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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/10 20200101AFI20231215BHJP
   H04N 13/307 20180101ALI20231215BHJP
   H04N 13/346 20180101ALI20231215BHJP
   H04N 13/302 20180101ALI20231215BHJP
【FI】
G02B30/10
H04N13/307
H04N13/346
H04N13/302
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021532700
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2020020068
(87)【国際公開番号】W WO2021010014
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019131147
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 滋雄
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 智
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 直樹
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-154181(JP,A)
【文献】国際公開第2019/001745(WO,A1)
【文献】特開2008-089985(JP,A)
【文献】特開2003-287712(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186735(WO,A1)
【文献】特開2013-007855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00 - 30/60
H04N 13/30 - 13/398
G03B 35/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外光の一部を反射し、前記外光の一部を透過するハーフミラーと、
前記ハーフミラーの外表面と反対側に配置され、複数の画素が二次元に配列されたディスプレイと、
前記ハーフミラーと前記ディスプレイとの間に配置され、複数の光学素子からなる光学素子アレイと、
前記ハーフミラーと前記ディスプレイとの間に配置され、前記外光の反射を抑止する外光反射抑止層と、
前記ディスプレイを駆動して前記光学素子アレイを介して前記ハーフミラーの外側に前記ディスプレイからの出射光を出射させる駆動部と、を備え、
前記光学素子アレイは、所定間隔に複数のピンホールが二次元に配列されたピンホールアレイにより構成される、
表示装置。
【請求項2】
外光の一部を反射し、前記外光の一部を透過するハーフミラーと、
前記ハーフミラーの外表面と反対側に配置され、複数の画素が二次元に配列されたディスプレイと、
前記ハーフミラーと前記ディスプレイとの間に配置され、複数の光学素子からなる光学素子アレイと、
前記ハーフミラーと前記ディスプレイとの間に配置され、前記外光の反射を抑止する外光反射抑止層と、
前記ディスプレイを駆動して前記光学素子アレイを介して前記ハーフミラーの外側に前記ディスプレイからの出射光を出射させる駆動部と、を備え、
前記光学素子アレイは、所定間隔に複数のマイクロレンズが二次元に配列されたマイクロレンズアレイにより構成される
示装置。
【請求項3】
前記ハーフミラーと前記ディスプレイとの間に配置され、観察者によるタッチ操作又は所定空間におけるホバー操作の操作位置を検知するタッチパネル、を備える、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記外光反射抑止層は、前記光学素子アレイの前記ハーフミラー側の面に配置され、前記ハーフミラーを透過した外光を吸収する黒色光吸収層により構成される、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記外光反射抑止層は、前記ハーフミラーを透過した外光の反射光の成分を遮断する乱反射抑止層により構成される、
請求項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記ディスプレイは、前記ハーフミラーによる鏡像に重畳して表示画像を再現する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記ディスプレイは、前記複数の画素のうち所定の画素位置の画素を点灯させて前記光学素子アレイを介して出射する光束の向きを制御し、表示対象の物体を表示画像により再現する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記ディスプレイは、観察者の視点において前記ハーフミラーの外表面の位置又は前記外表面より観察者側の空間において視認される表示画像を再現する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記ディスプレイは、前記表示画像として立体像を再現する、
請求項6に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハーフミラープレート、3D表示装置、及び3D表示装置に映像信号を供給する制御装置を備えるハーフミラーディスプレイシステムが開示されている。3D表示装置は、ハーフミラープレートの背面側に配置され、映像信号によって3D表示装置の表示面で視差を形成する左眼用の映像及び右眼用の映像を表示し、視差は、左眼用の映像及び右眼用の映像の合成映像が3D表示装置の表示面よりも背面側に知覚されるように設定されている。この構成により、鏡像と映像とが、違和感が抑制されつつ、同時に認識可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/186735号
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ハーフミラーによる鏡像とライトフィールドディスプレイによる画像とを重畳させ、両者の像を観察者において適切に観察可能に再現できる表示装置を提供することを目的とする。
【0005】
本開示に係る表示装置は、外光の一部を反射し、前記外光の一部を透過するハーフミラーと、前記ハーフミラーの外表面と反対側に配置され、複数の画素が二次元に配列されたディスプレイと、前記ハーフミラーと前記ディスプレイとの間に前記ディスプレイとの間に配置され、複数の光学素子からなる光学素子アレイと、前記ハーフミラーと前記ディスプレイとの間に配置され、前記外光の反射を抑止する外光反射抑止層と、前記ディスプレイを駆動して前記光学素子アレイを介して前記ハーフミラーの外側に前記ディスプレイからの出射光を出射させる駆動部と、を備え、前記光学素子アレイは、所定間隔に複数のピンホールが二次元に配列されたピンホールアレイにより構成される。
【0006】
本開示によれば、ハーフミラーによる鏡像とライトフィールドディスプレイによる画像とを重畳させ、両者の像を観察者において適切に観察可能に再現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1の第1構成例に係る表示装置の表示部の構成を模式的に示した図
図2】実施の形態1の第1構成例に係る表示装置の駆動部の構成を示すブロック図
図3】実施の形態1の第2構成例に係る表示装置の表示部の構成を模式的に示した図
図4】実施の形態1の第2構成例に係る表示装置の駆動部の構成を示すブロック図
図5】実施の形態1の表示装置における出射光束の一例を示す図
図6】実施の形態1の表示装置による立体像の再現の一例を示す図
図7】実施の形態1の表示装置による画像表示例を示す正面図
図8】実施の形態1の表示装置による画像表示例を示す斜視図
図9】従来例における鏡像及び表示画像の位置関係を模式的に示した図
図10】実施の形態1の表示装置における鏡像及び表示画像の位置関係を模式的に示した図
図11】実施の形態2の第1構成例に係る表示装置の表示部の構成を模式的に示した図
図12】実施の形態2の第1構成例における乱反射抑止層の構成及び作用を説明する図
図13】実施の形態2の第1構成例に係る表示装置の駆動部の構成を示すブロック図
図14】実施の形態2の第2構成例に係る表示装置の表示部の構成を模式的に示した図
図15】実施の形態2の第2構成例に係る表示装置の駆動部の構成を示すブロック図
図16】実施の形態2の第3構成例に係る表示装置の表示部の構成を模式的に示した図
図17】実施の形態2の第3構成例における乱反射抑止層の構成及び作用を説明する図
図18】実施の形態2の第3構成例に係る表示装置の駆動部の構成を示すブロック図
図19】実施の形態2の表示装置におけるディスプレイの各画素とマイクロレンズとの関係を示す斜視図
図20】実施の形態2の表示装置における出射光束の一例を示す図
図21】実施の形態2の表示装置による立体像の再現の一例を示す図
図22】実施の形態2の表示装置による画像表示例を示す図
図23】実施の形態2の表示装置による画像表示例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る構成を具体的に開示した各実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0009】
(本実施の形態の内容に至る経緯)
表示装置のディスプレイの前面にハーフミラーを設け、ディスプレイの表示画像とハーフミラーによる鏡像とを観察可能なミラーディスプレイ装置が提案されている。従来のミラーディスプレイ装置では、観察者から見て、ハーフミラーにより反射して見える鏡像の後方に、ディスプレイによる表示画像が位置することになる。このため、表示画像の輝度が高い場合、鏡像が表示画像に隠れて見えなくなる課題があった。
【0010】
また、ハーフミラーにおいて反射する外光の一部がディスプレイ側に透過し、表示装置内部で反射して再度ハーフミラーに戻って影響を与えることが起こり得る。この場合、ハーフミラーによる鏡像においてにじみ等のノイズが生じ、観察者にとって見づらい画像となる課題がある。
【0011】
また、ミラーディスプレイ装置において、タッチパネルを設け、表示画像として操作画像を表示して観察者からの操作入力を可能にした構成も考えられる。この場合、タッチパネルのタッチ操作位置と表示画像の位置とに前後差があるため、観察者が見る方向によって視差が生じ、操作性が悪化する課題が生じることになる。
【0012】
以下、ミラーディスプレイとライトフィールドディスプレイとを組み合わせて、ハーフミラーによる鏡像と、ライトフィールドディスプレイによる臨場感の高い立体像等の画像とを重畳させ、両者の像を観察者においてより鮮明に観察可能に再現する表示装置の一例について説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の第1構成例に係る表示装置の表示部の構成を模式的に示した図である。図1では、表示装置10の厚さ方向(出射光方向)の断面を模式的に示している。
【0014】
表示装置10は、外表面側(光が出射される側)から順に、ハーフミラー11、ピンホールフィルム12、ディスプレイ13を有して構成される。ミラー表示素子の一例としてのハーフミラー11は、ディスプレイ13側の面(図1の下面)に、半透明の反射膜16を有し、外光の一部を反射し、外光の一部を透過する。
【0015】
ディスプレイ13は、例えば有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、LED(Light Emission Diode)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、陰極線管などの自発光型の表示デバイスにより構成される。ディスプレイ13は、ハーフミラー11側の表示面(光出射面、図1の上面)において縦横の二次元に複数の画素が配列され、このマトリックス状の各画素を点灯、消灯することにより、画像を表示する。
【0016】
本実施の形態では、光学素子アレイの一例としてのピンホールフィルム12が設けられる。光学素子アレイは、ハーフミラー11とディスプレイ13との間において、ディスプレイ13の光出射面と平行に配置される。光学素子アレイには、ディスプレイ13の所定単位の画素に対応して、複数の光学素子が所定間隔毎に二次元に配列される。
【0017】
ピンホールフィルム12は、フィルム面において所定間隔毎に縦横の二次元に複数の光学素子としてピンホール121が配置形成されたピンホールアレイ122を有する。ピンホールフィルム12は、ディスプレイ13からの出射光のうち、ピンホールアレイ122の各ピンホール121を通過する出射光のみを透過する。ピンホールアレイ122は、ディスプレイ13の所定単位の画素毎に複数画素に対応して一つのピンホール121が設けられる。これらのディスプレイ13及びピンホールフィルム12により、ライトフィールドディスプレイ15が構成される。
【0018】
ハーフミラー11とディスプレイ13との間、図示例ではピンホールフィルム12のハーフミラー11側の面(図1の上面)に、外光の反射を抑止する外光反射抑止層として、ハーフミラー11を透過した外光を吸収する黒色光吸収層17が設けられる。黒色光吸収層17は、ピンホールフィルム12の表面に入射する外光を吸収し、ピンホールフィルム12において外光の反射を抑止する機能を有する。
【0019】
図2は、実施の形態1の第1構成例に係る表示装置の駆動部の構成を示すブロック図である。
【0020】
表示装置10のディスプレイ13には、駆動部の一例として、ディスプレイ駆動回路60が接続され、ディスプレイ駆動回路60が制御装置90と接続される。制御装置90は、外部からの外部信号、或いは制御装置90自体により出力する表示制御信号に基づき、ディスプレイ駆動回路60の駆動制御を行う。ディスプレイ駆動回路60は、制御装置90からの表示制御信号に基づいてディスプレイ13に駆動信号を供給する。ディスプレイ13は、ディスプレイ駆動回路60からの駆動信号によって、ディスプレイの表示態様、例えば画像の表示/非表示、各画素の点灯/消灯、点灯態様などが制御される。
【0021】
図3は、実施の形態1の第2構成例に係る表示装置の表示部の構成を模式的に示した図である。図3では、表示装置20の厚さ方向(出射光方向)の断面を模式的に示している。第2構成例は、第1構成例にタッチパネル14を追加して設けた例であり、ここでは第1構成例と異なる構成要素を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0022】
表示装置20は、外表面側(光が出射される側)から順に、ハーフミラー11、タッチパネル14、ピンホールフィルム12、ディスプレイ13を有して構成される。タッチパネル14は、例えば静電容量式、抵抗膜式などのタッチパネルデバイス、或いは赤外線により操作位置を検知する光学式のタッチパネルデバイスにより構成される。タッチパネル14は、接触型(タッチ操作型)又は非接触型(ホバー操作型)のいずれのタッチパネルデバイスを用いてもよい。タッチパネル14はハーフミラー11とピンホールフィルム12の間に設けられているが、センシングが可能であればハーフミラー11の観察者側表面、ハーフミラー11の反射膜16とガラスの間、ピンホールフィルム12と黒色光吸収層17の間、ピンホールフィルム12とディスプレイ13の間、ディスプレイ13と一体の構造(インセル方式)、あるいはディスプレイ13の観察者と逆側でもよい。タッチパネル14は、ハーフミラー11の外表面のタッチ操作、又は外表面より観察者側の所定空間におけるホバー操作の操作位置を検知する。
【0023】
図4は、実施の形態1の第2構成例に係る表示装置の駆動部の構成を示すブロック図である。
【0024】
表示装置20のディスプレイ13には、駆動部の一例として、ディスプレイ駆動回路60が接続され、タッチパネル14にはタッチパネル駆動回路70が接続され、タッチパネル駆動回路70及びディスプレイ駆動回路60が制御装置90と接続される。制御装置90は、タッチパネル駆動回路70からの操作信号、又は外部からの外部信号、或いは制御装置90自体により出力する表示制御信号に基づき、ディスプレイ駆動回路60の駆動制御を行う。ディスプレイ駆動回路60は、制御装置90からの表示制御信号に基づいてディスプレイ13に駆動信号を供給する。ディスプレイ13は、観察者等のユーザによるタッチパネル14の操作入力等に基づき、ディスプレイ駆動回路60からの駆動信号によって、ディスプレイの表示態様、例えば画像の表示/非表示、各画素の点灯/消灯、点灯態様などが制御される。ディスプレイ13の画像を消してハーフミラー11のミラーのみに切り替える場合は、ディスプレイ駆動回路60によりディスプレイ13を消灯させる。
【0025】
次に、実施の形態1の表示装置10、20におけるライトフィールドディスプレイ15の作用、すなわちライトフィールドディスプレイによる立体像等の画像の表示について説明する。
【0026】
図5は、実施の形態1の表示装置における出射光束の一例を示す図である。図5では、所定位置の画素の点灯による出射光束の方向について説明する。
【0027】
表示装置10、20において、ディスプレイ13の複数の画素131とピンホールフィルム12のピンホール121とは、所定距離を隔てて配置される。任意の画素131を点灯した場合、画素の幅とピンホールの幅とに応じて少し拡散する光束がハーフミラー11側に出射され、所定方向に向かう光束となって観察者側の空間に照射される。
【0028】
このとき、図5において、画素Cから照射された光束135Cはピンホールを通過して図5の左斜め上方向に出射され、画素Dから照射された光束135Dはピンホールを通過して図5の右斜め上方向に出射される。このように、画素とピンホールとの位置関係によって出射光束の方向が決まるため、所定位置の画素を点灯させることによって、出射光束の方向を制御できる。なお、図5ではディスプレイ13の画素131の配列を一次元で示しているが、紙面と垂直な方向にも同様に配列され、画素131は二次元に配列されている。このため、ディスプレイ13及びピンホールフィルム12によるライトフィールドディスプレイ15は、ピンホールフィルム12の表面から半球の全方向において任意の方向に、光束の出射方向を制御して照射可能である。
【0029】
図6は、実施の形態1の表示装置による立体像の再現の一例を示す図である。図6では、複数位置の画素の点灯による立体像の再現について説明する。
【0030】
表示装置10、20において、所定位置の複数の画素を点灯させることにより、複数の出射光束の交点において像が再現される。図6において、複数の画素C1,C2,C3からそれぞれピンホールを通して所定方向に照射された光束135C1,135C2,135C3が交点Cで交わり、この交点Cより光を発する像が形成される。また、複数の画素D1,D2,D3からそれぞれピンホールを通して所定方向に照射された光束135D1,135D2,135D3が交点Dで交わり、この交点Dより光を発する像が形成される。このように、所定位置の複数の画素を点灯させ、その他の画素を消灯させることにより、点灯させる画素位置によって奥行きを持った立体像を再現できる。なお、図5の例と同様、画素131は二次元に配列されているため、ディスプレイ13及びピンホールフィルム12によるライトフィールドディスプレイ15は、ピンホールフィルム12の表面から半球の全方向において任意の位置に立体的な映像を再現可能である。
【0031】
例えば、ある物体の立体像をライトフィールドディスプレイ15によって再現する場合を想定する。再現対象の物体から発せられる光束(具体的には、物体を透過するベクトル波または物体で反射されるベクトル波)を、カメラ等のセンサにより検出し、画像データとして記憶する。そして、記憶した光束をセンサとは逆方向に追跡し、物体からディスプレイ13に向かう方向に、ピンホールアレイ122を通ってディスプレイ面に入射した際の輝度分布及び波長分布を算出する。この輝度分布及び波長分布に基づいてディスプレイ13における各画素の点灯/消灯を決定し、表示画像を再現するための元画像の表示データを生成して記憶する。表示画像を再現する際には、元画像の表示データに基づいてディスプレイ駆動回路60から駆動信号を供給し、ディスプレイ13の所定位置の画素を点灯させる。これにより、ディスプレイ13からピンホールアレイ122を通って所定方向に出射する光束が再現され、観察者において対象の物体の立体像として見える。
【0032】
図7は、実施の形態1の表示装置による画像表示例を示す正面図である。図8は、実施の形態1の表示装置による画像表示例を示す斜視図である。図7及び図8では、ハーフミラー11による鏡像と、ライトフィールドディスプレイ15の表示画像とを重畳して再現した例を示している。
【0033】
表示装置10、20のハーフミラー11の前に観察者であるユーザが位置すると、ユーザの鏡像111がハーフミラー11に映って表示され、ユーザに視認される。また、表示装置10、20において、ディスプレイ13の所定の画素を点灯し、ディスプレイ13及びピンホールフィルム12によるライトフィールドディスプレイ15によって、表示画像151を再現して表示する。図示例では、表示画像151としてテンキーのキーボードの画像を再現した表示例が示されている。本実施の形態では、ハーフミラーの鏡像111とライトフィールドディスプレイの表示画像151とが重畳して表示される。このとき、観察者の視点105から見た場合、鏡像111がハーフミラー11及びライトフィールドディスプレイ15がある面より奥側に位置し、表示画像151がハーフミラー11の表面より前側に突出して位置するように、二つの映像が重畳した状態で再現される。
【0034】
図9は、従来例における鏡像及び表示画像の位置関係を模式的に示した図である。図10は、実施の形態1の表示装置における鏡像及び表示画像の位置関係を模式的に示した図である。ここでは、本実施の形態の作用を従来例と比較して説明する。
【0035】
図9に示す従来例のように、ディスプレイ1013をハーフミラー1011の背面に配置した従来例の場合には、ディスプレイ1013を点灯表示することにより、表示画像132がハーフミラー1011の背面側のディスプレイ表示面に表示される。図9において、ディスプレイ1013の白色部分は点灯画素、黒色部分は消灯画素(非点灯画素)をそれぞれ表している。また、ハーフミラー1011によって被写体102の像が反射し、鏡像が映される。観察者の視点105から見た場合、表示画像132はハーフミラー1011の奥側に位置するように視認される。この場合、点灯表示した表示画像132の輝度が高いと、表示画像132の視線上に当たる位置の鏡像112が表示画像132に隠れてしまい、観察者において鏡像112が見えなくなる。
【0036】
一方、図10に示す本実施の形態では、ディスプレイ13の所定画素を点灯することにより、ライトフィールドディスプレイ15による表示画像152がハーフミラー11の表面より前側の空間に再現される。図10において、ディスプレイ13の白色部分は点灯画素、黒色部分は消灯画素(非点灯画素)をそれぞれ表している。また、ハーフミラー11によって被写体102の像が反射し、鏡像112が映される。観察者の視点105から見た場合、表示画像152はハーフミラー11より前側に位置するように視認される。この場合、観察者において、ピンホールフィルム12の異なる複数のピンホールを通して形成された表示画像152と、ピンホール部以外の大半の領域を占める黒色光吸収層17上のハーフミラー11で反射された鏡像112とが重畳されて見える。
【0037】
本実施の形態では、ハーフミラーによるミラーディスプレイとディスプレイ及びピンホールフィルムによるライトフィールドディスプレイとを重ねて配置し、表示装置を構成する。これにより、ハーフミラーによる鏡像と、ライトフィールドディスプレイによる立体像等の表示画像とを重畳させて映出でき、観察者において双方の像を明瞭に視認できるように再現することができる。ピンホールフィルムに外光を吸収する黒色光吸収層を設けることによって、ハーフミラーの透過側における外光の乱反射を抑止でき、黒色面をバックに鏡像が高コントラストで明確に映るようにできるため、観察者においてより鮮明に鏡像を視認することが可能になる。
【0038】
(実施の形態2)
図11は、実施の形態2の第1構成例に係る表示装置の表示部の構成を模式的に示した図である。図11では、表示装置30の厚さ方向(出射光方向)の断面を模式的に示している。実施の形態2は、ライトフィールドディスプレイにおける光学素子アレイとして、実施の形態1のピンホールフィルムに代えてマイクロレンズアレイを設けた例である。ここでは実施の形態1と異なる構成要素を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0039】
表示装置30は、外表面側(光が出射される側)から順に、ハーフミラー11、マイクロレンズアレイ32、ディスプレイ33を有して構成される。ハーフミラー11の反射膜16よりもディスプレイ33側(図11の下面)には、外光の反射を抑止する外光反射抑止層として乱反射抑止層37が設けられる。
【0040】
光学素子アレイの一例としてのマイクロレンズアレイ32は、縦横の二次元に所定間隔毎に複数の光学素子としてマイクロレンズ321が配置形成される。マイクロレンズアレイ32は、ディスプレイ33の所定単位の画素毎に複数画素に対応して一つのマイクロレンズ321が設けられる。それぞれのマイクロレンズ321の焦点位置又はその近傍の範囲に、ディスプレイ33の画素が設けられる。これらのディスプレイ33及びマイクロレンズアレイ32により、ライトフィールドディスプレイ35が構成される。
【0041】
図12は、実施の形態2の第1構成例における乱反射抑止層37の構成及び作用を説明する図である。乱反射抑止層37は、例えば、偏光板371と、偏光板371の吸収軸と45°の角度に遅相軸を設けた1/4波長板372とを積層して構成され、ハーフミラー11を透過した外光の反射光の成分を遮断する。乱反射抑止層37は、例えば誘電体多層膜により構成される。
【0042】
図12の(B)に示すように、この乱反射抑止層37を設けたライトフィールドディスプレイ35において、外光301は、偏光板371を通して吸収軸と90°をなす直線偏光のみ透過する。透過した直線偏光は、偏光板371の吸収軸と45°の角度に遅相軸を設けた1/4波長板372を通過すると円偏光になる。円偏光は、乱反射抑止層37よりディスプレイ33側に位置する、マイクロレンズアレイ32の表面、或いはディスプレイ33の表面の反射界面38で反射すると、円偏光の向きが逆転する。そして、逆転した円偏光が再び1/4波長板372を通過すると、偏光板371の吸収軸と平行になり透過しないため、外光301の反射を抑止できる。
【0043】
一方、図12の(B)に示すように、ディスプレイ33の画素からの出射光302は、1/4波長板372を通過し、偏光板371の吸収軸と90°をなす直線偏光が透過し、外部へ出射する。
【0044】
図13は、実施の形態2の第1構成例に係る表示装置の駆動部の構成を示すブロック図である。
【0045】
表示装置30のディスプレイ33には、ディスプレイ駆動回路60が接続され、ディスプレイ駆動回路60が制御装置90と接続される。制御装置90は、外部からの外部信号、或いは制御装置90自体により出力する表示制御信号に基づき、ディスプレイ駆動回路60の駆動制御を行う。ディスプレイ駆動回路60は、制御装置90からの表示制御信号に基づいてディスプレイ33に駆動信号を供給する。ディスプレイ33は、ディスプレイ駆動回路60からの駆動信号によって、ディスプレイの表示態様、例えば画像の表示/非表示、各画素の点灯/消灯、点灯態様などが制御される。
【0046】
図14は、実施の形態2の第2構成例に係る表示装置の表示部の構成を模式的に示した図である。図14では、表示装置40の厚さ方向(出射光方向)の断面を模式的に示している。第2構成例は、第1構成例にタッチパネル34を追加して設けた例であり、ここでは第1構成例と異なる構成要素を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0047】
表示装置40は、外表面側(光が出射される側)から順に、ハーフミラー11、タッチパネル34、マイクロレンズアレイ32、ディスプレイ33を有して構成される。タッチパネル34は、例えば静電容量式のタッチパネルデバイスなどであり、接触型(タッチ操作型)又は非接触型(ホバー操作型)のいずれのタッチパネルデバイスを用いてもよい。タッチパネル34は、ハーフミラー11の外表面のタッチ操作、又は外表面より観察者側の所定空間におけるホバー操作の操作位置を検知する。
【0048】
なお、タッチパネル34のディスプレイ33側の面に乱反射抑止層37を設けてもよい。
【0049】
図15は、実施の形態2の第2構成例に係る表示装置の駆動部の構成を示すブロック図である。
【0050】
表示装置40のディスプレイ33には、ディスプレイ駆動回路60が接続され、タッチパネル34にはタッチパネル駆動回路70が接続され、タッチパネル駆動回路70及びディスプレイ駆動回路60が制御装置90と接続される。制御装置90は、タッチパネル駆動回路70からの操作信号、又は外部からの外部信号、或いは制御装置90自体により出力する表示制御信号に基づき、ディスプレイ駆動回路60の駆動制御を行う。ディスプレイ駆動回路60は、制御装置90からの表示制御信号に基づいてディスプレイ33に駆動信号を供給する。ディスプレイ33は、観察者等のユーザによるタッチパネル34の操作入力等に基づき、ディスプレイ駆動回路60からの駆動信号によって、ディスプレイの表示態様、例えば画像の表示/非表示、各画素の点灯/消灯、点灯態様などが制御される。
【0051】
図16は、実施の形態2の第3構成例に係る表示装置の表示部の構成を模式的に示した図である。図16では、表示装置50の厚さ方向(出射光方向)の断面を模式的に示している。第3構成例は、ライトフィールドディスプレイにおける表示デバイスとして、第2構成例のディスプレイ33に代えて液晶表示パネル53及びバックライト57を設けた例であり、ここでは第2構成例と異なる構成要素を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0052】
表示装置50は、外表面側(光が出射される側)から順に、ハーフミラー11、タッチパネル34、マイクロレンズアレイ32、液晶表示パネル53及びバックライト57を有して構成される。液晶表示パネル53及びバックライト57により、表示デバイスの一例である液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)を形成する。液晶ディスプレイは、液晶表示パネル53において各画素の液晶の偏光状態を変化させ、画素毎にバックライト57の出射光のうち所定の偏光を透過させることにより、画像を表示する。これらの液晶表示パネル53及びバックライト57、並びにマイクロレンズアレイ32により、ライトフィールドディスプレイ55が構成される。
【0053】
図17は、実施の形態2の第3構成例における外光反射抑止層としての乱反射抑止層37の構成及び作用を説明する図である。乱反射抑止層37は、例えば、偏光板371と、偏光板371の吸収軸と45°の角度に遅相軸を設けた1/4波長板372とを積層したものにより構成される。また、液晶表示パネル53は、双方の面にそれぞれ上部偏光板531、下部偏光板532を有する。1/4波長板372は、液晶表示パネル53の上部偏光板531の吸収軸とも45°の角度に遅相軸が設けられている。
【0054】
図17の(A)に示すように、この液晶ディスプレイを用いたライトフィールドディスプレイ55において、外光301は、偏光板371を通して吸収軸と90°をなす直線偏光のみ透過し、偏光板371の吸収軸と45°の角度に遅相軸を設けた1/4波長板372を通過して円偏光になる。円偏光は、マイクロレンズアレイ32の表面、或いは液晶表示パネル53の表面の反射界面38で反射すると、円偏光の向きが逆転する。そして、逆転した円偏光が再び1/4波長板372を通過すると、偏光板371の吸収軸と平行になり透過しないため、外光301の反射を抑止できる。
【0055】
一方、図17の(B)に示すように、液晶ディスプレイのバックライト57からの出射光303は、下部偏光板532、液晶表示パネル53、上部偏光板531を通過する。このとき、上部偏光板531を通過して直線偏光になった各画素の光が、1/4波長板372を通過して円偏光になり、円偏光のうちの偏光板371の吸収軸と90°をなす直線偏光が透過し、外部へ出射する。
【0056】
図18は、実施の形態2の第3構成例に係る表示装置の駆動部の構成を示すブロック図である。
【0057】
表示装置50の液晶表示パネル53には、駆動部の一例として、液晶ディスプレイ駆動回路65が接続され、バックライト57にはバックライト駆動回路80が接続され、タッチパネル34にはタッチパネル駆動回路70が接続される。また、タッチパネル駆動回路70、液晶ディスプレイ駆動回路65及びバックライト駆動回路80が制御装置90と接続される。制御装置90は、タッチパネル駆動回路70からの操作信号、又は外部からの外部信号、或いは制御装置90自体により出力する表示制御信号に基づき、液晶ディスプレイ駆動回路65及びバックライト駆動回路80の駆動制御を行う。液晶ディスプレイ駆動回路65は、制御装置90からの表示制御信号に基づいて液晶表示パネル53に駆動信号を供給する。バックライト駆動回路80は、制御装置90からの表示制御信号に基づいてバックライト57に駆動信号を供給する。
【0058】
液晶表示パネル53は、ユーザによるタッチパネル34の操作入力等に基づき、ディスプレイ駆動回路60からの駆動信号によって、液晶ディスプレイの表示態様、例えば画像の表示/非表示、各画素における光の透過状態、画像の表示態様などが制御される。バックライト57は、バックライト駆動回路80からの駆動信号によって点灯/消灯が制御される。液晶ディスプレイの画像を消してハーフミラー11のミラーのみに切り替える場合は、液晶ディスプレイ駆動回路65及びバックライト駆動回路80によって、液晶表示パネル53の遮断及びバックライト57の消灯を行う。或いは、バックライト駆動回路80によってバックライト57の消灯のみを行う。
【0059】
次に、実施の形態2の表示装置30、40におけるライトフィールドディスプレイ35の作用、すなわちライトフィールドディスプレイによる立体像等の画像の表示について説明する。なお、液晶ディスプレイを用いた表示装置50におけるライトフィールドディスプレイ55についても同様であるため、説明を省略する。
【0060】
図19は、実施の形態2の表示装置におけるディスプレイの各画素とマイクロレンズとの関係を示す斜視図である。ディスプレイ33の所定単位の複数の画素331とマイクロレンズアレイ32の一つのマイクロレンズ321とが対応して設けられる。図19では、ディスプレイ33の各画素331から出射し、マイクロレンズ321を通過する光束335を示している。光を発する画素331の位置から、マイクロレンズ321の中心を通る方向の光束335を示している。光を発する画素331の位置に応じて、マイクロレンズ321を通過する光束335の出射方向が決まることになる。ディスプレイ33からの出射光は、マイクロレンズアレイ32を通過し、画素とマイクロレンズの位置関係によって所定の方向に向かう光束となり、出射される。
【0061】
図20は、実施の形態2の表示装置における出射光束の一例を示す図である。図20では、所定位置の画素の点灯による出射光束の方向について説明する。
【0062】
表示装置30、40において、ディスプレイ33の複数の画素331とマイクロレンズアレイ32のマイクロレンズ321とは、所定距離を隔てて配置される。ディスプレイ33の画素331は、マイクロレンズ321の焦点位置325又はその近傍の範囲に配置される。マイクロレンズ321の焦点位置325に画素331を配置した場合、任意の画素131を点灯すると、マイクロレンズ321を通過し、マイクロレンズに対する画素位置に応じた方向に向かう平行光の光束となる。画素331の配置が焦点位置325から少し前後にずれている場合は、平行光よりも若干拡散又は収束した光束となる。そして、ハーフミラー11側に所定方向に向かう光束となって出射され、観察者側の空間に照射される。
【0063】
このとき、図20において、画素Aから照射された光束335Aはマイクロレンズを通過して図20の左斜め上方向に出射され、画素Bから照射された光束335Bはマイクロレンズを通過して図20の右斜め上方向に出射される。このように、画素とマイクロレンズとの位置関係によって出射光束の方向が決まるため、所定位置の画素を点灯させることによって、出射光束の方向を制御できる。なお、図20ではディスプレイ33の画素331の配列を一次元で示しているが、紙面と垂直な方向にも同様に配列され、画素331は二次元に配列されている。このため、ディスプレイ33及びマイクロレンズアレイ32によるライトフィールドディスプレイ35は、マイクロレンズアレイ32の表面から半球の全方向において任意の方向に、光束の出射方向を制御して照射可能である。
【0064】
図21は、実施の形態2の表示装置による立体像の再現の一例を示す図である。図21では、複数位置の画素の点灯による立体像の再現について説明する。
【0065】
表示装置30、40において、所定位置の複数の画素を点灯させることにより、複数の出射光束の交点において像が再現される。図21において、複数の画素A1,A2,A3からそれぞれマイクロレンズ321を通して所定方向に照射された光束335A1,335A2,335A3が交点Aで交わり、この交点Aより光を発する像が形成される。また、複数の画素B1,B2,B3からそれぞれマイクロレンズを通して所定方向に照射された光束335B1,335B2,335B3が交点Bで交わり、この交点Bより光を発する像が形成される。このように、所定位置の複数の画素を点灯させ、その他の画素を消灯させることにより、点灯させる画素位置によって奥行きを持った立体像を再現できる。なお、図20の例と同様、画素331は二次元に配列されているため、ディスプレイ33及びマイクロレンズアレイ32によるライトフィールドディスプレイ35は、マイクロレンズアレイ32の表面から半球の全方向において任意の位置に立体的な映像を再現可能である。
【0066】
図22及び図23は、実施の形態2の表示装置による画像表示例を示す図である。図22は、表示装置及びその表示画像の一例を示しており、(A)は表示画像を示す平面図、(B)は(A)の22B-22B断面、すなわち表示装置の厚さ方向(出射光方向)の断面を模式的に示した図である。図23は、図22の状態からユーザがタッチパネルを操作した際の表示画像の一例を示しており、(A)は表示画像を示す平面図、(B)は(A)の23B-23B断面を示した図である。
【0067】
表示装置40において、ディスプレイ33の所定の画素を点灯し、ディスプレイ33及びマイクロレンズアレイ32によるライトフィールドディスプレイ35によって、表示画像351を再現して表示する。図22の(A)では、表示画像351としてテンキーのキーボードの画像を再現した表示例が示されている。また、図22の(B)に示すように、表示画像351は、観察者から見て、ハーフミラー11の表面よりも前側(観察者側)の空間に飛び出した(浮き上がった)状態に見えるように再現される。
【0068】
図23の(A)及び(B)に示すように、観察者であるユーザが指で表示画像351として再現されたテンキーの任意のキー351aをタッチ操作すると、タッチパネル34によってタッチ操作が検出されて操作信号が制御装置90に入力される。このとき、制御装置90からディスプレイ駆動回路60に表示制御信号が送られてディスプレイ33の画素の点灯が制御され、表示画像351の表示態様が変化する。具体例として、図23の(B)に示すように、タッチ操作されたキー351aは、押下されて奥側に引っ込むように奥行き方向に位置が変化して再現される。このとき、観察者の視点においてハーフミラー11の外表面の位置又は外表面より観察者側の空間において視認されるように、テンキー等の表示画像を再現することにより、観察者によるタッチ操作の位置と表示画像との視差を無くすことができる。
【0069】
本実施の形態では、ハーフミラーによるミラーディスプレイとディスプレイ及びマイクロレンズアレイによるライトフィールドディスプレイとを重ねて配置し、表示装置を構成する。これにより、ハーフミラーによる鏡像と、ライトフィールドディスプレイによる立体像等の表示画像とを重畳させて映出でき、観察者において双方の像を明瞭に視認できるように再現することができる。また、表示装置にタッチパネルを設ける場合、タッチ操作のための操作部(操作キー等)の表示画像をライトフィールドディスプレイによってハーフミラーの外表面又は外表面より手前の位置に形成できるため、タッチパネルの操作位置と操作部の表示画像の位置とを一致させることが可能である。このため、タッチ操作位置と表示画像の視差を無くすことができ、操作性を向上できる。
【0070】
以上のように、本実施の形態の表示装置は、外光の一部を反射し、外光の一部を透過するハーフミラー11等のミラー表示素子を備える。また、表示装置は、ミラー表示素子の外表面と反対側に配置され、複数の画素が二次元に配列されたディスプレイ13と、ミラー表示素子とディスプレイ13との間にディスプレイ13の光出射面と平行に配置され、所定単位の画素に対応して複数のピンホール121等の光学素子が配列された光学素子アレイと、を備える。これらのディスプレイ及び光学素子アレイによりライトフィールドディスプレイ15が構成される。また、表示装置は、ミラー表示素子とディスプレイ13との間に配置され、外光の反射を抑止する黒色光吸収層17等の外光反射抑止層を備える。また、表示装置は、ディスプレイ13を駆動して所定の画素を点灯させる駆動部を備える。駆動部は、例えば、ディスプレイ13を駆動するディスプレイ駆動回路60と、ディスプレイ駆動回路60の駆動制御を行う制御装置90とを有する。上記構成において、外光反射抑止層によって表示装置における外光の反射が抑止され、ミラー表示素子により映出される鏡像とライトフィールドディスプレイによる表示画像とが互いに影響を受けることなく再現される。これにより、ハーフミラーによる鏡像とライトフィールドディスプレイによる画像とを重畳させ、両者の像を観察者において適切に観察可能に再現できる。
【0071】
また、本実施の形態の表示装置10において、光学素子アレイは、所定間隔に複数のピンホール121が二次元に配列されたピンホールアレイ122により構成される。ピンホールアレイ122を設けることにより、ディスプレイ13により点灯する画素位置に応じてピンホールアレイ122を通過して出射する光束の向きを制御でき、所定の方向に出射する光束を再現できる。ピンホールアレイによってライトフィールドディスプレイを構成する場合、ライトフィールドディスプレイからの出射光束はピンホールの微小な点のみから出射する。このため、ハーフミラーによる鏡像がライトフィールドディスプレイの表示画像の影響を受けることが抑止され、観察者において明瞭な鏡像を観察可能となる。
【0072】
また、本実施の形態の表示装置30において、光学素子アレイは、所定間隔に複数のマイクロレンズ321が二次元に配列されたマイクロレンズアレイ32により構成される。マイクロレンズアレイ32を設けることにより、ディスプレイ13により点灯する画素位置に応じてマイクロレンズアレイ32を介して集束されて出射する光束の向きを制御でき、所定の方向に出射する光束を再現できる。マイクロレンズアレイによってライトフィールドディスプレイを構成する場合、ライトフィールドディスプレイからの出射光束は、平行光束、若干収束する光束、若干拡散する光束など、マイクロレンズの焦点距離に対する配置によって調整可能である。このため、ライトフィールドディスプレイの出射光束を制御でき、所望の表示対象の物体を再現できる。
【0073】
また、本実施の形態の表示装置20、40は、ミラー表示素子とディスプレイ13、33との間に配置され、観察者によるタッチ操作又は所定空間におけるホバー操作の操作位置を検知するタッチパネル14、34を備える。表示装置にタッチパネル14、34を設けることにより、タッチパネルの操作のための表示画像をライトフィールドディスプレイにより再現可能である。この場合、ハーフミラーによる鏡像とライトフィールドディスプレイによる立体像等の表示画像とを組み合わせて、タッチパネル操作用の画像を再現でき、操作性の良好なタッチパネル及びディスプレイを実現できる。
【0074】
また、本実施の形態の表示装置において、外光反射抑止層は、ピンホールアレイ122のミラー表示素子側の面に配置され、ミラー表示素子を透過した外光を吸収する黒色光吸収層17により構成される。ピンホールアレイに外光を吸収する黒色光吸収層を設けることによって、ハーフミラーの透過側における外光の乱反射を抑止でき、黒色面をバックに鏡像が映るようにできるため、観察者においてより鮮明に鏡像を視認することが可能になる。
【0075】
また、本実施の形態の表示装置において、外光反射抑止層は、ミラー表示素子のマイクロレンズアレイ32側の面に配置され、ミラー表示素子を透過した外光の反射光の成分を遮断する乱反射抑止層37によって構成される。乱反射抑止層37は、例えば、偏光板、1/4波長板等を用いて構成し、外光がミラー表示素子を透過した後、ディスプレイ、マイクロレンズアレイ等で反射してミラー表示素子に戻る反射光の成分を遮断する。なお、タッチパネルを備える場合、外光反射抑止層は、タッチパネルのディスプレイ側の面に配置する構成であってもよい。これにより、ハーフミラーの透過側における外光の乱反射を抑止でき、ハーフミラーに映出される鏡像において不要な反射光の影響を抑制し、にじみ等のノイズを削減できるため、観察者においてより鮮明に鏡像を視認することが可能になる。
【0076】
また、本実施の形態の表示装置において、ディスプレイは、ミラー表示素子による鏡像に重畳して表示画像を再現する。これにより、観察者において双方の像を明瞭に視認可能となる。例えば、タッチパネル操作用の操作キー等の画像をディスプレイにより表示し、鏡像と組み合わせた操作画面を表現でき、ユーザにとって視認性及び操作性が良好な表示画像を実現できる。
【0077】
また、本実施の形態の表示装置において、ディスプレイは、複数の画素のうち所定の画素位置の画素を点灯させて光学素子アレイを介して出射する光束の向きを制御し、表示対象の物体を表示画像により再現する。これにより、表示対象の物体と同様に所定方向に発する光を再現でき、対象物体を模した実物に近い像を形成し、観察者に視認させることができる。
【0078】
また、本実施の形態の表示装置において、ディスプレイは、観察者の視点においてミラー表示素子の外表面の位置又は前記外表面より観察者側の空間において視認される表示画像を再現する。これにより、ミラー表示素子の外表面上に立体像等の表示画像を表示したり、ミラー表示素子よりも前方に飛び出した状態の画像を再現したりすることができ、観察者において適切に観察可能な臨場感の高い画像を実現できる。また、タッチパネルを備える場合、ミラー表示素子の外表面の位置に合わせてライトフィールドディスプレイによる表示画像を再現することにより、タッチパネルの操作位置と操作部の表示画像の位置とを一致させ、表示画像の視差を無くすことができるため、操作性の良好な画像を再現できる。
【0079】
また、本実施の形態の表示装置において、ライトフィールドディスプレイは、表示画像として立体像を再現する。これにより、観察者において臨場感の高い立体像を視認でき、表示装置による表示画像の表現力を向上できる。
【0080】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示は、ハーフミラーによる鏡像とライトフィールドディスプレイによる画像とを重畳させ、両者の像を観察者において適切に観察可能に再現できる表示装置等として有用である。
【符号の説明】
【0082】
10,20,30,40,50 表示装置
11 ハーフミラー
12 ピンホールフィルム
13,33 ディスプレイ
14,34 タッチパネル
15,35,55 ライトフィールドディスプレイ
16 反射膜
17 黒色光吸収層
32 マイクロレンズアレイ
37 乱反射抑止層
53 液晶表示パネル
57 バックライト
60 ディスプレイ駆動回路
65 液晶ディスプレイ駆動回路
70 タッチパネル駆動回路
80 バックライト駆動回路
90 制御装置
102 被写体
105 視点
111,112 鏡像
121 ピンホール
122 ピンホールアレイ
131,331,A,A1,A2,A3,B,B1,B2,B3,C,C1,C2,C3,D,D1,D2,D3 画素
135C,135C1,135C2,135C3,135D,135D1,135D2,135D3,335,335A,335A1,335A2,335A3,335B,335B1,335B2,335B3 光束
132,151,152,351 表示画像
301 外光
302,303 出射光
321 マイクロレンズ
371 偏光板
372 1/4波長板
531 上部偏光板
532 下部偏光板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23