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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】造形物の製造方法、及び造形物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20231214BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231214BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20231214BHJP
【FI】
B29C64/106
B33Y10/00
B33Y80/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022566866
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2021043062
(87)【国際公開番号】W WO2022118717
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020200639
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 文人
(72)【発明者】
【氏名】宮田 三紀子
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-163671(JP,A)
【文献】特開2020-131685(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187800(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/106,64/40
B33Y 10/00,80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物を載置するための載置面を有する造形ステージを備える3Dプリンタを用いた材料押出法による造形物の製造方法であって、
第1造形層用材料の溶融物により、前記載置面に配置した造形シートの表面上に少なくとも1つの第1造形層を形成する工程と、
第2造形層用材料の溶融物により、前記少なくとも1つの第1造形層上に、少なくとも1つの第2造形層を形成する工程と、を有し、
前記第1造形層用材料と、前記第2造形層用材料とは異な
前記第1造形層用材料は、無機フィラー、及び、プロピレン系重合体を含む第1熱可塑性樹脂を含有し、
前記第2造形層用材料は、無機フィラー、及び、プロピレン系重合体を含む第2熱可塑性樹脂を含有し、
前記造形シートは、プロピレン系重合体を含む第3熱可塑性樹脂を含有する
造形物の製造方法。
【請求項2】
前記第1造形層用材料における前記無機フィラーの含有量は、前記第1造形層用材料の総質量に対して、25質量%以上80質量%以下である、請求項に記載の造形物の製造方法。
【請求項3】
前記第2造形層用材料は、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する前記第2熱可塑性樹脂を含有する、請求項又は請求項に記載の造形物の製造方法。
【請求項4】
前記造形シートは、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する前記第3熱可塑性樹脂を含有する、請求項~請求項のいずれか1項に記載の造形物の製造方法。
【請求項5】
前記第2造形層用材料は、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する前記第2熱可塑性樹脂を含有し、
前記造形シートは、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する前記第3熱可塑性樹脂を含有し、
前記第1熱可塑性樹脂、前記第2熱可塑性樹脂、及び前記第3熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1つは、結晶性の熱可塑性樹脂を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の造形物の製造方法。
【請求項6】
前記第1造形層用材料における前記無機フィラーは、タルク、炭酸カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の造形物の製造方法。
【請求項7】
前記第2造形層用材料における前記無機フィラーは、タルク、炭酸カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の造形物の製造方法。
【請求項8】
造形物を載置するための載置面を有する造形ステージを備える3Dプリンタを用いた材料押出法による造形物の製造方法であって、
造形層用材料の溶融物により、前記載置面に配置した造形シートの表面上に少なくとも1つの造形層を形成する工程を有し、
前記造形層用材料は、プロピレン系重合体を含む第1熱可塑性樹脂を含有し、
前記造形シートは、プロピレン系重合体を含む第2熱可塑性樹脂及び無機フィラーを含有する、造形物の製造方法。
【請求項9】
前記無機フィラーの含有量は、前記造形シートの総質量に対して、25質量%以上80質量%以下である、請求項8に記載の造形物の製造方法。
【請求項10】
前記第2熱可塑性樹脂は、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する、請求項8又は請求項9に記載の造形物の製造方法。
【請求項11】
前記無機フィラーは、タルク、炭酸カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項~請求項10のいずれか1項に記載の造形物の製造方法。
【請求項12】
第1方向に沿って積層された複数の造形層を有し、
前記複数の造形層のうち、前記第1方向の一端に位置する造形層である表面造形層の材料と、前記表面造形層を除いた他の造形層の材料とは、異な
前記表面造形層は、無機フィラー、及び、プロピレン系重合体を含む第1熱可塑性樹脂を含有し、
前記他の造形層は、無機フィラー、及び、プロピレン系重合体を含む第2熱可塑性樹脂を含有する、
造形物。
【請求項13】
前記表面造形層における前記無機フィラーの含有量は、前記表面造形層の総質量に対して、25質量%以上80質量%以下である、請求項12に記載の造形物。
【請求項14】
前記他の造形層は、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する前記第2熱可塑性樹脂を含有する、請求項12又は請求項13に記載の造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、造形物の製造方法、及び造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、効率的な造形技術の1つとして、材料押出法(MEX:Material Extrusion)が注目されている。材料押出法では、3Dモデルデータを基に、押出ノズルから造形層用材料の溶融物を押し出して造形層を形成し、造形層を積み重ねて、造形物を実体化する。
材料押出法では、新たな造形層の形成の前に形成された少なくとも1つの造形層(以下、「基礎造形層」という。)は、新たな造形層の基礎となる。材料押出法の造形サイクル中に基礎造形層の反りが発生すると、造形不良が発生するおそれがある。
従来から材料押出法の造形サイクル中に基礎造形層の反りを抑制するために、造形シートが用いられている(例えば、特表2017-502852号公報等)。このような造形シートの材質は、造形物が溶着する樹脂のみからなる。3Dプリンタは、造形物を載置するための載置面を有する造形ステージを備える。造形シートは、造形ステージの載置面に固定される。造形物は、造形シートの表面上に積層造形されて、造形シートに溶着する。造形シートに溶着した造形物は、例えば、スクレイパーなどを用いて手作業で造形シートから分離される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、造形シートの表面上に積層造形された造形物は造形シートに強く溶着している。そのため、造形シートに溶着した造形物を造形シートから分離するのに、多大な時間を要する場合がある。具体的に、スクレイパーを用いて手作業で、造形シートに溶着した直方体状の造形物(サイズ:400mmW×400mmD)を造形シートから分離するのに、5時間以上を要する場合がある。
【0004】
本開示は、上記事情に鑑みたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、造形シートを用いない場合よりも反りが抑制された造形物を製造できるとともに、造形シートに溶着した造形物をより短時間で造形シートから分離することができる造形物の製造方法を提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、反りが抑制された造形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
【0006】
<1>本開示の第1態様の造形物の製造方法は、
造形物を載置するための載置面を有する造形ステージを備える3Dプリンタを用いた材料押出法による造形物の製造方法であって、
第1造形層用材料の溶融物により、前記載置面に配置した造形シートの表面上に少なくとも1つの第1造形層を形成する工程と、
第2造形層用材料の溶融物により、前記少なくとも1つの第1造形層上に、少なくとも1つの第2造形層を形成する工程と、を有し、
前記第1造形層用材料と、前記第2造形層用材料とは異なる、造形物の製造方法である。
【0007】
<2>本開示の第2態様の造形物の製造方法は、
前記第1造形層用材料が、第1熱可塑性樹脂及び無機フィラーを含有する、<1>に記載の造形物の製造方法である。
【0008】
<3>本開示の第3態様の造形物の製造方法は、
前記無機フィラーの含有量が、前記第1造形層用材料の総質量に対して、25質量%以上80質量%以下である、<2>に記載の造形物の製造方法である。
【0009】
<4>本開示の第4態様の造形物の製造方法は、
前記第2造形層用材料が、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する第2熱可塑性樹脂を含有する、<2>又は<3>に記載の造形物の製造方法である。
【0010】
<5>本開示の第5態様の造形物の製造方法は、
前記造形シートが、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する第3熱可塑性樹脂を含有する、<2>~<4>のいずれか1つに記載の造形物の製造方法である。
【0011】
<6>本開示の第6態様の造形物の製造方法は、
前記第1造形層用材料が、第1熱可塑性樹脂を含有し、
前記第2造形層用材料が、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する第2熱可塑性樹脂を含有し、
前記造形シートが、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する第3熱可塑性樹脂を含有し、
前記第1熱可塑性樹脂、前記第2熱可塑性樹脂、及び前記第3熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1つが、結晶性の熱可塑性樹脂を含む、<2>~<5>のいずれか1つに記載の造形物の製造方法である。
【0012】
<7>本開示の第7態様の造形物の製造方法は、
前記結晶性の熱可塑性樹脂が、プロピレン系重合体を含む、<6>に記載の造形物の製造方法である。
【0013】
<8>本開示の第8態様の造形物の製造方法は、
造形物を載置するための載置面を有する造形ステージを備える3Dプリンタを用いた材料押出法による造形物の製造方法であって、
造形層用材料の溶融物により、前記載置面に配置した造形シートの表面上に少なくとも1つの造形層を形成する工程を有し、
前記造形層用材料は、第1熱可塑性樹脂を含有し、
前記造形シートは、第2熱可塑性樹脂及び無機フィラーを含有する、造形物の製造方法である。
【0014】
<9>本開示の第9態様の造形物の製造方法は、
前記無機フィラーの含有量が、前記造形シートの総質量に対して、25質量%以上80質量%以下である、<8>に記載の造形物の製造方法である。
【0015】
<10>本開示の第10態様の造形物の製造方法は、
前記第2熱可塑性樹脂が、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する、<8>又は<9>に記載の造形物の製造方法である。
【0016】
<11>本開示の第11態様の造形物の製造方法は、
前記無機フィラーが、タルク、炭酸カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、<2>~<10>のいずれか1つに記載の造形物の製造方法である。
【0017】
<12>本開示の第12態様の造形物の製造方法は、
第1方向に沿って積層された複数の造形層を有し、
前記複数の造形層のうち、前記第1方向の一端に位置する造形層である表面造形層の材料と、前記表面造形層を除いた他の造形層の材料とは、異なる、造形物である。
【0018】
<13>本開示の第13態様の造形物の製造方法は、
前記表面造形層は、第1熱可塑性樹脂及び無機フィラーを含有する、<12>に記載の造形物である。
【0019】
<14>本開示の第14態様の造形物の製造方法は、
前記無機フィラーの含有量は、前記表面造形層の総質量に対して、25質量%以上80質量%以下である、<13>に記載の造形物である。
【0020】
<15>本開示の第15態様の造形物の製造方法は、
前記他の造形層は、前記第1熱可塑性樹脂と溶着する第2熱可塑性樹脂を含有する、<13>又は<14>に記載の造形物である。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一実施形態によれば、造形シートを用いない場合よりも反りが抑制された造形物を製造できるとともに、造形シートに溶着した造形物をより短時間で造形シートから分離することができる造形物の製造方法が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、反りが抑制された造形物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る造形物の製造方法の一例を説明するための造形物、造形シート、及び造形ステージの側面図である。
図2図2は、実施例1の測定用ハニカム造形物を示す斜視写真である。
図3図3は、平均反り量Yを説明するための測定用ハニカム造形物の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0024】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0025】
本開示において、「第1熱可塑性樹脂と溶着する第2熱可塑性樹脂」とは、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも一方が溶融する雰囲気下において、第1熱可塑性樹脂の溶融物と第2熱可塑性樹脂の溶融物とが分離せずに密着し、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも一方が溶融しない雰囲気下において、第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂とが分離しないことを示す。
「第1熱可塑性樹脂と溶着する第3熱可塑性樹脂」とは、第1熱可塑性樹脂及び第3熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも一方が溶融する雰囲気下において、第1熱可塑性樹脂の溶融物と第3熱可塑性樹脂の溶融物とが分離せずに密着し、第1熱可塑性樹脂及び第3熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも一方が溶融しない雰囲気下において、第1熱可塑性樹脂と第3熱可塑性樹脂とが分離しないことを示す。
【0026】
(1)第1実施形態
本開示の第1実施形態に係る造形物の製造方法(以下、「第1製造方法」という。)について説明する。
【0027】
第1製造方法は、造形物を載置するための載置面を有する造形ステージを備える3Dプリンタを用いた材料押出法による造形物の製造方法である。
第1製造方法は、第1造形層用材料の溶融物により、造形ステージの載置面に配置した造形シートの表面上に少なくとも1つの第1造形層(以下、「第1造形層構造」という場合がある。)を形成する工程(以下、「第1造形層形成工程」という。)と、第2造形層用材料の溶融物により、少なくとも1つの第1造形層表面上に、少なくとも1つの第2造形層(以下、「第2造形層構造」という場合がある。)を形成する工程(以下、「第2造形層形成工程」という。)と、を有する。第1造形層用材料と、第2造形層用材料とは異なる。
以下、第1造形層形成工程及び第2造形層形成工程をまとめて「造形層形成工程」という。
【0028】
第1製造方法によれば、造形シートを用いない場合よりも反りが抑制された造形物を製造できるとともに、造形シートに溶着した造形物を、より短時間で造形シートから分離することができる。これは、以下の理由によると推測される。
第1製造方法では、第1造形層用材料の溶融物により、造形ステージに配置された造形シートの表面上に、第1造形層構造を形成する。これにより、第1造形層構造のうち最下層は、造形シートに溶着する。つまり、第1造形層構造、及び造形シートは、一体となる。また、造形シートは、造形ステージの載置面に配置されている。そのため、第1造形層構造の反りは、抑制される。
さらに、第1製造方法では、第2造形層用材料の溶融物により、第1造形層構造表面上に、第2造形層構造を形成する。これにより、例えば、第2造形層構造のうち最下層は、第1造形層構造のうち最上層に溶着する。つまり、第2造形層構造、第1造形層構造、及び造形シートは、一体となる。そのため、第2造形層構造の反りは、抑制される。
その結果、造形シートに溶着した造形物の反りは、造形ステージの載置面上に直接的に積層造形された造形物よりも抑制される。
一方、第1製造方法では、第1造形層用材料と、第2造形層用材料とは異なる。そのため、第1造形層用材料と第2造形層用材料とが同一の場合よりも、造形シートに溶着した造形物と造形シートとを分離しやすい。
その結果、第1製造方法では、造形シートに溶着した造形物をより短時間で造形シートから分離することができる。
このようにして、第1製造方法によれば、造形シートを用いない場合よりも反りが抑制された造形物を製造できるとともに、造形シートに溶着した造形物をより短時間で造形シートから分離することができる。
【0029】
以下、第1製造方法により造形される造形物ついて、図面を参照して、説明する。なお、図面に記載の構成は、実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
第1製造方法により造形される造形物は、図1に示す構成であることが好ましい。
図1は、第1製造方法の一例を説明するための造形物10、造形シート20、及び造形ステージ30の側面図である。図1中、符号10は造形物、符号11は第1造形層、符号12は第2造形層、符号20は造形シート、符号30は造形ステージ、符号TS11は少なくとも1つの第1造形層のうち最上層の表面、符号BS11は少なくとも1つの第1造形層の最下層の下面、符号S20は造形シート20の表面、符号S30は造形ステージ30の載置面を示す。
第1製造方法は、図1に示すように、造形物10を載置するための載置面S30を有する造形ステージ30を備える3Dプリンタを用いた材料押出法による造形物10の製造方法である。
第1製造方法は、第1造形層用材料の溶融物により、造形ステージ30の載置面S30に配置した造形シート20の表面S20上に少なくとも1つの第1造形層11を形成する工程と、第2造形層用材料の溶融物により、少なくとも1つの第1造形層11の表面TS11上に、少なくとも1つの第2造形層12を形成する工程と、を有する。第1造形層用材料と、第2造形層用材料とは異なる。
なお、図1では1つの第1造形層11が設けられているが、第1造形層11は少なくとも1層設けられていればよく、複数層設けられていてもよい。また、図1では2層の第2造形層12が設けられているが、第2造形層12は少なくとも1層設けられていればよく、3層以上であってもよい。
【0030】
第1造形層用材料と第2造形層用材料とが異なるとは、材料中に含まれる成分組成が異なることをいう。
例えば、材料中に含まれる樹脂の種類及び配合量、無機フィラーの有無、並びに、無機フィラーを含む場合は無機フィラーの種類及び配合量からなる群より選択される少なくとも1つが異なる場合に、第1造形層用材料と第2造形層用材料とが異なるとみなす。
例えば、材料中に含まれる樹脂の種類について、いずれも熱可塑性樹脂に属し、かつ、樹脂が同じモノマーに由来する構成単位を有する重合体である場合でも、熱可塑性プラスチックと熱可塑性エラストマーとでは、樹脂の種類は異なると判断する。
【0031】
以下、第1製造方法の詳細について説明する。なお、符号は省略する。
【0032】
一態様として、第1製造方法は、造形物の反りをより抑制する観点及び造形物をより短時間で造形シートから分離する観点から、第1造形層用材料は、第1熱可塑性樹脂を含有し、第2造形層用材料は、第1熱可塑性樹脂と溶着する第2熱可塑性樹脂を含有し、造形シートは、第1熱可塑性樹脂と溶着する第3熱可塑性樹脂を含有し、第1熱可塑性樹脂、第2熱可塑性樹脂、及び第3熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも1つは、結晶性の熱可塑性樹脂を含む、造形物の製造方法であってもよい。
【0033】
(1.1)積層造形工程
第1製造方法は、上述したように、第1造形層形成工程と、第2造形層形成工程とを有する。第1造形層形成工程、及び第2造形層形成工程は、この順で実行される。第1造形層形成工程、及び第2造形層形成工程が実行されることで、造形シートに溶着した造形物が得られる。
【0034】
積層造形工程には、3Dプリンタが用いられる。3Dプリンタは、例えば、第1押出ノズル、第2押出ノズル、及び造形ステージを備える。造形ステージは、造形物を載置するための載置面を有する。造形ステージの載置面には、図1に示すように、造形シートが配置されている。3Dプリンタ及び造形シートの詳細については、後述する。
【0035】
(1.1.1)第1造形層形成工程
第1造形層形成工程では、第1造形層用材料の溶融物により、造形シートの表面上に第1造形層構造を形成する。第1造形層構造のうち最下層は、造形シートに溶着する。
【0036】
第1造形層構造は、例えば、第1造形層用材料の溶融物が第1押出ノズルから押し出されることによって形成されてもよい。
第1押出ノズルのノズル温度は、第1造形層用材料が溶融する温度であればよく、第1造形層用材料の種類等に応じて適宜調整される。第1造形層用材料を溶融する温度は、例えば、第1熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度(Tg)のいずれか高い温度を基準として、+10℃~+150℃の温度としてもよい。第1熱可塑性樹脂については、後述する。
第1造形層の積層ピッチは、造形物の寸法等に応じて適宜調整される。第1造形層の積層ピッチは、層間接合強度の観点から、好ましくはノズル径の3/4以下、さらに好ましくはノズル径の1/2以下である。第1造形層の積層ピッチは、第1造形層の1層当たりの厚みに相当する。
第1造形層構造の充填率は、100%であってもよいし、100%未満であってもよい。充填率は、単位空間体積に占める造形層用材料の体積の比率を示す。
第1造形層構造の総厚みは、造形物のサイズ等に応じて適宜調整される。第1造形層構造の積層ピッチは、層間接合強度の観点から、好ましくはノズル径の3/4以下、さらに好ましくはノズル径の1/2以下である。
第1造形層の層数は、第1造形層の厚み、及び第1造形層の積層ピッチ等に応じて適宜選択され、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0037】
(1.1.2)第2造形層形成工程
第2造形層形成工程では、第2造形層用材料の溶融物により、第1造形層構造上に、第2造形層構造を形成する。第2造形層構造は、第1造形層構造の最上層の表面に形成されることが好ましい。第2造形層構造の最下層は、第1造形層構造の最上層に溶着していてもよい。第2造形層構造は、造形物の主要部分を構成する。
【0038】
第2造形層構造は、例えば、第2造形層用材料の溶融物が第2押出ノズルから押し出されることによって形成されてもよい。
第2押出ノズルのノズル温度は、第2造形層用材料が溶融する温度であればよく、第2造形層用材料の種類等に応じて適宜調整される。第2造形層用材料を溶融する温度は、例えば、第2熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度(Tg)のいずれか高い温度を基準として、+10℃~+150℃の温度としてもよい。第2熱可塑性樹脂については、後述する。
第2造形層の積層ピッチは、第2押出ノズルのノズル径等に応じて適宜調整される。第2造形層の積層ピッチは、層間接合強度の観点から、好ましくはノズル径の3/4以下、さらに好ましくはノズル径の1/2以下である。第2造形層の積層ピッチは、第2造形層の1層当たりの厚みに相当する。
第2造形層構造の充填率は、所望の造形物等に応じて適宜選択され、100%であってもよいし、100%未満であってもよい。
第2造形層構造の総厚みは、造形物のサイズ等に応じて適宜調整される。
第2造形層の層数は、1層以上であればよく、3Dモデルデータ、第2造形層の厚み、及び第2造形層の積層ピッチ等に応じて適宜選択され、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0039】
(1.2)分離工程
第1製造方法は、分離工程を更に有してもよい。第1製造方法が分離工程を更に有する場合、分離工程は、第1造形層形成工程及び第2造形層形成工程が実行された後に、実行される。
【0040】
分離工程では、造形シートに溶着した造形物から造形シートを分離する。これにより、造形物が得られる。
【0041】
造形シートに溶着した造形物から造形シートを分離する方法は、特に限定されないが、例えば、スクレイパーを用いて、造形シートと第1造形層構造との界面を掻いて、造形シートに溶着した造形物から造形シートを分離することが好ましい。第1製造方法では、スクレイパーを用いて造形シートに溶着した造形物から造形シートをより短時間で分離することができる。
造形シートと第1造形層構造との界面とは、造形シートの表面と、第1造形層構造の最下層の下面との接触面を示す。
【0042】
(1.3)第1造形層用材料
第1造形層用材料は、第1造形層のフィードストックである。
【0043】
第1造形層用材料は、第1熱可塑性樹脂、及び無機フィラーを含有することが好ましい。これにより、第1造形層構造と造形シートとの層間接合強度は、第2造形層構造と造形シートとの層間接合強度に対し比較的弱くなり易く、造形シートに溶着した造形物をより短時間で造形シートから分離しやすくなる。
【0044】
第1製造方法では、無機フィラーの含有量の下限値は、第1造形層用材料の総質量に対して、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。無機フィラーの含有量の上限値は、第1造形層用材料の総質量に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
無機フィラーの含有量が25質量%以上であれば、第1造形層構造と造形シートとの層間接合強度は、第2造形層構造と造形シートとの層間接合強度に対し、比較的弱くなり易く、造形シートに溶着した造形物をより短時間で造形シートから分離しやすくなる。例えば、スクレイパーを用いて、造形シートと造形物との界面を容易に剥離しやすく、造形物の分離がより容易になりやすい。
無機フィラーの含有量の上限値が80質量%以下であれば、無機フィラーが第1造形層から脱離しにくい。
以上の観点から、無機フィラーの含有量は、第1造形用材料の総質量に対して、好ましくは25質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上70質量%以下である。特に、無機フィラーの含有量は、30質量%以上70質量%以下の範囲内であれば、造形シートに溶着した造形物を造形シートから分離するのに要する時間(以下、「分離時間」という。)と、得られる造形物の平均反り量とのバランスがより優れる。分離時間及び造形物の平均反り量の各々は、実施例に記載の方法と同様にして測定される。
【0045】
(1.3.1)無機フィラー
無機フィラーの材質は、無機化合物であれば特に限定はなく、公知のものが利用できる。無機フィラーとしては、酸化物系フィラー、水酸化物系フィラー、珪酸塩系フィラー、堆積岩系フィラー、粘土鉱物系フィラー、磁性系フィラー、導電性フィラー、熱伝導性フィラー、硫酸塩系フィラー、亜硫酸塩系フィラー、炭酸塩系フィラー、及びチタン酸塩系フィラー等が挙げられる。
酸化物系フィラーとしては、シランカップリング剤などにより表面処理が施されたカーボンブラック、カーボンブラック、グラファイト、微粉ケイ酸、シリカ、アルミナ、酸化鉄、フェライト、酸化マグネシウム、酸化チタン、三酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化バリウム、及び酸化カルシウム等が挙げられる。シリカとしては、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、珪藻土、及び石英等が挙げられる。
水酸化物系フィラーとしては、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウム等が挙げられる。
珪酸塩系フィラーとしては、珪酸アルミニウム(以下、「クレー」ともいう、含水珪酸アルミニウム塩も含む)、珪酸マグネシウム(含水珪酸マグネシウム塩(以下、「タルク」ともいう)を含む)、マイカ、カオリン、珪酸カルシウム(含水珪酸カルシウム塩も含む)、ガラス繊維、ガラスフレーク、及びガラスビーズ等が挙げられる。
堆積岩系フィラーとしては、珪藻土、及び石灰岩等が挙げられる。
粘土鉱物系フィラーとしては、モンモリロン石(モンモリロンナイト)、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミニアンバイデライト、ノントロン石、アルミニアンノントロナイト、サポー石(つまりサポナイト)、アルミニアンサポー石、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、及びベントナイト等が挙げられる。
磁性系フィラーとしては、フェライト、鉄、及びコバルト等が挙げられる。
導電性フィラーとしては、銀、金、銅、及びこれらの合金等が挙げられる。
熱伝導性フィラーとしては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及びシリコーンカーバイト等が挙げられる。
硫酸塩系フィラーとしては、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、及び硫酸カルシウム等が挙げられる。
亜硫酸塩系フィラーとしては、亜硫酸カルシウム等が挙げられる。
炭酸塩系フィラーとしては、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、及びドロマイト等が挙げられる。
チタン酸塩系フィラーとしては、チタン酸バリウム、及びチタン酸カリウム等が挙げられる。
【0046】
無機フィラーは、タルク、炭酸カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
無機フィラーは、第1押出ノズルのノズル温度で体積変化を起こさないこと、無機フィラーの熱膨張係数が第1熱可塑性樹脂の熱膨張係数と比べ低いことから、無機フィラーを含む第1造形層用材料を用いて造形された造形物は、変形(特に反り)が、より抑制される。第1押出ノズルのノズル温度で無機フィラーが体積変化を起こさないとは、第1押出ノズルのノズル温度において、無機フィラーが溶融しないこと、無機フィラーが溶解しないこと、及び無機フィラーが相転移を起こさないことを示す。
タルクを含む第1造形層用材料を用いて造形された造形物は、取り外した後の外観の平滑性に優れ、且つ短時間で造形シートから分離される。
炭酸カルシウムを含む第1造形層用材料を用いて造形された造形物は、造形物の反りがより抑制される。また、炭酸カルシウムを含む第1造形層用材料を用いて造形された造形物は、白色度に優れ、高い意匠性を有する。
硫酸マグネシウムを含む第1造形層用材料を用いて造形された造形物は、造形物の反りがより抑制され、かつ、造形物がより短時間で造形シートから分離される。
【0047】
無機フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状、板状、鱗片状、針状、繊維状等が挙げられる。
無機フィラーの体積平均粒径の上限値は、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下である。無機フィラーの体積平均粒径の下限値は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。
無機フィラーの体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置等の粒度分布測定装置を用い、無機フィラーを水中に分散した状態で測定した各粒子の粒径に基づく各粒子の体積を小粒径側から積算した場合に積算体積が全体積の50%となる粒径値をいう。
【0048】
(1.3.2)第1熱可塑性樹脂
第1熱可塑性樹脂は、熱可塑性プラスチック及び熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含有することが好ましく、熱可塑性プラスチック及び熱可塑性エラストマーの両方を含有することがより好ましい。
第1熱可塑性樹脂が熱可塑性プラスチック及び熱可塑性エラストマーを含有することで、第1造形層構造の変形はより効果的に抑制される。
【0049】
第1熱可塑性樹脂は、造形物の反りをより抑制する観点及び造形物をより短時間で造形シートから分離する観点から、結晶性の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0050】
熱可塑性プラスチックは、25℃での引張弾性率が6.0×10Pa以上である熱可塑性樹脂を示す。熱可塑性エラストマーは、25℃での引張弾性率が6.0×10Pa未満である熱可塑性樹脂を示す。
引張弾性率は、JIS K7161-2:2014に準拠した測定値である。
【0051】
(1.3.2.1)熱可塑性プラスチック
熱可塑性プラスチックは、ゴム状弾性が小さく変形しにくい。ゴム状弾性とは、樹脂に荷重が加えられると樹脂の形状が変形し、樹脂に加えられた荷重が除かれると樹脂の形状が元の形状に戻ろうとする性質を示す。
【0052】
熱可塑性プラスチックは、特に制限されず、公知の熱可塑性プラスチックが適用できる。熱可塑性プラスチックは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
例えば、熱可塑性プラスチックとしては、汎用プラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチック等が挙げられる。
汎用プラスチックとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、プロピレン系重合体(プロピレン単独重合体(PP)等)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、スチレンアクリロニトリルコポリマー(AS樹脂)、アクリル樹脂(PMMA等)などが挙げられる。
エンジニアリング・プラスチックとしては、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、環状ポリオレフィン(COP)等が挙げられる。
スーパーエンジニアリング・プラスチックとしては、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられる。
中でも、熱可塑性プラスチックは、造形物の反りをより抑制する観点及び造形物をより短時間で造形シートから分離する観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)、プロピレン系重合体、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)及びポリアセタール(POM)からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、プロピレン系重合体を含むことがより好ましい。
【0053】
熱可塑性プラスチックは、造形物の反りをより抑制する観点及び造形物をより短時間で造形シートから分離する観点から、結晶性の熱可塑性プラスチック及び非晶性の熱可塑性プラスチックの少なくとも1つを含有することが好ましく、結晶性の熱可塑性プラスチックを含有することがより好ましい。熱可塑性プラスチックが結晶性の熱可塑性プラスチックを含有することで、造形物の機械的強度と耐衝撃性とのバランスに優れる。結晶性の熱可塑性プラスチックは、結晶性の熱可塑性樹脂の一例である。
結晶性の熱可塑性プラスチックは、高密度ポリエチレン(HDPE)、プロピレン系重合体、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、及びポリアセタール(POM)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、プロピレン系重合体を含むことがさらに好ましい。
熱可塑性プラスチックの「結晶性」とは、示差走査熱量測定において、吸熱ピークを有することを指す。熱可塑性プラスチックの「非晶性」とは、示差走査熱量測定において、明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0054】
プロピレン系重合体は、少なくともプロピレンを構成単位として有する重合体である。
プロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体であっても、プロピレンと他の単量体との共重合体であってもよい。プロピレン系重合体が共重合体である場合、プロピレン系重合体としては、例えば、プロピレンと炭素数2~20のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く。)との共重合体が挙げられる。プロピレンと炭素数2~20のα-オレフィンとの共重合体としては、例えば、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、これらの混合物等が挙げられる。
【0055】
プロピレン系重合体が共重合体である場合、プロピレン系重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0056】
プロピレン系重合体が共重合体である場合、プロピレン系重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の比率は、所望する第1造形層構造の性質に応じて適宜設計してよい。例えば、プロピレン系重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の比率は、プロピレン系重合体中の全構成単位100モル%に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%~99.5モル%、さらに好ましくは80モル%~98モル%である。
【0057】
プロピレン系重合体の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック及びこれらの混合体のいずれであってもよい。
【0058】
プロピレン系重合体の含有量は、熱可塑性プラスチックの総量100質量%に対して、好ましくは95.0質量%以上、より好ましくは98.0質量%以上、さらに好ましくは99.9質量%以上である。
【0059】
熱可塑性プラスチックの結晶化温度(Tc)の上限値は、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である。熱可塑性プラスチックの結晶化温度(Tc)の下限値は、好ましくは90℃以上、より好ましくは110℃以上である。
熱可塑性プラスチックの結晶化温度は、示差走査熱量計(DSC)により降温速度10℃/分の条件で、測定される。
【0060】
熱可塑性プラスチックの結晶化度の上限値は、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下である。熱可塑性プラスチックの結晶化度の下限値は、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上である。
熱可塑性プラスチックの結晶化度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて得られた熱流カーブのうち主成分の融解に由来する融解熱より算出される。熱流カーブは、熱可塑性プラスチックを窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られる。具体的には、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC-7)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより熱流カーブが得られる。得られた熱流カーブのうち主成分の融解に由来する融解熱より下記の式を用いて、融解熱は算出される。
結晶化度=(ΔH/ΔH0)×100(%)
式中、ΔHは熱可塑性プラスチックの主成分の融解に由来する融解熱カーブより求めた融解熱量(J/g)であり、ΔH0は主成分の完全結晶の融解熱量(J/g)である。例えば、主成分がエチレンの場合、ΔH0は293J/gであり、主成分がプロピレンの場合、ΔH0は210J/gである。
【0061】
熱可塑性プラスチックの融点の上限値は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。熱可塑性プラスチックの融点の下限値は、好ましくは90℃以上、より好ましくは110℃以上である。
融点の測定は、後述する熱可塑性エラストマーの融点の測定方法と同様にして行うことができる。
【0062】
(1.3.2.2)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーは、ゴム状弾性を有する。
【0063】
熱可塑性エラストマーは、α-オレフィン由来の構成単位と該α-オレフィンと異なる他のオレフィン由来の構成単位とを含む共重合体であることが好ましい。
【0064】
α-オレフィンとしては、通常、炭素数2~20のα-オレフィンを1種単独で含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。中でも、α-オレフィンは、炭素数が3以上であるα-オレフィンが好ましく、炭素数3~8のα-オレフィンが特に好ましい。
【0065】
α-オレフィンとして、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。α-オレフィンは、1種又は2種以上が用いられる。
中でも、入手の容易さの観点から、α-オレフィンとして、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンが好ましい。
【0066】
α-オレフィンと異なる他のオレフィンとしては、炭素数2~4のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等を挙げることができる。中でも、α-オレフィンと異なる他のオレフィンは、炭素数2~3のオレフィンがより好ましい。
【0067】
熱可塑性エラストマーである共重合体には、例えば、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、ブテン・α-オレフィン共重合体が含まれる。
【0068】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-1-ブテン共重合体(EBR)、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体(EOR)、プロピレン-1-ブテン共重合体(PBR)、プロピレン-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体(POR)等が挙げられる。
【0069】
中でも、熱可塑性エラストマーとしては、炭素数2~8のα-オレフィン由来の構成単位と炭素数2~3のオレフィン由来の構成単位とを含む共重合体が好ましく、熱可塑性プラスチック(特に、プロピレン系重合体)と溶着しやすく、第1造形層構造の変形がより抑制される点で、プロピレン系エラストマーが好ましい。
【0070】
さらに、α-オレフィンは、ランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
【0071】
熱可塑性エラストマーの融点Tmは、30℃以上120℃以下であることが好ましい。
熱可塑性エラストマーの融点が30℃以上120℃以下であると、熱可塑性エラストマーは材料押出法で造形された第1造形層間において、接着剤として作用する。これにより、第1造形層間の接着強度は向上する。
融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって吸熱曲線に現れる融解ピーク位置の温度Tmとして求められる値である。融点は、試料をアルミパンに詰め、100℃/minで230℃まで昇温し、230℃で5分間保持した後、-10℃/minで-70℃まで降温し、ついで10℃/minで昇温する際の吸熱曲線より求められる。
【0072】
熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR;230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.5g/10min以上、より好ましくは1g/10min以上、さらに好ましくは2g/10min以上、特に好ましくは5g/10min以上である。
熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR;230℃、2.16kg荷重)の上限値は、好ましくは70g/10min以下、より好ましくは35g/10min以下、さらに好ましくは30g/10min以下である。
熱可塑性エラストマーのMFRの上限値及び下限値がこの範囲内であると、第1造形層構造の変形をより効果的に抑制することができる。
メルトフローレート(Melt Flow Rate;MFR)は、ASTM D1238-65Tに準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される値である。
【0073】
熱可塑性エラストマーのショアD硬度の上限値は、好ましくは60以下である。第1熱可塑性エレストマーのショアD硬度の下限値は、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。
熱可塑性エラストマーの硬度がショアD硬度で30以上であると、熱可塑性エラストマーは変形し難くなる。換言すると、熱可塑性エラストマーの形状が維持され易くなる。そのため、後述する3Dプリンタを用いて第1造形層構造が形成される際、熱可塑性エラストマーがシリンダーのスクリューへ入り込みやすくなる。その結果、第1造形層用材料の溶融物の吐出効率が良くなる。これにより、表面が滑らかで外観に優れた造形物が得られやすい。
ショアD硬度は、ASTM D2240に記載の方法に準拠して測定される値である。
【0074】
熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、三井化学株式会社製のタフマー(登録商標)シリーズ(例:タフマーDF605、タフマーDF610、タフマーDF640、タフマーDF710、タフマーDF740、タフマーDF7350、タフマーDF810、タフマーDF840、タフマーDF8200、タフマーDF940、タフマーDF9200、タフマーDF110、タフマーH-0530S、タフマーH-1030S、タフマーH-5030S、タフマーXM-7070、タフマーXM-7080、タフマーXM-7090、タフマーBL2491M、タフマーBL2481M、タフマーBL3110M、タフマーBL3450M、タフマーMA8510、タフマーMH7010、タフマーMH7020、タフマーMH5020、タフマーPN-2070、タフマーPN-3560)などを挙げることができる。
上記の中でも、熱可塑性プラスチック(特に、プロピレン系重合体)と溶着しやすく、第1造形層構造の変形がより抑制される点で、プロピレン系エラストマーであるタフマーXMシリーズが好ましい。
タフマーXMシリーズは、熱可塑性プラスチック(特に、プロピレン系重合体)と溶着しやすく、かつ、第1造形層構造に要求される破断応力αを維持することができる。これにより、材料押出法で造形される第1造形層間の接着強度は向上する。
【0075】
熱可塑性エラストマーは、プロピレン系エラストマーであることが好ましい。プロピレン系エラストマーは、少なくともプロピレンを構成単位として有する熱可塑性エラストマーである。
熱可塑性エラストマーは、プロピレン系エラストマーであり、融点が80℃以上120℃以下で、ショアD硬度が40以上60以下で、MFRが2g/10min以上20g/10min以下であることが好ましい。これにより、第1造形層構造は、応力歪がより小さく、より反りにくくなる。
融点が80℃以上120℃で、ショアD硬度が40以上60以下で、MFRが2g/10min以上20g/10min以下であるプロピレン系エラストマーとしては、タフマーXM-7090が挙げられる。
【0076】
(1.3.3)他の成分
第1造形層用材料は、熱可塑性樹脂及び無機フィラー以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、整色剤、難燃剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、つや消し剤、衝撃強度改良剤等が挙げられる。
【0077】
(1.4)第2造形層用材料
第2造形層用材料は、第2造形層のフィードストックである。
第2造形層用材料と、第1造形層用材料とは異なる。
【0078】
第2造形層用材料は、第1熱可塑性樹脂と溶着する第2熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。これにより、例えば、第2造形層構造のうちの最下層は、第1造形層構造のうちの最上層により強固に溶着する。
【0079】
第2熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂として例示したものと同様のものが挙げられる。第2熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
第2熱可塑性樹脂は、熱可塑性プラスチック及び熱可塑性エラストマーを含有することが好ましい。第2熱可塑性樹脂が熱可塑性プラスチック及び熱可塑性エラストマーを含有することで、第2造形層構造の変形はより効果的に抑制される。
熱可塑性エラストマーの含有量は、第2造形層用材料の全質量に対して、好ましくは0.1質量%超え100質量%未満、より好ましくは10質量%以上100質量%未満、さらに好ましくは10質量%以上70質量%以下、特に好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
【0081】
第2造形層用材料は、第1造形層構造との親和性を高め、造形物の反りをより抑制する観点から、無機フィラーを更に含有してもよい。第2造形層用材料に含まれる無機フィラーは、第1造形層用材料に含まれる無機フィラーとして例示したものと同様のものが挙げられる。第2造形層用材料に含まれる無機フィラーは、第1造形層用材料に含まれる無機フィラーと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0082】
第2造形層用材料が無機フィラーを含有する場合、無機フィラーの含有量は、第2造形層構造の変形(特に反り)をより抑制する観点から、第2造形層用材料の全質量に対して、好ましくは5質量%以上70質量%以下、より好ましくは5質量%超え55質量%以下、さらに好ましくは5質量%超え45質量%以下である。
【0083】
第1造形層用材料及び第2造形層用材料の両方に無機フィラーが含まれる場合、両者の含有量の比(第1造形層用材料中の無機フィラー/第2造形層用材料中の無機フィラー)は、例えば、第1造形層構造との親和性を高め、造形物の反りをより抑制する観点から、0.5以上8以下であることが好ましく、1以上4以下であることがより好ましい。
【0084】
(1.5)造形シート
造形シートは、造形物を固定するためのシートである。
造形シートのサイズは、造形物の寸法等に応じて適宜調整される。造形シートの厚みは、好ましくは0.01mm以上10.00mm以下、より好ましくは0.05mm以上5.00mm以下、さらに好ましくは0.10mm以下3.00mm以下である。
【0085】
造形シートは、第1熱可塑性樹脂と溶着する第3熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。これにより、第1造形層構造のうち最下層は、造形シートにより強固に溶着する。
【0086】
第3熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂として例示したものと同様のものが挙げられる。第3熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0087】
造形シート20は、無機フィラーを更に含有してもよい。造形シート20に含まれる無機フィラーとしては、第1造形層用材料に含まれる無機フィラーとして例示したものと同様のものが挙げられる。造形シート20に含まれる無機フィラーは、第1造形層用材料に含まれる無機フィラーと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0088】
第1熱可塑性樹脂、第2熱可塑性樹脂、及び第3熱可塑性樹脂の少なくとも1つは、結晶性の熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。これにより、機械的強度と耐衝撃性とのバランスに優れる。結晶性の熱可塑性樹脂は、結晶性の熱可塑性プラスチックを含む。
第1熱可塑性樹脂、第2熱可塑性樹脂、及び第3熱可塑性樹脂の各々は、結晶性の熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。これにより、機械的強度と耐衝撃性とのバランスにより優れる。
【0089】
結晶性の熱可塑性樹脂は、プロピレン系重合体を含有することが好ましい。これにより、機械的強度と耐衝撃性とのバランスに加え、耐薬品性、及び耐候安定性に優れる。
【0090】
(1.6)3Dプリンタ
3Dプリンタは、例えば、複数の2次元データをもとに、第1押出ノズルから第1造形層用材料の溶融物を造形シートの表面上に押し出し、次いで、第2押出ノズルから第2造形層用材料を第1造形層構造上に押し出して、3Dモデルデータを実体化する。複数の2次元データは、例えば、スライサーソフトウェアによって、3Dモデルデータが輪切りにされて、生成される。複数の2次元データは、例えば、Gコードデータを含む。
【0091】
3Dプリンタは、公知の装置であってもよい。
【0092】
造形ステージは、載置面を有する。載置面は、例えば、平面状である。造形ステージは、例えば、アルミ板を含む。
造形ステージの載置面には、造形シートが配置されている。
【0093】
造形ステージの載置面には、造形シートが固着していることが好ましい。これにより、第1造形層構造の反りは、造形シートを介した造形ステージと造形シートとの固着力によって抑制される。更に、第2造形層構造の反りは、造形シート及び第1造形層構造を介した造形ステージと造形シートとの固着力によって抑制される。その結果、造形シートに溶着した造形物の反りは、より抑制される。
造形ステージの載置面に造形シートを固着させる方法としては、例えば、接着剤、両面粘着テープなどが挙げられる。造形ステージの温度は、例えば、0℃以上150℃以下である。
【0094】
(1.7)造形物
一態様において、本開示の第1実施形態に係る造形物(以下、「第1造形物」という。)は、第1方向に沿って積層された複数の造形層を有する。複数の造形層のうち、第1方向の一端に位置する造形層である表面造形層の材料と、表面造形層を除いた他の造形層(以下、「他の造形層」という。)の材料とは、異なる。
【0095】
第1方向とは、前記複数の造形層が積層される方向を意味する。
第1方向の一端に位置する造形層である表面造形層とは、前記複数の造形層の最外層のうちの1つの造形層を意味する。
【0096】
第1造形物によれば、反りが抑制されている。
【0097】
表面造形層の材料と他の造形層の材料とが異なるとは、材料中に含まれる成分組成が異なることをいう。
例えば、材料中に含まれる樹脂の種類及び配合量、無機フィラーの有無、並びに、無機フィラーを含む場合は無機フィラーの種類及び配合量からなる群より選択される少なくとも1つが異なる場合に、表面造形層の材料と他の造形層の材料とが異なるとみなす。
例えば、材料中に含まれる樹脂の種類について、いずれも熱可塑性樹脂に属し、かつ、樹脂が同じモノマーに由来する構成単位を有する重合体である場合でも、熱可塑性プラスチックと熱可塑性エラストマーとでは、樹脂の種類は異なると判断する。
【0098】
表面造形層は、第1熱可塑性樹脂及び無機フィラーを含有することが好ましい。
第1造形物の第1熱可塑性樹脂は、第1製造方法における第1熱可塑性樹脂として例示したものと同様のものが挙げられる。第1造形物の無機フィラーは、第1製造方法における無機フィラーとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0099】
表面造形層の無機フィラーの含有量の下限値は、表面造形層の総質量に対して、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上である。表面造形層の無機フィラーの含有量の上限値は、表面造形層の総質量に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
無機フィラーの含有量が25質量%以上であれば、表面造形層の第1熱可塑性樹脂の含有量は、表面造形層の無機フィラーの含有量が25質量%未満である場合よりも少ない。そのため、表面造形層の第1熱可塑性樹脂に起因する表面造形層の経時変化は発生しにくい。
第1造形物は、第1製造方法によって好適に製造され得る。この場合、表面造形層は、第1製造方法における第1造形層構造に対応する。第1造形物が第1製造方法によって製造される場合、造形シートに溶着した第1造形物から造形シートが分離されやすい。そのため、造形シートに溶着した第1造形物から造形シートが分離される際に、第1造形物に損傷が発生しにくい。
【0100】
第1造形物のサイズ等は、特に限定されず、適宜選択される。第1造形物の表面造形層の厚みは、第1造形層構造の総厚みと同一であってもよい。表面造形層としては、第1造形層構造として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0101】
他の造形層は、第1熱可塑性樹脂と溶着する第2熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。これにより、表面造形層は、他の造形層から脱離しにくい。
他の造形層としては、第2造形層構造として例示したものと同様のものが挙げられる。第1造形物の第2熱可塑性樹脂は、第1製造方法における第2熱可塑性樹脂として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0102】
(2)第2実施形態
次に、本開示の第2実施形態に係る造形物の製造方法(以下、「第2製造方法」という。)について説明する。
【0103】
第2製造方法では、造形シートが無機フィラーを含有する。
【0104】
第2製造方法は、造形物を載置するための載置面を有する造形ステージを備える3Dプリンタを用いた材料押出法による造形物の製造方法である。
第2製造方法は、造形層用材料の溶融物により、造形ステージの載置面に配置された造形シートの表面上に少なくとも1つの造形層(以下、「造形層構造」という。)を形成する工程(以下、「積層造形工程」という。)。造形層用材料は、第1熱可塑性樹脂を含有する。造形シートは、第2熱可塑性樹脂、及び無機フィラーを含有する。
【0105】
第2製造方法によれば、造形シートを用いない場合よりも反りが抑制された造形物を製造できるとともに、造形シートに溶着した造形物をより短時間で造形シートから分離することができる。これは、以下の理由によると推測される。
第2製造方法では、造形層用材料の溶融物により、造形ステージの載置面に配置された造形シートの表面上に、造形層構造を形成する。これにより、造形層構造のうち最下層は、造形シートに溶着する。つまり、造形層構造、及び造形シートは、一体となる。また、造形シートは、造形ステージの載置面に配置されている。そのため、造形層構造の反りは、抑制される。
その結果、第2製造方法によって得られる造形物の反りの発生は、造形ステージの載置面上に直接的に積層造形された造形物よりも抑制される。
一方、第2製造方法では、造形シートは、無機フィラーを含有する、これにより、造形シートと造形層構造との層間接合強度は、造形層構造の層間接合強度に対して、比較的弱い。そのため、造形シートに溶着した造形物と造形シートとを分離しやすい。
その結果、第2製造方法では、造形シートに溶着した造形物をより短時間で造形シートから分離することができる。
このようにして、第2製造方法によれば、造形シートを用いない場合よりも反りが抑制された造形物を製造できるとともに、造形シートに溶着した造形物をより短時間で造形シートから分離することができる。
【0106】
(3.1)積層造形工程
第2製造方法の積層造形工程では、造形層用材料の溶融物により、造形ステージの載置面に配置した造形シートの表面上に造形層構造を形成する。これにより、造形物が得られる。
【0107】
第2製造方法の積層造形工程には、3Dプリンタが用いられる。3Dプリンタは、例えば、押出ノズル、及び造形ステージを備える。造形ステージの載置面には、造形シートが配置されている。押出ノズルの数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。押出ノズルとしては、第1製造方法における第2押出ノズルとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0108】
第2製造方法の積層造形工程は、第2造形層形成工程と同様にして実行され得る。
【0109】
(3.2)分離工程
第2製造方法は、分離工程を有してもよい。
分離工程では、造形シートに溶着した造形物から造形シートを分離することにより、造形物が得られる。
【0110】
造形シートに溶着した造形物から造形シートを分離する方法としては、特に限定されず、スクレイパーを用いて、造形シートに溶着した造形物と造形シートとの界面を掻いて、造形シートに溶着した造形物から造形シートを手作業で分離することが好ましい。第2製造方法では、スクレイパーを用いて手作業で造形シートに溶着した造形物から造形シートをより短時間で分離することができる。
【0111】
(3.3)造形層用材料
造形層用材料は、造形層のフィードストックである。
造形層用材料は、第1製造方法における第2造形層用材料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0112】
(3.4)造形シート
造形シートは、造形物を固定するためのシートである。
造形シートのサイズは、造形物の寸法等に応じて適宜調整される。造形シートの厚みは、好ましくは0.01mm以上10.00mm以下、より好ましくは0.05mm以上5.00mm以下、さらに好ましくは0.10mm以上3.00mm以下である。
【0113】
造形シートは、第2熱可塑性樹脂、及び無機フィラーを含有する。
第2熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂と溶着することが好ましい。これにより、造形物群のうち最下層は、造形シートの表面により強固に溶着する。
第2製造方法の第2熱可塑性樹脂としては、第1製造方法の第1熱可塑性樹脂として例示したものと同等のものが挙げられる。
【0114】
第2製造方法では、無機フィラーの含有量の下限値は、造形層用材料の総質量に対して、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上である。無機フィラーの含有量の上限値は、造形層用材料の総質量に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
造形シートの無機フィラーの含有量の下限値が25質量%以上であれば、第1造形層構造と造形シートとの層間接合強度は、造形シートの無機フィラーの含有量の下限値が25質量%未満である場合と比べて弱い。そのため、スクレイパーを用いて、造形シートと造形物との界面を掻きやすい。その結果、造形シートに溶着した造形物から造形シートを分離しやすい。
造形シートの無機フィラーの含有量の上限値が80質量%以下であれば、無機フィラーが造形シートから脱離しにくい。
【0115】
無機フィラーとしては、第1製造方法の第1造形層用材料に含まれる無機フィラーとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【実施例
【0116】
以下、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0117】
-材料の準備-
本実施例で用いた材料の詳細は、以下の通りである。
(熱可塑性エラストマー)
・XM7090:「タフマー(登録商標)XM-7090」(三井化学株式会社製、材質:プロピレン系重合体、融点Tm:98℃、ショアD硬度:58、MFR:7.0g/min、25℃での引張弾性率:6.0×10Pa未満)
なお、融点Tm、ショアD硬度、及びMFRの各々の値は、カタログ値である。
【0118】
(熱可塑性プラスチック)
・J105G:「プライムポリプロ(登録商標)J-105G」(株式会社プライムポリマー製、材質:プロピレン単独重合体、結晶化温度Tc:116.4℃、結晶化度:52.2%、25℃での引張弾性率:6.0×10Pa以上)
なお、結晶化温度Tc、及びショアD硬度の各々の値は、カタログ値である。
【0119】
(無機フィラーの原料)
・タルク:体積平均粒径5μm~10μm
・HG170(浅田製粉株式会社製、形態:マスターバッチ、構成材料:タルク及び熱可塑性プラスチック、熱可塑性プラスチックの種類:プロピレン系重合体、タルクの含有量:70質量%)
・「GAT40」の含有量が50質量%となるように、「GAT40」をプロピレン系重合体と混錬しマスターバッチとしたもの(GAT40MB50と称する)(日本タルク株式会社製、形態:マスターバッチ、構成材料:タルク及び熱可塑性プラスチック、熱可塑性プラスチックの種類:プロピレン系重合体、タルクの含有量:50質量%)
・「GAT40」の含有量が60質量%となるように、「GAT40」をプロピレン系重合体と混錬しマスターバッチとしたもの(GAT40MB60と称する)(日本タルク株式会社製、形態:マスターバッチ、構成材料:タルク及び熱可塑性プラスチック、熱可塑性プラスチックの種類:プロピレン系重合体、タルクの含有量:60質量%)
なお、「GAT40」の含有量とは、マスターバッチの総質量に対する「GAT40」の質量を示す。タルクの含有量は、マスターバッチの総質量に対するタルクの質量を示す。
・2080K(竹原化学工業株式会社製、形態:マスターバッチ、構成材料:炭酸カルシウム及び熱可塑性プラスチック、熱可塑性プラスチックの種類:プロピレン系重合体、炭酸カルシウムの含有量:80質量%)
・WF-70N-1(浅田製粉株式会社製、形態:マスターバッチ、構成材料:硫酸マグネシウム及び熱可塑性プラスチック、熱可塑性プラスチックの種類:プロピレン系重合体、硫酸マグネシウムの含有量:70質量%)
【0120】
(造形シート)
・PPシート:「高透明 PPシート」(株式会社ジョーホク製、材質:プロピレン系重合体、形態:シート、厚み:0.25mm)
【0121】
[実施例1]
(積層造形工程)
材料押出法用3Dプリンタ(エス.ラボ株式会社製、GEM444D)の造形ステージ(材質:アルミ板)に両面粘着テープ(「No.5000NS」、日東電工株式会社製)を貼り付けた。次いで、造形ステージに貼り付けられた両面粘着テープの表面上にPPシートを貼り付けた。PPシートの造形ステージ側の面の全面は、両面粘着テープと接触していた。これにより、造形ステージにPPシートを固着した。
次に、第1ホッパーに表1に記載の第1造形層用材料を投入し、第1ホッパーを介して第1造形層用材料を第1シリンダー内に供給した。次いで、第1シリンダーに設けられた第1ヒーターにより第1造形層用材料の温度を180℃~240℃に加熱し、第1造形層用材料を溶融させた。
第2ホッパーに下記及び表2に記載の成分の第2造形層用材料を投入し、第2ホッパーを介して第2造形層用材料を第2シリンダー内に供給した。次いで、第2シリンダーに設けられた第2ヒーターにより第2造形層用材料の温度を180℃~240℃に加熱し、第2造形層用材料を溶融させた。
【0122】
<第2造形層用材料の成分>
・「J105G」(熱可塑性プラスチック) :40質量%
・「XM7090」(熱可塑性エラストマー) :40質量%
・「タルク」(無機フィラー) :20質量%
【0123】
次に、アプリケーションソフトウェア(Simplify3D社製の「Simplify3D」)で、下記の3Dモデルデータを輪切りにして、複数の2次元データを生成した。複数の2次元データをもとに、アプリケーションソフトウェアの設定パラメータを下記のとおりに設定した。
次いで、2次元データをもとに、第1押出ノズル(ノズル径:3mm)から第1造形層用材料の溶融物をPPシートの表面上に押し出して、第1造形層構造を形成した。この際、第1造形層構造の最下層は、PPシートに溶着していた。
次いで、2次元データをもとに、第1押出ノズルから第2造形層用材料の溶融物を第1造形層の表面上に押し出した。次いで、第2押出ノズルから第2造形層用材料の溶融物を第2造形層の表面上に押し出して、第2造形層構造を順次積層した。この際、第2造形層構造の最下層は、第1造形層構造の最上層に溶着していた。
このようにして、PPシートに溶着した測定用ハニカム造形物40を得た。以下、PPシートと、PPシートに溶着した測定用ハニカム造形物40とをまとめて「測定用溶着体」という。
3Dプリンタから造形ステージを取り外し、造形ステージに固着された測定用溶着体を放置して、測定用溶着体を室温まで冷却した。測定用溶着体において、測定用ハニカム造形物40の下面(形状:長方形、サイズ:250mmD×100mmW)の全面は、PPシートに溶着していた。
【0124】
<3Dモデルデータ>
・250mmD×100mmW×16mmHの直方体
<第1造形層の設定パラメータ>
・使用ノズル :第1押出ノズル
・造形スピード :3000mm/min
・ノズル温度 :240℃
・積層ピッチ :1.5mm
・層数 :1層
・充填率 :100%
・充填パターン :ソリッド
・造形ステージの温度 :60℃
<第2造形層における底部(最下層)の設定パラメータ>
・使用ノズル :第1押出ノズル
・造形スピード :3000mm/min
・ノズル温度 :240℃
・積層ピッチ :1.5mm
・層数 :1層
・充填率 :100%
・充填パターン :ソリッド
・造形ステージの温度 :60℃
<第2造形層におけるハニカム構造部41の設定パラメータ>
・使用ノズル :第2押出ノズル
・造形スピード :3000mm/min
・ノズル温度 :240℃
・積層ピッチ :1.5mm
・充填率 :30%
・充填パターン :ハニカム
・造形ステージの温度 :60℃
<第2造形層における直方体状フレーム部42の設定パラメータ>
・使用押出ノズル :第2押出ノズル
・造形スピード :3000mm/min
・ノズル温度 :240℃
・積層ピッチ :1.5mm
・充填率 :100%
・充填パターン :ソリッド
・造形ステージの温度 :60℃
【0125】
(分離工程)
-分離時間の測定-
スクレイパー(株式会社インダストリーコーワ製、「金ヘラ100mm」)を用いて、室温まで冷却した測定用溶着体のPPシートと測定用ハニカム造形物40との界面を掻いて、測定用溶着体から測定用ハニカム造形物40を手作業で分離した。
詳しくは、測定用溶着体のPPシートと測定用ハニカム造形物40との界面(以下、「界面」という。)をスクレイパーで掻き、界面を剥離させ、測定用溶着体のPPシートと測定用ハニカム造形物40との間に少しずつスクレイパーを潜り込ます操作を繰り返した。この操作には、必要に応じてハンマーを使用した。これによって、測定用溶着体から、図2に示すような測定用ハニカム造形物40を分離した。測定用ハニカム造形物40が分離されたPPシートを目視で観察したところ、PPシートには、スクレイパーの押し込みによる破れは見られなかった。
また、分離工程の操作を開始してから、測定用溶着体から測定用ハニカム造形物40を分離するまでに要した分離時間の計測を行った。分離時間の計測結果を表3に示す。分離時間は、成人一人で上記の操作を行った時間である。
分離時間の許容可能な範囲は、3600秒以内である。
【0126】
測定用ハニカム造形物40のサイズは、250mmD×100mmW×16mmHであった。測定用ハニカム造形物40は、図2に示すように、ハニカム構造部41と、直方体状フレーム部42とからなる。ハニカム構造部41は、直方体状フレーム部42内に位置する。ハニカム構造部41と、直方体状フレーム部42とは、一体となっていた。測定用ハニカム造形物40は、略直方体状物であった。
直方体状フレーム部42は、上下方向(図2参照)に直交する方向において、ハニカム構造部41の周縁部を囲っていた。直方体状フレーム部42は、充填率が100%であった。直方体状フレーム部42は、250mm×100mm×高さ16mmであった。詳しくは、図2において、前後方向における直方体状フレーム部42の長さは、250mmであった。左右方向における直方体状フレーム部42の長さは、100mmであった。上下方向における長さは、16mmであった。直方体状フレーム部42は、4つに板部で構成されていた。4つの板部の各々の厚みは、5mmであった。
ハニカム構造部41の構造は、ハニカム構造であった。ハニカム構造部41の充填率は30%であった。
【0127】
-平均反り量の測定-
測定用ハニカム造形物40の平均反り量(mm)を下記のようにして測定した。測定用ハニカム造形物40の平均反り量Yは、測定用ハニカム造形物40を定盤50に載置したときの、定盤50からの直方体状フレーム部42の4隅の浮き上がり量Yの算術平均値を示す。
図3に示すように、測定用ハニカム造形物40の第1面TS40が上向きとなるように、定盤50の表面に測定用ハニカム造形物40を載置した。次いで、ハイトゲージを用いて、定盤50の表面からの測定用ハニカム造形物40の隅部E42の下面BS40の最高高さを測定した。得られた測定値は、直方体状フレーム部42の隅部E42の浮き上がり量Yを示す。
測定用ハニカム造形物40の平均反り量Yは、このようにして測定した測定用ハニカム造形物40の4隅の各々の浮き上がり量Yを加算して、得られる加算値を4で除算することで算出した。測定結果を表3に示す。
平均反り量の許容可能な範囲は、4.0mm以下である。
【0128】
(実施例2~実施例10、比較例1)
第1造形層用材料及び第2造形層用材料を表1~2に示すように変更した他は、実施例1と同様にして、各例の測定用溶着体を得た。得られた測定用溶着体から測定用ハニカム造形物40を分離した。各例の分離工程の分離時間の計測結果を表3に示す。
【0129】
また、測定用ハニカム造形物40が分離されたPPシートを目視で観察したところ、実施例2~実施例5、7及び9~10のPPシートには、スクレイパーの押し込みによる破れは見られなかった。実施例6及び実施例8のPPシートには、スクレイパーの押し込みによる破れが一部見られたが、許容範囲内であった。比較例1のPPシートには、スクレイパーの押し込みによる破れが見られた。
また、分離した測定用ハニカム造形物40の平均反り量を実施例1と同様にして測定した。平均反り量の測定結果を表3に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
表中、無機フィラーの含有量は、第1造形層用材料又は第2造形用材料の総量に対する、無機フィラーの含有量を示す。表1中、無機フィラーの原料において、「HG170」、「GAT40MB60」、及び「GAT40MB50」の各々は、タルク(無機フィラー)と、プロピレン系重合体(熱可塑性プラスチック)とを含む。表1中、「第1造形層用材料との異同」において、「A」は第1造形層用材料と第2造形層用材料とが異なることを示し、「B」は第1造形層用材料と第2造形層用材料とが同一であることを示す。
【0134】
実施例1~実施例10の造形物の製造方法は、第1造形層形成工程と、第2造形層形成工程とを有する。第1造形層用材料と、第2造形層用材料とは異なる。
そのため、実施例1~実施例10では、分離時間は、3600以内であった。更に、測定用ハニカム造形物40の平均反り量は、4.0mm以下であった。つまり、実施例1~実施例10の造形物の製造方法は、造形シートを用いない場合よりも反りが抑制された造形物を製造するとともに、造形シートに溶着した造形物をより短時間で造形シートから分離することができることがわかった。
【0135】
特に、実施例2~5、7及び9~10の造形物の製造方法では、第1造形層用材料、第2造形層用材料、及びPPシートの各々は、溶着する。この実施例2~5、7及び9~10の造形物の製造方法では、分離時間が、1200秒以内であった。更に、測定用ハニカム造形物40の平均反り量は、4.0mm以下であった。つまり、得られる造形物の平均反り量とのバランスがより優れることがわかった。
【0136】
比較例1の造形物の製造方法は、第1造形層形成工程と、第2造形層形成工程とを有する。第1造形層用材料と、第2造形層用材料とは、同一であった。
そのため、比較例1では、測定用ハニカム造形物40の平均反り量は、4.0mm以下であったが、分離時間は、3600秒を超えていた。つまり、比較例1の造形物の製造方法は、造形シートを用いない場合よりも反りが抑制された造形物を製造することができたが、造形シートに溶着した造形物を短時間で造形シートから分離することが難しいことがわかった。
【0137】
2020年12月02日に出願された日本国特許出願2020-200639号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3