(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】ダブルシェルファスナキャップ
(51)【国際特許分類】
F16B 37/14 20060101AFI20231215BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20231215BHJP
B64D 45/02 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
F16B37/14 Z
B64C1/00 A
B64D45/02
F16B37/14 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019160784
(22)【出願日】2019-09-04
【審査請求日】2022-09-01
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ローパー, クリストファー スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト, ランドル コリン
(72)【発明者】
【氏名】クォン, エディ
(72)【発明者】
【氏名】ダマゾ, ジェイソン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ハンゼン, ダリン エム.
(72)【発明者】
【氏名】オマスタ, マーク ランダル
(72)【発明者】
【氏名】シュティルケ, モーガン エー.
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-517941(JP,A)
【文献】特表2014-508262(JP,A)
【文献】特開2014-206200(JP,A)
【文献】特開2002-227819(JP,A)
【文献】特開2015-061983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0169266(US,A1)
【文献】中国実用新案第204628221(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/14
B64C 1/00
B64D 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放されている第1の端部(31)、第2の端部(32)、ファスナ(110)の上に延在するようにサイズ決定された内部空間(35)を備える内側シェル(30)であって、前記内部空間(35)に対して開かれ、前記第1の端部(31)と前記第2の端部(32)との間に配置された窓(36)を有する内側シェル(30)と、
前記内側シェル(30)を覆い、開放された第1の端部(21)と第2の端部(22)を備える外側シェル(20)であって、前記開放された第1の端部(21)と前記第2の端部(22)との間に配置された窓(26)であって、前記外側シェル(20)の外部から前記内側シェル(30)の前記内部空間(35)までの見通し線を遮るため、前記内側シェル(30)の前記窓(36)から離れて位置合わせされる前記外側シェル(20)の窓(26)をさらに備える外側シェル(20)と、
前記内側シェル(30)と前記外側シェル(20)との間のギャップ(60)と、
前記内側シェル(30)の前記内部空間(35)と前記外側シェル(20)の外部との間に延在する流路(40)であって、前記内側シェル(30)の前記窓(36)、前記外側シェル(20)の前記窓(26)、及び前記ギャップ(60)を通って延在する流路(40)と、
を備えるカバー。
【請求項2】
前記外側シェル(20)は前記ギャップ(60)に面する内面(23)を備え、前記内側シェル(30)は前記ギャップ(60)に面する外面(34)を備え、
前記ギャップ(60)は、前記外面(34)と前記内面(23)との間に
、一続きのギャップ(60)
として延在している、請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
前記外側シェル(20)は前記内側シェル(30)に面する内面(23)を備え、前記内側シェル(30)は前記外側シェル(20)に面する外面(34)を備え、
前記カバーは、前記内面(23)
と前記外面(34)
との間に前記ギャップ(60)
を横切って延在する、一又は複数の延在部(69)をさらに含む、請求項
1に記載のカバー。
【請求項4】
前記内側シェル(30)
は複数の前記窓(36)
を有し、前記外側シェル(20)
は複数の前記窓(26)
を有し、前記外側シェル(20)の外部から前記内側シェル(30)の前記内部空間(35)までの見通し線を遮るため、前記外側シェル(20)の
複数の前記窓(26)の各々は、前記内側シェル(30)の
複数の前記窓(36)の
いずれからもオフセットされている、請求項1から3のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項5】
前記内側シェル(30)の
複数の前
記窓(36)は、前記内側シェル(30)の表面積の0.1%~90%を
占め、前記外側シェル(20)の
複数の前
記窓(26)は、前記外側シェル(20)の表面積の0.1%~90%を
占める、請求項4に記載のカバー。
【請求項6】
前記内側シェル(30)及び前記外側シェル(20)の前記第1の端部(31、21)の各々は接触平面に位置合わせされ、前記外側シェル(20)の外部から前記接触平面までの見通し線を遮るため、前記外側シェル(20)の前記窓(26)は、前記内側シェル(30)の前記窓(36)から離れて配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項7】
前記内側シェル(30)又は前記外側シェル(20)のうちの一方から延在する延在部(27、37)をさらに備え、前記内側シェル(30)又は前記外側シェル(20)のうちの他方に配置される受容部(27、37)をさらに備え、前記外側シェル(20)に対する前記内側シェル(30)の回転及び平行移動を防止するため、前記延在部(27、37)は前記受容部(27、37)に係合する、請求項1から6のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項8】
前記カバー(10)
が前記ファスナ(110)に固定
される、請求項1から7のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項9】
前記内側シェル(30)及び前記外側シェル(20)に取り付けられた基部(50)と、前記基部(50)の端部に配置されるガスケット(56)とをさらに備え、前記ガスケット(56)は前記基部(50)と部材(100)とを合わせるように構成された、請求項1から8のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項10】
2つ以上の前記ファスナ(110)の上に延在するようにサイズ決定され
た1つの前記内部空間(35)を含む、請求項9に記載のカバー。
【請求項11】
ファスナの上にカバーを実装する方法であって、
ファスナ(110)が内側シェル(30)の内部空間(35)に配置され、外側シェル(20)が前記内側シェル(30)の上に延在する状態で、部材(100)から延在する前記ファスナ(110)の上にカバー(10)を配置することと
、
前記内側シェル(30)の窓(36)に対して前記外側シェル(20)の窓(26)をずらして配置して、前記ファスナ(110)が前記外側シェル(20)の外部から見えないように前記外側シェル(20)に対して前記内側シェル(30)を位置合わせし、前記内側シェル(30)の前記内部空間(35)から前記外側シェル(20)の外部まで延在する流路(40)であって、前記内側シェル(30)の前記窓(36)を通り、前記内側シェル(30)と前記外側シェル(20)との間に形成されたギャップ(60)に沿って、さらに前記外側シェル(20)の前記窓(26)を通って延在する流路(40)を形成することと、
を含む方法。
【請求項12】
前記流路(40)が0.1mm~2.0mmの水力直径を有する少なくとも1つの部分を有した状態で、前記外側シェル(20)に対して前記内側シェル(30)を位置合わせすることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カバー(10)の基部(50)を前記ファスナ(110)に接続することをさらに含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
1つの前記内部空間(35)に2つ以上の前記ファスナ(110)
が配置されるように前記カバー(10)を配置することをさらに含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、発火を消火するための装置及び方法に関し、より具体的には、発火を消火するためのファスナのカバー、及びファスナの上にカバーを配置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙産業では、航空機への落雷は懸念事項となっているが、これは落雷が電気アーク、高温ガスを生み出す材料の蒸発、及び/又は蒸気性燃料混合物を発火させうる加熱、を引き起こしうるためである。雷は通常、危害を及ぼすことなく航空機を通過するが、新しい航空機の設計では、落雷のエネルギーをシャントする、及び/又は消散させる金属及び導体が少ない複合材料が組み込まれている。
【0003】
航空機への落雷が起こっているときには、高電流が航空機の導電性経路を通って伝播する。ある種の航空機で使用され、パネルの境界面での電気接続が十分でない可能性がある複合材料の非等方性電気伝導により、電流は、ある複合材パネルから別の複合材パネルへ伝播するとき、ファスナを通過することがありうる。ファスナを通過する間、電流は、(安全対策が講じられていないときには)可燃性の燃料蒸気と相互作用しうる電気アーク、高温ガス、及び/又は高温粒子などの電磁効果を引き起こすことがある。このような抑制できないエネルギーの放出は、航空機の燃料タンクに発火のリスクをもたらしうる。典型的な商用航空機では、数百個から数千個のファスナが燃料タンクに延在しうるため、その各々は、落雷時に発火を防止するように構成されなければならない。
【0004】
安全対策として、ファスナは、落雷の結果として形成されうるアーク、高温ガス、又は高温粒子から、燃料タンク内の燃料混合物を密封するポリスルフィドキャップシールで被覆されうる。しかしながら、このようなキャップには、落雷の間も無傷で機能し続ける気密シールが必要となる。気密シールがないと、燃料がファスナに接触すること、及び/又はアーク、高温ガス、又は高温粒子がシールされていないキャップを迂回しうるため、発火のリスクがある。これに加えて、環境への曝露(例えば、熱サイクル)及び/又はファスナでの電磁効果はシールに損傷を与えることがある。強靭な気密シールを実現することは、航空機ごとに数千回も繰り返すことが必要となる労働集約的な工程である。これに関連する実装の時間並びに検査の時間は、航空機のコストを増大させ、製造期間を長期化させる。
【発明の概要】
【0005】
一態様は、開放されている第1の端部、第2の端部、及びファスナの上に延在するようにサイズが決定された内部空間を有する内側シェルを含むカバーを対象としている。内側シェルは内部空間に開かれた窓を有し、第1の端部と第2の端部との間に配置される。外側シェルは内側シェルを覆う。外側シェルは、開放されている第1の端部と第2の端部とを含む。外側シェルはさらに、開放端部と第2の端部との間に配置された窓を含む。外側シェルの外部から内側シェルの内部空間までの見通し線を遮るため、外側シェルの窓は内側シェルの窓から離れて位置合わせされる。内側シェルと外側シェルとの間にはギャップが配置される。流路は、内側シェルの内部空間と外側シェルの外部との間に延在する。流路は延在し、内側シェルの窓、外側シェルの窓、及びギャップを通過する。
【0006】
一態様は、内側シェルを有するカバーと、開放端部と閉鎖端部を含む重なり配置で入れ子になる外側シェルとを対象とする。内側シェルと外側シェルはそれぞれ、開放されている第1の端部、内部空間、それぞれの内部空間と連通している少なくとも1つの窓、及び、それぞれの第1の端部と向かい合う第2の端部を含む。カバーは、外側シェルと内側シェルとの間に一又は複数のギャップを含む。少なくとも1つの流路は、内側シェル内の内部空間から外側シェルの外部に向かって延在する。少なくとも1つの流路の各々は、内側シェルの少なくとも1つの窓、外側シェルの少なくとも1つの窓、及び、2つの窓の間に延在する一又は複数のギャップのうちの1つを通って延在する。
【0007】
一態様は、ファスナの上にカバーを実装する方法を対象としている。方法には、内側シェルの内部空間にファスナが配置され、内側シェルの上に外側シェルが延在する状態で、部材から延在するファスナの上にカバーを配置することが含まれる。方法には、内側シェルの窓に対してずらして配置された外側シェルを通る窓と、ファスナの上のカバーとを位置合わせすること、及び、カバーの外側シェルの外部からファスナが見えないようにすること、が含まれる。方法には、外側シェルに対して内側シェルを位置合わせすること、及び、内側シェルの内部空間から外側シェルの外部まで延在する流路を形成すること、が含まれる。流路は、内側シェルの窓を通り、内側シェルと外側シェルとの間に形成されたギャップに沿って、さらに外側シェルの窓を通って延在する。
【0008】
上述の特徴、機能、及び利点は、様々な態様において単独で実現することができ、又は、さらに別の態様において組み合わせることができるが、これらの詳細は、以下の説明及び添付図面を参照することによって確認することができる。
【0009】
本開示の各種の例について、ここまで概略的に説明してきたが、ここで添付の図面を参照する。図面は、必ずしも正寸で描かれている訳ではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態による、部材に取り付けられたファスナの上に延在するカバー、及び、破線で示した被覆済みの内側シェルの側面図である。
【
図2A】一実施形態による、部材に取り付けられたファスナの上に延在するカバーの側面図である。
【
図2B】線II-IIに沿って切り取られた、
図2Aのカバーの断面図である。
【
図3】一実施形態による、外側シェルの斜視図である。
【
図4】一実施形態による、外側シェルの斜視図である。
【
図5】一実施形態による、外側シェルの斜視図である。
【
図6】一実施形態による、内側シェルの斜視図である。
【
図7】一実施形態による、内側シェルの斜視図である。
【
図8】一実施形態による、外側シェル内に配置された内側シェルの断面図である。
【
図9】一実施形態による、内側シェルと外側シェルとの間のギャップを含むカバーの側断面図である。
【
図10】一実施形態による、外側シェル内に配置された内側シェルの断面図と、内部空間から続く流路である。
【
図11】一実施形態による、カバーを通って延在する流路の概略図である。
【
図12】一実施形態による、カバーを通って延在する流路の概略図である。
【
図13】一実施形態による、カバーを通って延在する流路の概略図である。
【
図14】一実施形態による、カバーの斜視図である。
【
図15】一実施形態による、
図14のカバーの基部の斜視図である。
【
図17】一実施形態による、ファスナの上に延在するカバーの断面図である。
【
図20】一実施形態による、複数のファスナの上に延在するカバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、ファスナ110の上に延在するカバー10を概略的に示している。ファスナ110は、ヘッド113と本体119とを含む。本体119はカバー10内に配置され、破線で示されている。図示したように、カバー10は本体119を覆うが、他の実施形態では、カバー10はヘッド113を覆う。カバー10は、ファスナ110の周囲に延在する開放端部11と、ファスナ110の上に延在する閉鎖端部12とを含む空洞13を形成する。カバー10は、外部環境120からファスナ110をシールドする。外部環境120は、可燃性の構成要素を含みうる。例えば、外部環境120は航空機の翼内の燃料セルになりうる。カバー10は、一又は複数の窓26を有する外側シェル20を含む。内側シェル30は、外側シェル20内に配置される、又は入れ子になる。内側シェル30は、外側シェル20の一又は複数の窓26からオフセットされた一又は複数の窓36を含む。一又は複数の流路40は、気体、液体及び/又はいくつかの粒子がカバー10を通って流れ、その間に、可燃性の外部環境120を発火させうる熱エネルギー及び/又は力学的エネルギーを取り除くように構成されている。窓26と窓36との間のオフセットによって、流路40の各々は、内側シェル30の内部空間35と外部環境120との間を迂回して延在するようになる。
【0012】
図2A及び
図2Bは、ファスナ110の上に配置されたカバー10を示している。カバー10は、(
図2Bに示した)内側シェル30を覆う外側シェル20を含む。外側シェル20を通る一又は複数の窓26は、内側シェル30を通る一又は複数の窓36からオフセットされている。気体、液体及び/又は粒子がカバー10を通って流れることができるように、一又は複数の流路40は、内部空間35から外部環境120まで延在する。流路40は迂回的なルートを含む。
図2Bに示したように、第1の流路40aは、内側シェル30の窓36、外側シェル20と内側シェル30との間に形成されたギャップ60a、及び外側シェル20の窓26aを通って延在する。第2の流路40bは、内側シェル30の窓36、外側シェル20と内側シェル30との間に形成されたギャップ60b、及び外側シェル20の窓26bを通って延在する。カバー10はまた、外側シェル20の開放端部21と内側シェル30の開放端部31との間に配置された基部50、及び部材100を含む。基部50は、内側シェル30と外側シェル20を支持する。
【0013】
ファスナ110は、ファスナ110によって第2の部材100bに接合された第1の部分100aを有する部材100を通って延在する。ファスナ110は、ヘッド113と本体119とを含む。ファスナ110は、ねじ式ファスナ(例えば、ボルト又はねじ)、スタッド、ピン、リベットなど、任意の好適なファスナになりうる。ファスナ110は、ナット118、座金111、ブッシュなどの一又は複数の結合エレメントを含みうる。ファスナ110は、電流をシャントしうる、及び/又は、発火源になりうる電磁効果に関連しうる、金属及び/又は導電性の構成要素を含む。ファスナ110は、部材100を通って延在しうる、或いは、部材100内で停止しうる。
【0014】
部材100は、(非導電性の)電気絶縁体、及び/又はファスナ110と比較して導電性が低い導電体を含むか、導電性が低い導電体になりうる。部材100はまた、導電性充填材及び/又は強化材料(例えば、金属充填材及び/又は炭素繊維)含むことが可能、及び/又は導電層(例えば、金属膜、金属プレートなど)を含みうる。部材100は、ポリマー(例えば、ポリウレタン)、複合材料(例えば、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)及び/又はガラス繊維)、セラミック、及び/又は金属を含む、及び/又はこれらから構成されうる。部材100は、プレート、シート、材料のウェブ、及び/又は対象物の大きな部分(例えば、翼、胴体)になりうる。
【0015】
カバー10はファスナ110を覆い、環境120へのファスナ110の露出を防止する。環境120は、発火が起こりうるほど燃焼の比熱が低い可燃性ガスの蒸気を含みうる。カバー10は、ファスナ110の少なくとも一部を覆う又はカバーするため、内部空間35内にファスナ110を配置し、これにより、内部空間35内に発生する可燃性の環境の発火がカバー10の外部へ伝播しないように、また、可燃性の外部環境120に火がつかないようにする。
【0016】
外部環境120は、可燃性の物質及び/又は混合物を含みうる。例えば、可燃性の外部環境120は、燃料(例えば、水素、気体、液体及び/又はエアロゾル化した炭化水素、及び/又は、おがくずのような浮遊粒子など)、酸化剤(例えば、酸素、フッ素、及び/又は亜酸化窒素)、また、オプションにより、燃料/酸化剤の混合物の可燃性の範囲内の濃度を有する非反応性希釈剤(例えば、窒素、アルゴン、及び/又はヘリウム)を含みうる。別の実施例として、可燃性の外部環境120は、爆発的な分解(例えば、アセチレン、亜酸化窒素)を起こす気体を含みうる。燃料のさらに具体的な例には、自動車燃料、ディーゼル燃料、航空機燃料、及び/又はジェット燃料などのモーター燃料が含まれる。可燃性の外部環境120には、気体、蒸気、エアロゾル、及び/又は粒子が含まれうる。
【0017】
カバー10は、ファスナ110から放出される高温粒子がカバー10を通過するのを防止することによって、可燃性の外部環境120の発火を防止することができる。本書において、「高温粒子」という用語は、可燃性の外部環境120の発火を引き起こすのに十分なサイズ及び/又は熱エネルギーを有するファスナ110の発火源によって、ファスナ110から放出される粒子を意味する。カバー10は、内部空間35のカバー10から外部環境120まで直線的な経路がないように、また、外部環境120から内部空間35までの見通し線がないように構成されている。また、設計には、外部環境120から内部空間35内に配置されているファスナ110までの見通し線を含まないようにすることができる。屈曲した(或いは、少なくとも非直線的な)流路40に沿ってカバー10を横断する粒子は、内側シェル30及び外側シェル20のうちの一又は複数と衝突し、これにより、その熱エネルギー及び/又は運動エネルギーの少なくとも一部を失う。1つの設計では、平面に沿って位置合わせされた内側シェル30の第1の端部31と外側シェル20の第1の端部21、並びに、外側シェル20の外部から平面までの見通し線を防止するように配置された窓26、36が含まれる。
【0018】
図3は、カバー10の外部を形成する外側シェル20を示す。外側シェル20は、第1の端部21及び第2の端部22を含む。外側シェル20は、内面23と外面24との間で測定される様々な厚みを有しうる。厚みは外側シェル20全体で一定のこともあれば、変化することもある。1つの設計では、0.1mm~10mmの範囲の厚みが含まれる。より具体的な設計では、0.5mm~5mmの範囲の厚みが含まれる。より具体的な設計では、1mm~3mmの範囲の厚みが含まれる。
【0019】
一又は複数の窓26は、外側シェル20を通って延在する。窓26は、同一又は異なる形状及び/又はサイズを含むことができる。
図3は、開放された第1の端部21と閉鎖された第2の端部22との間の側面上に4つの窓26a、26b、26c、26dを有する外側シェル20を含む。
図4は、3つの窓26a、26b、26cを有する外側シェル20を含む。窓26aの形状及びサイズは、窓26b、26c(これらは同じ)の形状及びサイズとは異なる。
図5は、1つの窓26を有する外側シェル20を含む。
【0020】
窓26、36は、カバー10の表面領域の様々な部分に延在しうる。内側シェル30の窓36は、内側シェル30の表面領域の0.1%~90%を含みうる。外側シェル20の窓26は、外側シェル20の表面領域の0.1%~90%を含みうる。
【0021】
図6は、第1の端部31と対向する第2の端部32を有する内側シェル30を含む。内側シェル30は、周囲に延在して、ファスナ110の上に延在するように構成される内部空間35を形成する。一又は複数の窓36は、第1の端部31と第2の端部32との間の内側シェル30を通って延在する。窓36は、同一又は異なる形状及び/又はサイズを含むことができる。
図6は、側面の周囲に離間された4つの窓36a、36b、36c、36dを有する内側シェル30を含む。窓36の各々は、同一の形状及びサイズを含む。
図7は、1つの窓36を有する内側シェル30を含む。
【0022】
内側シェル30及び外側シェル20は、様々な形状及び/又はサイズを含みうる。1つの設計では、ほぼ同じ形状を有する外側シェル20と内側シェル30を含み、外側シェル20はより大きく、内側シェル30の上に延在してこれを覆う。他の設計では、内側シェル30とは異なる形状を有し、内側シェル30の上に延在してこれを覆うサイズにされた外側シェル20を含む。
【0023】
内側シェル30及び外側シェル20は、相対位置を維持するように、及び/又は内側シェル30と外側シェル20が共に係合するように、保持フィーチャ37、27を含みうる。
図8に示したように、内側シェル30の保持フィーチャ37は延在部(extension)を含みうる。外側シェル20の保持フィーチャ27は受容部(receptacle)を含む。保持フィーチャ37、27は、内側シェル30と外側シェル20との間の相対運動を防止するため、共に係合する。これは、内側シェル30及び外側シェル20と窓26、36の相対位置を維持する。
【0024】
図8は、内側シェル30の延在部と外側シェル20の受容部になる保持フィーチャ37、27を含む。この構成は、内側シェル30の受容部と外側シェル20の延在部によって逆になりうる。更に、保持フィーチャ27、37の形状、サイズ、及び/又は構成は、内側シェル30と外側シェル20に関して様々に組み合わせることができる。
【0025】
内側シェル30及び外側シェル20は、同一の材料又は異なる材料から構成されうる。材料には、限定するものではないが、ポリマー、強化ポリマー、ポリマー複合材、及び非導電性セラミックが含まれうる。ポリマーの例には、限定するものではないが、PEEK、ナイロン、PTFE、ポリイミド、アセタール、PFA、Lytex、メラミンフェノール、ポリブチレンテレフタレート、及びトーロンなど、ジェット燃料への曝露に耐えうるポリマーが含まれる。1つの設計では、材料は導電性で、射出成型により内側シェル30及び外側シェル20を形成する。
【0026】
図9及び
図10に示したように、内側シェル30及び外側シェル20は、両者の間に一又は複数のギャップ60を形成しうる。
図9は、(窓36aと窓26aに沿った)第1の流路40aの一部を形成する第1のギャップ60aを含む。第2のギャップ60bは、(窓36bと窓26bに沿った)第2の流路40bの一部を形成する。
図10は、各々が内側シェル30の窓36、外側シェル20の窓26、一又は複数のギャップ60の一部を通って延在する多数の流路40a~40hを含む。一又は複数のギャップ60は、外側シェル20の内面23と内側シェル30の外面34との間に形成される。設計は、内側シェル30及び外側シェル20の全体を横切って延在する1つのギャップ60を含みうる。他の設計は、内側シェル30及び外側シェル20の別々の部分を横切って延在する一又は複数の小さなギャップ60を含みうる。
【0027】
図10に示したように、流路40a~40hが直線に沿って延在せず、むしろ迂回的な形状を含むように、窓26、36はオフセットされている。内側シェル30の窓36が外側シェル20の中実部分に位置合わせされるため、各流路40は迂回的な(すなわち、非直線的な)形状を含む。屈曲した(或いは、少なくとも非直線的な)流路40に沿ってカバー10を横断する粒子は、内側シェル30及び外側シェル20のうちの一又は複数と衝突し、これにより、その熱エネルギー及び/又は運動エネルギーの少なくとも一部を失う。様々な設計では、一又は複数の流路40は、外部環境120から内部空間35、及び/又はファスナ110、及び/又は内部空間35内の部材100までの見通し線を妨げるように構成されうる。
【0028】
図11は、1つの窓36を有する内側シェル30と2つの窓26a、26bを有する外側シェル20を示す。2つの窓26a、26bはそれぞれ、窓36からオフセットされている。第1の流路40aは、窓36を通り、ギャップ60の第1の部分に沿って、窓26aまで延在して通過する。第2の流路40bは、窓36を通り、ギャップ60の第2の部分に沿って、窓26bまで延在して通過する。
【0029】
内側シェル30及び外側シェル20の一又は複数の部分は、接触しうる。これらの一又は複数の部分に沿って、外側シェル20の内面23は内側シェル30の外面34に接触する。この接触はギャップ60をなくし、流路40がこれらの一又は複数の部分を通って延在するのを防止する。ギャップ60を提供するため、一又は複数の内面23及び外面34は、位置を制御するための延在部を含みうる。
図11は、外側シェル20を離間、位置合わせ、及び/又は配置する延在部69を有する、内側シェル30を備える設計を含む。延在部69はまた、ギャップ60の一又は複数の部分に沿った気体及び/又は粒子の流れを防止するため、内側シェル30と外側シェル20との間に物理的な障壁を提供することができる。一又は複数の延在部69は、気体及び/又は粒子が外側シェル20の窓26の一又は複数を通るように配向することができる。
【0030】
図12は、窓36a、36bのペアを有する内側シェル30、及び1つの窓26を有する外側シェル20を含む。第1の流路40aは、窓36a、ギャップ60の第1の部分、及び窓26を通って延在する。第2の流路40bは、窓36b、ギャップ60の第2の部分、及び窓26を通って延在する。
【0031】
図13は、それぞれ1つの窓36、26を有する内側シェル30及び外側シェル20を含む。1つの流路40は、内部空間35から、窓36を通り、ギャップの一部60に沿って、窓26を通って延在する。
【0032】
各流路40は、水力直径DHを含む。水力直径DHは、流路40に沿った1点での潤辺(wetted perimeter)で除算した流量範囲の4倍に等しい。これは方程式[1]で次のように定義される。
[方程式1] DH = 4A/P
A = 流路の断面積
P = 流路の断面の外周
【0033】
流量範囲は、流路40に沿った最小の断面積を含みうる。これは、流路40が沿って延びるギャップ60の一部を含みうる。これはまた、一又は複数の窓26、36に配置されうる。1つの設計では、0.1mm~2mmの範囲内にある水力直径DHが含まれる。より具体的な設計では、0.1mm~1.5mmの範囲内にある水力直径DHが含まれる。より具体的な設計では、0.5mm~1.2mmの範囲内にある水力直径DHが含まれる。
【0034】
流路40は、内側シェル30を通る流れ、ギャップ60を通る流れ、及び外側シェル20を通る流れを含む、別々の部分を含む。限定的な水力直径DHは、一又は複数のこれらの異なる部分にありうる。1つの設計では、1つだけの部分にある限定的な水力直径DHが含まれる。
【0035】
一又は複数の流路40は、流体の排出を可能にするサイズ及び構成にすることができる。これにより、内部空間35及び/又は一又は複数のギャップ60内のポケットに流体が溜まるのを防止する。
【0036】
基部50は、内側シェル30及び外側シェル20を支持するように構成されている。例えば、
図2A及び
図2Bに概略的に示したように、基部50は、内側シェル30及び外側シェル20を支持し、ファスナ110の周りに延在するリングを形成する。基部は多孔質であってよく、或いは非多孔質であってもよい。
【0037】
基部50は、限定するものではないが、結合、融合、溶接、熱かしめ、及び接着剤結合を含む、様々な方法で内側シェル30及び外側シェル20の一方又は両方に連結されうる。例えば、内側シェル30及び外側シェル20の一方又は両方は、エポキシ、シアノアクリレート、ポリウレタン、ポリスルフィドなどの接着剤によって、基部50に連結されうる。別の例として、内側シェル30及び外側シェル20の一方又は両方は、焼結、溶接など(例えば、高温ガス溶接、ポリマー溶接ロッド、高温プレート溶接、接触溶接、高周波溶接、誘導溶接、摩擦溶接、スピン溶接、レーザー溶接、超音波溶接、及び/又は溶剤溶接)によって、基部50に連結されうる。さらに別の例として、内側シェル30及び外側シェル20の一方又は両方、及び基部50は、共に係合するスナップ嵌合フィーチャを有しうる。
【0038】
基部50は、内側シェル30及び外側シェル20と同様の材料、又は同一の材料を含みうるか、その材料で形成されうる。基部50は、ポリマー、セラミック、ガラス、金属、非金属、複合材料、或いはこれらの組み合わせを含みうる、及び/又はこれらから形成されうる。ポリマーの例には、限定するものではないが、PEEK、ナイロン、PTFE、ポリイミド、アセタール、PFA、Lytex、メラミンフェノール、ポリブチレンテレフタレート、及びトーロンなど、ジェット燃料への曝露に耐えうるポリマーが含まれる。1つの設計では、基部50は、限定するものではないが、アルミニウム、チタン、鉄鋼などの金属構成要素から構成されうる。
【0039】
基部50は、ファスナ110に取り付けられうる。アタッチメントは、基部50から延在してファスナ110につながる一又は複数のエレメントと、ファスナ110から延在して基部50につながる一又は複数のエレメントと、及びこれらの組み合わせとを含みうる。追加的に又は代替的に、アタッチメントは接着剤を含むことができる。さらに、接着剤は基部50を部材100に接続することができる。アタッチメントには、限定するものではないが、ポリスルフィドなどの様々な接着剤が使用されうる。
【0040】
図14は、内側シェル30及び外側シェル20と基部50を含むカバー10を示している。
図15は、中央開口部59を備える一般的に環状形状を有する基部50を示している。基部50が内側シェル30及び外側シェル20に取り付けられると、開口部59は内側シェル30の内部空間35と位置が揃う。保持フィーチャは中央開口部59の周りに延在し、ファスナ110と係合する。保持フィーチャはそれぞれ、エントリスロット51、保持カンチレバー52、及び保持スロット53を含む。
【0041】
図16は、基部50に係合するファスナ110を示している。ファスナ110は、ナット118に係合するねじ山を有する本体119を含む。座金111は本体119の周りに延在し、タブ112を含む。ファスナ110が部材100に実装された後、カバー10がファスナ110の上に適用されうるように、タブ112及びエントリスロット51は、互いに嵌合するように構成されている。エントリスロット51は、保持カンチレバー52まで、また次に保持スロット53まで延在する。保持カンチレバー52は、エントリスロット51のタブ112を保持スロット53に誘導するように構成されている。タブ112及び/又は保持カンチレバー52は、可撓性があるか、及び/又は可撓性アームを有するそれぞれの構造に連結されうる。カバー10は、エントリスロット51のタブ112によって実装されうる。カバー10をねじることにより、タブ112は保持カンチレバー52まで駆動され、最後にはタブ112が保持カンチレバー52を除去する。タブ112が保持カンチレバー52を除去すると、タブ112は保持スロット53に嵌り、及び/又は保持カンチレバー52が所定の場所に嵌り、保持スロット53内にタブ112を留めることができる。タブ112及び/又は保持カンチレバー52は、タブ112が保持スロット53内に保持されると(例えば、適切に装着されたことを示すため)、クリック音を発する。
【0042】
図14~
図16は4つのタブ112、及び基部50の上の4つの対応する取付フィーチャを示している。他の設計は、異なる数のタブ112と取付フィーチャを含みうる。また、この設計は座金111の一部となるタブ112を含む。しかしながら、タブ112は、座金111、ナット118、本体119などのファスナ110の構成要素のいずれかに連結されるか、これらの一体部分になりうる。
【0043】
図17は、ファスナ110を覆い、プッシュ式スナップロック結合によって結合されるカバー10を示している。基部50は一又は複数のリム54を含み、ファスナ110は一又は複数のショルダー117を含む。ショルダー117は、リム54に係合する面で、ショルダー117と部材100との間にリム54を捕捉する。リム54は、(カバー10の内周全体に広がる)連続的な環状リムになりうるか、カバー10の内周の周りに配置される一又は複数のリム54になりうる。リム54は、カバー10の内周の周りに、ほぼ一様に分散されるか、非対称に分散されうる。
【0044】
ショルダー117は、2つの座金111a、111bの組み合わせによって形成されうる。上座金111aの下面は、上座金111aと部材100との間の下座金111bによって形成された凹部にショルダー117を形成する。
図17の実施例では、リム54は、カバー10のエッジで環状の突起として形成される。リム54は、カバー10が部材100に向かって押し下げられるにつれて曲がるように構成されている。リム54がショルダー117を越えて押し下げられると、リム54は、
図17に示したように、ショルダー117と部材100との間にリム54が捕捉される位置に入って弛緩する。
【0045】
図18及び
図19は別の基部50を示す。基部50は、閉鎖された中央開口部59を備える環状形状を有する本体57を含む。カンチレバーレッグ58は、本体57の内面から中央開口部59へ向かって外向きに延在する。レッグ58の端部は、本体57の内面から内側に向かって放射状に離間されうる。ペグ55もまた、本体57の内面に沿って配置されうる。ガスケット56は、レッグ58と本体57の内面との間に配置されうる。ガスケット56はさらに、ペグ55の端部と本体57の底面エッジとの間に配置される。ガスケット56は、平坦でない形状を有しうる部材100に基部50を合わせることができる。例えば、航空機の部材100の複合構造物は一般的に滑らかではなく、凹凸を含むことがある。ガスケット56は凹凸に順応し、許容される所定の混合物及び発火源よりも大きな水力直径HDを有する内部空間35への流路を塞ぐ。ガスケット56はまた、高温粒子に対して見通し線経路を提供することができる。ガスケット56は環状形状を含み、基部50の周りに延在する。ガスケット56は、限定するものではないが、例えばニトリルゴム、フルオロシリコンゴムなどの様々な材料から構成されうる。ガスケット56は、異なる位置で同じ厚み、或いは様々な厚みを有しうる。
【0046】
カバー10は、
図20に示したように、複数のファスナ110を包むようにサイズ決定されうる。ファスナ110は、一列に、円形に、アレー状に、クラスタ状に配置されうる。カバー10は、各ファスナ110の上に延在するようにサイズ決定される1つの内部空間35を含みうる。カバー10は、一又は複数のファスナ110の上に延在するようにサイズ決定された、2つ以上の内部空間35を含みうる。異なる内部空間35は、一又は複数の壁によって分離されうる。カバー10はさらに、複数のファスナ110の各々を接続するように構成される。
【0047】
カバー10は、部材100の上に配置される。
図9に示した1つの設計では、カバー10は内側シェル30及び外側シェル20によって形成される。内側シェル30の第1の端部31と外側シェル20の第1の端部21は、部材100に接触する共通平面Pに沿って位置合わせされうる。他の設計では、内側シェル30と外側シェル20との間に配置された基部50と部材100を有するカバー10が含まれる。基部50の底面エッジは部材100に接触する。いくつかの設計では、カバー10と部材100との間には間隙がある。この間隙は、スペーサ(例えば、Oリング、ガスケット)、及び/又は接着剤(例えば、エポキシ、シアノアクリレート、ポリウレタン、ポリスルフィドなど)で、少なくとも部分的に充填されうる。間隙の未充填領域は、初期段階の火炎フロント及び/又は高温粒子が(間隙を通って)カバー10の周りに伝播すること、及び外部環境120の発火の可能性を防止するように、サイズ決定及び/又は配置される。例えば、間隙の未充填領域は、可燃性の環境130の消炎距離(quenching distance)又は関連パラメータよりも小さな寸法を有しうる。カバー10と充填されていない部材100(すなわち、間隙の未充填領域)は1mm未満、0.8mm未満、又は0.5mm未満になりうる。
【0048】
カバー10は、様々な状況で使用されうる。複合材翼航空機の翼燃料タンクなど、燃料タンクでの使用が含まれる。ファスナ110は、燃料空間及び/又は(例えば、燃料タンクの内部に広がる)アレージスペース(ullage space)に曝露されること、並びに、燃料空間及び/又はアレージスペースに接触する一又は複数の部材100に埋め込まれること及び/又は連結されることがありうる。部材100は、燃料タンクの内部にある、及び/又は燃料タンク内部の少なくとも一部を画定する、炭素繊維複合材パネル、パーティション、ストリンガなどになりうる。カバー10はファスナ110を覆い、ファスナ110と共に配置される。ファスナ110に関連する発火源は、ファスナ110での発火事象を発現させ、開始させうる。例えば、落雷、燃料の動きによる摩擦などにより、放電を引き起こすか、潜在的な発火源になるのに十分な電荷及び/又は電圧が、ファスナ110に発生しうる。発火事象は、カバー10の内部空間35内に、発火核(ignition kernel)、初期段階の火炎フロント、及び/又は圧力波を含む。発火核はカバー10によって消され、初期段階の火炎フロントはカバー10を横切るにつれて消され、及び/又は圧力波はカバー10によって失われ、及び/又は阻止されうる。
【0049】
カバー10は、様々な状況で使用されうる。1つの状況として、航空機燃料タンクでの使用が含まれる。カバー10は、燃料輸送、燃料保管、採掘作業、化学処理、金属製造、発電所の建設及び運用、並びに、塵、おがくず、石炭、金属、粉末、及び/又は穀物などの可燃性粒子に関わる作業を含む、発火の危険性を考慮することが要求される他の用途でも有用になりうる。
【0050】
さらに、本開示は、以下の条項による実施形態を含む。
【0051】
条項1. 開放されている第1の端部(31)、第2の端部(32)、ファスナ(110)の上に延在するようにサイズ決定された内部空間(35)を備える内側シェル(30)であって、前記内部空間(35)に対して開かれ、前記第1の端部(31)と前記第2の端部(32)との間に配置された窓(36)を有する内側シェル(30)と、
前記内側シェル(30)を覆い、開放されている第1の端部(21)と第2の端部(22)を備える外側シェル(20)であって、前記開放された第1の端部(21)と前記第2の端部(22)との間に配置された窓(26)であって、前記外側シェル(20)の外部から前記内側シェル(30)の前記内部空間(35)までの見通し線を遮るため、前記内側シェル(30)の前記窓(36)から離れて位置合わせされる前記外側シェル(20)の窓(26)をさらに備える外側シェル(20)と、
前記内側シェル(30)と前記外側シェル(20)との間のギャップ(60)と、
前記内側シェル(30)の前記内部空間(35)と前記外側シェル(20)の外部との間に延在する流路(40)であって、前記内側シェル(30)の前記窓(36)、前記外側シェル(20)の前記窓(26)、及び前記ギャップ(60)を通って延在する流路(40)と、
を備えるカバー。
【0052】
条項2. 前記外側シェル(20)は前記ギャップ(60)に面する内面(23)を備え、前記内側シェル(30)は前記ギャップ(60)に面する外面(34)を備え、前記外側シェル(20)はより大きな内側幅を備え、前記内側シェル(30)は前記外面(34)と前記内面(23)との間に形成される前記ギャップ(60)を有するより小さな外側幅を備える、条項1に記載のカバー。
【0053】
条項3. 前記外側シェル(20)は前記内側シェル(30)に面する内面(23)を備え、前記内側シェル(30)は前記外側シェル(20)に面する外面(34)を備え、前記内面(23)及び前記外面(34)は、前記カバー(10)の一又は複数の部分に沿って、前記ギャップ(60)から離れて接触している、条項1又は2に記載のカバー。
【0054】
条項4. 前記内側シェル(30)の前記窓(36)は前記内側シェル(30)の第1の窓であって、前記外側シェル(20)の前記窓(26)は前記外側シェル(20)の第1の窓であって、前記カバー(10)はさらに、前記内側シェル(30)を通って延在する第2の窓(36)と、前記外側シェル(20)を通って延在する第2の窓(26)とを備え、前記外側シェル(20)の外部から前記内側シェル(30)の前記内部空間(35)までの見通し線を遮るため、前記外側シェル(20)の前記第1及び第2の窓(26)の各々は、前記内側シェル(30)の前記第1及び第2の窓(36)の各々からオフセットされている、条項1から3のいずれか一項に記載のカバー。
【0055】
条項5. 前記内側シェル(30)の前記第1及び第2の窓(36)は、前記内側シェル(30)の表面積の0.1%~90%を含み、前記外側シェル(20)の前記第1及び第2の窓(26)は、前記外側シェル(20)の表面積の0.1%~90%を含む、条項4に記載のカバー。
【0056】
条項6. 前記内側シェル(30)及び前記外側シェル(20)の前記第1の端部(31、21)の各々は接触平面に位置合わせされ、前記外側シェル(20)の外部から前記接触平面までの見通し線を遮るため、前記外側シェル(20)の前記窓(26)は、前記内側シェル(30)の前記窓(36)から離れて配置される、条項1から5のいずれか一項に記載のカバー。
【0057】
条項7. 前記内側シェル(30)又は前記外側シェル(20)のうちの一方から延在する延在部(27、37)をさらに備え、前記内側シェル(30)又は前記外側シェル(20)のうちの他方に配置される受容部(27、37)をさらに備え、前記外側シェル(20)に対する前記内側シェル(30)の回転及び平行移動を防止するため、前記延在部(27、37)は前記受容部(27、37)に係合する、条項1から6のいずれか一項に記載のカバー。
【0058】
条項8. 前記カバー(10)を前記ファスナ(110)に固定するため、前記カバー(10)は前記ファスナ(110)に取り付けられる、条項1から7のいずれか一項に記載のカバー。
【0059】
条項9. 前記内側シェル(30)及び前記外側シェル(20)に取り付けられた基部(50)と、前記基部(50)と部材(100)とを合わせるように構成されたガスケット(56)によって前記基部(50)の端部に配置される前記ガスケット(56)をさらに備える、条項1から8のいずれか一項に記載のカバー。
【0060】
条項10. 前記内側シェル(30)の前記内部空間(35)は、2つ以上の前記ファスナ(110)の上に延在するようにサイズ決定される、条項9に記載のカバー。
【0061】
条項11. 開放端部(11)と閉鎖端部(12)とを含む重なり配置で入れ子になった内側シェル(30)と外側シェル(20)を備えるカバーであって、前記内側シェル(30)と前記外側シェル(20)の各々は、
開放されている第1の端部(21、31)と、
内部空間(25、35)と、
前記内部空間(25、35)の各々と連通している少なくとも1つの窓(26、36)と、
前記第1の端部(21、31)の各々と向かい合う第2の端部(22、32)と、
前記外側シェル(20)と前記内側シェル(30)との間の一又は複数のギャップ(60)と、
前記内側シェル(30)の前記内部空間(35)から前記外側シェル(20)の外部へ外向きに延在する少なくとも1つの流路(40)と、
を含み、
前記少なくとも1つの流路(40)の各々は、前記内側シェル(30)の前記窓(36)のうちの少なくとも1つ、前記外側シェル(20)の前記窓(26)のうちの少なくとも1つ、及び前記窓(26、36)の間に延在する一又は複数のギャップ(60)のうちの1つを通って延在する、カバー。
【0062】
条項12. 前記少なくとも1つの流路(40)の各々は、0.1mm~2.0mmの水力直径を有する少なくとも1つの部分を備える、条項11に記載のカバー。
【0063】
条項13. 前記カバーは、流路(40)の各々が、前記内側シェル(30)の前記窓(35)の別の1つ、前記外側シェル(20)の前記窓(26)の別の1つ、及び前記ギャップ(60)の別の1つから延在する複数の流路(40)を備える、条項11又は12に記載のカバー。
【0064】
条項14. 前記内側シェル(30)の一又は複数の窓(36)の各々は、前記外側シェル(20)の外部から前記内側シェル(30)の前記内部空間(35)までの見通し線を遮るため、前記外側シェル(20)の前記一又は複数の窓(26)の各々からオフセットされている、条項11から13のいずれか一項に記載のカバー。
【0065】
条項15. 前記カバー(10)は航空機の燃料セルに取り付けられ、ファスナ(110)に関連する発火源によって引き起こされる燃料セル内の発火事象を消火するように構成されている、条項11から14のいずれか一項に記載のカバー。
【0066】
条項16. 前記内側シェル(30)と前記外側シェル(20)の各々に保持フィーチャ(27、37)をさらに備え、前記カバー(10)の長手軸の周りでの前記外側シェル(20)に対する前記内側シェル(30)の回転を防止するため、前記保持フィーチャ(27、37)が係合されている、条項11から15のいずれか一項に記載のカバー。
【0067】
条項17. ファスナの上にカバーを実装する方法であって、
ファスナ(110)が内側シェル(30)の内部空間(35)に配置され、外側シェル(20)が前記内側シェル(30)の上に延在する状態で、部材(100)から延在する前記ファスナ(110)の上にカバー(10)を配置することと、
前記内側シェル(30)の窓(36)に対してずらして配置された前記外側シェル(20)を通る窓(26)と前記ファスナ(110)の上の前記カバー(10)を位置合わせして、前記ファスナ(110)が前記外側シェル(20)の外部から見えないようにすることと、
前記外側シェル(20)に対して前記内側シェル(30)を位置合わせし、前記内側シェル(30)の前記内部空間(35)から前記外側シェル(20)の外部まで延在する流路(40)であって、前記内側シェル(30)の前記窓(36)を通り、前記内側シェル(30)と前記外側シェル(20)との間に形成されたギャップ(60)に沿って、さらに前記外側シェル(20)の前記窓(26)を通って延在する流路(40)を形成することと、
を含む方法。
【0068】
条項18. 前記流路(40)が0.1mm~2.0mmの水力直径を有する少なくとも1つの部分を有した状態で、前記外側シェル(20)に対して前記内側シェル(30)を位置合わせすることをさらに含む、条項17に記載の方法。
【0069】
条項19. 前記カバー(10)の基部(50)を前記ファスナ(110)に接続することをさらに含む、条項17又は18に記載の方法。
【0070】
条項20. 前記ファスナ(110)の2番目の上に前記カバー(10)を配置することをさらに含む、条項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
本発明は、当然ながら、本発明の本質的な特徴から逸脱しない限り、本書に具体的に提示された方法以外の方法で実施することが可能である。本実施形態は、あらゆる点で、例示的かつ非限定的であるとみなすべきであり、特許請求の範囲の意味及び均等性の範囲内に入るすべての変更は、特許請求の範囲に包含されることが意図されている。