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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】腐食解析システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20231215BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H04N7/18 K
G01N17/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020012696
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021118518
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】505466295
【氏名又は名称】株式会社イクシス
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 文敬
(72)【発明者】
【氏名】狩野 高志
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-151967(JP,A)
【文献】特開2019-057192(JP,A)
【文献】特開2018-180832(JP,A)
【文献】特開2001-266121(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033242(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を走行している車両から複数の金属柱が並立している領域を撮影した動画データを取得する取得手段と、
前記動画データに撮影されている前記金属柱を抽出し、抽出した前記金属柱のそれぞれを互いに識別可能に識別情報を割り振る識別手段と、
前記動画データに撮影されている前記金属柱の腐食部分を抽出し、抽出した前記腐食部分における腐食の程度を示す指標値を推算する解析手段と、
前記識別手段によって割り振られた前記識別情報と、前記解析手段によって推算された前記指標値と、を対応付けた情報をユーザが認識可能な形式にしたレポートを生成して出力する出力手段と、
を備え
前記動画データに含まれるフレーム群は、一のフレームに対して少なくとも二つ以上の前記金属柱が撮影されており、
前記識別手段は、
前記車両の進行方向の手前から奧方に向けて大きくなる序数を、前記識別情報として前記動画データに撮影されている前記金属柱のそれぞれに割り当て、
前記識別情報を割り当てた前記金属柱のそれぞれに対して、当該金属柱が撮影されている一のフレームを、前記動画データに含まれるフレーム群の中から取り出して対応付け、
前記出力手段は、複数の前記金属柱に対応付けたそれぞれの前記フレームを、前記序数が示す順番で並べた前記レポートを生成して出力する、
ことを特徴とする腐食解析システム。
【請求項2】
前記解析手段は、前記指標値に係る閾値を保有しており、抽出した前記腐食部分を有する前記金属柱を前記閾値に基づいて判別し、
前記出力手段は、前記閾値に基づいて判別された前記金属柱のそれぞれが有している前記腐食部分に係る前記指標値と、当該金属柱のそれぞれに割り振られている前記識別情報と、を対応付けた情報を他の前記金属柱に係る情報と区別可能に又は他の前記金属柱に係る情報を省いた形式にした前記レポートを生成して出力する、
請求項1に記載の腐食解析システム。
【請求項3】
前記解析手段は、前記金属柱の交換又は補修に係る費用の情報を保有しており、前記閾値に基づいて判別した前記金属柱の交換又は補修に係る費用を算出し、
前記出力手段は、前記閾値に基づいて判別された前記金属柱について算出された費用と、当該金属柱のそれぞれが有している前記腐食部分に係る前記指標値と、当該金属柱のそれぞれに割り振られている前記識別情報と、を対応付けた情報を含む前記レポートを生成して出力する、
請求項2に記載の腐食解析システム。
【請求項4】
記金属柱は、ガードレールの支柱、照明灯の支柱、信号機の支柱、及び道路標識の支柱のうち何れかである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の腐食解析システム。
【請求項5】
前記動画データは、前記車両の進行方向に対して斜めの撮影方向となるように前記車両に搭載された撮影手段によって撮影されたものであり、
前記動画データに含まれるフレームには、少なくとも二つ以上の前記金属柱が撮影されている、
請求項4に記載の腐食解析システム。
【請求項6】
前記指標値は、前記腐食部分の高さ又は面積のうち少なくとも一方を表す数値である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の腐食解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食解析システムに関し、特に、公共の場に設置された金属製の公共設備(ガードレール等)に生じる腐食について解析を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
公共設備は適切に管理されることによって、その役割や安全性を維持することができる。しかしながら、その管理にかかる負担は莫大であり、労働人口が減少している我が国において、その負担軽減は急務である。
【0003】
上記のような背景を鑑み、公共設備の管理に関する技術・手法が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、カメラを搭載した車両を走行させ、撮影した画像をサーバに転送し、サーバにおける画像解析によって道路周辺に設けられている設備の異常を検出するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-79303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている内容は具体性に欠けており、未だ改善の余地を残している。特に、異常を検出した設備について、その設備の管理者に対して報告する際に、どのように整理するのかについて具体的な検討がなされていない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みたものであり、ガードレール等の金属製の公共設備に生じた腐食について解析したレポートを出力する腐食解析システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、道路を走行している車両から複数の金属柱が並立している領域を撮影した動画データを取得する取得手段と、前記動画データに撮影されている前記金属柱を抽出し、抽出した前記金属柱のそれぞれを互いに識別可能に識別情報を割り振る識別手段と、前記動画データに撮影されている前記金属柱の腐食部分を抽出し、抽出した前記腐食部分における腐食の程度を示す指標値を推算する解析手段と、前記識別手段によって割り振られた前記識別情報と、前記解析手段によって推算された前記指標値と、を対応付けた情報をユーザが認識可能な形式にしたレポートを生成して出力する出力手段と、を備え、前記動画データに含まれるフレーム群は、一のフレームに対して少なくとも二つ以上の前記金属柱が撮影されており、前記識別手段は、前記車両の進行方向の手前から奧方に向けて大きくなる序数を、前記識別情報として前記動画データに撮影されている前記金属柱のそれぞれに割り当て、前記識別情報を割り当てた前記金属柱のそれぞれに対して、当該金属柱が撮影されている一のフレームを、前記動画データに含まれるフレーム群の中から取り出して対応付け、前記出力手段は、複数の前記金属柱に対応付けたそれぞれの前記フレームを、前記序数が示す順番で並べた前記レポートを生成して出力する、ことを特徴とする腐食解析システムが提供される。
【0008】
上記の発明によれば、動画データに撮影されている金属柱に対して割り振られた識別情報と、金属柱に生じた腐食部分に係る腐食の程度を示す指標値と、を対応付けた形式でレポートを出力するので、ユーザ(設備の管理者)が補修の必要な金属柱を容易に認識することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガードレール等の金属製の公共設備に生じた腐食について解析したレポートを出力する腐食解析システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施における撮影方法を示す図である。
図2図1に示す撮影方法によって撮影された画像の一具体例である。
図3】本実施形態に関するシステム構成図である。
図4】解析装置によって実行される処理手順を示すフローチャートである。
図5】カメラによって撮影された動画データに含まれるフレーム群の一部を示す図である。
図6】解析装置がキャプチャした静止画像を示す図である。
図7図6の静止画像に撮影されている支柱の腐食部分をマーキングしたものである。
図8】表示装置に表示するレポートに含まれる内容の一部を例示する図である。
図9】表示装置に表示するレポートに含まれる内容の一部を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0012】
<本発明の実施における撮影方法について>
図1は、本発明の実施における撮影方法を示す図である。図1は、高速道路の追越車線を走行している車両C1にカメラC2を搭載して、中央分離帯に設置されているガードレールCBを撮影している様子が示されている。なお、図1に示す破線は、カメラC2によって撮影されている範囲(画角)を示している。
【0013】
カメラC2は、車両C1の進行方向に対して斜めの撮影方向となるように車両C1に搭載されている。なお、図1ではカメラC2の撮影方向が、車両C1の進行方向に対して斜め前方であることを例示するが、車両C1の進行方向に対して斜め後方であってもよい。
これにより、車両C1の進行方向に対する垂直方向(真横方向)に撮影する場合と比べて、ガードレールCBの各支柱が車両C1の画角内に収まっている時間が長くなるので、ハイスピードカメラ等の特殊なカメラを用いずとも、ガードレールCBの各支柱を高精細に撮影することができる。言い換えれば、車両C1の進行方向に対する垂直方向に撮影した場合、高速道路では車両C1が高速で移動するので、撮影動画内においてガードレールCBの各支柱が高速で流れてしまい、後述する解析装置10の処理(腐食部分の解析)を十分な精度で実行することができない。
更に言えば、車両C1の画角内に収まる物理的な範囲が広がるので、動画データの1フレームに収まるガードレールCBの支柱の数を増やすことができる。なお、各フレームには、少なくとも二つ以上の支柱(図1の例では、支柱S1、支柱S2、及び支柱S3の三つ)が撮影されていることが好ましい。後述する解析装置10の処理(支柱のナンバリング)を正確に行う為である。
【0014】
車両C1による動画の撮影は、解析対象となる設備が設けられているエリアが当該動画に収まればよく、図1の例に即して言えば、ガードレールCBの一端から他端までが収まればよい。
なお、解析対象となる設備が複数に分離して設置されている場合などもあるため、隣接する設備どうしの間となるエリアが撮影した動画に含まれる(解析対象となる設備が撮影されていないフレームが存在する)ことを許容する。
【0015】
図2は、図1に示す撮影方法によって撮影された画像の一具体例である。
ここで図示されている支柱S2に生じている腐食部分S21のように、ガードレールの支柱は車両が走行する側の方が腐食しやすく、下方向から(地表側から)腐食しやすいことが、経験則として知られている。
なお、本実施形態において、腐食とは、サビが生じることの他に、劣化して欠損する(穴が空く)ことも含まれる。
【0016】
<本発明のシステム構成について>
次に、本発明のシステム構成について説明する。
図3は、本実施形態に関するシステム構成図である。
【0017】
本発明に係る腐食解析システム100は、解析装置10と、解析装置10と電気的に接続されるカメラC2及び表示装置20と、を備える。
図3に図示するカメラC2は、図1に図示した車両C1に搭載されているカメラC2と同一であり、ガードレールCBが撮影された動画データを、解析装置10に送信する。
解析装置10は、受信した動画データに対して解析処理を行い、その解析処理の結果としてレポートを表示装置20に出力する。
表示装置20は、解析装置10から入力したレポートを表示する。
【0018】
解析装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信IF14と、入出力IF15と、を備え、これらの構成は通信バスによって互いに電気的に接続される。
プロセッサ11は、ストレージ13に記憶されている種々のプログラムや各種データをメモリ12にロードし、ロードしたプログラムを実行する。
メモリ12は、プロセッサ11が実行するプログラムやプログラムの実行中に生成される各種データを格納するために用いられる。
ストレージ13は、種々のプログラムや各種データを記憶している。
通信IF14は、不図示の外部ネットワーク(例えばインターネット)と通信可能に構成される。
入出力IF15は、カメラC2及び表示装置20と接続される他に、不図示の外部装置(例えば印刷装置)と電気的に接続可能に構成される。
【0019】
図4は、解析装置10によって実行される処理手順を示すフローチャートである。なお、当該フローチャートは、本発明の実施について説明が必要な処理を列挙したに過ぎず、不図示の処理が解析装置10によって実行されることを許容する。
【0020】
解析装置10は、カメラC2から動画データを取得する(ステップS11)。
解析装置10は、ステップS11にて取得した動画データに撮影されているガードレールCBの支柱を抽出し、抽出した支柱のそれぞれを互いに識別可能とするようにナンバリングする(ステップS13)。
解析装置10は、ステップS11にて取得した動画データに撮影されているガードレールCBの支柱の腐食部分を抽出し、抽出した腐食部分における腐食の程度を推算する(ステップS15)。
解析装置10は、ステップS13にてナンバリングされた数値と、ステップS15にて推算された腐食の程度と、を対応付けた情報をユーザが認識可能な形式にしたレポートを生成し、そのレポートを表示装置20に出力する(ステップS17)。
【0021】
本実施形態では、ステップS11において取得する動画データの一例として、道路を走行している車両から道路を撮影して、その撮影領域に複数のガードレールの支柱が並立しているものを例示する。
しかしながら、本発明を実施する場合、動画データに撮影されている対象物は、ガードレールの支柱に限られず、複数が並列して設けられている柱状の金属製構造物であれば足りる。具体的には、照明灯の支柱、信号機の支柱、道路標識の支柱などを撮影対象としてもよい。
なお、本実施形態において、上記のような柱状の金属製構造物を、総じて「金属柱」と称する。
【0022】
本実施形態では、ステップS13において抽出したガードレールの支柱に対してナンバリングすることを例示したが、それぞれを識別可能とする識別情報を割り当てればよく、その識別情報は数値であることに限られない。
【0023】
ステップS15において推算する腐食の程度は、複数段階に区分してユーザに示すことができることが好ましく、定量的に示されるもの(数値化されるもの)であることがより好ましい。
なお、本実施形態において、解析装置10によって推算される腐食の程度を示すパラメータを、総じて「指標値」と称する。
詳しくは後述するが、ステップS15において抽出した腐食部分の高さ(単位はミリメートル)と、腐食部分の面積(単位は平方ミリメートル)と、が上述した指標値に相当するものとして、解析装置10によって推算される。ただし、本発明の実施において、指標値に該当するものは上記の例に限られず、複数段階に分けて区別できるもの、例えば、交換の程度の要否を示すもの(2段階で腐食の程度を示すもの)及び腐食の程度を3段階以上にランク付けして示すもの、などであってもよい。また、指標値に該当するものは、一つ(例えば、腐食部分の高さ及び腐食部分の面積のうち一方)であってもよい。
【0024】
ステップS17において出力するレポートの詳細については後述するが、その内容は一具体例であり、レポートの形式は上述した「識別情報」及び「指標値」の態様に応じて適宜変更可能である。
【0025】
<解析装置10による解析について>
次に、解析装置10による解析について説明する。
解析装置10によって解析する動画データは、ガードレールCBの支柱が撮影されているフレームであることが好ましく、必要なフレームのみを切り出せばよい。
この切り出しは、所定の画像解析処理によって自動的に行われてもよいし、ユーザが手動で行ってもよい(例えば、カメラC2が撮影した動画データのうち最初の支柱が撮影されているフレームから最後の支柱が撮影されているフレームまでを切り出す、などの処理が行われてもよい)。
【0026】
図5は、カメラC2によって撮影された動画データに含まれるフレーム群の一部(フレームF1~フレームF14)を示す図であり、ガードレールCBの支柱が撮影されているフレームのみを切り出したものである。
例えば、フレームF1には、1本目(最初)~3本目の支柱が撮影されており、1本目の支柱には腐食部分が生じている。
フレームF2には、2本目~4本目の支柱が撮影されており、4本目の支柱には腐食部分が生じている。
フレームF3には、4本目~6本目の支柱が撮影されており、4本目の支柱には腐食部分が生じている。
フレームF4には、6本目~8目の支柱が撮影されており、腐食部分が生じている支柱は撮影されていない。
フレームF5には、7本目~9目の支柱が撮影されており、腐食部分が生じている支柱は撮影されていない。
フレームF6には、8本目~10目の支柱が撮影されており、腐食部分が生じている支柱は撮影されていない。
フレームF7には、10本目~12目の支柱が撮影されており、11本目の支柱には腐食部分が生じている。
フレームF8には、11本目~13目の支柱が撮影されており、11本目の支柱には腐食部分が生じている。
フレームF9には、12本目~14目の支柱が撮影されており、腐食部分が生じている支柱は撮影されていない。
フレームF10には、14本目~16目の支柱が撮影されており、15本目の支柱には腐食部分が生じている。
フレームF11~F14については、腐食部分が生じている支柱は撮影されていないため、詳細な説明は省略する。
上述したように、全てのフレームについて複数の支柱が撮影されているものの、腐食部分が生じている支柱が撮影されているフレームはその一部である。
【0027】
続いて、解析装置10は、図5に示すようなフレーム群を含む動画データを読み込み、撮影されている各支柱にナンバリングをする(図2のステップS13の処理を行う)。
このとき、解析装置10は、ナンバリングした支柱が撮影されている静止画像を、動画データに含まれるフレームからキャプチャする。
【0028】
図6は、解析装置10がキャプチャした静止画像を示す図である。
1本目の支柱に対応する静止画像として、右側に1本目の支柱が撮影されているフレームF1がキャプチャされている。
2本目の支柱に対応する静止画像として、中央に2本目の支柱が撮影されているフレームF1がキャプチャされている。
3本目の支柱に対応する静止画像として、中央に3本目の支柱が撮影されているフレームF2がキャプチャされている。
4本目の支柱に対応する静止画像として、右側に4本目の支柱が撮影されているフレームF3がキャプチャされている。
上記のように、必ずしも支柱にナンバリングされている数と、フレームの序数と、が一致する必要はなく、1つのフレームが複数の支柱に対応する静止画像としてキャプチャされることを許容する。
また、支柱に対応する静止画像としてキャプチャされるフレームは、当該支柱が視認しやすい位置(中央付近)に撮影されているものが好ましいが、必ずしもこれに限られない。
【0029】
続いて、解析装置10は、ナンバリングした各支柱から、画像解析によって腐食部分を抽出し、抽出した腐食部分における腐食の程度を示す指標値を推算する(図2のステップS15の処理を行う)。
このとき、解析装置10は、抽出した腐食部分に対してマーキングすることが好ましい。ここでマーキングとは、マーキング前の静止画像に比べて、ユーザが視認容易なように加工する処理であり、例えば腐食部分を視認容易な色彩に変更する処理である。
キャプチャして得られた静止画像に対してマーキングすることにより、解析装置10は、表示装置20に表示するレポートにおいて、支柱の腐食部分を強調表示することができる。
【0030】
図7は、図6の静止画像に撮影されている支柱の腐食部分をマーキングしたものである。
図7において3本目の支柱に対応する静止画像として図示されているフレームF2は、対応していない支柱(4本目の支柱)の腐食部分についてマーキングされていることを例示するが、対応していない支柱の腐食部分をマーキングすることは必ずしも必要ではない。
【0031】
解析装置10は、上記のように抽出した支柱の腐食部分について、その腐食の程度を示す指標値を、以下のように推算する。
解析装置10は、解析対象の静止画像に撮影されている支柱の腐食部分の高さについて地表面からビーム材までの寸法に対する割合を推測し、推測した腐食部分の高さに係る割合と、解析装置10が予め保有している地表面からビーム材までの寸法と、を乗算して腐食部分の高さを推算する。
また、解析装置10は、上記のように推算した腐食部分の高さに対して、解析対象の静止画像から解析される腐食部分の幅寸法を乗算して腐食部分の面積を推算する。なお、解析装置10は、解析対象の静止画像に撮影されている腐食部分が、支柱の全周を周回する(360度を覆う)ものであるか、支柱を半周する(180度を覆う)ものであるか、を推測し、推測した腐食部分の周回に係る割合と、解析装置10が予め保有している支柱の直径と、を乗算して腐食部分の幅寸法を推算する。
【0032】
例えば、1本目の支柱に生じている腐食部分の高さについて、解析装置10は、地表面からビーム材までの寸法(200ミリメートル)の1/4であるものと推測した場合、当該腐食部分の高さは50ミリメートルであると推算する。
また、1本目の支柱に生じている腐食部分の面積について、解析装置10は、支柱を半周するものと推測した場合、支柱の直径(100ミリメートル)に1/2を乗算し、更に腐食部分の高さとして50ミリメートルを乗算し、当該腐食部分の面積は250平方ミリメートルであると推算する。
【0033】
更に、解析装置10は、上記のように推算した腐食部分の高さ及び面積に基づいて、補修又は交換が必要な支柱を判別する。例えば、解析装置10は、推算した腐食部分の高さ及び面積が予め定められた閾値を超えるか否かを判別することによって、当該腐食部分を有する支柱の補修又は交換の要否を判別する。
【0034】
更に、解析装置10は、上記の判別によって補修又は交換が必要と判別された支柱について、交換に必要な費用を見積もる。例えば、解析装置10は、その補修又は交換に必要な費用に関する情報をストレージ13に記憶しており、当該情報に基づいて補修又は交換に要する費用を算出する。
【0035】
<表示装置20に表示されるレポートについて>
続いて、表示装置20に表示されるレポート(図4のステップS17の処理)について説明する。
【0036】
図8は、表示装置20に表示するレポートに含まれる内容の一部を例示する図である。
図8に表記されている丸数字は、各支柱にナンバリングした数値を示したものである。例えば、「1」の丸数字は1本目の支柱を示している。
丸数字の下に表記されている棒状の表示は、それぞれ丸数字に対応する支柱を簡略的に示したものであり、塗りつぶした箇所が当該支柱の腐食部分を簡略的に示したものである。塗りつぶした箇所の高さ及び面積は、解析装置10が推算した腐食部分の高さ及び面積に比例して変化する。
棒状の表示の下に表記されている数値は、解析装置10が推算した腐食部分の高さ及び面積であり、腐食部分が抽出されなかった支柱については零が表示される。
【0037】
図8に示すレポートの内容は、上述した「識別情報」に相当する丸数字と、上述した「指標値」に相当する腐食部分の高さ及び面積と、を対応付けた情報であり、表示装置20が当該レポートを表示する処理は、図4のステップS17の処理に相当するものと言える。
【0038】
なお、図8には表記していないが、上述した補修又は交換の要否に係る判別結果を加えたレポートを表示装置20が表示出力可能であってもよい。
この変形例において、表示装置20は、閾値に基づいて補修又は交換が必要と判別された支柱に関する情報を、他の支柱(補修又は交換が不要と判別された支柱)に係る情報と区別可能な形式でレポートを表示出力する又は他の支柱に係る情報を省いた形式で表示出力することが好ましい。
【0039】
図9は、表示装置20に表示するレポートに含まれる内容の一部を例示する図である。
図9に表記される静止画像は、閾値に基づいて補修又は交換が必要と判別された支柱に対応するものである。本実施形態では、1本目の支柱と15本目の支柱について補修又は交換が必要と判別されたものとする。なお、これらの静止画像において、腐食部分がマーキングされていることによって、ユーザが視認容易に強調表示されていることが好ましい。
図9に表記される見積額は、上述した解析装置10による見積もりによって算出された費用を表すものである。
図9に表記されている数値は、解析装置10が推算した腐食部分の高さ及び面積である。
【0040】
図9に図示するように、見積額の表示と共に表示される静止画像は、補修又は交換が不要と判別された支柱に関する静止画像を省くことが好ましい。本来であれば補修又は交換が不要な支柱について、補修又は交換を必要な支柱であるとユーザに誤解させることを防ぐためである。
【0041】
図9に示すレポートの内容は上記のようになっているので、補修又は交換を必要な支柱(1本目と15本目の支柱)について算出された費用と、当該支柱のそれぞれが有する腐食部分の高さ及び面積と、当該支柱にナンバリングされた数値と、を対応付けられたものと言える。
【0042】
図8図9に示すようなレポートを出力するので、ユーザは、ガードレールCBの支柱に生じた腐食に関する詳細な情報(特に、補修又は交換に必要な情報)を容易に知ることができる。
<変形例>
以上に説明した本発明の実施形態は、本発明の目的と達成する範囲において、種々の変形が可能である。
例えば、本発明の実施は、図3に図示したシステム構成によって実現されるものに限られず、他の構成を採用してもよい。
【0043】
図3では、腐食解析システム100にカメラC2が含まれることを例示したが、本発明に係るシステム構成には、必ずしもカメラC2が含まれなくてもよく、外部機器によって撮影された動画データを本発明のシステムによって解析してもよい。
【0044】
図3では、解析装置10が単一の装置であることを例示したが、本発明に係るシステム構成において、解析装置10によって行うものとして説明した種々の処理を、複数の装置で分けて実行してもよい。
また、この変形例において、本発明に係るシステムを構成する一部の装置が撮影機能を有する場合には、その撮影機能によって取得された動画データをシステム内のいずれかの装置によって解析してもよい。
【0045】
図3では、カメラC2と解析装置10と表示装置20とが直接接続されていることを例示したが、本発明の構成はこれに限られない。
例えば、インターネットを介して通信可能に接続しているウェブサーバとクライアント端末において本発明を実施する場合、クライアント端末が解析対象を撮影した動画データを取得して保存した後に、クライアント端末からインターネットを介してウェブサーバに送信し、ウェブサーバが動画データに撮影されている解析対象を識別及び解析し、その結果(レポート)をクライアント端末に応答し、クライアント端末がレポートを出力する構成によって本発明が実施されてもよい。
この変形例によれば、クライアント端末が本発明に係る取得手段及び出力手段を構成し、ウェブサーバが本発明に係る識別手段と解析手段を構成しうる。
【0046】
図3の構成及び図4に示すステップS17の処理では、本発明に係るレポートが、表示装置20によって表示出力されることを例示したが、これに代えて不図示の印刷装置によって印字出力されてもよい。
【0047】
図8では棒状の表示によって解析対象の支柱を簡略的に示すことを例示したが、これに代えて解析した静止画像をレポートに含めてもよく、この静止画像に撮影されている支柱の腐食部分をマーキングすることによって、ユーザが視認容易ないように強調表示してもよい。
【0048】
解析装置10が、過去に同じガードレールCBの支柱について解析した結果を、メモリ12やストレージ13に記憶している場合、表示装置20は、図8図9に示すレポートの内容に加えて、上述した「指標値」の経時的な変化を示すレポートを出力可能であってもよい。
【0049】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)複数の金属柱が並立している領域を撮影した動画データを取得する取得手段と、前記動画データに撮影されている前記金属柱を抽出し、抽出した前記金属柱のそれぞれを互いに識別可能に識別情報を割り振る識別手段と、前記動画データに撮影されている前記金属柱の腐食部分を抽出し、抽出した前記腐食部分における腐食の程度を示す指標値を推算する解析手段と、前記識別手段によって割り振られた前記識別情報と、前記解析手段によって推算された前記指標値と、を対応付けた情報をユーザが認識可能な形式にしたレポートを生成して出力する出力手段と、を備える腐食解析システム。
(2)前記解析手段は、前記指標値に係る閾値を保有しており、抽出した前記腐食部分を有する前記金属柱を前記閾値に基づいて判別し、前記出力手段は、前記閾値に基づいて判別された前記金属柱のそれぞれが有している前記腐食部分に係る前記指標値と、当該金属柱のそれぞれに割り振られている前記識別情報と、を対応付けた情報を他の前記金属柱に係る情報と区別可能に又は他の前記金属柱に係る情報を省いた形式にした前記レポートを生成して出力する、(1)に記載の腐食解析システム。
(3)前記解析手段は、前記金属柱の交換又は補修に係る費用の情報を保有しており、前記閾値に基づいて判別した前記金属柱の交換又は補修に係る費用を算出し、前記出力手段は、前記閾値に基づいて判別された前記金属柱について算出された費用と、当該金属柱のそれぞれが有している前記腐食部分に係る前記指標値と、当該金属柱のそれぞれに割り振られている前記識別情報と、を対応付けた情報を含む前記レポートを生成して出力する、(2)に記載の腐食解析システム。
(4)前記識別手段は、前記レポートに示す前記識別情報を割り振った前記金属柱が撮影されている静止画像を前記動画データに含まれるフレームからキャプチャし、前記出力手段は、キャプチャした前記静止画像を含む前記レポートを生成して出力する、(1)から(3)のいずれか一つに記載の腐食解析システム。
(5)前記レポートに含まれる前記静止画像に撮影されている前記金属柱の前記腐食部分が強調表示されている、(4)に記載の腐食解析システム。
(6)前記動画データは、道路を走行している車両から道路脇を撮影したものであり、前記金属柱は、ガードレールの支柱、照明灯の支柱、信号機の支柱、及び道路標識の支柱のうち何れかである、(1)から(5)のいずれか一つに記載の腐食解析システム。
(7)前記動画データは、前記車両の進行方向に対して斜めの撮影方向となるように前記車両に搭載された撮影手段によって撮影されたものであり、前記動画データに含まれるフレームには、少なくとも二つ以上の前記金属柱が撮影されている、(6)に記載の腐食解析システム。
(8)前記指標値は、前記腐食部分の高さ又は面積のうち少なくとも一方を表す数値である、(1)から(7)のいずれか一つに記載の腐食解析システム。
【符号の説明】
【0050】
100 腐食解析システム
10 解析装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 ストレージ
14 通信IF
15 入出力IF
20 表示装置
C1 車両
C2 カメラ
CB ガードレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9