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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   H02K 16/02 20060101AFI20231215BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20231215BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20231215BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20231215BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20231215BHJP
【FI】
H02K16/02
B25F5/00 G
H02K21/16 M
H02K7/10 C
H02K11/215
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019139204
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021023058
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁斗
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-271031(JP,A)
【文献】特開2017-225231(JP,A)
【文献】特開2015-177641(JP,A)
【文献】特開2001-314068(JP,A)
【文献】特開2011-015523(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0136294(US,A1)
【文献】実開昭59-191459(JP,U)
【文献】特開2008-308286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 16/02
B25F 5/00
H02K 21/16
H02K 7/10
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
使用者が操作可能なトリガスイッチと、
前記モータと出力軸との間に配された伝達機構と、
前記トリガスイッチの操作に基づいて前記モータの駆動制御を行う制御部と、
を備え、
前記モータは、
複数のコイル及びインシュレータを有するコイル部と、複数のティース部を有する鉄心部と、を備えるステータと、
永久磁石を有し、前記ステータとの間に隙間を介して前記ステータの内側で軸部を中心に回転可能に設けられたロータと、
を備え、
前記ロータは、自身から出力される磁束が変化するように、各々が相対回転可能に回転軸方向に複数分割され
前記ロータの複数分割されている部分のうち、少なくとも一つの部分が第1ロータ部として形成され、
前記ロータの複数分割されている部分のうち、少なくとも一つの部分が第2ロータ部として形成され、
前記第1ロータ部は、前記第2ロータ部との対向面に、一対の第1突起部を有し、
前記第2ロータ部は、前記第1ロータ部との対向面に、一対の第2突起部を有し、
前記第1ロータ部又は前記第2ロータ部が回転することにより前記第1突起部と前記第2突起部とが引っ掛かるときに、前記第1ロータ部に設けた第1永久磁石と、前記第2ロータ部に設けた第2永久磁石とが、同極同士で対向するように構成されている、
電動工具。
【請求項2】
前記ロータは、前記軸部に付加されるトルクに応じて、自身から出力される磁束が変化するように、各々が相対回転可能に回転軸方向に複数分割されている、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記ロータは、前記軸部に付加されるトルクが大きくなるほど、自身から出力される磁束が強まるように構成されている、
請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記ロータは、前記軸部の回転数に応じて、自身から出力される磁束が変化するように、各々が相対回転可能に回転軸方向に複数分割されている、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項5】
前記ロータは、前記軸部の回転数が高くなるほど、自身から出力される磁束が弱まるように構成されている、
請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
記ロータの位置の検知は前記第1ロータ部に対して行うように構成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項7】
記第1ロータ部は前記軸部に対して固定されておらず、
前記第2ロータ部は前記軸部に対して固定されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項8】
前記ロータは、正転及び逆転が可能に構成され、正転及び逆転の両方で、自身から出力される磁束が変化するように構成されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項9】
前記ロータは、正転における磁束の変化と、逆転における磁束の変化と、に差が生じるように構成されている、
請求項に記載の電動工具。
【請求項10】
前記モータの電力を供給する電池パックを更に備える、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電動工具に関し、より詳細には、モータを備える電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータと、前記モータにより駆動される出力軸と、を備える電動工具が記載されている。特許文献1に記載されたモータは、ステータと、コイルと、を備えている。ステータは、環状部と、前記環状部の内周面に設けられ該環状部の径方向に突出する複数のティース部と、を有している。前記コイルは、前記ティース部に巻回されている。前記コイルは、第1のコイルと、第2のコイルと、を有する。前記第1のコイルは、前記複数のティース部の一つにおいて、前記ティース部の径方向外側部分に巻回される。前記第2のコイルは、前記複数のティース部の一つにおいて、前記第1のコイルよりも前記ティース部の径方向内側部分に巻回される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-121158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているモータにおいて、モータに係る負荷が小さいときには、ロータを高速に回転させて、作業効率を向上させることが望まれていた。
【0005】
本開示は、上記事由に鑑みてなされており、作業効率を向上させることができる電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電動工具は、モータと、トリガスイッチと、伝達機構と、制御部と、を備える。前記トリガスイッチは、使用者が操作可能である。前記伝達機構は、前記モータと出力軸との間に配置されている。前記制御部は、前記トリガスイッチの操作に基づいて前記モータの駆動制御を行う。前記モータは、ステータと、ロータと、を備える。前記ステータは、コイル部と、鉄心部と、を備える。前記コイル部は、複数のコイル及びインシュレータを有する。前記鉄心部は、複数のティース部を有する。前記ロータは、永久磁石を有する。前記ロータは、前記ステータとの間に隙間を介して前記ステータの内側で軸部を中心に回転可能に設けられる。前記ロータは、自身から出力される磁束が変化するように、回転軸方向に各々が相対回転可能に複数分割されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ロータへの負荷が小さいときに、より高速で回転させることができるので、作業効率が高い、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る電動工具を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態に係る電動工具に使用するモータを示す斜視図である。
図3図3は、同上のモータを示す断面図である。
図4図4は、同上のモータを示す分解斜視図である。
図5図5は、同上のモータを示す断面図である。
図6図6Aは、同上のモータに使用する第2ロータ部を示す斜視図である。図6Bは、同上のモータに使用する第1ロータ部を示す斜視図である。
図7図7A~Cは、同上のモータの動作を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、実施形態に係る電動工具10と、この電動工具10に備えられる本実施形態に係るモータ1とについて、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
(1)概要
本実施態様に係る電動工具10は、モータ1と、トリガスイッチ106と、伝達機構102と、制御部107と、を備える。トリガスイッチ106は、使用者が操作可能である。伝達機構102は、モータ1と出力軸103との間に配置されている。制御部107は、トリガスイッチ106の操作に基づいてモータ1の駆動制御を行う。モータ1は、ステータ3と、ロータ2と、を備える。ステータ3は、コイル部30と、鉄心部34と、を備える。コイル部30は、複数のコイル31及びインシュレータ5を有する。鉄心部34は、複数のティース部32を有する。ロータ2は、永久磁石22を有する。ロータ2は、ステータ3との間に隙間6を介してステータ3の内側で軸部23を中心に回転可能に設けられる。ロータ2は、自身から出力される磁束が変化するように、回転軸方向Xに各々が相対回転可能に複数分割されている。
【0011】
本実施態様に係る電動工具10は、ロータ2への負荷が小さいときに、ロータ2から出力される磁束が小さくなるように変化する。したがって、ロータ2への負荷が小さいときに、より高速で回転させることができ、作業効率が高い。
【0012】
本実施態様に係る電動工具10おいて、モータ1は、ロータ2から出力される磁束が自律的に変化する仕組み(ガバナ方式)を有する。したがって、弱め磁束制御で制御されるモータに比べて、磁束の損失がなく、効率がよい。またロータ2から出力される磁束が小さい場合は、鉄粉などの磁性体を吸着しにくく、故障が少なくなる。
【0013】
(2)詳細
(2.1)電動工具
図1に示すように、本実施形態に係る電動工具10は、モータ1と、トリガスイッチ106と、伝達機構102及び制御部107と、を備える。すなわち、モータ1と、トリガスイッチ106と、伝達機構102及び制御部107とは、電動工具10の構成要素である。
【0014】
電動工具10は、電池パック101と、伝達機構102と、出力軸103と、チャック104と、先端工具105と、トリガスイッチ106と、制御部107とを更に備えている。本実施形態に係るモータ1は、先端工具105を駆動する電動工具用モータである。すなわち、先端工具(ビットとも言う)105は、モータ1である電動工具用モータの駆動力で駆動する工具である。つまり、モータ1は、先端工具105を駆動する駆動源である。
【0015】
電動工具10は、モータ1に電力を供給する電池パック101を更に備える。すなわち、電池パック101は、モータ1を駆動する電流を供給する直流電源である。電池パック101は、例えば、1又は複数の2次電池を含む。
【0016】
伝達機構102は、モータ1と出力軸103との間に配置されている。伝達機構102は、モータ1の出力(駆動力)を調整して出力軸103に出力する。出力軸103は、伝達機構102から出力された駆動力で駆動(例えば回転)される部分である。チャック104は、出力軸103に固定されており、先端工具105が着脱自在に取り付けられる部分である。先端工具105は、例えば、ドライバ、ソケット又はドリル等である。各種の先端工具105のうち用途に応じた先端工具105が、チャック104に取り付けられる。
【0017】
トリガスイッチ106は、使用者が操作可能である。すなわち、トリガスイッチ106は、モータ1の回転を制御するための操作を受け付ける操作部である。トリガスイッチ106を引く操作により、モータ1のオンオフが切替可能である。また、トリガスイッチ106を引き込む操作の操作量で、出力軸103の回転速度、つまりモータ1の回転速度が調整可能である。
【0018】
制御部107は、トリガスイッチ106の操作に基づいてモータ1の駆動制御を行う。すなわち、制御部107は、トリガスイッチ106に入力された操作に応じて、モータ1を回転又は停止させ、また、モータ1の回転速度を制御する。この電動工具10では、先端工具105がチャック104に取り付けられる。そして、トリガスイッチ106への操作によってモータ1の回転速度が制御されることで、先端工具105の回転速度が制御される。制御部107は、配線42によりモータ1及び電池パック101と電気的に接続されている。
【0019】
ハウジング108は、モータ1の他に、伝達機構102,出力軸103、配線42及び制御部107を収容している。チャック104及びトリガスイッチ106はハウジング108の外部に設けられている。
【0020】
なお、実施形態の電動工具10はチャック104を備えることで、先端工具105が、用途に応じて交換可能であるが、先端工具105が交換可能である必要は無い。例えば、電動工具10は、特定の先端工具105のみ用いることができる電動工具であってもよい。
【0021】
(2.2)モータ
本実施形態に係るモータ1は、例えば、ブラシレスモータである。モータ1は、ステータ3と、ロータ2と、を備える。つまり、ステータ3及びロータ2はモータ1の構成要素である。またモータ1はインシュレータ5及びセンサ基板41と、を備える(図3参照)。
【0022】
モータ1は、ロータ2と、複数(本実施形態では9つ)のコイル31とを有している。ロータ2は、ステータ3に対して回転する。すなわち、鉄心部34に巻かれた複数のコイル31から発生する磁束により、ロータ2を回転させる電磁気力が発生する。モータ1は、ロータ2の回転力(駆動力)を軸部23から伝達機構102へ伝達する。
【0023】
(2.3)ロータ
ロータ2は、永久磁石22を有する。すなわち、ロータ2は、円筒状のロータコア21と、複数(図5では6つ)の永久磁石22と、軸部23と、を有している。軸部23は、ロータコア21の内側に保持されている。複数の永久磁石22は、ロータコア21の中心を囲む多角形(図5では六角形)のように配置されている。
【0024】
ここで、ロータコア21の形状は、ロータコア21の回転軸方向Xから見て円状であり、ロータコア21の中心とは、当該円の中心に相当する。各永久磁石22の形状は直方体状である。ロータコア21の回転軸方向Xから見て、各永久磁石22の形状は長方形状である。
【0025】
ロータコア21は、複数の鋼板を含む。ロータコア21は、複数の鋼板を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板は、磁性材料により形成されている。各鋼板は、例えば、ケイ素鋼板である。
【0026】
ロータコア21は、鉄心部34の連結部33と同心の円筒状に形成されている。ロータコア21の回転軸方向Xにおいて、ロータコア21の両端の位置は、鉄心部34の両端の位置とほぼ揃っている。すなわち、ロータコア21の厚さ(回転軸方向Xの寸法)と鉄心部34の厚さ(回転軸方向Xの寸法)とは略等しい。ここで、ロータコア21の第1端(第1軸受け71側の端部)と鉄心部34の第1端とがちょうど重なっていなくてもよく、許容される誤差の範囲内でずれていてもよい。また、ロータコア21の第2端(第2軸受け72側の端部)と鉄心部34の第2端とがちょうど重なっていなくてもよく、許容される誤差の範囲内でずれていてもよい。例えば、ロータコア21の厚さの3%以内、5%以内又は10%以内のずれがあってもよい。
【0027】
ロータコア21の内側には、軸部23が保持されている。図2に示すように、ロータコア21は、軸部23が通される軸孔231を有している。
【0028】
各永久磁石22は、例えば、ネオジム磁石である。各永久磁石22の2つの磁極は、ロータコア21の周方向に並んでいる。ロータコア21の周方向において隣り合う2つの永久磁石22は、それぞれ同極を対向させている。
【0029】
ロータ2は、ステータ3に対して回転可能に配置される。すなわち、ロータ2は、軸部23が延びる方向と同方向の回転軸方向Xを中心として、ステータ3の内側の空間35内で、ステータ3に対して回転する。ステータ3の内側の空間は円筒状の連結部33で囲まれる空間である。空間は回転軸方向Xの両方で開放されている。
【0030】
ロータ2は、ステータ3との間に隙間6を介してステータ3の内側で軸部23を中心に回転可能に設けられる。すなわち、ロータ2は、ステータ3の内側にステータ3と隙間6を介して配置される。つまり、図5に示すように、ステータ3の連結部33の内周面300と、ロータ2のロータコア21の外周面200との間には、隙間6が形成されている。この隙間6の寸法Gは0.3mm~0.5mmとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0031】
ロータ2は、自身から出力される磁束が変化するように、回転軸方向Xに各々が相対回転可能に複数分割されている。すなわち、ロータ2は、回転軸方向Xに沿って複数の部分に分割されている。本実施形態では、図6A及び図6Bに示すような、第1ロータ部20aと第2ロータ部20bとに分割されている。つまり、ロータ2の複数分割されている部分のうち、少なくとも一つの部分が第2ロータ部20bとして形成される。
【0032】
第1ロータ部20aは、ロータコア21として第1ロータコア21aを有する。また第1ロータ部20aは、永久磁石22として第1永久磁石22aを有する。第1ロータコア21aは第1コア部26aと第1外周部25aとを有している。第1コア部26aは回転軸方向Xに延びる円柱状に形成されており、第1コア部26aの中心に回転軸方向Xに軸孔231が貫通して設けられている。第1外周部25aは回転軸方向Xに延びる円柱状に形成されており、第1コア部26aの外周(回転軸方向X周り)を全周にわたって囲むように設けられている。第1永久磁石22aは第1外周部25aに設けられている。
【0033】
第2ロータ部20bは、ロータコア21として第2ロータコア21bを有する。また第2ロータ部20bは、永久磁石22として第2永久磁石22bを有する。第2ロータコア21bは第2コア部26bと第2外周部25bとを有している。第2コア部26bは回転軸方向Xに延びる円柱状に形成されており、第2コア部26bの中心に回転軸方向Xに軸孔231が貫通して設けられている。第2外周部25bは回転軸方向Xに延びる円柱状に形成されており、第2コア部26bの外周(回転軸方向X周り)を全周にわたって囲むように設けられている。第2永久磁石22bは第2外周部25bに設けられている。
【0034】
ロータ2は、軸部23に付加されるトルクに応じて、自身から出力される磁束が変化するように、回転軸方向Xに各々が相対回転可能に複数分割されている。すなわち、第1ロータ部20aと第2ロータ部20bとは、軸部23に付加されるトルクに応じて、ロータ2から出力される磁束が変化するように分割されている。
【0035】
ロータ2の複数分割されている部分をつなぐクラッチを更に備える。すなわち、第1ロータ部20aと第2ロータ部20bとは、互いに、一方から他方へ任意に断続して動力を伝えるように構成されている。このクラッチが、磁気クラッチである。すなわち、第1ロータ部20aに設けた第1永久磁石22aと、第2ロータ部20bに設けた第2永久磁石22bと、クラッチが構成されている。
【0036】
ロータ2の複数分割されている部分のうち、少なくとも一つの部分が第1ロータ部20aとして形成される。ロータ2の位置の検知はセンサ素子43により第1ロータ部20aの位置の検知により行うように構成されている。すなわち、ロータ2の回転は第1ロータ部20aにより支配的に行われる。つまり、第1ロータ部20aの回転に従って、第2ロータ部20bが従属的に回転される。ロータ2の位置とは、回転軸方向Xの軸周りに回転するロータ2の回転位置であり、ステータ3に対するロータ2の位置である。センサ素子43はステータ3に固定されており、センサ素子43でロータ2の位置が検知される。
【0037】
第1ロータ部20aは軸部23に対して固定されていない。すなわち、第1ロータ部20aは軸部23に対してフリーで回転する。一方、第2ロータ部20bは軸部23に対して固定されている。すなわち、第2ロータ部20bは軸部23とともに回転する。
【0038】
第1ロータ部20aには一対の第1突起部27aが形成されている。第2ロータ部20bには一対の第2突起部27bが形成されている。一対の第1突起部27aと一対の第2突起部27bとは、各々、第1ロータ部20aと第2ロータ部20bとの対向面に設けられている。一対の第1突起部27aは第1コア部26aに形成されている。一対の第2突起部27bは第2コア部26bに形成されている。
【0039】
ロータ2は、正転及び逆転が可能に構成される。すなわち、ロータ2は、ステータ3に対して時計周りと反時計回りとで回転可能に形成されている。
【0040】
(2.4)ステータ
ステータ3は、コイル部30と、鉄心部34と、を備える。すなわち、複数のコイル31及び鉄心部34はステータ3の構成要素である。またコイル部30は、複数のコイル31及びインシュレータ5を有する。すなわち、複数のコイル31とインシュレータ5はコイル部30の構成要素である。
【0041】
鉄心部34は、中央コア341と、外筒部342とを有している。外筒部342は、中央コア341に取り付けられる。鉄心部34は、複数のティース部32を有する。すなわち、中央コア341は、円筒状の連結部33と、複数(図6では9つ)のティース部32とを有している。連結部33の内側の空間35には、ロータ2が配置されている。複数のティース部32の各々は、胴部321と、2つの先端片322とを含む。胴部321は、連結部33から連結部33の径方向において外向きに突出している。2つの先端片322は、胴部321の先端側の部位から、胴部321の突出方向と交差する方向に延びている。
【0042】
ステータ3は連結部33を備える。すなわち、鉄心部34に形成される連結部33はステータ3の構成要素である。連結部33は、少なくとも一部の隣り合うティース部32を連結する。すなわち、隣り合うティース部32の一部又は全部が連結部33で連結される。
【0043】
複数のティース部32は、複数のコイル31が、各々、インシュレータ5を介して配置される。すなわち、胴部321には、インシュレータ5(図3参照)を介してコイル31が巻かれる。連結部33は、コイル31よりもロータ2側に位置する。すなわち、コイル31とロータ2との間に連結部33が位置している。
【0044】
2つの先端片322は、コイル31が胴部321から脱落することを抑制する抜止めとして設けられている。すなわち、胴部321の先端側にコイル31が移動しようとする場合に、コイル31が2つの先端片322に引っ掛かることで、コイル31の脱落を抑制できる。
【0045】
ステータ3の鉄心部34の中央コア341は、複数の鋼板を含む。中央コア341は、複数の鋼板を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板は、磁性材料により形成されている。各鋼板は、例えば、ケイ素鋼板である。
【0046】
図4に示すように、連結部33の形状は、円筒状である。連結部33の軸方向は、複数の鋼板の厚さ方向と一致している。連結部33は、周方向において連続している。言い換えると、連結部33は、周方向において途切れることなくつながっている。
【0047】
複数のティース部32の胴部321の形状は、直方体状である。連結部33とティース部32とが一体に形成されている。すなわち、連結部33とティース部32とは別部材で形成されることなく、同じ部材を用いて一連に形成されている。胴部321は、連結部33から連結部33の径方向において外向きに突出している。複数のティース部32の胴部321は、連結部33の周方向において等間隔に設けられている。
【0048】
2つの先端片322は、胴部321の先端側の部位から、胴部321の突出方向と交差する方向に延びている。より詳細には、2つの先端片322は、胴部321の先端側の部位において、連結部33の周方向の両側に設けられている。そして、2つの先端片322は、連結部33の周方向に延びている。
【0049】
各先端片322のうち、連結部33の径方向において外側の面は、曲面323を含む。連結部33の軸方向(ロータ2の回転軸方向Xと同じ)から見て、曲面323の形状は、連結部33と同心の円に沿った円弧状である。
【0050】
各先端片322は、胴部321とつながった部位に、湾曲部324を有している。湾曲部324は、連結部33の径方向において外側ほど、連結部33の周方向において胴部321から離れるように湾曲している。つまり、各先端片322のうち基端側の部分である湾曲部324は、面取りされていてR状になっている。
【0051】
(2.5)外筒部
図5に示すように、外筒部342は、複数の鋼板を含む。外筒部342は、複数の鋼板を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板は、磁性材料により形成されている。各鋼板は、例えば、ケイ素鋼板である。外筒部342の形状は、円筒状である。外筒部342は、複数のティース部32に取り付けられ複数のティース部32を囲んでいる。
【0052】
外筒部342は、複数(9つ)の嵌合部343を有している。つまり、外筒部342は、ティース部32と同数の嵌合部343を有している。複数の嵌合部343の各々は、外筒部342の内周面に設けられた窪みである。複数の嵌合部343は、複数のティース部32と一対一で対応している。複数の嵌合部343の各々と、複数のティース部32のうちこの嵌合部343に対応するティース部32とは、少なくとも一方が連結部33の径方向に移動することで嵌まり合う。これにより、外筒部342が複数のティース部32に取り付けられる。
【0053】
各嵌合部343には、ティース部32のうち2つの先端片322を含む部位が嵌め込まれる。そのため、外筒部342の周方向における各嵌合部343の長さは、胴部321から突出した2つの先端片322のうち一方の先端片322の突出先端と、他方の先端片322の突出先端との間の長さと等しい。なお、本明細書において「等しい」とは、複数の値が互いに完全に一致する場合に限定されず、許容される誤差の範囲内で異なっている場合をも含む。例えば、3%以内、5%以内、又は10%以内の誤差がある場合をも含む。
【0054】
中央コア341にインシュレータ5が装着されコイル31が巻かれた状態で、外筒部342は、例えば、焼嵌めにより複数のティース部32に取り付けられる。すなわち、外筒部342を加熱して径方向に膨張させた状態で、外筒部342の内側に中央コア341を配置する。これにより、外筒部342の内面は、複数のティース部32との間に僅かに隙間を空けて連結部33の径方向における複数のティース部32の先端に対向する。その後、外筒部342の温度が低下して外筒部342が収縮すると、外筒部342の内面が複数のティース部32の先端に接する。つまり、外筒部342の収縮に伴って複数の嵌合部343が外筒部342の径方向内向きに移動することにより、複数の嵌合部343と複数のティース部32とが嵌まり合う。外筒部342は、複数のティース部32に対して外筒部342の径方向内向きの接圧を加えている。
【0055】
(2.6)コイル
コイル31は、9つのティース部32に対応して9つ備えられている。9つのコイル31は、互いに電気的に接続されている。各コイル31を構成する巻線311は、例えば、エナメル線である。この巻線は、線状の導体と、導体を覆う絶縁被覆と、を有している。
【0056】
コイル31は、連結部33より外側に位置している。すなわち、コイル31の内側(ロータ2側)に連結部33が位置している。コイル31の少なくとも一部は、カバー51で覆われていない。すなわち、回転軸方向Xにおけるコイル31の一端部(第2インシュレータ502側の端部)はカバー51では覆われておらず、カバー51の周囲を囲むようにして複数のコイル31の各一端部が並んでいる。
【0057】
(2.7)インシュレータ
インシュレータ5は、電気絶縁性を有する部材である。インシュレータ5は、例えば、ガラス繊維等のフィラーを約30重量%含む66ナイロン等の樹脂製である。
【0058】
インシュレータ5は、ステータ3にセンサ基板41を固定している。これにより、ステータ3とセンサ基板41とを電気的に絶縁することができる。
【0059】
図3に示すように、インシュレータ5は、第1インシュレータ501及び第2インシュレータ502を含む。第1インシュレータ501及び第2インシュレータ502は、例えば、インサート成形により、ステータ3の鉄心部34と一体化している。第1インシュレータ501と第2インシュレータ502とは、回転軸方向Xで並ぶように配置されている。
【0060】
第1インシュレータ501は、回転軸方向Xにおける鉄心部34の一端側を被覆している。具体的には、第1インシュレータ501は、円環部510と、複数の被覆部514(本実施形態ではティース部32と同数の9つ)と、を有する。円環部510の外径は、鉄心部34の円筒状の連結部33の外径と略同一である。円環部510は、回転軸方向Xにおける連結部33とティース部32との片側を被覆している。被覆部514は、円環部510の周方向において内周面に等間隔で設けられている。
【0061】
第2インシュレータ502は、回転軸方向Xにおける鉄心部34のもう一端側を被覆している。具体的には、第2インシュレータ502は、円環部520と、複数の被覆部524(本実施形態ではティース部32と同数の9つ)と、を有する。円環部520の外径は、鉄心部34の円筒状の連結部33の外径と略同一である。回転軸方向Xにおける連結部33とティース部32とのもう一方の片側を被覆している。被覆部524は、円環部520の周方向において内周面に等間隔で設けられている。
【0062】
コイル31は、被覆部514,524で被覆されたティース部32に巻線311が巻回されて形成されている。
【0063】
インシュレータ5には、カバー51が形成されている。カバー51は第2インシュレータ502に形成されている。カバー51は、インシュレータ5と機械的に一体に形成されている。すなわち、第2インシュレータ502にカバー51が機械的に一体に形成されている。インシュレータ5がコイル31の巻線311によりステータ3に固定されているため、カバー51は、コイル31の巻線311によりステータ3に固定されている。つまり、第2インシュレータ502がコイル31の巻線311によりステータ3に固定されることにより、第2インシュレータ502に機械的に一体に形成されているカバー51もステータ3に固定される。
【0064】
カバー51は、少なくとも連結部33よりも内側の空間35に対して、ロータ2の回転軸方向Xにおいて対向して配置される。すなわち、ロータ2の回転軸方向Xにおいて、カバー51と連結部33よりも内側の空間35の第2インシュレータ502側とが対向している。そして、カバー51は、隙間6を覆っている。すなわち、ロータ2の外周面とステータ3の内周面との間の隙間6が、回転軸方向Xにおいて、カバー51により覆われている。カバー51は、ロータ2の回転方向の全長にわたって隙間6を覆っている。すなわち、カバー51は、ロータ2の回転方向の全長にわたって、回転軸方向Xにおいて、隙間6と対向している。
【0065】
カバー51のうちのロータ2の回転軸方向Xにおけるステータ3又はロータ2との対向面511は、コイル31における回転軸方向Xの最外面312よりも内側に位置する。
【0066】
インシュレータ5には、軸受け保持部52が形成されている。軸受け保持部52は第2インシュレータ502に形成されている。軸受け保持部52は、ロータ2の軸受け7を保持する。すなわち、ロータ2の二つの軸受け7のうち、第2インシュレータ502側の第2軸受け72が軸受け保持部52で保持されている。軸受け保持部52は、ティース部32の内周先端又は連結部33のいずれかに接触して、ロータ2の回転軸方向Xに直交する平面内において、位置決めされている。すなわち、第2インシュレータ502がステータ3に固定されるときに、第2インシュレータ502がティース部32の内周先端又は連結部33のいずれかに接触して位置決めされる。これにより、第2インシュレータ502に形成された軸受け保持部52は、回転軸方向Xに直交する平面内において、ティース部32の内周先端又は連結部33に対して位置決めされている。
【0067】
軸受け保持部52が、連結部33に接触することで位置決めされている。すなわち、第2インシュレータ502がステータ3に固定されるときに、第2インシュレータ502が連結部33に接触して位置決めされる。これにより、第2インシュレータ502に形成された軸受け保持部52は、回転軸方向Xに直交する平面内において、連結部33に対して位置決めされている。
【0068】
軸受け保持部52が、少なくとも連結部33の外周面側に接触させることで位置決めされている。すなわち、第2インシュレータ502がステータ3に固定されるときに、第2インシュレータ502が少なくとも連結部33の外周面側に接触して位置決めされる。これにより、第2インシュレータ502に形成された軸受け保持部52は、回転軸方向Xに直交する平面内において、連結部33に対して位置決めされている。
【0069】
軸受け保持部52が、複数のティース部32の内周先端又は連結部33の3カ所以上に接触することで位置決めされている。すなわち、第2インシュレータ502がステータ3に固定されるときに、第2インシュレータ502が複数のティース部32の内周先端又は連結部33の3カ所以上に接触することで位置決めされている。例えば、円環部520及び複数の被覆部524が連結部33の3カ所以上に接触する。これにより、第2インシュレータ502に形成された軸受け保持部52は、回転軸方向Xに直交する平面内において、連結部33に対して位置決めされている。
【0070】
軸受け保持部52とロータ2との間には基板4が配置されている。すなわち、回転軸方向Xにおいて、軸受け保持部52とロータ2と基板4とが並んでおり、基板4が軸受け保持部52とロータ2の間に配置されている。
【0071】
軸受け保持部52によって保持される軸受け7の内側面は、基板4の内側面よりも、回転軸方向Xにおいてロータ2に近い位置に配置されている。すなわち、図3に示すように、軸受け7は軸受け保持部52に保持されて配置されているが、軸受け7のロータ2側の端面(内側面)は、基板4のロータ2側に向く面(内側面)410よりもロータ2に近いように配置されている。
【0072】
なお、カバー51は、軸部23を保持している軸受け7を含むものであってもよい。すなわち、軸受け7はカバー51の軸受け保持部52に保持されている状態で、カバー51に備えられていてもよい。この場合、軸部23を受けている軸受け7はカバー51の構成要素となる。
【0073】
(2.8)基板
基板4は、いわゆるセンサ基板41である。すなわち、センサ基板41は、ロータ2の回転角度を検出する。つまり、センサ基板41は、ロータ2の回転位置を検出するための回路基板である。センサ基板41は、回転軸方向Xにおいてロータ2の第2インシュレータ502側で、ロータ2の端面と平行に配置されている。センサ基板41には、センサ素子43が実装されている。センサ素子43は、例えば、ホール素子又は角度センサ(GMR)等である。センサ素子43は、ロータ2の回転位置を検出する素子である。
【0074】
センサ基板41は、回転軸方向Xから見て略六角形をなしている。センサ基板41は、軸部23の外周の全周を囲んでいる。つまり、センサ基板41は、軸部23の周方向の全周に配置されている。
【0075】
図3に示すように、センサ基板41は、インシュレータ5と鉄心部34とで挟まれる位置に配置されている。すなわち、回転軸方向Xにおいて、センサ基板41は、インシュレータ5の第2インシュレータ502と鉄心部34の端面とで挟まれる位置に配置されている。またセンサ基板41が、インシュレータ5と鉄心部34とで挟まれることによって固定されている。すなわち、インシュレータ5の第2インシュレータ502と鉄心部34の端面とでセンサ基板41が挟持されている。インシュレータ5が、センサ基板41との対向面に、センサ基板41が嵌る凹み56を有する。すなわち、インシュレータ5の第2インシュレータ502には、ロータ2側に向く面に凹み56が形成されており、この凹み56にセンサ基板41が嵌まり込んで収容されている。またセンサ基板41の外周及び凹み56の内周が、多角形状である。すなわち、インシュレータ5に対してセンサ基板41が回転しにくいように、センサ基板41の外周は、回転軸方向Xに見て、例えば、六角形などの多角形状に形成される。また凹み56の内周が、回転軸方向Xに見て、センサ基板41の外周に対応するように、例えば、六角形などの多角形状に形成される。センサ基板41の外周と凹み56の内周とは、異形の多角形状であってもよい。
【0076】
インシュレータ5が、センサ基板41につながる配線42を通す孔57を有する。すなわち、電池パック101等に電気的に接続される配線42が孔57を通ってインシュレータ5の内側に導入され、センサ基板41に電気的に接続される。孔57は第2インシュレータ502を厚み方向に貫通して形成されている。センサ基板41に実装されているセンサ素子43が、ロータ2と反対側に向いて配置される。すなわち、センサ素子43が空間35と反対側に向くようにセンサ基板41が配置される。したがって、センサ素子43は第2インシュレータ502側に向いている。
【0077】
センサ基板41には、片面だけに部品44が実装されている。すなわち、センサ素子43及び配線42が接続されるコネクタ等の部品44は、センサ基板41の第2インシュレータ502側に向いている面のみに実装され、ステータ3側に向く面410にはセンサ素子43及び部品44が実装されていない。これにより、センサ基板41をロータ2に近づけて配置することができる。センサ基板41は中央部に厚み方向に貫通する孔部45を有する。孔部45には軸受け7のうち、第2軸受け72が配置される。
【0078】
センサ基板41は回転軸方向Xにおいて隙間6と対向しており、センサ基板41によっても、隙間6への粉塵等の侵入を低減することができる。
【0079】
(2.9)軸受け
モータ1は、2つの軸受け(ベアリング)7により軸部23を回転可能に支持する。第1軸受け71は、ファン9の窪み部91に配置されている。第2軸受け72はインシュレータ5の第2インシュレータ502の軸受け保持部52に配置されている。第1軸受け71は、軸部23の回転軸方向Xにおいてファン9よりも前方(ロータ2と反対側)に位置している。第1軸受け71の厚さ(回転軸方向Xにおける寸法)は、窪み部91の深さ(回転軸方向Xにおける寸法)よりも短い。
【0080】
(2.10)ファン
ファン9は、ロータ2の回転軸方向Xにおいてステータ3の外側に軸部23に固定されている。ファン9は、回転軸方向Xから見て円形であり、全体的にハット状をなしている。ファン9は、回転軸方向Xにおいて、ロータ2と反対側に窪み部91を有する。窪み部91は、第1軸受け71が収容される空間部分である。窪み部91は、ファン9の中央部において、窪んでいる部分である。ファン9は、軸部23の周方向に回転可能である。ファン9は、窪み部91から径方向に向かって沿って延びる羽根部92が複数設けられている。
【0081】
モータ1は、ステータ3に対して、回転軸方向Xにおけるカバー51とは反対側に配置されるファン9を更に備える。すなわち、ファン9は、回転軸方向Xにおけるカバー51とは反対側に配置される。ファン9による気流は、カバー51側からステータ3側に向かって流れる。すなわち、ファン9の回転によって生じる気流は、第2インシュレータ502側から第1インシュレータ501側に向かって流れる。
【0082】
(3)動作
図7A~Cに基づいて、電動工具10の動作を説明する。図7A~Cにおいては、理解しやすいように、第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとの位置を軸部23とロータ2の直径方向でずらして示している。実際には、第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとは回転軸方向Xで対向して配置されている。また、第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとは、各々、粗い点々模様と細かい点々模様とで極性を区別して示している。例えば、粗い点々模様が付された第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとがS極の場合、細かい点々模様が付された第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとN極である。
【0083】
図7Aのように、モータ1への通電前は、第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとの異極同士が対向する状態で、第1ロータ部20aと第2ロータ部20bとが配置されている。この状態では、第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとが磁束を打ち消し合っているため、ロータ2から生じる磁束は小さい。
【0084】
図7Aの状態からモータ1へ通電すると、軸部23にトルクが掛かっていない場合は、磁気クラッチにより図7Aの状態を維持してロータ2は回転する。したがって、軸部23に付加されたトルクが小さい場合は、ロータ2から生じる磁束は小さく、ロータ2からの誘導起電圧を低くすることができる。
【0085】
図7Aの状態から軸部23にトルクが掛かると、図7Bのように、第1ロータ部20aと第2ロータ部20bとの各々が回転軸方向Xの周りで位置ずれするように回転する。すなわち、軸部23にトルクが掛かると、軸部23と固定されている第2ロータ部20bが回転しにくくなる。一方、軸部23と固定されていない第1ロータ部20aは図7Aの状態で回転する。したがって、第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとの対向が少し回転軸方向Xの周りで位置ずれする。よって、第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとが磁束を打ち消し合いが、図7Bのほうが図7Aよりも小さくなり、ロータ2から生じる磁束が大きくなるように変化する。
【0086】
図7Bの状態から軸部23にさらに大きなトルクが掛かると、図7Cのように、第1ロータ部20aと第2ロータ部20bとの各々が回転軸方向Xの周りでさらに位置ずれするように回転する。すなわち、軸部23に更に大きなトルクが掛かると、軸部23と固定されている第2ロータ部20bが回転しにくくなる。一方、軸部23と固定されていない第1ロータ部20aは図7Aの状態で回転する。したがって、第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとの対向が少し回転軸方向Xの周りで位置ずれする。また第1突起部27aと第2突起部27bとが引っかかって、第1ロータ部20aと第2ロータ部20bとが同じ速度で回転する。第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとの同極同士が対向する状態で、第1ロータ部20aと第2ロータ部20bとが配置されている。この状態において、ロータ2は、軸部23に付加されるトルクが大きくなるほど、自身から出力される磁束が強まるように構成されている。すなわち、第1永久磁石22aと第2永久磁石22bとが磁束を打ち消し合いが、図7Cのほうが図7Bよりも小さくなり、ロータ2から生じる磁束が大きくなるように変化する。
【0087】
このように、本実施形態に係る電動工具10では、軸部23に負荷されたトルクに応じて、磁束が変化するように構成されている。したがって、低トルク時にはロータ2からの誘導起電圧を低くすることができ、より高速回転を行わせることができて、作業効率が向上する。
【0088】
ロータ2は、軸部23の回転数に応じて、自身から出力される磁束が変化するように、回転軸方向Xに各々が相対回転可能に複数分割されている。すなわち、軸部23にトルクが付加されると、軸部23の回転数が変わるため、ロータ2から出力される磁束が変化する。この場合、ロータ2は、軸部23の回転数が高くなるほど、自身から出力される磁束が弱まるように構成されている。すなわち、図7Aのように、軸部23が高速で回転している場合にロータ2から出力される磁束が小さい。
【0089】
ロータ2は、正転及び逆転の両方で、自身から出力される磁束が変化するように構成されている。すなわち、正転及び逆転のいずれの場合でも、図7A~Cで示すような磁束の変化が生じる。
【0090】
(4)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0091】
上記では、6極のモータ1について説明したが、これに限らず、モータ1は4極でもよいし、8極であってもよい。
【0092】
上記では、ロータ2は2分割されていたが、3分割以上に分割されていてもよい。この場合、少なくとも1つの分割された部分が第1ロータ部20aを構成する。また第1ロータ部20aとは別の少なくとも1つの分割された部分が第2ロータ部20bを構成する。また残りの分割された部分は第1ロータ部20a又は第2ロータ部20bのいずれであってもよい。
【0093】
上記では、ロータ2の位置の検知は第1ロータ部20aの位置の検知により行うように構成されているが、これに限らず、ロータ2の位置の検知は第2ロータ部20bの位置の検知により行うように構成されていてもよい。この場合、センサ素子43で第2ロータ部20bの位置を検知するように構成することができる。
【0094】
上記では、支配的である第1ロータ部20aが軸部23に対して固定されず、従属的である第2ロータ部20bが軸部23に対して固定されていたが、これに限られない。例えば、支配的である第1ロータ部20aが軸部23に対して固定され、従属的である第2ロータ部20bが軸部23に対して固定されていなくてもよい。
【0095】
上記のモータ1の動作は、弱め磁束制御との組み合わせて制御してもよい。
【0096】
ロータ2は、正転における磁束の変化と、逆転における磁束の変化と、に差が生じるように構成されていてもよい。すなわち、モータ1が正転している場合、逆転している場合に比べて、ロータ2から出力される磁束の変化を大きくしたり、逆に、小さくしたりするように、モータ1を構成してもよい。例えば、逆転の方が正転に比べて、モータ1のトルクが大きくなるように、正転と逆転との間で差をつけることができる。正転における磁束の変化と、逆転における磁束の変化と、に差が生じるようにするには、第1ロータ部20aと第2ロータ部20bの間の角度を均等にしないようにする。すなわち、第1ロータ部20aと第2ロータ部20bの間の4つの角度のうち、2つの角度を大きくし、2つの角度を小さくすることができる。
【0097】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る電動工具(10)は、モータ(1)と、トリガスイッチ(106)と、伝達機構(102)と、制御部(107)と、を備える。トリガスイッチ(106)は、使用者が操作可能である。伝達機構(102)は、モータ(1)と出力軸(103)との間に配置されている。制御部(107)は、トリガスイッチ(106)の操作に基づいてモータ(1)の駆動制御を行う。モータ(1)は、ステータ(3)と、ロータ(2)と、を備える。ステータ(3)は、コイル部(30)と、鉄心部(34)と、を備える。コイル部(30)は、複数のコイル(31)及びインシュレータ(5)を有する。鉄心部(34)は、複数のティース部(32)を有する。ロータ(2)は、永久磁石(22)を有する。ロータ(2)は、ステータ(3)との間に隙間(6)を介してステータ(3)の内側で軸部(23)を中心に回転可能に設けられる。ロータ(2)は、自身から出力される磁束が変化するように、各々が相対回転可能に回転軸方向Xに複数分割されている。
【0098】
この態様によれば、ロータへの負荷が小さいときに、より高速で回転させることができるので、作業効率が高い、という利点がある。
【0099】
第2の態様に係る電動工具(10)は、第1の態様において、ロータ(2)は、軸部(23)に付加されるトルクに応じて、自身から出力される磁束が変化するように、各々が相対回転可能に回転軸方向Xに複数分割されている。
【0100】
この態様によれば、ロータへの負荷が小さいときに、より高速で回転させることができるので、作業効率が高い、という利点がある。
【0101】
第3の態様に係る電動工具(10)は、第2の態様において、ロータ(2)は、軸部(23)に付加されるトルクが大きくなるほど、自身から出力される磁束が強まるように構成されている。
【0102】
この態様によれば、ロータへの負荷が小さいときに、より高速で回転させることができるので、作業効率が高い、という利点がある。
【0103】
第4の態様に係る電動工具(10)は、第1の態様において、ロータ(2)は、軸部(23)の回転数に応じて、自身から出力される磁束が変化するように、各々が相対回転可能に回転軸方向Xに複数分割されている。
【0104】
この態様によれば、ロータへの負荷が小さいときに、より高速で回転させることができるので、作業効率が高い、という利点がある。
【0105】
第5の態様に係る電動工具(10)は、第4の態様において、ロータ(2)は、軸部(23)の回転数が高くなるほど、自身から出力される磁束が弱まるように構成されている。
【0106】
この態様によれば、ロータへの負荷が小さいときに、より高速で回転させることができるので、作業効率が高い、という利点がある。
【0107】
第6の態様に係る電動工具(10)は、第1~5のいずれか1つの態様において、ロータ(2)の複数分割されている部分をつなぐクラッチを更に備える。
【0108】
この態様によれば、ロータ(2)の複数分割されている部分に互いに動力を伝えることができる、という利点がある。
【0109】
第7の態様に係る電動工具(10)は、第6の態様において、クラッチが、磁気クラッチである。
【0110】
この態様によれば、ロータ(2)の複数分割されている部分に互いに動力を伝えることができる、という利点がある。
【0111】
第8の態様に係る電動工具(10)は、第1~7のいずれか1つの態様において、ロータ(2)の複数分割されている部分のうち、少なくとも一つの部分が第1ロータ部(20a)として形成される。ロータ(2)の位置の検知は第1ロータ部(20a)の位置の検知により行うように構成されている。
【0112】
この態様によれば、第1ロータ部(20a)での位置の検知により、ロータ(2)の回転制御を行うことができる、という利点がある。
【0113】
第9の態様に係る電動工具(10)は、第8の態様において、ロータ(2)の複数分割されている部分のうち、少なくとも一つの部分が第2ロータ部(20b)として形成される。第1ロータ部(20a)は軸部(23)に対して固定されていない。第2ロータ部(20b)は軸部(23)に対して固定されている。
【0114】
この態様によれば、ロータへの負荷が小さいときに、より高速で回転させることができるので、作業効率が高い、という利点がある。
【0115】
第10の態様に係る電動工具(10)は、第1~9のいずれか1つの態様において、ロータ(2)は、正転及び逆転が可能に構成される。ロータ(2)は、正転及び逆転の両方で、自身から出力される磁束が変化するように構成されている。
【0116】
この態様によれば、ロータへの負荷が小さいときに、より高速で回転させることができるので、作業効率が高い、という利点がある。
【0117】
第11の態様に係る電動工具(10)は、第10の態様において、ロータ(2)は、正転における磁束の変化と、逆転における磁束の変化と、に差が生じるように構成されている。
【0118】
この態様によれば、ロータへの負荷が小さいときに、より高速で回転させることができるので、作業効率が高い、という利点がある。
【0119】
第12の態様に係る電動工具(10)は、第1~11のいずれか1つの態様において、モータ(1)に電力を供給する電池パック(101)を更に備える。
【0120】
この態様によれば、電池パック(101)でモータ(1)を駆動することができる、という利点がある。
【符号の説明】
【0121】
1 モータ
2 ロータ
20a 第1ロータ部
20b 第2ロータ部
3 ステータ

30 コイル部
34 鉄心部
101 電池パック
102 伝達機構
103 出力軸
106 トリガスイッチ
107 制御部
X 回転軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7