緩衝溶液との間の拡散による誤差を防止するために、精度良いバルブ装置と空気注入装置、2以上のチャンネルを用い、1つを基準チャンネルとして用いて補正する方法などが用いられている。しかし、緩衝溶液の屈折率変化によるSPR角度変化と、純粋な吸着及び解離特性によるSPR角度変化とを区分しにくいため、常に測定誤差要因として作用することがある。結果として、従来のSPRセンサは、上記のような測定方法の限界によって、低分子のような分子量の小さい物質の吸着及び解離特性の測定において根本的な困難がある。
【0011】
また、従来のSPRセンサは、表面プラズモン共鳴のために、金(Au)、銀(Ag)のような貴金属の金属薄膜が用いられるため、センサの製作コストが高くなる。また、金属薄膜は、製作工程により表面粗さにムラがあり、屈折率のばらつきが大きく、不安定な光特性によってバイオ物質の定量的な測定が困難であり、基準チャンネルとの相対的な比較時に、互いに異なる位置での異なる感度特性による誤差を含むという問題点がある。
【0012】
SPRセンサの短所を改善するために、シリコンなどの基板物質上に生体物質接合センサ層を設け、液浸微細流路の環境下で緩衝溶液を通過して基板物質で反射された光の振幅と位相を、p-偏光波無反射条件でエリプソメトリー法により測定すると、測定された振幅が緩衝溶液の屈折率変化に敏感でなく、生体物質の接合動特性に敏感な信号を得ることができる。液浸微細流路の環境下で基板物質に吸着する生体物質の接合特性を測定する場合、SPR測定とは逆に、緩衝溶液は入射媒質になり、生体物質吸着層を通過した光が基板物質で反射されることになる。
【0013】
このような測定条件では、測定された振幅を現す楕円計測角Ψが、緩衝溶液である入射媒質の屈折率変化には敏感でなく、生体薄膜と基板物質の変化にのみ敏感な変化を示す。シリコンのような屈折率の安定した基板の場合、測定された楕円計測角Ψは、生体薄膜の変化にのみ敏感な信号を得ることができる。
図1のようなプリズム入射構造を用いる場合、位相を示す楕円計測角 Δ は、緩衝溶液の屈折率にのみ敏感な信号を示して、生体薄膜の厚さと緩衝溶液の屈折率を同時に測定することができる。しかし、プリズムのような平面入射構造と平行な基板を用いる場合、プリズムと緩衝溶液との界面で反射される光を除去し、基板で反射される光のみ用いなければならない。試料の使用量を最小化するためには、プリズム表面と基板物質との間隔を減らさなければならず、この場合、反射する2つの光が極めて近くの距離に位置しているため、分離が困難であり測定誤差として作用する。したがって、プリズムのような平面入射型構造において、プリズムと緩衝溶液との界面で反射される光と、センサを含む基板物質で反射される光とを区分するための新しい構造の測定方法が求められている。
【0014】
図1は、先行特許による生体物質接合特性測定センサを示す断面図である。
図1に示されたように、先行特許による生体物質接合特性センサは、おおよそ、プリズム(100)、微細流路構造体(200)、偏光発生部(300)、及び偏光検出部(400)で構成される。このとき、先行特許による生体物質接合特性センサの微細流路構造体(200)は、基板(510)又は誘電体薄膜(520)上に吸着層(530)を形成し、液浸の微細流路(210)環境を形成する。このとき、バイオ物質の試料(1)が溶解された緩衝溶液(50)を微細流路(210)に注入すると、吸着層(530)の表面に形成されたリガンド(ligand、2)物質にバイオ物質が吸着することで所定の厚さの吸着層を形成する。
【0015】
また、偏光発生部(300)で発生した偏光入射光は、プリズムの入射面(110)を介して緩衝溶液(50)と基板(510)との界面にp-偏光波無反射条件を生じる角度に入射する。このとき、基板(510)で反射された反射光は、試料(1)の吸着層及び緩衝溶液の屈折率に関する光学データを含む。すなわち、試料(1)がリガンド(2)に吸着及び解離される過程で、吸着濃度、吸着層の厚さ又は屈折率、緩衝溶液の屈折率のような分子吸着及び解離動特性(binding and dissociation kinetics)が変化し、これによって測定された楕円計測角が変わることになる。また、光学データを含む反射光は、偏光検出部(400)で検出される。このとき、偏光検出部(400)は、反射光の偏光成分による変化、すなわち楕円計測角を測定することで、試料(1)の分子吸着及び解離動特性と、緩衝溶液の屈折率を把握することができる。
【0016】
図2には、試料(1)が金属薄膜(30)に吸着される過程を示す吸着曲線と、解離される過程を示す解離曲線が示されている。吸着率定数(association rate constant、ka)が大きいほど、バイオ物質が早く吸収されることを意味し、解離率定数(dissociation rate constant、kd)が小さいほど、バイオ物質が遅く解離されることを意味する。
【0017】
すなわち、吸着率定数と解離率定数を測定することで、平衡状態の解離定数(KD=kd/ka)を求めることができる。例えば、発癌抑制剤として使用可能な低分子新薬候補物質が、発癌誘発因子を含むタンパク質に吸着又は脱着する特性を測定することにより、新薬として使用可能であるか否かを判断することができる。
【0018】
以下、
図3及び
図4を参考して、先行特性によるバイオ物質分析用センサの特徴及び限界について説明する。
図3のようなプリズム入射構造を用いて光を入射させる場合、θ
2=72.14゜程度の傾斜角で界面に入射し、緩衝溶液の屈折率変化(0.0002)により、プリズムから緩衝溶液に入射する場合、-0.026゜程度の角度変化が生じられる。p-偏光波無反射条件は、θ
2=72.14゜付近であり、緩衝溶液の屈折率変化による現在の角度は、0.026゜小さい72.114゜に変わるので、
図4に示されたように、Ψ、△のグラフが示され、屈折率変化により、p-偏光波無反射角度はほぼ変わらないため、0.026゜小さい角度である72.114゜でΨ、△の値を測定することになる。
【0019】
図4において、緩衝溶液(50)の屈折率が互いに異なる場合の実線グラフは、緩衝溶液(50)の屈折率が1.3330であり、点線(dashdot line)グラフは、緩衝溶液(50)の屈折率1.3332に該当する。プリズム構造を用いる場合、緩衝溶液の屈折率変化により、
図4でのようにΨ値の変化はほぼ変化が見られず、一方、△は大きい変化が見られる。すなわち、位相差に関する楕円計測定数△は、緩衝溶液の屈折率変化にのみ敏感な変化を示し、接合特性にはほぼ影響を受けないため、緩衝溶液の屈折率変化のみを高感度に測定できるようになる。楕円計測定数△の変化は、薄膜物質の厚さが極めて小くなるほど、極めて大きい変化を示し、屈折率変化を測定して、物質の物性や接合特性の変化を分析する応用研究に活用される場合、従来のSPR測定方法に比べて超高感度の屈折率測定が可能な測定方法である。
【0020】
連続的に供給される緩衝溶液と試料に用いられた溶媒などで屈折率が変わった緩衝溶液が微細流路を介してセンサに供給されると、純粋な接合動特性と緩衝溶液の屈折率変化とを同時に測定することができる。
【0021】
しかし、
図3において、プリズムの底面と基板物質との間隔が小さい場合、プリズムと緩衝溶液の界面で反射された光と、基板物質で反射された光とを分離しにくい。p-偏光波無反射条件で測定するため、基板物質で反射された光の強度が、プリズムと緩衝溶液との界面で反射された光よりも相対的に弱く、測定誤差の発生するという問題点が発生する恐れがある。また、超高感度が求められ、空気中で媒質に含まれた物質の極低濃度の測定時に、測定感度の向上のための問題点がさらに発生する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】大韓民国登録特許公報第10-1105328号
【文献】大韓民国登録特許公報第10-1383652号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上記のような問題点を解決するための本発明の目的は、多重反射により試料検出層で反射される第1反射光と、プリズム-緩衝溶液の界面で反射される第2反射光とを完全に分離されることで、高感度測定が可能な多重反射シリコン基盤の液浸微細流路測定装置及び測定方法を提供することである。
【0024】
また、本発明の目的は、多重反射により試料に光を複数回入射させることで測定感度を増幅させるための多重反射シリコン基盤の液浸微細流路測定装置を提供することである。
【0025】
また、本発明の目的は、特に試料の消耗を最小化するために、流路の高さをできるだけ低め、多チャンネルの微細流路を備えることで、試料の濃度を変化させて注入するか、又は自己組立単層膜の吸着程度を異にするなど、様々な形態の実験条件を提供可能な多重反射シリコン基盤の液浸微細流路測定装置及び測定方法を提供することである。
【0026】
また、本発明の目的は、液浸微細流路の環境下で非標識方式で生体結合物質の高感度測定が可能であり、バイオ、医療、食品、環境など様々な産業に広く活用可能な多重反射シリコン基盤の液浸微細流路測定装置及び測定方法を提供することである。
【0027】
本発明が達成しようとする技術的課題は以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は以下の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記のような目的を達成するための本発明の構成は、支持台と、前記支持台上に形成され、試料を検出するための生体結合物質が固定化された試料検出層とが形成された少なくとも1つ以上の微細流路を含む微細流路構造体;前記試料を含む緩衝溶液を前記微細流路に注入する試料注入部;プリズム、及び前記プリズムの底面に鏡面反射コーティングされて形成される反射体を備えるプリズムユニット;偏光(polairzed light)を発生させる偏光発生部;及び反射光の偏光変化を検出する偏光検出部;を含み、前記偏光は、前記プリズムを透過して、前記プリズムと前記緩衝溶液とが接するプリズム-緩衝溶液の界面に入射する入射光を形成し、前記入射光の一部が前記プリズム-緩衝溶液の界面で反射された後、前記プリズムを透過して第1反射光が形成され、前記入射光の他の一部が前記プリズム-緩衝溶液の界面を透過した後、前記試料検出層と前記反射体によって複数回の反射及び入射を繰り返す多重反射を行った後に、前記プリズムを透過して第2反射光が形成され、前記第1反射光と前記第2反射光とが前記多重反射によって空間的に完全に分離されることを特徴とする。
【0029】
本発明の実施例において、前記入射光の他の一部は、前記緩衝溶液を透過してp-偏光波無反射条件を満たす入射角で前記試料検出層に入射する透過光を形成し、前記透過光は、前記試料検出層で反射され、前記プリズム-緩衝溶液の界面で前記反射体によって鏡面反射されることで複数回の反射及び入射を繰り返す多重反射を行った後に、前記プリズムを透過して第2反射光を形成してもよい。
【0030】
本発明の実施例において、前記試料検出層は、基板、前記基板の上部に形成された誘電体薄膜、及び前記誘電体薄膜の上部に形成された吸着層を含み、前記吸着層には、前記試料を検出するための前記生体結合物質が固定化されてもよい。
【0031】
本発明の実施例において、前記多重反射により前記試料で光が複数回反射して、前記p-偏光波無反射反射率が低くなる場合、前記誘電体薄膜の厚さを増加させることで、前記透過光の信号強度の低下を防止してもよい。
【0032】
本発明の実施例において、前記多重反射により前記試料で光が複数回反射して、前記p-偏光波無反射反射率が低くなる場合、s-偏光波無反射条件を満たす入射角で前記試料検出層に入射する前記透過光を形成することで、前記透過光の信号強度低下を防止してもよい。
【0033】
本発明の実施例において、前記基板は、シリコン、誘電体又は半導体のうちから選択されるいずれか1つ以上の物質で形成されてもよい。
【0034】
本発明の実施例において、前記偏光検出部は、前記第2反射光の偏光変化に基づいて、前記吸着層に吸着された前記試料の厚さ又は濃度を算出してもよい。
【0035】
本発明の実施例において、前記偏光発生部は、前記プリズムを介して入射する前記入射光の光量を調節し、前記プリズム-緩衝溶液の界面上に形成される前記入射光のビームスポット(beam spot)の形態を制御してもよい。
【0036】
本発明の実施例において、前記試料注入部は、空気や気体に含まれたバイオマーカーを測定するために、前記緩衝溶液の代わりに気体を前記微細流路に注入してもよい。
【0037】
本発明の実施例において、前記気体が前記微細流路に注入される場合、前記偏光が前記プリズムを透過して、前記プリズムと前記気体とが接するプリズム-気体の界面に入射する入射光が形成され、前記入射光の一部が前記プリズム-気体の界面で反射された後、前記プリズムを透過して前記第1反射光が形成されてもよい。
【0038】
上記のような目的を達成するための本発明の構成は、試料注入部が前記試料を検出するための前記生体結合物質が固定化された前記試料検出層が形成された少なくとも1つの微細流路を含む前記微細流路構造体に緩衝溶液を注入する第1段階;前記緩衝溶液に含まれた前記試料が前記試料検出層の抗体に吸着する第2段階;前記偏光発生部が偏光を発生させる第3段階;前記偏光が前記プリズムを透過して、前記プリズムと前記緩衝溶液とが接する前記プリズム-緩衝溶液の界面に入射する入射光を形成する第4段階;前記入射光の一部は、前記プリズム-緩衝溶液の界面で反射されて前記プリズムを透過する前記第1反射光を形成し、前記入射光の他の一部は、前記緩衝溶液を透過して偏光波無反射条件を満たす入射角で前記試料検出層に入射する透過光を形成する第5段階;前記透過光は、前記試料検出層で反射され、前記プリズム-緩衝溶液の界面で前記反射体によって鏡面反射されることで複数回の反射及び入射を繰り返す多重反射を行った後に、前記プリズムを透過して第2反射光を形成する第6段階;前記偏光検出部が前記第2反射光の偏光変化を検出する第7段階;及び前記第2反射光の偏光変化に基づいて前記試料検出層に吸着された試料の濃度を検出する第8段階;を含み、前記プリズムユニットの外部に放出された前記第1反射光と前記第2反射光とが前記多重反射によって空間的に完全に分離されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
上記のような構成による本発明の効果は、従来の測定方法では、プリズムと測定媒質との界面で反射された光が基板物質で反射された光よりエネルギーが大きく分離しにくいため、測定誤差が生じる恐れががある一方、多重反射構造を適用してプリズムと測定媒質との界面で反射された光と基板物質で反射された光とを完全に分離し、多重反射による信号増幅効果を得ることができることである。
【0040】
また、本発明の効果は、試料の消耗を最小化するために、流路の高さをできるだけ低め、多チャンネルの微細流路を備えることで、試料の濃度を変化させて注入するか、自己組立単層膜の吸着程度を異にするなど様々な形態の実験条件を提供することができることである。
【0041】
また、本発明の効果は、液浸微細流路の環境下で非標識方式で生体結合物質の高感度測定が可能であり、バイオ、医療、食品、環境など様々な産業に広く活用されることができることである。
【0042】
本発明の効果は上記の効果に限定されるのでなく、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載の発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】先行特許による生体物質接合特性測定センサを示す断面図である。
【
図2】試料が金属薄膜に吸着及び解離される過程における吸着濃度の変化を示す模式図である。
【
図3】従来技術の問題点を説明するためのプリズム入射型シリコン基盤の液浸微細流路測定センサの模式図である。
【
図4】先行特許による生体物質接合特性測定センサを用いた生体物質吸着と緩衝溶液の屈折率変化による楕円計測定数Ψ、△を測定したグラフである。
【
図5】本発明の一実施例による反射体が除去された微細流路測定装置に対する概略図である。
【
図6】本発明の一実施例による反射体が形成された微細流路測定装置に対する概略図である。
【
図7】本発明の一実施例による反射体が形成された微細流路測定装置に対する概略図である。
【
図8】本発明の一実施例による微細流路測定装置の斜視図である。
【
図9】本発明の一実施例による微細流路測定装置の分解斜視図である。
【
図10】本発明の一実施例によるプリズムユニット及び第1構造体に対する透視図である。
【
図11】本発明の一実施例による第2構造体による断面図である。
【
図12】本発明の一実施例によるp-偏光波による透過光の反射回数による第2反射光の振幅変化に対するグラフである。
【
図13】本発明の一実施例によるs-偏光波による透過光の反射回数による第2反射光の振幅変化に対するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明による最も好ましい一実施例は、支持台と、前記支持台上に形成され、試料を検出するための生体結合物質が固定化された試料検出層とが形成された少なくとも1つ以上の微細流路を含む微細流路構造体;前記試料を含む緩衝溶液を前記微細流路に注入する試料注入部;プリズム、及び前記プリズムの底面に鏡面反射コーティングされて形成される反射体を備えるプリズムユニット;偏光(polairzed light)を発生させる偏光発生部;及び反射光の偏光変化を検出する偏光検出部;を含み、前記偏光は、前記プリズムを透過して、前記プリズムと前記緩衝溶液とが接するプリズム-緩衝溶液の界面に入射する入射光を形成し、前記入射光の一部が前記プリズム-緩衝溶液の界面で反射された後、前記プリズムを透過して第1反射光が形成され、前記入射光の他の一部が前記プリズム-緩衝溶液の界面を透過した後、前記試料検出層と前記反射体によって複数回の反射及び入射を繰り返す多重反射を行った後に、前記プリズムを透過して第2反射光が形成され、前記第1反射光と前記第2反射光とが前記多重反射によって空間的に完全に分離されることを特徴とする。
【0045】
以下では添付の図面を参照して本発明について説明する。しかし本発明は様々な異なる形態で具現することができ、よって、ここで説明する実施例に限定されるのではない。また、図面で本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて類似の部分に対しては類似の図面符号を付けた。
【0046】
明細書全体で、ある部分が他の部分と「連結(接続、接触、結合)」されているとする場合、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、それらの間に他の部材を置いて「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とする場合、これは特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに備えてもよいことを意味する。
【0047】
本明細書で使用した用語は単に特定の実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図でない。単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性をあらかじめ排除しないものと理解されるべきである。
第1実施例の構成
以下、添付の図面を参考して本発明について詳しく説明する。
【0048】
図5は、本発明の一実施例による反射体(120)が除去された微細流路測定装置に対する概略図であり、
図6及び
図7は、本発明の一実施例による反射体(120)が形成された微細流路測定装置に対する概略図である。ここで、
図5は、透過光(20)が反射体(120)に反射されない事項に対する図であり、
図6は、透過光(20)が反射体(120)に1回反射された事項に対する図であり、
図7は、透過光(20)が反射体(120)に2回反射された事項に対する図である。
図6及び
図7では、偏光発生部(300)及び偏光検出部(400)が省略されているが、
図6及び
図7でも、
図5のように偏光発生部(300)及び偏光検出部(400)が設けられることは当然である。
【0049】
また、
図8は、本発明の一実施例による微細流路測定装置の斜視図であり、
図9は、本発明の一実施例による微細流路測定装置の分解斜視図である。また、
図10は、本発明の一実施例によるプリズムユニット(100)及び第1構造体(200a)に対する透視図であり、
図11は、本発明の一実施例による第2構造体(200b)による断面図である。
【0050】
図5ないし
図11で見られるように、本発明の微細流路測定装置は、支持台(220)と、支持台(220)上に形成され、試料(1)を検出するための生体結合物質が固定化された試料検出層(500)とが形成された少なくとも1つ以上の微細流路(210)を含む微細流路構造体(200);試料(1)を含む緩衝溶液(50)を微細流路(210)に注入する試料注入部(600);プリズム(110)、及びプリズム(110)の底面に鏡面反射コーティングされて形成される反射体(120)を備えるプリズムユニット(100);偏光(polairzed light)を発生させる偏光発生部(300);及び反射光の偏光変化を検出する偏光検出部(400);を含む。
【0051】
ここで、偏光は、プリズム(110)を透過してプリズム(110)と緩衝溶液(50)とが接するプリズム-緩衝溶液の界面(111)に入射する入射光(10)を形成し、入射光(10)の一部は、プリズム-緩衝溶液の界面(111)で反射されてプリズム(110)を透過する第1反射光(30)を形成し、入射光(10)の他の一部は、緩衝溶液(50)を透過して偏光波無反射条件を満たす入射角で試料検出層(500)に入射する透過光(20)を形成し、透過光(20)は、試料検出層(500)で反射されてプリズム-緩衝溶液の界面(111)で反射体(120)によって鏡面反射されることで複数回の反射及び入射を繰り返す多重反射を行った後、プリズム(110)を透過して第2反射光(40)を形成することができる。
【0052】
また、プリズムユニット(100)の外部に放出された第1反射光(30)と第2反射光(40)とが多重反射によって空間的に完全に分離されることができる。このような作動に対する事項は下記に詳しく説明する。
【0053】
本発明の一実施例は、エリプソメトリー法を用いて低分子をはじめとする生体結合物質の吸着及び解離動特性を測定するためのもので、生体結合物質の試料(図示せず)が含まれた緩衝溶液(buffer、50)が微細流路構造体(200)に注入される構造を有する。このとき、微細流路構造体(200)は、微細流路(210)が多チャンネルで構成されてもよい。
【0054】
プリズム(110)は光学ガラスが主に使用されてもよく、一例として、BK7又はSF10であってもよいが、これらに制限されるのではない。また、プリズム(110)は、複数の単位個体であるプリズムの組み立てで形成されてもよい。
【0055】
反射体(120)は、プリズム(110)の底面に鏡面コーティングされたコーティング層で形成されてもよく、反射体(120)に向かう透過光(20)を反射させることができる。また、透過光の反射回数によって反射体(120)の長さを異なるように形成してもよい。
【0056】
反射体(120)の長さ(透過光(20)の進行方向に対する長さ)が増加して透過光の反射回数が増加する場合は、第1反射光(30)と第2反射光(40)との間隔が増加して、第1反射光(30)と第2反射光(40)との空間分離性能が向上することで、第2反射光(40)の測定をさらに容易に行うことができる。ただし、透過光(20)の反射回数が増加する場合、試料(1)に光が複数回反射することで反射率が低くなることがあるので、透過光(20)の反射率変化を反映して反射体(120)の長さを設定してもよい。
【0057】
上記の通り、多重反射により試料(1)で光が複数回反射してp-偏光波無反射反射率が低くなる場合、誘電体薄膜(520)の厚さを増加させることで、透過光(20)の信号強度低下を防止することができる。誘電体薄膜(520)の厚さを増加させる場合、薄膜の厚さが数nmから数百nmに厚くなるほど反射率が急激に増加するため、透過光(20)が複数回反射しても透過光(20)の信号強度低下を防止することができる。
【0058】
また、多重反射により試料(1)で光が複数回反射してp-偏光波無反射反射率が低くなる場合、s-偏光波無反射条件を満たす入射角で試料検出層(500)に入射する透過光(20)を形成することで、透過光(20)の信号強度低下を防止することができる。s-偏光波無反射条件では、p-偏光波無反射条件とは逆に信号が非常に大きいため、多重反射により試料(1)で光が複数回反射しても大きな信号を検出することができる。
【0059】
微細流路構造体(200)は、プリズムユニット(100)の下部に配置され、試料検出層(500)が形成された少なくとも1つ以上の微細流路(210)を含む。試料検出層(500)には試料を検出するための生体結合物質が固定化されてもよい。
【0060】
具体的に、本発明の一実施例において、微細流路構造体(200)は、試料(1)を含む緩衝溶液(50)が流入又は排出される通路である微細流路(210)を複数含んでもよい。このとき、微細流路(210)の幅は、数mm程度や1mm以下のマイクロスケールを有してもよい。また、複数の微細流路(210)のそれぞれは、流入路(210a)、微細流路チャンネル(210c)及び排出路(210b)を含んでもよい。すなわち、微細流路(210)は、流入路(210a)、微細流路チャンネル(210c)及び排出路(210b)が連結されて形成されてもよい。
【0061】
一方、試料注入部(600)は、試料(1)を含む緩衝溶液(50)を微細流路(210)に注入又は排出することができる。
【0062】
偏光発生部(300)は、プリズム(110)を介して入射する入射光(10)の光量を調節し、プリズム-緩衝溶液の界面上に形成される入射光(10)のビームスポット(beam spot)の形態を制御してもよい。
【0063】
具体的に、偏光発生部(300)は偏光(polarized light)を発生させ、光源(light source、310)及び偏光子(polarizer、320)を備えてもよい。また、コリメートレンズ(330)、集束レンズ(340)又は第1補償器(compensator)(350)を備えてもよい。
【0064】
偏光子(320)と第1補償器(350)は、回転可能に構成されるか、又は他の偏光変調手段がさらに備えられてもよい。入射光(10)は、p-偏光波とs-偏光波の偏光成分をすべて含んでもよい。信号対雑音比(signal to noise ratio、SNR)を高めるために、偏光子(320)をp-偏光波に近い角度に整列してもよく、好ましくは後述する偏光検出部(400)に受光される第2反射光(40)に含まれるp-偏光波とs-偏光波の比率が類似するようにしてもよい。これによって、プリズム-緩衝溶液の界面(111)上に形成される入射光(10)のビームスポット(beam spot)の形態を制御することができる。
【0065】
本発明の実施例において、入射光(10)は、p-偏光波無反射条件に満たされる入射角(θ1)で試料検出層(500)に照射されてもよい。楕円計測方程式で複素反射係数比(ρ)は、s-偏光波の反射係数比(Rs)に対するp-偏光波の反射係数比(Rp)の比、すなわち、ρ=Rp/Rsで表すことができ、p-偏光波無反射条件は、p-偏光波の反射係数比(Rp)が0に近い値を有する条件を言える。p-偏光波無反射条件は、従来のSPRセンサの表面プラズモン共鳴条件と類似なもので、本発明の測定感度が最大になる条件であってもよい。
【0066】
光源(310)は、赤外線、可視光線又は紫外線の波長帯の単色光又は白色光を放出する各種ランプ、発光ダイオード(LED)、固体-、液体-、ガス-レーザ、及びレーザダイオードを含む半導体レーザダイオード(LD)などが用いられてもよい。また、光源(310)は、光学系の構造によって波長を可変可能な構造を備えてもよい。一方、上述したp-偏光波無反射条件の付近では反射光の光学信号の大きさが相対的に小さいことがあり、この場合、干渉性(coherence)を有するレーザを用いて高い光量で光を照射して信号対雑音比を高めることで、高感度の測定を可能とすることができる。
【0067】
コリメートレンズ(330)は、光源(310)から光を受光して偏光子(320)に平行光を提供することができる。また、集束レンズ(340)は、偏光子(320)を通過した平行光を収束して入射光(10)の光量を増加させることができる。また、第1補償器(350)は、入射光(10)の偏光成分を遅延させる役割をすることができる。
【0068】
偏光検出部(400)は、反射光の偏光変化に基づいて吸着層(530)に吸着された試料(1)の厚さ又は濃度を算出することができる。具体的に、偏光検出部(400)は、第2反射光(40)を受光してその偏光変化を検出することができる。吸着層(530)で反射された第2反射光(40)が受光され、その偏光状態の変化が検出されてもよい。偏光検出部(400)は、検光子(analyzer)(410)、光検出器(detector、420)及び演算処理器(430)を含んでもよい。その他、第2補償器(440)と分光器(450)が備えられてもよい。
【0069】
検光子(410)は、偏光子(320)に対応するものであり、偏光板を備えて第2反射光(40)を再度偏光させることで、反射光の偏光程度や偏光面の方向を制御することができる。検光子(410)は、光学系の構造によって回転可能になるように構成されるか、又は偏光成分の位相変化、消去のような機能を行うことができる偏光変調手段がさらに備えられてもよい。
【0070】
光検出器(420)は、偏光された第2反射光(40)を検出して光学データを得て、これを電気的な信号に切り換える役割をすることができる。このとき、光学データは、第2反射光(40)における偏光状態の変化に関する情報を含んでもよい。光検出器(420)は、CCD型固体撮像素子、光電増倍管(PMT)又はシリコンフォトダイオードが用いられてもよい。
【0071】
演算処理器(430)は、電気的な信号を光検出器(420)から得て測定値を導出してもよい。演算処理器(430)には、反射率測定法及びエリプソメトリー法を用いた所定の解釈プログラムが内蔵されており、電気的な信号に変換された光学データを演算処理器(430)が抽出及び解釈することで、試料の吸着濃度、吸着層(530)の厚さ、吸着定数、解離定数、屈折率などのような測定値を導出する。このとき、演算処理器(430)は、測定感度の向上のために、エリプソメトリーの位相差に関する楕円計測定数Ψ、△を求めて測定値を導出することが好ましい。
【0072】
上記のように内蔵された解釈プログラムによって、本発明の微細流路測定装置では、p-波又はs-波の無反射条件で楕円計測だけでなく反射率測定を用いて上記のような測定を行うことができる。
【0073】
第2補償器(440)は、反射光の偏光成分を位相遅延させて調節する役割をする。第2補償器(440)は、回転可能なように構成されるか、又は他の偏光変調手段がさらに備えられてもよい。
【0074】
分光器(450)は、光源(310)が白色光の場合に用いられてもよい。これは反射光を分光させ、狭い領域の波長を有する反射光を分離させて光検出器(420)に送るためであり得る。このとき、光検出器(420)は、CCD型固体撮像素子のような二次元イメージセンサで反射光の分布に関する光学データを得ることができる。
以下、微細流路構造体(200)についてさらに詳しく説明する。
図8及び
図9で見られるように、本発明の微細流路構造体(200)は、第1構造体(200a)及び第2構造体(200b)を備えてもよい。
【0075】
このとき、第1構造体(200a)は、プリズムユニット(100)の下部に形成されてもよい。特に、本発明の実施例において、プリズムユニット(100)及び第1構造体(200a)は一体型に製作されてもよいが、これに制限されるのではない。また、第1構造体(200a)及び第2構造体(200b)は互いに分離することができ、第2構造体(200b)は微細流路チャンネル層(200c)を含んでもよい。
【0076】
一方、第1構造体(200a)は、ガラス又は透明な合成樹脂材のような透過性物質からなってもよい。このとき、合成樹脂材の例としては、PMMA(polymethyl methacrylate)のようなアクリル樹脂が用いられてもよい。また、ケイ素リン酸ポリマー(PDMS、polydimethylsiloxane)のようなシリコン系材料が用いられてもよい。
【0077】
具体的に、第1構造体(200a)は、第1構造体(200a)の一側面に形成された複数の流入路(210a)、及び第1構造体の他側面に形成された複数の排出路(210b)を含んでもよい。また、流入路(210a)は、第1構造体(200a)の一側面に形成された第1流入口(212)から第1構造体(200a)の下部に形成された第2流入口(214)に連結され、排出路(210b)は、第1構造体(200a)の下部に形成された第1排出口(216)から、第1構造体(200a)の他側面に形成された第2排出口(218)と連結されてもよい。
【0078】
一方、複数の流入路(210a)及び排出路(210b)のそれぞれは、第2構造体(200b)に形成された微細流路チャンネル層(200c)の複数の微細流路チャンネル(210c)と連結されるように形成されてもよい。具体的に、第2流入口(214)は、微細流路チャンネル(210c)の一側と当接するように形成されることで、第1流入路(210a)と微細流路チャンネル(210c)とを連結することができる。
【0079】
また、第1排出口(216)は、微細流路チャンネル(210c)の他側と当接するように形成されることで、排出路(210b)と微細流路チャンネル(210c)とを連結することができる。
【0080】
すなわち、流入路(210a)、微細流路チャンネル(210c)及び排出路(210b)は、互いに連結されるように形成されてもよい。これによって、流入路(210a)を介して注入された試料が含まれた緩衝溶液(50)は、微細流路チャンネル(210c)を経て排出路(210b)に排出されることができる。
【0081】
言い換えると、第2構造体(200b)は微細流路チャンネル層(200c)を含み、微細流路チャンネル層(200c)は複数の微細流路チャンネル(210c)を含んでもよい。一方、微細流路チャンネル層(200c, 210c)は、PMMA(polymethyl methacrylate)のようなアクリル樹脂で形成されてもよいが、これに制限されるのではない。
【0082】
第2構造体(200b)は、複数の微細流路チャンネル(210c)によって形成された溝の底面に、試料検出層(500)を含んでもよい。試料検出層(500)は、基板(510)、基板(510)の上部に形成された誘電体薄膜(520)、及び誘電体薄膜(520)の上部に形成された吸着層(530)を含み、吸着層(530)には、試料(1)を検出するための生体結合物質が固定化されてもよい。
【0083】
基板(510)は、シリコン、誘電体又は半導体のうちから選択されるいずれか1つ以上の物質で形成されてもよい。基板(510)をシリコンで形成する場合、シリコンは安価であり、一定かつ安定した物性を提供する長所がある。また、基板(510)に半導体又は誘電体を用いる場合、半導体又は誘電体は、バイオ物質と屈折率差が大きいため、p-波又はs-波の無反射条件における測定感度がシリコンに比べて相対的に増加することがある。また、基板(510)は、655nmで約3.8391+i0.018186の複素屈折率を有することができる。
【0084】
基板(510)の上部に形成される誘電体薄膜(520)は、透明な半導体酸化膜及びガラス膜のいずれか1つで構成されてもよい。誘電体薄膜(520)は、厚さが0超過~10mmであってもよい。
【0085】
一方、最も容易に求められる誘電体薄膜(520)の例として、シリコンを自然酸化させて数ナノメートルの厚さに成長させたシリコン酸化膜(SiO2)がある。シリコン酸化膜の屈折率は655nmで約1.456であり、シリコンからなる基板(510)との屈折率差が大きいため、本発明の測定感度を高めるのに寄与する。
【0086】
また、誘電体薄膜(520)は、光学ガラスからなるガラス膜が用いられてもよい。シリコンやシリコン酸化膜又はガラス膜からなる誘電体薄膜(520)は、金又は銀のような金属薄膜に比べて屈折率を一定に製造可能であり、安定した光特性を提供することができ、製作コストを低めることができる長所がある。
【0087】
本発明の一実施例による吸着層(530)は、自己組立薄膜及びバイオ薄膜のうちの少なくともいずれか1つで構成されてもよい。また、吸着層(530)には、特定試料を検出可能な生体結合物質が固定化されてもよい。このとき、吸着層(530)は、低分子生体結合物質の試料(1)が吸着及び解離され、透過光(20)を反射させる役割をすることができる。
【0088】
言い換えると、流入路(210a)を介して流入された、緩衝溶液中に含まれた試料は、吸着層(530)に吸着されるか、又は吸着層(530)から解離することができる。
【0089】
試料注入部(600)は、微細流路(210)に試料が含まれた緩衝溶液、又は緩衝溶液を注入又は排出することができ、緩衝溶液が用いられる以外に、気体中に含まれたバイオマーカーの測定のために微細流路(210)の媒質として気体が用いられてもよい。ここで、気体として空気が用いられてもよく、ただし、これに限定されるのでなく、空気以外に他の気体が用いられてもよい。このとき、試料注入部(600)から微細流路(210)にバイオマーカーが含まれた空気が注入されてもよい。
【0090】
気体が微細流路(210)に注入される場合、偏光がプリズム(110)を透過して、プリズム(110)と気体とが接するプリズム-気体の界面に入射する入射光(10)が形成され、入射光(10)の一部がプリズム-気体の界面で反射された後、プリズム(110)を透過して第1反射光(30)が形成されてもよい。このような場合にも、p-波又はs-波の無反射条件で高感度信号を得ることができる。
【0091】
第1実施例の動作
以下、添付の図面を参照して好ましい実施例の動作を詳しく説明する。
【0092】
図5ないし
図7で見られるように、プリズム(110)は単一のプリズム構造を用いることができる。入射光(10)は、プリズム(110)を透過してプリズム-緩衝溶液の界面(111)に入射することができる。プリズム-緩衝溶液の界面(111)で入射光(10)は第1反射光(30)と透過光(20)とに分離されてもよい。透過光(20)は、試料検出層(500)で反射されてプリズム-緩衝溶液の界面(111)に位置した反射体(120)に入射してもよい。また、反射体(120)に入射した透過光(20)は、反射体(120)によって反射されてまた試料検出層(500)に入射した後に反射されてもよい。また、このような複数回の反射及び入射による多重反射が行われた後、反射体(120)が形成されていないプリズム-緩衝溶液の界面(111)及びプリズム(110)を透過光(20)が透過して第2反射光(40)が形成されてもよい。ここで、多重反射の反射回数が増加するほど、第1反射光(30)と第2反射光(40)とは空間的に分離される間隔(それぞれの光経路間の離隔距離)が増加することができる。
【0093】
上述したように、偏光検出部(400)は、第2反射光(40)を受光してその偏光状態を分析することで、試料(1)の厚さや光学特性と連関する物性情報を抽出することができる。しかし、
図5に示されたように、反射体(120)を用いない場合、第1反射光(30)と第2反射光(40)のそれぞれの光経路間の間隔が小さく、第1反射光(30)と第2反射光(40)とを分離することが容易でないため、それぞれの反射光が全て偏光検出部(400)に入射することもある。
【0094】
すなわち、従来技術の場合、プリズム(110)と媒質との界面で反射された光と、屈折して吸着層(530)に入射する光とを分離することが困難であり、これによって、プリズム(110)と媒質との界面で反射された光は屈折し、吸着層(530)に入射する光と共に偏光検出部(400)によって検出されるという問題点が発生した。よって、相対的にエネルギーの大きなプリズム(110)と媒質との界面で反射された光によって測定誤差を生じ、測定感度が低下するという問題点が発生した。
【0095】
また、第2反射光(40)のみ偏光検出部(400)に受光するためには、偏光検出部(400)の前方に別途の光学系を配置するか、又は入射光(10)のビームスポット(beam spot)のサイズを最小化しなければならないという問題点がある。
【0096】
このような問題点の解決のために、
図6及び
図7で見られるように、プリズム(110)の底面に反射体(120)を形成することで、透過光(20)の多重反射を誘導し、これによって、第1反射光(30)と第2反射光(40)のそれぞれの光経路間の間隔が顕著に増加することで、第1反射光(30)と第2反射光(40)とが空間的に分離されるため、偏光検出部(400)に第2反射光(40)が受光できることである。これによって、測定誤差を防止して本発明の微細流路測定装置の測定感度を向上させることができる。
【0097】
すなわち、プリズムユニット(100)から特定距離だけ離間して偏光検出部(400)を位置させると、第2反射光(40)と第1反射光(30)との隔離距離が長くなる。したがって、偏光検出部(400)に集束される第1反射光(30)の光量を最小化することができる。また、偏光検出部(400)の光軸を第2反射光(40)の光経路に整列すると、不要に偏光検出部(400)に集束された少量の第1反射光(30)の影響を最小化することができる。すなわち、偏光検出部(400)の内部で進行中における第1反射光(30)の伝搬損失(propagation loss)は、第2反射光(40)の伝搬損失よりも大きい。よって、偏光検出部(400)に到逹する第1反射光(30)の光量は、第2反射光(40)の光量に比べて、相対的に極少量に制限することがある。
【0098】
結論的に、本発明の微細流路測定装置は、試料(1)の特性情報を含んでいる第2反射光(40)と第1反射光(30)との分離を容易にすることで、測定誤差だけでなく、試料(1)の高感度分析を容易に行うことができる。
【0099】
図12は、本発明の一実施例によるp-偏光波による透過光(20)の反射回数による第2反射光(40)の振幅変化に対するグラフであり、
図13は、本発明の一実施例によるs-偏光波による透過光(20)の反射回数による第2反射光(40)の振幅変化に対するグラフである。ここで、
図12及び
図13でそれぞれのグラフは楕円計測定数Ψのグラフである。
【0100】
ここで、
図12の(a)は、
図5で見られるように、反射体(120)に対するp-偏光波による透過光(20)の反射回数が0である場合のグラフであり、
図12の(b)は、
図6で見られるように、反射体(120)に対するp-偏光波による透過光(20)の反射回数が1である場合のグラフであり、
図12の(c)は、
図7で見られるように、p-偏光波による透過光(20)の反射回数が2である場合のグラフである。
【0101】
また、
図13の(a)は、
図5で見られるように、反射体(120)に対するs-偏光波による透過光(20)の反射回数が0である場合のグラフであり、
図13の(b)は、
図6で見られるように、反射体(120)に対するs-偏光波による透過光(20)の反射回数が1である場合のグラフであり、
図13の(c)は、
図7で見られるように、s-偏光波による透過光(20)の反射回数が2である場合のグラフである。
【0102】
図12の(a)ないし(c)及び
図13の(a)ないし(c)のそれぞれのグラフで示すグラフは、太線(赤色)で示されたグラフである。
【0103】
図12の(a)ないし(c)で見られるように、反射体(120)に対するp-偏光波による透過光(20)の反射回数が増加するほど、第2反射光(40)の振幅が増加することが確認される(振幅が1nmから3nmに増加)。また、
図13の(a)ないし(c)で見られるように、反射体(120)に対するs-偏光波による透過光(20)の反射回数が増加するほど、第2反射光(40)の振幅が増加することが確認される(振幅が1nmから3nmに増加)。
【0104】
上記のように、反射体(120)に透過光(20)の反射回数が増加するにつれ、第2反射光(40)の振幅が増加して増幅される効果を確認することができる。
以下、本発明の微細流路測定装置を用いた微細流路測定方法について説明する。
【0105】
先ず、第1段階において、試料注入部(600)が、試料(1)を検出するための生体結合物質が固定化された試料検出層(500)が形成された少なくとも1つの微細流路(210)を含む微細流路構造体(200)に、緩衝溶液(50)を注入することができる。また、各微細流路(210)ごとに時間差を置いて緩衝溶液(50)を注入してもよい。また、一部の微細流路(210)にのみ緩衝溶液(50)を注入し、残りの微細流路(210)は用いなくてもよい。
【0106】
次いで、第2段階において、緩衝溶液(50)に含まれた試料(1)が試料検出層(500)の抗体に吸着することができる。これとは異なり、試料が
図11の単一の微細流路チャンネル(210c)に形成された複数の互いに異なる自己組立単層膜又は同じ自己組立単層膜上に複数の吸着層に吸着することで、互いに異なる接合特性を有する吸着層を形成してもよい。また、第3段階において、偏光発生部(300)が偏光を発生させてもよい。
【0107】
その後、第4段階において、偏光がプリズム(110)を透過してプリズム(110)と緩衝溶液(50)とが接するプリズム-緩衝溶液の界面(111)に入射する入射光(10)を形成してもよい。また、第5段階において、入射光(10)の一部は、プリズム-緩衝溶液の界面(111)で反射されてプリズム(110)を透過する反射光を形成し、入射光(10)の他の一部は、緩衝溶液(50)を透過して偏光波無反射条件を満たす入射角で試料検出層(500)に入射する透過光(20)を形成してもよい。
【0108】
その後、第6段階において、透過光(20)は、試料検出層(500)で反射されてプリズム-緩衝溶液の界面(111)で反射体(120)によって鏡面反射されることで複数回の反射及び入射を繰り返す多重反射を行った後、プリズム(110)を透過して第2反射光(40)を形成してもよい。ここで、第5段階と第6段階の実行によってプリズムユニット(100)の外部に放出された第1反射光(30)と第2反射光(40)とが多重反射によって空間的に完全に分離できる。
【0109】
次いで、第7段階において、偏光検出部(400)が第2反射光(40)の偏光変化を検出してもよい。また、第8段階において、第2反射光(40)の偏光変化に基づいて試料検出層(500)に吸着された試料(1)の濃度を検出してもよい。
【0110】
具体的に説明すると、まず検光子(410)が吸着層(530)で楕円偏光された第2反射光(40)を受光し、偏光特性による光のみ通過させてもよい。次いで、光検出器(420)が第2反射光(40)の偏光成分の変化を検出することで所定の光学データを得るようになり、これを電気的な信号に変換して演算処理器(430)に伝送してもよい。
【0111】
次いで、反射率測定法又はエリプソメトリー法を用いたプログラムが内蔵された演算処理器(430)が、電気信号に変換された光学データを抽出及び解釈し、試料の吸着濃度、吸着及び解離定数、屈折率、緩衝溶液の屈折率のような測定値を導出する。
【0112】
このとき、本発明は、演算処理器(430)がエリプソメトリーの位相差に関する楕円計測定数△を求めて緩衝溶液(50)の屈折率測定値を測定し、振幅比に関する楕円計測定数Ψを測定して接合動特性を求めることができる。その理由は、p-偏光波無反射条件で位相差に関する楕円計測定数△は、緩衝溶液の屈折率変化にのみ敏感な変化を示し、接合特性にはほぼ影響を受けないため、緩衝溶液(50)の屈折率変化のみを測定できるという長所があり、振幅比に関する楕円計測定数Ψは、主に物質の接合特性に高感度に変わるためである。
【0113】
したがって、緩衝溶液に含まれて流入される試料の接合特性はΨで測定し、緩衝溶液に溶解するときに変わる屈折率や試料を溶解するために用いたDMSOなどの溶媒を含む緩衝溶液の屈折率変化は△で同時に測定することにより、純粋な接合特性のみを求めることができる。
【0114】
上述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるであろう。これによって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型に説明されている各構成要素は分散して実施されてもよく、同様に分散したものと説明されている構成要素も結合された形態で実施されてもよい。
【0115】
本発明の範囲は後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、またその均等概念から導き出されるすべての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1:試料
2:リガンド
10:入射光
20:透過光
30:第1反射光
40:第2反射光
50:緩衝溶液
100:プリズムユニット
110:プリズム
111:プリズム-緩衝溶液の界面
120:反射体
200:微細流路構造体
200a:第1構造体
200b:第2構造体
200c:微細流路チャンネル層
210:微細流路
210a:流入路
210b:排出路
210c:微細流路チャンネル
212:第1流入口
214:第2流入口
216:第1排出口
218:第2排出口
220:支持台
300:偏光発生部
310:光源
320:偏光子
330:コリメートレンズ
340:集束レンズ
350:第1補償器
400:偏光検出部
410:検光子
420:光検出器
430:演算処理器
440:第2補償器
450:分光器
500:試料検出層
510:基板
520:誘電体薄膜
530:吸着層
600:試料注入部