(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/08 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
B60C9/08 L
B60C9/08 J
(21)【出願番号】P 2019181345
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】坂田 浩一
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0093003(US,A1)
【文献】特開2010-137650(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002631(WO,A1)
【文献】特開2013-147166(JP,A)
【文献】特開2014-108683(JP,A)
【文献】特開2014-024358(JP,A)
【文献】特開2008-302775(JP,A)
【文献】特開2012-096786(JP,A)
【文献】特開2011-251646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部と、
前記トレッド部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部と、
前記一対のサイドウォール部の前記タイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置された一対のビードコアと、
前記トレッド部の前記タイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端から前記タイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部とを備え、前記ビードコア間で連続する内側部材と、
前記内側部材に対し
てタイヤ径方向外側に配置され、前記トレッド部に位置する内端部と、前記内端部から前記タイヤ径方向内側に延びる一対のサイド部と、前記サイド部と連続して設けられ、前記一対のビードコアのうちのいずれかに巻き上げられる巻上部と、をそれぞれ有する一対のプライ片を備える、不連続なプライと、
前記プライの前記タイヤ径方向外側に配置されて前記一対のプライ片の内端部を前記タイヤ径方向外側から覆うベルトと、
前記一対のプライ片の内端部の前記タイヤ径方向内側の面と前記内側部材との間にそれぞれ配置され、前記一対のプライ片と前記内側部材を接合する一対の第1の接合部材と、
前記一対のプライ片の内端部の前記タイヤ径方向外側の面と前記ベルトとの間にそれぞれ配置され、前記一対のプライ片と前記ベルトを接合する一対の第2の接合部材と、を備え、
前記内側部材は、他のプライである空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記一対の第2の接合部材は、前記ベルト
のタイヤ幅方向外側の端部を越えて前記タイヤ幅方向外側まで延びる延設部をそれぞれ備える請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1の接合部材と前記第2の接合部材とは、一体的に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
子午線断面における前記一対の第2の接合部材の延設部の延在方向に沿った長さは、子午線断面における前記ベルトの延在方向に沿った長さの5%以上30%以下の長さで設定されていることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記一対のプライ片は、前記第1の接合部材を介して前記内側部材に接合される接合面部をそれぞれ備え、
子午線断面における前記一対の接合面部の延在方向に沿った長さは、子午線断面における前記プライ片の延在方向に沿った長さの3%以上25%以下の長さで設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1の接合部材及び前記第2の接合部材は500gf以上の粘着力を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された空気入りタイヤのカーカスプライは、一対のビード部間で連続する第1プライと、この第1プライのタイヤ径方向外側に配置された不連続な第2プライとを備える。第2プライは、トレッド部から一対のビード部のいずれかにそれぞれ延びる一対のプライ片を備える。トレッド部の中央には、2枚のプライ片がいずれも存在しない領域、つまり中抜き部が設けられている。第2プライの中抜き部は、基本的に相反する2種類の性能の両立を意図している。一方の種類の性能は、剛性(操縦安定性向上に寄与する)と耐カット性であり、他方の種類の性能は、軽量化とそれによる転がり抵抗低減である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中抜き部を備えたカーカスプライ(以下、「中抜きプライ」ともいう)は、中抜きプライよりも内側に配置される内側部材のタイヤ径方向外側の面に張り付けられている。内側部材のタイヤ径方向外側の面に張り付けられた中抜きプライは、製造工程中に内側部材に対してずれが生じる場合がある。
【0005】
例えば、空気入りタイヤの製造工程中では、円筒状の成型ドラムに巻き付けられた内側部材のタイヤ径方向外側の面に中抜きプライが張り付けられる。その後、内側部材及び中抜きプライのタイヤ幅方向の両端部に、ビードコアが装着される。ビードコアは、内側部材よりも径が小さいため、内側部材と中抜きプライの両端部を縮径した状態で、これらに対して装着される。このとき、中抜きプライの内端部の内側部材に対する位置が、正規の位置からサイド部側(タイヤ径方向内側)にずれる場合がる。
【0006】
上述の中抜きプライの内側部材に対するずれによって、中抜きプライに所望の張力が付与されずに空気入りタイヤの剛性が低下する場合がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された空気入りタイヤは、空気入りタイヤの製造中における内側部材に対する中抜きプライのずれについて考慮されていない。
【0008】
本発明は、中抜き部を備えたカーカスプライの内側部材に対するずれを抑制した空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、トレッド部と、前記トレッド部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部と、前記一対のサイドウォール部の前記タイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置された一対のビードコアと、前記トレッド部の前記タイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端から前記タイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部とを備え、前記ビードコア間で連続する内側部材と、前記内側部材に対してタイヤ径方向外側に配置され、前記トレッド部に位置する内端部と、前記内端部から前記タイヤ径方向内側に延びる一対のサイド部と、前記サイド部と連続して設けられ、前記一対のビードコアのうちのいずれかに巻き上げられる巻上部と、をそれぞれ有する一対のプライ片を備える、不連続なプライと、前記プライの前記タイヤ径方向外側に配置されて前記一対のプライ片の内端部を前記タイヤ径方向外側から覆うベルトと、前記一対のプライ片の内端部の前記タイヤ径方向内側の面と前記内側部材との間にそれぞれ配置され、前記一対のプライ片と前記内側部材を接合する一対の第1の接合部材と、前記一対のプライ片の内端部の前記タイヤ径方向外側の面と前記ベルトとの間にそれぞれ配置され、前記一対のプライ片と前記ベルトを接合する一対の第2の接合部材と、を備え、前記内側部材は、他のプライである空気入りタイヤを提供する。
【0010】
なお、ここでいう、「一対のプライ片の内端部」は、一対のプライ片の最内端部からタイヤ幅方向外側に延びて前記サイド部に連続する部位を含む。
【0011】
プライは一対のプライ片を備え、不連続である。つまり、一対のプライ片の内端部の間には、プライが存在しない中抜き部がある。かかる中抜き部のあるプライを採用したことにより、プライが1枚の連続のプライである場合と比較して、軽量化を図ることができる。
【0012】
第1の接合部材が内側部材とプライ片の内端部との間に配置されている。これにより、一対のプライ片が内端部の間において不連続であることによって、成型時に生じる、内側部材に対するプライ片のずれを抑制することができる。
【0013】
第2の接合部材がベルトのタイヤ幅方向外側の端部とプライとの間に配置されているので、ベルトのプライに対するセパレーションが抑制されて、耐久性を向上させることができる。
また、空気入りタイヤの成型時における第1プライに対する第2プライのずれを抑制できる。
【0014】
前記一対の第2の接合部材は、前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部を越えて前記タイヤ幅方向外側まで延びる延設部をそれぞれ備えてもよい。
【0015】
この構成により、第2の接合部材の端部とベルトの端部とが重複しない。これにより、第2の接合部材の端部とベルトの端部とが重複する場合に比較して、ベルトのタイヤ幅方向外側の端部における応力集中を抑制できる。
【0016】
前記第1の接合部材と前記第2の接合部材とは、一体的に形成されていてもよい。
【0017】
この構成により、1つの接合部材による簡素な構造で、内側部材に対するプライのずれの抑制と、ベルトのタイヤ幅方向外側の端部におけるセパレーションの抑制とを図ることができる。2つの接合部材が一体的に形成されているので、部品点数が削減できる。
【0022】
子午線断面における前記一対の第2の接合部材の延設部の延在方向に沿った長さは、子午線断面における前記ベルトの延在方向に沿った長さの5%以上30%以下の長さで設定されてもよい。
【0023】
この構成により、不必要な重量増を伴うことなく、子午線断面における第2の接合部材の延設部の延在方向に沿った長さをベルトの端部における応力集中を抑制できる長さに設定できる。
【0024】
前記一対のプライ片は、前記第1の接合部材を介して前記内側部材に接合される接合面部をそれぞれ備え、子午線断面における前記一対の接合面部の延在方向に沿った長さは、子午線断面における前記プライ片の延在方向に沿った長さの3%以上25%以下の長さで設定されてもよい。
【0025】
この構成により、不必要な重量増を伴うことなく、一対のプライ片を内側部材に対して充分な接合強度で接合できる。
【0026】
前記第1の接合部材及び前記第2の接合部材は500gf以上の粘着力を有してもよい。
【0027】
この構成により、一対のプライ片の内側部材、及び、ベルトに対する良好な接着性を確保することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、中抜き部を有するカーカスプライを備える空気入りタイヤにおいて、中抜き部を有するカーカスプライの内側部材に対するずれを抑制できるので、操縦安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図。
【
図2】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部及びその周辺の子午線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1から
図3は、本発明の実施形態に係るゴム製の空気入りタイヤ(以下、タイヤという)1を示す。
【0031】
タイヤ1は、トレッド部2、一対のサイドウォール部3、及びリング状の一対のビード部4を備える。
【0032】
トレッド部2はタイヤ幅方向(
図1において符号TWで示す。)に延びている。トレッド部2の表面、つまり踏面には溝2aが設けられている。
【0033】
一対のサイドウォール部3は、トレッド部2の両端からタイヤ径方向(
図1において符号TR)の内側にそれぞれ延びている。
【0034】
一対のビード部4は、一対のサイドウォール部3のタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置されている。個々のビード部4は、ビードコア5とビードフィラー6を備える。ビードコア5は、リング状に束ねられた多数の鋼線を備える。ビードフィラー6は、リング状で、トレッド部2及びサイドウォール部3を構成するゴムよりも硬質のゴムからなる。ビードフィラー6は、ビードコア5のタイヤ径方向外側に隣接して配置された基端6aと、基端6aとは反対側の先端6bとを備え、基端6aから先端6bに向かってタイヤ径方向外側へテーパ状に延びている。個々のビード部4は、ビードコア5とビードフィラー6とを包むように設けられたストリップゴム7を備える。
【0035】
タイヤ1は、ビード部4間にトロイダル状に掛け渡されたカーカス10を備える。本実施形態では、カーカス10は、内側部材としての第1カーカスプライ(以下、「第1プライ」と呼ぶ)11と、第2カーカスプライ(以下、「第2プライ」と呼ぶ)12とを備える。第2プライ12は中抜き部13bを有するプライであるが、第1プライ11は中抜き部を有しない通常のプライである。第1及び第2プライ11,12については後に詳述する。カーカス10の内側、つまりタイヤ1の最内周面には、インナーライナ8が設けられている。
【0036】
図2及び
図3を参照すると、トレッド部2、より具体的にはカーカス10とトレッド部2との間に、無端状のベルト層20が設けられている。本実施形態では、ベルト層20は、2枚のベルト21,22を備える。ベルト21は、カーカス10のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、ベルト22は、ベルト21のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。また、本実施形態では、下層のベルト21のタイヤ幅方向の寸法は、上層のベルト22のタイヤ幅方向の寸法よりも大きく、ベルト21の端部21aは、ベルト22の端部22aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。ベルト21,22は、スチール製又は有機繊維製のベルトコードをゴム被覆して形成されている。ベルト層20は、1枚のベルトで構成されていてもよいし、3枚以上のベルトを備えてもよい。
【0037】
ベルト層20のタイヤ径方向外側に隣接して、無端状のキャップ層30が設けられている。本実施形態のキャップ層30は、ベルト21,22の両方の端部21a,22aのいずれかをそれぞれ直接的に覆う幅狭の一対のエッジプライ31を備える。また、本実施形態のキャップ層30は、エッジプライ31のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、端部21a,22aを含むベルト21,22全体を1枚で覆う幅広のキャッププライ32を備える。キャップ層30は、1枚又は3枚以上のプライを備えてもよい。また、キャップ層30をなくしてもよい。
【0038】
以下、カーカス10を構成する第1及び第2プライ11,12について説明する。
【0039】
前述のように、第1プライ11は単一のプライであるが、第2プライ12は前述のように中抜き部13bを有する不連続なプライであり、一対のプライ片13から構成されている。第1プライ11と第2プライ12のプライ片13はいずれも、間隔をあけて並設した複数本のコードをゴムで被覆した帯状のシートである。
【0040】
第1プライ11と第2プライ12のプライ片13とは、モジュラス(一定のひずみを与えたときに生じる応力)が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1プライ11と第2プライ12のプライ片13とは、破断強度(破断が生じる引張荷重)が同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1プライ11と第2プライ12のプライ片13のモジュラスや破断強度が異なる場合については、後に詳述する。
【0041】
第1プライ11は、中央部11a、一対のサイド部11b、及び一対の巻上部11cとを備える。中央部11aは、トレッド部2のタイヤ径方向内側に配置されている。一対のサイド部11bはそれぞれ、中央部11aのタイヤ幅方向の両端からタイヤ径方向内側に延びるように、サイドウォール部3に配置されている。一対の巻上部11cはそれぞれ、一対のサイド部11bのタイヤ径方向内側の端部に連続している。個々の巻上部11cは、一対のビードコア5のうちのいずれかに対して、タイヤ幅方向の内側から外側に巻き上げられ、サイドウォール部3で終端している。巻上部11cの端部11dは、ビードフィラー6の先端6bよりもタイヤ径方向外側であって、トレッド部2よりもタイヤ径方向内側に位置する。
【0042】
第2プライ12は、第1プライ11に対してタイヤ径方向外側に隣接して配置されており、一対のプライ片13により構成された不連続なプライである。プライ片13は、ベルト層20と第1プライ11の中央部11aとの間に配置された内端部13aを有する。内端部13aと第1プライ11との間には第1の接合テープ(第1の接合部材)14が介在している。内端部13aとベルト層20との間には第2の接合テープ(第2の接合部材)15が介在している。プライ片13の内端部13aのタイヤ幅方向の位置は、トレッド部2におけるタイヤ幅方向外側の領域に、より具体的にはベルト層20を構成するベルト21,22の端部21a,22aのいずれよりもタイヤ幅方向内側の領域に設定されている。トレッド部2におけるタイヤ幅方向中央の領域、より具体的には一対のプライ片13の内端部13a間の領域に、中抜き部13bが設けられている。この中抜き部13bでは、第2プライ12は存在せず、第1プライ11の中央部11aのみが存在する。
【0043】
プライ片13は、内端部13aからタイヤ径方向内側に延びるサイド部13cと、サイド部13cに連続して設けられた巻上部13dとを備える。サイド部13cは、第1プライ11のサイド部11bのタイヤ幅方向外側に隣接して配置されている。巻上部13dは、ビードコア5に対してタイヤ幅方向内側から外側に巻き上げられ、サイドウォール部3で終端している。巻上部13dは、第1プライ11の巻上部11cのタイヤ幅方向内側に重ねて配置され、ビードフィラー6のタイヤ径方向外側においてサイド部13cのタイヤ径方向外側に重ねて配置されている。巻上部13dの端部13eは、ビードフィラー6の先端6bよりもタイヤ径方向外側であって、第1プライ11の巻上部11cの端部11dよりもタイヤ径方向内側に位置する。
【0044】
前述のように、空気入りタイヤ1は、第2プライ12の一対のプライ片13の内端部13aのいずれかと、第1プライ11とを、それぞれ接合する一対の第1の接合テープ(第1の接合部材)14と、第2プライ12の一対のプライ片13の内端部13aのいずれかと、ベルト21とを、それぞれ接合する一対の第2の接合テープ(第2の接合部材)15を備える。
【0045】
第1及び第2の接合テープ14,15は、ゴム性であって、第2プライ12の第1プライ11への接合強度、及びベルト層20の第2プライ12への接合強度を確保する上で、500gf以上の粘着力を有することが好ましい。
【0046】
図3に最も明瞭に示すように、第2プライ12の一対のプライ片13は、第1の接合部材14を介して第1プライ11に接合される接合面部13fをそれぞれ備える。接合面部13fは、一対のプライ片13の内端部13aからタイヤ幅方向に延びてサイド部13cに連続する部位のタイヤ径方向内側の面13Aに設けられている。第1の接合テープ14は、一対のプライ片13の接合面部13fと、第1プライ11との間に配置されて、両者を接合している。本実施形態では、第1の接合テープ14のタイヤ幅方向内側の端部14aは、第2プライ12のプライ片13の内端部13aとほぼ同じ位置に配置されている。第1の接合テープ14の幅(接合面部13fの幅W1)は、第1の接合テープ14によって、プライ片13の第1プライ11に対するずれを抑制するために必要な粘着力が得られる所定の寸法で設定されている。例えば、第1の接合テープ14を介して、第1プライ11に接合される第2プライ12の一対のプライ片13の接合面部13fの幅W1は、プライ片13の幅Wpの3%以上25%以下の幅で設定されてもよい。
【0047】
第2プライ12の一対のプライ片13は、第2の接合部材15を介してベルト層20と接合される接合面部13gをそれぞれ備える。接合面部13gは、一対のプライ片13の内端部13aからタイヤ幅方向に延びてサイド部13cに連続する部位のタイヤ径方向外側の面13Bに設けられている。第2の接合テープ15は、一対のプライ片13の接合面部13gと、ベルト層20のベルト21との間に配置されて、両者を接合している。
【0048】
第2の接合テープ15は、ベルト層20の端部21a,22aよりもタイヤ幅方向外側に延びる延設部15aを有する。本実施形態では、第2の接合テープ15のタイヤ幅方向内側の端部15bは、第2プライ12のプライ片13の内端部13aとほぼ同じ位置に配置されている。第2の接合テープ15のタイヤ幅方向外側の端部は、延設部15aのタイヤ幅方向外側の端部15cによって構成されている。延設部15aは、ベルト層20のタイヤ幅方向外側の端部21a,22a、及びキャップ層30のタイヤ幅方向外側の端部31a,32aよりもタイヤ幅方向外側まで延びるように設定されている。例えば、延設部15aの幅W2は、ベルト21の幅Wbの5%以上30%以下の幅で設定されてもよい。
【0049】
第2の接合テープ15のタイヤ幅方向外側の端部15bは、ベルト層のタイヤ幅方向外側の端部21a,22a、及びキャップ層30のタイヤ幅方向外側の端部31a,32aと端部同士がずれた位置になるように配置されている。
【0050】
本実施形態では、第1の接合テープ14と、第2の接合テープ15とは、一体的に形成されている。第1の接合テープ14と第2の接合テープ15とは、タイヤ幅方向内側の端部14a,15bにおいて連続して形成されている。第1の接合テープ14と、第2の接合テープ15とは、別体で構成されていてもよい。
【0051】
次に、本実施形態の空気入りタイヤの特徴を説明する。
【0052】
第2プライ12は一対のプライ片13を備える不連続なプライであり、一対のプライ片13の内端部13aの間には、プライが存在しない中抜き部13bがある。かかる中抜き部13bのある第2プライ12を採用したことにより、第2プライ12が1枚の連続のプライである場合と比較して、軽量化を図ることができる。
【0053】
一対の第1の接合テープ14が第1プライ11と第2プライ12の一対のプライ片13との間に配置されているので、一対のプライ片13の内端部13aの間において不連続であることによって成型時に生じる、第1プライ11に対するプライ片13のずれを抑制することができる。例えば、第1プライ11とプライ片13のタイヤ幅方向の両端部側から第1プライ11及びプライ片13よりも径の小さなビードコア5を装着する際、ビードコア5に第1及び第2プライ11,12を巻き上げる際、第1プライ11及び第2プライ12を膨張させてベルト層20と結合する際等に生じ得る第1プライ11に対する第2プライ12のプライ片13のずれを抑制できる。
【0054】
第2の接合テープ15がベルト層20のタイヤ幅方向外側の端部21a,22aと第2プライ12のプライ片13との間に配置されているので、ベルト層20の端部21a,22aの第2プライ12のプライ片13に対するセパレーションが抑制されて、耐久性を向上させることができる。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、中抜き部13bを有する第2プライ12を備える空気入りタイヤ1において、中抜き部13bを有する第2プライ12の第1プライ11に対するずれを抑制することができる。
【0056】
前述のように、一対の第2の接合テープ15は、ベルト層20のタイヤ幅方向外側の端部21a,22aを越えてタイヤ幅方向外側まで延びる延設部15aをそれぞれ備えているので、第2の接合テープ15のタイヤ幅方向外側の端部15cとベルト層20のタイヤ幅方向外側の端部21a,22aとが重ならない。これにより、第2の接合テープ15の端部15cとベルト層20の端部21a,22aとが重複する場合に比較して、ベルト層20のタイヤ幅方向外側の端部21a,22aにおける応力集中を抑制することができる。
【0057】
前述のように、第1の接合テープ14と第2の接合テープ15が、一体的に形成されているので、1つの接合テープによる簡素な構造で、第1プライ11に対する第2プライ12のプライ片13のずれの抑制と、ベルト層20のタイヤ幅方向外側の端部21a,22aにおけるセパレーションの抑制とを図ることができる。2つの接合テープが一体的に形成されているので、部品点数を削減することができる。
【0058】
前述のように、一対の第2の接合テープ15の延設部15aの幅W2は、ベルト21の幅Wbの5%以上30%以下の幅で設定されているので、ベルト層20の端部21a,22aと、第2の接合テープ15の端部15cとをずらして配置している。これにより、ベルト層20の端部21a,22aと、第2の接合テープ15の端部15cとを重複させることによる応力集中が抑制される。
【0059】
前述のように、第1の接合テープ15を介して第1プライ11に接合される第2プライ12の一対のプライ片13の接合面部13fの幅W1は、プライ片13の幅Wpの3%以上25%以下の幅で設定されているので、第2プライ12のプライ片13を第1プライ11に対して充分な接合強度で接合することができる。
【0060】
次に、第1プライ11と第2プライ12のプライ片13とのモジュラスや破断強度を異ならせる場合を説明する。
【0061】
第1プライ11のモジュラスは、第2プライ12のプライ片13のモジュラスよりも低くてもよい。カーカスプライにおいては、一般に、モジュラスが低い程重量は軽く、モジュラスが高い程重量が重い傾向がある。第2プライ12は中抜き部13bを有するのに対して、第1プライ11はトレッド部2に中央部11aを有する。第1プライ11の中央部11aは、第1プライ11のサイド部11bや第2プライ12のプライ片13と比較すると、剛性向上と耐カット性向上の寄与度は低い。かかる中央部11aを有する第1プライ11を第2プライ12のプライ片13と比較して低モジュラス、従って相対的に軽量とすることで、剛性と耐カット性を損なうことなく、さらなる軽量化を図ることができる。
【0062】
第1プライ11の破断強度は、第2プライ12のプライ片13の破断強度よりも低くてもよい。カーカスプライにおいては、一般に、破断強度が低い程重量は軽く、破断強度が高い程重量が重い傾向がある。第2プライ12は中抜き部13bを有するのに対して、第1プライ11はトレッド部2に中央部11aを有する。第1プライ11の中央部11aは、第1プライ11のサイド部11bや第2プライ12のプライ片13と比較すると、剛性向上と耐カット性向上の寄与度は低い。かかる中央部11aを有する第1プライ11を、第2プライ12のプライ片13と比較して低破断強度、従って相対的に軽量とすることで、剛性と耐カット性を損なうことなく、さらなる軽量化を図ることができる。
【0063】
コード材質、コード径、エンド数、ゴム硬さ、及びゴム厚みのうちの少なくとも1つを異ならせることで、第1プライ11のモジュラスを第2プライ12のプライ片13のモジュラスよりも低く設定し、あるいは第1プライ11の破断強度を第2プライ12のプライ片13の破断強度よりも低く設定できる。
【0064】
コード径、エンド数、ゴム硬さ、及びゴム厚みについては、一般に、以下の傾向がある。まず、コード径が太い程、モジュラスと破断強度が高くなる。また、エンド数が多い程、モジュラスと破断強度が高くなる。さらに、ゴム硬さが高い程、モジュラスと破断強度が高くなる。さらにまた、ゴム厚みが厚い程、モジュラスと破断強度が高くなる。
【0065】
コード材質については、金属(スチール)、アラミド、レーヨン、ポリエステル、及びナイロンの順でモジュラスが高い。また、コード材質については、金属(スチール)、アラミド、ナイロン、ポリエステル、及びレーヨンの順で破断強度が高い。
【0066】
本発明は実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、空気入りタイヤ1は、第1プライ11と第2プライ12に加え、第2プライ12と同様の中抜き部を有するプライや第1プライ11と同様の通常のプライをさらに備えてもよい。また、第2プライ12のプライ片13を第1プライ11に接合する接合テープ(接合部材)が複数あってもよい。また、ベルト層20の端部21a,22aを第2プライのプライ片13に接合する接合テープ(接合部材)が複数あってもよい。
【0067】
また、例えば、空気入りタイヤが、内側部材としての第1プライ11と、一対のプライ片を備えるプライとしての第2プライ12を備える構成について説明したが、第2プライを備えずに、第1プライ11が中抜き部を備えたプライとして構成してもよい。この場合、インナーライナ8を内側部材として構成すれば、インナーライナ8に対する中抜き部備えた第1プライ11の成型時におけるずれを抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
5 ビードコア
8 インナーライナ
10 カーカス
11 第1カーカスプライ(内側部材)
11a 中央部
11b サイド部
11c 巻上部
11d 端部
12 第2カーカスプライ(プライ)
13 プライ片
13a 内端部
13b 中抜き部
13c サイド部
13d 巻上部
13f 接合面部
14 第1の接合テープ(第1の接合部材)
14a,14b 端部
15 第2の接合テープ(第2の接合部材)
15a 延設部
15b,15c 端部
20 ベルト層
21 ベルト
21a 端部
22 ベルト
22a 端部