(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】容器の把持装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
G01N35/04 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019087762
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2022-04-26
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508328800
【氏名又は名称】ディアグノスチカ・スタゴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・ルジェ
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-537147(JP,A)
【文献】中国実用新案第206348260(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0015007(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的分析用に意図された容器のための把持装置(1)であって、X軸の環状部(2)と、前記環状部(2)から半径方向内向きに延在する弾性的に変形可能な把持フィン(8)と、を備え、容器(17)が前記環状部(2)に導入されると、前記
把持フィン(8)は変形可能であり、前記
把持フィン(8)は、円周にわたって均等に分配され、
各
把持フィン(8)は、いわゆる上面(14)および対向するいわゆる下面(15)を有し、前記下面(15)または逆の前記上面(14)は、前記容器(17)と接触するよう意図され、前記下面(15)、または逆の前記上面(14)は、二楕円形状の凹状領域(16)を備えている把持装置(1)において、
前記把持フィン
(8)は、半径方向内側に20°~40°の傾斜角度で傾斜しており、且つ、隣接する前記把持フィン
(8)の間に画定されたスロット
(12)の半径方向外側端部は、前記スロット
(12)の幅よりも大きい直径を有する丸み領域
(13)を有していることを特徴とする把持装置(1)。
【請求項2】
前記環状部(2)が回転駆動手段(22)と協同するための外周ギア歯(5)を有することを特徴とする、請求項1に記載の把持装置(1)。
【請求項3】
前記
把持フィン(8)は、応力を受けていない休止位置と、前記容器(17)を定位置に保持する変形位置との間で弾性的に変形可能であり、前記
把持フィン(8)は、前記休止位置において半径方向平面に対して傾斜していることを特徴とする、請求項1または2に記載の把持装置(1)。
【請求項4】
突起またはスタッド(6)が前記環状部(2)から軸方向に延在し、前記突起またはスタッド(6)は、これらの間に円周方向に延在する空間(7)を画定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の把持装置(1)。
【請求項5】
各
把持フィン(8)が前記環状部(2)に接続された半径方向の外側端部(9)と、半径方向の内側自由端部(10)と、前記外側端部(9)および内側自由端部(10)を接続する横方向縁部(11)とを有し、前記横方向縁部(11)は、互いに対して半径方向内向きに集まっていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の把持装置(1)。
【請求項6】
コンベヤトラック(21)と、前記コンベヤトラック(21)の攪拌ゾーンに配置された少なくとも1つの回転駆動可能な歯付きホイール(22)とを備えるコンベヤシステム(20)を備えるアセンブリであって、前記アセンブリは、請求項2に記載の少なくとも1つの把持装置(1)を備え、前記歯付きホイール(22)は、前記把持装置(1)の前記外周ギア歯(5)に係合するよう構成され、前記把持装置を回転駆動する、アセンブリ。
【請求項7】
請求項6に記載の少なくとも1つのアセンブリおよび/または請求項1~5のいずれか一項に記載の少なくとも1つの把持装置(1)を備える生物学的分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置内に生物学的分析用の試薬またはサンプルを収容するためのバイアルまたは試験管などの生物学的分析用の容器のための把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置では、一般に、容器は自動化システムを使用して分析装置の異なるゾーンまたはステーション間で取り扱われそして移動される。現在、さまざまなサイズの容器があり、それぞれの寸法は、使用する試薬やサンプルの種類によって異なっている。容器は一般的に保管および/または把持装置内に配置され、後者は分析装置の異なるステーションまたはゾーン間での容器の保管、取り扱いおよび/または輸送を可能にする。
【0003】
多種多様な容器サイズに対応するために広く使用されている解決策は、使用される保管および/または把持装置の寸法に容器サイズを適合させるためにアダプタを使用することである。このようなアダプタの使用は面倒であり、分析速度を遅くする。
【0004】
特許文献1は、環状部と、管を囲む一連の弾性タブを含む弾性部材とを有する分析管ホルダを開示している。キャップは、環状部の下部に取り付けられて、管の下端を支持している。弾性タブが管を中心に維持することを可能にし、キャップが管を所定位置に軸方向に保持することを可能にする。
【0005】
そのような支持体は、異なる管間の直径の重要な違いに適応することができない。さらに、そのような支持体では、例えば伝導によってその温度を維持するために、サンプルまたは試薬を含む管の下部へ直接アクセスすることができない。最後に、このような支持体では、管を効果的に攪拌することができない。
【0006】
特に攪拌および効果的な温度制御を可能にしながら、異なる直径の容器の取り扱いおよび輸送を可能にすることが現在必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、単純で信頼性がありかつ安価な方法でこれらの様々な制約を改善することを目的としている。
【0009】
この目的のために、本発明は、生物学的分析用の容器の把持装置に関し、X軸の環状部と、環状部から半径方向内向きに延在する弾性変形可能な把持フィンとを備え、容器が環状部に導入されると、フィンは変形可能であり、フィンは円周にわたって均等に分配され、各フィンは、いわゆる上面および反対側のいわゆる下面を有し、下面は容器と接触するように意図され、下面は、凹状領域を有するか、またはその逆であることを特徴とする。
【0010】
使用時には、バイアルまたは試験管などの容器をタブの自由端の間で把持装置の環状部に挿入することができる。容器を挿入すると、タブが変形し、タブの弾力性と容器の外面に発生する摩擦により、容器が確実にタブの間に固定される。タブの大きさは、容器の直径を大きく変えることができるような大きさにすることができ、例えば、直径は1~3倍の幅で変えることができる。容器が把持装置の内側に配置されると、容器の下部は外側からアクセス可能となり、特に容器内部の試薬またはサンプルの攪拌および/または対流または伝導による温度の維持が可能となる。実際、容器の下端部は、例えばペルチェ型素子を使用して、温度制御された表面に直接置くことができる。
【0011】
各タブに凹状領域が存在することにより、応力をタブ内に分散させることができ、最大許容応力に関して材料の機械的仕様を超えることなくタブを大きく変形させることが可能になる。換言すると、そのような凹状領域は、容器の直径の大きな変化を許容するのに十分な変形を可能としながら、容器を確実に保持するのに十分な力を容器に維持することを可能にする。
【0012】
容器の外面と各タブの底面との間の接触領域は、線領域または1つ以上のスポット領域であり得る。
【0013】
各タブと容器の外面との接触領域は、例えば、凹状領域の半径方向内端部および半径方向外端部それぞれの2つのスポットまたはほぼスポットの領域によって形成されている。凹状領域の形状はそれに応じて調整される。そのような接触領域は、タブ間の容器の保持を改善することができる。
【0014】
そのような場合、凹状領域の中心領域または中央領域は、容器の外面と接触することを意図していない。
【0015】
代替として、タブと容器の外面との間の接触領域は、凹状領域の周縁によって形成され得る。
【0016】
凹状領域の外側では、下面および上面は平坦であり得る。
【0017】
前記凹状領域は、半径方向に楕円形部分の形状を有することができる。
【0018】
前記凹状領域は、半径方向に垂直な方向において楕円形部分の形状を有することができる。
【0019】
環状部は、回転駆動手段と協働するように意図された外周ギア歯を有することができる。
【0020】
このようにして、周縁ギア歯は、把持装置および容器を回転駆動することを可能にし、それによって容器を攪拌することができる。
【0021】
環状部はまた、歯がなくてもよく、1つ以上の円筒ゾーンのみを有する外周面を有してもよい。このような把持装置は、攪拌する必要がある容器を維持することを意図していない。
【0022】
タブは、応力を受けていない休止位置と、容器を定位置に保持する変形位置との間で弾性的に変形可能であり、タブは、休止位置において半径方向平面に対して傾斜している。
【0023】
特に、フィンは、底部から頂部に向かって半径方向内側に傾斜することができる。フィンの傾斜角度は、例えば20°~40°、好ましくは約20°である。
【0024】
突起またはスタッドは、環状部から軸方向に延在することができ、前記突起またはスタッドは、それらの間に円周方向に延びる空間を画定する。
【0025】
これらの空間は、例えば適切な読み取り手段によって、例えば容器に付けられたバーコードの読み取りを可能にする。突起またはスタッドの数は、例えば2~4の間の数に制限される。
【0026】
把持装置は、単一の部品で作ることができる。
【0027】
あるいは、把持装置は、少なくとも1つの部分、すなわち、環状部から延在するタブを有する第1の部分と、例えば突起および/または周縁ギア歯を有する少なくとも1つの第2の環状部とからなってもよい。
【0028】
把持装置は、例えば射出成形によって合成材料で作られる。
【0029】
各タブは、環状部に接続された第1の半径方向外側端部と、第2の半径方向内側自由端部と、前記第1端部と第2端部とを接続する横方向縁部とを有し、横方向縁部は、互いに対して半径方向内側に集まる。
【0030】
そのような形状により、タブの高度の変形性を確保しながら、多数のタブを円周上に配置することができる。
【0031】
本発明はまた、コンベヤトラックと、回転駆動されかつコンベヤトラックの攪拌ゾーン内に配置され得る少なくとも1つの歯付きホイールとを備えるコンベヤシステムを備えるアセンブリに関し、アセンブリは、前述のタイプの少なくとも1つの把持装置を含み、歯付きホイールは、把持装置の外周ギア歯と係合することができ、それを回転駆動する。
【0032】
本発明はまた、前述のタイプの少なくとも1つのアセンブリおよび/または前述のタイプの少なくとも1つの把持装置を備える生物学的分析装置に関する。
【0033】
添付の図面を参照しながら非限定的な例として与えられる以下の説明を読むことにより、本発明はよりよく理解され、本発明の他の詳細、特徴および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態による把持装置の斜視図である。
【
図4】把持装置内の小径バイアルの位置を概略的に示す斜視図である。
【
図5】把持装置内の大口径バイアルの位置を概略的に示す斜視図である。
【
図6】別の実施形態による把持装置の軸方向断面図であり、タブは変形位置で表されている。
【
図9】本発明によるいくつかの把持装置が配置されているコンベヤシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1~
図8は、本発明の一実施形態による把持装置1を示す。
【0036】
把持装置は、X軸の環状部2を有する。本明細書では、用語「軸方向」と「半径方向」はX軸に対して定義される。環状部2は、図に示される位置に関して下部3と呼ばれる第1の直径を有する円筒形部3と、第1の直径よりも小さい第2の直径を有する円筒形中間部4と、ギア歯を有する上部5とを備える。
【0037】
ここでは、3つのスタッドまたは突起6が、環状部2の下端から軸方向に延在している。スタッド6は、円周上に均等に分散され、それらの間に円周方向に空間7を画定する。
【0038】
弾性変形可能なフィン8は、環状部2の下部から半径方向内側に延在する。フィン8は、環状部2の他の部分と一体に製造することができる。あるいは、フィン8および下部の一部を一体に形成し、例えばオーバーモールドによって環状部2の他の部分と組み立てることができる。このような実施形態は、それ自体知られているように、異なる材料を使用することを可能にする。
【0039】
各フィン8は、上から見た場合に略台形形状を有し、環状部2に接続された半径方向外側端部9と、半径方向内側自由端部10と、半径方向内側端部10と外側端部9とを接続する2つの横方向縁部11とを有する。
【0040】
半径方向内側端部10および外側端部9は、弓形の形状を有する。
【0041】
フィン8は、円周にわたって均等に分配され、2つの隣接するフィン8の横方向縁部11は、スロット12を画定する。スロット12の半径方向外側端部は、スロット12の幅より大きい直径を有する丸み領域13を有し、機械的応力分配ゾーンを形成し、半径方向外側端部9におけるフィン8の損傷を防止する。
【0042】
フィン8の半径方向内側端部10は、例えば7mm~15mmの間の直径D1を有する中央開口部を画定する。D2で示される環状部2の内径は、例えば20mm~50mmの間である。一般的に、D2/D1の比率は、例えば2~3である。
【0043】
スロット12の幅は、例えば0.8mm~1mmである。フィン8の数は、例えば8~16である。
【0044】
フィン8は、
図1および
図2に示す休止位置と、
図6および
図7に示す変形位置との間で弾性的に変形可能である。
【0045】
休止位置では、フィン8は、半径方向平面内に延在することができ、あるいは逆に前記半径方向平面と角度を成すことができる。この場合、対応する角度は、例えば20°~40°である。この場合も、フィン8は、内側および軸方向に下から上に向かって半径方向に傾斜することができる。換言すれば、フィン8が傾斜している場合、フィン8の半径方向内側端部は、環状部2の外側ギア歯5の方に向くことができる。
【0046】
各フィン8は、いわゆる上面14といわゆる下面15とを有する。上面14は平らである。下面15は、二楕円形の凹部16を有する。換言すれば、半径方向に配向された断面平面において、凹面16は、楕円形部分の形状を有し(
図7のフィン8の断面図に示されるように)、そして半径方向に対して垂直に配向された断面平面においても(
図6の断面B-B)、凹部16は、楕円形部分の形状を有する(
図8に示すように)。
【0047】
二楕円形状は、フィン8の変形時に各フィン8内の機械的応力を分散させ、最大許容値を超過せず、したがってフィン8の早期劣化を回避することができるように定義される。
【0048】
使用中、バイアル17は、把持装置1の下端部から、フィン8の半径方向内側端部10の間に挿入することができる。この導入中、フィン8は上方に変形し、フィン8の下面は、バイアル17の外面に当接する。
図4は小径バイアル17を導入した場合を示し、
図5は大径バイアル17を導入した場合を示す。
【0049】
このような把持装置1は、大きく異なるサイズのバイアル17の使用を可能にすることが理解され得る。バイアル17の直径は、例えば3の比率で変化してもよい。
【0050】
バイアル17の導入後、各フィン8の下面15とバイアル17との間の接触領域は、凹面16の半径方向内側端部領域および外側端部領域18、または例えば、凹面16の周辺部19に限定されてもよい(
図7)。
【0051】
一方では、フィン8とバイアル17との間の接触、および他方ではフィン8によって加えられる弾性の戻り力によって、バイアル17を把持装置1内の所定の位置に保持することが可能になる。換言すれば、バイアル17は、軸方向に把持装置1の中心に保持される。
【0052】
当然のことながら、管のような他の種類の容器も使用することができる。
【0053】
このような把持装置1は、
図9に示されるコンベヤシステム20での使用を意図している。コンベヤシステム20は、コンベヤトラック21と、コンベヤトラック21の攪拌ゾーンに配置された少なくとも1つの回転駆動可能な歯付きホイール22とを備え、各歯付きホイール22は、把持装置1の外周ギア歯5と係合することができ、把持装置を回転させる。
【0054】
把持装置1およびそれが支持するバイアル17の回転駆動により、その内容物、例えば分析されるべき試薬または生物学的サンプルを攪拌することができる。
【0055】
さらに、バイアル17は、空間または円周方向開口部7の反対側に配置された1つまたは複数のバーコードを有することができ、前記バーコードは、例えば分析装置におけるバイアル17の内容物の識別を可能にする。
【0056】
バイアル17が把持装置1の内側に配置されると、バイアル17の下部に外部からアクセス可能になり、例えば伝導によってバイアル17の内部の試薬または試料の温度を維持することが可能になることにも留意されたい。実際には、バイアル17の下端部を表面に直接置くことができ、その表面の温度は、例えばペルチェ型素子によって制御される。
【符号の説明】
【0057】
1 把持装置
2 環状部
3 円筒形部
4 円筒形中間部
5 外周ギア歯
6 スタッドまたは突起
7 空間
8 フィン
9 半径方向外側端部
10 半径方向内側自由端部
11 横方向縁部
12 スロット
13 領域
14 上面
15 下面
16 凹状領域
17 容器
18 外側端部領域
19 周辺部
20 コンベヤシステム
21 コンベヤトラック
22 回転駆動手段