IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ボーイング・カンパニーの特許一覧

特許7403011熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形
<>
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図1
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図2
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図3
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図4
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図5
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図6
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図7
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図8
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図9
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図10
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図11
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図12
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図13
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図14
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図15
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図16
  • 特許-熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】熱可塑性部分を有する部品のための誘導加熱成形
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20231214BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20231214BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29C43/36
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023002304
(22)【出願日】2023-01-11
(62)【分割の表示】P 2018191743の分割
【原出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2023052317
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】15/791,683
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】マーク アール.マッツェン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム シー.ダイクストラ
(72)【発明者】
【氏名】リー チャールズ ファース
(72)【発明者】
【氏名】ランドン ケー.ヘンソン
(72)【発明者】
【氏名】ツンデ エー.オラニヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール.ハル
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/133406(WO,A1)
【文献】特開2015-024532(JP,A)
【文献】特開2019-077179(JP,A)
【文献】特開2013-115049(JP,A)
【文献】米国特許第8383998(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
B29C 43/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ベースと、第1フレームと、第1組の誘導コイルと、第1サセプタと、モールドと、を備える第1ツールを含み、
前記第1フレームは、前記第1ベースに取り付けられており、
前記第1組の誘導コイルは、前記第1フレームを貫通するように設けられるとともに、第1電磁場を生成し、
前記第1サセプタは、強磁性材料で作製されるとともに、前記第1フレームにおける前記ベースとは反対側に沿って設けられており、前記強磁性材料は、前記第1電磁場に応答して熱を発生させるものであり、
前記モールドは、前記第1サセプタから延出するとともに、伝導性熱伝達により前記第1サセプタから熱を受け、
前記第1サセプタは、前記モールドと前記第1フレームとの間に配置されており、
前記モールドは、前記第1サセプタから遠ざかる方向に突出して、成形されるべき部品の熱可塑性部分に接触する複数の成形用プラグを含んでおり、
前記成形用プラグは、前記第1電磁場が前記モールドにおいて電気誘導電流を生成しうる表皮厚みよりも薄い壁を含む、装置。
【請求項2】
第2ベースと、第2フレームと、第2組の誘導コイルと、第2サセプタと、を備える第2ツールをさらに含み、
前記第2フレームは、前記第2ベースに取り付けられており、
前記第2組の誘導コイルは、前記第2フレームに挿入されているとともに、第2電磁場を生成し、
前記第2サセプタは、前記第2電磁場に応答して熱を発生させる強磁性材料で作製されるとともに前記第2フレーム内に凹設され、且つ、前記モールドを受容可能な寸法に設定された受容部を画定している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1サセプタ及び前記第2サセプタの各々は、鉄、ニッケル、及びコバルトの合金を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1電磁場に応答して発熱する強磁性材料で作製されるとともに、前記モールドに挿入されている追加のサセプタをさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記モールドは、前記部品に接触しない内壁と、前記部品に接触する外壁とを含み、
前記追加のサセプタは、前記内壁と前記外壁との間に挿入されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1フレームは、互いに平行且つ対向する、透磁性材料で作製された第1組のプレートを含んでおり、前記第1組のプレートを作製する前記透磁性材料は、非磁性ステンレス鋼である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記モールドは、前記第1サセプタの前記強磁性材料とは化学的に異なる強磁性材料で作製されている、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記モールドに流体を供給する冷却システムをさらに含み、前記流体は、前記モールドを処理温度よりも低い温度まで冷却する、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記第1組の誘導コイルに電力を供給する電源をさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の装置を用いて、コンポーネントを形成する材料を所定温度まで加熱することにより、当該コンポーネントを製造するための方法であって、
加熱して前記コンポーネントを製造するための材料を、受容部に載置し
前記第1ツールを、前記受容部に配置し、
第1サセプタに近接して前記第1電磁場を生成する、ことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形による製造の分野に関し、特に、加熱されたツールを使用した部品の成形に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材部品は、当該部品の熱可塑性部分を加熱し、この熱可塑性部分を所望の形状にプレス加工することを含む成形によって製造することができる。しかしながら、廃熱を生成することなく一定温度で安定的に成形を行うには、依然として複雑なプロセスが必要である。成形ツールの熱容量(thermal mass)が大きすぎる場合、成形処理で消費するエネルギー量が大きくなり、モールドの冷却に要する時間も増大するため、複合材部品の製造のためのサイクル時間も増大しうる。同様に、作業環境で廃熱が生成されると、周囲環境の温度が上昇して部品の成形に時間がかかるため、好ましくない。
【0003】
したがって、上述した問題のうち少なくともいくつかと、その他の考えられる問題を考慮にいれた方法及び装置を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で説明する実施形態は、熱可塑性部品の誘導加熱成形(induction molding)
を提供する。この誘導加熱成形においては、誘導加熱成形温度に近づくと磁性状態から非磁性状態に遷移する「スマート」サセプタが用いられる。これにより、スマートサセプタに接触する熱可塑性材料が誘導加熱成形温度/処理温度を超えないようにすることができる。本明細書で説明する装置は、構造部品をさらに含み、この構造部品の厚みは、装置内の誘導コイルにより当該構造部品が誘導加熱されるのを防ぐのに十分な薄さである。これにより、サセプタに対して誘導加熱を行い、装置の構造部品には誘導加熱を行わないようにすることができる。
【0005】
一実施形態は、第1ツールを含む装置である。前記第1ツールは、第1フレームを含む。前記第1フレームは、互いに平行且つ対向する、透磁性材料で作製された第1組のプレートと、前記第1組のプレート間に設けられるとともに、プレート間の電気伝導を防止する材料と、を含む。前記第1ツールは、前記第1フレームにおけるスロット内に設けられるとともに、第1電磁場を生成する第1組の誘導コイルと、前記第1フレームにおける前記第1組のプレートから延出する第1サセプタと、をさらに含む。前記第1サセプタは、強磁性材料で作製されており、前記強磁性材料は、前記第1電磁場に応答して熱を発生させるものであり、且つ、部品の熱可塑性部分の処理温度から摂氏10度以内のキュリー点を有する。前記第1ツールは、前記第1サセプタから延出するとともに、伝導性熱伝達により前記第1サセプタから熱を受けるモールドをさらに含む。前記第1組の各プレートは、前記第1電磁場が電気誘導電流を生成しうる表皮厚みよりも薄い。
【0006】
さらなる実施形態は、方法である。前記方法は、モールドにおける成形用プラグに接触する強磁性材料のサセプタに電磁場を印加し、前記電磁場に応答して、前記サセプタにおいて熱を生成し、前記サセプタは、熱可塑性部分の処理温度に対応するキュリー点を有しており、前記モールドを介した前記サセプタから前記熱可塑性部分への伝導性熱伝達に応答して、前記熱可塑性部分の温度を前記処理温度まで上昇させる、ことを含む。前記方法は、前記モールドを前記熱可塑性部分に押し込んで、前記熱可塑性部分を成形し、前記成形用プラグに冷却流体を供給するチューブを介して、前記モールドを冷却する、ことをさらに含む。
【0007】
さらなる実施形態は、モールドを含む装置である。前記モールドは、透磁性材料で作製された内壁と、透磁性材料で作製された外壁と、前記内壁と前記外壁との間に設けられたキャビティと、を含む。前記装置は、電磁場に応答して発熱する強磁性材料で作製されるとともに、前記キャビティ内に設けられたサセプタと、透磁性材料で作製されるとともに、前記モールドに取り付けられている支持体と、をさらに含む。
【0008】
さらなる実施形態は、方法である。前記方法は、廃熱を制限しつつ熱可塑性材料の加熱成形を制御することを含む。この制御は、モールドを支持する構造部品の誘導加熱を防止しつつ、前記モールドに接触する少なくとも1つのサセプタを誘導加熱し、前記モールドを前記熱可塑性材料に押し込んで、前記熱可塑性材料を成形し、前記モールドの1つ以上の内部チャンバに冷却流体を直接供給して前記モールドを冷却することにより、実行される。
【0009】
さらなる実施形態は、コンポーネントを形成する材料を所定温度まで加熱することにより、当該コンポーネントを製造するための方法である。前記方法は、加熱して前記コンポーネントを製造するための材料を、電磁束場に応答して誘導電流を生成する強磁性材料で作製された受容部に載置することを含み、前記受容部は、前記電磁束場に曝されると、第1所定温度の熱を生成可能である。前記方法は、前記電磁束場に応答して誘導電流を生成する強磁性材料で作製されたモールドを、前記受容部に載置することを含み、前記モールドは、複数の着脱型スマートサセプタインサートを含み、各スマートサセプタインサートは、第2所定温度の熱を生成するために、前記電磁束場に応答して誘導電流を生成する強磁性材料で作製されており、前記複数のスマートサセプタインサート及び前記モールドは、前記電磁束場に曝されると、協働して複合所定温度を実現する。前記方法は、前記受容部及び前記モールドに近接して前記電磁束場を生成することをさらに含む。
【0010】
他の例示的な実施形態(例えば、上記実施形態に関する方法及びコンピュータ可読媒体)については、以下で説明する。上述した特徴、機能、及び、利点は、様々な実施形態において個別に達成可能であり、また、さらに別の実施形態と組み合わせることも可能である。この詳細については、以下の説明及び図面を参照することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下では、添付の図面を参照しながら、単なる例示として、本開示のいくつかの実施形態を説明する。全ての図面において、同じ参照符号は同じ要素又は同じ種類の要素を示している。
【0012】
図1】例示的な実施形態における成形システムを示す分解斜視図である。
図2】例示的な実施形態における図1の成形システムの上側ツールを示す斜視図である。
図3】例示的な実施形態における図1の成形システムの上側ツールを示す断面図である。
図4】例示的な実施形態における図1の成形システムの下側ツールを示す斜視図である。
図5】例示的な実施形態における図1の成形システムの下側ツールを示す断面図である。
図6】例示的な実施形態における図1の成形システムを示す斜視図である。
図7-9】例示的な実施形態における図1の成形システムを示す断面図である。
図10】例示的な実施形態における成形システムを操作するための方法を示すフローチャートである。
図11-12】例示的な実施形態における図1の成形システムの領域を示す拡大断面図である。
図13】例示的な実施形態における成形システム内の成形用プラグの支持体を示す斜視図である。
図14】例示的な実施形態における成形システムを示すブロック図である。
図15】例示的な実施形態における成形システムを操作するための方法を示す他のフローチャートである。
図16】例示的な実施形態における航空機の製造及び保守方法を示すフローチャートである。
図17】例示的な実施形態における航空機を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面及び以下の記載は、本開示の特定の例示的な実施形態を説明するものである。したがって、本明細書に明示的に説明又は図示されていなくても、本開示の範囲内において本開示の原理を具現化する様々な変形が可能であることは、当業者であれば理解するであろう。さらに、本明細書で説明されている例は、本開示の原理に対する理解を助けることを意図するものであり、具体的に説明された例や条件に限定されないと解釈すべきである。したがって、本開示は、以下に説明する特定の実施形態又は例に限定されるものではなく、請求の範囲及びその均等物によって限定されるものである。
【0014】
図1~9は、例示的な実施形態における成形システム100、及び、その様々なコンポーネントを示す図である。例えば、図1は、例示的な実施形態における成形システム100を示す分解斜視図である。本実施形態においては、成形システム100は、上側ツール110と下側ツール130とを含む。上側ツール110と下側ツール130とが合体することにより複合材部品120の熱可塑性部分122が成形される。
【0015】
複合材部品120は、複数の層をレイアップして形成された積層体からなる炭素繊維強化ポリマー(CFRP)部品であってもよい。上記積層体の各層における個々の繊維は、互いに平行に整列していてもよいが、それぞれの層は、作製される複合材部品の強度を異なる方向に沿って高めるために、異なる繊維配向を示していてもよい。上記積層体は、液状樹脂を含みうる。この樹脂は温度が上昇すると固まり、この結果、積層体が硬くなって(例えば、航空機で使用するための)複合材部品が形成される。熱硬化性樹脂の場合、上記のように硬くなること(hardening)は、硬化(curing)と呼ばれる不可逆のプロセス
であるが、熱可塑性樹脂の場合、樹脂を再加熱すると液体に戻ることもある。いくつかの実施形態においては、複合材部品120は、当該部品内でランダム配向された短いチョップドファイバ(例えば、長さが数センチメートル以下の繊維)を含みうる。
【0016】
上側ツール110は、複数の穴111を有するベース112を含む。上側ツール110は、さらに、ベース112に取り付けられたフレーム114と、当該フレーム114を貫通する第1組115の誘導コイル116とを含む。誘導コイル116は、図2に示すサセプタ(susceptor)210などの、上側ツール110の内部における1つ以上のサセプタ
を加熱する。誘導コイル116の周波数は、対応するサセプタを効率的に加熱できるように選択される。誘導コイル116は、電源(例えば、図14に示す電源1460)によって電力供給される。
【0017】
本明細書で説明するサセプタは、所望の成形温度/処理温度(例えば、200℃)に対応する(例えば、当該温度から摂氏10度(℃)以内の)キュリー点を有する「スマート」サセプタであってもよい。スマートサセプタの材料としては、当該材料のキュリー点に向かって漸近的に熱が上昇するが、周囲の誘導コイルによって生成される磁場の存在下ではキュリー点を超えないものが用いられる。この効果は、サセプタの材料が消磁すると、これに伴って、サセプタ内の電気伝導が低下することにより引き起こされる。スマートサ
セプタの材料としては、例えば、コバールのような強磁性材料や、鉄、ニッケル、及びコバルトなどの他の合金が挙げられる。本明細書で説明する複数のサセプタは、必要に応じて同じ強磁性材料で作製することもできる。
【0018】
モールド118は、上側ツール110の下面を形成しており、成形処理中に熱可塑性部分122に接触する。モールド118は、非磁性ステンレス鋼などの透磁性材料で形成することができる。この場合、モールド118のコンポーネントの厚みは、誘導コイル116がモールド118内で誘導を引き起こす表皮厚み(skin depth)よりも小さい。したがって、上記材料は、誘導コイル116によって生成された電場に応答して発熱しない。モールド118は、例えば、コストの削減やツールの長寿命化のために、上述したサセプタとは異なる材料で作製してもよい。モールド118は、所望の輪郭に形成することができる。
【0019】
下側ツール130は、ベース132とフレーム134とを含む。フレーム134は、複数のスロット135を有する。スロット135には、第2組137の誘導コイル136が挿入されている。誘導コイル136により、サセプタ138で熱を発生させて、熱可塑性部分122の温度を処理温度(例えば、融点、融着点(sticking point)、粘着温度(tacking temperature)など)まで上昇させることが容易になる。サセプタ138は、受容
部139を形成している。受容部139が、チョップドポリエーテルケトンケトン(chopped Poly Ether Ketone Ketone(PEKK))、又は、他の熱可塑性材料をルース(loose)
な状態で保持する実施形態では、受容部139は、成形処理に望ましい量の熱可塑性材料を保持するのに十分な深さを有しうる。
【0020】
図2は、例示的な実施形態における成形システム100の上側ツール110を示す斜視図である。図2は、図1に示す矢印2に対応しており、図1に示す上側ツール110を回転させて、当該上側ツール110を上下逆に示した図である。図2には、モールド118に接するサセプタ210が示されている。このため、誘導コイル116によってサセプタ210が加熱されると、サセプタ210は、モールド118と伝導性熱伝達(conductive
heat transfer)を行う。
【0021】
図3は、上側ツール110を示す断面図であり、図2に示す矢印3に対応している。図3は、モールド118が、複数の成形用プラグ310(例えば、個別片)を含むことを示す。各成形用プラグ310は、サセプタ210に接するとともに、支持体350と物理的に連結している。各支持体350は、壁330を含む。壁330は、ベース112における穴111と連結するチャンバ332を画定している。これらの穴111及びチャンバ332をチューブ340が通過しており、成形用プラグ310へと入り込んでいる。チューブ340は、成形処理が完了した後、加圧冷却流体(例えば、処理温度よりも温度が低い冷ガス、空気、液体窒素など)を供給して、成形用プラグ310の温度を下げることができる。したがって、本明細書においては、一組のチューブ340を冷却システム342と呼ぶ。図3には、さらに、スロット320が示されており、誘導コイル116は、これらのスロットを通ってフレーム114を横断している。
【0022】
図4は、例示的な実施形態における成形システム100の下側ツール130を示す斜視図であり、図5は、図4における矢印5で示される下側ツール130の断面図である。図4は、受容部139とともに、サセプタ138をより詳細に示す図である。図5は、各スロット135のサイズがフレーム134内で異なりうることを示す。
【0023】
上側ツール110及び下側ツール130の両方についての説明に関連して、図6~9には成形処理が示されている。図6は、例示的な実施形態における成形システム100を示す斜視図である。同図において、サセプタ138によって画定された受容部139には複
合材部品120が挿入されている。
【0024】
図7~9は、例示的な実施形態において、複合材部品120の成形を行う成形システム100を示す断面図である。図7は、図6に示す矢印7に対応する。図7に示すように、モールド118は、複合材部品120の真上に配置されている。モールド118は、誘導コイル116により加熱されるサセプタ138の伝導性熱伝達により加熱される。一方、サセプタ210は、誘導コイル136により加熱される。モールド118は、例えば、熱可塑性部分122の処理温度などの特定の温度まで加熱される。その後、モールド118は、下方へ移動して熱可塑性部分122に進入し、これによって、熱可塑性部分122を成形する。
【0025】
図7は、さらに、フレーム114が、透磁性材料(例えば、非磁性鋼)からなる第1組712のプレート700で形成されており、フレーム134が、透磁性材料からなる第2組714のプレート700で形成されていることを示す。各プレート700は、プレート700間に設けられた材料710によって他のプレート700と隔離されている。この材料は、プレート700間の電気伝導を防止するとともにプレート700を構造的に一体化するものである。材料710は、例えば、プレート700間に設けられるセラミックプレートであってもよい。本明細書において、「透磁性」材料とは、磁場を大幅に(例えば、10パーセントを超えて)減衰させずに透過させることが可能な材料である。プレート700の各々は、その材料(例えば、非磁性鋼)が誘導コイルからの磁場に応答して電気誘導電流を生成する表皮厚み(例えば、4分の1インチ)よりも、薄い。これは、フレーム114及びフレーム134の両方におけるプレート700についていえる。表皮厚みは、電磁場を生成する誘導コイルに供給される電力の周波数に依存する。このようにプレートの厚みを決定することにより、上側ツール110及び下側ツール130の両方の全体的な熱容量を低減することができる。
【0026】
フレーム134は、非磁性であるが透磁性を有するコンポーネントで作製することもできる。これにより、フレーム134又はフレーム114において、誘導コイル116及び136が、これらのフレームを急速に加熱しうる誘導電流を生成するのを防ぐことができる。また、これと同時に、誘導コイル116及び誘導コイル136により生成される電磁場が過度に減衰されるのを防ぐことができる。図8は、図7に示す同じ視点からの図に対応しており、方向Dに移動するモールド118により複合材部品120が成形される際の、当該部品の変化を示す。
【0027】
図9は、さらに、成形処理中の複合材部品120を示しており、図6に示す矢印9に対応している。図9は、誘導加熱成形により所望の形状が形成された後、成形用プラグ310内に冷却流体を放出することが可能なチューブ340を示す。冷却流体により成形用プラグ310の温度を下げることができる。成形用プラグ310は、冷却されると熱収縮する。これにより、熱可塑性部分122から成形用プラグ310を抜け易くすることができる。さらに、チューブ140を用いた冷却処理の迅速化により、多くの部品を製造する際のサイクル時間を削減することができる。
【0028】
上述した成形システム100の物理コンポーネントの説明に関連して、以下では成形処理の説明を行い、成形システム100を用いることが可能な方法を示す。本実施形態においては、複合材部品120は、熱可塑性部分122を含むものとし、また、上側ツール110及び下側ツール130は、現時点において分離されており、加熱されていない状態であるものとする。また、成形の対象は、熱可塑性部分122である。
【0029】
図10は、例示的な実施形態における成形システムを操作するための方法を示すフローチャートである。方法1000のステップについて、図1の成形システム100を参照し
ながら説明するが、当業者であれば、他のシステムにおいて方法1000を実行することも可能であると理解するであろう。本明細書で説明するフローチャートには全てのステップが含まれているわけではなく、図示していない他のステップが含まれることもありうる。本明細書で説明するステップは、別の順序で実行することも可能である。
【0030】
複合材部品120の熱可塑性部分122がモールド118と位置合わせされる(ステップ1002)。これは、複合材部品120をサセプタ138の受容部139内に載置することを含む。この時、成形システム100は、成形を開始する位置に配置されている。モールド118に接触する強磁性材料のサセプタ210、及び、成形用プラグ310に挿入された追加のサセプタ1118(図11に示す)に、電磁場が印加される(ステップ1004)。この動作は、誘導コイル116及び/又は誘導コイル136を作動させることにより実行することができる。これにより、電磁場に応答してサセプタ210、138及び追加のサセプタ1118において熱が生成される(ステップ1006)。サセプタ138、210及び追加のサセプタ1118は、熱可塑性部分122の処理温度に対応する(例えば、当該温度から摂氏10度以内の)キュリー点を有する。これは、サセプタ138、210及び追加のサセプタ1118が実質的に熱可塑性部分122の処理温度へ向かって加熱されると、これらのサセプタは非磁性となり、誘導加熱を停止することを意味する。これにより、サセプタは、誘導コイル116及び136に加熱されている間、定常温度を効果的に実現することができる。
【0031】
サセプタ210、138及び追加のサセプタ1118が加熱されると、これらのサセプタは、熱可塑性部分122の温度を処理温度(例えば、200℃)まで上昇させる(ステップ1008)。この温度の上昇は、少なくとも部分的には、モールド118を介したサセプタ210から熱可塑性部分122への伝導性熱伝達に応答して生じるものである。熱可塑性部分122は、処理温度に達すると成形が可能となる。したがって、モールド118が、熱可塑性部分122に押し込まれる(ステップ1010)。熱可塑性部分122が成形された後、チューブ340を介してモールド118が冷却される。当該チューブは、その際、成形用プラグ310に対して冷却流体を供給して急速に成形用プラグ310を冷却することにより、複合材部品120からモールド118を引き抜き易くする。
【0032】
要約すると、方法1000は、廃熱を制限しつつ、熱可塑性材料の加熱成形を制御し易くすることができる。方法1000は、モールドを支持する構造部品の誘導加熱を防止しつつ(これは、ツールの構造部品の厚みが、誘導加熱を生じさせない程度まで薄いことにより実現される)、モールドに接触する少なくとも1つのサセプタを誘導加熱することにより、上記目標を達成する。方法1000においては、さらに、モールドを熱可塑性材料に押し込むことにより当該熱可塑性材料の成形が行われる。また、当該方法は、モールドの1つ以上の内部チャンバ(例えば、チャンバ332)に冷却流体を直接供給してモールドを冷却することを含みうる。
【0033】
方法1000は、ランナウェイ加熱(runaway thermal heating)に代えて「スマート
」加熱を行うことが可能な改良型サセプタを用いるため、従来のシステムに比べて実質的な利点を有する。このスマートサセプタ技術により、クリティカルな処理温度において正確な熱制御を行うことができる。さらに、方法1000は、サセプタ以外のコンポーネントで誘導加熱が発生しないように注意深く設計及び形成された部品を含む成形システムを用いる。このように廃熱を低減することにより、上側ツール110及び下側ツール130を急速に加熱及び冷却することができるため、これらのツールの製造速度を向上させて、生産効率を高めることができる。
【0034】
上述した成形システム100のコンポーネント及び動作の説明に関連して、図11~12は、例示的な実施形態における図1の成形システムの領域を示す拡大断面図である。こ
れらの図は、成形システム100のコンポーネントを具体的に示している。具体的には、図11は、図3の領域11に対応しており、図12は、図3の領域12に対応している。
【0035】
図11は、各成形用プラグ310が内壁1110で画定された内側キャビティ1114を含むことを示す。また、内壁1110及び外壁1112は、追加のサセプタ1118が設けられる外側キャビティ1116を画定している。成形用プラグ310の外側キャビティ1116内において追加のサセプタ1118を用いることにより、成形用プラグ310に対する加熱の程度を高めることができる。図11は、モールド118内に挿入されたサセプタのための追加的な位置を示しており、図12は、成形用プラグ310を冷却するチューブ340の構成を示している。図12は、各チューブ340が、中空通路1210を含むことを示している。加圧された冷却流体は、この通路を通り、ポート1220から出て、各成形用プラグ310の内側キャビティ1114に入る。したがって、チューブ340は、当該チューブ340が内側キャビティ1114と流体連通するように、内側キャビティ1114に挿入されている。
【0036】
図13は、例示的な実施形態における成形システム内の成形用プラグの支持体350を示す斜視図である。本実施形態において、支持体350は、ボディ部1300を含む。このボディ部は、スリット1310を有する中空シリンダである。スリット1310は、誘導加熱を引き起こしうる電流経路が支持体350に形成されないようにするものである。また、支持体350は、モールド118に取り付けられるとともに、成形システム100内の誘導コイルにより生成される電磁場に応答して閾値範囲(例えば、摂氏10度)を超えて温度が上昇しない透磁性材料(例えば、非磁性ステンレス鋼)で作製されている。留め具1320は、支持体350を成形用プラグ310に取り付けるためのものであり、留め具1330は、支持体350をベース112に取り付けるためのものである。
【実施例
【0037】
以下の例においては、誘導加熱成形システムに関連させて追加の処理、システム、及び方法の説明を行う。
【0038】
図14は、例示的な実施形態における成形システム1400を示すブロック図である。図14によれば、成形システム1400は、第1ツール1410と、第2ツール1430とを含む。成形システム1400は、熱可塑性部品1420を成形する。第1ツール1410は、複数の穴1411を有するベース1412を含む。同図には、複数のプレート1414を含むフレーム1413も示されている。フレーム1413内のスロット1415は、誘導コイル1416を保持しており、これらのコイルは、電源1460から電力を受けて、第1ツール1410のサセプタを加熱する。
【0039】
第1ツール1410は、スリット1452を含む支持体1450をさらに含む。第1サセプタ1417は、支持体1450に取り付けられており、チューブ1457は、第1サセプタ1417を通って成形用プラグ1454に入り込んでいる。チューブ1457のポート1453からは冷却流体が排出される。成形用プラグ1454は、外壁1459と、外側(壁)キャビティ1455と、内壁1456と、内側(中央)キャビティ1458とを含む。
【0040】
第2ツール1430は、複数のプレート1434を備えるフレーム1433を含む。スロット1435は、プレート1434を貫通しており、当該スロット1435内には、1つ以上の誘導コイル1436が設けられている。成形中、第2サセプタ1438は、熱可塑性部品1420と接触している。
【0041】
図15は、例示的な実施形態における成形システム100を操作するための方法150
0を示す他のフローチャートである。図15によれば、方法1500は、コンポーネント(例えば、複合材部品120)を形成する材料(例えば、熱可塑性材料)を所定温度まで加熱することにより、当該コンポーネントを製造するために用いられる。方法1500は、加熱してコンポーネントを製造するための材料を受容部139に載置することを含み、当該受容部は、電磁束場に応答して誘導電流を生成する強磁性材料で作製される(ステップ1502)。受容部139は、電磁束場に曝されると、第1所定温度(例えば、180℃)の熱を生成することができる。方法1500は、電磁束場に応答して誘導電流を生成する強磁性材料で作製されたモールド1118を受容部139に載置することをさらに含む(ステップ1504)。モールド118は、複数の着脱型スマートサセプタインサート(例えば、追加のサセプタ1118)を含み、各スマートサセプタインサートは、第2所定温度(例えば、205℃)の熱を生成するために、電磁束場に応答して誘導電流を生成する強磁性材料で作製されている。複数のスマートサセプタインサート及びモールドは、電磁束場に曝されると、協働して複合所定温度(例えば、200℃)を実現する。方法1500は、受容部及びモールドに近接して電磁束場を生成することをさらに含む(ステップ1506)。
【0042】
さらなる実施形態においては、方法1500は、モールド118に接触するプレート間の電気伝導を防止することと、第1ツールにおける第1フレームのスロット内に設けられた第1組の誘導コイルにおいて第1電磁場を生成することと、当該第1電磁場に応答して、部品の熱可塑性部分の処理温度から摂氏10度以内のキュリー点の熱を生成することと、を含みうる。
【0043】
より具体的に図面を参照すると、本開示の実施形態は、図16に示すように航空機の製造及び保守方法1600に関連させ、図17に示すように航空機1602に関連させて説明することができる。生産開始前の工程として、例示的な方法1600は、航空機1602の仕様決定及び設計1604と、材料調達1606とを含みうる。生産中の工程としては、航空機1602の部品及び小組立品の製造1608、並びに、システムインテグレーション1610が行われる。その後、航空機1602は、認可及び納品1612の工程を経て、使用1614に入る。顧客による使用中、航空機1602は、定例の整備及び保守1616(これは、改良、再構成、改修などを含みうる)に組み込まれる。本明細書で具体化した装置及び方法は、製造及び保守方法1600における任意の適切な段階(例えば、仕様決定及び設計1604、材料調達1606、部品及び小組立品の製造1608、システムインテグレーション1610、認可及び納品1612、使用1614、並びに、整備及び保守1616)、及び/又は、航空機1602の任意の適切なコンポーネント(例えば、機体1618、システム1620、内装1622、推進系1624、電気系1626、油圧系1628、環境系1630)において採用することができる。
【0044】
上記方法1600の各工程は、システムインテグレータ、第三者、及び/又は、オペレータ(例えば、顧客)によって実行又は実施することができる。なお、システムインテグレータは、航空機メーカ及び主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。第三者は、売主、下請業者、及び供給業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織などであってもよい。
【0045】
図17に示すように、例示的な方法1600によって製造される航空機1602は、複数のシステム1620と内装1622とを備えた機体1618を含みうる。高水準システム1620の例としては、推進系1624、電気系1626、油圧系1628、及び、環境系1630のうちの1つ又は複数が挙げられる。また、その他のシステムをいくつ含んでいてもよい。また、航空宇宙産業に用いた場合を例として説明したが、本発明の原理は、例えば自動車産業などの他の産業に適用してもよい。
【0046】
既に述べたように、本明細書で具現化される装置及び方法は、製造及び保守方法1600における任意の1つ以上の段階で採用することができる。例えば、製造工程1608に対応する部品又は小組立品は、航空機1602の使用中に作製される部品又は小組立品と同様に作製又は製造することができる。また、1つ以上の装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせを、例えば、製造工程である1608及び1610で用いることにより、実質的に航空機1602の組立速度を速めたりコストを削減したりすることもできる。同様に、1つ以上の装置の実施形態、方法の実施形態、又は、それらの組み合わせを、航空機1602の使用中に、例えば、限定するものではないが、整備及び保守1616に用いてもよい。例えば、本明細書で説明した技術及びシステムをステップ1606、1608、1610、1614、及び/又は、1616で用いてもよいし、機体1618及び/又は内装1622に用いてもよい。これらの技術及びシステムは、例えば、推進系1624、電気系1626、油圧系1628、及び/又は、環境系1630を含む複数のシステム1620に利用することもできる。
【0047】
一実施形態において、部品は、機体1618の一部であり、部品及び小組立品の製造1608の工程中に製造される。その後、上記部品は、システムインテグレーション1610において航空機に組み込まれ、使用1614において、摩耗により使用不可となるまで使用される。その後、整備及び保守1616において、複合材部品120が廃棄され、新たに製造された部品と交換される。本明細書で説明した本発明のコンポーネント及び方法は、部品及び小組立品の製造1608において新たな部品を成形するために利用してもよい。
【0048】
図示又は本明細書で説明した様々な制御要素(例えば、電気部品や電子部品)はいずれも、ハードウェア、ソフトウェアを実行するプロセッサ、ファームウェアを実行するプロセッサ、又は、これらの組み合わせとして実現することができる。例えば、誘導コイルに対する電力を制御したり、上述したツールを作動させたりする要素は、専用ハードウェアとして実現することができる。専用ハードウェア要素は、「プロセッサ」、「コントローラ」、又は、他の同様の用語で呼ばれる。プロセッサの形で提供される場合、その機能は、単一の専用プロセッサ、単一の共有プロセッサ、又は、共有可能なものを含む複数の個別プロセッサにより提供されうる。さらに、「プロセッサ」又は「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行可能なハードウェアのみに言及すると解釈されるべきではない。これらの用語は、限定するものではないが、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)若しくは他の回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェア保存用の読取専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性記憶装置、論理回路、又は、他の物理的なハードウェア部品若しくはモジュールを暗黙的に含みうる。
【0049】
さらに、制御要素は、当該要素の機能を実行するためのプロセッサ又はコンピュータにより実行可能な命令として実現することもできる。命令の例をいくつか挙げると、ソフトウェア、プログラムコード、及び、ファームウェアがある。命令は、プロセッサにより実行されると稼働して、当該プロセッサに対して要素の機能を実行するように指示する。命令は、プロセッサによる読み取りが可能な記憶装置に保存することができる。記憶装置の例としては、デジタル若しくはソリッドステートメモリ、磁気ディスクや磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードドライブ、又は、光学的に読み取り可能なデジタルデータ記憶媒体などが挙げられる。
【0050】
本発明は、以下の付記においても言及されるが、これらは請求の範囲と混同されるべきではない。
【0051】
A1.第1フレーム(114)と、第1組(115)の誘導コイル(116)と、第1サセプタ(210)と、モールド(118)と、を備える第1ツール(110)を含み、
前記第1フレームは、
互いに平行且つ対向する、透磁性材料で作製された第1組(712)のプレート(700)と、
前記第1組のプレート間に設けられるとともに、プレート間の電気伝導を防止する材料(710)と、を含み、
前記第1組の誘導コイルは、前記第1フレームのスロット(135)内に設けられるとともに、第1電磁場を生成し、
前記第1サセプタは、強磁性材料で作製されるとともに、前記第1フレームの第1組のプレートから延出しており、前記強磁性材料は、前記第1電磁場に応答して熱を発生させるものであり、且つ、部品(120)の熱可塑性部分の処理温度から摂氏10度以内のキュリー点を有し、
前記モールドは、前記第1サセプタから延出するとともに、伝導性熱伝達により前記第1サセプタから熱を受け、
前記第1組の各プレートは、前記第1電磁場が電気誘導電流を生成しうる表皮厚みよりも薄い、装置(100)。
【0052】
A2.第2フレーム(134)と、第2組(137)の誘導コイル(136)と、第2サセプタ(138)と、を備える第2ツール(130)をさらに含み、
前記第2フレームは、
互いに平行且つ対向する、透磁性材料で作製された第2組(714)のプレート(700)と、
前記第2組のプレート間に設けられるとともに、プレート間の電気伝導を防止する材料(710)と、を含み、
前記第2組の誘導コイルは、前記第2フレームのスロット(135)内に設けられるとともに、第2電磁場を生成し、
前記第2サセプタは、前記第2電磁場に応答して熱を発生させる強磁性材料で作製されるとともに前記第2フレーム内に凹設され、且つ、前記モールドを受容可能な寸法に設定された受容部(139)を画定しており、
前記第2組の各プレートは、前記表皮厚みよりも薄い、付記A1に記載の装置。
【0053】
A3.前記第1サセプタ及び前記第2サセプタの各々は、鉄、ニッケル、及びコバルトの合金を含む、付記A2に記載の装置。
【0054】
A4.前記第1電磁場に応答して発熱する強磁性材料で作製されるとともに、前記モールドに挿入されている追加のサセプタ(1118)をさらに含む、付記A1に記載の装置。
【0055】
A5.前記モールドは、前記部品に接触しない内壁(1110)と、前記部品に接触する外壁(1112)とを含み、
前記追加のサセプタは、前記内壁と前記外壁との間に挿入されている、付記A4に記載の装置。
【0056】
A6.前記第1組のプレートを作製する前記透磁性材料は、非磁性ステンレス鋼である、付記A5に記載の装置。
【0057】
A7.前記表皮厚みは、前記第1電磁場を生成するために前記第1組の誘導コイルに供給される電力の周波数に依存する、付記A1に記載の装置。
【0058】
A8.前記モールドは、前記第1サセプタの前記強磁性材料とは化学的に異なる強磁性材料で作製されている、付記A1に記載の装置。
【0059】
A9.前記モールドは、前記第1電磁場が前記モールドにおいて電気誘導電流を生成しうる表皮厚みよりも薄い壁(1110、1112)を含む、付記A1に記載の装置。
【0060】
A10.透磁性材料で作製されるとともに、前記モールドに取り付けられている支持体(350)をさらに含む、付記A1に記載の装置。
【0061】
A11.前記支持体は、非磁性ステンレス鋼で作製されている、付記A10に記載の装置。
【0062】
A12.前記支持体は、前記第1電磁場が前記支持体において電気誘導電流を生成しうる表皮厚みよりも薄い、付記10に記載の装置。
【0063】
A13.前記支持体は、中空シリンダを含み、前記中空シリンダは、その長さ方向に沿って延びるスリット(1310)を含む、付記A10に記載の装置。
【0064】
A14.前記モールドに流体を供給する冷却システム(342)をさらに含み、前記流体は、前記モールドを処理温度よりも低い温度まで冷却する、付記A1に記載の装置。
【0065】
A15.前記モールドは、複数の内側キャビティ(1114)を含み、
前記冷却システム(342)は、前記内側キャビティと流体連通している、付記A14に記載の装置。
【0066】
A16.前記冷却システムは、前記内側キャビティに挿入されたチューブ(340)を含む、付記A15に記載の装置。
【0067】
A17.各チューブは、当該チューブから内側キャビティ(1114)に流体を移動させることが可能なポート(1220)を含む、付記A16に記載の装置。
【0068】
A18.前記第1組の誘導コイルに電力を供給する電源(1460)をさらに含む、付記A1に記載の装置。
【0069】
A19.前記モールドを形成する前記透磁性材料は、非磁性ステンレス鋼である、付記A1に記載の装置。
【0070】
本発明のさらなる態様によれば、以下のものが提供される。
【0071】
B1.電磁場を生成する誘導コイル(116)と、
前記電磁場に配置されたツール(100)と、を含み、前記ツールは、
透磁性材料で作製されたモールド(118)と、
前記電磁場に配置されるとともに、前記モールドを受容可能な寸法に設定された受容部(139)を画定する第1サセプタ(138)と、
前記モールド内のキャビティ(1114)に挿入された複数の追加のサセプタ(1118)と、を含む装置。
【0072】
B2.前記モールドに連結する支持体(350)をさらに含み、
前記支持体は、前記電磁場に応答して発熱しない透磁性材料で作製されている、付記B
1に記載の装置。
【0073】
B3.前記誘導コイルに電力を供給する電源(1460)をさらに含む、付記B1に記載の装置。
【0074】
本発明のさらなる態様によれば、以下のものが提供される。
【0075】
C1.コンポーネントを形成する材料を所定温度まで加熱することにより、当該コンポーネントを製造するための方法であって、
加熱して前記コンポーネントを製造するための材料を、電磁束場に応答して誘導電流を生成する強磁性材料で作製された受容部に載置し、その際、前記受容部は、前記電磁束場に曝されると、第1所定温度の熱を生成可能であり(1502)、
前記電磁束場に応答して誘導電流を生成する強磁性材料で作製されたモールドを、前記受容部に載置し、その際、前記モールドは、複数の着脱型スマートサセプタインサートを含み、各スマートサセプタインサートは、第2所定温度の熱を生成するために、前記電磁束場に応答して誘導電流を生成する強磁性材料で作製されており、前記複数のスマートサセプタインサート及び前記モールドは、前記電磁束場に曝されると、協働して複合所定温度を実現し(1504)、
前記受容部及び前記モールドに近接して前記電磁束場を生成する(1506)、方法。
【0076】
C2.前記モールドに接触するプレート間の電気伝導を防止し、
第1ツールにおける第1フレームのスロット内に設けられた第1組の誘導コイルにおいて第1電磁場を生成し、
前記第1電磁場に応答して、部品の熱可塑性部分の処理温度から摂氏10度以内のキュリー点の熱を生成する、ことをさらに含む、付記C1に記載の方法。
【0077】
C3.付記C2に記載の方法に従って組み立てられた航空機の一部分。
【0078】
本発明のさらなる態様によれば、以下のものが提供される。
【0079】
D1.モールドにおける成形用プラグに接触する強磁性材料のサセプタに電磁場を印加し(1004)、
前記電磁場に応答して、前記サセプタにおいて熱を生成し、前記サセプタは、部品の熱可塑性部分の処理温度に対応するキュリー点を有しており(1006)、
前記モールドを介した前記サセプタから前記熱可塑性部分への伝導性熱伝達に応答して、前記熱可塑性部分の温度を前記処理温度まで上昇させ(1008)、
前記モールドを前記熱可塑性部分に押し込んで、前記熱可塑性部分を成形し(1010)、
前記成形用プラグに冷却流体を供給するチューブを介して、前記モールドを冷却する(1012)、方法。
【0080】
D2.前記サセプタを前記キュリー点まで加熱することをさらに含む、付記D1に記載の方法。
【0081】
本発明のさらなる態様によれば、以下のものが提供される。
【0082】
E1.透磁性材料で作製された内壁(1110)、透磁性材料で作製された外壁(1112)、及び、前記内壁と前記外壁との間に設けられたキャビティ(1114)を含むモールド(118)と、
電磁場に応答して発熱する強磁性材料で作製されるとともに、前記キャビティ内に設け
られたサセプタ(1118)と、
透磁性材料で作製されるとともに、前記モールドに取り付けられている支持体(350)と、を含む装置。
【0083】
E2.前記支持体は、前記電磁場が前記支持体において電気誘導電流を生成しうる表皮厚みよりも薄い、付記E1に記載の装置。
【0084】
E3.前記キャビティの寸法は、前記サセプタの寸法と対応している、付記E1に記載の装置。
【0085】
E4.前記キャビティに流体を供給する冷却システム(342)をさらに含み、前記流体は、部品(120)の熱可塑性部分のために、前記モールドを処理温度よりも低い温度まで冷却する、付記E1に記載の装置。
【0086】
E5.前記支持体は、中空シリンダを含み、前記中空シリンダは、その長さ方向に沿って延びるスリット(1310)を含む、付記E1に記載の装置。
【0087】
本発明のさらなる態様によれば、以下のものが提供される。
【0088】
F1.廃熱を制限しつつ熱可塑性材料の加熱成形を制御することを含み、当該制御は、
モールドを支持する構造部品の誘導加熱を防止しつつ、前記モールドに接触する少なくとも1つのサセプタを誘導加熱し(1006)、
前記モールドを前記熱可塑性材料に押し込んで、前記熱可塑性材料を成形し(1010)、
前記モールドの1つ以上の内部チャンバに冷却流体を直接供給して前記モールドを冷却する(1012)ことにより、実行される、方法。
【0089】
F2.前記少なくとも1つのサセプタをキュリー点まで加熱することをさらに含む、付記F1に記載の方法。
【0090】
本明細書において特定の実施形態を説明したが、本開示の範囲は、これらの特定の実施形態に限定されない。本開示の範囲は、以下の請求の範囲及びその均等物によって規定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17