(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】ポリマー生成のためのシステムおよびプロセス
(51)【国際特許分類】
C08G 63/78 20060101AFI20231215BHJP
C08G 63/08 20060101ALI20231215BHJP
C08G 63/82 20060101ALI20231215BHJP
C08G 63/91 20060101ALI20231215BHJP
C08F 120/06 20060101ALI20231215BHJP
C07C 57/04 20060101ALI20231215BHJP
C07C 51/09 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
C08G63/78
C08G63/08
C08G63/82
C08G63/91
C08F120/06
C07C57/04 CSP
C07C51/09
(21)【出願番号】P 2021123494
(22)【出願日】2021-07-28
(62)【分割の表示】P 2017542465の分割
【原出願日】2016-02-12
【審査請求日】2021-08-23
(32)【優先日】2015-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511046391
【氏名又は名称】ノボマー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ・ジェイ・ファーマー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ガルバック
(72)【発明者】
【氏名】カイル・シェリー
(72)【発明者】
【氏名】サデシュ・エイチ・スークラジ
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0018570(US,A1)
【文献】特表2015-529644(JP,A)
【文献】国際公開第2014/012855(WO,A1)
【文献】特表2015-522595(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0018574(US,A1)
【文献】特表2015-509497(JP,A)
【文献】国際公開第2013/126375(WO,A1)
【文献】特開平09-176299(JP,A)
【文献】特開平06-122707(JP,A)
【文献】米国特許第02526554(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/78
C08G 63/08
C08G 63/82
C08G 63/91
C08F 120/06
C07C 57/04
C07C 51/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸収性ポリマーを生成する方法であって、
ポリプロピオラクトン組成物を熱分解してアクリル酸を生成すること、
ここで、前記ポリプロピオラクトン組成物が、
(a)構造
【化1】
を有するアクリレート末端基、または構造
【化2】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
(b)構造
【化3】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含むポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含み、
前記アクリレート末端基または前記ヒドロアクリレート末端基が、前記ポリマー鎖のアルキル末端をキャップし、
(1)前記ポリプロピオラクトン組成物が、40,000g/molに等しいかまたはそれ未満のMnを有し、
(2)前記ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%が、前記アクリレート末端基または前記ヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含み、ならびに
水酸化ナトリウムとブレンドした前記アクリル酸を、ラジカル開始剤の存在下で重合させて、前記高吸収性ポリマーを生成すること
を含み、
前記ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩が、式(I)または(II)の構造
【化4】
[式中、
nは、10~1,000の整数であり、
Yは、Hまたはカチオンであり、ここで、当該カチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、及び有機カチオンからなる群から選択され、当該有機カチオンは、窒素含有カチオン、硫黄含有カチオン、リン含有カチオン及びヒ素含有カチオンからなる群から選択される]
を独立して有する、
方法。
【請求項2】
高吸収性ポリマーを生成する方法であって、
ベータプロピオラクトンおよび式(III)の化合物の少なくとも1つの塩を合わせて、ポリプロピオラクトン組成物を生成することを含み、
前記式(III)の化合物が、構造
【化5】
[式中、pは、独立に、0~9の整数である]を有し、
前記式(III)の化合物の少なくとも1つの塩は、独立して
式(III)の化合物のアニオン、ならびに
第四級アンモニウム、プロトン化アミン、イミニウム、グアニジニウム、ホスホニウム、ホスファゼニウム、スルホニウム、アルソニウムおよび窒素含有複素環のカチオンならびにこれらの混合物からなる群から選択されるカチオン、を含み、
前記ポリプロピオラクトン組成物が、
(a)構造
【化6】
を有するアクリレート末端基、および
(b)構造
【化7】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含むポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含み、
前記アクリレート末端基が、前記ポリマー鎖のアルキル末端をキャップし、
(1)前記ポリプロピオラクトン組成物が、40,000g/molに等しいかまたはそれ未満のMnを有し、
(2)前記ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%が、前記アクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含み、
ポリプロピオラクトン組成物を熱分解してアクリル酸を生成すること;ならびに
水酸化ナトリウムとブレンドした前記アクリル酸を、ラジカル開始剤の存在下で重合させて、前記高吸収性ポリマーを生成すること
を含み、
前記ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩が、式(I)の構造
【化8】
[式中、
nは、10~1,000の整数であり、
Yは、Hまたはカチオンであり、ここで、当該カチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、及び有機カチオンからなる群から選択され、当該有機カチオンは、窒素含有カチオン、硫黄含有カチオン、リン含有カチオン及びヒ素含有カチオンからなる群から選択される]
を独立して有する、
方法。
【請求項3】
前記ベータプロピオラクトンおよび前記式(III)の少なくとも1つの化合物またはその塩が、重合触媒とさらに合わせられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記重合触媒が、
a)金属カチオンのアクリル酸塩、
b)有機カチオンのアクリル酸塩、
c)遷移金属化合物、
d)酸触媒、および
e)塩基触媒、
またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ベータプロピオラクトンが、50℃超の温度で前記式(III)の化合物の少なくとも1つの塩と合わせられる、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記温度が、140℃~200℃の範囲内である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも95重量%が、前記アクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%が、前記式(I)の構造を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリプロピオラクトン組成物が、1.7未満の多分散指数(PDI)を有する、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
pが、0である、請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記式(III)の少なくとも1つの化合物またはその塩が、ベータプロピオラクトンと合わせられる、請求項
2から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式(III)の少なくとも1つの化合物またはその塩が、
【化9】
[式中、A
+は、第I族カチオンまたは第II族カチオンである]である、請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
A
+が、Na
+またはK
+である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記式(III)の少なくとも1つの化合物またはその塩が、
【化10】
である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ベータプロピオラクトンが、重合触媒の存在下で少なくとも1つの連鎖移動剤と接触させてポリプロピオラクトン組成物を生成することを含み、
少なくとも1つの連鎖移動剤が、
(i)構造
【化11】
を有するアクリレート末端基、又は構造
【化12】
を有するヒドロアクリレート(hydracrylate)末端基、及び
任意選択で(ii)構造
【化13】
を有する1つまたは複数の単位を含む鎖
を独立に含む少なくとも1つの化合物またはその塩であり、
アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基が、鎖のアルキル末端をキャップし、
少なくとも1つの連鎖移動剤が、1000g/mol未満の数平均分子量(Mn)を独立に有する、
請求項2~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、米国仮特許出願第62/116,238号(2015年2月13日出願)に対する優先権を主張する。この米国仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
分野
本開示は一般に、ポリプロピオラクトンおよびそれを生成する方法に関し、ならびにさらに具体的には、アクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンおよびそれを生成するための方法、ならびにアクリル酸の生成におけるこのようなアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
アクリル酸(AA)がポリプロピオラクトン(PPL)の熱分解を介して生成される方法は記載されてきている(例えば、米国特許第2,361,036号を参照されたい)。しかし、この文献および関連する文献において記載されているようなPPLの熱分解では、高吸収性ポリマー(SAP)生成のためのラジカル重合において直接使用するための十分な純度のアクリル酸は生成されない。代わりに、これらの方法は、アクリル酸を重合して、SAPを生成することができる前に、アクリル酸の高価でエネルギー集約型の精製を必要とする。したがって、高価でエネルギー集約型のAA精製を必要とすることなしに精アクリル酸を直接生成する方法が当技術分野で必要とされている。
【0004】
アクリル酸(AA)へのPPLの熱分解は、商業化のためにいくつかの困難を提示する。
【化1】
【0005】
上記のスキームでは、各*は、PPLポリマーのモノマー単位のいずれかの側の結合点を示す。粗または精アクリル酸へのPPLの熱分解は、問題を抱えている。PPLはBPLから調製することができるが、この変換は、PPLの分子量および/または多分散性に関して、バッチ間で相対的に殆ど制御されずに進行し得る。
【0006】
反応性を制御し、アクリル酸が分解、重合しないように保護し、かつ/または発泡を低減するために、重合阻害剤および消泡剤を、熱分解中のPPLまたは一度形成されたアクリル酸に添加することができる。しかし、SAPなどの下流ポリマーおよびおむつなどの最終製品の汚染を最小限に抑えるためには、アクリル酸、特に不純物を殆どまたは全く含まず、低レベルの重合阻害剤および/または消泡剤を含む精アクリル酸を生成する必要が高まっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単な要旨
本明細書に記載されているシステムおよびプロセスは、工業規模の粗または精アクリル酸へのポリプロピオラクトンの熱分解と関連する、当技術分野で公知の様々な困難に対処する。
【0008】
本明細書において、熱分解時に、アクリル酸への変換がより多くより円滑である、下記の通りの式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むポリプロピオラクトン組成物を開示する。理論に束縛されるものではないが、この改善は、高い度合いのアクリレート化および/またはヒドロキシル化末端基を有する式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むポリプロピオラクトン組成物のより低い分子量および/または狭い分子量分布に部分的に起因し得ると考えられる。
【0009】
一態様では、式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含むポリプロピオラクトン組成物の生成のための方法であって
【化2】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである)、
式(III)の連鎖移動剤
【化3】
もしくはその塩、またはこれらの任意の2つもしくはそれ超の混合物(式中、pは、0~9である)の存在下でベータプロピオラクトンを重合させることを含む、方法を提供する。
【0010】
別の態様では、式(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むポリプロピオラクトン組成物の生成のための方法を提供し、
【化4】
式中、nは、約10~約1000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである。
【0011】
別の態様では、アクリル酸を生成するための方法であって、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含有するポリプロピオラクトン組成物を加熱することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、ポリプロピオラクトン組成物中の少なくとも90%のポリマー鎖は、式(I)のアクリレート末端基および/または式(II)のヒドロキシル基を有する。これらおよび他の態様を、以下により詳細に記載する。
【0012】
一部の変形形態では、ポリプロピオラクトン組成物を生成するための方法であって、ベータプロピオラクトンおよび少なくとも1つの連鎖移動剤を合わせて、ポリプロピオラクトン組成物を生成することを含み、
少なくとも1つの連鎖移動剤が、
(i)構造
【化5】
を有するアクリレート末端基、または構造
【化6】
を有するヒドロアクリレート(hydracrylate)末端基、および
任意選択で(ii)構造
【化7】
を有する1つまたは複数の単位を含む鎖
を独立に含む少なくとも1つの化合物またはその塩であり、
アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基が、鎖のアルキル末端をキャップし、
少なくとも1つの連鎖移動剤が、約1000g/mol未満の数平均分子量(M
n)を独立に有し、
ポリプロピオラクトン組成物が、
(a)構造
【化8】
を有するアクリレート末端基、または構造
【化9】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
(b)構造
【化10】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含むポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含み、
アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基が、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップし、
(1)ポリプロピオラクトンポリマーもしくはその塩が、約40,000g/molに等
しいかもしくはそれ未満のM
nを有するか、または
(2)ポリプロピオラクトン組成物が、約2.0に等しいかもしくはそれ未満の多分散指数(PDI)を有するか、または
(3)ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%が、アクリレート末端基もしくはヒドロアクリレート末端基のいずれかを有するポリプロピオラクトンポリマーもしくはその塩を含むか、または
上記の(1)~(3)の任意の組合せ
である、方法を提供する。
【0013】
他の変形形態では、ポリプロピオラクトン組成物を生成するための方法であって、ベータプロピオラクトンおよび水を合わせて、ポリプロピオラクトン組成物を生成することを含み、
ポリプロピオラクトン組成物が、
(a)構造
【化11】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
(b)構造
【化12】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含むポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含み、
ヒドロアクリレート末端基が、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップし、
(1)ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩が、約40,000g/molに等しいかもしくはそれ未満のM
nを有するか、
(2)ポリプロピオラクトン組成物が、約2.0に等しいかもしくはそれ未満のPDIを有するか、
(3)ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%が、ヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーもしくはその塩を含むか、または
上記の(1)~(3)の任意の組合せ
である、方法を提供する。
【0014】
他の態様では、アクリル酸を生成するための方法であって、本明細書に記載されているポリプロピオラクトン組成物のいずれかを加熱して、アクリル酸を生成することを含む、方法を提供する。
【0015】
また他の態様では、高吸収性ポリマーを生成するための方法であって、
本明細書に記載されているポリプロピオラクトン組成物のいずれかを熱分解すること;および
塩基とブレンドしたアクリル酸を、ラジカル開始剤の存在下で重合させて、高吸収性ポリマーを生成すること
を含む、方法も提供する。
【0016】
一部の変形形態では、塩基は、水酸化ナトリウムである。
【0017】
ある特定の態様では、
(a)構造
【化13】
を有するアクリレート末端基、または構造
【化14】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
(b)構造
【化15】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含むポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む、ポリプロピオラクトン組成物であって、
アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基が、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップする、ポリプロピオラクトン組成物を提供する。
【0018】
上記の態様と組み合わされ得る一部の変形形態では、ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、約40,000g/molに等しいかまたはそれ未満のMnを有する。上記の態様および変形形態と組み合わされ得る他の変形形態では、ポリプロピオラクトン組成物は、約2.0に等しいかまたはそれ未満のPDIを有する。上記の態様および変形形態と組み合わされ得るまた他の変形形態では、ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%は、アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む。
【0019】
定義
特定の官能基および化学用語の定義を、下記により詳細に記載する。化学元素は、元素周期表、CASバージョン、Handbook of Chemistry and Physics、第75版、内表
紙によって同定し、特定の官能基は一般に、その中に記載されているように定義する。さらに、有機化学の一般原則、ならびに特定の官能性部分および反応性は、Organic Chemistry、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausalito、1999年;Smith
およびMarch March’s Advanced Organic Chemistry、第5版、John Wiley & Sons, Inc.、New York、2001年;Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers, Inc.、New York、1989年;Carruthers、Some Modern Methods of Organic Synthesis、第3版、Cambridge University Press、Cambridge、1
987年に記載されている。
【0020】
用語「ハロ」および「ハロゲン」は、本明細書において使用する場合、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)、およびヨウ素(ヨード、-I)から選択される原子を指す。
【0021】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、本明細書において使用する場合、直鎖(すなわち、非分枝状)、分枝状、または環状(縮合、架橋、およびスピロ縮合多環を含めた)で
あり得、完全に飽和であり得るか、または1個もしくは複数の不飽和の単位を含有し得るが、芳香族ではない、炭化水素部分を示す。一部の変形形態では、脂肪族基は、非分枝状または分枝状である。他の変形形態では、脂肪族基は、環状である。他に特定しない限り、一部の変形形態では、脂肪族基は、1~30個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、脂肪族基は、1~12個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、脂肪族基は、1~8個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、脂肪族基は、1~6個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、脂肪族基は、1~5個の炭素原子を含有し、ある特定の実施形態では、脂肪族基は、1~4個の炭素原子を含有し、また他の実施形態では、脂肪族基は、1~3個の炭素原子を含有し、また他の実施形態では、脂肪族基は、1~2個の炭素原子を含有する。適切な脂肪族基は、例えば、直鎖状もしくは分枝状のアルキル、アルケニル、およびアルキニル基、ならびにそのハイブリッド、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルを含む。
【0022】
用語「ヘテロ脂肪族」は、本明細書において使用する場合、1個または複数の炭素原子が、酸素、硫黄、窒素、リン、またはホウ素からなる群から選択される1個または複数の原子で独立に置き換えられている脂肪族基を指す。ある特定の実施形態では、1個または2個の炭素原子は、1つまたは複数の酸素、硫黄、窒素、またはリンで独立に置き換えられている。ヘテロ脂肪族基は、置換または非置換であり得、分枝状または非分枝状であり得、環式または非環式であり得、「複素環」、「ヘテロシクリル(hetercyclyl)」、「
ヘテロ脂環式」または「複素環式」基を含む。一部の変形形態では、ヘテロ脂肪族基は、分枝状であるか、または非分枝状である。他の変形形態では、ヘテロ脂肪族基は、環式である。また他の変形形態では、ヘテロ脂肪族基は、非環式である。
【0023】
用語「不飽和」は、本明細書において使用する場合、部分が1個または複数の二重結合または三重結合を有することを意味する。
【0024】
単独でまたはより大きな部分の一部として使用される用語「脂環式」、「炭素環」、または「炭素環式」は、3~12員を有する、本明細書に記載のような飽和または部分不飽和の環状脂肪族の単環式、二環式、または多環式環系を指し、脂肪族環系は、上記に定義され、本明細書に記載されているように、任意選択で置換されている。脂環式基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、およびシクロオクタジエニルを含む。ある特定の実施形態では、シクロアルキルは、3~6個の炭素を有する。用語「脂環式」、「炭素環」または「炭素環式」はまた、1個もしくは複数の芳香族もしくは非芳香族環に縮合している脂肪族環、例えば、デカヒドロナフチルまたはテトラヒドロナフチルを含み、ここではラジカルまたは結合点は脂肪族環上にある。ある特定の実施形態では、炭素環式基は、二環式である。ある特定の実施形態では、炭素環式基は、三環式である。ある特定の実施形態では、炭素環式基は、多環式である。
【0025】
用語「アルキル」は、本明細書において使用する場合、飽和炭化水素ラジカルを指す。一部の変形形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子を含有する脂肪族部分から、単一の水素原子の除去によって誘導される、飽和の直鎖または分枝鎖の炭化水素ラジカルである。他に特定しない限り、一部の変形形態では、アルキル基は、1~12個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、アルキル基は、1~8個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、アルキル基は、1~5個の炭素原子を含有し、ある特定の実施形態では、アルキル基は、1~4個の炭素原子を含有し、また他の実施形態では、アルキル基は、1~3個の炭素原子を含有し、また他の実施形態では、アルキル基は、1~2個の炭素原子を
含有する。アルキルラジカルは、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、sec-ペンチル、イソ-ペンチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、n-ウンデシル、およびドデシルを含み得る。
【0026】
用語「アルケン」および「アルケニル」は、本明細書において使用する場合、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する一価の基を示す。一部の変形形態では、アルケニル基は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族部分から、単一の水素原子の除去によって誘導される、一価の基である。他に特定しない限り、一部の変形形態では、アルケニル基は、2~12個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、アルケニル基は、2~8個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、アルケニル基は、2~6個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、アルケニル基は、2~5個の炭素原子を含有し、ある特定の実施形態では、アルケニル基は、2~4個の炭素原子を含有し、また他の実施形態では、アルケニル基は、2~3個の炭素原子を含有し、また他の実施形態では、アルケニル基は、2個の炭素原子を含有する。アルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、および1-メチル-2-ブテン-1-イルなどを含む。
【0027】
用語「アルキニル」は、本明細書において使用する場合、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する一価の基を指す。一部の変形形態では、アルキニル基は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族部分から、単一の水素原子の除去によって誘導される、一価の基である。他に特定しない限り、一部の変形形態では、アルキニル基は、2~12個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、アルキニル基は、2~8個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、アルキニル基は、2~6個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態では、アルキニル基は、2~5個の炭素原子を含有し、ある特定の実施形態では、アルキニル基は、2~4個の炭素原子を含有し、また他の実施形態では、アルキニル基は、2~3個の炭素原子を含有し、また他の実施形態では、アルキニル基は、2個の炭素原子を含有する。代表的なアルキニル基は、例えば、エチニル、2-プロピニル(プロパルギル)、および1-プロピニルを含む。
【0028】
用語「炭素環」および「炭素環式環」は、本明細書において使用する場合、環が炭素原子のみを含有する、単環式および多環式部分を指す。他に特定しない限り、炭素環は、飽和、部分不飽和または芳香族であり得、3~20個の炭素原子を含有する。代表的な炭素環(carbocyles)は、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、ノルボルネン、フェニル、シクロヘキセン、ナフタレン、およびスピロ[4.5]デカンを含む。
【0029】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」におけるようにより大きな部分の一部として使用される用語「アリール」は、全部で5~20環員を有する単環式および多環式環系であって、系における少なくとも1個の環は、芳香族であり、系における各環は、3~12環員を含有する、単環式および多環式環系を指す。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に使用し得る。ある特定の実施形態では、「アリール」は、芳香族環系を指し、これは、例えば、フェニル、ナフチル、およびアントラシルを含み、これは、1個もしくは複数の置換基を担持し得る。本明細書において使用される場合の用語「アリール」の範囲内にまた含まれるのは、芳香族環が1個もしくは複数のさらなる環に縮合している基、例えば、ベンゾフラニル、インダニル、フタルイミジル、ナフタルイミジル(naphthimidyl)、フェナントリジニル、およびテトラヒドロナフチルである。
【0030】
単独でまたはより大きな部分、例えば、「ヘテロアラルキル」、もしくは「ヘテロアラ
ルコキシ」の一部として使用される用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ-」は、5~14個の環原子、好ましくは、5個、6個、9個もしくは10個の環原子を有し、環状配置において共有される6個、10個もしくは14個のパイ(π)電子を有し、炭素原子に加えて、1~5個のヘテロ原子を有する基を指す。用語「ヘテロ原子」は、窒素、酸素、または硫黄を指し、窒素または硫黄の任意の酸化された形態、および塩基性窒素の任意の四級化された形態を含む。ヘテロアリール基は、例えば、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、ベンゾフラニルおよびプテリジニルを含む。用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ-」はまた、本明細書において使用する場合、ヘテロ芳香族環が1個もしくは複数のアリール、脂環式、またはヘテロシクリル環に縮合している基を含み、ラジカルまたは結合点は、ヘテロ芳香族環上にある。例は、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル(benzthiazolyl)、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、
キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンを含む。ヘテロアリール基は、単環式または二環式であり得る。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、または「ヘテロ芳香族」と互換的に使用してもよく、これらの用語のいずれも、任意選択で置換されている環を含む。用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリールで置換されているアルキル基を指し、アルキルおよびヘテロアリール部分は、独立に任意選択で置換されている。
【0031】
本明細書において使用する場合、用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式ラジカル」、および「複素環式環」は互換的に使用され、飽和または部分不飽和であり得、炭素原子に加えて、1個もしくは複数の、好ましくは、1~4個の上記に定義されているようなヘテロ原子を有する。一部の変形形態では、複素環式基は、飽和または部分不飽和であり、炭素原子に加えて、1個もしくは複数の、好ましくは、1~4個の上記に定義されているようなヘテロ原子を有する、安定な5~7員単環式または7~14員二環式の複素環式部分である。複素環の環原子に関して使用されるとき、用語「窒素」は、置換されている窒素を含む。一例として、酸素、硫黄または窒素から選択される0~3個のヘテロ原子を有する飽和または部分不飽和環において、窒素は、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルにおけるような)、NH(ピロリジニルにおけるような)、または+NR(N-置換ピロリジニルにおけるような)であり得る。
【0032】
複素環式環は、安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子においてそのペンダント基に結合することができ、環原子のいずれかは、任意選択で置換することができる。このような飽和または部分不飽和の複素環式ラジカルの例は、例えば、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびキヌクリジニルを含む。用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環式基」、「複素環式部分」、および「複素環式ラジカル」は、本明細書において互換的に使用され、また、ヘテロシクリル環が1個または複数のアリール、ヘテロアリール、または脂環式環に縮合している基、例えば、インドリニル、3H-インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルを含み、ラジカルまたは結合点は、ヘテロシクリル環上にある。ヘテロシクリル基は、単環式または二環式であり得る。用語「ヘテロシクリルアルキル」は、ヘテロシクリルで置換されているアルキル基を指し、アルキルおよびヘテロシクリル
部分は、独立に任意選択で置換されている。
【0033】
本明細書において使用する場合、用語「部分不飽和」は、少なくとも1個の二重結合または三重結合を含む環部分を指す。用語「部分不飽和」は、複数の不飽和の部位を有する環を包含することを意図するが、本明細書において定義するようなアリールまたはヘテロアリール部分を含むことを意図しない。
【0034】
本明細書に記載のように、本明細書に記載されている化合物は、「任意選択で置換されている」部分を含有し得る。一般に、用語「置換されている」は、用語「任意選択で」が先行しようと、またはしなくても、指定された部分の1個もしくは複数の水素が、適切な置換基で置き換えられていることを意味する。他に示さない限り、「任意選択で置換されている」基は、その基のそれぞれの置換可能な位置において適切な置換基を有してもよく、任意の所与の構造における1つ超の位置が、特定の基から選択される1個超の置換基で置換されていてもよいとき、置換基は、全ての位置において同じまたは異なってもよい。本明細書において想定される置換基の組合せは好ましくは、安定または化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。用語「安定」は、本明細書において使用する場合、本明細書において開示されている目的のうちの1つもしくは複数のための、それらの生成、検出、ならびにある特定の実施形態では、それらの回収、精製、および使用を可能とする条件に供されるとき、実質的に変化しない化合物を指す。
【0035】
本明細書におけるいくつかの化学構造において、置換基は、示されている分子の環における結合を横切る結合に結合していることが示される。これは、置換基の1つもしくは複数が、任意の利用できる位置において(通常、親構造の水素原子の代わりに)環に結合し得ることを意味する。そのように置換されている環の原子が、2つの置換可能な位置を有する場合、2個の基は、同じ環原子上に存在し得る。1個超の置換基が存在するとき、それぞれは他とは無関係に定義され、それぞれは異なる構造を有し得る。環の結合を横切って示される置換基が-Rである場合、これは、前述のパラグラフに記載されているように、環が「任意選択で置換されている」と言われるのと同じ意味を有する。
【0036】
「任意選択で置換されている」基の置換可能な炭素原子上の適切な一価の置換基は、独立に、ハロゲン;-(CH2)0~4R°;-(CH2)0~4OR°;-O-(CH2)0~4C(O)OR°;-(CH2)0~4CH(OR°)2;-(CH2)0~4SR°;R°で置換されていてもよい-(CH2)0~4Ph;R°で置換されていてもよい-(CH2)0~4O(CH2)0~1Ph;R°で置換されていてもよい-CH=CHPh;-NO2;-CN;-N3;-(CH2)0~4N(R°)2;-(CH2)0~4N(R°)C(O)R°;-N(R°)C(S)R°;-(CH2)0~4N(R°)C(O)NR°2;-N(R°)C(S)NR°2;-(CH2)0~4N(R°)C(O)OR°;-N(R°)N(R°)C(O)R°;-N(R°)N(R°)C(O)NR°2;-N(R°)N(R°)C(O)OR°;-(CH2)0~4C(O)R°;-C(S)R°;-(CH2)0~4C(O)OR°;-(CH2)0~4C(O)N(R°)2;-(CH2)0~4C(O)SR°;-(CH2)0~4C(O)OSiR°3;-(CH2)0~4OC(O)R°;-OC(O)(CH2)0~4SR°;-SC(S)SR°;-(CH2)0~4SC(O)R°;-(CH2)0~4C(O)NR°2;-C(S)NR°2;-C(S)SR°;-SC(S)SR°;-(CH2)0~4OC(O)NR°2;-C(O)N(OR°)R°;-C(O)C(O)R°;-C(O)CH2C(O)R°;-C(NOR°)R°;-(CH2)0~4SSR°;-(CH2)0~4S(O)2R°;-(CH2)0~4S(O)2OR°;-(CH2)0~4OS(O)2R°;-S(O)2NR°2;-(CH2)0~4S(O)R°;-N(R°)S(O)2NR°2;-N(R°)S(O)2R°;-N(OR°)R°;-C(NH)NR°2;-P(O)2R°;-P(O)R°2;-OP(O)R°2;-OP(O
)(OR°)2;SiR°3;-(C1~4直鎖状もしくは分枝状アルキレン)O-N(R°)2;または-(C1~4直鎖状もしくは分枝状アルキレン)C(O)O-N(R°)2であり、式中、各R°は、下記で定義されるように置換されていてもよく、独立に、水素、C1~8脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリール環であり、あるいは上記の定義にも関わらず、2つの独立して出現するR°は、それらの介在する原子(複数可)と一緒になって、下記で定義されているように置換されていてもよい、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~12員の飽和、部分不飽和、もしくはアリールの単環式または多環式環を形成する。
【0037】
R°(または2つの独立して出現するR°がこれらの介在する原子と一緒になって形成される環)上の適切な一価の置換基は、独立に、ハロゲン、-(CH2)0~2R●、-(ハロR●)、-(CH2)0~2OH、-(CH2)0~2OR●、-(CH2)0~2CH(OR●)2;-O(ハロR●)、-CN、-N3、-(CH2)0~2C(O)R●、-(CH2)0~2C(O)OH、-(CH2)0~2C(O)OR●、-(CH2)0~4C(O)N(R°)2;-(CH2)0~2SR●、-(CH2)0~2SH、-(CH2)0~2NH2、-(CH2)0~2NHR●、-(CH2)0~2NR●
2、-NO2、-SiR●
3、-OSiR●
3、-C(O)SR●、-(C1~4直鎖状もしくは分枝状アルキレン)C(O)OR●、または-SSR●であり、式中、各R●は、非置換であるか、または「ハロ」が先行する場合、1個もしくは複数のハロゲンのみで置換されており、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリール環から独立に選択される。R°の飽和炭素原子上の適切な二価の置換基は、=Oおよび=Sを含む。
【0038】
「任意選択で置換されている」基の飽和炭素原子上の適切な二価の置換基は、下記を含む。=O、=S、=NNR*
2、=NNHC(O)R*、=NNHC(O)OR*、=NNHS(O)2R*、=NR*、=NOR*、-O(C(R*
2))2~3O-、または-S(C(R*
2))2~3S-(式中、R*は、独立して出現する毎に、水素、下記で定義するように置換されていてもよいC1~6脂肪族、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリール環から選択される)。「任意選択で置換されている」基のビシナルの置換可能な炭素に結合している適切な二価の置換基は、-O(CR*
2)2~3O-を含み、式中、R*は、独立して出現する毎に、水素、下記で定義するように置換されていてもよいC1~6脂肪族、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリール環から選択される。
【0039】
R*の脂肪族基上の適切な置換基は、ハロゲン、-R●、-(ハロR●)、-OH、-OR●、-O(ハロR●)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR●、-NH2、-NHR●、-NR●
2、または-NO2を含み、式中、各R●は、非置換であるか、または「ハロ」が先行する場合、1個もしくは複数のハロゲンのみで置換されており、独立に、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリール環である。
【0040】
「任意選択で置換されている」基の置換可能な窒素上の適切な置換基は、-R†、-NR†
2、-C(O)R†、-C(O)OR†、-C(O)C(O)R†、-C(O)CH2C(O)R†、-S(O)2R†、-S(O)2NR†
2、-C(S)NR†
2、-C
(NH)NR†
2、または-N(R†)S(O)2R†を含み、式中、各R†は、独立に、水素、下記で定義するように置換されていてもよいC1~6脂肪族、非置換-OPh、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリール環であり、あるいは上記の定義にも関わらず、2つの独立して出現するR†は、それらの介在する原子(複数可)と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換3~12員の飽和、部分不飽和、もしくはアリールの単環式または二環式環を形成する。
【0041】
R†の脂肪族基上の適切な置換基は、独立に、ハロゲン、-R●、-(ハロR●)、-OH、-OR●、-O(ハロR●)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR●、-NH2、-NHR●、-NR●
2、または-NO2であり、式中、各R●は非置換であるか、または「ハロ」が先行する場合、1個もしくは複数のハロゲンのみで置換されており、独立に、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリール環である。
【0042】
本明細書において使用する場合、用語「粗アクリル酸」および「精アクリル酸」は、それぞれ、相対的に低純度および高純度のアクリル酸を表す。粗アクリル酸(また工業グレードのアクリル酸と称される)は、94重量%の典型的な最低の全体的な純度レベルを有し、塗料、接着剤、織物、紙、皮革、繊維、およびプラスチック添加物の用途のためのアクリル酸エステルを作製するために使用することができる。精アクリル酸は、98%~99.99%の範囲の典型的な全体的な純度レベルを有し、使い捨ておむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁下着および生理用ナプキンにおける高吸収性ポリマー(SAP)のためのポリアクリル酸(PAA)またはその塩を作製するために使用することができる。ポリアクリル酸はまた、紙処理および水処理のための組成物、ならびに洗剤コビルダー用途において使用される。一部の変形形態では、アクリル酸は、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%もしくは少なくとも99.9%、または99%~99.95%、99.5%~99.95%、99.6%~99.95%、99.7%~99.95%もしくは99.8%~99.95%の純度を有する。
【0043】
PAAの適切な塩は、金属塩、例えば、任意のアルカリ(例えば、Na+、K+)カチオン、アルカリ土類カチオンの金属塩を含む。ある特定の実施形態では、PAA塩は、Na+塩、すなわちPAAナトリウムである。ある特定の実施形態では、塩は、K+塩、すなわちPAAカリウムである。
【0044】
精アクリル酸中の不純物は、アクリル酸ポリマー(PAA)への高度の重合を促進し、最終用途における副生成物からの有害効果を回避することが可能な程度まで低減される。例えば、アクリル酸中のアルデヒド不純物は、重合を妨げ、重合化アクリル酸を変色させ得る。無水マレイン酸不純物は、望ましくないコポリマーを形成し、これはポリマーの特性にとって有害であり得る。カルボン酸、例えば、重合に関与しない飽和カルボン酸は、PAAもしくはSAP含有製品の最終的な匂いに影響を与え得、かつ/またはそれらの使用を損ない得る。例えば、嫌な匂いが、酢酸またはプロピオン酸を含有するSAPから生じ得、皮膚刺激が、ギ酸を含有するSAPからもたらされ得る。
【0045】
プロピレンをベースとする粗アクリル酸を生成しようとも、プロピレンをベースとする精アクリル酸を生成しようとも、プロピレンをベースとするアクリル酸からの不純物の低減または除去は、コストがかかる。このようなコストがかかる多段階の蒸留および/または抽出および/または結晶化ステップが、一般に用いられる(例えば、米国特許第5,7
05,688号および同第6,541,665号に記載されているように)。開示されている組成物から低減および/または除去される、プロピレンをベースとするアクリル酸からの著しい不純物は、例えば、アルデヒド不純物、およびプロピレン酸化の生成物または副生成物を含む。
【0046】
本明細書において使用する場合、用語「プロピレン酸化の生成物もしくは副生成物」または「プロピレンの酸化に由来する化合物」は互換的に使用して、例えば、C1化合物、例えば、ホルムアルデヒド、およびギ酸;C2化合物、例えば、アセトアルデヒド、酢酸;C3化合物、例えば、プロピレン、アリルアルコール、アクロレイン(すなわち、プロペナール)、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、プロピオン酸;C4化合物、例えば、無水マレイン酸;ならびにC5化合物、例えば、フルフラールなどを含めた、プロピレン酸化の生成物および副生成物を指す。
【0047】
本明細書において使用する場合、用語「アルデヒド不純物」は、前述のパラグラフにおけるアルデヒドのいずれかを含む。
【0048】
本明細書において使用する場合、用語「実質的に非含有」は、一部の変形形態では、5重量%未満、1重量%未満、0.1重量%未満、0.01重量%未満、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲、あるいは10,000ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、10ppm未満、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲を意味する。1つの変形形態では、化合物Aを実質的に非含有である組成物は、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、0.01重量%未満、もしくは0.001重量%未満、または上記の値のいずれかの2つを含めた範囲の化合物Aを有する。
【0049】
安定剤は、アクリル酸を保存するために一般に使用される。本明細書において使用する場合、用語「安定剤」は、任意のラジカル重合阻害剤または消泡剤を含む。アクリル酸は、それ自体への望まれないマイケル付加およびそれ自体との望まれないフリーラジカル重合の影響を受けやすく、これはアクリル酸への重合阻害剤の添加によって相殺され得る。適切な重合阻害剤は、例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテル、MEHQ、アルキルフェノール、例えば、o-、m-またはp-クレゾール(メチルフェノール)、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノールおよび2-メチル-4-tert-ブチルフェノールおよびヒドロキシフェノール、例えば、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、2-メチルヒドロキノンおよび2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンを含む。消泡剤の例は、シリコーン(例えば、ポリジメチルシロキサン)、アルコール、ステアレート、およびグリコールを含む。
【0050】
本明細書において使用する場合、用語「多分散性」および「多分散指数」(PDI)は、所与のポリマー試料における分子量分布の尺度を交換可能に指す。PDIは、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割ったものとして算出される。Mnは、試料における全てのポリマー分子の総重量を、試料におけるポリマー分子の総数で割ったものである。Mwは、試料において、より小さいポリマーが含有するよりも、より大きいポリマーが含有するポリマー総質量が多いことを説明する。例えば、分子量700,000g/mol、10,000g/mol、12,000g/molおよび1,500g/molを有する4種のポリマー鎖の仮説上の混合物のMnは、(4で割って)180,875である。それとは対照的に、Mwは、各ポリマー鎖の分子量に、各ポリマー鎖が試料に寄与
する総重量の百分率を掛けることによって算出され、(700,000×0.968)+(10,000×0.014)+(12,000×0.017)+(1,500×0.0021)=677,604となる。
【0051】
PDIは、ポリマー試料における個々の分子量の分布を示す。PDIは、1に等しいかまたはそれより大きい値を有し、ポリマー鎖が均一な鎖長に近づくにつれて、PDIは一(1)の値に近づく。PDIは、慣用的な方法、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィーとしても公知)、光散乱測定、例えば動的光散乱を使用して、および/またはMALDIもしくはESI-MSを使用する質量分析による直接測定によって算出され得る。
【0052】
本明細書において使用する場合、用語「高吸収性ポリマー」(SAP)は、最も好ましい条件下で、0.9重量パーセントの塩化ナトリウムを含有する水溶液中でその重量の少なくとも約10倍を吸収することができる水膨潤性の水不溶性ポリマーを指す。水を吸収するSAPの能力は、水溶液のイオン濃度によって決まり得る。脱イオン蒸留水中で、SAPは、その重量の500倍(それ自体の容量の30~60倍)を吸収し得、99.9%まで液体となり得るが、0.9%生理食塩水溶液中に入れられるとき、吸収性はその重量の50倍に下落し得る。
【0053】
用語「アクリレート」(複数可)は、本明細書において使用する場合、アシルカルボニルに隣接したビニル基を有する任意のアシル基を指す。これらの用語は、一置換、二置換および三置換ビニル基を包含する。アクリレートは、例えば、アクリレート、メタクリレート、エタクリレート(ethacrylate)、シンナメート、(3-フェニルアクリレート)
、クロトネート、チグレート、およびセネシオエートを含み得る。
【0054】
用語「ポリマー」は、本明細書において使用する場合、複数の繰り返し単位を含む分子を指す。一部の変形形態では、ポリマーは高い相対分子質量の分子であり、その構造は、実際にまたは概念的に、低い相対分子質量の分子に由来する複数の繰り返し単位を含む。ある特定の実施形態では、ポリマーは、1つのみのモノマー種からなる(例えば、ポリエチレンオキシド)。ある特定の実施形態では、ポリマーは、1個もしくは複数のエポキシドのコポリマー、ターポリマー、ヘテロポリマー、ブロックコポリマー、またはテーパードヘテロポリマーである。1つの変形形態では、ポリマーは、2個もしくはそれ超のモノマーのコポリマー、ターポリマー、ヘテロポリマー、ブロックコポリマー、またはテーパードヘテロポリマーであり得る。
【0055】
一部の変形形態では、用語「エポキシド」は、本明細書において使用する場合、置換または非置換オキシランを指す。置換オキシランは、一置換オキシラン、二置換オキシラン、三置換オキシラン、および四置換オキシランを含む。このようなエポキシドは、本明細書で定義されているようにさらに任意選択で置換されてよい。ある特定の実施形態では、エポキシドは、単一のオキシラン部分を含む。ある特定の実施形態では、エポキシドは、2つまたはそれ超のオキシラン部分を含む。
【0056】
本明細書において使用する場合、1つもしくは複数の数値に先行する用語「約」は、その数値±5%を意味する。本明細書において値またはパラメーターの「約」への言及は、その値またはパラメーターそれ自体を対象とする実施形態を含む(かつ記載する)ことを理解すべきである。例えば、「約x」に言及する記載は、「x」それ自体の記載を含む。
【発明を実施するための形態】
【0057】
詳細な説明
相対的に高分子量のPPLおよび/または多分散系のPPLの熱分解は、相対的に高い
程度の望ましくない副生成物および/または分解生成物で汚染されたアクリル酸を生じさせることが観測されている。理論に束縛されるものではないが、相対的に高分子量のPPL種を効率的に熱分解するのに必要な熱は、低分子量のPPL種を熱分解するのに必要な熱を超えるので、望ましくない分解生成物が生じると考えられる。
【0058】
したがって、一部の態様では、本明細書に記載されているのは、ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含むPPL組成物である。一部の実施形態では、ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、
(a)構造
【化16】
を有するアクリレート末端基、または構造
【化17】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
(b)構造
【化18】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含み、
アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基は、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップする。
【0059】
ポリマー鎖の「アルキル末端」は、以下を指すことを一般に理解すべきである。
【化19】
【0060】
本明細書に記載されているPPL組成物は、ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩の混合物を含み得ることをさらに理解すべきである。例えば、ヒドロキシレート末端基を用いて合成されたポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、部分的に脱水されると、アクリレート末端基およびヒドロアクリレート末端基を有する、ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩の混合物を生じ得る。
【0061】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されているのは、アクリル酸により多くより円滑に変換する、本明細書に記載のような式(I)および/または(II)の鎖を含むPPL組成物である。理論に束縛されるものではないが、このことは、本明細書で提供されるポリマー組成物のより低い分子量および/または狭い分子量分布に部分的に起因し得る
と考えられる。
【0062】
一部の態様では、アクリレート末端基を欠くまたは実質的に欠く従来のPPLよりも有効かつ効率的にアクリル酸に変換し得る(例えば熱分解によって)、アクリレート末端基を有する式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含有するポリプロピオラクトン組成物を提供する。
【0063】
本明細書に記載されているポリプロピオラクトン組成物を使用してアクリル酸を生成するための例示的な2ステップによるプロセスを示す一般反応スキームが下記に示されている。この一般反応スキームに示されている第1のステップでは、ベータプロピオラクトンを、アクリレート含有分子(例えば、アクリレート含有連鎖移動剤)と合わせて、式(I)のポリプロピオラクトンを生成し、次いでそれを加熱すると、アクリル酸を生成することができる。
【化20】
【0064】
一部の変形形態では、アクリレート含有分子は、アクリル酸である。
【0065】
他の態様では、ヒドロキシル末端基を欠くまたは実質的に欠く従来のPPLよりも有効かつ効率的にアクリル酸に変換する(例えば熱分解によって)、ヒドロキシル末端基を有する式(II)のポリプロピオラクトン鎖を含有するポリプロピオラクトン組成物をさらに提供する。
【0066】
本明細書に記載されているポリプロピオラクトン組成物を使用してアクリル酸を生成するための別の例示的な2ステップによるプロセスを示す一般反応スキームが下記に示されている。この一般反応スキームに示されている第1のステップでは、ベータプロピオラクトンを、水またはヒドロアクリル酸誘導体と合わせて、式(II)のポリプロピオラクトンを生成し、次いでそれをアクリル酸に変換することができる。
【化21】
【0067】
本明細書において使用する場合、用語「アクリレート末端基またはヒドロキシル末端基を実質的に欠くPPL」は、組成物中の40%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満または1%未満の鎖が、このようなアクリレート末端基またはヒドロキシル末端基を含有するPPL組成物を指す。
【0068】
式(I)または(II)のポリプロピオラクトン鎖では、nは、10~約1,000の
整数であり、Yは、-Hまたはカチオンである。適切なカチオンは、任意のアルカリ(例えば、Na+、K+)、アルカリ土類カチオンまたは有機カチオン(例えば、窒素、硫黄、リンまたはヒ素を含有する)カチオン、例えば、本明細書に記載されているものを含む。ある特定の実施形態では、カチオンは、Na+である。
【0069】
ある特定の実施形態では、式(I)または(II)のポリプロピオラクトン鎖は、相対的に低い分子量(例えば、約40,000g/molに等しいかまたはそれ未満)および/または多分散性(例えば、約2.0に等しいかまたはそれ未満のPDI)を有する。また、式(I)または(II)のポリマー鎖を含有するPPL組成物を作製するための方法、およびその熱分解を行ってアクリル酸を生成するための方法を提供する。
組成物
【0070】
一部の態様では、ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含むポリプロピオラクトン(PPL)組成物を提供する。一態様では、本明細書に記載されているポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、アクリレート末端基を有するPPLポリマー鎖を含む。
【0071】
一部の変形形態では、ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、
(a)構造
【化22】
を有するアクリレート末端基、および
(b)構造
【化23】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含み、
アクリレート末端基は、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップする。
【0072】
上記の一部の変形形態では、PPL組成物は、ポリプロピオラクトンポリマーの塩を含む。ある特定の変形形態では、ポリプロピオラクトンポリマーの塩は、第I族または第II族カチオンを含む。1つの変形形態では、ポリプロピオラクトンポリマーの塩は、ナトリウムカチオンまたはカリウムカチオンを含む。
【0073】
上記の一部の変形形態では、(i)ポリプロピオラクトンポリマーもしくはその塩は、約40,000g/molに等しいかもしくはそれ未満のMnを有するか、(ii)ポリプロピオラクトン組成物は、約2.0に等しいかもしくはそれ未満のPDIを有するか、または(iii)ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%は、アクリレート末端を有するポリプロピオラクトンポリマーもしくはその塩を含むか、または(i)~(iii)の任意の組合せである。
【0074】
ある特定の実施形態では、式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含むPPL組成物を提供し、
【化24】
式中、
nは、約10~約1000の整数であり、
Yは、-Hまたはカチオンである。
【0075】
一部の変形形態では、式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含むポリプロピオラクトン(PPL)組成物を提供し、
【化25】
式中、
nは、整数であり、
Yは、-Hまたはカチオンであり、
PPL組成物の数平均分子量は、約800g/mol~約72,000g/molの範囲内である。
【0076】
ある特定の実施形態では、nは、約10(例えば、約800g/molの分子量を有するポリプロピオラクトン鎖)~約500(例えば、約36,000g/molの分子量を有するポリプロピオラクトン鎖)の整数である。
【0077】
ある特定の実施形態では、Yは、Na+である。ある特定の実施形態では、Yは、水素である。ある特定の実施形態では、Yは、リン、窒素もしくは硫黄、またはこれらの任意の組合せを含有する有機カチオンである。
【0078】
ある特定の実施形態では、ポリプロピオラクトン(PPL)組成物は、式(Ia)のポリプロピオラクトン鎖を含み、
【化26】
式中、nは、約10~約1000の整数である。ある特定の実施形態では、ポリプロピオラクトン(PPL)組成物は、式(Ia)のポリプロピオラクトン鎖を含み、式中、nは約10~約500の整数である。
【0079】
別の態様では、本明細書に記載されているポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、ヒドロアクリレート末端基を有するPPLポリマー鎖を含む。一部の変形形態では、ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、
(a)構造
【化27】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
(b)構造
【化28】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含み、
ヒドロアクリレート末端基は、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップする。
【0080】
上記の一部の変形形態では、PPL組成物は、ポリプロピオラクトンポリマーの塩を含む。ある特定の変形形態では、ポリプロピオラクトンポリマーの塩は、第I族または第II族カチオンを含む。1つの変形形態では、ポリプロピオラクトンポリマーの塩は、ナトリウムカチオンまたはカリウムカチオンを含む。1つの変形形態では、ポリプロピオラクトンポリマーの塩は、有機カチオンを含む。ある特定の変形形態では、ポリプロピオラクトンポリマーの塩は、アンモニウム塩またはホスホニウム塩を含む。
【0081】
上記の一部の変形形態では、(i)ポリプロピオラクトンポリマー組成物は、約40,000g/molに等しいかもしくはそれ未満のMnを有するか、(ii)ポリプロピオラクトン組成物は、約2.0に等しいかもしくはそれ未満のPDIを有するか、または(iii)ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%は、ヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーもしくはその塩を含むか、または(i)~(iii)の任意の組合せである。
【0082】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されているPPL組成物は、式(II)のポリプロピオラクトン鎖を含み、
【化29】
式中、
nは、約10~約1000の整数であり、
Yは、-Hまたはカチオンである。
【0083】
一部の変形形態では、本明細書に記載されているPPL組成物は、式(II)のポリプロピオラクトン鎖を含み、
【化30】
式中、
nは、整数であり、
Yは、-Hまたはカチオンであり、
ポリプロピオラクトン組成物は、約800g/mol~約72,000g/molのM
nを有する。
【0084】
ある特定の実施形態では、nは、約10(例えば、約800g/molの分子量を有するポリプロピオラクトン鎖)~約500(例えば、約36,000g/molの分子量を有するポリプロピオラクトン鎖)の整数である。
【0085】
ある特定の実施形態では、Yは、Na+である。ある特定の実施形態では、Yは、水素である。1つの変形形態では、Yは、有機カチオンである。ある特定の実施形態では、Yは、アンモニウム塩である。ある特定の実施形態では、Yは、ホスホニウム塩である。
【0086】
ある特定の実施形態では、提供されたPPL組成物は、異なるY基を有するPPL鎖の混合物を含む。ある特定の実施形態では、組成物は、Yが-Hであるポリプロピオラクトン鎖と、-Yがカチオンであるポリプロピオラクトン鎖の混合物を含む。このような組成物のある特定の実施形態では、鎖の大部分において、-Yは、-Hである。ある特定の実施形態では、鎖の少なくとも50%は、-H末端基を有する。ある特定の実施形態では、ポリマー鎖の少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%は、-H末端基を有し、PPL鎖の残りは、カチオン性-Y基を有する。このような組成物の他の実施形態では、PPL鎖の大部分において、-Yは、カチオンである。ある特定の実施形態では、鎖の少なくとも50%は、カチオン末端基を有する。ある特定の実施形態では、鎖の少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%は、カチオン性Y基を含み、PPL鎖の残りは、-Y基として-Hを有する。このような組成物のある特定の実施形態では、カチオン鎖末端は、ナトリウムカチオンを含む。このような組成物のある特定の実施形態では、カチオン鎖末端は、アンモニウムカチオンを含む。
【0087】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含むPPL組成物を提供する。ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むこのようなポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは99%純粋であり、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲である。ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むこのようなポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、アクリレート末端基またはヒドロキシル末端基を伴わないPPLポリマーと比較して、重量/重量%ベースで少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは99%純粋であり、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲である。
【0088】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むこのようなポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、アクリレート末端基またはヒドロキシル(またはヒドロアクリレート)末端基を伴わないPPLポリマーと比較して、重量/重量%ベースで少なくとも80%、85%もしくは少なくとも90%純粋であり、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲である。ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むこのようなポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、アクリレート末端基またはヒドロキシル(またはヒドロアクリレート)末端基を伴わないPPLポリマーと比較して、重量/重量%ベースで少なくとも95%、96%、97%、97.5%、98% 98.5%もしくは99%純粋であり、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲である。ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むこのようなポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、アクリレート末端基またはヒドロキシル(またはヒドロアクリレート)末端基を伴わないPPLポリマーと比較して、重量/重量%ベースで少なくとも99%、99.1%、99.2%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%もしくは99.9%純粋であり、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲である。
【0089】
ある特定の実施形態では、少なくとも20重量%の、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含む本明細書に記載されているポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む、ポリプロピオラクトン組成物を提供する。ある特定の実施形態では、ポリプロピオラクトン組成物は、組成物の重量%に対して、少なくとも30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%もしくは90重量%、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲の、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含む本明細書に記載されているポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む。一部の変形形態では、ポリプロピオラクトン組成物は、組成物の重量%に対して、少なくとも(at)95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2重量%、少なくとも99.3重量%、少なくとも99.4重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%もしくは少なくとも99.9重量%、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲の、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含む本明細書に記載されているポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む。
【0090】
さらに、本明細書のある特定の実施形態によれば、ポリプロピオラクトン組成物は、アクリレート末端基またはヒドロキシル(またはヒドロアクリレート)末端基を伴わないPPLと比較して、高い割合(重量/重量%)の、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロキシル(またはヒドロアクリレート)末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を有する。ある特定の実施形態では、ポリプロピオラクトン組成物は、約70重量%、60重量%、50重量%、40重量%、30重量%、20重量%、10重量%、5重量%、1重量%もしくは0重量%、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲の、アクリレート末端基またはヒドロキシル(またはヒドロアクリレート)末端基を伴わないPPLと比較して、約30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、99重量%もしくは100重量%、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲の、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロキシル(またはヒドロアクリレート)末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を有する。一部の変形形態では、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2重量%、少なくとも99.3重量%、少なくとも99.4重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なく
とも99.7重量%、少なくとも99.8重量%もしくは少なくとも99.9重量%、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲のポリプロピオラクトン組成物は、アクリレート末端基またはヒドロキシル(またはヒドロアクリレート)末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む。
【0091】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、相対的に低分子量、例えば約40,000g/molに等しいかまたはそれ未満を有する。ある特定の実施形態では、分子量は、Mwである。ある特定の実施形態では、分子量は、Mnである。ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、約35,000g/mol、30,000g/mol、25,000g/mol、20,000g/mol、15,000g/mol、10,000g/mol、5,000g/mol、4,000g/mol、3,000g/mol、2,000g/molもしくは1,000g/molに等しいかまたはそれら未満、あるいはこれらの値の任意の2つを含めた範囲の分子量(MwまたはMn)を有する。ある特定の変形形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、1,000g/mol~35,000g/mol、1,000g/mol~30,000g/mol、1,000g/mol~25,000g/mol、1,000g/mol~20,000g/mol、1,000g/mol~15,000g/mol、または1,000g/mol~10,000g/molのMnを有する。
【0092】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖において、nは、10~約1,000の整数である。ある特定の実施形態では、nは、10~約20、20~約30、30~約40、40~約50、50~約60、60~約70、70~約80、80~約90、90~約100、100~約150、150~約200、200~約250、250~約300、300~約350、350~約400、400~約450、450~約500、500~約1,000の整数、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲である。
【0093】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)の鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含有するPPL組成物は、相対的に低い多分散指数(PDI)、例えば約2.0に等しいかまたはそれ未満を有する。PDIは、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割ったものとして算出される。ある特定の実施形態では、PPL組成物は、約1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2もしくは1.1に等しいかまたくはそれら未満のPDIを有し、あるいはこれらの値の任意の2つを含めた範囲内のPDIを有する。ある特定の実施形態では、PPL組成物は、約1.5~1.0のPDIを有する。ある特定の実施形態では、PPL組成物は、約1.2~1.0のPDIを有する。ある特定の実施形態では、PPL組成物は、約1.1~1.0のPDIを有する。ある特定の実施形態では、PPL組成物は、約1.0のPDIを有する。ある特定の実施形態では、PPL組成物は、約1.5のPDIを有する。
【0094】
本明細書に記載されているアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩の分子量(Mnを含む)、PDIおよび量の変形形態は、あらゆる組合せが個々に列挙されているかのように、互いに組み合わされ得ることを一般に理解すべきである。さらに、本明細書に記載されているアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその
塩の分子量(Mnを含む)、PDIおよび量の変形形態は、あらゆる組合せが個々に列挙されているかのように、ポリプロピオラクトン鎖(式Iおよび/またはIIを有するポリプロピオラクトン鎖を含む)に関する変形形態のいずれかと組み合わせてよい。
【0095】
例えば、ある特定の実施形態では、式Iおよび/またはIIを有するポリプロピオラクトン鎖を含むポリマー組成物であって
【化31】
(式中、nおよび-Yのそれぞれは、上記ならびに本明細書のクラスおよびサブクラスにおいて定義されている通りである)、
(i)1,000~10,000g/molのM
n、または
(ii)2未満のPDI、または
(iii)95重量%超の式Iおよび/もしくはIIを有するポリプロピオラクトン鎖、または
上記の(i)~(iii)の任意の組合せ
を有する、ポリマー組成物を提供する。
【0096】
一部の変形形態では、式Iおよび/またはIIを有するポリプロピオラクトン鎖を含むポリマー組成物であって
【化32】
(式中、nおよび-Yのそれぞれは、上記ならびに本明細書のクラスおよびサブクラスにおいて定義されている通りである)、
(i)1,000~3,000g/molのM
n、または
(ii)1.7未満のPDI、または
(iii)98重量%超の式Iおよび/もしくはIIを有するポリプロピオラクトン鎖、または
上記の(i)~(iii)の任意の組合せ
を有する、ポリマー組成物を提供する。
【0097】
他の変形形態では、式Iおよび/またはIIを有するポリプロピオラクトン鎖を含むポリマー組成物であって
【化33】
(式中、nおよび-Yのそれぞれは、上記ならびに本明細書のクラスおよびサブクラスにおいて定義されている通りである)、
(i)1,000~5,000g/molのM
n、または
(ii)1~2のPDI、または
(iii)99重量%超の式Iおよび/もしくはIIを有するポリプロピオラクトン鎖、または
上記の(i)~(iii)の任意の組合せ
を有する、ポリマー組成物を提供する。
【0098】
他の実施形態では、ポリマー組成物中のポリプロピオラクトン鎖は、主に式Iのポリプロピオラクトン鎖である。
【0099】
他の実施形態では、ポリマー組成物中のポリプロピオラクトン鎖のMnは、約1,000~4,000g/molである。
【0100】
他の実施形態では、ポリマー組成物のPDIは、約1.7未満である。
【0101】
別の態様では、本明細書に記載されているポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩のいずれかを含む反応ストリームを提供する。例えば、一部の変形形態では、式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含む反応ストリームであって
【化34】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである)、少なくとも約500kg/時間の割合でアクリル酸を生成する、反応ストリームを提供する。反応ストリームは、反応器に入るまたは反応器から出る化合物の溶液に相当する。
式(I)および/または式(II)の鎖を含有するPPL組成物を調製するための方法
【0102】
一部の態様では、ポリプロピオラクトン組成物を生成するための方法であって、ベータプロピオラクトンおよび少なくとも1つのアクリレート含有連鎖移動剤を合わせて、ポリプロピオラクトン組成物を生成することを含む、方法を提供する。例えば、アクリレート含有連鎖移動剤は、構造
【化35】
を有するアクリレート末端基を含む化合物またはその塩であり得る。一部の変形形態では、アクリレート含有連鎖移動剤は、アクリレート末端基、および構造
【化36】
を有する1つまたは複数の単位を含む鎖を有する化合物であってよく、アクリレート末端基は、鎖のアルキル末端をキャップする。
【0103】
上記の一部の変形形態では、連鎖移動剤は、約1000g/mol未満、約900g/mol未満、約800g/mol未満、約700g/mol未満、約600g/mol未満、約500g/mol未満、約400g/mol未満、約300g/mol未満、約200g/mol未満、約100g/mol未満、約75g/mol未満もしくは約50g/mol未満、または50g/mol~1000g/mol、50g/mol~900g
/mol、50g/mol~800g/mol、50g/mol~700g/mol、50g/mol~600g/mol、50g/mol~500g/mol、50g/mol~400g/mol、50g/mol~300g/mol、50g/mol~200g/mol、50g/mol~100g/molもしくは50g/mol~75g/molの数平均分子量(Mn)を有する。
【0104】
一態様では、式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含む組成物の生成のための方法であって
【化37】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである)、
式(III)の連鎖移動剤
【化38】
もしくはその塩、またはこれらの任意の2つもしくはそれ超の混合物(式中、pは、0~9である)の存在下でベータプロピオラクトンを重合させることを含む、方法を提供する。
【0105】
一部の変形形態では、本明細書に記載のような、式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含むポリプロピオラクトン組成物を生成するための方法であって、ベータプロピオラクトン、および本明細書に記載されるような式(III)の少なくとも1つの化合物またはその塩を合わせて、ポリプロピオラクトン組成物を生成することを含む、方法を提供する。連鎖移動剤
【0106】
本明細書に記載されている方法は、アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を伴わないポリプロピオラクトン鎖と比較して、高い割合(例えば、少なくとも約30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、または90重量%)の、式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含むPPL組成物を生成する。ある特定の実施形態では、組成物中の少なくとも90%のポリマー鎖が、アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有する。ある特定の実施形態では、組成物中の少なくとも90%のポリマー鎖が、式(I)に従う。ある特定の実施形態では、組成物は、2未満の多分散指数(PDI)を有する。
【0107】
ある特定の実施形態では、方法は、連鎖移動剤(CTA)の存在下でBPLを重合させることを含み、連鎖移動剤は、式(III)の化合物
【化39】
もしくはその塩、またはこれらの任意の2つもしくはそれ超の混合物であり、式中、pは、0~9である。ある特定の実施形態では、pは、0~5である。ある特定の実施形態では、pは0であり、すなわちアクリル酸である。ある特定の実施形態では、pは、1である。ある特定の実施形態では、pは、2である。ある特定の実施形態では、pは、3である。ある特定の実施形態では、pは、4である。ある特定の実施形態では、pは、5である。ある特定の実施形態では、pは、6である。ある特定の実施形態では、pは、7である。ある特定の実施形態では、pは、8である。ある特定の実施形態では、pは、9である。式(III)の連鎖移動剤がオリゴマーである、ある特定の実施形態では、連鎖移動剤は、約200g/mol、約300g/mol、約400g/mol、約500g/mol、約600g/molもしくは約700g/molの数平均分子量を有するか、またはこれらの値の任意の2つによって定められた範囲内である。
【0108】
一部の変形形態では、連鎖移動剤は、
(i)構造
【化40】
を有するアクリレート末端基、または構造
【化41】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
任意選択で(ii)構造
【化42】
を有する1つまたは複数の単位を含む鎖
を独立に含む少なくとも1つの化合物またはその塩であり、
アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基は、鎖のアルキル末端をキャップする。
【0109】
本明細書に記載されている連鎖移動剤の適切な塩は、任意のアルカリ(例えば、Na+、K+)カチオン、アルカリ土類カチオン、または窒素もしくはリン含有(例えば、アンモニウム、アルキル-、ジアルキル-(dialky-l)、トリアルキル-、テトラアルキル-アンモニウムまたはホスホニウム)カチオンの塩、例えば本明細書に記載されているものを含む。ある特定の実施形態では、塩は、アクリル酸ナトリウムなどのNa+塩である。ある特定の実施形態では、塩は、アクリル酸カリウムなどのK+塩である。
【0110】
ある特定の実施形態では、式(III)の連鎖移動剤を使用し、多くの、殆どのまたは実質的に全ての鎖末端上にアクリレート基を組み込むことにより、相対的に短い鎖長を有
し、より低いPDIを有する組成の式(I)のポリプロピオラクトン鎖の生成を制御し、それによって、アクリレート末端基を実質的に欠くPPLと比較して、PPL組成物の熱分解をさらに制御することができる。
【0111】
ある特定の実施形態では、連鎖移動剤は、アクリル酸またはその塩である。方法のある特定の実施形態では、連鎖移動剤は、アクリル酸二量体
【化43】
またはその塩である。方法のある特定の実施形態では、連鎖移動剤は、アクリル酸三量体
【化44】
またはその塩である。
【0112】
ある特定の実施形態では、連鎖移動剤は、約1:5000の連鎖移動剤:BPL~約1:10の連鎖移動剤:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、連鎖移動剤:BPLのモル比は、約1:5,000、1:2500、1:1000、1:500、1:200、1:100、1:20、1:10、またはこれらの比の任意の2つを含めた範囲である。
【0113】
ある特定の実施形態では、ベータプロピオラクトンは、50℃超の温度で連鎖移動剤と接触させられる。ある特定の実施形態では、温度は、50℃~約250℃の範囲内である。ある特定の実施形態では、温度は、100℃~約200℃の範囲内である。ある特定の実施形態では、温度は、100℃~約180℃の範囲内である。ある特定の実施形態では、温度は、120℃~約160℃の範囲内である。ある特定の実施形態では、温度は、140℃~約180℃の範囲内である。
ヒドロキシル化ポリプロピオラクトン鎖
【0114】
ある特定の態様では、ポリプロピオラクトン組成物を生成するための方法であって、ベータプロピオラクトンおよび水を合わせて、ポリプロピオラクトン組成物を生成することを含む、方法を提供する。一部の変形形態では、ポリプロピオラクトン組成物は、
(a)構造
【化45】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
(b)構造
【化46】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含むポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含み、
ヒドロアクリレート末端基は、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップする。
【0115】
別の態様では、ヒドロキシル末端基を伴わないポリプロピオラクトン鎖と比較して、高い割合(例えば、少なくとも約30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%)の、式(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含むPPL組成物を調製するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、水の存在下でBPLを重合させることを含む。
【化47】
【0116】
ある特定の実施形態では、水は、約1:5000の水:BPL~約1:10の水:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、水:BPLのモル比は、約1:5,000、1:2500、1:1000、1:500、1:200、1:100、1:20、1:10、またはこれらの比の任意の2つを含めた範囲である。
【0117】
ある特定の実施形態では、水を使用し、多くの、殆どのまたは実質的に全ての鎖末端上にヒドロキシル基を組み込むことにより、相対的に短い鎖長を有し、より低いPDIを有する組成の式(II)のポリプロピオラクトン鎖の生成を制御し、それによって、このようなヒドロキシル末端基を実質的に欠くPPLと比較して、PPL組成物の熱分解をより制御することができる。
【0118】
ある特定の実施形態では、方法は、連鎖移動剤(CTA)の存在下でBPLを重合させることを含み、連鎖移動剤は、式(IIIa)の化合物
【化48】
もしくはその塩、またはこれらの任意の2つもしくはそれ超の混合物であり、式中、pは、0~9である。ある特定の実施形態では、pは、0~5である。ある特定の実施形態では、pは0であり、すなわちヒドロアクリル酸である。ある特定の実施形態では、pは、1である。ある特定の実施形態では、pは、2である。ある特定の実施形態では、pは、3である。ある特定の実施形態では、pは、4である。ある特定の実施形態では、pは、5である。ある特定の実施形態では、pは、6である。ある特定の実施形態では、pは、7である。ある特定の実施形態では、pは、8である。ある特定の実施形態では、pは、9である。式(IIIa)の連鎖移動剤がオリゴマーである、ある特定の実施形態では、連鎖移動剤は、約200g/mol、約300g/mol、約400g/mol、約500g/mol、約600g/molもしくは約700g/molの数平均分子量を有するか、またはこれらの値の任意の2つによって定められた範囲内であることを特徴とする。
【0119】
ある特定の実施形態では、式(IIIa)の連鎖移動剤を使用し、多くの、殆どのまたは実質的に全ての鎖末端上にヒドロアクリレート末端基を組み込むことにより、相対的に
短い鎖長を有し、より低いPDIを有する組成の式(II)のポリプロピオラクトン鎖の生成を制御し、それによって、ヒドロアクリレート末端基を実質的に欠くPPLと比較して、PPL組成物の熱分解をより制御することができる。
【0120】
ある特定の実施形態では、連鎖移動剤は、ヒドロアクリル酸またはその塩である。方法のある特定の実施形態では、連鎖移動剤は、ヒドロアクリル酸二量体
【化49】
またはその塩である。方法のある特定の実施形態では、連鎖移動剤は、ヒドロアクリル酸(hydacrylic acid)三量体
【化50】
またはその塩である。
重合触媒
【0121】
ある特定の実施形態では、ベータプロピオラクトンは、重合触媒の存在下で連鎖移動剤と接触させられる。重合反応では、これらに限定されるものではないが、金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルトなど)、金属酸化物、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩(例えば炭酸塩、ホウ酸塩、水酸化物、アルコキシド、およびカルボン酸塩)、ならびに他の金属のホウ酸塩、ケイ酸塩、または塩を含む種々の触媒を使用することができる。ある特定の実施形態では、適切な触媒は、金属イオンのカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、適切な触媒は、有機カチオンのカルボン酸塩を含む。一部の実施形態では、カルボン酸塩は、炭酸塩以外である。一部の実施形態では、カルボン酸塩は、アクリル酸塩である。
【0122】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの重合は、重合触媒の存在下で行われる。ある特定の実施形態では、適切な重合触媒は、金属イオンまたは有機カチオンのカルボン酸塩を含む。
【0123】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、約1:100,000の重合触媒:BPL~約1:10の重合触媒:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、重合触媒:BPLのモル比は、約1:100,000、1:50,000、1:20,000、1:10,000、1:5,000、1:1,000、1:500、1:200、1:100またはこれらの比の任意の2つを含めた範囲である。
【0124】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの重合は、規定された比のBPL:連鎖移動剤:触媒の存在下で行われる。ある特定の実施形態では、用いられる比は、利用される触媒の量が、最小限に抑えられると同時に、なお所望のPPL分子量および末端基組成が達成されるように選択される。例えば、使用される触媒が、式(I)または(II)のポリマー鎖を形成しない開始剤基を含む場合、得られたPPL組成物における式(I)または(II)に従わないポリプロピオラクトン鎖の割合を最小限に抑えるために、CTA:触媒の比を
高く保つことが望ましい。さらに、BPLとCTAおよび触媒の合計とのモル比により、式(I)または(II)に記載のnの値が決定され、したがってこの比は、好ましくは、上記の、かつ本明細書のクラスおよびサブクラスにおいて記載されている分子量範囲を有するPPL組成物を得るために、約10:1~約1,000:1の範囲に維持される。
【0125】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの重合は、変換されたBPLの量が、用いられた触媒およびCTAの量(モル基準に基づく)の約10~約1,000倍となるような条件下で行われる。ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの重合は、BPL:(触媒+CTA)のモル比が、約1,000:1、約700:1、約500:1、約400:1、約300:1、約250:1、約200:1、約150:1、約100:1、約50:1、約20:1または約10:1となるような条件下で行われる。
【0126】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの重合は、ポリマーに変換されたBPLのモル量が、用いられた触媒のモル量の100~約100,000倍となり、用いられたCTAのモル量の約10倍~約1,000倍となるような条件下で行われる。ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの重合は、BPL:CTA:触媒のモル比が約100:10:1~約100,000:1,000:1の範囲となるような条件下で行われる。ある特定の実施形態では、BPL:CTA:触媒比は、約100:10:1、約200:10:1、約500:10:1または約1,000:10:1である。ある特定の実施形態では、BPL:CTA:触媒比は、約500:50:1、約1,000:50:1、約2,500:50:1、約5,000:50:1、または約10,000:50:1である。ある特定の実施形態では、BPL:CTA:触媒比は、約1,000:100:1、約2,000:100:1、約5,000:100:1、約10,000:100:1、約50,000:100:1、または約100,000:100:1である。ある特定の実施形態では、BPL:CTA:触媒比は、約2,000:200:1、約5,000:200:1、約10,000:200:1、約50,000:200:1、または約100,000:200:1である。ある特定の実施形態では、BPL:CTA:触媒比は、約5,000:500:1、約10,000:500:1、約25,000:500:1、約50,000:500:1、または約100,000:500:1である。ある特定の実施形態では、BPL:CTA:触媒比は、約10,000:1,000:1、約20,000:1,000:1、約50,000:1,000:1、または約100,000:1,000:1である。
【0127】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、約1:100,000までの重合触媒:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、この比は、約1:100,000~約25:100の重合触媒:BPLである。ある特定の実施形態では、重合触媒は、約1:50,000の重合触媒:BPL~約1:25,000の重合触媒:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、重合触媒は、約1:25,000の重合触媒:BPL~約1:10,000の重合触媒:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、重合触媒は、約1:20,000の重合触媒:BPL~約1:10,000の重合触媒:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、重合触媒は、約1:15,000の重合触媒:BPL~約1:5,000の重合触媒:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、重
合触媒は、約1:5,000の重合触媒:BPL~約1:1,000の重合触媒:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、重合触媒は、約1:2,000の重合触媒:BPL~約1:500の重合触媒:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、重合触媒は、約1:1,000の重合触媒:BPL~約1:200の重合触媒:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、重合触媒は、約1:500の重合触媒:BPL~約1:100の重合触媒:BPLのモル比でBPLと合わせられる。ある特定の実施形態では、重合触媒:BPLのモル比は、約1:50,000、1:25,000、1:15,000、1:10,000、1:5,000、1:1,000、1:500、1:250またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲である。ある特定の実施形態では、重合触媒:BPLのモル比は、約1:100、5:100、10:100、15:100、20:100、25:100またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲である。
【0128】
重合触媒がカルボン酸塩を含むある特定の実施形態では、カルボキシレートは、BPLの重合が開始すると、生成されたポリマー鎖がアクリレート鎖末端を有するような構造を有する。ある特定の実施形態では、重合触媒上のカルボン酸イオンは、重合プロセスにおいて使用される連鎖移動剤のアニオン形態である。1つの変形形態では、本明細書に記載されている方法において、アクリル酸およびアクリル酸ナトリウムが使用される。
【0129】
ある特定の実施形態では、重合触媒のカルボン酸塩は、式(III)の化合物
【化51】
のアクリル酸塩(すなわち、アニオン形態)またはこれらの任意の2つもしくはそれ超の混合物であり、式中、pは、0~9である。ある特定の実施形態では、pは、0~5である。ある特定の実施形態では、重合触媒のカルボン酸塩は、アクリル酸塩(すなわち、p=0である式(III)の化合物の)である。
【0130】
ある特定の実施形態では、重合触媒のカルボン酸塩は、アクリル酸二量体
【化52】
の塩である。ある特定の実施形態では、重合触媒のカルボン酸塩は、アクリル酸三量体
【化53】
の塩である。
【0131】
重合触媒がカルボン酸塩を含むある特定の実施形態では、カルボン酸イオンは、C1~40カルボン酸のアニオン形態である。ある特定の実施形態では、カルボン酸塩は、ポリカルボン酸(例えば、2個もしくはそれ超のカルボン酸基を有する化合物)の塩でよい。ある特定の実施形態では、カルボン酸イオンは、C1~20カルボン酸のアニオンを含む。ある特定の実施形態では、カルボン酸イオンは、C1~12カルボン酸のアニオンを含む。ある特定の実施形態では、カルボン酸イオンは、C1~8カルボン酸のアニオンを含
む。ある特定の実施形態では、カルボン酸イオンは、C1~4カルボン酸のアニオンを含む。ある特定の実施形態では、カルボン酸イオンは、任意選択で置換されている安息香酸のアニオンを含む。ある特定の実施形態では、カルボン酸イオンは、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、吉草酸イオン、酪酸イオン、C5~10脂肪族カルボン酸イオン、およびC10~20脂肪族カルボン酸イオンからなる群から選択される。
【0132】
述べたように、ある特定の実施形態では、重合触媒は、有機カチオンのカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、正の電荷が、窒素、硫黄、またはリン原子上に少なくとも部分的に位置している、カチオンのカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、窒素カチオンのカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、アンモニウム、アミジニウム、グアニジニウム、窒素複素環のカチオン形態、およびこれらの2つもしくはそれ超の任意の組合せからなる群から選択されるカチオンのカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、リンカチオンのカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、ホスホニウムおよびホスファゼニウムからなる群から選択されるカチオンのカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、硫黄含有カチオンのカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、スルホニウム塩を含む。
【0133】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、金属のカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、アルカリまたはアルカリ土類金属のカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、アルカリ金属のカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、ナトリウムまたはカリウムのカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、ナトリウムのカルボン酸塩を含む。
【0134】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、プロトン化アミン
【化54】
のカルボン酸塩を含み、式中、
各R
1およびR
2は、独立に、水素、あるいはC
1~20脂肪族;C
1~20ヘテロ脂肪族;3~8員飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7~14員飽和もしくは部分不飽和の多環式炭素環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~5個のヘテロ原子を有する8~14員多環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~3個のヘテロ原子を有する3~8員飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環式環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~5個のヘテロ原子を有する6~14員飽和もしくは部分不飽和の多環式複素環;フェニル;または8~14員多環式アリール環からなる群から選択される、任意選択で置換されているラジカルであり、R
1およびR
2は、介在する原子と一緒になって、1個もしくは複数のさらなるヘテロ原子を任意選択で含有する1個もしくは複数の任意選択で置換されている環を形成することができ、
各R
3は、独立に、水素、あるいはC
1~20脂肪族;C
1~20ヘテロ脂肪族;3~8員飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7~14員飽和もしくは部分不飽和の多環式炭素環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~5個のヘテロ原子を有する8~14員多環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~3個のヘテロ原子を有する3~8員飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環式環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~5個のヘテロ
原子を有する6~14員飽和もしくは部分不飽和の多環式複素環;フェニル;または8~14員多環式アリール環からなる群から選択される、任意選択で置換されているラジカルであり、R
3基は、R
1またはR
2基と一緒になって、1個もしくは複数の任意選択で置換されている環を形成することができる。
【0135】
重合触媒がプロトン化アミンのカルボン酸塩を含むある特定の実施形態では、このプロトン化アミンは、
【化55】
からなる群から選択される。
【0136】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、第四級アンモニウム塩
【化56】
のカルボン酸塩を含み、式中、
各R
1、R
2およびR
3は、上記に記載され、
各R
4は、独立に、水素、あるいはC
1~20脂肪族;C
1~20ヘテロ脂肪族;3~8員飽和もしくは部分不飽和の単環式炭素環;7~14員飽和もしくは部分不飽和の多環式炭素環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~5個のヘテロ原子を有する8~14員多環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~3個のヘテロ原子を有する3~8員飽和もしくは部分不飽和の単環式複素環式環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される1~5個のヘテロ原子を有する6~14員飽和もしくは部分不飽和の多環式複素環;フェニル;または8~14員多環式アリール環からなる群から選択される任意選択で置換されているラジカルで
あり、R
4基は、R
1、R
2またはR
3基と一緒になって、1個もしくは複数の任意選択で置換されている環を形成することができる。
【0137】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、グアニジニウム基
【化57】
のカルボン酸塩を含み、式中、各R
1およびR
2は、独立に、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。ある特定の実施形態では、各R
1およびR
2は、独立に、水素またはC
1~20脂肪族である。ある特定の実施形態では、各R
1およびR
2は、独立に、水素またはC
1~12脂肪族である。ある特定の実施形態では、各R
1およびR
2は、独立に、水素またはC
1~20ヘテロ脂肪族である。ある特定の実施形態では、各R
1およびR
2は、独立に、水素またはフェニルである。ある特定の実施形態では、各R
1およびR
2は、独立に、水素または8~10員アリールである。ある特定の実施形態では、各R
1およびR
2は、独立に、水素または5~10員ヘテロアリールである。ある特定の実施形態では、各R
1およびR
2は、独立に、水素または3~7員複素環である。ある特定の実施形態では、R
1およびR
2の1つもしくは複数は、任意選択で置換されているC
1~12脂肪族である。
【0138】
ある特定の実施形態では、任意の2個もしくはそれ超のR1またはR2基は、介在する原子と一緒になって、1個もしくは複数の任意選択で置換されている炭素環式、複素環式、アリール、またはヘテロアリール環を形成する。ある特定の実施形態では、R1およびR2基は、一緒になって、任意選択で置換されている5員または6員環を形成する。ある特定の実施形態では、3個もしくはそれ超のR1および/またはR2基は、一緒になって、任意選択で置換されている縮合環系を形成する。
【0139】
ある特定の実施形態では、R
1およびR
2基は、介在する原子と一緒になって、
【化58】
から選択される化合物を形成し、式中、各R
1およびR
2は、独立に、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りであり、環Gは、任意選択で置換されている5~7員の飽和もしくは部分不飽和の複素環式環である。
【0140】
グアニジニウムカチオンが、
【化59】
として示されるとき、全てのこのような共鳴形態は、本開示によって企図および包含されることを認識されたい。例えば、このような基はまた、
【化60】
として示すことができる。
【0141】
特定の実施形態では、グアニジニウムカチオンは、
【化61】
からなる群から選択される。
【0142】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、スルホニウム基またはアルソニウム基、例えば、
【化62】
のカルボン酸塩を含み、式中、R
1、R
2、およびR
3のそれぞれは、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。
【0143】
特定の実施形態では、アルソニウムカチオンは、
【化63】
からなる群から選択される。
【0144】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、任意選択で置換されている窒素含有複素環のカ
ルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、窒素含有複素環は、芳香族複素環である。ある特定の実施形態では、任意選択で置換されている窒素含有複素環は、ピリジン、イミダゾール、ピロリジン、ピラゾール、キノリン、チアゾール、ジチアゾール、オキサゾール、トリアゾール、ピラゾール(pyrazolem)、イソオキサゾール、イソチアゾール、テ
トラゾール、ピラジン、チアジン、およびトリアジンからなる群から選択される。
【0145】
ある特定の実施形態では、窒素含有複素環は、四級化された窒素原子を含む。ある特定の実施形態では、窒素含有複素環は、イミニウム部分、例えば、
【化64】
を含む。ある特定の実施形態では、任意選択で置換されている窒素含有複素環は、ピリジニウム、イミダゾリウム、ピロリジニウム、ピラゾリウム、キノリニウム、チアゾリウム、ジチアゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウム、イソオキサゾリウム、イソチアゾリウム、テトラゾリウム、ピラジニウム、チアジニウム、およびトリアジニウムからなる群から選択される。
【0146】
ある特定の実施形態では、窒素含有複素環は、環窒素原子を介して金属錯体に連結している。ある特定の実施形態では、それに対して結合がなされる環窒素は、それによって四級化されており、ある特定の実施形態では、金属錯体への連結は、N-H結合の代わりをし、それによって窒素原子は中性のままである。ある特定の実施形態では、任意選択で置換されているN-連結窒素含有複素環は、ピリジニウム誘導体である。ある特定の実施形態では、任意選択で置換されているN-連結窒素含有複素環は、イミダゾリウム誘導体である。ある特定の実施形態では、任意選択で置換されているN-連結窒素含有複素環は、チアゾリウム誘導体である。ある特定の実施形態では、任意選択で置換されているN-連結窒素含有複素環は、ピリジニウム誘導体である。
【0147】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、
【化65】
のカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、環Aは、任意選択で置換されている、5~10員ヘテロアリール基である。ある特定の実施形態では、環Aは、任意選択で置換されている、6員ヘテロアリール基である。ある特定の実施形態では、環Aは、縮合複素環の環である。ある特定の実施形態では、環Aは、任意選択で置換されているピリジル基である。
【0148】
特定の実施形態では、窒素含有複素環式カチオンは、
【化66】
からなる群から選択される。
【0149】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、
【化67】
のカルボン酸塩を含み、式中、各R
1、R
2、およびR
3は、独立に、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。
【0150】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、
【化68】
のカルボン酸塩を含み、式中、各R
1およびR
2は、独立に、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。
【0151】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、
【化69】
のカルボン酸塩を含み、式中、各R
1、R
2、およびR
3は、独立に、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。
【0152】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、
【化70】
のカルボン酸塩を含み、式中、R
1、R
2、R
6、およびR
7のそれぞれは、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。
【0153】
ある特定の実施形態では、R6およびR7は、それぞれ独立に、C1~20脂肪族;C1~20ヘテロ脂肪族;フェニル、および8~10員アリールからなる群から選択される任意選択で置換されている基である。ある特定の実施形態では、R6およびR7は、それぞれ独立に、任意選択で置換されているC1~20脂肪族である。ある特定の実施形態では、R6およびR7は、それぞれ独立に、任意選択で置換されているC1~20ヘテロ脂肪族である。ある特定の実施形態では、R6およびR7は、それぞれ独立に、任意選択で置換されているフェニルまたは8~10員アリールである。ある特定の実施形態では、R6およびR7は、それぞれ独立に、任意選択で置換されている5~10員ヘテロアリールである。ある特定の実施形態では、R6およびR7は、介在する原子と一緒になって、任意選択で置換されているC3~C14炭素環、任意選択で置換されているC3~C14複素環、任意選択で置換されているC6~C10アリール、および任意選択で置換されている5~10員ヘテロアリールからなる群から選択される1個もしくは複数の環を形成することができる。ある特定の実施形態では、R6およびR7は、それぞれ独立に、任意選択で置換されているC1~6脂肪族である。ある特定の実施形態では、R6およびR7は、出現する毎に独立に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、またはベンジルである。ある特定の実施形態では、R6およびR7は、出現する毎に独立に、ペルフルオロである。ある特定の実施形態では、R6およびR7は、出現する毎に独立に、-CF2CF3である。
【0154】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、
【化71】
のカルボン酸塩を含み、式中、各R
1およびR
2は、独立に、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。
【0155】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、
【化72】
のカルボン酸塩を含み、式中、各R
1、R
2、およびR
3は、独立に、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。
【0156】
ある特定の実施形態では、カチオンは、
【化73】
であり、式中、各R
1およびR
2は、独立に、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。
【0157】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、
【化74】
のカルボン酸塩を含み、式中、各R
1およびR
2は、独立に、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。
【0158】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、
【化75】
のカルボン酸塩を含み、式中、各R
1、R
2、およびR
3は、独立に、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。
【0159】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、
【化76】
のカルボン酸塩を含み、式中、各R
1およびR
2は、独立に、上記で定義され、かつ本明細書におけるクラスおよびサブクラスにおいて記載されている通りである。ある特定の実施形態では、適切な触媒は、遷移金属化合物を含む。ある特定の実施形態では、適切な触媒は、酸触媒を含む。ある特定の実施形態では、触媒は、不均一系触媒である。
【0160】
ある特定の実施形態では、上記のカチオン性官能基のいずれかは、固体担持体に結合している。適切な固体担持体の例は、ポリマー固体(例えば、ポリマーのビーズ、フィルム、繊維、布帛、粒子など)ならびに無機固体(例えば、粘土、シリカ、アルミナ、珪藻土、セラミック、金属酸化物、鉱物繊維ビーズまたは粒子など)を含む。このような担持されたカチオン性官能基の具体例は、アンモニウム基で官能化されたポリスチレン樹脂ビーズ、ホスホニウム基で官能化されたポリスチレン樹脂ビーズ、およびグアニジニウム基で官能化されたポリスチレン樹脂ビーズを含む。このような担持されたカチオン性官能基の具体例は、アンモニウム基で官能化されたシリカ粒子、ホスホニウム基で官能化されたアルミナ粒子、およびグアニジニウム基で官能化されたセラミックビーズを含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、上記の担持された固体カチオン性官能基のいずれかのカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、上記の担持された固体カチオン性官能基のいずれかのアクリル酸塩を含む。
【0161】
ある特定の実施形態では、重合触媒は、カチオン性固体を含み、カチオンは金属原子を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、上記の担持された固体カチオン性金属原子のいずれかのカルボン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、重合触媒は、上記の担持された固体カチオン性金属原子のいずれかのアクリル酸塩を含む。
式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含有するPPL組成物からアクリル酸を調製するための方法
【0162】
他の態様では、アクリル酸を生成するための方法であって、本明細書に記載のポリプロピオラクトン組成物のいずれかを加熱して、アクリル酸を生成することを含む、方法を提供する。例えば、一部の変形形態では、ポリプロピオラクトン組成物は、
(a)構造
【化77】
を有するアクリレート末端基、または構造
【化78】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
(b)構造
【化79】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含むポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含み、
アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基は、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップする。
【0163】
上記のある特定の変形形態では、(i)ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、約40,000g/molに等しいかもしくはそれ未満のMnを有するか、(ii)ポリプロピオラクトン組成物は、約2.0に等しいかもしくはそれ未満の多分散性を有するか、または(iii)ポリプロピオラクトン組成物中の少なくとも90重量%のポリプロピオラクトンポリマーもしくはその塩は、アクリレート末端基もしくはヒドロアクリレート末端基を有するか、または(i)~(iii)の任意の組合せである。このような方法から生成された、得られたアクリル酸は、高度な純度を有する。
【0164】
別の態様では、アクリル酸を生成するための方法であって、式(I)のポリプロピオラクトン鎖
【化80】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである)を含有するポリプロピオラクトン(PPL)組成物を加熱(例えば、熱分解)して、アクリル酸を遊離させることを含む、方法を提供する。
【0165】
別の態様では、アクリル酸を生成するための方法であって、式(II)のポリプロピオラクトン鎖
【化81】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである)を含有するPPL組成物を加熱して、アクリル酸を遊離させることを含む、方法を提供する。
【0166】
一部の実施形態では、PPL組成物は、アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を伴わないポリプロピオラクトン鎖と比較して、(例えば、少なくとも約30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%)の式(I)または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含む。
【0167】
熱分解時に、(I)のアクリレート末端基は、1モルのアクリル酸を遊離するように働き、(II)のヒドロキシル基は、1モルの水と1モルのアクリル酸を遊離するように働
く。したがって、式(II)のポリプロピオラクトン鎖は、高度に純粋な形態の水性または水含有アクリル酸(例えば、0.1%、1%、5%、10%、25%、50%、99%の水、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲の水を含むアクリル酸)の調製に特に適している。ある特定の実施形態では、これらの水性または水含有アクリル酸の形態は、別の方式で高度に純粋であり、このことは、これらが(5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満の不純物、またはこれらの値の任意の2つを含めた範囲の不純物)を有することを意味し、不純物は、本明細書に定義されているような、アルデヒド不純物、プロピレン酸化の生成物もしくは副生成物、および/または安定剤などを含む。
【0168】
ある特定の実施形態では、粗および/または精アクリル酸などのアクリル酸を調製するための方法は、本明細書に記載されている式(I)および/もしくは(II)のポリプロピオラクトン鎖のいずれか、またはそれらを含むPPL組成物の熱分解を含む。式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖のアクリレートおよびヒドロキシル末端基は、いずれかの末端基が、それぞれアクリル酸またはアクリル酸および水に効率的に変換するので、アクリル酸への熱分解を改善することが見出された。
【0169】
ある特定の実施形態では、式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含む組成物の生成(例えば、統合生成)のための方法であって
【化82】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである)、式(III)の化合物
【化83】
もしくはその塩、またはこれらの任意の2つもしくはそれ超の混合物(式中、pは0~9である)からなる群から選択される連鎖移動剤の存在下でベータプロピオラクトンを重合させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、組成物は、ポリプロピオラクトンをさらに含む。
【0170】
ある特定の実施形態では、ベータプロピオラクトンは、重合触媒の存在下で連鎖移動剤と接触させられる。ある特定の実施形態では、重合触媒は、
a)金属カチオンのアクリル酸塩、
b)有機カチオンのアクリル酸塩、
c)遷移金属化合物、
d)酸触媒、および
e)塩基触媒
からなる群から選択される。
【0171】
本明細書に記載されている重合触媒の任意の組合せを使用することもできる。
【0172】
ある特定の実施形態では、ベータプロピオラクトンは、50℃超の温度で連鎖移動剤と
接触させられる。ある特定の実施形態では、温度は、50℃~約250℃の範囲、または80℃~約200℃の範囲、80℃~約180℃の範囲、または100℃~約200℃の範囲、または120℃~約180℃の範囲、または140℃~約160℃の範囲内である。
【0173】
ある特定の実施形態では、形成されたポリプロピオラクトン組成物は、組成物中の少なくとも90%、95%、99%、99.5%、99.8%または99.9%のポリマー鎖が、アクリレート末端基を有することを特徴とする。
【0174】
ある特定の実施形態では、形成されたポリプロピオラクトン組成物は、組成物中の少なくとも90%、95%、99%、99.5%、99.8%または99.9%のポリマー鎖が、式(I)を有することを特徴とする。
【0175】
ある特定の実施形態では、nは、ポリプロピオラクトン組成物中、平均で、
10~50、または
50~100、または
100~150、または
150~250、または
250~350、または
350~500である。
【0176】
ある特定の実施形態では、ポリプロピオラクトン組成物は、2未満の多分散指数(PDI)を有することを特徴とする。
【0177】
ある特定の実施形態では、ポリプロピオラクトン組成物は、1.8未満、または1.6未満、または1.5未満、または1.3未満、または1.2未満、または1.1未満のPDIを有することを特徴とする。
【0178】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含有するPPL組成物の熱分解は、連続的に(例えば、供給バッチ反応器または他の連続流反応器型式で)行われる。ある特定の実施形態では、連続的な熱分解プロセスを、連続的なアクリル酸の重合プロセス(例えば、SAPまたは別のAA重合生成物を生成する重合プロセス)と連結させて、AA重合プロセスの消費速度と一致した速度でAAを得る。
【0179】
ある特定の実施形態では、この方法は、アクリル酸の重合プロセスへのアクリル酸供給物に安定剤を添加し、かつ/またはアクリル酸供給物から安定剤を除去する必要がないという利点を有する。したがって、ある特定の変形形態では、安定剤は使用されない。
式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖へのBPL変換
【0180】
提供された方法およびシステムに従って使用されるベータ-ラクトン供給原料ストリームは、いくつかの公知のBPL源の任意の1つまたは複数から提供され得る。BPLを作製する方法は、当技術分野で公知であり、US6,852,865、US8,445,703、US8,796,475、WO2004089923およびWO2013126375に記載されているものを含む。一部の実施形態では、BPLを含む供給原料ストリームは、気体または液体として本明細書に記載されている反応ゾーンに入る。式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの変換は、気相または液相中のいずれかで行うことができ、未希釈で、またはキャリアガス、溶媒もしくは他の希釈剤の存在下で行うことができる。一部の実施形態では、BPL供給原
料ストリームは、未希釈である。
【0181】
ある特定の実施形態では、方法およびシステムは、エチレンオキシドの形成に直接的に統合して、したがってこの毒性かつ潜在的に爆発性の中間体の単離および貯蔵を回避することもできることを認識されたい。ある特定の実施形態では、プロセスでは、エチレンガスが供給され、このエチレンガスはエチレンオキシドに変換され、次いでエチレンオキシドは第2の反応に供給され、そこでカルボニル化が起こり、BPLを含む供給原料ストリームが生じる。
【0182】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの変換は、連続流型式で行われる。ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの変換は、気相中、連続流型式で行われる。ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの変換は、液相中、連続流型式で行われる。ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの変換は、液相中、バッチまたは半バッチ型式で行われる。式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの変換は、種々の条件下で行われ得る。ある特定の実施形態では、反応は、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの転換を促進する1種または複数のアクリレート触媒の存在下で行われ得る。
【0183】
ある特定の実施形態では、BPLを含む供給原料ストリームは、反応ゾーンにおいて反応ストリームに方向付けられ、そこで適切なアクリレート触媒と接触させられ、BPLの少なくとも一部は、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩に変換される。一部の実施形態では、反応ゾーンは、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩の形成に適した温度に維持される。一部の実施形態では、このような温度維持は、反応ゾーンからの熱の除去を含む。
【0184】
一部の実施形態では、BPLを含む供給原料ストリームは、第1の反応ゾーンにおいて反応ストリームに方向付けられ、そこで適切なアクリレート触媒と接触させられ、BPLの少なくとも一部は、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含有する生成物ストリームに変換される。一部の実施形態では、第1の反応ゾーンは、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩の形成に適した温度に維持される。一部の実施形態では、このような温度維持は、第1の反応ゾーンからの熱の除去を含む。
【0185】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクト
ンポリマーまたはその塩へのBPLの変換は、固体アクリレート触媒を利用し、その変換は、少なくとも部分的に気相中で行われる。ある特定の実施形態では、ベータラクトンの変換段階における固体アクリレート触媒は、固体アクリル酸触媒を含む。ある特定の実施形態では、BPLは、液体として導入され、固体アクリレート触媒と接触させられると、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を形成し、そのポリプロピオラクトン鎖はアクリル酸に熱分解され、アクリル酸は気体ストリームとして除去される。他の実施形態では、BPLは、気体として導入され、固体アクリレート触媒と接触させられると、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を形成し、そのポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩はアクリル酸に熱分解され、このアクリル酸は気体ストリームとして除去される。
【0186】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されているプロセスは、プロセスにおけるその後の各段階で、前の段階からの流出物の本質的に全てを利用できるように、供給速度、反応速度、および反応器サイズがスケール変更されることを特徴とする。ある特定の実施形態では、方法は、ラクトン変換段階の温度および/または圧力、熱分解段階の温度および/または圧力、ならびにこれらのパラメーターのうちの任意の2つまたはそれ超の組合せからなる群から選択される1つまたは複数のシステムパラメーターをモジュレートする1つまたは複数のステップを含む。ある特定の実施形態では、このシステムパラメーターのモジュレーションは、各段階の単位時間当たりの変換率が前の段階の変換率と一致し、したがって前の段階の流出物を直接使用して、その後の段階に供給できるように行われる。ある特定の実施形態では、方法は、1つまたは複数の段階からの流出物を分析してその含量を評価する、1つまたは複数のステップを含む。ある特定の実施形態では、このような分析ステップは、分光法(例えば、赤外分光法、核磁気共鳴分光法、紫外または可視光線分光法など)、クロマトグラフィー(例えば、ガスまたは液体クロマトグラフィー)を行うことを含む。ある特定の実施形態では、このような分析は、流出物の化学組成のリアルタイムデータを提供するフロースルーまたはストップフローモードで行われる。ある特定の実施形態では、このようなデータは、上記のシステムパラメーターのうちの1つまたは複数を調整するプロンプトを提供するために使用される。
式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖の熱分解
【0187】
一態様では、BPLは、式(I)および/または(II)の鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含有する中間体PPL組成物の単離を伴わずに、GAAに変換される。一部の実施形態では、連鎖移動試薬の存在下でのBPLの重合によって形成された式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩は、同じ反応ゾーンにおいて熱分解によってアクリル酸(例えば、GAA)に同時に変換される(例えば、「ワンポット」方法)。一部の実施形態では、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩へのBPLの反応を支援する反応ゾーンは、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩の熱による分解によってアクリル酸が生成されるように、そのポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩の熱分解温度またはそれ超の温度に維持される。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、このような実施形態では、BPLがアクリル酸と反応してポリマー鎖が開始すると、熱による分解によって、ポリマーはアクリル酸に分解し得ると考えられる。
【0188】
ある特定の実施形態では、式(I)および/または(II)の鎖を含むアクリレート末
端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含有するPPL組成物の生成物ストリームは、第1の反応ゾーンにおいて形成され、次いで第2の反応ゾーンに方向付けられ、第2の反応ゾーンは、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩の熱による分解によってアクリル酸が生成されるように、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩の熱分解温度またはそれ超の温度に維持される。一部の実施形態では、第1の反応ゾーンの温度は、第2の反応ゾーンの温度とは異なる。一部の実施形態では、第1の反応ゾーンの温度は、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩の熱分解温度未満である。このような実施形態は、「2ステップによる」方法として説明することもでき、ここでBPLの少なくとも一部は、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩に変換された後、熱分解温度またはそれ超に維持された反応ゾーンに入る。一部の実施形態では、第2の反応ゾーンに入るPPL組成物は、ある量の未反応BPLを含有する。換言すれば、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩の形成は、PPL組成物が第2の反応ゾーンに入る前に完了する必要はない。このような場合、BPLは、第2の反応ゾーン内で、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩に重合された後、熱分解され得る。
【0189】
「第1の反応ゾーン」および「第2の反応ゾーン」など、または「第1の反応器」または「第2の反応器」などへの言及は、反応ゾーンまたは反応器の順序を必ずしも暗示しないことを一般に理解すべきである。一部の変形形態では、このように言及することは、存在する反応ゾーンまたは反応器の数を示す。他の変形形態では、順序は、反応ゾーンまたは反応器が構成され、または使用される状況によって暗示され得る。
高吸収性ポリマーおよび物品
【0190】
また別の態様では、本明細書に記載の通り、式(I)および/または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩に由来するアクリル酸に少なくとも部分的に由来するポリアクリル酸を含む、高吸収性ポリマーを提供する。
【0191】
ある特定の実施形態では、式(I)のポリプロピオラクトン鎖
【化84】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンである)の熱分解から形成されたアクリル酸に由来するポリアクリル酸を含む高吸収性ポリマーであって、約1000百万分率未満の残留するモノエチレン性不飽和モノマーを含み、アルデヒド不純物またはプロピレンの酸化に由来する化合物を実質的に非含有である高吸収性ポリマーを提供する。
【0192】
SAPのモノマーGAA前駆体は、典型的にSAP、またはSAPから作製した製品、
例えば、おむつにおける残留する未反応モノマーの存在を防止または最小化するために、完了するまでまたは殆ど完了するまで反応する必要がある。本明細書に記載されている式(I)または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩から作製した、開示されているアクリル酸およびポリアクリル酸は、プロピレンの酸化に由来する化合物および/またはアルデヒド不純物を実質的に非含有である。したがって、開示されているアクリル酸は、より十分に反応して、SAP中に組み込むのに適した、最小の残留する未反応アクリル酸を有するか、または残留する未反応アクリル酸を実質的に有さない、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムおよび他のコポリマーを生成する。
【0193】
高吸収性ポリマーは、一般に、ラジカル開始剤(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、AIBN)の存在下で水酸化ナトリウムとブレンドしたアクリル酸の重合から作製されて、ポリアクリル酸ナトリウム塩(ポリアクリル酸ナトリウムと称されることがある)を形成する。このポリマーは、現在、SAPの最も一般的なタイプの中にある。他の材料をまた使用して、高吸収性ポリマー、例えばとりわけポリアクリルアミドコポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、架橋カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールコポリマー、架橋ポリエチレンオキシド、およびポリアクリロニトリルのデンプングラフトコポリマーを作製する。高吸収性ポリマーは一般に、3つの方法:ゲル重合、懸濁重合または溶液重合のうちの1つを使用して作製される。
【0194】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されている式(I)または(II)のポリプロピオラクトン鎖を含むアクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩に由来する、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびアクリル酸から調製された高吸収性ポリマーは、約1000百万分率未満、500百万分率未満、200百万分率未満、100百万分率未満、50百万分率未満または10百万分率未満の、例えば不飽和アクリル酸モノマーに由来し得る残留するモノエチレン性不飽和モノマーを有する。ある特定の実施形態では、高吸収性ポリマーは、プロピレンの酸化に由来する化合物を実質的に非含有である。ある特定の実施形態では、高吸収性ポリマーは、約1000百万分率未満、500百万分率未満、200百万分率未満、100百万分率未満、50百万分率未満または10百万分率未満の、プロピレンの酸化に由来する化合物を含む。ある特定の実施形態では、高吸収性ポリマーは、アルデヒド不純物を実質的に非含有である。ある特定の実施形態では、高吸収性ポリマーは、約1000百万分率未満、500百万分率未満、200百万分率未満、100百万分率未満、50百万分率未満または10百万分率未満のアルデヒド不純物を含む。
【0195】
別の態様では、本明細書に開示されている高吸収性ポリマーのいずれかを含む物品を提供する。ある特定の実施形態では、物品は、使い捨ておむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁下着または生理用ナプキンである。ある特定の実施形態では、物品は、使い捨ておむつである。
実施形態の列挙
【0196】
以下の列挙された実施形態は、本発明の一部の態様の代表的なものである。
1.式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含むポリプロピオラクトン組成物の生成のための方法であって
【化85】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである)、
式(III)の連鎖移動剤
【化86】
もしくはその塩、またはこれらの任意の2つまたはそれ超の混合物(式中、pは、0~9である)の存在下でベータプロピオラクトンを重合させるステップを含む、方法。
2.ベータプロピオラクトンが、重合触媒の存在下で連鎖移動剤と接触させられる、実施形態1の方法。
3.重合触媒が、
a)金属カチオンのアクリル酸塩、
b)有機カチオンのアクリル酸塩、
c)遷移金属化合物、
d)酸触媒、および
e)塩基触媒
からなる群から選択される、実施形態2の方法。
4.ベータプロピオラクトンが、50℃超の温度で連鎖移動剤と接触させられる、実施形態1の方法。
5.温度が、50℃~約250℃の範囲内である、実施形態4の方法。
6.組成物中の少なくとも90%のポリマー鎖が、アクリレート末端基を有する、実施形態1の方法。
7.組成物中の少なくとも90%のポリマー鎖が、式(I)のポリプロピオラクトン鎖である、実施形態1の方法。
8.組成物が、2未満の多分散指数(PDI)を有する、実施形態1の方法。
9.アクリル酸の生成のための方法であって、式(I)のポリプロピオラクトン鎖を加熱することを含む、方法
【化87】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである)。
10.式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含むポリプロピオラクトン組成物であって
【化88】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである)、
組成物中の少なくとも90%のポリマー鎖が、式(I)を有する、ポリプロピオラクトン組成物。
11.組成物が、2未満の多分散指数(PDI)を有する、実施形態10の組成物。
12.式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含む反応ストリームであって
【化89】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである)、
反応ストリームが、少なくとも約500kg/時間の割合でアクリル酸を生成する、反応ストリーム。
13.式(I)のポリプロピオラクトン鎖
【化90】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、Yは、-Hまたはカチオンのいずれかである)の熱分解から形成されたアクリル酸に由来するポリアクリル酸を含む高吸収性ポリマーであって、高吸収性ポリマーが、約1000百万分率未満の残留するモノエチレン性不飽和モノマーを含み、アルデヒド不純物またはプロピレンの酸化に由来する化合物を実質的に非含有である、高吸収性ポリマー。
14.実施形態13の高吸収性ポリマーを含む、物品。
15.使い捨ておむつである、実施形態14の物品。
16.ポリプロピオラクトン組成物を生成するための方法であって、ベータプロピオラクトンおよび式(III)の少なくとも1つの化合物またはその塩を合わせて、ポリプロピオラクトン組成物を生成することを含み、
式(III)の少なくとも1つの化合物が、構造
【化91】
(式中、各pは、独立に、0~9の整数である)を独立に有し、
ポリプロピオラクトン組成物が、
(a)構造
【化92】
を有するアクリレート末端基、および
(b)構造
【化93】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含むポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含み、
アクリレート末端基が、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップし、
(1)ポリプロピオラクトン組成物が、約40,000g/molに等しいかもしくはそれ未満のM
nを有するか、または
(2)ポリプロピオラクトン組成物が、約2.0に等しいかもしくはそれ未満の多分散性を有するか、または
(3)ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%が、アクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーもしくはその塩を含むか、または
(1)~(3)の任意の組合せ
である、方法。
17.ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩が、式(I)の構造
【化94】
(式中、
nは、10~1,000の整数であり、
Yは、-Hまたはカチオンである)
を独立に有する、実施形態16の方法。
18.ベータプロピオラクトンおよび式(III)の少なくとも1つの化合物またはその塩が、重合触媒とさらに合わせられる、実施形態16または17の方法。
19.重合触媒が、
a)金属カチオンのアクリル酸塩、
b)有機カチオンのアクリル酸塩、
c)遷移金属化合物、
d)酸触媒、および
e)塩基触媒、
またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される、実施形態18の方法。
20.ベータプロピオラクトンが、50℃超の温度で式(III)の少なくとも1つの化合物またはその塩と合わせられる、実施形態16~19のいずれか1つの方法。
21.温度が、140℃~200℃の範囲内である、実施形態20の方法。
22.ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2重量%、少なくとも99.3重量%、少なくとも99.4重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%が、アクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む、実施形態16~21のいずれか1つの方法。
23.ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2重量%、少なくとも99.3重量%、少なくとも99.4重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%が、式(I)の構造を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む、実施形態17~22のいずれか1つの方法。
24.ポリプロピオラクトン組成物が、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満もしくは1未満、または1~2、1~1.9、1~1.8、1~1.7、1~1.6もしくは1~1.5の多分散指数(PDI)を有する、実施形態16~23のいずれか1つの方法。
25.ポリプロピオラクトン組成物が、35,000g/mol未満、30,000g/mol未満、35,000g/mol未満、30,000g/mol未満、25,000g/mol未満、20,000g/mol未満、15,000g/mol未満、10,000g/mol未満、5,000g/mol未満、4,000g/mol未満、3,000g/mol未満、2,000g/mol未満もしくは1,000g/mol未満、または1,000g/mol~35,000g/mol、1,000g/mol~30,000g/mol、1,000g/mol~25,000g/mol、1,000g/mol~20,000g/mol、1,000g/mol~15,000g/molもしくは1,000g/mol~10,000g/molのM
nを有する、実施形態16~24のいずれか1つの方法。
26.pが、0である、実施形態16~25のいずれか1つの方法。
27.式(III)の少なくとも1つの化合物の塩またはその塩が、ベータプロピオラクトンと合わせられる、実施形態16~26のいずれか1つの方法。
28.式(III)の少なくとも1つの化合物またはその塩が、
【化95】
またはこれらの組合せ(式中、A
+は、第I族カチオンまたは第II族カチオンである)である、実施形態16~27のいずれか1つの方法。
29.A
+が、Na
+またはK
+である、実施形態28の方法。
30.式(III)の少なくとも1つの化合物またはその塩が、
【化96】
またはこれらの組合せである、実施形態28の方法。
31.アクリル酸を生成するための方法であって、ポリプロピオラクトン組成物を加熱してアクリル酸を生成することを含み、
ポリプロピオラクトン組成物が、
(a)構造
【化97】
を有するアクリレート末端基、または構造
【化98】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
(b)構造
【化99】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含むポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含み、
アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基が、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップし、
(1)ポリプロピオラクトン組成物が、約40,000g/molに等しいかもしくはそれ未満のM
nを有するか、または
(2)ポリプロピオラクトン組成物が、約2.0に等しいかもしくはそれ未満のPDIを有するか、または
(3)ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%が、アクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーもしくはその塩を含むか、または
(1)~(3)の任意の組合せ
である、方法。
32.アクリル酸が、少なくとも約500kg/時間の割合で生成される、実施形態31の方法。
33.ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2重量%、少なくとも99.3重量%、少なくとも99.4重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%が、アクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む、実施形態31または32の方法。
34.ポリプロピオラクトン組成物が、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満もしくは1未満、または1~2、1~1.9、1~1.8、1~1.7、1~1.6もしくは1~1.5の多分散指数(PDI)を有する、実施形態31~33のいずれか1つの方法。
35.ポリプロピオラクトン組成物が、35,000g/mol未満、30,000g/mol未満、35,000g/mol未満、30,000g/mol未満、25,000g/mol未満、20,000g/mol未満、15,000g/mol未満、10,000g/mol未満、5,000g/mol未満、4,000g/mol未満、3,000g/mol未満、2,000g/mol未満もしくは1,000g/mol未満、または1,000g/mol~35,000g/mol、1,000g/mol~30,000g/mol、1,000g/mol~25,000g/mol、1,000g/mol~20,000g/mol、1,000g/mol~15,000g/molもしくは1,000g/mol~10,000g/molのM
nを有する、実施形態31~34のいずれか1つの方法。
36.(a)構造
【化100】
を有するアクリレート末端基、または構造
【化101】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
(b)構造
【化102】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含むポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む、ポリプロピオラクトン組成物であって、
アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基が、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップし、
(1)ポリプロピオラクトン組成物が、約40,000g/molに等しいかもしくはそれ未満のM
nを有するか、または
(2)ポリプロピオラクトン組成物が、約2.0に等しいかもしくはそれ未満のPDIを有するか、または
(3)ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%が、アクリレート末端基もしくはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーもしくはその塩を含むか、または
(1)~(3)の任意の組合せ
である、ポリプロピオラクトン組成物。
37.ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2重量%、少なくとも99.3重量%、少なくとも99.4重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%が、アクリレート末端基またはヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む、実施形態36のポリプロピオラクトン組成物。
38.ポリプロピオラクトン組成物が、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満もしくは1未満、または1~2、1~1.9、1~1.8、1~1.7、1~1.6もしくは1~1.5の多分散指数(PDI)を有する、実施形態36または37のポリプロピオラクトン組成物。39.ポリプロピオラクトン組成物が、35,000g/mol未満、30,000g/mol未満、35,000g/mol未満、30,000g/mol未満、25,000g/mol未満、20,000g/mol未満、15,000g/mol未満、10,000g/mol未満、5,000g/mol未満、4,000g/mol未満、3,000g/mol未満、2,000g/mol未満もしくは1,000g/mol未満、または1,000g/mol~35,000g/mol、1,000g/mol~30,000g/mol、1,000g/mol~25,000g/mol、1,000g/mol~20,000g/mol、1,000g/mol~15,000g/molもしくは1,000g/mol~10,000g/molのM
nを有する、実施形態36~38のいずれか1つのポリプロピオラクトン組成物。
40.ポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩が、式(I)または(II)の構造
【化103】
(式中、
nは、10~1,000の整数であり、
Yは、-Hまたはカチオンである)
を独立に有する、実施形態36~39のいずれか1つのポリプロピオラクトン組成物。
41.ポリプロピオラクトン組成物を生成するための方法であって、ベータプロピオラクトンおよび水を合わせて、ポリプロピオラクトン組成物を生成することを含み、
ポリプロピオラクトン組成物が、
(a)構造
【化104】
を有するヒドロアクリレート末端基、および
(b)構造
【化105】
を有する繰り返し単位を含むポリマー鎖
を独立に含むポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含み、
ヒドロアクリレート末端基が、ポリマー鎖のアルキル末端をキャップし、
(1)ポリプロピオラクトン組成物が、約40,000g/molに等しいかもしくはそれ未満のMnを有するか、または
(2)ポリプロピオラクトン組成物が、約2.0に等しいかもしくはそれ未満のPDIを有するか、または
(3)ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%が、ヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーもしくはその塩を含むか、または
(1)~(3)の任意の組合せ
である、方法。
42.ポリプロピオラクトン組成物の少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2重量%、少なくとも99.3重量%、少なくとも99.4重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%が、ヒドロアクリレート末端基を有するポリプロピオラクトンポリマーまたはその塩を含む、実施形態41の方法。
43.ポリプロピオラクトン組成物が、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満もしくは1未満、または1~2、1~1.9、1~1.8、1~1.7、1~1.6もしくは1~1.5の多分散指数(PDI)を有する、実施形態41または42の方法。
44.ポリプロピオラクトン組成物が、35,000g/mol未満、30,000g/mol未満、35,000g/mol未満、30,000g/mol未満、25,000g/mol未満、20,000g/mol未満、15,000g/mol未満、10,000g/mol未満、5,000g/mol未満、4,000g/mol未満、3,000g/mol未満、2,000g/mol未満もしくは1,000g/mol未満、または1,000g/mol~35,000g/mol、1,000g/mol~30,000g/mol、1,000g/mol~25,000g/mol、1,000g/mol~20,000g/mol、1,000g/mol~15,000g/molもしくは1,000g/mol~10,000g/molのM
nを有する、実施形態41~43のいずれか1つの方法。
45.高吸収性ポリマーを生成する方法であって、
実施形態36~40のいずれか1つのポリプロピオラクトン組成物、または実施形態16~30および41~44のいずれか1つの方法に従って調製されたポリプロピオラクトン組成物を熱分解して、アクリル酸を生成すること;および
水酸化ナトリウムとブレンドしたアクリル酸を、ラジカル開始剤の存在下で重合させて、高吸収性ポリマーを生成すること
を含む、方法。
46.実施形態45の方法に従って生成された、高吸収性ポリマー。
47.式(I)のポリプロピオラクトン鎖を含む反応ストリームであって
【化106】
(式中、
nは、10~約1,000の整数であり、
Yは、-Hまたはカチオンである)、
反応ストリームが、少なくとも約500kg/時間の割合でアクリル酸を生成する、反応ストリーム。
48.式(I)のポリプロピオラクトン鎖
【化107】
(式中、nは、10~約1,000の整数であり、
Yは、-Hまたはカチオンである)の熱分解から形成されたアクリル酸に由来するポリアクリル酸を含む高吸収性ポリマーであって、高吸収性ポリマーが、約1000百万分率未満の残留するモノエチレン性不飽和モノマーを含み、アルデヒド不純物またはプロピレンの酸化に由来する化合物を実質的に非含有である、高吸収性ポリマー。
49.100ppm未満のアルデヒド不純物またはプロピレンの酸化に由来する化合物が、高吸収性ポリマー中に存在する、実施形態48の高吸収性ポリマー。
50.10,000ppm未満のアルデヒド不純物またはプロピレンの酸化に由来する化合物が、高吸収性ポリマー中に存在する、実施形態48の高吸収性ポリマー。
51.10ppm未満のアルデヒド不純物である、実施形態48の高吸収性ポリマー。
52.実施形態46、48~41のいずれか1つの高吸収性ポリマーを含む、物品。
53.使い捨ておむつである、実施形態52の物品。
【0197】
上記は本発明の特定の非限定的な実施形態の説明である。したがって、本明細書において記載した本発明の実施形態は、本発明の原理の適用の単に例示であることを理解すべきである。本明細書において例示した実施形態の詳細への言及は、特許請求の範囲を限定することを意図せず、特許請求の範囲自体が、本発明に不可欠であると見なされるフィーチャを説明する。
【実施例】
【0198】
以下の実施例は、単に例示的なものであり、いかなる方式でも本開示のいずれの態様も限定することを意味しない。
(実施例1)式(I)のポリプロピオラクトン鎖を形成するためのEOのカルボニル化およびBPLの重合。
【0199】
ステップ1.乾燥窒素下、300mLのParr高圧反応器に、カルボニル化触媒1([(TPP)Al(THF)
2][Co(CO)
4]、286mg、0.3mmol)および乾燥脱酸素THF85mLを充填する。
【化108】
【0200】
反応器を45℃に加熱し、500rpmでかき混ぜ、COを用いて150psiまで加圧する。反応器の温度が安定した後、EO(306mmol)13.5gを、600psiのCO下で注入する。反応混合物を、EO注入後210分間、600psiに維持し、次いでCO圧力を周囲圧力にゆっくり緩和し、BPLを次のステップに持ち越す。
【0201】
ステップ2.重合触媒2の溶液を、窒素下で反応器(PPNTFA、1.98g、塩化メチレン5mL中3.0mmol)に添加する。
【化109】
【0202】
アクリル酸連鎖移動剤を、窒素下で反応器に添加する。混合物を、反応器内で45℃で16時間撹拌する。重合を、MeOH中1%HCl33mLの添加によってクエンチする。次いで、MeOH250mLを添加して、式(I)のポリマーを沈殿させる。反応器を空にし、CHCl320mLで洗浄する。収集した反応混合物および洗浄液を合わせ、濾過して、白色固体を得る。固体を、MeOH100mLで洗浄し、CHCl340mLに溶解させ、MeOH300mL中で再沈殿させる。沈殿物を濾過し、MeOH200mLで洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で16時間乾燥させて、式(I)のポリプロピオラクトン鎖を提供する。
(実施例2)式(I)のポリプロピオラクトン鎖の熱分解
【0203】
50mLの丸底フラスコにおいて、砂10g、実施例1の式(I)のポリプロピオラクトン鎖2.0g、およびMEHQ(ヒドロキノンモノメチルエーテル)8.6mgを合わせ、混合物を磁気撹拌子で撹拌する。システム全体を真空下に設定し、圧力が500mTorrに達したら閉鎖する。次いで、ポリマーを含むフラスコを、加熱マントルに入れ、210℃に加熱すると同時に、受入れ用フラスコを、ドライアイス/アセトン浴に浸漬する。アクリル酸を、加熱したフラスコにおいてポリマーから遊離させ、受入れ用フラスコに真空移動させる。受入れ用フラスコにおいて液体がさらに凝縮しなくなったら、加熱を停止する。熱分解の最後に、受入れ用フラスコから透明な液体を回収する。アクリル酸は、アルデヒド不純物またはプロピレンの酸化に由来する化合物を実質的に非含有である。
(実施例3)アクリル酸のパイロット規模での生成。
【0204】
シェールガスプレイ(shale gas play)に近い第1の反応器に、シェールガス由来のC2生成物ストリームに由来する75kg/時間のエチレンオキシドを供給する。第1の反応器は、反応器容積中1.5M濃度のベータプロピオラクトンが存在する定常状態条件で操作される。さらに、15mol/時間の触媒1[(TPP)Al(THF)2][Co(CO)4]を含有する4850L/時間の溶媒を反応器に供給する。反応器を、600psigの圧力の一酸化炭素に維持し、供給物および溶媒が、少なくとも2.5時間の滞留時間を有するようなサイズ(例えば、容積少なくとも15,000L)にする。これらの条件下で、約1740モル/時間のベータ-プロピオラクトンを含有する反応ストリームを生成する(125kg/時間)。
【0205】
ベータ-ラクトンストリームを、分離ユニットに方向付け、その分離ユニットは、そのストリームを、溶媒および触媒を含有する触媒リサイクルストリームと、ベータプロピオラクトンおよび溶媒を含むベータプロピオラクトンストリームに分離する。触媒リサイクルストリームは、第1の反応器に戻され、ベータプロピオラクトンストリームは、第2の反応器に供給され、そこでPPN-アクリレート(触媒2a)と接触させられる。
【化110】
【0206】
アクリル酸連鎖移動剤を、窒素下で添加する。第2の反応器は、反応物が少なくとも30分間の滞留時間を有するようなサイズ(例えば、容積1250L)の栓流反応器であり、ラクトンの全てが滞留時間中に消費されるような温度および触媒負荷に維持される。第2の反応器は、概ね1740モル/時間の式(I)のポリプロピオラクトン鎖を生成する(123kg/時間)。栓流反応器の流出物を、塩酸およびメタノールで処理して、ポリマーを沈殿させる。沈殿したポリマーを、ペレット化し、流動床反応器につないだホッパーに供給する。流動床反応器を、乾燥窒素を用いて150℃でスイープし、1時間当たり式(I)のポリプロピオラクトン鎖ペレット500kgの割合でホッパーから供給する。流動床からの窒素スイープを、凝縮器段階に方向付け、その凝縮器段階は、概ね480kg/時間の割合で液体の精アクリル酸ストリームを生成する。
(実施例4)連鎖移動剤の添加を伴わない、未希釈BPLのバッチ重合。
【0207】
重合を、ジャケット加熱器および積分in-situ IR分光計(ReactIR)を取り付けたParr圧力反応器において行った。重合触媒を、グローブボックス内で、窒素雰囲気下で反応器に充填して、酸素および湿気による汚染を回避した。この反応では、触媒がこの重合の開始剤として機能することを理解すべきである。次いで、反応器を密封し、グローブボックスから取り出し、ある温度(80~100℃)に加熱し、その時点で、未希釈のbPLを、激しく混合しながら1回のアリコートで添加した。初期発熱の後、重合が完了するまで、反応器を加熱して140℃の温度を維持した。重合の結果を、以下の表1に示す。
【表1】
TBAAcr=アクリル酸テトラブチルアンモニウム
NaAcr=アクリル酸ナトリウム
TBAAc=酢酸テトラブチルアンモニウム
PPNAcr=アクリル酸ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウム
(実施例5)アクリル酸(AA)による連鎖移動を用いる未希釈のBPLのバッチ重合。
【0208】
BPL重合を、アクリル酸を連鎖移動剤として重合混合物に添加したことを除き、先の実施例に従って、Parr圧力反応器内でアクリル酸テトラブチルアンモニウム触媒を使用して行った。結果は、以下の表2にまとめられ、連鎖移動剤と触媒の比を8:1~478:1で変えた実験を含む。アクリル酸の比が増大すると、より低い分子量のPPL組成物が生じた。各場合、NMR分析は、組成物中のPPL鎖の本質的に全てが、アクリレート末端基を有することを示す。
【表2】
(実施例6)BPLのTHF溶液の連続重合
【0209】
以下の実施例は、連続的な栓流反応器におけるベータプロピオラクトンからのポリ(プロピオラクトン)の生成を実証する。
a)実験1、アセテート触媒を用いるBPL重合
【0210】
0.100M触媒溶液500mLを、窒素グローブボックスにおいて、酢酸テトラブチルアンモニウム(TBA OAc、Aldrich、90℃において真空下で乾燥させた)15.08gをTHF(活性な3Åのモレキュラーシーブ上で乾燥させた)に溶解させることによって調製した。
【0211】
エチレンオキシドの連続的な触媒作用によるカルボニル化およびナノ濾過によって、THF中24.7重量%のベータプロピオラクトン溶液(透過液)を得た。
【0212】
透過液および触媒溶液を、入口圧力変換器、および熱電対を備えて構成された出口、in situ IRプローブ、ならびに背圧レギュレーターを備える1/2インチ×24.75インチのジャケット付き静的ミキサーからなる80℃の栓流反応器に供給した。透過液および触媒溶液を、それぞれ1.00および0.100mL/分の割合で反応器に供給して、340:1のBPL:触媒比および23分間の反応器滞留時間を提供した。反応器を100psigおよび80℃に維持して70分後に、in situプローブからのIRスペクトルは、>99%の変換を示したので、生成物を、メタノール500mLを含む収集ボトルに収集した。生成物を、この方式で198分間蓄積させ、次いで反応器を、ジオキサンにより1.00mL/分ですすいで、第2の収集容器にさらに218分間入れておいた。沈殿物を、濾過によってボトルから収集し、終夜風乾させて、PPL52.7gをくすんだ白色の粉末として得た(SEC:Mn=9610、Mw=16,700;PDI=1.7;1HNMR(CDCl3):δ4.34、t、2H、δ2.64、t、2H、δ6.39、dd、0.0066H、δ6.09、dd、0.0066H、δ5.82、dd、0.0066H、δ2.03、s、0.026H)。NMRスペクトルにおけるビニル共鳴に対するδ2.03の酢酸共鳴の比は、PPL鎖の概ね43%がアクリレート末端基を含有し、鎖の概ね57%がアセテート末端基を含有することを示唆している。b)実験2、アクリレート触媒を用いるBPL重合
【0213】
この実施例は、アクリル酸テトラブチルアンモニウム触媒を用いる連続BPL重合を実証する。連続流重合を、重合触媒源を0.374g/分で供給されるTHF中0.049mMアクリル酸テトラブチルアンモニウムに変え、重合温度を112℃に上昇させ、滞留時間を120分に延長し、BPL供給速度を、3.364g/分の20重量%BPL溶液に増大したことを除いて、上記の実験1と同様の条件下で行った。この重合から収集したPPL生成物は、5,930g/molのMn、ならびに120℃およびせん断1/sで1,577cPの粘度を有していた。NMR分析は、組成物中のPPL鎖の本質的に全てが、アクリレート末端基を有することを示している。