(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】軒樋用排水部材及び雨樋構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/068 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
E04D13/068 503C
(21)【出願番号】P 2020077837
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 宏司
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-239851(JP,A)
【文献】実開昭54-029433(JP,U)
【文献】特開平08-199746(JP,A)
【文献】実開昭58-057418(JP,U)
【文献】特開2000-257222(JP,A)
【文献】特開2004-044246(JP,A)
【文献】特開2009-150155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/068
F16B 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒樋の底面に設けられた開口から竪樋へ雨水を排水するための排水部材であって、
前記排水部材は、下方から前記軒樋における前記開口の周囲に当接するフランジと、前記フランジに前記開口を介して螺合するドレンと、を有し、
前記フランジは、円筒状の雌円筒と、前記雌円筒の上部に設けられ前記雌円筒の全周にわたって外側に向かって張り出すフランジ鍔部と、を有し、
前記雌円筒は、内側に設けられた雌ネジ部を有し、
前記ドレンは、上側に設けられ雨水を排水する排水口と、下側に設けられ前記雌円筒の内径より小さい外径の円筒状である雄円筒と、を有し、
前記雄円筒は、上部の外側に設けられ前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部と、下部の外側に設けられたネジ無し部と、を有し、
前記ネジ無し部の外径は、前記雄ネジ部の雄ネジ谷部の外径よりも大きく、前記雌ネジ部の雌ネジ山部の内径よりも小さいことを特徴とする軒樋用排水部材。
【請求項2】
前記雄円筒の下端では、下方になるに従って外径が小さくなるテーパーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の軒樋用排水部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の軒樋用排水部材を用いて、前記軒樋用排水部材を介して前記軒樋と前記竪樋とを接続してなることを特徴とする雨樋構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軒樋に集められた雨水を竪樋へ排水する軒樋用排水部材及び雨樋構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の軒先に雨樋を取り付ける場合、軒樋から竪樋へ雨水を排水するために、軒樋の底面に設けられた排水用開口に排水部材が取り付けられる。通常、排水部材は、円筒部を有した上側部品と下側部品とに分割され、軒樋の底面を挟み込むようにして上側部品と下側部品の円筒部とに設けられたネジで螺合されて取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した排水部材は、樹脂成形によって製作されることが一般的であり、必要とされる排水能力を考慮して、円筒部の径が選択される。上側部品と下側部品を螺合する際に、上側部品の円筒部を下側部品の円筒部へ挿入して螺合するが、上側部品が斜めに挿入される場合があり、螺合作業をやり直すことが発生していた。
【0005】
そこで、本開示は、螺合作業のやり直しが改善され、作業性を向上することができる軒樋用排水部材及び雨樋構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る一態様の軒樋用排水部材は、軒樋の底面に設けられた開口から竪樋へ雨水を排水するためものである。前記排水部材は、下方から前記軒樋における前記開口の周囲に当接するフランジと、前記フランジに前記開口を介して螺合するドレンと、を有する。前記フランジは、円筒状の雌円筒と、前記雌円筒の上部に設けられ前記雌円筒の全周にわたって外側に向かって張り出すフランジ鍔部と、を有する。前記雌円筒は、内側に設けられた雌ネジ部を有する。前記ドレンは、上側に設けられ雨水を排水する排水口と、下側に設けられ前記雌円筒の内径より小さい外径の円筒状である雄円筒と、を有する。前記雄円筒は、上部の外側に設けられ前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部と、下部の外側に設けられたネジ無し部と、を有する。前記ネジ無し部の外径は、前記雄ネジ部の雄ネジ谷部の外径よりも大きく、前記雌ネジ部の雌ネジ山部の内径よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
また、本開示に係る一態様の雨樋構造は、前記軒樋用排水部材を用いて、前記軒樋用排水部材を介して軒樋と竪樋とを接続してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によると、軒樋用排水部材を施工する際の螺合作業のやり直しが改善され、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示に係る実施形態1の排水部材を軒樋に取付けた状態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本開示に係る実施形態1の排水部材を軒樋に取り付けた状態の概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本開示に係る実施形態1の排水部材のフランジの断面図である。
【
図4】
図4は、本開示に係る実施形態1の排水部材のドレンの断面図である。
【
図5】
図5は、
図2の排水部材のA部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0012】
また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0013】
(実施の形態)
本発明の実施形態の一例を、図を用いて説明する。
【0014】
図1は、軒樋用排水部材100を軒樋500に取付けた状態を示す概略図である。
図2は、軒樋用排水部材100を軒樋500の底面501に設けられた開口502に取り付けた状態を概略的に示す断面図である。
図3は、軒樋用排水部材100のフランジ200の断面図である。
図4は、軒樋用排水部材100のドレン300の断面図である。
図5は、
図2の軒樋用排水部材100のA部を拡大した断面図である。
【0015】
1.実施形態
1-1.排水部材
図1に示すように、実施形態の軒樋用排水部材100は、軒樋500に取付けられ、雨水を軒樋500から呼び樋510や竪樋520へ排水するものである。
【0016】
図2、
図3及び
図4を用いて軒樋用排水部材100を詳しく説明する。軒樋用排水部材100は、下方から軒樋500における開口502の周囲に当接するフランジ200と、開口502を介してフランジ200に螺合するドレン300と、を有する。つまり、フランジ200は、開口502に対応しており、軒樋500の底面501に設けられた開口502の下方から軒樋500に当接する。
【0017】
フランジ200は、円筒状の雌円筒210と、雌円筒210の上部に雌円筒210の全周にわたって外側に向かって張り出すフランジ鍔部220と、を有する。また、雌円筒210は、内側に設けられた雌ネジ部230を有する。
【0018】
ドレン300は、上側に設けられ雨水を軒樋500から排水する排水口360と、下側に設けられ雌円筒210の内径より小さい外径の円筒状である雄円筒310と、雄円筒310の上部に雄円筒310の全周にわたって外側に張り出すドレン鍔部320と、雄円筒310の上部に雄円筒310の上部に連結されて、排水する雨水を整流する複数の羽根370と、複数の羽根370の径方向内側に連結された漏斗部380と、を有する。また、雄円筒310は、雄円筒310の上部の外周面にフランジ200の雌ネジ部230に対応して螺合する雄ネジ部330と、雄円筒310の下部の外周面にネジ無し部340と、を有する。
【0019】
本実施形態のドレン300は、軒樋用排水部材100の排水性を向上させるために羽根370及び漏斗部380を有しているが、軒樋500の雨水を呼び樋510や竪樋520へ排水する機能を有していれば、羽根370や漏斗部380は無くても良い。
【0020】
図5に示すように、フランジ200の雌ネジ部230とドレン300の雄ネジ部330とが螺合される。フランジ200の雌ネジ部230は、内径φ1を有する雌ネジ山部231と、雌ネジ谷部232を有し、ドレン300の雄ネジ部330は、雄ネジ山部331と外径φ2を有する雄ネジ谷部332とを有する。ネジ無し部340の外径φ3は、雄ネジ谷部332の外径φ2よりも大きく、雌ネジ山部231の内径φ1よりも小さく設けられる。
【0021】
また、雄円筒310の下端では、下方になるに従って外径が小さくなるテーパー350が設けられる。
【0022】
1-2.排水部材の取付け方法
軒樋用排水部材100の取付け方法について説明を行う。
【0023】
図2に示すように、軒樋500の底面501を介して、フランジ200とドレン300とを螺合する。また、フランジ200及びドレン300は、軒樋500の底面501に設けられた開口502に対応した雌円筒210及び雄円筒310を有し、雨水が漏れないように接着剤などを用いて、軒樋500に固定される。フランジ200とドレン300と螺合する際は、フランジ200の雌円筒210にドレン300のネジ無し部340を挿入した後、ドレン300の雄ネジ部330とフランジ200の雌ネジ部230とで螺合を行う。
【0024】
1-3.作用効果
従来、ネジ無し部340の外径φ3は、雄ネジ谷部332の外径φ2と同じであったため、ネジ無し部340と雌ネジ部230との間に隙間があった。ネジ無し部340をフランジ200の雌ネジ部230に挿入した際に、斜めに挿入されてしまいきちんと螺合することができず、再びフランジ200とドレン300とを取付ける作業が発生していた。フランジ200及びドレン300は軒樋からの水漏れ防止のため、接着剤等を塗布した状態での取付け作業の為、再作業には労力を有していた。
【0025】
本実施形態は、ネジ無し部340の外径φ3を雄ネジ谷部332の外径φ2より大きくし、雌ネジ山部の内径φ1より小さくしたことにより、ネジ無し部340がフランジ200の雌ネジ部230に斜めに挿入されてしまう課題に改善することができ、軒樋500への取付け作業性が向上できる軒樋用排水部材100を提供することができる。
【0026】
また本実施形態は、雄円筒310の下端では、下方になるに従って外径が小さくなるテーパー350が設けられていることにより、フランジ200をドレン300に挿入しやすくなり、軒樋500への取付け作業性が向上できる軒樋用排水部材100を提供することができる。
【0027】
また、本実施形態では、軒樋用排水部材100を用いて、軒樋500に取付けて、軒樋500と呼び樋510及び竪樋520に接続してなる雨樋構造を提供することができる。この雨樋構造は、軒樋用排水部材100を軒樋500に取り付ける作業性を向上することができる。
【0028】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
100 軒樋用排水部材
200 フランジ
210 雌円筒
220 フランジ鍔部
230 雌ネジ部
231 雌ネジ山部
232 雌ネジ谷部
300 ドレン
310 雄円筒
320 ドレン鍔部
330 雄ネジ部
331 雄ネジ山部
332 雄ネジ谷部
340 ネジ無し部
350 テーパー
360 排水口
370 羽根
380 漏斗部
500 軒樋
501 底面
502 開口
510 呼び樋
520 竪樋
φ1 雌ネジ山部の内径
φ2 雄ネジ谷部の外径
φ3 ネジ無し部の外径