(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】光硬化型インクジェット記録用インク組成物およびインクセット
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20231215BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231215BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231215BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20231215BHJP
C09D 11/38 20140101ALI20231215BHJP
【FI】
C09D11/322
B41J2/01 501
B41M5/00 120
C09D11/101
C09D11/38
(21)【出願番号】P 2019068352
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-09-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】光本 欣正
(72)【発明者】
【氏名】上野 浩明
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-070135(JP,A)
【文献】特開2018-188570(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159037(WO,A1)
【文献】特開2008-163080(JP,A)
【文献】特開2015-120778(JP,A)
【文献】国際公開第2013/062090(WO,A1)
【文献】特開2017-160320(JP,A)
【文献】特開2015-000878(JP,A)
【文献】特開2011-225824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/322
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/101
C09D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤としてC.I.ピグメントイエロー180と、
重合性化合物として、式
CH
2=CR
1-COOR
2-O-CH=CH-R
3・・・(I)
[式中、R
1は水素原子またはメチル基を表し、R
2は炭素原子数2以上20以下の2価の有機残基を表し、R
3は水素原子または炭素原子数1以上11以下の1価の有機残基を表す。]
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類30~40質量%、
30℃以上のTgを有するもののみから成
り、アクリルアミド系モノマー及び単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される少なくとも1種の単官能モノマー1~9質量%及び
30℃以上のTgを有する多官能(メタ)アクリルモノマー10~40質量%と、
光重合開始剤とを、
含有する、
イエロー色の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項2】
2未満の一次皮膚刺激性インデックスを有する、請求項1に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項3】
前記単官能モノマーはアクリルアミド系モノマーを含む、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項4】
前記単官能モノマーは、イソボルニルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートおよびイソボルニルメタアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項5】
前記多官能(メタ)アクリルモノマーは、ジシクロペンタニルジアクリレート、メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールプロピレンオキシドジアクリレートおよび1,9-ノナンジオールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項6】
シングルパス方式のインクジェット記録方法に使用される請求項1~5のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を含むインクセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インクジェット記録用インク組成物に関し、特に、イエローの着色材を含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化型インクジェット記録法を使用した高速印刷の一例は、被印刷物の搬送方向に複数配列させたインクジェットヘッドを使用して、インクを被印刷物に塗着した後に、インクを硬化させるシングルパス方式のインクジェット印刷である。光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、光源として水銀ランプ、メタルハライドランプ、また近年ではUV-LEDといった単一光源を用いて硬化が行われている。
【0003】
しかしながら、印刷の高速化に伴い、塗着後のインクに照射される光の照射量が減少し、光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化が不十分になる問題が生じている。
【0004】
インクジェットプリンターにて、フルカラーの印刷を行う場合通常基本色としてブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクの組み合わせにて印刷が行われる。これらのカラーの中で着色材の吸収特性からブラックやイエロー色はUV照射領域波長のエネルギー吸収が大きいことが知られている。特にイエロー色に関しては、イエロー色単独だけでなく二次色と呼ばれるグリーン色(シアン色+イエロー色)やレッド色(マゼンタ色+イエロー色)にも用いられる。
【0005】
特許文献1には、式
CH2=CR1-COOR2-O-CH=CH-R3 (I)
[式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2~20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1~11の1価の有機残基である。]
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有する、ワンパス方式のインクジェットシステムに用いる紫外線硬化型インクが記載されている。特許文献1の紫外線硬化型インクは、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有し、ピーク強度が800mW/cm2以上の紫外線を照射することにより、塗膜の硬化性が向上し、硬化シワの発生が防止されるものである。
【0006】
特許文献2には、色材としてC.I.ピグメントイエロー155、重合性化合物として上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、これら以外の単官能(メタ)アクリレートを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物が記載されている。特許文献2の光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、硬化性、保存安定性、耐候性に優れたものである。
【0007】
シングルパス方式におけるインクジェット印刷は近年高速化が進行し、使用される光硬化型インクには、硬化性、吐出安定性の更なる向上が要求される。ここで、硬化性とは、印刷の高速化に伴い、塗着後のインクに照射される光の照射量が減少した場合でも、インクの硬化が進行して、十分な塗膜強度及び光沢を提供する性質をいう。吐出安定性とは、印刷の高速化に伴い、インクの吐出速度が増大した場合でも、インクジェットヘッドのノズルにおいて目詰まりを起こさずインク液滴を安定的に吐出する性質をいう。
【0008】
そして、シングルパス方式におけるインクジェット印刷に関しては、その利用範囲が拡大し、商品ラベル等、人の皮膚に直接触れる部材も印刷されるので、光硬化型インクに対し、低い皮膚刺激性が要求される。尚、光硬化型インクは、通常、光重合開始剤とエチレン性二重結合を有する重合性化合物とを含むため、臭気、皮膚刺激等を有する。特許文献3には、硬化性に優れる光硬化型インクほど、皮膚刺激性を有することが記載されている。
【0009】
更に、食品包装等を印刷する用途においては光硬化型インクに対し、高い安全性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2016-147500号公報
【文献】特開2013-136714号公報
【文献】特開2010-209198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低い皮膚刺激性及び高い安全性を有し、高速印刷における優れた吐出安定性を有し、硬化性に優れるために高い塗膜密着性および高い塗膜強度を提供することができる光硬化型インクジェット記録用インク組成物、及びこれを含むインクセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、着色剤としてC.I.ピグメントイエロー180と、
重合性化合物として、式
CH2=CR1-COOR2-O-CH=CH-R3・・・(I)
[式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数2以上20以下の2価の有機残基を表し、R3は水素原子または炭素原子数1以上11以下の1価の有機残基を表す。]
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類30~40質量%、
30℃以上のTgを有する単官能モノマー1~9質量%及び
30℃以上のTgを有する多官能(メタ)アクリルモノマー10~40質量%と、
光重合開始剤とを、
含有する、光硬化型インクジェット記録用インク組成物を提供する。
【0013】
尚、上記重合性化合物の含有量は、光硬化型インクジェット記録用インク組成物を100質量%とした場合の百分率を意味する。
【0014】
ある一形態においては、前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、2未満の一次皮膚刺激性インデックスを有する。
【0015】
ある一形態においては、前記単官能モノマーはアクリルアミド系モノマーを含む。
【0016】
ある一形態においては、前記単官能モノマーは、イソボルニルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートおよびイソボルニルメタアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0017】
ある一形態においては、前記多官能(メタ)アクリルモノマーは、ジシクロペンタニルジアクリレート、メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールプロピレンオキシドジアクリレートおよび1,9-ノナンジオールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0018】
また、本発明は、シングルパス方式のインクジェット記録方法に使用される上記いずれかの光硬化型インクジェット記録用インク組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、上記いずれかの光硬化型インクジェット記録用インク組成物を含むインクセットを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低い皮膚刺激性及び高い安全性を有し、高速印刷における優れた吐出安定性を有し、硬化性に優れるために高い塗膜密着性および高い塗膜強度を提供することができる光硬化型インクジェット記録用インク組成物、及びこれを含むインクセットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、アクリルおよびメタクリルを「(メタ)アクリル」と称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物若しくはその誘導体に由来すること、または化合物若しくはその誘導体に由来する繰返し単位に重合後に化学修飾等を施した重合体であることを意味する。
【0022】
<光硬化型インクジェット記録用インク組成物>
本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インク組成物(以下、インク組成物と記載することがある)は、シングルパス方式のインクジェット記録装置に用いられる。インク組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを含有する。重合性化合物は、ビニエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、単官能モノマーと、多官能(メタ)アクリルモノマーとを含む。ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、一般式(I)で表される。単官能モノマーは、アクリルアミド系モノマーおよび単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される少なくとも1種である。単官能モノマーの含有率は、1質量%以上9質量%以下である。多官能(メタ)アクリルモノマーの含有率は、5質量%以上50質量%以下である。単官能モノマーの重合体のガラス転移温度が30℃以上であり、多官能(メタ)アクリルモノマーの重合体のガラス転移温度が30℃以上である。
【0023】
[1.シングルパス方式]
シングルパス方式のインクジェット記録装置は、記録媒体の搬送方向に対して垂直方向の記録媒体全域をカバーするラインヘッドを備える。このインクジェット記録装置は、固定されたラインヘッドに対して記録媒体を搬送方向に一回だけ移動させ、この移動に連動してラインヘッドのノズルからインク液滴を吐出する動作で記録媒体上に画像を形成する。このため、シングルパス方式のインクジェット記録装置は高速印刷が可能であり、生産性を向上させることができる。吐出方式は、ピエゾ方式が好ましい。
【0024】
UVランプとしては、UV-LED、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルランプ、等を使用しうる。UVランプの出力は、一般に、80~240W/cm、好ましくは160~240W/cmである。UVランプの出力が80W/cm未満であると高速で印刷した際に、照射量不足にて硬化不良を起こすおそれがある。240W/cmを超える出力のUVランプを使用した場合、UV照射時の発熱により印刷基材の変形を起こすおそれがある。これらの中でも好ましいUVランプは高圧水銀ランプ、メタルハライドランプである。
【0025】
[2.光重合開始剤]
本明細書において、光重合開始剤は、活性エネルギー線を吸収し光重合反応(連鎖重合反応)を開始させる。光重合開始剤としては、たとえば、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アルキルフェノン系化合物、およびチオキサントン系化合物が挙げられる。
【0026】
アシルホスフィンオキサイド系化合物としては、たとえば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキシド、およびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドが挙げられる。アシルホスフィンオキシド系化合物の市販品としては、たとえば、BASF社製「IRGACURE(登録商標)TPO」および「IRGACURE(登録商標)819」が挙げられる。
【0027】
アルキルフェノン系化合物としては、たとえば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、および2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンが挙げられる。アルキルフェノン系化合物の市販品としては、BASF社製「IRGACURE(登録商標)651」、および「IRGACURE(登録商標)907」が挙げられる。
【0028】
チオキサントン系化合物としては、たとえば、チオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-エチルチオキサントン、および1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンが挙げられる。
【0029】
光重合開始剤の含有量は、光重合反応を効率よく進行させる観点から、インク組成物100質量部に対して5質量部以上25質量部以下であることが好ましく、10質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
【0030】
[3.重合性化合物]
本明細書において、重合性化合物は、重合反応により重合体を形成し得る化合物である。重合性化合物は、一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、アクリルアミド系モノマーおよび単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される少なくとも1種の単官能モノマーと、多官能(メタ)アクリルモノマーとを含む。単官能モノマーの重合体のガラス転移温度が30℃以上である。多官能(メタ)アクリルモノマーの重合体のガラス転移温度が30℃以上である。
【0031】
(3-1.ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類)
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、一般式(I):
CH2=CR1-COOR2-O-CH=CH-R3・・・(I)
(前記一般式(I)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数2以上20以下の2価の有機残基を表し、R3は水素原子または炭素原子数1以上11以下の1価の有機残基を表す)で表される。以下、一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を(メタ)アクリル酸エステル類(I)と記載することがある。
【0032】
炭素原子数2以上20以下の2価の有機残基としては、たとえば、炭素原子数2以上20以下のアルキレン基、炭素原子数3以上20以下のシクロアルキレン基、および炭素原子数6以上10以下の2価の芳香族基が挙げられる。炭素原子数2以上20以下の2価の有機残基は置換されていてもよい。
【0033】
炭素原子数2以上20以下のアルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状で非置換である。炭素原子数2以上20以下のアルキル基としては、たとえば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、およびヘキサデシレン基が挙げられる。炭素原子数2以上20以下のアルキレン基は、炭素原子数2以上9以下のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のオキソアルキレン基、酸素原子2個以上4個以下のいずれかで置換された炭素原子数9以上15以下のアルキレン基および炭素原子数2以上6以下のアルキレン基がより好ましい。
【0034】
炭素原子数2以上9以下のアルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状で非置換である。炭素原子数2以上9以下のアルキル基としては、たとえば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、およびノニレン基が挙げられる。
【0035】
炭素原子数1以上8以下のオキソアルキレン基は、直鎖状または分岐状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のオキソアルキレン基は、炭素原子数2以上9以下のアルキレン基における1つの-CH2-が-O-に置換された置換基である。
【0036】
炭素原子数9以上15以下のアルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状で非置換である。炭素原子数9以上15以下のアルキレン基としては、たとえば、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリドデシレン基、テトラデシレン基、テトラデシレン基、およびペンタデシレン基が挙げられる。
【0037】
炭素原子数2以上6以下のアルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状で非置換である。炭素原子数2以上6以下のアルキル基としては、たとえば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、およびヘキシレン基が挙げられる。
【0038】
炭素原子数3以上20以下のシクロアルキレン基は、環状で非置換である。炭素原子数3以上20以下のシクロアルキレン基としては、たとえば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、およびシクロヘキサデシレン基が挙げられる。炭素原子数3以上20以下のシクロアルキレン基は、複数の炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数3以上20以下のシクロアルキレン基であってもよい。炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状または分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、およびイソプロピル基が挙げられる。
【0039】
炭素原子数6以上10以下の2価の芳香族基は、環状で非置換である。炭素原子数6以上10以下の2価の芳香族基としては、たとえば、フェニレン基、およびナフチリレン基が挙げられる。炭素原子数6以上10以下の2価の芳香族基は、複数の炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数6以上10以下の2価の芳香族基であってもよい。
【0040】
炭素原子数1以上11以下の1価の有機残基としては、たとえば、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基および炭素原子数6以上10以下の1価の芳香族基が挙げられる。
【0041】
炭素原子数1以上10以下のアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状で非置換である。炭素原子数1以上10以下のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。炭素原子数1以上10以下のアルキル基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、フェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、およびベンジル基がさらに好ましい。置換されていてもよい炭素原子数6以上10以下の1価の芳香族基は、フェニル基が好ましい。炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、炭素原子数3以上20以下のシクロアルキレン基中の炭素原子数1以上3以下のアルキル基と同義である。
【0042】
炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、環状で非置換である。炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基としては、たとえば、シクロペンタン基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
【0043】
炭素原子数6以上10以下の1価の芳香族基は、環状で非置換である。炭素原子数6以上10以下の1価値の芳香族基としては、たとえば、フェニル基、およびナフチル基が挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル類(I)としては、たとえば、(メタ)アクリル酸ビニロキシアルキル、(メタ)アクリル酸ビニロキシシクロアルキル、(メタ)アクリル酸アルキルビニロキシアルキル、(メタ)アクリル酸ビニロキシアルキルシクロアルキルアルキル、(メタ)アクリル酸ビニロキシアルキルアリールアルキル、(メタ)アクリル酸ビニロキシアルコキシアルキル、(メタ)アクリル酸ビニロキシアルコキシアルコキシアルキル、および(メタ)アクリル酸ビニロキシアルコキシアルコキシアルコキシアルキルが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル類(I)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(メタ)アクリル酸ビニロキシアルキルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、および(メタ)アクリル酸2-ビニロキシブチルが挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリル酸ビニロキシシクロアルキルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸ビニロキシシクロヘキシルが挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリル酸アルキルビニロキシアルキルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸2-メチル-3-ビニロキシプロピル、および(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシプロピルが挙げられる。
【0048】
(メタ)アクリル酸ビニロキシアルキルシクロアルキルアルキルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチルが挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリル酸ビニロキシアルキルアリールアルキルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチルが挙げられる。
【0050】
(メタ)アクリル酸ビニロキシアルコキシアルキルとしては、たとえば、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)、メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEM)、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、および(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピルが挙げられる。
【0051】
(メタ)アクリル酸ビニロキシアルコキシアルコキシアルキルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸ビニロキシエトキシエトキシエチルが挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリル酸ビニロキシアルコキシアルコキシアルコキシアルキルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸ビニロキシエトキシエトキシエトキシエチルが挙げられる。
【0053】
これら(メタ)アクリル酸エステル類(I)のうち、低粘度で、臭気が低く皮膚への刺激を抑えることができ、引火点が高く、かつ、反応性及び硬化性に優れ、硬化により形成される塗膜の密着性が優れるため、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステル類(I)の含有率は、インクを低粘度化させることができ、反応性及び密着性を向上させる観点から、インク組成物において30質量%以上50質量%以下であることが好ましく、30質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、塗膜強度を向上させる観点から、30質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル類(I)の含有率が、インク組成物において30質量%未満であると、インク組成物の粘度が上昇し、40質量%を超えると塗膜強度が低下する。
【0055】
(3-2.単官能モノマー)
本明細書において、単官能モノマーは、1分子中に重合性の部分(たとえば、エチレン性二重結合)を1つ有する。単官能モノマーは、アクリルアミド系モノマーおよび単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される少なくとも1種である。単官能モノマーの含有率は、インク組成物において1質量%以上9質量%以下である。単官能モノマーの重合体のガラス転移温度Tgが30℃以上である。単官能モノマーの重合体のガラス転移温度Tgは、好ましくは35~200、より好ましくは40~145である。
【0056】
単官能モノマーは粘度が比較的低く、かつ単官能モノマーの重合体のガラス転移温度Tgが比較的高い。このため、インク組成物は1質量%以上9質量%以下の含有率で単官能モノマーを含むと、(メタ)アクリル酸エステル類(I)および多官能(メタ)アクリルモノマーに対して希釈剤として機能し、吐出安定性および安全性に優れかつ強度の優れる塗膜を形成可能な、すなわち3つの性質をバランスよく兼ね備えるインク組成物を提供することができる。単官能モノマーの含有率は、上記3つの性質を更に向上させる観点から、インク組成物において7質量%以上9質量%以下であることが好ましく、5質量%以上9質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
一次皮膚刺激性インデックス(Primary Irritation Index:PII値)は、皮膚刺激性を示す物性値である。PII値が大きいほど、皮膚への刺激性が強く、取り扱いに注意を要する化合物であることを示す。
【0058】
(3-2-1.アクリルアミド系モノマー)
アクリルアミド系モノマーとしては、たとえば、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、およびアクリロイルモルフォリン(ACMO)が挙げられる。これらのアクリルアミド系モノマーのうち、環状構造(より具体的には、脂環式構造またはヘテロ環式構造等)を有するアクリルアミド系モノマーが好ましく、アクリロイルモルフォリンがより好ましい。
【0059】
アクリルアミド系モノマーの重合体のガラス転移温度Tgは、塗膜強度を向上させる観点から、30℃以上である。優れた塗膜強度を維持しつつ、吐出安定性および安全性を向上させる観点から、30℃以上150℃以下であることが好ましく、100℃以上150℃以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、アクリルアミド系モノマーの重合体とは、アクリルアミド系モノマーが単独で重合した重合体である。すなわち、該重合体が実質的に1種のアクリルアミド系モノマー由来の繰返し単位からなることを意味する。重合体が実質的に1種のアクリルアミド系モノマー由来の繰返し単位からなるとは、重合体を構成する全繰返し単位に対して1種のアクリルアミド系モノマー由来の繰返し単位が99モル%以上であることを意味する。
【0060】
(3-2-2.単官能(メタ)アクリルモノマー)
単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、たとえば、鎖状構造または環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。ここで、ここで鎖状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーは、その分子構造中に環式構造を有さず、直鎖状構造または分岐状構造を有する。環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーは、その分子構造中に環状構造を有し、鎖状構造をさらに有してもよい。
【0061】
単官能(メタ)アクリルモノマーは、該単官能(メタ)アクリルモノマーの重合体が30℃以上のガラス転移温度を有する観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、たとえば、単環の脂環式(メタ)アクリレート、複環の脂環式(メタ)アクリレート、およびヘテロ環式(メタ)アクリレートが挙げられる。単環の脂環式(メタ)アクリレートとしては、たとえば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(より具体的には、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(TMCHA)等)が挙げられる。複環の脂環式(メタ)アクリレートとしては、たとえば、イソボルニルアクリレート(IBOA)、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アマダンチル(メタ)アクリレート、およびジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。ヘテロ環式(メタ)アクリレートとしては、たとえば、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)が挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリルモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
これらの単官能(メタ)アクリルモノマーのうち、イソボルニルアクリレート(IBOA)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(TMCHA)、および環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)、およびイソボルニルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、イソボルニルアクリレート(IBOA)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(TMCHA)、および環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0063】
単官能(メタ)アクリルモノマーの重合体のガラス転移温度Tgは、塗膜強度を向上させる観点から、30℃以上である。単官能(メタ)アクリルモノマーのガラス転移温度は、優れた塗膜強度を維持しつつ、吐出安定性および安全性を向上させる観点から、30℃以上90℃以下であることが好ましく、40℃以上90℃以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、単官能(メタ)アクリルモノマーの重合体とは、単官能(メタ)アクリルモノマーが単独で重合した重合体である。すなわち、該重合体が実質的に1種の単官能(メタ)アクリルモノマー由来の繰返し単位からなることを意味する。重合体が実質的に1種の単官能(メタ)アクリルモノマー由来の繰返し単位からなるとは、重合体を構成する全繰返し単位に対して1種の単官能(メタ)アクリルモノマー由来の繰返し単位が99モル%以上であることを意味する。
【0064】
(3-3.多官能(メタ)アクリルモノマー)
本明細書において、多官能(メタ)アクリルモノマーは、1分子中に重合性の部分(たとえば、エチレン性二重結合)を2以上有する。多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、二官能(メタ)アクリルモノマー、三官能(メタ)アクリルモノマー、四官能(メタ)アクリルモノマー、および五官能(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。多官能(メタ)アクリルモノマーは、鎖状構造または脂環式構造を有してもよい。ここで鎖状構造を有する多官能(メタ)アクリルモノマーは、その分子構造中に環式構造を有さず、直鎖状構造または分岐状構造を有する。脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリルモノマーは、その分子構造中に脂環式構造を有し、鎖状構造をさらに有してもよい。
【0065】
多官能(メタ)アクリルモノマーは、該多官能(メタ)アクリルモノマーの重合体が30℃以上のガラス転移温度を有し、かつインク組成物の安全性を向上させる観点から、二官能(メタ)アクリルモノマーが好ましく、鎖状構造を有する二官能(メタ)アクリルモノマーと、脂環式構造を有する二官能(メタ)アクリルモノマーとを含むことがより好ましく、鎖状構造を有する二官能(メタ)アクリルモノマーのみを含むことがさらに好ましい。
【0066】
鎖状構造を有する二官能(メタ)アクリルモノマーとしては、たとえば、アルカンジオールジアクリレート(より具体的には、メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート(MPDDA)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(1,9ND-A)、および1,10-デカンジオールジアクリレート(DDDA)等)、ポリアルキレングリコールジアクリレート(より具体的には、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、およびトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)等)および他のジアクリレート(より具体的には、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート(HPNDA)、およびネオペンチルグリコールプロピレンオキシドジアクリレート(NPGPODA)等)が挙げられる。これら鎖状構造を有する多官能(メタ)アクリルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
環状構造を有する二官能(メタ)アクリルモノマーとしては、たとえば、ジシクロペンタニルジアクリレート(DCPDA)が挙げられる。
【0068】
二官能以外の多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、たとえば、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート若しくはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのような三官能(メタ)アクリルモノマー、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのような四官能(メタ)アクリルモノマー、およびジペンタエリストリエールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレートのような五官能(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。
【0069】
これらの多官能(メタ)アクリルモノマーのうち、ジシクロペンタニルジアクリレート(DCPDA)、メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート(MPDDA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート(HPNDA)、1,10-デカンジオールジアクリレート(DDDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ネオペンチルグリコールプロピレンオキシドジアクリレート(NPGPODA)および1,9-ノナンジオールジアクリレート(1,9ND-A)が好ましく、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート(HPNDA)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(1,9ND-A)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、およびネオペンチルグリコールプロピレンオキシドジアクリレート(NPGPODA)からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0070】
多官能(メタ)アクリルモノマーの重合体のガラス転移温度Tgは、塗膜強度を向上させる観点から、30℃以上である。多官能(メタ)アクリルモノマーのガラス転移温度Tgは、優れた塗膜強度を維持しつつ、吐出安定性および安全性を向上させる観点から、30℃以上200℃以下であることが好ましく、30℃以上150℃以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、多官能(メタ)アクリルモノマーの重合体とは、多官能(メタ)アクリルモノマーが単独で重合した重合体である。すなわち、該重合体が実質的に1種の多官能(メタ)アクリルモノマー由来の繰返し単位からなることを意味する。重合体が実質的に1種の多官能(メタ)アクリルモノマー由来の繰返し単位からなるとは、重合体を構成する全繰返し単位に対して1種の多官能(メタ)アクリルモノマー由来の繰返し単位が99モル%以上であることを意味する。
【0071】
多官能(メタ)アクリルモノマーの含有率は、インク組成物の吐出安定性および安全性を向上させ、かつ塗膜強度を向上させる観点から、インク組成物において5質量%以上50質量%である。多官能(メタ)アクリルモノマーの含有率は、インク組成物が顔料としてホワイト色の顔料を含む場合、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、10質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。また、多官能(メタ)アクリルモノマーの含有率は、インク組成物が顔料としてホワイト色以外の顔料(より具体的には、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、又はブラック色の顔料等)を含む場合、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、25質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0072】
[4.他の成分]
インク組成物は、重合性化合物および光重合開始剤の他に、必要に応じて任意の成分をさらに含んでもよい。任意の成分としては、たとえば、界面活性剤(表面張力調整剤)、着色材、重合禁止剤、分散剤、有機溶剤、定着性樹脂、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤、電荷付与剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、および紫外線吸収剤が挙げられる。これらの任意の成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
(4-1.界面活性剤)
記録媒体および/またはインクジェットヘッドのノズル基板へのインクのぬれ性を調整する目的で、インク組成物は界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、たとえば、シリコーン系化合物が挙げられる。シリコーン系化合物としては、たとえば、ジメチルシロキサン構造を有するシリコーン系化合物が好ましく、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンがより好ましい。界面活性剤の市販品としては、たとえば、ビックケミー社製「BYK-350、352、354、355、358N、361N、381N、381、392、BYK-300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、340、344、348、370、375、377、378、355、356、357、390、UV3500、UV3510、およびUV3570」、テゴケミー社製「Tegorad-2100、2200、2250、2500、および2700」、並びにエボニックデグサ社製「TEGO(登録商標) Glide 100、110、130、403、406、410、411、415、432、435、440、450、および482」等が挙げられるがこれに限定されるものではない。これら界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤は、良好な相溶性を維持する観点から、2種以上を用いることが好ましい。2種以上の界面活性剤を併用することにより、インク組成物を長期間保存した場合でも良好な相溶性を保つためインク組成物が記録媒体上で十分に濡れ広がり、顔料の特徴である広い色再現性を保つことができるからである。
【0074】
界面活性剤の含有量は、記録媒体に対する本発明のインク組成物の濡れ性を向上させる観点から、インク組成物100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上2質量部以下であることが更に好ましい。
【0075】
(4-2.重合禁止剤)
光重合反応の進行を制御する目的で、インク組成物は重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤としては、たとえば、ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、およびフェノール系化合物が挙げられる。ヒドロキノン系化合物としては、たとえば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、tert-ブチルヒドロキノン、およびジtert-ブチルヒドロキノンが挙げられる。カテコール系化合物としては、たとえば、カテコール、メチルカテコール、およびtert-ブチルカテコールが挙げられる。フェノール系化合物としては、たとえば、フェノール、3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(ブチルヒドロキシトルエン(BHT))、クレゾール、およびメトキノンが挙げられる。
【0076】
重合禁止剤の含有量は、本発明のインク組成物の保存安定性及びシングルパス方式での硬化性を両立させる観点から、インク組成物100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.20質量部以上2質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。
【0077】
(4-3.着色材)
着色材としては、たとえば、顔料および染料が挙げられる。形成される画像の耐候性を向上させる観点から、顔料(より具体的には、有機顔料および無機顔料等)が好ましい。
【0078】
ブラック色の着色材としては、たとえば、カーボンブラックが挙げられる。ブラック色の着色材の市販品としては、たとえば、東海カーボン社製のトーカブラック;三菱化学社製のHCF、MCF、RCF、LFF、SCF;デグサ・ヒュルス社製のカラーブラック、スペシャルブラック、プリンテックス;コロンビア社製のラヴェン;キャボット社製のモナーク、リーガルが挙げられる。
【0079】
シアン色の着色材としては、たとえば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、および塩基染料レーキ化合物が挙げられる。シアン色の着色材としては、たとえば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)が挙げられる。
【0080】
イエローの着色材としては、たとえば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリールアミド化合物が挙げられる。イエロー色の着色材としては、たとえば、C.I.ピグメントイエロー(1、3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、138、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185、191、194、および214)が挙げられる。人体に対する安全性が高く、優れた硬化性を提供することから、これらの中でもC.I.ピグメントイエロー180が特に好ましい。
【0081】
マゼンタ色の着色材としては、たとえば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物が挙げられる。マゼンタ色の着色材としては、たとえば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、168、177、184、185、202、206、220、221、又は254)が挙げられる。
【0082】
ホワイト色の着色材としては、たとえば、ホワイト色の有機顔料(より具体的には、ピグメントホワイト6,18,21等)、ホワイト色の無機顔料(より具体的には、塩基性炭酸鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、およびチタン酸ストロンチウム等)が挙げられる。
【0083】
顔料の分散平均粒子径は、インク組成物における顔料の分散性を向上させる観点から、20~250nmであることが好ましく、50~230nmであることがより好ましい。
【0084】
着色材の含有量は、インク組成物100質量部に対して0.5質量部以上25質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以上15質量部以下であることが更に好ましい。
【0085】
(4-4.分散剤)
インク組成物中で着色材を分散させる目的で、インク組成物は分散剤(より具体的には、顔料分散体等)を含んでもよい。分散剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール、アクリル酸系樹脂、スチレン-アクリル酸系樹脂、および酢酸ビニル系樹脂が挙げられる。アクリル酸系樹脂としては、たとえば、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリロニトリル共重合体、およびアクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体が挙げられる。スチレン-アクリル酸系樹脂としては、たとえば、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、およびスチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体が挙げられる。酢酸ビニル系樹脂としては、たとえば、酢酸ビニル-エチレン共重合体、および酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体が挙げられる。
【0086】
分散剤の含有量は、インク組成物の分散安定性が良好となり、長期経時後も初期と同等の品質を示す観点から、インク組成物100質量部に対して0.1質量部以上3質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上1.5質量部以下であることがより好ましい。
【0087】
(4-5.有機溶剤)
インク組成物は、インク組成物の粘度を調整する目的で、有機溶剤を含んでもよい。インク組成物の乾燥性および形成画像の転写性を向上させる観点から、インク組成物は有機溶剤を実質的に含まないことが好ましい。このようにインク組成物は、希釈する目的で有機溶剤を含む必要がないため、インク組成物を吐出する際に粘度を調整する目的でインク組成物を過度に加熱する必要がない。また、インク組成物は、希釈する目的で有機溶剤を含む必要がないため、インク組成物の保存中又は使用中に、インク組成物中の有機溶剤の揮発に起因するインク組成物の粘度の上昇等が生じにくい。更に、インク組成物が顔料を含む場合であっても、粘度上昇に伴う顔料の沈降が抑制され、良好な分散安定性を有する傾向にある。このように、インク組成物は、吐出安定性を更に向上させる観点からも、有機溶剤を実質的に含まないことが好ましい。有機溶剤の含有量は、インク組成物100質量部に対して3質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0質量部であることが更に好ましい。有機溶剤としては、たとえば、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エーテル、およびケトンが挙げられる。
【0088】
[5.一次皮膚刺激性インデックス(PII値)]
インク組成物のPII値は、インク組成物の安全性を向上させる観点から、2未満であることが好ましく、2.00未満であることがより好ましく、1.70未満であることが更に好ましい。インク組成物のPII値の算出方法は、実施例に記載する。
【0089】
一次皮膚刺激性インデックスが2未満である重合化合物の含有量は、インク組成物の安全性を向上させる観点から、重合性化合物100質量部(重合性化合物の総質量100質量部)に対して3質量部以上35質量部以下であることが好ましく、5質量部以上32質量部以下であることがより好ましい。
【0090】
[6.用途]
インク組成物は、特に一次皮膚刺激性インデックスPII値が2未満である場合には、人の手に触れる画像形成物の用途に適している。インク組成物は、ラベルとして食品包装の表面に記録するための食品包装記録用のインク組成物として用いることができる。ラベルとしては、たとえば、商品名、商品の成分、メーカー名、製造年月日、ロット番号、および注意書きが挙げられる。
【0091】
[7.光硬化型インクジェット記録用インク組成物の調製方法]
インク組成物の調製方法は、従来から公知の調製方法を使用することができる。以下、インク組成物が着色材として顔料を含む場合の好適な調製方法を説明する。分散機を用いて、着色剤と、重合性化合物の一部と、必要に応じて任意の成分(より具体的には、顔料分散剤等)とを予備混合(プレミックス)し、各成分を溶解または分散させることで一次分散体を調製する。分散機としては、たとえば、ディスパ、容器駆動媒体ミル(より具体的には、ボールミル、遠心ミル、および遊星ボールミル等)、高速回転ミル(より具体的には、サンドミル等)、および媒体撹拌ミル(より具体的には、撹拌槽型ミル等)が挙げられる。
【0092】
次いで、得られた一次分散液に、残りの重合性化合物と、光重合開始剤と、界面活性剤(表面張力調整剤)と、必要に応じて添加剤(より具体的には、ゲル化防止剤等)を添加し、攪拌機を用いて均一に混合する。攪拌機としては、たとえば、ディスパ、スリーワンモーター、ホモジナイザー、およびマグネチックスターラーが挙げられる。このようにしてインク組成物を得ることができる。また、ラインミキサーなどの混合機を用いて、インク組成物を混合してもよい。さらに、インク組成物中の粒子をより微細化する目的でビーズミルおよび高圧噴射ミルのような分散機を用いて、インク組成物を混合してもよい。
【0093】
本発明のインク組成物は、好ましくは、60℃の環境下にて28日間保存した場合に、インクの粘度が20%を超えて変化しない。インク組成物の上記粘度変化率が20%を超えると、時間が経過した場合に、インク組成物の吐出性が悪化する可能性がある。インク組成物の上記粘度変化は、好ましくは、15%以下、より好ましくは0~10%である。
【0094】
本発明のインク組成物の上記特性値は、着色材の種類及び含有量を適宜変更することで、調節することができる。ここでいう着色材は、好ましくは、イエロー顔料である。
【0095】
<インクセット>
インクセットは、インクジェット記録方法を行う際に同時に使用される複数色(たとえば、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色、およびホワイト色)の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を組み合わせた一式をいう。インクセットを構成するインクジェット記録用インク組成物は、混合されていない状態で組み合わされている。
【0096】
本発明のインクセットは、本発明の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を少なくとも一つ有する。本発明のインクセットは、例えば、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色の組み合わせである。好ましい一形態において、インクセットを構成するイエロー色のインク組成物が本発明の光硬化型インクジェット記録用インク組成物である。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を用いて本発明を更に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」は「質量%」を示し、「部」は「質量部」を示す。
【0098】
[1.インク組成物の調製]
(1-1.顔料分散体の調製)
(イエロー顔料分散体(Y-a))
【0099】
【0100】
上記材料(顔料、顔料分散剤、および二官能アクリルモノマー)をプラスチック製ビンに投入した。ハイスピードミキサーを用いて、プラスチック製ビンの内容物を均一になるまで撹拌し、ミルベースを得た。次いで、ペイントコンディショナー(東洋精機社製)を用いて、ミルベースを2時間分散させて、イエロー顔料分散体(Y-a)を得た。
【0101】
<イエロー顔料分散体(Y-b)>
顔料として、ベンズイミダゾロン顔料「PV Fast Yellow HG」の代わりにジスアゾ顔料(Pigment Yellow155)(クラリアント社製「Ink Jet Yellow 4GC」)を用いたこと以外はイエロー顔料分散体(Y-a)の調製方法と同様にして、イエロー顔料分散体(Y-b)を調製した。
【0102】
(1-2.インク組成物(A-1)の調製)
イエロー顔料分散体(Y-a)を含むプラスチック製ビンに、(メタ)アクリル酸エステル類(I)としてのアクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)と、単官能モノマーとしてのイソボルニルアクリレート(IBOA)と、多官能(メタ)アクリルモノマーとしてのジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート(HPNDA)、およびトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)と、光重合開始剤としての2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(BASF社製「IRGACURE(登録商標)TPO」)と、界面活性剤としてのポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミ-社製「BYK(登録商標)-UV3510」)と、重合禁止剤としてのブチルヒドロキシトルエン(BHT)とを更に投入した。マグネチックスターラーを用いて、イエロー顔料分散体(Y-a)および追加投入した成分を30分撹拌し、混合物を得た。撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、混合物を吸引ろ過し、インク組成物(A-1)を調製した。表2にインク組成物(A-1)の組成を示す。
【0103】
(1-3.インク組成物(A-2)~(A-6)およびインク組成物(B-1)~(B-8)の調製)
表2および表3に記載の組成に基づいて、インク組成物(A-1)の調製方法と同様にしてインク組成物(A-2)~(A-6)およびインク組成物(B-1)~(B-8)を調製した。
【0104】
(重合体のガラス転移温度の測定方法)
重合性化合物の1種(単官能(メタ)アクリルモノマー及び多官能(メタ)アクリルモノマーのうちの1種)と、光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン(チバ社製「IRGACURE184」)とを、質量比(重合性化合物/光重合開始剤)95/5で混合し、溶液を調製した。バーコータ(#20)を用いてこの溶液をガラス基板上に塗布して均一な塗布膜を形成した。次に、メタルハライドランプを用いて、積算光量200mJ/cm2の条件で紫外線を塗布膜に照射して硬化させ、硬化物を得た。得られた硬化物をガラス基板から剥離し、測定試料とした。熱重量測定装置(マックサイエンス社製「TG-GDA」)を用いて、測定試料のガラス転移温度(単位:温度)を測定した。測定した測定試料のガラス転移温度を、単官能(メタ)アクリルモノマー又は多官能(メタ)アクリルモノマーの重合体のガラス転移温度とした。得られたガラス転移温度を表2および表3にまとめた。なお、測定条件は、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、測定温度範囲-100~180℃で行った。
【0105】
表2および表3中、欄「Tg」は、各成分の重合体のガラス転移温度[℃]を示す。欄「成分」のアルファベットは、表4に示す成分の略称を示す。欄「粘度」は、25℃における各成分の粘度[mPa・s]を示す。欄「実施例1」~「実施例6」および欄「比較例1」~「比較例8」は、それぞれインク組成物(A-1)~(A-6)およびインク組成物(B-1)~(B-8)の組成[部]を示す。
【0106】
【0107】
【表3】
表4に、略称で示した上記インク成分の内容を示す。
【0108】
【0109】
[2.評価方法]
(2-1.インク組成物の吐出安定性の評価:インク組成物の粘度測定)
JIS Z8803に準拠した方法により、R100型粘度計(東機産業社製)を用いて、温度25℃およびコーン回転数5rpmの条件下で、インク組成物の粘度を測定した。得られた粘度(単位:mPa・s)を表5に示す。
【0110】
なお、25℃でのインク組成物の粘度が10.5mPa・s以下である場合、インク組成物の吐出安定性が実用上問題ない水準であると評価した。25℃でのインク組成物の粘度が10.5mPa・s以下であると、インクジェット記録装置の標準的な使用条件(通常40℃)において、インクジェットヘッドのノズルからインク組成物が安定して吐出されるためである。
【0111】
(2-2.インク組成物の安全性の評価:PII値の算出)
表2および表3に記載されたインク組成物の成分のPII値およびインク組成物の組成に基づき、インク組成物のPII値を算出した。得られたPII値を表5に示す。
【0112】
(2-3.密着性の評価:クロスカット試験)
滴サイズ7pLおよび解像度600×600dpiの条件で、インクジェットヘッドからインク組成物を吐出させて基材(白PET)上に塗布し、塗布膜を形成した。このインクジェットヘッドは、シングルパス方式のインクジェット記録装置に搭載するインクジェットヘッドである。紫外線LED(日亜化学工業社製「NCCU001E」)を用いて、トータル照射光量が300mJ/cm2となるように塗布膜に紫外線を照射して、塗布膜を硬化させ、基材上に塗膜(膜厚3μm)を形成した。その結果、密着性測定用試料を得た。次いで、密着性測定用試料の塗膜表面をクロスカットし、粘着シート(ニチバン社製「セロテープ(登録商標)」)の粘着層側の面を貼り付け、粘着シートを引き剥がした。塗膜の状態を目視で観察した。観察結果から密着性を下記評価基準に基づいて評価した。評価S(特に良好)、A(良好)、およびB(良)を密着性が実用上問題のない水準であると判断した。密着性の評価結果を表5に示す。なお、密着性の評価は、温度25℃で実施された。
(密着性の評価基準)
S(特に良好):塗膜が全く剥離しない。
A(良好) :塗膜がわずかに剥離しない。
B(良) :塗膜が一部剥離する。
C(不良) :粘着シートを貼り付けた部分の塗膜の全面が剥離する。
【0113】
(2-4.塗膜強度の評価:鉛筆硬度試験)
滴サイズ7pLおよび解像度600×600dpiの条件で、インクジェットヘッドからインク組成物を吐出させて基材(白PET)上に塗布し、塗布膜を形成した。このインクジェットヘッドは、シングルパス方式のインクジェット記録装置に搭載するインクジェットヘッドである。紫外線LED(日亜化学工業社製「NCCU001E」)を用いて、トータル照射光量が300mJ/cm2となるように塗布膜に紫外線を照射して、塗布膜を硬化させ、基材上に塗膜(膜厚3μm)を形成した。その結果、塗膜強度測定用試料を得た。このように硬化させた塗膜強度測定用試料の鉛筆硬度を測定し、下記の基準で評価した。なお、日本工業規格(JIS)K5400に規定された鉛筆硬度の測定方法に基づき、の表面性試験機(新東科学社製「HEIDON-14DR」)を用いて測定した。評価S(特に良好)、A(良好)、およびB(良)を塗膜強度が実用上問題のない水準であると判断した。評価結果を表5に示す。
(塗膜強度の評価基準)
S(特に良好):鉛筆硬度が4H以上である。
A(良好) :鉛筆硬度が3H以上4H未満である。
B(良) :鉛筆硬度がHB以上3H未満である。
C(不良) :鉛筆硬度がHB未満である。
【0114】
【0115】
表5に示すように、インク組成物(A-1)~(A-6)では、粘度が10.5mPa・s以下であり、PII値が1.83以下であり、密着性の評価はいずれもA(良好)であり、塗膜強度の評価は、S(特に良好)またはA(良好)であった。これに対し、インク組成物(B-1)~(B-8)では、低粘度、低PII、十分な塗膜密着性、十分な塗膜強度のうち、いずれかの性能が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、他の光硬化型インクジェット記録用インク組成物とともに、インクジェット記録用インクセットして好適に用いることができる。