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特許7403132介護記録装置、介護記録システム、介護記録プログラムおよび介護記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】介護記録装置、介護記録システム、介護記録プログラムおよび介護記録方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20231215BHJP
【FI】
G16H10/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020565220
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2020000636
(87)【国際公開番号】W WO2020145380
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019003873
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516077138
【氏名又は名称】株式会社サンクレエ
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】森 正人
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/186160(WO,A1)
【文献】特開2001-325363(JP,A)
【文献】特開2015-97004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者の状態と前記被介護者に対して介護者が行う介助行為とを記録するための介護記録装置であって、
前記被介護者を撮影しているカメラから撮影データを取得する撮影データ取得部と、
前記撮影データに基づいて映っている人物を検出するとともに、当該人物が前記被介護者であるか前記介護者であるかを判定する人物判定部と、
前記撮影データに基づいて前記被介護者の状態種別を判定するとともに、正常な状態を含む当該状態種別を介護履歴情報として所定の時間間隔毎に連続する日時と対応付けて介護履歴記憶部に記憶させる被介護者状態判定部と、
前記人物判定部によって判定された前記人物に前記介護者が含まれている場合、前記撮影データに基づいて当該介護者の前記介助行為の種別を判定して、当該介助行為の種別を前記介護履歴情報に対応付けて前記介護履歴記憶部に記憶させる介助行為判定部と、
を有する、介護記録装置。
【請求項4】
前記撮影データの撮影範囲内に当該撮影範囲よりも小さいエリアを設定するエリア設定部と、
このエリア設定部で設定されたエリアに対応づけて前記被介護者の体部位を設定する体部位設定部とを有し、
前記被介護者状態判定部は、前記撮影データから前記被介護者の各体部位を表す撮影範囲内の位置を検出するとともに、これらの各体部位の位置のうち前記体部位設定部により設定された体部位の位置が前記エリア設定部により設定されたエリア内にあるか否かに基づいて前記被介護者の前記状態種別を判定する体部位エリア判定モードを有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の介護記録装置。
【請求項9】
前記被介護者毎に定められた身体評価レベルを記憶する身体評価レベル記憶部と、
前記被介護者状態判定部により判定された対象となる被介護者の状態種別が当該被介護者の前記身体評価レベルに対応する異常状態か否かを判別する異常状態判別部と、
前記被介護者が異常状態と判別された場合はその旨を通知する異常状態通知部と
を有する、請求項1から請求項8のいずれかに記載の介護記録装置。
【請求項11】
被介護者の状態と前記被介護者に対して介護者が行う介助行為とを記録するための介護記録プログラムであって、
前記被介護者を撮影しているカメラから撮影データを取得する撮影データ取得部と、
前記撮影データに基づいて映っている人物を検出するとともに、当該人物が前記被介護者であるか前記介護者であるかを判定する人物判定部と、
前記撮影データに基づいて前記被介護者の状態種別を判定するとともに、正常な状態を含む当該状態種別を介護履歴情報として所定の時間間隔毎に連続する日時と対応付けて介護履歴記憶部に記憶させる被介護者状態判定部と、
前記人物判定部によって判定された前記人物に前記介護者が含まれている場合、前記撮影データに基づいて当該介護者の前記介助行為の種別を判定して、当該介助行為の種別を前記介護履歴情報に対応付けて前記介護履歴記憶部に記憶させる介助行為判定部
としてコンピュータを機能させる、介護記録プログラム。
【請求項12】
被介護者の状態と前記被介護者に対して介護者が行う介助行為とを記録するための介護記録方法であって、
前記被介護者を撮影しているカメラから撮影データを取得する撮影データ取得ステップと、
前記撮影データに基づいて映っている人物を検出するとともに、当該人物が前記被介護者であるか前記介護者であるかを判定する人物判定ステップと、
前記撮影データに基づいて前記被介護者の状態種別を判定するとともに、正常な状態を含む当該状態種別を介護履歴情報として所定の時間間隔毎に連続する日時と対応付けて介護履歴記憶部に記憶させる被介護者状態判定ステップと、
前記人物判定ステップによって判定された前記人物に前記介護者が含まれている場合、前記撮影データに基づいて当該介護者の前記介助行為の種別を判定して、当該介助行為の種別を前記介護履歴情報に対応付けて前記介護履歴記憶部に記憶させる介助行為判定ステップと、
を有する、介護記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護に関する記録を行うための介護記録装置、介護記録システム、介護記録プログラムおよび介護記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会による要介護者の増加と、生産年齢人口の減少に伴い、介護業界では慢性的な人手不足に陥っており、介護者一人当たりの業務量が増加している。そこで、介護者の業務負担を少しでも軽減するための技術が開発されている。
【0003】
例えば、巡回業務にかかる負担を軽減させ、被介護者に対して適切なケアを行うために、被介護者が生活する各部屋に監視カメラを設置して、被介護者の生活動作を動画等で監視し、記録する見守りシステムが開発されている。しかし、このような監視カメラを利用した見守りシステムでは、監視カメラの映像がそのまま記録されるため、被介護者のプライバシーが守られないという問題がある。また、監視カメラで撮影されている映像は、監視モニターなどにリアルタイムに表示させることで、被介護者に危険がないかを監視できるようになっている。しかし、通常、介護者は介護業務に追われてモニターによる監視は困難であり、被介護者の危険な状態に気づくのが遅れるという問題もある。
【0004】
そこで、これまでに上記監視カメラの代わりに、各種のセンサを利用した見守りシステムが開発されている。例えば、特開2017-174012号公報では、睡眠センサ、人感センサ、トイレセンサ等から被介護者の睡眠や活動等の状態を記録した時系列データを取得して表示する情報処理装置が開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、介護者間での情報共有や家族への情報提供等のために、介護者が被介護者に対して行った介助行為等を自ら記録している。しかしながら、介護者にとっては、介助行為等の日々の忙しい業務に加えて記録行為を行わなければならず、大きな負担となっている。そこで、これまでに介護者により介助行為等の記録業務を支援するための技術が開発されている。例えば、特開2016-85673号公報には、介護対象者の介護を行う介護スタッフが携行し、介護スタッフがこの介護対象者に対して行った介護実績を所定のフォーマットに記録する介護記録用携帯端末のためのプログラムが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-174012号公報
【文献】特開2016-85673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている各種センサを用いる見守りシステムでは、被介護者の生活動作を記録し、その後に確認することはできても、被介護者に対して行われた食事介助、トイレ介助、入浴介助などの介助行為まで記録することはできていない。仮に、上述のような各種のセンサを利用して介助行為を記録する場合には、介助行為の種別ごとに専用のセンサを設置する必要があり、システムとして極めて複雑でコスト高になるという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載されている介護記録用携帯端末を用いる介護記録方法では、介護者が介助行為を行うたびに介護記録用携帯端末に表示される画面を操作して所定の入力を行わなければならず、非常に煩わしいという問題がある。また、介護者が介護記録用携帯端末の操作に不慣れな場合には、操作が複雑で新たな負担になるという問題もある。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、安価でシンプルなシステム構成でありながら、被介護者の生活状態に関する記録と介護者の介助行為に関する記録とを同時にかつ簡単に行うことで、介護業務の効率化を図ることができる介護記録装置、介護記録システム、介護記録プログラムおよび介護記録方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る介護記録装置は、安価でシンプルなシステム構成でありながら、被介護者の生活に関する記録と介護者の介助行為に関する記録とを同時にかつ簡単に行うことで、介護業務の効率化を図るという課題を解決するために、被介護者の状態と前記被介護者に対して介護者が行う介助行為とを記録するための介護記録装置であって、前記被介護者を撮影しているカメラから撮影データを取得する撮影データ取得部と、前記撮影データに基づいて映っている人物を検出するとともに、当該人物が前記被介護者であるか前記介護者であるかを判定する人物判定部と、前記撮影データに基づいて前記被介護者の状態種別を判定して、当該状態種別に日時を対応付けた介護履歴情報を介護履歴記憶部に記憶させる被介護者状態判定部と、前記人物判定部によって判定された前記人物に前記介護者が含まれている場合、前記撮影データに基づいて当該介護者の前記介助行為の種別を判定して、当該介助行為の種別を前記介護履歴情報に対応付けて前記介護履歴記憶部に記憶させる介助行為判定部と、を有する。
【0011】
また、本発明の一態様として、被介護者を撮影した撮影データから被介護者の状態種別を判定し、被介護者における生活状態の記録の効率化を図るという課題を解決するために、前記被介護者状態判定部は、前記撮影データから前記被介護者の姿勢を表す体部位の各座標を検出するとともに、前記体部位の各座標に基づいて前記被介護者の前記状態種別を判定する姿勢判定モードを有してもよい。
【0012】
さらに、本発明の一態様として、被介護者を撮影した撮影データから被介護者の状態種別を判定し、被介護者における生活状態の記録の効率化を図るという課題を解決するために、前記被介護者状態判定部は、前記被介護者の状態ごとに予め撮影した前記撮影データを学習することにより得られた状態学習済データと、取得した前記撮影データとに基づいて前記状態種別を判定する状態学習判定モードを有してもよい。
【0013】
また、本発明の一態様として、被介護者を撮影した撮影データから被介護者の状態種別を判定し、被介護者における生活状態の記録の効率化や被介護者の危険な状態発見の迅速化を図るという課題を解決するために、前記撮影データの撮影範囲内に当該撮影範囲よりも小さいエリアを設定するエリア設定部と、このエリア設定部で設定されたエリアに対応づけて前記被介護者の体部位を設定する体部位設定部とを有し、前記被介護者状態判定部は、前記撮影データから前記被介護者の各体部位を表す撮影範囲内の位置を検出するとともに、これらの各体部位の位置のうち前記体部位設定部により設定された体部位の位置が前記エリア設定部により設定されたエリア内にあるか否かに基づいて前記被介護者の前記状態種別を判定する体部位エリア判定モードを有してもよい。
【0014】
また、本発明の一態様として、介助行為の記録を行う介護者にかかる負荷を軽減させるという課題を解決するために、前記介助行為判定部は、前記撮影データから前記介護者が所定のジェスチャーを行ったか否かを検出し、前記ジェスチャーを検出した場合に、当該ジェスチャーに対応付けられる前記介助行為の種別を判定するジェスチャー判定モードを有してもよい。
【0015】
さらに、本発明の一態様として、介助行為の記録を行う介護者にかかる負荷を軽減させるという課題を解決するために、前記介助行為判定部は、前記撮影データから前記介護者が指を立てる動作を行ったか否かを検出し、指を立てる動作を検出した場合に、立てた指の本数に対応付けられる前記介助行為の種別を判定するフィンガー判定モードを有してもよい。
【0016】
また、本発明の一態様として、介助行為の種別が自動的に記録されることで、介護者にかかる負荷をさらに軽減させるとともに、記録忘れによる記録漏れの発生を抑制するという課題を解決するために、前記介助行為判定部は、前記介助行為の種別ごとに予め撮影した前記撮影データを学習することにより得られた介助行為学習済データと、取得した前記撮影データとに基づいて前記介助行為の種別を判定する介助行為学習判定モードを有してもよい。
【0017】
さらに、本発明の一態様として、被介護者の1日の生活の様子を簡単かつ効率的に表示するという課題を解決するために、前記介護履歴記憶部に記憶される前記介護履歴情報を用いて、前記被介護者の状態種別および前記介助行為の種別を同一画面に並記して前記被介護者ごとに表示するための介護記録画像を生成する介護記録画像生成部を有してもよい。
【0018】
また、本発明の一態様として、被介護者毎に定められた身体評価レベルに基づき前記被介護者の異常を検出しその異常状態を通知するという課題を解決するために、前記被介護者毎に定められた身体評価レベルを記憶する身体評価レベル記憶部と、前記被介護者状態判定部により判定された対象となる被介護者の状態種別が当該被介護者の前記身体評価レベルに対応する異常状態か否かを判別する異常状態判別部と、前記被介護者が異常状態と判別された場合はその旨を通知する異常状態通知部とを有してもよい。
【0019】
本発明に係る介護記録システムは、安価でシンプルなシステム構成でありながら、被介護者の生活に関する記録と介護者の介助行為に関する記録とを同時にかつ簡単に行うことで、介護業務の効率化を図るという課題を解決するために、前記介護記録装置と、前記被介護者の居室に設置されて前記居室内を撮影しその撮影データを前記介護記録装置に送信する介護記録用カメラとを有する。
【0020】
本発明に係る介護記録プログラムは、安価でシンプルなシステム構成でありながら、被介護者の生活に関する記録と介護者の介助行為に関する記録とを同時にかつ簡単に行うことで、介護業務の効率化を図るという課題を解決するために、被介護者の状態と前記被介護者に対して介護者が行う介助行為とを記録するための介護記録プログラムであって、前記被介護者を撮影しているカメラから撮影データを取得する撮影データ取得部と、前記撮影データに基づいて映っている人物を検出するとともに、当該人物が前記被介護者であるか前記介護者であるかを判定する人物判定部と、前記撮影データに基づいて前記被介護者の状態種別を判定して、当該状態種別に日時を対応付けた介護履歴情報を介護履歴記憶部に記憶させる被介護者状態判定部と、前記人物判定部によって判定された前記人物に前記介護者が含まれている場合、前記撮影データに基づいて当該介護者の前記介助行為の種別を判定して、当該介助行為の種別を前記介護履歴情報に対応付けて前記介護履歴記憶部に記憶させる介助行為判定部としてコンピュータを機能させる。
【0021】
本発明に係る介護記録方法は、安価でシンプルなシステム構成でありながら、被介護者の生活に関する記録と介護者の介助行為に関する記録とを同時にかつ簡単に行うことで、介護業務の効率化を図るという課題を解決するために、被介護者の状態と前記被介護者に対して介護者が行う介助行為とを記録するための介護記録方法であって、前記被介護者を撮影しているカメラから撮影データを取得する撮影データ取得ステップと、前記撮影データに基づいて映っている人物を検出するとともに、当該人物が前記被介護者であるか前記介護者であるかを判定する人物判定ステップと、前記撮影データに基づいて前記被介護者の状態種別を判定して、当該状態種別に日時を対応付けた介護履歴情報を介護履歴記憶部に記憶させる被介護者状態判定ステップと、前記人物判定ステップによって判定された前記人物に前記介護者が含まれている場合、前記撮影データに基づいて当該介護者の前記介助行為の種別を判定して、当該介助行為の種別を前記介護履歴情報に対応付けて前記介護履歴記憶部に記憶させる介助行為判定ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安価でシンプルなシステム構成でありながら、被介護者の生活に関する記録と介護者の介助行為に関する記録とを同時にかつ簡単に行うことで、介護業務の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る介護記録システムの一実施形態を示すブロック図である。
図2】本実施形態における被介護者の状態種別のうち姿勢状態の一例を示す図である。
図3】本実施形態におけるエリア設定部により撮影データの撮影範囲内に設定されたエリアを示す図である。
図4】本実施形態における身体評価レベルを簡易的に設定する場合の一例を示す図である。
図5】本実施形態の介護履歴記憶部に記憶される介護履歴テーブルの一例を示す図である。
図6】本実施形態における被介護者状態判定部の姿勢判定モードにおいて撮影データから各体部位の各座標を検出した結果を示す図である。
図7】本実施形態における被介護者状態判定部の体部位エリア判定モードにおいてエリア設定を行った撮影データから各体部位の各座標を検出した結果を示す図である。
図8】本実施形態における介護記録画像生成部が生成する介護記録画像の一例を示す図である。
図9】本実施形態における介護記録画像生成部が生成する異常記録画像の一例を示す図である。
図10】本実施形態における異常状態通知部により通知された異常情報の表示例を示す図である
図11】本実施形態の介護記録システムによる作用を示すフローチャートである。
図12】本実施形態における被介護者状態判定部の姿勢判定モードの作用を示すフローチャートである。
図13】本実施形態における被介護者状態判定部の状態学習判定モードの作用を示すフローチャートである。
図14】本実施形態における被介護者状態判定部の体部位エリア判定モードの作用を示すフローチャートである。
図15】本実施形態における介助行為判定部のジェスチャー判定モードの作用を示すフローチャートである。
図16】本実施形態における介助行為判定部のフィンガー判定モードの作用を示すフローチャートである。
図17】本実施形態における介助行為判定部の介助行為学習判定モードの作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る介護記録装置、介護記録システム、介護記録プログラムおよび介護記録方法の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0025】
本実施形態の介護記録システム1は、被介護者の生活の状態と被介護者に対して介護者が行う介助行為とを記録するためのものであり、本実施形態では、被介護者の居室内を撮影する介護記録用カメラ2と、この介護記録用カメラ2から送信される撮影データに基づき介護履歴を記録する介護記録装置3とを有する。以下、各構成について説明する。
【0026】
介護記録用カメラ2は、被介護者の居室や廊下、エレベータ前などに設置されて、前記居室内等の静止画像または動画像を撮影するものである。本実施形態における介護記録用カメラ2は、介護記録装置3の通信手段31と有線/無線LAN、WiFi、Bluetooth(登録商標)等で通信接続可能に構成されており、撮影した画像を撮影データとして介護記録装置3へリアルタイムで送信するようになっている。居室内における介護記録用カメラ2の設置場所や設置個数などは被介護者の居室内での主な姿勢などに基づいて決定される。例えば、被介護者が寝たきりの状態であれば、寝たきりの状態からの変化が認識しやすい角度から撮影可能な場所に設置する。
【0027】
介護記録装置3は、被介護者の状態(状態種別)と被介護者に対して介護者が行う介助行為とを記録するためのものである。本実施形態において、状態種別とは、被介護者の生活を行う上での種々の状態であって、被介護者の睡眠を含む生活状態に関して記録可能な種々の状態を含むものである。具体的には、図2に示すように、臥位(寝ている)、寝返り(動作)中、起き上がり(動作)中、(端)座位、立ち上がり(動作)中、立位、転倒/転落など被介護者の姿勢に基づく状態や、後述する被介護者の身体的な評価に基づく注意の必要な状態や危険な状態などが例示される。また、介助行為とは、被介護者に対して行う身体的な介助全般に関する行為であり、ナースコールに対する駆けつけ、起床介助、食事介助、トイレ介助、おむつ交換、入浴介助、更衣介助、就寝介助などが例示される。
【0028】
本実施形態の介護記録装置3は、データベースサーバ等のコンピュータによって構成されており、図1に示すように、主として、介護記録用カメラ2や外部通信端末4等との間で通信を行う通信手段31と、各種の表示画面を表示するとともに各種のデータを入力する表示入力手段32と、各種のデータを記憶するとともに演算処理手段34が演算処理を行う際のワーキングエリアとして機能する記憶手段33と、記憶手段33にインストールされた介護記録プログラム3aを実行することにより、各種の演算処理を実行し後述する各構成部として機能する演算処理手段34とを有する。
【0029】
通信手段31は、通信モジュール等から構成されており、介護記録装置3に通信機能を実装するためのものである。本実施形態における通信手段31は、介護記録用カメラ2から撮影データを受信したり、外部携帯端末4等に、図8乃至図10に示すような介護記録画像や異常記録画像、異常通知などを送信するようになっている。通信方式は特に限定されるものではなく、有線/無線LAN、WiFi、Bluetooth(登録商標)等が例示される。
【0030】
表示入力手段32は、入力機能と表示機能とを有するユーザインターフェースである。本実施形態における表示入力手段32は、タッチパネル機能を備えたディスプレイによって構成されており、主に、各種情報を表示するモニターや後述するエリア設定部321および体部位設定部322として機能する入力手段として用いられる。なお、表示入力手段32の構成は、タッチパネル式のディスプレイによるものに限定されるものではなく、表示機能のみを備えた表示手段、およびキーボードなどの入力機能のみを備えた入力手段をそれぞれ別個に有していてもよい。
【0031】
記憶手段33は、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等で構成されており、図1に示すように、介護記録プログラム3aを記憶するプログラム記憶部331と、人物データを記憶する人物データ記憶部332と、被介護者の状態判定に使用される状態判定用データを記憶する状態判定用データ記憶部333と、介護者の介助行為判定に使用される介助行為判定用データを記憶する介助行為判定用データ記憶部334と、被介護者毎の身体評価レベルを記憶する身体評価レベル記憶部335と、被介護者の異常状態判定に使用される異常状態判定用データを記憶する異常状態判定用データ記憶部336と、被介護者の状態種別および介護者の介助行為種別を時系列で記憶する介護履歴記憶部337とを有している。
【0032】
プログラム記憶部331には、本実施形態の介護記録装置3を制御するための介護記録プログラム3aがインストールされている。そして、演算処理手段34が、当該介護記録プログラム3aを実行することにより、コンピュータを介護記録装置3における各構成部として機能させるようになっている。
【0033】
なお、介護記録プログラム3aの利用形態は、上記構成に限られるものではない。例えば、CD-ROMやUSBメモリ等のように、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に介護記録プログラム3aを記憶させておき、当該記録媒体から直接読み出して実行してもよい。また、外部サーバ等からクラウドコンピューティング方式やASP(Application Service Provider)方式等で利用してもよい。
【0034】
人物データ記憶部332は、人物判定に使用される人物データを記憶するデータベースである。本実施形態では、人物判定部342による顔認証処理に用いられる対象人物の顔を撮影した顔認証用データ、前記人物が被介護者かまたは介護者かなどの個人情報およびそれらを識別するID番号等が記憶されている。なお、人物データは、顔画像データ等に限定されるものではなく、撮影データと対比することで人物判定処理することのできるデータから適宜選択してもよい。
【0035】
状態判定用データ記憶部333は、被介護者の状態判定に使用される状態判定用データを記憶するものである。本実施形態における状態判定用データ記憶部333は、後述する姿勢判定モード343aによる被介護者の状態種別の判定に用いられる体部位の座標に対応した判別用座標データと、後述する状態学習判定モード343bによる被介護者の状態種別の判定に用いられる状態学習済データと、後述する体部位エリア判定モード343cによる被介護者の状態種別の判定に用いられる体部位エリア判定データを記憶している。
【0036】
判別用座標データは、体部位毎の座標値や各体部位同士の相対的な座標値等が例示される。体部位は、頭部、胴部、腕部、脚部や各体部位を繋ぐ関節などからなり、本実施形態では、被介護者の座位姿勢、立位姿勢等を判別可能な体部位に対応した座標データが記憶されている。判別用座標データとして記憶される座標データは、座位姿勢などを撮影した画像からを後述する姿勢判定モード343aで使用する姿勢推定アルゴリズム等を用いて抽出した各体部位の座標を学習させて得られる座標データである。このとき学習させる画像は、後述する被介護者の身体評価レベルや居室内に設置される介護記録用カメラ2の設置位置などを考慮して撮影するのが好ましい。なお、撮影データが一方向から撮影された画像のみを用いる場合は、座標値は撮影データにより得られる二次元座標に基づく。また、多方向から撮影された画像を用いる場合は、二次元座標のみならず三次元座標を用いることもできる。
【0037】
状態学習済データは、被介護者の状態毎に予め撮影して得られた前記撮影データを学習することにより得られるものである。本実施形態では、被介護者の座位姿勢、立位姿勢等を撮影した撮影データを学習させた状態学習済データが記憶されている。
【0038】
体部位エリア判定データは、体部位エリア判定モード343cによる判定の際に用いられるエリア設定部321により設定されたエリアデータと、体部位設定部322により設定された体部位データとからなる。
【0039】
エリア設定部321は、主に、被介護者の身体評価レベル等に応じて撮影データの撮影範囲内にエリアを設定するものであり、本実施形態では、表示入力手段32を入力手段として機能させることで構成される。設定されるエリアは、図3に示すように、前記撮影範囲よりも狭い面積を有しており、本実施形態では、撮影データの撮影範囲内における特定の範囲を示す座標データとして記憶している。また、本実施形態におけるエリア設定部321は、1つの撮影範囲に対して複数のエリアを設定できるようになっている。具体的には、注意の必要な状態か否かを判定するために設定される注意エリアと、危険な状態か否かを判定するために設定される危険エリアとを適宜選択して設定できる。これにより、エリアごとに判定結果を分けることができるようになっている。
【0040】
体部位設定部322は、エリア設定部321により設定されたエリアに対応づけて被介護者の体部位を設定するものであり、本実施形態では、表示入力手段32を入力手段として機能させることで構成される。設定される体部位は、頭部、胴部、腕部、脚部や各体部位を繋ぐ関節などからなり、表示入力手段32によりキーボード入力される体部位名や表示される複数の体部位名から選択入力される体部位名をテキストデータなどによって記憶するようになっている。
【0041】
介助行為判定用データ記憶部334は、介護者により被介護者に対して行われた介助行為の判定に使用される介助行為判定用データを記憶するものである。本実施形態における介助行為判定用データ記憶部334は、後述するジェスチャー判定モード344aによる介護者の介助行為種別の判定に用いられるジェスチャーデータと、後述するフィンガー判定モード344bによる介護者の介助行為種別の判定に用いられるフィンガーデータと、後述する介助行為学習判定モード344cによる介護者の介助行為種別の判定に用いられる介助行為学習済データとを記憶している。
【0042】
ジェスチャーデータは、介護者の行うジェスチャーと、介助行為とを対応付けたデータである。前記ジェスチャーは、介護者の特徴的な部位の動きや形状であって、手の先や腕等で描く、三角形や四角形、星形等の幾何学模様などの動きを伴う動的なジェスチャーや、グー、チョキ、パーといった動きを伴わない静的なジェスチャーが例示される。ジェスチャーデータでは、これらのジェスチャー毎にナースコールに対する駆けつけ、起床介助、食事介助、トイレ介助、おむつ交換、入浴介助、更衣介助、就寝介助等の介助行為の種別を対応付けて記憶している。
【0043】
フィンガーデータは、介護者が掲げた手において突出されている指の本数と、介助行為とを対応付けたデータである。例えば、指の本数が1本の場合はナースコールに対する駆けつけ、2本の場合は起床介助のように、指の本数と各介助行為の種別とを対応付けて記憶している。
【0044】
介助行為学習済データは、介護者の介助行為の種別ごとに予め撮影して得られた前記撮影データを学習することにより得られるものである。本実施形態では、介助行為の種別毎の状態を撮影した撮影データを学習させた介助行為学習済データが記憶されている。例えば、図1に示すように、食事介助を行った状態を撮影した撮影データを学習させることで、食事介助に対応した介助行為学習済データを作成し、そのデータを記憶している。
【0045】
身体評価レベル記憶部335は、被介護者毎の身体評価レベルを記憶させたデータベースである。本実施形態における身体評価レベルとは、被介護者毎の日常生活の動作や徒手筋力測定結果に基づき定められるレベルである。本実施形態では、姿勢判定モード343aおよび状態学習判定モード343bによって判定される被介護者の姿勢に応じて正常および異常を判定するためのものであって、図4に示すように、座位姿勢および立位姿勢においてそれぞれ、許可、介助必要、不許可と定めている。具体的には、座位姿勢において許可とは座位姿勢が常に認められるレベル、介助必要とは介助者などの付き添いや補助器具と一緒等の条件下で座位姿勢が認められるレベル、不許可とは座位姿勢が認められないレベルとして定められる。または、立位姿勢において許可とは立位姿勢が常に認められるレベル、介助必要とは介助者などの付き添いや補助器具と一緒等の条件下で立位姿勢が認められるレベル、不許可とは立位姿勢が認められないレベルとして定められている。図4に示す評価レベルは、座位姿勢は自由にできるが、立位姿勢の場合は介助が必要なレベルを示している。
【0046】
その他、身体評価レベルとしては、日常生活動作(ADL)の国際的な評価方法であるFIM(Functional Independence Measure)や全身の筋力を評価する際に臨床で主に用いられる徒手筋力測定MMT(manual muscle test)などを用いる方法が例示される。
【0047】
FIMは、主に機能レベルに基づく評価方法であり、「0.完全自立」、「1.特殊環境で自立」、「2.軽介助」、「3.中等度介助」、「4.重介助」、「5.全介助」の6段階で評価する。
【0048】
また、MMTでは、強い抵抗を加えても完全に動かせる筋力レベルを「5.normal」、かなりの抵抗を加えても完全に動かせる筋力レベルを「4.good」、重力に打ちかって完全に動かせる筋力レベルを「3.fair」、重力を除けば完全に動かせる筋力レベルを「2.poor」、関節は動かない筋収縮のみの筋力レベルを「1.trace」、筋収縮も全く見られない筋力レベルを「0.zero」として6段階で評価する。
【0049】
その他に、食事、トイレ、整容の認知能力に基づき「0.完璧」、「1.部分的」、「2.わずか」、「3.なし」といった4段階の評価や、運動の最良応答として、「0.命令に従う」、「1.痛部位に動かす」、「3.逃避四肢屈曲」、「4.異常四肢屈曲」、「4.四肢伸展」、「5.全く動かさず」といった評価を用いることもできる。
【0050】
そして、身体評価レベル記憶部335では、被介護者毎に、少なくともいずれかの評価方法で評価されたレベルを記憶している。
【0051】
異常状態判定用データ記憶部336は、身体評価レベルや被介護者の状態種別に基づき被介護者の正常・異常をデータベース化したものである。本実施形態では、身体評価レベルと、被介護者の姿勢との組み合わせ毎に正常か異常かを記憶している。
【0052】
例えば、図4に示すように、座位姿勢は自由にできるが、立位姿勢の場合は介助が必要なレベルの場合、状態種別が「座位姿勢」の場合は「正常」として記憶しており、座位姿勢から単独で立ち上がろうとしている場合や立ち上がった場合は「異常」であると記憶している。同様に、MMTに基づく身体評価レベルが筋肉を問題なく動かすことのできる「5.normal」レベルであった場合、状態種別が「座位姿勢」の場合は「正常」として記憶している。一方、MMTに基づく身体評価レベルが筋肉を全く動かすことのできない「0.zero」レベルであった場合、状態種別が同じ「座位姿勢」であってもこの被介護者においては座位姿勢をとることもままならないため「異常」として記憶している。このように、状態種別に対する正常・異常は、身体評価レベルに応じて異なる。よって、異常状態判定用データ記憶部336では、身体評価レベル毎の状態種別に対する正常や異常を記憶している。なお、正常および異常の区分は特に限定されるものではないが、正常、やや異常、異常、とても異常など、異常についてはその異常レベルに応じた区分を設定してもよい。ここで前記異常レベルの区分数や対応する名称等は適宜選択してもよい。
【0053】
介護履歴記憶部337は、被介護者毎(被介護者ID毎)に当該被介護者の状態や介助行為の情報が時系列で蓄積され介護履歴情報を記憶するものである。本実施形態における介護履歴記憶部337は、図5に示すように、後述する被介護者状態判定部343によって判定された状態種別、例えば、姿勢判定モード343aや状態学習判定モード343bにより判定された姿勢の状態や体部位エリア判定モード343cにより判定された注意が必要な状態および危険な状態に、日時を対応付けた介護履歴情報が所定の時間間隔で記憶されているとともに、介助行為判定部344により判定された介助行為の種別、およびその介助行為を行った人物の介護者IDが対応付けられて記憶できるようになっている。また、本実施形態では、体部位エリア判定モード343cによる判定結果が注意が必要な状態および危険な状態であった場合には、そのとき撮影された撮影データを記憶できるようになっている。
【0054】
なお、介護履歴記憶部337に記憶される介護履歴情報の項目は、図5に示すものに限定されるものではなく、必要に応じて増減させてもよい。また、被介護者の状態に対する介護者の介助行為等について、相互の対応付けが可能であれば、被介護者の介護履歴情報と、介護者の介護履歴情報とを別の記憶部で管理するようにしてもよい。また、正常や異常、注意が必要な状態、危険な状態など状態種別とは別項目として記憶させてもよい。
【0055】
つぎに、演算処理手段34について説明する。演算処理手段34は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成されており、記憶手段33にインストールされた介護記録プログラム3aを実行することにより、図1に示すように、撮影データ取得部341、人物判定部342、被介護者状態判定部343、介助行為判定部344、介助記録画像生成部345、異常状態判別部346および異常状態通知部347として機能するようになっている。
【0056】
撮影データ取得部341は、介護記録用カメラ2から送信される撮影データを取得するものである。本実施形態において、撮影データ取得部341は、所定の時間間隔で通信手段31を介して介護記録用カメラ2から送信される撮影データを取得する。
【0057】
人物判定部342は、撮影データ取得部341により取得された撮影データに映っている人物を検出するとともに、当該人物が被介護者であるか介護者であるかを判定するものである。具体的には、一般的な人物検出アルゴリズムを用いて、撮影データ内に人物領域が抽出されるか否かを判定する。人物領域が抽出された場合は、人物データ記憶部332から顔認証用データを読み出して、顔認証用データとして記憶されている顔画像と抽出された人物領域における顔領域とを照合することで、当該人物が被介護者であるか、または介護者であるかを判定する。
【0058】
なお、本実施形態では、顔認証で被介護者であるか介護者であるかが判定されるようになっているが、被介護者であるか介護者であるかを判定する方法は顔認証による方法に限られず、例えば、検出された人物の位置がベッド領域の内側である場合に当該人物が被介護者であると判定し、ベッド領域の外側における所定の位置である場合に当該人物が介護者であると判定するようにしてもよい。
【0059】
被介護者状態判定部343は、被介護者の状態種別を判定するものである。本実施形態において、体部位の各座標に基づいて前記被介護者の前記状態種別を判定する姿勢判定モード343aと、状態学習済データおよび取得した前記撮影データに基づいて前記状態種別を判定する状態学習判定モード343bと、設定されたエリアに特定の体部位があるか否かに基づいて注意の必要な状態かまたは危険な状態かを判定する体部位エリア判定モード343cとを有する。
【0060】
姿勢判定モード343aは、姿勢推定アルゴリズムを用いて、図6に示すように、撮影データ取得部341により取得された撮影データから被介護者の関節点や顔の各体部位(目、耳、鼻等)の各座標を検出し、この検出した各座標と状態判定用データ記憶部333に記憶されている判別用座標データとを比較し、判別用座標データとの類似度合や姿勢を表す特徴量を得ることで、被介護者の座位姿勢や立位姿勢などの種別を判定する。姿勢推定アルゴリズムは、適宜選択することができ、DeepLearningを使用したOpenPose(tf-pose-estimationなど)やPoseNet、BodyPixなどが例示される。この姿勢推定アルゴリズムは、介護記録装置3の演算処理手段34で実行処理を行ってもよく、画像処理手段を備えた別装置やGoogleがオープンソースとして公開している機械学習ライブラリTensorFlow等を用いたWebブラウザにより実行処理を行ってもよい。
【0061】
なお、姿勢判定モード343aにおける座標とは、撮影データの撮影範囲内における位置を特定するものであり、上述のとおり、画像の撮影方向や撮影方向の数に応じて二次元座標または三次元座標から適宜選択することができる。
【0062】
状態学習判定モード343bは、状態学習済データと撮影データとに基づいて状態の種別を判定する。具体的には、撮影データから被介護者の画像領域を表す画像特徴量を算出する。そして、状態判定用データ記憶部333に記憶されている状態学習済データを読み出して、算出した画像特徴量と各状態学習済データとの類似度合を算出する。状態学習済データに算出された類似度合が所定の閾値以上のものがあった場合、当該状態学習済データの種別を被介護者の状態の種別として判定する。類似度合が所定の閾値以上のものが複数あった場合は類似度合の大きいものを被介護者の状態種別を判定するようにしてもよい。
【0063】
体部位エリア判定モード343cは、撮影データの撮影範囲内にエリアを設定し、このエリア内に設定された被介護者の体部位の有無に基づいて状態の種別を判定するものであり、本実施形態では、状態判定用データ記憶部333に体部位エリア判定データとして記憶されたエリア設定部321により設定されたエリアおよび体部位設定部322により設定された体部位に基づき正常な状態か、注意の必要な状態か、危険な状態かを判定する。
【0064】
本実施形態における体部位エリア判定モード343cでは、姿勢判定モード343aと同様な姿勢推定アルゴリズムを用いて、図7に示すように、撮影データ取得部341により取得された撮影データから被介護者の関節点や顔の各体部位(目、耳、鼻等)の座標を検出し、この検出した座標の配置などから被介護者の体部位を特定する。そして、その体部位のうち体部位設定部322により設定された体部位と一致する体部位の位置(座標)が、エリア設定部321により設定されたエリア内かエリア外かを判別する。本実施形態では、設定された体部位が前記エリア外と判別された場合は正常な状態と判定し、設定された体部位が前記エリア内と判別された場合は注意が必要な状態または危険な状態であると判定する。なお、この判定基準は、本実施例とは逆に、体部位がエリア外と判別された場合に注意が必要な状態や危険な状態と判定する基準に設定してもよい。
【0065】
なお、撮影データから前記被介護者の各体部位を表す撮影範囲内の位置の検出は、姿勢推定アルゴリズムで得られる座標に基づく方法に限定されるものではなく、例えば、状態学習判定モード343bのように各体部位の画像を学習させた状態学習済データと、撮影データとを比較して、その類似度合から検出するようにしてもよい。
【0066】
本実施形態における被介護者状態判定部343では、姿勢判定モード343a、状態学習判定モード343bおよび体部位エリア判定モード343cのいずれのモードにおいても、人物判定部342によって人物が検出されなかった場合、および検出された人物が被介護者以外の場合には、居室内に被介護者がいないものとして、被介護者の状態種別を「活動(離床)」と判定する。
【0067】
そして、被介護者状態判定部343は、判定された状態種別を、図5に示すように、被介護者毎に時系列に並べて作成される介護履歴情報として介護履歴記憶部337に記憶させる。
【0068】
介助行為判定部344は、介助行為の種別を判定するものであり、人物判定部342により判別された撮影データ内の人物に介護者が含まれるか否かを判定し、その中に介護者が含まれる場合には、前記撮影データに基づいて前記介護者による介助行為の種別を判定する。本実施形態における介助行為判定部344は、介護者が行ったジェスチャーに基づき介助行為の種別を判別するジェスチャー判定モード344aと、介護者が立てた指の本数に基づき介助行為の種別を判別するフィンガー判定モード344bと、介助行為学習済データおよび取得した撮影データとに基づいて介助行為の種別を判定する介助行為学習判定モード344cとを有する。
【0069】
ジェスチャー判定モード344aでは、撮影データから介護者が所定のジェスチャーを行ったか否かを検出し、ジェスチャーを検出した場合に、当該ジェスチャーに対応付けられる介助行為の種別を判定する。具体的には、まず、撮影データから介護者の手領域や腕領域などの特徴的な部位を抽出する。そして、介助行為判定用データ記憶部334からジェスチャーデータを読み出して、抽出した特徴的な部位の動きや形状とジェスチャーデータと比較して、各パターンの類似度をそれぞれ算出し、類似度が所定の閾値以上のジェスチャーがあるか否かを判定する。所定の閾値以上のジェスチャーがあった場合には、当該ジェスチャーパターンに対応付けられる介助行為の種別を介護者が行った介助行為の種別として判定する。類似度合が所定の閾値以上のものが複数あった場合は類似度合の大きいものを介助行為の種別として判定するようにしてもよい。
【0070】
フィンガー判定モード344bでは、撮影データから介護者が指を立てる動作を行ったか否かを検出し、指を立てる動作を検出した場合には、立てた指の本数を抽出し、その本数に対応付けられる介助行為を介護者の介助行為の種別として判定する。例えば、撮影データから介護者の手領域とその他の領域とに二値化する。手領域において突出された部位の数を検出する。そして検出された数を介護者の立てた指の本数とする。そして、介助行為判定用データ記憶部334に記憶されたフィンガーデータから、指の本数に対応付けられた介助行為を抽出し、その介助行為を介護者が行った介助行為の種別として判定する。
【0071】
なお、立てた指の本数の検出方法は、介護者の手領域とその他の領域とを二値化して実行する手法に限定されるものではなく、立てた指の本数を抽出可能な他のアルゴリズムなどから適宜選択してもよい。
【0072】
介助行為学習判定モード344cでは、介助行為学習済データと撮影データとに基づいて介助行為の種別を判定する。具体的には、撮影データから画像特徴量を算出する。このとき算出する画像の特徴量は介護者、被介護者またはその両方でもよい。そして、介助行為判定用データ記憶部334に記憶されている介助行為学習済データを読み出して、算出した画像特徴量と各介助行為学習済データとの類似度合を算出する。介助行為学習済データに算出された類似度合が所定の閾値以上のものがあった場合、当該介助行為学習済データの種別を介護者の介助行為として判定する。類似度合が所定の閾値以上のものが複数あった場合は類似度合の大きいものを介護者の介助行為の種別として判定するようにしてもよい。
【0073】
また、介助行為学習判定モード344cでは、機械学習アルゴリズムを用いて判定することもできる。つまり、介助行為判定用データ記憶部334には、機械学習アルゴリズムに設定する学習パラメータとして介助行為学習済データが記憶されており、当該介助行為学習済データを学習済モデルに設定し、当該学習済モデルに対して撮影データを入力することにより得られる出力結果が所定の閾値以上であるか否かを判定してもよい。その場合、出力結果が所定の閾値以上である場合に、当該出力結果となる介助行為の種別を判定する。
【0074】
また、本実施形態では、複数の介護者で介助行為を行う場合にも対応させるために、単独の介護者で介助行為を行う撮影データだけでなく、複数の介護者で介助行為を行う撮影データを使用して学習してもよい。なお、機械学習アルゴリズムは、姿勢推定アルゴリズムと同様に、介護記録装置3の演算処理手段34で実行処理を行ってもよく、画像処理手段を備えた別装置やWebブラウザにより実行処理を行ってもよい。
【0075】
そして、介助行為判定部344は、介助行為の種別を被介護者の介護履歴情報に対応付けて介護履歴記憶部337に記憶させる。本実施形態では、図5に示すように、介助行為の種別とともに当該介助行為を行った介護者の介護者IDを記憶させる。複数人の介護者により介助行為が行われた場合は、それぞれの介護者IDを記憶させる。
【0076】
介護記録画像生成部345は、介護記録を表示するための介護記録画像や被介護者の異常状態と記録された情報を表示するための異常記録画像を生成するためのものである。本実施形態における介護記録画像生成部345は、表示入力手段32や外部通信端末4から介護記録の表示が指示された場合、介護履歴記憶部337から介護履歴情報を読み出して、介護記録画像を生成し、表示入力手段32に送信する。この介護記録画像には、被介護者の状態種別および介助行為の種別を同一画面に並記して被介護者ごとに表示される。
【0077】
例えば、図8に示すように、被介護者の1日の生活の様子を一目で視認可能なように、24時間を各時間で区切られた横軸に対して、各状態種別(「睡眠」、「活動」、「活動(離床)」)に応じた項目が縦方向に配置された状態種別表示欄が設けられている。この状態種別表示欄には、各状態種別の時間範囲に対応付けて、項目ごとに帯状に色付けされて表示されている。さらに、状態種別表示欄の下側には、介助行為が行われた時間に対応させて、介助行為の種別を表示する介助行為表示欄が設けられている。
【0078】
また、表示入力手段32や外部通信端末4から異常状態の表示が指示された場合、介護履歴記憶部337から介護履歴情報を読み出して、異常状態の表示として必要な情報の一覧からなる異常記録画像を生成する。具体的には、図9に示すように、注意が必要な状態や危険な状態などの異常状態の判定結果、異常判定された日時、およびそのとき撮影された撮影データからなる異常記録画像を生成する。そして、生成した異常記録画像を表示入力手段32に送信する。
【0079】
なお、介護記録画像を表示させるのは表示入力手段32に限定されるものではなく、図1に示すように、通信手段を介して通信可能に接続された外部通信端末4に前記画像を送信して表示させるようにしてもよい。
【0080】
異常状態判別部346は、被介護者の身体評価レベルと、撮影データから判別された被介護者の状態の種別とに基づき、前記被介護者が正常か、それとも異常かを判別するものである。具体的には、被介護者状態判定部343における姿勢判定モード343aおよび状態学習判定モード343bにより判定された被介護者の状態の種別(姿勢状態)を取得すると伴に、身体評価レベル記憶部335から被介護者に付与されている身体評価レベルを読み出す。そして、異常状態判定用データ記憶部336に記憶されたデータベースから、被介護者の身体評価レベルと状態の種別との組合せにより定められた、正常や異常、またはやや異常、異常、とても異常などの異常レベルを抽出し、それに基づき被介護者の正常および異常を判別する。
【0081】
また、異常状態判別部346は、体部位エリア判定モード343cにより体部位設定部322により設定された体部位と一致する体部位の位置が、エリア設定部321により設定されたエリア内にあると判別された場合には、状態判定用データ記憶部333から当該エリアが注意エリアか危険エリアかの情報を取得する。そして、当該エリアが注意エリアの場合には被介護者が注意が必要な状態であると判別し、当該エリアが危険エリアの場合には被介護者が危険な状態であると判別する。
【0082】
異常状態通知部347は、異常状態判別部346により被介護者の状態が異常状態であると判別された場合および体部位エリア判定モード343cにより体部位設定部322により設定された体部位と一致する体部位の位置が、エリア設定部321により設定されたエリア内にあると判別された場合に、その旨を通知するものである。本実施形態では、通信手段31を介して異常状態および異常時の被介護者の撮影データを表示入力手段32または外部通信端末4に送信するようになっている。これにより、図10に示すように、表示入力手段32や外部通信端末4の表示画面上に被介護者の撮影データや異常状態を通知するポップアップウインドウを表示させたり、スピーカー(図示しない)から通知音を発したりすることができるようになっている。なお、異常状態を介護者等に通知する機器は、特に限定されるものではなく、例えば、異常状態の判別結果に応じて点灯、点滅、消灯および変色することのできる非常灯(ランプ)等から適宜選択してもよい。
【0083】
つぎに、本実施形態の介護記録装置3、介護記録システム1、介護記録プログラム3aにおける各構成の作用および介護記録方法について説明する。
【0084】
本実施形態では、介護記録用カメラ2が被介護者の居室内を撮影する。そして、図11に示すように、介護記録装置3の撮影データ取得部341が前記介護記録用カメラ2により撮影された被介護者の居室内の撮影データを通信手段31を介して取得する(撮影データ取得ステップ:S1)。
【0085】
人物判定部342は、撮影データに映り込んでいる人物を検出するとともに、この人物が被介護者であるか介護者であるかを判定する(人物判定ステップ:S2)。これにより、被介護者と介護者とを区別して、それぞれに対して適切な判定処理を実行することが可能になる。
【0086】
つづいて、被介護者状態判定部343が、撮影データに基づいて被介護者の状態種別を判定する(被介護者状態判定ステップ:S3)。本実施形態では、姿勢判定モード343a、状態学習判定モード343bおよび体部位エリア判定モード343cから適宜選択された一つのモードにより判定する。なお、選択するモードは一つに限定されるものではなく複数のモードを選択して判定するようにしてもよい。
【0087】
姿勢判定モード343aを選択した場合は、図12に示すように、まず、人物判定部342により判定された撮影データ内の人物に被介護者が含まれるか否かを判定する(S11)。被介護者が含まれている場合には(S11:YES)、撮影データ取得部341により取得された撮影データから被介護者の関節点や顔の各体部位(目、耳、鼻等)の各座標を検出し、記憶手段33に記憶する(S12)。また、状態判定用データ記憶部333から判別用座標データを読み出す(S13)。そして、検出した各座標と読み出した判別用座標データとを比較し、被介護者の状態種別を判定する(S14)。
【0088】
一方、人物判定部342により判定された撮影データ内の人物に被介護者が含まれていなかった場合には(S11:NO)、居室外にいるものとして活動状態(「活動(離床)」)であると判定する(S15)。
【0089】
そして、被介護状態判定部343は、判定された被介護者の状態種別を、図5に示すように、時系列にまとめて介護履歴記憶部337に記憶させる(S16)。
【0090】
また、状態学習判定モード343bを選択した場合は、図13に示すように、人物判定部342により判定された撮影データ内の人物に被介護者が含まれるか否かを判定し(S21)、被介護者が含まれている場合には(S21:YES)、撮影データから被介護者の画像領域を表す画像特徴量を算出する(S22)。また、状態判定用データ記憶部333に記憶されている状態学習済データを読み出す(S23)。つぎに、算出した画像特徴量と各状態学習済データとの類似度合を算出する(S24)。そして、状態学習済データに算出された類似度合が所定の閾値以上のものがあるか否かを判別する(S25)。ここで、所定の閾値以上のものがあった場合には(S25:YES)、当該状態学習済データの種別を被介護者の状態の種別として判定する(S26)。所定の閾値以上のものがなかった場合は(S25:NO)、S1にもどり、他の撮影データに基づき被介護者の状態種別の判定を試みる。
【0091】
一方、人物判定部342により判定された撮影データ内の人物に被介護者が含まれていなかった場合には(S21:NO)、居室外にいるものとして活動状態(「活動(離床)」)であると判定する(S27)。
【0092】
そして、判定された被介護者の状態種別を、図5に示すように、時系列にまとめて介護履歴記憶部337に記憶させる(S28)。
【0093】
さらに、体部位エリア判定モード343cを選択した場合は、図14に示すように、人物判定部342により判定された撮影データ内の人物に被介護者が含まれるか否かを判定する(S31)。被介護者が含まれている場合には(S31:YES)、撮影データ取得部341により取得された撮影データから被介護者の関節点や顔の各体部位(目、耳、鼻等)の各座標を検出し、この検出した座標の配置などから被介護者の体部位を特定する(S32)。つぎに、状態判定用データ記憶部333から体部位エリア判定データとして記憶されたエリアデータと、体部位データとを取得する(S33)。そして、S32において特定された被介護者の体部位に基づき、体部位データとして記憶されている設定された体部位の座標を取得する(S34)。つぎに、この体部位の座標位置がエリアデータの座標範囲外か否かを判別する(S35)。ここで、設定された体部位の座標がエリアデータの座標範囲外の場合には(S35:YES)、注意が必要な状態や危険な状態ではない正常な状態と判定する(S36)。一方、設定された体部位の座標がエリアデータの座標範囲外ではない(範囲内にある)場合には(S35:NO)、異常状態判別部346が当該エリアが注意エリアか危険エリアかを判別する(S37)。ここで注意エリアに設定されている場合には(S37:注意エリア)、被介護者の状態種別を「注意が必要な状態」と判定する(S38)。一方、危険エリアに設定されている場合には(S37:危険エリア)、被介護者の状態種別を「危険な状態」と判定する(S39)。
【0094】
一方、人物判定部342により判定された撮影データ内の人物に被介護者が含まれていなかった場合には(S31:NO)、居室外にいるものとして活動状態(「活動(離床)」)であると判定する(S40)。
【0095】
そして、判定された被介護者の状態種別を、図5に示すように、時系列にまとめて介護履歴記憶部337に記憶させる(S41)。
【0096】
このように、被介護者状態判定部343は、状態種別に日時を対応付けた介護履歴情報を介護履歴記憶部337に記憶させる。これにより、撮影データそのものを記憶させること必要がなくなるため、被介護者のプライバシーを保護しつつ、介護履歴を記録することができる。
【0097】
つぎに、介助行為判定部344は、介護者による介助行為の判定を行う(介助行使判定ステップ:S4)。本実施形態では、ジェスチャー判定モード344a、フィンガー判定モード344bまたは介助行為学習判定モード344cから適宜選択された一つのモードにより判定する。なお、選択するモードは一つに限定されるものではなく複数のモードを選択して判定するようにしてもよい。
【0098】
ジェスチャー判定モード344aを選択した場合は、図15に示すように、まず、人物判定部342により判定された撮影データ内の人物に介護者が含まれるか否かを判定する(S51)。そして、介助行為判定部344は、撮影データ内の人物に介護者が含まれる場合には(S51:YES)、撮影データから介護者の手領域や腕領域等の特徴的な部位の動きまたは形状を抽出する(S52)。また、介助行為判定用データ記憶部334からジェスチャーデータを読み出す(S53)。つぎに、前記特徴的な部位の動きまたは形状とジェスチャーデータと比較して、各パターンの類似度をそれぞれ算出する(S54)。そして、類似度が所定の閾値以上のジェスチャーがあるか否かを判定する(S55)。これにより、撮影データに介護者による所定ジェスチャーが含まれていたか否かを検出する。ここで所定の閾値以上のジェスチャーがあった場合には(S55:YES)、当該ジェスチャーパターンに対応付けられる介助行為の種別を介護者が行った介助行為の種別として判定する(S56)。そして、判定された介護者の介助行為の種別を、図5に示すように、被介護者の状態種別と合わせて介護履歴記憶部337に記憶する(S57)。そして、介助行為の判定を終了する。
【0099】
一方、所定の閾値以上のジェスチャーが無かった場合(S55:NO)および撮影データ内の人物に介護者が含まれていない場合(S51:NO)は、介護者は介助行為を行われていないものとして、介助行為の判定を終了する。
【0100】
フィンガー判定モード344bを選択した場合は、図16に示すように、人物判定部342により判定された撮影データ内の人物に介護者が含まれるか否かを判定し(S61)、介護者が含まれる場合には(S61:YES)、撮影データから介護者の手領域を抽出する(S62)。そして、抽出された手の領域から立てられている指の本数を判定する(S63)。例えば、本実施形態では、手領域とその他の領域とに二値化し、手領域において突出された部位の数を検出し、その数を介護者の立てた指の本数として判定する。つぎに、介助行為判定用データ記憶部334に記憶されたフィンガーデータを読み出す(S64)。そして、フィンガーデータからS63において判定された指の本数に対応付けられた介助行為を抽出し、その介助行為を介護者が行った介助行為の種別として判定する(S65)。そして、判定された介護者の介助行為の種別を、図5に示すように、被介護者の状態種別と合わせて介護履歴記憶部337に記憶し(S66)、介助行為の判定を終了する。
【0101】
介助行為学習判定モード344cを選択した場合は、図17に示すように、人物判定部342により判定された撮影データ内の人物に介護者が含まれるか否かを判定し(S71)、介護者が含まれる場合には(S71:YES)、撮影データから画像特徴量を算出する(S72)。つぎに、介助行為判定用データ記憶部334から介助行為学習済データを読み出す(S73)。そして、算出した画像特徴量と各介助行為学習済データとに基づき類似度合を算出する(S74)。また、算出された類似度合が所定の閾値以上か否かを判定する(S75)。ここで類似度合が所定の閾値以上のものであった場合には(S75:YES)、当該介助行為学習済データの種別を介護者の介助行為として判定する(S76)。そして、判定された介護者の介助行為の種別を、図5に示すように、被介護者の状態種別と合わせて介護履歴記憶部337に記憶し(S77)、介助行為の判定を終了する。
【0102】
このように、介助行為学習判定モード344cでは、介護者のジェスチャーや指を立てる行為が不要になる。よって、介護者の記録忘れによる記録漏れの発生を低減させることができる。
【0103】
つぎに、異常状態判別部346は、被介護者の身体評価レベルと、撮影データから判別された被介護者の状態の種別とに基づき、前記被介護者が正常か、それとも異常かを判別する(異常状態判別ステップ:S5)。本実施形態において被介護者の状態が姿勢判定モード343aおよび状態学習判定モード343bにより判定された場合には、異常状態判定用データ記憶部336に記憶されている、身体評価レベルと被介護者の状態種別との組み合わせに応じて予め定められている正常または異常のいずれに該当するかを判別する。また、体部位エリア判定モード343cにより体部位設定部322により設定された体部位と一致する体部位の位置が、エリア設定部321により設定されたエリア内にあると判別された場合には、状態判定用データ記憶部333から当該エリアが注意エリアか危険エリアかの情報を取得し、当該エリアが注意エリアの場合には被介護者が注意が必要な状態であると判別し、当該エリアが危険エリアの場合には被介護者が危険な状態であると判別する。
【0104】
そして、異常状態通知部347が、被介護者の状態が異常状態であると判別された場合、または、体部位エリア判定モード343cによる判定結果が「注意が必要な状態」および「危険な状態」のときには、通信手段31を介して異常を表示入力手段32や外部通信端末4に送信する(異常状態通知ステップ:S6)。本実施形態では、異常の情報、または、注意が必要な状態および危険な状態の情報や異常時の被介護者の撮影データを送信する。これらの情報を受信した表示入力手段32や外部通信端末4では、図10に示すように、受信した異常状態および異常時の被介護者の撮影データを表示画面上に表示するとともに、スピーカーから通知音を発する。これにより表示入力手段32の近傍で作業している介護者や外部通信端末4を携帯している介護者に被介護者の異常状態を迅速に知らせることができる。
【0105】
以上のS1~S6までは、介護履歴を記録する間繰り返し処理される。
【0106】
また、介護記録画像生成部345は、表示入力手段32や外部通信端末4から介護記録の表示が指示された場合には、図8に示すように、介護履歴情報を用いて介護記録画像を生成し、表示入力手段32に表示させるか、通信手段31を介して外部通信端末4に送信する。前記介護記録画像には、被介護者の状態種別および介助行為の種別が同一画面に並記されているため、被介護者の1日の生活の様子を一目でわかりやすく表示させることが可能になる。また、状態種別と介助行為の種別とが介護履歴テーブルで一元管理されているため、複数のデータベースを読み出して統合させる手間が不要になり、簡単かつ効率的に表示させることが可能になる。また、異常記録の表示が指示された場合には、図9に示すように、介護履歴情報を用いて異常記録画像を生成し、表示入力手段32に表示させるか、通信手段31を介して外部通信端末4に送信する。異常記録画像には、異常な状態になった日時とともに、そのときの撮影データが表示されるので、実際にどのような状態(姿勢)になったかを確認することができる。
【0107】
以上のような本実施形態の介護記録装置3、介護記録システム1、介護記録プログラム3aおよび介護記録方法によれば、以下のような効果を奏する。
1.介護記録用カメラ2が、被介護者の状態を入力する機能と、介護者の介助行為を入力する機能とを兼ね備えているため、多数のセンサや端末装置等を設置する必要がなく、安価でシンプルなシステム構成により、介護履歴を記録することができる。
2.介護記録用カメラ2により撮影した撮像データ(画像や動画)を記録するのではなく、状態の種別を介護記録として記録するため、被介護者のプライバシーを保つことができる。
3.介護者の介助行為を操作端末などによる直接的な入力操作を必要としないため、記録業務にかかる負荷を軽減させることができる。
4.介護者の状態種別と介助行為の種別とを同一画面に並記した介護記録画像を生成することができるため、被介護者の1日の生活の様子を一目でわかりやすく、また介護者が介助行為を行ったか否かを一目瞭然で確認することができる。
5.被介護者の身体評価レベルに応じた正常・異常を判別することができるため、被介護者毎に迅速かつきめ細かい介助行為を行うことができる。
【0108】
なお、本発明に係る介護記録装置、介護記録システム、介護記録プログラムおよび介護記録方法は、上述した本実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、上述した本実施形態では、介護記録装置3が、介護記録画像生成部345を有しているが、必ずしも設ける必要はない。また、介護履歴情報記憶部337は、外部のデータサーバ等に送信して記憶させるようにしてもよい。さらに、人物データと身体評価レベルとを統合して、同じ記憶部に記憶させてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 介護記録システム
2 介護記録用カメラ
3 介護記録装置
3a 介護記録プログラム
4 外部通信端末
31 通信手段
32 表示入力手段
33 記憶手段
34 演算処理手段
321 エリア設定部
322 体部位設定部
331 プログラム記憶部
332 人物データ記憶部
333 状態判定用データ記憶部
334 介助行為判定用データ記憶部
335 身体評価レベル記憶部
336 異常状態判定用データ記憶部
337 介護履歴記憶部
341 撮影データ取得部
342 人物判定部
343 被介護者状態判定部
343a 姿勢判定モード
343b 状態学習判定モード
343c 体部位エリア判定モード
344 介助行為判定部
344a ジェスチャー判定モード
344b フィンガー判定モード
344c 介助行為学習判定モード
345 介護記録画像生成部
346 異常状態判別部
347 異常状態通知部
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