(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 7/02 20060101AFI20231215BHJP
F24C 7/04 20210101ALI20231215BHJP
F24C 15/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
F24C7/02 301E
F24C7/02 301Z
F24C7/02 301G
F24C7/04 A
F24C7/04 B
F24C15/00 D
F24C15/00 M
(21)【出願番号】P 2019569854
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2019035169
(87)【国際公開番号】W WO2020054609
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2018168904
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】黄 志奇
(72)【発明者】
【氏名】貞平 匡史
(72)【発明者】
【氏名】幸 裕弘
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-202414(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179460(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/059770(WO,A1)
【文献】特開2010-061382(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029333(WO,A1)
【文献】特開2016-051526(JP,A)
【文献】特開平08-133449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/02
F24C 7/04
F24C 15/00
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱するように構成された加熱調理部と、
前記被加熱物の画像を撮影するように構成された撮影部と、
前記被加熱物の前記画像と比較するための候補一覧表を記憶している候補記憶部と、
前記被加熱物の前記画像に対して画像認識を行い、前記画像認識の結果と前記候補一覧表に登録された候補の画像とを比較した相関により導出される確からしさに基づいて、前記被加熱物に関する複数の候補を抽出するように構成されるとともに、前記被加熱物が異物であることを前記確からしさに基づいて判定するように構成された画像認識部と、
前記画像認識部により抽出された前記複数の候補の表示順序を調整するように構成された調整部と、
前記調整部により調整された前記表示順序で前記複数の候補を表示するように構成されるとともに、前記画像認識部が、前記複数の候補のうち、最も確からしい候補の前記確からしさを示す数値が所定の閾値よりも低い場合、前記被加熱物が異物であると判定する、
加熱調理器。
【請求項2】
前記画像認識部が、前記複数の候補のうちの最も確からしい候補が異物である場合、前記被加熱物が異物であると判定する、
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
提示部をさらに備え、
前記画像認識部が、前記被加熱物が前記加熱調理部に配置されていないと判定した場合、または、前記画像認識部が、前記被加熱物が異物であると判定した場合、前記提示部は、前記被加熱物に関する候補が抽出されないことを提示する、
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記提示部
が表示部であり、
前記画像認識部が、前記被加熱物が前記加熱調理部に配置されていないと判定した場合、または、前記画像認識部が、前記被加熱物が異物であると判定した場合、前記表示部が、前記被加熱物に関す
る候補が抽出されない旨のメッセージを表示する、
請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記提示部がスピーカであり、
前記画像認識部が、前記被加熱物が前記加熱調理部に配置されていないと判定した場合、または、前記画像認識部が、前記被加熱物が異物であると判定した場合、前記スピーカが、前記被加熱物に関す
る候補が存在しないことを示す音声を出力する、
請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記複数の候補の中から使用者が一つの候補を選択するための操作部と、
選択履歴情報として、前記複数の候補と前記一つの候補とを対応させて記憶する履歴記憶部と、をさらに備え、
前記調整部は、前記選択履歴情報に基づいて、前記複数の候補の前記表示順序を決定する、
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項7】
現在時刻を計時する時計部をさらに備え、
前記履歴記憶部は、前記選択履歴情報として、前記一つの候補の選択が行われた選択時間帯と、前記選択時間帯において前記一つの候補が選択される選択頻度とを記憶する、
請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記履歴記憶部が、前記一つの候補が選択されたときの前記複数の候補の前記表示順序を記憶する、
請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記調整部が、前記選択履歴情報の中から前記選択時間帯が同じで、前記選択頻度の最も高い前記選択履歴情報を抽出し、抽出された前記選択履歴情報に応じて前記複数の候補の前記表示順序を決定する、
請求項7に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記履歴記憶部が外部のサーバに設けられた、
請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記加熱調理部が、前記被加熱物を収容するための加熱室を有する、
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記加熱調理部が、前記被加熱物を載置するためのトッププレートと、前記トッププレートの下方に配置された誘導加熱コイルとを有する、
請求項1に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レンジには、マイクロ波加熱機能に加えて、輻射加熱機能、スチーム加熱機能を備えたものがある。このような加熱調理器には、被加熱物である食材に適した調理メニューを有し、調理メニューボタンにより選択された被加熱物の種類(ごはん、牛乳、野菜など)に適した加熱を行うことができる機種がある。
【0003】
近年、加熱室内に配置されたカメラを有し、画像認識により特定された被加熱物の種類に応じて自動的に加熱を行う加熱調理器が提案されている。上記従来の加熱調理器により、使用者が被加熱物の種類を選択することなく、その被加熱物に適した加熱を自動的に行うことができる。
【0004】
しかしながら、上記従来の加熱調理器は、画像認識による被加熱物の特定が不正確な場合、その被加熱物に適した加熱を行うことができない。
【0005】
この問題を解決するために、以下の加熱調理器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の加熱調理器は、画像認識の結果に基づいて被加熱物に関する多数の候補から例えば三つの候補を抽出するとともに、その認識の確からしさの順にそれらの候補を表示する。使用者は、選択ボタンなどを用いて、表示された候補から一つを選択する。
【0006】
これにより、画像認識の結果が必ずしも正確でなくても、被加熱物に適した加熱を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
特許文献1に記載の加熱調理器は、加熱室内に被加熱物が無い場合、または、加熱室内に異物(皿などの食品でないもの)が収容された場合でも、被加熱物の多数の候補からいくつかの候補を抽出して表示する。
【0009】
特に、画像認識のためにディープラーニング(Deep Learning)などの機械学習を利用すると、特許文献1に記載の加熱調理器は、何らかの確からしさに基づいて、必ず被加熱物の多数の候補からいくつかの候補を抽出して表示する。
【0010】
このため、特許文献1に記載の加熱調理器は、不要な加熱を行ったり、不要な候補を毎回表示したりする可能性がある。
【0011】
本開示は、加熱室内に被加熱物が配置されていない場合、または、加熱室内に異物が載置された場合、加熱を行わず、かつ、不要な候補を表示しない加熱調理器を提供することを目的とする。
【0012】
本開示の一態様の加熱調理器は、加熱調理部と、撮影部と、画像認識部と、調整部と、表示部とを備える。加熱調理部は、被加熱物を加熱する。
【0013】
撮影部は、被加熱物の画像を撮影する。画像認識部は、被加熱物の画像に対して画像認識を行うことで、被加熱物に関する複数の候補を確からしさに基づいて抽出する。さらに、画像認識部は、被加熱物が加熱調理部に配置されていないこと、および、被加熱物が異物であることを判定する。
【0014】
調整部は、画像認識部により抽出された複数の候補の表示順序を調整する。表示部は、調整部により調整された表示順序で複数の候補を表示する。さらに、表示部は、画像認識部が、被加熱物が加熱調理部に配置されていないと判定した場合、または、画像認識部が、被加熱物が異物であると判定した場合、被加熱物に関する候補を表示しない。
【0015】
本態様の加熱調理器は、加熱室内に被加熱物が配置されていない場合、または、加熱室内に異物が載置された場合、不要な加熱、および、不要な候補の表示を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る加熱調理器の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る加熱調理器であるオーブン機能付き電子レンジの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、候補記憶部に記憶された候補一覧表の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、履歴記憶部に記憶された選択履歴表の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る加熱調理器における調理制御のフローチャートである。
【
図6】
図6は、調理制御における候補の抽出のフローチャートである。
【
図7】
図7は、候補の抽出結果の第1例を示す図である。
【
図8】
図8は、候補の抽出結果の第2例を示す図である。
【
図9】
図9は、候補の抽出結果の第3例を示す図である。
【
図10】
図10は、調理制御における表示順序の調整のフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る加熱調理器における表示部の表示画面の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、調理制御における選択履歴の保存のフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施の形態の第1の変形例に係る加熱調理器の構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、実施の形態の第2の変形例に係る加熱調理器の構成を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、実施の形態の第3の変形例に係る加熱調理器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の第1の態様の加熱調理器は、加熱調理部と、撮影部と、画像認識部と、調整部と、表示部とを備える。加熱調理部は、被加熱物を加熱する。
【0018】
撮影部は、被加熱物の画像を撮影する。画像認識部は、被加熱物の画像に対して画像認識を行うことで、被加熱物に関する複数の候補を確からしさに基づいて抽出する。さらに、画像認識部は、被加熱物が加熱調理部に配置されていないこと、および、被加熱物が異物であることを判定する。
【0019】
調整部は、画像認識部により抽出された複数の候補の表示順序を調整する。表示部は、調整部により調整された表示順序で複数の候補を表示する。さらに、表示部は、画像認識部が、被加熱物が加熱調理部に配置されていないと判定した場合、または、画像認識部が、被加熱物が異物であると判定した場合、被加熱物に関する候補を表示しない。
【0020】
本開示の第2の態様の加熱調理器において、第1の態様に加えて、画像認識部は、複数の候補のうち、最も確からしい候補の確からしさを示す数値が所定の閾値よりも低い場合、被加熱物が異物であると判定する。
【0021】
本開示の第3の態様の加熱調理器において、第1の態様に加えて、画像認識部は、複数の候補のうちの最も確からしい候補が異物である場合、被加熱物が異物であると判定する。
【0022】
本開示の第4の態様の加熱調理器は、第1の態様に加えて、提示部をさらに備える。画像認識部が、被加熱物が加熱調理部に配置されていないと判定した場合、または、画像認識部が、被加熱物が異物であると判定した場合、提示部は、被加熱物に関する候補が抽出されないことを提示する。
【0023】
本開示の第5の態様の加熱調理器において、第4の態様に加えて、提示部は上記表示部である。画像認識部が、被加熱物が加熱調理部に配置されていないと判定した場合、または、画像認識部が、被加熱物が異物であると判定した場合、表示部は、被加熱物に関する候補が抽出されない旨のメッセージを表示する。
【0024】
本開示の第6の態様の加熱調理器において、第4の態様に加えて、提示部はスピーカである。画像認識部が、被加熱物が加熱調理部に配置されていないと判定した場合、または、画像認識部が、被加熱物が異物であると判定した場合、スピーカは、被加熱物に関する候補が存在しないことを示す音声を出力する。
【0025】
本開示の第7の態様の加熱調理器は、第1の態様に加えて、複数の候補の中から使用者が一つの候補を選択するように構成された操作部と、選択履歴情報として、複数の候補と当該一つの候補とを対応させて記憶する履歴記憶部と、をさらに備える。調整部は、選択履歴情報に基づいて、複数の候補の表示順序を決定する。
【0026】
本開示の第8の態様の加熱調理器は、第7の態様に加えて、現在時刻を計時する時計部をさらに備える。履歴記憶部は、選択履歴情報として、当該一つの候補の選択が行われた選択時間帯と、選択時間帯において当該一つの候補が選択される選択頻度とを記憶する。
【0027】
本開示の第9の態様の加熱調理器において、第7の態様に加えて、履歴記憶部は、当該一つの候補が選択されたときの複数の候補の表示順序を記憶する。
【0028】
本開示の第10の態様の加熱調理器において、第8の態様に加えて、調整部は、選択履歴情報の中から選択時間帯が同じで、選択頻度の最も高い選択履歴情報を抽出し、抽出された選択履歴情報に応じて複数の候補の表示順序を決定する。
【0029】
本開示の第11の態様の加熱調理器において、第7の態様に加えて、履歴記憶部は外部のサーバに設けられる。
【0030】
本開示の第12の態様の加熱調理器において、第1の態様に加えて、加熱調理部が、被加熱物を収容するように構成された加熱室を有する。
【0031】
本開示の第13の態様の加熱調理器において、第1の態様に加えて、加熱調理部が、被加熱物を載置するように構成されたトッププレートと、トッププレートの下方に配置された誘導加熱コイルとを有する。
【0032】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は本開示の一具体例である。本実施の形態で示される数値、構成、各ステップの処理内容、および、ステップの順序などは一例であって、本開示を限定するものではない。
【0033】
本実施の形態に係る加熱調理器1の構成について、
図1、
図2を用いて説明する。
図1は、加熱調理器1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、加熱調理器1は、加熱調理部10と、撮影部20と、制御部30と、記憶部40と、操作部50と、表示部60とを備える。記憶部40は、候補記憶部41と、履歴記憶部42とを含む。
【0034】
図2は、加熱調理器1であるオーブン機能付き電子レンジの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施の形態において、加熱調理器1は、加熱室11を備えたオーブン機能付き電子レンジである。
【0035】
加熱室11は、加熱室11を区画する内箱12aと、内箱12aを囲う外箱12bとを有する。加熱室11の前面には、加熱室11の前面開口を覆うように扉13が設けられる。
【0036】
加熱調理部10は、マイクロ波を発振するマグネトロン(不図示)を有し、加熱室11に収容された被加熱物2を、マイクロ波により加熱するマイクロ波加熱機能を有する。加熱調理部10は、マイクロ波加熱機能に加えて、輻射ヒータ14を用いた輻射加熱機能を備える。
【0037】
撮影部20は、加熱室11内に載置された被加熱物2の画像を、例えばカラー静止画像として撮影するカメラである。撮影部20は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの撮像素子を備える。本実施の形態において、撮影部20は、内箱12aの側壁の上部に設けられる。
【0038】
制御部30は、マイクロコンピュータで構成され、画像認識部31と、調整部32と、時計部33とを含む。
【0039】
画像認識部31は、撮影部20により撮影された画像に対して画像認識を行うことで、加熱調理部10に被加熱物2が配置されているか否かを判断する。画像認識部31における画像認識は、機械学習を利用して行われる。画像認識のための機械学習として、ディープラーニングまたは人工知能を用いることができる。
【0040】
具体的には、画像認識部31は、撮影部20により撮影された加熱室11の内部の画像と、加熱室11に被加熱物2が存在しないときの加熱室11の内部の画像とを比較することで、加熱室11内に被加熱物2が載置されているか否かを判断する。
【0041】
画像認識部31は、さらに、撮影部20により撮影された画像に対して画像認識を行うことで、被加熱物2に関する複数の候補を確からしさの順に抽出する。
【0042】
具体的には、画像認識部31は、撮影部20により撮影された加熱室11の内部の画像から、被加熱物2の形状、色調、色彩などを認識する。画像認識部31は、この結果と候補記憶部41に記憶された候補一覧表とを比較する。画像認識部31は、候補一覧表に登録された候補の画像と、撮影部20により撮影された画像との相関に基づいて、確からしさの高い順に被加熱物2に関するいくつかの候補を抽出する。本実施の形態では、三つの候補が抽出候補C1、抽出候補C2、抽出候補C3として抽出される。
【0043】
確からしさは、0%~100%の数値で表される。確からしさを示す数値が高いほど、その候補が、加熱室11に配置された被加熱物2に一致する可能性が高い。
【0044】
図3に示すように、候補一覧表には、被加熱物2の候補となり得る食材だけでなく、皿、プラスチック製容器など、本来加熱する必要のない異物も含まれる。すなわち、候補一覧表には、異物も被加熱物2の候補として含まれる。
【0045】
候補記憶部41は、候補一覧表における候補を、機械学習などによって予め画像データとして記憶する。例えば、候補一覧表における候補に関するデータは、例えば形状および色を含む情報である。候補記憶部41は、後で追加された情報を含めて再度機械学習を行ったものを候補一覧表における候補として記憶してもよい。
【0046】
画像認識部31は、画像認識の結果と候補一覧表との比較により抽出された複数の候補のうち、最も確からしい候補が異物である場合、被加熱物2が異物であると判定する。
【0047】
画像認識部31は、画像認識により抽出された複数の候補のうち、最も確からしい候補の確からしさを示す数値が所定の閾値よりも低い場合、被加熱物2が異物であると判定してもよい。
【0048】
画像認識部31は、画像認識の結果と候補一覧表とを比較した結果、候補一覧表に被加熱物2の候補が存在しないと判断した場合、被加熱物2が異物であると判定してもよい。
【0049】
調整部32は、画像認識部31により抽出された複数の候補の表示順序を調整する。具体的には、調整部32は、履歴記憶部42に記憶された選択履歴情報に基づいて、複数の候補の表示順序を決定する。
【0050】
使用者は、調整部32により調整され、表示部60に表示された複数の候補の中から、操作部50を用いて一つの候補を選択する。履歴記憶部42は、画像認識部31により抽出された過去の複数の候補と、操作部50により選択された一つの候補とを対応させて選択履歴情報として記憶する。
【0051】
操作部50は、機械式のボタンで構成されてもよく、タッチパネルで構成されてもよい。タッチパネルが操作部50を構成する場合、このタッチパネルが表示部60を構成してもよい。この場合、このタッチパネルは操作表示部を構成する。
【0052】
図4に示すように、履歴記憶部42は、選択履歴表に記載された選択履歴情報を記憶する。具体的には、履歴記憶部42は、操作部50により一つの候補(
図4に示す「選択された被加熱物」)が選択されたときの複数の候補の表示順序を記憶する。
【0053】
本実施の形態では、履歴記憶部42は、画像認識部31により抽出された三つの候補を履歴候補M1、M2、M3として記憶する。履歴記憶部42は、履歴候補M1、M2、M3に加えて、操作部50により選択された一つの候補と、その選択が行われた選択時間帯と、その選択時間帯においてその一つの候補が選択される選択頻度とを選択履歴情報として記憶する。
【0054】
調整部32は、選択履歴情報の中から選択時間帯が同じで、選択頻度の最も高い選択履歴情報を抽出し、抽出された選択履歴情報に応じて複数の候補の表示順序を決定する。
【0055】
時計部33は現在時刻を計時し、現在時刻に基づいて操作部50により一つの候補の選択が行われた選択時間帯を特定する。履歴記憶部42は、この選択時間帯を記憶する。
【0056】
表示部60は、調整部32により調整された表示順序で複数の候補を表示する。表示部60は、液晶パネルなどで構成される。表示部60は、調理メニューボタンなどの操作により選択された項目、および、決定された加熱条件(出力、温度、時間など)、調理メニュー、スタートボタンおよび取り消しボタンの操作に基づく加熱調理器1の運転状態などを表示してもよい。
【0057】
このように構成された加熱調理器1において、画像認識部31が、被加熱物2が加熱調理部10に配置されていないと判定した場合、または、画像認識部31が、被加熱物2が異物であると判定した場合、表示部60は提示部として機能する。この場合、表示部60は、被加熱物2に関する候補を表示せず、その代わり、被加熱物2に関する候補が抽出されない旨のメッセージを表示する。
【0058】
次に、加熱調理器1における調理制御について説明する。
図5は、加熱調理器1における調理制御のフローチャートである。
図5に示すように、例えば、使用者がスタートボタンを押下した場合、ステップS10において、撮影部20が加熱室11の内部を撮影し、画像認識部31が、この画像に対して画像認識を行って、被加熱物2が加熱室11内に載置されているか否かを判断する。
【0059】
より具体的には、記憶部40が、加熱室11内に被加熱物2が存在していないときの加熱室11の内部の画像を基準画像として予め記憶する。画像認識部31が、この基準画像と加熱室11の内部の画像とを画像認識により比較することで、加熱室11内に被加熱物2が載置されているか否かを判断する。
【0060】
この結果、画像認識部31が、被加熱物2が加熱調理部10に配置されていないと判定した場合(ステップS10でNOの場合)、表示部60に被加熱物2に関する候補が表示されることなく、調理制御は終了する。すなわち、調理は行われない。このとき、表示部60は、加熱室11内に被加熱物2が存在しない旨のメッセージを表示する。表示部60は、被加熱物2に関する候補が抽出されない旨のメッセージを表示してもよい。
【0061】
画像認識部31が、被加熱物2が加熱調理部10に配置されていると判定した場合(ステップS10でYESの場合)、ステップS20において、画像認識部31は、候補の抽出を行う。
【0062】
ここで、ステップ20における候補の抽出について、
図6を用いて説明する。
図6は、調理制御における候補の抽出のフローチャートである。
図6に示すように、候補の抽出のため、ステップS21において、画像認識部31が、撮影部20により撮影された画像に対して画像認識を行い、被加熱物2に関する複数の候補を確からしさに基づいて抽出する。
【0063】
具体的には、画像認識部31は、撮影部20により撮影された加熱室11の内部の画像と、候補記憶部41に記憶された候補一覧表(
図3参照)に登録された候補の画像とを比較する。画像認識部31は、二つの画像を比較した結果、相関がより高い候補を、より確からしい候補として認識する。画像認識部31は、その確からしさに基づいて被加熱物2に関する複数の候補を抽出する。
【0064】
ステップS22において、画像認識部31は、確からしさの上位三つの候補を、確からしさの順に抽出候補C1、C2、C3に設定する。
図7は、その抽出結果の一例を示す。
図7に示す例では、アスパラガス、ほうれん草、ブロッコリが、それぞれ抽出候補C1、C2、C3として抽出される。
【0065】
図5に戻り、ステップS20における候補の抽出の後、ステップS30において、画像認識部31が、被加熱物2が異物であるか否かを判定する。
【0066】
具体的には、ステップS20で抽出された複数の候補(抽出候補C1、C2、C3)のうち、最も確からしい候補(抽出候補C1)が異物でなく、かつ、最も確からしい候補の確からしさを示す数値が所定の閾値以上である場合、画像認識部31は、被加熱物2が異物ではないと判定する。この閾値は例えば40%である。
【0067】
図7に示すように、例えば、抽出候補C1がアスパラガスであって異物ではなく、かつ、抽出候補C1の確からしさを示す数値(99.8%)が所定の閾値(40%)を超えている場合、画像認識部31は、抽出候補C1が異物ではないと判定する。
【0068】
図8に示すように、抽出候補C1が皿である場合、画像認識部31は、被加熱物2が異物であると判定する。
【0069】
抽出候補C1の確からしさを示す数値が所定の閾値よりも低い場合、画像認識部31は、被加熱物2が異物であると判定する。
図9に示すように、例えば、抽出候補C1が茄子であっても、抽出候補C1の確からしさを示す数値(30.5%)が所定の閾値(40%)を下回っている場合、画像認識部31は、抽出候補C1が異物であると判定する。
【0070】
このように、被加熱物2が異物であると判定された場合(ステップS30でYESの場合)、表示部60に被加熱物2に関する候補が表示されることなく、調理制御が終了する。すなわち、調理は行われない。このとき、表示部60は、被加熱物2が食材ではなく異物である旨のメッセージを表示する。表示部60は、被加熱物2に関する候補が抽出されない旨のメッセージを表示してもよい。
【0071】
被加熱物2が異物ではないと判定された場合(ステップS30でNOの場合)、ステップS40において、調整部32が、画像認識部31により抽出された被加熱物2に関する複数の候補の表示順序を調整する。
【0072】
ここで、ステップS40における表示順序の調整について、
図10を用いて説明する。
図10は、調理制御における表示順序の調整のフローチャートである。
図10に示すように、表示順序の調整のため、ステップS41において、調整部32は、履歴記憶部42から選択履歴表(
図4参照)を読み出す。
【0073】
ステップS42において、調整部32は、選択履歴表の中に、履歴候補M1、M2、M3が抽出候補C1、C2、C3とそれぞれ同じで、かつ、現在時刻が選択時間帯に含まれる行があるか否かを判断する。
【0074】
ステップS42でYESの場合、ステップS43において、調整部32は、選択履歴表の選択頻度の最も高い行における「選択された被加熱物」を抽出する。ステップS44において、調整部32は、その「選択された被加熱物」を表示候補D1に設定するとともに、その行における他の二つの候補を確からしさの順に表示候補D2、D3に設定する。これで、表示順序の調整が終了する。
【0075】
ステップS42でNOの場合、ステップS45において、調整部32は、抽出候補C1、C2、C3を表示候補D1、D2、D3に設定する。これで、表示順序の調整が終了する。
【0076】
図5に戻り、表示順序の調整の後、ステップS50において、表示部60は、調整部32により調整された表示順序で、被加熱物2に関する複数の候補を表示する。具体的には、表示候補D1、D2、D3が表示部60に表示される。
【0077】
例えば、
図7に示すように、アスパラガス、ほうれん草、ブロッコリがそれぞれ抽出候補C1、C2、C3として抽出され、それぞれ表示候補D1、D2、D3に設定された場合、表示部60は
図11のように表示する。
図11に示すように、表示部60は、アスパラガス、ほうれん草、ブロッコリの写真および名称を、確からしさを示す数値の順に表示する。
【0078】
図5に戻り、候補の表示の後、ステップS60において、制御部30は、被加熱物2の種類が決定されたか否かを判定する。具体的には、使用者が、操作部50を操作して、表示部60に表示された被加熱物2に関する複数の候補から一つの候補を選択する。この選択に応答して、制御部30は、被加熱物2の種類が決定されたと判断する。
【0079】
被加熱物2の種類が決定された場合(ステップS60でYESの場合)、ステップS70において、制御部30は選択履歴を保存する。被加熱物2の種類が決定されない間は(ステップS60でNOの場合)、ステップS60の処理が繰り返される。
【0080】
ここで、ステップS70における選択履歴の保存について、
図12を用いて説明する。
図12は、調理制御における選択履歴の保存のフローチャートである。
図12に示すように、選択履歴の保存のため、ステップS71において、制御部30は、履歴記憶部42から選択履歴表(
図4参照)を読み出す。
【0081】
ステップS72において、制御部30は、選択履歴表の中に、履歴候補M1、M2、M3が抽出候補C1、C2、C3とそれぞれ同じで、かつ、現在時刻が選択時間帯に含まれる行があるか否かを判断する。
【0082】
ステップS72でYESの場合、ステップS73において、制御部30は、その行の選択頻度を示す数値を一つ増加させる。
【0083】
ステップS72でNOの場合、制御部30は、選択履歴表に新規の行を追加して、その行に初期値を設定する。具体的には、履歴候補M1、M2、M3がそれぞれ抽出候補C1、C2、C3に設定される。「選択された被加熱物」が、使用者により選択された被加熱物の種類に設定される。選択時間帯が、現在時刻に基づいて設定される。選択頻度が1に設定される。これで、加熱調理器1における調理制御が終了する。
【0084】
本実施の形態では、画像認識部31が、被加熱物2が加熱調理部10に配置されていないと判定した場合、または、画像認識部31が、被加熱物2が異物であると判定した場合、表示部60は、被加熱物2に関する候補を表示しない。
【0085】
これにより、不要な加熱が行われたり、不要な候補が毎回表示されたりすることを防止することができる。
【0086】
本実施の形態では、画像認識部31が、被加熱物2が加熱調理部10に配置されていないと判定した場合、または、画像認識部31が、被加熱物2が異物であると判定した場合、表示部60は、被加熱物2に関する候補が抽出されない旨のメッセージを表示する。これにより、使用者は、そのときの状況を容易に認識することができる。
【0087】
(第1の変形例)
図13は、本実施の形態の第1の変形例に係る加熱調理器1Aの構成を示すブロック図である。
【0088】
本変形例では、上記実施の形態と異なり、記憶部40は外部のサーバ100に設けられる。加熱調理器1Aは、インターネットなどの通信回線を介してサーバ100と通信し、記憶部40に記憶された情報の読み書きを行う。
【0089】
本変形例は、記憶部40以外については上記実施の形態と同じ構成を有し、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0090】
(第2の変形例)
図14は、本実施の形態の第2の変形例に係る加熱調理器1Bの構成を示すブロック図である。
【0091】
図14に示すように、加熱調理器1Bは、上記実施の形態の構成に加えて、スピーカ70をさらに備える。本変形例では、スピーカ70は、表示部60とともに提示部を構成する。
【0092】
すなわち、加熱調理器1Bは、被加熱物2に関する候補が抽出されないことを、スピーカ70を用いて音声でも使用者に知らせる。例えば、スピーカ70は、加熱室11内に被加熱物が存在しないことを示す音声、または、被加熱物2が食材ではなく異物であることを示す音声を出力する。
【0093】
本変形例は、スピーカ70以外については上記実施の形態と同じ構成を有し、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0094】
(第3の変形例)
図15は、本実施の形態の第3の変形例に係る加熱調理器1Cの構成を示すブロック図である。本変形例の加熱調理器1Cは、IH(Induction Heating)クッキングヒータを備えたキッチンである。
【0095】
図15に示すように、加熱調理器1Cは、加熱調理部10Cと、撮影部20と、制御部30と、記憶部40と、操作部50と、表示部60と、レンジフード80とを備える。加熱調理部10Cは、被加熱物2を載置するためのトッププレート15と、トッププレート15の下方に配置された誘導加熱コイル16とを有する。
図15では、トッププレート15上に、被加熱物2であるやかんおよびフライパンが載置される。
【0096】
撮影部20は、レンジフード80に配置されて、トッププレート15に載置された被加熱物2を撮影する。表示部60は、トッププレート15上の手前側に配置される。
【0097】
本変形例は、加熱調理部10C以外については上記実施の形態と同じ構成を有し、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0098】
(その他の変形例)
以上、本開示について実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0099】
例えば、上記実施の形態において、表示部60は、被加熱物2の候補を三つ表示する。しかし、本開示はこれに限らない。表示部60は、被加熱物2の候補を一つもしくは二つ、または、四つ以上表示してもよい。
【0100】
上述のように、本実施の形態において、制御部30はマイクロコンピュータで構成される。制御部30はマイクロコンピュータに限られるものではない。しかしながら、プログラム可能なマイクロコンピュータを用いれば、処理内容を容易に変更可能であり、設計の自由度を高めることができる。
【0101】
処理速度の向上のため、制御部30を論理回路で構成することも可能である。制御部30を一つまたは複数の素子で構成してもよい。制御部30を複数の素子で構成する場合、各制御項目をこれら複数の素子で実施してもよい。この場合、これら複数の素子が一つの制御部に対応すると考えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本開示は、電子レンジ、IHクッキングヒータ、および、炊飯器などの加熱調理器に適用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1、1A、1B、1C 加熱調理器
2 被加熱物
10、10C 加熱調理部
11 加熱室
12a 内箱
12b 外箱
13 扉
14 輻射ヒータ
15 トッププレート
16 誘導加熱コイル
20 撮影部
30 制御部
31 画像認識部
32 調整部
33 時計部
40 記憶部
41 候補記憶部
42 履歴記憶部
50 操作部
60 表示部
70 スピーカ
80 レンジフード
100 サーバ