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特許7403129摂食嚥下機能評価方法、プログラム、摂食嚥下機能評価装置および摂食嚥下機能評価システム
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  • 特許-摂食嚥下機能評価方法、プログラム、摂食嚥下機能評価装置および摂食嚥下機能評価システム 図1
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  • 特許-摂食嚥下機能評価方法、プログラム、摂食嚥下機能評価装置および摂食嚥下機能評価システム 図21
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】摂食嚥下機能評価方法、プログラム、摂食嚥下機能評価装置および摂食嚥下機能評価システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20231215BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20231215BHJP
   G10L 25/66 20130101ALI20231215BHJP
【FI】
A61B5/11 310
A61B5/11 300
A61B5/11 320
A61B10/00 J
G10L25/66
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020521106
(86)(22)【出願日】2019-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2019016786
(87)【国際公開番号】W WO2019225242
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-01-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2018099167
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019005571
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 絢子
(72)【発明者】
【氏名】松村 吉浩
(72)【発明者】
【氏名】和田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】入江 健一
(72)【発明者】
【氏名】▲苅▼安 誠
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】三崎 仁
【審判官】渡▲辺▼ 純也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-33540(JP,A)
【文献】特開2012-10955(JP,A)
【文献】特開2013-22180(JP,A)
【文献】特開2014-224133(JP,A)
【文献】特開2006-268642(JP,A)
【文献】特開2008-61790(JP,A)
【文献】特開2012-24527(JP,A)
【文献】特開2016-185209(JP,A)
【文献】特開2016-093255(JP,A)
【文献】原修一、外、「高齢期の地域住民における構音機能と誤嚥リスクとの関連性」、老齢歯学、第30巻、第2号、2015年
【文献】口腔機能測定機器「健口くん KENKOU-KUN Produced by TAKEI」、発行元 財団法人新潟県歯科保健協会、外2名、2010年4月
【文献】伊藤加代子、外、「オーラルディアドコキネシスの測定方法に関する検討」、老年歯科医学、24巻、2009年
【文献】阪口英夫、「健康行動理論を応用した口腔機能向上プログラムが特定高齢者の口腔機能ならびに口腔衛生状態に及ぼす影響」、口病誌、2014年6月30日
【文献】工藤みふね、外、「舌突出癖を有する小児の構音特性」、小児歯科学雑誌、43(1)、2005年3月25日
【文献】Jinhee HA, et al.,「Analysis of speech and tongue motion in normal and post-glossectomy speaker using cine MRI」,J Appl Oral Sci. 2016年9月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00-5/398, A61B7/00-7/04, A61B9/00-10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摂食嚥下機能評価装置によって実行される摂食嚥下機能評価方法であって、
前記摂食嚥下機能評価装置が備える取得部が、被評価者が所定の音節または所定の文を発話した音声を非接触により集音することで得られる音声データを取得する取得ステップと、
前記摂食嚥下機能評価装置が備える算出部が、前記取得部が取得した前記音声データから特徴量を算出する算出ステップと、
前記摂食嚥下機能評価装置が備える評価部が、前記算出部が算出した前記特徴量から、前記被評価者の摂食嚥下機能を評価する評価ステップと、を含み、
前記評価ステップでは、前記評価部が、前記摂食嚥下機能として、表情筋の運動機能、舌の運動機能、唾液の分泌機能ならびに歯の咬合状態の少なくとも1つを評価
前記所定の音節は、子音および当該子音に後続した母音によって構成され、
前記算出ステップでは、前記子音と前記母音との音圧差を前記特徴量として算出する、
摂食嚥下機能評価方法。
【請求項2】
摂食嚥下機能評価装置によって実行される摂食嚥下機能評価方法であって、
前記摂食嚥下機能評価装置が備える取得部が、被評価者が所定の音節または所定の文を発話した音声を非接触により集音することで得られる音声データを取得する取得ステップと、
前記摂食嚥下機能評価装置が備える算出部が、前記取得部が取得した前記音声データから特徴量を算出する算出ステップと、
前記摂食嚥下機能評価装置が備える評価部が、前記算出部が算出した前記特徴量から、前記被評価者の摂食嚥下機能を評価する評価ステップと、を含み、
前記評価ステップでは、前記評価部が、前記摂食嚥下機能として、表情筋の運動機能、舌の運動機能、唾液の分泌機能ならびに歯の咬合状態の少なくとも1つを評価し、
前記所定の文は、母音を含む音節が連続した文字列を含み、
前記算出ステップでは、母音部分のスペクトルから得られる第二フォルマント周波数の変化量を前記特徴量として算出する、
摂食嚥下機能評価方法。
【請求項3】
摂食嚥下機能評価装置によって実行される摂食嚥下機能評価方法であって、
前記摂食嚥下機能評価装置が備える取得部が、被評価者が所定の音節または所定の文を発話した音声を非接触により集音することで得られる音声データを取得する取得ステップと、
前記摂食嚥下機能評価装置が備える算出部が、前記取得部が取得した前記音声データから特徴量を算出する算出ステップと、
前記摂食嚥下機能評価装置が備える評価部が、前記算出部が算出した前記特徴量から、前記被評価者の摂食嚥下機能を評価する評価ステップと、を含み、
前記評価ステップでは、前記評価部が、前記摂食嚥下機能として、表情筋の運動機能、舌の運動機能、唾液の分泌機能ならびに歯の咬合状態の少なくとも1つを評価し、
前記所定の文は、母音を含む音節を複数含み、
前記算出ステップでは、母音部分のスペクトルから得られる第一フォルマント周波数のばらつきを前記特徴量として算出する、
摂食嚥下機能評価方法。
【請求項4】
前記所定の音節は、子音および当該子音に後続した母音によって構成され、
前記算出ステップでは、前記子音と前記母音との音圧差を前記特徴量として算出する、
請求項2または3に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項5】
前記所定の文は、子音、当該子音に後続した母音および当該母音に後続した子音からなる音節部分を含み、
前記算出ステップでは、前記音節部分を発するのに要した時間を前記特徴量として算出する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項6】
前記所定の文は、母音を含む音節が連続した文字列を含み、
前記算出ステップでは、母音部分のスペクトルから得られる第二フォルマント周波数の変化量を前記特徴量として算出する、
請求項1、3~5のいずれか1項に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項7】
前記所定の文は、母音を含む音節を複数含み、
前記算出ステップでは、母音部分のスペクトルから得られる第一フォルマント周波数のばらつきを前記特徴量として算出する、
請求項1、2、4~6のいずれか1項に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項8】
前記算出ステップでは、前記音声のピッチを前記特徴量として算出する、
請求項1~のいずれか1項に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項9】
前記所定の文は、所定の単語を含み、
前記算出ステップでは、前記所定の単語を発するのに要した時間を前記特徴量として算出する、
請求項1~のいずれか1項に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項10】
前記算出ステップでは、前記所定の文全体を発するのに要した時間を前記特徴量として算出する、
請求項1~のいずれか1項に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項11】
前記所定の文は、子音、および、当該子音に続く母音によって構成される音節が繰り返されるフレーズを含み、
前記算出ステップでは、所定の時間内において前記音節が発せられた回数を前記特徴量として算出する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項12】
前記算出ステップでは、取得した前記音声データのうち、前記音節に相当する部分であって、かつ、ピーク値が閾値を超える部分の数を、前記音節が発せられた回数とする、
請求項11に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項13】
前記摂食嚥下機能評価方法は、さらに、評価結果を出力する出力ステップを含む、
請求項1~12のいずれか1項に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項14】
摂食嚥下機能評価方法は、さらに、前記摂食嚥下機能評価装置が備える提案部が、前記出力ステップで出力した前記評価結果と予め定められたデータとを照合することで、前記被評価者に対する摂食嚥下に関する提案を行う提案ステップを含む、
請求項13に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項15】
前記提案ステップでは、摂食嚥下機能の評価結果に対応する食事に関する提案、及び、摂食嚥下機能の評価結果に対応する運動に関する提案の少なくとも一方が行われる、
請求項14に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項16】
前記取得ステップでは、さらに、前記被評価者の個人情報を取得する、
請求項1~15のいずれか1項に記載の摂食嚥下機能評価方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の摂食嚥下機能評価方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項18】
被評価者が所定の音節または所定の文を発話した音声を非接触により集音することで得られる音声データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記音声データから特徴量を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記特徴量から、前記被評価者の摂食嚥下機能を評価する評価部と、
前記評価部が評価した評価結果を出力する出力部と、を備え、
前記評価部は、前記摂食嚥下機能として、表情筋の運動機能、舌の運動機能、唾液の分泌機能ならびに歯の咬合状態の少なくとも1つを評価
前記所定の音節は、子音および当該子音に後続した母音によって構成され、前記算出部は、前記子音と前記母音との音圧差を前記特徴量として算出する、
または、
前記所定の文は、母音を含む音節が連続した文字列を含み、前記算出部は、母音部分のスペクトルから得られる第二フォルマント周波数の変化量を前記特徴量として算出する、
または、
前記所定の文は、母音を含む音節を複数含み、前記算出部は、母音部分のスペクトルから得られる第一フォルマント周波数のばらつきを前記特徴量として算出する、
摂食嚥下機能評価装置。
【請求項19】
請求項18に記載の摂食嚥下機能評価装置と、
前記被評価者が前記所定の音節または前記所定の文を発話した音声を非接触により集音する集音装置と、を備え、
前記摂食嚥下機能評価装置の取得部は、前記被評価者が所定の音節または所定の文を発話した音声を前記集音装置が非接触により集音することで得られる音声データを取得する、
摂食嚥下機能評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被評価者の摂食嚥下機能を評価することができる、摂食嚥下機能評価方法、プログラム、摂食嚥下機能評価装置および摂食嚥下機能評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
摂食嚥下障害には、誤嚥、低栄養、食べることの楽しみの喪失、脱水、体力・免疫力の低下、口内汚染および誤嚥性肺炎等のリスクがあり、摂食嚥下障害を予防することが求められている。従来から、摂食嚥下機能を評価することで、例えば、適切な食形態の食事を摂食する、適切な機能回復へのリハビリなどを行う等の摂食嚥下障害への対応がなされており、その評価方法には様々なものがある。例えば、被評価者の首に摂食嚥下機能を評価するための器具を装着させ、摂食嚥下機能評価指標(マーカー)として、咽頭運動特徴量を取得し、被評価者の摂食嚥下機能を評価する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-23676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された方法では、被評価者に器具を装着する必要があり、被評価者に不快感を与える場合がある。また、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士または内科医師等の専門家による視診、問診または触診等によっても摂食嚥下機能を評価することはできるが、例えば、脳卒中などで摂食嚥下機能関連の麻痺が起きたり、摂食嚥下関連の器官(例えば、舌、軟口蓋または咽頭等)の手術等により摂食嚥下障害を引き起こしたりした場合等、摂食嚥下障害が重症化してから専門家が診断するという場合が多い。しかし、高齢者は、加齢による影響で、ずっとむせていたり、食べこぼしをしたりしているにもかかわらず、高齢だから当然の症状であるとして摂食嚥下機能の低下が見過ごされることがある。摂食嚥下の低下が見過ごされることで、例えば食事量の低下からくる低栄養を招き、低栄養が免疫力の低下を招く。加えて、誤嚥もしやすく、誤嚥と免疫力低下が結果として誤嚥性肺炎に至らしめるおそれにつながる悪循環を招く。
【0005】
そこで、本発明は、簡便に被評価者の摂食嚥下機能の評価が可能な摂食嚥下機能評価方法等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る摂食嚥下機能評価方法は、被評価者が所定の音節または所定の文を発話した音声を非接触により集音することで得られる音声データを取得する取得ステップと、取得した前記音声データから特徴量を算出する算出ステップと、算出した前記特徴量から、前記被評価者の摂食嚥下機能を評価する評価ステップと、を含む。
【0007】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、上記の摂食嚥下機能評価方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0008】
また、本発明の一態様に係る摂食嚥下機能評価装置は、被評価者が所定の音節または所定の文を発話した音声を非接触により集音することで得られる音声データを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記音声データから特徴量を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記特徴量から、前記被評価者の摂食嚥下機能を評価する評価部と、前記評価部が評価した評価結果を出力する出力部と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様に係る摂食嚥下機能評価システムは、上記の摂食嚥下機能評価装置と、前記被評価者が前記所定の音節または前記所定の文を発話した音声を非接触により集音する集音装置と、を備え、前記摂食嚥下機能評価装置の取得部は、前記被評価者が所定の音節または所定の文を発話した音声を前記集音装置が非接触により集音することで得られる音声データを取得する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の摂食嚥下機能評価方法等によれば、簡便に被評価者の摂食嚥下機能の評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る摂食嚥下機能評価システムの構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る摂食嚥下機能評価システムの特徴的な機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態に係る摂食嚥下機能評価方法による被評価者の摂食嚥下機能を評価する処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、実施の形態に係る摂食嚥下機能評価方法による被評価者の音声の取得方法の概要を示す図である。
図5図5は、被評価者が発話した音声を示す音声データの一例を示す図である。
図6図6は、フォルマント周波数を説明するための周波数スペクトル図である。
図7図7は、フォルマント周波数の時間変化の一例を示す図である。
図8図8は、準備期、口腔期および咽頭期における摂食嚥下機能の具体例と、各機能が低下したときの症状を示す図である。
図9図9は、評価結果の一例を示す図である。
図10図10は、評価結果の一例を示す図である。
図11図11は、評価結果の一例を示す図である。
図12図12は、評価結果の一例を示す図である。
図13図13は、変形例1に係る摂食嚥下機能評価方法による被評価者の音声の取得方法の概要を示す図である。
図14図14は、変形例1において被評価者が発話した音声を示す音声データの一例を示す図である。
図15図15は、変形例2に係る摂食嚥下機能評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
図16図16は、被評価者の発声練習の音声データの一例を示す図である。
図17図17は、被評価者の評価対象の音声データの一例を示す図である。
図18図18は、評価結果を提示するための画像の一例を示す図である。
図19図19は、食事に関するアドバイスを提示するための画像の一例を示す図である。
図20図20は、運動に関するアドバイスを提示するための画像の第一例を示す図である。
図21図21は、運動に関するアドバイスを提示するための画像の第二例を示す図である。
図22図22は、運動に関するアドバイスを提示するための画像の第三例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0014】
(実施の形態)
[摂食嚥下機能]
本発明は、摂食嚥下機能の評価方法等に関するものであり、まず摂食嚥下機能について説明する。
【0015】
摂食嚥下機能とは、食物を認識して口に取り込みそして胃に至るまでの一連の過程を達成するのに必要な人体の機能である。摂食嚥下機能は、先行期、準備期、口腔期、咽頭期および食道期の5つの段階からなる。
【0016】
摂食嚥下における先行期(認知期とも呼ばれる)では、食物の形、硬さおよび温度等が判断される。先行期における摂食嚥下機能は、例えば、目の視認機能等である。先行期において、食物の性質および状態が認知され、食べ方、唾液分泌および姿勢といった摂食に必要な準備が整えられる。
【0017】
摂食嚥下における準備期(咀嚼期とも呼ばれる)では、口腔内に取り込まれた食物が歯で噛み砕かれ、すり潰され(つまり咀嚼され)、そして、咀嚼された食物を舌によって唾液と混ぜ合わせられて食塊にまとめられる。準備期における摂食嚥下機能は、例えば、食物をこぼさずに口腔内に取り込むための表情筋(口唇の筋肉および頬の筋肉等)の運動機能、食物の味を認識したり硬さを認識したりするための舌の認識機能、食物を歯に押し当てたり細かくなった食物を唾液と混ぜ合わせてまとめたりするための舌の運動機能、食物を噛み砕きすり潰すための歯の咬合状態、歯と頬の間に食物が入り込むのを防ぐ頬の運動機能、咀嚼するための筋肉の総称である咀嚼筋(咬筋および側頭筋等)の運動機能(咀嚼機能)、ならびに、細かくなった食物をまとめるための唾液の分泌機能等である。咀嚼機能は、歯の咬合状態、咀嚼筋の運動機能、舌の機能などに影響される。準備期におけるこれらの摂食嚥下機能によって、食塊は飲み込みやすい物性(サイズ、塊、粘度)となるため、食塊が口腔内から咽頭を通って胃までスムーズに移動しやすくなる。
【0018】
摂食嚥下における口腔期では、舌(舌の先端)が持ち上がり、食塊が口腔内から咽頭に移動させられる。口腔期における摂食嚥下機能は、例えば、食塊を咽頭へ移動させるための舌の運動機能、咽頭と鼻腔との間を閉鎖する軟口蓋の上昇機能等である。
【0019】
摂食嚥下における咽頭期では、食塊が咽頭に達すると嚥下反射が生じて短時間(約1秒)の間に食塊が食道へ送られる。具体的には、軟口蓋が挙上して鼻腔と咽頭との間が塞がれ、舌の根元(具体的には舌の根元を支持する舌骨)および喉頭が挙上して食塊が咽頭を通過し、その際に喉頭蓋が下方に反転し気管の入口が塞がれ、誤嚥が生じないように食塊が食道へ送られる。咽頭期における摂食嚥下機能は、例えば、鼻腔と咽頭との間を塞ぐための咽頭の運動機能(具体的には、軟口蓋を挙上する運動機能)、食塊を咽頭へ送るための舌(具体的には舌の根元)の運動機能、食塊を咽頭から食道へ送ったり、食塊が咽頭へ流れ込んできた際に、声門が閉じて気管を塞ぎ、その上から喉頭蓋が気管の入り口に垂れ下がることで蓋をしたりする喉頭の運動機能等である。
【0020】
摂食嚥下における食道期では、食道壁の蠕動運動が誘発され、食塊が食道から胃へと送り込まれる。食道期における摂食嚥下機能は、例えば、食塊を胃へ移動させるための食道の蠕動機能等である。
【0021】
例えば、人は加齢とともに、健康状態からプレフレイル期およびフレイル期を経て要介護状態へとなる。摂食嚥下機能の低下(オーラルフレイルとも呼ばれる)は、プレフレイル期に現れはじめるとされている。摂食嚥下機能の低下は、フレイル期から続く要介護状態への進行を早める要因となり得る。このため、プレフレイル期の段階で摂食嚥下機能がどのように低下しているかに気付き、事前に予防や改善を行うことで、フレイル期から続く要介護状態に陥りにくくなり健やかで自立した暮らしを長く保つことができるようになる。
【0022】
本発明によれば、被評価者が発した音声から被評価者の摂食嚥下機能を評価することができる。摂食嚥下機能が低下している被評価者が発話した音声には特定の特徴がみられ、これを特徴量として算出することで、被評価者の摂食嚥下機能を評価することができるためである。以下では、準備期、口腔期および咽頭期における摂食嚥下機能の評価について説明する。本発明は、摂食嚥下機能評価方法、当該方法をコンピュータに実行させるプログラム、当該コンピュータの一例である摂食嚥下機能評価装置、および、摂食嚥下機能評価装置を備える摂食嚥下機能評価システムによって実現される。以下では、摂食嚥下機能評価システムを示しながら、摂食嚥下機能評価方法等について説明する。
【0023】
[摂食嚥下機能評価システムの構成]
実施の形態に係る摂食嚥下機能評価システムの構成に関して説明する。
【0024】
図1は、実施の形態に係る摂食嚥下機能評価システム200の構成を示す図である。
【0025】
摂食嚥下機能評価システム200は、被評価者Uの音声を解析することで被評価者Uの摂食嚥下機能を評価するためのシステムであり、図1に示されるように、摂食嚥下機能評価装置100と、携帯端末300とを備える。
【0026】
摂食嚥下機能評価装置100は、携帯端末300によって、被評価者Uが発した音声を示す音声データを取得し、取得した音声データから被評価者Uの摂食嚥下機能を評価する装置である。
【0027】
携帯端末300は、被評価者Uが所定の音節または所定の文を発話した音声を非接触により集音する集音装置であり、集音した音声を示す音声データを摂食嚥下機能評価装置100へ出力する。例えば、携帯端末300は、マイクを有するスマートフォンまたはタブレット等である。なお、携帯端末300は、集音機能を有する装置であれば、スマートフォンまたはタブレット等に限らず、例えば、ノートPC等であってもよい。また、摂食嚥下機能評価システム200は、携帯端末300の代わりに、集音装置(マイク)を備えていてもよい。また、摂食嚥下機能評価システム200は、後述するが、被評価者Uの個人情報を取得するための入力インターフェースを備えていてもよい。当該入力インターフェースは、例えば、キーボード、タッチパネル等の入力機能を有するものであれば特に限定されない。
【0028】
また、携帯端末300は、ディスプレイを有し、摂食嚥下機能評価装置100から出力される画像データに基づいた画像等を表示する表示装置であってもよい。なお、表示装置は携帯端末300でなくてもよく、液晶パネルまたは有機ELパネルなどによって構成されるモニタ装置であってもよい。つまり、本実施の形態では、携帯端末300が集音装置でもあり表示装置でもあるが、集音装置(マイク)と入力インターフェースと表示装置とが別体に設けられていてもよい。
【0029】
摂食嚥下機能評価装置100と携帯端末300とは、音声データまたは後述する評価結果を示す画像を表示するための画像データ等を送受信可能であればよく、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。
【0030】
摂食嚥下機能評価装置100は、携帯端末300によって集音された音声データに基づいて被評価者Uの音声を分析し、分析した結果から被評価者Uの摂食嚥下機能を評価し、評価結果を出力する。例えば、摂食嚥下機能評価装置100は、評価結果を示す画像を表示するための画像データ、もしくは、評価結果に基づいて生成された被評価者Uに対する摂食嚥下に関する提案をするためのデータを携帯端末300へ出力する。こうすることで、摂食嚥下機能評価装置100は、被評価者Uへ摂食嚥下機能の程度や摂食嚥下機能の低下の予防等するための提案を通知できるため、例えば、被評価者Uは摂食嚥下機能の低下の予防や改善を行うことができる。
【0031】
なお、摂食嚥下機能評価装置100は、例えば、パーソナルコンピュータであるが、サーバ装置であってもよい。また、摂食嚥下機能評価装置100は、携帯端末300であってもよい。つまり、以下で説明する摂食嚥下機能評価装置100が有する機能を携帯端末300が有していてもよい。
【0032】
図2は、実施の形態に係る摂食嚥下機能評価システム200の特徴的な機能構成を示すブロック図である。摂食嚥下機能評価装置100は、取得部110と、算出部120と、評価部130と、出力部140と、提案部150と、記憶部160とを備える。
【0033】
取得部110は、被評価者Uが発話した音声を携帯端末300が非接触により集音することで得られる音声データを取得する。当該音声は、被評価者Uが所定の音節または所定の文を発話した音声である。また、取得部110は、さらに、被評価者Uの個人情報を取得してもよい。例えば、個人情報は携帯端末300に入力された情報であり、年齢、体重、身長、性別、BMI(Body Mass Index)、歯科情報(例えば、歯の数、入れ歯の有無、咬合支持の場所など)、血清アルブミン値または喫食率等である。なお、個人情報は、EAT-10(イート・テン)と呼ばれる嚥下スクリーニングツール、聖隷式嚥下質問紙または問診等により取得されてもよい。取得部110は、例えば、有線通信または無線通信を行う通信インターフェースである。
【0034】
算出部120は、取得部110で取得した被評価者Uの音声データを解析する処理部である。算出部120は、具体的には、プロセッサ、マイクロコンピュータ、または、専用回路によって実現される。
【0035】
算出部120は、取得部110が取得した音声データから特徴量を算出する。特徴量とは、評価部130が被評価者Uの摂食嚥下機能を評価するために用いる音声データから算出される被評価者Uの音声の特徴を示す数値である。算出部120の詳細については後述する。
【0036】
評価部130は、算出部120が算出した特徴量と、記憶部160に記憶されている参照データ161とを照合し、被評価者Uの摂食嚥下機能を評価する。例えば、評価部130は、被評価者Uの摂食嚥下機能を、準備期、口腔期および咽頭期のいずれの段階における摂食嚥下機能であるかを区別した上で評価してもよい。評価部130は、具体的には、プロセッサ、マイクロコンピュータ、または、専用回路によって実現される。評価部130の詳細については後述する。
【0037】
出力部140は、評価部130が評価した被評価者Uの摂食嚥下機能の評価結果を提案部150へ出力する。また、出力部140は、評価結果を記憶部160に出力し、評価結果は記憶部160に記憶される。出力部140は、具体的には、プロセッサ、マイクロコンピュータ、または、専用回路によって実現される。
【0038】
提案部150は、出力部140が出力した評価結果と予め定められた提案データ162とを照合することで、被評価者Uに対する摂食嚥下に関する提案を行う。また、提案部150は、取得部110が取得した個人情報についても提案データ162と照合して、被評価者Uに対する摂食嚥下に関する提案を行ってもよい。提案部150は、当該提案を携帯端末300へ出力する。提案部150は、例えば、プロセッサ、マイクロコンピュータまたは専用回路、および、有線通信または無線通信を行う通信インターフェースによって実現される。提案部150の詳細については後述する。
【0039】
記憶部160は、特徴量と人の摂食嚥下機能との関係を示す参照データ161、摂食嚥下機能の評価結果と提案内容との関係を示す提案データ162、および、被評価者Uの上記個人情報を示す個人情報データ163が記憶されている記憶装置である。参照データ161は、被評価者Uの摂食嚥下機能の程度の評価が行われるときに評価部130によって参照される。提案データ162は、被評価者Uに対する摂食嚥下に関する提案が行われるときに提案部150によって参照される。個人情報データ163は、例えば、取得部110を介して取得されたデータである。なお、個人情報データ163は、予め記憶部160に記憶されていてもよい。記憶部160は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)等によって実現される。
【0040】
また、記憶部160には、算出部120、評価部130、出力部140および提案部150が実行するプログラム、被評価者Uの摂食嚥下機能の評価結果を出力する際に用いられる当該評価結果を示す画像データ、および、提案内容を示す画像、動画、音声またはテキスト等のデータも記憶されている。また、記憶部160には、後述する指示用の画像も記憶されていてもよい。
【0041】
図示していないが、摂食嚥下機能評価装置100は、所定の音節または所定の文を発音することを被評価者Uに指示するための指示部を備えていてもよい。指示部は、具体的には、記憶部160に記憶された、所定の音節または所定の文を発音することを指示するための指示用の画像の画像データ、および、音声データを取得し、当該画像データおよび当該音声データを携帯端末300に出力する。
【0042】
[摂食嚥下機能評価方法の処理手順]
続いて、摂食嚥下機能評価装置100が実行する摂食嚥下機能評価方法における具体的な処理手順について説明する。
【0043】
図3は、実施の形態に係る摂食嚥下機能評価方法による被評価者Uの摂食嚥下機能を評価する処理手順を示すフローチャートである。図4は、摂食嚥下機能評価方法による被評価者Uの音声の取得方法の概要を示す図である。
【0044】
まず、指示部は、所定の音節または所定の文(特定の音を含む文章)を発音することを指示する(ステップS100)。例えば、ステップS100において、指示部は、記憶部160に記憶された、被評価者Uへの指示用の画像の画像データを取得し、当該画像データを、携帯端末300に出力する。そうすると、図4の(a)に示すように、携帯端末300には、被評価者Uへの指示用の画像が表示される。なお、図4の(a)では、指示される所定の文は、「きたからきたかたたたきき」となっているが、「きたかぜとたいよう」、「あいうえお」、「ぱぱぱぱぱ・・」、「たたたたた・・」、「かかかかか・・」、「ららららら・・」、「ぱんだのかたたき」等であってもよい。また、発音の指示は、所定の文で行われなくてもよく、「き」、「た」、「か」、「ら」、「ぜ」または「ぱ」等の一文字の所定の音節で行われてもよい。また、発音の指示は、「えお」及び「いえあ」などの二音節以上の母音のみからなる無意味なフレーズを発声させる指示であってもよい。発音の指示は、このような無意味なフレーズを繰り返し発声させる指示であってもよい。
【0045】
また、指示部は、記憶部160に記憶された、被評価者Uへの指示用の音声の音声データを取得し、当該音声データを、携帯端末300に出力することで、発音することを指示する指示用の画像を用いずに発音することを指示する指示用の音声を用いて上記指示を行ってもよい。さらに、発音することを指示する指示用の画像および音声を用いずに、被評価者Uの摂食嚥下機能を評価したい評価者(家族、医師等)が自身の声で被評価者Uに上記指示を行ってもよい。
【0046】
例えば、所定の音節は、子音および当該子音に後続した母音によって構成されてもよい。例えば、日本語においては、このような所定の音節は、「き」、「た」、「か」、「ぜ」等である。「き」は、子音「k」および当該子音に後続した母音「i」によって構成される。「た」は、子音「t」および当該子音に後続した母音「a」によって構成される。「か」は、子音「k」および当該子音に後続した母音「a」によって構成される。「ぜ」は、子音「z」および当該子音に後続した母音「e」によって構成される。
【0047】
また、例えば、所定の文は、子音、当該子音に後続した母音および当該母音に後続した子音からなる音節部分を含んでいてもよい。例えば、日本語においては、このような音節部分は、「かぜ」における「kaz」部分である。具体的には、当該音節部分は、子音「k」、当該子音に後続した母音「a」および当該母音に後続した子音「z」からなる。
【0048】
また、例えば、所定の文は、母音を含む音節が連続した文字列を含んでいてもよい。例えば、日本語においては、このような文字列は、「あいうえお」等である。
【0049】
また、例えば、所定の文は、所定の単語を含んでいてもよい。例えば、日本語においては、このような単語は、「たいよう:太陽」、「きたかぜ:北風」等である。
【0050】
また、例えば、所定の文は、子音、および、当該子音に続く母音によって構成される音節が繰り返されるフレーズを含んでいてもよい。例えば、日本語においては、このようなフレーズは、「ぱぱぱぱぱ・・」、「たたたたた・・」、「かかかかか・・」、または「ららららら・・」等である。「ぱ」は、子音「p」および当該子音に後続した母音「a」によって構成される。「た」は、子音「t」および当該子音に後続した母音「a」によって構成される。「か」は、子音「k」および当該子音に後続した母音「a」によって構成される。「ら」は、子音「r」および当該子音に後続した母音「a」によって構成される。
【0051】
次に、図3に示されるように、取得部110は、ステップS100において指示を受けた被評価者Uの音声データを携帯端末300を介して取得する(ステップS101)。図4の(b)に示すように、ステップS101において、例えば、被評価者Uは、「きたからきたかたたたきき」等の所定の文等を携帯端末300に向けて発する。取得部110は、被評価者Uが発した所定の文または所定の音節を、音声データとして取得する。
【0052】
次に、算出部120は、取得部110が取得した音声データから特徴量を算出し(ステップS102)、評価部130は、算出部120が算出した特徴量から、被評価者Uの摂食嚥下機能を評価する(ステップS103)。
【0053】
例えば、取得部110が取得した音声データが、子音および当該子音に後続した母音によって構成される所定の音節を発話した音声から得られる音声データの場合、算出部120は、当該子音と当該母音との音圧差を特徴量として算出する。これについて、図5を用いて説明する。
【0054】
図5は、被評価者Uが発話した音声を示す音声データの一例を示す図である。具体的には、図5は、被評価者Uが「きたからきたかたたたきき」と発話した場合の音声データを示すグラフである。図5に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸はパワー(音圧)である。なお、図5のグラフの縦軸に示すパワーの単位は、デシベル(dB)である。
【0055】
図5に示すグラフには、「き」、「た」、「か」、「ら」、「き」、「た」、「か」、「た」、「た」、「た」、「き」、「き」に対応する音圧の変化が確認される。取得部110は、図3に示すステップS101において、被評価者Uから音声データとして、図5に示すデータを取得する。算出部120は、例えば、図3に示すステップS102において、既知の方法により、図5に示す音声データに含まれる「き(ki)」における「k」および「i」の各音圧、「た(ta)」における「t」および「a」の各音圧を算出する。また、被評価者Uが「きたかぜとたいよう」と発話した場合には、算出部120は、「ぜ(ze)」における「z」および「e」の各音圧を算出する。算出部120は、算出した「t」および「a」の各音圧から、「t」および「a」の音圧差ΔP1を特徴量として算出する。同じように、算出部120は、「k」および「i」の音圧差ΔP3、「z」および「e」の音圧差(図示せず)を特徴量として算出する。
【0056】
参照データ161には、各音圧差に対応する閾値が含まれており、評価部130は、例えば、各音圧差が当該閾値以上であるか否かに応じて摂食嚥下機能を評価する。
【0057】
例えば、「き(ki)」を発するためには、舌の根元を軟口蓋へ接触させる必要がある。舌の根元を軟口蓋へ接触させる機能(「k」および「i」の音圧差)を評価することで、咽頭期における舌の運動機能(舌圧等も含む)を評価することができる。
【0058】
例えば、「た(ta)」を発するためには、舌の先端を前歯後方の上顎へ接触させる必要がある。舌の先端を前歯後方の上顎へ接触させる機能(「t」および「a」の音圧差)を評価することで、準備期における舌の運動機能を評価することができる。
【0059】
例えば、「ぜ(ze)」を発するためには、舌の先端を上前歯へ接触または接近させる必要がある。舌の側面は、歯列で支えるなど、歯の存在が重要となる。上前歯を含む歯列の存在(「z」および「e」の音圧差)を評価することで、残存歯の多いか少ないかの推定や、少ない場合には咀嚼能力に影響するなど、準備期における歯の咬合状態を評価することができる。
【0060】
また、例えば、取得部110が取得した音声データが、子音、当該子音に後続した母音および当該母音に後続した子音からなる音節部分を含む所定の文を発話した音声から得られる音声データの場合、算出部120は、当該音節部分を発するのに要した時間を特徴量として算出する。
【0061】
例えば、被評価者Uが「かぜ」を含む所定の文を発話した場合、当該所定の文は、子音「k」、当該子音に後続した母音「a」および当該母音に後続した子音「z」からなる音節部分を含む。算出部120は、このような「k-a-z」からなる音節部分を発するのに要した時間を特徴量として算出する。
【0062】
参照データ161には、当該音節部分を発するのに要した時間に対応する閾値が含まれており、評価部130は、例えば、当該音節部分を発するのに要した時間が当該閾値以上であるか否かに応じて摂食嚥下機能を評価する。
【0063】
例えば、「子音-母音-子音」からなる音節部分を発するのに要する時間は、舌の運動機能(舌の巧緻性または舌圧等)に応じて変わってくる。当該音節部分を発するのに要した時間を評価することで、準備期における舌の運動機能、口腔期における舌の運動機能、および、咽頭期における舌の運動機能を評価することができる。
【0064】
また、例えば、取得部110が取得した音声データが、母音を含む音節が連続した文字列を含む所定の文を発話した音声から得られる音声データの場合、算出部120は、母音部分のスペクトルから得られる第一フォルマント周波数もしくは第二フォルマント周波数等の変化量を特徴量として算出し、また、母音部分のスペクトルから得られる第一フォルマント周波数もしくは第二フォルマント周波数等のばらつきを特徴量として算出する。
【0065】
第一フォルマント周波数は、人の音声の低周波数側から数えて1番目に見られる振幅のピーク周波数であり、舌の動き(特に上下運動)に関する特徴が反映されやすいことが知られている。加えて、顎の開きに関する特徴が反映されやすいことも知られている。
【0066】
第二フォルマント周波数は、人の音声の低周波数側から数えて2番目に見られる振幅のピーク周波数であり、声帯音源が声道、口唇や舌等の口腔、鼻腔等で生じる共鳴のうち、舌の位置(特に前後位置)に関する影響が反映されやすいことが知られている。また、例えば、歯が存在しない場合に正しく発話できないことから、準備期における歯の咬合状態(歯の数)は、第二フォルマント周波数に影響があると考えられる。また、例えば、唾液が少ない場合に正しく発話できないことから、準備期における唾液の分泌機能は、第二フォルマント周波数に影響があると考えられる。なお、舌の運動機能、唾液の分泌機能または歯の咬合状態(歯の数)は、第一フォルマント周波数から得られる特徴量および第二フォルマント周波数から得られる特徴量のうちのいずれの特徴量から算出してもよい。
【0067】
図6は、フォルマント周波数を説明するための周波数スペクトル図である。なお、図6に示すグラフの横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は振幅である。
【0068】
図6に破線で示すように、音声データの横軸を周波数に変換して得られるデータには、複数のピークが確認される。複数のピークのうち、周波数の最も低いピークの周波数は、第一フォルマント周波数F1である。また、第一フォルマント周波数F1の次に周波数の低いピークの周波数は、第二フォルマント周波数F2である。また、第二フォルマント周波数F2の次に周波数の低いピークの周波数は、第三フォルマント周波数F3である。このように、算出部120は、取得部110が取得した音声データから既知の方法により母音部分を抽出して、抽出した母音の部分の音声データを、周波数に対する振幅にデータ変換することにより母音部分のスペクトルを算出して、母音部分のスペクトルから得られるフォルマント周波数を算出する。
【0069】
なお、図6に示すグラフは、被評価者Uから得られる音声データを周波数に対する振幅のデータに変換し、その包絡線を求めることにより算出される。包絡線の計算には、例えば、ケプストラム分析、線形予測分析(Linear Predictive Coding:LPC)等が採用される。
【0070】
図7は、フォルマント周波数の時間変化の一例を示す図である。具体的には、図7は、第一フォルマント周波数F1と、第二フォルマント周波数F2と、第三フォルマント周波数F3との周波数の時間変化の一例を説明するためのグラフである。
【0071】
例えば、被評価者Uに、「あいうえお」等の連続した複数の母音を含む音節を発話させる。算出部120は、被評価者Uが発話した音声を示す音声データから、複数の母音それぞれの第一フォルマント周波数F1および第二フォルマント周波数F2を算出する。さらに、算出部120は、母音が連続した文字列の第一フォルマント周波数F1の変化量(時間変化量)と第二フォルマント周波数F2の変化量(時間変化量)を特徴量として算出する。
【0072】
参照データ161には、当該変化量に対応する閾値が含まれており、評価部130は、例えば、当該変化量が当該閾値以上であるか否かに応じて摂食嚥下機能を評価する。
【0073】
第一フォルマント周波数F1をみると、例えば、顎の開きや舌の上下の動きを示しており、変化量からはその動きが影響する準備期、口腔期、咽頭期における顎の動きや舌の上下の動きが低下していることを示す。第二フォルマント周波数F2をみると、舌の前後の位置に関する影響があり、その動きが影響する準備期、口腔期、咽頭期における舌の動きが低下していることを示す。第二フォルマント周波数F2をみると、例えば、歯がなく正しく発話できないことを示しており、つまりは、準備期における歯の咬合状態が劣化していることを示す。また、第二フォルマント周波数F2をみると、例えば、唾液が少なく正しく発話できないことを示しており、つまりは、準備期における唾液の分泌機能が低下していることを示す。すなわち、第二フォルマント周波数F2の変化量を評価することで、準備期における唾液の分泌機能を評価することができる。
【0074】
また、算出部120は、母音が連続した文字列の第一フォルマント周波数F1のばらつきを特徴量として算出する。例えば、音声データに母音がn個(nは自然数)含まれる場合には、n個の第一フォルマント周波数F1が得られ、これらの全部または一部を用いて第一フォルマント周波数F1のばらつきが算出される。特徴量として算出されるばらつきの度合いは、例えば、標準偏差である。
【0075】
参照データ161には、当該ばらつきに対応する閾値が含まれており、評価部130は、例えば、当該ばらつきが当該閾値以上であるか否かに応じて摂食嚥下機能を評価する。
【0076】
第一フォルマント周波数F1のばらつきが大きいこと(閾値以上であること)は、例えば、舌の上下運動が鈍いことを示しており、つまりは、口腔期における、舌の先端を上顎に押し当てて食塊を咽頭へ送り込む舌の運動機能が低下していることを示す。すなわち、第一フォルマント周波数F1のばらつきを評価することで、口腔期における舌の運動機能を評価することができる。
【0077】
また、例えば、算出部120は、被評価者Uが所定の音節または所定の文を発話した音声のピッチ(高さ)を特徴量として算出する。
【0078】
参照データ161には、当該ピッチに対応する閾値が含まれており、評価部130は、例えば、当該ピッチが当該閾値以上であるか否かに応じて摂食嚥下機能を評価する。
【0079】
また、例えば、取得部110が取得した音声データが、所定の単語を含む所定の文を発話した音声から得られる音声データの場合、算出部120は、所定の単語を発するのに要した時間を特徴量として算出する。
【0080】
例えば、被評価者Uが「たいよう」を含む所定の文を発話する場合、被評価者Uは、「たいよう」という文字列を「太陽」という単語であることを認識してから「たいよう」という文字列を発話する。所定の単語を発するのに時間を要する場合、被評価者Uは、認知症のおそれがある。ここで、歯の本数は認知症に影響を与えると言われている。歯の本数は、脳活動に影響しており、歯の本数が減ることにより脳への刺激が減り、認知症を発症する危険性が高まるためである。つまり、被評価者Uが認知症のおそれがあることは、歯の本数とは対応しており、さらには、準備期における食物を噛み砕きすり潰すための歯の咬合状態と対応している。したがって、所定の単語を発するのに要した時間が大きいこと(閾値以上であること)は、被評価者Uが認知症のおそれがあること、言い換えると、準備期における歯の咬合状態が劣化していることを示す。すなわち、被評価者Uが所定の単語を発するのに要した時間を評価することで、準備期における歯の咬合状態を評価することができる。
【0081】
なお、算出部120は、所定の文全体を発するのに要した時間を特徴量として算出してもよい。この場合でも、同じように、被評価者Uが所定の文全体を発するのに要した時間を評価することで、準備期における歯の咬合状態を評価することができる。
【0082】
また、例えば、取得部110が取得した音声データが、閉鎖子音、および、当該閉鎖子音に続く母音によって構成される音節が繰り返されるフレーズを含む所定の文を発話した音声から得られる音声データの場合、算出部120は、繰り返される音節を所定の時間(例えば5秒等)内に発した回数を特徴量として算出する。
【0083】
参照データ161には、当該回数に対応する閾値が含まれており、評価部130は、例えば、当該回数が当該閾値以上であるか否かに応じて摂食嚥下機能を評価する。
【0084】
例えば、被評価者Uは、「ぱぱぱぱぱ・・」、「たたたたた・・」、「かかかかか・・」または「ららららら・・」などの子音、および、当該子音に続く母音によって構成される音節が繰り返されるフレーズを含む所定の文を発話する。
【0085】
例えば、「ぱ(pa)」を発するためには、口(口唇)を上下に開け閉めする必要がある。口唇を上下に開け閉めする機能が低下している場合、「ぱ」を所定時間内に素早く所定回数(閾値)以上発話できなくなる。口唇を上下に開け閉めする動作は、準備期における食物をこぼさずに口腔内に取り込む動作に類似している。このため、「ぱ(pa)」を素早く発する、つまり、口唇を上下に素早く繰り返し開け閉めする機能は、準備期における食物をこぼさずに口腔内に取り込むための表情筋の運動機能と対応している。すなわち、「ぱ(pa)」を所定の時間内に発した回数を評価することで、準備期における表情筋の運動機能を評価することができる。
【0086】
例えば、「た(ta)」を発するためには、上述したように、舌の先端を前歯後方の上顎へ接触させる必要がある。舌の先端を前歯後方の上顎へ接触させる動作は、準備期における食物を歯に押し当てたり細かくなった食物を唾液と混ぜ合わせてまとめたりする際に行われる動作、および、口腔期における舌(舌の先端)を持ち上げて食塊を口腔内から咽頭に移動させる際に行われる動作と類似している。このため、「た(ta)」を素早く発する、つまり、舌の先端を素早く前歯後方の上顎へ繰り返し接触させる機能は、準備期における食物を歯に押し当てたり細かくなった食物を唾液と混ぜ合わせてまとめたりするための舌の運動機能、および、口腔期における食塊を咽頭へ移動させるための舌の運動機能と対応している。すなわち、「た(ta)」を所定の時間内に発した回数を評価することで、準備期における舌の運動機能および口腔期における舌の運動機能を評価することができる。
【0087】
例えば、「か(ka)」を発するためには、上述した「き(ki)」と同じように、舌の根元を軟口蓋へ接触させる必要がある。舌の根元を軟口蓋へ接触させる動作は、咽頭期における食塊を咽頭を通過させる(飲み込む)際に行われる動作と類似している。さらに、食べ物や飲み物を口に含む際(準備期)、及び、食べ物を口の中で咀嚼し食改形成をしている際(口腔期)には、舌の根元は軟口蓋に接触し、咽頭流入を防ぐ動作、及び、むせを防ぐ動作を行うが、これは「k」を発する時の舌の動作と類似している。このため、「か(ka)」を素早く発する、つまり、舌の根元を軟口蓋へ素早く繰り返し接触させる機能は、咽頭期における食塊を咽頭を通過させるための舌(具体的には舌の根元)の運動機能と対応している。すなわち、「か(ka)」を所定の時間内に発した回数を評価することで、準備期、口腔期、咽頭期における舌の運動機能を評価することができる。また、この舌の運動機能は、食べ物を咽頭流入させない機能、むせを防ぐ機能と対応している。
【0088】
例えば、「ら(ra)」を発するためには、舌を反らせる必要がある。舌を反らせる動作は、準備期における食物を唾液と混ぜ合わせて食塊を形成する動作と類似している。このため、「ら(ra)」を素早く発する、つまり、舌を素早く繰り返し反らせる機能は、準備期における食物を唾液と混ぜ合わせて食塊を形成するための舌の運動機能と対応している。すなわち、「ら(ra)」を所定の時間内に発した回数を評価することで、準備期における舌の運動機能を評価することができる。
【0089】
このように、評価部130は、被評価者Uの摂食嚥下機能を、例えば、「準備期における」舌の運動機能、または、「口腔期における」舌の運動機能といったように、準備期、口腔期および咽頭期のいずれの段階における摂食嚥下機能であるかを区別した上で評価する。例えば、参照データ161には、特徴量の種類と準備期、口腔期および咽頭期の少なくとも1つの段階における摂食嚥下機能との対応関係が含まれている。例えば、特徴量として「k」および「i」の音圧差に着目すると、「k」および「i」の音圧差と咽頭期における舌の運動機能とが対応付けられている。このため、評価部130は、準備期、口腔期および咽頭期のいずれの段階における摂食嚥下機能であるかを区別した上で被評価者Uの摂食嚥下機能を評価できる。被評価者Uの摂食嚥下機能を、準備期、口腔期および咽頭期のいずれの段階における摂食嚥下機能であるかを区別した上で評価することで、被評価者Uにどのような症状が発生するおそれがあるかがわかる。これについて、図8を用いて説明する。
【0090】
図8は、準備期、口腔期および咽頭期における摂食嚥下機能の具体例と、各機能が低下したときの症状を示す図である。
【0091】
準備期における表情筋の運動機能が低下することで、摂食嚥下において食べこぼしの症状がみられるようになる。準備期における舌の運動機能および歯の咬合状態が劣化することで、摂食嚥下において正しく咀嚼できない(食物を噛み砕いたり、すり潰したりできない)という症状がみられるようになる。準備期における唾液の分泌機能が低下することで、摂食嚥下において食物がばらばらのままで食塊を形成できないという症状がみられるようになる。また、口腔期および咽頭期における舌の運動機能が低下することで、摂食嚥下において食塊を咽頭そして食道へと正しく飲み込むことができずむせるという症状がみられるようになる。
【0092】
各段階における摂食嚥下機能が低下したときに、このような症状がみられることがわかっているため、被評価者Uの摂食嚥下機能を、準備期、口腔期および咽頭期のいずれの段階における摂食嚥下機能であるかを区別した上で評価することで、対応する症状ごとの対応策を細かく立てることが可能となる。また、詳細は後述するが、提案部150は、評価結果に応じた対応策を被評価者Uに提案することができる。
【0093】
次に、図3に示されるように、出力部140は、評価部130が評価した被評価者Uの摂食嚥下機能の評価結果を出力する(ステップS104)。出力部140は、評価部130が評価した被評価者Uの摂食嚥下機能の評価結果を提案部150へ出力する。なお、出力部140は、当該評価結果を携帯端末300へ出力してもよい。この場合、出力部140は、例えば、有線通信または無線通信を行う通信インターフェースを含んでいてもよい。この場合、例えば、出力部140は、当該評価結果に対応する画像の画像データを記憶部160から取得して、携帯端末300へ取得した画像データを送信する。当該画像データ(評価結果)の一例を図9から図12に示す。
【0094】
図9から図12は、評価結果の一例を示す図である。例えば、評価結果は、OKまたはNGの2段階の評価結果である。OKは正常を意味し、NGは異常を意味する。なお、評価結果は、2段階の評価結果に限らず、評価の程度が3段階以上に分かれた細かい評価結果であってもよい。つまり、記憶部160に記憶された参照データ161に含まれる、各特徴量に対応する閾値は、1つの閾値に限らず、複数の閾値であってもよい。具体的には、ある特徴量について、第1閾値以上の場合には評価結果は正常となり、第1閾値よりも小さく第2閾値よりも大きい場合には評価結果はやや異常となり、第2閾値以下の場合には評価結果は異常となってもよい。また、OK(正常)の代わりに丸印等が示され、やや異常の代わりに三角印等が示され、NG(異常)の代わりにクロス印等が示されてもよい。また、図9から図12に示すように、摂食嚥下機能ごとに正常、異常が示されなくてもよく、例えば、摂食嚥下機能の低下の疑いのある項目だけ示されてもよい。
【0095】
評価結果に対応する画像の画像データは、例えば、図9から図12に示されるような表である。準備期、口腔期および咽頭期のいずれの段階における摂食嚥下機能であるかを区別した上での評価結果を示すこのような表を、被評価者Uは確認することができる。例えば、準備期、口腔期および咽頭期における摂食嚥下機能のそれぞれについて、その機能が低下したときにどのような対策をすればよいかを被評価者Uが予め知っている場合、被評価者Uは、このような表を確認することで対応策を細かく立てることが可能となる。
【0096】
ただし、被評価者Uは、各段階における摂食嚥下機能が低下したときにどのような摂食嚥下に関する対策をすればよいかを予め知らない場合がある。そこで、図3に示されるように、提案部150は、出力部140が出力した評価結果と予め定められた提案データ162とを照合することで、被評価者Uに対する摂食嚥下に関する提案を行う。(ステップS105)。例えば、提案データ162は、準備期、口腔期および咽頭期における摂食嚥下機能のそれぞれについての評価結果の組み合わせごとに対応する、被評価者Uに対する摂食嚥下に関する提案内容を含む。また、記憶部160には、当該提案内容を示すデータ(例えば、画像、動画、音声、テキスト等)を含む。提案部150は、このようなデータを用いて被評価者Uへ摂食嚥下に関する提案を行う。
【0097】
以下では、被評価者Uの摂食嚥下機能を、準備期、口腔期および咽頭期のいずれの段階における摂食嚥下機能であるかを区別した上で評価した評価結果が、図9から図12に示される結果であった場合についての提案内容をそれぞれ説明する。
【0098】
図9に示される評価結果では、準備期における舌の運動機能、ならびに、口腔期および咽頭期における舌の運動機能がNGとなっており、その他の摂食嚥下機能はOKとなっている。この場合、準備期における舌の運動機能がNGであることにより咀嚼能力に問題がある可能性がある。これにより、食べにくい食物を避けることで栄養が偏ってしまったり、食べるのに時間がかかってしまったりする。また、口腔期および咽頭期における舌の運動機能がNGであることにより食塊の飲み込みに問題がある可能性がある。これにより、むせてしまったり、飲み込むのに時間がかかったりする。
【0099】
これに対して、提案部150は、当該評価結果の組み合わせと提案データ162とを照合することで、当該組み合わせに対応した提案を行う。具体的には、提案部150は、硬いものを柔らかくする等し、一度に口に入れる食物の量を少なくすることを提案する。一度に口に入れる食物の量を少なくすることで、無理なく咀嚼をすることができるようになり、また、食塊が小さくなり食塊を飲み込みやすくなるためである。例えば、提案部150は、携帯端末300を介して、画像、テキストまたは音声等により、「口に入れる量を減らして、ゆっくり食べましょう。疲れたらいったん休んでから食事を再開するのもよいかもしれません」といった内容の提案を行う。また、提案部150は、食物に含まれる液体にとろみをつけることを提案する。液体にとろみをつけることで、食物を咀嚼しやすくなり、また、咽頭において液体の流れる速度が遅くなりむせることを抑制できるためである。例えば、提案部150は、携帯端末300を介して、画像、テキストまたは音声等により、「汁物や、出汁などの液体にとろみをつけて食べましょう」といった内容の提案を行う。
【0100】
図10に示される評価結果では、準備期における唾液の分泌機能がNGとなっており、その他の摂食嚥下機能はOKとなっている。この場合、準備期における唾液の分泌機能がNGであることにより口腔内乾燥の問題がある可能性がある。これにより、食塊を正しく形成できず、乾燥したものを飲み込みにくくなり、乾燥した食物を避けることで栄養が偏ってしまったり、食べるのに時間がかかってしまったりする。
【0101】
これに対して、提案部150は、当該評価結果の組み合わせと提案データ162とを照合することで、当該組み合わせに対応した提案を行う。具体的には、口腔内の水分を吸収するような食物(パン、ケーキ、焼き魚または米菓等)を食べる際には、水分を摂取しながら食べることを提案する。唾液の代わりに摂取した水分によって食塊を形成しやすくなり、飲み込みづらさを解消できるためである。例えば、提案部150は、携帯端末300を介して、画像、テキストまたは音声等により、「パンなどを食べるときは、一緒に水分を摂りましょう」といった内容や、「焼き魚などは、出汁をかけてみましょう。餡かけにするのもよいかもしれません」といった内容の提案を行う。
【0102】
図11に示される評価結果では、準備期における歯の咬合状態がNGとなっており、その他の摂食嚥下機能はOKとなっている。この場合、準備期における歯の咬合状態がNGであることにより咀嚼能力および咬合能力に問題がある可能性がある。これにより、硬い食物を避けることで栄養が偏ってしまったり、食べるのに時間がかかってしまったりする。
【0103】
これに対して、提案部150は、当該評価結果の組み合わせと提案データ162とを照合することで、当該組み合わせに対応した提案を行う。具体的には、硬い食物(野菜または肉等)を食べる際には、細かくしたり、柔らかくしたりしてから食べることを提案する。咀嚼能力および咬合能力に問題があっても、硬い食物を食べることができるようになるからである。例えば、提案部150は、携帯端末300を介して、画像、テキストまたは音声等により、「硬くて食べにくいものに関しては、小さく刻んでみましょう」といった内容や、「葉物野菜が食べにくくなっている可能性があります。食べるのを避けるのではなく栄養が偏らないように、柔らかくする、刻むなどして、積極的に摂りましょう」といった内容の提案を行う。
【0104】
図12に示される評価結果では、準備期における唾液の分泌機能がOKとなっており、その他の摂食嚥下機能はNGとなっている。この場合、準備期、口腔期および咽頭期においてそれぞれ摂食嚥下機能が低下している可能性がある。例えば、準備期における表情筋の運動機能の低下により口唇の筋力が衰え、準備期における歯の咬合状態の劣化により咬筋が衰え、準備期、口腔期および咽頭期における舌の運動機能の低下により舌の筋力が衰えていると予想され、サルコペニアのおそれが示唆される。
【0105】
これに対して、提案部150は、当該評価結果の組み合わせと提案データ162とを照合することで、当該組み合わせに対応した提案を行う。具体的には、たんぱく質を摂ることや、リハビリをすることを提案する。筋力の低下を解消できるためである。このとき、提案部150は、取得部110が取得した被評価者Uの個人情報(例えば年齢、体重)を用いてもよい。例えば、提案部150は、携帯端末300を介して、画像、テキストまたは音声等により、「たんぱく質を摂るようにしましょう。現在の体重は60kgですので、たんぱく質を1食あたり20g~24g、3食合計で60g~72g摂りましょう。食事の際にはむせないように、汁物や、出汁などの液体にとろみをつけて食べましょう」といった内容の提案を行う。また、提案部150は、リハビリに関する具体的なトレーニング内容を提案する。例えば、提案部150は、携帯端末300を介して、動画および音声等により、被評価者Uの年齢に応じた全身の筋力トレーニング(立ちと座りと繰り返すトレーニング等)、口唇の筋力の回復トレーニング(息の吹出しと吸込みとを繰り返すトレーニング等)、舌の筋力の回復トレーニング(舌の出し入れ、上下左右への移動を行うトレーニング等)等の手本等を示す。また、例えば、そのようなリハビリのためのアプリのインストールが提案されてもよい。また、リハビリの際に、実際に行ったトレーニング内容等が記録されてもよい。これにより、記録内容を専門家(医師、歯科医師、言語聴覚士または看護士等)が確認することで、専門家によるリハビリにも反映させることができる。
【0106】
なお、評価部130は、被評価者Uの摂食嚥下機能を、準備期、口腔期および咽頭期のいずれの段階における摂食嚥下機能であるかを区別した上で評価しなくてもよい。つまり、評価部130は、被評価者Uのどのような摂食嚥下機能が低下しているかを評価してもよい。
【0107】
その他、図示しないが、提案部150は、摂食嚥下機能のそれぞれについての評価結果の組み合わせに応じて、以下に説明する提案を行ってもよい。
【0108】
例えば、提案部150は、食事内容を提案する際に、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2013」のコード等の食形態を示すコードを提示してもよい。例えば、被評価者Uが摂食嚥下障害に対応した商品を購入する際に、その「食形態」を言葉で説明するのは難しいが、上記コードを用いることで上記コードに一対一に対応した食形態の商品を容易に購入することができる。また、提案部150は、そのような商品を購入するためのサイトを提示して、インターネットを用いて購入できるようにしてもよい。例えば、携帯端末300を介して摂食嚥下機能を評価した後、その携帯端末300を用いて購入できるようにしてもよい。さらに、提案部150は、被評価者Uの栄養が偏らないように、栄養を補う他の商品を提示してもよい。その際に、提案部150は、取得部110が取得した被評価者Uの個人情報(例えば体重、BMI(Body Mass Index)、血清アルブミン値または喫食率等)を用いることで、被評価者Uの栄養状態を判断した上で、栄養を補う商品を提示してもよい。
【0109】
また、例えば、提案部150は、食事の際の姿勢を提案してもよい。姿勢によって、食物の飲み込みやすさが変わってくるためである。例えば、提案部150は、咽頭から気管への角度が直線となりにくい、前かがみの姿勢で食事を摂ることを提案する。
【0110】
また、例えば、提案部150は、摂食嚥下機能の低下による、栄養の偏りを考慮した献立を提示(そのような献立が記載された献立サイトを提示)してもよい。献立サイトとは、献立を完成させるのに必要な食材および調理手順が記載されたサイトである。その際に、提案部150は、被評価者Uに入力されて取得部110が取得した被評価者Uの食べたいメニューを考慮しつつ、栄養の偏りを考慮した献立を提示してもよい。さらに、提案部150は、1週間等の特定の期間にわたって、特定の期間において栄養バランスが取れた献立を提示してもよい。
【0111】
また、例えば、提案部150は、食物を細かくする程度や柔らかくする程度を示す情報をIoT(Internet of Things)化された調理器に送信してもよい。これにより、正しく食物を細かくしたり柔らかくしたりすることができる。また、被評価者U等が自身で食物を細かくしたり柔らかくしたりする手間を省くことができる。
【0112】
[変形例1]
上記実施の形態においては、被評価者Uに指示される所定の文として「きたからきたかたたたきき」等が例示されたが、所定の文は、「絵をかくことに決めた」であってもよい。図13は、このような変形例1に係る摂食嚥下機能評価方法による被評価者Uの音声の取得方法の概要を示す図である。
【0113】
まず、図3のステップS100において、指示部は、記憶部160に記憶された、被評価者Uへの指示用の画像の画像データを取得し、当該画像データを、携帯端末300(図13の例では、タブレット端末)に出力する。そうすると、図13の(a)に示すように、携帯端末300には、被評価者Uへの指示用の画像が表示される。なお、図13の(a)では、指示される所定の文は、「絵をかくことに決めた」である。
【0114】
次に、図3のステップS101において、取得部110は、ステップS100において指示を受けた被評価者Uの音声データを携帯端末300を介して取得する。図13の(b)に示すように、ステップS101において、例えば、被評価者Uは、「絵をかくことに決めた」を携帯端末300に向けて発する。取得部110は、被評価者Uが発した「絵をかくことに決めた」の文を、音声データとして取得する。図14は、変形例1において被評価者が発話した音声を示す音声データの一例を示す図である。
【0115】
続いて、図3のステップS102において、算出部120は、取得部110が取得した音声データから特徴量を算出し、評価部130は、算出部120が算出した特徴量から、被評価者Uの摂食嚥下機能を評価する(ステップS103)。
【0116】
特徴量としては、例えば、図14に示すような[か(ka)]、[と(to)]、[た(ta)]の発声の際の音圧差が用いられる。
【0117】
例えば、「k」音を発するためには、軟口蓋に舌の根元がしっかりくっつく動きが必要となる。したがって、「k」および「a」の音圧差を評価することで、咽頭期における舌の運動機能(舌圧等も含む)を評価することができる。また、上述したように、「k」および「a」の音圧差を評価することで、準備期や口腔期(液体や固体が咽頭へ流入させない機能、むせない機能)、咽頭期の食べ物を送る力(飲み込む機能)を評価することができる。さらに、「k」および「a」の音圧差を評価することで、また、舌圧も関係しており、咀嚼する際に食べ物を押しつぶしたりする時の機能も評価できる。さらに、なお、図14では、「か(ka)」を図示しているが、例文中の「く(ku)」、「こ(ko)」「き(ki)」を用いて同様の評価がおこなわれてもよい。
【0118】
また、「た(ta)」を発するためには、舌の先端を前歯後方の上顎へ接触させる必要がある。「と(to)」についても同様である。したがって、舌の先端を前歯後方の上顎へ接触させる機能(「t」および「a」の音圧差、または、「t」および「o」の音圧差)を評価することで、準備期における舌の運動機能を評価することができる。
【0119】
また、特徴量としては、「絵をかくことに決めた」の発話の開始から終了までにどれだけの時間を要したか(つまり、図14の時間T)が用いられてもよい。このような時間Tは、話速度として評価に使用することができる。例えば、単位時間当たりの発話文字数を特徴量とすることで、舌の動きの速さ、すなわち舌の巧緻性の状態を評価する事ができる。この特徴量は、そのまま話速度として評価してもよいし、そのほかの特徴量と合わせて評価に用いることで、舌の巧緻性以外の評価を行うこともできる。例えば、話速度が遅い(舌の動きが遅い)ときに、顎の上下動が少ない(第一フォルマントの変化量の特徴量)場合、頬も含めた全体の動きが弱く舌や頬を含めた筋力低下を疑うことができる。
【0120】
また、特徴量としては、被評価者Uが「絵を」と発する際のフォルマント変化量が用いられてもよい。フォルマント変化量は、より具体的には、被評価者Uが「絵を」と発している間の第一フォルマント周波数の最小値と最大値の差、または、被評価者Uが「絵を」と発している間の第二フォルマント周波数の最小値と最大値の差、である。
【0121】
被評価者Uが「絵を」と発する際の第二フォルマント変化量は、舌の前後の動きを示す。したがって、「絵を」と発する際の第二フォルマント変化量を評価することで、食べ物を口の奥へ送る機能を評価することができる。この場合、フォルマント変化量が大きいほど、食べ物を口の奥へ送る機能が高いと評価される。
【0122】
また、特徴量としては、被評価者Uが「決めた」と発する際のフォルマント変化量が用いられてもよい。フォルマント変化量は、より具体的には、被評価者Uが「決めた」と発している間の第一フォルマント周波数の最小値と最大値の差、または、被評価者Uが「決めた」と発している間の第二フォルマント周波数の最小値と最大値の差、である。
【0123】
被評価者Uが「決めた」と発する際の第一フォルマント変化量は、顎の開き具合、及び、舌の上下の動きを示す。したがって、「決めた」と発する際の第一フォルマント変化量を評価することで、顎を動かす力(表情筋)の動きを評価する事ができる。第一フォルマントの変化量は大きいほど良いが、表情筋の力がなく顎を支えることができない場合も第一フォルマントの変化量は大きくなるため、他の特徴量と組み合わせて食べ物を咀嚼する機能が高いかどうかを評価することができる。
【0124】
なお「絵をかくことに決めた」の「た」が被評価者Uによっては十分な音圧で発話することができない場合がある。具体的には、「ta」ではなく「t」のみが発話されるイメージの場合である。このような場合に評価ばらつきが生じることを避けるために、所定の文は、「絵をことに決めたんだ」または「絵をかくことに決めたんよ」などの語尾まで言い切れるような文であってもよい。
【0125】
また、「絵をかくことに決めた」の文章中に「パ行」または「ラ行」の音節が含まれてもよい。具体的には、「パパはね、絵を描くことに決めたんだ」、「ポピーの絵を描くことに決めた」、「パトカーの絵を描くことに決めた」、「ラッパーは、絵を描くことに決めた」などが例示される。
【0126】
このように「パ行」または「ラ行」の音節が含まれば、上述の「ぱぱぱぱ・・・」「たたたた・・・」「かかかか・・」「らららら・・・」などの測定をせずとも、舌の動きなどの推定が実現され得る。
【0127】
[変形例2]
上記実施の形態において、摂食嚥下機能評価装置100が、被評価者Uによって所定の音節が発せられた数を評価する例(オーラルディアドコキネシスとも呼ばれる)について説明された。変形例1では、オーラルディアドコキネシスにおいて音節の数を正確にカウントする方法について説明する。図15は、変形例2に係る摂食嚥下機能評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0128】
まず、取得部110は、被評価者Uの発声練習の音声データを取得する(S201)。図16は、被評価者Uの発声練習の音声データの一例を示す図である。図16では、一例として、被評価者Uが「ぱ、ぱ、ぱ、ぱ・・」という発声練習を行った場合の音声データが示されている。発声練習では、被評価者Uには、はっきりと発話することが求められ、素早く発話することは求められない。
【0129】
次に、算出部120は、取得された発声練習の音声データに基づいて基準音圧差を算出する(S202)。算出部120は、具体的には、音声データの波形から、「ぱ」に相当する部分を複数個所抽出し、抽出した部分のそれぞれについて音圧差を算出する。基準音圧差は、例えば、算出された複数の音圧差の平均値×所定割合(70%など)である。算出された基準音圧差は、例えば、記憶部160に記憶される。
【0130】
次に、取得部110は、被評価者Uの評価対象の音声データを取得する(S203)。図17は、被評価者Uの評価対象の音声データの一例を示す図である。
【0131】
次に、算出部120は、取得された評価対象の音声データに含まれる、ピーク値が基準音圧差以上となる音節の数をカウントする(S204)。算出部120は、具体的には、音声データの波形に含まれる「ぱ」に相当する部分であって、かつ、ピーク値がステップS202で算出された基準音圧差以上である部分の数をカウントする。つまり、はっきりと発話された「ぱ」のみをカウントする。一方、音声データの波形に含まれる「ぱ」に相当する部分であって、かつ、ピーク値がステップS202で算出された基準音圧差未満の部分はカウントされない。
【0132】
そして、評価部130は、算出部120によってカウントされた数に基づいて、被評価者Uの摂食嚥下機能を評価する(S205)。
【0133】
以上説明したように、摂食嚥下機能評価装置100は、取得された評価対象の音声データのうち、所定の音節に相当する部分であって、かつ、ピーク値が基準音圧差を超える部分の数に基づいて被評価者Uの摂食嚥下機能を評価する。これによれば、摂食嚥下機能評価装置100は、より正確に被評価者Uの摂食嚥下機能を評価することができる。なお、変形例1では、基準音圧差は実測により定められたが、基準音圧差に相当する閾値が実験的または経験的にあらかじめ定められていてもよい。
【0134】
[変形例3]
変形例3では、評価結果、及び、評価結果に基づくアドバイスの表示の別の例などについて説明する。携帯端末300のディスプレイには、評価結果として図18に示されるような画像が表示される。図18は、評価結果を提示するための画像の一例を示す図である。図18に示される画像は、例えば、携帯端末300と通信接続された複合機(図示せず)によって印刷が可能である。
【0135】
図18の画像においては、摂食嚥下機能に関する7つの評価項目がレーダーチャートの形式で表示されている。7つの項目は、具体的には、舌の動き、あごの動き、飲込みの動き、唇の力、食べ物をまとめる力、むせを防ぐ力、固いものを噛む力、である。なお、項目数は7つに限定されず、6つ以下であってもよいし、8つ以上であってもよい。上記7つ以外の項目としては、例えば、頬の動き、口の乾燥などが挙げられる。
【0136】
これら7つの項目の評価値は、例えば、1:要注意、2:やや注意、3:正常の3段階で表現される。なお、評価値は、4段階以上で表現されてもよい。
【0137】
レーダーチャートにおける実線は、評価部130によって決定された被評価者Uの摂食嚥下機能の実測評価値を示している。7つの項目の実測評価値のそれぞれは、上記実施の形態で説明された各種評価方法、及び、その他の評価方法を1つ以上組み合わせることで評価部130によって決定される。
【0138】
一方、レーダーチャートにおける破線は、被評価者Uに対して行われたアンケートの結果に基づいて決定される評価値である。このように、実測評価値とアンケート結果に基づく評価値とが同時に表示されれば、被評価者Uは、自身の自覚症状と、実際の症状との差を容易に認識することができる。なお、アンケート結果に基づく評価値に代えて、被評価者Uの過去の実測評価値が比較対象として表示されてもよい。
【0139】
また、評価において所定の音節(例えば、「ぱ」「た」「か」)が発せられた回数が用いられる場合、これらの回数を示す回数情報が表示される(図18の右側の部分)。
【0140】
図18の画像が表示されているときに、「食事提案」の部分が選択されると、提案部150により、評価結果を踏まえた食事に関するアドバイスを示す画像が表示される。言い換えれば、提案部150によって摂食嚥下機能の評価結果に対応する食事に関する提案が行われる。図19は、食事に関するアドバイスを提示するための画像の一例を示す図である。
【0141】
図19の画像においては、第一表示エリア301、第二表示エリア302、及び、第三表示エリア303のそれぞれに食事に関するアドバイスが表示される。各表示エリアには、主文(上段)、及び、具体的なアドバイス(下段)が表示される。
【0142】
表示されるアドバイスは、実測評価値が「1:要注意」と判定された項目に対応付けられたアドバイスである。3つ以上の項目について「1:要注意」と判定された場合には、7つの項目についてあらかじめ定められた優先順位にしたがって上位3つの項目に対するアドバイスが表示される。
【0143】
このようにアドバイスを表示するために、上記7つの項目のそれぞれに対して、少なくとも1つのアドバイスがあらかじめ準備され、記憶部160に提案データ162として記憶される。なお、上記7つの項目のそれぞれに対して、複数パターンのアドバイス(例えば、3パターンのアドバイス)が準備されてもよい。この場合、どのパターンのアドバイスが表示されるかは、例えば、ランダムに決定されるが、所定のアルゴリズムに従って決定されてもよい。アドバイスは、例えば、食事の準備方法(具体的には、調理方法)、食事の環境設定(具体的には、座り方及び姿勢など)、食事中の注意(具体的には、よく噛む、一口の量をどうするなど)などを考慮してあらかじめ準備される。
【0144】
また、食事に関するアドバイスには、栄養に関するアドバイスが含まれてもよいし、食事場所に関する情報が提供されてもよい。例えば、食事に関するアドバイスとして、嚥下調整食を提供しているレストランの情報が提供されてもよい。
【0145】
なお、7つの項目全ての実測評価値が「3:正常」と判定された場合には、例えば、第一表示エリア301及び第二表示エリア302に「3:正常」に対応する第一定型アドバイスが表示される。また、「1:要注意」と判定された項目がないものの、「2:やや注意」と判定された項目がある場合、第一表示エリア301に「2:やや注意」に対応する第二定型アドバイスが表示され、第二表示エリア302及び第三表示エリア303には、7つの項目のうち「2:やや注意」と判定された項目に対応づけられたアドバイスが表示される。2つ以上の項目について「2:やや注意」と判定された場合には、7つの項目についてあらかじめ定められた優先順位にしたがって上位2つの項目に対応づけられたアドバイスが表示される。
【0146】
図19の画像が表示されているときに、「運動提案」の部分が選択されると、提案部150により、評価結果を踏まえた運動に関するアドバイスを提示するための画像が表示される。言い換えれば、提案部150によって摂食嚥下機能の評価結果に対応する運動に関する提案が行われる。図20は、運動に関するアドバイスを提示するための画像の一例を示す図である。
【0147】
図20は、「舌の動き」が「1:要注意」と判定された場合に表示される画像である。運動に関するアドバイスを示す画像には、運動方法の説明書きと、運動方法を示すイラストとが含まれる。
【0148】
なお、「1:要注意」と判定された項目が複数ある場合、図20の画像の「次へ」の部分が選択されることで、図20の画像が、図21の画像及び図22の画像などの他の運動に関するアドバイスを提示するための画像に切り替わる。図21は、「飲込みの動き」の項目が「1:要注意」と判定された場合に表示される、運動に関するアドバイスを提示するための画像の一例を示す図である。図22は、「むせを防ぐ力」の項目が「1:要注意」と判定された場合に表示される、運動に関するアドバイスを提示するための画像の一例を示す図である。
【0149】
以上、評価結果、及び、評価結果に基づくアドバイスの表示例について説明した。このような評価結果、及び、評価結果に基づくアドバイス(食事アドバイス及び運動アドバイスの両方)は全て、印刷装置によって印刷可能である。なお、図示されないが、評価結果に基づくアドバイスには、医療機関に関するアドバイスが含まれてもよい。つまり、提案部150によって、摂食嚥下機能の評価結果に対応する医療機関に関する提案が行われてもよい。この場合、医療機関に関するアドバイスを提示するための画像には、例えば、医療機関のマップ情報が含まれてもよい。
【0150】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態に係る摂食嚥下機能評価方法は、図3に示されるように、被評価者Uが所定の音節または所定の文を発話した音声を非接触により集音することで得られる音声データを取得する取得ステップ(ステップS101)と、取得した音声データから特徴量を算出する算出ステップ(ステップS102)と、算出した特徴量から、被評価者Uの摂食嚥下機能を評価する評価ステップ(ステップS103)と、を含む。
【0151】
これによれば、非接触により集音された摂食嚥下機能の評価に適した音声データを取得することで、簡便に被評価者Uの摂食嚥下機能の評価が可能となる。つまり、被評価者Uが携帯端末300等の集音装置に向けて所定の音節または所定の文を発話するだけで、被評価者Uの摂食嚥下機能の評価が可能となる。
【0152】
また、評価ステップでは、摂食嚥下機能として、表情筋の運動機能、舌の運動機能、唾液の分泌機能および歯の咬合状態の少なくとも1つを評価してもよい。
【0153】
これによれば、例えば、準備期における表情筋の運動機能、準備期における舌の運動機能、準備期における歯の咬合状態、準備期における唾液の分泌機能、口腔期における舌の運動機能、または、咽頭期における舌の運動機能を評価できる。
【0154】
また、所定の音節は、子音および当該子音に後続した母音によって構成され、算出ステップでは、当該子音と当該母音との音圧差を特徴量として算出してもよい。
【0155】
これによれば、被評価者Uが携帯端末300等の集音装置に向けて子音および当該子音に後続した母音によって構成される所定の音節を発話するだけで、簡便に被評価者Uの準備期における舌の運動機能、準備期における歯の咬合状態、または、咽頭期における舌の運動機能を評価できる。
【0156】
また、所定の文は、子音、当該子音に後続した母音および当該母音に後続した子音からなる音節部分を含み、算出ステップでは、音節部分を発するのに要した時間を特徴量として算出してもよい。
【0157】
これによれば、被評価者Uが携帯端末300等の集音装置に向けて子音、当該子音に後続した母音および当該母音に後続した子音からなる音節部分を含む所定の文を発話するだけで、簡便に被評価者Uの準備期における舌の運動機能、口腔期における舌の運動機能、または、咽頭期における舌の運動機能を評価できる。
【0158】
また、所定の文は、母音を含む音節が連続した文字列を含み、算出ステップでは、母音部分のスペクトルから得られる第二フォルマント周波数F2の変化量を特徴量として算出してもよい。
【0159】
これによれば、被評価者Uが携帯端末300等の集音装置に向けて母音を含む音節が連続した文字列を含む所定の文を発話するだけで、簡便に被評価者Uの準備期における唾液の分泌機能または準備期における歯の咬合状態を評価できる。
【0160】
また、所定の文は、母音を含む音節を複数含み、算出ステップでは、母音部分のスペクトルから得られる第一フォルマント周波数F1のばらつきを特徴量として算出してもよい。
【0161】
これによれば、被評価者Uが携帯端末300等の集音装置に向けて母音を含む音節を複数含む所定の文を発話するだけで、簡便に被評価者Uの準備期における口腔期における舌の運動機能を評価できる。
【0162】
また、算出ステップでは、音声のピッチを特徴量として算出してもよい。
【0163】
これによれば、被評価者Uが携帯端末300等の集音装置に向けて所定の音節または所定の文を発話するだけで、簡便に被評価者Uの準備期における唾液の分泌機能を評価できる。
【0164】
また、所定の文は、所定の単語を含み、算出ステップでは、所定の単語を発するのに要した時間を特徴量として算出してもよい。
【0165】
これによれば、被評価者Uが携帯端末300等の集音装置に向けて所定の単語を含む所定の文を発話するだけで、簡便に被評価者Uの準備期における歯の咬合状態を評価できる。
【0166】
また、算出ステップでは、所定の文全体を発するのに要した時間を特徴量として算出してもよい。
【0167】
これによれば、被評価者Uが携帯端末300等の集音装置に向けて所定の文を発話するだけで、簡便に被評価者Uの準備期における歯の咬合状態を評価できる。
【0168】
また、所定の文は、子音、および、当該子音に続く母音によって構成される音節が繰り返されるフレーズを含み、算出ステップでは、所定の時間内において前記音節が発せられた回数を特徴量として算出してもよい。
【0169】
これによれば、被評価者Uが携帯端末300等の集音装置に向けて子音、および、当該子音に続く母音によって構成される音節が繰り返されるフレーズを含む所定の文を発話するだけで、簡便に被評価者Uの準備期における表情筋の運動機能、準備期における舌の運動機能、口腔期における舌の運動機能、または、咽頭期における舌の運動機能を評価できる。
【0170】
また、算出ステップでは、取得した音声データのうち、音節に相当する部分であって、かつ、ピーク値が閾値を超える部分の数を、音節が発せられた回数とする。
【0171】
これによれば、より正確に被評価者Uの摂食嚥下機能を評価することができる。
【0172】
また、摂食嚥下機能評価方法は、さらに、評価結果を出力する出力ステップ(ステップS104)を含んでいてもよい。
【0173】
これによれば、評価結果を確認できるようになる。
【0174】
また、摂食嚥下機能評価方法は、さらに、出力した評価結果と予め定められたデータとを照合することで、被評価者Uに対する摂食嚥下に関する提案を行う提案ステップ(ステップS105)を含んでいてもよい。
【0175】
これによれば、被評価者Uは、各段階における摂食嚥下機能が低下したときにどのような摂食嚥下に関する対策をすればよいかの提案を受けることができる。例えば、被評価者Uが提案に基づいたリハビリをしたり、提案に基づいた食生活をとったりすることで、誤嚥を抑制することで誤嚥性肺炎を予防でき、また、摂食嚥下機能の低下による低栄養状態を改善できる。
【0176】
また、提案ステップでは、摂食嚥下機能の評価結果に対応する食事に関する提案、及び、摂食嚥下機能の評価結果に対応する運動に関する提案の少なくとも一方が行われる。
【0177】
これによれば、被評価者Uは、摂食嚥下機能が低下したときにどのような食事を行えばよいか、または、どのような運動を行えばよいかの提案を受けることができる。
【0178】
また、取得ステップでは、さらに、被評価者Uの個人情報を取得してもよい。
【0179】
これによれば、例えば、摂食嚥下に関する提案において、被評価者Uの摂食嚥下機能の評価結果と個人情報とを組み合わせることで、被評価者Uに対してより効果的な提案をすることができる。
【0180】
また、本実施の形態に係る摂食嚥下機能評価装置100は、被評価者Uが所定の音節または所定の文を発話した音声を非接触により集音することで得られる音声データを取得する取得部110と、取得部110が取得した音声データから特徴量を算出する算出部120と、算出部120が算出した特徴量から、被評価者Uの摂食嚥下機能を評価する評価部130と、評価部130が評価した評価結果を出力する出力部140と、を備える。
【0181】
これによれば、簡便に被評価者Uの摂食嚥下機能の評価が可能となる摂食嚥下機能評価装置100を提供できる。
【0182】
また、本実施の形態に係る摂食嚥下機能評価システム200は、摂食嚥下機能評価装置100と、被評価者Uが所定の音節または所定の文を発話した音声を非接触により集音する集音装置(本実施の形態では携帯端末300)と、を備える。摂食嚥下機能評価装置100の取得部110は、被評価者Uが所定の音節または所定の文を発話した音声を集音装置が非接触により集音することで得られる音声データを取得する。
【0183】
これによれば、簡便に被評価者Uの摂食嚥下機能の評価が可能となる摂食嚥下機能評価システム200を提供できる。
【0184】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態に係る摂食嚥下機能評価方法等について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0185】
例えば、参照データ161は、予め定められたデータであるが、専門家が被評価者Uの摂食嚥下機能を実際に診断した際に得られた評価結果に基づいて、更新されてもよい。これにより、摂食嚥下機能の評価精度を高めることができる。なお、摂食嚥下機能の評価精度を高めるのに機械学習が用いられてもよい。
【0186】
また、例えば、提案データ162は、予め定められたデータであるが、被評価者Uが提案内容を評価して、その評価結果に基づいて更新されてもよい。つまり、例えば、被評価者Uが問題なく咀嚼をできているにもかかわらず、ある特徴量に基づいて咀嚼できないことに対応した提案がされた場合には、被評価者Uは、この提案内容に対して間違っていると評価する。そして、この評価結果に基づいて提案データ162が更新されることで、同じ特徴量に基づいて上記のような誤った提案がされないようになる。このように、被評価者Uに対する摂食嚥下に関する提案内容をより効果的なものとすることができる。なお、摂食嚥下に関する提案内容をより効果的なものとするのに機械学習が用いられてもよい。
【0187】
また、例えば、摂食嚥下機能の評価結果は、個人情報と共にビッグデータとして蓄積されて、機械学習に用いられてもよい。また、摂食嚥下に関する提案内容は、個人情報と共にビッグデータとして蓄積されて、機械学習に用いられてもよい。
【0188】
また、例えば、上記実施の形態では、摂食嚥下機能評価方法は、摂食嚥下に関する提案を行う提案ステップ(ステップS105)を含んでいたが、含んでいなくてもよい。言い換えると、摂食嚥下機能評価装置100は、提案部150を備えていなくてもよい。
【0189】
また、例えば、上記実施の形態では、取得ステップ(ステップS101)では、被評価者Uの個人情報を取得したが、取得しなくてもよい。言い換えると、取得部110は、被評価者Uの個人情報を取得しなくてもよい。
【0190】
また、例えば、上記実施の形態では、被評価者Uは日本語で発話するものとして説明が行われたが、被評価者Uは、英語などの日本語以外の言語で発話してもよい。つまり、日本語の音声データが信号処理の対象とされることは必須ではなく、日本語以外の言語の音声データが信号処理の対象とされてもよい。
【0191】
また、例えば、摂食嚥下機能評価方法におけるステップは、コンピュータ(コンピュータシステム)によって実行されてもよい。そして、本発明は、それらの方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本発明は、そのプログラムを記録したCD-ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
【0192】
例えば、本発明が、プログラム(ソフトウェア)で実現される場合には、コンピュータのCPU、メモリおよび入出力回路等のハードウェア資源を利用してプログラムが実行されることによって、各ステップが実行される。つまり、CPUがデータをメモリまたは入出力回路等から取得して演算したり、演算結果をメモリまたは入出力回路等に出力したりすることによって、各ステップが実行される。
【0193】
また、上記実施の形態の摂食嚥下機能評価装置100および摂食嚥下機能評価システム200に含まれる各構成要素は、専用または汎用の回路として実現されてもよい。
【0194】
また、上記実施の形態の摂食嚥下機能評価装置100および摂食嚥下機能評価システム200に含まれる各構成要素は、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。
【0195】
また、集積回路はLSIに限られず、専用回路または汎用プロセッサで実現されてもよい。プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、または、LSI内部の回路セルの接続および設定が再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサが、利用されてもよい。
【0196】
さらに、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて、摂食嚥下機能評価装置100および摂食嚥下機能評価システム200に含まれる各構成要素の集積回路化が行われてもよい。
【0197】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0198】
100 摂食嚥下機能評価装置
110 取得部
120 算出部
130 評価部
140 出力部
161 参照データ
162 提案データ(データ)
200 摂食嚥下機能評価システム
300 携帯端末(集音装置)
F1 第一フォルマント周波数
F2 第二フォルマント周波数
U 被評価者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図19
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