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特許7403009偏向電極組立体、X線源及びX線撮像システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】偏向電極組立体、X線源及びX線撮像システム
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/14 20060101AFI20231214BHJP
   H05G 1/00 20060101ALI20231214BHJP
   H05G 1/52 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01J35/14
H05G1/00 E
H05G1/52 D
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022576850
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 CN2021104270
(87)【国際公開番号】W WO2022028173
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】202010772301.1
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511031733
【氏名又は名称】チンファ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
【住所又は居所原語表記】No. 1, Qinghua Yuan, Haidian District, Beijing 100084, China
(73)【特許権者】
【識別番号】515221794
【氏名又は名称】ヌクテック カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】522483518
【氏名又は名称】ニューレイ テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジーチアン
(72)【発明者】
【氏名】タン,フアピン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,シン
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-262789(JP,A)
【文献】特開平04-212246(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0170097(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/14
H01J 35/04-35/06
H05G 1/00
H01J 29/46
H01J 31/12
H05G 1/52
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源用の偏向電極組立体であって、
第1の接続部及び互いに間隔をあけて前記第1の接続部に設置される複数の第1のティース部を含み、各々の第1のティース部が前記第1の接続部から延出することで櫛型に形成される第1の電極板と、
第2の接続部及び互いに間隔をあけて前記第2の接続部に設置される複数の第2のティース部を含み、各々の第2のティース部が前記第2の接続部から延出することで櫛型に形成される第2の電極板と、を備え、
前記第1の電極板と前記第2の電極板は、隣接する第1のティース部と第2のティース部との間にそれぞれ位置する複数の電子ビーム通路を形成するように、互いに接触せず且つ前記複数の第1のティース部と前記複数の第2のティース部の少なくとも一部が交互に配列されている偏向電極組立体。
【請求項2】
前記第1の電極板と前記第2の電極板は、2つの第1のティース部の間ごとに1つの第2のティース部が設置され、且つ2つの第2のティース部の間ごとに1つの第1のティース部が設置されるように構成されている請求項1に記載の偏向電極組立体。
【請求項3】
各電子ビーム通路において、隣接する第1のティース部と第2のティース部の対向する側面は互いに平行である請求項2に記載の偏向電極組立体。
【請求項4】
前記複数の第1のティース部は、前記第1の接続部において同じピッチ間隔で離間され、前記複数の第2のティース部は前記第2の接続部において同じピッチ間隔で離間され、且つ前記複数の電子ビーム通路は同じピッチ間隔で分布されている請求項3に記載の偏向電極組立体。
【請求項5】
前記複数の第1のティース部は、同じ形状を有し、且つ前記複数の第2のティース部は同じ形状を有する請求項4に記載の偏向電極組立体。
【請求項6】
前記第1の接続部は、前記複数の第1のティース部が配置された第1の内面を含み、且つ前記第2の接続部は、前記複数の第2のティース部が配置された第2の内面を含み、前記第1の内面は前記第1のティース部の側面と垂直であり、且つ前記第2の内面は前記第2のティース部の側面と垂直である請求項5に記載の偏向電極組立体。
【請求項7】
各電子ビーム通路は、電子ビーム入力側及び電子ビーム出力側を含み、前記第1の電極板の各第1のティース部は、前記電子ビーム出力側にある上面及び前記電子ビーム入力側にある下面を含み、前記複数の第1のティース部の上面はいずれも同一平面内に位置し、且つ前記第2の電極板の各第2のティース部は、前記電子ビーム出力側にある上面及び前記電子ビーム入力側にある下面を含み、前記複数の第2のティース部の上面はいずれも同一平面内に位置する請求項6に記載の偏向電極組立体。
【請求項8】
前記第1の電極板と前記第2の電極板は、前記複数の第1のティース部の上面と前記複数の第2のティース部の上面がいずれも同一平面内に位置するように構成されている請求項7に記載の偏向電極組立体。
【請求項9】
前記第1の電極板と前記第2の電極板は、前記複数の第1のティース部の下面と前記複数の第2のティース部の下面とがいずれも同一平面内に位置するように構成されている請求項8に記載の偏向電極組立体。
【請求項10】
前記第1のティース部及び前記第2のティース部は、いずれも直方体形状を有する請求項9に記載の偏向電極組立体。
【請求項11】
前記第1のティース部は、前記第1の接続部から離れた端面を含み、前記第2のティース部は前記第2の接続部から離れた端面を含み、且つ前記第1の電極板と前記第2の電極板は、前記第1のティース部の端面と前記第2の接続部の前記第2の内面との間のピッチが0.1mm~10mmの間にあり、且つ前記第2のティース部の端面と前記第1の接続部の前記第1の内面との間のピッチが0.1mm~10mmの間にあるように構成されている請求項6~10のいずれか一項に記載の偏向電極組立体。
【請求項12】
前記第1の電極板と前記第2の電極板は、前記第1のティース部の端面と前記第2の接続部の前記第2の内面との間のピッチが0.5mm~5mmの間にあり、且つ前記第2のティース部の端面と前記第1の接続部の前記第1の内面との間のピッチが0.5mm~5mmの間にあるように構成されている請求項11に記載の偏向電極組立体。
【請求項13】
前記第1の電極板と前記第2の電極板は、各電子ビーム通路の前記電子ビーム入力側から前記電子ビーム出力側までの長さが3mm~50mmの間にあるように構成されている請求項12に記載の偏向電極組立体。
【請求項14】
それぞれ前記第1の電極板と前記第2の電極板に電気的に接続された電位コントローラを更に含み、
前記電位コントローラは、前記第1の電極板と前記第2の電極板との間に複数の電位差を有するように、前記第1の電極板と前記第2の電極板に給電される請求項1~10のいずれか一項に記載の偏向電極組立体。
【請求項15】
異なる位置から電子ビームを発生させる複数の陰極ユニットと、
異なる位置から電子ビームを受け取る陽極と、
偏向電極組立体の第1の電極板と第2の電極板が前記複数の陰極ユニットと前記陽極との間に配置された請求項1~14のいずれか一項に記載の前記偏向電極組立体と、を備え、
各陰極ユニットは、前記偏向電極組立体の1つの電子ビーム通路に位置合わせされることで、前記複数の陰極ユニットで発生された電子ビームがそれぞれ対応する電子ビーム通路を通過し且つ前記陽極に到達可能であるように構成されているX線源。
【請求項16】
それぞれ前記複数の陰極ユニットに電気的に接続されることで、各陰極ユニットが電子ビームを発生させるか又は発生させないかを制御する陰極コントローラを更に備える請求項15に記載のX線源。
【請求項17】
前記陰極コントローラ及び前記偏向電極組立体の電位コントローラと通信可能に接続されることで、前記陰極コントローラ及び前記偏向電極組立体にX線放射要求を送信する又は前記陰極コントローラ及び前記偏向電極組立体からX線放射情報を受け取る連係コントローラを更に備える請求項16に記載のX線源。
【請求項18】
前記偏向電極組立体の前記第1の電極板と前記第2の電極板との間にn種類の電位差があり、n≧2であり、
前記複数の陰極ユニットが順にn回の電子ビームを放射し、各陰極ユニットのn回の電子ビーム放射に対して、前記偏向電極組立体はそれぞれn種類の電位差にある動作状態と、
前記複数の陰極ユニットがn個のサイクルの電子ビームの放射を行い、第1のサイクルにおいて前記複数の陰極ユニットは順に1回の電子ビームを放射すると同時に、前記偏向電極組立体は第1の種類の電位差にあることを保持し、第nのサイクルにおいて前記複数の陰極ユニットは1回の電子ビームを順次放射すると同時に前記偏向電極組立体は第n種類の電位差にあることを保持している動作状態とのいずれかの動作状態を含む請求項17に記載のX線源。
【請求項19】
前記第1の電極板の複数の第1のティース部の上面と前記第2の電極板の複数の第2のティース部の上面は、いずれも同一平面内に位置し、且つ前記陽極の前記第1の電極板及び前記第2の電極板に向かう表面と平行である請求項15~18のいずれか一項に記載のX線源。
【請求項20】
異なる位置からX線を発生させる請求項15~19のいずれか一項に記載のX線源を備えるX線撮像システム。
【請求項21】
前記X線源からX線放射情報を取得するための撮像制御装置を更に備える請求項20に記載のX線撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2020年8月4日に提出された、出願番号が202010772301.1であり、発明名称が「偏向電極組立体、X線源及びX線撮像システム」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容は引用により本開示に組み込まれる。
【0002】
本開示は、X線技術分野に関し、より具体的にはX線源用の偏向電極組立体、X線源及びX線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0003】
X線は、工業非破壊検査、安全検査、医学診断及び治療等の分野に広く応用されている。X線を発生させる装置は、X線源と呼ばれる。X線源は一般的に中核部品であるX線管、電源と制御システム、冷却及び遮蔽などための補助装置などで構成される。X線管は、一般的に陰極、陽極及び筐体の三つの主要部品を含む。陰極は、電子ビームを発生させる。電子ビームは、陰極と陽極の間の高電圧電界により加速され、且つ陽極に衝突することで、X線を発生する。従来のX線管は、電子放射を発生させる陰極が1つしかなく、位置が固定された一つのX線焦点しか生成できない。
【0004】
新しい分散型X線源(又は多焦点X線源と呼ばれる)は、複数の陰極、複数のターゲットを有し、複数の異なる位置からX線を発生させることができるX線源である。多視点撮像と三次元撮像のCT分野において非常に顕著な優位性を有する。異なる位置からX線を発生させるために、多くの特許文献はそれぞれ異なる技術的解決手段を開示している。米国特許出願US4926452Aは、電磁界走査により電子ビームを偏向させて位置の異なる焦点を発生させる。従来の熱陰極電子放射が電磁界走査に合わせることは連続的なプロセスであるため、焦点位置は連続的な動的変化を発生して、X線撮像にモーションアーチファクトがあるので、該手段は大規模に応用されていない。新たな技術案は複数の電子源(陰極)を使用し、異なる位置から電子ビームを発生させ且つ異なる位置でX線を発生させ、ターゲット位置の連続的な変化によるアーチファクトを除去するものであり、例えば、中国特許CN104470177Bなどのように複数の熱陰極を用いてそれぞれ異なる位置から電子ビームを発生させるもの、又は米国特許US6980627B2のように電界放射冷陰極を使用して異なる位置から電子ビームを発生させるものがある。
【0005】
X線三次元撮像技術の発展に伴い、画像に対する解像度の要求がますます高くなってきている。高解像度画像を取得する方法は、一般的に検出器の画素を絶えず縮小させ、焦点のサイズを絶えず減少させ、焦点の分布密度を増加させることを含む。最初の2項を実現する物理的な難度がますます高くなるため、焦点の分布密度を増加させることが重要な改善方向となる。中国特許CN104465279Bに代表される熱陰極分散型光源は、陰極自体の物理的な寸法及び断熱要件に制限されるので、陰極間隔が大きく(一般的に20mm以上である)、焦点密度が小さい。中国特許出願CN107464734Aは偏向電極を増加させることで焦点の数を増加させる方法を提案している。しかしながら、該手段は全体的な構造が複雑であり、補償電極を有し、集束電極の配置及び接続関係が複雑であり、集束電極は2種類に分けられ、各種類の集束電極は数量が多い複数の個別電極を含み、各種類の集束電極を固定に取り付ける場合に全体の取付精度を考慮する必要があり、同時に各個別電極と取付構造の電気絶縁も考慮する必要があるので、全体的に複雑度が高く、コストが高い。
【0006】
このため、構造が簡略化され且つコストが低減された偏向電極組立体が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の1つの目的は、構造が簡略化され、部品点数が削減された偏向電極組立体、X線源及びX線撮像システムを提供することにある。本開示の他の目的は、X線放射位置を増加させる偏向電極組立体、X線源及びX線撮像システムを提供することにある。本開示の更に他の目的は、撮像品質を向上させる偏向電極組立体、X線源及びX線撮像システムを提供することにある。
【0008】
本開示の一態様は、X線源用の偏向電極組立体であって、第1の接続部及び互いに間隔を隔てて第1の接続部に設置される複数の第1のティース部を含み、各々の第1のティース部が前記第1の接続部から延出することで櫛型に形成される第1の電極板と、第2の接続部及び互いに間隔を隔てて第2の接続部に設置される複数の第2のティース部を含み、各々の第2のティース部が第2の接続部から延出することで櫛型に形成される第2の電極板と、を備え、隣接する第1のティース部と第2のティース部との間にそれぞれに位置する複数の電子ビーム通路を形成するように、第1の電極板と第2の電極板は互いに接触せず、且つ複数の第1のティース部と複数の第2のティース部の少なくとも一部が交互に配列されるように構成されている偏向電極組立体を提供する。
【0009】
従来の分散型X線源において、各電子ビーム通路は、2つの個別電極により偏向作用を発生する必要があり、個別電極の数は電子ビーム通路の2倍である。したがって、部品の数が多く、電極を固定に取り付けること及び電気的接続が複雑である。本開示の実施例に係る偏向電極組立体において、2つの電極板のティース部は交互に配置され、且つ電極板の接続部は複数のティース部の共通接続部として、一方では複数のティース部に対し構造接続を提供し、他方では複数のティース部の電気的な接続を実現している。これにより、各電極板は互いに接続された接続部及び複数のティース部を含むことで、偏向電極組立体を固定に取り付けること及び電気的接続を大幅に簡略化し、同時に高い位置決め精度をより容易に実現することができる。また、電子ビームの偏向を実現するために、各ティース部(電極板)には同じ又は異なる電位が印加される必要があるため、ティース部は、隣接する部材(例えばそれと対向する他のティース部、陰極、陽極、更に支持を提供する構造部材)と電気的に絶縁する必要がある。従来の技術的解決手段では、各電極は互いに独立して設けられ、それぞれ相対的な絶縁取付及び位置決めを実現しようとするため、電極の取り付けが困難である。本開示の実施例によれば、革新的な櫛型構造により、1つの電位を有する複数の電極を1つの全体(第1の電極板)に設計し、且つもう1つの電位を有する複数の電極を別の1つの全体(第2の電極板)に設計することにより、取り付け固定及び電気的接続を大幅に簡略化する。
【0010】
本開示の実施例によれば、第1の電極板と第2の電極板は、2つの第1のティース部の間ごとに1つの第2のティース部が設置され、且つ2つの第2のティース部の間ごとに1つの第1のティース部が設置されるように構成されている。2つの電極板のティース部を交互に配置させることにより、電子ビーム通路の数を増加させることができ、少ない陰極ユニットに基づいてより多くのX線焦点を発生させることに有利であり、これによりより多くのX線撮像情報を取得し、且つ分散型X線源のコストを低減させ、X線撮像システムの画像品質を向上させることに有利である。
【0011】
本開示の実施例によれば、各電子ビーム通路において、隣接する第1のティース部と第2のティース部の対向する側面は互いに平行である。これにより、2つのティース部の間の偏向電界は相対的に均一であり、電子ビームの偏向と焦点位置のずれを制御することに有利である。
【0012】
本開示の実施例によれば、複数の第1のティース部は、第1の接続部において同じピッチ間隔で離間され、複数の第2のティース部は第2の接続部において同じ間隔で離間され、且つ複数の電子ビーム通路は同じピッチ間隔で分布されている。これにより、各ティース部は均一に等間隔で分布され、同時に各電子ビーム通路も均一に等間隔で分布されている。これは、電極板の加工と偏向電極組立体の取り付けを簡略化することに有利であり、同時に電子ビームの偏向及び集束効果をより統一することができる。
【0013】
本開示の実施例によれば、複数の第1のティース部は、同じ形状を有し、且つ複数の第2のティース部は同じ形状を有する。
【0014】
本開示の実施例によれば、第1の接続部は、複数の第1のティース部が配置された第1の内面を含み、且つ第2の接続部は、複数の第2のティース部が配置された第2の内面を含み、第1の内面は第1のティース部の側面と垂直であり、且つ第2の内面は第2のティース部の側面と垂直である。これにより、電極板はより規則正しい構造を有することができ、加工及び取り付けを容易にする。
【0015】
本開示の実施例によれば、各電子ビーム通路は、電子ビーム入力側及び電子ビーム出力側を含み、第1の電極板の各第1のティース部は、電子ビーム出力側にある上面及び電子ビーム入力側にある下面を含み、複数の第1のティース部の上面はいずれも同一平面内に位置し、且つ第2の電極板の各第2のティース部は、電子ビーム出力側にある上面及び電子ビーム入力側にある下面を含み、複数の第2のティース部の上面はいずれも同一平面内に位置する。
【0016】
本開示の実施例によれば、第1の電極板と第2の電極板は、複数の第1のティース部の上面と複数の第2のティース部の上面がいずれも同一平面内に位置するように構成されている。2つの電極板の上面は同一平面内に位置することで、電極板の加工及び取り付けを簡略化することに有利である。また、偏向電極組立体がX線源に取り付けられる時、電極板の上面が陽極の対向表面と平行に配置されることに有利であり、これにより電極板と陽極の間により均一な電界を形成し、各電子ビーム通路から出た電子ビームがより一致した集束及び加速効果を有することができる。
【0017】
本開示の実施例によれば、第1の電極板と第2の電極板は、複数の第1のティース部の下面と複数の第2のティース部の下面とがいずれも同一平面内に位置するように構成されている。電極板の下面も同一平面内に位置することで、電極板の加工及び取り付けを簡略化することに有利であり、同時に偏向電極組立体がX線源に取り付けられる時、陰極ユニットの取り付けに有利である。
【0018】
本開示の実施例によれば、第1のティース部及び前記第2のティース部は、いずれも直方体形状を有する。
【0019】
本開示の実施例によれば、第1のティース部は、第1の接続部から離れた端面を含み、第2のティース部は第2の接続部から離れた端面を含み、且つ第1の電極板と第2の電極板は、第1のティース部の端面と第2の接続部の第2の内面との間のピッチが0.1mm~10mmの間にあり、且つ第2のティース部の端面と第1の接続部の前記第1の内面との間のピッチが0.1mm~10mmの間にあるように構成されている。上記絶縁距離を採用することで、2つの電極板の間に数十ボルトから数千ボルトまでの絶縁を実現することができる。
【0020】
本開示の実施例によれば、第1の電極板と第2の電極板は、第1のティース部の端面と第2の接続部の第2の内面との間のピッチが0.5mm~5mmの間にあり、且つ第2のティース部の端面と第1の接続部の第1の内面との間のピッチが0.5mm~5mmの間にあるように構成されている。上記絶縁距離を採用することで、加工精度及び取付精度の要求を満たすことに有利である。
【0021】
本開示の実施例によれば、第1の電極板と第2の電極板は、各電子ビーム通路の前記電子ビーム入力側から前記電子ビーム出力側までの長さが3mm~50mmの間にあるように構成されている。電子ビーム通路が短すぎると、偏向電位が高すぎ、電位コントローラのコストが高くなる。電子ビーム通路が長すぎると、偏向電極組立体がX線源で大きな空間を占め、X線源のサイズ及び重量を減少させることに不利となる。
【0022】
本開示の実施例によれば、それぞれ第1の電極板と第2の電極板に電気的に接続された電位コントローラを更に含み、電位コントローラは、第1の電極板と第2の電極板との間に複数の電位差を有するように、第1の電極板と第2の電極板に給電されることができる。
【0023】
本開示の別の態様は、異なる位置から電子ビームを発生させる複数の陰極ユニットと、異なる位置から電子ビームを受け取る陽極と、第1の電極板と第2の電極板が複数の陰極ユニットと陽極との間に配置された本公開の実施例の偏向電極組立体と、を備え、各陰極ユニットは、偏向電極組立体の1つの電子ビーム通路に位置合わせされることで、複数の陰極ユニットで発生された電子ビームがそれぞれ対応する電子ビーム通路を通過し且つ陽極に到達可能であるように構成されているX線源を提供する。
【0024】
本開示の実施例に係るX線源では、偏向電極組立体の2つの電極板には異なる電位が印加される時、電子ビームが偏向する。また、陽極に高電圧を印加する時、偏向電極組立体の電子ビーム通路の出口位置に集束電界を発生させることにより、電子ビームに集束作用を発生させることができる。したがって、電子ビームの運動過程において、集束及び偏向は2つの電界によりそれぞれ発生され、その最終的な効果は重畳され、即ち電子ビームが本開示の実施例に係る偏向電極組立体を通過する時に、同時に集束及び偏向効果が得られる。
【0025】
本開示の実施例によれば、X線源は、それぞれ複数の陰極ユニットに電気的に接続されることで、各陰極ユニットが電子ビームを発生させるか又は発生させないかを制御する陰極コントローラを更に備える。
【0026】
本開示の実施例によれば、X線源は、陰極コントローラ及び偏向電極組立体の電位コントローラと通信可能に接続されることで、陰極コントローラ及び偏向電極組立体にX線放射要求を送信する又は陰極コントローラ及び偏向電極組立体からX線放射情報を受け取る連係コントローラを更に備える。
【0027】
本開示の実施例によれば、偏向電極組立体の第1の電極板と第2の電極板との間にn種類の電位差があり、n≧2であり、複数の陰極ユニットが順にn回の電子ビームを放射し、各陰極ユニットのn回の電子ビーム放射に対して、偏向電極組立体はそれぞれn種類の電位差にある動作状態と、複数の陰極ユニットがn個のサイクルの電子ビームの放射を行い、第1のサイクルにおいて複数の陰極ユニットは順に1回の電子ビームを放射すると同時に、偏向電極組立体は第1の種類の電位差にあることを保持し、第nのサイクルにおいて複数の陰極ユニットは1回の電子ビームを順次放射すると同時に偏向電極組立体は第n種類の電位差にあることを保持している動作状態とのいずれかの動作状態を含む。
【0028】
本開示の実施例によれば、第1の電極板の複数の第1のティース部の上面と第2の電極板の複数の第2のティース部の上面は、いずれも同一平面内に位置し、且つ陽極の第1の電極板及び第2の電極板に向かう下面と平行である。
【0029】
本開示の別の態様は、異なる位置からX線を発生させるための本開示の実施例に係るX線源を備えるX線撮像システムを提供する。
【0030】
本開示の実施例によれば、X線撮像システムは、X線源からX線放射情報を取得するための撮像制御装置を更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示の実施例に係る偏向電極組立体の模式図である。
図2】本開示の実施例に係る偏向電極組立体の斜視模式図である。
図3】本開示の実施例に係るX線源の構造模式図である。
図4】本開示の実施例に係る偏向電極組立体の集束状態模式図である。
図5a】本開示の実施例に係る偏向電極組立体の偏向状態模式図である。
図5b】本開示の実施例に係る偏向電極組立体の偏向状態模式図である。
図5c】本開示の実施例に係る偏向電極組立体の偏向状態模式図である。
図6】本開示の実施例に係るX線源の動作状態のタイムチャートである。
図7】本開示の実施例に係るX線源の他の動作状態のタイムチャートである。
図8】本開示の実施例に係るX線撮像システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を参照して本開示の実施例を説明する。以下の詳細な説明及び図面は本開示の原理を例示的に説明するために用いられ、本開示は記述された好ましい実施例に限定されず、本開示の範囲は特許請求の範囲によって限定される。以下、例示的な実施形態を参照して本開示を詳細に説明し、いくつかの実施例を図面に示す。以下は図面を参照して説明を行い、より多くの制限がない場合に、異なる図面における同じ参照符号は同一又は類似の部品を示す。以下の例示的な実施形態に記載された技術案は、本開示の全ての技術案を表すものではない。逆に、これらの技術案は、添付の特許請求の範囲に係る本開示の様々な態様のシステム及び方法の例示に過ぎない。
【0033】
以下、図1及び図2を参照して、本開示の実施例に係る偏向電極組立体を説明する。図1は、本発明の実施例に係る偏向電極組立体の模式図である。図2は、本開示の実施例に係る偏向電極組立体の斜視模式図である。
【0034】
図1及び図2に示すように、本開示の実施例に係る偏向電極組立体は、2つの電極板1及び2を含む。例示的な実施例において、電極板1及び2は同じ構造を有する。いくつかの実施例において、電極板1及び2は異なる構造を有してもよい。
【0035】
電極板1は、接続部11と、複数のティース部12とを備える。複数のティース部12は、互いに間隔をあけて接続部11に設けられている。例示的な実施例において、複数のティース部12は同じピッチ間隔で離間されている。接続部11は共通接続部として複数のティース部12に対し構造的に支持する。電極板1は櫛型に形成され、そのうち複数のティース部12は接続部11から延出している。
【0036】
電極板2は、接続部21と、複数のティース部22とを含む。複数のティース部22は、互いに間隔をあけて接続部21に設けられている。例示的な実施例において、複数のティース部22は同じピッチ間隔で離間されている。接続部21は共通接続部として複数のティース部22に対し構造支持を提供する。電極板2は櫛型に形成され、そのうち複数のティース部22は接続部21から延出している。
【0037】
図1及び図2に示すように、電極板1と電極板2は、複数の電子ビーム通路を形成するように、互いに接触せず、且つ複数のティース部12と複数のティース部22が交互に配列されるように構成されている。各電子ビーム通路は、隣り合うティース部12とティース部22との間に位置している。陰極から放射された電子ビームは電子ビーム通路を通過し、次に陽極に衝突することができる(後に詳述する)。例示的な実施例において、2つのティース部12の間ごとに一つのティース部22が設置され、且つ2つのティース部22の間ごとに一つのティース部12が設置され、図1及び図2に示されている。例えば、電極板1の複数のティース部12をそれぞれA1、A2、A3、A4、…と呼び、電極板2の複数のティース部22をそれぞれB1、B2、B3、B4、…と呼び、且つ複数の電子ビーム通路をそれぞれS1、S2、S3、S4、…と呼ぶ場合、電極板1、2のティース部12、22及び電子ビーム通路は、A1、S1、B1、S2、A2、S3、B2、S4、A3、S5、B3、S6、A4、S7、B4、…の順で配列され、図1に示されている。
【0038】
本開示の実施例によれば、偏向電極組立体は、電位コントローラ3を更に含むことができる。電位コントローラ3は、それぞれ電極板1及び2に電気的に接続されることで、それぞれ電極板1及び電極板2に給電されている。電位コントローラ3は、電位Vを電極板1に供給し、電位Vを電極板2に供給してもよい。電位V及びVは同じであってもよく、異なってもよく、例えばそれぞれゼロ電位、正電位又は負電位等である。電位コントローラ3は、電極板1と電極板2との間に複数の電位差があるように、電極板1と電極板2の間の電位差(V-V)を制御する。電極板1と電極板2の間の電位差が異なる場合、隣接するティース部12と22の間の電子ビーム通路は異なる電界に位置することができる。例示的な実施例において、電極板1と電極板2の間の電位差は、電位差がゼロ(即ちV=V)であることと、電位差が正(即ちV>V、例えばV-V=+100V)であることと、電位差が負(即ちV<V、例えばV-V=-100V)であることという3種類の状態が存在することができる。
【0039】
本開示のいくつかの実施例によれば、図1に示すように、電極板1の接続部11は内面111を含み、複数のティース部12は接続部11の内面111に配置され、即ちティース部12は接続部11の内面111から延出している。例示的な実施例において、内面111は平面である。例示的な実施例において、電極板1の複数のティース部12は接続部11において同じピッチで均一に分布している。本開示のいくつかの実施例によれば、図1及び図2に示すように、電極板2の接続部21は内面211を含み、複数のティース部22は接続部21の内面211に配置され、即ちティース部22は接続部21の内面211から延出している。例示的な実施例において、内面211は平面である。例示的な実施例において、電極板2の複数の接続部22は接続部21において同じピッチで均一に分布している。
【0040】
本開示のいくつかの実施例によれば、電極板1及び2は複数の電子ビーム通路が同じピッチで分布するように配置されている。例示的な実施例において、複数の電子ビーム通路は同じサイズを有する。
【0041】
本開示のいくつかの実施例によれば、図1及び図2に示すように、ティース部12は、側面121及び端面122を含む。ティース部12は、一端が接続部11(内面111)に接続され、他端が端面122を有する。例示的な実施例では、接続部11の内面111はティース部12の側面121と垂直である。本開示のいくつかの実施例によれば、図2に示すように、ティース部22は側面221及び端面222を含む。ティース部22は、一端が接続部21(内面211)に接続され、且つ他端が端面222を有する。例示的な実施例では、接続部21の内面211は、ティース部22の側面221と垂直である。例示的な実施例において、隣接するティース部12と22の対向側面121、221は互いに平行であり、即ち電子ビーム通路を形成する対向側面121、221は平行である。
【0042】
例示的な実施例において、電極板1の複数のティース部12は同じ形状を有し、例えば略直方体形状であり、図1及び図2に示されている。例示的な実施例において、電極板2の複数のティース部22は同じ形状を有し、例えば略直方体形状であり、図1及び図2に示されている。いくつかの実施例において、接続部11及び21はそれぞれ略直方体形状である。
【0043】
電極板1と電極板2は、一定の絶縁距離を保つように互いに接触しないように構成されている。本開示のいくつかの実施例によれば、電極板1と2との間の最短距離は、接続部11の内面111とティース部22の端面222の間及び/又は接続部21の内面211とティース部12の端面122の間に位置する。例示的な実施例において、電極板1及び2は接続部11の内面111がティース部22の端面222と平行になり、及び/又は接続部21の内面211がティース部12の端面122と平行になるように配置されている。例示的な実施例において、ティース部12の端面122と接続部21の内面211との間のピッチは0.1mm~10mmの間にあり、例えば0.5mm~5mmの間にあり、及び/又はティース部22の端面222と接続部11の内面111の間のピッチは0.1mm~10mmの間にあり、例えば0.5mm~5mmの間にある。
【0044】
本開示のいくつかの実施例によれば、図2に示すように、ティース部12は上面123及び下面(図示せず)を含む。例示的な実施例において、ティース部12の上面123及び下面は接続部11の内面111及びティース部12の側面121に対していずれも垂直であり、即ち上面123及び下面はティース部の厚さ方向に沿って分布されている。例示的な実施例において、複数のティース部12の上面123はいずれも同一平面内に位置する。いくつかの実施例において、複数のティース部12の下面も同一平面内に位置する。本明細書において、上面は電子ビームの出力側に位置する表面であり、即ち陽極の表面に向いている(以下を参照)。下面は電子ビームの入力側に位置する表面であり、即ち陰極ユニットの表面に向いている(以下を参照)。厚さ方向は電子ビームの入力側から電子ビームの出力側に向かう方向である。
【0045】
本開示のいくつかの実施例によれば、図2に示すように、ティース部22は上面223及び下面(図示せず)を含む。例示的な実施例において、ティース部22の上面223及び下面は接続部21の内面211及びティース部22の側面221に対していずれも垂直であり、即ち上面223及び下面はティース部の厚さ方向に沿って分布されている。例示的な実施例において、複数のティース部22の上面223はいずれも同一平面内に位置する。いくつかの実施例において、複数のティース部22の下面も同一平面内に位置する。
【0046】
例示的な実施例において、電極板1及び2は、複数のティース部12の上面123と複数のティース部22の上面223がいずれも同一平面内に位置するように配置されている。いくつかの実施例において、電極板1の上面全体と電極板2の上面全体とは、何れも同じ平面内に位置する。例示的な実施例において、電極板1及び2は、複数のティース部12の下面と複数のティース部22の下面がいずれも同一平面内に位置するように配置されている。いくつかの実施例において、電極板1の下面全体と電極板2の下面全体とは、何れも同一平面内に位置する。
【0047】
本開示のいくつかの実施例によれば、電極板1及び2は、電子ビームの通路の長さ、即ち電子ビーム入力側から電子ビーム出力側までの長さ(厚さ方向の寸法)が、3mm~50mmの間にあるように構成されている。
【0048】
以下、図3を参照して本開示の実施例に係るX線源を説明する。図3は本開示の実施例に係るX線源の構造模式図である。
【0049】
図3に示すように、本開示の実施例に係るX線源は、チャンバ4、上記の偏向電極組立体、複数の陰極ユニット5及び陽極6を含む。図3は、チャンバ4、偏向電極組立体の電極板1及び2、陰極ユニット5及び陽極6を切断方式で概略的に示す。
【0050】
本開示の実施例に係る偏向電極組立体の説明については前述を参照するとし、ここでは説明を省略する。図3は、電極板1及び2の複数のティース部と、隣接するティース部の間の電子ビーム通路とを切断方式で示す。なお、説明しやすく且つポイントがあいまいになるのを防ぐために、図3に電極板1及び2の接続部は示されていない。図3において、電極板1の複数のティース部はそれぞれA1、A2、A3、A4、…と呼ばれ、電極板2の複数のティース部はそれぞれB1、B2、B3、B4、…と呼ばれ、且つ電極板1及び2のティース部は、A1、B1、A2、B2、A3、B3、A4、B4、…の順で配列されている。
【0051】
偏向電極組立体の電極板1、2、陰極ユニット5及び陽極6は、チャンバ4内に配置されている。チャンバ4は真空チャンバであり、内部の部品に対し真空の動作環境を提供する。いくつかの実施例において、偏向電極組立体の電極板1及び2は、それぞれ絶縁部材(例えばセラミック絶縁部材)を介してチャンバ4内に接続されている。
【0052】
複数の陰極ユニット5は、異なる位置から電子ビームを発生させるためのものである。図3において、これらの陰極ユニット5をそれぞれC1、C2、C3、C4、…と呼び、且つこれらの電子ビームをそれぞれE1、E2、E3、E4、…と呼ぶ。陽極6は、異なる位置から電子ビームを受け取ってX線を発生させるためのものである。図3において、陽極6における焦点位置(電子ビーム受け取り位置)をそれぞれT1、T2、T3、T4、…と呼ぶ。例示的な実施例において、電極板1の複数のティース部の上面と電極板2の複数のティース部の上面はいずれも同一平面内に位置し、且つ電極板1及び2のティース部の上面が位置する平面は電極板1及び2に向かう陽極6の表面(陽極6の電子ビーム受け取り面)と平行である。例示的な実施例において、電極板1の複数のティース部の下面と電極板2の複数のティース部の下面とは、いずれも同一平面内に位置し、且つ電極板1及び2のティース部の下面が位置する平面は、複数の陰極ユニット5の電極板1及び2に向かう表面(陰極ユニット5の電子ビーム放射表面)と平行である。
【0053】
偏向電極組立体の電極板1及び2は、複数の陰極ユニット5と陽極6との間に配置され、且つ陰極ユニット5(陰極ユニット5の電子ビーム出射位置)をそれぞれ偏向電極組立体の対応する電子ビーム通路に位置合わせさせる。これにより、陰極ユニット5から発生された電子ビームは、偏向電極組立体の対応する電子ビーム通路を通過し、偏向電極組立体により偏向され及び/又は集束(以下に詳述)された後、陽極6に衝撃を与える。各電子ビーム通路は、電子ビーム入力側と、電子ビーム出力側とを含む。本明細書において、電子ビーム入力側は、陰極ユニット5に向かう側であり、電子ビーム出力側は、陽極6に向かう側である。
【0054】
本開示のいくつかの実施例によれば、X線源は、陰極コントローラ7及び陽極コントローラ8を更に含むことができる。いくつかの実施例において、陰極コントローラ7、陽極コントローラ8及び/又は連係コントローラ9は、チャンバ4の外部に設置されてもよい。偏向電極組立体の電位コントローラ3は、チャンバ4の外部に設置されてもよい。陰極コントローラ7は、複数の陰極ユニット5のそれぞれと電気的に接続されている。陽極コントローラ8は、陽極6と電気的に接続されている。例えば、陰極コントローラ7、陽極コントローラ8及び電位コントローラ3の電気接続線は、それぞれチャンバ4を貫通するコネクタ(例えばセラミック絶縁コネクタ)を介して複数の陰極ユニット5、陽極6、及び偏向電極組立体の電極板1及び2に電気的に接続されてもよい。
【0055】
陰極コントローラ7は、各陰極ユニット5の動作状態、すなわち電子ビームを発生させるか又は発生させないかを制御するために用いられる。陽極コントローラ8は、陽極6に高電圧を印加するために用いられ、通常は数十キロボルトから数百キロボルトの高電圧である。これにより、陽極6に高電圧を印加し、陽極6と陰極ユニット5の間に加速電界を発生させることで、陰極ユニット5から発生された電子ビームが加速され且つ陽極6に衝撃を与え、X線を発生させる。また、陽極6に高電圧を印加することにより、偏向電極組立体の電子ビーム通路の出口位置(電子ビーム出力側)の間に集束電界を発生させ、電子ビームに集束作用を発生させることもできる(以下に詳細に説明する)。
【0056】
いくつかの実施例において、X線源は、連係コントローラ9を更に含むことができる。連係コントローラ9は電位コントローラ3及び陰極コントローラ7と通信接続されてもよく、例えば有線通信又は無線通信により、電位コントローラ3及び陰極コントローラ7を連係制御する。例示的な実施例において、連係コントローラ9は陰極コントローラ7及び電位コントローラ3にX線放射要求を送信する又は陰極コントローラ7及び電位コントローラ3からX線放射情報を受け取ることができる。連係コントローラ9は、陰極コントローラ7に例えば陰極ユニット5の電子ビーム放射状態に関する指令などの指令を送信することができ、及び/又は陰極コントローラ7から例えば陰極ユニット5の電子ビーム放射状態に関する情報などの情報を取得することができる。また、連係コントローラ9は電位コントローラ3に例えば電極板1と2との間の電位差状態に関する指令を送信することができ、及び/又は電位コントローラ3から例えば電極板1と2との間の電位差状態に関する情報を取得することができる。例えば、陰極コントローラ7は、ある陰極ユニットに電子ビームを発生させるか又は発生させないかを制御する場合、連係コントローラ9は電位コントローラ3に対し偏向電極組立体の電極板1及び2にどの電位を印加して必要な電位差を発生させるかを通知することができる。連係コントローラ9は陰極コントローラ7及び電位コントローラ3と通信することにより、X線源のX線焦点位置をリアルタイムに制御することができ、又はX線焦点位置を他の制御装置にリアルタイムにフィードバックすることができる。
【0057】
以下に、図3図4図5a~図5cを参照して本開示の実施例に係る偏向電極組立体の動作原理を説明する。図4は、本開示の実施例に係る偏向電極組立体の集束状態模式図である。図5a~図5cは本開示の実施例に係る偏向電極組立体の偏向状態模式図である。図4及び図5a~図5cは、一つの陰極ユニット5、陽極6の一部、偏向電極組立体の一対の隣接するティース部12及び22、及び該隣接するティース部12と22の間に位置する電子ビーム通路を概略的に示す。なお、説明しやすく且つポイントがあいまいになるのを防ぐために、図4及び図5a~図5cに電極板1及び2の接続部及びX線源の他の部材は示されていない。
【0058】
以下、一つの陰極ユニット5(図3におけるE1)で電子ビームを放射するプロセスを例として、X線源及び偏向電極組立体の動作原理を説明する。複数の陰極ユニット5におけるC1が電子ビームE1を放射する場合、電子ビームE1は、一定の初期速度(図3では上向きである)で偏向電極組立体の対応する電子ビーム通路、具体的には電極板11のティース部12におけるA1と電極板2のティース部22におけるB1との間の電子ビーム通路に入る。偏向電極組立体の電位コントローラ3は、ティース部12と22の間の電位差がV>V、V=V、及びV<Vの3種類の状態のうちの1種類となるように電極板1と電極板2との間の電位差(V-V)を制御する。電子ビームE1は、ティース部12(A1)と22(B1)との間で運動する時、ティース部12と22の間の電位差に応じてA1への偏向(図3では左向きである)、非偏向又はB1への偏向(図3では右向きである)を発生させる。これにより、偏向電極組立体は、電子ビームに対する偏向作用を発生させる。また、電子ビームE1がティース部12と22の間の電子ビーム通路の出口位置(図3では上部)に達する時、電子ビームの断面積は集束作用によって小さくなる(以下、詳細に説明する)。これにより、偏向電極組立体及びX線源は電子ビームに対する集束作用を更に発生させることができる。電子ビームE1は電子ビーム通路から離れた後、陽極6と陰極ユニット5の間の高電圧の加速電界により加速され、陽極6に衝撃を与え、X線を発生させる。本開示の実施例によれば、X線源は集束作用を強化することで、補償電極を減らし、構造を更に簡略化すると共に、集束と偏向との両方を一体構造に設計し、全体的に構造最適化を実現することができる。
【0059】
図4は、本開示のある実施例に係る偏向電極組立体の集束作用を示す。X線管において、陽極6に高電圧が印加され、一般的に数十キロボルトから数百キロボルトである。偏向電極組立体の電極板1及び2は、陰極6と陽極ユニット5の間に位置し、且つ電極板1と2の間の電位差は陽極6と陰極ユニット5の電位差よりもはるかに低く、一般的に±3キロボルトを超えず、例えば正負数百ボルトの範囲内にある。したがって、陽極6と偏向電極組立体の電極板1、2の間に高電圧加速電界が形成される。例示的な実施例において、上記のように、電極板1及び2のティース部の上面が位置する平面は陽極6の電子ビーム受け取り表面と平行である。この場合、陽極6の電子ビーム受け取り表面と電極板1及び2のティース部の上面との間の高電圧加速電界はほとんどの範囲内で均一な電界に属し、即ち電力線は平行であり、該高電圧加速電界の電力線は陽極6から電極板1及び2のティース部の上面に指向されている。
【0060】
しかしながら、電極板1及び2のティース部の上面の近傍において、電極板1のティース部と電極板2のティース部との間に電子ビーム通路(隙間)が存在するため、電極板1及び2の上面は完全な平面ではない。該高電圧加速電界の一部の電力線は電子ビーム通路に入り、且つ湾曲して電極板1のティース部の側面及び/又は電極板2のティース部の側面に指向され、図4に示されている。したがって、該高電圧加速電界における電力線は電子ビーム通路の出口位置に局所的な変形を発生させる。電子ビーム通路の出口位置にある電子は該高電圧加速電界において逆電力線に沿って運動するため、電子ビームは電子ビーム通路の出口位置に集中して集束することで、電子ビームの断面積を減少させる。X線源において、このような集束作用は電子ビームの断面積を減少させることに有利であり、これにより電子ビームが陽極に衝撃を与えた時のX線焦点の大きさを減少させ、X線焦点が小さくなるほど、X線撮像の画像品質が明瞭となる。
【0061】
図5a~図5cは、本開示の実施例に係る偏向電極組立体の偏向作用を示す。以下に電極板1及び2の3種類の異なる電位差状態を例として、偏向電極組立体の偏向作用原理を説明する。電位コントローラ(図5a~図5cに示されていない)は偏向電極組立体の電極板1及び2に対し異なる電位を印加するように制御することにより、電極板1と2の間の電位差(V-V)はV>V、V=V、及びV<Vの3種類の状態の1種類であり、且つティース部12と22の間に異なる電界状態を発生させる。
【0062】
図5aにおいて、電極板1と2の間の電位差は、正(V>V)であり、ティース部12と22の間に偏向電界を発生させる。ティース部12と22の間の偏向電界において、電力線はティース部12からティース部22に指向されている。陰極ユニット5から放射された電子ビームは一定の初期速度でティース部12と22の間の電子ビーム通路に入った後、該偏向電界の側方向作用力(逆電力線方向)によってティース部12に向かう側方向オフセットを発生させる。電子ビームは電子ビーム通路を通過する時にティース部12に向かう偏向を発生させ、該電子ビームは最終的に陽極6に到達する時に陽極6上のティース部12に偏向する側の位置Tに衝撃を与え、且つ該位置TでX線を発生させる。
【0063】
図5bにおいて、ティース部12と22の間の電位差はゼロであり(V=V)、ティース部12と22の間に偏向電界を発生させない。陰極ユニット5から放射された電子ビームは一定の初期速度でティース部12と22の間の電子ビーム通路に入った後、偏向電界の側方向の作用力を受けず、元の方向の運動を維持している。電子ビームは電子ビーム通路を通過する時に偏向を発生させず、該電子ビームは最終的に陽極6に到達する時に陽極6上のティース部12と22の中間にある位置Tに衝撃を与え、且つ該位置TでX線を発生させる。
【0064】
図5cにおいて、ティース部12と22の間の電位差は正(V<V)であり、ティース部12と22の間に偏向電界を発生させる。ティース部12と22の間の偏向電界において、電力線はティース部22からティース部12に指向されている。陰極ユニット5から放射された電子ビームは一定の初期速度でティース部12と22の間の電子ビーム通路に入った後、該電界の側方向の作用力(逆電力線方向)によってティース部22に向かう側方向オフセットを発生させる。電子ビームは電子ビーム通路を通過する時にティース部22に向かう偏向を発生させ、該電子ビームは最終的に陽極6に到達する時に陽極6上のティース部22に偏向する側の位置Tに衝撃を与え、且つ該位置TでX線を発生させる。
【0065】
以上より、ティース部12と22の間に非ゼロ電位差が存在する場合、ティース部12と22の間に偏向電界を発生させる。ティース部12と22の間の偏向電界の作用により、電子ビームは電子ビーム通路を通過する時に偏向を発生させ、これにより電子ビームが陽極6に衝撃を与える位置のずれを引き起こす。この位置のずれ量は、電子ビームの初期速度、電極板1と2の間の電位差(V-V)の絶対値、電子ビーム通路の長さなどと関係がある。一般的に、電極板1と2の間の電位差(V-V)の絶対値が大きくなるほど、位置のずれ量が大きくなる。
【0066】
次に、図6及び図7を参照して、本開示のある実施例に係るX線源の動作状態のタイムチャートについて説明する。図6は本開示の実施例に係るX線源の動作状態のタイムチャートである。図7は本開示の実施例に係るX線源の他の動作状態のタイムチャートである。
【0067】
図6は、偏向電極組立体を含むX線源の動作モードを示している。図6における1本目の線は、複数の陰極ユニットの電子ビーム放射状態を示す。1本目の線の方形波は高と低の2つの状態を含み、高状態は電子ビームを発生させることを示し、C1、C2、C3、C4、…は電子ビームを発生させる異なる陰極ユニットを表す。2本目の線は偏向電極組立体の2つの電極板の間の電位差の変化状態を示す。図6は2つの電極板の間の3種類の異なる電位差状態(V>V、V=V、V<V)を例として説明する。2本目の線の方形波は高、中、低の3つの状態を含み、それぞれ3種類の異なる電位差状態を表す。3本目の線は時間を示し、t1、t2、t3、t4、…は異なる時刻であり、各時刻はそれぞれに1回の電子ビームを発生させることに対応する。4本目の線は陽極の電子ビーム受け取り位置の変化状態を示し、ここでT1、T2、T3、T4、…は異なる陰極ユニットに対応する受け取り位置範囲を表し、添え字は位置ずれ状態を表し、同時に4本目の線の方形波は高と低の2つの状態を含み、高状態はX線を発生させることを示す。
【0068】
陽極の電子ビーム受け取り位置(X線焦点位置)は、陰極ユニットの電子ビーム放射状態と両電極板間の電位差の変化状態に依存する。図6に示す実施例において、各時刻t1、t2、t3、t4、…において、1つの陰極ユニットのみが電子ビームを放射するために用いられ、同時に2つの電極板の間の電位差(V-V)も一定の状態(V>V、V=V、又はV<V)にある。
【0069】
図6に示す実施例において、X線源の動作モードは以下のとおりである。等間隔の時刻t1、t2、t3、t4、…に応じて、各陰極ユニットはそれぞれ3回の電子ビームを放射し(C1は時刻t1、t2、t3に放射、C2は時刻t4、t5、t6に放射、このように類推する)。同じ陰極ユニットの3回の電子ビームの放射に対し、偏向電極組立体はそれぞれ3種類の電位差状態にある(t1時刻電位差は正、t2時刻電位差はゼロ、t3時刻電位差は負、このように類推する)。これにより、電子ビーム受け取り位置は陽極で順次変化する。いくつかの実施例において、連係コントローラは対応する電子ビーム受け取り位置を記録することができる。
【0070】
このような動作モードでは、X線源の焦点位置(電子ビーム受け取り位置)は順次移動するものである。例えば、t1時刻では、陰極ユニットC1が電子ビームを発生させ、V-Vは正の値であり、焦点位置はT1である。t2時刻では、陰極ユニットC1が電子ビームを発生させ、V-Vはゼロであり、焦点位置はT1である。t3時刻では、陰極ユニットC1が電子ビームを発生させ、V-Vは負の値であり、焦点位置はT1である。t4時刻では、陰極ユニットC2が電子ビームを発生させ、V-Vは正の値であり、焦点位置はT2である。t5時刻では、陰極ユニットC2が電子ビームを発生させ、V-Vはゼロであり、焦点位置はT2である。t6時刻では、陰極ユニットC2が電子ビームを発生させ、V-Vは負の値であり、焦点位置はT2である。このように類推する。この方式で全ての陰極ユニットが3回の電子ビームの連続放射を完了した後、X線源は初期状態(t1時刻)に戻って循環操作を行うことができる。
【0071】
図7は、偏向電極組立体を含むX線源の他の動作モードを示している。図7における1本目の線は、複数の陰極ユニットの電子ビーム放射状態を示す。1本目の線の方形波は高と低の2つの状態を含み、高状態は電子ビームを発生させることを示す。図7は4つの陰極ユニットを例として示し、C1、C2、C3、C4は電子ビームを発生させる異なる陰極ユニットを表す。二本目の線は偏向電極組立体の2つの電極板の間の電位差の変化状態を示す。図7は2つの電極板の間の3種類の異なる電位差状態(V>V、V=V、V<V)を例として示す。二本目の線の方形波は高、中、低の3つの状態を含み、それぞれ3種類の異なる電位差状態を表す。3本目の線は時間を示し、t1、t2、t3、t4、…は異なる時刻であり、各時刻は1回の電子ビームを発生させることに対応する。4本目の線は陽極の電子ビーム受け取り位置の変化状態を示し、ここでT1、T2、T3、T4は異なる陰極ユニットに対応する受け取り位置範囲を表し、添え字は位置ずれ状態を表し、同時に4本目の線の方形波は高と低の2つの状態を含み、高状態はX線を発生させることを示す。
【0072】
陽極の電子ビーム受け取り位置(X線焦点位置)は、陰極ユニットの電子ビーム放射状態と両電極板間の電位差の変化状態に依存する。図7に示す実施例において、図6と同じで、各時刻t1、t2、t3、t4、…において、1つの陰極ユニットのみが電子ビームを放射するために用いられ、同時に2つの電極板の間の電位差(V-V)も一定の状態(V>V、V=V、V<V)にある。
【0073】
図7に示す実施例において、X線源の動作モードは以下のとおりである。等間隔の時刻t1、t2、t3、t4、…に応じて、各陰極ユニットが1回の電子ビームを放射し(C1が時刻t1で放射、C2が時刻t2で放射、C3が時刻t3で放射、このように類推する)。複数の陰極ユニットの第1の放射サイクルにおいて、偏向電極組立体が3種類の電位差状態のうちの第1種類にあることを保持し、複数の陰極ユニットの第2の放射サイクルにおいて、偏向電極組立体が3種類の電位差状態のうちの第2種類にあることを保持し、複数の陰極ユニットの第3の放射サイクルにおいて、偏向電極組立体が3種類の電位差状態のうちの第3種類にあること(例えば、t1~t4時刻の電位差が正、t5~t8時刻の電位差がゼロ、t9~t12時刻の電位差が負、このように類推する)を保持する。これにより、電子ビーム受け取り位置は陽極で順次変化する。いくつかの実施例において、連係コントローラは対応する電子ビーム受け取り位置を記録することができる。
【0074】
このような動作方式では、X線源の焦点位置がホッピングする。例えば、4つの陰極ユニットを有するX線源を例として説明すると、t1時刻では、陰極ユニットC1が電子ビームを発生させ、V-Vは正の値であり、焦点位置はT1である。t2時刻では、陰極ユニットC2が電子ビームを発生させ、V-Vは正の値であり、焦点位置はT2である。t3時刻では、陰極ユニットC3は電子ビームを発生させ、V-Vは正の値であり、焦点位置はT3である。t4時刻では、陰極ユニットC4が電子ビームを発生させ、V-Vは正の値であり、焦点位置はT4である。t5時刻では、陰極ユニットC1が電子ビームを発生させ、V-Vはゼロであり、焦点位置はT1である。…t8時刻では、陰極ユニットC4が電子ビームを発生させ、V-Vはゼロであり、焦点位置はT4である。t9時刻で、陰極ユニットC1が電子ビームを発生させ、V-Vは負の値であり、焦点位置はT1である。…t12時刻では、陰極ユニットC4が電子ビームを発生させ、V-Vは負の値であり、焦点位置はT4である。この方式で全ての陰極が電子ビームを複数回(例えば3回、各陰極が電子ビームを放射する回数と2つの電極板の間の電位差の数とが同じ)放射した後、X線源は初期状態(t1時刻)に戻って循環操作を行うことができる。
【0075】
上記では、2つの電極板の間の3種類の異なる電位差状態を例として偏向電極組立体及びX線源の動作原理を説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。本開示の実施例によれば、偏向電極組立体の2つの電極板の間に2種類又は4種類以上の異なる電位差を更に有することができる。
【0076】
上記では、陰極ユニットの2種類の電子ビーム放射状態について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。本開示の実施例によれば、X線源の陰極ユニットは、他の電子ビーム放射状態を更に有することができる。いくつかの実施例において、陰極ユニットの電子ビーム放射状態は、2つの電極板の間の電位差状態に合わせることができる。例えば、2つの電極板の間の電位差状態の数がn(n≧2)である場合、各陰極ユニットはそれぞれn回の電子ビームを放射し、又は複数の陰極ユニットは順に1回の電子ビームを放射することができる。
【0077】
上記では、X線源の2つの動作モードについて説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。本開示の実施例によれば、X線源は他の動作モードを更に有することができる。X線源の動作モードは、陰極ユニットの電子ビーム放射状態と2つの電極板の間の電位差状態との異なる組み合わせに基づいて、X線源の焦点位置(電子ビーム受け取り位置)の異なる分布を実現することができる。
【0078】
上記では、同一時刻で一つの陰極ユニットのみが電子ビームを放射することを説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。本開示の実施例によれば、同じ時刻に複数の陰極ユニットが電子ビームを放射することができる。
【0079】
本開示のいくつかの実施例によれば、X線源の動作モードは連係コントローラ9により制御されてもいい。例えば、連係コントローラは必要な焦点分布状態(各時刻での焦点位置)に応じて陰極ユニットの電子ビーム放射と偏向電極組立体の電位差を制御する。本開示のいくつかの実施例によれば、X線源の動作モードは他の制御装置により制御されてもよく、連係コントローラ9はX線源の動作モード(例えば電子ビーム放射時刻、焦点位置、X線発生時間、X線強度等を含む)を記録することができる。
【0080】
上記では、電極板1、2のティース部の上面が位置する面は、陽極6の下面と平行であることを説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。本開示の実施例によれば、偏向電極組立体の上面(ティース部の上面)は陽極6の下面と平行でなくてもよい。
【0081】
上記では、電極板1、2のティース部の上面は同一平面内にあることを説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。本開示の実施例によれば、電極板1、2のティース部の上面は同一平面内になくてもよい。
【0082】
以下、図8を参照して本開示の実施例に係るX線撮像システムを説明する。図8は、本開示の実施例に係るX線撮像システムの模式図である。
【0083】
図8に示すように、本開示の実施例に係るX線撮像システムは、上記のX線源及び検出器11を含む。本開示の実施例に係るX線源の説明について以上を参照するが、ここでは説明を省略する。X線源は、複数の位置(焦点位置)からX線を発生させることができる。本開示の実施例に係るX線源は、分散型X線源と呼ばれてもよい。X線源が検出器11に対向して配置されることで、被検体はX線源と検出器11の間に位置することができる。X線撮像システムの動作過程において、X線源から発生したX線は被検体(例えば、荷物、工業製品、車両、特殊なデバイス、人体部位等)を透過することができる。検出器11は被検体を透過したX線を収集することにより、X線収集情報を生成させるために用いられる。本開示のいくつかの実施例によれば、検出器11は複数の検出器ユニットを含んで検出器アレイを構成し、又は検出器11はフラットパネル検出器であってもよい。本開示は、X線源と検出器11の配置方式を制限せず、X線源から放射されたX線が被検体を透過した後に検出器11により収集されることができればよい。例えば、X線源及び検出器11はそれぞれ被検体の両側に配置されてもよく、又は被検体の全部又は一部を取り囲むように配置されてもよい。
【0084】
例示的な実施例において、X線撮像システムは、撮像制御装置12を更に含むことができる。撮像制御装置12はX線源と通信可能に接続されてもよく、例えば有線通信又は無線通信によりX線源の連係コントローラ9、電位コントローラ3及び/又は陰極コントローラ7に接続される。撮像制御装置12は、検出器11からX線取得情報を取得し、又、X線源からX線放射情報を取得してもよい。例えば、撮像制御装置12は検出器11から異なる時刻に収集されたX線信号を取得し、且つX線源から対応する時刻でのX線放射位置及び強度等の情報を取得することができる。撮像制御装置12は検出器11から取得されたX線収集情報及びX線源から取得されたX線放射情報に基づいて、X線画像(例えば二次元画像又は三次元画像)を生成することができる。例えば、撮像制御装置12はデータ分析及び処理により、アルゴリズムを再構築して被検体の断層構造又は三次元情報を反映した画像(CT)を構築することができる。いくつかの実施例において、撮像制御装置12は集中制御ユニット、信号処理ユニット、データ変換ユニット、アルゴリズムユニット、撮像表示ユニットなどを含むことができる。
【0085】
本開示のいくつかの実施例によれば、X線撮像システムは以下の方式で動作する。X線撮像システムの撮像制御装置12は撮像要求に応じて、X線放射要求(例えば、各時刻での焦点位置、X線発生時間、X線強度等を含む)を特定する。制御装置12は、X線放射要求をX線源(例えば連係コントローラ9)に送信する。X線源は(例えば連係コントローラ9を介して)X線放射要求に応じて、陰極ユニット5及び偏向電極組立体の動作状態を制御することで、要求に合致するX線放射を発生させる。撮像制御装置12は検出器11からX線収集情報を取得し、又、X線源からX線放射情報を取得することにより、X線画像を生成させる。
【0086】
本開示のいくつかの実施例によれば、X線撮像システムは以下の方式で動作する。X線源の連係コントローラ9は、陰極ユニット5及び偏向電極組立体の動作状態を制御することで、X線の放射を生成させる。連係コントローラ9はX線放射情報(例えば各時刻での焦点位置、X線発生時間、X線強度等を含む)をX線撮像システムの撮像制御装置12に送信する。撮像制御装置12は、検出器11からX線収集情報を取得し、X線収集情報及びX線放射情報に基づいてX線画像を生成させる。
【0087】
本開示の実施例に係るX線撮像システムは、偏向電極組立体を有する分散型X線源を使用することで、X線を発生させる焦点数を倍増させる。したがって、X線撮像システムにより提供された透視撮像の視角情報は倍増し且つより精細な視角分割を提供し、これにより断層画像又は三次元CT画像の品質を更に向上させ、高解像度の撮像を実現する。また、X線撮像システムは被検体のより明確な検出情報(例えば欠陥情報)を提供することができ、より強い自動識別能力を有することができる。
【0088】
例示的な実施例を参照して本開示を説明したが、理解すべきことは、本開示は上記実施例の構造及び方法に限定されるものではない。逆に、本開示は、様々な変形例および等価な構成をカバーすることを意図している。また、様々な例示的な組み合わせ及び構造に開示された発明の様々な要素及び方法ステップを示すが、より多くの、またはより少ない部品又は方法を含む他の組み合わせも本開示の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8