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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】電力遮断装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/54 20060101AFI20231215BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20231215BHJP
   H01H 47/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H01H9/54 C
G01R31/52
H01H47/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020067177
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021163708
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】廣部 貴志
(72)【発明者】
【氏名】風間 俊
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208580(JP,A)
【文献】特開2018-196285(JP,A)
【文献】特開2015-115173(JP,A)
【文献】特開2013-169087(JP,A)
【文献】特開2006-216516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54
G01R 31/52
H01H 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電位第1端と、
前記正電位第1端に正電位伝送路によって接続される正電位第2端と、
負電位第1端と、
前記負電位第1端に負電位伝送路によって接続される負電位第2端と、
前記正電位伝送路に設けられた正電位開閉器と、
前記負電位伝送路に設けられた負電位開閉器と、
前記正電位開閉器と前記正電位第2端とが接続される正電位接続点と、前記負電位開閉器と負電位第2端とが接続される負電位接続点と、に接続された故障検出回路と、
前記正電位開閉器の開閉と、前記負電位開閉器の開閉と、前記故障検出回路との動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記故障検出回路は、
第1端と第2端とが設けられた高電位抵抗と、第3端と第4端とに直流抵抗を介して接続されて前記第3端と前記第4端とに対して基準電位の基準電位端からの電力供給が可能な基準電位供給回路と、第5端と第6端とが設けられた低電位抵抗と、を有し、
前記正電位接続点に前記第1端が接続され、前記第2端に前記第3端が接続され、前記第4端に前記第5端が接続され、前記第6端に前記負電位接続点が接続され、
前記制御回路は、
前記正電位開閉器と前記負電位開閉器とに開状態とさせる指示と、前記基準電位供給回路に前記第3端および前記第4端へ前記基準電位端から電力を供給させる指示を行うとともに、前記第3端および前記第4端の電位を検出し、
前記第3端のおよび前記第4端の電位が前記基準電位と同電位であるとき、前記正電位開閉器および前記負電位開閉器は前記制御回路からの開状態とする指示に対して正常に反応することが可能であると判定し、
前記第3端および前記第4端の電位が前記基準電位と異なる電位であるとき、前記第3端および前記第4端の電位の値に応じて前記正電位開閉器あるいは前記負電位開閉器は故障状態であると判定する、
判定モードを有する、
電力遮断装置。
【請求項2】
前記基準電位供給回路は、
第3端と第4端とを接続する、第1直流抵抗と第2直流抵抗とが直列接続された直列体と、
前記第1直流抵抗と前記第2直流抵抗との接続点である第1接続点と、基準電位端と、を接続する、第3直流抵抗と整流素子とスイッチ素子とが並列接続された並列体と、
を有し、
前記整流素子は、前記基準電位端にカソードが接続され、前記第1直流抵抗と前記第2直流抵抗との接続点にアノードが接続され、
前記制御回路は、
前記正電位開閉器と前記負電位開閉器との双方へ開状態とさせる指示と、前記基準電位端から前記第3直流抵抗を介して第1接続点に電力を供給させる指示を行うとともに、前記第3端と前記第4端との電位を検出し、
前記第3端と前記第4端との電位が前記基準電位と同電位であるとき、前記正電位開閉器と前記負電位開閉器とは前記制御回路からの開状態とする指示に対して正常に反応することが可能であると判定し、
前記第3端の電位が第1所定値である場合に、前記正電位開閉器が短絡故障であると判定し、
前記第4端の電位が第2所定値である場合に、前記負電位開閉器が短絡故障であると判定する、
判定モードを有する、
請求項1に記載の電力遮断装置。
【請求項3】
前記判定モードに先行して予備判定モードが実行され、
前記予備判定モードにおいて前記制御回路は、前記正電位開閉器と前記負電位開閉器との双方が故障状態であることの検出が可能であり、
前記制御回路は、前記正電位開閉器と前記負電位開閉器との双方が故障状態であると判定すると、前記判定モードは実行しない、
請求項2に記載の電力遮断装置。
【請求項4】
前記予備判定モードにおいて前記制御回路は、
前記正電位開閉器と前記負電位開閉器とに開状態とさせる指示と、
前記スイッチ素子を接続状態とする指示を行い、
前記第4端の電位が第3所定値であるとき、前記正電位開閉器と前記負電位開閉器とは共に故障状態であると判定する、
請求項3に記載の電力遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各種電気機器に使用される電力遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の電力遮断装置について説明する。従来の電力遮断装置は、電源と負荷との間に設けられた開閉器に対し、開閉器が開状態となるように指示されているときに開閉器の両端の電圧を検出、比較することによって、融着故障についての判定を実施していた。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-216516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電力遮断装置では開閉器の両端の電圧を検出するため、電圧検出が一つの開閉器において2か所で実施されることが必要となり、また、電源電圧が高い場合である場合には、電圧検出を実施する回路が高い絶縁性能を有することが必要となる。
【0006】
この結果、電力遮断装置の回路構成が複雑となる、あるいは電力遮断装置が大型化する課題を有するものであった。
【0007】
そこで本開示は、電力遮断装置における故障検出を少ない回路構成で容易に実施することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために本開示は、正電位第1端と、前記正電位第1端に正電位伝送路によって接続される正電位第2端と、負電位第1端と、前記負電位第1端に負電位伝送路によって接続される負電位第2端と、前記正電位伝送路に設けられた正電位開閉器と、前記負電位伝送路に設けられた負電位開閉器と、前記正電位開閉器と前記正電位第2端とが接続される正電位接続点と、前記負電位開閉器と負電位第2端とが接続される負電位接続点と、に接続された故障検出回路と、前記正電位開閉器の開閉と、前記負電位開閉器の開閉と、前記故障検出回路との動作を制御する制御回路と、を備え、前記故障検出回路は、第1端と第2端とが設けられた高電位抵抗と、第3端と第4端とに直流抵抗を介して接続されて前記第3端と前記第4端とに対して基準電位端からの電力供給が可能な基準電位供給回路と、第5端と第6端とが設けられた低電位抵抗と、を有し、前記正電位接続点に前記第1端が接続され、前記第2端に前記第3端が接続され、前記第4端に前記第5端が接続され、前記第6端に前記負電位接続点が接続され、前記制御回路は、前記正電位開閉器と前記負電位開閉器とに開状態とさせる指示と、前記基準電位供給回路に前記第3端および前記第4端へ前記基準電位端から電力を供給させる指示を行うとともに、前記第3端および前記第4端の電位を検出し、前記第3端のおよび前記第4端の電位が前記基準電位と同電位であるとき、前記正電位開閉器および前記負電位開閉器は前記制御部からの開状態とする指示に対して正常に反応することが可能であると判定し、前記第3端および前記第4端の電位が前記基準電位と異なる電位であるとき、前記第3端および前記第4端の電位の値に応じて前記正電位開閉器あるいは前記負電位開閉器は故障状態であると判定する、判定モードを有する、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、正電位開閉器と負電位開閉器との状態について、正電位開閉器および負電位開閉器に接続された故障検出回路からの出力電圧によって判定ができる。故障検出回路は正電位開閉器および負電位開閉器における両端の電位差を検出する必要はなく、正電位開閉器および負電位開閉器における一方の電位が検出できればよい。このため、制御回路は少ない検出点で、正電位開閉器と負電位開閉器とが正常に反応するか、あるいは故障状態であるかの判定を少ない回路構成で容易に検出することができる。正電位開閉器と負電位開閉器とが制御部からの開状態とする指示に対して正常に反応することが可能であるか否かについて、簡単な回路構成で容易に判定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態における電力遮断装置の構成を示す回路ブロック図
図2】本開示の実施の形態における電力遮断装置を搭載した車両の構成を示す車両回路ブロック図
図3】本開示の実施の形態における電力遮断装置の正電位開閉器の正常判定接続図
図4】本開示の実施の形態における電力遮断装置の負電位開閉器の正常判定接続図
図5】本開示の実施の形態における電力遮断装置の正電位開閉器の異常判定接続図
図6】本開示の実施の形態における電力遮断装置の負電位開閉器の異常判定接続図
図7】本開示の実施の形態における電力遮断装置の負電位開閉器の予備判定接続図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
(実施の形態)
図1は本開示の実施の形態における電力遮断装置の構成を示す回路ブロック図である。電力遮断装置1は、正電位第1端2と正電位伝送路3と正電位第2端4と負電位第1端5と負電位伝送路6と負電位第2端7と正電位開閉器8と負電位開閉器9と故障検出回路10と制御回路11とを含む。
【0013】
正電位第2端4は正電位伝送路3によって正電位第1端2に接続されている。負電位第2端7は負電位伝送路6によって負電位第1端5に接続されている。正電位開閉器8は正電位伝送路3に設けられている。負電位開閉器9は負電位伝送路6に設けられている。故障検出回路10は、正電位接続点12と負電位接続点13とに接続されている。正電位接続点12は、正電位開閉器8と正電位第2端4とを接続している。負電位接続点13は、負電位開閉器9と負電位第2端7とを接続している。制御回路11は正電位開閉器8の開閉、負電位開閉器9の開閉、および故障検出回路10の動作を制御する。
【0014】
故障検出回路10は、高電位抵抗14と直流抵抗15と基準電位端16と基準電位供給回路17と低電位抵抗18とを含む。高電位抵抗14は第1端14Aと第2端14Bとを有する。基準電位供給回路17は第3端19に直流抵抗15を介して接続されている。また、基準電位供給回路17は第4端20に直流抵抗15を介して接続されている。さらに基準電位供給回路17は、基準電位端16から基準電位の第3端19あるいは第4端20への供給が可能となっている。低電位抵抗18は第5端18Aと第6端18Bとを有する。
【0015】
そして、正電位接続点12に第1端14Aが接続され、第2端14Bに第3端19が接続され、第4端20に第5端18Aが接続され、第6端18Bに負電位接続点13が接続されている。
【0016】
制御回路11は、正電位開閉器8および負電位開閉器9に対して故障状態であるか否かの判定を行う以下の判定モードの実行が可能である。
【0017】
制御回路11が正電位開閉器8と負電位開閉器9とに対する判定を行う場合、制御回路11は正電位開閉器8と負電位開閉器9とに開状態とさせる指示と、基準電位供給回路17に第3端19および第4端20へ、基準電位端16から電力を供給させる指示とを実行する。そして、制御回路11は第3端19および第4端20の電位を検出する。このとき、第3端19および第4端20で検出された電位が基準電位端16から供給される基準電位と同電位であると、正電位開閉器8と負電位開閉器9とが制御回路11からの開状態の指示に対して正常に反応することが可能であると制御回路11は判定する。
【0018】
この一方で、第3端19および第4端20で検出された電位が基準電位端16から供給された基準電位と同電位でないとき、第3端19および第4端20の電位の値に応じて正電位開閉器8あるいは負電位開閉器9が制御回路11からの開状態の指示に対して正常に反応することができない故障状態であると制御回路11は判定する。いいかえると、正電位開閉器8あるいは負電位開閉器9が開状態の指示に対して正常に反応できずに接続状態である場合、第3端19および第4端20で検出される電位は高電位抵抗14と直流抵抗15と基準電位端16の分圧状態によって異なる。このため、正電位開閉器8あるいは負電位開閉器9の何れかが故障状態であることが判定可能となる。
【0019】
以上の構成及び動作によって、電力遮断装置1では、正電位開閉器8と負電位開閉器9との状態について、制御回路11が正電位開閉器8および負電位開閉器9に接続された故障検出回路10からの出力電圧によって判定することができる。故障検出回路10は正電位開閉器8および負電位開閉器9における両端の電位差を検出する必要はなく、正電位開閉器8および負電位開閉器9における一方の電位が検出できればよい。このため、制御回路11は少ない検出点で、正電位開閉器8と負電位開閉器9とが、制御回路11からの指示によって正常に反応するか、あるいは故障状態であるかの判定を少ない回路構成で容易に検出することができる。
【0020】
以下で、電力遮断装置1の構成および動作の詳細について、図2の本開示の実施の形態における電力遮断装置を搭載した車両の構成を示す車両回路ブロック図を用いて説明する。ここでは特に、蓄電池21に蓄えられた電力によって推進駆動する車両22の車体23に電力遮断装置1が用いられた例を説明する。
【0021】
電力遮断装置1は車体23に配置されて、蓄電池21と負荷24に接続されている。蓄電池21は先にも述べたように、車体23に配置されて主として車両22を推進させるときために用いる。蓄電池21の正電極21Pは正電位第1端2に接続されている。正電位第1端2は正電位の入力端としても構わない。蓄電池21の負電極21Nは負電位第1端5に接続されている。負電位第1端5は負電位の入力端としても構わない。
【0022】
負荷24は車両22に配置されている車両22の駆動推進のための装置であり、負荷24はモータ(図示せず)やモータ(図示せず)を駆動するためのインバータ回路(図示せず)などを含んでいる。負荷24の端部24Pおよび端部24Nは正電位第2端4および負電位第2端7に接続されている。正電位第2端4は正電位の出力端としても構わない。また負電位第2端7は負電位の出力端としても構わない。
【0023】
正電位第2端4は正電位伝送路3によって正電位第1端2に接続されている。負電位第2端7は負電位伝送路6によって負電位第1端5に接続されている。正電位開閉器8は正電位伝送路3に設けられている。負電位開閉器9は負電位伝送路6に設けられている。故障検出回路10は、正電位接続点12と負電位接続点13とに接続されている。正電位接続点12は、正電位開閉器8と正電位第2端4とを接続している。負電位接続点13は、負電位開閉器9と負電位第2端7とを接続している。制御回路11は正電位開閉器8の開閉、負電位開閉器9の開閉、および故障検出回路10の動作を制御する。
【0024】
故障検出回路10は、高電位抵抗14と第1直流抵抗15Aと第2直流抵抗15Bと基準電位端16と基準電位供給回路17と低電位抵抗18とを含む。高電位抵抗14は第1端14Aと第2端14Bとを有する。基準電位供給回路17は第3端19に第1直流抵抗15Aを介して接続されている。また、基準電位供給回路17は第4端20に第2直流抵抗15Bを介して接続されている。さらに基準電位供給回路17は、基準電位端16から第3端19あるいは第4端20への電力供給が可能であり、厳密には第3端19あるいは第4端20への基準電位端16からの電力の供給の経路を切り替える。低電位抵抗18は第5端18Aと第6端18Bとを有する。
【0025】
そして、正電位接続点12に第1端14Aが接続され、第2端14Bに第3端19が接続され、第4端20に第5端18Aが接続され、第6端18Bに負電位接続点13が接続されている。
【0026】
いいかえると、第1直流抵抗15Aと第2直流抵抗15Bとの直列体の両端が、第1直流抵抗15A側で第3端19に、第2直流抵抗15B側で第4端20に、接続されている。さらにいいかえると、正電位接続点12は負電位接続点13へ、順に高電位抵抗14と第1直流抵抗15Aと第2直流抵抗15Bと低電位抵抗18とによって構成される直列体を介して接続されている。そして、第1直流抵抗15Aと第2直流抵抗15Bとの第1接続点16Aが基準電位供給回路17に接続されている。
【0027】
基準電位供給回路17は、基準電位端16と第1接続点16Aとの間に、第3直流抵抗17Aとダイオード17Bとスイッチ素子17Cとが並列接続されていることによって構成されている。基準電位端16には基準電源25が接続されていて、基準電位Vrefが基準電位端16に印加されている。
【0028】
ここでダイオード17Bとスイッチ素子17Cとには、Pチャンネル型MOSFET(金属酸化被膜型電界効果型ダイオード)が代えて用いられてよい。ダイオード17BはPチャンネル型MOSFETの寄生ダイオードに相当する。また、基準電位端16にはPチャンネル型MOSFETのソース端子が接続される。第1接続点16AにはPチャンネル型MOSFETのドレイン端子が接続される。Pチャンネル型MOSFETのゲート端子は制御回路11によって、接続状態あるいは遮断状態の制御が実行される。
【0029】
制御回路11は、正電位開閉器8および負電位開閉器9に対して故障状態であるか否かの判定を行う判定モードの実行が可能である。制御回路11が、正電位開閉器8あるいは負電位開閉器9に対して個別の判定を行うとき、Pチャンネル型MOSFETが用いられているスイッチ素子17Cのゲート端子にスイッチ素子17Cが遮断状態となるように、所定値以上の電圧を印加する。この一方で、制御回路11が、正電位開閉器8あるいは負電位開閉器9に対して個別に判定を行わないとき、スイッチ素子17Cのゲート端子にスイッチ素子17Cが接続状態となるように、電圧を印加しない。
【0030】
制御回路11による判定モードにおける判定の手順を以下に示す。正電位開閉器8と負電位開閉器9に対する故障状態であるか否かの判定は車両22の推進駆動が始まる前、あるいは駆動の停止後に行われるとよい。言い換えると、車両22の起動スイッチ26が搭乗者によってオフからオンへと切り換えられた直後に、かつ車両22の推進駆動が始まる前に実施されるとよい。あるいは、車両22の起動スイッチ26がオンからオフへと切り換えられた後に実施されるとよい。起動スイッチ26がオフからオンへ、あるいはオンからオフへと切り替えられたことは、制御回路11が検出する。
【0031】
正電位開閉器8と負電位開閉器9との故障に対する判定モードではまず、制御回路11は、正電位開閉器8と負電位開閉器9とに対して開状態となるように指示を行う。さらに、制御回路11は基準電位端16から第3直流抵抗17Aを介して第1接続点へ電力を供給するように指示を行う。制御回路11が基準電位端16から第3直流抵抗17Aを介して第1接続点へ電力を供給する指示は、いいかえると、制御回路11がスイッチ素子17Cを遮断状態とさせる指示である。
【0032】
そして、制御回路11は第3端19および第4端20の電位を検出する。このとき、第3端19および第4端20の電位が基準電源25から印加される基準電位Vrefと同じ値であれば、正電位開閉器8と負電位開閉器9とは、制御回路11が実行した指示に対して正常に動作して開状態となることができると、制御回路11は判定する。
【0033】
このとき、図3の本開示の実施の形態における電力遮断装置の正電位開閉器の正常判定接続図、および図4の本開示の実施の形態における電力遮断装置の負電位開閉器の正常判定接続図に示すように、正電位開閉器8と負電位開閉器9とは遮断状態であり、蓄電池21の正電極21Pあるいは、負電極21Nに接続される閉回路は存在しない。このため、基準電源25から供給する基準電位Vrefは、基準電位端16、第3直流抵抗17A、第1接続点16A、第1直流抵抗15Aを介して、そのままの値として第3端19で検出される。同様に、基準電源25から供給する基準電位Vrefは、基準電位端16、第3直流抵抗17A、第1接続点16A、第2直流抵抗15Bを介して、そのままの値として第4端20で検出される。
【0034】
ここでは一例として基準電位Vrefは3Vとしている。したがって、上記の判定では、第3端19および第4端20では3Vが検出される。ここで、基準電位Vrefと第3端19および第4端20とは実質的に同一であればよい。したがって、第3端19および第4端20で検出される値は、3Vの上下に所定の閾値を設けた範囲であればよい。制御回路11は、基準電位端16と、第3端19および第4端20との値を同時に検出しつつ比較すればよい。あるいは、制御回路11は、予め検出した基準電位端16の値を記憶したうえで、第3端19および第4端20との値を検出し、そして比較すればよい。
【0035】
またここでは、第3端19および第4端20との双方の値を制御回路11が検出している例を示している。しかしながら、正電位開閉器8と負電位開閉器9との双方が正常に開動作する場合は、第3端19と第4端20とは同電位となる。したがって、制御回路11は第3端19と第4端20との何れか一方の電位を検出したうえで、基準電位端16の電位と比較して、基準電位端16の電位と第3端19と第4端20との何れか一方の電位とが同等であれば、正電位開閉器8と負電位開閉器9との双方が正常に開動作すると判断してもよい。またあるいは、制御回路11が第3端19と第4端20との双方の電位同等である場合に、正電位開閉器8と負電位開閉器9との双方が正常に開動作すると判断してもよい。
【0036】
ここで正電位開閉器8あるいは負電位開閉器9が正常に開動作しない場合について説明する。図5の本開示の実施の形態における電力遮断装置の正電位開閉器の異常判定接続図に示すように、正電位開閉器8が制御回路11から開状態となるように指示されたにもかかわらず、閉状態が継続する場合には第3端19で検出される電位は基準電位Vrefとは異なる値となる。正電位開閉器8が制御回路11から開状態となるように指示されたにもかかわらず閉状態が継続する状態とは、正電位開閉器8において本来は切離が可能な接点(図示せず)が融着状態などによって電気的に接続されたままになってしまう状態などである。
【0037】
このとき、蓄電池21の正電極21Pから、正電位第1端2、短絡状態の正電位開閉器8、高電位抵抗14、第1直流抵抗15A、第1接続点16A、ダイオード17B、基準電位端16、基準電源25までは閉回路となる。ここで、蓄電池21の電圧が150V、高電位抵抗14の抵抗値が6.9MΩ、第1直流抵抗15Aの抵抗値が25.5KΩ、ダイオード17Bの順方向電圧が0.4V、基準電位Vrefが3Vとして設定されると、第3端19には分圧された電位が第1所定値である3.94Vとして出力され、基準電位Vrefとは異なる値で制御回路11によって検出される。したがって、第3端19で検出された電圧が3.94Vである場合、あるいは3.94Vの上下に閾値を設けたうえで、第3端19で検出された電圧閾値の範囲内であれば、正電位開閉器8が融着状態や短絡状態であると判断すればよい。上記の定数はあくまで一例であるため、それぞれの定数は適宜設定すればよい。
【0038】
ここでは、正電位開閉器8が不安定な融着状態や短絡状態で、ある程度の抵抗値を有していても、高電位抵抗14が非常に大きな抵抗値を有しているので、第3端19で検出された電圧には大きな差として現れない。また、蓄電池21から負荷24へ電力が供給されるときに、高電位抵抗14、第1直流抵抗15A、第1接続点16A、第2直流抵抗15B、低電位抵抗18にも電流が流れることになる。しかしながら、高電位抵抗14や後に説明する低電位抵抗18は非常に大きな抵抗値を有しているので、流れる電流は無視することができる。
【0039】
また、図6の本開示の実施の形態における電力遮断装置の負電位開閉器の異常判定接続図に示すように、負電位開閉器9が制御回路11から開状態となるように指示されたにもかかわらず、閉状態が継続する場合には第4端20で検出される電位は基準電位Vrefとは異なる値となる。負電位開閉器9が制御回路11から開状態となるように指示されたにもかかわらず閉状態が継続する状態とは、負電位開閉器9において本来は切離が可能な接点(図示せず)が融着状態などによって電気的に接続されたままになってしまう状態などである。
【0040】
このとき、基準電源25から、第3直流抵抗17A、第1接続点16A、第2直流抵抗15B、低電位抵抗18、蓄電池21の負電極21Pまでは閉回路となる。ここで、蓄電池21の負電極21Nの電位0V、低電位抵抗18の抵抗値が6.9MΩ、第2直流抵抗15Bの抵抗値が25.5KΩ、第3直流抵抗17Aの抵抗値が10MΩ、基準電位Vrefが3Vとして設定されると、第4端20には分圧された電位が第2所定値である1.23Vとして出力され、基準電位Vrefとは異なる値で制御回路11によって検出される。したがって、第4端20で検出された電圧が1.23Vである場合、あるいは1.23Vの上下に閾値を設けたうえで、第4端20で検出された電圧閾値の範囲内であれば、負電位開閉器9が融着状態や短絡状態であると判断すればよい。先にのべた場合と同様に上記の定数はあくまで一例であるため、それぞれの定数は適宜設定すればよい。
【0041】
ここでは、負電位開閉器9が融着状態や短絡状態である程度の抵抗値を有していても、低電位抵抗18が非常に大きな抵抗値を有しているので、第4端20で検出された電圧には上記の値に対して大きな差として現れない。
【0042】
これによって、電力遮断装置1では、正電位開閉器8と負電位開閉器9との状態について、制御回路11が、正電位開閉器8および負電位開閉器9に接続された故障検出回路10の第3端19あるいは第4端20の2点で検出される電位によって容易に判定することができる。故障検出回路10は正電位開閉器8および負電位開閉器9における両端の電位差を検出する必要はなく、正電位開閉器8および負電位開閉器9における一方の電位が検出できればよい。このため、制御回路11は少ない検出点で、正電位開閉器8と負電位開閉器9とが、制御回路11からの指示によって正常に反応するか、あるいは故障状態であるかの判定を少ない回路構成で容易に検出することができる。
【0043】
さらに、制御回路11によって検出、比較の対象となる、基準電位Vref、第3端19あるいは第4端20の電位は、分圧に用いる抵抗である高電位抵抗14、第1直流抵抗15A、第2直流抵抗15B、低電位抵抗18の定数設定により、制御回路11での検出や比較が容易となる値に設定することができ、制御回路11による検出や比較の精度を向上させることができる。
【0044】
また、検出の精度を向上させるために、車両22の起動スイッチ26が搭乗者によってオフからオンへと切り換えられた直後に、かつ車両22の推進駆動が始まる前であって、判定モードが実施される前に予備判定モードが実施されるとよい。あるいは、車両22の起動スイッチ26がオンからオフへと切り換えられた後で、判定モードが実施される前に予備判定モードが実施されるとよい。
【0045】
予備判定モードでは、図7の本開示の実施の形態における電力遮断装置の負電位開閉器の予備判定接続図に示されるように、制御回路11は、正電位開閉器8と負電位開閉器9とに対して開状態となるように指示を行う。さらに、制御回路11は基準電位端16から直接に第1接続点16Aへ電力を供給するように指示を行う。いいかえると、制御回路11がスイッチ素子17Cを接続状態とさせる指示を行う。そして、制御回路11は第3端19および第4端20の電位を検出する。
【0046】
このとき、正電位開閉器8と負電位開閉器9とが、制御回路11からの指示どおりに正常に開動作すると、第3端19および第4端20には基準電位Vrefがそのまま出力される。特にこのとき第3端19および第4端20で検出される電位は、スイッチ素子17Cが接続状態となっているのでダイオード17Bの漏れ電流からの影響を受けにくくなり、精度よく基準電位Vrefが反映されることとなる。したがって、制御回路11は予備判定モードにおいて検出された基準電位Vrefを一時的に記憶し、判定モードでの動作時において予備判定モードで検出した基準電位Vrefを比較の基準として用いてもよい。
【0047】
この一方で、正電位開閉器8と負電位開閉器9とが、制御回路11からの指示どおりに正常に開動作できず、正電位開閉器8と負電位開閉器9との双方が共に融着状態や短絡状態となっていると、基準電位Vrefと蓄電池21とによって印加される電位が分圧されて、第4端20では第3所定値である75Vが検出される。ここでも、第3所定値は上下に範囲を有した値としてよい。これにより、正電位開閉器8と負電位開閉器9との双方が共に融着状態や短絡状態となっている場合に、故障状態は容易に検出される。そして、正電位開閉器8と負電位開閉器9との双方が共に融着状態や短絡状態となっている場合には、制御回路11は判定モードを実行しない。また、判定モードに先立って予備判定モードが実施されるので、判定モードで正電位開閉器8と負電位開閉器9との双方が共に融着状態や短絡状態となっていることはなく、判定モードでの判定の精度を向上させることができる。
【0048】
以上の説明では、制御回路11は単一の回路として図示したうえで説明している。しかしながら、電圧検出のための機能部分、開閉器の制御のための機能部分、スイッチ開閉のための機能部分、データの演算や記憶のための機能部分は、分散して配置されていてもよく、それらが総称された制御回路11であってよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の電力遮断装置は、故障検出を少ない回路構成で容易に実施できるという効果を有し、各種電気機器において有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 電力遮断装置
2 正電位第1端
3 正電位伝送路
4 正電位第2端
5 負電位第1端
6 負電位伝送路
7 負電位第2端
8 正電位開閉器
9 負電位開閉器
10 故障検出回路
11 制御回路
12 正電位接続点
13 負電位接続点
14 高電位抵抗
14A 第1端
14B 第2端
15 直流抵抗
15A 第1直流抵抗
15B 第2直流抵抗
16 基準電位端
17 基準電位供給回路
17A 第3直流抵抗
18 低電位抵抗
18A 第5端
18B 第6端
19 第3端
20 第4端
21 蓄電池
22 車両
23 車体
24 負荷
25 基準電源
26 起動スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7