(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】燃料電池セル
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20231215BHJP
H01M 4/92 20060101ALN20231215BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231215BHJP
【FI】
H01M4/86 H
H01M4/86 M
H01M4/92
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020561252
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046818
(87)【国際公開番号】W WO2020129575
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018235798
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】土田 修三
(72)【発明者】
【氏名】関 良平
(72)【発明者】
【氏名】川島 勉
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-209979(JP,A)
【文献】特開2009-218184(JP,A)
【文献】特開2007-305427(JP,A)
【文献】特開平06-052871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 4/92
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、
前記電解質膜の第1の主面側に積層されたカソード触媒層と、
前記カソード触媒層に積層されたカソードガス拡散層と、
前記電解質膜の第2の主面側に積層されたアノード触媒層と、
前記アノード触媒層に積層されたアノードガス拡散層と、
を備え、
前記カソード触媒層は、
第1の触媒層と、前記第1の触媒層よりも前記電解質膜側に位置する第2の触媒層とを含み、前記第1の触媒層と前記第2の触媒層とは、触媒機能を有する触媒粒子が担体に担持されたカソード触媒を含み、
前記カソード触媒は、表面の少なくとも一部において撥水性高分子材料を含
み、
前記第1の触媒層に含まれる前記カソード触媒の前記触媒粒子の粒子径が、前記第2の触媒層に含まれる前記カソード触媒の前記触媒粒子の粒子径よりも大きいことを特徴とする、燃料電池セル。
【請求項2】
前記カソードガス拡散層において前記カソード触媒層に接する面での水の接触角が、120度以上であることを特徴とする、請求項
1に記載の燃料電池セル。
【請求項3】
前記カソード触媒層において前記カソードガス拡散層に接する面での水の接触角が、0度以上120度以下であることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の燃料電池セル。
【請求項4】
前記カソードガス拡散層において前記カソード触媒層に接する面での水の接触角が、前記カソード触媒層において前記カソードガス拡散層に接する面での水の接触角よりも大きいことを特徴とする、請求項
1~3のいずれか一項に記載の燃料電池セル。
【請求項5】
前記カソード触媒層の厚みが3μm以上30μm以下であることを特徴とする、請求項
1~4のいずれか一項に記載の燃料電池セル。
【請求項6】
発電駆動条件が、相対湿度5%以上70%以下であることを特徴とする、請求項
1~5のいずれか一項に記載の燃料電池セル。
【請求項7】
請求項
1~6のいずれか一項に記載の燃料電池セルを複数個含む、燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形をはじめとする燃料電池は、次世代の発電システムとして期待されている。特に固体高分子形燃料電池は、他の燃料電池と比較して動作温度が低く、コンパクトであるという利点から、家庭用、自動車用の電源としての利活用が期待されている。
【0003】
近年の燃料電池の普及に伴い、固体高分子形燃料電池の触媒層に対して、耐久性を向上させるために、多数の検討がなされている。
【0004】
燃料電池の性能劣化の一因として、以下のメカニズムが発表されている。
図6を用いて説明する。
図6は、燃料電池セルの発電領域における概略構成を示す断面図である。電解質膜100の両面において、アノード触媒層101及びカソード触媒層102が形成されている。アノード触媒層101及びカソード触媒層102のそれぞれにおいて、厚み方向外側には、ガス拡散層(Gas Diffusion Layer 略称GDL)が形成されている。アノード触媒層101及びカソード触媒層102に対して、GDLを介して水素及び空気を供給することで、燃料電池セルは発電を行っている。
【0005】
このとき、アノード触媒層101およびカソード触媒層102間に電位が発生している。発電のON/OFF操作を行うことで、発電状態から発電を停止するとき、又は発電の停止状態から発電を開始するときにおいて、当該電位は変動する。当該電位変動により、カソード触媒層102内に含まれる触媒の白金又は白金合金粒子から、白金イオン(Ptイオン)が溶出し電解質膜100へ移動する。次に、電解質膜100内で白金イオンが還元され、電解質膜100内部に白金微粒子が存在する領域(Ptバンド)が形成される。
【0006】
例えば特許文献1には、電解質膜100内のPtが電解質膜100の耐久性に悪影響を示すことが開示されている。電解質膜100の耐久性を向上させるために、アノード触媒層101およびカソード触媒層102におけるガス分圧を制御することで、Ptバンドの発生場所をずらす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示す方法では、カソード触媒層102から触媒(白金)が溶出し電解質膜100内へ移動するため、カソード触媒層102の白金量が減少する。これにより、例えば発電電圧が著しく低下する等、燃料電池としての発電性能が低下するという問題が発生し得る。
【0009】
本発明の目的は、触媒機能を有する粒子が電解質膜へ溶出することを低減することができる燃料電池セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る燃料電池セルは、電解質膜と、前記電解質膜の第1の主面側に積層されたカソード触媒層と、前記カソード触媒層に積層されたカソードガス拡散層と、前記電解質膜の第2の主面側に積層されたアノード触媒層と、前記アノード触媒層に積層されたアノードガス拡散層と、を備え、前記カソード触媒層は、触媒機能を有する触媒粒子が担体に担持されたカソード触媒を含み、前記カソード触媒は、表面の少なくとも一部において撥水性高分子材料を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、触媒機能を有する粒子が電解質膜へ溶出することを低減することができる燃料電池セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池セルの概略構成を示す断面図
【
図4】本発明の比較例および実施例を説明するための図
【
図5】
図3とはカソード触媒層の構成が異なる場合の電解質膜周辺の概略構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1態様によれば、電解質膜と、前記電解質膜の第1の主面側に積層されたカソード触媒層と、前記カソード触媒層に積層されたカソードガス拡散層と、前記電解質膜の第2の主面側に積層されたアノード触媒層と、前記アノード触媒層に積層されたアノードガス拡散層と、を備え、前記カソード触媒層は、触媒機能を有する触媒粒子が担体に担持されたカソード触媒を含み、前記カソード触媒は、表面の少なくとも一部において撥水性高分子材料を含むことを特徴とする、燃料電池セルを提供する。
【0014】
本発明の第2態様によれば、前記カソード触媒層は、第1の触媒層と、前記第1の触媒層よりも前記電解質膜側に位置する第2の触媒層とを含み、前記第1の触媒層に含まれる前記カソード触媒の前記触媒粒子の粒子径が、前記第2の触媒層に含まれる前記カソード触媒の前記触媒粒子の粒子径よりも大きいことを特徴とする、第1態様に記載の燃料電池セルを提供する。
【0015】
本発明の第3態様によれば、前記カソードガス拡散層において前記カソード触媒層に接する面での水の接触角が、120度以上であることを特徴とする、第1又は第2態様に記載の燃料電池セルを提供する。
【0016】
本発明の第4態様によれば、前記カソード触媒層において前記カソードガス拡散層に接する面での水の接触角が、0度以上120度以下であることを特徴とする、第1~第3態様のいずれか1つに記載の燃料電池セルを提供する。
【0017】
本発明の第5態様によれば、前記カソードガス拡散層において前記カソード触媒層に接する面での水の接触角が、前記カソード触媒層において前記カソードガス拡散層に接する面での水の接触角よりも大きいことを特徴とする、第1~第4態様のいずれか1つに記載の燃料電池セルを提供する。
【0018】
本発明の第6態様によれば、前記カソード触媒層の厚みが3μm以上30μm以下であることを特徴とする、第1~第5態様のいずれか1つに記載の燃料電池セルを提供する。
【0019】
本発明の第7態様によれば、発電駆動条件が、相対湿度5%以上70%以下であることを特徴とする、第1~第6態様のいずれか1つに記載の燃料電池セルを提供する。
【0020】
本発明の第8態様によれば、第1~第7態様のいずれか1つに記載の燃料電池セルを複数個含む、燃料電池を提供する。
【0021】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
【0022】
(実施形態)
<燃料電池セルの構造>
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池セル1の基本構成を示す断面図である。
図2は、燃料電池セル1におけるカソード触媒110を示す概略図である。本実施形態に係る燃料電池セル1は、高分子電解質型燃料電池(固体高分子形燃料電池)である。高分子電解質型燃料電池においては、水素を含有する燃料ガスと、空気などの酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる。なお、本発明は、高分子電解質形燃料電池に限定されるものではなく、種々の燃料電池に適用可能である。
【0023】
本実施形態に係る燃料電池セル1は、
図1に示すように、MEA10と、アノードセパレータ20A及びカソードセパレータ20Cと、アノード側シール材15A及びカソード側シール材15Cとを備えている。
【0024】
MEA10は、水素イオンを選択的に輸送する電解質膜11(固体高分子電解質膜)と、電解質膜11の両面に形成された一対の電極層とを有している。一対の電極層の一方(カソード側)は、カソード電極12C(空気極)であり、他方(アノード側)はアノード電極12A(燃料極)である。
【0025】
電解質膜11は、プロトン伝導性を有し、且つ電子を流さない材料で形成される。電解質膜11は、例えば、パーフルオロ型のスルホン酸膜、Dupont社製Nafion(登録商標)、旭硝子社製フレミオン(登録商標)、旭硝子社製アシプレックス(登録商標)、ジャパンゴアテックス社製ゴアセレクト(登録商標)、プロトン伝導基を有するポリイミド等の炭化水素系樹脂である。 また、電解質膜11は、例えば、カソード触媒層13C及びアノード触媒層13Aに用いられる水素イオン伝導性高分子と同じ材料で形成されている。これにより、水素イオンの伝導性をより向上させることができる。なお、電解質膜11は、カソード触媒層13C及びアノード触媒層13Aに用いられる水素イオン伝導性高分子と異なる材料で形成されていてもよい。
【0026】
カソード電極12Cは、カソード触媒層13Cと、カソードガス拡散層14Cとを有している。カソード触媒層13Cは、電解質膜11の第1の主面側の面上(第1の主面上)に積層されている。カソードガス拡散層14Cは、カソード触媒層13Cに積層される。
【0027】
アノード電極12Aは、アノード触媒層13Aと、アノードガス拡散層14Aとを有している。アノード触媒層13Aは、電解質膜11の第2の主面側の面上(第2の主面上)に積層されている。アノードガス拡散層14Aは、アノード触媒層13Aに積層される。
【0028】
カソード触媒層13Cは、カソード触媒110(
図2)を含む。
図2に示すように、カソード触媒110は、触媒機能を有する触媒粒子112が担体111に担持されて形成されている。担体111は、用いる材料によって、複数個の担体111が凝集した状態で存在する場合もある。また、触媒粒子112は、担体111の表面、もしくは、担体表面近傍の担体細孔内に担持されている。アノード触媒層13Aは、触媒機能を有する触媒粒子が担体に担持されたアノード触媒を含む。カソード触媒層13C及びアノード触媒層13Aにおいて触媒機能を有する触媒粒子は、例えば、白金粒子、白金合金粒子等の金属粒子である。カソード触媒層13C及びアノード触媒層13Aにおいて、担体は、電子伝導性を有し、例えば炭素粉末等である。
【0029】
アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cは、例えば、集電作用、ガス透過性、及び撥水性の機能を併せ持っている。アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cは、例えば、カーボンクロス、カーボンペーパ、不織布などのポーラスカーボン材等である。また、アノードガス拡散層14A及びカソードガス拡散層14Cにおいて、適宜、表面処理により親水機能又は撥水機能を持たせてもよい。
【0030】
アノードセパレータ20Aは、MEA10の第2の主面側(アノード電極12A側)に積層されている。カソードセパレータ20Cは、MEA10の第1の主面側(カソード電極12C側)に積層されている。
【0031】
アノードセパレータ20Aは、例えば、一部がアノードガス拡散層14Aの周縁部に含浸している。カソードセパレータ20Cは、例えば、一部がカソードガス拡散層14Cの周縁部に含浸している。これにより、発電耐久性及び強度を向上させることができる。
また、アノードセパレータ20A及びカソードセパレータ20Cは、例えば、カーボン、金属等により形成されている。
【0032】
アノードセパレータ20Aには、アノードガス拡散層14Aと当接する主面に、燃料ガスを流すための燃料ガス流路21Aが設けられている。燃料ガス流路21Aは、例えば、互いに略平行な複数の溝を有している。カソードセパレータ20Cには、カソードガス拡散層14Cと当接する主面に、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路21Cが設けられている。酸化剤ガス流路21Cは、例えば、互いに略平行な複数の溝を有している、なお、アノードセパレータ20A及びカソードセパレータ20Cには、冷却水などが通る冷却水流路(図示せず)が設けられていてもよい。
【0033】
燃料ガス流路21Aを通じてアノード電極12Aに燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス流路21Cを通じてカソード電極12Cに酸化剤ガスが供給されることで、電気化学反応が起こり、電力及び熱が発生する。
【0034】
アノード側シール材15A及びカソード側シール材15Cは、ガスが外部に漏れることを防ぐための部材である。アノード側シール材15Aは、アノードセパレータ20Aと電解質膜11との間において、燃料ガスが外部に漏れることを防ぐための部材である。アノード側シール材15Aは、アノード触媒層13A及びアノードガス拡散層14Aの側面(面方向外側の面)を覆うように配置されている。カソード側シール材15Cは、カソードセパレータ20Cと電解質膜11との間において、酸化剤ガスが外部に漏れることを防ぐための部材である。カソード側シール材15Cは、カソード触媒層13C及びカソードガス拡散層14Cの側面(面方向外側の面)を覆うように配置されている。
【0035】
アノード側シール材15A及びカソード側シール材15Cは、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等である。アノードセパレータ20A及びカソードセパレータ20Cは、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、液晶性ポリマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン、ガラス繊維強化樹脂等である。
【0036】
次に、カソード電極12Cについて
図3を用いてより詳細に説明する。
図3は、
図1の電解質膜11周辺の概略構成を示す断面図である。カソード電極12Cは、例えば、担体111上に触媒機能を有する触媒粒子112が担持されたカソード触媒110、及び水素イオン伝導性高分子の混合膜として形成されている。
【0037】
ここで、担体111は、例えば、微粒子状で電子導電性を有し、触媒に侵されないものである。担体111は、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素粒子である。担体111(炭素粒子)の平均粒子径は、例えば、10nm以上2000nm以下である。担体111(炭素粒子)の平均粒子径を10nm以上にすることで、電子伝導パスを容易に形成することができる。担体111(炭素粒子)の平均粒子径を2000nm以下にすることで、カソード電極12C内でのガス拡散性の低下及び触媒の利用率の低下を防止することができる。
【0038】
カソード触媒110は、表面の少なくとも一部において撥水性高分子材料を含む。すなわち、カソード触媒110には、少なくとも一部に撥水処理が施される。例えば、白金が炭素粒子に担持されたカソード触媒110において少なくとも一部に撥水処理が施される。ここで、撥水性高分子材料とは、撥水性の機能を有する高分子材料を示す。
【0039】
撥水性高分子材料は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、PTFE、フルオロ(メタ)アクリレート系樹脂等である。フルオロ(メタ)アクリレート系樹脂は、フルオロアルキル基が(メタ)アクリル酸エステルのアルコール残基部分に存在する化合物を示す。フルオロアルキル基は、アルキル基の水素原子の全てがフッ素原子に置換された基、すなわち、パーフルオロアルキル基を有することが好ましく、パーフルオロアルキル基を少なくとも末端部分に有することが好ましい。フルオロアルキル基の末端部分の構造としては、例えば、-CF2CF3、-CF(CF3)2、-CF2H、-CFH2、-CF2Cl等が挙げられ、撥水性の観点から-CF2CF3が好ましい。
【0040】
また、フルオロアルキル基中の炭素-炭素結合間には、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。また、撥水性高分子材料は、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンオキサゾ―ル、ポリベンゾオキサジン等の芳香族系の高分子材料であってもよい。また、撥水性高分子材料は、例えばシリコーン系樹脂、シロキサン系樹脂等であってもよい。撥水性高分子材料が、例えば、フッ素系材料や芳香族系高分子等の場合、材料の劣化をより抑制することができる。
【0041】
カソード触媒層13Cは、複数の触媒層を有する。本実施形態では、カソード触媒層13Cは、第1の触媒層17aと、第2の触媒層17bとを含む。第2の触媒層17bは、第1の触媒層17aよりも電解質膜11側に位置する。
【0042】
本実施形態では、第1の触媒層17aに含まれるカソード触媒110の触媒粒子112の粒子径は、第2の触媒層17bに含まれるカソード触媒110の触媒粒子112の粒子径よりも大きい。
【0043】
カソード触媒層13Cにおいてカソードガス拡散層14Cに接する面での水の接触角(触媒層接触角)は、例えば、0度以上120度以下である。本実施形態では、カソード触媒層13Cにおいてカソードガス拡散層14Cに接する面は、第1の触媒層17aの表面である。カソードガス拡散層14Cにおいてカソード触媒層13Cに接する面での水の接触角(GDL接触角)は、例えば、120度以上である。本実施形態では、GDL接触角は、触媒層接触角よりも大きい。水の接触角は、例えば接触角計等を用いて測定される。
【0044】
また、カソード触媒層13Cの厚みは、例えば、3μm以上30μm以下である。
【0045】
<燃料電池セルの製造方法>
次に、本発明の実施形態に係るMEA10の製造方法及び燃料電池セル1の製造方法について
図3を用いて説明する。
【0046】
まず、本発明の実施形態に係る電解質膜11を準備する。次に、準備した電解質膜11の両面にはカソード電極12C及びアノード電極12Aを形成する。カソード電極12C及びアノード電極12Aは、例えば、触媒インクを調製して形成される。触媒インクは、例えば、水素イオン伝導性高分子と、触媒機能を有する金属粒子を担持するカーボン担体と、分散媒とを含む。
【0047】
触媒インク中に含まれる水素イオン伝導性高分子には、例えば電解質膜11と同一の材料が用いられる。Dupont社製Nafion(登録商標)を電解質膜11として用いた場合には、触媒インクに含まれる水素イオン伝導性高分子としてはNafion(登録商標)を使用するのが好ましい。電解質膜11にNafion(登録商標)以外の材料を用いた場合は、触媒インク中に電解質膜11と同じ成分を溶解させるなど最適化をはかることが好ましい。
【0048】
触媒インクの分散媒として使用される溶媒は、触媒機能を有する金属粒子や水素イオン伝導性樹脂を浸食することがなく、流動性の高い状態でプロトン伝導性高分子を溶解または微細ゲルとして分散できるものあれば特に限定されない。当該溶媒は、揮発性の液体有機溶媒が少なくとも含まれることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。触媒インクの分散媒として使用される溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ペンタノール、2-ヘプタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイゾブチルケトン、メチルアミルケトン、ペンタノン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、アニリンなどのアミン類、蟻酸プロピル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチルなどのエステル類、その他酢酸、プロピオン酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、1-メトキシ-2-プロパノール等の極性溶媒等が使用されてもよく、これらの溶媒のうち二種以上を混合させたものも使用してもよい。
【0049】
これらの溶媒の中でも誘電率が異なる2種類の溶媒を用いることで、触媒インク中の水素イオン伝導性樹脂の分散状態を制御することができる。これらの溶媒または溶剤として低級アルコールを用いた場合、水との混合溶媒にするのが好ましい。また、溶媒には、例えば、水素イオン伝導性樹脂となじみがよい水が含まれていてもよい。水の添加量は、例えば、プロトン伝導性ポリマーが分離して白濁を生じたり、ゲル化したり悪影響が発生しない範囲で添加可能である。
【0050】
触媒インクの粘度は、例えば、0.1cP以上100cP以下であることが好ましい。粘度は、例えば、溶媒の種類、固形分濃度を変化させることで最適化される。また、インキの分散時に分散剤を添加することで、粘度の制御をすることもできる。
【0051】
また、水素イオン伝導性樹脂と触媒性能を有する金属粒子を担持するカーボン担体と分散媒を含む触媒インクは公知の方法により適宜分散処理がおこなわれる。
【0052】
カソード電極12C、アノード電極12A、及び電解質膜11とは熱圧着により接合される。本発明の実施形態に係る燃料電池セル1において、カソードガス拡散層14C及びアノードガス拡散層14A、並びに、カソードセパレータ20C及びアノードセパレータ20Aとしては通常の燃料電池に用いられているものを用いてもよい。また、燃料電池としては、ガス供給装置、冷却装置など、その他付随する装置を組み立てることにより製造される。
【0053】
以下、
図4を用いて、本発明の比較例及び実施例を説明する。比較例及び実施例は、燃料電池セル1を用いて実験を行った結果である。なお、後述するように、比較例1及び実施例1において、燃料電池セル1の一部の構成を変更している。また、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(比較例1)
比較例1について、
図5を用いて説明する。
図5は、
図3とはカソード触媒層の構成が異なる場合の電解質膜11周辺の概略構成を示す断面図である。
図5におけるカソード触媒層31は、燃料電池セル1のカソード触媒層13Cに対応する。比較例1においては、
図5に示すように、カソード触媒層31は、1層構造とした。ここで、カソード触媒層13Cの触媒は、市販の触媒TEC10E50E(田中貴金属製)を用いた。
【0055】
(実施例1)
実施例1について、
図5を用いて説明する。実施例1においては、
図5に示すように、カソード触媒層31は、1層構造とした。
【0056】
カソード触媒層31の触媒については、市販の触媒に撥水処理を施した触媒を用いた。具体的には、市販の触媒及び撥水性高分子材料を所定の溶媒に溶解・分散させ、一定時間攪拌した後乾燥させ、溶媒を十分除去することで、カソード触媒層31を作製した。これにより、触媒表面に撥水性高分子材料をコーティングした。撥水性高分子材料には、フッ素系高分子材料を用いた。フッ素系高分子材料の投入量は、市販の触媒に対して5~15%とした。市販の触媒としては、TEC10E50E(田中貴金属(株)製)を用いた。フッ素系高分子材料としては、EGC-1700(住友スリーエム(株)製)を用いた。フッ素系高分子材料として、ポリテトラフルオロエチレンやポリビニリデン等、フッ素樹脂やフッ素界面活性剤として市販されている材料を使用することも可能である。
【0057】
(実施例2)
実施例2について、
図3を用いて説明する。実施例2においては、
図3に示すように、カソード触媒層13Cの構造を2層構造にした。
【0058】
第1の触媒層17aの触媒については、市販の触媒TEC10E50Eを200~400℃で焼成させ、あらかじめ触媒の触媒粒子112(金属粒子)の径を大きくさせた触媒を用いた。第2の触媒層17bの触媒については、市販の触媒を実施例1と同様の撥水処理を施した。この触媒を、実施例1で記載した撥水処理を施した後、第1の触媒層17a及び第2の触媒層17bを形成した。
【0059】
ここで、第1の触媒層17aに用いた触媒の触媒粒子112(金属粒子)は平均粒子径で4~6nm、第2の触媒層17bに用いた触媒の触媒粒子112(金属粒子)は平均粒子径で2~4nmであった。
【0060】
(実施例3)
実施例3について、
図3を用いて説明する。実施例3においては、
図3に示すように、カソード触媒層13Cの構造を2層構造とした。実施例2と異なる点は、撥水処理におけるフッ素系高分子材料の投入量を、市販触媒に対して15~30%にした点である。
【0061】
[触媒層およびGDLの接触角評価]
比較例1及び実施例1~3におけるカソード触媒層13C,31及びカソードガス拡散層14Cの濡れ性評価として、水の接触角を測定した。カソードガス拡散層14Cについては、カソード触媒層13C,31に接する面の接触角(GDL接触角)を、所定量の水滴を滴下後10秒以内の接触角を測定した。カソード触媒層13C,31については、カソードガス拡散層14Cに接する面の接触角(触媒層接触角)を、所定量の水滴を滴下後10秒以内の接触角を測定した。
【0062】
[評価用の燃料電池セルの発電評価条件]
実施形態で説明した燃料電池セル1を用いて発電評価を行った。ここで発電評価は、セル温度80℃、カソード側及びアノード側の露点温度65℃、酸素利用率及び水素利用率50~70%、電流密度0.2A/cm2の条件で発電させたときの電圧を測定した。また、カソード触媒層13C及びアノード触媒層13Aは、面積が36cm2となるように作成した。なお、家庭用燃料電池で使用する電流密度を想定して、電流密度を0.2A/cm2に設定した。本実施形態において、当該電流密度に限定されるものではない。
【0063】
また、耐久性試験は、1サイクルの操作の繰り返しによって行った。ここで、1サイクルの操作は、酸素ガス及び水素ガスを供給し、電流密度0.2A/cm2で一定時間発電を継続し、その後ガスの供給を停止することで発電を停止させ一定時間放置する操作とした。2000サイクル操作後、電流密度が0.2A/cm2における発電電圧を測定した。このときの発電電圧を耐久後の発電電圧とした。電圧変化量は、初期の発電電圧(1サイクル目の発電電圧)と耐久後の発電電圧との差とした。具体的には、電圧変化量は、耐久後の発電電圧から初期の発電電圧を引いた値とした。
【0064】
図4に示すように、初期の発電電圧が770mV以上のものを◎、760mV以上770mV未満のものを○と表示した。耐久性において、耐久試験による電圧変化率が98%以上のものを◎、電圧変化率が97%以上98%未満のものを○、電圧変化率が97%未満のものを×とした。
【0065】
[結果]
比較例1と実施例1とを比較すると、触媒の撥水処理により、実施例1の方が、触媒層接触角が高くなっていることが分かる。この結果、初期の発電電圧は6mV向上し、耐久試験による電圧変化率(電圧変化量)も低減する傾向が得られた。これは、触媒の撥水処理による効果が得られたものと考えられる。
【0066】
ここで、発電のON/OFF操作による耐久試験後において電極の金属粒子の大きさを観察すると、比較例1と実施例1とで顕著な差が確認された。
【0067】
比較例1では、カソード触媒層13Cの厚み方向において、電解質膜11側の触媒粒子112の粒子径が大きくカソードガス拡散層14C側の触媒粒子112の粒子径が小さい関係であった。一方、実施例1では、カソード触媒層13Cの厚み方向において、電解質膜11側の触媒粒子112の粒子径が小さくカソードガス拡散層14C側の触媒粒子112の粒子径が大きい関係であることを発見した。具体的には、初期段階の触媒粒子112の平均粒子径が1.5nmであったのに対し、比較例1では、カソード触媒層13Cの厚み方向において、電解質膜11側の触媒粒子112の平均粒子径は4.1nm、カソードガス拡散層14C側の触媒粒子112の平均粒子径は3.6nmであった。実施例1では、電解質膜11側の触媒粒子112の平均粒子径は3.0nm、カソードガス拡散層14C側の触媒粒子112の平均粒子径は3.5nmであった。
【0068】
当該現象のメカニズムについて、次のように考えられる。耐久試験のON/OFF操作によって、発電時において、酸化性ガスである酸素がカソードガス拡散層14Cを介してカソード触媒層31へ供給され発電に消費される。ここで、一旦発電を停止させると、カソード触媒層31内の水分が減少し、カソード触媒層31が乾燥する。このため、発電を再開した場合、カソードガス拡散層14Cを介して加湿されたガスがカソード触媒層31に供給される。この時、触媒層接触角が高い、つまりカソード触媒層31の水の濡れ性が低いと、ガスが電解質膜11側へ供給されにくく、そのため発電がカソード触媒層31においてカソードガス拡散層14C側で発生しているものと考えられる。すなわち、撥水処理を行うことで、ON/OFF操作試験の発電負荷が、カソード触媒層31のカソードガス拡散層14C側に集中し、当該部分の白金の溶出が盛んになり、触媒粒子112の粒子径の変化に現れたものと考えられる。
【0069】
つまり、触媒の撥水処理をしない場合は、発電負荷ポイントが電解質膜11側に存在するため、溶出したPtイオンが電解質膜11側へ拡散しやすいと推測される。一方、触媒の撥水処理をした場合は、発電負荷ポイントがカソードガス拡散層14C側に存在するため、溶出したPtイオンの電解質膜11側への拡散が起こりにくくなったものと推測される。
【0070】
次に実施例1と実施例2を比較すると、初期電圧は若干低下するものの、耐久試験による電圧変化量は減少している。これは、カソード触媒層13Cを2層構造にしてカソードガス拡散層14C側の触媒層(第1の触媒層17a)の触媒粒子112(金属粒子)をあらかじめ大きくすることで、粒子の安定性が向上し、上記メカニズムで発生している白金の溶出を抑えることができたと考えられる。その結果、耐久試験による電圧変化量を抑えることができた。
【0071】
実施例3では、実施例2と比較して初期電圧が低下し、耐久試験による電圧の変化量も増加している。このことから、市販触媒に対するフッ素系高分子の添加割合は、5~15%がより好ましいことが分かった。
【0072】
なお、実施例1~3において、GDL接触角は触媒層接触角より大きい。これにより、カソード触媒層13Cで発生した水分が、すばやくカソードガス拡散層14Cを介して除去されるため、カソード触媒層13Cに水分が滞留することを抑制することができる。このため、カソード触媒層13Cへの水分の滞留によって引き起こされるPtの溶出を抑制することができる。
【0073】
触媒層接触角がGDL接触角よりも小さい場合に比べ、触媒層接触角がGDL接触角よりも大きい場合、初期発電量が低下し、耐久試験による電圧変化量も増加する傾向が得られた。触媒層接触角がGDL接触角よりも大きい場合、カソード触媒層13Cで発生した水分が、素早くカソードガス拡散層14Cを介して除去されにくくなる。このため、GDL接触角が触媒層接触角よりも大きい(触媒層接触角がGDL接触角よりも小さい)ことが好ましい。すなわち、触媒層接触角が80°~120°の場合、GDL接触角は、120°以上が好ましい。
【0074】
上記内容は、カソード触媒層13Cの厚み方向における供給ガスとのバランスが重要である。例えば、カソード触媒層13Cの厚みを所定の範囲に設定することでより好ましい上記効果得ることができる。
【0075】
例えば、カソード触媒層13Cの厚み(第1の触媒層17a及び第2の触媒層17bの合計の厚み)が3μm以上の場合、厚み方向のガス供給状態に差を得やすくすることができる。また、カソード触媒層13Cの厚み(第1の触媒層17a及び第2の触媒層17bの合計の厚み)が30μm以下の場合、触媒層に使用する触媒量を少なくすることができるため、コスト低減を図ることができる。このため、カソード触媒層13Cの厚みは3μm以上30μm以下が望ましい。
【0076】
さらに、供給されるガスの加湿度が低いほど、上述した効果が得られやすい。例えば、燃料電池の発電セル内における相対湿度は80%以下の条件が、本発明の効果が得られやすい。望ましくは70%以下の方が、本発明の効果が得られやすい。また加湿度が低すぎると燃料電池として発電できないため、例えば相対湿度5%以上の条件で発電することが望ましい。この相対湿度5~80%の領域は、例えばフォークリフト、船舶等の移動体向け燃料電池における効果が期待できる。
【0077】
本実施形態に係る燃料電池セル1は、電解質膜11と、カソード触媒層13Cと、カソードガス拡散層14Cと、アノード触媒層13Aと、アノードガス拡散層14Aとを備える。カソード触媒層13Cは、電解質膜11の第1の主面側に積層される。カソードガス拡散層14Cは、カソード触媒層13Cに積層される。アノード触媒層13Aは、電解質膜11の第2の主面側に積層される。アノードガス拡散層14Aは、アノード触媒層13Aに積層される。カソード触媒層13Cは、触媒機能を有する触媒粒子112が担体111に担持されたカソード触媒を含む。カソード触媒層13Cは、表面の少なくとも一部において撥水性高分子材料を含む。
【0078】
この構成によれば、カソード触媒層13Cは撥水性を有するため、カソード触媒層13Cに水分が滞留することを抑制することができる。このため、触媒機能を有する触媒粒子112(例えばPt等)が電解質膜へ溶出することを低減することができる。
【0079】
また、カソード触媒層13Cは、第1の触媒層17aと、第1の触媒層17aよりも電解質膜11側に位置する第2の触媒層17bとを含む。第1の触媒層17aに含まれるカソード触媒110の触媒粒子112の粒子径が、第2の触媒層17bに含まれるカソード触媒の触媒粒子112の粒子径よりも大きい。
【0080】
この構成によれば、第1の触媒層17aに含まれるカソード触媒110の触媒粒子112の粒子径を予め大きくすることで、粒子の安定性が向上するため、触媒機能を有する触媒粒子112(例えばPt等)が電解質膜11へ溶出することを低減することができる。
【0081】
また、カソードガス拡散層14Cにおいてカソード触媒層13Cに接する面での水の接触角が、120度以上である。
【0082】
この構成によれば、触媒機能を有する触媒粒子112が電解質膜11へ溶出することをより低減することができる。
【0083】
また、カソード触媒層13Cにおいてカソードガス拡散層14Cに接する面での水の接触角が、0度以上120度以下である。
【0084】
この構成によれば、触媒機能を有する触媒粒子112が電解質膜11へ溶出することをより低減することができる。
【0085】
また、カソードガス拡散層14Cにおいてカソード触媒層13Cに接する面での水の接触角が、カソード触媒層13Cにおいてカソードガス拡散層14Cに接する面での水の接触角よりも大きい。
【0086】
この構成によれば、GDL接触角が触媒層接触角よりも大きい場合、カソード触媒層13Cで発生した水分を、素早くカソードガス拡散層14Cを介して除去することができる。このため、触媒機能を有する触媒粒子112が電解質膜11へ溶出することをより低減することができる。
【0087】
また、カソード触媒層13Cの厚みが3μm以上30μm以下である。
【0088】
この構成によれば、触媒機能を有する触媒粒子112が電解質膜11へ溶出することをより低減することができる。また、カソード触媒層13Cの製造コストを抑制することができる。
【0089】
また、発電駆動条件が、相対湿度5%以上70%以下である。
【0090】
これにより、触媒機能を有する触媒粒子112が電解質膜11へ溶出することをより低減することができる。
【0091】
また、本実施形態に係る燃料電池によれば、燃料電池セル1を複数個含む。
【0092】
これにより、燃料電池セル1を複数個含む燃料電池において、触媒機能を有する触媒粒子112が電解質膜11へ溶出することをより低減することができる。
【0093】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。前記実施形態では、燃料ガス流路21Aをアノードセパレータ20Aに設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、燃料ガス流路21Aは、アノードガス拡散層14Aに設けてもよい。この場合、アノードセパレータ20Aは平板状であってもよい。
【0094】
また、前記実施形態では、酸化剤ガス流路21Cをカソードセパレータ20Cに設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、酸化剤ガス流路21Cは、カソードガス拡散層14Cに設けてもよい。この場合、カソードセパレータ20Cは平板状であってもよい。
【0095】
また、アノードセパレータ20A及びカソードセパレータ20Cに代えて、アノードセパレータ20Aとカソードセパレータ20Cとの間に、電解質膜11、アノード触媒層13A、アノードガス拡散層14A、カソード触媒層13C及びカソードガス拡散層14Cの側面を覆うように、セパレータを配置してもよい。これにより、電解質膜11の劣化を抑制し、MEA10のハンドリング性、量産時の作業性を向上させることができる。
【0096】
また、本発明は、例えば、燃料電池セル1を複数個積層して形成された燃料電池であってもよい。互いに積層される燃料電池セル1は、例えば、ボルト等の締結部材(図示せず)により所定の締結圧にて加圧締結されている。これにより、燃料ガス及び酸化剤ガスが外部にリークすることを防止することができ、さらに燃料電池における接触抵抗を低減することができる。
【0097】
また、第1の触媒層17aに含まれるカソード触媒110の触媒粒子112の粒子径は、第2の触媒層17bに含まれるカソード触媒110の触媒粒子112の粒子径よりも大きいとしたが、カソード触媒110が表面の少なくとも一部において撥水性高分子材料を含んでいればこれに限定されない。
【0098】
また、第1の触媒層17aに含まれるカソード触媒110の触媒粒子112の平均粒子径が、第2の触媒層17bに含まれるカソード触媒110の触媒粒子112の平均粒子径よりも大きくなるように、カソード触媒110が形成されていてもよい。これによっても、粒子の安定性を向上させて、触媒粒子112が電解質膜11へ溶出することを低減することができる。
【0099】
また、触媒粒子112は、触媒機能を有する粒子であれば、金属粒子に限定されない。また、担体111は、触媒粒子112を担持することができれば、炭素粒子に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係る燃料電池セルは、例えば、発電のON/OFF操作を繰り返す場合に有用である。
【符号の説明】
【0101】
1 燃料電池セル
11 電解質膜
12A アノード電極
12C カソード電極
13A アノード触媒層
13C カソード触媒層
14A アノードガス拡散層
14C カソードガス拡散層
17a 第1の触媒層
17b 第2の触媒層
20A アノードセパレータ
20C カソードセパレータ
21A 燃料ガス流路
21C 酸化剤ガス流路
100 電解質膜
101 アノード触媒層
102 カソード触媒層
103 アノードガス拡散層
104 カソードガス拡散層
110 カソード触媒
111 担体
112 触媒粒子