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特許7403254区画貫通処理構造、区画貫通処理材、及び区画貫通処理構造の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】区画貫通処理構造、区画貫通処理材、及び区画貫通処理構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/16 20060101AFI20231215BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20231215BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20231215BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
A62C3/16 B
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
C08J9/04 CET
F16L5/04
E04B1/94 F
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019139162
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021019948
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 秀康
(72)【発明者】
【氏名】荻野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6150933(JP,B2)
【文献】実開平06-028462(JP,U)
【文献】特開2016-194202(JP,A)
【文献】特許第6378092(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/16
C08J 9/04
F16L 5/04
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造であって、
スリーブ状に前記区画貫通部に挿入され、かつスリーブ内部に前記挿通体が通される挿入部材と、
前記挿入部材の一端から延出するように一体に形成され、前記区画貫通部の少なくとも一方の開口を覆うシート状カバー材とを備え、
前記挿入部材が耐火材により構成され、前記耐火材が、熱膨張性材料と、樹脂とを含む熱膨張性樹脂組成物から形成される区画貫通処理構造。
【請求項2】
前記挿入部材が、端部と端部を向かい合わせることによってスリーブ状にされて前記区画貫通部に挿入される請求項1に記載の区画貫通処理構造。
【請求項3】
前記シート状カバー材が、区画貫通躯体及び前記挿入部材の端部よりも外側にはみ出すように前記挿入部材の一方の面に積層され、かつそのはみ出した部分によって前記開口を覆う請求項1又は2に記載の区画貫通処理構造。
【請求項4】
前記シート状カバー材が、前記挿通体の外周を包囲しかつ前記挿通体に固定される請求項1~3のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
【請求項5】
前記シート状カバー材が、外側から巻き付けられた紐状部材又は粘着テープ、及び、内側に配置された粘着層又は耐火材の少なくともいずれかによって前記挿通体に固定される請求項1~4のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
【請求項6】
前記挿入部材が、基材の上に積層されている請求項1~5のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
【請求項7】
前記挿入部材の一部がスリーブ状から折れ曲がり、前記少なくとも一方の開口を覆っている請求項1~6のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
【請求項8】
前記シート状カバー材が不燃材料である請求項1~7のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
【請求項9】
前記挿入部材が、前記少なくとも一方の開口の外周に係止する係止部材を有する請求項1~8のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
【請求項10】
前記挿入部材の挿通体側の躯体貫通孔内部には、挿通体以外に何も配置されていない請求項1~9のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
【請求項11】
前記少なくとも一方の開口を覆うシート状カバー材をさらに覆うように配置される機能部材を備える請求項1~10のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
【請求項12】
前記挿入部材及び前記シート状カバー材によって区画される、区画貫通処理構造のシート状カバー材内部に配置される機能部材をさらに備える請求項1~11のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
【請求項13】
仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、
挿入部材と、前記挿入部材の一端から延出するように一体に形成されたシート状カバー材とを備える区画貫通処理材を、スリーブ内部に前記挿通体が通されるように、前記挿入部材を前記区画貫通部の一方の開口から前記区画貫通部にスリーブ状に挿入することで、前記区画貫通部に取り付ける工程と、
前記挿入部材の一端から延出するように一体に形成されたシート状カバー材により、前記一方の開口を覆う工程とを備え、
前記挿入部材が耐火材により構成され、前記耐火材が、熱膨張性材料と、樹脂とを含む熱膨張性樹脂組成物から形成される区画貫通処理構造の施工方法。
【請求項14】
仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とするための区画貫通処理材であって、
スリーブ状に形成され又はスリーブ状に変形可能な挿入部材と、
前記挿入部材の一端から延出するように一体に形成されるシート状カバー材とを備え、
前記挿入部材が耐火材により構成され、前記耐火材が、熱膨張性材料と、樹脂とを含む熱膨張性樹脂組成物から形成される区画貫通処理材。
【請求項15】
前記挿入部材が、シート状もしくはロール状であり、スリーブ状に変形可能である請求項14に記載の区画貫通処理材。
【請求項16】
前記シート状カバー材が、前記挿入部材の少なくとも一方の面に積層される請求項14又は15に記載の区画貫通処理材。
【請求項17】
前記シート状カバー材が、前記挿入部材の端部よりも外側にはみ出すように積層される請求項16に記載の区画貫通処理材。
【請求項18】
前記シート状カバー材が不燃材料である請求項14~17のいずれか1項に記載の区画貫通処理材。
【請求項19】
機能部材及び係止部材のいずれかを有する請求項14~18のいずれか1項に記載の区画貫通処理材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物などの仕切り部において形成される区画貫通処理構造、区画貫通処理構造を形成するための区画貫通処理材、及び区画貫通処理構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、オフィスビル、学校等の建築物において、壁等の仕切り部には、ケーブル類、配管類などの長尺の挿通体を通すために、区画貫通部が設けられることがある。区画貫通部は、いずれかの区画で火災が発生した際に、他の区画への延焼を防止するために、防火措置を施した構造(防火構造)にすることが求められている。仕切り部は、2枚の壁部からなり、壁部間が中空部となっている中空壁が一般的である。
【0003】
区画貫通部を防火構造とする方法は、例えば、長尺の挿通体と貫通孔の間隙に、耐火パテや、耐火パテを袋体内部に詰めた耐火パックなどの不定形充填材を充填する方法が知られている。不定形充填材を使用する場合、各壁部の貫通孔内部と、挿通体の間には、耐火材よりなる筒状部材などが合わせて配設されることもある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
また、鋼製スリーブや耐火材からなるスリーブを区画貫通部に挿通させ、防火措置構造を形成することも知られている。鋼製スリーブの場合、例えば、鋼製スリーブの端部において、アダプタ部材を介して保持部材が取り付けられ、保持部材と長尺部材の間に防火措置材が充填された防火措置構造が知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、耐火材からなるスリーブを使用する場合には、スリーブ内部にさらに耐火材が配置されるとともに、一方の壁部の外側において、貫通孔を遮蔽するための管状保持枠がスリーブに取り付けられることが知られている(例えば特許文献4参照)。
【0005】
さらに、耐火構造を形成するための部品をキットとした商品が従来数多く上市されている。作業者は、キット化した商品を使用することで、作業者自身で多くの部品を用意することなく、区画貫通防火構造を形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6150933号公報
【文献】特許第6348320号公報
【文献】特開2016-23683号公報
【文献】特許第6378092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に示されるように、各壁部の貫通孔の内周面と、挿通体の間を耐火パテによって塞ぐ場合には、作業性が悪く、作業者によって性能にばらつきが生じるという問題がある。特許文献2に示す耐火パックを使用すると、作業性は向上するものの、不定形充填材の容積が一定となってしまい、貫通孔の大きさによっては、貫通孔と挿通体の間を適切に塞ぐことができなくなるおそれがある。さらに、不定形充填材により貫通孔と挿通体の間を塞ぐ場合、中空壁においては、各壁部の貫通孔と挿通体の間を充填するために、中空壁の両側から作業を行う必要があり、作業性が低下する。
【0008】
一方で、スリーブを使用する場合には、スリーブを区画貫通部に挿入し、かつ仕切り部の片側の外側において、スリーブを遮蔽する処理をすることで防火構造が形成できるので、中空壁に対しても作業性が比較的良好になる。しかし、スリーブを使用した従来の防火構造では、スリーブを遮蔽するために一定数以上の部品点数が必要であり、作業性が十分に高いとはいえず、部品の付け忘れなども発生しやすくなる。
さらに、キット化した商品でも部品点数が多くなることに変わりはなく、作業性が十分に高いとはいえず、部品の付け忘れなども発生しやすくなる。
【0009】
そこで、本発明は、部品点数を少なくし、かつ作業を簡素化することが可能な区画貫通処理構造、区画貫通処理構造の施工方法、及び区画貫通処理材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造であって、
スリーブ状に前記区画貫通部に挿入され、かつスリーブ内部に前記挿通体が通される挿入部材と、
前記挿入部材に一体に形成され、前記区画貫通部の少なくとも一方の開口を覆うシート状カバー材と
を備える区画貫通処理構造。
[2]前記挿入部材が、端部と端部を向かい合わせることによってスリーブ状にされて前記区画貫通部に挿入される上記[1]に記載の区画貫通処理構造。
[3]前記シート状カバー材が、区画貫通躯体及び前記挿入部材の端部よりも外側にはみ出すように前記挿入部材の一方の面に積層され、かつそのはみ出した部分によって前記開口を覆う上記[1]又は[2]に記載の区画貫通処理構造。
[4]前記シート状カバー材が、前記挿通体の外周を包囲しかつ前記挿通体に固定される上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[5]前記シート状カバー材が、外側から巻き付けられた紐状部材又は粘着テープ、及び、内側に配置された粘着層又は耐火材の少なくともいずれかによって前記挿通体に固定される上記[4]に記載の区画貫通処理構造。
[6]前記挿入部材が、耐火材及び不燃材料の少なくともいずれかより構成される上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[7]前記挿入部材が耐火材により構成され、前記耐火材が、熱膨張性材料と、樹脂とを含む熱膨張性樹脂組成物から形成される上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[8]前記挿入部材が、基材の上に積層されている上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[9]前記挿入部材の一部がスリーブ状から折れ曲がり、前記少なくとも一方の開口を覆っている上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の区画貫通構造。
[10]前記シート状カバー材が不燃材料である上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[11]前記挿入部材が、前記少なくとも一方の開口の外周に係止する係止部材を有する上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[12]前記挿入部材の挿通体側の躯体貫通孔内部には、挿通体以外に何も配置されていない上記[1]~[11]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[13]前記少なくとも一方の開口を覆うシート状カバー材をさらに覆うように配置される機能部材を備える上記[1]~[12]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[14]前記挿入部材及び前記シート状カバー材によって区画される、区画貫通処理構造のシート状カバー材内部に配置される機能部材をさらに備える上記[1]~[13]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[15]仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、
挿入部材と、前記挿入部材と一体に形成されたシート状カバー材とを備える区画貫通処理材を、スリーブ内部に前記挿通体が通されるように、前記挿入部材を前記区画貫通部の一方の開口から前記区画貫通部にスリーブ状に挿入することで、前記区画貫通部に取り付ける工程と、
前記挿入部材と一体に形成されたシート状カバー材により、前記一方の開口を覆う工程と
を備える区画貫通処理構造の施工方法。
[16]仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とするための区画貫通処理材であって、
スリーブ状に形成され又はスリーブ状に変形可能な挿入部材と、
前記挿入部材に一体に形成されるシート状カバー材と
を備える区画貫通処理材。
[17]前記挿入部材が、シート状もしくはロール状であり、スリーブ状に変形可能である上記[16]に記載の区画貫通処理材。
[18]前記シート状カバー材が、前記挿入部材の少なくとも一方の面に積層される上記[16]又は[17]に記載の区画貫通処理材。
[19]前記シート状カバー材が、前記挿入部材の端部よりも外側にはみ出すように積層される上記[18]に記載の区画貫通処理材。
[20]前記挿入部材が耐火材により構成され、前記耐火材が、熱膨張性材料と、樹脂とを含む熱膨張性樹脂組成物から形成される上記[16]~[19]のいずれか1項に記載の区画貫通処理材。
[21]前記シート状カバー材が不燃材料である上記[16]~[20]のいずれか1項に記載の区画貫通処理材。
[22]機能部材及び係止部材のいずれかを有する上記[16]~[21]のいずれか1項に記載の区画貫通処理材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、区画貫通部を防火構造とする際、部品点数を少なくし、かつ作業を簡素化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理材を示す断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造の施工方法を示す斜視図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理材を示す断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る区画貫通処理材を示す斜視図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係る区画貫通処理材を示す斜視図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る区画貫通処理材を区画貫通部に取り付ける際の状態を示す斜視図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
図10】本発明の第5の実施形態において使用する機能部材を示す斜視図である。
図11】本発明の第5の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
図12】本発明の第5の実施形態の変形例に係る区画貫通処理材を示す斜視図である。
図13】本発明の第6の実施形態に係る区画貫通処理材を示す斜視図である。
図14】本発明の第6の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す斜視図である。
図15】本発明の第7の実施形態に係る区画貫通処理構造の施工方法を示す斜視図である。
図16】本発明の第8の実施形態に係る区画貫通処理構造の施工方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の管遮蔽構造について実施形態を用いてより詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造10を示す断面図である。区画貫通処理構造10は、仕切り部11に形成され、かつ内部に長尺の挿通体21が挿通される区画貫通部15を防火構造するためのものである。挿通体21は、ケーブル類、配管類などであるが、図1ではケーブル21Aと配管21Bの両方が挿通される態様を示す。
【0014】
仕切り部11は、建築物の壁面において区画間(第1の区画Aと、第2の区画B)を仕切る部材であり、仕切り部11の一方の外面11A側から他方の外面11B側に貫通する区画貫通部15を有する。本実施形態における仕切り部11は、中空壁であり、間隔(中空部13)を介して配置される2枚の壁材(仕切り材)12A,12Bから構成される。そのため、区画貫通部15は、一方の壁材12Aに形成された貫通孔13Aと、他方の壁材12Bに形成された貫通孔13Bと、これらの間にある中空部13によって構成される。そして、一方の壁材12Aの外面が仕切り部11の外面11Aを構成し、他方の壁材12Bの外面が仕切り部11の外面11Bを構成する。貫通孔13A、13Bは、後述する挿入部材18が挿入されたときに、挿入部材18の外周面が、貫通孔13A、13Bの内周面の形状に適合できるように、円形、楕円形、又は、これらに近似する形状を有すればよい。なお、外面11A、11Bそれぞれにおいて貫通孔13A、13Bは、仕切り部11に設けられた区画貫通部15の開口13C,13Dを構成する。
なお、本明細書において、区画貫通部15を構成する部材は、区画貫通躯体ということがあり、本実施形態では仕切り部11(すなわち、壁材12A、12B)が区画貫通躯体となる。また、区画貫通躯体に設けられる貫通孔を躯体貫通孔ということがあり、本実施形態では貫通孔13A、13Bが躯体貫通孔となる。
【0015】
区画貫通処理構造10は、挿入部材18と、シート状カバー材19とを備える。挿入部材18及びシート状カバー材19は一体に形成されて区画貫通処理材20を構成している。すなわち、シート状カバー材19は、挿入部材18に固定された状態にあり、挿入部材18が区画貫通部15に挿入され仕切り部11に取り付けられると、シート状カバー材19も仕切り部11に取り付けられた状態となる。
挿入部材18は、スリーブ状で区画貫通部15に挿入され、かつスリーブ内部に挿通体21が通されるように区画貫通部15に配設される。ここで、スリーブ状の挿入部材18は、区画貫通部15において一方の貫通孔13Aから他方の貫通孔13Bまで通されている。
【0016】
挿入部材18と一体に形成されたシート状カバー材19は、区画貫通部15の一方の開口13Cを外面11Aの外側から覆うように配置される。シート状カバー材19は、区画貫通部15の開口13Cを覆う部分が、挿通体21を包囲し、かつ外側から巻かれた紐状部材22によって挿通体21に固定される。
【0017】
図2は、区画貫通部15に挿入される前の区画貫通処理材20の詳細を示す。図2に示すように、区画貫通処理材20において、挿入部材18は、シート状であり、そのシート状の挿入部材18の一方の面にシート状カバー材19が積層されている。図2に示すように、シート状カバー材19は、シート状の挿入部材18の一端部18Aより外側にはみ出すように積層されている。
【0018】
挿入部材18は、耐火材から構成される。耐火材は、加熱により膨張する熱膨張性部材であることが好ましい。熱膨張性部材は、火災時に膨張することで火災の延焼を防止する。挿入部材18は、図2に示すようにシート状のものを、図1、3に示すように端部と端部とを向かい合わせにしてスリーブ状にして区画貫通部15に挿入するとよい。シート状の挿入部材18の厚みは特に限定されないが、例えば0.5~10mm、好ましくは2~6mmである。挿入部材18は、スリーブ状に変形可能なように、柔軟性を有するとよい。
また、挿入部材18は、シートをロール状に巻いたものを繰り出して端部と端部とを向かい合わせにしてスリーブ状にして区画貫通部15に挿入してもよい。
【0019】
熱膨張性部材は、熱膨張性樹脂組成物より形成される。熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分と、熱膨張性材料を含有する。熱膨張性部材が、樹脂成分を含有する熱膨張性樹脂組成物により形成されることで、挿入部材の湾曲や変形が容易となり、上記のとおりにスリーブ状にすることができる。
熱膨張性材料としては、加熱することにより発泡する発泡剤、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などの熱膨張性層状無機物が挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性黒鉛を使用することで、火災の加熱により適切に膨張され、また、膨張後の膨張残渣の機械強度が優れ、耐火性を良好にしやすくなる。なお、ここでいう熱膨張性材料とは、後述する成形などによって実質的に膨張せず、熱膨張性樹脂組成物は、熱膨張性部材において熱膨張性が維持される。
【0020】
熱膨張性材料の膨張開始温度は、特に限定されないが、例えば、150~350℃であることが好ましく、170~300℃であることがより好ましく、180~280℃であることが更に好ましい。これら下限値以下とすることで、火災以外の加熱により、熱膨張性材料が誤って膨張することを防止する。また、上限値以下とすることで、火災の加熱により確実に熱膨張性材料を膨張させやすくなる。
また、熱膨張性材料の膨張開始温度は、所定量(例えば、100mg)の熱膨張性材料を一定の昇温速度(例えば、10℃/分)で昇温させ、法線方向の力が立ち上がる温度を計測することにより測定可能である。測定装置としては測定温度制御が可能であり、かつ法線方向の応力を測定できるものであればよく、例えばレオメーターを使用すればよい。
熱膨張性部材の膨張倍率は3倍以上であることが好ましく、10倍以上が好ましい。膨張倍率の上限は、特に限定されないが、例えば50倍である。なお、膨張倍率は、熱膨張性部材を電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)により算出するとよい。
【0021】
以下、熱膨張性材料が、熱膨張性黒鉛である場合の熱膨張性樹脂組成物について詳細に説明する。熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーが挙げられる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル(EVA)等のポリオレフィン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン-プロピレン-ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。
硬化性樹脂の例としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
【0022】
エラストマーの例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、およびフッ素ゴム等のゴムが挙げられる。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、および塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーも挙げられる。
熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分は、1種であってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
【0023】
熱膨張性樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤は、樹脂成分がポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂である場合に好ましく使用される。可塑剤の具体的としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等のアジピン酸エステルや、アジピン酸ポリエステルなどの脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
熱膨張性樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における可塑剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.3質量部以上150質量部以下の範囲であり、好ましくは10質量部以上100質量部以下の範囲である。
可塑剤は、これら下限値以上とすると、成形性が良好になりやすく、上限値以下となると、成形体に適度な強度が付与される。
【0024】
樹脂成分と可塑剤の合計含有量は、樹脂組成物全量基準で、10質量%以上90質量%以下が好ましく、25質量%以上80質量%以下がより好ましく、40質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。これら下限値以上とすることで、熱膨張性部材の成形性などを良好にできる。また、柔軟性を確保して、スリーブ状に変形可能にしやすくなる。また、上限値以下とすることで、熱膨張性黒鉛、無機充填剤などの成分を十分な量配合することが可能になる。
なお、樹脂成分と可塑剤の合計含有量とは、樹脂成分と可塑剤の両方が含有される場合には、これらの合計含有量を意味し、可塑剤を含有しない場合には樹脂成分単独の含有量を意味する。
【0025】
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗片状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
本発明に使用される熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものなども使用することもできる。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0026】
熱膨張性黒鉛の粒度は、特に限定されないが、20~200メッシュの範囲のものが好ましい。粒度は、下限値以上となると黒鉛の膨張度が大きくなりやすく、発泡性が良好になる。また、上限値以下とすることで、樹脂と混練する際の分散性が良好となり、成形性が向上する。
【0027】
熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば3質量部以上300質量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量は、3質量部以上となることで、熱膨張性が良好となる。また、300質量部以下となることで、成形性が良好となり、シール部材の表面性、機械的物性、柔軟性なども良好となる。これら観点から、熱膨張性黒鉛の含有量は、好ましくは10質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは15質量部以上100質量部以下の範囲である。
【0028】
熱膨張性樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有してもよい。無機充填材は、一般に熱膨張性樹脂組成物に使用されている無機充填材であれば、特に限定はない。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイ力、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。無機充填材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における無機充填材の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましく3質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは10質量部以上150質量部以下の範囲である。
【0029】
また本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等の熱膨張性樹脂組成物に一般的に使用される添加剤が添加されてもよい。これらの中では加工助剤を使用することが好ましい。
【0030】
熱膨張性部材は、例えば下記のようにして製造することができる。まず、所定量の樹脂成分、熱膨張性材料、及びその他の必要に応じて配合される添加剤を、混練ロールなどの混合機で混合して、熱膨張性樹脂組成物を得る。熱膨張性樹脂組成物は、適宜溶剤が添加されて、希釈されてもよい。
必要に応じて希釈された熱膨張性樹脂組成物は、シート状カバー材に塗布し、適宜乾燥、硬化などされて、シート状カバー材の一方の面上に形成されるとよい。また、押出成形など公知の方法によりシート状カバー材の一方の面上に形成されてもよい。さらに、予めシート状に成形した熱膨張性部材を、シート状カバー材にプレス成形などにより積層してもよい。
【0031】
また、耐火材は、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸化物、酸化マグネシウム等の酸化物、リン及びリン化合物等から選択される少なくとも1種の無機材料を含む樹脂組成物であるパテ状混合物であってもよい。この場合、樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、上記した樹脂成分から適宜選択して使用すればよい。パテ状混合物は、例えばシート状カバー材19の一方の面にシート状(すなわち、層状)に積層されればよい。
【0032】
シート状カバー材19は、不燃材料で構成されるとよい。シート状カバー材19は、後述するように区画貫通部15の開口13Cを覆うことができるように、屈曲ないし湾曲できるような材質で構成される。なお、不燃材料とは、建築基準法及び建築基準法施行令において定められるものである。シート状カバー材19としては、具体的には、アルミニウム箔などの金属箔、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属箔とガラスクロスの複合体などが挙げられる。これらのなかでは、防火性の観点からアルミガラスクロスが好ましい。
シート状カバー材19の厚みは、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。
【0033】
次に、図3を用いて区画貫通処理構造の施工方法を説明しつつ、本実施形態についてより詳細に説明する。図3(A)に示すように、区画貫通処理材20は、シート状の挿入部材18が、内部に挿通体21を通しつつスリーブ状にされて区画貫通部15に挿入されることで、区画貫通部15に取り付けられる。挿入部材18は、区画貫通部15を構成する貫通孔13A、13B(図1参照)の内周面の形状に適合するようにスリーブ状にされる。すなわち、挿入部材18は、その外周面が、貫通孔13A、13Bの内周面の形状に沿うようにスリーブ状にするとよい。貫通孔13A、13Bの内周面の形状は、一般的に、円、楕円、またはこれらに近似する形状であるので、挿入部材28は丸められてスリーブ状にされるとよく、円、楕円、又はこれらに近似する形状にされるとよい。
また、スリーブ状にされる際に、端部同士は向かい合わせにされるが、この際、端部同士は、接着剤、粘着剤、粘着テープなどにより接着されてもよい。ここで、接着剤、粘着剤、及び粘着テープは、不燃材料、準不燃材料又は難燃材料のいずれかであることが好ましく、接着剤、粘着剤などに難燃剤などを配合するとよい。粘着テープは、基材と、基材の一方の面に設けられた粘着剤層とを備えるが、基材及び粘着剤層それぞれが、不燃材料、準不燃材料又は難燃材料のいずれかで構成されるとよい。
ただし、挿入部材は、端部同士は向かい合わせにされる態様に限定されず、端部同士がオーバーラップするようにしてスリーブ状としてもよい。
【0034】
また、挿入部材18に積層されるシート状カバー材19は、挿入部材18の形状に合わせて筒状にされるが、この際、シート状カバー材19は挿入部材18の外側に配置される。したがって、挿入部材18は、シート状カバー材19を介して貫通孔13A、13Bの内周面の形状に一致するように筒状にされるとよい。
【0035】
図3(A)に示すように、挿入部材18は、シート状カバー材19がはみ出ている一端部18Aがスリーブの軸方向の一方の端部となるように、挿入部材18の横方向の端部と端部が向かい合わせにされている。なお、横方向とは、軸方向に直交する方向である。挿入部材18は、一端部18Aとは反対側の端部(他端部18B)を先端側、一端部18Aを後端側として、区画貫通部15に挿入される。これにより、シート状カバー材19の一端部18Aからはみ出る部分は、図3(B)に示すように、区画貫通部15の一方の開口13Cより外側に延出される。すなわち、シート状カバー材19は、挿入部材18の端部のみならず、区画貫通躯体(すなわち、仕切り部)よりも外側にはみ出している。
【0036】
区画貫通処理材20が区画貫通部15に挿入された後、貫通孔13Aより外側に延出されたシート状カバー材19は、図3(C)に示すように、適宜曲げられたり折られたりして、縮径させられ、それにより、シート状カバー材19は、挿通体21の外周に密接しつつ包囲する。そして、シート状カバー材19は、その包囲する部分に紐状部材22が巻き付けられ、その紐状部材22によって挿通体21に固定され、これにより、区画貫通部15の一方の開口13Cが、シート状カバー材19により覆われることになる。
【0037】
紐状部材22は、曲げることができる部材であればよく、ワイヤを含むワイヤ部材であることが好ましい。ワイヤ部材は、金属製のワイヤ単独でもよいし、ねじりっこ(登録商標)などの金属製のワイヤを樹脂で被覆した樹脂被覆ワイヤ、モールなどと呼ばれるワイヤと繊維を絡ませたものなどでもよい。ワイヤ部材を使用すると、ひねったり、ねじったりするだけで、シート状シール材19を挿通体21に固定できる。
【0038】
以上説明した構造を有する区画貫通処理構造10は、挿入部材18によって、中空部13と仕切り部11の外部が連通することが防止されるとともに、区画貫通部15の一方の開口13Cが、シート状カバー材19によって覆われるので、区画貫通部15の一方の開口13Cと他方の開口13Dとが連通するのも防止される。そのため、区画貫通処理構造10により、区画貫通部15に適切な防火構造を形成することができる。
【0039】
さらに、本実施形態の区画貫通処理構造10は、一方の開口13Cより区画貫通処理材20を区画貫通部15に挿入して取り付け、その後、区画貫通処理材20に設けられたシート状カバー材19により一方の開口13Cを覆うことで施工できる。そのため、少ない部品点数で区画貫通処理構造を形成できるとともに、全ての作業を仕切り部11の一方側(外面11A側)から行うことができるので作業性が向上する。
また、本実施形態では、シート状の挿入部材18は、施工現場でスリーブ状にして、区画貫通部15に挿入するとよい。そのため、シート状の挿入部材18を切断するなどして、貫通孔13A、13Bの大きさに合わせて、スリーブ状の挿入部材18の大きさを調整できるので、様々な大きさの区画貫通部15に対応できる。
さらに、本実施形態の挿入部材18は、上記の通り比較的柔軟性を有する耐火材によって構成される。そのため、挿入部材18を区画貫通部15に挿入する際、挿通体21を構成するケーブル類が挿入部材18によって傷つけられたりすることを防止する。
加えて、本実施形態では、挿入部材18の挿通体21側の躯体貫通孔(貫通孔13A,13B)内部には、挿通体21以外に何も配置しなくても、防火構造を形成できる。
【0040】
[第2の実施形態]
次に、図4を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態において第1の実施形態と相違する点は、区画貫通処理材の構造である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、以下では、異なる実施形態の説明でも、同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
【0041】
第2の実施形態における区画貫通処理材25は、挿入部材18及びシート状カバー材19に加えて、粘着層24をさらに備える。粘着層24は、仕切り部11(図1参照)に区画貫通処理材25を接着させて固定させるための部材である。本実施形態の区画貫通処理材25において、粘着層24は、シート状カバー材19の挿入部材18が設けられる面とは反対側の面に積層される。本実施形態における挿入部材18及びシート状カバー材19の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0042】
粘着層24は、例えば粘着剤より形成される粘着剤層単体であってもよいが、両面粘着テープがシート状カバー材19に貼り合わされたものでもよい。両面粘着テープは、基材の両面に粘着剤層が設けられたものであり、一方の粘着剤層を介してシート状カバー材19に貼り合わされ、他方の粘着剤層によって区画貫通処理材25を仕切り部11に接着させる。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等を用いることができる。また、粘着層24の上には、さらに離型紙等の剥離シートが貼り合わされてもよく、その場合、粘着層24を仕切り部11に貼り合わせる前に剥離シートを剥がすとよい。粘着層24の厚さは、挿入部材18及びシート状シール材19それぞれの厚さよりも小さく、例えば5~400μm、好ましくは10~150μmである。
ここで、粘着層24は、不燃性、準不燃性、又は難燃性であることが好ましく、使用する粘着剤に難燃剤などを配合するとよい。また、両面粘着テープの基材にも不燃性、準不燃性、又は難燃性の基材を使用するとよい。
【0043】
区画貫通処理材25は、仕切り部11に粘着層24を介して接着させればよい。また、区画貫通部25は、作業性の観点から、貫通孔13A(すなわち、一方の開口13C、図1参照)の内周面に粘着層24を介して貼り合わされることが好ましい。そのため、区画貫通処理材25において粘着層24は、一端部18A又はその近傍に対応する位置に配置されればよい。区画貫通処理材24を用いた区画貫通処理構造の施工は、上記したとおり、仕切り部11の一方の外面11A(図1参照)側から行われるので、一方の開口13Cの内周面に粘着層24を貼り合わせるのは容易であり、作業性が向上する。
【0044】
以上のように、本実施形態では、粘着層24を設けることで、区画貫通処理材25を仕切り部11に固定できるので、区画貫通処理材25を所望の位置に配置させ、かつその状態に維持しやすくなる。
【0045】
なお、以上の各実施形態においてシート状カバー材19は、区画貫通部15の内部において、挿入部材18の外周側に配置されるが、シート状カバー材19は挿入部材18の内周側に配置されてもよい。なお、シート状カバー材19が内周側に配置される場合、挿入部材18の外周面が貫通孔13A、13Bの内周面に直接接触する。
また、シート状カバー材19が内周側に配置される場合、第2の実施形態の区画貫通処理材25において粘着層24は、挿入部材18の一方の面上に積層される。具体的には、粘着層24は、挿入部材18のシート状カバー材19が設けられた面とは反対側の面に積層されるとよい。
【0046】
シート状カバー材19が挿入部材18内周側に配置される場合も、上記第1及び第2の実施形態と同様に、挿入部材18によって、中空部13と仕切り部11の外部が連通することが防止されるとともに、区画貫通部15の一方の開口13Cが、シート状カバー材19によって覆われる。したがって、区画貫通部15の一方の開口13Cと他方の開口13Dとが連通するのも防止される。そのため、区画貫通処理構造により、区画貫通部15に適切な防火構造を形成することができる。
また、この場合には、挿入部材18の挿通体21側の躯体貫通孔内部には、シート状カバー材19及び挿通体21以外に何も配置しなくても、防火構造を形成できる。
【0047】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について図5、6を用いて、第1の実施形態との相違点を説明する。図5、6はそれぞれ第3の実施形態における区画貫通処理材35、区画貫通構造30を示す。
第3の実施形態では、図5に示すように、挿入部材28に複数の切り込み28Bが形成されている。各切り込み28Bは、挿入部材28の一端部28Aから挿入部材28の中途まで入れられている。また、区画貫通処理材35は、区画貫通部15に挿入される際に、図6に示すように、シート状カバー材29が挿入部材28の内側に配置される。挿入部材28は、切り込み28Bを有するため、図6に示すように、一端部28Aが外側に折り返されることで鍔状の係止部材28Cが形成される。係止部材28Cは、外面11Aにおいて貫通孔13A(すなわち、一方の開口13C)の外周又は貫通孔13Aの内部に係止され、挿入部材28の一端部28A側が仕切り部11に固定されることになる。したがって、区画貫通部15に挿入された区画貫通処理材35は、区画貫通部15の所望の位置に確実に固定されることになる。
【0048】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の区画貫通処理材45は、図7に示すように、第1の実施形態と同様の構成を有する挿入部材38とシート状カバー材39とを備える。また、シート状カバー材39の挿入部材38からはみ出した部分には、さらに、挿入部材38とは別体に形成された係止部材41が積層される。係止部材41は、シート状カバー材39の挿入部材38が設けられる面上に、挿入部材38との間に隙間42を介して配置される。係止部材41は、挿入部材38と同様にシート状であってもよく、また、パテ状であってもよく、耐火材又は発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン等の発泡体から構成されるとよい。挿入部材38及び係止部材41はいずれも熱膨張性樹脂組成物、あるいは、いずれも、上記した無機材料を含む樹脂組成物であるパテ状混合物から形成されるとよい。挿入部材38及び係止部材41は、いずれも熱膨張性樹脂組成物又は上記したパテ状混合物などの同じ材料により形成されると、例えば間欠塗工などにより容易に形成できる。
【0049】
挿入部材38及び係止部材41は、隙間42を介して配置されることで、図8に示すように、隙間42におけるシート状カバー材39を折り曲げることで、挿入部材38の一端部38Aに段差42Aを介して係止部材41が接続された段差シートになる。そのため、挿入部材38の内周側にシート状カバー材39が配置されるように、区画貫通処理材45(すなわち、挿入部材38、係止部材41及びシート状カバー材39)をスリーブ状にして区画貫通部15に挿入すると、図9に示すように、挿入部材38の一端部38Aには、挿入部材38よりも外周側に位置する係止部材41が接続されることになる。したがって、区画貫通処理構造40において、スリーブ状にして挿入された区画貫通処理材45は、係止部材41によって、区画貫通部15の一方の開口13Cの外周又は内部に係止され、区画貫通部15の所望の位置に確実に固定される。なお、第4の実施形態において、係止部材41は、図7に示すように、シート状カバー部材39のはみ出した部分の一部に設けられてもよいし、全体に設けられてもよい。
【0050】
以上の第2~4の実施形態において区画貫通処理材は、粘着層又は係止部材を介して、仕切り部11に固定されたが、粘着層及び係止部材以外の手段により仕切り部に固定されてもよい。例えば、ビス、タッカーなど公知の手段で、スリーブ状とされた挿入部材が、仕切り部に固定されてもよい。また、係止部材も、挿入部材の外周側に配置される部材であればよく、上記した第3及び第4の実施形態の構成に限定されず、例えば、シート状カバー材又は挿入部材に取り付けたブロック状の部材などであってもよい。
【0051】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について図10,11を用いて説明する。第5の実施形態において、第1の実施形態と相違する点は、区画貫通処理構造にさらに機能部材が設けられた点である。以下、第5の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。
【0052】
図10は第5の実施形態で使用する機能部材50を示す。第5の実施形態における機能部材50は、開口を覆うシート状カバー材19をさらに覆う部材(「被覆機能部材」ともいう)である。機能部材50は、金属、樹脂材料、ゴム材料などにより形成される。本実施形態における機能部材50は、図10に示すように、2つに分割されて一対の分割片50A,50Bからなり、分割片50A,50Bが突き合わされて機能部材50が構成される。分割片50A,50Bは、例えば、互いの突き合わせ面それぞれに凸部、凹部などが設けられ、それらが嵌め合わされることなどで、互いに固定されてもよい。
機能部材50は、キャップ状であり、天面51と、天面51に立設される側面52とを有し、側面52はシート状カバー材19を内部に収納できるように一定の高さを有する。機能部材50(側面52)の内径は、区画貫通部の一方の開口13Cの直径よりも大きくなる。また、天面51には、挿通体21が通されるための孔51Aが設けられる。
孔51Aは、円形でもよいが、挿通体21の形状に応じて円形以外のいかなる形状でもよい。孔51Aは、挿通体21のサイズより小さいものでもよい。また、孔51Aの代わりに切り込みであってもよい。孔51Aのサイズが挿通体21より小さくても、また、孔51Aの代わりに切り込みが設けられても、機能部材50がゴム、樹脂材料で形成される場合には、挿通体21が孔51A(又は切り込み)に挿入されると、天面51が撓んで孔51A(又は切り込み)内部に挿通体21を挿入できる。
【0053】
機能部材50は、シート状シール材19によって開口13Cが覆われた後に、図11に示すように、仕切り部11の外面11Aに取り付けられる。ここで、機能部材50は、上記のように2つの分割片50A,50Bに分割されていることで、挿通体21を両側から挟み込むようにして突き合わされて外面11Aに取り付けるとよい。
また、機能部材50は、仕切り部11の外面11Aに粘着剤、接着剤、ビス、タッカーなどの公知の固定手段によって固定されてもよいし、外面11Aに凹部や凸部などが設けられ、機能部材50は嵌合などにより外面11Aに固定されてもよい。
【0054】
シート状カバー材19は、曲げられたり、折られたりして皺などが形成され、見栄えが良くないことがあるが、本実施形態のように、シート状カバー材19を機能部材50によりさらに覆うことで、区画貫通処理構造55の外観が良好となる。すなわち、機能部材50は、化粧材としての機能を発揮するものである。また、機能部材50は、シート状カバー材19及び挿入部材18によって区画される領域の外側に配置され、防火構造の形成を阻害しない。
ただし、機能部材50は、化粧材としての機能に限定されず、様々な機能を区画貫通処理構造55に付与することができる。例えば、機能部材50は、区画貫通処理構造55に遮音、防臭、制振などの機能を付与してもよい。なお、遮音性能、防臭性能とは、一方の外面11A(又は11B)側から他方の外面11B(又は11A)に音漏れや、臭い漏れなどが生じることを防止する機能である。また、制振性能は、挿通体21が振動することを防止する機能である。
【0055】
機能部材50は、開口13Cを覆うことで、一定の遮音性能、及び防臭性能を発揮し、また、挿通体21を孔51Aの内周面により支持することで一定の制振性能を発揮するが、機能部材50は、所望する機能に応じて材料を適宜選択すればよい。例えば、機能部材50は、遮音機能を付与したい場合には、発泡体、ゴム材料などの遮音材により形成するとよいし、防臭機能を付与したい場合には、機能部材50を構成する樹脂材料、ゴム材料などに防臭剤、脱臭剤などを配合するとよい。また、機能部材50は、制振機能を付与したい場合には、ゴム材料などにより形成するとよい。さらに、機能部材50には、付与したい機能に応じて、その内面(例えば、天面51の内面)などに追加的な部材を取り付けてもよく、例えば、遮音材、防臭剤、脱臭剤などを取り付けてもよい。
【0056】
以上のように、本実施形態では、区画貫通処理構造55に機能部材50を設けることで、区画貫通部15に適切な防火構造を形成しつつ、様々な機能を付与することができる。また、機能部材50を取り付ける場合でも、部品点数の増加を防止でき、また、全ての作業を仕切り部11の一方側(外面11A側)から行うことができるので作業性が向上する。
【0057】
なお、上記のように、開口13Cを覆うシート状カバー材19をさらに覆う機能部材は、上記した構成に限定されず、シート状カバー材を覆うことができる部材であればいかなる形状であってもよい。そのような機能部材の一変形例を図12に示す。図12に示すように本変形例において、機能部材は、2つに分割しておらず、1体の機能部材57からなる。機能部材57は、上記した第5の実施形態における機能部材50と同様に、キャップ状であり、天面58と側面59とを有し、天面58に孔58Aが設けられる。また、機能部材57には、孔58Aから外周面に向かうスリット57Aを有しており、スリット57Aは、天面58及び側面59にわたって形成される。機能部材57はスリット57Aを有することで、2つに分割されなくても、挿通体21をスリット57Aを介して孔58Aの内部に挿入させることができる。なお、本変形例でも孔58Aの代わりに天面58に切り込みが設けられてもよい。
【0058】
なお、シート状カバー材をさらに覆う機能部材は、上記構成に限定されず、他のいかなる構成であってもよく、例えば、3つ以上に分割されてもよい。また、例えば、機能部材は、仕切り部11(すなわち、外面11A)に固定されていたが、仕切り部11に固定される必要はなく、例えば、シート状カバー材及び挿入部材のいずれかに固定されてもよい。この場合、機能部材は、外周側からシート状カバー材及び挿入部材のいずれかに接着剤、粘着剤、ビス、タッカーなどの公知の固定手段によって固定されてもよいし、これらに嵌合などされることで固定されてもよい。
【0059】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について図13,14を用いて説明する。第5の実施形態において、機能部材はシート状カバー部材を覆うように配置されていたが、本実施形態において機能部材は、シート状カバー部材によって覆われる区画貫通処理構造の内部に配置される機能部材(「内部機能部材」ともいう)である点において相違する。以下、第6の実施形態について、第5の実施形態との相違点を説明する。
【0060】
本実施形態における機能部材60は、シート状カバー材69の上に設けられ、シート状カバー材69により支持される。具体的には、区画貫通処理材65において、シート状カバー材69の挿入部材68の一端部68Aからはみ出した部分に、機能部材60が積層される。シート状カバー材69及び挿入部材68の構成は、上記第1の実施形態と同様である。
機能部材60は、遮音、防臭、制振などの機能を付与するとよく、発泡体、ゴム材料などの遮音材、防臭剤、脱臭剤そのものや、防臭剤、脱臭剤などが配合された樹脂材料、ゴム材料などでもよい。また、制振材として機能するゴム材料などでよい。また、機能部材60は、図13では、シート状に形成される態様を示すが、後述するように、シート状カバー材69が開口13Cを覆うのを阻害しない限りいかなる形状を有していてもよい。
【0061】
本実施形態において、区画貫通処理材65(すなわち、挿入部材68及びシート状カバー材69)をスリーブ状にして区画貫通部15に挿入すると、シート状カバー材69の挿入部材68の一端部68Aからはみ出した部分及びそのはみ出した部分に積層された機能部材60が、外面11Aよりも外側に配置される。なお、機能部材60は、シート状カバー材69の内側に配置されるので図14においては示されない。
シート状カバー材69のはみ出した部分は、上記各実施形態と同様に縮径することで、シート状カバー材69を挿通体21の外周に密接して包囲させることができる。このとき、シート状カバー材69は、内部に配置された機能部材60を介して挿通体21に密接してもよい。そして、シート状カバー材69は、その包囲する部分に紐状部材22が巻き付けられ、紐状部材22によって挿通体21に固定され、それにより、区画貫通部15の一方の開口13Cが、シート状カバー材69により覆われることになる。
【0062】
以上のように、第6の実施形態においては、機能部材60も区画貫通処理材65に設けられるので、少ない部品点数でかつ良好な作業性で機能を付与することができる。また、機能部材60は、シート状カバー材69が開口13Cを覆うことを阻害しないので、防火構造の形成を阻害するようなこともない。
【0063】
なお、内部機能部材は、上記した第6の実施形態では、シート状カバー材の内部に配置されたが、挿入部材とシート状カバー材によって区画された区間貫通処理構造の内部である限りいかなる位置に配置されてもよく、例えば挿入部材の内部に配置されてもよい。
また、内部機能部材の構成は、いかなる態様でもよく、区画貫通処理材とは別体として貫通処理構造の内部に配置されてもよく、例えばパテのような形態で挿入部材の内部に配置されてもよいし、袋体に収納されたパテを挿入部材の内部に配置されてもよい。
さらに、内部機能部材は、第5の実施形態で示した被覆機能部材のように、天面と側面とを備え、シート状カバー材の内側において、挿入部材18の一端部18A(図11参照)により構成される開口を覆うキャップ状のものであってよいし、挿入部材18の一端部18Aにより構成される開口を覆う板状の部材であってもよい。
【0064】
以上の第1~第6実施形態では、挿入部材は、シート状の部材の端部と端部が向かい合わせにされてスリーブ状にされたが、予めスリーブ状に形成されていてもよい。予めスリーブ状に形成しておくことで、現場での作業性がより一層向上する。また、予めスリーブ状に形成すると、区画貫通部に挿入する際に挿入部材の直径を調整できないので、予め決められた大きさの貫通孔を有する区画貫通部に対して使用する際に有効である。
【0065】
[第7の実施形態]
挿入部材を予めスリーブ状にした一例を第7の実施形態として図15に示す。図15(A)に示すように、本実施形態に係る区画貫通処理材70は、スリーブ状の挿入部材73と、挿入部材73の軸方向における一端部73Aに取り付けられたシート状カバー材74とを備える。挿入部材73は、上記のとおり耐火材により形成されるものであり、スリーブ状に形成される限りいかなる方法で成形されてもよい。また、スリーブ材の挿入部材73は、軸方向に延びる切れ込みが設けられてもよく、シート状カバー材にも同様に切れ込みが設けられてもよい。切れ込みが設けられることで、挿通体21を挿入部材73の内部を通しやすくなる。
シート状カバー材74は、不燃材料により構成され、かつ一端部73Aより径方向外側に向かってシート状に延在する部材である。シート状カバー材74は、スリーブ状の挿入部材73の外周面上にも積層されていてもよいし、積層されていなくてもよい。
【0066】
本実施形態における区画貫通処理材70は、上記各実施形態と同様に、図15(B)に示すように、スリーブ状の挿入部材73を区画貫通部15に挿入する。その後、シート状カバー材74は、図15(C)に示すように、束ねるようにして挿通体21の外側から挿通体21の外周に密接して包囲し、次いで、シート状カバー材74を紐状部材22により挿通体21に固定して、区画貫通処理構造75を形成するとよい。
【0067】
もちろん、以上の第7の実施形態の態様においても、機能部材が設けられてもよい。機能部材としては、第5の実施形態及びその変形例で述べたとおりに、シート状カバー材74をさらに覆う被覆機能部材であってもよいし、第6の実施形態で述べたとおりに、区画貫通処理構造の内部に設けられる内部機能部材であってもよい。被覆機能部材及び内部機能部材の詳細は、上記で述べたとおりであるが、内部機能部材が区画貫通構造に設けられた具体例を第8の実施形態として図16に示す。
【0068】
[第8の実施形態]
第8の実施形態において使用する内部機能部材は、図16(B)に示すように、キャップ状の機能部材80であるとよい。キャップ状の機能部材80は、第5の実施形態と同様に、天面81及び側面82を有すればよい。さらに、天面81に切れ込みや孔が設けられ、孔(又は切れ込み)から外周面に向かうスリットが設けられてもよい。さらに、機能部材80は2つ以上に分割されていてもよい。ただし、機能部材80は、その内部にシートカバー材を収納させる必要がないので、機能部材80の側面82は、一定の高さを有する必要がなく、機能部材は、側面82が省略されて板状部材であってもよい。
【0069】
内部機能部材として機能部材80を使用する場合にも、挿入部材73は、図16(A)に示すように、区画貫通部15に挿入される。この際、シート状カバー材74は、仕切り部11の外面11Aに沿って配置させるとよい。そして、図16(B)に示すように、そのように配置されたシート状カバー材74の上に、開口13Cを覆うように機能部材80を被せるとよく、これにより、機能部材80の下端部(すなわち、側面82の下端部)は、シート状カバー材74を介して、開口13Cの外周上に配置されることになる。
機能部材80は、シート状カバー材74を介して、ビス、タッカーなどの公知の固定手段により、仕切り部11の外面11Aに固定させるとよい。また、キャップ状の機能部材80は、シート状カバー材74を介して、挿入部材73の端部に嵌合することで固定されてもよいし、他のいかなる固定手段によって、仕切り部11や挿入部材73に固定されてもよい。
機能部材80が固定された後、シート状カバー材74を、図16(C)に示すように、挿通体21の外側から挿通体21の外周に密接して包囲させ、次いで、シート状カバー材74を紐状部材22により挿通体21に固定して、区画貫通処理構造85を形成するとよい。
【0070】
以上の説明では、本発明を実施形態を示して詳細に説明したが、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない限り様々な改良ないし変更をしてもよいし、各構成を適宜組み合わせてもよい。
例えば、以上の各実施形態では、シート状カバー材は、挿通体に紐状部材によって固定されたが、紐状部材以外によって固定されてもよく、例えば、粘着層又は耐火材によってシート状カバー材に固定されてもよい。粘着層又は耐火材は、シート状カバー材の内側であって挿通体に接触する部分に、予め積層させておくとよい。粘着層としては、粘着剤層単体からなるものでもよいし、基材と基材の両面に設けた粘着剤層とを有する両面粘着テープであってもよい。また、耐火材は、上記した熱膨張性樹脂組成物により形成されればよいが、例えば未硬化又は溶剤で希釈された熱膨張性樹脂組成物をシート状カバー材に塗布して、未硬化又は乾燥前の熱膨張性樹脂組成物を挿通体に接触させた状態で硬化、乾燥させて、耐火材を介してシート状カバー材と挿通体を固定させればよい。また水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸化物、酸化マグネシウム等の酸化物、リン及びリン化合物等から選択される少なくとも1つの無機材料を含む樹脂組成物であるパテ状混合物で固定されていてもよい。
また、シート状カバー材は、外側から巻き付けられた粘着テープによって固定されてもよい。粘着テープは、基材と、基材の一方の面に粘着剤層が設けられた片面粘着テープなどが使用されるとよい。基材と粘着剤層の詳細は上記の通りである。
【0071】
上記各実施形態において、本発明の挿入部材は、耐火材によって構成される態様を示したが、挿入部材は、不燃材料によって構成されてもよい。具体的には、モルタル、鋼製スリーブなどの金属管、無機繊維やその成形体などが挙げられる。ただし、挿入部材の端部は、挿通体21などに傷を付けにくくする観点から、鋭利な部分が露出していない柔軟部材、例えば有機発泡体やゴム状成形体、耐火材などで構成されることが好ましい。
また、挿入部材は、挿入部材自体が不燃材料、耐火材などで構成される必要はなく、不燃材料が内部又は外部の少なくとも一部に配置されているパイプ類などでよい。パイプ類は、樹脂材料などにより形成されるとよい。
【0072】
上記各実施形態において、スリーブ状の挿入部材は、一部が折れ曲がり、その折れ曲った部分で区画貫通部の一方の開口を覆っていてもよい。この場合、スリーブ状の挿入部材は、例えば軸方向の一端部が折り曲げられるとよい。そして、区画貫通部の一方の開口は、挿入部材の折れ曲がった端部をさらに覆うようにシート状カバー材によって覆われるとよい。これにより、前記区画貫通部の一方の開口は、挿入部材の端部及びシート状カバー材によって覆われることにより、防火性を高めやすくなる。
なお、スリーブ状の挿入部材の一端部は、区画貫通部の内部に挿入された後、折り曲げられてもよいが、予め折り曲げられた形状を有していてもよい。
【0073】
さらに、上記各実施形態においては、挿入部材及びシート状カバー材によって区画される区画貫通処理構造の内部(例えば、挿入部材の内部など)に、熱膨張性部材などの耐火材が配置されてもよい。区画貫通処理構造の内部に耐火材を配置することで、防火性能が向上しやすくなる。
また、挿入部材が不燃材料によって構成される場合に、区画貫通処理構造の内部に、熱膨張性部材から構成される耐火材が配置されることが好ましい。このような態様においては、火災発生時に挿入部材自体は膨張しないが、区画貫通処理構造の内部に配置された耐火材が膨張することで、適切に火災の延焼を防止できる。
【0074】
また、シート状カバー材は不燃材料である必要はなく、準不燃材料、難燃材料などにより構成されてもよいし、これら以外により構成されてもよい。なお、準不燃材料、難燃材料は、建築基準法及び建築基準法施行令において定められるものである。
さらに、挿入部材及びシート状カバー材によって区画される区画貫通処理構造の内部(例えば、挿入部材の内部など)に、不燃材料が配置されてもよい。区画貫通処理構造の内部に不燃材料を配置することで、防火性能が向上しやすくなる。区画貫通処理構造の内部に配置される不燃材料としては、ガラスウール、ロックウールなどが挙げられる。また、シート状カバー材が、不燃材料以外で構成される場合には、防火性能の観点などから、区画貫通処理構造の内部に不燃材料を配置することが好ましい。
【0075】
また、上記第1及び第2の実施形態などにおいて、シート状カバー材は、挿入部材とともに、筒状にされていたが、筒状にされる必要はなく、例えばシート状カバー材に切り込みを入れておき、上記第7の実施形態と同様に、挿入部材の一端部から径方向外側に広がるようにしてもよい。シート状カバー材は、径方向外側に広がるように配置されると、シート状カバー材の内側において、内部機能部材としての図16に示されるキャップ状の機能部材80や板状の機能部材によって開口13Cが覆われやすくなる。
【0076】
また、上記各実施形態において、シート状カバー材は、挿入部材に積層されて挿入部材に一体にされる態様を示したが、シート状カバー材は、挿入部材に対して固定されている限り、いかなる態様で挿入部材に一体にされてもよい。例えば、シート状カバー材は、挿入部材の端部などに連結されるようにして、挿入部材と一体にされてもよい。
【0077】
上記各実施形態の区画貫通処理材において、挿入部材の両面にシート状カバー材が積層されてもよい。この場合、例えば、シート状カバー材、挿入部材、及びシート状カバー材の順に設けられた積層構造が、形成されるとよく、また、いずれのシート状カバー材も挿入部材の端部よりはみ出す構成であることが好ましい。シート状カバー材が両面に設けられると、2枚のシートカバー材により一方の開口を覆うことができる。また、一方のシート状カバー材により、区画貫通部の一方の開口を覆い、他方のシート状カバー材により区画貫通部の他方の開口を覆ってもよい。
【0078】
また、上記各実施形態において挿入部材は、基材の上に積層されてもよい。すなわち、例えば、基材、挿入部材、及びシート状カバー材の順に設けられた積層構造が、形成されるとよい。基材としては、特に限定されないが、不燃材料で構成されるとよく、例えば金属箔、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属箔とガラスクロスの複合体などが挙げられる。これらのなかでは、防火性の観点からアルミガラスクロスが好ましい。基材の厚みは、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。この場合も、基材も挿入部材、及びシート状カバー材とともに筒状にされて区画貫通部に挿入されるとよい。
【0079】
さらに、以上の説明では、仕切り部11は、内部に中空部13がある中空壁であったが、中空壁に限定されず、中空が設けられない壁であってもよく、例えば1枚の壁材からなるものでもよい。また、仕切り部11は、建築物の壁に限定されず、建築物の天井、床であってもよい。仕切り部は、天井、床の場合でも、2枚の仕切り材の間に中空部を有する構造であってもよいし、中空部がない構造であり、例えば1枚の仕切り材から構成されてもよい。
【0080】
また、以上の各実施形態では、シート状カバー材が、区画貫通部の一方の開口を覆う構成を示したが、両方の開口を覆うようにしてもよい。この場合、シート状カバー材は、いかなる態様を有していてもよいが、例えば挿入部材の軸方向の両端部より外側にはみ出すように形成され、そのはみ出した部分で両方の開口を覆うようにしてもよい。また、シート状カバー材を2つ設けて、各シート状カバー材により両方の開口それぞれを覆うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10、30、40、55、75、85 区画貫通処理構造
11 仕切り部
13 中空部
13C,13D 開口
15 区画貫通部
18、28、38、68、73 挿入部材
18A、28A、38A、68A、73A 一端部
19、29、39、69、74 シート状カバー材
20、25、35、45、65、70 区画貫通処理材
21 挿通体
22 紐状部材
24 粘着層
28B 切り込み
28C、41 係止部材
42 間隙
42A 段差
50、57、60、80 機能部材
51、58、81 天面
52、59、82 側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16