(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】蓄電装置用外装材
(51)【国際特許分類】
H01M 50/10 20210101AFI20231215BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20231215BHJP
【FI】
H01M50/10
H01G11/78
(21)【出願番号】P 2017104971
(22)【出願日】2017-05-26
【審査請求日】2020-04-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】今元 惇哉
(72)【発明者】
【氏名】荻原 悠
(72)【発明者】
【氏名】鈴田 昌由
【合議体】
【審判長】篠原 功一
【審判官】山田 正文
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186927(JP,A)
【文献】特開2016-81705(JP,A)
【文献】特開2013-231114(JP,A)
【文献】特表2013-506743(JP,A)
【文献】特開2010-150499(JP,A)
【文献】特開2010-126655(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125684(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/102
H01M50/124
H01M11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及び、シーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材であって、
前記シーラント層がポリプロピレン系樹脂(A)及び前記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含み、
前記非相溶系成分(B)が、前記ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶部を有する化合物であり、グラフト共重合体、又は結晶性エチレンユニットから構成されるブロックとエチレン-ブチレンユニットから構成されるブロックとを有するブロック共重合体、エチレンから構成されるブロックとエチレン-オクテン1から構成されるブロックとを有するブロック共重合体、若しくはプロピレンユニットから構成されるブロックとエチレンユニットから構成されるブロック共重合体を含む化合物(B1)を含有し、
前記非相溶系成分(B)の含有量が、前記シーラント層全量を基準として、1~40質量%であり、
前記シーラント層同士が対向するように重ねた前記外装材を、温度190℃、圧力0.5MPa、3秒の条件でヒートシールして、接着した接着部について、その一端から他端までのシール強度を連続的に測定したときの、前記一端からの変位と前記シール強度との関係を示すグラフにおいて、
最大シール強度S
Mが35N/15mm以上であり、且つ、下記(1)又は(2)の条件を満たす、蓄電装置用外装材(
但し、少なくとも基材層、第1の接着層、バリア層、第2の接着層、シーラント層がこの順で積層されてなる電池外装用ラミネートフィルムであって、該シーラント層は、下記成分(A)と下記成分(B)を含む配合物で形成された(I)層を少なくとも1層有することを特徴とする電池外装用ラミネートフィルムを除く。
成分(A):メタロセン系触媒を用いて製造された密度0.930g/cm
3
以上0.950g/cm
3
以下のポリエチレン
成分(B):ポリプロピレンマトリックスにゴムが分散されたポリプロピレン系エラストマー)。
(1) 前記最大シール強度S
Mが得られた変位以降にシール強度の安定域が存在し、該安定域におけるシール強度S
Sの前記最大シール強度S
Mに対する比S
S/S
Mが0.3以上である。
(2) 前記安定域が存在せず、前記最大シール強度S
Mが得られた変位から前記他端までの変位における平均シール強度S
Aの前記最大シール強度S
Mに対する比S
A/S
Mが0.3以上である。
【請求項2】
前記グラフにおいて、
前記最大シール強度S
Mが40N/15mm以上であり、前記比S
S/S
M又は前記比S
A/S
Mが0.6以上である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項3】
前記シーラント層が複数の層からなり、そのうちの少なくとも一層が前記ポリプロピレン系樹脂(A)及び前記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である前記非相溶系成分(B)を含み、且つ、前記非相溶系成分(B)が前記化合物(B1)を含有する層である、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項4】
前記非相溶系成分(B)はエチレン-αオレフィン共重合体を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項5】
前記シーラント層は、前記ポリプロピレン系樹脂(A)と相溶する相溶系エラストマー(C)をさらに含み、
前記相溶系エラストマー(C)はプロピレン-αオレフィン共重合体を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項6】
前記シーラント層の厚さは10~45μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置用外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置としては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電装置のさらなる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材としては、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルム(例えば、基材層/金属箔層/シーラント層のような構成のフィルム)が用いられるようになっている。
【0003】
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池では、内部への水分の浸入を防止するため、金属箔層としてアルミニウム箔層を含む外装材により電池内容物を覆う構成が採用されている。このような構成を採用したリチウムイオン電池は、アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池と呼ばれている。リチウムイオン電池の電池内容物には、正極、負極及びセパレータとともに、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルなどの浸透力を有する非プロトン性の溶媒に、電解質としてリチウム塩を溶解した電解液、もしくはその電解液を含浸させたポリマーゲルからなる電解質層が含まれる。
【0004】
アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止したエンボスタイプのリチウムイオン電池が知られている。このようなリチウムイオン電池を構成する外装材には、ヒートシールによって安定した密封性を示すとともに、電池内容物の電解液によりアルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度の低下が生じにくいことが求められている。
【0005】
また、蓄電装置の小型化に伴い、蓄電装置用外装材の基材層、金属箔層及びシーラント層の薄膜化が進んでいることから、シーラント層が薄膜化されることによる絶縁性の低下が問題となっている。
【0006】
そこで、例えば特許文献1では、接着性ポリメチルペンテン層を含むヒートシール層(シーラント層)を備えることにより、ヒートシールの熱と圧力によって外装体のバリア層とタブとがショートすることなく安定して密封可能な外装材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載されたような従来の外装材では、タブリードと金属箔層が接触することによる絶縁性の低下への対策がなされている。しかしながら、絶縁性の低下には、別の要因も存在すると考えられる。リチウムイオン電池としてエネルギーを蓄積させるためには、電流値や電圧値、環境温度などを所定の条件にして充放電を行い、化学変化を起こさせる(化成)ことが必要となる。この化成工程は、電解液を注入した仮電池の状態で行われる。そして、化成によって発生したガスの除去や電解液の補充のため、電池は一度開封され、その後最終シールを行って電池が完成する。この最終シールは一度電解液に浸った部分をシールするため、電解液を噛み込んだ状態でヒートシールを行うデガッシングシール(デガッシングヒートシール)となる。
【0009】
本発明者らのこれまでの検証により、絶縁性の低下は、デガッシングヒートシールによるシーラント層の破壊により引き起こされることが多く、その対策が非常に重要であることが分かった。特許文献1では、デガッシングヒートシールによるシーラント層の破壊に対する検討はなされていない。
【0010】
デガッシングヒートシールでは、電池内容物を収容した外装材をヒートシールで封止する際に電解液を噛み込みながらヒートシールするため、電解液が発泡し、シーラント層が破壊される場合がある。そして、シーラント層の破壊された部分から電解液が入り込み、金属層に接触することで、絶縁性が低下すると考えられる。
【0011】
さらに、デガッシングヒートシールによるシーラント層の破壊に起因して発生する絶縁性の低下は、シーラント層の薄膜化の影響を受けやすいため、絶縁性改善の中でも今後特に対策が必要となる。
【0012】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、デガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる蓄電装置用外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及び、シーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材を提供する。
【0014】
上記外装材では、上記シーラント層がポリプロピレン系樹脂(A)及び上記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含み、上記非相溶系成分(B)の含有量が、上記シーラント層全量を基準として、1~40質量%である。さらに、上記シーラント層同士が対向するように重ねた上記外装材を、温度190℃、圧力0.5MPa、3秒の条件でヒートシールして、接着した接着部について、その一端から他端までのシール強度を連続的に測定したときの、上記一端からの変位と上記シール強度との関係を示すグラフにおいて、最大シール強度SMが35N/15mm以上であり、且つ、下記(1)又は(2)の条件を満たす。
(1) 上記最大シール強度SMが得られた変位以降にシール強度の安定域が存在し、該安定域におけるシール強度SSの上記最大シール強度SMに対する比SS/SMが0.3以上である。
(2) 上記安定域が存在せず、上記最大シール強度SMが得られた変位から上記他端までの変位における平均シール強度SAの上記最大シール強度SMに対する比SA/SMが0.3以上である。
【0015】
上記構成を有する蓄電装置用外装材によれば、シーラント層が薄膜化した場合でも、デガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる。上記蓄電装置用外装材がこのような効果を奏する理由を本発明者らは以下のように推測している。蓄電装置用外装材のシーラント層は、ヒートシール、デガッシングヒートシール及び成型などの蓄電装置作製工程において、欠陥を生じやすい。特に、シーラント層の薄膜化により、電解液を噛み込んだ状態でヒートシールを行うデガッシングヒートシールにおいて、電解液の揮発(発泡)によると考えられるシーラント層の変形が大きくなり、絶縁性が低下しやすくなる。当該変形により絶縁性が低下する理由としては、例えば、発泡により金属箔層近傍が露出しやすく、露出した部分に電解液が接触することが考えられる。本発明では、最大シール強度SMが35N/15mm以上であり、且つ、外装材が上記(1)又は(2)の条件を満たす。これにより、シーラント樹脂の強い凝集力が得られ、電解液が発泡した場合にも空隙ができにくくなると考えられる。その結果、絶縁性の低下が起きにくくなる。
【0016】
上記グラフにおいて、最大シール強度SMが40N/15mm以上であり、上記比SS/SM又は上記比SA/SMが0.6以上であることが好ましい。これにより、絶縁性の低下がさらに抑制されやすくなる。
【0017】
シーラント層はポリプロピレン系樹脂(A)及びこれと相溶しない非相溶系成分(B)を含むことから、シーラント層にはこれらによる海島構造が形成される。この海島構造の形成により、シーラント層に耐衝撃性を付与させることができ、シール強度を向上させることができる。
【0018】
上記非相溶系成分(B)が、上記ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶部を有する化合物(B1)を含有することが好ましい。本発明者らは、デガッシングヒートシールにおける電解液の発泡が起こると、この海島界面を起点に空隙が形成されやすくなると考えた。そこで、シーラント層において、上記非相溶系成分(B)が、上記ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶部を有する化合物(B1)を含有することにより、上記海島界面の密着強度を向上させることができ、電解液の発泡に伴う空隙の形成が抑制されることから、絶縁性を一層向上させることができる。また、上記化合物(B1)による海島界面の密着強度の向上により、上記シール強度SM、SS又はSAを向上させることもできる。
【0019】
上記シーラント層は複数の層からなっていてもよく、この場合、そのうちの少なくとも一層が上記ポリプロピレン系樹脂(A)及び上記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である上記非相溶系成分(B)を含み、且つ、上記非相溶系成分(B)が上記化合物(B1)を含有する層であればよい。
【0020】
上記非相溶系成分(B)は、エチレン-αオレフィン共重合体を含有することができる。また、上記シーラント層は、上記ポリプロピレン系樹脂(A)と相溶する相溶系エラストマー(C)をさらに含むことができ、上記相溶系エラストマー(C)はプロピレン-αオレフィン共重合体を含有することができる。
【0021】
上記シーラント層の厚さは10~45μmであることができる。シーラント層を薄くしてもデガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、デガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる蓄電装置用外装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。
【
図2】シーラント層同士が対向するように外装材を重ね合わせ、ヒートシールした後の外装材の概略断面図である。
【
図3】外装材の接着部のシール強度をその一端から他端まで連続的に測定した測定結果の一例を示すグラフであって、接着部の一端からの変位とシール強度との関係を示すグラフである。
【
図4】外装材の接着部のシール強度をその一端から他端まで連続的に測定した測定結果の別の例を示すグラフであって、接着部の一端からの変位とシール強度との関係を示すグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。
【
図7】実施例における評価サンプルの作製方法を説明する模式図である。
【
図8】実施例における評価サンプルの作製方法を説明する模式図である。
【
図9】実施例における評価サンプルの作製方法を説明する模式図である。
【
図10】実施例における評価サンプルの作製方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
[蓄電装置用外装材]
図1は、本実施形態の蓄電装置用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電装置用外装材)10は、基材層11と、該基材層11の一方の面上に形成された接着剤層12(第1の接着剤層12ということがある)と、該第1の接着剤層12の基材層11とは反対の面上に形成された金属箔層13と、該金属箔層13の第1の接着剤層12とは反対の面上に形成された腐食防止処理層14と該腐食防止処理層14の金属箔層13とは反対の面上に形成された接着剤層17(第2の接着剤層17ということがある)と、該第2の接着剤層17の腐食防止処理層14とは反対の面上に形成されたシーラント層16と、が順次積層された積層体である。外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置の外部側、シーラント層16を蓄電装置の内部側に向けて使用される。
【0026】
外装材10はシーラント層16同士が対向するように重ね合わせられ、シールバーを用いてこれらをヒートシールすることにより、シーラント層16が熱融着して互いに接着する。
図2は、ヒートシール後の外装材の断面図であり、ヒートシール部P
Hはシールバーにより直接ヒートシールされた部分を示している。また、
図2は、加熱により溶融したシーラント層16の一部がヒートシール部P
Hから移動してシーラント融着部16
Mを形成している様子を示している。シーラント融着部16
Mの形成により、ヒートシールされていない融着部P
Mにおいても、外装材10同士が接着する。すなわち、外装材10はヒートシール部P
H及び融着部P
M(併せて、接着部ともいう)において、互いに接着している。このように接着した外装材10のヒートシール強度は、接着した一方の外装材10から他方の外装材10を引き剥がす際に要した単位幅当りの荷重として測定される。接着した外装材10は、ヒートシール強度測定用のサンプルとして、ヒートシールの幅方向を長手方向として、電解液が注入される側の融着部P
Mとヒートシール部P
Hとを含む短冊状に切断される。
図3は、外装材の接着部のシール強度をその一端から他端まで連続的に測定した測定結果の一例を示すグラフであって、接着部の一端である融着部P
Mから引き剥がした変位とシール強度との関係を示すグラフである。
図3のグラフにおいて、左端は接着部の幅方向の一端を示し、シール強度が低下した点は他端を示している。
図3のグラフにおいて、接着部の一端から曲線が立ち上がり、シール強度が極大値を示している。外装材10の剥離はまずこの接着部の一端にあるシーラント融着部16
Mの破壊を伴い、シーラント融着部16
Mの破壊に大きな力を要することから、グラフ中の上記極大値が得られると考えられる。グラフ中の上記極大値はシーラント融着部16
Mの破壊により生じると考えられることから、バースト強度等と称することもある。通常、このシール強度の極大値が最大シール強度S
Mとなる。本実施形態では、温度190℃、圧力0.5MPa、3秒の条件でヒートシールしたときの、最大シール強度S
Mは35N/15mm以上であり、好ましくは40N/15mm以上であり、より好ましくは50N/15mm以上である。
【0027】
図3のグラフにおいて、上記極大値が得られた変位を過ぎると、シール強度は次第に安定化する。本明細書では、上記グラフ中のシール強度が安定化した領域を安定域と称する。安定域は、測定中のシール強度の変動が±3N/15mm以下である領域であって、5mm以上の長さを有するものと定義される。本実施形態では、上記グラフ中に安定域が存在する場合、外装材10は下記(1)の条件を満たす。
(1) 温度190℃、圧力0.5MPa、3秒の条件でヒートシールしたときの、上記安定域におけるシール強度S
Sの最大シール強度S
Mに対する比S
S/S
Mが、0.3以上である。
【0028】
上記比SS/SMは、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.6以上である。最大シール強度SMが35N/15mm以上であり、且つ、比SS/SMが0.3以上であることにより、デガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる。なお、シール強度SSは上記安定域におけるシール強度の平均値である。
【0029】
一方、
図3のグラフでは安定域が存在する場合の測定結果を例に挙げたが、安定域が存在しない場合もある。
図4は、外装材の接着部のシール強度をその一端から他端まで連続的に測定した測定結果の別の例を示すグラフであって、接着部の端部から引き剥がした変位とシール強度との関係を示すグラフである。
図4のグラフでは、シール強度の極大値が得られた変位以降に安定域が存在していない。本実施形態において、シール強度の測定結果を示すグラフに安定域が存在しない場合、外装材10は下記(2)の条件を満たす。
(2) 温度190℃、圧力0.5MPa、3秒の条件でヒートシールしたときの、上記極大値が得られた変位から上記他端までの変位における平均シール強度S
Aの最大シール強度S
Mに対する比S
A/S
Mが0.3以上である。
【0030】
上記比S
A/S
Mは、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.6以上である。最大シール強度S
Mが35N/15mm以上であり、且つ、比S
A/S
Mが0.3以上であることにより、デガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる。平均シール強度S
Aは上記極大値が得られた変位以降の変位1mmごとのシール強度(例えば、
図4のグラフにおける、シール強度S
1,S
2,S
3,S
4,S
5,S
6)を測定し、これらの平均値を算出することにより求められる。
【0031】
本実施形態では、上記グラフ中に
図3のように安定域が存在していてもよく、
図4のように存在していなくてもよい。上記グラフ中には安定域が存在していることが好ましい。グラフ中に上記安定域が存在する場合には外装材10は上記(1)の条件を満たし、グラフ中に上記安定域が存在しない場合には外装材10は上記(2)の条件を満たす。
【0032】
外装材10をヒートシールしたときのシール強度の向上とは、通常、シール強度SMとシール強度SS又はシール強度SAとの両方の向上を意味する。ただし、特に最大シール強度SMの値は、接着部の端部に形成されるシーラント融着部16Mの大きさや強度によっても変化する。したがって、最大シール強度SMの値は、例えば、シーラント層16のメルトフローレート(MFR)、結晶化度、厚さ等によっても変化するし、ヒートシールの条件(温度、圧力、時間)によっても変化する。シール強度SS,SAに対して、最大シール強度SMを制御することにより、上記比SS/SMや上記比SA/SMをも制御することができる。以下、外装材10を構成する各層について具体的に説明する。
【0033】
<基材層11>
基材層11は、蓄電装置製造時のシール工程における耐熱性付与、加工や流通の際に起こりうるピンホール対策という目的で設けるものであり、絶縁性を有する樹脂層を用いるのが好ましい。そのような樹脂層としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸又は未延伸フィルムを、単層又は2層以上積層した多層フィルムとして使用することができる。ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)とナイロンフィルム(Ny)とを接着性樹脂を用いて共押出後に、延伸処理を施した共押し出し多層延伸フィルムを用いることも可能である。
【0034】
基材層11は後述する金属箔層13上に直接塗布することにより設けられてもよい。この場合、後述する第1の接着剤層12は不要である。塗布による基材層の形成方法としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂塗液を塗布し、紫外線照射、高温加熱、エージング(養生)処理等により硬化する方法を採用できる。塗布方法は特に限定されず、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等の各種方法を採用できる。
【0035】
基材層11の厚さは、3~40μmが好ましく、5~25μmがより好ましい。基材層11の厚さが3μm以上であることにより、蓄電装置用外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。
【0036】
<第1の接着剤層12>
第1の接着剤層12は、基材層11と金属箔層13とを接着する層である。第1の接着剤層12を構成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0037】
上述した各種ポリオールは、外装材に求められる機能や性能に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、接着剤に求められる性能に応じて、上述したポリウレタン樹脂に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
【0039】
第1の接着剤層12の厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmが好ましく、3~7μmがより好ましい。
【0040】
<金属箔層13>
金属箔層13は、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、金属箔層13は、深絞り成型をするために延展性を有する。金属箔層13としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔を使用することができ、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、アルミニウム箔が好ましい。
【0041】
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。
【0042】
金属箔層13の厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9~200μmとすることが好ましく、15~100μmとすることがより好ましい。
【0043】
金属箔層13にアルミニウム箔を用いる場合、アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐電解液性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いるのが好ましい。
【0044】
なお、アルミニウム箔に脱脂処理する場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
【0045】
<腐食防止処理層14>
腐食防止処理層14は、電解液、又は、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層13の腐食を防止するために設けられる層である。腐食防止処理層14としては、例えば、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
【0046】
脱脂処理としては、酸脱脂あるいはアルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸の単独、又はこれらの混合液を使用する方法などが挙げられる。また、酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、特に金属箔層13にアルミニウム箔を用いた場合に、アルミニウムの脱脂効果が得られるだけでなく、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成させることができ、耐フッ酸性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを使用する方法が挙げられる。
【0047】
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。
【0048】
陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
【0049】
化成処理としては、浸漬型、塗布型が挙げられる。浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。一方、塗布型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤を金属箔層13上に塗布する方法が挙げられる。
【0050】
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、金属箔層13として焼鈍工程を通した金属箔など脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14の形成において改めて脱脂処理する必要なはい。
【0051】
塗布型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
【0052】
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理では、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いた金属箔層13から腐食防止処理層14まで共連続構造を形成した形態になるので、上記処理は化成処理の定義に包含される。一方、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14を形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、且つ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
【0053】
上記希土類元素酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。中でも、水系のゾルが好ましい。
【0054】
上記希土類元素酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸又はその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は、外装材10において、(1)ゾルの分散安定化、(2)リン酸のアルミキレート能力を利用した金属箔層13との密着性の向上、(3)フッ酸の影響で溶出したアルミニウムイオンを捕獲(不動態形成)することよる電解液耐性の付与、(4)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層14(酸化物層)の凝集力の向上、などが期待される。
【0055】
上記リン酸又はその塩としては、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、又はこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が挙げられる。中でも、外装材10における機能発現には、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ウルトラメタリン酸などの縮合リン酸、又はこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が好ましい。また、上記希土類元素酸化物のゾルを用いて、各種コーティング法により希土類元素酸化物からなる腐食防止処理層14を形成させる時の乾燥造膜性(乾燥能力、熱量)を考慮すると、低温での脱水縮合性に優れる点から、ナトリウム塩がより好ましい。リン酸塩としては、水溶性の塩が好ましい。
【0056】
希土類元素酸化物に対するリン酸(あるいはその塩)の配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して、1~100質量部が好ましい。上記配合比が希土類元素酸化物100質量部に対して1質量部以上であれば、希土類元素酸化物ゾルがより安定になり、外装材10の機能がより良好になる。上記配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して5質量部以上がより好ましい。また、上記配合比が希土類元素酸化物100質量部に対して100質量部以下であれば、希土類元素酸化物ゾルの機能が高まり、電解液の浸食を防止する性能に優れる。上記配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して、50質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0057】
上記希土類元素酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14は、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14は、凝集力を補うために、下記アニオン性ポリマー、又はカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
【0058】
アニオン性ポリマーとしては、カルボキシ基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸(あるいはその塩)、あるいはポリ(メタ)アクリル酸を主成分として共重合した共重合体が挙げられる。この共重合体の共重合成分としては、アルキル(メタ)アクリレート系モノマー(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基など。);(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基など。)、N-アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基など。)、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシランなどのシラン含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。
【0059】
これらアニオン性ポリマーは、希土類元素酸化物ゾルを用いて得られた腐食防止処理層14(酸化物層)の安定性を向上させる役割を果たす。これは、硬くて脆い酸化物層をアクリル系樹脂成分で保護する効果、及び、希土類元素酸化物ゾルに含まれるリン酸塩由来のイオンコンタミ(特にナトリウムイオン)を捕捉する(カチオンキャッチャー)効果によって達成される。つまり、希土類元素酸化物ゾルを用いて得られた腐食防止処理層14中に、特にナトリウムなどのアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンが含まれると、このイオンを含む場所を起点にして腐食防止処理層14が劣化しやすくなる。そのため、アニオン性ポリマーによって希土類元素酸化物ゾルに含まれるナトリウムイオンなどを固定化することで、腐食防止処理層14の耐性が向上する。
【0060】
アニオン性ポリマーと希土類元素酸化物ゾルを組み合わせた腐食防止処理層14は、アルミニウム箔にクロメート処理を施して形成した腐食防止処理層14と同等の腐食防止性能を有する。アニオン性ポリマーは、本質的に水溶性であるポリアニオン性ポリマーが架橋された構造であることが好ましい。この構造の形成に用いる架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシ基、オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。
【0061】
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートあるいはその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネートあるいはその水素添加物、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート類;あるいはこれらのイソシアネート類を、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールと反応させたアダクト体、水と反応させることで得られたビューレット体、あるいは三量体であるイソシアヌレート体などのポリイソシアネート類;あるいはこれらのポリイソシアネート類をアルコール類、ラクタム類、オキシム類などでブロック化したブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0062】
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類と、エピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール類と、エピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸などのジカルボン酸と、エピクロルヒドリンとを作用させたエポキシ化合物などが挙げられる。
【0063】
カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、各種脂肪族あるいは芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ(土類)金属塩を用いてもよい。
【0064】
オキサゾリン基を有する化合物としては、例えば、オキサゾリンユニットを2つ以上有する低分子化合物、あるいはイソプロペニルオキサゾリンのような重合性モノマーを用いる場合には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどのアクリル系モノマーを共重合させたものが挙げられる。
【0065】
また、アニオン性ポリマーとシランカップリング剤とを反応させ、より具体的には、アニオン性ポリマーのカルボキシ基とシランカップリング剤の官能基とを選択的に反応させ、架橋点をシロキサン結合としてもよい。この場合、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアナートプロピルトリエトキシシランなどが使用できる。中でも、特にアニオン性ポリマーあるいはその共重合物との反応性を考慮すると、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシランが好ましい。
【0066】
アニオン性ポリマーに対するこれらの架橋剤の比率は、アニオン性ポリマー100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、10~20質量部がより好ましい。架橋剤の比率がアニオン性ポリマー100質量部に対して1質量部以上であれば、架橋構造が十分に形成されやすい。架橋剤の比率がアニオン性ポリマー100質量部に対して50質量部以下であれば、塗液のポットライフが向上する。
【0067】
アニオン性ポリマーを架橋する方法は、上記架橋剤に限らず、チタニウム、ジルコニウム化合物を用いてイオン架橋を形成する方法などであってもよい。
【0068】
カチオン性ポリマーとしては、アミンを有するポリマーが挙げられ、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンあるいはこれらの誘導体、アミノフェノールなどのカチオン性のポリマーが挙げられる。ポリアリルアミンとしては、例えば、アリルアミン、アリルアミンアミド硫酸塩、ジアリルアミン、ジメチルアリルアミンなどの単独重合体あるいは共重合体などが挙げられる。これらのアミンは、フリーのアミンであってもよく、酢酸あるいは塩酸による安定化物であってもよい。また、共重合体成分として、マレイン酸、二酸化硫黄などを使用してもよい。さらに、1級アミンを部分メトキシ化させることで熱架橋性を付与したタイプも使用でき、また、アミノフェノールも使用できる。特に、アリルアミンあるいはその誘導体が好ましい。
【0069】
カチオン性ポリマーは、カルボキシ基やグリシジル基などのアミン/イミンと反応が可能な官能基を有する架橋剤と併用することが好ましい。カチオン性ポリマーと併用する架橋剤としては、ポリエチレンイミンとイオン高分子錯体を形成するカルボン酸を有するポリマーも使用でき、例えば、ポリアクリル酸あるいはそのイオン塩などのポリカルボン酸(塩)、あるいはこれにコモノマーを導入した共重合体、カルボキシメチルセルロースあるいはそのイオン塩などのカルボキシ基を有する多糖類などが挙げられる。
【0070】
本実施形態では、カチオン性ポリマーも腐食防止処理層14を構成する一構成要素として記載している。その理由は、蓄電装置用外装材で要求される電解液耐性、フッ酸耐性を付与するべく様々な化合物を用い鋭意検討を行った結果、カチオン性ポリマー自体も、電解液耐性、耐フッ酸性を付与することが可能な化合物であることが判明したためである。この要因は、フッ素イオンをカチオン性基で補足する(アニオンキャッチャー)ことで、アルミニウム箔が損傷することを抑制しているためであると推測される。
【0071】
カチオン性ポリマーは、接着性の向上という点でより好ましい材料である。また、カチオン性ポリマーも、上記アニオン性ポリマーと同様に、水溶性であることから、架橋構造を形成させて耐水性を付与することがより好ましい。カチオン性ポリマーに架橋構造を形成する際の架橋剤は、アニオン性ポリマーの項で説明した架橋剤を使用できる。腐食防止処理層14として希土類元素酸化物ゾルを用いた場合、その保護層として上記アニオン性ポリマーを用いる代わりに、カチオン性ポリマーを用いてもよい。
【0072】
クロメート処理に代表される化成処理による腐食防止処理層は、アルミニウム箔との傾斜構造を形成させるため、特にフッ酸、塩酸、硝酸、硫酸あるいはこれらの塩を配合した化成処理剤を用いてアルミニウム箔に処理を施し、次いでクロムやノンクロム系の化合物を作用させて化成処理層をアルミニウム箔に形成させるものである。しかしながら、上記化成処理は、化成処理剤に酸を用いていることから、作業環境の悪化やコーティング装置の腐食を伴う。一方、前述したコーティングタイプの腐食防止処理層14は、クロメート処理に代表される化成処理とは異なり、アルミニウム箔を用いた金属箔層13に対して傾斜構造を形成させる必要がない。そのため、コーティング剤の性状は、酸性、アルカリ性、中性などの制約を受けることがなく、良好な作業環境を実現できる。加えて、クロム化合物を用いるクロメート処理は、環境衛生上、代替案が求められている点からも、コーティングタイプの腐食防止処理層14が好ましい。
【0073】
以上の内容から、上述したコーティングタイプの腐食防止処理の組み合わせの事例として、(1)希土類元素酸化物ゾルのみ、(2)アニオン性ポリマーのみ、(3)カチオン性ポリマーのみ、(4)希土類元素酸化物ゾル+アニオン性ポリマー(積層複合化)、(5)希土類元素酸化物ゾル+カチオン性ポリマー(積層複合化)、(6)(希土類元素酸化物ゾル+アニオン性ポリマー:積層複合化)/カチオン性ポリマー(多層化)、(7)(希土類元素酸化物ゾル+カチオン性ポリマー:積層複合化)/アニオン性ポリマー(多層化)、等が挙げられる。中でも(1)及び(4)~(7)が好ましく、(4)~(7)が特に好ましい。ただし、本実施形態は、上記組み合わせに限られるわけではない。例えば腐食防止処理の選択の事例として、カチオン性ポリマーは、後述する第2の接着剤層又はシーラント層の説明で挙げる変性ポリオレフィン樹脂との接着性が良好であるという点でも非常に好ましい材料であることから、第2の接着剤層又はシーラント層が変性ポリオレフィン樹脂で構成される場合においては、第2の接着剤層又はシーラント層に接する面にカチオン性ポリマーを設ける(例えば、構成(5)及び(6)などの構成)といった設計が可能である。
【0074】
また、腐食防止処理層14は、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類元素酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
【0075】
腐食防止処理層14の単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005~0.200g/m2が好ましく、0.010~0.100g/m2がより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m2以上であれば、金属箔層13に腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/m2を超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類元素酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不十分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14の厚みについては、その比重から換算できる。
【0076】
腐食防止処理層14は、シーラント層と金属箔層との密着性を保持しやすくなり、電解液の発泡の起点の発生を防ぎ、デガッシングヒートシール後の絶縁性の低下をさらに抑制しやすくなる観点から、例えば、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1~100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む態様であってもよく、金属箔層13に化成処理を施して形成されている態様であってもよく、金属箔層13に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む態様であってもよい。
【0077】
<第2の接着剤層17>
第2の接着剤層17は、腐食防止処理層14が形成された金属箔層13とシーラント層16とを接着する層である。第2の接着剤層17には、金属箔層とシーラント層とを接着するための一般的な接着剤を用いることができる。
【0078】
腐食防止処理層14が上述したカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含む層を有する場合、第2の接着剤層17は、腐食防止処理層14に含まれる上記ポリマーと反応性を有する化合物(以下、「反応性化合物」とも言う)を含む層であることが好ましい。
【0079】
例えば、腐食防止処理層14がカチオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層17はカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。腐食防止処理層14がアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層17はアニオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。また、腐食防止処理層14がカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層17はカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物と、アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物とを含む。ただし、第2の接着剤層17は必ずしも上記2種類の化合物を含む必要はなく、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの両方と反応性を有する化合物を含んでいてもよい。ここで、「反応性を有する」とは、カチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーと共有結合を形成することである。また、第2の接着剤層17は、酸変性ポリオレフィン樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0080】
カチオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0081】
これら多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示した多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、カチオン性ポリマーとの反応性が高く、架橋構造を形成しやすい点で、多官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0082】
アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、グリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示したグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、アニオン性ポリマーとの反応性が高い点で、グリシジル化合物が好ましい。
【0083】
第2の接着剤層17が酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、反応性化合物は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基とも反応性を有する(すなわち、酸性基と共有結合を形成する)ことが好ましい。これにより、腐食防止処理層14との接着性がより高まる。加えて、酸変性ポリオレフィン樹脂が架橋構造となり、外装材10の耐溶剤性がより向上する。
【0084】
反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基に対し、等量から10倍等量であることが好ましい。等量以上であれば、反応性化合物が酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基と十分に反応する。一方、10倍等量を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂との架橋反応としては十分飽和に達しているため、未反応物が存在し、各種性能の低下が懸念される。したがって、例えば、反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5~20質量部(固形分比)であることが好ましい。
【0085】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸性基をポリオレフィン樹脂に導入したものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、酸無水物基などが挙げられ、無水マレイン酸基や(メタ)アクリル酸基などが特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、第1のシーラント層16aに用いる変性ポリオレフィン樹脂(a)として後述するものと同様のものを用いることができる。
【0086】
第2の接着剤層17には、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0087】
第2の接着剤層17は、電解液が関与する場合のラミネート強度の低下を抑制する観点及び絶縁性の低下をさらに抑制する観点から、例えば、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びカルボジイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の硬化剤と、を含むものであってもよい。なお、カルボジイミド化合物としては、例えば、N,N’-ジ-o-トルイルカルボジイミド、N,N’-ジフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ジオクチルデシルカルボジイミド、N-トリイル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,2-ジ-t-ブチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。
【0088】
また、第2の接着剤層17を形成する接着剤として、例えば、水添ダイマー脂肪酸及びジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとを配合したポリウレタン系接着剤を用いることもできる。
【0089】
第2の接着剤層17の厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、及び加工性等を得る観点から、1~10μmが好ましく、3~7μmがより好ましい。
【0090】
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層16は、
図2のグラフにおいて、最大シール強度S
Mが35N/15mm以上であり、且つ、比S
S/S
M又は比S
A/S
Mが0.3以上となるように構成される。シーラント層16を構成する例について以下に説明する。
【0091】
シーラント層16は、ポリプロピレン系樹脂(A)及び上記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含む。上記シーラント層16はさらにポリプロピレン系樹脂(A)と相溶する相溶系エラストマー(C)をさらに含んでいてもよい。以下、場合により、上記ポリプロピレン系樹脂(A)を「(A)成分」といい、上記(A)成分と非相溶である非相溶系成分(B)を「(B)成分」といい、上記(A)成分と相溶する相溶系エラストマー(C)を「相溶系エラストマー(C)」又は「(C)成分」などということがある。ここで、「(A)成分に対して相溶性を有さない」、「(A)成分と非相溶である」(非相溶系)とは、(A)成分を構成するポリプロピレン系樹脂中に分散相サイズ200nm以上50μm未満で分散することを意味する。また、「(A)成分と相溶する」、「(A)成分との相溶性を有する」(相溶系)とは、(A)成分を構成するポリプロピレン系樹脂中に分散相サイズ1nm以上200nm未満で分散することを意味する。
【0092】
シーラント層16において、非相溶系成分(B)は、ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶部を有する化合物(B1)を含有することが好ましい。以下、場合により、上記(A)成分との相溶部を有する化合物(B1)を「化合物(B1)」又は「(B1)成分」などということがある。非相溶系成分(B)は化合物(B1)のみからなっていてもよい。
【0093】
シーラント層16が上記(A)成分及び上記(B)成分を含むことにより、シーラント層16中に海島構造が形成され、ヒートシール後のシール強度を向上させることができる。シーラント層16が上記(C)成分をさらに含むことにより、シーラント層16にさらに柔軟性を付与することができる。シーラント層16が柔軟性を有することにより、成型白化抑制等の機能を付与させることができ、機能性がより向上した外装材を提供することができる。
【0094】
以下に、シーラント層16の例について説明する。
【0095】
(ポリプロピレン系樹脂(A))
ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレンを含む重合単量体から得られた樹脂である。ポリプロピレン系樹脂(A)としては、ホモポリプロピレン及びランダムポリプロピレン等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂(A)は、ヒートシール強度等の外装材の基本性能の観点から、ランダムポリプロピレンであることが好ましく、プロピレン-エチレンランダム共重合体であることがより好ましい。プロピレン-エチレンランダム共重合体は、低温でのヒートシール性に優れており、電解液が関与するシール特性を向上させることができる。
【0096】
プロピレン-エチレンランダム共重合体において、エチレン含有量は0.1~10質量%であることが好ましく、1~7質量%であることがより好ましく、2~5質量%であることがさらに好ましい。エチレン含有量が0.1質量%以上であると、エチレンを共重合させることによる融点低下効果が十分に得られ、電解液が関与するシール特性をより一層向上できるとともに、耐衝撃性が得られ、シール強度や耐成型白化性を向上できる傾向がある。エチレン含有量が10質量%以下であると、融点が下がりすぎることを抑制でき、最大シール強度SMが高くなりすぎることを抑制することができる(すなわち、比SS/SMを大きくできる)傾向がある。なお、エチレン含有量は、重合時のモノマーの混合比率から算出することができる。
【0097】
プロピレン-エチレンランダム共重合体の融点は、120~145℃であることが好ましく、125~140℃であることがより好ましい。融点が120℃以上であると、最大シール強度SMが高くなりすぎることを抑制することができる(すなわち、比SS/SMを大きくできる)傾向がある。融点が145℃以下であると、電解液が関与するシール特性をより一層向上できる傾向がある。
【0098】
プロピレン-エチレンランダム共重合体は、酸変性されたものであってもよく、例えば、無水マレイン酸をグラフト変性させた酸変性プロピレン-エチレンランダム共重合体であってもよい。酸変性プロピレン-エチレンランダム共重合体を用いることにより、タブシーラントがなくてもタブリードとの密着性を保つことができる。
【0099】
プロピレン-エチレンランダム共重合体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
シーラント層16において、(A)成分の含有量は、シーラント層16の固形分全量を基準として、50~99質量%であってもよく、50~95質量%であってもよく、50~85質量%であってもよい。(A)成分の含有量が50質量%以上であることにより、(A)成分を用いること自体の効果により、シール特性を向上させることができる。また、(A)成分の含有量を50質量%以上とすることにより、(B)成分が過剰に存在することを防げるため、シーラント層16の耐熱性及び凝集力の低下を抑制することができる。一方、(A)成分の含有量を99質量%以下とすることにより、(B)成分を1質量%以上含有させることができるため、(B)成分によるシール強度及び絶縁性を向上することができる。
【0101】
(非相溶系成分(B))
非相溶系成分(B)としては、グラフト共重合体、ブロック共重合体及びランダム共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、少なくとも一部に(A)成分に対する非相溶部を有する。
【0102】
非相溶系成分(B)は、ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶部を有する化合物(B1)を含有することが好ましい。非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有することにより、(A)成分及び(B)成分により形成される海島構造の界面の上記海島界面の密着強度を向上させることができ、電解液の発泡に伴う空隙の形成が抑制されることから、絶縁性を一層向上させることができる。また、化合物(B1)による海島界面の密着強度の向上により、上記シール強度SM、SS又はSAを向上させることもできる。このような化合物(B1)は、例えば、非相溶系成分(B)がグラフト共重合体又はブロック共重合体である場合に得ることができる。化合物(B1)として好適なグラフト共重合体としては、ポリオレフィンの主鎖とポリスチレンの側鎖からなるグラフト共重合体、ポリオレフィンの主鎖とスチレン-アクリロニトリル共重合体の側鎖からなるグラフト共重合体等が挙げられる。上記グラフト共重合体としては、例えば、日油社製の「モディパー」等が適している。
【0103】
化合物(B1)として好適なブロック共重合体としては、スチレンユニットから構成されるブロックとエチレン-ブチレンユニットから構成されるブロックとを有するブロック共重合体、スチレンユニットから構成されるブロックとエチレン-ブチレンユニットから構成されるブロックと結晶性オレフィンユニットから構成されるブロックとを有するブロック共重合体、結晶性エチレンユニットから構成されるブロックとエチレン-ブチレンユニットから構成されるブロックとを有するブロック共重合体、エチレンから構成されるブロックとエチレン-オクテン1から構成されるブロックとを有するブロック共重合体、及び、プロピレンユニットから構成されるブロックとエチレンユニットから構成されるブロックとを有するブロック共重合体等が挙げられる。例えば、プロピレンユニットから構成されるブロックは、上記(A)成分との相溶部であり、エチレンユニットから構成されるブロックは、上記(A)成分との非相溶部である。上記ブロック共重合体としては、例えば、JSR社製の「DYNARON」、DOW社製の「INTUNE」、「INFUSE」などが適している。
【0104】
非相溶系成分(B)は、非相溶系エラストマーを含有していてもよい。非相溶系エラストマーとしては、αオレフィンをコモノマーとするポリオレフィン系エラストマーが挙げられる。特に、エチレン-αオレフィン共重合体を使用することで、電解液ラミネート強度又は電解液が関与する各種シール強度を低下させることなく、シーラント層16に機能性を付与させることができる傾向がある。エチレン-αオレフィン共重合体としては、エチレンに、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び4-メチル-1-ペンテンからなる群より選ばれる少なくとも1つのαオレフィンを共重合させて得られる化合物を用いることができ、エチレンに1-ブテンを共重合させることで得られるエチレン-ブテン-1ランダム共重合体を好ましくは用いることができる。エチレン-αオレフィン共重合体としては、三井化学社製の「タフマー」、住友化学社製の「エクセレン」などが適している。
【0105】
シーラント層16は、非相溶系成分(B)がポリプロピレン系樹脂(A)に分散した分散体を準備し、当該分散体を用いることにより、ポリプロピレン系樹脂(A)及び非相溶系成分(B)を含んでいてもよい。このような分散体としては、ポリプロピレン系樹脂にエラストマーが微分散した分散体が挙げられる。シーラント層16が、非相溶系成分(B)をあらかじめポリプロピレン系樹脂(A)に分散した分散体を用いて含むことにより、絶縁性及びシール強度をさらに向上させることができる傾向がある。上記分散体中の非相溶系成分(B)は、グラフト共重合体又はブロック共重合体を含有することが好ましい。分散体中の非相溶系成分(B)がグラフト共重合体又はブロック共重合体を含有することにより、海島界面の密着性をさらに向上できる傾向がある。
【0106】
非相溶系成分(B)がポリプロピレン系樹脂(A)に分散した分散体であって、非相溶成分(B)がグラフト共重合体を含有する分散体の例としては、(パーオキサイドを用いた)動的架橋PP系エラストマー(TPV)等が挙げられる。動的架橋PP系エラストマー(TPV)は、架橋されたエラストマーがポリプロピレン中に微分散した分散体であって、当該架橋エラストマーはグラフト化され、グラフト化された部分がポリプロピレンとの界面を構成している分散体である。動的架橋PP系エラストマー(TPV)において、ポリプロピレンは(A)成分、グラフト化されたエラストマーは化合物(B1)に相当する。また、非相溶系成分(B)がポリプロピレン系樹脂(A)に分散した分散体の例としては、ブロックポリプロピレン等が挙げられる。ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンと、これと非相溶のエチレン系エラストマー成分とから構成される。ブロックポリプロピレンにおいて、ホモポリプロピレンは(A)成分、エチレン系エラストマー成分は(B)成分に相当する。さらに、ポリプロピレン系樹脂にエラストマーが微分散した分散体としては、リアクタータイプTPO等が挙げられる。リアクタータイプTPOにおいて、ポリプロピレン系樹脂は(A)成分、エラストマーは(B)成分に相当する。リアクタータイプTPOとしては、例えば、三菱化学社製の「ゼラス」、モンテル社製の「キャタロイ」、日本ポリプロ社製の「ウェルネクス」、及びプライムポリマー社製の「プライムTPO」等が適している。
【0107】
非相溶系成分(B)として、オレフィン系及びスチレン系の材料を上記したが、電解液耐性の観点から、非相溶系成分(B)はオレフィン系材料であることが好ましい。
【0108】
(相溶系エラストマー(C))
相溶系エラストマー(C)としては、例えば、プロピレン-αオレフィン共重合体が挙げられる。プロピレン-αオレフィン共重合体を使用することで、電解液ラミネート強度、電解液が関与する各種シール強度を低下させることなく、シーラント層16に機能性を付与させることができる。プロピレン-αオレフィン共重合体としては、プロピレンに、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンから選ばれるαオレフィンを共重合させて得られる化合物を用いることができ、1-ブテンを共重合させることで得られるプロピレン-ブテン-1ランダム共重合体を好ましくは用いることができる。
【0109】
ポリオレフィン系エラストマーの融点は、150℃以下であることが好ましいが、比SS/SMの向上、成型白化の抑制及び電解液が関与するシール特性の向上の観点から、60~120℃であることが好ましく、65~90℃であることがより好ましい。融点が150℃以下であることにより、電解液が関与するシール特性、特にデガッシングヒートシール強度を改善することができる。また、融点が60℃以上であると、比SS/SMを向上する観点で有利である。
【0110】
ポリオレフィン系エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
シーラント層16において、(B)成分の含有量は、シーラント層16の固形分全量を基準として、1~40質量%であり、5~25質量%であることが好ましい。(B)成分の含有量が1質量%以上であることにより、シーラント層16に耐衝撃性を付与することができ、シール強度及び絶縁性を向上することができる。一方、(B)成分の含有量を40質量%以下とすることにより、シーラント層16全体の凝集力を向上でき、シール強度及び絶縁性を向上させることができる。なお、便宜上、ポリプロピレン系樹脂にエラストマーが微分散した分散体は非相溶系成分(B)として記載したが、上記分散体においてエラストマー部分が(B)成分に分類され、ポリプロピレン系樹脂は上記(A)成分に分類される。
【0112】
シーラント層16が(C)成分を含む場合、シーラント層16における(C)成分の含有量は、シーラント層16の固形分全量を基準として、5~30質量%であり、10~25質量%であることが好ましい。(C)成分の含有量が5質量%以上であることにより、シーラント層16の柔軟性が得られやすくなり、成型白化抑制等の機能を付与させることができ、機能性がより向上した外装材を提供することができる。一方、(C)成分の含有量を30質量%以下とすることにより、シーラント層16全体の凝集力を向上でき、シール強度及び絶縁性を向上させることができる。
【0113】
また、相溶系エラストマー(C)の非相溶系成分(B)に対する含有量比(MC/MB)は、質量比で0.2~3.0であることが好ましく、0.3~2.0であることがより好ましい。含有量比(MC/MB)が上記範囲内にあることにより、最大シール強度SMと、シール強度SS,SAとをバランスよく向上させることができる。
【0114】
非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有する場合、シーラント層16における化合物(B1)の含有量は、シーラント層全量を基準として、1~40質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましい。化合物(B1)の含有量が1質量%以上であることにより、海島界面の密着強度を向上させやすくなり、シール強度及び絶縁性の向上効果が得られやすくなる。一方、化合物(B1)の含有量を40質量%以下とすることにより、シーラント層16全体の凝集力並びにシール強度及び絶縁性の低下を抑制しやすくなる。
【0115】
(添加成分)
シーラント層16は、上述した(A)~(C)成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。(A)~(C)成分以外の他の成分としては、例えば引取性、加工性を向上させるためにLDPE(低密度ポリエチレン)などの他の樹脂を添加してもよい。添加する他の樹脂成分の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量部とした場合、10質量部以下であることが好ましい。また、樹脂以外の成分として、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。これら樹脂以外の他の成分の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量部とした場合、5質量部以下であることが好ましい。
【0116】
シーラント層16において、αオレフィンの存在は、FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)により帰属することで確認可能である。また、αオレフィンの含有量は、既知量のαオレフィンを含むエラストマーを既知量配合したシーラント層16を用いて、(A)~(C)成分の特性吸収帯の透過度あるいは吸光度にて検量線を作成することで確認することが可能である。さらに、非相溶系成分(B)、及び、相溶系エラストマー(C)のそれぞれのαオレフィン含有量についても、同様にFT-IRの特性吸収帯にてイメージングを行い、顕微FT-IR(透過法)でブテン-1起因の吸収帯でマッピングすることにより確認可能である。なお、FT-IR以外にも、シーラント層16をNMRで測定することでブテン-1の存在及び含有量を確認することも可能である。
【0117】
シーラント層16の厚さは、例えば、5~100μmである。蓄電装置の小型化の要求から、10~80μmであってもよく、10~60μmであってもよく、10~45μmであってもよく、30μm以下であってもよい。本実施形態の蓄電装置用外装材は、このような薄膜構成であっても、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性の低下を抑制することができる。
【0118】
以上、本実施形態の蓄電装置用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0119】
例えば、
図1では、腐食防止処理層14が金属箔層13の第2の接着剤層17側の面に形成されている場合を示したが、腐食防止処理層14は金属箔層13の第1の接着剤層12側の面に形成されていてもよく、金属箔層13の両面に形成されていてもよい。金属箔層13の両面に腐食防止処理層14が形成されている場合、金属箔層13の第1の接着剤層12側に形成される腐食防止処理層14の構成と、金属箔層13の第2の接着剤層17側に形成される腐食防止処理層14の構成とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0120】
図1では、第2の接着剤層17を用いて金属箔層13とシーラント層16とが積層されている場合を示したが、
図5に示す蓄電装置用外装材20及び
図6に示す蓄電装置用外装材30のように第2の接着剤層17を介さずに、金属箔層13上にシーラント層16が直接形成されていてもよい。一方で、
図5に示す蓄電装置用外装材20及び
図6に示す蓄電装置用外装材30が、金属箔層13とシーラント層16との間に第2の接着剤層17を備えることもできる。
【0121】
図1では、シーラント層16が単層から形成されている場合を示したが、シーラント層16は、
図5に示す蓄電装置用外装材20及び
図6に示す蓄電装置用外装材30のように2層以上の多層から形成されていてもよい。シーラント層16を形成する多層のそれぞれの層の構成は、同一であっても異なっていてもよい。なお、シーラント層16が多層である場合には、そのうちの少なくとも一層がポリプロピレン系樹脂(A)及びポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含み、且つ、非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有する層であるとよい。
【0122】
図5に示す蓄電装置用外装材20においては、シーラント層16は、第1のシーラント層16a及び第2のシーラント層16bから構成されている。ここで、第1のシーラント層16aは、シーラント層の最外層であり、第2のシーラント層16bは、シーラント層の最内層である。第1のシーラント層16a及び第2のシーラント層16bからなる群より選ばれる少なくとも一層がポリプロピレン系樹脂(A)及びポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含み、且つ、非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有する層であるとよい。
【0123】
第2のシーラント層16b(最内層)は、例えば、上述した外装材10におけるシーラント層16と同様の構成成分を用いて形成することができる。第2のシーラント層16bにおいて、非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有する場合、絶縁性の低下が抑制されやすくなる。
【0124】
また、第2のシーラント層16bにおいて、非相溶系成分(B)は化合物(B1)を含有していなくてもよい。
【0125】
第2のシーラント層16bの厚さは、例えば、5~100μmであってもよく、薄膜化の観点から10~60μmであってもよく、10~40μmであってもよく、10~30μmであってもよく、20μm以下であってもよい。
【0126】
第1のシーラント層16a(最外層、金属箔側層)は、例えば、第2のシーラント層16bと同様の構成成分を用いて形成してもよいが、第1のシーラント層16aにおいては、例えば、第2のシーラント層16bと同様の構成成分に代えて、アルミ処理と接着性を考慮し必要に応じて添加剤成分を含む接着性構成成分を用いることが好ましい。第1のシーラント層16aとして上記接着性構成成分を用いることにより、接着剤層を介することなく、金属箔層にシーラント層を形成し得る。第1のシーラント層16aが、第2のシーラント層16bと同様に上記(A)成分及び(B)成分に相当する成分を含んで、第1のシーラント層16aが海島構造を形成し、且つ、第1のシーラント層16aにおいて、非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有する場合、海島界面の密着性を向上させることができ、また、シーラント層と金属箔層との密着性を保持しやすくなり、電解液の発泡に伴う空隙の発生を防ぎ、デガッシングヒートシール後の絶縁性の低下をさらに抑制しやすくなる傾向がある。
【0127】
第1のシーラント層16aにおける接着性構成成分は、特に制限されないが、(A)成分としての、変性ポリプロピレン系樹脂(i)成分と、(B)成分としての、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)成分とを含有することが好ましい。また、添加剤成分は、アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体(iii)を含むことが好ましい。以下、各成分について説明する。
【0128】
(変性ポリプロピレン系樹脂(i))
変性ポリプロピレン系樹脂(i)は、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステルのいずれかから導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分が、ポリプロピレン系樹脂にグラフト変性された樹脂であることが好ましい。
【0129】
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン及びランダムポリプロピレン等が挙げられる。
【0130】
これらのポリプロピレン系樹脂をグラフト変性する際に用いる化合物としては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステルのいずれかから導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分が挙げられる。
【0131】
具体的には、不飽和カルボン酸として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0132】
不飽和カルボン酸の酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸の酸無水物などが挙げられる。
【0133】
不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0134】
変性ポリプロピレン系樹脂(i)は、ベースとなるポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、上述した不飽和カルボン酸誘導体成分0.2~100質量部をラジカル開始剤の存在下、グラフト重合(グラフト変性)することで製造することができる。グラフト変性の反応温度は、50~250℃が好ましく、60~200℃がより好ましい。また、反応時間は、製造方法に応じて適宜設定されるが、例えば二軸押出機による溶融グラフト重合の場合、押出機の滞留時間内、具体的には2~30分が好ましく、5~10分がより好ましい。なお、グラフト変性は、常圧、加圧のいずれの条件下においても実施できる。
【0135】
グラフト変性に用いられるラジカル開始剤としては、アルキルパーオキサイド、アリールパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシカーボネート、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。
【0136】
これらの有機過酸化物は、上述した反応温度や反応時間の条件によって適宜選択して用いることができる。例えば、二軸押出機による溶融グラフト重合の場合、アルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステルが好ましく、具体的にはジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシ-ヘキシン-3、ジクミルペルオキシドなどが好ましい。
【0137】
変性ポリプロピレン系樹脂(i)としては、無水マレイン酸により変性されていることが好ましく、例えば、三井化学社製の「アドマー」、三菱化学社製の「モディック」などが適している。このような変性ポリプロピレン系樹脂(i)は、各種金属や各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用して第1のシーラント層16aに密着性を付与することができ、耐電解液性を向上することができる。
【0138】
(マクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii))
マクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)は、変性ポリプロピレン系樹脂(i)に対し、分散相サイズが200nmを超え、50μm以下の範囲でマクロ相分離構造を形成するものである。
【0139】
第1のシーラント層16aが、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)を含有することにより、第1のシーラント層16aを構成する主成分となり得る変性ポリプロピレン系樹脂(i)等をラミネートする際に発生する残留応力を開放することができ、粘弾性的な接着性を第1のシーラント層16aに付与することができる。したがって、第1のシーラント層16aの密着性がより向上して、耐電解液性により優れた外装材20が得られる。第1のシーラント層16aがマクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)を含有することにより、シーラント層16に耐衝撃性を付与させることができ、シール強度及び絶縁性を向上させることができる。
【0140】
マクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)は、変性ポリプロピレン系樹脂(i)中で海島状に存在するが、分散相サイズが200nm以下であると、粘弾性的な接着性の改善を付与させることが困難になる。一方、分散相サイズが50μmを超えると、変性ポリプロピレン系樹脂(i)とマクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)とは本質的に非相溶性であるため、ラミネート適正(加工性)が著しく低下するとともに、第1のシーラント層16aの物理的強度が低下しやすくなる。以上より、分散相サイズは、500nm~10μmであることが好ましい。
【0141】
このようなマクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)としては、例えば、エチレンに、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンから選ばれるαオレフィンを共重合させたポリエチレン系の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0142】
また、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)としては、市販品を使用することができ、例えば、三井化学社製の「タフマー」、三菱化学社製の「ゼラス」、モンテル社製の「キャタロイ」などが適している。
【0143】
第1のシーラント層16aにおいて変性ポリプロピレン系樹脂(i)に対するマクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)の含有量は、変性ポリプロピレン系樹脂(i)100質量部に対して、1~40質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。ここで、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)の含有量が1質量部未満であると、第1のシーラント層の密着性の向上が期待できない。一方、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)の含有量が40質量部を超えると、本来、変性ポリプロピレン系樹脂(i)とマクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)とは相溶性が低いために加工性が著しく低下しやすくなる。また、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii)は接着性を示す樹脂ではないため、第2のシーラント層16bや腐食防止処理層14などの他の層に対する第1のシーラント層16aの密着性が低下しやすくなる。
【0144】
(アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体(iii))
第1のシーラント層16aは、添加剤成分として、アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体(以下、単に、「(iii)成分」と称する)を含むことが好ましい。ここで、(iii)成分は、完全非晶性の樹脂成分である。第1のシーラント層16aが(iii)成分を含むことにより、シーラント層16に柔軟性を付与することができる。シーラント層16が柔軟性を有することにより、外装材10に成型白化抑制等の機能を付与させることができ、機能性がより向上した外装材を提供することができる。
【0145】
なお、第1のシーラント層16aは、添加剤成分として、上述した(iii)成分に加えて、(C)成分に相当するアイソタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体を柔軟性付与のためさらに含んでいてもよい。
【0146】
第1のシーラント層16aにおいて、(i)成分及び(ii)成分の合計質量は、第1のシーラント層16aの全質量を基準として、例えば、60質量%以上95質量%以下であってもよく、70質量%以上90質量%以下であってもよい。
【0147】
第1のシーラント層16aにおいて、(iii)成分の質量は、(i)成分、(ii)成分、(iii)成分の合計質量を基準として、例えば、5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。(iii)成分の質量が、(i)成分、(ii)成分、(iii)成分の合計質量を基準として、5質量%以上であると、上述したような添加剤を添加することによる効果が得られやすくなる傾向がある。一方、(iii)成分の質量が、(i)成分、(ii)成分、(iii)成分の合計質量を基準として、40質量%以下であると、第2のシーラント層16bや腐食防止処理層14などの他の層に対する第1のシーラント層16aの密着性が低下しやすくなる傾向がある。これらの観点から、第1のシーラント層16aにおいて、(i)成分及び(ii)成分の合計質量は、(i)成分、(ii)成分、(iii)成分の合計質量を基準として、例えば、60~95質量%であることが好ましい。
【0148】
なお、第1のシーラント層16a中の、添加剤成分である(iii)成分の分析方法としては、例えば、核磁気共鳴分光法(NMR)による立体規則性評価によって定量することが可能である。
【0149】
第1のシーラント層16aは、接着性構成成分(すなわち、変性ポリプロピレン系樹脂(i)及びマクロ相分離熱可塑性エラストマー(ii))及び添加剤成分(すなわち、(iii)成分)の他に、必要に応じて各種添加剤、例えば難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤などを含有してもよい。
【0150】
第1のシーラント層16aの厚さは、特に限定されるものではないが、応力緩和や水分・電解液透過の観点から、第2のシーラント層16bと同じもしくはそれ以下であるこが好ましい。
【0151】
また、蓄電装置用外装材20においても、薄膜化の観点から、シーラント層16の厚さ(第1のシーラント層16aと第2のシーラント層16bとの合計の厚さ)は、10~80μmであってもよく、10~60μmであってもよく、10~45μmであってもよく、30μm以下であってもよい。本実施形態の蓄電装置用外装材は、このような薄膜構成であっても、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性の低下を抑制することができる。
【0152】
図5では、シーラント層16が2層から形成されている場合を示したが、シーラント層16は、
図6に示す蓄電装置用外装材30のように3層から形成されていてもよい。
図5に示す蓄電装置用外装材30において、シーラント層16は、第1のシーラント層16a、第2のシーラント層16b、及び第3のシーラント層16cから構成されている。ここで、第1のシーラント層16aはシーラント層の最外層(金属箔側層)であり、第3のシーラント層16cは、シーラント層の中間層であり、第2のシーラント層16bはシーラント層の最内層である。これらの3層からなる群より選ばれる少なくとも一層がポリプロピレン系樹脂(A)及びポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含み、且つ、非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有する層であるとよい。
【0153】
蓄電装置用外装材30の第1のシーラント層16aを構成する材料についての例示及び好ましい形態は、蓄電装置用外装材20の第1のシーラント層16aと同様である。
【0154】
蓄電装置用外装材30の第2のシーラント層16b及び第3のシーラント層16cを構成する材料についての例示及び好ましい形態は、蓄電装置用外装材20の第2のシーラント層16bと同様である。
【0155】
蓄電装置用外装材30において、第1のシーラント層16aの厚さは、例えば、2~30μmであってもよく、5~20μmであってもよく、8~10μmであってもよく、第2のシーラント層16bの厚さは、例えば、5~80μmであってもよく、13~40μmであってもよく、15~20μmであってもよく、第3のシーラント層16cの厚さは、例えば、2~30μmであってもよく、5~20μmであってもよく、8~10μmであってもよい。
【0156】
蓄電装置用外装材30においても、薄膜化の観点から、シーラント層16の厚さ(第1のシーラント層16aと第2のシーラント層16bと第3のシーラント層16cとの合計の厚さ)は、30μm以下であってもよい。本実施形態の蓄電装置用外装材は、このような薄膜構成であっても、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性の低下を抑制することができる。
【0157】
蓄電装置用外装材20,30のように、シーラント層が複数の層からなる場合も同様に、シーラント層16において、非相溶系成分(B)の含有量が、シーラント層16全量を基準として、1~40質量%であり、1~35質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましくい。シーラント層16全体における(B)成分の含有量が上記範囲内となるように、各層の成分の含有量が調整される。
【0158】
蓄電装置用外装材20,30のように、シーラント層が複数の層からなる場合、金属箔層13に最も近い第1のシーラント層16aにおいて、非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有することが好ましい。第1のシーラント層16aにおいて、非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有することにより、海島界面の密着強度を向上させることができ、電解液の発泡に伴う空隙の形成が抑制されることから、デガッシングヒートシール後の絶縁性を一層向上させることができる傾向がある。デガッシングヒートシールの際の電解液の発泡はシーラント層16の金属箔層13に近い部分で発生することが多く、金属箔層13に最も近い層において、非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有することで、絶縁性の低下をより効率的に抑制しやすくなる傾向がある。第1のシーラント層16aにおいて、非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有する場合、化合物(B1)の含有量は、第1のシーラント層16aの全量を基準として、1~40質量部であることが好ましく、2~25質量部であることがより好ましい。
【0159】
第1のシーラント層16aにおける化合物(B1)の含有量が1質量部以上であると、シール強度及び絶縁性が得られやすくなる。また、化合物(B1)の含有量が40質量部以下であると、シーラント層全体の凝集力並びにシール強度及び絶縁性の低下を抑制しやすくなる。
【0160】
また、第2のシーラント層16b又は第3のシーラント層16cにおいて、非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有していてもよい。第2のシーラント層16b又は第3のシーラント層16cが化合物(B1)を含有していることにより、(A)及び(B)成分により形成される海島界面の密着強度を向上させることができ、電解液の発泡に伴う空隙の形成が抑制されることから、絶縁性を一層向上させることができる。第2のシーラント層16bにおいて、非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有する場合、第2のシーラント層16b中の、化合物(B1)の含有量は、第2のシーラント層16bの全量を基準として、1~40質量部であることが好ましく、2~20質量部であることがより好ましく、2~15質量部であることがさらに好ましい。
【0161】
第3のシーラント層16c中の、化合物(B1)の含有量は、第3のシーラント層16cの全量を基準として、1~40質量部であることが好ましく、2~20質量部であることがより好ましく、2~15質量部であることがさらに好ましい。
【0162】
また、シーラント層が単層からなる場合、シーラント層が複数の層からなる場合のいずれにおいても、シーラント層中の化合物(B1)の含有量は、他の諸特性を維持しつつ、デガッシングヒートシール後の絶縁性の低下を抑制する観点から、シーラント層の全量を基準として、1~40質量部であることが好ましく、2~20質量部であることがより好ましく、2~15質量部であることがさらに好ましい。
【0163】
[外装材の製造方法]
次に、
図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0164】
本実施形態の外装材10の製造方法は、金属箔層13に腐食防止処理層14を積層する工程と、基材層11と金属箔層13とを貼り合わせる工程と、第2の接着剤層17を介してシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。
【0165】
(金属箔層13への腐食防止処理層14の積層工程)
本工程は、金属箔層13に対して、腐食防止処理層14を形成する工程である。その方法としては、上述したように、金属箔層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗布したりする方法などが挙げられる。
【0166】
また、腐食防止処理層14が多層の場合は、例えば、下層側(金属箔層13側)の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を金属箔層13に塗布し、焼き付けて第一層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を第一層に塗布し、焼き付けて第二層を形成すればよい。
【0167】
脱脂処理についてはスプレー法又は浸漬法にて、熱水変成処理や陽極酸化処理については浸漬法にて、化成処理については化成処理のタイプに応じ、浸漬法、スプレー法、コート法などを適宜選択して行えばよい。
【0168】
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコートなど各種方法を用いることが可能である。
【0169】
上述したように、各種処理は金属箔の両面又は片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面は第2の接着剤層17を積層する側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材層11の表面にも上記処理を施してもよい。
また、第一層及び第二層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005~0.200g/m2が好ましく、0.010~0.100g/m2がより好ましい。
【0170】
また、乾燥キュアが必要な場合は、用いる腐食防止処理層14の乾燥条件に応じて、母材温度として60~300℃の範囲で行うことができる。
【0171】
(基材層11と金属箔層13との貼り合わせ工程)
本工程は、腐食防止処理層14を設けた金属箔層13と、基材層11とを、第1の接着剤層12を介して貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法を用い、上述した第1の接着剤層12を構成する材料にて両者を貼り合わせる。第1の接着剤層12は、ドライ塗布量として1~10g/m2の範囲、より好ましくは3~7g/m2の範囲で設ける。
【0172】
(第2の接着剤層17及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2の接着剤層17を介してシーラント層16を貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットプロセス、ドライラミネーション等が挙げられる。
【0173】
ウェットプロセスの場合は、第2の接着剤層17を構成する接着剤の溶液又は分散液を、腐食防止処理層14上に塗工し、所定の温度(接着剤が酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合は、その融点以上の温度)で溶媒を飛ばし乾燥造膜、又は乾燥造膜後に必要に応じて焼き付け処理を行う。その後、シーラント層16を積層し、外装材10を製造する。塗工方法としては、先に例示した各種塗工方法が挙げられる。
【0174】
(エージング処理工程)
本工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、金属箔層13/腐食防止処理層14/第2の接着剤層17/シーラント層16間の接着を促進させることができる。エージング処理は、室温~100℃の範囲で行うことができる。エージング時間は、例えば、1~10日である。また、第2の接着剤層17/シーラント層16間の接着をさせるため、第2の接着剤層17の融点以上の温度で熱処理を行うことが可能である。熱処理としてはオーブン加熱、加熱したロールで挟み込む(熱ラミネート)、加熱したロールに巻き付ける、などの手法が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0175】
このようにして、
図1に示すような、本実施形態の外装材10を製造することができる。
【0176】
次に、
図2に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0177】
本実施形態の外装材20の製造方法は、金属箔層13に腐食防止処理層14を積層する工程と、基材層11と金属箔層13とを貼り合わせる工程と、第1のシーラント層16a及び第2のシーラント層16bをさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体を熱処理する工程とを含んで概略構成されている。なお、基材層11と金属箔層13とを貼り合わせる工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
【0178】
(第1のシーラント層16a及び第2のシーラント層16bの積層工程)
本工程は、先の工程により形成された腐食防止処理層14上に、第1のシーラント層16a及び第2のシーラント層16bを形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて第1のシーラント層16aを第2のシーラント層16bとともにサンドラミネーションする方法が挙げられる。さらには、第1のシーラント層16aと第2のシーラント層16bとを押出すタンデムラミネート法、共押出法でも積層可能である。第1のシーラント層16a及び第2のシーラント層16bの形成では、例えば、上述した第1のシーラント層16a及び第2のシーラント層16bの構成を満たすように、各成分が配合される。
【0179】
本工程により、
図2に示すような、基材層11/第1の接着剤層12/金属箔層13/腐食防止処理層14/第1のシーラント層16a/第2のシーラント層16bの順で各層が積層された積層体が得られる。
【0180】
なお、第1のシーラント層16aは、上述した材料配合組成になるように、ドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により積層させてもよいし、あるいは事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒した第1のシーラント層16aを押出ラミネート機を用いて積層させてもよい。
【0181】
第2のシーラント層16bは、シーラント層形成用の構成成分として上述した材料配合組成になるようにドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により積層させてもよいし、あるいは事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を、押出ラミネート機で第1のシーラント層16aと第2のシーラント層16bとを押出すタンデムラミネート法、共押出法で積層させてもよい。また、シーラント層形成用の構成成分を用いて、事前にキャストフィルムとしてシーラント単膜を製膜し、このフィルムを接着性樹脂とともにサンドラミネーションする方法により積層させてもよいし、接着剤を用いてドライラミネート法により積層させてもよい。
【0182】
(熱処理工程)
本工程は、積層体を熱処理する工程である。積層体を熱処理することで、金属箔層13/腐食防止処理層14/第1のシーラント層16a/第2のシーラント層16b間での密着性を向上させ、より優れた耐電解液性や耐フッ酸性を付与することができる。熱処理の方法としては、少なくとも第1のシーラント層16aの融点以上の温度で処理することが好ましい。
【0183】
このようにして、
図5に示すような、本実施形態の外装材20を製造することができる。
【0184】
次に、
図6に示す外装材30の製造方法の一例について説明する。なお、外装材30の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0185】
本実施形態の外装材30の製造方法は、金属箔層13に腐食防止処理層14を積層する工程と、基材層11と金属箔層13とを貼り合わせる工程と、第1のシーラント層16a、第3のシーラント層16c及び第2のシーラント層16bをさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体を熱処理する工程とを含んで概略構成されている。
【0186】
(第1のシーラント層16a、第3のシーラント層16c及び第2のシーラント層16bの積層工程)
本工程は、腐食防止処理層14上に、第1のシーラント層16a、第3のシーラント層16c及び第2のシーラント層16bを形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて第1のシーラント層16aと第3のシーラント層16c及び第2のシーラント層16bとを押出すタンデムラミネート法、共押出法が挙げられる。この場合、シーラント層形成用の構成成分として上述した材料配合組成になるようにドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により積層させてもよいし、あるいは事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を、押出ラミネート機で第1のシーラント層16aと第3のシーラント層16c及び第2のシーラント層16bとを押出すタンデムラミネート法、共押出法で積層させてもよい。
【0187】
第3のシーラント層16c及び第2のシーラント層16bは、共押出しにより製膜し、これらのフィルムを第1のシーラント層16a形成用の構成成分とともにサンドラミネーションする方法により積層させてもよい。
【0188】
このようにして、
図6に示すような、本実施形態の外装材30を製造することができる。
【0189】
以上、本発明の蓄電装置用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、第1の接着剤層12を有しない蓄電装置用外装材を製造する場合は、上述のように、基材層11を形成し得る樹脂材料を金属箔層13上に塗布又は塗工することにより基材層11を形成すればよい。
【0190】
本発明の蓄電装置用外装材は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタなどの蓄電装置用の外装材として好適に用いることができる。中でも、本発明の蓄電装置用外装材は、リチウムイオン電池用の外装材として好適である。
【実施例】
【0191】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0192】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
<基材層(厚さ15μm)>
ナイロンフィルム(Ny)(東洋紡社製)を用いた。
【0193】
<第1の接着剤層(厚さ4μm)>
ポリエステルポリオール系主剤に対して、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤を配合したポリウレタン系接着剤(東洋インキ社製)を用いた。
【0194】
<第1の腐食防止処理層(基材層側)及び第2の腐食防止処理層(シーラント層側)>
(CL-1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」を用いた。なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
(CL-2):溶媒として蒸留水を用い固形分濃度5質量%に調整した「ポリアリルアミン(日東紡社製)」90質量%と、「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」10質量%からなる組成物を用いた。
(CL-3):溶媒として1質量%濃度のリン酸水溶液を用い、固形分濃度1質量%に調整した水溶性フェノール樹脂(住友ベークライト社製)に対し、フッ化クロム(CrF3)を最終乾燥皮膜中に存在するCr量として10mg/m2となるように濃度を調整し
化成処理剤を用いた。
【0195】
<金属箔層(厚さ35μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
【0196】
<第2の接着剤層(厚さ3μm)>
第2の接着剤層形成用接着剤として、下記接着剤a、bを準備した。
接着剤a:トルエンに溶解させた酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、イソシアヌレート構造のポリイソシアネート化合物を10質量部(固形分比)で配合した接着剤。
接着剤b:水添ダイマー脂肪酸及びジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとをモル比(NCO/OH)が2になるように配合したポリウレタン系接着剤。
【0197】
<シーラント層>
[ベース樹脂組成物]
シーラント層形成用ベース樹脂組成物として、表1及び表2に記載のとおりの質量比で、樹脂RC1~RC9を準備した。なお、表1及び表2で用いられている用語の詳細は下記のとおりである。
((A)成分)
酸変性PP:酸変性ポリプロピレン。
ランダムPP:プロピレン-エチレンランダム共重合体。
((B)成分)
エチレン-αオレフィン共重合体:酸変性PP((A)成分)に対して相溶性を有さないエチレン-プロピレン共重合体エラストマー。
エチレン-ブテン-1ランダム共重合体:ランダムPP((A)成分)に対して相溶性を有さないエチレン-ブテン-1ランダム共重合体エラストマー。
リアクタータイプTPO:ポリプロピレンにエチレン系ゴムを微細分散した分散体。
(パーオキサイドを用いた)動的架橋PP系エラストマー(TPV):架橋されたエラストマーがポリプロピレン中に微分散した分散体であって、当該架橋エラストマーはグラフト化され、グラフト化された部分がポリプロピレンとの界面を構成している分散体。
ブロック共重合体1:結晶性エチレンユニットとエチレン-ブチレンユニットから構成され、ランダムPP((A)成分)に対して相溶性を有さないブロック共重合体。
ブロック共重合体2:プロピレンユニットとエチレンユニットから構成され、ランダムPP((A)成分)に対して相溶性を有さないブロック共重合体。
グラフト共重合体:ポリオレフィンの主鎖とポリスチレンの側鎖からなり、ランダムPP((A)成分)に対して相溶性を有さないグラフト共重合体。
((C)成分)
アタクチック構造共重合体:酸変性PP((A)成分)に対して相溶性を有するアタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体。
プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体:ランダムPP((A)成分)に対して相溶性を有するプロピレン-ブテン-1ランダム共重合体エラストマー。
【0198】
なお、リアクタータイプTPO及び動的架橋PP系エラストマーは、(A)成分中に(B)成分が分散したものである。表1では便宜上、例えば、リアクタータイプTPOを(B)成分に分類して記載しているが、表1に示したリアクタータイプTPOの質量比(10.0)は、リアクタータイプTPO中の(B)成分に該当する成分の量を示している。リアクタータイプTPO中の(A)成分に該当する成分の量はランダムPPの質量比(70.0)に含めている。同様に、表1に示した動的架橋PP系エラストマーの質量比(10.0)も動的架橋PP系エラストマー中の(B)成分に該当する成分の量を示し、動的架橋PP系エラストマー中の(A)成分に該当する成分の量はランダムPPの質量比(70.0)に含めている。
【0199】
【0200】
【0201】
[実施例1]
まず、金属箔層に、第1及び第2の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、金属箔層の両方の面に(CL-1)を、ドライ塗布量として70mg/m2となるようにマイクログラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL-2)を、ドライ塗布量として20mg/m2となるようにマイクログラビアコートにより塗布することで、(CL-1)と(CL-2)からなる複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL-1)と(CL-2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
【0202】
次に、第1及び第2の腐食防止処理層を設けた金属箔層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。これを押出ラミネート機の巻出部にセットし、第2の腐食防止処理層上に270℃、100m/分の加工条件でシーラント層の材料を共押出しすることで、シーラント層として金属箔側の層(以下、「AL側層」ともいう)(厚さ8.3μm)及び最内層(厚さ16.7μm)をこの順で積層した。なお、AL側層及び最内層は、事前に二軸押出機を用いて各種材料のコンパウンドを作製しておき、水冷・ペレタイズの工程を経て、上記押出ラミネートに使用した。AL側層の形成には樹脂RC1を用いた。最内層(シーラント層16bに相当)の形成には樹脂RC3を用いた。
【0203】
このようにして得られた積層体を、該積層体の最高到達温度が190℃になるように、熱処理を施して、実施例1の外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/金属箔層/第2の腐食防止処理層/AL側層(シーラント層16a)/最内層(シーラント層16b)の積層体)を製造した。
【0204】
[実施例2]
最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC4に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の外装材を製造した。
【0205】
[実施例3]
最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC5に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の外装材を製造した。
【0206】
[実施例4]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC8に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例4の外装材を製造した。
【0207】
[実施例5]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC6に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例5の外装材を製造した。
【0208】
[実施例6]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC8に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例6の外装材を製造した。
【0209】
[実施例7]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC6に変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC9に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7の外装材を製造した。
【0210】
[実施例8]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC7に変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC10に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8の外装材を製造した。
【0211】
[実施例9]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC8に変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC11に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9の外装材を製造した。
【0212】
[実施例10]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC6に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10の外装材を製造した。
【0213】
[実施例11]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC8に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11の外装材を製造した。
【0214】
[実施例12]
最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC9に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例12の外装材を製造した。
【0215】
[実施例13]
最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC11に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例13の外装材を製造した。
【0216】
[実施例14]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC2に変更したこと以外は、実施例7と同様にして、実施例14の外装材を製造した。
【0217】
[実施例15]
まず、金属箔層に、第1及び第2の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、金属箔層の両方の面に(CL-3)を、ドライ塗布量として30mg/m2となるようにマイクログラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL-2)を、ドライ塗布量として20mg/m2となるようにマイクログラビアコートにより塗布することで、(CL-3)と(CL-2)からなる複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL-3)と(CL-2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。このようにして第1及び第2の腐食防止処理層を設けた金属箔層を用いた以外は実施例7と同様にして、実施例15の外装材を製造した。
【0218】
[実施例16]
実施例1と同様にして、金属箔層に、第1及び第2の腐食防止処理層を設けた。第1及び第2の腐食防止処理層を設けた金属箔層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。次いで、第1及び第2の腐食防止処理層を設けた金属箔層の第2の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、接着剤a(第2の接着剤層)を用いてシーラント層16(最内層)(厚さ25μm)に貼り付けて、実施例16の外装材を製造した。最内層(シーラント層16)の形成には樹脂RC9との混合物を用いた。
【0219】
[実施例17]
実施例1と同様にして、金属箔層に、第1及び第2の腐食防止処理層を設けた。第1及び第2の腐食防止処理層を設けた金属箔層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。次いで、第1及び第2の腐食防止処理層を設けた金属箔層の第2の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、接着剤b(第2の接着剤層)を用いてシーラント層16(最内層)(厚さ25μm)に貼り付けて、実施例17の外装材を製造した。最内層(シーラント層16)の形成には樹脂RC9との混合物を用いた。
【0220】
[実施例18]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC6に変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC12に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例18の外装材を製造した。
【0221】
[実施例19]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC8に変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC13に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例19の外装材を製造した。
【0222】
[実施例20]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC8に変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC14に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例20の外装材を製造した。
【0223】
[実施例21]
AL側層(シーラント層16a)の厚さを3.3μmに変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の厚さを6.7μmに変更したこと以外は、実施例7と同様にして、実施例21の外装材を製造した。
【0224】
[実施例22]
AL側層(シーラント層16a)の厚さを3.3μmに変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の厚さを6.7μmに変更したこと以外は、実施例9と同様にして、実施例22の外装材を製造した。
【0225】
[実施例23]
AL側層(シーラント層16a)の厚さを15μmに変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の厚さを30μmに変更したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例23の外装材を製造した。
【0226】
[実施例24]
AL側層(シーラント層16a)の厚さを15μmに変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の厚さを30μmに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、実施例24の外装材を製造した。
【0227】
[実施例22]
AL側層(シーラント層16a)の厚さを15μmに変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の厚さを30μmに変更したこと以外は、実施例9と同様にして、実施例25の外装材を製造した。
【0228】
[実施例26]
AL側層(シーラント層16a)の厚さを20μmに変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の厚さを40μmに変更したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例26の外装材を製造した。
【0229】
[実施例27]
AL側層(シーラント層16a)の厚さを20μmに変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の厚さを40μmに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、実施例27の外装材を製造した。
【0230】
[実施例28]
AL側層(シーラント層16a)の厚さを20μmに変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の厚さを40μmに変更したこと以外は、実施例9と同様にして、実施例28の外装材を製造した。
【0231】
[実施例29]
AL側層(シーラント層16a)の厚さを26.7μmに変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の厚さを53.3μmに変更したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例29の外装材を製造した。
【0232】
[実施例30]
AL側層(シーラント層16a)の厚さを26.7μmに変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の厚さを53.3μmに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、実施例30の外装材を製造した。
【0233】
[実施例31]
AL側層(シーラント層16a)の厚さを26.7μmに変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の厚さを53.3μmに変更したこと以外は、実施例9と同様にして、実施例31の外装材を製造した。
【0234】
[実施例32]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC15に変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC13に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例32の外装材を製造した。
【0235】
[比較例1]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC16に変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC18に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の外装材を製造した。
【0236】
[比較例2]
AL側層(シーラント層16a)の形成に用いた材料を、樹脂RC17に変更したこと、及び、最内層(シーラント層16b)の形成に用いた材料を、樹脂RC19に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の外装材を製造した。
【0237】
各実施例及び比較例の主な条件を表3及び表4に示す。
【0238】
【0239】
【0240】
<評価>
実施例及び比較例で得られた外装材に対し、以下の評価試験を行った。
【0241】
(シール強度)
外装材を60mm×120mmにカットしたサンプルをシーラント層を内側にして2つに折り畳み、1辺を10mm幅のシールバーで190℃、0.5MPa、3秒で熱封緘して、接着部を形成した。常温で24時間保管後、熱封緘1辺目を15mm幅にカットし(
図7を参照)、接着部の幅方向の一端から他端までのシール強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて連続的に測定した。試験は、JIS K6854に準じて、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/分で行った。接着部の一端からの変位とシール強度との関係を示すグラフ(
図3を参照)において、剥離開始後の荷重の最初の極大値を最大シール強度S
M(N/15mm)とした。また、上記グラフにおいて、変位(mm)に対するシール強度の安定域(±3N/15mm以下のシール強度のばらつきが5mm以上続いた領域)が存在する場合、該安定域における平均シール強度S
Sを算出し、平均シール強度S
Sの最大シール強度S
Mに対する比S
S/S
Mを求めた。また、上記グラフにおいて、上記安定域が存在しない場合は、最大シール強度が得られた変位からヒートシール部の他端までの変位における1mmごとのシール強度を測定し(
図4を参照)、これらを平均した平均シール強度S
Aを算出した。算出した平均シール強度S
Aの最大シール強度S
Mに対する比S
A/S
Mを求めた。
【0242】
(電解液ラミネート強度)
エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPF6を1Mになるように加えた電解液をテフロン(登録商標)容器に充填し、その中に外装材を15mm×100mmにカットしたサンプルを入れ、密栓後85℃、24時間で保管した。その後、共洗し、金属箔層/シーラント層間のラミネート強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。試験は、JIS K6854に準じて、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/分で行った。その結果に基づき、以下の基準で評価した。
A:ラミネート強度が7N/15mm超
B:ラミネート強度が6N/15mm以上、7N/15mm以下
C:ラミネート強度が5N/15mm以上、6N/15mm未満
D:ラミネート強度が5N/15mm未満
【0243】
(電解液ヒートシール強度)
外装材を60mm×120mmにカットしたサンプルをシーラント層を内側にして2つに折り畳み、1辺を10mm幅のシールバーで190℃、0.5MPa、3秒で熱封緘し、ヒートシール部を形成した。その後、残りの2辺も熱封緘し袋状になった外装材に、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPF
6を1Mになるように加えた電解液を2ml注入したパウチを60℃で24時間保管後、熱封緘1辺目を15mm幅にカットし(
図8を参照)、ヒートシール部の一端(電解液と接していた側の端部)からシール強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて連続的に測定した。試験は、JIS K6854に準じて、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/分で行った。「シール強度」の項目と同様にして求めた最大シール強度及び比率の結果に基づき、以下の基準で評価した。
S:最大シール強度が50N/15mm以上
A:最大シール強度が45N/15mm以上、50N/15mm未満
B:最大シール強度が35N/15mm以上、45N/15mm未満
C:最大シール強度が25N/15mm以上、35N/15mm未満
D:最大シール強度が25N/15mm未満
【0244】
(デガッシングヒートシール強度(デガスヒートシール強度))
外装材を75mm×150mmにカットしたサンプルをシーラント層を内側にして37.5mm×150mmに2つ折りにした後(
図9(a)を参照)、150mm辺と37.5mm辺の一方をヒートシールし、製袋した。その後、パウチ内に、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPF
6を1Mになるように加えた電解液を5ml注液し、37.5mm辺の他方をヒートシールして、シール部DS1により密封されたパウチを得た。次いで、このパウチを60℃で24時間保管した後、電解液を含んだ状態でパウチ中央部を10mm幅のシールバーで190℃、0.3MPa、2秒でヒートシールした(デガッシングヒートシール部DS2、
図9(b)を参照)。シール部を安定化させるため、常温で24時間保管後、デガッシングヒートシール部DS2を含む領域を15mm幅にカットし(
図9(c)を参照)、デガッシングヒートシール部の一端(電解液と接していた側の端部)からシール強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。試験は、JIS K6854に準じて、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/分で行った。「シール強度」の項目と同様にして求めた最大シール強度及び比率の結果に基づき、以下の基準で評価した。
S:最大シール強度が45N/15mm以上
A:最大シール強度が40N/15mm以上、45N/15mm未満
B:最大シール強度が30N/15mm以上、40N/15mm未満
C:最大シール強度が20N/15mm以上、30N/15mm未満
D:最大シール強度が20N/15mm未満
【0245】
(デガッシングヒートシール後の絶縁性(デガス絶縁))
外装材を120mm×200mmにカットしたサンプル40を、シーラント層が成型機の凸部に接するように冷間成型用金型にセットし、成型速度15mm/secで2.0mmの深絞りを行って深絞り部41を形成した後、120mm×100mmに2つ折りにした(
図10(a)を参照)。次いで、タブ42とタブシーラント43とを間に挟んだ状態で100mmの上辺部44をヒートシールした後(
図10(b)を参照)、120mmの側辺部45をヒートシールして製袋した(
図10(c)を参照)。その後、電極を接触させるために、サンプル40の外層の一部を削って金属箔層の露出部46を形成した(
図10(d)を参照)。次いで、パウチ内に、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPF
6を1Mになるように加えた電解液を5ml注液し、100mmの下辺部47をヒートシールにて封止した(
図10(e)を参照)。その後、このパウチを平置きした状態で、60℃で24時間放置し、ヒートシールした下辺部47よりも内側の部分48を、電解液を噛み込んだ状態で190℃、0.3MPa(面圧)、2secでデガッシングヒートシールした(
図10(f)を参照)。次いで、タブ42と金属箔層の露出部46に電極49a,49bをそれぞれ接続し、耐電圧・絶縁抵抗試験器(KIKUSUI製、「TOS9201」)を用いて25Vを印加し、そのときの抵抗値を測定した(
図10(g)を参照)。抵抗値が15MΩ未満となったサンプルに関して、引き続き25Vで2時間印加を行い、絶縁低下箇所の特定を行った。長時間印加を行うことで、金属箔と電解液の反応物が絶縁低下箇所から析出するため、低下箇所を特定できる。金型には、成型エリアが80mm×70mm(角筒型)、パンチコーナーラジアス(RCP)が1.0mmのものを用いた。その結果に基づき、以下の基準で評価した。
A:抵抗値が200MΩ超
B:抵抗値が100MΩ以上200MΩ以下
C:抵抗値が15MΩ以上100MΩ未満
D:抵抗値が15MΩ未満
【0246】
(総合品質)
上記各評価の結果を表5及び表6に示す。下記表5及び表6において、各評価結果にD評価がないものは、総合的な品質が優れていると言える。
【0247】
【0248】
【0249】
実施例及び比較例で得られた全ての外装材において、シール強度評価におけるグラフ中には安定域が存在していた。表5及び表6に示した結果から明らかなように、実施例1~31の外装材は、デガッシングヒートシール後の絶縁性に優れることが確認された。さらに、実施例1~31の外装材は、電解液ラミネート強度、電解液ヒートシール強度、デガッシングヒートシール強度においても十分な性能を有していることが確認された。これに対し、比較例1~2の外装材では、シール強度及び絶縁性に劣ることが確認された。
【0250】
実施例1~3を比較すると、最内層の非相溶系成分(B)としてエラストマーが微分散されたリアクタータイプTPO又はエラストマーがグラフト化された動的架橋PP系エラストマーを用いることにより、海島界面の密着性が向上し、シール強度及び絶縁性が向上したことが確認できる。
【0251】
実施例21~31を比較すると、シーラント層を厚くしたときに最大シール強度SM及び比SS/SMの両方が向上し、一層優れたシール強度及び絶縁性が得られたことが確認できる。一方、シーラント層を薄くしても外装材として問題のないシール強度及び絶縁性が得られたことが確認できる。
【符号の説明】
【0252】
10,20,30…蓄電装置用外装材、11…基材層、12…第1の接着剤層、13…金属箔層、14…腐食防止処理層、16…シーラント層、16a…第1のシーラント層、16b…第2のシーラント層、16c…第3のシーラント層、17…第2の接着剤層、DS1…シール部、DS2…デガッシングヒートシール部。