(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】生分解可能な抗菌性スキャフォールドとしての一酸化窒素放出性ポリアミノグリコシドおよびそれに関する方法背景
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7036 20060101AFI20231215BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231215BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231215BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231215BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231215BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20231215BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20231215BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231215BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20231215BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231215BHJP
A01N 61/00 20060101ALI20231215BHJP
A01N 43/16 20060101ALI20231215BHJP
A01N 51/00 20060101ALI20231215BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231215BHJP
C08B 37/00 20060101ALN20231215BHJP
【FI】
A61K31/7036
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/10
A61P31/00
A61K33/00
A61P1/02
A61P17/00 101
A61K47/61
A61K47/36
A01N61/00 D
A01N43/16 A
A01N51/00
A01P3/00
C08B37/00 Z
(21)【出願番号】P 2019553558
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 IB2018052144
(87)【国際公開番号】W WO2018178902
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501345323
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【氏名又は名称】平田 緑
(72)【発明者】
【氏名】シェーンフィッシュ,マーク エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,レイ
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524877(JP,A)
【文献】国際公開第2013/029009(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/037179(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0085413(US,A1)
【文献】特開2010-168390(JP,A)
【文献】特表2012-512700(JP,A)
【文献】特表2011-509267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/
A01N 61/
A01N 43/
A01N 51/
C08B 37/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1つ以上のアミノグリコシド単位と1つ以上の架橋剤とを重合して超分岐ポリアミノグリコシドを形成する工程、
(ii)前記超分岐ポリアミノグリコシドを1つ以上の末端単位と反応させてエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドを形成し、前記1つ以上の末端単位が、独立して以下からなる群から選択される工程、および
【化1】
(iii)前記超分岐ポリアミノグリコシドまたはエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシド上の1つ以上の第2級アミンを修飾して、1つ以上のN-ジアゼニウムジオレートNO供与体を形成して、それにより一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシドまたは一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドを形成する工程によって製造される、一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシドまたは一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドを含み、
前記一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシドまたは一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドが、式IIの構造を含む少なくとも1つのアミノグリコシド単位を有し、
【化2】
式中、
各アミノグリコシド単位上のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
9、およびR
10のそれぞれが、独立して
H、N-ジアゼニウムジオレートNO供与体、1つ以上の連結単位への共有結合、または末端基から選択され、
それぞれの連結単位が、以下の構造を有し、
【化3】
式中
、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
9、およびR
10のうちの少なくとも1つが、
第1のアミノグリコシド単位と第2のアミノグリコシドとの間に共有結合架橋を形成する連結単位である、一酸化窒素を対象に送達するための組成物、
あるいは、
(i)1つ以上のアミノグリコシド単位と1つ以上の架橋剤とを重合して超分岐ポリアミノグリコシドを形成する工程、および
【化4】
(iii)前記超分岐ポリアミノグリコシドまたはエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシド上の1つ以上の第2級アミンを修飾して、1つ以上のN-ジアゼニウムジオレートNO供与体を形成して、それにより一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシドまたは一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドを形成する工程によって製造される、一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシドまたは一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドを含み、
前記一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシドまたは一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドが、式IIの構造を含む少なくとも1つのアミノグリコシド単位を有し、
【化5】
式中、各アミノグリコシド単位上のR
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
、R
6
、R
9
、およびR
10
のそれぞれが、独立してH、N-ジアゼニウムジオレートNO供与体、1つ以上の連結単位への共有結合、または末端基から選択され、
それぞれの連結単位が、以下の構造を有し、
【化6】
式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
、R
6
、R
9
、およびR
10
のうちの少なくとも1つが、第1のアミノグリコシド単位と第2のアミノグリコシドとの間に共有結合架橋を形成する連結単位である、一酸化窒素を対象に送達するための組成物。
【請求項2】
前記超分岐ポリアミノグリコシドまたはエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドが、以下の構造を有する1つ以上の樹状単位
を含み、
【化7】
「-アミノグリコシド」が、式IIの構造を表す、請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
前記超分岐ポリアミノグリコシドまたはエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドが、以下の構造を有する1つ以上の線状単位
を含み、
【化8】
「-アミノグリコシド」が、式IIの構造を表す、請求項1に記載の
組成物。
【請求項4】
前記
一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシド
または一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドが、4kDa以下の数平均分子量を有する、請求項1に記載の
組成物。
【請求項5】
前記
一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシド
または一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドが、7kDa以下の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の
組成物。
【請求項6】
前記
一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシド
または一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドが、
前記一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシド
または一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシド1mg当たりNO 0.4μmol以上のNO貯蔵能力を有する、請求項1に記載の
組成物。
【請求項7】
前記
一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシド
または一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドが、2時間にわたって静的条件下で行われる細菌生存率アッセイにおいて、2mg/mL以下の濃度でP.aeruginosa、S.aureus、P.gingivalis、A.actinomycetemcomitans、A.viscosus、および/またはS.mutansのうちの1つ以上に対して99%以上の細菌低減を提供する、請求項1に記載の
組成物。
【請求項8】
(i)1つ以上のアミノグリコシド単位と1つ以上の架橋剤とを重合して超分岐ポリアミノグリコシドを形成する工程、
(ii)前記超分岐ポリアミノグリコシドを1つ以上の末端単位と反応させてエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドを形成し、前記1つ以上の末端単位が、-NH-((CH
2
)
a
X
1
)
b
-(CH
2
)
c
Hの式を有し、式中、X
1
が、OまたはNHであり、a、b、およびcが、独立して、0~10の整数である工程、および
(iii)前記超分岐ポリアミノグリコシドまたはエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシド上の1つ以上の第2級アミンを修飾して、1つ以上のNO供与体を形成し、それにより一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシドまたは一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドを形成する工程によって製造される、一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシドまたは一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドを含み、
前記1つ以上の1つ以上のアミノグリコシド単位が、式Iの構造を含み、
【化9】
式中、G
1が、以下からなる群から選択され、
【化10】
式中、G
2が、以下からなる群から選択され、
【化11】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10
のそれぞれが、独立して、H、
NO供与体、末端単位、および連結単位への共有結合からなる群から選択され、
式中、X
a、X
b、およびX
cが、独立して、H、-OH、およびC
1~C
6アルキルからなる群から選択され、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10のうちの少なくとも1つが、以下からなる群から選択される1つ以上の連結単位への共有結合であり、
【化12】
式中、
【化13】
が
、アミノグリコシド
単位への結合を示し、
式中、W
1、W
2、またはW
3が、存在する場合
、アミノグリコシド
単位または末端単位のいずれかであり、
式中、R
a、R
b、およびR
cが、独立して
、C
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有す
るポリアミノ、
および1~6個の繰り返し単位を有す
るポリエーテルからなる群から選択され、
前記繰り返し単位がC
1
~C
6
アルキル(複数可)が介在する基を含む、一酸化窒素を対象に送達するための組成物、
あるいは、
(i)1つ以上のアミノグリコシド単位と1つ以上の架橋剤とを重合して超分岐ポリアミノグリコシドを形成する工程、および
(iii)前記超分岐ポリアミノグリコシドまたはエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシド上の1つ以上の第2級アミンを修飾して、1つ以上のNO供与体を形成し、それにより一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシドまたは一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドを形成する工程によって製造される、一酸化窒素供与性の超分岐ポリアミノグリコシドまたは一酸化窒素供与性のエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドを含み、
前記1つ以上の1つ以上のアミノグリコシド単位が、式Iの構造を含み、
【化14】
式中、G
1
が、以下からなる群から選択され、
【化15】
式中、G
2
が、以下からなる群から選択され、
【化16】
式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
、R
6
、R
7
、R
8
、R
9
、およびR
10
のそれぞれが、独立して、H、NO供与体、末端単位、および連結単位への共有結合からなる群から選択され、
式中、X
a
、X
b
、およびX
c
が、独立して、H、-OH、およびC
1
~C
6
アルキルからなる群から選択され、
式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
、R
6
、R
7
、R
8
、R
9
、およびR
10
のうちの少なくとも1つが、以下からなる群から選択される1つ以上の連結単位への共有結合であり、
【化17】
式中、
【化18】
が、アミノグリコシド単位への結合を示し、
式中、W
1
、W
2
、またはW
3
が、存在する場合、アミノグリコシド単位または末端単位のいずれかであり、
式中、R
a
、R
b
、およびR
c
が、独立して、C
1
~C
6
アルキル、1~6個の繰り返し単位を有するポリアミノ、および1~6個の繰り返し単位を有するポリエーテルからなる群から選択され、前記繰り返し単位がC
1
~C
6
アルキル(複数可)が介在する基を含む、一酸化窒素を対象に送達するための組成物。
【請求項9】
前記1つ以上のNO供与体が、独立して、以下からなる群から選択され、
【化19】
式中、
【化20】
が、前記超分岐アミノグリコシドまたはエンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシド内の第2級アミンを示す、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記
1つ以上のNO供与体が、
【化21】
であり、
式中、
【化22】
が、前記超分岐アミノグリコシド
または前記エンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシド内の
第2級アミンを示す、請求項
9に記載の
組成物。
【請求項11】
前記1つ以上のアミノグリコシド単位の少なくとも1つが、式IIまたは式IIIのアミノグリコシド単位を含む、請求項8に記載の組成物。
【化23】
【化24】
【請求項12】
微生物汚
染減少
用である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項13】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の
組成物と、
薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的配合物。
【請求項14】
有効量の
前記超分岐ポリアミノグリコシド
または前記エンドキャッピングした超分岐ポリアミノグリコシドを含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物
、または請求項13に記載の薬学的配合物。
【請求項15】
微生物感染を治療または予防するための医薬品の調製における請求項1~
11のいずれか一項に記載の
組成物、または請求項13に記載の薬学的配合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
すべての優先出願の参照による援用
この特許出願は、2018年3月28日に出願された米国仮特許出願第62/447,564号の優先権の利益を主張し、これは全ての目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の利権
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号DE025207の下で政府支援を受けてなされた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0003】
本開示の主題は、一般に、制御された方法で一酸化窒素を貯蔵および/または放出する単位で(例えば、共有結合的に)修飾された一酸化窒素放出性超分岐アミノグリコシドに関する。抗菌薬としてのその合成および使用方法が、さらに開示されている。
【背景技術】
【0004】
細菌感染症は、地域社会および病院でヒトの健康に大きな課題をもたらしている。バイオフィルムは、宿主の免疫応答および抗生物質から細菌を保護するエキソ多糖(EPS)マトリックスによって被包された細菌の協同的なコミュニティである。
【発明の概要】
【0005】
一酸化窒素(NO)は、シグナル伝達分子として様々な生理学的役割を果たしており、本明細書に開示されるように、病態生理の治療または改善において、例えば、治療薬としても重要な役割を果たすことができる。治療薬としてのNOはこれまで、少なくとも部分的に治療用組成物の限られたNOペイロード、所望よりも迅速なNO放出速度、および標的化されたNO送達の欠如に基づいて、十分に利用されていない。NO放出性構築物、そのような構築物の生成方法、および向上したNO放出特徴を活用し、NO放出性薬理学的化合物の豊富な可能性を利用するそのような構築物を使用して、様々な病態生理を治療する方法が、本明細書に提供される。特に、抗菌薬として非常に有効である化合物が本明細書に提供される。
【0006】
例えば、いくつかの実施形態では、NOを放出し、強力な抗菌特徴を示すポリアミノグリコシドが提供される。いくつかの実施形態では、ポリアミノグリコシドは、官能化された超分岐ポリアミノグリコシドである。いくつかの実施形態では、そのような官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、式IIの構造を含む第1のアミノグリコシド単位を含む。
【化1】
【0007】
いくつかの実施形態では、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
9、およびR
10のそれぞれは、独立して、-Hから選択されるか、または1つ以上の連結単位への共有結合を表す。いくつかの実施形態では、1つ以上の連結単位の連結単位は、以下の構造で表され、
【化2】
1つ以上の連結単位の連結単位は、第1のアミノグリコシド単位と第2のアミノグリコシド単位との間に共有結合架橋を形成する。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドのアミノグリコシド単位は、カナマイシンに由来する。いくつかの実施形態では、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、および/またはネオマイシンを、アミノグリコシド単位の一方または両方として使用することもできる。
【0008】
いくつかの実施形態では、1つ以上の末端単位をさらに含む超分岐ポリアミノグリコシドが提供される。実施形態に応じて、1つ以上の末端単位は、以下から選択される。
【化3】
【0009】
いくつかの実施形態では、1つ以上の樹状単位をさらに含む超分岐ポリアミノグリコシドが提供される。実施形態に応じて、1つ以上の樹状単位は、以下から選択され、
【化4】
「-N-アミノグリコシド」は、式IIの構造を表す。
【0010】
いくつかの実施形態では、以下から選択される1つ以上の線状単位をさらに含む超分岐ポリアミノグリコシドが提供され、
【化5】
「-N-アミノグリコシド」は、式IIの構造を表す。
【0011】
いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドの少なくとも1つの第2級アミンがNO供与体を含む、超分岐ポリアミノグリコシドが提供される。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドの少なくとも1つの第2級アミンは、N-ジアゼニウムジオレートNO供与体を含む。追加の実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、約7kDa以下の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、約4kDa以下の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、超分岐ポリアミノグリコシド1mg当たり約0.4μmol以上のNO貯蔵能力を有する。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、P.aeruginosa、S.aureus、P.gingivalis、A.actinomycetemcomitans、A.viscosus、および/またはS.mutansのうちの1つ以上に対して細菌生存率の約90%以上(例えば、90%、95%、97%、98%、99%、または100%)の細菌低減を提供する。いくつかの実施形態では、そのような低減は、2mg/mL以下の超分岐ポリアミノグリコシドの濃度で達成される。
【0012】
いくつかの実施形態は、官能化された超分岐ポリアミノグリコシドに関する。いくつかの実施形態では、官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、式IIの構造を含む第1のアミノグリコシド単位を含み、
【化6】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
9、およびR
10のそれぞれは、独立して、-Hから選択されるか、または1つ以上の連結単位への共有結合を表し、1つ以上の連結単位の連結単位は、以下の構造で表され、
【化7】
少なくとも1つの連結単位は、第1のアミノグリコシド単位と第2のアミノグリコシド単位との間に共有結合架橋を形成し、超分岐ポリアミノグリコシドの少なくとも1つのアミノグリコシド単位は、カナマイシンに由来する。
【0013】
いくつかの実施形態では、1つ以上の末端単位をさらに含む、カナマイシンをベースとする官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、以下から選択される。
【化8】
【0014】
いくつかの実施形態では、カナマイシンをベースとする官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、以下から選択される1つ以上の樹状単位をさらに含み、
【化9】
「-N-アミノグリコシド」は、式IIの構造を表す。
【0015】
いくつかの実施形態では、カナマイシンをベースとする官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、以下から選択される1つ以上の線状単位をさらに含み、
【化10】
「-N-アミノグリコシド」は、式IIの構造を表す。
【0016】
カナマイシンをベースとする官能化された超分岐ポリアミノグリコシドのいくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドの少なくとも1つの第2級アミンは、N-ジアゼニウムジオレートNO供与体を含む。
【0017】
いくつかの実施形態は、式IIIの構造を含む第1のアミノグリコシド単位を含む、官能化された超分岐ポリアミノグリコシドに関し、
【化11】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10のそれぞれは、独立して、-Hから選択されるか、または1つ以上の連結単位への共有結合を表し、1つ以上の連結単位の連結単位は、以下の構造で表され、
【化12】
少なくとも1つの連結単位は、第1のアミノグリコシド単位と第2のアミノグリコシド単位との間に共有結合架橋を形成し、超分岐ポリアミノグリコシドの少なくとも1つのアミノグリコシド単位は、ゲンタマイシンに由来する。
【0018】
いくつかの実施形態では、ゲンタマイシンをベースとする官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、以下から選択される1つ以上の樹状単位をさらに含み、
【化13】
「-N-アミノグリコシド」は、式IIIの構造を表す。
【0019】
いくつかの実施形態では、ゲンタマイシンをベースとする官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、以下から選択される1つ以上の線状単位をさらに含み、
【化14】
「-N-アミノグリコシド」は、式IIIの構造を表す。
【0020】
いくつかの実施形態では、ゲンタマイシンをベースとする超分岐ポリアミノグリコシドの少なくとも1つの第2級アミンは、N-ジアゼニウムジオレートNO供与体を含む。
【0021】
いくつかの実施形態は、式IVの構造を含む第1のアミノグリコシド単位を含む、官能化された超分岐ポリアミノグリコシドに関し、
【化15】
式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22のそれぞれは、独立して、-Hから選択されるか、または1つ以上の連結単位への共有結合を表し、1つ以上の連結単位の連結単位は、以下の構造で表され、
【化16】
少なくとも1つの連結単位は、第1のアミノグリコシド単位と第2のアミノグリコシド単位との間に共有結合架橋を形成し、超分岐ポリアミノグリコシドの少なくとも1つのアミノグリコシド単位は、ネオマイシンに由来する。
【0022】
いくつかの実施形態では、ネオマイシンをベースとする官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、以下から選択される1つ以上の樹状単位をさらに含み、
【化17】
「-N-アミノグリコシド」は、式IVの構造を表す。
【0023】
いくつかの実施形態では、ネオマイシンをベースとする官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、以下から選択される1つ以上の線状単位をさらに含み、
【化18】
「-N-アミノグリコシド」は、式IVの構造を表す。
【0024】
ネオマイシンをベースとする官能化された超分岐ポリアミノグリコシドのいくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドの少なくとも1つの第2級アミンは、N-ジアゼニウムジオレートNO供与体を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、カナマイシン、ネオマイシン、またはゲンタマイシンをベースとする超分岐ポリアミノグリコシドは、N-ジアゼニウムジオレートNO供与体を含む少なくとも1つの第2級アミンを有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、カナマイシン、ネオマイシン、またはゲンタマイシンをベースとする超分岐ポリアミノグリコシドは、約4kDa以下の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、約1.6~約4.3kDaの範囲内の数平均分子量を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、カナマイシン、ネオマイシン、またはゲンタマイシンをベースとする超分岐ポリアミノグリコシドは、約7kDa以下の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、約2~約7kDaの範囲内の重量平均分子量を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、カナマイシン、ネオマイシン、またはゲンタマイシンをベースとする超分岐ポリアミノグリコシドは、超分岐ポリアミノグリコシド1mg当たり0.4μmol以上のNO貯蔵能力を有する。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、超分岐ポリアミノグリコシド1mg当たり約0.4~約0.6および約1.2~約1.3μmol以上の範囲を含む、超分岐ポリアミノグリコシド1mg当たり約0.4~約1.3μmol以上のNO貯蔵能力を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、カナマイシン、ネオマイシン、またはゲンタマイシンをベースとする超分岐ポリアミノグリコシドは、2時間にわたって静的条件下で行われる細菌生存率アッセイにおいて、2mg/mL以下の濃度でP.aeruginosa、S.aureus、P.gingivalis、A.actinomycetemcomitans、A.viscosus、および/またはS.mutansのうちの1つ以上に対して99%以上の細菌低減を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、式Iを含む第1のアミノグリコシドを含む。
【化19】
【0031】
いくつかの実施形態では、G
1は、
【化20】
からなる群から選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、G
2は、
【化21】
からなる群から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、およびR10は、独立して、-H、任意に置換されたC1~C6アルキル、介在するC1~C6アルキル基を有する1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換されたポリアミノ、介在するC1~C6アルキル基を有する1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換されたポリエーテル、または連結単位への共有結合から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態では、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10のうちの少なくとも1つは、以下から選択される1つ以上の連結単位への共有結合である。
【化22】
【0035】
いくつかの実施形態では、
【化23】
は、第1のアミノグリコシドへの結合を示す。いくつかの実施形態では、W
1、W
2、またはW
3は、存在する場合、独立して、1つ以上の追加のアミノグリコシド、1つ以上のエンドキャッピング置換基、および第1のアミノグリコシドから第2のアミノグリコシドへの共有結合架橋を提供する少なくとも1つの連結単位から選択される。いくつかの実施形態では、R
a、R
b、およびR
cは、独立して、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、および/または1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリエーテルから選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、1つ以上のエンドキャッピング置換基は、存在する場合、独立して、-NH-((CH2)aX1)b-(CH2)cHの式を有し、式中、X1は、OまたはNHであり、a、b、およびcは、独立して、0~10の整数である。
【0037】
いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、式IIの構造を含み、
【化24】
式中、変数は、本明細書の他の場所で記載される通りである。
【0038】
いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、式IIIの構造を含み、
【化25】
式中、変数は、本明細書の他の場所で記載される通りである。
【0039】
いくつかの実施形態は、式IVの構造を有する第1のアミノグリコシドを含む超分岐ポリアミノグリコシドに関する。
【化26】
【0040】
いくつかの実施形態では、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22は、独立して、-H、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、介在するC
1~C
6アルキル基を有する1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換されたポリアミノ、介在するC
1~C
6アルキル基を有する1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換されたポリエーテル、および連結単位への共有結合から選択される。いくつかの実施形態では、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22のうちの少なくとも1つは、以下から選択される1つ以上の連結単位への共有結合であり、
【化27】
式中、
【化28】
は、第1のアミノグリコシドへの結合を示す。いくつかの実施形態では、W
1、W
2、またはW
3は、存在する場合、独立して、1つ以上の追加のアミノグリコシド、1つ以上のエンドキャッピング置換基、および第1のアミノグリコシドから第2のアミノグリコシドへの共有結合架橋を提供する少なくとも1つの連結単位から選択される。いくつかの実施形態では、R
a、R
b、およびR
cは、独立して、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、および/または1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリエーテルから選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上のエンドキャッピング置換基は、存在する場合、独立して、-NH-((CH
2)
aX
1)
b-(CH
2)
cHの式を有し、式中、X
1は、OまたはNHであり、a、b、およびcは、独立して、0~10の整数である。
【0041】
いくつかの実施形態は、式Vの構造を有する第1のアミノグリコシドを含む超分岐ポリアミノグリコシドに関する。
【化29】
【0042】
いくつかの実施形態では、R
11、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22は、独立して、-H、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、介在するC
1~C
6アルキル基を有する1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換されたポリアミノ、介在するC
1~C
6アルキル基を有する1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換されたポリエーテル、または連結単位への共有結合から選択される。いくつかの実施形態では、R
11、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22のうちの少なくとも1つは、以下から選択される1つ以上の連結単位への共有結合である。
【化30】
【0043】
いくつかの実施形態では、
【化31】
は、第1のアミノグリコシドへの結合を示す。いくつかの実施形態では、W
1、W
2、またはW
3は、存在する場合、独立して、1つ以上の追加のアミノグリコシド、1つ以上のエンドキャッピング置換基、および第1のアミノグリコシドから第2のアミノグリコシドへの共有結合架橋を提供する少なくとも1つの連結単位から選択される。いくつかの実施形態では、R
a、R
b、およびR
cは、独立して、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、および/または1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリエーテルから選択される。
【0044】
いくつかの実施形態では、1つ以上のエンドキャッピング置換基は、存在する場合、独立して、-NH-((CH2)aX1)b-(CH2)cHの式を有し、式中、X1は、OまたはNHであり、a、b、およびcは、独立して、0~10の整数である。
【0045】
いくつかの実施形態は、式VIの第1のアミノグリコシドを含む、超分岐ポリアミノグリコシドに関する。
【化32】
【0046】
いくつかの実施形態では、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、およびR30は、独立して、-H、任意に置換されたC1~C6アルキル、介在するC1~C6アルキル基を有する1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換されたポリアミノ、介在するC1~C6アルキル基を有する1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換されたポリエーテル、または連結単位への共有結合から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30のうちの少なくとも1つは、以下から選択される1つ以上の連結単位への共有結合である。
【化33】
【0048】
いくつかの実施形態では、
【化34】
は、第1のアミノグリコシドへの結合を示す。いくつかの実施形態では、W
1、W
2、またはW
3は、存在する場合、独立して、1つ以上の追加のアミノグリコシド、1つ以上のエンドキャッピング置換基から選択され、少なくとも1つの連結単位は、第1のアミノグリコシドから第2のアミノグリコシドへの共有結合架橋を提供する。
【0049】
いくつかの実施形態では、Ra、Rb、およびRcは、独立して、任意に置換されたC1~C6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C1~C6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、および/または1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C1~C6アルキル(複数可)で)ポリエーテルから選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、1つ以上のエンドキャッピング置換基は、存在する場合、独立して、-NH-((CH2)aX1)b-(CH2)cHの式を有し、式中、X1は、OまたはNHであり、a、b、およびcは、独立して、0~10の整数である。
【0051】
いくつかの実施形態は、式VIIのアミノグリコシドを含む、超分岐ポリアミノグリコシドに関する。
【化35】
【0052】
いくつかの実施形態では、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、およびR38は、独立して、-H、任意に置換されたC1~C6アルキル、介在するC1~C6アルキル基を有する1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換されたポリアミノ、介在するC1~C6アルキル基を有する1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換されたポリエーテル、および連結単位への共有結合からなる群から選択される。
【0053】
いくつかの実施形態では、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35、R
36、R
37、およびR
38のうちの少なくとも1つは、以下から選択される1つ以上の連結単位への共有結合である。
【化36】
【0054】
いくつかの実施形態では、
【化37】
は、第1のアミノグリコシドへの結合を示す。いくつかの実施形態では、W
1、W
2、またはW
3は、存在する場合、独立して、1つ以上の追加のアミノグリコシド、1つ以上のエンドキャッピング置換基、および第1のアミノグリコシドから第2のアミノグリコシドへの共有結合架橋を提供する少なくとも1つの連結単位から選択される。
【0055】
いくつかの実施形態では、Ra、Rb、およびRcは、独立して、任意に置換されたC1~C6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C1~C6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、および/または1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C1~C6アルキル(複数可)で)ポリエーテルから選択される。
【0056】
いくつかの実施形態では、1つ以上のエンドキャッピング置換基は、存在する場合、独立して、-NH-((CH2)aX1)b-(CH2)cHの式を有し、式中、X1は、OまたはNHであり、a、b、およびcは、独立して、0~10の整数である。
【0057】
いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、複数の異なるアミノグリコシド、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、およびそれらの組み合わせの単位を含む。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、カナマイシンをベースとする単位、アミカシンをベースとする単位、トブラマイシンをベースとする単位、ジベカシンをベースとする単位、ゲンタマイシンをベースとする単位、シソマイシンをベースとする単位、ネチルマイシンをベースとする単位、ネオマイシンをベースとする単位(ネオマイシンBおよび/またはC)、パラマイシンをベースとする単位(ネオマイシンE)、ストレプトマイシンをベースとする単位、およびそれらの組み合わせを含む。
【0058】
上記の、または本明細書の他の場所に記載される実施形態のいずれかは、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、NO供与基をさらに含む。いくつかの実施形態では、NO供与基は、以下からなる群から選択され、
【化38】
式中、
【化39】
は、超分岐アミノグリコシド内の他の原子への結合を示す。いくつかの実施形態では、NO供与基は、ジアゼニウムジオレートである。
【0060】
いくつかの実施形態では、連結単位は、
【化40】
である。
【0061】
いくつかの実施形態では、Raは、-NH-CH2-NH-である。いくつかの実施形態では、W1は、第2のアミノグリコシドである。
【0062】
いくつかの実施形態では、R1~R38のいずれか1つは、独立して、-H、または連結単位への共有結合からなる群から選択される。
【0063】
いくつかの実施形態では、エンドキャッピング置換基は、存在する場合、-NHCH2CH2NH2または-NHCH2CH2OHである。
【0064】
いくつかの実施形態は、上記または本明細書の他の場所に記載される超分岐ポリアミノグリコシドを調製するための方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、第1のアミノグリコシドを多官能性重合剤および1つ以上の追加のアミノグリコシドと接触させて、超分岐ポリアミノグリコシドを形成することを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、方法は、エンドキャッピング剤を超分岐ポリアミノグリコシドに添加して、重合剤上の任意の未反応官能基を共有結合的にキャップすることを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、方法は、超分岐ポリアミノグリコシドをNOに曝露して、NO供与超分岐ポリアミノグリコシドを提供することを含む。いくつかの実施形態では、NO曝露ステップは、アルカリ性条件で実施される。
【0067】
方法のいくつかの実施形態では、重合剤は、二官能性、三官能性、または四官能性分子を含む。方法のいくつかの実施形態では、重合剤は、マイケル受容体を含む。方法のいくつかの実施形態では、重合剤は、ジアクリレート、トリアクリレート、またはテトラアクリレートを含む。方法のいくつかの実施形態では、重合剤は、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)、エチレングリコールジアクリレート、プロパンジオールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセロールプロポキシレート(1PO/OH)トリアクリレート、またはトリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレートのうちの1つ以上を含む。
【0068】
方法のいくつかの実施形態では、重合剤は、以下の構造のうちの1つ以上を含み、
【化41】
式中、R
a、R
b、およびR
cは、独立して、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、および/または1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリエーテルから選択される。
【0069】
方法のいくつかの実施形態では、重合剤は、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)である。
【0070】
方法のいくつかの実施形態では、エンドキャッピング剤は、H2N-((CH2)aNH)b-H、H2N-((CH2)aNH)b-(CH2)cH、H2N-((CH2)aX1)b-(CH2)cH、およびHX1-((CH2)aX2)b((CH2)cX3)d-(CH2)eHのうちの1つ以上を含む。方法のいくつかの実施形態では、a、b、c、d、またはeの各例は、独立して、0~10の整数から選択される。方法のいくつかの実施形態では、X1、X2、およびX3の各例は、独立して、O、S、またはNHから選択される。方法のいくつかの実施形態では、エンドキャッピング剤は、H2NCH2CH2NH2および/またはH2NCH2CH2OHを含む。
【0071】
いくつかの実施形態は、微生物汚染を減少させる方法に関する。方法のいくつかの実施形態では、方法は、複数の微生物で汚染された表面を、一酸化窒素放出性超分岐ポリアミノグリコシドを含む化合物と接触させることを含み、超分岐ポリアミノグリコシドは、一酸化窒素供与体に共有結合したアミン含有基を含む。方法のいくつかの実施形態では、一酸化窒素供与体は、一酸化窒素を生成し、微生物の膜および/またはDNAへの損傷を誘発し、それにより生存可能な微生物の数を低減させる。
【0072】
いくつかの実施形態では、複数の微生物は、ウイルス、グラム陽性菌、グラム陰性菌、薬物耐性菌、カビ、酵母、真菌、およびこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、表面は、有機表面を含む。方法のいくつかの実施形態では、表面は、ヒトの皮膚または動物の皮膚である。方法のいくつかの実施形態では、表面は、口内、または周囲組織(例えば、唇、鼻孔、歯、歯茎など)にある。いくつかの実施形態では、表面は、口腔粘膜を含む。有利には、方法のいくつかの実施形態では、適用ステップは、皮膚または組織刺激を誘発しない。
【0074】
いくつかの実施形態では、表面は、無機表面を含む。方法のいくつかの実施形態では、無機表面は、医療機器の外面または内面である。いくつかの実施形態では、機器は、歯科用ツール、歯科用インプラント、歯科用固定具などを含むが、これらに限定されない、歯科用機器である。
【0075】
いくつかの実施形態では、微生物負荷は、薬物耐性菌を含む。方法のいくつかの実施形態では、微生物負荷は、1つ以上の口腔内病原体を含む。いくつかの実施形態では、微生物負荷は、P.aeruginosa、S.aureus、P.gingivalis、A.actinomycetemcomitans、A.viscosus、および/またはS.mutansのうちの1つ以上を含む。
【0076】
方法のいくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、上記または本明細書の他の場所に記載される通りである。
【0077】
いくつかの実施形態は、虫歯を治療および/または予防する方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上の口腔内病原体で汚染された患者の口の表面を、一酸化窒素放出性超分岐ポリアミノグリコシドを含む化合物と接触させることを含み、超分岐ポリアミノグリコシドは、一酸化窒素供与体に共有結合したアミン含有基を含む。方法のいくつかの実施形態では、一酸化窒素供与体は、一酸化窒素を生成し、病原体の膜および/またはDNAへの損傷を誘発し、それにより生存可能な病原体の数を低減させ、結果として虫歯の形成または進行を低減させる。方法のいくつかの実施形態では、微生物負荷は、P.aeruginosa、S.aureus、P.gingivalis、A.actinomycetemcomitans、A.viscosus、および/またはS.mutansのうちの1つ以上を含む。方法のいくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、上記または本明細書の他の場所に記載される通りである。
【0078】
いくつかの実施形態は、微生物汚染を減少させるための医薬品の調製における化合物の使用に関する。いくつかの実施形態では、化合物は、一酸化窒素放出性超分岐ポリアミノグリコシドを含む。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、一酸化窒素供与体に共有結合したアミン含有基を含む。いくつかの実施形態では、一酸化窒素供与体は、一酸化窒素を生成し、微生物の膜および/またはDNAへの損傷を誘発し、それにより生存可能な微生物の数を低減させる。いくつかの実施形態では、化合物は、ウイルス、グラム陽性菌、グラム陰性菌、薬物耐性菌、カビ、酵母、真菌、およびこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む複数の微生物を処理するように配合される。いくつかの実施形態では、化合物は、有機表面に送達されるように配合される。いくつかの実施形態では、化合物は、ヒトの皮膚または動物の皮膚に送達されるように配合される。いくつかの実施形態では、表面は、口内にある。いくつかの実施形態では、化合物は、無機表面に送達されるように配合される。いくつかの実施形態では、表面は、医療機器の外面または内面である。いくつかの実施形態では、機器は、歯科用機器である。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、上記または本明細書の他の場所に記載される通りである。
【0079】
いくつかの実施形態は、一酸化窒素放出性超分岐ポリアミノグリコシドを含む化合物に関し、超分岐ポリアミノグリコシドは、一酸化窒素供与体に共有結合したアミン含有基を含み、一酸化窒素供与体は、一酸化窒素を生成し、微生物の膜および/またはDNAへの損傷を誘発し、それにより生存可能な微生物の数を低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】超分岐ポリアミノグリコシド構造の実施形態の表現である。
【
図2】いくつかのアミノグリコシド:カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルミシン、ネオマイシン(BおよびC)、パラマイシン(ネオマイシンE)、およびストレプトマイシンの構造的表現を示す。
【
図3】超分岐ポリアミノグリコシド:A)HPKA、B)HPNE、C)HPGE、D)HPKA-EDA、およびE)HPKA-MEAの
1H NMRスペクトルを示す。
【
図4-1】超分岐ポリアミノグリコシド:A)HPKA、B)HPNE、C)HPGE、
【
図4-2】D)HPKA-EDA、およびE)HPKA-MEAのFTIRスペクトルを示す。
【
図5】超分岐ポリアミノグリコシド:A)HPKA、B)HPNE、C)HPGE、D)HPKA-EDA、およびE)HPKA-MEAの定量的
13C NMRスペクトルを示す。
【
図6】HPKA(黒)、およびHPKA/NO(248nmでショルダーを示す赤)の代表的なUV-visスペクトルである。
【
図7】HPKA/NO(黒)、HPKA-EDA/NO(赤)、HPKA-MEA/NO(緑)、および分子内水素結合形成のスキームからの累積一酸化窒素放出を示す。
【
図8】S.mutansに対するA)HPKA/NO(0.1mg mL
-1)、B)HPKA-MEA/NO(0.1mg mL
-1)のリアルタイム抗菌挙動を視覚化するための共焦点蛍光画像を示す。緑色の蛍光はDAF-2DAを表し、赤色の蛍光はPIを表す。スケールバー=20μm。
【
図9】A)対照およびB)NO放出性超分岐ポリアミノグリコシドへの2時間の曝露後のヒト歯肉線維芽細胞の生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
全般
アミノグリコシドは、抗菌薬として使用することができるポリアミンである。本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、抗菌薬としての使用のためのポリアミノグリコシドに関する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリアミノグリコシドは、一酸化窒素(NO)結合部分で官能化され、NO生成/放出のプラットフォームとして使用することができる。いくつかの実施形態では、ポリアミノグリコシドは、超分岐である。本明細書に開示される特定の実施形態は、殺菌および/または抗菌活性を有する超分岐ポリアミノグリコシドに関する。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、NO結合部分を含む。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、一酸化窒素(NO)ガスまたはいくつかの他のNO供与体と反応させて、NO供与性超分岐ポリアミノグリコシドを生成することができる。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、生分解性および/または生体適合性である。超分岐ポリアミノグリコシドが本明細書における例示的な構造として使用されるが、いくつかの実施形態によれば、直鎖ポリアミノグリコシド(例えば、非超分岐)も使用されることが理解されるべきである。
【0082】
別途定義されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の発明の対象の説明に使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであって、発明の対象を限定することを意図するものではない。
【0083】
本明細書で使用されるとき、「および/または」とは、関連する列挙される項目のうちの1つ以上の任意および全ての可能な組み合わせ、ならびに代替物(「または」)で解釈されるときの組み合わせの欠如を指し、これらを包含する。
【0084】
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、本主題の化合物または薬剤の量、用量、時間、温度、殺菌有効性などの測定可能な値を指す場合、指定された量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0085】
「有効量」という用語は、本明細書で使用されるとき、当該技術分野で周知であろうように、例えば、対象の容態の(例えば、1つ以上の症状の)改善、容態の進行の遅延もしくは低減、障害の発症の予防もしくは遅延、および/または臨床パラメータ、疾患、もしくは病気における変化などを含む、障害、疾患、または病気に罹患している対象への有益な効果であり得る、調節効果を与える列挙される化合物の量を指す。例えば、有効量は、対象の容態を少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%改善する組成物、化合物、または薬剤の量を指すことができる。いくつかの実施形態において、容態の改善は感染の低減であり得る。いくつかの実施形態において、改善は、表面上のまたは対象内の細菌負荷(例えば、バイオバーデン)の低減であり得る。本開示の発明の対象の有効組成物中の有効成分の実際の薬用量レベルは、特定の対象および/または用途に対して所望の応答を達成するのに有効である量の有効化合物(複数可)を投与するように変えることができる。選択される薬用量レベルは、これらに限定されないが、組成物の活性、配合、投与経路、他の薬物または治療との組み合わせ、治療されている容態の重症度、および治療されている対象の健康状態および以前の病歴を含む、様々な因子に依存するであろう。いくつかの実施形態において、最小用量が投与され、用量は、用量制限毒性の非存在下で最小有効量まで漸増される。有効量の決定および調整、ならびにこのような調整をいつおよびどのように行うかの評価が、本明細書で企図される。
【0086】
「治療する」または「治療すること」または「治療」は、例えば、対象の容態の(例えば、1つ以上の症状の)改善、容態の進行の遅延もしくは低減、および/または臨床パラメータ、疾患、もしくは病気における変化、病気の治癒などを含む、障害、疾患、または病気に罹患している対象への有益な効果であり得る、調節効果を与える任意の種類の作用を指す。
【0087】
「一酸化窒素供与体」または「NO供与体」という用語は、一酸化窒素種の生物活性が、意図された作用部位で発現するように、一酸化窒素種を供与、放出、および/または直接的にもしくは間接的に移動させ、ならびに/あるいはインビボで一酸化窒素の内在性産生を刺激し、ならびに/あるいはインビボで一酸化窒素の内在性レベルを上昇させる種および/または分子を指す。
【0088】
「一酸化窒素放出」という用語は、一酸化窒素の3つの酸化還元形態(NO+、NO-、NO)のうちのいずれか1つ(または2つ以上)を供与、放出および/または直接的にもしくは間接的に移動させる種、ならびに/あるいは一酸化窒素の3つの酸化還元形態(NO+、NO-、NO)のうちのいずれか1つ(または2つ以上)を供与、放出および/または直接的にもしくは間接的に移動させる方法を指す。いくつかの実施形態において、一酸化窒素種の生物活性が、意図する作用部位で発現するように、一酸化窒素放出が達成される。
【0089】
本明細書で使用する場合の「微生物感染症」という用語は、細菌、真菌、ウイルス、酵母感染症、および他の微生物、ならびにそれらの組み合わせを指す。
【0090】
本明細書に開示されるように治療される「患者」または「対象」は、いくつかの実施形態において、ヒト患者であるが、本開示の主題の原理は、本開示の主題が、「対象」および「患者」という用語に含まれるよう意図されている、哺乳動物を含む全ての脊椎動物種に対して有効であることを示すことが理解されるべきである。適切な対象は、概して哺乳動物対象である。本明細書に説明する発明の対象は、研究ならびに獣医学的および医学的用途における使用を見出している。本明細書で使用する「哺乳類」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)、サルなどを含むが、これらに限定されない。ヒト対象は、新生児、乳児、年少者、成人および老人の対象を含む。
【0091】
本明細書で使用されるとき、「官能化された超分岐ポリアミノグリコシド」という用語は、1つ以上の修飾単位(例えば、非アミノグリコシド部分で共有結合的にエンドキャップされた)を含有する超分岐ポリアミノグリコシド物質を指す。そのような「官能化された超分岐ポリアミノグリコシド」は、一酸化窒素供与体部分が結合していてもいなくてもよい。
【0092】
「アミノ」および「アミン」という用語は、NR3、NH3、NHR2、およびNH2Rなどの含窒素基を指し、式中、Rは、本明細書の他の場所で説明されるとおりであり得る。したがって、本明細書で使用する「アミノ」は、第1級アミン、第2級アミン、または第3級アミンを指すことができる。いくつかの実施形態において、アミノ基の1つのRはジアゼニウムジオラート(すなわち、NONO)であり得る。
【0093】
基が「任意に置換された」と記載されるときはいつでも、その基は、非置換であるか、または示される置換基のうちの1つ以上で置換されていてもよい。同様に、置換される場合、基が「非置換または置換」と記載されるとき、置換基(複数可)は、1つ以上の示される置換基から選択され得る。置換基が示されていない場合、示される「任意に置換された」または「置換された」基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール(アルキル)、シクロアルキル(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、ヘテロシクリル(アルキル)、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、シアノ、ハロゲン、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アミノ、一置換アミン基、二置換アミン基、一置換アミン(アルキル)、二置換アミン(アルキル)、ジアミノ基、ジエーテル基、ポリアミノ基、およびポリエーテル基から個別に独立して選択される1つ以上の基(複数可)で置換され得ることを意味する。
【0094】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」という用語は、完全に飽和した脂肪族炭化水素基を指す。アルキル部分は、分岐または直鎖であり得る。分岐アルキル基の例には、イソプロピル、sec-ブチル、t-ブチルなどが含まれるが、これらに限定されない。直鎖アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチルなどが含まれるが、これらに限定されない。アルキル基は、1~30個の炭素原子を有し得る(本明細書で出現するときはいつでも、「1~30」などの数値範囲は、所与の範囲内のそれぞれの整数を指し、例えば、「1~30個の炭素原子」は、アルキル基が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個などからなり、最大30個の炭素原子を含み得ることを意味するが、本定義は、数値範囲が指定されていない場合の「アルキル」という用語の出現も網羅する)。アルキル基はまた、1~12個の炭素原子を有する中サイズのアルキルであってもよい。アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する低級アルキルでもあり得る。アルキル基は、置換または非置換であってもよい。例としてにすぎないが、「C1~C5アルキル」は、アルキル鎖中に1~5個の炭素原子があることを示し、すなわち、アルキル鎖はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル(分枝鎖および直鎖)、などから選択される。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第3級ブチル、ペンチルおよびヘキシルが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0095】
本明細書で使用されるとき、「アルキレン」という用語は、二価の完全に飽和した直鎖脂肪族炭化水素基を指す。アルキレン基の例には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、およびオクチレンが含まれるが、これらに限定されない。アルキレン基は、
【化42】
、続いて炭素原子の数、続いて「*」で表され得る。例えば、
【化43】
は、エチレンを表す。アルキレン基は、1~30個の炭素原子を有し得る(本明細書で出現するときはいつでも、「1~30」などの数値範囲は、所与の範囲内のそれぞれの整数を指し、例えば、「1~30個の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などからなり、最大30個の炭素原子を含み得ることを意味するが、本定義は、数値範囲が指定されていない場合の「アルキレン」という用語の出現も網羅する)。アルキレン基はまた、1~12個の炭素原子を有する中サイズのアルキルであってもよい。アルキレン基は、1~4個の炭素原子を有する低級アルキルでもあり得る。アルキレン基は、置換または非置換であってもよい。例えば、低級アルキレン基は、低級アルキレン基の1つ以上の水素を置換することにより、および/または同じ炭素上の両方の水素をC
3~6単環式シクロアルキル基(例えば、
【化44】
)で置換することにより、置換することができる。
【0096】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、これらに限定されないが、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニルなどを含む、炭素二重結合(複数可)を含有する2~20個の炭素原子の一価の直鎖または分岐鎖ラジカルを指す。アルケニル基は、非置換または置換であってもよい。
【0097】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、これらに限定されないが、1-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニルなどを含む、炭素三重結合(複数可)を含有する2~20個の炭素原子の一価の直鎖または分岐鎖ラジカルを指す。アルキニル基は、非置換または置換であってもよい。
【0098】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」とは、完全に飽和した(二重結合または三重結合を含まない)単環式または多環式(二環式など)炭化水素環系を指す。2つ以上の環で構成される場合、環は、融合、架橋、またはスピロで結合される。本明細書で使用されるとき、「融合」という用語は、2つの原子および1つの結合を共有する2つの環を指す。本明細書で使用されるとき、「架橋シクロアルキル」という用語は、シクロアルキルが非隣接原子を接続する1つ以上の原子の結合を含有する化合物を指す。本明細書で使用されるとき、「スピロ」という用語は、1つの原子を共有する2つの環を指し、2つの環は、架橋によって連結されていない。シクロアルキル基は、環(複数可)に3~30個の原子、環(複数可)に3~20個の原子、環(複数可)に3~10個の原子、環(複数可)に3~8個の原子、または環(複数可)に3~6個の原子を含有することができる。シクロアルキル基は、非置換または置換であってもよい。モノシクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれるが、決してこれらに限定されない。縮合シクロアルキル基の例には、デカヒドロナフタレニル、ドデカヒドロ-1H-フェナレニルおよびテトラデカヒドロアントラセニルが含まれ、架橋シクロアルキル基の例は、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、アダマンタニル、およびノルボルナニルであり、スピロシクロアルキル基の例には、スピロ[3.3]ヘプタンおよびスピロ[4.5]デカンが含まれる。
【0099】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルケニル」とは、少なくとも1つの環に1つ以上の二重結合を含有する単環式または多環式(二環式など)炭化水素環系を指すが、2つ以上がある場合、二重結合は、全ての環を通して完全に非局在化したパイ電子系を形成することができない(そうでなければ、基は、本明細書で定義されるように、「アリール」である)。シクロアルケニル基は、環(複数可)に3~10個の原子、環(複数可)に3~8個の原子、または環(複数可)に3~6個の原子を含有することができる。2つ以上の環で構成される場合、環は、融合、架橋、またはスピロで結合される。シクロアルケニル基は、非置換または置換であってもよい。
【0100】
本明細書で使用されるとき、「アリール」とは、全ての環を通して完全に非局在化したパイ電子系を有する炭素環式(全炭素)単環式または多環式(二環式など)芳香族環系(2つの炭素環式環が化学結合を共有する縮合環系を含む)を指す。アリール基における炭素原子の数は、変動し得る。例えば、アリール基は、C6~C14アリール基、C6~C10アリール基、またはC6アリール基であり得る。アリール基の例には、ベンゼン、ナフタレン、およびアズレンが含まれるが、これらに限定されない。アリール基は、置換または非置換であってもよい。
【0101】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロアリール」とは、1つ以上のヘテロ原子(例えば、1、2、または3つのヘテロ原子)、すなわち、これらに限定されないが、窒素、酸素、および硫黄を含む、炭素以外の元素を含有する単環式または多環式(二環式など)芳香族環系(完全に非局在化したパイ電子系を有する環系)を指す。ヘテロアリール基の環(複数可)における原子の数は、変動し得る。例えば、ヘテロアリール基は、環(複数可)に4~14個の原子、環(複数可)に5~10個の原子、または環(複数可)に5~6個の原子、例えば、9個の炭素原子と1個のヘテロ原子、8個の炭素原子と2個のヘテロ原子、7個の炭素原子と3個のヘテロ原子、8個の炭素原子と1個のヘテロ原子、7個の炭素原子と2個のヘテロ原子、6個の炭素原子と3個のヘテロ原子、5個の炭素原子と4個のヘテロ原子、5個の炭素原子と1個のヘテロ原子、4個の炭素原子と2個のヘテロ原子、3個の炭素原子と3個のヘテロ原子、4個の炭素原子と1個のヘテロ原子、3個の炭素原子と2個のヘテロ原子、または2個の炭素原子と3個のヘテロ原子を含有することができる。さらに、「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つのアリール環と少なくとも1つのヘテロアリール環または少なくとも2つのヘテロアリール環などの、2つの環が少なくとも1つの化学結合を共有する縮合環系を含む。ヘテロアリール環の例には、フラン、フラザン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フタラジン、ピロール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、チアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、インドール、インダゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、プテリジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、およびトリアジンが含まれるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は、置換または非置換であってもよい。
【0102】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクリル」または「ヘテロアリシクリル」とは、炭素原子が1~5個のヘテロ原子と共にその環系を構成する、3員、4員、5員、6員、7員、8員、9員、10員、最大18員の単環式、二環式、および三環式環系を指す。ヘテロ環は、そのような方法で配置されるが、完全に非局在化したパイ電子系が全ての環を通して発生しない、1つ以上の不飽和結合を任意に含有し得る。ヘテロ原子(複数可)は、これらに限定されないが、酸素、硫黄、および窒素を含む、炭素以外の元素である。複素環は、定義が、ラクタム、ラクトン、環式イミド、環式チオイミド、および環式カルバメートなどのオキソ系およびチオ系を含むように、1つ以上のカルボニルまたはチオカルボニル官能基をさらに含有し得る。2つ以上の環で構成される場合、環は、融合、架橋、またはスピロで結合される。本明細書で使用されるとき、「融合」という用語は、2つの原子および1つの結合を共有する2つの環を指す。本明細書で使用されるとき、「架橋ヘテロシクリル」または「架橋ヘテロアリシクリル」という用語は、ヘテロシクリルまたはヘテロアリシクリルが非隣接原子を接続する1つ以上の原子の結合を含有する化合物を指す。本明細書で使用されるとき、「スピロ」という用語は、1つの原子を共有する2つの環を指し、2つの環は、架橋によって連結されていない。ヘテロシクリルおよびヘテロアリシクリル基は、環(複数可)に3~30個の原子、環(複数可)に3~20個の原子、環(複数可)に3~10個の原子、環(複数可)に3~8個の原子、または環(複数可)に3~6個の原子を含有することができる。例えば、5個の炭素原子と1個のヘテロ原子、4個の炭素原子と2個のヘテロ原子、3個の炭素原子と3個のヘテロ原子、4個の炭素原子と1個のヘテロ原子、3個の炭素原子と2個のヘテロ原子、2個の炭素原子と3個のヘテロ原子、1個の炭素原子と4個のヘテロ原子、3個の炭素原子と1個のヘテロ原子、または2個の炭素原子と1個のヘテロ原子。加えて、ヘテロ脂環式の任意の窒素は、四級化され得る。ヘテロシクリルまたはヘテロ脂環式基は、非置換または置換であってもよい。そのような「ヘテロシクリル」または「ヘテロアリシクリル」基の例には、1,3-ジオキシン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,2-ジオキソラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソラン、1,3-オキサチアン、1,4-オキサチイン、1,3-オキサチオラン、1,3-ジチオール、1,3-ジチオラン、1,4-オキサチアン、テトラヒドロ-1,4-チアジン、2H-1,2-オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、トリオキサン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、モルホリン、オキシラン、ピペリジンN-オキシド、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、アゼパン、ピロリドン、ピロリジオン、4-ピペリドン、ピラゾリン、ピラゾリジン、2-オキソピロリジン、テトラヒドロピラン、4H-ピラン、テトラヒドロチオピラン、チアモルホリン、チアモルホリンスルホキシド、チアモルホリンスルホン、およびそれらのベンゾ縮合類似体(例えば、ベンズイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、および/または3,4-メチレンジオキシフェニル)が含まれるが、これらに限定されない。スピロヘテロシクリル基の例には、2-アザスピロ[3.3]ヘプタン、2-オキサスピロ[3.3]ヘプタン、2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン、2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン、2-オキサスピロ[3.4]オクタン、および2-アザスピロ[3.4]オクタンが含まれる。
【0103】
本明細書で使用されるとき、「アラルキル」および「アリール(アルキル)」は、置換基として、低級アルキレン基を介して接続されたアリール基を指す。アラルキルの低級アルキレンおよびアリール基は、置換または非置換であってもよい。例には、ベンジル、2-フェニルアルキル、3-フェニルアルキル、およびナフチルアルキルが含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロアラルキル」および「ヘテロアリール(アルキル)」は、置換基として、低級アルキレン基を介して接続されたヘテロアリール基を指す。ヘテロアラルキルの低級アルキレンおよびヘテロアリール基は、置換または非置換であってもよい。例には、2-チエニルアルキル、3-チエニルアルキル、フリルアルキル、チエニルアルキル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソオキサゾリルアルキル、およびイミダゾリルアルキル、ならびにそれらのベンゾ縮合類似体が含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
「ヘテロアリシクリル(アルキル)」および「ヘテロシクリル(アルキル)」は、置換基として、低級アルキレン基を介して接続されたヘテロ環式またはヘテロ脂環式基を指す。(ヘテロアリシクリル)アルキルの低級アルキレンおよびヘテロシクリルは、置換または非置換であってもよい。例には、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル(メチル)、ピペリジン-4-イル(エチル)、ピペリジン-4-イル(プロピル)、テトラヒドロ-2H-チオピラン-4-イル(メチル)、および1,3-チアジナン-4-イル(メチル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。
【0107】
本明細書で使用されるとき、「アルコキシ」は、式-ORを指し、式中、Rは、本明細書で定義されるように、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、またはヘテロシクリル(アルキル)である。アルコキシの非限定的なリストは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、フェノキシ、およびベンゾキシである。アルコキシは、置換または非置換であってもよい。
【0108】
本明細書で使用されるとき、「アシル」は、置換基として、カルボニル基を介して接続された水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、およびヘテロシクリル(アルキル)を指す。例には、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ベンゾイル、およびアクリルが含まれる。アシルは、置換または非置換であってもよい。
【0109】
本明細書で使用される「ハロゲン原子」または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素などの元素周期表の第7列の放射性安定原子のいずれか1つを意味する。
【0110】
本明細書で使用されるとき、「ジアミノ-」という用語は、「-NRA(RB)N(RC)-」基を示し、式中、RBおよびRCは、独立して、本明細書で定義されるように、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、またはヘテロシクリル(アルキル)であり得、RAは、2つのアミノ基を接続し、(RBおよびRCから独立して)アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、またはヘテロシクリル(アルキル)であり得る。RA、RB、およびRCは、独立して、置換または非置換であり得る。
【0111】
本明細書で使用されるとき、「ジエーテル-」という用語は、「-ORDO-」基を示し、式中、RDは、独立して、本明細書で定義されるように、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、またはヘテロシクリル(アルキル)であり得、RDは、2つのO基を接続する。RDは、任意に置換または非置換であり得る。
【0112】
本明細書で使用されるとき、「ポリアミノ」という用語は、繰り返し-N(RB)アルキル-基を示す。例示のために、ポリアミノという用語は、-N(RB)アルキル-N(RB)アルキル-N(RB)アルキル-N(RB)アルキル-を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリアミノのアルキルは、本明細書の他の場所に記載される通りである。この例は、4つのみの繰り返し単位を有するが、「ポリアミノ」という用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の繰り返し単位からなり得、RBおよびアルキルは、本明細書の他の場所で定義される通りである。ここで記述されるとき、ポリアミノは、アルキル基が介在するアミン基を含む(アルキルは、本明細書の他の場所で定義される通りである)。ポリアミノは、ポリアミノが末端基である場合、アミン基で、もしくはアルキルとして、またはポリアミノが2つの原子を架橋する場合、-N(RC)-で、これとして終端し得る。例えば、メチレンジアミノ(-NHCH2NH-)、エチレンジアミノ(-NH(CH2)2NH-)などのいずれか1つは、ポリアミノ基とみなされる。
【0113】
本明細書で使用されるとき、「ポリエーテル」という用語は、繰り返し-Oアルキル-基を示す。例示のために、ポリエーテルという用語は、-O-アルキル-O-アルキル-O-アルキル-O-アルキルを含むことができる。ポリエーテルは、アルキル基が介在する-O-(エーテル)を含む、最大10個の繰り返し単位を有し得る(アルキルは、本明細書の他の場所で定義される通りである)。ポリエーテルは、ポリエーテルが末端基である場合、ヒドロキシ基で、もしくはアルキルとして、またはポリエーテルが2つの原子を架橋する場合、-O-で終端し得る。
【0114】
整数の範囲が与えられるとき、この範囲にはその範囲内に収まる何らかの数およびその範囲の両端を定義する数が含まれる。例えば、「1~20の整数」という用語が使用されるとき、範囲に含まれる整数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など、最大20を含む。
【0115】
一酸化窒素
一酸化窒素(NO)は、主に微生物DNAおよび/または膜構造に対する酸化およびニトロソ化損傷を引き起こし得る反応性NO副産物(例えば、ペルオキシ亜硝酸および三酸化二窒素)の形成によって、細菌およびバイオフィルムの両方を根絶することができる広域スペクトルの抗菌薬である。有利なことに、NOがその抗菌効果を発揮する広範なメカニズムは、細菌が耐性を発達させるリスクを低減する。したがって、NO放出物質は、細菌感染と戦うための良好な標的であり得る。NO放出物質の抗菌有効性は、NOペイロードおよび関連する放出動態の両方に依存し得る。
【0116】
内在的に産生される二原子フリーラジカルである一酸化窒素は、血小板凝集および粘着、血管拡張、創傷修復、免疫応答、および発癌を含む、多くの生物学的プロセスに関連している。NOの欠乏は、NO関連の生理学的システムのある程度の機能不全につながり得る。外因性NO送達は、心血管疾患から抗菌および抗癌療法に及ぶ生物医学的療法の解決のための効果的な戦略であり得る。しかしながら、治療薬についてガス状NOを調節するのが困難であることは、NO送達を制御するために、合成NO供与体(例えば、N-ジアゼニウムジオレート、S-ニトロソチオール、金属ニトロシル、有機硝酸塩)の使用を正当化する。N-ジアゼニウムジオレート(NONOエート)は、生理学的条件下でのプロトン誘導性NO送達のためのそれらの良好な安定性およびそれらの能力によって、NO供与体として有用であり得る。いくつかの例では、高いNO合計は、良好なスキャフォールドの貯蔵能力を効果的に評価するための重要なパラメータである。加えて、高密度の第2級アミン基は、特定の供与体に高いNO貯蔵能力を与える。しかしながら、急速なNO放出および高いNO貯蔵量は、哺乳動物細胞に望ましくない毒性をもたらし得る。したがって、高いNO貯蔵量および低い細胞毒性を有する生体適合性NO放出物質の調製には課題が存在し、そのような課題は、とりわけ、本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従って対処される。本明細書に記載の主題のいくつかの実施形態は、以下の利点:効率的かつ特有の合成経路および結果として生じるポリアミノグリコシドの化学組成のうちの1つ以上を有する。さらなる利点は、制御可能な量の第2級アミンを含み得、多様な外部末端基(すなわち、ヒドロキシル、メチル、ヒドロキシメチル、および第1級アミン)を提供することができる。生成された一酸化窒素放出性スキャフォールドのNO貯蔵およびNO放出動態は、特定の用途のために調整することができる。いくつかの実施形態において、この調整は、本明細書に開示される式の官能化モノマーのタイプおよび/または数を変更することにより達成される。いくつかの実施形態において、例えば、異なる組成を有する化合物による、生成された一酸化窒素放出性スキャフォールド中のアミンの追加の官能化は、NO放出動態の制御をさらに可能にする。いくつかの実施形態において、第2級アミン基は、N-ジアゼニウムジオレート(または他のNOキャリア基)の安定性に直接影響を及ぼし、NO貯蔵および放出の両方の動態に対する制御を可能にする。
【0117】
虫歯(例えば、齲蝕)は、ほとんどの先進国において60~70%の学齢期の子供およびの成人の大部分に影響を及ぼす。世界中で、総人口の11%が重度の歯周炎に罹患し、これが歯の喪失および冠状動脈、心血管、脳卒中、妊娠の有害転帰などの全身疾患の一因となっている。口腔内の700を超える微生物のうち、齲蝕原性細菌(例えば、Streptococcus mutans、Actinomyces viscosus)および歯周病原体(例えば、Porphyromonas gingivalis、Aggregatibacter actinomycetemcomitans)は、口腔疾患の発症および進行に大きな役割を果たす。
【0118】
健康な口腔を維持するためには、それらの疾患を引き起こす細菌を殺滅することができる経口治療薬を開発することが重要である。高分子NO送達ビヒクル(例えば、シリカナノ粒子)は、グラム陰性歯周病原体を殺滅する。しかしながら、これらの物質は、グラム陽性齲蝕原性細菌を安全な濃度(例えば、殺菌性であるが哺乳動物細胞に対して非毒性である濃度)で殺滅することは実証されていない。それらのナノ物質と同様に、シリカナノ粒子の生分解性の欠如および潜在的な細胞毒性も、生物医学用途のためのそれらの将来を妨げる。現在の研究はまた、銀、金、亜鉛、および銅を含むナノ物質を、細菌耐性の促進に悩まされている従来の抗生物質の代替品として利用することに焦点を当てる。これらのナノ物質は、低い毒性で有望な抗菌能力を示し得る。しかしながら、生分解性の欠如は、蓄積毒性を引き起こし、特定の用途についてのそれら将来を制限し得る。超分岐ポリマー(例えば、ポリアミノ、ポリエステル、ポリエーテル、およびポリサッカリド)は、これらの問題または他の問題のうちの1つ以上を解決し得る。本明細書に開示されるような、樹状ポリマーのサブクラスである超分岐ポリマー構造は、有利に合成しやすく、特有の三次元樹状形状が得られ、低い細胞毒性を有することができる。
【0119】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、NO供与性超分岐ポリマー構造に関する。本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、NO供与性超分岐ポリアミノグリコシドに関する。本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、NO供与性超分岐ポリアミノグリコシドを作製および使用する方法に関する。いくつかの実施形態において、本明細書の他の場所で開示されるとき、超分岐ポリアミノグリコシドは、1つ以上のアミノグリコシドの重合によって合成される。いくつかの実施形態において、超分岐ポリアミノグリコシドは、NO吸収部分で官能化される。いくつかの実施形態において、NOは、これらの超分岐ポリアミノグリコシドに吸収されて、NO供与性超分岐ポリアミノグリコシドを提供することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、超分岐構造は、天然に生成されたアミノグリコシドから合成される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される超分岐ポリアミノグリコシドは、生分解性および/または生体適合性スキャフォールドである。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される超分岐ポリアミノグリコシドは、生物医学的用途に使用することができる。いくつかの実施形態において、特定のメカニズムまたは理論に縛られることなく、ポリアミノグリコシドは、構造内の豊富なグリコシド結合およびヒドロキシル基の存在によって、良好な生分解性および低毒性を示すと考えられる。いくつかの実施形態において、特定のメカニズムまたは理論に縛られることなく、これらの構造は、それらの高度に分岐した構造のために、他のNO送達スキャフォールドに対して向上した抗菌有効性を示すと考えられる。
【0121】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される超分岐ポリアミノグリコシドは、患者を治療する方法および/または細菌を殺滅する方法において(例えば、抗菌薬として)使用される。有効量の本明細書に開示される官能化超分岐ポリアミノグリコシドのいずれかを対象に投与することを含む、一酸化窒素を対象に送達するための方法も本明細書に提供される。疾患状態を治療する方法もまた本明細書に提供され、いくつかの実施形態において、方法は、有効量の本明細書に開示される官能化超分岐ポリアミノグリコシドのいずれかを、治療を必要とする対象に投与することを含み、疾患状態は、癌、心血管疾患、微生物感染症;医療機器への血液の曝露によって引き起こされる血小板凝集および血小板粘着;異常細胞増殖の結果として生じる病理学的容態;移植拒絶反応、自己免疫疾患、炎症、血管疾患;瘢痕組織;創傷収縮、再狭窄、疼痛、発熱、消化管障害、呼吸器障害、性機能障害、および性感染症からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、疾患状態は微生物感染症である。いくつかの実施形態において、疾患状態は、虫歯または口の別の疾患(歯肉炎、歯周炎など)である。
【0122】
いくつかの実施形態において、化合物を複数の微生物で汚染された表面に適用することを含む、表面上の微生物負荷を低減する方法が本明細書に提供され、化合物は、一酸化窒素(NO)放出性水溶性官能化超分岐ポリアミノグリコシドを含み、官能化超分岐ポリアミノグリコシドは、NO供与体を含み、NO供与体は、NOを生成し、微生物DNAおよび膜構造への酸化よび/またはニトロソ化損傷を誘発し、それにより微生物負荷を低減させ、複数の微生物は、以下:グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌、酵母、およびウイルスのうちの2つ以上を含む。いくつかの実施形態において、表面は有機表面である。いくつかの実施形態において、表面はヒトの皮膚または粘膜表面である。いくつかの実施形態において、化合物の適用は、皮膚の刺激または粘膜の刺激を誘発しない。いくつかの実施形態において、表面は動物の皮膚である。いくつかの実施形態において、表面は、ヒトまたは動物の口内または周囲組織にある。いくつかの実施形態において、化合物の適用は、皮膚の刺激または口もしくは周囲組織の刺激を誘発しない。いくつかの実施形態において、表面はヒト気道組織である。いくつかの実施形態において、化合物の適用(例えば、吸入)は気道上皮細胞の刺激を誘発しない。いくつかの実施形態において、表面は無機表面である。いくつかの実施形態において、無機表面は医療機器の外面または内面である。いくつかの実施形態において、医療機器は歯科用ツールである。いくつかの実施形態において、化合物の適用は、医療機器の外面または内面に抗菌コーティングを生成する。いくつかの実施形態において、医療機器は、内視鏡、歯科用ドリルもしくは他の歯科用機器、歯科用インプラント、または歯科用固定具を含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、低減および/または除去されることになっている微生物量は薬物耐性菌を含む。いくつかの実施形態において、薬物耐性細菌はカルバペネム耐性腸内細菌科群(Enterobacteriaceae)を含む。いくつかの実施形態において、薬剤耐性細菌は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含む。いくつかの実施形態において、微生物は、ヒト免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザ、肝炎、コクサッキーウイルス、帯状疱疹、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、狂犬病、肺炎、出血性ウイルス熱、H1N1など)、プリオン、寄生虫、真菌、カビ、酵母、ならびに、とりわけ、Candida albicans、Aspergillus niger、Escherichia coli(E. coli)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)、およびStaphylococcus aureus(S.aureus)、Group A streptococci、S.pneumoniae、Mycobacterium tuberculosis、Campylobacter jejuni、Salmonella、Shigella、P.gingivalis、A.actinomycetemcomitans、A.viscosus、および/またはS.mutans、ならびに様々な薬物耐性細菌を含む、細菌(グラム陽性およびグラム陰性の両方)を含む。微生物(microorganism)および微生物(microbe)という用語は相互交換可能に使用されるものとする。微生物は、野生型、遺伝子操作された、または改変された生物を含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される配合および方法は、局所使用または口腔粘膜などの表面の治療のためのものである。
【0124】
いくつかの実施形態において、表面(複数の微生物で汚染されているか、または汚染の影響を受けやすい、例えば、口)を、一酸化窒素(NO)放出性超分岐ポリアミノグリコシドを含む化合物と接触させることを含む、微生物感染および/または増殖を治療および/または予防することが提供され、官能化超分岐ポリアミノグリコシドは、NO供与体を含み、NO供与体は、NOを生成し、微生物の膜および/またはDNAへの損傷を誘発し、それにより生存可能な微生物の数を低減させ、感染または侵入を治療および/または予防し、複数の微生物は、ウイルス、グラム陽性菌、グラム陰性菌、薬物耐性菌、カビ、酵母、真菌、およびこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【0125】
実施形態に応じて、方法および使用は、局所経路、経口投与、経口-局所(例えば、オーラルリンス、マウスウォッシュ、液体、固体、ゲル、ペーストなど)、イリゲーション(歯科イリゲーションなど)、注射、スプレー、固体デポ、摂取、または吸入を介した投与用に配合される、本明細書に開示される化合物を用いる。一実施形態において、配合物の適用にはストリップまたは他の基材が使用される。ストリップは、いくつかの実施形態において、ポリエチレンを含むがこれに限定されない、ポリマーから作製される。いくつかの実施形態において、経路は、局所であり、NO放出性超分岐ポリアミノグリコシドの方法および使用は、口腔内病原体(例えば、Porphyromonas gingivalis、Aggregatibacter actinomycetemcomitans、Streptococcus mutans、およびActinomyces viscosusのうちの1つ以上)の治療のためのものである。いくつかの実施形態において、NO放出性超分岐ポリアミノグリコシドは、歯肉線維芽細胞、口腔粘膜上皮、または口内もしくは周囲の他の細胞を含む、ヒト細胞を実質的に損傷しない。
【0126】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される超分岐ポリアミノグリコシドは、(
図1に示されるように)超分岐構造の鎖長またはアームに沿ったおよび/またはその内部の樹状単位、線状単位、および末端単位で構成される。いくつかの実施形態において、超分岐構造に沿った線状単位および/または鎖は、NO供与体部分の付加のための潜在的な反応性部位として第2級アミンを提供する。
【0127】
いくつかの実施形態において、NO供与性超分岐ポリアミノグリコシドは、
図1に示されるように、例えば、超分岐構造内の鎖長またはアームに沿って、超分岐構造を装飾するNO供与性置換基を含む。いくつかの実施形態において、超分岐ポリアミノグリコシドは、1つ以上の天然アミノグリコシドの重合によって合成される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される超分岐アミノグリコシドを調製するために使用される天然アミノグリコシドは、(
図2に示される)カナマイシン、ゲンタマイシン、およびネオマイシンのうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態において、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、および/または他の天然もしくは非天然アミノグリコシドのうちの1つ以上(例えば、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン(BおよびC)、パラモマイシン(ネオマイシンE)、およびストレプトマイシン、ジヒドロストレプトマイシンなど)が使用される。
【0128】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、または式VII、それらの組み合わせの構造を有する1つ以上のアミノグリコシド単位を含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、式Iの構造の1つ以上の単位を含み、
【化45】
式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、独立して、-H、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリエーテルからなる群から選択されるか、または連結単位を介した超分岐ポリアミノグリコシドの別の原子への共有結合であり、
G
1およびG
2は、独立して、置換または非置換ヘキソースまたはペントースである。いくつかの実施形態において、例えば、式Iの構造は、カナマイシンA、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、および/またはネチルマイシンのうちの1つ以上の中央ヘキソースであり、G
1およびG
2は、それらのアミノグリコシドの置換または非置換の隣接した6員糖環である。
【0130】
いくつかの実施形態では、G
1は、以下からなる群から選択され、
【化46】
G
2は、以下からなる群から選択され、
【化47】
式中、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10は、独立して、-H、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリエーテルからなる群から選択されるか、または連結単位を介した超分岐ポリアミノグリコシドの別の原子への共有結合であり、
X
a、X
b、およびX
cは、独立して、-H、-OH、およびC
1~C
6アルキルから選択される。
【0131】
いくつかの実施形態において、官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、式IIの構造の1つ以上の単位を含み、
【化48】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
9、およびR
10は、本明細書の他の場所で定義される通りである。いくつかの実施形態において、式IIは、出発物質としてカナマイシンを使用して調製することができ、および/または式IIは、カナマイシン含有超分岐ポリアミノグリコシドを具体化する。
【0132】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、式IIIの構造の1つ以上の単位を含み、
【化49】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10は、本明細書の他の場所で定義される通りである。いくつかの実施形態において、式IIIは、出発物質としてゲンタマイシンを使用して調製することができ、および/または式IIIは、ゲンタマイシン含有超分岐ポリアミノグリコシドを具体化する。
【0133】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、式IVの構造の1つ以上の単位を含み、
【化50】
式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22は、独立して、-H、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリエーテルからなる群から選択されるか、または連結単位を介した超分岐ポリアミノグリコシドの別の原子への共有結合である。いくつかの実施形態において、式IVは、出発物質としてネオマイシンを使用して調製することができ、および/または式IVは、ネオマイシン含有超分岐ポリアミノグリコシドを具体化する。いくつかの実施形態において、本明細書に示される他の構造と同様に、式IVは、天然の立体化学配置(ネオマイシンBまたはCなど)を網羅することが意図されるが、C型のみが示される。
【0134】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、式Vの構造の1つ以上の単位を含み、
【化51】
式中、R
11、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22は、本明細書の他の場所で定義される通りである。いくつかの実施形態において、式Vは、出発物質としてパロモマイシンを使用して調製することができ、および/または式Vは、パロモマイシン含有超分岐ポリアミノグリコシドを具体化する。
【0135】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、式VIの構造の1つ以上の単位を含み、
【化52】
式中、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30は、独立して、-H、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリエーテルからなる群から選択されるか、または連結単位を介した超分岐ポリアミノグリコシドの別の原子への共有結合である。いくつかの実施形態において、式VIは、出発物質としてストレプトマイシンを使用して調製することができ、および/または式VIは、ストレプトマイシン含有超分岐ポリアミノグリコシドを具体化する。
【0136】
いくつかの実施形態において、式I~VIのR1~R30は、独立して、-H、任意に置換されたアルキル、(各アミノ基間にアルキルスペーサーを有する)任意に置換されたポリアミノ、(各エーテル基間にアルキルスペーサーを有する)任意に置換されたポリエーテル、および連結単位を介した超分岐ポリアミノグリコシドの別の原子への共有結合からなる群から選択される。
【0137】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、式VIの構造の1つ以上の単位を含み、
【化53】
式中、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35、R
36、R
37、およびR
38は、独立して、-H、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリエーテルからなる群から選択されるか、または連結単位を介した超分岐ポリアミノグリコシドの別の原子への共有結合である。いくつかの実施形態において、式VIIは、出発物質としてアミカシンを使用して調製することができ、および/または式VIIは、アミカシン含有超分岐ポリアミノグリコシドを具体化する。
【0138】
いくつかの実施形態では、式I~VIIのいずれか1つは、天然または非天然(例えば、合成的に変更された)立体化学配置であり得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書の他の場所で開示される変数のいずれか1つに加えて、R1~38のいずれか1つ(リンカーまたは末端キャッピング基として)も、またはあるいは、-(C1~6アルキル)、-((CH2)aNH)b-H、-((CH2)aNH)b-(CH2)cH、-((CH2)aX1)b-(CH2)cH、-((CH2)aX2)b((CH2)cX3)d-(CH2)eH、-((CH2)aNH)b-、-((CH2)aNH)b-(CH2)cX1、-((CH2)aX1)b-(CH2)cX2、および-((CH2)aX1)b((CH2)cX2)d-(CH2)e-X3からなる群から選択され得、式中、a、b、c、d、またはeの各例は、独立して、0~10の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)から選択される。いくつかの実施形態において、X1、X2、およびX3の各例は、独立して、O、S、またはNHから選択される。
【0140】
いくつかの実施形態において、式I~VIIのいずれか1つの上に存在するヒドロキシル基のいずれかの任意の-Hは、置換もしくは非置換C1~C6アルキル、または1~6個の繰り返し単位を有する置換(C1~C6アルキル(複数可)で)もしくは非置換ポリエーテルと交換することができ、ヒドロキシルの酸素は、ポリエーテル基の酸素を提供する。いくつかの実施形態において、式I~VIIのいずれか1つの上に存在するヒドロキシル基のいずれかの水素は、本明細書の他の場所に記載されるように、連結単位と交換することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、式I~VIIのいずれか1つのアミノグリコシドは、1つ以上の重合剤および/または架橋剤を使用して重合および/または架橋される。いくつかの実施形態では、重合後、アミノグリコシドは、超分岐構造である。いくつかの実施形態では、重合剤は、アミノグリコシドの1つ以上の置換基と反応する部分を有する多官能性(二官能性、三官能性、四官能性など)分子である。いくつかの実施形態では、多官能性重合剤は、例えば、アミノグリコシド上のアミンまたは他の求核剤(例えば、ヒドロキシル)と反応する1つ以上の求電子剤部分を有する分子を含む。例えば、アクリル酸およびその誘導体の塩、エステル、および共役塩基から選択されるモノマーから誘導されるアクリレートは、重合剤および/または架橋に使用され得る。一実施形態では、アクリレートは、モノマーメタクリレートから誘導される。別の実施形態では、アクリレートは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリルアミド、エチルメタクリレート、2-クロロエチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩、N-(3-BOC-アミノプロピル)メタクリルアミド、2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート、n-イソ-プロピルアクリルアミド、2-メトキシエチルアクリレート、n-エチルメタクリルアミド、n-ビニルアセトアミド、2-N-モルホリノエチルアクリレート、メタクリロイル-L-リジン、2-(メチルアミノ)エチルアクリレート、および2-(メチルアミノ)エチルメタクリレートからなる群から選択されるモノマーから誘導される。別の実施形態では、アクリレートは、ジアクリレートから誘導される。例えば、ジアクリレートは、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、N-アクリルオキシスクシンイミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート、ジアクリルアミド、およびN,N’-メチレンビスアクリルアミドであり得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、重合剤は、1つ以上のマイケル受容体を含む。本明細書で使用されるとき、「マイケル受容体」という用語は、これらに限定されないが、α,β不飽和カルボニル化合物、エノラートなどの求電子剤として作用する化学部分を指す。いくつかの実施形態では、重合剤は、1つ以上のアクリレート官能基を含む。いくつかの実施形態では、マイケル受容体は、アクリレートである。いくつかの実施形態では、重合剤は、ジアクリレート(例えば、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)、エチレングリコールジアクリレート、プロパンジオールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレートなど)、トリアクリレート(例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセロールプロポキシレート(1PO/OH)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート)など)、テトラアクリレート、または複数のアクリレート基(たとえば、5、6、7以上)を有する別のアクリレートである。
【0143】
いくつかの実施形態では、重合剤は、以下の構造のうちの1つ以上で表され、
【化54】
式中、R
a、R
b、およびR
cは、独立して、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、または1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリエーテルからなる群から選択される。R
a、R
b、およびR
cは、独立して、-NH-((CH
2)
fNH)
g-、-X
4-((CH
2)
fX
5)
g-からなる群から選択され、fおよびgは、独立して、0~10の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)から選択される。いくつかの実施形態では、X
4およびX
5の各例は、独立して、O、S、またはNHから選択される。いくつかの実施形態では、R
aは、-NH-CH
2-NH-(N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)由来)である。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書の他の場所に記載されるように、重合後、式I~VIIのいずれか1つの官能化された超分岐ポリアミノグリコシドは、連結単位(例えば、1つ以上のアミノグリコシドとの反応後の重合剤の残りの部分)をさらに含む。いくつかの実施形態では、連結単位は、例えば、アミノグリコシドのアミノ基を介して、2つ以上のアミノグリコシドに及ぶ。いくつかの実施形態では、連結単位は、-(C=O)アルキル(C=O)-、-アルキル-(C=O)-アルキル-(C=O)-アルキル-、-(C=O)ポリアミノ(C=O)-、-アルキル-(C=O)-ポリアミノ-(C=O)-アルキル-、-(C=O)ポリエーテル(C=O)-、および-アルキル-(C=O)-ポリエーテル-(C=O)-アルキル-からなる群から選択される構造を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドの連結単位は、以下からなる群から選択される構造を含み、
【化55】
式中、R
a、R
b、およびR
cは、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリアミノ、または1~6個の繰り返し単位を有する任意に置換された(C
1~C
6アルキル(複数可)で)ポリエーテルからなる群から選択され、
式中、
【化56】
は、列挙されるアミノグリコシドへの結合を示し、
W
1、W
2、またはW
3は、独立して、本明細書の他の場所で開示されるように、アミノグリコシドまたはエンドキャッピング基から選択される。
【0146】
いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドの連結単位は、以下のうちの1つで表される構造を含み、
【化57】
式中、「アミノグリコシド」は、式I~VIIの構造が共有結合した第2のアミノグリコシド(任意に第1のアミノグリコシドの別のコピー)を表し、W
2およびW
3は、本明細書の他の場所で定義される通りである。
【0147】
いくつかの実施形態において、連結単位との重合後、重合剤の1つ以上は、未反応末端基を含み得る。いくつかの実施形態において、それらの末端基は、超分岐ポリアミノグリコシドをエンドキャッピング剤とさらに反応させることにより、エンドキャップすることができる。いくつかの実施形態において、エンドキャッピング剤は、H2N-((CH2)aNH)b-H、H2N-((CH2)aNH)b-(CH2)cH、H2N-((CH2)aX1)b-(CH2)cH、HX1-((CH2)aX2)b((CH2)cX3)d-(CH2)eH、-((CH2)aNH)b-、-((CH2)aNH)b-(CH2)cX1、-((CH2)aX1)b-(CH2)cX2、および-((CH2)aX1)b((CH2)cX2)d-(CH2)e-X3のうちの1つ以上を含み、a、b、c、d、またはeの各例は、独立して、0~10の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)から選択される。いくつかの実施形態において、X1、X2、およびX3の各例は、独立して、O、S、またはNHから選択される。いくつかの実施形態において、エンドキャッピング剤は、H2NCH2CH2NH2およびH2NCH2CH2OHのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態において、エンドキャッピング剤は、-NH-((CH2)aNH)b-H、-NH-((CH2)aNH)b-(CH2)cH、-NH-((CH2)aX1)b-(CH2)cH、((CH2)aX2)b((CH2)cX3)d-(CH2)eH、-((CH2)aNH)b-、-((CH2)aNH)b-(CH2)cX1、-((CH2)aX1)b-(CH2)cX2、および-((CH2)aX1)b((CH2)cX2)d-(CH2)e-X3のうちの1つ以上から選択される置換基をもたらす。いくつかの実施形態において、エンドキャッピング剤は、-NHCH2CH2NH2および-NHCH2CH2OHのうちの1つ以上から選択される置換基をもたらす。
【0148】
いくつかの実施形態では、アミノグリコシドからのアミンが1つ以上の連結単位と反応した後、以下の構造が生じ得る。
【化58】
【0149】
上記で例示されるように、樹状単位は、アミノグリコシドアミンと2分子の連結単位との反応から生じ、線状単位は、アミノグリコシドアミンと1分子の連結単位との反応から生じる。
【0150】
いくつかの実施形態では、超分岐アミノグリコシドは、ワンポット合成で調製される。いくつかの実施形態では、重合剤(例えば、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド))がアミノグリコシドに添加される。
【0151】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される超分岐アミノグリコシド構造は、(例えば、ポリカチオン電荷などによって)それ自体におけるおよびそれ自体の殺菌活性を有する。いくつかの実施形態において、アミノグリコシドは、追加の置換基でさらに官能化して、追加のNO放出性官能基を(例えば、ポリアミンがエンドキャッピングに使用される場合、およびポリアミンが連結単位中に存在する場合、線状単位で)提供することができる。いくつかの実施形態において、例えば、
図1に示されるように、これらの超分岐ポリマーの線状単位は、複数の第2級アミンを提供する。いくつかの実施形態において、第2級アミンは、NO受容体であり、NOと反応して、NO供与体(例えば、NO供与性超分岐ポリアミノグリコシド)を生成することができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、NO供与体は、以下の一酸化窒素放出部分のいずれか1つを含み、
【化59】
式中、
【化60】
は、超分岐アミノグリコシド構造内の他の原子(例えば、-H、-CH
2-、-CH-などの任意の例)への結合を示す。いくつかの実施形態では、NO供与体は、N-ジアゼニウムジオレートNO供与体である。いくつかの実施形態では、NO供与体は、以下に示されるように線状単位に沿って結合している。
【化61】
【0153】
いくつかの実施形態では、本明細書の他の場所で開示されるように、追加および/または代替NO受容体を提供するために、エンドキャッピング分子を超分岐ポリアミノグリコシドに添加することができる。いくつかの実施形態では、以下のエンドキャッピング基を使用することができ、
【化62】
式中、X
d、X
e、X
f、およびX
gは、O、S、NH、または本明細書の他の場所で開示される一酸化窒素放出部分から選択される。本明細書の他の場所で開示されるとき、ジアゼニウムジオレートなどのNO供与体を提供するために、これらの構造の第2級アミンを使用することができる。
【0154】
いくつかの実施形態において、一酸化窒素供与体は、ジアゼニウムジオラート、ニトロソチオール、ニトロソアミン、ヒドロキシルニトロソアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシ尿素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0155】
いくつかの実施形態において、超分岐アミノグリコシドとNOとの反応は、塩基性またはアルカリ性条件で行われる。いくつかの実施形態において、NOでの超分岐ポリアミノグリコシドの官能化は、アルカリ性条件下で行われる。いくつかの実施形態において、アルカリ性条件は、約7.5、8.0、9.0、10.0、12.0以下、または上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲のpH値を有するものを含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、約0.25、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、3.0以上、または上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲のNO貯蔵能力(超分岐ポリアミノグリコシド1mg当たりのNOμmol)を有するNO放出性超分岐ポリアミノグリコシドを提供する。例えば、いくつかの実施形態において、範囲は、超分岐ポリアミノグリコシド1mg当たり約0.4~約1.3μmolのNOである。他の実施形態において、範囲は、超分岐ポリアミノグリコシド1mg当たり約0.4~約0.6または約1.2~約1.3μmolのNOである。
【0157】
いくつかの実施形態において、実施例に記載されるようにPBS緩衝液に添加される2時間以内に、NO放出性超分岐ポリアミノグリコシドは、結合NOのそれらの総重量%の、約25%、50%、75%、85%、90%、95%、100%、または上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲、を放出する。いくつかの実施形態において、バイオフィルムを低減または削減するための使用におけるNO放出は、同様の量、例えば、結合NOの総重量%の、約20~25%、約30~50%、約60~75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、ならびに上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲で生じる。
【0158】
いくつかの実施形態において、NO放出は、約0.01時間、0.1時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、15時間、20時間、24時間、36時間、48時間、または60時間の時間にわたって生じ得る。いくつかの実施形態において、NO放出は、約0.01時間、0.1時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、15時間、20時間、24時間、36時間、48時間、60時間以内に、または上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲で生じる。いくつかの実施形態において、ニトロソアミンは、NO放出中には存在しない。
【0159】
本明細書において開示されるとき、超分岐ポリアミノグリコシドのNO放出は、2時間にわたって測定され得る。いくつかの実施形態において、超分岐ポリアミノグリコシドは、少なくとも約0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、または上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲の2時間後の総NO放出を有する。例えば、いくつかの実施形態において、超分岐ポリアミノグリコシドは、超分岐ポリアミノグリコシド1mg当たり約0.2~約1.0μmolのNOの2時間後の総NO放出を有する。他の実施形態において、範囲は、超分岐ポリアミノグリコシドの1ミリグラム当たり約0.25~約0.8μmolのNOである。
【0160】
いくつかの実施形態では、NO放出は、その半減期によって測定され得る。いくつかの実施形態では、NO放出の半減期は、数分で測定され、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、または240分以上であり得る。いくつかの実施形態では、NO放出の半減期は、前述の値を含むおよび/または網羅する範囲を含む。例えば、いくつかの実施形態では、NO放出の半減期は、約10~約240分、約70~約190分、または約80~約150分の範囲内である。本明細書で使用されるとき、「ニトロソアミンが存在しない」という語句は、UV-visスペクトルによって(または当該技術分野で認められている他の方法によって)決定される検出不能なニトロソアミンのレベルを指す。
【0161】
いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、約25、15、10、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、もしくは0.5kDa以下、または前述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲の分子量(MnまたはMw)を有する。例えば、いくつかの実施形態では、分子量(MnまたはMw)は、約1.5~約7、約1.5~約4.5、または約2~約7の範囲内である。
【0162】
いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドの多分散性(PDI)は、約2、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1以下、または上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲である。例えば、いくつかの実施形態では、多分散性は、約1.3~約2の範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドの窒素重量%は、約5%、10%、12.5%、15%、20%以上、または上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲である。
【0163】
いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドにおける分岐度は、少なくとも約0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、または上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲である。例えば、いくつかの実施形態では、超分岐ポリアミノグリコシドは、約0.2~約0.75、約0.3~約0.6、または約0.4~約0.5の範囲内の分岐度(DB)を有する。
【0164】
いくつかの実施形態では、開示される官能化NO放出性超分岐ポリアミノグリコシドは、抗菌活性を有する。いくつかの実施形態では、開示される官能化NO放出性超分岐ポリアミノグリコシドは、2時間にわたって静的条件下で行われる細菌生存率アッセイにおいて、約8mg/mL、6mg/mL、4mg/mL、2mg/mL、1mg/mL、0.5mg/mL以下、または上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲のポリマー濃度でP.aeruginosa、S.aureus、P.gingivalis、A.actinomycetemcomitans、A.viscosus、および/またはS.mutansのうちの1つ以上に対して90%以上の細菌低減を提供する。いくつかの実施形態では、開示される官能化NO放出性超分岐ポリアミノグリコシドは、2時間にわたって静的条件下で行われる細菌生存率アッセイにおいて、約8mg/mL、6mg/mL、4mg/mL、2mg/mL、1mg/mL、0.5mg/mL以下、または上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲のポリマー濃度でグラム陽性菌に対して99%以上の細菌低減を提供する。いくつかの実施形態では、開示される官能化NO放出性超分岐ポリアミノグリコシドは、2時間にわたって静的条件下で行われる細菌生存率アッセイにおいて、約8mg/mL、6mg/mL、4mg/mL、2mg/mL、1mg/mL、0.5mg/mL以下、または上述の値を含むおよび/もしくは網羅する範囲のポリマー濃度でグラム陰性菌に対して99%以上の細菌低減を提供する。いくつかの実施形態では、細菌低減は、95%超、98%超、または99%超である。
【0165】
いくつかの実施形態は、本明細書に開示される超分岐ポリアミノグリコシドおよび薬学的に許容される担体を含む、薬学的配合物に関する。
【0166】
いくつかの実施形態は、有効量の本明細書に開示される超分岐ポリアミノグリコシドを対象に投与することを含む、一酸化窒素を対象に送達する方法に関する。
【0167】
いくつかの実施形態は、NO供与性超分岐ポリアミノグリコシドを細菌および/または微生物に適用することにより、細菌および/または微生物を殺滅する方法に関する。いくつかの実施形態では、細菌は、口腔内細菌である。いくつかの実施形態では、開示された化合物は、虫歯を予防する方法で使用することができる。
【実施例】
【0168】
超分岐ポリアミノグリコシドは、NO放出用途のためにNO供与体で容易に修飾することができる、新規の生分解性プラットフォームを表す。さらに、超分岐ポリアミノグリコシドは、NO供与部分で官能化されて、改善された抗菌活性を有する二重作用抗菌薬を提供することができる。本明細書の他の場所で開示されるように、両親媒性ブロックコポリマー系からのアミノグリコシドおよびNOの同時送達には、感染原因病原体であるP.aeruginosa、浮遊生物、およびバイオフィルム培養に対して相乗効果がある。例で開示されるのは、様々な天然に生成された例示的なアミノグリコシド(例えば、カナマイシン、ゲンタマイシン、およびネオマイシン)から構築されたNO放出性アミノグリコシド末端超分岐ポリアミノグリコシドの合成である。超分岐ポリカナマイシンの外部官能基を変更して、それらのNO放出特性に対する潜在的な効果を評価した。これらのNO放出性超分岐ポリアミノグリコシドの抗菌有効性は、広範囲の一般的な口腔内病原体(すなわち、Porphyromonas gingivalis、Aggregatibacter actinomycetemcomitans、Streptococcus mutans、およびActinomyces viscosus)に対して調査した。ヒト歯肉線維芽細胞に対するこれらの構築物の細胞毒性も調査した。
【0169】
実施例1:特定の実施形態の合成
1.1 物質および方法
細胞培養のための硫酸カンマイシン(KA)、三硫酸ネオマイシン塩水和物(NE)、硫酸ゲンタマイシン塩(GE)、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)(ビス-MBA)、エチレンジアミン(EDA)、モノ-エタノールアミン(MEA)、ヨウ化プロピジウム、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム内部塩(MTS)、およびリン酸緩衝食塩水(PBS)は、Sigma-Aldrich(St.Loius、MO)から購入した。4,5-ジアミノフルオレセインジアセテート(DAF-2DA)は、Calbiochem(San Diego、CA)から購入した。CDC嫌気性生物5%ヒツジ血液アガー、ブレインハートインフュージョン(BHI)ブロスおよびアガー、ならびにGasPak(商標)EZキャンピーコンテナーシステムサシェは、Becton,Dickinson,and Company(Franklin Lakes、NJ)から購入した。Wilkins-Chalgren(W-C)ブロスは、Acumeida Neogen Corporation(Lansing、MI)から購入した。ヒト歯肉線維芽細胞株およびFibroLife線維芽細胞無血清培地は、Lifeline Cell Technology LLC(Frederick、MD)から購入した。純粋な一酸化窒素ガス、アルゴン、窒素、および一酸化窒素キャリブレーション(窒素中25.87ppm)は、Airgas(Durham、NC)から購入した。一般的な実験室の塩および溶媒は、Fisher Scientific(Pittsburgh、PA)から購入した。Millipore Milli-Q UV Gradient A10システム(Bethlehem、PA)を使用して、18.2MΩcmの最終抵抗率および≦10ppbの総有機物含有量まで水を精製した。プロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルは、400MHz Bruker装置で記録した。炭素核磁気共鳴(13C NMR)は、600MHz Bruker装置で行った。定量的13C NMRには、逆ゲーテッド1Hデカップリング法が10秒の保持時間で使用された。サイズ排除クロマトグラフィーは、光散乱(SEC-LS)と合わせて、分子量および多分散性を決定した。溶離液(PBS、0.01%アジド、pH7.4)は、Waters2414屈折率検出器(Waters Chromatography、Milford、MA)に接続されたminiDawn TREOS多角度光散乱検出器(Wyatt Technology、Santa Barbara、CA)に通した。
【0170】
1.2 超分岐ポリアミノグリコシドの合成.
超分岐ポリアミノグリコシド(HPA)は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA)と様々な天然アミノグリコシド(すなわち、カナマイシン、ネオマイシン、およびゲンタマイシン)との間のマイケル付加反応によって合成した。スキーム1に示されるように、MBAとアミノグリコシドとのモル比は、最初に3:2で制御し、アミノグリコシド末端HPA(すなわち、それぞれHPKA、HPNE、およびHPGE)を生成した。スキャフォールドの外部官能基は、末端基がNO供与体分解および細菌スキャフォールド会合挙動の動態を変更し得るため、一酸化窒素(NO)放出特性および殺菌活性に大きな影響を与えることが以前に報告されている。
【化63】
スキーム1.アミノグリコシド末端超分岐ポリアミノグリコシドの合成.
【0171】
超分岐ポリアミノグリコシドの合成は、以下の通りであった。簡潔には、2.5mmolのアミノグリコシド(KA、NE、またはGE)硫酸塩を、アミノグリコシドの硫酸塩を中和する重炭酸ナトリウムが補足された50mLのD.I.水中の3.75mmolのビス-MBAと混合して、超分岐ポリアミノグリコシド(すなわち、超分岐ポリアミノグリコシジルカナマイシン(HPKA)、超分岐ポリアミノグリコシジルネオマイシン(HPNE)、または超分岐ポリアミノグリコシジルゲンタマイシン(HPGE)を生成した。各反応混合物を、窒素気流下、60℃で3日間撹拌した。得られた溶液のそれぞれを回転蒸発により濃縮し、続いてMilli Q水に対して3日間透析した。精製生成物を、凍結乾燥により飛散性粉末として回収した。
【0172】
1.3 超分岐ポリアミノグリコシドのエンドキャッピング.
アミノグリコシドをエンドキャッピングする潜在的な効果を評価するために、アミノグリコシドで終端していない超分岐ポリアミノグリコシドを、例として超分岐ポリカナマイシンを使用して調製した(スキーム2)。MBAとカナマイシンとの供給モル比を5:2に増加し、ビニル基末端HPKA*中間体を生成した。次に、エチレンジアミン(EDA)またはモノエタノールアミン(MEA)をエンドキャッピング試薬として使用してHPKA*と反応させ、EDA(HPKA-EDA)またはMEA(HPKA-MEA)で終端したHPKAを生成した。
【化64】
スキーム2.エチレンジアミン末端またはモノエタノールアミン末端超分岐ポリアミノグリコシドの合成.
【0173】
様々な外部官能基を有するHPKAを得るために、2.5mmolのKAをまず、アミノグリコシド中に存在する硫酸塩を中和する重炭酸ナトリウムを補足した50mLのD.I.水中の6.25mmolのMBAと混合し、窒素気流下、50℃で3日間反応させた。次に、0.5mLのEDAまたはMEAをキャッピング剤として反応混合物に添加し、続いて40℃で1日間反応させて、HPKA-EDAまたはHPKA-MEAを得た。得られた溶液を再び回転蒸発により濃縮し、続いてMilli Q水に対して3日間透析した。精製生成物もまた、凍結乾燥により飛散性粉末として回収した。超分岐ポリアミノグリコシドを、核磁気共鳴(NMR)分光法によって特徴分析した。HPKA、HPNE、およびHPGEの1H NMRデータは、以下のピーク(400MHz、D2O、δ):1.0-1.5(CHCH2CH);2.2-3.3(O=CCH2CH2、O=CCH2CH2、NCH、CHNH、CHNH2、CHCH2NH2、CHCH2NH、CHCH2N)、3.3-3.8(CH2OH)、4.4(NHCH2NH)、5.0-6.0(CH(OCH)2CH)で構成された。HPKA-MEAおよびHPKA-EDAは、以下のピーク:1.0-1.5(CHCH2CH);2.2-3.3(O=CCH2CH2、O=CCH2CH2、NCH、CHNH、CHNH2、CHCH2NH2、CHCH2NH2、CHCH2N、CH2CH2OH)、3.3-3.8(CH2OH)、4.4(NHCH2NH)、5.0-6.0(CH(OCH)2CH)で構成された。
【0174】
1.4 超分岐ポリアミノグリコシドの分子量および多分散性.
HPAの分子量および多分散性指数(PDI)は、サイズ排除クロマトグラフィー-光散乱(SEC-LS)特徴分析によって決定し、データを表1にまとめた。
【表1】
【0175】
HPAの分子量は、アミノグリコシド同一性に依存することがわかり、これはおそらくそれらの異なる反応性によるものであった。HPKA-EDAおよびHPKA-MEAの分子量およびPDIは、HPKAと類似していることがわかった。これらのHPAは、1H NMR、FTIR、および13C NMR(補足情報)によってさらに特徴分析した。一般に、ジアクリレートの二重結合からの5.6~6.6ppmでのピークの消費および2.2~3.0ppmでの新しく形成された飽和二重結合の出現は、アミノグリコシドとビス-MBAとの間の重合を確認した(
図3A~3E)。FTIRスペクトルは、約2930および約2840cm
-1に位置するバンドを示し、これらはCH
2伸縮振動に割り当てた。一方で、約1650cm
-1および約1530cm
-1でのバンドを、それぞれ、ビス-MBAのカルボニル伸縮およびアミノグリコシドのアミノ曲げ振動に割り当て、重合の成功をさらに確認した(
図4A~4E)。定量的13C NMRは、超分岐構造の形成の証拠を提供した。典型的な超分岐ポリマーとして、HPAは、樹状単位、線状単位、および末端単位で構成される。25~60ppmの様々なピークの出現は、異なる化学環境(すなわち、樹状単位および線状単位)下でのエチレン基(すなわち、-CH
2-CH
2-)の形成によるものであった。これらのエチレン基の詳細な割り当ては以前の報告に従って決定され、結果は
図5A~5Eに示した。分岐度(DB)は、以下の式:DB=2D/(2D+L)に基づいて推定した。15,25 HPKA、HPNE、およびHPGEのDBは、0.32~0.58の範囲であった(表1)。DBの違いは、同様にアミノグリコシドの反応性の違いによるものであった。HPKA-MEAおよびHPKAEDAについて、DBは、HPKAと同等であった(すなわち、HPKA-EDAについて0.45、HPKA-MEAについて0.46)。
【0176】
実施例2:特定の実施形態のNO放出特徴
N-ジアゼニウムジオレートNO供与体修飾ポリサッカリドの合成.
NO放出用途のための高分子スキャフォールド(例えば、シリカ、ポリアミドアミンデンドリマー、キトサン)は、多くの場合、NO供与体の付加のための反応性部位を作成するための追加の修飾ステップを必要とする。超分岐ポリアミノグリコシドは、N-ジアゼニウムジオレートNO供与体(または他のNO供与体)で直接官能化することができる第2級アミンを提供する線状単位の存在から恩恵を受ける。
【0177】
NO放出能を付与するために、HPAを塩基性溶液下で高圧(10atm)のNOと反応させて、N-ジアゼニウムジオレートNO供与体官能化HPA(すなわち、HPKA/NO、HPNE/NO、HPGE/NO、HPKA-EDA/NO、およびHPKA-MEA/NO)を生成した。簡潔には、超分岐ポリアミノグリコシド(20mg)を、1mLのD.I.水中の20μLのナトリウムメトキシド(5.4M)と混合した。反応器をアルゴンで3回、続いてさらに3回より長い時間(各10分)洗浄して酸素を除去した。次に、反応器に、KOHペレットにより予備精製した10atmのNOを充填した。圧力を維持して、ポリマーの第2級アミン上のN-ジアゼニウムジオレートNO供与体の形成を可能にした。3日後、上記と同じ手順を使用して、反応器をアルゴンで再び洗浄し、未反応NOを除去した。生成物(すなわち、HPKA/NO、HPNE/NO、HPGE/NO、HPKA-EDA/NO、およびHPKA-MEA/NO)をアセトンにより沈殿させ、続いてメタノールで洗浄し、真空ボックスで乾燥させた。
【0178】
NO結合HPAの特徴分析
N-ジアゼニウムジオレートNO供与体の形成の成功は、非NO放出性スキャフォールドには不在である約250nmでのピークの出現によって示されるように、UV-vis分光法によって確認した(
図6)。1H NMRおよびSEC-LS特徴分析(図示せず)は、NOと反応した後のスキャフォールドの完全性を確認した。
【0179】
一酸化窒素放出の特徴分析.
化学発光一酸化窒素分析計を使用して、PBS(pH7.4、37℃)中のスキャフォールドのNO放出特性を評価した。正確に計量した質量(約1mg)を有するNO放出性超分岐ポリアミノグリコシドを、脱酸素化した10mMのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、30mL、pH7.4)に37℃で添加した。窒素をこの溶液に70mL min-1の流量で通気して、遊離したNOをSievers化学発光一酸化窒素アナライザー(Boulder、CO)に運搬した。200mL min-1での装置の収集速度に合わせるために、追加の窒素流をフラスコに供給した。観察されたNOレベルが10ppb mg-1スキャフォールド未満に減少するまで、リアルタイムNO放出プロファイルを記録した。総NO貯蔵量は、添加されたスキャフォールドの質量に対して、μmolNOmg-1スキャフォールドとして正規化した。
【0180】
アミノグリコシド末端HPAについて、総NO貯蔵量(約0.41μmol mg
-1~0.60μmol mg
-1)およびNO放出動態(t
1/2約81~約147分)の差を観察した(表2参照)。これは、窒素含有量によって示されるように、これらの構築物のアミン濃度の差に起因した(表1)。最高のアミン濃度を含有するHPGE/NOは、HPKA/NOおよびHPNE/NOと比較して、最大のNO合計および最長のNO放出動態を示した。理論によって縛られることなく、より長い半減期は、N-ジアゼニウムジオレートアニオンを安定化した隣接するカチオン性アミンによる分子内水素結合の形成によるものであると思われた。また、周囲のアミンの存在は、局所的なpHを増加させ、プロトンで開始されるN-ジアゼニウムジオレート分解を遅らせる可能性がある。
【表2】
【0181】
HPKAの末端基をKAからEDAまたはMEAに交換すると、NO放出合計が予想外に増加した(
図7)。HPKA-EDA/NOおよびHPKA-MEA/NOは、窒素含有量(重量%)によって示されるように、アミン含有量は有意に変化しなかったが、HPKA/NO(約0.41μmol mg
-1)と比較してより大きなNO合計(約1.20μmol mg
-1)を示した。理論に縛られるものではないが、HPKA-EDAについて観察されるより高い窒素含有量は、安定なN-ジアゼニウムジオレートNO供与体の形成に寄与しない、より多くの第1級アミンの導入によるものであると考えられた。したがって、特定の理論に縛られることなく、NO合計の差は、NOとのそれらの反応性に影響を与える第2級アミンの位置によるものであったと理論化される。HPKAについて、線状単位から提供される第2級アミンは、ポリマー骨格に沿ってランダムに分布する(スキーム1)。内部の第2級アミンは、NO供与体を形成する反応性が制限され得る。
【0182】
比較すると、HPKA-EDAおよびHPKA-MEAの合成により、スキャフォールドの外部に第2級アミンが集中し、向上したNO供与体形成効率をもたらす(スキーム2)。外部官能基の同一性は、NO放出動態にも大きく影響した。特定の理論に縛られることなく、この向上は、化学構造の違いに起因すると考えられる。HPKA-EDA/NOのNO放出動態(t
1/2約185分)は、HPKA-MEA/NO(t
1/2約74分)と比較してより長かった。水素結合の形成および局所的なpH(例えば、局所的なpHの差)は、得られるNO放出動態に対して役割を果たすと考えられる。EDAからの末端第1級アミンは、NO供与体を安定化し、局所pHを増加させ、より遅いNO放出プロファイルをもたらすと考えられる(
図7)。
【0183】
実施例3:特定の実施形態の抗菌特徴
以下は、HPAの例となる実施形態を使用して行われた試験について説明する。対照およびNO放出性HPAの抗菌活性を、様々な歯科疾患を引き起こす細菌種(すなわち、P.gingivalis、A.actinomycetemcomitans、A.viscosus、およびS.mutans)に対して評価した。具体的には、P.gingivalisおよびA.actinomycetemcomitansは、グラム陰性クラスに属し、一般に歯周病に関する。S.mutansおよびA.viscosusは、グラム陽性種であり、虫歯の重要な病因物質とみなされている。本開示において選択される広範囲の口腔細菌種は、経口治療薬の態様において得られる結論の潜在的な普遍性を保証した。
【0184】
殺浮遊細菌アッセイ.
浮遊細菌種(すなわち、P.gingivalis、A.actinomycetemcomitans、S.mutans、およびA.viscosus)をまず、15%グリセロールPBS中で-80℃で貯蔵した。殺菌アッセイを行うために、凍結ストックをBHIブロス(P.ginigvalisにはW-C嫌気性ブロス)において37℃で一晩増殖させ、光学密度(OD 600nm)により決定される108コロニー形成単位毎ミリリットル(CFU mL-1)まで増殖させた。P.ginigvalisは、嫌気的に培養した。A.actinomycetemcomitansおよびA.viscosusは、微好気性環境において培養した。S.mutansは、好気的に培養した。次に、細菌を、1%BHI(P.ginigvalisにはW-C嫌気性ブロス)が補足されたPBSにおいて106CFU/mLまで希釈し、様々なNO放出性物質およびそれぞれの対照物質に37℃で2時間曝露した。
【0185】
浮遊性口腔内病原体に対する殺菌試験.
殺菌アッセイは、栄養素が補足された条件下(すなわち、1%ブロス補足PBS、pH7.4、37℃)で行った。スキャフォールド抗菌有効性を定量化するために、最小殺菌濃度(MBC、mg mL-1)、細菌生存率の3log低減を使用した。浮遊細菌に対する物質の抗菌能力を定量化するために、最小殺菌濃度(例えば、2時間後に生存率の3log低減を達成するために必要な物質の最小濃度)を決定した。
【0186】
2時間の曝露時間(すなわち、t[NO]
2h)にわたって送達されたNOの量と対応するMBC値とを掛けることにより、NO用量を導出した。MBCおよびNO用量の値は、表3および表4に提供した。対照(すなわち、非NO放出性)HPAと比較してはるかに低いNO放出性HPAのMBC値は、NOが殺菌剤であることを実証した。実際、NOは、細胞外ニトロソ化および細胞内酸化ストレスの導入によって抗菌能力を発揮し、複数のメカニズムを介して細胞死をもたらすことができると考えられる。MBC値およびNO用量のさらなる調査は、グラム陰性菌(A.actinomyctemcomitansおよびP.gingivalis)がグラム陽性菌種(すなわち、S.mutansおよびA.viscosus)と比較してNO処理に対してより感受性があることを明らかにした。特定の理論に縛られることなく、これは、以前の観察と一致して、NO拡散に対してより耐性があるグラム陽性菌のより厚いペプチドグリカン細胞膜に起因した。
【表3】
【表4】
【0187】
異なるアミノグリコシド同一性を有するHPAについて、より高いDB(分岐度)を有するHPKA/NOおよびHPNE/NOは、より低いDBを有するHPGE/NOと比較して優れた殺菌活性を示した。超分岐ポリマーのDBの増加により、空間構造は、減少した流体力学的サイズに関連してよりコンパクトになると考えられる。したがって、HPKA/NOおよびHPNE/NOの向上した殺菌能力は、より効率的な細菌スキャフォールド会合および浸透を可能にし、最終的に細胞内NO送達有効性を改善した、HPGE/NOと比較してより小さいサイズの結果であり得る。注目すべきことには、HPKA/NOおよびHPNE/NOについて観察されたMBC値およびNO用量(すなわち、MBC≦4mg mL-1)は、以前に報告されたNO放出性スキャフォールドのそれ(すなわち、MBC≦48mg mL-1)よりも有意に低く、NO放出性超分岐ポリアミノグリコシドを使用して口腔内病原体と戦うことの優位性を示した。
【0188】
HPKAの外部官能基をKAからEDAまたはMEAに交換することは、試験された口腔内病原体に対して同じ殺滅を達成するために必要な増加したNO用量によって証明されるように、それらの殺菌有効性の減少をもたらした。加えて、HPKA-EDA/NOおよびHPKA-MEA/NOのNO用量は、それらの異なるNO放出動態にもかかわらず、口腔内病原体の根絶に匹敵することが観察された。これらのデータは、アミノグリコシド末端基の存在が、HPKA-EDA/NOおよびHPKA-MEA/NOと比較してHPKA/NOの向上した殺菌能力に寄与した因子であることを示した。
【0189】
細胞内NO蓄積および細菌細胞膜破壊を視覚化するための共焦点蛍光顕微鏡観察.
この観察された殺菌作用の違いのメカニズムを解明するために、共焦点蛍光顕微鏡を使用して、それぞれDAF-2DAおよびPI蛍光プローブを使用して、細胞内NOおよび細胞膜損傷を視覚化した(
図8Aおよび8B)。S.mutansをHPKA/NOに曝露した後、最初に細胞内NO蓄積(30分)、続いて細胞膜損傷の出現および蓄積NOの枯渇(60分から開始)が観察された。しかしながら、S.mutansの同じ濃度でのHPKA-MEA/NOへの曝露後、細胞膜損傷の少ない細胞内NOの出現のみが観察された。共焦点蛍光データは、HPKA/NOの改善された殺菌作用が、カナマイシン末端基とNOとの間の相乗効果によるより効率的な細胞膜損傷の結果であることを示した。
【0190】
例示的な細菌(すなわち、S.mutans)を、上記のように108CFUmL-1まで培養し、細胞内NO蓄積の検出のために10μMのDAF-2DAおよび細胞膜損傷の検出のために30μMのPIが補足された媒体(すなわち、PBS)で106CFUmL-1まで希釈した。細菌溶液(3mL)をガラス底共焦点皿において37℃で45分間プレインキュベートした。BP 505-530nmフィルターを備えた488nm Ar励起レーザー(20.0mW 2.0%強度)を有するZeiss 510 Meta倒立レーザー走査共焦点顕微鏡(Carl Zeiss、Thornwood、NY)を使用して、DAF-2DAシグナル(緑)を得た。BP 560-615nmフィルターを備えた543nm HeNe励起レーザー(1.0mW、強度20.0%)を使用して、PIシグナル(赤)を得た。明視野画像および蛍光画像の両方を、対物40倍のN.A.1.2C-アポクロマート水浸レンズを使用して収集した。細菌培養物を、100μg ml-1の最終濃度でHPKA/NOまたはHPKA-MEA/NOに曝露した。画像を15分毎に収集した。
【0191】
インビトロ細胞毒性.
哺乳動物細胞に対する毒性は、新しく開発された抗菌薬を評価する際の重要な因子である。経口治療薬についてのこれらの超分岐ポリアミノグリコシドの可能性を評価するために、口腔物質の評価に使用される一般的な細胞株であるヒト歯肉線維芽細胞(HGF-1)に対する細胞毒性を、様々な濃度で試験した。HGF-1の生存率を、2時間の曝露時間後にMTSアッセイによって監視した。
【0192】
ヒト歯肉線維芽細胞(HGF-1)を、FibroLife線維芽細胞無血清培地において増殖させ、37℃の加湿条件下、5体積%CO2中でインキュベートした。80%コンフルエンシーに達した後、細胞をトリプシン処理し、組織培養処理したポリスチレン96ウェルプレートに約2×104細胞/mLの密度で播種した。プレートを37℃で24時間さらにインキュベートした。次いで、上清を吸引し、変動する濃度の超分岐ポリアミノグリコシドスキャフォールドを含む100μLの新鮮な増殖培地で置き換えた。37℃で2時間インキュベーション後、上清を吸引し、DPBSで洗浄した。次に、DMEM/MTS/PMS(105/20/1、体積/体積/体積)溶液(100μL)の混合物を各ウェルに添加し、37℃で3時間インキュベートした。Thermoscientific Multiskan EXプレートリーダー(Waltham、MA)を使用して、着色溶液の吸光度を490nmで定量化した。DMEM/MTS/PMSおよび未処理細胞の混合物を、それぞれブランクおよびコントロールとして使用した。結果は、以下のように相対細胞生存率の割合として表した。
細胞生存率%=[(Abs490-Absブランク)・/(Absコントロール-Absブランク)]×100%(式1)
【0193】
細胞生存率%対濃度(mg mL-1)をプロットすることにより、非NO放出性およびNO放出性超分岐ポリアミノグリコシドの殺滅曲線を構築した。
【0194】
アミノグリコシドで終端した対照超分岐ポリマーについて、HPNEは、最高の毒性を示したが、HPGEは、それらの殺菌能力と一致する最低の毒性を示した。HPKAの外部官能基をKAからEDAまたはMEAに交換することは、高濃度(すなわち、≧8mg mL
-1)でスキャフォールドの毒性を減少させ、アミノグリコシド末端基がこれらの濃度で哺乳動物細胞に対してある程度の悪影響を誘発し得ることを示した(
図9Aおよび9B)。NO放出能力の追加は、対照超分岐ポリアミノグリコシドと比較してHGF-1の生存率を抑制した(
図4A~4E)。それにもかかわらず、HPKA/NOは、非毒性(すなわち、≧80%細胞生存率)であることがわかり、HPNE/NOは、それらの有効殺菌濃度(すなわち、4mg mL
-1)でHGF-1に対して最小限の毒性(すなわち、≧50%細胞生存率)を示すことがわかった。
【0195】
結論
本明細書では、広範囲にわたるNO貯蔵および放出動態が可能なNO放出性超分岐ポリアミノグリコシドを調製するための合成プロトコルが提供された。総NO貯蔵および関連するNO放出動態は、アミノグリコシドモノマーと特定の外部官能基との同一性に大きく依存した。NO放出性超分岐ポリアミノグリコシドの抗菌作用は、一般的な口腔内病原体に対して調査された。より効率的な細胞損傷をもたらしたアミノグリコシド末端基とNO放出能力との組み合わせは、スキャフォールドの改善された殺菌能力に寄与した。いくつかの実施形態において、アミノグリコシド末端基とNOとの組み合わせは、より大きな細菌膜損傷および殺菌作用を提供することがわかった。
【0196】
実際、NO放出性超分岐ポリカナマイシンおよびポリネオマイシンは、広域スペクトルの殺菌作用を示した。有利なNOペイロード、放出動態、殺菌作用、および細胞毒性は、これらのバイオポリマースキャフォールドが、口腔衛生を超えた多くの治療用途に非常に有望であることを示す。例として、いくつかの実施形態において、HPKA/NOおよびHPNE/NOは、グラム陽性齲蝕原性病原体およびグラム陰性歯周病原体の両方に対して広域スペクトルの抗菌活性を示した。これらの超分岐ポリアミノグリコシドは、哺乳動物細胞に対して有意な毒性を誘発しないこともわかったため、経口治療薬としてのそれらの可能性が期待され得る。