(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】超音波デブリードマン器具に備えるチップ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/32 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
A61B17/32 510
(21)【出願番号】P 2019160204
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-06-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 香奈代
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-255736(JP,A)
【文献】特表2013-543746(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207943(JP,U)
【文献】米国特許第06632233(US,B1)
【文献】特開2002-330977(JP,A)
【文献】特開2015-205206(JP,A)
【文献】特開2010-227577(JP,A)
【文献】特開2004-129889(JP,A)
【文献】国際公開第2019/016945(WO,A1)
【文献】特開2009-240622(JP,A)
【文献】特表2019-523066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/00
A61F 2/01
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波デブリードマン器具の本体から超音波振動が伝達され、前記本体から供給された液体を人体に向けて吐出するように構成された超音波デブリードマン器具のハンドピース
の先端に
着脱可能に備えるチップであって、
前記チップは、板状に構成され
ていて施術時に人体の組織に面するチップ部と、前記ハンドピースに取り付けられ先端側に前記液体を吐出する吐出口を有する中間部と、を備え、
前記チップ部は、前記吐出口から吐出される液体に当たる傾斜面を備え、
前記中間部は、該中間部が回転しないように2つの指で確実に支持するためのフラット面が左右両側に形成されている円筒部を更に備えていることを特徴とする超音波デブリードマン器具に備えるチップ。
【請求項2】
前記チップ部は、平板状で、かつ、先端側ほど幅広となるように構成され、前記チップ部の傾斜面が、前記吐出口から延びる吐出経路に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の超音波デブリードマン器具に備えるチップ。
【請求項3】
前記チップ部は、前記傾斜面への正対視で該チップ部の長手方向に長い略長円状又は略楕円状で、かつ、板厚方向のうちの一側に前記傾斜面を構成する湾曲した窪み部を備え、該窪み部の基端側内面に前記吐出口を備え、該吐出口から吐出される液体が前記窪み部の先端側内面に当たるように該吐出口を構成していることを特徴とする請求項1に記載の超音波デブリードマン器具に備えるチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波デブリードマン器具に備えるチップに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波外科措置機器としての超音波デブリードマン器具は、超音波による機械的振動及びチップから吐出される液体(例えば生理食塩液等)を用いて、人体の軟組織を乳化、除去、洗浄する。機械的振動及び超音波エネルギーを与えながら軟組織の創部に生理食塩液等を吐出(噴霧)することで液体に生じた真空の気泡が破裂(キャビテーション)する。これにより生じる衝撃波を利用して、健常組織を温存しながら壊死組織や汚染物質等を乳化、除去し、創部の清浄化を図る。また、弾力性がある組織は、超音波振動エネルギーを吸収するため、血管、神経等は温存される。
【0003】
図5(a),(b)に、上記超音波デブリードマン器具に備えるチップ10を示している。このチップ10は、施術時に人体に面する部分が開放された開口部10Aを備え、正対視で真円状の周壁部を有するカップ状に構成されている。また、チップ10の内壁面には、液体をチップ10の内部へ吐出(噴霧)するための開口Kが形成されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「メスを使わないデブリードマン」に新手法、井田恭子、日経メディカル、2014年7月29日https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201407/537691.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1のチップが、比較的大きな体積を有するカップ状に構成されているため、乳化、除去された壊死組織や汚染物質等がチップの内部に堆積してしまい、チップ内が壊死組織や汚染物質等で詰まってしまうことがある。すると、液体を開口から吐出するのが難しくなる。そのため、乳化、除去を行っている最中にチップ内に詰まった壊死組織や汚染物質等を頻繁に取り除くことが多くなり、作業性が悪く、早期改善が要望されている。
【0006】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、乳化、除去を行っている最中に内部が壊死組織や汚染物質等で詰まることがない超音波デブリードマン器具に備えるチップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る超音波デブリードマン器具に備えるチップは、超音波デブリードマン器具の本体から超音波振動が伝達され、前記本体から供給された液体を人体に向けて吐出するように構成された超音波デブリードマン器具に備えるチップであって、前記チップは、前記液体を先端側に吐出する吐出口と、板状に構成されたチップ部と、を備え、該チップ部は、前記吐出口から吐出される液体に当たる傾斜面を備えていることを特徴としている。
【0008】
かかる構成によれば、組織の創部に超音波振動を与えながら液体を吐出することで脆弱となった壊死組織や汚染物質等を、チップ部の縁で軽く擦り取る。擦り取った壊死組織や汚染物質等が、板状に構成されたチップ部に堆積されることがない。しかも、チップ部が、吐出口から吐出される液体に当たる傾斜面を備えているので、付着しようとする壊死組織や汚染物質等を傾斜面に当たる液体で阻止することができる。
【0009】
また、本発明に係る超音波デブリードマン器具に備えるチップは、前記チップ部が、平板状で、かつ、先端側ほど幅広となるように構成され、前記チップ部の傾斜面が、前記吐出口から延びる吐出経路に対して傾斜していてもよい。
【0010】
上記のように、先端側ほど幅広となるチップ部を用いて広範囲にわたる創傷を効率よく処理することができる。また、チップ部の傾斜面の傾斜角度を調整することによって、傾斜面における液体の反射角度を自由に設定できる。
【0011】
また、本発明に係る超音波デブリードマン器具に備えるチップは、前記チップ部が、前記傾斜面への正対視で該チップ部の長手方向に長い略長円状又は略楕円状で、かつ、板厚方向のうちの一側に前記傾斜面を構成する湾曲した窪み部を備え、該窪み部の基端側内面に前記吐出口を備え、該吐出口から吐出される液体が前記窪み部の先端側内面に当たるように該吐出口を構成していてもよい。
【0012】
上記のように、チップ部が略長円状又は略楕円状であるので、複雑な創傷に対して壊死組織や汚染物質等を擦り取る際に創傷の狭い部分にも対応することができる。また、チップ部が、長手方向に長い窪み部を備えるとともに液体が長手方向に吐出されるので、擦り取った壊死組織や汚染物質等が、窪み部に詰まり難い。しかも、吐出口から吐出される液体が窪み部の先端側内面に当たるので、窪み部の先端部で擦り取られた壊死組織や汚染物質等が窪み部の先端側内面に付着することを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
以上より、本発明によれば、板状に構成されたチップ部を備え、そのチップ部が吐出口から吐出される液体に当たる傾斜面を備えていることによって、乳化、除去を行っている最中に内部が壊死組織や汚染物質等で詰まることがない超音波デブリードマン器具に備えるチップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態のチップを備えた超音波デブリードマン器具の斜視図である。
【
図2】同チップを示し、(a)は底面図、(b)は側面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態のチップを示し、(a)は底面図、(b)は側面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態のチップを示し、(a)は底面図、(b)は側面図、(c)はチップ部の断面図である。
【
図5】従来のチップを示し、(a)は側面図、(b)は底部側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る3種類のチップについて、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<第1実施形態>
まず、超音波外科措置機器としての超音波デブリードマン器具について説明する。
図1に示すように、超音波デブリードマン器具1は、本体2と、フットスイッチ3と、ハンドピース4と、ハンドピース4の先端に着脱可能に取り付けられたチップ5と、を備えている。なお、デブリードマンとは、壊死組織や汚染物質等を除去して創部を清浄化する治療法のことである。
【0017】
本体2は、チップ5に伝達するための超音波を発生する超音波発生器(図示せず)と、チップ5に液体(ここでは、生理食塩液)を供給する液体供給部(図示せず)と、を備えている。
【0018】
フットスイッチ3は、本体2の超音波発生器に電気的に接続されていて、超音波発生器の出力レンジを調整するための足で操作可能なスイッチである。
【0019】
ハンドピース4は、コード7を介して本体2に接続され、例えば圧電材料で構成されており、超音波の振動波がチップ5に確実に伝播されるようになっている。また、本体2には、液体供給部からの液体を供給する合成樹脂製のチューブ6が接続されている。前記チューブ6の先端が前記コード7に接続されており、ハンドピース4に液体が供給されてからチップ5へ供給されるようになっている。
【0020】
チップ5は、ステンレス製であり、
図2(a),(b)に示すように、ハンドピース4の先端部に形成されている雌ネジ部(図示せず)にねじ止めされる雄ネジ部51と、中間部52と、先端部となるチップ部53と、を備えている。
【0021】
中間部52は、雄ネジ部51の先端に雄ネジ部51の外径よりも大きな径を有し、先端側ほど径が小さくなるテーパー形状の鍔部52Aと、鍔部52Aの先端から略同一径で前方に延びる第1円筒部52Bと、第1円筒部52Bの先端から先端側ほど径が小さくなる第1テーパー部52Cと、その第1テーパー部52Cの先端から略同一径で前方に延びる第2円筒部52Dと、を備えている。第1円筒部52Bの先端部の左右両側のそれぞれには、中間部52を2つの指で支持して創部を清浄化している最中に、中間部52が回転しないように中間部52を確実に支持するためのフラット面52fが形成されている。
【0022】
チップ部53は、第2円筒部52Dから延び、かつ、第2円筒部52Dよりも厚みが薄くなる板状で、先端側ほど幅広となる形状に構成されている。また、チップ部53は、基端部が液体を吐出する吐出経路T1を挟んで一方側(第2円筒部52D側)に位置し、かつ、先端部が他方側(第2円筒部52Dから離間する側)に位置するように、基端部が後述する吐出口52T側へ所定角度θ1(
図2(b)では130度下方へ)折り曲げられた擦り取り部を備えている。前記のように、チップ部53の基端部が折り曲げられることにより、チップ部53が吐出経路T1を横切ることで、吐出口52Tから吐出される液体に斜めに当たる傾斜面53Aをチップ部53に備えている。この傾斜面53Aは、先端側ほど吐出口52Tから遠ざかるように構成されている。
【0023】
また、第1テーパー部52Cの厚み方向一側(
図2(b)では下側面)に、チューブ6に供給される液体を先端側へ吐出するための吐出口52T(
図2(a)参照)が形成されている。この吐出口52Tから吐出された液体が、先端(前方)側へ第2円筒部52Dの軸心と略平行な状態で吐出されて、前記傾斜面53Aに当たって向きが変わり、除去すべき人体の組織に当たる。
【0024】
また、チップ部53は、平面視において略三角形状に構成され、先端の幅方向両端が角の取れた湾曲形状になっている。また、チップ部53の先端部は、壊死組織や汚染物質等を擦り取り易いように、先端側ほど厚みが薄くなっている。具体的には、チップ部53の先端部は、
図2(b)に示すように、上面(外面)側にテーパー面53Bを備えている。
【0025】
上記構成の超音波デブリードマン器具を用いて、組織の創部に超音波振動を与えながら液体を吐出することで脆弱となった壊死組織や汚染物質等を、チップ部53の先端縁で軽く擦り取る。擦り取った壊死組織や汚染物質等が、板状に構成されたチップ部53に堆積されることがない。しかも、チップ部53が、吐出口52Tから吐出される液体に当たる傾斜面53Aを備えているので、付着しようとする壊死組織や汚染物質等を傾斜面53Aに当たる液体で阻止することができる。また、チップ部53は、先端側ほど幅広となる形状にしているので、広範囲にわたる創傷を効率よく処理することができる。また、チップ部53の傾斜面53Aの傾斜角度を調整することによって、傾斜面53Aにおける液体の反射角度を自由に設定できる。
【0026】
<第2実施形態>
第1実施形態のチップ5のチップ部53の形状が少し異なる形状の第2実施形態のチップ部54が、
図3(a),(b)に示されている。
【0027】
図3(a),(b)に示すチップ5は、第1実施形態のチップ5と同様に、ステンレス製であり、ハンドピース4の先端部に形成されている雌ネジ部(図示せず)にねじ止めされる雄ネジ部51と、中間部52と、第1実施形態のチップ部53とは異なる形状のチップ部54と、を備えている。
【0028】
中間部52は、雄ネジ部51の先端に雄ネジ部51の外径よりも大きな径を有し、先端側ほど径が小さくなるテーパー形状の鍔部52Aと、鍔部52Aの先端から略同一径で前方に延びる第1円筒部52Bと、第1円筒部52Bの先端から先端側ほど径が小さくなる第1テーパー部52Cと、その第1テーパー部52Cの先端から略同一径で前方に延びる第2円筒部52Dと、を備えている。第1円筒部52Bの先端部の左右両側のそれぞれには、中間部52を2つの指で支持して創部を清浄化している最中に、中間部52が回転しないように中間部52を確実に支持するためのフラット面52fが形成されている。
【0029】
チップ部54は、第2円筒部52Dから延び、かつ、第2円筒部52Dよりも厚みが薄くなる板状で、先端側ほど幅広となるように構成されている。また、チップ部54は、基端部が液体を吐出する吐出経路T1を挟んで一方側(第2円筒部52D側)に位置し、かつ、先端部が他方側(第2円筒部52Dから離間する側)に位置するように、基端部が後述する吐出口52T側へ所定角度θ1(
図2(b)では130度下方へ)折り曲げられた擦り取り部を備えている。前記のように、チップ部54の基端部が折り曲げられてチップ部54が吐出経路T1を横切ることで、吐出口52Tから吐出される液体に当たる傾斜面54Aをチップ部54に備えている。また、第2実施形態のチップ部54は、第1実施形態のチップ部53とは異なり、先端の幅方向両端が第1実施形態のチップ部53の先端の丸くなった幅方向両端の曲率半径よりも大きな曲率半径を有する円弧形状に構成されている。チップ部54の幅方向の寸法W2を、第1実施形態のチップ部53の幅方向の寸法W1よりも小さくし、かつ、大きな曲率半径を有する円弧形状の両端部54a,54aを備えることによって、創腔(ポケットともいい、組織にできた空洞のこと)内にチップ部54を挿入することができる。これにより、創傷を損傷させずに壊死組織や汚染物質等を擦り取ることができる角の無い形状のチップ部54を構成している。
【0030】
また、第1テーパー部52Cの厚み方向一側(
図3(b)では下側面)に、チューブ6に供給される液体を人体の組織に吐出するための吐出口52T(
図3(a)参照)が形成されている。この吐出口52Tから液体が、先端(前方)側へ第2円筒部52Dの軸心と略平行な状態で吐出されて、前記傾斜面54Aに当たる。この傾斜面53Aの傾斜角度を調整することによって、傾斜面53Aにおける液体の反射角度を自由に設定できる。この傾斜面54Aは、先端側ほど吐出口52Tから遠ざかるように構成されている。
【0031】
チップ部54は、板状に構成され、かつ、吐出口52Tから吐出される液体に当たる傾斜面54Tを備えている。この吐出口52Tから吐出された液体が、先端(前方)側へ第2円筒部52Dの軸心と略平行な状態で吐出されて、前記傾斜面53Aに当たって向きが変わり、除去すべき人体の組織に当たる。また、チップ部54は、平面視において略三角形状に構成され、前述したように先端の幅方向両端が角の取れた湾曲形状になっている。また、チップ部54の先端部は、壊死組織や汚染物質等を擦り取り易いように、先端側ほど厚みが薄くなっている。具体的には、チップ部54の先端部は、
図3(b)に示すように、上面(外面)側にテーパー面54Bを備えている。
【0032】
<第3実施形態>
第1実施形態のチップ5の中間部52の形状及びチップ部53の形状が異なる第3実施形態のチップ5が、
図4(a),(b)に示されている。
【0033】
図4(a),(b)に示すチップ5は、第1実施形態のチップ部53と同様に、ステンレス製であり、ハンドピース4の先端部に形成されている雌ネジ部(図示せず)にねじ止めされる雄ネジ部51と、第1実施形態の中間部52とは異なる形状の中間部55と、第1実施形態のチップ部53とは異なる形状のチップ部56と、を備えている。
【0034】
中間部55は、雄ネジ部51の先端に雄ネジ部51の外径よりも大きな径を有し、先端側ほど径が小さくなるテーパー形状の鍔部55Aと、鍔部55Aの先端から略同一径で前方に延びる第1円筒部55Bと、第1円筒部55Bの先端から先端側ほど径が小さくなる第1テーパー部55Cと、その第1テーパー部55Cの先端から略同一径で前方に延びるとともに長手方向略中央部が所定角度θ2(
図4(b)では165度下方へ)折れ曲がった第2円筒部55Dと、を備えている。第1円筒部55Bの先端部の左右両側のそれぞれには、中間部55を2つの指で支持して創部を清浄化している最中に、中間部55が回転しないように中間部55を確実に支持するためのフラット面55fが形成されている。尚、第1実施形態の鍔部52A及び第2実施形態の鍔部52A及び第3実施形態の鍔部55Aの外径寸法Sは、いずれも同一寸法にしているが、異なる寸法であってもよい。
【0035】
チップ部56は、第2円筒部55Dの先端から延びており、該チップ部56の長手方向に長い略楕円状(又は略長円状であってもよい)で、かつ、板厚方向のうちの一側に傾斜面を構成する湾曲形状の窪み部56Hを備えた略スプーン形状に構成されている。また、窪み部56Hの基端側内面に、チューブ6に供給される液体を人体の組織に吐出するための吐出口56Tを備えている。この吐出口56Tから吐出される液体は、チップ部56の長手方向に真っ直ぐ吐出するように構成され、窪み部56Hの先端側内面56aに当たる。また、チップ部56は、先端側ほど厚みが薄くなっている。吐出口56Tから吐出される液体は、先端(前方)側へチップ部56の下面と略平行な状態で吐出されて、前記傾斜面である窪み部56Hの先端側内面56aに当たって向きが変わり、除去すべき人体の組織に当たる。
【0036】
上記のように、チップ部56が略楕円状であり、しかも左右幅が第1実施形態のチップ部53の幅方向の寸法W1及び第2実施形態のチップ部54の幅方向の寸法W2よりも狭い幅方向の寸法W3を有しているので、複雑な創傷に対して壊死組織や汚染物質等を擦り取る際に創傷の狭い部分にも対応することができる。また、チップ部56が、板状の一方の面(人体の組織側となる面)に形成され、かつ、長手方向に長い湾曲形状の窪み部56Hを備えている。この窪み部56Hは、それの最大深さHがチップ部56の厚みDの半分以下に構成された略スプーン形状に構成されている。したがって、長手方向に長い窪み部56Hを備えるとともに液体が長手方向に吐出されるので、擦り取った壊死組織や汚染物質等が、窪み部56Hに詰まり難い。しかも、吐出口56Tから吐出される液体が窪み部56Hの先端側内面56aに当たるので、窪み部56Hの先端部で擦り取られた壊死組織や汚染物質等が窪み部56Hの先端側内面56aに付着することを防止できる。
【0037】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0038】
前記第1実施形態~第3実施形態では、チップ5の全長を同一長さL1に設定したが、異なる長さに設定してもよい。
【0039】
また、前記第1実施形態~第3実施形態では、チップ5をハンドピース4にネジにより取り外し可能に固定したが、チップ5及びハンドピース4の一方に係止溝を形成し、この係止溝に係止解除可能に係止する係止突起を他方に備えさせた構成でもよいし、チップ5及びハンドピース4が着脱できないように両者を溶接等により連結してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…超音波デブリードマン器具、2…本体、3…フットスイッチ、4…ハンドピース、5…チップ、6…チューブ、10…チップ、10A…底部、10B…周壁部、51…雄ネジ部、52…中間部、52A…鍔部、52T…吐出口、52f…フラット面、53…チップ部、53A…傾斜面、53B…テーパー面、54…チップ部、54A…傾斜面、54B…テーパー面、54T…傾斜面、54a…両端部、55…中間部、55A…鍔部、55f…フラット面、56…チップ部、56H…窪み部、56T…吐出口、56a…先端側内面、D…厚み、H…最大深さ、K…開口、S…外径寸法、T1…吐出経路、W1,W2,W3…幅方向の寸法、θ1,θ2…所定角度