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特許7403135TiAl金属間化合物粉の製造方法、TiAl金属間化合物粉、及び球状TiAl金属間化合物粉の製造方法
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  • 特許-TiAl金属間化合物粉の製造方法、TiAl金属間化合物粉、及び球状TiAl金属間化合物粉の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】TiAl金属間化合物粉の製造方法、TiAl金属間化合物粉、及び球状TiAl金属間化合物粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/145 20220101AFI20231215BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20231215BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20231215BHJP
   C22C 14/00 20060101ALI20231215BHJP
   C23G 5/024 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B22F1/145
B22F1/00 R
B22F1/14
C22C14/00 Z
C23G5/024
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021141241
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034814
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591261026
【氏名又は名称】トーホーテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521384784
【氏名又は名称】株式会社ユキテクニカル
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石塚 遼
(72)【発明者】
【氏名】竹中 茂久
(72)【発明者】
【氏名】滝 千博
(72)【発明者】
【氏名】原 通雄
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124344(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0087040(US,A1)
【文献】特開2012-201741(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0003558(KR,A)
【文献】特開平11-269673(JP,A)
【文献】特開2017-160504(JP,A)
【文献】特開2012-017494(JP,A)
【文献】特開平08-269498(JP,A)
【文献】特開平08-157887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/30
C23G 1/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiAl金属間化合物粉の製造方法であって、
航空機分野の部材の切削加工により生じた、TiAl金属間化合物を含有し潤滑剤が付着した粉体を洗浄する洗浄工程を含み、
前記洗浄工程は、
前記粉体を、芳香族炭化水素化合物を含む有機系洗浄液で洗浄する第1洗浄ステップと、
前記第1洗浄ステップで得られる第1洗浄後の粉体を、エタノールアミン類と芳香環及び窒素を含有する界面活性剤と水とを含む水系洗浄液で洗浄する第2洗浄ステップとを含む、TiAl金属間化合物粉の製造方法。
【請求項2】
前記第1洗浄ステップで使用する前記芳香族炭化水素化合物は、置換基の炭素の総数が2~5であるベンゼン誘導体を含み、
前記有機系洗浄液は前記ベンゼン誘導体を0.1質量%~10質量%の範囲内で含む、請求項1に記載のTiAl金属間化合物粉の製造方法。
【請求項3】
前記第2洗浄ステップで使用する前記水系洗浄液は、グリコール類を更に含む、請求項1又は2に記載のTiAl金属間化合物粉の製造方法。
【請求項4】
前記第1洗浄ステップおよび/または前記第2洗浄ステップを複数回行うことを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のTiAl金属間化合物粉の製造方法。
【請求項5】
前記洗浄工程後、前記第2洗浄ステップで得られる第2洗浄後の粉体を粉砕する粉砕工程を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のTiAl金属間化合物粉の製造方法。
【請求項6】
前記TiAl金属間化合物粉が、Tiを50~70質量%の範囲内、Alを25~40質量%の範囲内で含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のTiAl金属間化合物粉の製造方法。
【請求項7】
前記TiAl金属間化合物粉が、Crを20質量%以下、Nbを20質量%以下で更に含む、請求項6に記載のTiAl金属間化合物粉の製造方法。
【請求項8】
前記第2洗浄ステップを複数回実施し、N回目の水系洗浄液中、エタノールアミン類と界面活性剤とを含む洗浄成分の含有量は、N-1回目の水系洗浄液中、エタノールアミン類と界面活性剤とを含む洗浄成分の含有量以下にする、請求項1~7のいずれか一項に記載のTiAl金属間化合物粉の製造方法
【請求項9】
前記水系洗浄液は、グリコール類を更に含み、
前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤を含み、
前記エタノールアミン類:前記カチオン性界面活性剤:前記グリコール類は、質量比で、1.0:0.5~5.0:0.5~5.0の範囲内である、請求項1~8のいずれか一項に記載のTiAl金属間化合物粉の製造方法
【請求項10】
前記グリコール類の分子量が62以上400以下である、請求項3又は9に記載のTiAl金属間化合物粉の製造方法
【請求項11】
下記(1)~(2)のうち1つ以上を満たす、請求項1~10のいずれか一項に記載のTiAl金属間化合物粉の製造方法。
(1)エタノールアミン類の分子量が61以上400以下である、
(2)界面活性剤がベンジル基含有第4級アンモニウム塩を含む
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のTiAl金属間化合物粉の製造方法により製造したTiAl金属間化合物粉に対して、表面球状化を行う球状化処理工程を含む、球状TiAl金属間化合物粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TiAl金属間化合物粉の製造方法、TiAl金属間化合物粉、及び球状TiAl金属間化合物粉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TiAl金属間化合物は、高強度、優れた耐食性及び優れた耐熱性を有する機能性材料であり、航空機分野等で広く使用されている。
【0003】
ところで、TiAl金属間化合物を用いて所定の形状に加工する方法としては、一般的に溶解・鋳造し、得られた鋳造物を様々な工具等で切削する方法(切削加工法)が利用されている。しかしながら、切削等の機械加工には、高い技能が必要である。そのため、上記方法に代わって、TiAl金属間化合物粉を準備した後、粉末積層造形法(3Dプリント)等によって成形する技術が期待されている。TiAl金属間化合物の粉に関する技術は種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、RF熱プラズマ処理装置を用いて、TiAl金属間化合物の切削片に、球状化処理を実施して、TiAl金属間化合物粉末を作製したことが記載されている(特許文献1の明細書段落0028参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/124344号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、塊状等のTiAl金属間化合物の切削時においては、一般的に潤滑剤を使用する。そのため、切削後には、廃材として、潤滑剤が付着した粉体が得られる。このような粉体は廃棄されているのが現状である。しかしながら、この廃棄対象である粉体は、チタン及びアルミニウムを比較的多く含んでいる。そのため、上記粉を廃棄せずに有効に活用することが望まれている。但し、TiAl金属間化合物の当該粉体は、潤滑剤が付着した状態では使用することができない。
【0007】
そこで、本発明は一実施形態において、TiAl金属間化合物を含有する粉体から、そこに付着した潤滑剤成分を良好に低減することが可能なTiAl金属間化合物粉の製造方法、TiAl金属間化合物粉、及び、球状TiAl金属間化合物粉の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は一側面において、TiAl金属間化合物粉の製造方法であって、TiAl金属間化合物を含有し潤滑剤が付着した粉体を洗浄する洗浄工程を含み、前記洗浄工程は、前記粉体を、芳香族炭化水素化合物を含む有機系洗浄液で洗浄する第1洗浄ステップと、前記第1洗浄ステップで得られる第1洗浄後の粉体を、エタノールアミン類と芳香環及び窒素を含有する界面活性剤と水とを含む水系洗浄液で洗浄する第2洗浄ステップとを含む、TiAl金属間化合物粉の製造方法である。
【0009】
本発明に係るTiAl金属間化合物粉の製造方法の一実施形態においては、前記第1洗浄ステップで使用する前記芳香族炭化水素化合物は、置換基の炭素の総数が2~5であるベンゼン誘導体を含み、前記有機系洗浄液は前記ベンゼン誘導体を0.1質量%~10質量%の範囲内で含む。
【0010】
本発明に係るTiAl金属間化合物粉の製造方法の一実施形態においては、前記第2洗浄ステップで使用する前記水系洗浄液は、グリコール類を更に含む。
【0011】
本発明に係るTiAl金属間化合物粉の製造方法の一実施形態においては、前記第1洗浄ステップおよび/または前記第2洗浄ステップを複数回行うことを含む。
【0012】
本発明に係るTiAl金属間化合物粉の製造方法の一実施形態においては、前記洗浄工程後、前記第2洗浄ステップで得られる第2洗浄後の粉体を粉砕する粉砕工程を更に含む。
【0013】
本発明に係るTiAl金属間化合物粉の製造方法の一実施形態においては、前記TiAl金属間化合物粉が、Tiを50~70質量%の範囲内、Alを25~40質量%の範囲内で含む。
【0014】
本発明に係るTiAl金属間化合物粉の製造方法の一実施形態においては、前記TiAl金属間化合物粉が、Crを20質量%以下、Nbを20質量%以下で更に含む。
【0015】
また、本発明は別の側面において、Tiを50~70質量%の範囲内、Alを25~40質量%の範囲内で含有するTiAl金属間化合物粉であって、酸素の含有量が0.13質量%以下であり、且つ炭素の含有量が0.04質量%以下であり、長径と短径の比(長径/短径)であるアスペクト比の平均値が60以下である、TiAl金属間化合物粉である。
【0016】
また、本発明は別の側面において、Tiを50~70質量%の範囲内、Alを25~40質量%の範囲内で含有するTiAl金属間化合物粉であって、酸素の含有量が0.13質量%以下であり、且つ炭素の含有量が0.04質量%以下であり、平均円形度が0.8以下である、TiAl金属間化合物粉である。
【0017】
本発明に係るTiAl金属間化合物粉の一実施形態においては、Crを20質量%以下、Nbを20質量%以下で更に含む。
【0018】
本発明に係るTiAl金属間化合物粉の一実施形態においては、平均粒子径が5~1000μmである。
【0019】
さらに、本発明は別の側面において、上記いずれかのTiAl金属間化合物粉の製造方法により製造したTiAl金属間化合物粉、又は、上記いずれかのTiAl金属間化合物粉に対して、表面球状化を行う球状化処理工程を含む、球状TiAl金属間化合物粉の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態によれば、TiAl金属間化合物を含有する粉体から、そこに付着した潤滑剤成分を良好に低減することが可能なTiAl金属間化合物粉の製造方法、TiAl金属間化合物粉、及び、球状TiAl金属間化合物粉の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1~9及び比較例1~3における潤滑剤が付着した粉体(洗浄前)を走査型電子顕微鏡(倍率100倍)で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して発明を形成してもよい。更に、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせて発明を形成してもよい。
【0023】
[1.発明に関する概要]
現在、航空機分野では、Ti-6Al-4V(「64合金」と称する。)等のチタン合金や、又はTi-48Al-2Cr-2Nb(「48-2-2金属間化合物」と称する。)等のTiAl金属間化合物を使用して部材を製造している。
【0024】
上記部材を製造するには、鋳造及び切削等の工程が含まれうる。この切削時には、潤滑剤が使用され、切り屑ないし切粉として粉体が発生する。64合金と48-2-2金属間化合物では、切削により生じる粉体の形状が顕著に異なっている。例えば、64合金では長尺であるコイル形状の粉体(切り屑ないし切粉)が発生することがある。これに対し、48-2-2金属間化合物では比較的長さが短い針状の粉体(切り屑ないし切粉)が発生する。
【0025】
64合金の切削で生じた切粉は単位重量に対する表面積が小さいため、潤滑剤の除去が容易であった。一方、48-2-2金属間化合物等のTiAl金属間化合物の切削から生じた粉体(TiAl金属間化合物を含有し潤滑剤が付着した粉体)は、そのTiAl金属間化合物の組成は航空機分野等での使用に適したものであるが、当該針状の粉体のサイズが小さく表面積が大きいため、多くの潤滑剤がその表面に付着している。従来は、この潤滑剤の良好な除去方法が確立されていなかったため、TiAl金属間化合物から生じた上記粉体は廃棄されることが一般的であった。そこで、本発明者は、48-2-2金属間化合物等のTiAl金属間化合物から切削等で生じた粉体の再資源化(リサイクル)を目指して検討を重ねた。潤滑剤は、酸素及び炭素を含有している。酸素については、部品の製造時の高温処理(焼結等)により固溶酸素量が増大するに伴い、ミクロ組織の変化を通じて、延性や硬度などの機械特性に影響を与えることが懸念される。また、炭素含有量は粉体に付着した潤滑剤に起因して増大する傾向にあり、用途によっては規定値以上の値を示すことが許容されない。例えば、航空機分野では、高品質が要求されるため、酸素又は炭素等の不純物含有量が多いTiAl金属間化合物粉を使用することができないと考えられる。
【0026】
上記事情を勘案し、TiAl金属間化合物を含有する粉体であって潤滑剤が付着したものについて、従来は廃材とされていたが、当該粉体から潤滑剤成分を低減して利用可能にするべく本発明者は鋭意検討し、以下の知見を得るに至った。
以下、TiAl金属間化合物粉の製造方法、TiAl金属間化合物粉及び球状TiAl金属間化合物粉の製造方法の好適な態様をそれぞれ説明する。
【0027】
[2.TiAl金属間化合物粉の製造方法]
本発明に係るTiAl金属間化合物粉の製造方法の一実施形態においては、少なくとも洗浄工程を含み、該洗浄工程後に粉砕工程を更に含んでよい。すなわち、本発明に係るTiAl金属間化合物粉の製造方法の一実施形態においては、洗浄工程以外にも適宜の工程を含めることができる。
【0028】
<洗浄工程>
洗浄工程は、所定の粉体を洗浄する。当該洗浄工程は、第1洗浄ステップと第2洗浄ステップとを有する。第1洗浄ステップは有機系洗浄液を使用し、第2洗浄ステップは水系洗浄液を使用する。前記有機系洗浄液は有機成分を主体とする洗浄液であり、前記水系洗浄液は一定量以上の水を含む洗浄液である。
所定の粉体は、TiAl金属間化合物を含有する粉体であって潤滑剤が付着している。このような粉体は、塊状等のTiAl金属間化合物(被加工材料)の切削時に切り屑ないし切粉として得られるものである。切削時には、切削工具や被加工材料にクラック等を発生させないため、潤滑剤を使用して、被加工材料を切削工具で切削する。これにより、その切り屑ないし切粉としての上記粉体には、潤滑剤が付着している。
【0029】
(粉体の組成)
粉体は、少なくともチタン及びアルミニウムを含み、残部が不可避的不純物であってよい。また、粉体は、クロム及びニオブ等を更に含んでよい。例えば航空機の構造部品の用途等に使用される粉体の具体例としては、Ti-48Al-2Cr-2Nb(48-2-2金属間化合物)及びTi-47Al-2Cr-2Nb(47-2-2金属間化合物)等が挙げられる。なお、これらの金属間化合物における各元素の数字は原子数基準の割合(atmic%)である。
当該粉体におけるTi含有量は、例えば50質量%以上70質量%以下である。なお、後述する各元素等の含有量に対して残部をTiとしてもよい。粉体に含まれる潤滑剤の量により影響を受けるため、当該粉体に含まれる各元素の含有量を一概には規定しにくい場合がある。そこで、当該粉体に含まれるTiAl金属間化合物に着目して各元素の含有量を求めることとすることもできる。以上の場合、不可避的な不純物が混入することがありうる。
【0030】
<第1洗浄ステップ>
第1洗浄ステップでは、上記粉体を、芳香族炭化水素化合物を含む有機系洗浄液で洗浄する。これにより、粉体に付着した潤滑剤の付着量を低減させることができる。
なお、第1洗浄ステップで洗浄を行った後は、有機系洗浄液と粉体とを含む第1混合液からデカンテーションや遠心分離等の固液分離により粉体を分離させて回収すればよい。回収された粉体に残留した有機系洗浄液の除去のために乾燥を実施してもよい。
【0031】
(第1洗浄ステップの条件)
第1混合液の温度は適宜決定すればよく、例えば0~50℃の範囲内である。上記温度は、上限側として有機系洗浄液の揮発性を勘案し、例えば40℃以下である。また、上記温度は、下限側として有機系洗浄液の洗浄性(潤滑剤を除去する性能)を勘案し、例えば10℃以上である。
また、第1混合液を上記温度範囲内に維持しながら該第1混合液を撹拌することとしてもよい。このとき、撹拌時間は適宜決定すればよい。
なお、上記撹拌の実施にあたり、撹拌機器においては、撹拌翼付き撹拌機やスターラー等を用いればよく、その時の単位時間当たりの回転数等を適宜調整すればよい。
【0032】
粉体に付着した潤滑剤の付着量をより確実に低減させる観点から、第1洗浄ステップは複数回行うことが好ましい。具体的には、1回目の第1洗浄ステップを行った後、第1混合液から粉体を回収し、その粉体に対して新たな有機系洗浄液を使用して2回目の第1洗浄ステップを行う。各回の洗浄の後に粉体の回収と乾燥を行ってもよい。同様にして3回目以降の第1洗浄ステップを行ってもよい。このように第1洗浄ステップを複数回行う場合、同一成分組成の有機系洗浄液を使用してもよいが、異なる成分組成の有機系洗浄液を使用することもできる。
なお、第1洗浄ステップの回数は、例えば1~5回の範囲内である。1回又は複数回の第1洗浄ステップが全て終了した後に得られる粉体を、第1洗浄後の粉体という。
【0033】
(有機系洗浄液)
上記有機系洗浄液は、芳香族炭化水素化合物を含むが、石油系炭化水素を更に含むものであってもよい。このとき、上記有機系洗浄液中、芳香族炭化水素化合物の含有量は、例えば20質量%以下であってよく、それ以外の残部を石油系炭化水素としてよい。なお、芳香族炭化水素化合物が石油系炭化水素に該当してもよい。
【0034】
芳香族炭化水素化合物
芳香族炭化水素化合物は単環芳香族炭化水素化合物の他、多環芳香族炭化水素化合物を含む概念である。芳香族炭化水素化合物は単環芳香族炭化水素化合物が好ましい。
当該芳香族炭化水素化合物は、置換基に含まれる炭素の総数が2~5であるベンゼン誘導体を含むことが好ましい。この場合、有機系洗浄液において0.1質量%~10質量%の範囲内で前記ベンゼン誘導体を含むことが好ましい。上記ベンゼン誘導体の含有量は、下限側として例えば1質量%以上であり、また例えば3質量%以上であり、また上限側として例えば8質量%以下である。
ベンゼン誘導体の具体例としては、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、1,3,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、クメン、p-シメン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン等が挙げられる。
なお、多環芳香族炭化水素化合物としては、例えばナフタレン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等が挙げられる。
【0035】
石油系炭化水素
石油系炭化水素としては、例えばn-ノナン、シクロヘキサン等が含まれてよい。
【0036】
<第2洗浄ステップ>
第2洗浄ステップでは、第1洗浄ステップで得られる第1洗浄後の粉体を、エタノールアミン類と芳香環及び窒素を含有する界面活性剤と水とを含む水系洗浄液で洗浄する。第1洗浄ステップで除去できなかった潤滑剤成分を、水性環境下にて、エタノールアミン類及び界面活性剤により除去することで、粉体に付着した潤滑剤の成分の付着量を低減させることができると考えられる。
なお、第2洗浄ステップを行った後、デカンテーションや遠心分離等の固液分離を用いて、水系洗浄液と粉体とを含む第2混合液から粉体を回収することがあり、その後に必要に応じて粉体の乾燥が行われる。
【0037】
(第2洗浄ステップの条件)
第2混合液の温度は適宜決定すればよく、例えば0~50℃の範囲内である。上記温度は、下限側として水系洗浄液の洗浄性(潤滑剤を除去する性能)を勘案し、例えば10℃以上である。
また、第2混合液を上記温度範囲内に維持しながら該第2混合液を撹拌することとしてよい。このとき、撹拌時間は適宜決定すればよい。
なお、上記撹拌の実施にあたり、撹拌機器においては、第1洗浄ステップと同様、撹拌翼付き撹拌機やスターラー等を用いればよく、その時の単位時間当たりの回転数等を適宜調整すればよい。
【0038】
粉体に付着した潤滑剤由来の付着物をより確実に減らすという観点から、第2洗浄ステップは複数回行うことが好ましい。具体的には、1回目の第2洗浄ステップを行った後、第2混合液から粉体を回収し、その粉体に対して新たな水系洗浄液を使用して第2洗浄ステップを行う。各回の洗浄の後に粉体の回収と乾燥を行ってもよい。同様にして3回目以降の第2洗浄ステップを行ってもよい。このように第2洗浄ステップを複数回行う場合、同一成分組成の水系洗浄液を使用してもよいが、異なる成分組成の水系洗浄液を使用してもよい。
なお、第2洗浄ステップの回数は、例えば1~5回の範囲内である。1回又は複数回の第2洗浄ステップが全て終了した後に得られる粉体を、第2洗浄後の粉体という。
【0039】
第2洗浄ステップを複数回行う場合、洗浄回数を重ねるごとに使用する水系洗浄液中の、エタノールアミン類と界面活性剤(又は後述のグリコール類をも)を含む洗浄成分の割合を維持または減らしてもよい。逆に言えば、水系洗浄液中の水の含有量を維持または増やしてもよい。これにより、水系洗浄液中の洗浄成分の残存を抑制しつつ、第2洗浄後の粉体の不純物を減らすことを可能にする。例えば、第2洗浄ステップの1回目における水系洗浄液中の洗浄成分が、洗浄成分:水=1:1~1:4の範囲内(質量比)で含まれる場合、2回目における水系洗浄液は洗浄成分:水=1:1~1:5の範囲内(質量比)とし、3回目における水系洗浄液は洗浄成分:水=1:1~1:10の範囲内(質量比)としてもよい。すなわち、N回目の水系洗浄液中の洗浄成分の含有量は、N-1回目の水系洗浄液中の洗浄成分の含有量以下とすることが好ましい。
【0040】
(水系洗浄液)
水系洗浄液は、エタノールアミン類と界面活性剤と水とを含むが、グリコール類を更に含んでもよい。また、エタノールアミン類:カチオン性界面活性剤:グリコール類は、質量比で、例えば1.0:0.5~5.0:0.5~5.0の範囲内であればよい。
また、水系洗浄液は界面活性剤と水とを含むので、操作性の観点から適宜他の成分を追加しても構わない。
【0041】
エタノールアミン類
エタノールアミン類は、界面活性剤としての役割を有する。当該エタノールアミン類は、単量体の他、重合体も含む概念である。また、エタノールアミン類は、水に可溶であればよい。好適なエタノールアミン類の分子量は61以上400以下である。なお、エタノールアミン類の具体例としては、モノエタノールアミン(分子量:61)、ジエタノールアミン(分子量:105)、トリエタノールアミン(分子量:149)及びこれらを含む重合体等が挙げられる。なお、これらのエタノールアミン類は、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
界面活性剤
界面活性剤は芳香環および窒素を含有し、好ましくはベンジル基含有第4級アンモニウム塩を含む。よって、この芳香環および窒素を含有する界面活性剤はカチオン性界面活性剤であってよい。該ベンジル基含有第4級アンモニウム塩は、下記化学式(I)で表される。
【0043】
【化1】
【0044】
式中、R1は、炭素数1~20、好ましくは8~15の、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基である。好適なR1の例は直鎖状のアルキル基であり、例えば、オクチル基、ノニル基、デジル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基である。
また、式中、R2及びR3は、互いに同一か又は異なり、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基である。好適なR2及びR3の例はアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基である。中でも、製造容易の観点から、R2及びR3は、より好ましくはメチル基である。
また、式中、第4級アンモニウムイオンの対イオンX-はハロゲン化物イオンであり、例えばフッ化物イオン(F-)、塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)である。
【0045】
なお、上記化学式Iの具体例としては、塩化ベンジル(オクチル)ジメチルアンモニウム、塩化ベンジル(ノニル)ジメチルアンモニウム、塩化ベンジル(デシル)ジメチルアンモニウム、塩化ベンジル(ウンデシル)ジメチルアンモニウム、塩化ベンジル(ドデシル)ジメチルアンモニウム、塩化ベンジル(トリデシル)ジメチルアンモニウム、塩化ベンジル(テトラデシル)ジメチルアンモニウム、塩化ベンジル(ペンタデシル)ジメチルアンモニウム等が挙げられる。なお、これらの界面活性剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
グリコール類
グリコール類は、界面活性剤としての役割を有する。当該グリコール類は、単量体の他、重合体も含む概念である。また、グリコール類は、水に可溶であればよい。好適なグリコール類の分子量は62以上400以下である。なお、グリコール類の具体例としては、エチレングリコール(分子量:62)、プロピレングリコール(分子量:76)、ジエチレングリコール(分子量:106)、トリエチレングリコール(分子量:150)、ブチルジグリコール(分子量:204)及びこれらを含む重合体等が挙げられる。なお、これらのグリコール類は、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
<粉砕工程>
粉砕工程は、第2洗浄ステップで得られる第2洗浄後の粉体を公知の方法により粉砕することでTiAl金属間化合物粉の粒度を調整できる。なお、粉砕前や粉砕後において適宜篩別や分級処理等を実施してよい。粉砕工程後に得られるTiAl金属間化合物粉の平均粒子径が5~300μmとなるように調整することが好ましい。
上記平均粒子径は、上限側として例えば250μm以下、また例えば200μm以下、また例えば150μm以下である。また、上記平均粒子径は、下限側として例えば10μm以上である。
なお、平均粒子径の測定方法の一例としては、レーザ回折式粒度分布測定法にて粒度分布測定装置(Malvern Panalytical製、Mastersizer3000)を用いることで粒度分布を測定する。この時の粒子径は体積相当球の直径として見積もり、粒子径の小さい側から累積50体積%となる粒子の粒子径を求める(粒子径D50とも称する)。
【0048】
[3.TiAl金属間化合物粉]
本発明に係るTiAl金属間化合物粉の一実施形態のものは、先述したTiAl金属間化合物粉の製造方法により得られる。当該TiAl金属間化合物粉は、Tiを50~70質量%の範囲内、Alを25~40質量%の範囲内で含有する。また、当該TiAl金属間化合物粉は、Nbを20質量%以下、Crを20質量%以下で更に含有してもよい。なお、後述する元素含有量に対して残部をTiとしてもよい。この際、TiAl金属間化合物粉には不可避的に不純物が含まれることがある。
当該TiAl金属間化合物粉のAl含有量は、上限側として例えば35質量%以下である。
また、当該TiAl金属間化合物粉のCr含有量は、上限側として例えば10質量%以下であり、また例えば5質量%以下である。一方、上記Cr含有量は、下限側として、典型的に1質量%以上である。
また、当該TiAl金属間化合物粉のNb含有量は、上限側として例えば10質量%以下であり、また例えば8質量%以下である。一方、上記Nb含有量は、下限側として、典型的に2質量%以上である。
なお、TiAl金属間化合物粉の組成の測定方法の一例を以下に説明する。TiAl金属間化合物粉から測定用試料を採取し、その測定用試料の組成を、ICP発光分析法にてICP発光分光分析装置(PS3520UVDDII、HITACHI社製)により測定する。例えば、金属成分については、Al、Cr、Nb等のTiAl金属間化合物に含まれる各元素の含有量をICP発光分析法にて求め、その残部をTiおよび不純物と扱うことができる。酸素や炭素等のガス成分を含めて分析する場合は後述の方法により測定できる。
【0049】
(酸素量及び炭素量)
一実施形態において、TiAl金属間化合物粉中の酸素の含有量が0.13質量%以下であり、且つ炭素の含有量が0.04質量%以下である。これら酸素及び炭素は上記したような金属成分には該当せず、ガス成分と言われることがある。また、当該酸素の含有量が例えば0.12質量%以下、また例えば0.10質量%以下、また例えば0.08質量%以下であってもよい。前記粉砕工程にてTiAl金属間化合物粉の粉砕を行うと、平均粒子径が小さくなる一方で、酸素の含有量は増加してしまう傾向にある。また、当該炭素の含有量が0.03質量%以下であってもよい。ここで、TiAl金属間化合物粉中の酸素含有量及び炭素含有量については、金属成分及びガス成分(酸素、炭素、窒素、水素)の合計量に基づき算出する。
なお、測定方法の一例として、TiAl金属間化合物粉について、酸素は不活性ガス融解-赤外線吸収法(TCH600、LECO社製を使用して測定可能)、炭素は燃焼-赤外線吸収法(EMIA920V2、株式会社堀場製作所製を使用して測定可能)、窒素はアンモニア蒸留分離アミド硫酸滴定法、水素は不活性ガス融解-ガスクロマトグラフ法(RHEN602、LECO社製を使用して測定可能)により各成分の含有量を測定する。
【0050】
(アスペクト比)
当該TiAl金属間化合物粉について、長径(長軸)と短径(短軸)の比であるアスペクト比(長径/短径)の平均値が、60以下である。
上記アスペクト比の平均値は上限側として、例えば50以下、また例えば40以下である。粉砕を行ったTiAl金属間化合物粉の上記アスペクト比の平均値は、例えば5以下としてよい。上記アスペクト比の平均値は下限側として例えば1以上である。
なお、アスペクト比の測定方法の一例を以下に説明する。粒子形状画像解析装置(PITA-04、セイシン企業製)によりTiAl金属間化合物粉に含まれる粒子30000個を観察して各粒子の長径と短径を計測し、上記アスペクト比を算出し、その平均値を採用する。
【0051】
(平均円形度)
別の実施形態において、TiAl金属間化合物粉の平均円形度が、0.8以下である。潤滑剤の付着量を低減したTiAl金属間化合物粉や粉砕したTiAl金属間化合物粉は球状でなくいわゆる異形の粉であるため、異形粉であることを特定するにあたり平均円形度は有用である。平均円形度の下限側は特段限定されず、例えば0.5以上としてよい。
なお、平均円形度の測定方法の一例を以下に説明する。まず、粒子形状画像解析装置(PITA-04、セイシン企業製)によりTiAl金属間化合物粉30000個を観察し、投影像の投影輪郭線の長さを周囲長とし、投影像の投影面積を前記周囲長で割って円形度が求まる。すなわち、円形度は、下記式(1)に基づき求められる。各TiAl金属間化合物粉から円形度を求め、その平均値を平均円形度とする。
C=4πA/P2・・・式(1)
C:円形度
A:投影面積(μm2
P:周囲長(μm)
【0052】
更なる実施形態において、TiAl金属間化合物粉の平均粒子径が5~1000μmであることが好ましい。上記平均粒子径は、上限側として、例えば300μm以下、また例えば250μm以下、また例えば200μm以下、また例えば150μm以下である。通常、粉砕工程を経て粉砕されたTiAl金属間化合物粉は平均粒子径が小さくなる。また、上記平均粒子径は、下限側として例えば5μm以上、また例えば10μm以上である。
なお、平均粒子径の測定方法の一例として、先述した方法と同じであるので説明を割愛する。
【0053】
[4.球状TiAl金属間化合物粉の製造方法]
本発明に係る球状TiAl金属間化合物粉の製造方法の一実施形態において、先述したTiAl金属間化合物粉を用いる。一実施形態においては、当該TiAl金属間化合物粉に対して、表面球状化を行う球状化処理工程を含む。なお、表面球状化処理については、上記特許文献1(国際公開第2019/124344号)等に記載された公知の方法を適宜参照すればよい。
【実施例
【0054】
本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例及び比較例の記載は、あくまで本発明の技術的内容の理解を容易とするための具体例であり、本発明の技術的範囲はこれらの具体例によって制限されるものではない。
【0055】
[実施例1]
<粉体の作製>
まず、Ti-48Al-2Cr-2Nb(数字は原子数基準の割合を表す)の成分組成となるように原料を溶解・鋳造することで、TiAl金属間化合物(48-2-2金属間化合物)を得た。次に、切削工具及びTiAl金属間化合物に水性潤滑剤を接触させ、TiAl金属間化合物を切削工具で切削により、潤滑剤が付着した粉体(切り屑)を得た。なお、この粉体の写真を図1に示す。
【0056】
(炭素含有量、酸素含有量の測定)
上記粉体について、上記測定方法により、各金属成分と、酸素含有量、炭素含有量、窒素含有量、及び水素含有量を先述した測定方法でそれぞれ測定した。酸素含有量と炭素含有量の測定結果を下記表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
<第1洗浄ステップ(下記表2に示すステップ1)>
ステップ1-aにおいては、ステンレス製容器に上記粉体と下記に示す有機系洗浄液Aとを投入して得られた第1混合液を液温20℃で、3分間撹拌した。
(有機系洗浄液A(ミネラルスピリット、ENEOS株式会社、製品名:T-SOL(登録商標) 3040 FLUID)の成分組成)
成分a:置換基に含まれる炭素の総数2~5である単環芳香族炭化水素化合物であるベンゼン誘導体の合計含有量4.5質量%。なお、成分aも石油系炭化水素に含まれたものである。
成分b:石油系炭化水素(残部)
【0059】
ステップ1-a後、第1混合液を遠心分離等により固液分離した。
【0060】
次いで、粉体を含むケーキに、上記操作と同様、有機系洗浄液Aを投入し、第1混合液を撹拌した。得られた粉体を含む第1混合液を遠心分離等により固液分離した。有機系洗浄液Aによる洗浄と固液分離とを合計3回実施した(下記表2に示すステップ1-a~1-c)。
【0061】
<第2洗浄ステップ(下記表2に示すステップ2)>
ステップ2-aにおいては、ステンレス製容器に上記第1洗浄ステップの結果得られたケーキと下記に示す水系洗浄液B(洗浄成分としての成分c~eの合計:水=1:1(質量比)で含むもの)とを投入して得られた第2混合液を液温40℃で、3分間撹拌した。
(水系洗浄液Bの成分組成)
成分c:ブチルジグリコール
成分d:モノエタノールアミン
成分e:R1が直鎖状の炭素数12のアルキル基、及びR2、R3がメチル基である上記化学式(I)に示すベンジル基含有第4級アンモニウム塩(化合物名:塩化ベンジル(ドデシル)ジメチルアンモニウム)
成分c:成分d:成分e=2:1:2(質量比)
【0062】
ステップ2-a後、第2混合液を遠心分離等により固液分離した。
【0063】
次いで、粉体を含むケーキに、上記操作と同様、水系洗浄液Bを投入し、第2混合液を撹拌した。得られた粉体を含む第2混合液を遠心分離等により固液分離した。水系洗浄液Bによる洗浄と固液分離とを合計3回実施した(ステップ2-a~2-c)。但し、ステップ2-bでは成分c~eの合計:水=3:7(質量比)とし、ステップ2-cでは成分c~eの合計:水=1:4(質量比)とした。
すべての洗浄操作を終了後乾燥処理を実施した。
【0064】
(炭素含有量、酸素含有量の測定)
上記洗浄終了後の粉体(第2洗浄後の粉体)について、先述した測定方法により、各金属成分と、酸素含有量、炭素含有量、窒素含有量、および水素含有量とをそれぞれ測定した。その結果、酸素含有量と炭素含有量を下記表3に示す。なお、下記表3に示す評価基準として「○」を合格とし、「×」を不合格とする。
(評価基準)
○:炭素含有量が0.04質量%以下であり、且つ酸素含有量が0.13質量%以下である場合。
×:炭素含有量が0.04質量%以下ではなく、且つ/又は酸素含有量が0.13質量%以下でない場合。
【0065】
さらに、上記洗浄終了後の粉体(第2洗浄後の粉体)について、アスペクト比の平均値、平均円形度及び平均粒子径を先述した測定方法により測定した。その結果を下記表4に示す。
【0066】
<粉砕工程>
上記第2洗浄後の粉体を機械的に粉砕した。得られたTiAl金属間化合物粉の成分組成、アスペクト比の平均値、平均円形度及び平均粒子径を先述した測定方法により測定した。その結果を下記表4に示す。なお、表4においてTiAl金属間化合物粉の成分組成の記載された成分以外の残部はTiとして扱って問題なかった。
【0067】
<実施例2~9、比較例1~3>
実施例2~9、比較例1~3では、下記表2に示すことに変更した点を除いて実施例1と同様に、洗浄を実施した。その後、最終処理物である粉体を、実施例1と同様に酸素含有量及び炭素含有量をそれぞれ測定した。その結果を下記表3に示す。なお、下記表3に示す洗浄終了後の粉体とは、実施例2~9においてステップ2後の粉体であり、比較例1~2においてステップ1後の粉体である。比較例1~2は有機系洗浄液のみを使用した、または水系洗浄液のみを使用した例であるため、表2では便宜上ステップ1のみと扱った。
また、実施例2~9では、実施例1と同様に得られた粉体を粉砕した後、アスペクト比の平均値、平均円形度及び平均粒子径を先述した測定方法により測定した。その結果は実施例1と同等であった。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
(実施例による考察)
実施例1~9においては、比較例1~3と比べ、TiAl金属間化合物を含有し潤滑剤が付着した粉体を、芳香族炭化水素化合物を含む有機系洗浄液で洗浄する第1洗浄と、第1洗浄ステップで得られる第1洗浄後の粉体を、エタノールアミン類と芳香環及び窒素を含有する界面活性剤と水とを含む水系洗浄液で洗浄する第2洗浄とにより、酸素含有量及び炭素含有量が低減されたTiAl金属間化合物粉を得ることを確認した。すなわち、実施例1~9においては、潤滑剤の成分を低減するのに有用であったといえる。
なお、実施例1~9で得られたTiAl金属間化合物粉を3Dプリンティングや圧粉体製造に使用することが可能である。また、TiAl金属間化合物粉の表面を溶融する球状化処理に供して球状化粉を製造し、3Dプリンティングでは球状化処理した後のものを使用してもよいと考えられる。
図1