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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 9/46 20160101AFI20231215BHJP
   E21F 17/00 20060101ALI20231215BHJP
   F03D 1/04 20060101ALI20231215BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
F03D9/46
E21F17/00
F03D1/04 B
F03D1/06 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019182852
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021059981
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】若林 正憲
(72)【発明者】
【氏名】武藤 香穂
(72)【発明者】
【氏名】金子 研一
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-197752(JP,A)
【文献】登録実用新案第3190499(JP,U)
【文献】特開2001-107700(JP,A)
【文献】特開昭63-016199(JP,A)
【文献】登録実用新案第3169269(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 17/00
F03D 1/04
F03D 1/06
F03D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に設置されたセグメントリングと、
前記セグメントリング内で支持部材を介して支持された風車と、
前記風車の回転に基づいて発電する発電機と、
を備え
前記風車は、ブレードを回転可能に支持するナセルを備え、
前記ナセルは、前記支持部材によって前記セグメントリングに連結されており、
前記支持部材は、前記セグメントリングに連結される端部において、前記セグメントリングのセグメントに対する角度が調整可能である、
ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記支持部材は前記セグメントリングのセグメントに形成された注入孔に取り付けられている請求項1に記載された風力発電装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記注入孔に装着されるピン軸と、
前記ピン軸に対する角度が調整可能な支持鋼材と、
を備える請求項2記載の風力発電装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば既設の廃トンネル内に設置されていて風力発電を行う風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設のトンネルとして道路トンネルや鉄道トンネル等が設置されており、その中にはトンネル内に風力発電装置の風車を設置したものがある。また、国内には廃線した鉄道トンネルやバイパストンネルの構築により使わなくなった道路トンネルがある。これらのトンネルは密封させると施工コストがかかるため密封されずに放置されていることが多い。
例えば峠を貫通するような道路トンネルは、一方側に設けた日当たりのよい開口と他方側に設けた日陰の開口との間で温度差が10度を超えるものがある(例えば宮古市と岩泉町を結ぶ雄鹿戸トンネル)。この温度差によりトンネル両端の開口が自然に通気されているものや、海岸からの潮風が吹き込むもの等がある。このような風の通り道となるトンネル内に風車と発電機を設置することでトンネル内の照明等を賄うことができ、トンネルをワインセラー等の貯蔵庫や資材置き場等に利用することができる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたトンネル設置型風力発電装置は、道路トンネルの車道空間を車両が走行し、その上部空間に風車発電装置が設置されている。そして、車両の走行によって生じる風圧を受けて風力発電装置の風車を回転させることで風力発電を行い、電力をトンネル内の照明装置等に提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭56-34979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、引用文献1に記載のトンネル設置型風力発電装置は道路トンネルであるため、通行車両に支障がないようにトンネル内の天井近くの余裕空間に小型の発電装置を使用している。そのため、風力発電装置の発電容量が小さかった。また、地震等でトンネルの壁面の一部が崩落すると風力発電装置を損傷する恐れがあった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、廃線となった鉄道トンネルや廃止された道路トンネル等の各種トンネルを利用して安全に且つ効率的に発電できる風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による風力発電装置は、トンネル内に設置されたセグメントリングと、セグメントリング内で支持部材を介して支持された風車と、風車の回転に基づいて発電する発電機と、を備えたことを特徴とする。
本発明による風力発電装置は、トンネル内を通り抜ける風によって風車を回転させて発電機で発電することができ、しかもトンネルの壁面や岩盤等が崩落したとしてもセグメントリングによって風力発電装置を保護できる。
【0008】
また、風車はブレードを回転可能に支持するナセルを備え、ナセルは支持部材によってセグメントリングに連結されていることが好ましい。
風力発電装置はナセルを支持部材によってセグメントリングに取り付けたため強固に固定できる。
【0009】
また、支持部材はセグメントリングのセグメントに形成された注入孔に取り付けられていてもよい。
セグメントリングがRCセグメント等で形成されている場合、セグメントリングとトンネルの隙間を埋める詰め物を充填するためのセグメントの注入孔に支持部材を取り付けることで風車を簡単且つ堅固に固定できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による風力発電装置は、トンネル内を通り抜ける風によって風車を回転させて発電機で発電することができる。また、トンネルの内部にセグメントリングを配設することで円形を保持して風車を防護できるため、廃トンネルの一部が崩落したとしても風車を損傷したり回転の邪魔になったりすることはない。
しかも、風車は支持部材を介してセグメントリングに固定しているため強固に固定できる。また、廃トンネルであるため風車によってトンネル内部を塞いでも支障はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態によるトンネルの内面にセグメントリングを設置した軸直交断面図である。
図2】セグメントリングの内部に風車を設置した軸方向断面図である。
図3図2に示す風車のA-A線断面図である。
図4図2に示す風車のB-B線断面図である。
図5】(a)はセグメントの斜視図、(b)は同図(a)のC-C線方向における注入孔にピン軸を装着した支持鋼材の取り付け部の水平断面図、(c)は同図(b)に示す支持鋼材の取り付け部を90度異なる方向から見た側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による風力発電装置1について添付図面により説明する。
図1は本発明の実施形態による風力発電装置1を設置するためのトンネル2の断面図である。このトンネル2は使用されていない廃トンネルである。通常、トンネル2の内面は真円に形成されておらず、上部及び両側部の壁面3が略円形に形成され、底壁4は壁面3よりも半径が大きい弧状に形成された略おにぎり型である。
そのため、図1及び図2に示すトンネル2内における風力発電装置1の設置領域では、底壁4とその下側の岩盤を削岩機等で斫って掘削する。そして、掘削した底部5に注入剤6を充填して、底部5が壁面3を延長させた円形になるよう形成する。
【0013】
次に、トンネル2の壁面3及び底部5の内側にセグメント8を施工してセグメントリング9を形成する。セグメントリング9は例えば4枚のセグメント8を連結してリング状に形成され、しかもトンネル2の軸線方向に2列に亘って形成する。この部分が風力発電装置1の設置領域となる。2列のセグメントリング9は千鳥組に形成することが好ましいが、いも継ぎでもよい。セグメント8は例えばRCセグメントであるが、鋼製セグメント等でもよい。
図5(a)に示すように、セグメント8の中央には内外を貫通する注入孔8aが形成されている。セグメントリング9とトンネル2の壁面3及び底部5との隙間に各注入孔8aを通してコンクリートやモルタル等の詰め物を充填している。
【0014】
次にセグメントリング9内に設置される風力発電装置1について説明する。
風力発電装置1の風車10はセグメントリング9内に設置されていて、例えば3枚のブレード11と、ブレード11を回転可能に支持するナセル12とが設けられている。ナセル12の内部には、ブレード11の回転によって発電する発電機13が設置されている。図3及び図4に示すように、ナセル12はセグメントリング9の中心軸付近に設置されているものとし、ナセル12は複数、例えば4本の支持鋼材14によってセグメントリング9の各セグメント8に支持されている。図3及び図4において、ナセル12は4本の支持鋼材14のうち下側の2本の支持鋼材14で受け止め、上側の2本の支持鋼材14で吊り下げ固定している。しかも、各支持鋼材14はナセル12の前方側と後方側とにそれぞれ4本連結されている。
【0015】
次に支持鋼材14の連結構造の一例を図5により説明する。
図5(a)、(b)において、セグメント8の中央に設けた注入孔8aに雌ねじ部8bが形成され、これにピン軸16の雄ねじ部16aが螺合されている。支持鋼材14の一端には凹溝14aが形成され、この凹溝14a内にピン軸16の頭部を嵌合させた状態で、ボルト17を支持鋼材14の凹溝14aを有する一端及びピン軸16の頭部にそれぞれ形成されたねじ孔に貫通させてナット18で締め込み固定する。
支持鋼材14の他端はナセル12に溶接等で固定されているが、一端と同様にナセル12に螺合させたピン軸16を凹溝14aに嵌合させてボルト17とナット18で固定してもよい。
【0016】
この構造によって、風車10のナセル12を取り付ける際、ピン軸16に対する支持鋼材14の角度を調整可能としている(図5(c)参照)。これにより、ナセル12のブレード11側(前部側という)で4本の支持鋼材14を略90度間隔でセグメントリング9に固定し、ナセル12の後部側でも4本の支持鋼材14を略90度間隔でセグメントリング9に固定することができる(図3図4参照)。なお、ナセル12の保持強度を確保するために後部側の支持鋼材14を傾斜させて配設してもよい。
なお、セグメント8として、RCセグメントに代えて鋼製セグメントを採用した場合には支持鋼材14の一端側をセグメント8の内周面に溶接等で固定してもよい。
【0017】
本実施形態によるトンネル2内の風力発電装置1は上述した構成を有しており、次にその使用方法を説明する。
トンネル2内には両端の開口の温度差により、或いは海岸からの潮風や自然の風等により、トンネル2内を風が吹き抜ける。トンネル2内を通る風により風力発電装置1の風車10のブレード11が回転し、この回転を受けてナセル12内の発電機13で発電する。発電機13で発電された電力は例えばトンネル2内の照明や装置用電源等に用いられる。トンネル2内は比較的低温で温度管理が容易であるため、トンネル2内をワインの貯蔵庫やチーズやハム等の食品やその他の貯蔵物等の熟成庫や貯蔵庫、資材置き場等として使用する場合に外部電源を引き込む必要等がなく、トンネル2内を通る風を有効利用できる。
【0018】
なお、セグメントリング9の構築や風車10の設置に際し、現地のトンネル2の内面の寸法に合わせてその都度設計するのでなく、標準品として例えば内径3m、3.5m、4m、4.5mといったセグメントリング9を構築するRCセグメント等のセグメント8、風車10等をそろえておくとよい。これらの場合、トンネル2とセグメントリング9との間に隙間が生じても、注入孔8aを通して詰め物等で埋めることで風力発電装置1を保護できる。或いは、隙間を詰め物で埋めることなく、空間として残しておいてもよい。
【0019】
上述のように、本実施形態によるトンネル2内の風力発電装置1によれば、トンネル2内に風力発電装置1を設置することで吹き抜ける風を利用してトンネル2内の照明やその他の電源等に利用できる。そのため、外部電源を引き込む必要がなく廃トンネル内を各種の貯蔵庫や資材置き場等として有効利用できる。しかも、従来の風力発電装置よりも大きな電力を得ることができる。
【0020】
また、トンネル2の内部にセグメントリング9を配設することで円形を保持して風車10を防護できるため、廃トンネルの一部が崩落したとしても風車10の回転の邪魔になることはない。しかも、廃トンネルであるため風車によってトンネル2内部を塞いでも支障はない。
セグメントリング9がRCセグメント等で形成されている場合、セグメントリング9とトンネル2の隙間を埋める詰め物を充填するためのセグメント8の注入孔8aにピン軸16を介して支持鋼材14を取り付けることで風車10を簡単且つ堅固に固定できる。
また、風力発電装置1はナセル12を支持鋼材14によってセグメントリング9に連結したため強固に固定できる。
【0021】
以上、本発明の実施形態による風力発電装置1について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本発明の変形例等について説明するが、上述の実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0022】
例えば、上述した実施形態による風力発電装置1では、風車10のナセル12を各4本2組の支持鋼材14で2列のセグメントリング9内に固定するようにしたが、ナセル12を支持する支持鋼材14の本数や組数は適宜選定できる。本発明において、支持鋼材14は支持部材に含まれる。また、発電機13はナセル12内に設置したが、その外部のセグメントリング9内やトンネル2の外部等、適宜の位置に設置できる。
また、上述の実施形態では風車10をセグメントリング9の中心軸付近に設置したが、ナセル12を支持する支持鋼材14の長さを調節することで風車10の設置位置や高さを風力の最も強い位置に適宜調整できる。
また、風力発電装置1を設置するセグメントリング9は2列に限らず適宜列数に設定できる。
【符号の説明】
【0023】
1 風力発電装置
2 トンネル
3 壁面
4 底壁
5 底部
8 セグメント
8a 注入孔
9 セグメントリング
10 風車
11 ブレード
12 ナセル
13 発電機
14 支持鋼材
図1
図2
図3
図4
図5