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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20231215BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231215BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00
C08L7/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017098322
(22)【出願日】2017-05-17
(65)【公開番号】P2018193478
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-03-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雅子
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】藤原 浩子
【審判官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-256585(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021002(WO,A1)
【文献】特開2014-189774(JP,A)
【文献】特開2013-159742(JP,A)
【文献】特開2008-31427(JP,A)
【文献】特開2013-253207(JP,A)
【文献】特開2015-98561(JP,A)
【文献】特開2011-184554(JP,A)
【文献】特開昭61-141742(JP,A)
【文献】特開2015-209540(JP,A)
【文献】特開2016-6197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分及び充填剤を含み、
該ゴム成分は、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム(1)、ブタジエンゴム(2)、及び天然ゴムを含み、
前記スチレンブタジエンゴムは、ビニル含量が10~50モル%であり、
前記ブタジエンゴム(1)は、シス含量が40質量%以下であり、
前記ブタジエンゴム(2)は、シス含量が95質量%以上であり、
前記ゴム成分100質量%中の前記ブタジエンゴム(1)の含有量が5~20質量%、前記ブタジエンゴム(2)の含有量が10~25質量%、前記天然ゴムの含有量が5~30質量%であり、
前記ゴム成分100質量部に対する前記充填剤の含有量が50~80質量部であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ブタジエンゴム(1)が、シリカと相互作用する官能基を有する変性ブタジエンゴムである請求項記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴム組成物を用いて作製したタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車タイヤ用のゴム組成物としては、ポリブタジエンやブタジエン-スチレン共重合体等の共役ジエン系重合体と、カーボンブラックやシリカ等の充填剤とを含有するゴム組成物等が用いられている。近年、環境問題への関心の高まりから、タイヤに対して低燃費であることや長寿命であることが求められており、タイヤに用いるゴム組成物に対しても、低燃費性能、耐摩耗性能に優れることが求められている。
【0003】
これまで、耐摩耗性能を向上させるためには、耐摩耗性能に優れるブタジエンゴムを多く配合する方法がとられてきたが、そのような方法ではゴム組成物の破壊特性低下を招き、ウェットグリップ性能も低下する傾向があった。
【0004】
一方、ウェットグリップ性能を向上させるためには、一般的に充填剤を多く配合する手法がとられてきたが、低燃費性能と背反するため、バランスを確保することが困難であった。
【0005】
また、カーボンブラックやシリカといった一般的な充填剤に加えて、水酸化アルミニウムのような特殊な充填剤を配合してウェットグリップ性能を向上させる試みも多く検討されているが(例えば、特許文献1参照)、耐摩耗性能とのバランスの面で改善の余地があった。
【0006】
このように、低燃費性能や耐摩耗性能を確保しつつ、ウェットグリップ性能を維持する技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-213353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能、低燃費性能を確保しながら、耐摩耗性能を向上させたタイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製したタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ゴム成分及び充填剤を含み、該ゴム成分はブタジエンゴム(1)、ブタジエンゴム(2)、及び天然ゴムを含み、ブタジエンゴム(1)はシス含量が40質量%以下であり、ブタジエンゴム(2)はシス含量が95質量%以上であり、ゴム成分100質量%中のブタジエンゴム(1)の含有量は5~20質量%、ブタジエンゴム(2)の含有量は10~25質量%であり、ゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量は50質量部以上であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0010】
上記ブタジエンゴム(1)は、シリカと相互作用する官能基を有する変性ブタジエンゴムであることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したタイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シス含量が40質量%以下であるブタジエンゴム(1)、シス含量が95質量%以上であるブタジエンゴム(2)、及び天然ゴムを含むゴム成分、並びに充填剤を含み、ブタジエンゴム(1)、ブタジエンゴム(2)、充填剤の含有量が所定量であるタイヤ用ゴム組成物であるので、タイヤのウェットグリップ性能、低燃費性能を確保しながら、耐摩耗性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シス含量が40質量%以下であるブタジエンゴム(1)、シス含量が95質量%以上であるブタジエンゴム(2)、及び天然ゴムを含むゴム成分、並びに充填剤を含み、ゴム成分100質量%中のブタジエンゴム(1)の含有量が5~20質量%、ブタジエンゴム(2)の含有量が10~25質量%であり、ゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量が50質量部以上である。
【0014】
上述のように、低燃費性能や耐摩耗性能を確保しつつ、ウェットグリップ性能を維持する技術の開発が望まれていたが、これらの性能は互いに背反性能であるために、従来これらの性能をバランス良く改善することは困難であった。
【0015】
ここで、一般的に、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びブタジエンゴム(BR)を含むゴム成分と、充填剤とを配合したゴム組成物では、充填剤はSBRに偏在する傾向があり、SBRに比べBRは充填剤による補強効果が小さくなる傾向があることが知られている。
【0016】
そのような中、本発明者は、シス含量が40質量%以下であるブタジエンゴムと、シス含量が95質量%以上であるブタジエンゴムと、天然ゴムとを併用することによって、充填剤の偏在を極力低減させたゴム組成物を得ることができることを見出した。そして、ゴム成分をこのような構成とすることにより、従来に比べブタジエンゴムの充填剤による補強効果を大きくすることができ、耐摩耗性能に優れたゴム組成物が得られることを見出した。
【0017】
そして本発明においては、ゴム成分として、所定量のシス含量が40質量%以下であるブタジエンゴム(1)と、所定量のシス含量が95質量%以上であるブタジエンゴム(2)と、天然ゴムとを併用して用い、充填剤を所定量配合することにより、ウェットグリップ性能、低燃費性能を確保しながら、耐摩耗性能を向上させることが可能となり、ウェットグリップ性能、低燃費性能、及び耐摩耗性能をバランス良く改善することができる。
【0018】
特に、所定量のシス含量が40質量%以下であるブタジエンゴム(1)と、所定量のシス含量が95質量%以上であるブタジエンゴム(2)と、天然ゴムと、所定量の充填剤とを併用することによって、ウェットグリップ性能、低燃費性能を確保しながら、耐摩耗性能を相乗的に向上させることができることは本発明者が初めて見出したことである。
【0019】
上記効果の発揮には、以下のようなメカニズムが働いていると推測される。
スチレンブタジエンゴム(SBR)と、シス含量が95質量%以上のような高シス含量のブタジエンゴム(BR)、充填剤を混合すると、充填剤との相互作用が比較的弱いBRには充填剤が分散しにくいところ、シス含量が40質量%以下のような低シス含量のBRを配合すると、BRに充填剤が分散しやすくなり、BRが補強され、更に天然ゴム(NR)を配合することによって、加工性が向上し、ゴム全体への充填剤の分散性を向上させることができて、これらにより、上述の本発明の効果が発揮できるものと推測される。
【0020】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴム(1)、ブタジエンゴム(2)、及び天然ゴムを含むゴム成分を含む。
【0021】
上記ブタジエンゴム(1)は、シス含量が40質量%以下のものであれば特に制限されないが、該ブタジエンゴム(1)のシス含量としては、好ましくは36質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。また、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
なお、本明細書において、BRのシス含量(シス1,4結合含有率)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0022】
上記ブタジエンゴム(1)のビニル含量は、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。なお、該ブタジエンゴム(1)のビニル含量の下限は特に限定されず、0モル%であってもよい。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、BRのビニル含量は、H-NMR測定により算出される。
【0023】
上記ブタジエンゴム(1)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30万以上、より好ましくは40万以上である。一方、該ブタジエンゴム(1)の重量平均分子量の上限は特に限定されないが、例えば、好ましくは100万以下、より好ましくは90万以下、更に好ましくは60万以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKgel SuperMultiporeHZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0024】
上記ブタジエンゴム(1)としては、シス含量が上記所定の範囲内であれば特に限定されず、低シス含量のBR、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含むBR、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)も使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
希土類系BRとしては、従来公知のものを使用でき、例えば、希土類元素系触媒(ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒)などを用いて合成したもの(例えば、ネオジム(Nd)含有化合物を用いたネオジム系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(Nd系BR)など)が挙げられる。
【0026】
上記ブタジエンゴム(1)としては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)、ランクセス(株)等の製品を使用できる。
【0027】
また、上記ブタジエンゴム(1)としては、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。
変性BRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するBRが挙げられ、例えば、BRの少なくとも一方の末端を、下記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性BR(末端に下記官能基を有する末端変性BR)や、主鎖に下記官能基を有する主鎖変性BRや、主鎖及び末端に下記官能基を有する主鎖末端変性BR(例えば、主鎖に下記官能基を有し、少なくとも一方の末端を下記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された主鎖末端変性BR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性BR等が挙げられる。あるいは例えば、四塩化スズ、四塩化ケイ素等の多官能型の変性剤によりゴムの主鎖及び/又は末端が変性されて一部に分岐構造を有するものであってもよい。
【0028】
中でも特に、上記ブタジエンゴム(1)における主鎖及び/又は末端(より好ましくは末端)が、シリカと相互作用する官能基を有する変性剤により変性されたものであることが好ましい。このような変性剤で変性され、シリカと相互作用する官能基を有する変性ブタジエンゴムをブタジエンゴム(1)として用いることで、BRへの充填剤の分散性を更に改善でき、優れたウェットグリップ性能と耐摩耗性能をバランス良く得ることができる。このように、上記ブタジエンゴム(1)が、シリカと相互作用する官能基を有する変性ブタジエンゴムであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0029】
上記シリカと相互作用する官能基としては、例えば、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、炭化水素基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、低燃費性能、ウェットグリップ性能の向上効果が高いという理由から、1,2,3級アミノ基(特に、グリシジルアミノ基)、エポキシ基、水酸基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、炭化水素基が好ましい。
【0030】
上記シリカと相互作用する官能基を有する変性ブタジエンゴムとしては、下記式(1)で表される化合物(変性剤)により変性されたブタジエンゴム(S変性BR)が好ましい。
【0031】
【化1】
【0032】
上記式(1)中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。
【0033】
上記S変性BRとしては、特開2010-111753号公報などに記載されているものが挙げられ、なかでも、ブタジエンゴムの重合末端(活性末端)を上記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムが好適に用いられる。
【0034】
上記式(1)において、優れた低燃費性能、破壊特性が得られるという点から、R、R及びRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。R及びRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、R及びRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。好ましい化合物を使用することにより、本発明の効果がより良好に得られる。
【0035】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、前述の性能をより良好に改善できる点から、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記シリカと相互作用する官能基を有する変性ブタジエンゴムとしてはまた、下記式(2)で表される化合物(変性剤)により変性されたブタジエンゴムも好ましい形態の1つである。
【0037】
【化2】
【0038】
上記式(2)中、Rは、同一又は異なって、炭素数1~30の1価の炭化水素基を表す。Xは、下記式:
【0039】
【化3】
【0040】
(式中、R11及びR12は、同一又は異なって、2価の炭化水素基を表す。R13は、環状エーテル基を表す。)で表される基である。Xは、下記式:
【0041】
【化4】
【0042】
(式中、R21は炭素数2~10のアルキレン基又はアルキルアリーレン基を表す。R22は水素原子又はメチル基を表す。R23は炭素数1~10のアルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。tは2~20の整数である。)で表される基である。a、b、及びcは、各繰り返し単位の繰り返し数を表す。
【0043】
上記式(2)で表される化合物(変性剤)により変性されたブタジエンゴムとしては、なかでも、ブタジエンゴムの重合末端(活性末端)を上記式(2)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムが好適に用いられる。
【0044】
上記式(2)において、Rは、同一又は異なって、炭素数1~30の1価の炭化水素基を表すが、該1価の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基、炭素数3~30の脂環式炭化水素基、炭素数6~30の芳香族炭化水素基等が挙げられる。中でも、優れた低燃費性能、破壊特性が得られるという点から、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基が好ましい。より好ましくは炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、更に好ましくは炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、特に好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基である。上記Rの好ましい例としては、上記炭素数を有するアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。中でも、優れた低燃費性能、破壊特性が得られるという点から、メチル基が特に好ましい。
【0045】
上記式(2)中のXにおける、R11及びR12は、同一又は異なって、2価の炭化水素基を表すが、例えば、分岐又は非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐又は非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、分岐又は非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基、炭素数6~30のアリーレン基などが挙げられる。なかでも、分岐又は非分岐の炭素数1~30のアルキレン基が好ましい。より好ましくは分岐又は非分岐の炭素数1~15のアルキレン基、更に好ましくは分岐又は非分岐の炭素数1~5のアルキレン基、特に好ましくは非分岐の炭素数1~3のアルキレン基である。上記R11及びR12の好ましい例としては、上記炭素数を有するアルキレン基が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などが挙げられる。中でも、優れた低燃費性能、破壊特性が得られるという点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が特に好ましい。
【0046】
上記式(2)中のXにおける、R13は、環状エーテル基を表すが、該環状エーテル基としては、例えば、オキシラン基、オキセタン基、オキソラン基、オキサン基、オキセパン基、オキソカン基、オキソナン基、オキセカン基、オキセト基、オキソール基等のエーテル結合を1つ有する環状エーテル基、ジオキソラン基、ジオキサン基、ジオキセパン基、ジオキセカン基等のエーテル結合を2つ有する環状エーテル基、トリオキサン基等のエーテル結合を3つ有する環状エーテル基等が挙げられる。なかでも、エーテル結合を1つ有する炭素数2~7の環状エーテル基が好ましく、エーテル結合を1つ有する炭素数2~5の環状エーテル基がより好ましく、オキシラン基が更に好ましい。また、環状エーテル基は環骨格内に不飽和結合を有していないことが好ましい。また、上述の環状エーテル基が有する水素原子は、上述の1価の炭化水素基により置換されていてもよい。
【0047】
上記式(2)中のXにおける、R21は炭素数2~10のアルキレン基又はアルキルアリーレン基を表すが、なかでも、分岐又は非分岐の炭素数2~8のアルキレン基が好ましく、分岐又は非分岐の炭素数2~6のアルキレン基がより好ましく、分岐又は非分岐の炭素数2~4のアルキレン基が更に好ましく、分岐又は非分岐の炭素数3のアルキレン基が特に好ましい。上記R21の好ましい例としては、上記炭素数を有するアルキレン基が挙げられ、具体的には、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基などが挙げられる。なかでも、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基が特に好ましく、プロピレン基、イソプロピレン基が最も好ましい。
【0048】
上記式(2)中のXにおける、R22は水素原子又はメチル基を表すが、水素原子であることが特に好ましい。
【0049】
上記式(2)中のXにおける、R23は炭素数1~10のアルコキシ基又はアリールオキシ基を表すが、なかでも、分岐又は非分岐の炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、分岐又は非分岐の炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましく、分岐又は非分岐の炭素数1~4のアルコキシ基が更に好ましい。上記R23の好ましい例としては、上記炭素数を有するアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基などが挙げられる。なかでも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が特に好ましく、メトキシ基が最も好ましい。
【0050】
上記式(2)中のXにおける、tは2~20の整数であるが、2~8が特に好ましい。
【0051】
上記式(2)で表される化合物としては、前述の性能をより良好に改善できる点から、下記式(3)で表される化合物が好適に用いられる。
【0052】
【化5】
【0053】
上記式(1)で表される化合物又は上記式(2)で表される化合物(変性剤)によるブタジエンゴムの変性方法としては、特公平6-53768号公報、特公平6-57767号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を使用できる。例えば、ブタジエンゴムと該化合物とを接触させることで変性でき、具体的には、リチウム化合物などの重合開始剤を用いたアニオン重合によるブタジエンゴムの調製後、該ゴム溶液中に該化合物を所定量添加し、ブタジエンゴムの重合末端(活性末端)と該化合物とを反応させる方法などが挙げられる。
【0054】
上記ブタジエンゴム(1)の含有量は、上記ゴム成分100質量%中、5~20質量%である。上記ブタジエンゴム(1)の含有量がこのような範囲であることにより、ウェットグリップ性能、低燃費性能を確保しながら、耐摩耗性能を向上させることができる。該含有量としては、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上である。また、好ましくは17質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0055】
上記ブタジエンゴム(2)は、シス含量が95質量%以上のものであれば特に制限されないが、該ブタジエンゴム(2)のシス含量としては、好ましくは97質量%以上である。なお、上限は特に限定されない。
【0056】
上記ブタジエンゴム(2)のビニル含量は、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下、より更に好ましくは5モル%以下、特に好ましくは3モル%以下である。なお、該ブタジエンゴム(2)のビニル含量の下限は特に限定されず、0モル%であってもよい。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0057】
上記ブタジエンゴム(2)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30万以上、より好ましくは40万以上である。一方、該ブタジエンゴム(2)の重量平均分子量の上限は特に限定されないが、例えば、好ましくは100万以下、より好ましくは90万以下、更に好ましくは60万以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0058】
上記ブタジエンゴム(2)としては、シス含量が上記所定の範囲内であれば特に限定されず、高シス含量のBR、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含むBR、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)も使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
上記ブタジエンゴム(2)としては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)、ランクセス(株)等の製品を使用できる。
【0060】
また、上記ブタジエンゴム(2)としては、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRについては上述したのと同様である。
【0061】
上記ブタジエンゴム(2)の含有量は、上記ゴム成分100質量%中、10~25質量%である。上記ブタジエンゴム(2)の含有量がこのような範囲であることにより、ウェットグリップ性能、低燃費性能を確保しながら、耐摩耗性能を向上させることができる。該含有量としては、好ましくは12質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、好ましくは22質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは17質量%以下である。
【0062】
上記ゴム成分中の、上記ブタジエンゴム(1)と上記ブタジエンゴム(2)との含有量の比(ブタジエンゴム(1)/ブタジエンゴム(2))は、特に限定されないが、耐摩耗性能とウェットグリップ性能とのバランスの観点から、0.2/1~2/1が好ましく、0.5/1~1.5/1がより好ましく、0.7/1~1.2/1が特に好ましい。
【0063】
なお、ブタジエンゴムのシス含量は、重合時に使用する触媒(重合開始剤)の種類により調整することが可能である。例えば、チーグラー・ナッタ触媒を使用するとシス含量の高いブタジエンゴムを製造することができ、また、アルキルリチウム、アリールリチウム等のリチウム化合物(リチウム系触媒)を使用することでシス含量の低いブタジエンゴムを製造することができる。
【0064】
上記ゴム成分に配合される天然ゴム(NR)としては、特に限定されず、例えば、TSR20、RSS#3など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴムを使用することもできる。NRを配合することにより、NR自体の補強性も加わり、耐摩耗性能と低燃費性能をバランス良く向上できる。
【0065】
本発明の効果がより好適に得られるという点から、NRの含有量は、上記ゴム成分中100質量%中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0066】
上記ゴム成分は、ブタジエンゴム(1)、ブタジエンゴム(2)、及び天然ゴムに加えて、更に、その他のゴム成分を含んでいてもよい。
【0067】
上記その他のゴム成分としては、例えば、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、上記ブタジエンゴム(1)又は上記ブタジエンゴム(2)以外のブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X-IIR)等の非ジエン系ゴム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、良好な低燃費性能、ウェットグリップ性能が得られるという理由から、上記ゴム成分が、その他のゴム成分としてSBRを含むことが好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、SBRを配合した場合であっても、シス含量が40質量%以下であるブタジエンゴムと、シス含量が95質量%以上であるブタジエンゴムと、天然ゴムとを併用することによって、充填剤がSBRに偏在するのを充分に低減でき、ブタジエンゴムの充填剤による補強効果を大きくすることができるため、良好な耐摩耗性能を得ることができ、本発明の効果が好適に得られる。
【0068】
SBRは、スチレン、1,3-ブタジエン等の原料モノマーの配合を適宜設定して、乳化重合や、溶液重合、アニオン重合等公知の方法を用いることで調製することができ、例えば、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
【0070】
また、SBRとしては、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、上記変性BRと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
【0071】
中でも特に、SBRにおける主鎖及び/又は末端(より好ましくは末端)が、シリカと相互作用する官能基を有する変性剤により変性されたものであることが好ましい。このような変性剤で変性され、シリカと相互作用する官能基を有する変性スチレンブタジエンゴムを用いることで、特に優れた低燃費性能、ウェットグリップ性能が得られる。このように、上記ゴム成分がSBRを含み、該SBRがシリカと相互作用する官能基を有する変性スチレンブタジエンゴムであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0072】
上記シリカと相互作用する官能基を有する変性剤により変性されたスチレンブタジエンゴムとしては、上述のシリカと相互作用する官能基を有する変性剤により変性されたブタジエンゴムの骨格成分であるブタジエンゴムをスチレンブタジエンゴムに置き換えたものを使用すればよい。なかでも、上記シリカと相互作用する官能基を有する変性スチレンブタジエンゴムとしては、上記式(1)で表される化合物(変性剤)により変性されたスチレンブタジエンゴム(S変性SBR)、又は、上記式(2)で表される化合物(変性剤)により変性されたスチレンブタジエンゴムが好ましい。例えば、溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の重合末端(活性末端)を上記式(1)で表される化合物により変性されたスチレンブタジエンゴム(S変性S-SBR)としては、特開2010-111753号公報などに記載されているものが挙げられる。
【0073】
上記式(1)で表される化合物又は上記式(2)で表される化合物(変性剤)によるスチレンブタジエンゴムの変性方法としては、従来公知の手法を使用でき、例えば、スチレンブタジエンゴムと該化合物とを接触させることで変性できる。具体的には、溶液重合によるスチレンブタジエンゴムの調製後、該ゴム溶液中に該化合物を所定量添加し、スチレンブタジエンゴムの重合末端(活性末端)と該化合物とを反応させる方法などが挙げられる。
【0074】
SBRとしては油展SBRを用いることもできるし、非油展SBRを用いることもできる。油展SBRを用いる場合、SBRの油展量、すなわち、SBRに含まれる油展オイルの含有量としては、例えば、SBRのゴム固形分100質量部に対して、10~50質量部とすることができる。
【0075】
SBRのスチレン含量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。スチレン含量が上記範囲内であると、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、H-NMR測定により算出される。
【0076】
SBRのビニル含量は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは25モル%以上、より更に好ましくは30モル%以上である。また、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。ビニル含量が上記範囲内であると、良好な耐摩耗性能が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのビニル含量とは、ブタジエン部のビニル含量(ブタジエン構造中のビニル基のユニット数量)のことを示し、H-NMR測定により算出される。
【0077】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万以上が好ましく、25万以上がより好ましく、30万以上が更に好ましく、90万以上が特に好ましい。また、200万以下が好ましく、180万以下がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、良好な加工性、低燃費性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。
【0078】
SBRの含有量は、低燃費性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能の観点から、上記ゴム成分100質量%中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは65質量%以下である。
【0079】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、充填剤を含む。該充填剤としては、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどのタイヤ工業において一般的に充填剤として使用しうるものを用いることができる。中でも、充填剤としてシリカを配合することにより、補強効果が得られ、低燃費性能、ウェットグリップ性能が改善され、本発明の効果が良好に得られる。更には、充填剤としてシリカとカーボンブラックとを併用することにより本発明の効果がより好適に得られる。このように、シリカを含む充填剤を配合する形態もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。更に、シリカ及びカーボンブラックを含む充填剤を配合する形態もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0080】
上記充填剤の含有量(すなわち、シリカ、カーボンブラック等充填剤に分類され得るものの合計含有量)は、上記ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上である。充填剤の含有量がこのような範囲であることにより、ウェットグリップ性能、低燃費性能を確保しながら、耐摩耗性能を向上させることができる。該充填剤の含有量としては、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは55質量部以上、より好ましくは60質量部以上である。また、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。
【0081】
上述のとおり、本発明のゴム組成物はシリカを含むことが好ましいが、シリカの含有量としては、上記ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましい。シリカの含有量がこのような範囲であることにより、低燃費性能、ウェットグリップ性能がより優れたものとなる。より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、特に好ましくは55質量部以上である。また、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。
【0082】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどを用いることができるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカ(含水シリカ)が好ましい。これらシリカは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる。また、好ましくは250m/g以下、より好ましくは200m/g以下、更に好ましくは180m/g以下である。上限以下にすることで、良好な低燃費性能が得られる。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0084】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0085】
本発明のゴム組成物がシリカを含有する場合、シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリメトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、スルフィド系、メルカプト系が好ましい。
【0086】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0087】
本発明のゴム組成物がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。下限以上にすることで、シランカップリング剤を配合したことによる効果が得られる傾向がある。また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上限以下にすることで、配合量に見合った効果が得られ、良好な混練時の加工性が得られる傾向がある。
【0088】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、5m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましく、80m/g以上が更に好ましい。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られやすく、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K 6217-2:2001によって求められる。
【0090】
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、5ml/100g以上が好ましく、80ml/100g以上がより好ましく、100ml/100g以上が更に好ましい。下限以上にすることで、充分な補強効果が得られ、良好な耐摩耗性能、破壊特性が得られる傾向がある。また、300ml/100g以下が好ましく、180ml/100g以下がより好ましく、140ml/100g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、分散性が良好なものとなり、良好な低燃費性能、加工性が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックのDBP吸収量は、ASTM D2414-93に準拠して測定される。
【0091】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社、デグッサ社等の製品を使用できる。
【0092】
本発明のゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。下限以上にすることで、充分な補強性を得ることができ、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上限以下にすることで、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0093】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、伸展油(オイル)、液状樹脂などの可塑剤;硫黄、有機架橋剤などの加硫剤;チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤などの加硫促進剤;ステアリン酸、酸化亜鉛などの加硫活性化剤;ジクミルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;加工助剤;老化防止剤;ワックス;滑剤などの従来ゴム工業で使用される配合剤を用いることができる。
【0094】
本発明のゴム組成物は、加工性の観点から、オイル、液状樹脂などの可塑剤を含むことが好ましい。なかでも、上記ゴム組成物は、可塑剤としてオイルを含むことが好ましい。これにより、硬度を適切な低さに調整し良好な加工性、ウェットグリップ性能、破壊特性を得ることができる。
【0095】
オイルとしては、特に限定されず、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果が好適に得られるという理由から、アロマ系プロセスオイルが好ましい。
【0096】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0097】
なお、オイルは、環境の面から、多環式芳香族含有量(PCA)が3質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましい。該多環式芳香族含有量(PCA)は、英国石油学会346/92法に従って測定される。
【0098】
上記ゴム組成物はまた、可塑剤として液状樹脂を含んでいてもよい。可塑剤として液状樹脂を含むことにより、低燃費性能、破壊特性、ウェットグリップ性能をより良好なものとすることができる。
【0099】
上記液状樹脂としては、特に制限されないが、例えば、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、低燃費性能、破壊特性の点から、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、及びこれらの誘導体が好ましく、クマロンインデン樹脂がより好ましい。
【0100】
上記芳香族ビニル重合体とは、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂であり、スチレンの単独重合体、α-メチルスチレンの単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体などが挙げられる。
上記クマロンインデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれていてもよいモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
上記インデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
上記テルペン樹脂とは、αピネン、βピネン、カンフェル、ジペテンなどのテルペン化合物を重合して得られる樹脂や、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料として得られる樹脂であるテルペンフェノールに代表されるテルペン系樹脂である。
上記ロジン樹脂とは、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、またはこれらのエステル化合物、または、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂である。
【0101】
上記液状樹脂の軟化点は、-40℃以上であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましく、-10℃以上であることが更に好ましく、0℃以上であることが特に好ましい。また、該軟化点は、45℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、35℃以下が更に好ましい。液状樹脂の軟化点が上記範囲内であると、ウェットグリップ性能、破壊特性の改善効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、軟化点とは、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0102】
本発明のゴム組成物が可塑剤を含む場合、可塑剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましい。また、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい。可塑剤の含有量がこのような範囲であることにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0103】
本発明のゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0104】
ワックスの含有量は、前記性能バランスの観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1~20質量部、より好ましくは1.5~10質量部である。
【0105】
本発明のゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。
【0106】
老化防止剤の含有量は、前記性能バランスの観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~7質量部である。
【0107】
なお、老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0108】
本発明のゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。ステアリン酸の含有量は、前記性能バランスの観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
【0109】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0110】
本発明のゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0111】
本発明のゴム組成物が酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは3.7質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。上記数値範囲内であると、充分な硬度が得られ、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0112】
本発明のゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄の含有量は、前記性能バランスの観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部、更に好ましくは1~3質量部である。
【0113】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0114】
なお、硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0115】
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤の含有量は、前記性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~7質量部である。
【0116】
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;N,N′-ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、前記性能バランスの観点から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0117】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0118】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0119】
本発明のゴム組成物は、トレッド(キャップトレッド)に好適に用いられるが、トレッド以外の部材、例えば、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチエイペックス、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層に用いてもよい。
【0120】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0121】
本発明のタイヤは、空気入りタイヤ、エアレス(ソリッド)タイヤいずれであってもよいが、空気入りタイヤであることが好ましい。また、本発明のタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等として好適に用いられ、特に乗用車用タイヤとして好適に用いられる。
【実施例
【0122】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0123】
以下で製造するポリマーの物性については次のように測定した。
【0124】
〔重量平均分子量(Mw)〕
下記の条件(1)~(8)でゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)を測定した。
(1)装置:東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ
(2)分離カラム:東ソー(株)製のTSKgel SuperMultiporeHZ-M
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)注入量:5μL
(7)検出器:示差屈折計
(8)分子量標準:標準ポリスチレン
【0125】
〔ビニル含量及びスチレン含量〕
日本電子(株)製JNM-ECAシリーズのNMR装置を用いてH-NMR測定により測定した。
【0126】
〔シス含量〕
(株)パーキンエルマー製のSpectrum oneを用いて、赤外吸収スペクトル分析法によりシス含量(シス1,4結合含有率)を測定した。
【0127】
<製造例1(SBR)>
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン6000g、スチレン150g、1,3-ブタジエン450gおよび使用するn-ブチルリチウムに対して1.5倍モル量に相当するテトラメチルエチレンジアミンを仕込んだ後、n-ブチルリチウム9.5ミリモルを加え、50℃で重合を開始した。重合を開始してから20分経過後、スチレン60g及び1,3-ブタジエン340gの混合物を60分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は70℃であった。
連続添加終了後、さらに40分間重合反応を継続し、重合転化率が100%になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して、反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ分析の試料とした。
少量の重合溶液をサンプリングした直後に、使用したn-ブチルリチウムの0.03倍モルに相当する量のポリオルガノシロキサンA(下記式(3)で表される化合物、日本化学会編 第4版 実験化学講座 第28巻及びその参考文献に記載されている方法により合成することができる。)を10%トルエン溶液の状態で添加し、30分間反応させた後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して共役ジエン系ゴムIを含有する重合溶液を得た。ゴム分100質量部に対して、老化防止剤として、イルガノックス1520(チバガイギー社製)0.2質量部を、上記の重合溶液に添加した後、スチームストリッピングにより、重合溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状のSBR1を得た。分析の結果、得られたSBR1のスチレン含量は42質量%であった。Mwは約100万であり、ビニル含量は32モル%であった。
【0128】
【化6】
【0129】
<末端変性剤の作製>
窒素雰囲気下、100mlメスフラスコに3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン)(アヅマックス(株)製)を23.6g入れ、さらに無水ヘキサン(関東化学(株)製)を加え、全量を100mlにして作製した。
【0130】
<製造例2(BR)>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn-ヘキサンを18L、ブタジエンを2000g、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)2mmolを加え、60℃に昇温した。次に、ブチルリチウムを10.3mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に、上記末端変性剤を11.5mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液にメタノール15mL及び2,6-tert-ブチル-p-クレゾール0.1gを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性BR(BR1)を得た。分析の結果、得られた変性BRのシス含量は36質量%であり、Mwは43万であり、ビニル含量は12モル%であった。
【0131】
以下、実施例で使用した各種薬品についてまとめて説明する。
NR:TSR20
SBR1:製造例1で作製したSBR1
BR1:製造例2で作製した変性BR(BR1)
BR2:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量:97質量%、Mw:44万、ビニル含量:1モル%)
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックN220(NSA:114m/g)
可塑剤:出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAH-24(アロマ系プロセスオイル)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛3種
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355(パラフィンワックス)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N′-ジフェニルグアニジン)
【0132】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して試験用タイヤ(サイズ:195/65R15、乗用車用タイヤ)を製造した。得られた試験用タイヤを用いて下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0133】
(低燃費性能)
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例2を100としたときの指数で表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど、低燃費性能に優れることを示し、指数値が90以上であれば、充分な低燃費性能が確保できているといえる。
【0134】
(ウェットグリップ性能)
各試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求め、比較例2を100としたときの指数で表示した(ウェットスキッド性能指数)。指数が大きいほど、制動距離が短く、ウェットスキッド性能(ウェットグリップ性能)に優れることを示し、指数値が100より大きければ、充分なウェットグリップ性能が確保できているといえる。
【0135】
(耐摩耗性能)
各試験用タイヤを国産FF車に装着し、走行距離8000km後のタイヤキャップトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、比較例2を100としたときの指数で表示した(耐摩耗性能指数)。指数が大きいほど、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離が長く、耐摩耗性能に優れることを示す。
【0136】
【表1】
【0137】
表1の結果から、シス含量が40質量%以下であるブタジエンゴム(1)、シス含量が95質量%以上であるブタジエンゴム(2)、及び天然ゴムを含むゴム成分、並びに充填剤を含み、ブタジエンゴム(1)、ブタジエンゴム(2)、充填剤の含有量が所定量である実施例では、タイヤのウェットグリップ性能、低燃費性能を確保しながら、耐摩耗性能を向上させることができ、ウェットグリップ性能、低燃費性能、及び耐摩耗性能をバランス良く改善することができることが明らかとなった。