(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】エレベータのアナウンス装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20231215BHJP
B66B 11/02 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B11/02 N
(21)【出願番号】P 2019117006
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘高 大也
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-072669(JP,A)
【文献】特開2017-145100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの保守点検作業後にアナウンスを行うアナウンス装置であって、
前記エレベータのかご内の操作盤に設けられる複数の保守点検用スイッチと、
前記複数の保守点検用スイッチを保護するカバーと、
前記カバーを施錠する施錠部と、
前記かご内に音声を出力する出力部と、
前記出力部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記施錠部によって前記カバーが施錠された
ことを確認した後に、前記複数の保守点検用スイッチの全てが保守点検作業前の状態に戻っているかどうかを確認し、前記複数の保守点検用スイッチの全てが保守点検作業前の状態に戻っていない場合には、前記出力部によって前記複数の保守点検用スイッチの全てが保守点検作業前の状態に戻っていないことを出力する、
アナウンス装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記カバーが施錠された後に、前記出力部によってサインボードを取り外すことを音声によって出力する、
請求項1に記載のアナウンス装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の保守点検用スイッチの全てが保守点検作業前の状態に戻っているかどうかを確認し、前記サインボードを取り外すことを音声によって出力した後に、
保守点検作業を終了させるメインスイッチのOFFを許可する、
請求項2に記載のアナウンス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの保守点検作業後にアナウンスを行うアナウンス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、保守点検作業中にのみ、作業者によって操作される保守点検用スイッチが設けられる(例えば、特許文献1)。保守点検用スイッチは、エレベータのかご内の操作盤上において、カバーによって保護される。カバーは、エレベータの保守点検作業中以外は施錠される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベータの保守点検作業後において、作業者が保守点検用スイッチを戻し忘れるヒューマンエラーが発生する場合がある。そこで、保守点検用スイッチの戻し忘れを防止することが求められている。
【0005】
本発明の目的は、エレベータの保守点検作業後において保守点検用スイッチの戻し忘れを防止することができるアナウンス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアナウンス装置は、エレベータの保守点検作業後にアナウンスを行うアナウンス装置であって、エレベータのかご内の操作盤に設けられる複数の保守点検用スイッチと、複数の保守点検用スイッチを保護するカバーと、カバーを施錠する施錠部と、かご内に音声を出力する出力部と、出力部を制御する制御部と、を備え、制御部は、カバーが施錠された後に、複数の保守点検用スイッチの全てが保守点検作業前の状態に戻っているかどうかを確認し、複数の保守点検用スイッチの全てが保守点検作業前の状態に戻っていない場合には、出力部によって複数の保守点検用スイッチの全てが保守点検作業前の状態に戻っていないことを出力することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るアナウンス装置において、制御部は、カバーが施錠された後に、出力部によってサインボードを取り外すことを音声によって出力することが好ましい。
【0008】
本発明に係るアナウンス装置において、制御部は、複数の保守点検用スイッチの全てが保守点検作業前の状態に戻っているかどうかを確認し、サインボードを取り外すことを音声によって出力した後に、保守点検作業を終了させるメインスイッチのOFFを許可することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るアナウンス装置によれば、エレベータの保守点検作業後において保守点検用スイッチの戻し忘れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態のアナウンス装置に係るエレベータの操作盤を示す斜視図。
【
図2】本実施形態のアナウンス装置の構成を示すブロック図。
【
図3】本実施形態のアナウンス制御の処理手順を示すフロー図。
【
図4】本実施形態のアナウンス制御による保守点検作業後の流れを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施形態の一例を詳細に説明する。実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであるから、図面に描画された構成要素の寸法などは、以下の説明を参酌して判断されるべきである。本明細書において、「略~」との記載は、略同一を例に説明すると、完全に同一はもとより、実質的に同一と認められる場合を含む意図である。以下で説明する実施形態は例示であって、本発明のエレベータのアナウンス装置はこれに限定されない。
【0012】
以下で説明する形状、材料および個数は、説明のための例示であって、エレベータのアナウンス装置の仕様に応じて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1を用いて、操作盤10の構成について説明する。
図1は、操作盤10の構成を示す斜視図である。
【0014】
操作盤10は、本発明のエレベータのアナウンス装置に係るエレベータのかご内の操作盤である。操作盤10は、本体20と、カバー30と、施錠部40と、出力部としてのスピーカ60と、扉開きボタン71と扉閉めボタン72とを含む複数のボタンと、複数の保守点検用スイッチ80と、を備える。
【0015】
本体20は、機器類が収納される箱部21と、箱部21の表面を覆う表面部22と、を有する。表面部22の下方には、開口部22Aが形成される。カバー30は、本体20の開口部22Aを保護するものである。カバー30は、本体20の表面部22の裏面をスライドするように構成される。施錠部40は、カバー30を本体20に施錠するものである。施錠部40は、カバー30の上端部に設けられる。スピーカ60は、音声を出力するものである。スピーカ60は、本体20の上端部に設けられる。
【0016】
扉開きボタン71と扉閉めボタン72とを含む複数のボタンは、本体20の表面部22の略中央部に設けられる。扉開きボタン71は、通常時に、使用者が押すことによって、エレベータの扉が開くボタンである。扉閉めボタン72は、通常時に、使用者が押すことによってエレベータの扉が閉まるボタンである。本実施形態では、保守点検作業後に、扉開きボタン71と扉閉めボタン72とを同時に押すことによって、保守点検作業のメインスイッチがOFFとされる。メインスイッチとは、エレベータを保守点検作業が可能な状態にするスイッチである。メインスイッチのONは、保守点検用のパソコンと後述する制御部50とが無線LANによって接続されることによって自動的にONとされる。
【0017】
複数の保守点検用スイッチ80は、本体20の開口部22Aから覗くように設けられ、カバー30によって保護される。保守点検用スイッチ80は、少なくとも、点検灯スイッチと、独立スイッチと、複数の切り離しスイッチと、自動/手動切り換えスイッチと、を含む。複数の保守点検用スイッチ80は、通常時は、カバー30が閉じられることによって保護され、使用者が操作することはできない。一方、複数の保守点検用スイッチ80は、保守点検中は、カバー30が開かれ、作業者によって操作される。なお、保守点検用スイッチ80の機能、配置または数等は、特に限定されない。
【0018】
点検灯スイッチは、ON/OFFスイッチであって、ONとすることによってエレベータの点検灯を点灯させる機能を有する。点検灯は、エレベータのかごの上下に設けられ、保守点検中に点灯するものである。また、点検灯スイッチは、ONとすることによって保守点検用のパソコンと制御部50とを無線LANによって接続する機能を有する。
【0019】
独立スイッチは、ON/OFFスイッチであって、ONとすることによってエレベータがその他のエレベータから独立して、停止階からの呼び出しを無効にする機能を有する。切り離しスイッチは、ON/OFFスイッチであって、ONとすることによってエレベータがその対象階への停止を無効にする機能を有する。本実施形態では、例えば、2階および3階のそれぞれの切り離しスイッチが複数設けられる。自動/手動切り換えスイッチは、ON/OFFスイッチであって、ONとすることによって無線LANによって接続される保守点検用のパソコンを用いてエレベータを操作可能な状態にする機能を有する。
【0020】
以下に、エレベータの保守点検作業の流れについて簡単に説明する。エレベータの保守点検作業前では、まず、作業者は、エレベータの全ての停止階にサインボードを取り付け、エレベータのかごを最下階に停止させる。次に、作業者は、施錠部40を開錠し、カバー30を開いて、保守点検用スイッチ80のうちの点検灯スイッチをONとする。これにより、保守点検用のパソコンと制御部50とが無線LANによって接続され、メインスイッチがONとされる。
【0021】
エレベータの保守点検作業後では、まず、作業者は、操作した保守点検用スイッチ80を元に戻し、停止階に取り付けたサインボードを取り外す。そして、作業者は、カバー30を閉じて、施錠部40を施錠する。最後に、作業者は、扉開きボタン71と扉閉めボタン72とを同時に押すことによってメインスイッチをOFFとし、保守点検作業を終了する。
【0022】
図2を用いて、アナウンス装置100の構成について説明する。
図2は、アナウンス装置100の構成を示すブロック図である。
【0023】
アナウンス装置100は、エレベータの保守点検作業後にアナウンスを行うものである。アナウンス装置100では、制御部50と、施錠部40と、スピーカ60と、扉開きボタン71および扉閉めボタン72と、複数の保守点検用スイッチ80と、が電気的に接続されている。
【0024】
制御部50は、プログラムが格納された不揮発性メモリと、プログラムを実行するための一時的な記憶領域としての揮発性メモリと、入出力ポートと、プログラムを実行するプロセッサと、を備える。制御部50としては、例えばPLC(Programmable Logic Controller)が好適に用いられる。制御部50は、エレベータの保守点検作業後に出力部を制御する機能を有する。
【0025】
図3を用いて、アナウンス制御S100の処理手順について説明する。
図3は、アナウンス制御S100の処理手順を示すフロー図である。
【0026】
アナウンス制御S100は、上述したアナウンス装置100によってエレベータの保守点検作業後に行うアナウンスを制御する。ステップS10において、制御部50は、カバー30が施錠部40によって施錠されたかどうかを確認する。施錠された場合には、ステップS11へ移行する。
【0027】
ステップS11において、制御部50は、保守点検作業終了の確認のアナウンスとして、スピーカ60によって「保守点検作業を終了しますか?」と音声出力する。ステップS12において、制御部50は、扉開きボタン71が押されたかどうかを確認する。扉開きボタン71が押された場合は、ステップS15へ移行し、扉開きボタン71が押されない場合は、ステップS13へ移行する。
【0028】
ステップS13において、制御部50は、扉閉めボタン72が押されたかどうかを確認する。扉閉めボタン72が押されない場合は、ステップS14へ移行する。ステップS14において、制御部50は、スピーカ60によって、作業者から保守点検作業の意思表示がないため警告音を出力する。一方ステップS12において、扉開きボタン71が押された場合は、ステップS15において、制御部50は、スピーカ60によって「全ての停止階のサインボードを取り外しましたか?」と音声出力する。
【0029】
ステップS16において、制御部50は、全ての保守点検用スイッチ80が保守点検作業前の状態(以下、初期設定)に戻っているかどうかを確認する。全ての保守点検用スイッチ80が初期設定に戻っている場合には、ステップS18に移行し、全ての保守点検用スイッチ80が初期設定に戻っていない場合には、ステップS17へ移行する。
【0030】
ステップS17において、制御部50は、スピーカ60によって「保守点検用スイッチが初期設定と異なります」と音声出力する。一方、ステップS16において、全ての保守点検用スイッチ80が初期設定に戻っている場合には、ステップS18において、制御部50は、スピーカ60によって「メインスイッチをOFFにして下さい」と音声出力する。ステップS19において、制御部50は、エレベータのかごが最下階に停止しているかどうかを確認する。エレベータのかごが最下階に位置している場合には、ステップS21に移行し、エレベータのかごが最下階に位置していない場合には、ステップS20へ移行する。
【0031】
ステップS20において、制御部50は、スピーカ60によって、警告音を出力する。ステップS21において、制御部50は、「メインスイッチをOFFにして下さい」と音声出力してから10秒以内かどうかを確認する。10秒以内の場合には、ステップS23に移行し、10秒経過した場合には、ステップS22へ移行する。ステップS22において、制御部50は、スピーカ60によって、警告音を出力する。ステップS23において、制御部50は、扉開きボタン71と扉閉めボタン72とが同時に押されたかどうかを確認する。扉開きボタン71と扉閉めボタン72とが同時に押された場合には、保守点検作業が可能な状態を終了する。
【0032】
図4を用いて、アナウンス制御S100による保守点検作業後の流れについて説明する。
図4は、アナウンス制御S100による保守点検作業後の流れを示す模式図である。
【0033】
上述したように、エレベータの保守点検作業後では、まず、作業者は、操作した保守点検用スイッチ80を初期設定に戻し、停止階に取り付けたサインボードを取り外す。そして、作業者は、カバー30を閉じて、施錠部40を施錠する。
【0034】
このとき、スピーカ60から「保守点検作業を終了しますか?」とアナウンスされるので(ステップS11)、作業者は、保守点検作業を終了する意思表示として扉開きボタン71を押す。次に、スピーカ60から「全ての停止階のサインボードを取り外しましたか?」とアナウンスされるので(ステップS15)、作業者は、各停止階のサインボードを取り外したかどうかを確認する。
【0035】
次に、スピーカ60から「(保守点検用スイッチ80が初期設定と異なる場合には)保守点検用スイッチが初期設定と異なります」とアナウンスされるので(ステップS17)、作業者は、再度、施錠部40を開錠してカバー30を開いて、保守点検用スイッチを初期設定に戻す。
【0036】
次に、スピーカ60から「メインスイッチをOFFにして下さい」とアナウンスされるので(ステップS18)、作業者は、扉開きボタン71と扉閉めボタン72とを同時に押すことによってメインスイッチをOFFとし、保守点検作業を終了する。
【0037】
アナウンス装置100の効果について説明する。アナウンス装置100によれば、エレベータの保守点検作業後において、保守点検用スイッチ80の戻し忘れ、サインボードの取り忘れ、およびメインスイッチの切り忘れを防止することができる。
【0038】
また、アナウンス装置100によれば、保守点検作業の終了を作業者に確認した後に、サインボードの取り外し、保守点検用スイッチ80が初期設定と同じかどうかを作業者に確認することによって、保守点検作業後であることを確認したうえでアナウンスすることができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
10 操作盤、30 カバー、40 施錠部、50 制御部、60 スピーカ(出力部)、71 扉開きボタン、72 扉閉めボタン、80 保守点検用スイッチ、100 アナウンス装置、S100 アナウンス制御