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  • 特許-電力変換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231215BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018228274
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020092518
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴 徹
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】山崎 慎一
【審判官】吉田 美彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-122342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が電源の負極側と接続され、他端が接地に接続される負極側コンデンサと、パワー半導体素子が実装される絶縁基板とを備える電力変換装置であって、
前記絶縁基板は、一方の面に形成されると共に前記パワー半導体素子が接合される正極側金属層と、他方の面において前記正極側金属層と対応する位置に形成されると共に接地部材と電気的に接続される接地側金属層とを備え、
前記正極側金属層及び前記接地側金属層は、それぞれ表面積が等しい同形状とされ、
前記表面積は、前記正極側金属層と前記接地側金属層とによって形成されるコンデンサの静電容量前記負極側コンデンサの静電容量と等しくなるように設定されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記接地部材は、前記絶縁基板と接合される冷却器であることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記パワー半導体素子を複数備え、前記電源から供給される直流電力を多相交流電力へと変換する変換回路を備え、
前記正極側金属層及び前記接地側金属層は、交流電力の各相に対応する複数の前記パワー半導体素子ごとに設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、3相インバータ回路に対してノイズ除去のためのフィルタコンデンサが接続された構成が開示されている。この特許文献1では、2つのフィルタコンデンサを直列に接続している。このうち、一方のフィルタコンデンサの端子を正極側に接続し、他方のフィルタコンデンサの端子を負極側に接続し、2つのフィルタコンデンサの中点電位をグランドへと接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-4953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような特許文献1の構成においては、正極側と負極側とのそれぞれにフィルタコンデンサを設ける必要がある。したがって、電力変換装置が備える部材が多く、大型化することが課題となっている。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、電力変換装置を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、電力変換装置に係る第1の手段として、電源の負極側と接続される負極側コンデンサと、パワー半導体素子が実装される絶縁基板とを備える電力変換装置であって、前記絶縁基板は、一方の面に形成されると共に前記パワー半導体素子と電気的に接続される正極側金属層と、他方の面において前記正極側金属層と対応する位置に形成されると共に接地部材と電気的に接続される接地側金属層とを備え、前記正極側金属層と前記接地側金属層との間に形成されるコンデンサの静電容量は、前記負極側コンデンサの静電容量と等しく設定される、という構成を採用する。
【0007】
電力変換装置に係る第2の手段として、前記接地部材は、前記絶縁基板と接合される冷却器である、という構成を採用する。
【0008】
電力変換装置に係る第3の手段として、直流電力を多相交流電力へと変換する変換回路を備え、前記正極側金属層及び前記接地側金属層は、交流電力の各相に対応する複数のスイッチング素子ごとに設けられている、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁基板において正極側金属層と負極側金属層との間のコンデンサ容量を用い、正極側のコンデンサの静電容量の合計と、負極側コンデンサの静電容量とを等しくしている。これにより、正極側おいて別途接続されるコンデンサの個数を削減することが可能である。したがって、電力変換装置を小型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電力変換装置の一部を示す模式的な部分断面図である。
図2】本発明の一実施形態における変換回路を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電力変換装置の変形例を示す模式的な部分断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電力変換装置の変形例を示す変換回路の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る電力変換装置の一実施形態について説明する。
【0012】
電力変換装置1は、図1及び図2に示すように、ケーシング2と、冷却器3(接地部材)と、絶縁基板4と、複数のパワー半導体チップ5と、接続導体6a、6bと、平滑用コンデンサ7と、負極側フィルタコンデンサ8と、はんだ層9と、電力線10n、10p、10w、10v、10wとを備えている。
【0013】
ケーシング2は、複数のパワー半導体チップ5を収容する樹脂製部材である。ケーシング2は、冷却器3に絶縁基板4が設けられ、さらに絶縁基板4上にパワー半導体チップ5が設置された状態で、絶縁基板4を保持する容器である。
【0014】
冷却器3は、絶縁基板4と一面が接触した状態で設けられている。冷却器3は、例えば水冷式とされ、内部に冷却水が流通することにより、絶縁基板4及びパワー半導体チップ5を冷却する。また、冷却器3は、外部部材(例えばアルミ筐体、図示せず)と電気的に接続されることにより、グランドとして機能する。すなわち、冷却器3は、グランドと同電位である。
【0015】
絶縁基板4は、図2に示す変換回路Aが形成されると共に、一方の面にパワー半導体チップ5が接合され、他方の面が冷却器3に接合されている。この絶縁基板4は、セラミック等の絶縁素材で構成された基板本体4aと、パワー半導体チップ5が接合される面に複数設けられる正極側銅層4b(正極側金属層)と、冷却器3に対して接合される面において、正極側銅層4bと対応する位置に複数設けられる接地側銅層4c(接地側金属層)とを備えている。これにより、絶縁基板4は、正極側銅層4bと接地側銅層4cとの間がコンデンサCとして機能する。このため、正極側銅層4b及び接地側銅層4cは、それぞれ表面積が等しい同形状とされ、コンデンサCの静電容量がコモンノードノイズの除去に必要となる静電容量、すなわち、負極側フィルタコンデンサ8の静電容量と同等となるように、表面積Sが設定されている。表面積Sは、基板本体4aの厚さLとして、下式に基づいて算出される。なお、εは誘電率を示す。
【0016】
【数1】
【0017】
パワー半導体チップ5は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)にFWD(Free Wheeling Diode)を内蔵したRC-IGBT(Reverse-Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor)であり、絶縁基板4に対してはんだ層9により接合されている。このようなパワー半導体チップ5は、複数個組み合わせて直流を交流に変換することを目的として実装されている。
【0018】
接続導体6aは、一端が正極側銅層4bにはんだ層9により接合され、他端がケーシング2に埋設された電力線10pに接続された導電部材である。
接続導体6bは、一端がパワー半導体チップ5にはんだ層9により接合され、他端がケーシング2に埋設された電力線10uに接続された導電部材である。接続導体6bに対して外部端子が接続されることにより、パワー半導体チップ5が電気的に外部(モータ、バッテリなど)と接続される。
【0019】
平滑用コンデンサ7は、図2に示すように、絶縁基板4上に形成された変換回路Aに並列接続されている。平滑用コンデンサ7は、一端が変換回路Aにおける正極側と接続され、他端が変換回路Aにおける負極側と接続されている。
【0020】
負極側フィルタコンデンサ8は、一端が負極側に接続され、他端がグランドへと接続されている。この負極側フィルタコンデンサ8の静電容量は、絶縁基板4において形成されるコンデンサCと同等とされる。
【0021】
電力線10pは、図1及び2に示すように、バッテリの正極側Pと、複数のパワー半導体チップ5とを電気的に接続する配線である。電力線10nは、バッテリの負極側Nと、複数のパワー半導体チップ5とを電気的に接続する配線である。電力線10u、10v、10wは、それぞれ、後述するモータMの各相(U相、V相、W相)と絶縁基板4内の変換回路Aとを電気的に接続する配線である。
【0022】
このような電力変換装置1において、図2に示すように、変換回路Aは、交流U相、交流V相、交流W相のそれぞれがモータMの各相に電気的に接続されている。また、変換回路Aは、各相に対して複数のスイッチング素子を備えている。そして、変換回路Aは、一端がバッテリ(電源)の正極側Pに接続され、他端がバッテリの負極側Nに接続されている。すなわち、電力変換装置1は、バッテリから供給される直流電力を、3相交流電力へと変換し、モータMへと供給する。
【0023】
また、変換回路Aにおいては、各相に対して1つずつコンデンサCが設けられると共に、負極側と接続される負極側フィルタコンデンサ8が設けられている。このような静電容量の等しいコンデンサCと負極側フィルタコンデンサ8とを用いることにより、変換回路Aにおけるコモンモードノイズを除去している。
【0024】
本実施形態に係る電力変換装置1は、絶縁基板4において正極側銅層4b及び接地側銅層4cにより形成されたコンデンサCの静電容量を、負極側フィルタコンデンサ8と等しくすることにより、正極側にフィルタコンデンサを設けることなくノイズを除去することが可能である。したがって、フィルタコンデンサの容量を減らすことが可能であり、電力変換装置1を小型化することができる。
【0025】
また、本実施形態に係る電力変換装置1によれば、接地側銅層4cが冷却器3に電気的に接続されることにより、グランドと接続されている。したがって、正極側にフィルタコンデンサを設けることなくコモンモードノイズを除去することが可能である。
【0026】
また、本実施形態に係る電力変換装置1は、各相の複数のスイッチング素子に対して1個ずつコンデンサCが設けられている。したがって、絶縁基板4のサイズを均等とすることができ、絶縁基板4の実装が容易となる。
【0027】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0028】
例えば、図3及び4に示すように、電力変換装置1は、コンデンサCが、負極側に配置されたパワー半導体チップ5と接続されることで、負極側の電力線10nと電気的に接続されるものとしてもよい。なお、正極側のパワー半導体チップ5において銅層間に形成されるコンデンサCの静電容量と、負極側のパワー半導体チップ5において銅層間に形成されるコンデンサCの静電容量とが等しくなるように設定されている。このとき、電力変換装置1は、負極側フィルタコンデンサ8を備えない。この場合、図4に示すように、負極側の各相に対してコンデンサCが形成されることとなるため、負極側フィルタコンデンサ8の容量を減らすことが可能であると共に、絶縁基板4のサイズを均等とすることができ、絶縁基板4の実装が容易となる。
【0029】
上記実施形態においては、絶縁基板4を冷却器3に接合することにより、接地側銅層4cを接地するものとしたが、本発明はこれに限定されない。接地側銅層4cは、別途外部の接地部材へと電気的に接続されるものとしてもよい。
【0030】
上記実施形態においては、U相、V相、W相の各相に対して1つずつコンデンサCが形成されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。絶縁基板4上の配置によって、コンデンサCが設けられる数は異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 電力変換装置
3 冷却器
4 絶縁基板
4b 正極側銅層
4c 接地側銅層
5 パワー半導体チップ
8 負極側フィルタコンデンサ
図1
図2
図3
図4