(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】エネルギー管理システム、統括管理装置およびエネルギー管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20231215BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20231215BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231215BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 180
H02J3/38 110
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2019169391
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】西都 一浩
(72)【発明者】
【氏名】若林 靖士
(72)【発明者】
【氏名】北村 聖一
(72)【発明者】
【氏名】山口 宗彦
(72)【発明者】
【氏名】宗 賢太朗
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/078750(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/145456(WO,A1)
【文献】特開2005-135266(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0172159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00
H02J 3/38
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローカル設備のエネルギーをそれぞれ管理する複数のローカル管理装置と、
統括管理装置と、
を備え、
前記ローカル管理装置は、自身が管理する前記ローカル設備における需要量
と複数のローカル設備間の電力融通の単価と前記ローカル設備における発電に用いる燃料の単価と電力会社から購入する電力の単価とに基づいて
、コストを最小とするように前記ローカル設備において電力融通が可能な電力量である電力融通量および前記ローカル設備における発電量を決定する処理を、複数の前記電力融通の単価に関してそれぞれ実施し、複数の前記電力融通の単価と複数の前記電力融通の単価のそれぞれに対応する前記処理の結果とを用いて前記電力融通の単価と前記電力融通量との関係を示すローカル情報を生成し、前記
ローカル情報を前記統括管理装置へ送信し、
前記統括管理装置は、前記複数のローカル管理装置からそれぞれ受信した複数の前記ローカル情報に基づいて、
前記複数のローカル設備間で融通される電力の需要量の総和に対応する需要曲線と前記複数のローカル設備間で融通される電力の供給量の総和に対応する供給曲線とを算出し、前記需要曲線と前記供給曲線との交点を求めることで前記複数のローカル設備内の需要と供給が一致するように電力融通における単価と前記複数のローカル設備のそれぞれの電力融通量を決定することを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項2】
前記ローカル情報は、値の異なる複数の電力融通の単価のそれぞれに対応する電力融通量を含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー管理システム。
【請求項3】
前記ローカル情報は、電力融通の単価と電力融通量との関係を表す関数を示す情報を含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー管理システム。
【請求項4】
前記複数のローカル設備は、それぞれ発電設備を含み、
前記ローカル管理装置は、
自身が管理する前記ローカル設備の電力融通量が決定された後に、自身が管理する前記ローカル設備における需要量が変更された場合、決定された電力融通量を変更しないように前記発電設備における発電量を変更することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のエネルギー管理システム。
【請求項5】
前記ローカル管理装置は、前記ローカル情報を生成する際に、前記発電設備において発電可能な最大電力より低い電力を上限として設定して電力融通量を計算することを特徴とする請求項4に記載のエネルギー管理システム。
【請求項6】
前記ローカル管理装置は、
自身が管理する前記ローカル設備の電力融通量が決定された後に、自身が管理する前記ローカル設備における需要量が変更された場合、需要量の変更量に対応する量だけ電力融通量を変更する変更要求を前記統括管理装置へ送信し、
前記統括管理装置は、前記変更要求に基づいて、前記複数のローカル設備内で需要と供給が一致するよう前記変更要求に対応する前記ローカル設備のそれぞれの電力融通量を変更することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のエネルギー管理システム。
【請求項7】
前記ローカル設備は、蓄電設備を備え、
前記ローカル管理装置は、
自身が管理する前記ローカル設備の電力融通量が決定された後に、自身が管理する前記ローカル設備における需要量が変更された場合、需要量の変更分だけ前記蓄電設備による放電または充電が行われるように、前記蓄電設備の充放電を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のエネルギー管理システム。
【請求項8】
前記統括管理装置は、
電力市場における市場価格の予測値に基づいて、前記電力市場において電力を売る場合の第1の単価を前記予測値に決定し、前記電力市場から電力を買う場合の第2の単価を前記予測値に託送料金を加えた値に決定し、前記電力市場における単価が前記第1の単価に対応する価格以下では最大値まで販売を行い、前記第2の単価に対応する価格以上では最大値まで購入するように、前記電力市場における単価と調達量との関係を示す電力市場情報を生成し、
複数の前記ローカル情報と前記電力市場情報とに基づいて、
前記複数のローカル設備間で融通される電力の需要量の総和に対応する第1の需要曲線と前記複数のローカル設備間で融通される電力の供給量の総和に対応する第1の供給曲線とを算出し、前記第1の需要曲線に前記第1の単価に対応する前記最大値を需要量とみなして加算することで第2の需要曲線を生成し、前記第2の需要曲線に前記第2の単価に対応する前記最大値を供給量とみなして加算することで第2の供給曲線を生成し、前記第2の需要曲線と前記第2の供給曲線との交点を求めることで前記複数のローカル設備内
および前記電力市場における取引の需要と供給が一致するように
、前記電力融通における単価と前記複数のローカル設備のそれぞれの電力融通量と電力市場からの調達量とを決定することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載のエネルギー管理システム。
【請求項9】
サービス提供システム、を備え、
前記サービス提供システムは、
前記ローカル設備の管理者が電力市場を管理する電力取引所へ第1の期間を単位として支払う取引手数料を記憶するとともに、電力取引所への前記取引手数料の支払処理を実施し、
前記第1の期間より長い第2の期間に対応する前記取引手数料の総和を、前記第2の期間の前記管理者への請求額として算出することを特徴とする請求項8に記載のエネルギー管理システム。
【請求項10】
前記サービス提供システムは、
電力市場への入札処理を行うことを特徴とする請求項9に記載のエネルギー管理システム。
【請求項11】
複数のローカル設備のエネルギーをそれぞれ管理する複数のローカル管理装置から
、前記複数のローカル設備間の電力融通の単価と電力融通が可能な電力量である電力融通量との関係を示すローカル情報を受信する通信部と、
前記複数のローカル管理装置からそれぞれ受信した複数の前記ローカル情報に基づいて、
前記複数のローカル設備間で融通される電力の需要量の総和に対応する需要曲線と前記複数のローカル設備間で融通される電力の供給量の総和に対応する供給曲線とを算出し、前記需要曲線と前記供給曲線との交点を求めることで前記複数のローカル設備内の需要と供給が一致するように電力融通における単価と前記複数のローカル設備のそれぞれの電力融通量を決定する融通量決定部と、
を備え
、
前記ローカル管理装置は、自身が管理する前記ローカル設備における需要量と複数のローカル設備間の電力融通の単価と前記ローカル設備における発電に用いる燃料の単価と電力会社から購入する電力の単価とに基づいて、コストを最小とするように前記ローカル設備において電力融通が可能な電力量である電力融通量および前記ローカル設備における発電量を決定する処理を、複数の前記電力融通の単価に関してそれぞれ実施し、複数の前記電力融通の単価と複数の前記電力融通の単価のそれぞれに対応する前記処理の結果とを用いて前記ローカル情報を生成することを特徴とする統括管理装置。
【請求項12】
複数のローカル設備のエネルギーをそれぞれ管理する複数のローカル管理装置と、統括管理装置とを備えるエネルギー管理システムにおけるエネルギー管理方法であって、
前記ローカル管理装置が、自身が管理する前記ローカル設備における需要量
と複数のローカル設備間の電力融通の単価と前記ローカル設備における発電に用いる燃料の単価と電力会社から購入する電力の単価とに基づいて
、コストを最小とするように前記ローカル設備において電力融通が可能な電力量である電力融通量および前記ローカル設備における発電量を決定する処理を、複数の前記電力融通の単価に関してそれぞれ実施し、複数の前記電力融通の単価と複数の前記電力融通の単価のそれぞれに対応する前記処理の結果とを用いて前記電力融通の単価と前記電力融通量との関係を示すローカル情報を生成し、前記
ローカル情報を前記統括管理装置へ送信する第1ステップと、
前記統括管理装置が、前記複数のローカル管理装置からそれぞれ受信した複数の前記ローカル情報に基づいて、
前記複数のローカル設備間で融通される電力の需要量の総和に対応する需要曲線と前記複数のローカル設備間で融通される電力の供給量の総和に対応する供給曲線とを算出し、前記需要曲線と前記供給曲線との交点を求めることで前記複数のローカル設備内の需要と供給が一致するように電力融通における単価と前記複数のローカル設備のそれぞれの電力融通量を決定する第2ステップと、
を含むことを特徴とするエネルギー管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散して配置される複数の設備のエネルギーを管理するエネルギー管理システム、統括管理装置およびエネルギー管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コストの低減、二酸化炭素排出量の低減などを目的として、電力設備の運用を最適化するエネルギー管理が進められている。家庭内、事業所内といった同一敷地内でのエネルギー管理は既に普及しつつあるが、今後は、同一敷地内だけでなく、地理的に離れた電力設備を効率的に運用することへの要求が高まると予想される。
【0003】
特許文献1には、複数のビルなどにそれぞれ設置された電力設備を有効に活用するための技術が開示されている。特許文献1に記載の技術では、統括制御装置が、各電力設備の提供可能な電力量を収集し、収集結果に基づいて利用を希望する利用者へ電力量を割当てる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術によれば、統括制御装置により、提供者が電力を提供するときの提供価格、利用者が電力を利用するときの利用価格を決定している。このため、提供者または利用者は、統括制御装置から提示された価格によって提供可能な電力量、または利用を希望する電力量を変更する可能性があり、提供可能な電力量、または利用を希望する電力量が変更されると、統括制御装置は、再度、利用者へ電力量を割当てる処理を行うことになる。また、上記特許文献1に記載の技術によれば、提供可能な電力量が少ない場合には、提供価格を高くするなど、提示する価格を変更することが記載されており、このように提示する価格が変更されると、さらに、提供可能な電力量または利用を希望する電力量が変更される可能性がある。したがって、上記特許文献1に記載の技術によれば、統括制御装置と提供者および利用者との間で、複数回のやりとりが発生し、最終的に、利用者に割当てる電力量、すなわち融通する電力量が決定されるまでに時間を要するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、融通する電力量が決定されるまでの時間を抑制して融通する電力量を決定することができるエネルギー管理システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるエネルギー管理システムは、複数のローカル設備のエネルギーをそれぞれ管理する複数のローカル管理装置と、統括管理装置と、を備える。ローカル管理装置は、自身が管理するローカル設備における需要量と複数のローカル設備間の電力融通の単価と前記ローカル設備における発電に用いる燃料の単価と電力会社から購入する電力の単価とに基づいて、コストを最小とするようにローカル設備において電力融通が可能な電力量である電力融通量およびローカル設備における発電量を決定する処理を、複数の電力融通の単価に関してそれぞれ実施し、複数の電力融通の単価と複数の電力融通の単価のそれぞれに対応する処理の結果とを用いて電力融通の単価と電力融通量との関係を示すローカル情報を生成し、ローカル情報を統括管理装置へ送信する。統括管理装置は、複数のローカル管理装置からそれぞれ受信した複数のローカル情報に基づいて、複数のローカル設備間で融通される電力の需要量の総和に対応する需要曲線と複数のローカル設備間で融通される電力の供給量の総和に対応する供給曲線とを算出し、需要曲線と供給曲線との交点を求めることで複数のローカル設備内の需要と供給が一致するように電力融通における単価と複数のローカル設備のそれぞれの電力融通量を決定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、融通する電力量が決定されるまでの時間を抑制して融通する電力量を決定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1にかかる広域エネルギー管理システムの構成例を示す図
【
図2】実施の形態1の統括EMSおよびローカルEMSの機能構成例を示す図
【
図3】実施の形態1の統括EMSを実現するコンピュータシステムの構成例を示す図
【
図4】実施の形態1の広域エネルギー管理システムにおける概略処理を示すチャート図
【
図5】実施の形態1のローカル設備における電力と蒸気の供給経路の一例を示す図
【
図6】実施の形態1のローカルEMSにおける処理手順の一例を示すフローチャート
【
図7】実施の形態1のローカルEMSにおける最適化計算により得られる結果の一例を模式的に示す図
【
図8】実施の形態1において各サイトが電力融通により取引可能な電力量の一例を模式的に示す図
【
図9】実施の形態1の統括EMSにおける処理手順の一例を示すフローチャート
【
図10】実施の形態1の需要曲線と供給曲線の一例を示す模式図
【
図11】実施の形態2にかかる統括EMSの構成例を示す図
【
図12】実施の形態2における、ローカル情報に基づく取引可能量と電力市場情報とを示す模式図
【
図13】実施の形態2の需要曲線と供給曲線の一例を示す模式図
【
図14】実施の形態3のローカルEMSにおける変更処理の第1の例を示す図
【
図15】実施の形態3のローカルEMSにおける変更処理の第3の例を示す図
【
図16】実施の形態3のローカル設備の構成例を示す図
【
図17】実施の形態3のローカルEMSにおける変更処理の第4の例を示す図
【
図18】実施の形態4で想定する全体システムの一例を示す図
【
図19】実施の形態4で提供されるサービスの一例を示す図
【
図20】実施の形態4のサービス提供システムの一例を示す図
【
図21】実施の形態4の契約情報に含まれる各サービスの料金を示す情報の一例を示す図
【
図22】実施の形態4の手数料請求情報の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態にかかるエネルギー管理システム、統括管理装置およびエネルギー管理方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる広域エネルギー管理システムの構成例を示す図である。
図1に示すように、本発明にかかるエネルギー管理システムである広域エネルギー管理システム100は、統括EMS(Energy Management System:エネルギー管理システム)1と、複数のローカルEMSの一例であるローカルEMS2-1~2-3とを備える。ローカルEMS2-1~2-3は、それぞれサイト7-1~7-3内に設けられている。なお、
図1では、実線の接続線は通信接続を示し、破線の接続線はエネルギーのやりとりを示している。
【0012】
サイト7-1~7-3間は、電力融通が可能である。サイト7-1~7-3のそれぞれは、例えば、同一法人の複数の事業所、工場などであってもよいし、特定規模電気事業者による自営線供給地域内の需要家であってもよいし、特定規模電気事業者による自営線供給地域外の需要家であってもよい。以下では、サイト7-1~7-3が、同一法人の複数の事業所、工場などである例を説明するが、サイト7-1~7-3は、この例に限定されず、サイト7-1~7-3間で電力融通が可能であり、かつサイト7-1~7-3におけるエネルギーを一括して管理し得るものであればよい。
【0013】
サイト7-i(i=1,2,3)に設けられるローカル設備3-iは、発電設備4-iおよび生産設備5-iを含む。生産設備5-iは、電力を消費するとともに、蒸気を消費する。生産設備5-iは、電力系統6-iおよび発電設備4-iの双方から供給された電力またはいずれか一方から供給された電力を消費することにより動作する。また、生産設備5-iには、発電設備4-iにより生成された蒸気が供給される。電力系統6-1~6-3は、電気会社により管理される商用電力系統であり、電力系統6-1~6-3を管轄する電力会社は、同一であってもよいし少なくとも一部が異なっていてもよい。サイト7-1~7-3間の電力融通は、電力系統6-1~6-3を介して行われる。電力についてはこのように、サイト7-1~7-3間の融通が可能であるが、一般に、蒸気に関しては、サイト7-1~7-3間の融通は難しいため、サイト7-1~7-3内で使用される。
【0014】
生産設備5-iは、製造ラインにおいて生産に用いられる設備だけでなく、事業所、工場における空調設備、照明設備などを含んでいてもよい。また、生産設備5-1~5-3の具体的な構成は、互いに異なっていてもよい。例えば、生産設備5-1~5-3のそれぞれは異なる商品を生産するための異なる製造ラインを含んでいてもよい。発電設備4-1~4-3の構成も、互いに異なっていてもよい。例えば、発電設備4-1は、ボイラと蒸気タービンを含み、発電設備4-2は、ボイラと蒸気タービンと燃料電池を含み、発電設備4-3は、ボイラと蒸気タービンとガスエンジンなどの内燃力発電装置とを含むといったように、発電方式の異なる発電機の組み合わせが含まれていてもよい。
【0015】
ローカルEMS2-1は、サイト7-1に設けられたローカル設備3-1のエネルギーを管理し、ローカルEMS2-2は、サイト7-2に設けられたローカル設備3-2のエネルギーを管理し、ローカルEMS2-3は、サイト7-3に設けられたローカル設備3-3のエネルギーを管理する。このように、ローカルEMS2-1~2-3は、複数のローカル設備3-1~3-3のエネルギーをそれぞれ管理する複数のローカル管理装置である。
【0016】
統括管理装置である統括EMS1は、ローカル管理装置であるローカルEMS2-1~2-3から収集した情報に基づいて、サイト7-1~7-3間の電力融通を管理する。上述したように、ここでは、サイト7-1~7-3は同一法人の複数の事業所、工場などであるため、サイト7-1~7-3間の電力融通は、自己託送により行われる。なお、サイト7-1~7-3が同一法人の複数の事業所、工場などでない場合には、電力融通の具体的方法は異なるが、各方法に応じたコスト管理などが行われれば、本実施の形態のエネルギー管理方法を同様に適用することができる。
【0017】
以下、ローカルEMS2-1~2-3のそれぞれを個別に区別せずに示すときはローカルEMS2と記載し、ローカル設備3-1~3-3のそれぞれを個別に区別せずに示すときはローカル設備3と記載する。また、発電設備4-1~4-3のそれぞれを個別に区別せずに示すときは発電設備4と記載し、生産設備5-1~5-3のそれぞれを個別に区別せずに示すときは生産設備5と記載し、電力系統6-1~6-3のそれぞれを個別に区別せずに示すときは電力系統6と記載する。
【0018】
なお、
図1では、3つのサイト7を図示しているが、サイト7の数は3つに限定されず、2つ以上であればよい。また、
図1では、ローカル設備3の全てが発電設備4および生産設備5を含む例を示しているが、ローカル設備3のうちの一部は発電設備4を含んでいなくてもよく、ローカル設備3のうちの一部は、発電設備4だけであってもよい。
【0019】
次に、統括EMS1およびローカルEMS2の構成について説明する。
図2は、本実施の形態の統括EMS1およびローカルEMS2の機能構成例を示す図である。
図2に示すように、統括EMS1は、通信部11、集計部12、融通量決定部13および記憶部14を備える。
【0020】
通信部11は、他の装置との間で通信を行う。具体的には、通信部11は、少なくとも各ローカルEMS2との間で通信を行う。通信部11は、各ローカルEMS2から受信したローカル情報を記憶部14へ格納する。ローカル情報は、複数のローカル設備3間の電力融通の単価と、電力融通が可能な電力量である電力融通量との関係を示す情報である。ローカル情報は、各ローカルEMS2において自身が管理するローカル設備3における需要量に基づいて算出される。ローカル情報の詳細については後述する。集計部12は、各ローカルEMS2から送信されて記憶部14に格納されたローカル情報に基づいて、需要曲線および供給曲線を生成する。融通量決定部13は、集計部12により生成された需要曲線および供給曲線に基づいて、サイト7間の電力融通における単価と電力融通量を決定する。すなわち、融通量決定部13は、複数のローカルEMS2からそれぞれ受信した複数のローカル情報に基づいて、複数のローカル設備3内の需要と供給が一致するように電力融通における単価と複数のローカル設備3のそれぞれの電力融通量を決定する。統括EMS1の各部の動作の詳細については後述する。
【0021】
ローカルEMS2は、
図2に示すように、通信部21、需要取得部22、運転計画作成部23、ローカル情報生成部24および記憶部25を備える。通信部21は、他の装置との間で通信を行う。具体的には、通信部21は、少なくとも統括EMS1との間で通信を行う。記憶部25には、設備情報、価格情報、需要情報、生産計画および補修計画が格納されている。設備情報は、ローカル設備3を構成する各設備のエネルギー管理に必要な情報を含む。設備情報には、例えば、後述する運転計画の最適化に使用する制約式を求めるための情報が含まれる。価格情報は、発電設備4が使用する燃料の単価、電力会社との契約により定められる電力会社から購入する電力の単価、託送料金、などを含む。需要情報は、生産設備5おける電力および蒸気の需要量の予測値を示す情報である。需要情報は、生産計画に基づいて生成される。生産計画は、例えば、生産設備5により生産が行われる製品と量を時間帯ごとに示す。補修計画は、発電設備4のメンテナンスが行われる時間帯を示す計画である。設備情報、価格情報、需要情報、生産計画および補修計画は、通信部21を介して他の装置から送信されて、記憶部25に格納されてもよいし、図示しないオペレータなどにより入力手段を介して入力されてもよい。
【0022】
需要取得部22は、運転計画の作成までに、運転計画の作成の対象期間に対応する生産計画を取得し、記憶部25へ格納する。上述したように、生産計画は、オペレータなどにより入力されてもよいが、ここでは、通信部21を介して、図示しない他の装置から取得するとする。運転計画は将来の一定期間分作成される。ここでは一定期間を一日とするが、一定期間の長さは一日に限定されず、例えば、半日であっても複数日であってもよい。運転計画作成部23は、記憶部25に格納された設備情報、需要情報、価格情報および補修計画と、に基づいて、将来の一定期間の発電計画、すなわち将来の一定期間の発電設備4の運転計画を生成する。運転計画作成部23は、生成した運転計画を記憶部25に格納する。運転計画作成部23は、後述するように、電力融通における単価ごとに運転計画および電力融通量を算出する。ローカル情報生成部24は、運転計画作成部23により算出された単価ごとの電力融通量を示すローカル情報を生成し、生成したローカル情報を、通信部21を介して統括EMS1へ送信する。ローカルEMS2の各部の動作の詳細については後述する。
【0023】
次に、統括EMS1およびローカルEMS2のハードウェア構成について説明する。統括EMS1は、具体的にはコンピュータシステムにより実現される。
図3は、本実施の形態の統括EMS1を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。
図3に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
【0024】
図3において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等である。制御部101は、本実施の形態のエネルギー管理方法が記述されたエネルギー管理プログラムを実行する。入力部102は、たとえばキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムのユーザが、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータなどを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、コンピュータシステムのユーザに対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する通信回路などである。通信部105は、複数の通信方式にそれぞれ対応する複数の通信回路で構成されていてもよい。出力部106は、プリンタ、外部記憶装置などの外部の装置へデータを出力する出力インタフェイスである。なお、
図3は、一例であり、コンピュータシステムの構成は
図3の例に限定されない。
【0025】
ここで、本実施の形態のエネルギー管理プログラムのうち統括EMS1の処理が記述されたプログラムである第1プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMドライブまたはDVD-ROMから、第1プログラムが記憶部103にインストールされる。そして、第1プログラムの実行時に、記憶部103から読み出された第1プログラムが記憶部103の主記憶装置となる領域に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納された第1プログラムに従って、本実施の形態の統括EMS1としての処理を実行する。
【0026】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、統括EMS1における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0027】
図2に示した集計部12および融通量決定部13は、
図3の制御部101により実現される。
図2に示した記憶部14は、
図3に示した記憶部103の一部である。
図2に示した通信部11は、
図3に示した通信部105により実現される。
【0028】
ローカルEMS2も、統括EMS1と同様に、具体的には、コンピュータシステムにより実現される。ローカルEMS2を実現するコンピュータシステムの構成例は、統括EMS1と同様に、
図3で示される。本実施の形態のエネルギー管理プログラムのうちローカルEMS2の処理が記述されたプログラムである第2プログラムが実行可能になるまでのコンピュータシステムの動作例も、第1プログラムと同様である。
【0029】
図2に示した需要取得部22、運転計画作成部23およびローカル情報生成部24は、
図3の制御部101により実現される。
図2に示した記憶部25は、
図3に示した記憶部103の一部である。
図2に示した通信部21は、
図3に示した通信部105により実現される。
【0030】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
図4は、本実施の形態の広域エネルギー管理システム100における概略処理を示すチャート図である。まず、各ローカルEMS2は、単価と電力融通量との関係を示すローカル情報を生成する(ステップS1)。ローカル情報は、例えばある範囲内での単価ごとの電力融通量を示す情報である。単価ごとの電力融通量の算出方法については後述する。各ローカルEMS2は、ローカル情報を統括EMS1へ送信する(ステップS2)。上述したように、各ローカルEMS2では、将来の一定期間の運転計画を作成するため、ローカル情報についても、運転計画にあわせて同一期間分が作成される。例えば、ローカルEMS2は、運転計画の対象日の2日前に、運転計画およびローカル情報を生成して、統括EMS1へ送信する。
【0031】
統括EMS1は、各ローカルEMS2から受信したローカル情報を用いて電力融通の単価と電力融通量を決定し(ステップS3)、決定した単価と電力融通量を各ローカルEMS2へ通知する(ステップS4)。この後、各ローカルEMS2では、通知された単価と電力融通量に基づいて、運転計画を仮に確定する。各ローカルEMS2は、運転計画の対象日の前日に、仮に確定した運転計画から、需要量、発電量などに変更があるか否かを判断し、変更がある場合には、運転計画を変更する。各ローカルEMS2は、需要量、発電量などに変更がない場合には、仮に確定した運転計画を最終的な運転計画とし、需要量、発電量などに変更があった場合には変更後の運転計画を最終的な運転計画とする。発電設備4は、対応するローカルEMS2によって生成された最終的な運転計画にしたがって運転される。本実施の形態では、運転計画が一旦仮に確定された後の変更方法については特に限定しない。
【0032】
次に、本実施の形態の統括EMS1およびローカルEMS2の詳細な動作について説明する。まず、ローカルEMS2の動作を説明する。ローカルEMS2は、上述したように、ローカル設備3におけるエネルギーを管理する。
図5は、本実施の形態のローカル設備3における電力と蒸気の供給経路の一例を示す図である。
図5に示した例では、発電設備4はボイラ41およびタービン42で構成される。ここでは、ローカルEMS2の動作例の説明において、
図5に示した発電設備4の構成を例に挙げて説明するが、
図5は一例であり、発電設備4の構成は
図5に示した例に限定されない。
【0033】
図5に示した発電設備4では、ボイラ41が燃料を使用して高圧の蒸気を発生させ、高圧の蒸気をタービン42へ供給する。タービン42は、高圧の蒸気の持つ熱エネルギーの一部を用いて発電を行い、圧力の下がった蒸気を排出する。タービン42により発電された電力、タービン42から排出された蒸気は生産設備5へ供給される。タービン42は、発電力を下げることにより、排出する蒸気の圧力を上げることもできる。また、タービン42により発電された電力は電力系統6へ供給されることも可能である。なお、タービン42として、抽気背圧タービンと抽気復水タービンの両方を備えてもよい。
【0034】
図6は、本実施の形態のローカルEMS2における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6では、ローカルEMS2が運転計画を作成する際の処理、すなわち
図4に示したステップS1に相当する処理の手順の一例を示している。まず、ローカルEMS2は、需要情報を取得する(ステップS11)。詳細には、需要取得部22が、生産計画が入力されると生産計画に基づいて需要情報を算出し記憶部25へ格納しておき、ステップS11では、記憶部25から需要情報を取得する。なお、需要取得部22は、生産計画が入力された時点で需要計画を算出せずに、ステップS11で、生産計画に基づいて需要情報を算出するようにしてもよい。需要情報は、将来の一定期間の、時間帯ごとの生産設備5における電力需要量および蒸気需要量を含む。生産設備5が、低圧蒸気と中圧蒸気のように、圧力の異なる蒸気を使用する場合には、需要情報には、圧力ごとの蒸気需要量が含まれる。将来の一定期間は、例えば、上述したように2日後の1日である。
【0035】
次に、ローカルEMS2の運転計画作成部23は、電力融通の単価ごとのくり返しループを示す変数であるiを0に設定する(ステップS12)。また、運転計画作成部23は、電力融通の単価に初期値を設定する(ステップS13)。この初期値は、例えば、ローカル情報として送信する単価の範囲、すなわち対応する電力融通量を計算する単価の範囲の最小値または最大値である。
【0036】
次に、運転計画作成部23は、設備情報、価格情報、補修計画および需要情報に基づいて、目的関数を最小化する運転計画を生成する(ステップS14)。具体的には、運転計画作成部23、例えば次のような手順で目的関数を最小化する運転計画を生成する。
【0037】
まず、時刻tにおける生産設備5の電力の需要量をEd(t)とし、時刻tにおける生産設備5の蒸気の需要量をSd(t)とする。電力の需要量Ed(t)、蒸気の需要量Sd(t)は、上述した需要情報に含まれる。時刻tは、例えば、時刻を1時間刻みで示したものとする。1時間単位で計算を行う場合、運転計画を作成する単位を1日とすると、電力の需要量Ed(t)、蒸気の需要量Sd(t)は、それぞれ24点のデータとなる。また、発電設備4における電力の需要量である設備電力需要量をEf(t)とし、発電設備4における蒸気の需要量である設備蒸気需要量をSf(t)とする。Sd(t)およびSf(t)は、中圧、低圧などの、高圧ではない蒸気の需要量である。設備電力需要量Ef(t)および設備蒸気需要量Sf(t)は、後述するようにボイラ41により生成される蒸気の量に依存する。なお、運転計画の時間刻みは1時間に限定されず、30分など他の値であってもよい。
【0038】
また、Fcostを燃料単価とし、時刻tにおける、電力会社から購入する電力の単価である購入電力単価をEe,cost(t)とし、電力融通の単価をEi,costとする。なお、電力融通の単価は、ステップS13で初期値に設定され、後述するように順次更新されていく。ここでは、電力融通の単価は、計算期間すなわち将来の一定期間のなかでは時間によらず一定としているが、時間によって変える場合にはEi,costではなく、時刻tに依存したEi,cost(t)とする。燃料単価Fcostおよび購入電力単価Ee,cost(t)は、価格情報に含まれる。なお、電力会社から購入する電力の単価は、時刻によって異なることがあるため、時刻tに依存するEe,cost(t)としている。
【0039】
また、時刻tにおけるボイラ41の燃料の使用量をF(t)とし、時刻tにおいてボイラ41が生成する蒸気量をS1(t)とする。時刻tにおいてタービン42が発電する発電量をE(t)とし、時刻tにおいてタービン42から排出される蒸気量をS2(t)とする。また、時刻tにおいて電力会社から購入する電力量である購入電力量をEe(t)とし、時刻tにおける電力融通量をEi(t)とする。なお、電力融通量Ei(t)は、電力が足りない場合すなわち他のサイト7から融通される電力を自サイト7で使用する場合を正とし、電力に余剰がある場合すなわち自サイト7から他のサイト7へ電力を融通する場合を負とする。燃料の使用量F(t)、蒸気量S1(t)、発電量E(t)、購入電力量Ee(t)および電力融通量Ei(t)は、制約式に基づいて目的関数を最小化するように定められるパラメータである。
【0040】
コストを示す目的関数Ocostは、以下の式(1)で表すことができる。なお、以下の式(1)におけるΣは時間に関する総和を示す。
Ocost
=Σ(Fcost×F(t)+Ee,cost(t)×Ee(t)
+Et,cost×Ei(t)) ・・・(1)
【0041】
上記の式(1)内のEt,costは、電力融通により得られる利益または支払う金額の単価である。Et,costは、Ei(t)の正負符号に応じて、以下の式(2)で表すことができる。Ec,costは、自己託送の際に電力会社へ支払う託送料金であり、価格情報に格納されている。一般に、電力の取引では、電力を購入する側が託送料金を支払うため、ここでは、以下のようにEt,costを設定するが、託送料金は、サイト7全体で負担することとして、以下の式(2)で考慮しないようにしてもよい。
Ei(t)≧0のとき Et,cost=Ei,cost+Ec,cost
Ei(t)<0のとき Et,cost=Ei,cost ・・・(2)
【0042】
なお、目的関数としてコストでなく二酸化炭素の排出量を用いることもできる。二酸化炭素排出量を目的関数とする場合、コスト計算における単価(円/kWh)の代わりに、二酸化炭素排出原単位(CO2kg/kWh)を使用する。また、目的関数として、コストと二酸化炭素の排出量との両方を用いることもできる。さらにはコストを示す目的関数を用いる際に二酸化炭素の排出量を制約式として用いることもできる。
【0043】
次に、制約式について説明する。電力のバランスに関する制約式は以下の式(3)、蒸気のバランスに関する制約式は以下の式(4)で表すことができる。
E(t)+Ee(t)+Ei(t)=Ed(t)+Ef(t) ・・・(3)
S2(t)=Sd(t)+Sf(t) ・・・(4)
【0044】
なお、タービン42が複数ある場合には、ボイラ41で生成される蒸気が各タービン42に入力される蒸気の合計値と一致するという制約式が追加され、式(4)のかわりに各タービン42から生産設備5へ供給される蒸気の合計が生産設備5の需要量と一致する制約式となる。また、電力に関しても、上記式(3)のE(t)かわりに、各タービン42から生産設備5へ供給される発電量の合計が用いられる。
【0045】
設備の入出力特性に関する制約式を以下に示す。ボイラ41の入出力特性に関する制約式、タービン42の入出力特性に関する制約式、設備電力需要量Ef(t)の需要特性に関する制約式、および設備蒸気需要量Sf(t)の需要特性に関する制約式は、それぞれ以下の式(5)~(8)で表すことができる。
S1(t)=f1(F(t)) ・・・(5)
E(t)=f2(S1(t),S2(t)) ・・・(6)
Ef(t)=f3(S1(t)) ・・・(7)
Sf(t)=f4(S1(t)) ・・・(8)
【0046】
f1は、ボイラ41の特性関数であり、f2は、タービン42の特性関数であり、f3は、設備電力需要量の特性関数であり、f4は、設備蒸気需要量の特性関数である。f1~f4は、設備情報に含まれる。
【0047】
各値の限界値に関する制約式を以下に示す。燃料の使用量F(t)の限界値に関する制約式、蒸気量S1(t)の限界値に関する制約式、蒸気量S2(t)の限界値に関する制約式、発電量E(t)に関する制約式、購入電力量Ee(t)に関する制約式は、それぞれ以下の式(9)~(13)で表すことができる。なお、電力融通量Ei(t)に限界値がある場合には、同様に電力融通量Ei(t)の制約式を定義してもよい。
Fmin≦F(t)≦Fmax ・・・(9)
S1,min≦S1(t)≦S1,max ・・・(10)
S2,min≦S2(t)≦S2,max ・・・(11)
Emin≦E(t)≦Emax ・・・(12)
Ee,min≦Ee(t)≦Ee,max ・・・(13)
【0048】
Fmin,S1,min,S2,min,Emin,Ee,minは、それぞれ燃料の使用量F(t)、蒸気量S1(t)、蒸気量S2(t)、発電量E(t)、購入電力量Ee(t)の下限の限界値である。Fmax,S1,max,S2,max,Emax,Ee,maxは、それぞれ燃料の使用量F(t)、蒸気量S1(t)、蒸気量S2(t)、発電量E(t)、購入電力量Ee(t)の上限の限界値である。Fmin,S1,min,S2,min,Emin,Ee,min,Fmax,S1,max,S2,max,Emax,Ee,maxは、設備情報に含まれる。
【0049】
運転計画作成部23は、上述した式(3)~(13)に示した制約式をもとに、式(1)に示した目的関数Ocostを最小とする各パラメータを求めることにより、最適な運転計画、すなわち最適な発電量E(t)を求める。この最適化計算には線形計画法、非線形計画法をはじめ、PSO(Particle Swarm Optimization)、GA(Genetic Algorithm)、IA(Immune Algorithm)、SA(Simulated Annealing)、TS(Tabu Search)などのメタヒューリスティクスな最適化手法を用いることができる。最適化計算の方法は、これらに限定されず、どのような方法を用いてもよい。また、上記の目的関数Ocost、制約式など具体的な式の内容は、発電設備4の構成に応じて適宜設定されればよく、上述した例に限定されない。
【0050】
上記の最適化計算では、燃料の使用量F(t)、蒸気量S1(t)、発電量E(t)、購入電力量Ee(t)および電力融通量Ei(t)の各パラメータが決定される。運転計画作成部23は、燃料の使用量F(t)、蒸気量S1(t)、発電量E(t)、購入電力量Ee(t)および電力融通量Ei(t)を、運転計画として記憶部25に格納する。
【0051】
なお、目的関数Ocostを最小とするかわりに、目的関数Ocostが閾値以下となるように、各パラメータを決定することにより運転計画を決定してもよい。閾値は、サイト7を管理する事業者などにより、事業者が許容可能な範囲で定められる。この場合、目的関数Ocostが最小ではない可能性があるが、最適化計算のアルゴリズムによっては解を求めるまでの時間を抑制することができる。
【0052】
図6の説明に戻る。上述したステップS14の後、ローカルEMS2は、電力融通量と単価を記憶する(ステップS15)。詳細には、運転計画作成部23は、決定した電力融通量E
i(t)を、ローカル情報生成部24へ通知する。そして、ローカル情報生成部24が、ステップS14で算出された電力融通量E
i(t)とステップS14の計算で使用された電力融通の単価とをローカル情報として記憶部25へ格納する。
【0053】
次に、運転計画作成部23は、iが、iの上限値であるimaxと一致するか否かを判断する(ステップS16)。imaxは、ローカル情報として送信する単価の範囲と、単価の計算刻みによって決まる。例えば、5円から34円までを1円刻みで計算する場合、30種類の単価で計算を行うことになるため、imaxは29となる。なお、例えば、単価が5円から10円までは計算刻みを2円として単価が10円から29円までは計算刻みを1円とするといったように、単価を計算する際の刻みは均等でなくてもよい。
【0054】
運転計画作成部23は、iがimaxと一致しないと判断した場合(ステップS16 No)、電力融通の単価を変更し(ステップS17)、i=i+1とし(ステップS18)、ステップS14からの処理を再度実施する。運転計画作成部23は、ステップS17では、ステップS13で初期値として、単価の計算範囲の最小値を設定した場合には、計算刻みの分単価を増加させ、ステップS13で初期値として、単価の計算範囲の最大値を設定した場合には、計算刻みの分単価を減少させる。
【0055】
運転計画作成部23は、ステップS16で、iがimaxと一致すると判断した場合(ステップS16 Yes)、処理を終了する。以上の処理により、単価の計算範囲内の複数の単価とそれぞれに対応する電力融通量とがローカル情報として記憶部25に記憶されることになる。ローカル情報生成部24は、ローカル情報を、通信部21を介して、統括EMS1へ送信する。
【0056】
なお、上記の例では、単価ごとの電力融通量をローカル情報として各ローカルEMS2が送信するようにしたが、ローカル情報生成部24が、単価ごとの電力融通量に基づいて、電力融通量を単価の関数として求め、この関数を示す情報をローカル情報として統括EMS1へ送信してもよい。関数の求め方は、単価ごとの電力融通量を示す近似曲線を求める方法であればどのような方法を用いてもよい。このように、ローカル情報は、値の異なる複数の電力融通の単価のそれぞれに対応する電力融通量を含んでいてもよいし、電力融通の単価と電力融通量との関係を表す関数を示す情報を含んでいてもよい。
【0057】
図7は、本実施の形態のローカルEMS2における最適化計算により得られる結果の一例を模式的に示す図である。
図7において、ひし形で示した需要量は、生産設備5および発電設備4の電力の需要量の合計値である。正方形で示した発電量は、上述したステップS14の計算により得られる発電量E(t)である。三角形で示した融通可能量は、他のサイト7へ融通できる電力量を示す。すなわち融通可能量は、上述した電力融通量が負の値になるときの、電力融通量の絶対値に相当する。
図7では、発電量が需要量を上回る時間帯で融通可能量が発生している。
図7では、正の値の電力融通量と電力会社から購入する電力量の図示を省略している。需要量が発電量を上回る時間帯では、需要量と発電量の差分は購入電力および電力融通量のうち少なくとも一方により賄われる。
【0058】
図6を用いて説明した処理により、電力融通の単価ごとに、各時間帯の電力融通量が算出される。電力融通の単価ごとの、各時間帯の電力融通量の計算結果は、サイト7のローカル設備3の構成、生産計画などに依存する。したがって、サイト7ごとに、各時間帯の電力融通量の計算結果が異なることになる。
【0059】
図8は、本実施の形態において各サイト7が電力融通により取引可能な電力量の一例を模式的に示す図である。電力融通により取引可能な電力量は、上述した電力融通量の正負符号を反転したものである。したがって、
図8に示した電力融通により取引可能な電力量は、負の値のときに電力融通によって他のサイト7から電力を購入することに相当し、正の値のときは、電力融通によって他のサイト7へ電力を売ることに相当する。電力融通により取引可能な電力量を、以下、取引可能量とも呼ぶ。
【0060】
図8において、縦軸は電力量であり横軸は電力融通の単価である。取引可能量201はサイト7-1の取引可能量を示しており、取引可能量202はサイト7-2の取引可能量を示しており、取引可能量203はサイト7-3の取引可能量を示している。この電力量は、上述したように、
図6を用いて説明した処理では、将来の一定期間の各時間帯の電力融通量が算出されるが、
図8では、そのうちのある時間帯の電力融通量の計算結果に基づいて算出された取引可能量を示している。
図8に示すように、単価の低いときには、各サイト7は電力融通により電力を購入し、単価が高くなると各サイト7は電力融通により電力を販売するようになる。単価の上昇につれてどの単価で購入から販売に転じるかはサイト7によって異なっており、取引可能量を示す曲線もサイト7によって異なっている。
【0061】
各サイト7の各ローカルEMS2が統括EMS1へローカル情報を送信することにより、統括EMS1には、単価ごとの電力融通量が集まる。このため、統括EMS1は、
図8に示したような各サイトの単価ごとの取引可能量を求めることができる。本実施の形態では、
図4のステップS3に示したように、各サイト7から集まったローカル情報を用いて電力融通の単価と電力融通量を決定する。
【0062】
次に、統括EMS1の動作について説明する。
図9は、本実施の形態の統括EMS1における処理手順の一例を示すフローチャートである。各ローカルEMS2から送信された上述したローカル情報は、通信部11を介して記憶部14へ格納される。統括EMS1の集計部12は、記憶部14に格納されたローカル情報を読み出し、ローカル情報に基づいて、需要曲線と供給曲線を生成する(ステップS21)。具体的には、集計部12は、ローカル情報の送信元のローカルEMS2ごとに、各時間帯の、電力融通量が正の値となる部分すなわち電力取引量が負の値になる部分を抽出し、単価ごとの総和を求め、求めた総和を需要曲線とする。また、集計部12は、ローカル情報の送信元のローカルEMS2ごとに、各時間帯の、電力融通量が負の値となる部分すなわち電力取引量が正の値になる部分を抽出し、単価ごとの総和を求め、求めた総和の絶対値を供給曲線とする。
【0063】
なお、電力融通の単価ごとの運転計画および電力融通量を計算する際の計算刻みが全ローカルEMS2で一致していれば、統括EMS1は、単価ごとの総和を求める際に、各単価に対応する電力融通量をそのまま用いることができる。しかしながら、電力融通の単価ごとの運転計画および電力融通量を計算する際の計算刻みは、全ローカルEMS2で一致していなくてもよい。計算刻みが一致していないものがある場合には、統括EMS1は、補間処理などにより同一の単価に対応する電力融通量を求めて、上述した総和を求める。また、ローカル情報として単価ごとの電力融通量のかわりに、単価に関する電力融通量の関数を示す情報を用いる場合、統括EMS1は、任意の計算刻みで単価ごとの総和を求めることができる。
【0064】
図10は、本実施の形態の需要曲線と供給曲線の一例を示す模式図である。
図10に示した需要曲線301は、上述したように電力融通量が正となる部分を抽出して単価ごとに全ローカルEMS2の電力融通量の総和を求めることにより得られる。
図10に示した供給曲線302は、上述したように電力融通量が負となる部分を抽出して単価ごとに全ローカルEMS2の電力融通量の総和の絶対値を求めることにより得られる。
【0065】
図9の説明に戻る。ステップS21の後、融通量決定部13は、需要曲線と供給曲線を用いて、電力融通の単価と電力融通量を決定する(ステップS22)。ステップS22で決定される電力融通の単価と電力融通量は、サイト7間の電力融通の取引における約定価格および約定量の予定値となる。具体的には、ステップS22では、融通量決定部13は、需要曲線と供給曲線の交点を求めることにより、電力融通の単価と電力融通により取引される総電力量を決定する。この総電力量は各ローカルEMS2の単価ごとの電力融通量の総和に対応するため、単価が決まることにより各ローカルEMS2の電力融通量も決まることになる。なお、電力融通の単価ごとの運転計画および電力融通量を計算する際の計算刻みが全ローカルEMS2で一致しているときには、需要曲線と供給曲線の真の交点ではなく、単価の計算刻みの単位で交点を求める。これにより、各ローカルEMS2のローカル情報のうち交点に対応する価格の電力融通量が、各ローカルEMS2の決定された電力融通量の約定量の予定値となる。需要曲線と供給曲線の真の交点を電力融通の単価の約定価格の予定値とするときには、ローカルEMS2ごとに電力融通量を補間するなどにより対応する電力融通量を求めることができる。
【0066】
融通量決定部13は、時間帯ごとに、電力融通の単価と電力融通量を決定する。
図10に示した例では、交点303で示された位置の単価と電力融通量が約定価格と約定量の予定値となる。
【0067】
ステップS22により、電力融通の単価と電力融通量の決定処理は終了し、その後、融通量決定部13は、通信部11を介して、決定した単価と各ローカルEMS2に対応する電力融通量とをローカルEMS2へ通知する。各ローカルEMS2は、統括EMS1から通知された単価に対応する運転計画をその時点での運転計画として仮に確定させる。なお、このとき、統括EMS1から通知された単価に対応する運転計画をすでに生成して記憶部25に記憶している場合には、記憶している運転計画を用い、統括EMS1から通知された単価に対応する運転計画が記憶部25に記憶されていない場合には、通知された単価を用いてステップS14の処理を実行して運転計画を生成する。本実施の形態では、各ローカルEMS2が単価ごとの電力融通量を算出しており、これに基づいて統括EMS1が電力融通の単価を決定しているので、電力融通の単価が決まれば、各ローカルEMS2は自身の電力融通量を求めることができる。このため、統括EMS1は、単価と電力融通量を各ローカルEMS2へ通知するかわりに、単価のみを各ローカルEMS2へ通知してもよい。
【0068】
なお、以上の説明では、各ローカルEMS2が、ローカル情報として単価と電力融通の関係を示す情報を送信しているので、単価と電力融通の複数の候補を送信していることに相当する。すなわち、単価と電力融通について、幅を持たせた情報を送信していることに相当する。
【0069】
以上の本実施の形態の動作により、統括EMS1は複数のサイト7全体でコストが最適となる、またはコストが閾値以下となるように、電力融通量を決定することができるので、全体のコストを抑制することができる。また、各ローカルEMS2が、運転計画を生成する際に、二酸化炭素の排出量も目的関数に含めている場合、または二酸化炭素の排出量を制約式としている場合には、二酸化炭素の排出量を抑制しつつコストを抑制することができる。
【0070】
ここで、統括EMS1が電力融通の価格を各ローカルEMS2へ提示して、各ローカルEMS2が電力融通量を統括EMS1へ通知する比較例を考える。比較例では、サイト7全体の需要と供給が一致するまで、価格の提示、各ローカルEMS2の計算、各ローカルEMS2から統括EMS1への電力融通量の送信、および統括EMS1における電力融通量のバランスの確認を、くり返し実施する必要がある。これに対して、本実施の形態は、各ローカルEMS2が、単価ごとの電力融通量を示すローカル情報を統括EMS1へ送信し、統括EMS1がローカル情報に基づいて、電力融通の単価および電力融通量を決定するので、統括EMS1は、1回の計算で電力融通の単価および電力融通量を決定することができる。このため、融通する電力量が決定されるまでの時間を抑制して融通する電力量を決定することができる。なお、サイト7間で電力融通が行われる際の電力融通による電力のやりとりの精算は、サイト7が同一企業内などである場合には実際には行われずに熱ティングにより支払われてもよい。
【0071】
実施の形態2.
図11は、本発明の実施の形態2にかかる統括EMSの構成例を示す図である。本実施の形態の広域エネルギー管理システムは、統括EMS1のかわりに統括EMS1aを備える以外は、実施の形態1の広域エネルギー管理システム100と同様である。
図2では、各サイト7のローカルEMS2のみを図示しているが、各サイト7のローカル設備3は実施の形態と同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0072】
図11に示すように、本実施の形態の統括EMS1aは、電力取引所により管理される電力市場における取引を電子的に行う電力市場システム8に通信接続可能であるとともに、電力市場システム8に対して入札を行う入札システム9に通信接続可能である。電力取引所は、例えば、日本卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power Exchange)を例示できるが、これに限定されない。
【0073】
電力市場システム8は、電力の売買に関する電子取引を行う。ここでは、JEPXにおけるスポット市場を前提とし、翌日の30分単位の時間枠の電力が、ブラインドシングルプライスオークション方式により約定される前提とする。また、電力市場システム8は、過去の約定価格などの情報を提供している。
【0074】
図11に示すように、本実施の形態の統括EMS1aは、実施の形態1の統括EMS1に入札情報生成部15を追加し、融通量決定部13のかわりに融通量決定部13aを備えている。また、記憶部14には、ローカル情報に加えて、後述する市場価格情報が格納される。実施の形態1では、統括EMS1は、各サイト7のローカルEMS2から受信したローカル情報に基づいて電力融通の単価および電力融通量を決定した。本実施の形態では、統括EMS1aの融通量決定部13aが、ローカル情報に加えて、さらに電力市場からの購入も考慮して、電力融通の単価および電力融通量を決定する。そして、入札情報生成部15は、融通量決定部13aにより決定された電力市場からの購入量と価格を含む入札情報を生成し、入札情報を、通信部11を介して入札システム9へ送信する。入札システム9は、統括EMS1aから受信した入札情報に基づいて、電力市場システム8への入札を実施する。また、入札システム9は、約定結果を統括EMS1aへ通知する。
【0075】
本実施の形態の統括EMS1aは、実施の形態1の統括EMS1と同様に、
図3に例示したようなコンピュータシステムにより実現される。融通量決定部13aおよび入札情報生成部15は、実施の形態1の融通量決定部13などと同様に、記憶部103に格納されたプログラムが実行されることにより制御部101によって実現される。
【0076】
本実施の形態の統括EMS1aにおける動作の詳細について説明する。本実施の形態では、通信部11が、電力市場システム8から過去の約定価格などの情報を取得して記憶部14に市場価格情報として格納する。なお、ここでは、融通量決定部13aが、過去の約定結果に基づいて約定価格を予測する例を説明するが、約定価格の予測値自体を、電力市場システム8または他の外部の装置から取得するようにしてもよい。
【0077】
融通量決定部13aは、市場価格情報に基づいて、電力融通の単価および電力融通量を決定する対象となる期間の市場価格を予測する。予測方法は、例えば、過去の同一月の同一日のデータに基づいて予測する方法などがあるが、予測方法に制約はなくどのような方法でもよい。
【0078】
本実施の形態の統括EMS1aにおける動作は
図9に示した例と同様であるが、ステップS22の処理が一部異なる。融通量決定部13aは、市場価格の予測値に基づいて、価格と電力市場における取引可能量の関係を示す情報である電力市場情報を生成する。電力市場情報には、ローカル設備3-1~3-3が電力市場で電力を販売する場合の単価と量の関係を示す第1の情報と、ローカル設備3-1~3-3が電力市場から購入する場合の単価と量の関係を示す第2の情報とが含まれる。本実施の形態のステップS22では、融通量決定部13aは、実施の形態1で述べたステップS21の処理で生成された需要曲線と供給曲線に、さらに電力市場情報を加えて、需要曲線と供給曲線とを生成する。融通量決定部13aは、この需要曲線と供給曲線に基づいて、電力融通における単価を決定する。すなわち、融通量決定部13aは、各ローカルEMS2から受信したローカル情報と電力市場情報とに基づいて、ローカル設備3-1~3-3内の需要と供給が一致するように電力融通における単価とローカル設備3-1~3-3のそれぞれの電力融通量と電力市場からの調達量とを決定する。このように、本実施の形態の統括EMS1aは、電力融通の取引におけるプレイヤーとして、各サイト7だけでなく電力市場を加えて、電力融通における単価を決定する。
【0079】
図12は、本実施の形態における、ローカル情報に基づく取引可能量と電力市場情報とを示す模式図である。
図12において、取引可能量201~203は、実施の形態1の
図8と同様であり、それぞれサイト7-1~7-3の取引可能量を示す。市場売可能量400は、上述したように電力市場を1つのプレイヤーとして考えたときに、ローカル設備3-1~3-3が電力市場において電力を売る場合、すなわち電力市場がローカル設備3-1~3-3から電力を買う場合の単価と販売量との関係を示す。市場売可能量400は、市場価格、すなわち市場売の単価以下では、最大値まで販売する形状となっている。なお、電力市場で販売する場合、
図12においては、電力量は負の値であるが、
図12に示した電力量の絶対値が販売量となる。市場買可能量401は、電力市場を1つのプレイヤーとして考えたときに、ローカル設備3-1~3-3が電力市場から電力を買う場合、すなわち電力市場がローカル設備3-1~3-3へ電力を売る場合の単価と調達量との関係を示す。託送料金は、電力の購入者が負担することから、電力を売る際の価格は、市場価格に託送料金を足したものとなる。したがって、市場買の単価は、市場価格に託送料金の単価を加えたものとなる。市場買可能量401は、市場買の単価以上では、最大値まで購入する形状となっている。電力市場情報には、市場売可能量400の形状すなわち電力市場で販売する場合の単価と量の関係を示す第1の情報と、市場買可能量401の形状すなわち電力市場から購入する場合の単価と量の関係を示す第2の情報とが含まれる。
【0080】
なお、ここでは、市場価格の予測値を1つの価格としているが、市場価格の確率的な予測値が用いられてもよい。この場合、例えば、97%以上の確率の予測範囲のなかで価格が高くなるほど取引可能量が増えるような曲線を市場買可能量とする。
図12に破線で示した市場買可能量402は、市場価格の予測値を確率的に求めた場合の市場買可能量を模式的に示したものである。市場価格の予測値を用いる場合、市場売可能量も同様に曲線で表される。
【0081】
図13は、本実施の形態の需要曲線と供給曲線の一例を示す模式図である。
図13の上部に示した図は、実施の形態1で説明した需要曲線301および供給曲線302である。
図13の下部に示した3つの図は、実施の形態2の需要曲線403および供給曲線404を示している。また、交点405は、需要曲線403と供給曲線404との交点を示している。本実施の形態では、需要曲線403が生成される際に、実施の形態1で説明した需要曲線301に、
図12に例示した市場売可能量400が上下反転されて加算される。また、本実施の形態では、供給曲線404が生成される際に、実施の形態1で説明した供給曲線302に、
図12に例示した市場買可能量401が加算される。このため、
図13の下部に示した3つの図では、需要曲線403および供給曲線404は、不連続に変化する箇所がある。
図13の下部に示した3つの図では、比較のため、実施の形態1における交点303を白抜きの丸で示している。
【0082】
実施の形態2では、取引可能量201~203および市場価格によって、
図13の下部に示すように大きく3つのパターンが考えられる。
図13の(a)は、電力市場による売買を考慮しても、需要曲線と供給曲線の交点、すなわち電力融通における単価が変わらない例を示している。
図13の(b)は、交点405が交点303より右側にずれ、市場で販売することにより、実施の形態1に比べて利益が得られる例を示している。
図13の(c)は、交点405が交点303より左側にずれ、電力市場からの購入を考慮することにより、安く電力を調達できる例である。なお、
図13では、市場価格の予測値を単一の値とする例を示しているが、電力市場情報に確率的に予測した情報を用いる場合には電力市場情報の形状に応じて需要曲線403および供給曲線404の形状も変化するが、同様に交点を求めればよい。
【0083】
なお、電力市場から購入する電力量は求めた交点において電力の需要側となるサイト7で使用される計画となる。この需要側となるサイト7が複数存在する場合には、統括EMS1aは、電力市場から購入する電力量を複数のサイト7へ割り当ててもよいし、1つのサイト7に割り当ててもよい。電力市場から購入する電力量の各サイト7への割り当て方法はどのような方法を用いてもよい。例えば、統括EMS1aは、交点における需要量の比率に応じて電力市場から購入する電力量を各サイト7に割り当ててもよいし、電力市場から購入する電力量を各サイト7に均等に割り当ててもよいし、交点において最も需要量の多いサイト7に電力市場から購入する電力量を割り当ててもよい。
【0084】
融通量決定部13aは、実施の形態1と同様に、決定した電力融通における単価と電力融通量を、各ローカルEMS2へ通知する。このとき、融通量決定部13aは、ローカルEMS2にサイト7に割り当てた電力市場から購入する電力量も各ローカルEMS2へ通知してもよい。本実施の形態では、各ローカルEMS2は、電力市場からの購入を考慮せずに、運転計画を作成しているため、統括EMS1aから通知された単価と電力融通量とに基づいて、再度、実施の形態1で述べたステップS14を計算することになる。なお、電力市場から購入する電力量が統括EMS1aから通知されない場合には、融通量決定部13aは、電力市場からの購入を考慮せずに計算したときの電力融通量と、統括EMS1aから通知された電力融通量との差分を、電力市場からの購入する電力量として求めることができる。
【0085】
なお、以上説明した例では、入札システム9と統括EMS1aとを別に設けたが、これに限らず、入札システム9と統括EMS1aを一体化して、統括EMS1aが入札システム9の機能を有するようにしてもよい。
【0086】
なお、以上説明した例では、電力市場からの電力の購入を考慮する例を説明したが、電力市場での電力の販売についても考慮してもよい。この場合、統括EMS1aが電力市場の予測値を各ローカルEMS2へ送信し、各ローカルEMS2が運転計画を生成する際の目的関数に電力市場の予測値と電力市場での販売量を追加し、電力のバランスに関する制約式で右辺に電力市場での販売量を追加する。なお、電力市場からの購入は統括EMS1aで決定するため、電力市場での販売についてのみ考慮する。このようにしておけば、電力市場の価格の予測値が高い場合には、発電量を増やして電力市場で販売するという買いも得られるようになる。この場合、各ローカルEMS2は、電力市場での販売予定量についても、電力融通の単価ごとに統括EMS1aへ送信する。統括EMS1aは、決定した電力融通の単価に対応する電力市場での販売予定量に基づいて入札情報を生成する。
【0087】
なお、以上の説明では、2日前に運転計画を作成する際の処理について説明したが、その後、実施の形態1で述べたように、前日に、電力融通量が変更されることもある。統括EMS1aは、2日前に入札情報をいったん生成するが、その後に変更が生じた場合には、変更後の入札情報を入札システム9へ送信する。入札システム9は、電力市場における入札の締め切り、例えば前日の10時までの変更を反映して、入札を行う。
【0088】
なお、市場価格の予測値より実際の市場価格が高く約定できなかった場合には、統括EMS1aは、電力市場を考慮しない実施の形態1の方法で電力融通の単価と電力融通量を決定しなおし、決定した結果を各ローカルEMS2へ通知する。各ローカルEMS2は、通知された電力融通の単価と電力融通量に基づいて運転計画を再度生成する。
【0089】
以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1と同様である。以上のように、本実施の形態では、統括EMS1aは、実施の形態1と同様にローカル情報を各ローカルEMS2から受信し、ローカル情報と電力市場の価格の予測値とに基づいて需要曲線および供給曲線を生成し、需要曲線および供給曲線に基づいて電力融通の単価と電力融通量を決定するようにした。これにより、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、市場価格の予測値が、電力市場を考慮しない場合の交点の単価より低い場合には、電力融通の単価を低下させることができる。
【0090】
実施の形態3.
次に本発明にかかる実施の形態3の各ローカルEMS2における、運転計画の仮の確定後の変更について説明する。本実施の形態の広域エネルギー管理システムの構成は、実施の形態1または実施の形態2と同様である。以下では、実施の形態1の広域エネルギー管理システム100の構成を例に本実施の形態の動作を説明するが、実施の形態2の構成の場合も同様に本実施の形態の動作を適用可能である。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0091】
本実施の形態では、ローカルEMS2が実施の形態1と同様に、将来の一定期間の運転計画を作成する際に、対応する期間の単価ごとの電力融通量を生成する。将来の一定時間の一例は、2日後の1日間である。統括EMS1は実施の形態1と同様に、ローカル情報に基づいて、電力融通の単価と電力融通量を決定する。各ローカルEMS2は、決定された単価と電力融通量を用いて運転計画を仮に確定させる。一方、この仮の確定の後に、生産計画の変更などにより、電力の需要量を変更する必要が生じることがある。
【0092】
本実施の形態では、運転計画の仮の確定後に、電力の需要量を変更する必要が生じた場合の各ローカルEMS2の動作例について説明する。
図14は、本実施の形態のローカルEMS2における変更処理の第1の例を示す図である。第1の例では、運転計画を仮の確定の後に、電力の需要量および発電量のうち少なくとも一方を変更する必要が生じた場合に、電力融通量を変更せずに、発電量を変更することにより対応する。すなわち、第1の例では、ローカルEMS2は、自身が管理するローカル設備3の電力融通量が決定された後に、自身が管理するローカル設備3における需要量が変更された場合、決定された電力融通量を変更しないように発電設備4における発電量を変更する。
【0093】
図14の上段には、運転計画の仮の確定時におけるローカル設備3-1~3-3のそれぞれの電力の需要量(図では需要量と記載)と、発電量と、電力融通量(図では融通量と記載)とを示している。運転計画の仮の確定後に、ローカル設備3-1で需要量が、計画時すなわち上段に示した仮の運転計画の確定時より、10MWh増加し、ローカル設備3-3で需要量が、計画時より10MWh減少したとする。この場合、第1の例では、電力融通量を変更せず、
図14の下段に示すようにローカル設備3-1を管理するローカルEMS2-1は、発電量を10MWh増加させ、ローカル設備3-3を管理するローカルEMS2-3は、発電量を10MWh減少させる。
【0094】
図14の下段では、需要量の変更により変更される部分を実線の矩形で囲み、需要量が変更されても変更されない部分を破線の矩形で囲んでいる。第1の例では、電力融通量に変更が生じないため、他のサイト7へ影響を与えず、また、統括EMS1を介した調整を必要としない。
【0095】
なお、第1の例では、ローカル設備3の需要量の増加分を発電量の増加ですべて賄うと発電設備4の最大の発電量を超える場合には、ローカルEMS2は電力会社から購入する電力を増やしてもよい。または、ローカルEMS2は、発電設備4の最大の発電量を超えた分の電力融通量を増やすように要求する変更要求を統括EMS1へ通知してもよい。この場合、統括EMS1は、各ローカルEMS2へ計画時からの需要量が減少した場合に減少した量を送信するよう指示し、計画時からの需要量が減少したローカルEMS2は計画時からの需要量の変更量を統括EMS1に通知する。統括EMS1は、全ローカルEMS2からの変更要求と需要量の変更量とを参照して、需要量が減ったサイト7から電力の需要量が増加したサイト7へ電力融通を行うように電力融通量を決定して、決定結果を各ローカルEMS2へ通知する。統括EMS1は、変更要求に対応するサイト7の需要量の増加を他のサイト7からの電力融通により賄うことができない場合には、電力市場からの購入を行ってもよいし、需要量の増加したサイト7に対応するローカルEMS2へ電力会社からの電力の購入を指示してもよい。
【0096】
第1の例では、上述したように、ローカル設備3の需要量の増加分を発電量の増加ですべて賄うと発電設備4の最大の発電量を超える場合には、統括EMS1の介入が必要になる。統括EMS1の介入をなるべく不要とするために、運転計画の生成時に制約式における限界値で、発電量の上限を本来の上限より小さな値としておいてもよい。すなわち、ローカルEMS2は、ローカル情報を生成する際に、発電設備4において発電可能な最大電力より低い電力を上限として設定して電力融通量を計算する。このように、運転計画の生成時に制約式における限界値で、発電量の上限を本来の上限より小さな値としておく方法を第2の例とよぶ。第2の例では、第1の例と変更処理の動作は同様であるが、ローカル設備3の需要量の増加分を発電量の増加ですべて賄うと発電設備4の最大の発電量を超えるケースを、第1の例に比べて抑制することができる。
【0097】
図15は、本実施の形態のローカルEMS2における変更処理の第3の例を示す図である。第1の例および第2の例では、需要量の変更にともなって発電量を変更したが、第3の例では、需要量の変更分発電量を変更する。
図15の上段は、
図14の上段と同様である。
図15に示した例でも
図14の例と同様に、運転計画の仮の確定後に、ローカル設備3-1で需要量が、計画時すなわち上段に示した仮の運転計画の確定時より、10MWh増加し、ローカル設備3-3で需要量が、計画時より10MWh減少したとする。
図15の下段に示すように、第3の例では、ローカル設備3-1を管理するローカルEMS2-1は、電力融通により供給可能な量を10MWh減少させて電力融通量を-10MWhに変更し、ローカル設備3-3を管理するローカルEMS2-3は、電力融通により供給可能な量10MWh増加させて電力融通量を-20MWhに変更する。
【0098】
各ローカルEMS2は、電力融通量を計画時から変更する場合には、変更要求を統括EMS1へ送信する。この変更要求には、電力融通量の計画時からの変更量が含まれる。統括EMS1は、全ローカルEMS2からの変更要求を参照して、需要量が減ったサイト7から電力の需要量が増加したサイト7へ電力融通を行うように電力融通量を決定して、決定結果を各ローカルEMS2へ通知する。すなわち、統括EMS1は、変更要求に基づいて、複数のローカル設備3内で需要と供給が一致するよう変更要求に対応するサイト7のローカル設備3のそれぞれの電力融通量を変更する。統括EMS1は、変更要求に対応するサイト7の需要量の増加を他のサイト7からの電力融通により賄うことができない場合には、電力市場からの購入を行ってもよいし、需要量の増加したサイト7に対応するローカルEMS2へ電力会社からの電力の購入を指示してもよい。
【0099】
次に、変更処理の第4の例について説明する。第4の例では、全サイト7のうち少なくとも一部が蓄電設備を備える。
図16は、本実施の形態のローカル設備3の構成例を示す図である。
図16に示したローカル設備3は、実施の形態1のローカル設備3に蓄電設備30が追加されている。第4の例では、ローカル設備3-1~3-3のうち少なくとも一部が
図16のように蓄電設備30を備える。ここでは、一例として、全サイト7が蓄電設備30を備えることとする。
【0100】
各ローカルEMS2は、例えば、計画時より需要量が減ったときなどに、発電量を変更せずに、発電量の余剰分で蓄電設備30を充電するように計画する。また、ローカルEMS2は、計画時より需要量が増えたときに、発電量を変更せずに、蓄電設備30からの放電により需要量の増加分を賄うように計画する。このように、各ローカルEMS2は、需要量の変更分だけ蓄電設備30による放電または充電が行われるように、蓄電設備30の充放電を制御する。なお、蓄電設備30は、運用の初期には、需要量の増減とは無関係にある程度まで充電されているとする。
【0101】
図17は、本実施の形態のローカルEMS2における変更処理の第4の例を示す図である。
図17の上段は、
図14の上段と同様である。
図17に示した例でも
図14の例と同様に、運転計画の仮の確定後に、ローカル設備3-1で需要量が、計画時すなわち上段に示した仮の運転計画の確定時より、10MWh増加し、ローカル設備3-3で需要量が、計画時より10MWh減少したとする。
図17の下段に示すように、第4の例では、ローカル設備3-1を管理するローカルEMS2-1は、蓄電設備30を10MWh放電するよう計画し、ローカル設備3-3を管理するローカルEMS2-3は、蓄電設備30を10MWh充電するよう計画する。これにより、発電量および電力融通量はともに、計画時から変更されない。このように、第4の例では、蓄電設備30が各サイト7における計画時からの変更を吸収するバッファとして機能するため、需要量が変更になっても、発電量および電力融通量を変更する必要がない。
【0102】
以上のように、本実施の形態では、計画時からの変更処理を例示した。需要量が変更になった場合に、実施の形態1の
図6で示した処理と同様に再度、運転計画の最適化の処理を行って、再度、統括EMS1が、電力融通の単価と電力融通量を決定してもよいが、このような処理を行うと処理の負荷が高くなる。本実施の形態で例示した変更処理を実施することで、処理負荷を抑制することができる。なお、本実施の形態では、実施の形態1で述べた広域エネルギー管理システム100において本実施の形態の変更処理を行う例を説明したが、実施の形態2にも、本実施の形態で述べた変更処理を適用することができる。
【0103】
実施の形態4.
次に、本発明にかかる実施の形態4について説明する。実施の形態2では、統括EMS1aとローカルEMS2の連携によるエネルギー管理について説明した。本実施の形態では、統括EMS1aとローカルEMS2とを開発するサービス提供者、または統括EMS1aとローカルEMS2とを管理するサービス提供者が、これらを利用する顧客に対して、総合的な支援のサービスを提供する例を説明する。以下、本実施の形態では、統括EMS1aとローカルEMS2とを開発するサービス提供者、または統括EMS1aとローカルEMS2とを管理するサービス提供者を、単にサービス提供者とも呼ぶ。
【0104】
図18は、本実施の形態で想定する全体システムの一例を示す図である。サービス提供者は、自身が管理する統括EMS1aとローカルEMS2を、企業、団体などの顧客へ販売またはリースにより提供する。ここでは、複数の事業所を有する企業が顧客である例を説明するが、顧客は企業に限定されない。
【0105】
図18に示すように、顧客が有する複数の事業所は、自家発あり事業所すなわち発電設備を備える事業所と、自家発なし事業所すなわち発電設備を備えない事業所とが混在していてもよいし、全ての事業所が発電設備を備えていてもよい。各事業所には製造ラインを有する工場が設けられ、工場需要計画が作成される。
【0106】
実施の形態1から実施の形態3で述べたサイト7は、これらの事業所に相当し、工場需要計画は、生産設備5における電力および蒸気の需要量の計画に相当する。事業所の下部に記載された矩形のうち、破線で囲まれた処理は、運転計画の生成時の処理に相当し、実線で囲まれた処理は、運転計画の作成の後、に実際の運用までに行われる処理である。系統供給量厳守、需要量監視は、実施の運用までに行われる処理であり、これらの処理により電力融通計画変更判断が行われる。電力融通計画変更判断により変更すると判断された後の処理は、上述した実施の形態3の変更処理に相当する。
【0107】
サービス提供センター500には、実施の形態2で述べた統括EMS1aと、後述するサービス提供サーバとが設けられている。各事業所には、実施の形態2で述べたローカルEMS2が設置されている。サービス提供センター500は、実施の形態2で述べたエネルギー管理だけでなく、顧客へ提供するサービス全般を管理する。また、このサービスには、
図18に示すように、電力取引所へ支払う取引手数料の支払い代行サービスも含まれる。
【0108】
電力取引所の一例であるJEPXは、電力の取引量に応じた取引手数料を、日単位で請求する。上述したように、統括EMS1aが電力市場における取引も考慮して電力融通量などを決定する場合、各事業所を有する顧客が、日単位で取引手数料を支払うことになる。このような日単位の支払いは、支払い金額の管理面および支払い自体の管理の点から、顧客にとってたいへんな手間となる。このため、本実施の形態では、サービス提供者が統括EMS1aなどを提供するサービスとともに、支払い代行サービスなども一括して提供する。これにより、顧客は1つの包括契約を締結するだけで、支払い代行サービスなどのサービスを受けることができ、顧客における様々な管理の処理などを抑制することができ、顧客におけるコストを抑制することができる。
【0109】
図19は、本実施の形態で提供されるサービスの一例を示す図である。
図19に示すように、サービス提供者と顧客とが、電力需給運用業務委託契約、電力取引手数料支払委託契約および広域連携EMSサービス契約を含む包括的な契約を締結することで、顧客は、
図19に示すようなサービスを受けることができる。
【0110】
電力需給運用業務委託契約は、電力需給運用業務に関する契約である。電力需給運用業務は、例えば、需要予測から同時同量監視、市場取引(入札)までを代行する業務であり、サービス提供者が、蓄積した電力需給および取引のノウハウを用いて顧客の運用利益の最大化を図るサービス業務である。詳細には、電力需給運用業務には、例えば、需要予測作成作業、需給計画作成作業、需給調整作業、電力市場の入札執行作業、日報、月報などの作成作業、データ分析作業などが含まれる。
図19に示した(2)電力需給運用代行サービス、および(4)電力需給運用コンサルティングサービスである。また、自己託送を行う場合の託送料金の計算、託送料金の支払いの代行なども(2)電力需給運用代行サービスに含まれていてもよい。
【0111】
電力取引手数料支払委託契約は、
図19に示した(3)取引手数料支払代行サービスに対応する契約である。(3)取引手数料支払代行サービスは、上述したように、電力取引所の取引手数料に関する支払い代行サービスである。
【0112】
広域連携EMSサービス契約は、
図19に示した(1)広域連携EMSクラウドサービス/保守に対応する契約である。(1)広域連携EMSクラウドサービス/保守には、統括EMS1aとローカルEMS2をリースで提供する際に、これらの装置を提供するサービスとこれらの装置の保守に関するサービスである。
【0113】
サービス提供者から顧客へは、例えば、毎月、以下の料金の請求が行われる。
(a)広域連携EMSサービス料
(b)電力需給運用業務委託料
(c)電力取引手数料及び支払委託料
(d)需給運用コンサルティングサービス料
【0114】
サービス提供者は、電力取引所から日単位で顧客に関する取引手数料の請求を受け取り、顧客のかわりに電力取引所へ取引手数料を支払う。そして、サービス提供者は、日単位の請求額を記録しておき、月単位で顧客へ取引手数料を請求する。また、
図19に示すように、さらに、サービス提供者は入札の代行を行ってもよい。すなわち、実施の形態2で説明した入札システム9を、サービス提供者が提供してもよい。
【0115】
サービス提供者は、コンピュータシステムであるサービス提供システムを用いて上記のサービスの提供とサービス提供のための管理を実施してもよい。
図20は、本実施の形態のサービス提供システムの一例を示す図である。
図20に示すように、サービス提供システム501は、
図18に示したサービス提供センター500に、統括EMS1aとともに設けられる。なお、ここでは、サービス提供センター500に、統括EMS1aとサービス提供システム501が設けられる例を説明するが、統括EMS1aとサービス提供システム501は異なる場所に設定されてもよい。
【0116】
サービス提供システム501は、
図20に示すように、通信部511、入札処理部512、手数料集計部513および記憶部514を備える。通信部511は、他の装置との間で通信を行う。具体的には、通信部511は、統括EMS1aから、入札情報を取得して記憶部514へ格納し、統括EMS1aなどから電力融通量、需要量および発電量を取得して、系統運用計画として記憶部514へ格納する。また、通信部511は、電力市場システム8との間の通信、系統電力を管理する図示しない電力管理システムとの間の通信なども行う。通信部511は、記憶部514に格納された系統運用計画を、定期的に、または系統運用計画に変更があったときなどに電力管理システムへ送信する。
【0117】
記憶部514には、上述した各契約における契約内容のうち処理に用いる情報が契約情報として格納されている。例えば、契約情報には各契約で決められているサービスの料金を算出するための情報が含まれる。
図21は、本実施の形態の契約情報に含まれる各サービスの料金を示す情報の一例を示す図である。
図21に示した例では、月単位の各サービスの料金が契約情報として格納されている。
【0118】
また、記憶部514は、上述したように入札情報および系統運用計画を記憶する。また、記憶部514は、電力市場システム8から取得した入札結果を記憶し、電力市場における取引手数料の日ごとの請求金額を示す手数料請求情報を記憶する。
【0119】
入札処理部512は、記憶部514に格納された入札情報に基づいて、電力市場システム8への入札処理、すなわち電力市場への入札処理を行う。詳細には、入札処理部512は、入札情報に、ある時間帯に関して電力を購入する単価と購入量が含まれている場合には、この時間帯と単価と購入量に基づいて、該時間帯の電力を購入するための買い札を示す情報を生成して、この情報を、通信部511を介して電力市場システム8へ送信する。入札処理部512は、ある時間帯に関して入札情報に、電力を販売する単価と販売量が含まれている場合には、この単価と販売量に基づいて、該時間帯の売り札を示す情報を生成して、この情報を、通信部511を介して電力市場システム8へ送信する。
【0120】
入札処理部512は、通信部511を介して電力市場システム8から、入札結果、すなわち約定価格と約定量を受信すると、入札結果を記憶部514に格納する。この約定結果は通信部511を介して統括EMS1aへ送信される。
【0121】
手数料集計部513は、通信部511により格納される日単位の取引手数料を示す情報を手数料請求情報として記憶部514に格納するとともに、支払処理を実施する。支払処理は、例えば、電力取引所が管理する銀行口座への振込を行うための処理である。
図22は、本実施の形態の手数料請求情報の一例を示す図である。
図22に示すように、手数料請求情報は日付と取引量と金額(請求金額)とを含む。手数料集計部513は、毎月例えば定められた日に、記憶部514の手数料請求情報に基づいて1月分の請求金額の合計を算出し、この合計を顧客への請求額として、図示しない表示部などに表示してもよいし、通信部511を介して、図示しない顧客の管理する装置へ送信してもよい。
【0122】
なお、ここでは、取引手数料の請求が日単位でありサービス提供者から顧客への請求が月単位である例を説明するが、取引手数料の請求の単位およびサービス提供者から顧客への請求の単位となる期間はこの例に限定されない。取引手数料の請求が第1の期間単位で行われ、サービス提供者から顧客への請求が第1の期間より長い第2の期間単位で行われればよい。この場合、手数料集計部513は、ローカル設備3の管理者が電力市場を管理する電力取引所へ第1の期間を単位として支払う取引手数料を記憶するとともに、電力取引所への取引手数料の支払処理を実施する。そして、手数料集計部513は、第1の期間より長い第2の期間に対応する取引手数料の総和を、第2の期間の管理者への請求額として算出する。
【0123】
サービス提供システム501は、
図3に例示したようなコンピュータシステムにより実現される。サービス提供システム501としての機能は、実施の形態1の統括EMS1と同様にプログラムにより提供され、プログラムが実行されることにより、コンピュータシステムがサービス提供システム501として機能する。
【0124】
図20に示した入札処理部512および手数料集計部513は、
図3に示した制御部101により実現され、
図20に示した通信部511は、
図3に示した通信部105により実現され、
図20に示した記憶部514は、
図3に示した記憶部103により実現される。
【0125】
なお、以上説明した例では、サービス提供システム501が、入札代行を行う例を示したが、サービス提供システム501が、入札代行を行わない場合、サービス提供システム501は入札処理部512を備えていなくてもよく、この場合、記憶部514は、入札情報および入札結果を記憶しなくてもよい。
【0126】
以上のように、本実施の形態のサービス提供システム501は、サービス提供者が電力市場における取引手数料の支払い代行を行うための処理を実行するようにした。このため、顧客における煩雑な処理を抑制することができ、顧客が負担するコストを抑制することができる。
【0127】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0128】
1,1a 統括EMS、2,2-1~2-3 ローカルEMS、3,3-1~3-3 ローカル設備、4,4-1~4-3 発電設備、5,5-1~5-3 生産設備、6,6-1~6-3 電力系統、7-1~7-3 サイト、8 電力市場システム、9 入札システム、11,21,511 通信部、12 集計部、13,13a 融通量決定部、14,25,514 記憶部、15 入札情報生成部、22 需要取得部、23 運転計画作成部、24 ローカル情報生成部、30 蓄電設備、41 ボイラ、42 タービン、100 広域エネルギー管理システム、500 サービス提供センター、501 サービス提供システム、512 入札処理部、513 手数料集計部。