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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/16 20060101AFI20231215BHJP
   F02M 47/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
F02M61/16 T
F02M47/00 A
F02M47/00 E
F02M47/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019185127
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021060013
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】黒山 耕次
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-194173(JP,A)
【文献】実開昭63-038669(JP,U)
【文献】実開平03-065862(JP,U)
【文献】特開平06-147051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジェクタハウジング(2)と、前記インジェクタハウジング(2)に配置されたバルブボディ(8)と、前記バルブボディ(8)に形成された軸孔(81)に摺動自在に挿入されたバルブピストン(7)と、前記バルブピストン(7)の軸方向における一方の側に設けられ燃料噴射孔(32)を開閉するノズルニードル(4)と、前記バルブピストン(7)の軸方向における他方の側に設けられた制御圧室(82)と、を備え、前記軸孔(81)は軸方向に前記制御圧室(82)側から、前記バルブピストン(7)と摺動する部分である軸孔摺動部(81a)と前記軸孔摺動部(81a)より孔径が大きい軸孔大径部(81b)とを有し、前記バルブピストン(7)は軸方向に前記制御圧室(82)側から、前記軸孔摺動部(81a)と摺動する部分であるバルブピストン摺動部(71a)と、前記バルブピストン摺動部(71a)より軸径が細いバルブピストン細径部(71b)とを有していて、前記バルブピストン摺動部(71a)と前記バルブピストン細径部(71b)との間にはバルブピストン移行部(71d)が設けられ、
前記軸孔(81)は、前記ノズルニードル(4)側における前記軸孔摺動部(81a)の端部である軸孔摺動端部(81c)を有し、前記バルブピストン(7)は、前記ノズルニードル(4)側におけるバルブピストン摺動部(71a)の端部であるバルブピストン摺動端部(71c)を有し、前記バルブピストン(7)の往復運動において、前記バルブピストン(7)が前記制御圧室(82)側に移動した場合に前記バルブピストン摺動端部(71c)は軸孔摺動端部(81c)よりも前記制御圧室(82)側に位置し、前記バルブピストン(7)が前記ノズルニードル側に移動した場合に前記バルブピストン摺動端部(71c)は、前記軸孔摺動端部(81c)と軸方向において同じ位置または、前記軸孔摺動端部(81c)よりも前記ノズルニードル(4)側に位置する、燃料噴射弁。
【請求項2】
前記バルブピストン移行部(71d)が、前記バルブピストン(7)の軸線方向に垂直に形成されたバルブピストン段部(71e)を含む、請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記バルブピストン移行部(71d)が、斜面を形成するバルブピストン傾斜部(71f)を含む、請求項1または2に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】
前記バルブピストン移行部(71d)が、前記バルブピストン細径部(71b)よりも軸径が細いバルブピストン底部(71g)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等への燃料噴射を行う燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄圧器(コモンレール)などから供給される高圧燃料を内燃機関へ噴射するために用いられる燃料噴射弁として、例えば、特許文献1に示された構造の燃料噴射弁が知られている。この燃料噴射弁は、コモンレール内に蓄積された高圧燃料をディーゼルエンジン等の内燃機関に噴射するために用いられるもので、インジェクタハウジングと、ノズルニードルと、バルブピストンと、バルブボディと、を主たる構成要素として構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インジェクタハウジングに配置されたバルブボディの軸孔内にバルブピストンが摺動可能に挿入されていることが記載されている。軸孔とバルブピストンの上側端部とにより画成される制御圧室には高圧燃料が導入される。一方、バルブピストンが挿入される側の軸孔の開口部周囲は低圧燃料が流入する領域となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-344622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
制御圧室と軸孔の開口部側の圧力差により軸孔とバルブピストンとの隙間を通って制御圧室内の燃料が開口部側に移動する。この隙間を通過する燃料は高圧から低圧に変化する過程で熱エネルギーを発生し、当該熱エネルギーにより軸孔の開口部でいわゆるデポジットを生成する場合がある。今後厳しくなる排気ガス規制に対応するためより高圧化された燃料噴射弁においてはさらにデポジットが生成され易くなるおそれがある。また、バイオ燃料であるFAME(Fatty Acid MethylEster)等を使用した燃料噴射弁においては軽油等を使用した燃料噴射弁に比べデポジットを生成し易いことが知られている。このように今後予想される燃料のさらなる高圧化やバイオ燃料化に伴い増えたデポジットは、バルブピストンの摺動抵抗となり、ノズルニードルの作動に影響を与え、その結果燃料噴射弁から所望の燃料噴射量をエンジンに供給できなくなるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、燃料のさらなる高圧化やバイオ燃料化に対応した燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料噴射弁は、インジェクタハウジングと、前記インジェクタハウジングに配置されたバルブボディと、前記バルブボディに形成された軸孔に摺動自在に挿入されたバルブピストンと、前記バルブピストンの軸方向における一方の側に設けられ燃料噴射孔を開閉するノズルニードルと、前記バルブピストンの軸方向における他方の側に設けられた制御圧室と、を備え、前記軸孔は軸方向に前記制御圧室側から、前記バルブピストンと摺動する部分である軸孔摺動部と、前記軸孔摺動部より孔径が大きい軸孔大径部とを有し、前記バルブピストンは軸方向に前記制御圧室側から、前記軸孔摺動部と摺動する部分であるバルブピストン摺動部と、前記バルブピストン摺動部より軸径が細いバルブピストン細径部とを有していて、前記バルブピストン摺動部と前記バルブピストン細径部との間にはバルブピストン移行部が設けられている、燃料噴射弁である。
【0008】
前記バルブピストン移行部が、前記バルブピストンの軸線方向に垂直に形成されたバルブピストン段部を含むことが好ましい。
【0009】
前記バルブピストン移行部が、斜面を形成するバルブピストン傾斜部を含むことが好ましい。
【0010】
前記バルブピストン移行部が、前記バルブピストン細径部よりも軸径が細いバルブピストン底部を含むことが好ましい。
【0011】
前記軸孔は、前記ノズルニードル側における前記軸孔摺動部の端部である軸孔摺動端部を有し、前記バルブピストンは、前記ノズルニードル側におけるバルブピストン摺動部の端部であるバルブピストン摺動端部を有し、前記バルブピストンの往復運動において、前記バルブピストンが前記制御圧室側に移動した場合に前記バルブピストン摺動端部は軸孔摺動端部よりも前記制御圧室側に位置し、前記バルブピストンが前記ノズルニードル側に移動した場合に前記バルブピストン摺動端部は、前記軸孔摺動端部と軸方向において同じ位置または、前記軸孔摺動端部よりも前記ノズルニードル側に位置することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、燃料のさらなる高圧化やバイオ燃料化に対応した燃料噴射弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る燃料噴射弁の断面図である。
図2】バルブボディの軸孔周囲の拡大図である。
図3】本発明の実施形態にかかる実施例の一つについて説明するための図である。
図4図3の実施例においてデポジットが除去されるメカニズムについて説明するための図である。
図5図3の実施例においてデポジットが除去されるメカニズムについて説明するための図である。
図6図3の実施例においてデポジットが除去されるメカニズムについて説明するための図である。
図7】本発明の実施形態にかかる別の実施例について説明するための図である。
図8】本発明の実施形態にかかるさらに別の実施例について説明するための図である。
図9図8の実施例においてデポジットが除去されるメカニズムについて説明するための図である。
図10】本発明の実施形態にかかる実施例であって、図3図7図8の実施例を全て含む実施例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の燃料噴射弁に関する実施の形態について具体的に説明する。ただし、この実施の形態は本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本 発明の範囲内で任意に変更することが可能である。なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては、特に説明がない限り同一の部材を示している。
【0015】
図1は、本実施の形態にかかる燃料噴射弁1の断面図である。燃料噴射弁1は、たとえば蓄圧式燃料噴射制御装置の要素部品として使用されるものである。蓄圧式燃料噴射制御装置は、燃料タンクからの燃料を圧送するサプライポンプと、サプライポンプにより圧送された高圧燃料が蓄えるコモンレールと、燃料噴射弁を主な構成要素とするものであり、燃料噴射弁は、コモンレール内に蓄積された高圧燃料を内燃機関の気筒内に噴射する。
【0016】
燃料噴射弁1は、図1に示すように、インジェクタハウジング2と、ノズルボディ3と、ノズルニードル4と、ノズルスプリング5と、ノズルナット6と、バルブピストン7と、バルブボディ8と、圧力制御部9と、インレット部10等、を備える。
【0017】
ノズルボディ3は、インジェクタハウジング2の先端部(図1の下端側)にノズルナット6により締結されている。インジェクタハウジング2およびノズルボディ3には、インレット部10から導入される高圧燃料をノズルボディ3内部に形成された燃料溜まり室30へ送る第1燃料通路21が形成されている。また、インジェクタハウジング2には、インレット部10から導入される燃料を、後述する制御圧室82へ送る第2燃料通路22が形成されている。インレット部10は、図示しないコモンレールに接続され、当該コモンレールから高圧燃料がインレット部10に導入される。
【0018】
また、ノズルボディ3の先端部には燃料噴射孔32が形成されている。この燃料噴射孔32につながるシート部33にノズルニードル4の先端部が着座(シート)することにより燃料噴射孔32が閉鎖される一方、ノズルニードル4の先端部がシート部33から離間(リフト)することにより燃料噴射孔32が開放される。これによって燃料の噴射開始、停止が可能となっている。
【0019】
また、インジェクタハウジング2内には、その中心軸を中心としたスプリング室23が形成され、当該スプリング室23にノズルスプリング5が配置される。ノズルスプリング5は、ノズルニードル4をシート部33側の方向へ付勢する。
【0020】
バルブピストン7は、インジェクタハウジング2に形成されたインジェクタハウジング孔24内に挿入される。また、バルブピストン7は、燃料噴射孔32側がノズルニードル4の上方部に位置するように配置され、他方側がバルブボディ8に形成された軸孔81内に摺動可能に挿入される。尚、インジェクタハウジング孔24内の燃料は低圧の燃料である。
【0021】
バルブボディ8には、軸孔81内に挿入されたバルブピストン7の頂部73が位置する部位に、制御圧室82が形成されている。また、制御圧室82は、バルブボディ8に形成された導入側オリフィス通路83に連通している。この導入側オリフィス通路83は、バルブボディ8とインジェクタハウジング2との間にバルブボディ8の周方向で環状に形成された圧力導入室25を介して第2燃料通路22に連通されている。つまり、インレット部10に導入された高圧燃料が、第2燃料通路22、圧力導入室25、導入側オリフィス通路83を順に流れて制御圧室82に供給される。
【0022】
また、制御圧室82は、高圧燃料を低圧側に排出するための開閉用オリフィス通路84にも接続されており、開閉用オリフィス通路84は、圧力制御部9によって開閉可能となっている。
【0023】
圧力制御部9は、開閉用オリフィス通路84の開閉を行う電磁弁であって、電磁石91と、アーマチュアプレート94と、アーマチュアプレート94に係合するアーマチュアボルト95と、アーマチュアボルト95が挿通されるアーマチュアガイド96と、アーマチュアボルト95に対して制御圧室82側に付勢力を与えるスプリング97等、を備える。さらに、圧力制御部9は、図示しない燃料タンクに燃料を還流する燃料還流路92aが形成されたホルダ92を備える。当該ホルダ92と電磁石91は、電磁石ハウジング93で一体化され、ナット98によりインジェクタハウジング2との接合部分に締結されている。
【0024】
電磁石91は、図示しない制御回路から駆動電流が供給されると、電磁力を発生してアーマチュアプレート94を吸引する。
【0025】
アーマチュアボルト95は、当該ボルト軸本体95aの一端(ホルダ92側)に、アーマチュアプレート94と係合するヘッド部95bが形成されたボルトである。また、アーマチュアボルト95のボルト軸本体95aの他端(制御圧室82側)に、開閉用オリフィス通路84を開閉する制御弁体99が設けられている。
【0026】
スプリング97は、アーマチュアボルト95のヘッド部95bから制御弁体99側に向けて付勢力を与える。
【0027】
上述した構成を備える燃料噴射弁1では、インレット部10から導入した高圧燃料が、第1燃料通路21を介して燃料溜まり室30内のノズルニードル4の受圧部30aに作用するとともに、第2燃料通路22、圧力導入室25及び導入側オリフィス通路83を介して制御圧室82内のバルブピストン7の頂部73にも作用するようになっている。したがって、制御弁体99が、制御圧室82を低圧側から遮断している状態では、バルブピストン7を介して受ける制御圧室82の圧力とノズルスプリング5の付勢力とにより、ノズルニードル4はノズルボディ3のシート部33にシートされ、燃料噴射孔32を閉鎖する。
【0028】
一方、圧力制御部9の電磁石91が駆動電流で励磁されることにより、アーマチュアプレート94が電磁石91側に吸引されると、アーマチュアボルト95が引き上げられる。続いて制御圧室82の圧力により制御弁体99がリフトして開閉用オリフィス通路84を開放する。制御圧室82の高圧燃料が開閉用オリフィス通路84を介して低圧である圧力制御部9側に開放される。これによって、制御圧室82におけるバルブピストン7の頂部73に作用していた圧力が低下し、ノズルニードル4は受圧部30aに作用している高圧により、ノズルスプリング5の付勢力に抗してシート部からリフトし、燃料噴射孔32が開放されて燃料噴射が行われることになる。
【0029】
続いて、圧力制御部9の電磁石91への通電が止まると、アーマチュアプレート94に対する電磁石91の吸引力が無くなる。アーマチュアボルト95はスプリング97により開閉用オリフィス通路84側に戻され、制御弁体99が開閉用オリフィス通路84を閉鎖する。開閉用オリフィス通路84が閉鎖されると、バルブピストン7の頂部73には再び高圧燃料が作用し、この力はバルブピストン7を介してノズルニードル4に伝達され、ノズルスプリング5の付勢力とともに、ノズルニードル4をシート部33にシートさせる方向に働く。そして燃料噴射孔32は閉鎖され、燃料噴射が終了する。
【0030】
[バルブボデディ8の軸孔81とバルブピストン7との摺動面およびその近傍について]
図2図1におけるバルブボディ8の軸孔81周囲の拡大図であり、バルブピストン7が最もノズルニードル4側に移動した状態を示す図である。バルブボデディ8の軸孔81は、制御圧室82側にバルブピストン7と摺動する部分である軸孔摺動部81aを有するとともに、制御圧室82と反対側に軸孔摺動部81aより孔径が大きい軸孔大径部81bを有する。
【0031】
バルブピストン7は軸方向に制御圧室82側から順に、バルブピストン摺動部71aと、バルブピストン細径部71bと、バルブピストン下部72とを有している。バルブピストン摺動部71aは軸孔摺動部81aと摺動する部分であり、バルブピストン摺動部71aの途中には溝71zが設けられている。バルブピストン細径部71bはバルブピストン摺動部71aより軸径が細く形成されており、少なくともバルブピストン細径部71bの一部は軸孔81の内部に配置されている。バルブピストン下部72はバルブピストン細径部71bに続く部分であり、バルブピストン下部72の燃料噴射孔32側の先端はノズルニードル4の上方に位置するように配置されている。また、バルブピストン摺動部71aとバルブピストン細径部71bとの間にはバルブピストン移行部71dが設けられている。
【0032】
前述の通り、制御圧室82とインジェクタハウジング孔24内の燃料の圧力差により軸孔摺動部81aとバルブピストン摺動部71aとの隙間を通って制御圧室82内の燃料が軸孔大径部81b側に移動する。この隙間を通過する燃料は高圧から低圧に変化する過程で熱エネルギーを発生し、当該熱エネルギーにより特に軸孔の開口部である軸孔摺動部81aの端部(軸孔摺動端部81c)にデポジットが生成される場合がある。
【0033】
図3図2におけるA部の拡大図であり、本発明の実施形態にかかる実施例の一つについて説明するための図である。バルブボディ8において、軸孔摺動部81aと軸孔大径部81bとの間には、軸線に垂直に形成された軸孔段部81dが設けてられている。軸孔摺動部81aと軸孔段部81dとの境界は、軸孔摺動部81aの端部である軸孔摺動端部81cを構成する。
【0034】
図3の実施例において、バルブピストン移行部71dは、バルブピストン7の軸線方向に垂直に形成されたバルブピストン段部71eである。バルブピストン摺動部71aとバルブピストン移行部71dであるバルブピストン段部71eとは両者の境界においてバルブピストン摺動部71aの端部であるバルブピストン摺動端部71cを構成する。バルブピストン7が最もノズルニードル4側に移動した状態おいて、バルブピストン摺動端部71cは、軸孔摺動端部81cと軸方向で同じ位置にあるか、または、軸孔摺動端部81cよりも軸方向でノズルニードル4側に位置するように構成されている。
【0035】
図4は、図3の実施例においてデポジットが除去されるメカニズムについて説明するための図であり、バルブピストン7が制御圧室82側からノズルニードル4側に移動いている状態を示す図である。図4中のαは軸孔摺動端部81cに付着したデポジットを表す。矢印βはバルブピストン段部71eの移動により発生する燃料の流れを模式的に記載したものである。図4に示すように燃料の流れの一部β1は軸孔摺動端部81c付近で軸孔大径部81b方向に流れデポジットαに衝突する。また燃料の流れの別の一部であるβ2は大回りで軸孔大径部81bに流れ込み、軸孔大径部81bの周壁により方向を変え、β1とは逆方向からデポジットαに衝突する。このような燃料のデポジットαへの衝突によって、デポジットαは削り取られ、あるいは、剥離させられ、除去される。
【0036】
図5図4の状態からバルブピストン7がさらにノズルニードル4側に移動し、バルブピストン摺動端部71cが軸孔摺動端部81cと軸方向で同じ位置まで移動した場合の図である。尚、α、βについての説明は図4と同じである。燃料の流れの一部であるβ3は回転する流れ、いわゆる渦流となってデポジットαに衝突を繰り返すことになり、さらにデポジットαは削り取られ、あるいは、剥離させられ、除去される。図6は、バルブピストン摺動端部71cが、軸孔摺動端部81cに比べ軸方向でノズルニードル4により近い位置まで移動した場合の図である。この場合にもデポジットαの周囲に渦流β4が形成され、デポジットαが除去される。尚、バルブピストン7が最もノズルニードル4側に移動した状態おいて、軸孔摺動端部81cがバルブピストン摺動端部71cよりも軸方向でノズルニードル4側に位置するように構成されている場合にも、バルブピストン移行部の動きに伴い燃料の流れβが発生するので、デポジットαの除去に対して効果はある。しかしながら、デポジットαは軸孔摺動端部81c付近に堆積量が多いので、バルブピストン摺動端部71cが軸孔摺動端部81cまで到達またはこれを通過する場合に比べ、バルブピストン摺動端部71cが軸孔摺動端部81cを通過しない場合には、デポジットαの除去に対する効果は小さくさる。したがって、バルブピストン7が最もノズルニードル4側に移動した状態おいて、バルブピストン摺動端部71cは軸孔摺動端部81cと軸方向で同じ位置にあるか、または、軸孔摺動端部81cよりも軸方向でノズルニードル4側に位置するように構成されていることが好ましい。
【0037】
図7は、本発明の実施形態にかかる別の実施例について説明するための図である。図7の実施例は、バルブピストン移行部71dがバルブピストン傾斜部71fで形成されている点で、図3に示す実施例と異なる。尚、図7は、バルブピストン7が制御圧室82側からノズルニードル4側に移動いている状態を示す図である。バルブピストン傾斜部71fは軸線に対して傾いた面で構成されており、軸線に対する傾き角度θは45度以上であることが好ましい。バルブピストン摺動部71aとバルブピストン傾斜部71fの境界はバルブピストン摺動端部71cを構成する。バルブピストン傾斜部71fに押された燃料の流れの一部β5は軸孔方向に流れ、デポジットαに衝突し、デポジットαを削り取り、あるいは、剥離させ、除去する。また、バルブピストン7が最もノズルニードル4側に移動した状態おいて、バルブピストン摺動端部71cは、軸孔摺動端部81cと軸方向で同じ位置にあるか、または、軸孔摺動端部81cよりも軸方向でノズルニードル4側に位置し、これにより渦流が形成され、当該渦流によりデポジットαが除去される。
【0038】
図8は、本発明の実施形態にかかるさらに別の実施例について説明するための図である。図8に示す実施例は、バルブピストン移行部71dがバルブピストン細径部71bよりも軸径が細いバルブピストン底部71gを含んでいる点で、図3、7に示す実施例と異なる。尚、図8は、バルブピストン7が制御圧室82側からノズルニードル4側に移動いている状態を示す図である。図8に示す実施例においては、燃料の流れの一部β6は軸孔摺動端部81c付近で軸孔大径部81b方向に流れデポジットαに衝突する。また燃料の流れの別の一部であるβ7は大回りで軸孔大径部81bに流れ込み、軸孔大径部81bの周壁により方向を変え、β6とは逆方向からデポジットαに衝突する。このような燃料のデポジットαへの衝突によって、デポジットαは削り取られ、あるいは、剥離させられ、除去される。
【0039】
図9は、図8の状態からバルブピストン7がさらにノズルニードル4側に移動し、バルブピストン摺動端部71cが軸孔摺動端部81cと軸方向で同じ位置まで移動した場合の図である。バルブピストン底部71gにより形成されるスペース71hにより安定した渦流が形成されるので、デポジットの除去がより促進される。
【0040】
図10は、本発明の実施形態にかかる実施例であって、図3図7図8の実施例を全て含む実施例について説明するための図である。すなわち、図10の実施例におけるバルブピストン移行部71dは、バルブピストン傾斜部71fと、バルブピストン底部71gとを含んでいる。これと同様に、バルブピストン移行部71dは、バルブピストン段部71eとバルブピストン傾斜部71fとを含むものであってもよく、または、バルブピストン段部71eとバルブピストン底部71gとを含むものであってもよく、または、バルブピストン傾斜部71fと、バルブピストン底部71gとを含むものであってもよい。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0042】
1:燃料噴射弁、2:インジェクタハウジング、3:ノズルボディ、4:ノズルニードル、5:プランジャ、6:ノズルナット、7:バルブピストン、8:バルブボディ、9:圧力制御部、10:インレット部、21:第1燃料通路、22:第2燃料通路、23:スプリング室、24:インジェクタハウジング孔、25:圧力導入室、30:燃料溜まり室、30a:受圧部、32:燃料噴射孔、33:シート部、71a:バルブピストン摺動部、71b:バルブピストン細径部、71c:バルブピストン摺動端部、71d:バルブピストン移行部、71e:バルブピストン段部、71f:バルブピストン傾斜部、71g:バルブピストン底部、71h:スペース、71z:溝、72:バルブピストン下部、73:頂部、81:軸孔、81a:軸孔摺動部、81b:軸孔大径部、81c:軸孔摺動端部、82:制御圧室、83:導入側オリフィス通路、84:開閉用オリフィス通路、91:電磁石、92:ホルダ、92a:燃料還流路、93:電磁石ハウジング、94:アーマチュアプレート、95:アーマチュアボルト、95:ボルト軸本体、95b:ヘッド部、96:アーマチュアガイド、97:スプリング、98:ナット、99:制御弁体
図1
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