(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】油圧作動装置
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20231215BHJP
B23D 17/06 20060101ALI20231215BHJP
B23D 29/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B25F5/00 D
B25F5/00 F
B23D17/06
B23D29/00 A
(21)【出願番号】P 2021555637
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2019044151
(87)【国際公開番号】W WO2021095098
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000128692
【氏名又は名称】株式会社オグラ
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】木村 清
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-017202(JP,A)
【文献】特開昭60-020822(JP,A)
【文献】米国特許第05243761(US,A)
【文献】特開2012-225397(JP,A)
【文献】米国特許第04369576(US,A)
【文献】特開昭49-055000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 - 5/02
B23D 15/00 - 19/08
23/00 - 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具と、
油室から圧油を前記工具に送るとともに前記工具からの戻り油を前記油室に戻す圧油供給機構を有する作動部と、
前記圧油供給機構の圧油および戻り油の油路を調整するための操作ハンドルであって、初期位置から移動させることができるようになっている操作ハンドルと、
前記操作ハンドルに外部から力が作用していないときに当該操作ハンドルを前記初期位置に向かって付勢する付勢手段と、
を備え、
前記操作ハンドルが前記初期位置から移動すると前記作動部により前記工具が作動され、前記付勢手段により前記操作ハンドルが前記初期位置に戻されると前記作動部による前記工具の動作が停止され
、
前記工具は、工具部材と、圧油が貯留される内部空間を前進油室および後進油室に区画する区画部材と、前記区画部材に取り付けられ、前記工具部材を移動させるピストン部材と、を有しており、
前記操作ハンドルが前記初期位置から移動すると、前記作動部により前記油室から前記工具の前記前進油室または前記後進油室に圧油が送られることにより前記区画部材および前記ピストン部材が移動し、この際に前記後進油室または前記前進油室から戻り油が前記油室に戻され、
前記操作ハンドルは前記初期位置から第1の回転方向および第1の回転方向とは逆方向の第2の回転方向に回転させることができるようになっており、前記操作ハンドルが前記初期位置から第1の回転方向に回転すると前記作動部により前記工具の前記工具部材が第1の方向に移動し、前記操作ハンドルが前記初期位置から第2の回転方向に回転すると前記作動部により前記工具の前記工具部材が第1の方向とは逆方向の第2の方向に移動し、
一対の往復部材を更に備え、
前記操作ハンドルが回転させられると各前記往復部材は中立位置から互いに反対方向に移動させられるようになっており、
前記圧油供給機構は、一対の前記往復部材に対応する一対の流路調整バルブを有しており、各流路調整バルブにより前記油室から前記工具までの圧油の油路および前記工具から前記油室までの戻り油の油路が調整されるようになっており、
前記操作ハンドルが前記初期位置から第1の回転方向に回転することにより各前記往復部材が中立位置から互いに反対方向に移動させられると、前記油室から前記工具の前記前進油室までの圧油の油路および前記工具の前記後進油室から前記油室までの戻り油の油路がそれぞれ連通することにより前記区画部材および前記ピストン部材が第1の方向に移動し、
前記操作ハンドルが前記初期位置から第2の回転方向に回転することにより各前記往復部材が中立位置から互いに反対方向に移動させられると、前記油室から前記工具の前記後進油室までの圧油の油路および前記工具の前記前進油室から前記油室までの戻り油の油路がそれぞれ連通することにより前記区画部材および前記ピストン部材が第1の方向とは逆方向の第2の方向に移動する、油圧作動装置。
【請求項2】
各前記流路調整バルブは、貫通穴が設けられた第1シールプレート、貫通穴が設けられた第2シールプレートおよび前記第1シールプレートの前記貫通穴または前記第2シールプレートの前記貫通穴をシールするためのシールピンを有しており、前記シールピンは前記往復部材により移動させられるようになっており、
前記往復部材が中立位置に位置しているときには前記シールピンにより前記第1シールプレートの前記貫通穴および前記第2シールプレートの前記貫通穴はシールされず、前記往復部材が中立位置から移動すると、一方の前記流路調整バルブにおいて前記シールピンにより前記第1シールプレートの前記貫通穴がシールされるとともに他方の前記流路調整バルブにおいて前記シールピンにより前記第2シールプレートの前記貫通穴がシールされる、請求項
1記載の油圧作動装置。
【請求項3】
前記操作ハンドルが前記初期位置から第1の回転方向に回転した場合と第2の回転方向に回転した場合とで各前記流路調整バルブにおいて前記シールピンによりシールされるシールプレートが異なるようになっている、請求項
2記載の油圧作動装置。
【請求項4】
前記シールピンは、円柱形状部分と、前記円柱形状部分の一方の端部に設けられた球端面とを有しており、
前記第1シールプレートの前記貫通穴の直径は前記シールピンの前記円柱形状部分の直径と同一の大きさとなっており、前記第1シールプレートの前記貫通穴に前記シールピンが挿入されることにより前記第1シールプレートの前記貫通穴がシールされるようになっており、
前記第2シールプレートには、前記シールピンの前記円柱形状部分の直径よりも小さな直径の第1貫通穴および前記シールピンの前記円柱形状部分の直径よりも大きな直径の第2貫通穴が形成されており、前記第2シールプレートの前記第2貫通穴に前記シールピンの前記円柱形状部分が入ったときに前記球端面が前記第1貫通穴と前記第2貫通穴の間の箇所に接触することにより前記第2シールプレートの前記第1貫通穴および前記第2貫通穴がシールされるようになっている、請求項
2または
3記載の油圧作動装置。
【請求項5】
前記第2シールプレートにおいて前記第1貫通穴と前記第2貫通穴との間には傾斜面が形成されており、前記第2シールプレートの前記第2貫通穴に前記シールピンの前記円柱形状部分が入ったときに前記球端面が前記傾斜面に接触することにより前記第2シールプレートの前記第1貫通穴および前記第2貫通穴がシールされるようになっている、請求項
4記載の油圧作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧により工具が作動するような油圧作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レスキューの用途に可搬型の油圧作動装置を利用することが行われており、その一例が例えば日本国特許出願の公開公報である特開2010-280011号公報(JP2010-280011A)等に記載されている。特開2010-280011号公報に開示される油圧作動装置は、バッテリー、このバッテリーから給電される電動モータおよびこの電動モータにより駆動される油圧ポンプを有する油圧発生ユニットと、油圧発生ユニットに着脱可能であり、当該油圧発生ユニットにより発生する圧油により駆動される先端工具を有するヘッドユニットとから構成されている。ヘッドユニットに設けられる先端工具として、カッター、スプレッダーなどの様々な種類のものが用意されており、ヘッドユニットを交換することにより多種多様な作業に対応することができる。
【発明の概要】
【0003】
従来の油圧作動装置では、操作者が操作ハンドルを手で握ってこの操作ハンドルを初期位置から動作位置に移動させることによりヘッドユニットが動作するようになっている。また、操作者が手で握っている操作ハンドルを動作位置から初期位置に戻すとヘッドユニットの動作が停止するようになる。
【0004】
しかしながら、近年では、レスキューの用途で用いられる可搬型の油圧作動装置の安全性を向上させるために、操作者が操作ハンドルを手で握ってこの操作ハンドルを初期位置から動作位置に移動させた後、操作者が操作ハンドルから手を離すだけでヘッドユニットの動作が停止するような油圧作動装置が求められている。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、操作ハンドルを手で握ってこの操作ハンドルを初期位置から移動させて工具を動作させた後、操作者が操作ハンドルから手を離すだけで工具の動作が停止することにより安全性を向上させることができる油圧作動装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の油圧作動装置は、工具と、油室から圧油を前記工具に送るとともに前記工具からの戻り油を前記油室に戻す圧油供給機構を有する作動部と、前記圧油供給機構の圧油および戻り油の油路を調整するための操作ハンドルであって、初期位置から移動させることができるようになっている操作ハンドルと、前記操作ハンドルに外部から力が作用していないときに当該操作ハンドルを前記初期位置に向かって付勢する付勢手段と、を備え、前記操作ハンドルが前記初期位置から移動すると前記作動部により前記工具が作動され、前記付勢手段により前記操作ハンドルが前記初期位置に戻されると前記作動部による前記工具の動作が停止されることを特徴とする。
【0007】
本発明の油圧作動装置においては、前記工具は、工具部材と、圧油が貯留される内部空間を前進油室および後進油室に区画する区画部材と、前記区画部材に取り付けられ、前記工具部材を移動させるピストン部材と、を有しており、前記操作ハンドルが前記初期位置から移動すると、前記作動部により前記油室から前記工具の前記前進油室または前記後進油室に圧油が送られることにより前記区画部材および前記ピストン部材が移動し、この際に前記後進油室または前記前進油室から戻り油が前記油室に戻されるようになっていてもよい。
【0008】
また、前記操作ハンドルは前記初期位置から第1の回転方向および第1の回転方向とは逆方向の第2の回転方向に回転させることができるようになっており、前記操作ハンドルが前記初期位置から第1の回転方向に回転すると前記作動部により前記工具の前記工具部材が第1の方向に移動し、前記操作ハンドルが前記初期位置から第2の回転方向に回転すると前記作動部により前記工具の前記工具部材が第1の方向とは逆方向の第2の方向に移動するようになっていてもよい。
【0009】
また、本発明の油圧作動装置は、一対の往復部材を更に備え、前記操作ハンドルが回転させられると各前記往復部材は中立位置から互いに反対方向に移動させられるようになっており、前記圧油供給機構は、一対の前記往復部材に対応する一対の流路調整バルブを有しており、各流路調整バルブにより前記油室から前記工具までの圧油の油路および前記工具から前記油室までの戻り油の油路が調整されるようになっており、前記操作ハンドルが前記初期位置から第1の回転方向に回転することにより各前記往復部材が中立位置から互いに反対方向に移動させられると、前記油室から前記工具の前記前進油室までの圧油の油路および前記工具の前記後進油室から前記油室までの戻り油の油路がそれぞれ連通することにより前記区画部材および前記ピストン部材が第1の方向に移動し、前記操作ハンドルが前記初期位置から第2の回転方向に回転することにより各前記往復部材が中立位置から互いに反対方向に移動させられると、前記油室から前記工具の前記後進油室までの圧油の油路および前記工具の前記前進油室から前記油室までの戻り油の油路がそれぞれ連通することにより前記区画部材および前記ピストン部材が第1の方向とは逆方向の第2の方向に移動するようになっていてもよい。
【0010】
また、各前記流路調整バルブは、貫通穴が設けられた第1シールプレート、貫通穴が設けられた第2シールプレートおよび前記第1シールプレートの前記貫通穴または前記第2シールプレートの前記貫通穴をシールするためのシールピンを有しており、前記シールピンは前記往復部材により移動させられるようになっており、前記往復部材が中立位置に位置しているときには前記シールピンにより前記第1シールプレートの前記貫通穴および前記第2シールプレートの前記貫通穴はシールされず、前記往復部材が中立位置から移動すると、一方の前記流路調整バルブにおいて前記シールピンにより前記第1シールプレートの前記貫通穴がシールされるとともに他方の前記流路調整バルブにおいて前記シールピンにより前記第2シールプレートの前記貫通穴がシールされるようになっていてもよい。
【0011】
また、前記操作ハンドルが前記初期位置から第1の回転方向に回転した場合と第2の回転方向に回転した場合とで各前記流路調整バルブにおいて前記シールピンによりシールされるシールプレートが異なるようになっていてもよい。
【0012】
また、前記シールピンは、円柱形状部分と、前記円柱形状部分の一方の端部に設けられた球端面とを有しており、前記第1シールプレートの前記貫通穴の直径は前記シールピンの前記円柱形状部分の直径と同一の大きさとなっており、前記第1シールプレートの前記貫通穴に前記シールピンが挿入されることにより前記第1シールプレートの前記貫通穴がシールされるようになっており、前記第2シールプレートには、前記シールピンの前記円柱形状部分の直径よりも小さな直径の第1貫通穴および前記シールピンの前記円柱形状部分の直径よりも大きな直径の第2貫通穴が形成されており、前記第2シールプレートの前記第2貫通穴に前記シールピンの前記円柱形状部分が入ったときに前記球端面が前記第1貫通穴と前記第2貫通穴の間の箇所に接触することにより前記第2シールプレートの前記第1貫通穴および前記第2貫通穴がシールされるようになっていてもよい。
【0013】
また、前記第2シールプレートにおいて前記第1貫通穴と前記第2貫通穴との間には傾斜面が形成されており、前記第2シールプレートの前記第2貫通穴に前記シールピンの前記円柱形状部分が入ったときに前記球端面が前記傾斜面に接触することにより前記第2シールプレートの前記第1貫通穴および前記第2貫通穴がシールされるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態による切断装置を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す切断装置を側方から見たときの内部構成を示す側面図である。
【
図3】
図2に示す切断装置の内部構成の一部を拡大して示す側面図である。
【
図4】
図1に示す切断装置における操作ハンドルの内部構成を示す側面図である。
【
図5】
図4に示す操作ハンドルのA-A矢視による断面図である。
【
図6】
図4に示す操作ハンドルにおける位相調整部材の構成を示す斜視図である。
【
図7】
図1に示す切断装置において操作ハンドルが前進位置にあるときの圧油供給機構の内部構成を示す図である。
【
図8】
図1に示す切断装置において操作ハンドルが中立位置にあるときの圧油供給機構の内部構成を示す図である。
【
図9】
図1に示す切断装置において操作ハンドルが後進位置にあるときの圧油供給機構の内部構成を示す図である。
【
図10】
図1に示す切断装置の圧油供給機構における流路調整バルブの分解斜視図である。
【
図11】
図1に示す切断装置の圧油供給機構において第2シールプレートの貫通穴がシールピンによりシールされていないときの状態を示す構成図である。
【
図12】
図1に示す切断装置の圧油供給機構において第2シールプレートの貫通穴がシールピンによりシールされているときの状態を示す構成図である。
【
図13】本発明の実施の形態による他の構成の切断装置において操作ハンドルが前進位置にあるときの圧油供給機構の内部構成を示す図である。
【
図14】
図13に示す切断装置において操作ハンドルが中立位置にあるときの圧油供給機構の内部構成を示す図である。
【
図15】
図13に示す切断装置において操作ハンドルが後進位置にあるときの圧油供給機構の内部構成を示す図である。
【
図16】従来の切断装置の圧油供給機構の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態による切断装置(油圧作動装置)は、レスキュー等の用途に使用されるものであり、切断部により鉄筋等の丸棒を切断することができるものである。
図1乃至
図12は、本実施の形態による切断装置を示す図である。また、
図13乃至
図15は、本実施の形態による他の構成の切断装置の圧油供給機構を示す図である。なお、
図2乃至
図4、
図7乃至
図9および
図13乃至
図15において、圧油や戻り油の油路や流路調整バルブ等を見やすくするために、これらの油路や流路調整バルブ等の周囲の箇所における断面を示すためのハッチの描写を省略している。
【0016】
図1等に示すように、本実施の形態による切断装置10は、電動モータ等のモータ20と、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池等の二次電池からなるバッテリー22と、鉄筋等の丸棒を切断するための切断部50と、切断部50を作動させるための作動部21とを備えている。より詳細には、切断部50は一対の切断部材64、66を有しており、これらの切断部材64、66はそれぞれ軸68を中心として回転可能となっている。そして、軸68を中心として各切断部材64、66を互いに接近させる方向に回転させることによって一対の切断部材64、66の間にある鉄筋等の丸棒が切断されるようになっている。また、作動部21には操作ハンドル70が取り付けられており、作業者はこの操作ハンドル70を操作することによって軸68を中心とした各切断部材64、66の回転方向を調整することができるようになっている。本実施の形態では操作ハンドル70は円柱形状のものとなっており、作業者が操作ハンドル70を手で握って初期位置から正方向または逆方向に回転させることにより各切断部材64、66は軸68を中心として互いに接近する方向または互いに離間する方向に回転するようになる。また、本実施の形態では作業者が操作ハンドル70から手を離すとこの操作ハンドル70は初期位置に戻るようになっている。操作ハンドル70が初期位置に戻ると、各切断部材64、66はそれぞれ停止する。このような動作の詳細については後述する。
【0017】
図2に示すように、モータ20には回転軸24が取り付けられており、バッテリー22からモータ20に電力が供給されることにより、モータ20に取り付けられた回転軸24が回転させられるようになっている。また、回転軸24の先端には偏心部材25が取り付けられている。偏心部材25は、回転軸24の軸線に対して偏心しており、当該偏心部材25の外周面にはニードルローラベアリング等のベアリングが取り付けられている。
【0018】
作動部21は、偏心部材25の周囲に設けられたピストン26と、油室28と、油室28から切断部50に圧油を送ったり切断部50から油室28に圧油を戻したりする圧油供給機構30とを有している。ピストン26は、偏心部材25が回転することにより上下運動するようになっている。また、ピストン26は、図示しないバネによってベアリングの外周面に向けて常時押し付けられている。このため、モータ20により回転軸24が回転させられると偏心部材25およびベアリングが回転軸24の軸線に対して偏心回転運動することによりピストン26が上下運動し、油室28から圧油供給機構30に向かって圧油が送られ、この圧油供給機構30から切断部50に圧油が供給されることにより切断部50が作動するようになる。
【0019】
切断部50の構成について
図1および
図2を用いて説明する。切断部50は、軸68を中心としてそれぞれ回転可能となっている一対の切断部材64、66と、ベース部材59と、ベース部材59が先端に取り付けられているピストン部材52とを有している。切断部材64における切断部材66に対向する箇所には、丸棒を切断するための刃部64bが設けられている。また、切断部材66における切断部材64に対向する箇所にも、丸棒を切断するための刃部66bが設けられている。また、切断部材64およびベース部材59は接続部材60により接続されている。より詳細には、切断部材64は、その基端部分に設けられた軸64aを中心として接続部材60に対して回転自在となるよう当該接続部材60に接続されている。また、接続部材60は、その基端部分に設けられた軸60aを中心としてベース部材59に対して回転自在となるよう当該ベース部材59に接続されている。また、切断部材66およびベース部材59は接続部材62により接続されている。より詳細には、切断部材66は、その基端部分に設けられた軸66aを中心として接続部材62に対して回転自在となるよう当該接続部材62に接続されている。また、接続部材62は、その基端部分に設けられた軸62aを中心としてベース部材59に対して回転自在となるよう当該ベース部材59に接続されている。
【0020】
このような切断装置10では、油室28から圧油供給機構30により切断部50の前進位置(後述)に圧油が送られると、ピストン部材52が
図1および
図2における左側に押し出されるようになっている。そして、ピストン部材52が
図1および
図2における左側に押し出されると、ベース部材59も
図1および
図2における左方向に移動する。このことにより、ベース部材59の先端部分に回転自在に接続された各接続部材60、62によって各切断部材64、66が押動される。具体的には、各切断部材64、66は軸68を中心として
図1における矢印方向に回転するようになる。このように、軸68を中心として各切断部材64、66は互いに接近する方向に回転するため、各切断部材64、66の間に挟まれた鉄筋等の丸棒が切断される。一方、各切断部材64、66の間に挟まれた鉄筋等の丸棒が切断された後、ベース部材59が
図1および
図2における右側に移動すると、このベース部材59の先端部分に回転自在に接続された各接続部材60、62によって各切断部材64、66の基端部分が引っ張られ、これらの切断部材64、66は軸68を中心として互いに離間する方向(すなわち、
図1に示す矢印とは逆方向)に回転するようになる。
【0021】
本実施の形態では、上述したように、切断部50を作動させる作動部21は、油室28から切断部50に圧油を送ったり切断部50から油室28に圧油を戻したりする圧油供給機構30を有している。また、作動部21には操作ハンドル70が設けられており、作業者はこの操作ハンドル70を操作することによって圧油供給機構30による圧油や戻り油の流路を調整することができるようになっている。このことにより、作業者はこの操作ハンドル70を操作することによって軸68を中心とした各切断部材64、66の回転方向を調整することができる。また、本実施の形態では作業者が操作ハンドル70から手を離すとこの操作ハンドル70は初期位置に戻り、この場合には各切断部材64、66はそれぞれ停止する。このような圧油供給機構30、操作ハンドル70および圧油供給機構30に設けられた2つの流路調整バルブ80の構成の詳細について以下に説明する。
【0022】
まずは操作ハンドル70の構成について
図3乃至
図6を用いて説明する。作業者が手で操作ハンドル70を握ることにより、操作ハンドル70を初期位置から両方向に回転させることができるようになっている。このような操作ハンドル70は、作動部21に取り付けられたハンドル支持部72により支持されている。また、操作ハンドル70はハンドル支持部72に対して回転自在となっている。なお、操作ハンドル70の初期位置からの回転角度は所定の範囲内の大きさに制限されている。また、操作ハンドル70を初期位置から回転させた後、作業者が操作ハンドル70から手を離すと操作ハンドル70は初期位置に戻るようになっている。具体的には、
図4および
図5に示すように、操作ハンドル70には2つの円弧状の溝70aが形成されている。また、2つのストッパーピン73がそれぞれハンドル支持部72に取り付けられており、各ストッパーピン73が各溝70aに嵌るようになっている。また、各溝70aの内部にはスプリング74が設けられている。各スプリング74の一端はストッパーピン73に接触し、各スプリング74の他端は溝70aの端部に接触している。このことにより、作業者が手で操作ハンドル70を握っていない場合には、各溝70aの内部に設けられたスプリング74により操作ハンドル70は
図5に示すような位置に維持される。このような位置を操作ハンドル70の初期位置とする。一方、作業者が操作ハンドル70を手で握って初期位置から正方向または逆方向に回転させると、各ストッパーピン73が各溝70aに嵌った状態で各溝70aが回転する。このことにより、2つのスプリング74のうち一方のスプリング74が溝70aの端部とストッパーピン73との間で圧縮される。よって作業者が操作ハンドル70から手を離すとこの圧縮したスプリング74が元の状態に戻ろうとする力により操作ハンドル70が回転して元の初期位置に戻るようになる。
【0023】
また、
図4および
図5に示すように、操作ハンドル70が初期位置にあるか否かを検知するための初期位置検知センサ75が設けられている。初期位置検知センサ75は、操作ハンドル70に向かって進退可能な突起部分75aを有している。また、操作ハンドル70の外周面には凹部70bが形成されている。そして、
図5に示すように操作ハンドル70が初期位置にある場合には初期位置検知センサ75の突起部分75aが操作ハンドル70の凹部70bに入り込むようになる。一方、作業者が操作ハンドル70を手で握って初期位置から回転させると、突起部分75aは凹部70bの外に出るようになる。この場合には突起部分75aは操作ハンドル70の外周面に接触することによって
図5における下方向に押し下げられる。このことにより、初期位置検知センサ75は、操作ハンドル70の位置が初期位置ではなくなったことを検知する。
【0024】
図4に示すように、操作ハンドル70には位相調整部材76が取り付けられている。ここで、操作ハンドル70の軸心は位相調整部材76の軸心と同一となっている。このため、作業者が操作ハンドル70を手で握って初期位置から回転させると位相調整部材76も同期して回転するようになる。位相調整部材76の構成の詳細について
図6乃至
図9を用いて説明する。
図6に示すように、位相調整部材76は、ハンドル支持部72の内側に配置されている円柱形状の本体部分76bと、本体部分76bの一方の端面に取り付けられた2つの棒状の突起部分76aと、本体部分76bの他方の端面に取り付けられたベース部分76cとを有している。ベース部分76cは操作ハンドル70の内部に設けられており、操作ハンドル70が回転するとこのベース部分76cも一体的に回転するようになっている。
【0025】
また、
図7乃至
図9に示すように、ハンドル支持部72の内部には左右一対の往復部材78が配置されており、各往復部材78には、位相調整部材76の各突起部分76aが嵌る溝78aが形成されている。このことにより、位相調整部材76が操作ハンドル70と同期して回転すると、各往復部材78が
図7乃至
図9における上下方向に移動するようになる。具体的には、操作ハンドル70が初期位置に位置しているときには各往復部材78は
図8に示すような中立位置に位置する。この場合、
図8の上下方向における各往復部材78の高さは同一となる。一方、作業者が操作ハンドル70を手で握ってこの操作ハンドル70を右方向に回転させると、位相調整部材76が
図7乃至
図9における時計回りの方向に回転する。このことにより、
図7に示すように、2つの突起部分76aのうち左側の突起部分76aが上昇するとともに右側の突起部分76aが下降する。この場合には、突起部分76aに押されて
図7における左側の往復部材78が中立位置から上昇するとともに右側の往復部材78が中立位置から下降する。このような各往復部材78の位置を前進位置とする。また、作業者が操作ハンドル70を手で握ってこの操作ハンドル70を左方向に回転させると、位相調整部材76が
図7乃至
図9における反時計回りの方向に回転する。このことにより、
図9に示すように、2つの突起部分76aのうち左側の突起部分76aが下降するとともに右側の突起部分76aが上昇する。この場合には、突起部分76aに押されて
図9における左側の往復部材78が中立位置から下降するとともに右側の往復部材78が中立位置から上昇する。このような各往復部材78の位置を後進位置とする。
【0026】
図2および
図3に示すように、切断部50は、圧油が貯留される内部空間が形成される本体部56を有している。また、本体部56の内部に形成される内部空間を2つの領域に区画する区画部材54が本体部56の内部に設けられている。また、ピストン部材52の端部は区画部材54に接続されている。なお、圧油が貯留される内部空間における区画部材54により区画された2つの領域のうち、
図2における区画部材54よりも右側の領域は前進油室となっており、
図2における区画部材54よりも左側の領域は後進油室58となっている。なお、
図2では前進油室の容積は0となっているが、区画部材54が
図2において左側に移動すると本体部56と区画部材54との間に前進油室が形成されるようになる。そして、圧油供給機構30から前進油室に圧油が送られるとこの区画部材54は圧油に押されることによって
図2における左側に移動し、ピストン部材52も
図2における左側に移動する。一方、圧油供給機構30から後進油室58に圧油が送られるとこの区画部材54は圧油に押されることによって
図2における右側に移動し、ピストン部材52も
図2における右側に移動する。また、ピストン部材52の内部には、棒状部材51を収容する収容空間が形成されている。また、棒状部材51の内部には圧油の流路51aが形成されており、後述する圧油供給機構30から棒状部材51の流路51aに圧油が送られると、この圧油は後進油室58に送られるようになる。
【0027】
図1乃至
図3および
図7乃至
図9に示すように、圧油供給機構30には、油室28から切断部50に圧油を送ったり切断部50から油室28に戻り油を戻したりするための複数の油路32、33、34、36、37、38、40、42、45、46、47が設けられている。また、圧油供給機構30は2つの流路調整バルブ80を有している。これらの2つの流路調整バルブ80により、油室28から切断部50に送られる圧油や切断部50から油室28に戻される戻り油がどの流路を通るかが調整されるようになっている。また、2つの流路調整バルブ80はそれぞれ操作ハンドル70により操作されるようになっている。具体的には、各往復部材78が上下動することにより各流路調整バルブ80が操作される。
【0028】
圧油供給機構30において、第1の油路32は油室28に連通しており、第2の油路33は第1の油路32に連通している。また、第1の油路32と第2の油路33との間には、左側の流路調整バルブ80の第1シールプレート81(後述)が設けられている。また、第3の油路34は第2の油路33に連通している。また、第3の油路34は第4の油路36に連通しており、第4の油路36は第5の油路38に連通している。第5の油路38は、本体部56の内部に形成される内部空間における
図2の区画部材54よりも右側の領域にある前進油室に連通している。また、左側の流路調整バルブ80のベース部分86(後述)の周囲には第6の油路37が設けられており、この第6の油路37は左側の流路調整バルブ80の第2シールプレート82(後述)を介して第3の油路34に連通している。
【0029】
また、棒状部材51の流路51aには第7の油路40が連通している。また、第7の油路40は第8の油路47に連通しており、第8の油路47は第9の油路46に連通している。ここで、第1の油路32と第9の油路46との間には、右側の流路調整バルブ80の第1シールプレート81(後述)が設けられている。また、右側の流路調整バルブ80のベース部分86(後述)の周囲には第10の油路42が設けられており、この第10の油路42は、右側の流路調整バルブ80の第2シールプレート82(後述)を介して第9の油路46に連通している。また、油室28に圧油を戻すためのドレン管44が設けられており、このドレン管44は第11の油路45に連通している。第11の油路45は第6の油路37および第10の油路42にそれぞれ連通している。
【0030】
次に、各流路調整バルブ80の構成の詳細について
図7乃至
図12を用いて説明する。
図7乃至
図12に示すように、各流路調整バルブ80は、第1シールプレート81と、第2シールプレート82と、第1シールプレート81および第2シールプレート82の間に設けられたバルブシート83と、バルブシート83の内部に設けられたシールピン84と、シールピン84に取り付けられた作動ピン85と、作動ピン85が内部を貫通しているベース部分86とを有している。なお、
図10の分解斜視図ではシールピン84を見やすくするためにバルブシート83の図示を省略している。より詳細には、
図11および
図12に示すように、シールピン84は、円柱形状部分84aと、円柱形状部分84aの一方の端部(具体的には、第2シールプレート82側の端部)に設けられた球端面84bとを有している。また、作動ピン85は、第1円柱形状部分85aと、第1円柱形状部分85aよりも直径が大きい第2円柱形状部分85bとを有しており、第1円柱形状部分85aの先端がシールピン84の球端面84bに取り付けられている。
【0031】
第1シールプレート81には直径の大きさが均一である貫通穴81aが形成されている。貫通穴81aの直径は、シールピン84の円柱形状部分84aの直径と略同一の大きさとなっている。このため、シールピン84の円柱形状部分84aが第1シールプレート81の貫通穴81aに入ると、第1シールプレート81の貫通穴81aがシールピン84によってシールされるようになる。
【0032】
図11および
図12に示すように、第2シールプレート82には、第1貫通穴82aおよび第2貫通穴82bからなる貫通穴が形成されている。ここで、第2貫通穴82bの直径は第1貫通穴82aの直径よりも大きくなっている。また、第1貫通穴82aの直径はシールピン84の円柱形状部分84aの直径よりも小さくなっている。一方、第2貫通穴82bの直径はシールピン84の円柱形状部分84aの直径よりも大きくなっている。また、第1貫通穴82aの直径は作動ピン85の第1円柱形状部分85aの直径よりも大きくなっている。また、第2シールプレート82の貫通穴において第1貫通穴82aと第2貫通穴82bとの間には傾斜面82cが形成されている。そして、シールピン84が第2シールプレート82に向かって押動されると、
図12に示すように、シールピン84の球端面84bが第2シールプレート82の傾斜面82cに接触することにより、第2シールプレート82の貫通穴がシールピン84によって塞がれるようになる。
【0033】
図7乃至
図9に示すように、バルブシート83の一方の端面には第1シールプレート81が取り付けられている。また、バルブシート83の他方の端面には第2シールプレート82が取り付けられている。また、バルブシート83には貫通穴が形成されており、この貫通穴の内部でシールピン84が上下動するようになっている。なお、バルブシート83の貫通穴の直径はシールピン84の円柱形状部分84aの直径よりも大きくなっている。このため、バルブシート83の貫通穴の外周面とシールピン84の円柱形状部分84aの外周面との間の隙間を圧油が通過することができるようになっている。
【0034】
第2シールプレート82におけるバルブシート83が取り付けられる面とは反対側の面にはベース部分86が取り付けられている。ベース部分86には貫通穴が形成されており、この貫通穴の内部で作動ピン85が上下動するようになっている。なお、ベース部分86の貫通穴の直径は作動ピン85の第2円柱形状部分85bの直径と略同一の大きさとなっている。このため、ベース部分86の貫通穴は作動ピン85によりシールされるようになる。
【0035】
図7乃至
図9に示すように、各流路調整バルブ80においてシールピン84の円柱形状部分84aの下端面には接続部分89の一端が接続されており、この接続部分89の他端にはシールプレート87が取り付けられている。また、シールプレート87の下方にはスプリング88が圧縮した状態で配置されている。このことにより、圧縮したスプリング88が元の状態に戻ろうとする力によりシールプレート87が
図7乃至
図9に示す上方向に押動されるようになっている。
【0036】
図8に示すように、各往復部材78が中立位置に位置しているときには、各往復部材78の押動部78bに各作動ピン85の第2円柱形状部分85bの上端が接触した状態となる。具体的には、圧縮したスプリング88が元の状態に戻ろうとする力によりシールプレート87が
図7乃至
図9に示す上方向に押動されることにより、接続部分89を介してシールプレート87に接続されたシールピン84および作動ピン85も
図7乃至
図9に示す上方向に押動される。しかしながら、作動ピン85の第2円柱形状部分85bの上端が各往復部材78の押動部78bに接触するとこれ以上シールピン84および作動ピン85は上方に移動しなくなるため、シールピン84はバルブシート83の貫通穴に収容される。この状態では第1シールプレート81および第2シールプレート82はシールピン84によりシールされない。
【0037】
一方、
図7に示すように、各往復部材78が前進位置に移動すると、左側の往復部材78が上昇することによりこの往復部材78の押動部78bが左側の作動ピン85の第2円柱形状部分85bから上方に離間する。なお、この場合には、圧縮したスプリング88が元の状態に戻ろうとする力によりシールプレート87が
図7乃至
図9に示す上方向に押動されることにより、接続部分89を介してシールプレート87に接続されたシールピン84および作動ピン85も
図7乃至
図9に示す上方向に押動される。この場合には、左側の流路調整バルブ80においてシールピン84により第2シールプレート82の貫通穴がシールされる。なお、この状態では左側の流路調整バルブ80において第1シールプレート81はシールピン84によりシールされない。また、各往復部材78が前進位置に移動すると、右側の往復部材78が下降することによりこの往復部材78の押動部78bが右側の作動ピン85の第2円柱形状部分85bを下方に押動する。このことにより、右側の流路調整バルブ80においてシールピン84の円柱形状部分84aが第1シールプレート81の貫通穴81aに入るようになるため、第1シールプレート81の貫通穴81aがシールピン84によりシールされる。なお、この状態では右側の流路調整バルブ80において第2シールプレート82はシールピン84によりシールされない。
【0038】
また、
図9に示すように、各往復部材78が後進位置に移動すると、左側の往復部材78が下降することによりこの往復部材78の押動部78bが左側の作動ピン85の第2円柱形状部分85bを下方に押動する。このことにより、左側の流路調整バルブ80においてシールピン84の円柱形状部分84aが第1シールプレート81の貫通穴81aに入るようになるため、第1シールプレート81の貫通穴81aがシールピン84によりシールされる。なお、この状態では左側の流路調整バルブ80において第2シールプレート82はシールピン84によりシールされない。また、各往復部材78が後進位置に移動すると、右側の往復部材78が上昇することによりこの往復部材78の押動部78bが右側の作動ピン85の第2円柱形状部分85bから上方に離間する。なお、この場合には、圧縮したスプリング88が元の状態に戻ろうとする力によりシールプレート87が
図7乃至
図9に示す上方向に押動されることにより、接続部分89を介してシールプレート87に接続されたシールピン84および作動ピン85も
図7乃至
図9に示す上方向に押動される。この場合には、右側の流路調整バルブ80においてシールピン84により第2シールプレート82の貫通穴がシールされる。なお、この状態では右側の流路調整バルブ80において第1シールプレート81はシールピン84によりシールされない。
【0039】
次に、このような構成からなる切断装置10の動作について以下に説明する。まず、切断部50により鉄筋等の丸棒を切断する際の動作について説明する。切断部50により鉄筋等の丸棒を切断する際に、バッテリー22からモータ20に電力を供給することによってモータ20を駆動させる。そして、モータ20により回転軸24が回転させられると偏心部材25およびベアリングが回転軸24の軸線に対して偏心回転運動することによりピストン26が上下運動し、油室28から圧油供給機構30に向かって圧油が送られる。次に、作業者は操作ハンドル70を手で握ってこの操作ハンドル70を右方向に回転させると、位相調整部材76が
図7乃至
図9における時計回りの方向に回転する。このことにより、
図7に示すように、2つの突起部分76aのうち左側の突起部分76aが上昇するとともに右側の突起部分76aが下降する。このことにより、各往復部材78が
図7に示すような前進位置に移動する。上述したように、各往復部材78が前進位置に位置しているときには、左側の流路調整バルブ80においてシールピン84により第2シールプレート82の貫通穴がシールされる。なお、この状態では左側の流路調整バルブ80において第1シールプレート81はシールピン84によりシールされない。また、右側の流路調整バルブ80において第1シールプレート81の貫通穴81aがシールピン84によりシールされる。なお、この状態では右側の流路調整バルブ80において第2シールプレート82はシールピン84によりシールされない。
【0040】
各往復部材78が前進位置に位置しているときに、油室28から圧油供給機構30に送られた圧油は第1の油路32から左側の流路調整バルブ80の第1シールプレート81の貫通穴81aを通って第2の油路33に送られる。そして、第2の油路33から第3の油路34を介して第4の油路36に圧油が送られる。この際に、左側の流路調整バルブ80においてシールピン84により第2シールプレート82の貫通穴がシールされているため、第3の油路34から第6の油路37に圧油が送られることはない。そして、第4の油路36から第5の油路38に圧油が送られる。このことにより、第5の油路38から前進油室に圧油が送られ、区画部材54が
図2における左側に押動される。このようにして、区画部材54に接続されたピストン部材52が
図1および
図2における左側に押し出される。このことにより、切断部50の各切断部材64、66は軸68を中心として
図2における矢印方向に回転する。このように、軸68を中心として各切断部材64、66は互いに接近する方向に回転するため、各切断部材64、66の間に挟まれた鉄筋等の丸棒が切断される。
【0041】
また、区画部材54が
図2における左側に押動されると、後進油室58から棒状部材51の流路51aに戻り油が送られ、この戻り油は流路51aから第7の油路40に送られる。そして、第7の油路40から第8の油路47および第9の油路46を順に通って第10の油路42に戻り油が送られる。なお、上述したように、右側の流路調整バルブ80において第2シールプレート82はシールピン84によりシールされていないため、第9の油路46から第2シールプレート82の貫通穴を通って第10の油路42に戻り油が送られる。そして、第10の油路42から第11の油路45を通ってドレン管44に戻り油が送られる。このようにして、ドレン管44から油室28に戻り油が戻される。なお、右側の流路調整バルブ80において第1シールプレート81の貫通穴81aがシールピン84によりシールされているため、第9の油路46から第1の油路32に戻り油が送られることはない。
【0042】
また、作業者は操作ハンドル70を手で握ってこの操作ハンドル70を右方向に回転させている状態で、作業者が操作ハンドル70から手を離すと、2つのスプリング74のうち圧縮されていたスプリング74が元の状態に戻ろうとする力により操作ハンドル70が回転して元の初期位置に戻る。また、この場合には、各往復部材78は
図8に示す位置に戻るようになる。ここで、圧縮したスプリング88が元の状態に戻ろうとする力によりシールプレート87が
図8に示す上方向に押動されることにより、接続部分89を介してシールプレート87に接続されたシールピン84および作動ピン85も
図8に示す上方向に押動される。しかしながら、作動ピン85の第2円柱形状部分85bの上端が各往復部材78の押動部78bに接触するとこれ以上シールピン84および作動ピン85は上方に移動しなくなるため、シールピン84はバルブシート83の貫通穴に収容される。この状態では第1シールプレート81および第2シールプレート82はシールピン84によりシールされない。
【0043】
各往復部材78が中立位置に位置しているときに、油室28から圧油供給機構30に送られた圧油は第1の油路32から左側の流路調整バルブ80の第1シールプレート81の貫通穴81aを通って第2の油路33に送られる。そして、第2の油路33から第3の油路34を介して第6の油路37に圧油が送られる。この際に、圧油は、バルブシート83の貫通穴の外周面とシールピン84の対周面との間の隙間を通過することにより、第3の油路34から第6の油路37に送られるようになる。そして、第6の油路37から第11の油路45を通ってドレン管44に圧油が送られる。このようにして、ドレン管44から油室28に圧油が戻される。また、油室28から圧油供給機構30に送られた圧油は第1の油路32から右側の流路調整バルブ80の第1シールプレート81の貫通穴81aおよび第2シールプレート82の貫通穴を通って第10の油路42に送られる。そして、第10の油路42から第11の油路45を通ってドレン管44に圧油が送られる。このようにして、ドレン管44から油室28に圧油が戻される。このように、各往復部材78が中立位置に位置しているときには、油室28から圧油供給機構30に送られた圧油はドレン管44により油室28に戻される。このため、前進油室および後進油室58のどちらにも圧油が送られなくなり、よってピストン部材52が移動しなくなる。このことにより、切断部50の動作が停止する。
【0044】
また、切断部50により鉄筋等の丸棒を切断した後、この切断部50を
図1に示すような各切断部材64、66が開いた状態に戻す場合には、作業者は操作ハンドル70を手で握ってこの操作ハンドル70を左方向に回転させる。このことにより、位相調整部材76が
図7乃至
図9における反時計回りの方向に回転し、
図9に示すように、2つの突起部分76aのうち右側の突起部分76aが上昇するとともに左側の突起部分76aが下降する。このことにより、各往復部材78が
図9に示すような後進位置に移動する。上述したように、各往復部材78が後進位置に位置しているときには、左側の流路調整バルブ80において第1シールプレート81の貫通穴81aがシールピン84によりシールされる。なお、この状態では左側の流路調整バルブ80において第2シールプレート82はシールピン84によりシールされない。また、右側の流路調整バルブ80においてシールピン84により第2シールプレート82の貫通穴がシールされる。なお、この状態では右側の流路調整バルブ80において第1シールプレート81はシールピン84によりシールされない。
【0045】
各往復部材78が後進位置に位置しているときに、油室28から圧油供給機構30に送られた圧油は第1の油路32から右側の流路調整バルブ80の第1シールプレート81の貫通穴81aを通って第9の油路46に送られる。そして、第9の油路46から第8の油路47を介して第7の油路40に圧油が送られる。このことにより、第7の油路40から、棒状部材51の流路51aを通って後進油室58に圧油が送られ、区画部材54が
図2における右側に押動される。この際に、右側の流路調整バルブ80においてシールピン84により第2シールプレート82の貫通穴がシールされているため、第9の油路46から第10の油路42に圧油が送られることはない。このようにして、区画部材54に接続されたピストン部材52が
図1および
図2における右側に戻される。このことにより、切断部50の各切断部材64、66は軸68を中心として互いに離間する方向に回転する。このようにして、切断部50は
図1に示すような各切断部材64、66が開いた状態に戻るようになる。
【0046】
また、区画部材54が
図2における右側に押動されると、前進油室から第5の油路38に戻り油が送られ、この戻り油は第5の油路38から第4の油路36に送られる。そして、第4の油路36から第6の油路37および第11の油路45を順に通ってドレン管44に戻り油が送られる。このようにして、ドレン管44から油室28に戻り油が戻される。なお、上述したように、左側の流路調整バルブ80において第2シールプレート82はシールピン84によりシールされていないため、第4の油路36から第2シールプレート82の貫通穴を通って第6の油路37に戻り油が送られる。なお、左側の流路調整バルブ80において第1シールプレート81はシールピン84によりシールされているため、第4の油路36から第1の油路32に戻り油が送られることはない。
【0047】
以上のような構成からなる本実施の形態の切断装置10(油圧作動装置)によれば、工具(具体的には、切断部50)と、油室28から圧油を工具に送るとともに工具からの戻り油を油室28に戻す圧油供給機構30を有する作動部21と、圧油供給機構30の圧油および戻り油の油路を調整するための操作ハンドル70と、操作ハンドル70に外部から力が作用していないときに当該操作ハンドル70を初期位置に向かって付勢する付勢手段(具体的には、ストッパーピン73およびスプリング74)とが設けられている。また、操作ハンドル70は初期位置から移動させることができるようになっており、操作ハンドル70が初期位置から移動すると作動部21により工具が作動され、付勢手段により操作ハンドル70が初期位置に戻されると作動部21による工具の動作が停止される。このような切断装置10によれば、例えば作業者が操作ハンドル70を片手で握って操作しているときに、操作ハンドル70から手を離すだけで工具の動作が停止するので、安全性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施の形態の切断装置10においては、上述したように、工具としての切断部50は、工具部材(具体的には、一対の切断部材64、66)と、内部空間を前進油室および後進油室58に区画する区画部材54と、区画部材54に取り付けられ、工具部材を移動させるピストン部材52と、を有している。そして、操作ハンドル70が初期位置から移動すると、作動部21により油室28から工具の前進油室または後進油室58に圧油が送られることにより区画部材54およびピストン部材52が移動し、この際に前進油室または後進油室58から戻り油が油室28に戻される。
【0049】
また、本実施の形態の切断装置10においては、上述したように、操作ハンドル70は初期位置から第1の回転方向および第1の回転方向とは逆方向の第2の回転方向に回転させることができるようになっている。そして、操作ハンドル70が初期位置から第1の回転方向に回転すると作動部21により工具の工具部材(具体的には、切断部50の各切断部材64、66)が第1の方向(具体的には、
図1における矢印方向)に移動する。また、操作ハンドル70が初期位置から第2の回転方向に回転すると作動部21により工具の工具部材が第1の方向とは逆方向の第2の方向に移動する。
【0050】
また、切断装置10には一対の往復部材78が設けられており、操作ハンドル70が移動させられると各往復部材78は中立位置(
図8参照)から互いに反対方向に移動させられるようになっている。また、圧油供給機構30は、一対の往復部材78に対応する一対の流路調整バルブ80を有しており、各流路調整バルブ80により油室28から工具(具体的には、切断部50)までの圧油の油路および工具から油室28までの戻り油の油路が調整されるようになっている。また、
図7に示すように、操作ハンドル70が初期位置から第1の回転方向に回転することにより各往復部材78が中立位置から互いに反対方向に移動させられると、油室28から工具の前進油室までの圧油の油路および工具の後進油室58から油室28までの戻り油の油路がそれぞれ連通することにより区画部材54およびピストン部材52が第1の方向(すなわち、
図1および
図2における左方向)に移動する。また、
図9に示すように、操作ハンドル70が初期位置から第2の回転方向に回転することにより各往復部材78が中立位置から互いに反対方向に移動させられると、油室28から工具の後進油室58までの圧油の油路および工具の前進油室から油室28までの戻り油の油路がそれぞれ連通することにより区画部材54およびピストン部材52が第1の方向とは逆方向の第2の方向(すなわち、
図1および
図2における右方向)に移動する。
【0051】
このような構成の切断装置10によれば、操作ハンドル70が回転させられると
図8に示すような中立位置から互いに反対方向に移動させられる各往復部材78が用いられるとともに各往復部材78に対応して一対の流路調整バルブ80が用いられることにより、ピストン部材52の前進運動および後退運動をスムーズに行うことができるようになる。より詳細に説明すると、本実施の形態の切断装置10では、操作ハンドル70が初期位置から回転すると作動部21により工具が作動され、付勢手段により操作ハンドル70が初期位置に戻されると作動部21による工具の動作が停止されるような構成となっているが、流路調整バルブ80がもし1つしか設けられていない場合には、操作ハンドル70が初期位置に戻されても流路調整バルブ80がスムーズに中立位置に戻らず、よって工具の動作がスムーズに停止しない場合がある。これに対し、一対の流路調整バルブ80を用いた場合には、各往復部材78の高さレベルが同じになることにより一対の流路調整バルブ80が同じ高さレベルになると一対の流路調整バルブ80において第1シールプレート81および第2シールプレート82がそれぞれシールピン84によりシールされなくなる。このため、油室28から圧油供給機構30に送られた圧油はそのままドレン管44により油室28に戻されるようになるため、圧油供給機構30から切断部50の前進油室や後進油室58に圧油が送られなくなり、切断部50の動作をスムーズに停止させることができるようになる。
【0052】
また、各流路調整バルブ80は、貫通穴81aが設けられた第1シールプレート81、貫通穴(具体的には、第1貫通穴82aおよび第2貫通穴82b)が設けられた第2シールプレート82および第1シールプレート81の貫通穴81aまたは第2シールプレート82の貫通穴をシールするためのシールピン84を有しており、シールピン84は往復部材78により移動させられるようになっている。また、往復部材78が中立位置に位置しているときにはシールピン84により第1シールプレート81の貫通穴81aおよび第2シールプレート82の貫通穴はシールされない。一方、往復部材78が中立位置から移動すると、一方の流路調整バルブ80においてシールピン84により第1シールプレート81の貫通穴81aがシールされるとともに他方の流路調整バルブ80においてシールピン84により第2シールプレート82の貫通穴がシールされる。
【0053】
また、操作ハンドル70が初期位置から第1の回転方向に回転した場合と第2の回転方向に回転した場合とで各流路調整バルブ80においてシールピン84によりシールされるシールプレート81、82が異なるようになっている。
【0054】
また、シールピン84は、円柱形状部分84aと、円柱形状部分84aの一方の端部に設けられた球端面84bとを有している。また、第1シールプレート81の貫通穴81aの直径はシールピン84の円柱形状部分84aの直径と同一の大きさとなっており、第1シールプレート81の貫通穴81aにシールピン84が挿入されることにより第1シールプレート81の貫通穴81aがシールされるようになっている。また、第2シールプレート82には、シールピン84の円柱形状部分84aの直径よりも小さな直径の第1貫通穴82aおよびシールピン84の円柱形状部分84aの直径よりも大きな直径の第2貫通穴82bが形成されており、第2シールプレート82の第2貫通穴82bにシールピン84の円柱形状部分84aが入ったときに球端面84bが第1貫通穴82aと第2貫通穴82bの間の箇所に接触することにより第2シールプレート82の貫通穴がシールされるようになっている。
【0055】
このようなシールピン84が用いられる場合には、流路調整バルブ80において圧油の漏れが生じることを十分に抑制することができる。より詳細には、第2シールプレート82の第2貫通穴82bにシールピン84の円柱形状部分84aが入ったときに球端面84bが第1貫通穴82aと第2貫通穴82bの間の箇所に接触することにより第2シールプレート82の貫通穴がシールされる場合には、この貫通穴がシールピン84により完全に塞がれるため、第2シールプレート82において圧油の漏れが生じることはない。なお、第1シールプレート81の貫通穴81aにシールピン84が挿入されることにより第1シールプレート81の貫通穴81aがシールされる場合には、第1シールプレート81の貫通穴81aの外周面とシールピン84との外周面との間で圧油が漏れ出てしまうおそれがある。とりわけ、圧油として低温時にも作動し易い粘度の低い圧油が用いられる場合には、シールピン84により第1シールプレート81の貫通穴81aがシールされても、第1シールプレート81の貫通穴81aの外周面とシールピン84との外周面との間で圧油が漏れ出る可能性が高くなる。しかしながら、
図7乃至
図9に示す圧油供給機構30ではこのような圧油が漏れ出る可能性のある箇所は2カ所(具体的には、2つの第1シールプレート81)であるため、後述するような
図13乃至
図15に示す圧油供給機構30aのような圧油が漏れ出る可能性のある箇所が4カ所である場合と比較して圧油が漏れ出てしまうことを抑制することができる。
【0056】
また、円柱形状部分84aと、円柱形状部分84aの一方の端部に設けられた球端面84bとを有するようなシールピン84を製造するにあたり、後述するような2段の円柱形状部分84q、84rを有するシールピン84pを製造する場合と比較して、円柱形状部分84aが一段であるためこの円柱形状部分84aの外径部の加工精度を高めることができる。このため、第1シールプレート81の貫通穴81aとシールピン84の円柱形状部分84aとの間のクリアランスを精度よく設定することができ、よって第1シールプレート81の貫通穴81aの外周面とシールピン84との外周面との間で圧油が漏れ出る可能性を低減することができる。また、本実施の形態では、第1シールプレート81の貫通穴81aの直径は第2シールプレート82の第1貫通穴82aの直径よりも大きいため、一対の流路調整バルブ80における一方の流路調整バルブ80の第1シールプレート81の貫通穴81aおよび他方の流路調整バルブ80の第2シールプレート82の第1貫通穴82aの断面積の差により、各流路調整バルブ80のシールピン84には
図8に示すような中立位置に戻ろうとする力が常に加えられるようになる。このため、作業者が操作ハンドル70から手で握ってこの操作ハンドル70を回転させることにより切断部50を作動させた後、この操作ハンドル70から手を離すと各流路調整バルブ80のシールピン84には
図8に示すような中立位置にスムーズに戻るようになり、よって切断部50の動作をより一層確実に停止させることができるようになる。
【0057】
また、第2シールプレート82において第1貫通穴82aと第2貫通穴82bとの間には傾斜面82cが形成されており、第2シールプレート82の第2貫通穴82bにシールピン84の円柱形状部分84aが入ったときに球端面84bが傾斜面82cに接触することにより第2シールプレート82の貫通穴がシールされるようになっている。
【0058】
また、本実施の形態の切断装置10において、
図7乃至
図12に示す流路調整バルブ80を有する圧油供給機構30が用いられる代わりに、
図13乃至
図15に示す流路調整バルブ80aを有する圧油供給機構30aが用いられてもよい。
図13乃至
図15に示す流路調整バルブ80aを説明するにあたり、
図7乃至
図12に示す流路調整バルブ80と同じ構成要素については同じ参照符号を付けてその説明を省略する。
【0059】
図13乃至
図15に示す流路調整バルブ80aでは、
図10乃至
図12に示すような円柱形状部分84aの一方の端部に球端面84bが設けられたシールピン84の代わりに、第1円柱形状部分84qおよびこの第1円柱形状部分84qの直径よりも小さな直径を有する第2円柱形状部分84rを有するシールピン84pが用いられるようになっている。すなわち、シールピン84pは2段の円柱形状部分から構成されるようになっている。また、第1シールプレート81および第2シールプレート82の代わりに、第1シールプレート81pおよび第2シールプレート82pがそれぞれ用いられるようになっている。
【0060】
第1シールプレート81pには直径の大きさが均一である貫通穴が形成されている。この貫通穴の直径は、シールピン84pの第1円柱形状部分84qの直径と略同一の大きさとなっている。このため、シールピン84pの第1円柱形状部分84qが第1シールプレート81pの貫通穴に入ると、第1シールプレート81pの貫通穴がシールピン84pによってシールされるようになる。また、第2シールプレート82pにも直径の大きさが均一である貫通穴が形成されている。この貫通穴の直径は、シールピン84pの第2円柱形状部分84rの直径と略同一の大きさとなっている。このため、シールピン84pの第2円柱形状部分84rが第2シールプレート82pの貫通穴に入ると、第2シールプレート82pの貫通穴がシールピン84pによってシールされるようになる。なお、第1シールプレート81pと第2シールプレート82pとの間に設けられるバルブシート83pは、
図7乃至
図12に示す流路調整バルブ80のバルブシート83と同一の構成のものが用いられる。ここで、バルブシート83pの貫通穴の直径はシールピン84pの第1円柱形状部分84qの直径よりも大きくなっている。このため、バルブシート83pの貫通穴の外周面とシールピン84pの第1円柱形状部分84qの外周面との間の隙間、およびバルブシート83pの貫通穴の外周面とシールピン84pの第2円柱形状部分84rの外周面との間の隙間を圧油が通過することができるようになっている。
【0061】
このような流路調整バルブ80aが用いられる場合には、
図14に示すように、各往復部材78が中立位置に位置しているときには、各往復部材78の押動部78bに各作動ピン85の第2円柱形状部分85bの上端が接触した状態となる。具体的には、圧縮したスプリング88が元の状態に戻ろうとする力によりシールプレート87が
図13乃至
図15に示す上方向に押動されることにより、接続部分89を介してシールプレート87に接続されたシールピン84pおよび作動ピン85も
図13乃至
図15に示す上方向に押動される。しかしながら、作動ピン85の第2円柱形状部分85bの上端が各往復部材78の押動部78bに接触するとこれ以上シールピン84pおよび作動ピン85は上方に移動しなくなるため、シールピン84pはバルブシート83pの貫通穴に収容される。この状態では第1シールプレート81pおよび第2シールプレート82pはシールピン84pによりシールされない。
【0062】
一方、
図13に示すように、各往復部材78が前進位置に移動すると、左側の往復部材78が上昇する。この場合には、左側の流路調整バルブ80aにおいて圧縮したスプリング88が元の状態に戻ろうとする力によりシールプレート87が
図13乃至
図15に示す上方向に押動されることにより、接続部分89を介してシールプレート87に接続されたシールピン84pおよび作動ピン85も
図13乃至
図15に示す上方向に押動される。このことにより、左側の流路調整バルブ80aにおいてシールピン84pの第2円柱形状部分84rにより第2シールプレート82pの貫通穴がシールされる。なお、この状態では左側の流路調整バルブ80aにおいて第1シールプレート81pはシールピン84pによりシールされない。また、各往復部材78が前進位置に移動すると、右側の往復部材78が下降することによりこの往復部材78の押動部78bが右側の作動ピン85の第2円柱形状部分85bを下方に押動する。このことにより、右側の流路調整バルブ80aにおいてシールピン84pの第1円柱形状部分84qが第1シールプレート81pの貫通穴に入るようになるため、第1シールプレート81pの貫通穴がシールピン84pによりシールされる。なお、この状態では右側の流路調整バルブ80aにおいて第2シールプレート82pはシールピン84pによりシールされない。
【0063】
また、
図15に示すように、各往復部材78が後進位置に移動すると、左側の往復部材78が下降することによりこの往復部材78の押動部78bが左側の作動ピン85の第2円柱形状部分85bを下方に押動する。このことにより、左側の流路調整バルブ80aにおいてシールピン84pの第1円柱形状部分84qが第1シールプレート81pの貫通穴に入るようになるため、第1シールプレート81pの貫通穴がシールピン84pによりシールされる。なお、この状態では左側の流路調整バルブ80aにおいて第2シールプレート82pはシールピン84pによりシールされない。また、各往復部材78が後進位置に移動すると、右側の往復部材78が上昇する。この場合には、右側の流路調整バルブ80aにおいて圧縮したスプリング88が元の状態に戻ろうとする力によりシールプレート87が
図13乃至
図15に示す上方向に押動されることにより、接続部分89を介してシールプレート87に接続されたシールピン84pおよび作動ピン85も
図13乃至
図15に示す上方向に押動される。このことにより、右側の流路調整バルブ80aにおいてシールピン84pの第2円柱形状部分84rにより第2シールプレート82pの貫通穴がシールされる。なお、この状態では右側の流路調整バルブ80aにおいて第1シールプレート81pはシールピン84pによりシールされない。
【0064】
図13乃至
図15に示すような流路調整バルブ80aを備えた圧油供給機構30aでも、操作ハンドル70が回転させられると
図14に示すような中立位置から互いに反対方向に移動させられる各往復部材78が用いられるとともに各往復部材78に対応して一対の流路調整バルブ80aが用いられることにより、ピストン部材52の前進運動および後退運動をスムーズに行うことができるようになる。より詳細に説明すると、
図13乃至
図15に示すような流路調整バルブ80aを備えた圧油供給機構30aでは、操作ハンドル70が初期位置から回転すると切断部50が作動され、付勢手段により操作ハンドル70が初期位置に戻されると切断部50の動作が停止されるような構成となっているが、流路調整バルブ80aがもし1つしか設けられていない場合には、流路調整バルブ80aがスムーズに中立位置に戻らず、よって切断部50の動作がスムーズに停止しない場合がある。これに対し、一対の流路調整バルブ80aを有する圧油供給機構30aを用いた場合には、各往復部材78の高さレベルが同じになることにより一対の流路調整バルブ80aが同じ高さレベルになると一対の流路調整バルブ80aにおいて第1シールプレート81pおよび第2シールプレート82pがそれぞれシールピン84pによりシールされなくなる。このため、油室28から圧油供給機構30aに送られた圧油はそのままドレン管44により油室28に戻されるようになるため、圧油供給機構30aから切断部50の前進油室や後進油室58に圧油が送られなくなり、切断部50の動作をスムーズに停止させることができるようになる。
【0065】
なお、
図13乃至
図15に示すような一対の流路調整バルブ80aを有する圧油供給機構30aが用いられる場合には、第1シールプレート81pの貫通穴にシールピン84pの第1円柱形状部分84qが挿入されることにより第1シールプレート81pの貫通穴がシールされ、また、第2シールプレート82pの貫通穴にシールピン84pの第2円柱形状部分84rが挿入されることにより第2シールプレート82pの貫通穴がシールされる。この場合には、第1シールプレート81pの貫通穴の外周面とシールピン84pとの外周面との間で圧油が漏れ出てしまったり、第2シールプレート82pの貫通穴の外周面とシールピン84pとの外周面との間で圧油が漏れ出てしまったりするおそれがある。このように、
図13乃至
図15に示す圧油供給機構30aでは、圧油が漏れ出る可能性のある箇所が4カ所であるため、
図7乃至
図9に示す圧油供給機構30のように圧油が漏れ出る可能性のある箇所が2カ所(具体的には、2つの第1シールプレート81)である場合と比較して圧油が漏れ出てしまう可能性が大きくなる。
【0066】
次に、従来技術に係る圧油供給機構について
図16を用いて説明する。
図16に示す従来技術に係る圧油供給機構を説明するにあたり、
図1乃至
図3に示す切断装置10と同じ構成要素については同じ参照符号を付けてその説明を省略する。
【0067】
図16に示す圧油供給機構は、細長い1本の略円柱形状のスプールバルブ160と、スプールバルブ160を収容する断面が略円形の穴170を有している。ここで、スプールバルブ160の直径の大きさと、穴170の直径の大きさは同一の大きさとなっている。このことにより、スプールバルブ160の外周面と穴170の外周面との間で圧油が通ることはない。また、スプールバルブ160の一方の端部にはスプリング164が設けられるとともにスプールバルブ160の他方の端部にもスプリング166が設けられている。このようなスプールバルブ160は
図16における上下方向に移動可能となっている。具体的には、操作者が操作ハンドル(図示せず)を操作すると、スプールバルブ160が
図16における中立位置から上方向または下方向に移動するようになる。また、
図16に示すような中立位置からスプールバルブ160が上方向または下方向に移動した後、このスプールバルブ160に外部から力が加えられなくなると、圧縮したスプリング164またはスプリング166が元の状態に戻ろうとする力によりスプールバルブ160は元の中立位置に戻るようになる。
【0068】
また、
図16において、穴170に面するよう第1の油路132が設けられており、この第1の油路132は油室28に連通している。また、第2の油路134の一端が穴170に面するよう設けられている。スプールバルブ160が中立位置に位置しているときにはこの第2の油路134はスプールバルブ160の外周面に面している。また、第2の油路134は第3の油路136に連通しており、この第3の油路136は切断部50の前進油室に連通している。また、第4の油路138の一端が穴170に面するよう設けられている。スプールバルブ160が中立位置に位置しているときにはこの第4の油路138はスプールバルブ160の外周面に面している。また、第4の油路138は第5の油路140に連通しており、この第5の油路140は切断部50の後進油室58に連通している。また、穴170に面するよう2つのドレン管142、144が形成されており、各ドレン管142、144により圧油が油室28に戻されるようになっている。
【0069】
また、スプールバルブ160の外周面の一部には溝162が形成されている。また、穴170の外周面にも溝172が形成されている。スプールバルブ160の外周面と穴170の外周面との間で、このような溝162、172を圧油が通ることができるようになっている。
【0070】
図16に示すようにスプールバルブ160が中立位置に位置しているときには、第2の油路134の端部および第4の油路138の端部がそれぞれスプールバルブ160の外周面に面することになるため、第1の油路132と第2の油路134とが連通しなくなる。また、第1の油路132と第4の油路138とが連通しなくなる。このことにより、油室28から切断部50の前進油室および後進油室58に圧油が送られなくなり、区画部材54が移動しなくなるので、切断部50は動作しない。また、操作者が操作ハンドルを操作することによってスプールバルブ160が
図16における中立位置から上方向に移動すると、第2の油路134の端部および第4の油路138の端部がそれぞれスプールバルブ160の外周面に形成された溝162に面するようになる。このことにより、第1の油路132と第2の油路134とが連通するようになるため、油室28から第1の油路132、第2の油路134および第3の油路136を介して切断部50の前進油室に圧油が送られるようになる。このことにより、区画部材54およびピストン部材52が一体的に
図1および
図2における左方向に移動するようになるため、切断部50において軸68を中心として各切断部材64、66が互いに接近する方向に回転する。また、この際に、切断部50の後進油室58から第5の油路140に戻し油が送られ、この戻し油は第5の油路140から第4の油路138を介してドレン管144により油室28に戻される。
【0071】
また、操作者が操作ハンドルを操作することによってスプールバルブ160が
図16における中立位置から下方向に移動すると、第2の油路134の端部および第4の油路138の端部がそれぞれスプールバルブ160の外周面に形成された溝162に面するようになる。このことにより、第1の油路132と第4の油路138とが連通するようになるため、油室28から第1の油路132、第4の油路138および第5の油路140を介して切断部50の後進油室58に圧油が送られるようになる。このことにより、区画部材54およびピストン部材52が
図1および
図2における右方向に一体的に移動するようになるため、切断部50において軸68を中心として各切断部材64、66が互いに離間する方向に回転する。また、この際に、切断部50の前進油室から第3の油路136に戻し油が送られ、この戻し油は第3の油路136から第2の油路134を介してドレン管142により油室28に戻される。
【0072】
このような
図16に示すスプールバルブ160を備えた圧油供給機構でも、操作ハンドル70が初期位置から回転すると作動部21により工具が作動され、付勢手段により操作ハンドル70が初期位置に戻されると作動部21による工具の動作が停止されるような構成となっている。ここで、スプールバルブ160が1つしか設けられておらず、このスプールバルブ160は圧縮したスプリング164またはスプリング166が元の状態に戻ろうとする力により元の中立位置に戻るようになっている。しかしながら、このような構成では切断部50の各切断部材64、66に大きな力がかかったときにこの負荷によってピストン部材52や本体部56が変形してしまい、この場合にはスプールバルブ160に余分な側圧がかかってしまう。このときには、操作ハンドル70から手を離したときにスプリング164またはスプリング166によりスプールバルブ160が元の中立位置に戻らないことがあり、よって切断部50の動作がスムーズに停止しないことがある。これに対し、上述したように一対の流路調整バルブ80または一対の流路調整バルブ80aを用いた場合には、このような問題が生じることを抑制することができる。
【0073】
なお、本発明による油圧作動装置は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0074】
例えば、作動部21により動作される工具は切断部50に限定されることはない。工具として、例えば、扉等の対象物の隙間をこじ開けるためのスプレッダー等が用いられてもよい。