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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20231215BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231215BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20231215BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/00 H ZAB
B65D1/00 111
B29C49/22
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019193272
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021066475
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】安齋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】村屋 美子
(72)【発明者】
【氏名】飯田 高
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212155(JP,A)
【文献】特開2014-198429(JP,A)
【文献】特開2017-148963(JP,A)
【文献】特表2017-508680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 27/00
B65D 1/00
B29C 49/22-49/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側から順に、
第一の層と、
前記第一の層上に前記第一の層と接するように積層された第二の層と、
前記第二の層上に前記第二の層と接するように積層された第三の層と、
を含む容器であって、
前記第二の層が、前記第一の層と接する酸素バリア層を少なくとも含み、
前記第二の層と前記第三の層との界面には、前記第二の層と前記第三の層とが接着する接着部と、前記第二の層と前記第三の層とが接着せず、外部と連通する未接着部と、が存在し、
前記第一の層と前記第二の層との間の剥離強度が、前記接着部における前記第二の層と前記第三の層との間の剥離強度よりも低く、
前記未接着部は外部と連通する開口部を有し、該開口部の両端に接着部が存在する、容器。
【請求項2】
前記接着部が、前記第二の層と前記第三の層とが溶着する溶着部である請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記第三の層に含まれる前記第二の層と接する層を構成する材料が、前記第二の層に含まれる前記第三の層と接する層を構成する材料と同一種である請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記第二の層が、内側から順に、前記酸素バリア層と、接着層と、ポリオレフィンを含む層と、からなる請求項1から3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
前記第三の層に含まれる前記第二の層と接する層が、接着層である請求項1に記載の容器。
【請求項6】
前記第二の層が前記酸素バリア層からなる請求項5に記載の容器。
【請求項7】
前記第三の層が、支持層を含む請求項1から6のいずれか一項に記載の容器。
【請求項8】
前記酸素バリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体と、ポリオレフィンと、相容化剤とを含む請求項1から7のいずれか一項に記載の容器。
【請求項9】
前記第一の層に含まれる前記第二の層と接する層が、ポリオレフィンを含む請求項1から8のいずれか一項に記載の容器。
【請求項10】
前記未接着部において前記第三の層と接着し、かつ前記第二の層とは接着せず、前記未接着部から外部へ向けて延びる摘み部を有する請求項1から9のいずれか一項に記載の容器。
【請求項11】
前記第三の層が、前記第二の層の一部の表面上に積層されている請求項1から10のいずれか一項に記載の容器。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の容器の製造方法であって、
内側から順に、前記第一の層と、前記第二の層と、を含むパリソンを製造する工程と、
金型の内側表面に前記第三の層を配置する工程と、
前記パリソンを、前記金型を用いてブロー成形する工程と、
を含む容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包装容器としては、一般的に金属缶、ガラスビン、各種プラスチック容器等が使用されている。これらの中でもプラスチック容器は成形が容易であり、安価に製造できるため、各種用途に広く使用されている。例えば、プラスチック容器はケチャップ、マヨネーズ等の食品を内容物として収容する容器として使用されている。これらの包装容器には、容器内に残留する酸素や容器の壁を透過する酸素による内容物の変質や、フレーバーの低下が抑制されることが求められる。特に、金属缶やガラスビンでは容器の壁を通じての酸素透過は生じないが、プラスチック容器では容器の壁を通じての酸素透過が生じる場合がある。
【0003】
前記酸素透過を抑制するため、プラスチック容器を多層構造とすることが行われている。例えば、プラスチック容器を構成する層として、オレフィン系樹脂を含む外層及び内層に加えて、エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHとも示す)等の酸素バリア性樹脂を含む酸素バリア層を設けることが行われている(例えば特許文献1から3)。前記酸素バリア層は、一般的に接着性樹脂を含む接着層を介してポリオレフィン等を含むリグラインド層等の他の層と接着されている。多層構造を有するプラスチック容器の製造方法としては、例えばダイレクトブロー成形によるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-253426号公報
【文献】特開2001-121656号公報
【文献】特許第5428863号公報
【文献】特開2015-212155号公報
【文献】特開2001-199422号公報
【文献】特開2004-345646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年プラスチック容器による海洋汚染等が生じており、プラスチック容器を構成する材料の再利用が求められている。前述した酸素バリア層を有するプラスチック容器では、一般的に酸素バリア層が他の層と接着層を介して接着されているため、例えば他の層を再利用する際に酸素バリア層を十分に分離し、選別することは困難である。そのため、再利用材料に酸素バリア層を構成する材料が混入し、再利用材料を用いて製造される容器の品質が低下する場合がある。
【0006】
酸素バリア層を構成する材料の再利用材料への混入を抑制する方法として、例えば容器に容易に剥離可能な酸素バリア層を設ける方法が考えられる。この場合、使用者が容器の処分時に酸素バリア層を剥離し、他の層と分離した上で処分することで、リサイクル業者が酸素バリア層と他の層とを容易に分離、選別することができる。剥離可能な層を有する容器としては、例えば特許文献4から6に開示されている。
【0007】
本発明は、使用者が酸素バリア層を他層から容易に剥離できる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る容器は、
内側から順に、
第一の層と、
前記第一の層上に前記第一の層と接するように積層された第二の層と、
前記第二の層上に前記第二の層と接するように積層された第三の層と、
を含む容器であって、
前記第二の層が、前記第一の層と接する酸素バリア層を少なくとも含み、
前記第二の層と前記第三の層との界面には、前記第二の層と前記第三の層とが接着する接着部と、前記第二の層と前記第三の層とが接着せず、外部と連通する未接着部と、が存在し、
前記第一の層と前記第二の層との間の剥離強度が、前記接着部における前記第二の層と前記第三の層との間の剥離強度よりも低い。
【0009】
本発明に係る容器の製造方法は、
内側から順に、前記第一の層と、前記第二の層と、を含むパリソンを製造する工程と、
金型の内側表面に前記第三の層を配置する工程と、
前記パリソンを、前記金型を用いてブロー成形する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用者が酸素バリア層を他層から容易に剥離できる容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る容器の一例を示す正面図である。
図2】本発明に係る容器の第一の実施形態を示す断面図である。
図3】本発明に係る容器の第二の実施形態を示す断面図である。
図4】本発明に係る第三の層の例を示す模式図である。
図5】本発明に係る容器の製造方法の一例を示す模式図である。
図6】実施例及び比較例において作製した容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[容器]
本発明に係る容器は、内側から順に、第一の層と、前記第一の層上に前記第一の層と接するように積層された第二の層と、前記第二の層上に前記第二の層と接するように積層された第三の層と、を含む。ここで、前記第二の層は、前記第一の層と接する酸素バリア層を少なくとも含む。また、前記第二の層と前記第三の層との界面には、前記第二の層と前記第三の層とが接着する接着部と、前記第二の層と前記第三の層とが接着せず、外部と連通する未接着部と、が存在する。また、前記第一の層と前記第二の層との間の剥離強度は、前記接着部における前記第二の層と前記第三の層との間の剥離強度よりも低い。
【0013】
本発明者らは、例えばポリオレフィンを含む第一の層を再利用するために、使用者が酸素バリア層を含む第二の層を第一の層から容易に剥離できる容器の構成について検討した。その結果、第二の層上に、第二の層と接する第三の層を別途設け、第二の層と第三の層との界面に、第二の層と第三の層とが接着する接着部と、第二の層と第三の層とが接着せず、外部と連通する未接着部とを設け、かつ、第一の層と第二の層との間の剥離強度が、前記接着部における第二の層と第三の層との間の剥離強度よりも低くすることで、使用者が前記未接着部をきっかけとして第三の層を引き上げることで、第一の層から第二の層を第三の層と共に容易に剥離できることを見出した。
【0014】
すなわち、第二の層上に第三の層を、一部未接着部を設けつつ接着させることで、使用者は前記未接着部をきっかけとして第三の層を第二の層と共に引き上げることができ、容易に第一の層から第二の層を剥離することができる。また、第一の層と第二の層との間の剥離強度が、前記接着部における第二の層と第三の層との間の剥離強度よりも低いため、第三の層を第二の層と共に引き上げる際に、前記接着部において第三の層が第二の層から剥離することなく、第一の層から第二の層を第三の層と共に剥離できる。なお、第一の層と第二の層との間の剥離強度は、他の全ての層間における剥離強度よりも低くすることができる。第三の層は、例えば印字層を含むラベルであることができる。この場合使用者はラベルを剥離することで、酸素バリア層をラベルと共に容易に剥離することができる。以下、本発明の詳細について説明する。
【0015】
本発明に係る容器の一例を図1に示す。図1に示される容器1は、キャップにより開閉が可能である口部2と、容器の中央部である胴部3と、底部4とを備えるスクイズ容器である。容器本体は第一の層及び第二の層で形成され、容器本体の表面にラベルとしての第三の層7が接着されている。容器1では、胴部3を押すことで、内容物が口部2から外部へ押し出される。なお、本発明に係る容器はスクイズ容器に限定されず、種々の容器であることができ、例えば取っ手付き容器、折りたたみ容器、チューブ容器、ポンプ付き容器、高剛性容器等であることができる。
【0016】
本発明に係る容器は、内側から順に、第一の層と、第二の層と、第三の層と、をこの順序で含む多層容器であり、少なくとも第一の層、第二の層、及び第三の層を含めば、その層構成は特に限定されない。第一の層、第二の層、及び第三の層は、それぞれ単層でもよく、複数の層からなってもよい。第一の層は、ポリオレフィンを含むことができ、例えば第一のポリオレフィンを含む層であってもよく、第一のポリオレフィンを含む層と後述するリグラインド層からなってもよい。第二の層は、例えば内側から順に、酸素バリア層と、第二の接着層と、第二のポリオレフィンを含む層と、からなることができ、酸素バリア層からなることもできる。第三の層は、例えば内側から順に、第二の層の最外層と同一種の材料からなる層(例えば第三のポリオレフィンを含む層)または第三の接着層と、支持層と、印字層と、からなることができる。
【0017】
本発明に係る容器は、内側から順に、例えば第一の層(第一のポリオレフィンを含む層/リグラインド層)/第二の層(酸素バリア層/第二の接着層/第二のポリオレフィンを含む層)/第三の層(第三のポリオレフィンを含む層)の層構成を有していてもよく、第一の層(第一のポリオレフィンを含む層/リグラインド層)/第二の層(酸素バリア層)/第三の層(第三の接着層)の層構成を有していてもよく、第一の層(第一のポリオレフィンを含む層/リグラインド層/第一のポリオレフィンを含む層)/第二の層(酸素バリア層/第二の接着層/第二のポリオレフィンを含む層)/第三の層(第三の接着層)の層構成を有していてもよく、第一の層(第一のポリオレフィンを含む層/リグラインド層/第一のポリオレフィンを含む層)/第二の層(酸素バリア層/第二の接着層/第二のポリオレフィンを含む層)/第三の層(第三の接着層/支持層/印字層)の層構成を有していてもよい。
【0018】
本発明に係る容器の第一の実施形態の断面図を図2に示す。図2に示される容器は、容器の内側から順に、第一の層5、第二の層6、及び第三の層7を有する。第一の層5は、容器の内側から順に、第一のポリオレフィンを含む層8及びリグラインド層9からなる。第二の層6は、容器の内側から順に、酸素バリア層10、第二の接着層11、及び第二のポリオレフィンを含む層12からなる。第三の層7は、容器の内側から順に、第三のポリオレフィンを含む層13、支持層14、及び印字層15からなる。本実施形態では、第三の層7は、第二の層6の表面の一部を覆うラベルである。第二の層6と第三の層7との界面には、第二の層6と第三の層7とが接着する接着部16と、第二の層6と第三の層7とが接着せず、外部と連通する未接着部17と、が存在する。
【0019】
本実施形態では、第二の層6に含まれる第三の層7と接する層は第二のポリオレフィンを含む層12であり、第三の層7に含まれる第二の層6と接する層は第三のポリオレフィンを含む層13である。第二の層6に含まれる第三の層7と接する層を構成する材料と、第三の層7に含まれる第二の層6と接する層を構成する材料とはポリオレフィンである点で共通するため、両者の層は接する面の一部において溶融により接着されている。すなわち、接着部16は、第二の層6と第三の層7とが溶着する溶着部であり、第二の層6と第三の層7との間の剥離強度が高められている。また、未接着部17には、第三の層7と接着し、第二の層6とは接着せず、未接着部17から外部へ向けて延びる摘み部18が設けられている。
【0020】
本実施形態では、第一の層5と第二の層6との間の剥離強度が、接着部16における第二の層6と第三の層7との間の剥離強度よりも低いため、使用者が未接着部17に設けられた摘み部18を矢印Bの方向に引き上げることで、A-A’線において第一の層5から酸素バリア層10を含む第二の層6を、ラベルである第三の層7と共に容易に剥離することができる。なお、本実施形態では未接着部17に摘み部18が設けられているが、摘み部18を設けず、例えば未接着部17に指を入れて第三の層7を摘み上げることで、第一の層5から第二の層6を第三の層7と共に剥離してもよい。未接着部17はイージーピール層(易剥離層)からなってもよい。また、第三の層7の端部を折り返して第二の層6と接着することで、折り返し部を未接着部17とし、かつ、折り返し部を摘み部18としてもよい。
【0021】
本発明に係る容器の第二の実施形態の断面図を図3に示す。図3に示される容器は、容器の内側から順に、第一の層5、第二の層6、及び第三の層7を有する。第一の層5は、容器の内側から順に、第一のポリオレフィンを含む層8及びリグラインド層9からなる。第二の層6は、酸素バリア層10からなる。第三の層7は、容器の内側から順に、第三の接着層19、支持層14、及び印字層15からなる。本実施形態においても、第三の層7は、第二の層6の表面の一部を覆うラベルである。第二の層6と第三の層7との界面には、第二の層6と第三の層7とが接着する接着部16と、第二の層6と第三の層7とが接着せず、外部と連通する未接着部17と、が存在する。接着部16では、第三の接着層19の接着性によって第二の層6と第三の層7とが接着しており、第二の層6と第三の層7との間の剥離強度が高められている。一方、第二の層6と第三の層7の界面の一部には摘み部18が設けられており、摘み部18は第三の接着層19とは接着しているが第二の層6とは接着していないため、摘み部18が設けられている部分は未接着部17となっている。
【0022】
本実施形態では、第一の層5と第二の層6との間の剥離強度が、接着部16における第二の層6と第三の層7との間の剥離強度よりも低いため、使用者が未接着部17に設けられた摘み部18を矢印Bの方向に引き上げることで、A-A’線において第一の層5から酸素バリア層10からなる第二の層6を、ラベルである第三の層7と共に容易に剥離することができる。
【0023】
(第一の層)
第一の層は容器の最も内側に配置される層であり、ポリオレフィンを含むことができ、単層からなってもよく、複数の層からなってもよい。第一の層は特に限定されないが、第一の層に含まれる第二の層と接する層が、ポリオレフィンを含むことが好ましい。例えば、第一の層は第一のポリオレフィンを含む層の1層からなってもよく、内側から順に、例えば第一のポリオレフィンを含む層と、リグラインド層の2層からなってもよく、内側から順に、例えば第一のポリオレフィンを含む層と、リグラインド層と、第一のポリオレフィンを含む層の3層からなってもよい。3層構成の場合、2つの第一のポリオレフィンを含む層は異なる材料からなっても良い。
【0024】
第一の層と第二の層の合計の質量(100質量%)に対する第一の層の質量の割合は、50~99質量%であることが好ましく、75~98質量%であることがより好ましい。前記割合が50質量%以上であることにより、耐落下性に優れると共に酸素バリア性に優れる。また、前記割合が99質量%以下であることにより、酸素バリア性が良好となる。
【0025】
第一の層が第一のポリオレフィンを含む層と、リグラインド層の2層からなる場合、または、第一のポリオレフィンを含む層と、リグラインド層と、第一のポリオレフィンを含む層の3層からなる場合、第一の層と第二の層の合計の質量(100質量%)に対する第一のポリオレフィンを含む層の割合は、1~98質量%であることが好ましい。また、第一の層と第二の層の合計の質量(100質量%)に対するリグラインド層の割合は、1~98質量%であることが好ましい。
【0026】
<第一のポリオレフィンを含む層>
第一のポリオレフィンを含む層のポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等のポリエチレンや、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)がより好ましい。また、必要に応じて、後述する酸変性ポリエチレン、滑剤、改質剤、顔料、紫外線吸収剤等を含んでもよい。なお、第一の層が第一のポリオレフィンを含む層を複数含む場合、第一のポリオレフィンを含む層のポリオレフィンは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0027】
<リグラインド層>
リグラインド層はリプロ層とも呼ばれ、成形開始時に排出される樹脂やバリなどの容器以外の部分を粉砕したスクラップ樹脂を含む層である。該スクラップ樹脂を再利用することにより、未使用の樹脂であるバージン材の使用量を低減できるため、環境保全の観点から好ましく、また製造コストを低減できる。
【0028】
スクラップ樹脂は、主にポリオレフィンを含むことができる。ポリオレフィンとしては、前記第一のポリオレフィンを含む層のポリオレフィンが挙げられる。なお、前記第一のポリオレフィンを含む層はバージン材からなり、スクラップ樹脂を含まない。リグラインド層はスクラップ樹脂からなってもよく、スクラップ樹脂と、バージン材とを含んでもよい。リグラインド層中のスクラップ樹脂の割合は1~100質量%であることが好ましい。なお、第一の層が第一のポリオレフィンを含む層とリグラインド層を含む場合、第一のポリオレフィンを含む層とリグラインド層とは同じ材料を含むため両者の接着性は高く、第一の層から第二の層を剥離する際にも該第一のポリオレフィンを含む層と該リグラインド層との間では剥離は生じない。また、内容物と接する第一の層の最も内側の層は、バージン材からなる第一のポリオレフィンを含む層であることが好ましい。
【0029】
容器に含まれる層がリグラインド層であることは、例えば、ミクロトームで作製した切片の光学顕微鏡観察、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた材料分析、または、それらの組合せによって確認可能である。具体的には、光学顕微鏡観察では、屈折率の異なる材料が分散した海島状に観察されたり、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた材料分析では、ポリエチレンの他にEVOHに特徴的なOH基の伸縮振動に基づくスペクトルが認められたりする。
【0030】
(第二の層)
第二の層は、第一の層上に第一の層と接するように積層されている。第二の層は、酸素バリア層の単層からなってもよく、複数の層からなってもよい。第二の層が複数の層からなる場合、第二の層は、副層としての酸素バリア層を第一の層と接する層として少なくとも含む。第二の層は、例えば酸素バリア層の1層からなってもよく、内側から順に、例えば酸素バリア層と、第二の接着層と、第二のポリオレフィンを含む層の3層からなってもよい。
【0031】
第一の層と第二の層の合計の質量(100質量%)に対する第二の層の質量の割合は、1~50質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましい。前記割合が1質量%以上であることにより、酸素バリア性が良好となる。また、前記割合が50質量%以下であることにより、耐落下性も良好となる。
【0032】
第二の層が内側から順に、酸素バリア層と、第二の接着層と、第二のポリオレフィンを含む層の3層からなる場合、第一の層と第二の層の合計の質量(100質量%)に対する酸素バリア層の質量の割合は、1~50質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましい。また、第一の層と第二の層の合計の質量(100質量%)に対する第二の接着層の質量の割合は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。また、第一の層と第二の層の合計の質量(100質量%)に対する第二のポリオレフィンを含む層の質量の割合は、0.1~50質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましい。
【0033】
<酸素バリア層>
酸素バリア層は、第一の層と接し、酸素バリア性を有する材料を含む。該材料としては、例えばEVOH、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)等が挙げられる。これらの中でも、高い酸素遮断性を有する観点から、EVOHが好ましい。
【0034】
EVOHとしては、エチレン含有量が20~60モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好ましい。前記エチレン含有量は、酸素バリア性の観点から20~38モル%であることが好ましい。前記EVOH(エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物)は、フェノール/水の質量比が85/15の混合溶媒中、30℃で測定して0.01dl/g以上、特に0.05dl/g以上の固有粘度を有することができる。
【0035】
酸素バリア層にEVOHを使用する場合には、酸素バリア層は耐落下衝撃性向上を目的とした各種材料を含んでいてもよい。前記材料としては、例えば、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン/α-オレフィン共重合体、超低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンゴム等が挙げられる。これらの材料は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0036】
また、酸素バリア層は、酸素バリア性を有する材料以外に、ポリオレフィンと、相容化剤とを含んでもよい。酸素バリア性を有する材料とポリオレフィンとが相容化剤によって相容化され、均質に分布するため、ポリオレフィンに由来して、酸素バリア層が第一の層に対して適切な接着性を示す。例えば、酸素バリア層は、EVOHと、ポリオレフィンと、相容化剤とを含むことができる。
【0037】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく、LDPEがより好ましい。LDPEは、密度が0.880g/cm以上0.930g/cm未満の範囲内であるポリエチレンであり、超低密度ポリエチレンや線状低密度ポリエチレンも含まれる。成形時におけるEVOHとの相分離等を抑制し、層間剥離を防止する観点から、LDPEの190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10min以上であることが好ましい。また、該MFRは成形性の観点から30g/10min以下であることが好ましい。該MFRは0.3~10g/10minであることがより好ましい。
【0038】
相容化剤は、酸素バリア性を有する材料とポリオレフィンとを相容化させ、両者の相分離構造のサイズを小さくし、酸素バリア性を有する材料とポリオレフィンとの凝集力を高めるために使用される。相容化剤としては、例えばマレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボン酸又はその無水物、マレイン酸-ポリエチレン共重合体、無水マレイン酸-ポリエチレン共重合体、アミド、エステルなどでグラフト変性されたグラフト変性オレフィン樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ケン化度が20~100%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン含有量が85%以上であるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ハイドロタルサイト化合物、アイオノマー(イオン架橋オレフィン系共重合体)等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、相容化剤としては、酸素バリア性を有する材料と化学反応を起こす酸・酸無水物を有さない樹脂が好ましく、特にアイオノマーが好ましい。例えば三井・デュポンポリケミカル社製アイオノマー(商品名:ハイミラン1601)等が挙げられる。
【0039】
酸素バリア層がEVOHと、ポリオレフィンと、相容化剤とを含む場合、酸素バリア層は、EVOHとポリオレフィンとを98:2~78:22の質量比で含むことが好ましく、97:3~80:20の質量比で含むことがより好ましく、96:4~85:15の質量比で含むことがさらに好ましい。さらに、EVOHとポリオレフィンとの合計量100質量部当たり1~11質量部の相容化剤を含むことが好ましく、1.5~10質量部の相容化剤を含むことがより好ましく、2~7.5質量部の相容化剤を含むことがさらに好ましい。酸素バリア層がEVOHと、ポリオレフィンと、相容化剤とを前記範囲内で含むことにより、酸素バリア層の前記第一の層からの剥離強度を適切な範囲内に調整しやすい。なお、EVOHの含有量が多くなると剥離強度が低下する傾向があり、ポリオレフィン及び相容化剤の含有量が多くなると剥離強度が向上する傾向がある。
【0040】
EVOH等の酸素バリア性を有する材料、ポリオレフィン及び相容化剤の混合は、例えば押出機や射出機に設けられている混練部で溶融混練することにより実施することができる。
【0041】
酸素バリア層の第一の層からの剥離強度は、前記接着部における第二の層と第三の層との間の剥離強度よりも低ければ特に限定されないが、0.12~2.5N/15mmが好ましく、0.12~1.51N/15mmがより好ましく、0.22~1.5N/mmがさらに好ましく、0.24~0.66N/mmが特に好ましい。なお、本発明において剥離強度は、180度剥離強度試験によって測定される値である。
【0042】
<第二の接着層>
第二の接着層は、酸素バリア層と第二のポリオレフィンを含む層との接着性を確保する層である。第二の接着層の材料としては、例えば酸変性ポリエチレンを用いることができる。酸変性ポリエチレンとしては、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボン酸及びその無水物、アミド、エステル等を用いて、ポリエチレンをグラフト変性したものが挙げられる。これらの中でも、酸変性ポリエチレンとしては、マレイン酸又は無水マレイン酸でグラフト変性されたポリエチレンが好ましい。変性するポリエチレンは特に制限されないが、例えばLDPEやLLDPEが挙げられる。
【0043】
<第二のポリオレフィンを含む層>
第二のポリオレフィンを含む層のポリオレフィンとしては、前記第一のポリオレフィンを含む層のポリオレフィンと同様のポリオレフィンを用いることができる。第二のポリオレフィンを含む層のポリオレフィンと、前記第一のポリオレフィンを含む層のポリオレフィンとは同一であってもよく、異なっていてもよい。第二のポリオレフィンを含む層は、必要に応じて、前記酸変性ポリエチレン、滑剤、改質剤、顔料、紫外線吸収剤等を含んでもよい。前記酸変性ポリエチレンを含む場合には、前記第二の接着層を不要とすることが可能になる。
【0044】
(第三の層)
第三の層は、第二の層上に第二の層と接するように積層されている。第三の層は特に限定されず、単層からなってもよく、複数の層からなってもよい。第三の層に張りをもたせ、剥離時に剥離しやすくする観点から、第三の層は支持層を含むことが好ましい。また、第三の層は印字層を含むことができ、この場合第三の層は容器本体(第一の層と第二の層を含む)表面に対して付与されるラベルである。第三の層は、内側から順に、例えば第三のポリオレフィンを含む層と、支持層と、印字層の3層からなってもよく、第三の接着層と、支持層と、印字層の3層からなってもよい。第三の層は、第二の層の表面の全体を覆う必要はなく、第二の層の表面の一部を覆っていればよい。すなわち、第三の層は、第二の層の一部の表面上に積層されていることができる。例えば、第三の層は、第二の層の表面の面積(100%)の1~100%を覆うことができる。第三の層の形状は特に限定されず、例えば矩形、多角形、円形、楕円形等であることができる。
【0045】
第三の層の厚みは特に限定されないが、30~300μmであることが好ましく、150~250μmであることがより好ましい。前記厚みが30μm以上であることにより、剥離時の第三の層自身の破断を防ぐことができる。また、前記厚みが300μm以下であることにより、溶着が十分にされず剥離強度が低下したり、容器本体への追従性低下により落下時の強度が低下したりすることを防ぐことができる。第三のポリオレフィンを含む層の厚みは30~200μm、支持層の厚みは1~20μm、印字層の厚みは1~20μmであることが好ましい。特に、第三のポリオレフィンを含む層を第二のポリオレフィンを含む層と溶着させる場合、溶着が十分になされ、接着部における高い剥離強度が得られる観点から、第三のポリオレフィンを含む層の厚みは50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
【0046】
<第三のポリオレフィンを含む層>
第三のポリオレフィンを含む層のポリオレフィンとしては、前記第一のポリオレフィンを含む層のポリオレフィンと同様のポリオレフィンを用いることができる。第三のポリオレフィンを含む層のポリオレフィンと、前記第一及び前記第二のポリオレフィンを含む層のポリオレフィンとは同一であってもよく、異なっていてもよい。第三のポリオレフィンを含む層は、必要に応じて、前記酸変性ポリエチレン、滑剤、改質剤、顔料、紫外線吸収剤等を含んでもよい。
【0047】
<第三の接着層>
第三の接着層の材料としては、第二の接着層の材料と同様のものを用いることができる。第三の接着層の材料と、第二の接着層の材料とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
<支持層>
支持層は、第三のポリオレフィンを含む層や第三の接着層の伸びを抑制するために設けることができる層である。支持層の材料としては、特に限定されないが、例えばナイロン、アルミニウム、紙、ポリスチレン、PET、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0049】
<印字層>
印字層は、支持層に直接印刷を施すことで形成される層であってもよい。また、印字層は、ポリアミド系フィルムやポリエステル系フィルムの内側(内容物側)に印刷が施されたフィルムを積層することで形成される層であってもよい。
【0050】
(接着部、未接着部)
本発明では、第二の層と第三の層との界面に、第二の層と第三の層とが接着する接着部と、第二の層と第三の層とが接着せず、外部と連通する未接着部と、が存在する。すなわち、第二の層と第三の層との接触面の一部は接着しており、残りの接着していない部分は外部と連通している。使用者は、例えば該未接着部の外部と連通する部分(開口部)に指を入れる等して、第三の層を第二の層と共に引き上げることができるため、該未接着部をきっかけとして第一の層から第二の層を容易に剥離することができる。また、接着部における第二の層と第三の層との間の剥離強度は、第一の層と第二の層との間の剥離強度よりも高い。これにより、使用者が第三の層を第二の層と共に引き上げる際に、接着部において第三の層が第二の層から剥離することなく、第一の層から第二の層を第三の層と共に剥離することができる。
【0051】
接着部は、第二の層と第三の層とが溶着する溶着部であることが、接着部において高い剥離強度が得られ、接着部における剥離強度を第一の層と第二の層との間の剥離強度よりも容易に高くすることができる観点から好ましい。第二の層と第三の層との界面の一部を溶着させるために、第三の層に含まれる第二の層と接する層を構成する材料(例えば樹脂材料)は、第二の層に含まれる第三の層と接する層を構成する材料(例えば樹脂材料)と同一種であることが好ましい。例えば、第二の層に含まれる第三の層と接する層がポリオレフィンを含み、かつ、第三の層に含まれる第二の層と接する層がポリオレフィンを含むことが好ましい。具体的には、図2に示されるように、第三の層7に含まれる第二の層6と接する層が第三のポリオレフィンを含む層13、第二の層6に含まれる第三の層7と接する層が第二のポリオレフィンを含む層12である場合、両層はポリオレフィンを含むため、接触面の一部を溶着することで接着部16を形成することができる。なお、両層に含まれるポリオレフィンは、ポリオレフィンであればその種類は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0052】
一方、第三の層に含まれる第二の層と接する層が接着層であることにより、第二の層と第三の層との間に接着部を形成してもよい。この場合にも、接着部において高い剥離強度が得られ、接着部における剥離強度を第一の層と第二の層との間の剥離強度よりも容易に高くすることができる。例えば図3に示されるように、第三の層7に含まれる第二の層6と接する層を第三の接着層19とすることで、第二の層6(酸素バリア層10)と第三の層7との間に接着部16を形成することができる。
【0053】
接着部と未接着部の合計の面積に対する、接着部の面積の割合は、10~99%であることが好ましく、50~95%であることがより好ましく、70~80%であることがさらに好ましい。該割合が10%以上であることにより、未接着部をきっかけとして第一の層から第二の層を剥離する際に、接着部における第二の層と第三の層との剥離を十分に防止することができる。また、該割合が99%以下であることにより、未接着部をきっかけとした第一の層からの第二の層の剥離を容易に行うことができる。
【0054】
また、未接着部は外部と連通する開口部を有することが好ましい。すなわち、第三の層は、未接着部が外部と連通する開口部を有するように積層されていることが好ましい。具体的には、未接着部の外部と連通する開口部の両端に接着部が存在することが好ましく、未接着部は指等が挿入可能なようにポケット形状を有することが好ましい。この場合、該開口部に指を入れる等して第三の層を引き上げる際に、該両端の接着部に応力が局所的にかかるため、該両端の接着部に対応する第一の層と第二の層との界面において、容易に剥離を生じさせることができる。
【0055】
例えば、図4(a)に示されるように、第三の層が矩形である場合、未接着部17の外部と連通する開口部20の両端21a及び21bに、接着部16が存在することが好ましい。図4(a)において、開口部20の両端21a又は21bに存在する接着部16の幅w又はwは、それぞれ1~100mmであることが好ましく、1~30mmであることがより好ましく、1~10mmであることがさらに好ましい。該幅が1mm以上であることにより、開口部20の両端21a又は21bに存在する接着部16における第二の層と第三の層との剥離を十分に防止することができる。また、該幅が100mm以下であることにより、開口部20の両端21a又は21bに存在する接着部16に局所的に応力がよりかかりやすくなるため、対応する第一の層と第二の層との界面における剥離をより生じやすくすることができる。後述する図4(c)についても同様である。なお、wとwとは同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第三の層の幅wは5~200mmであることが好ましく、30~150mmであることがより好ましく、50~100mmであることがさらに好ましい。wが5mm以上であることにより、接着部における第二の層と第三の層との剥離を十分に防止することができる。wが200mm以下であることにより、剥離の際に力を必要とせず、容易に剥離できる。後述する図4(c)についても同様である。w/w、w/wは、それぞれ0.01~0.5が好ましく、0.02~0.3がより好ましい。後述する図4(c)についても同様である。また、例えば図4(b)に示されるように、第三の層が楕円形である場合、未接着部17の外部と連通する開口部20の両端21a及び21bに、接着部16が存在することが好ましい。
【0056】
接着部における第二の層と第三の層との間の剥離強度は、第一の層と第二の層との間の剥離強度よりも高ければ特に限定されないが、出来るだけ高い方が好ましく、剥離不可であることがより好ましい。なお、該各剥離強度は後述する方法により測定される値である。
【0057】
(摘み部)
本発明では、未接着部をきっかけとして第三の層を第二の層と共に引き上げることで、第一の層から第二の層を剥離できる。未接着部をきっかけとする方法として、例えば未接着部に指を入れることで第三の層を第二の層と共に引き上げてもよいが、未接着部において第三の層と接着し、かつ第二の層とは接着せず、未接着部から外部へ向けて延びる摘み部を設け、該摘み部を引き上げることで第三の層を第二の層と共に引き上げてもよい。例えば図4(c)に示されるように、摘み部18は、未接着部17から外部へ向けて(図4(c)の上方向へ)延びるように設けられる。
【0058】
摘み部の形状は特に限定されず、例えば矩形、円形等であることができる。摘み部の材料は特に限定されず、例えばポリオレフィン、ナイロン、PET、フッ素樹脂、シリコン樹脂等であることができる。摘み部の厚みは特に限定されず、例えば0.1~2mmであることができる。
【0059】
摘み部は、例えば第三の層と接着層を介して接着されていてもよい。一方、摘み部は第二の層とは接着しないため、摘み部の第二の層側の表面には必要に応じて剥離層が形成されていてもよい。なお、図3に示されるように、第三の層7に含まれる第二の層6と接する層が第三の接着層19である場合、摘み部18は第三の接着層19と直接接着することができる。一方、摘み部18と第二の層6(酸素バリア層10)との界面は接着しないため、摘み部18が存在する部分が未接着部17となる。
【0060】
また、図4(d)に示されるように、第三の層7をB-B’線にて折り返して第二の層6と接着することで、折り返し部を未接着部17かつ摘み部18としてもよい。図4(d)において、第三の層の幅wは5~200mmであることが好ましく、5~50mmであることがより好ましく、5~30mmであることがさらに好ましい。wが5mm以上であることにより、接着部における第二の層と第三の層との剥離を十分に防止することができる。wが200mm以下であることにより、剥離の際に力を必要とせず、容易に剥離できる。
【0061】
(用途)
本発明に係る容器は、例えばわさび、しょうが、からし、ケチャップ、マヨネーズ、ジャム、チョコレート等の粘性食品、練歯磨、化粧品等を収容し、保存するための容器として用いることができる。また、本発明に係る容器は、使用者が容器を処分する際に酸素バリア層を剥離し、第一の層を含む他の層と分離した上で処分することができるため、再利用可能な容器として有用である。
【0062】
[容器の製造方法]
本発明に係る容器の製造方法は特に限定されないが、例えば内側から順に、第一の層と、第二の層と、を含むパリソンを製造する工程と、金型の内側表面に第三の層を配置する工程と、パリソンを、金型を用いてブロー成形する工程と、を含むことができる。
【0063】
例えば、まず、ブロー成形に用いる金型を準備し、該金型の内側表面の所望の位置に第三の層を配置する。この時、第二の層と接着させる第三の層の面とは反対側の面を金型側に向けて、第三の層を金型の内側表面へ貼り付ける。次に、図5(a)に示されるように、多層多重ダイス24より共押出された溶融状態のチューブ状のパリソン23を、第三の層7が内面に配置された金型22内に供給する。チューブ状のパリソン23は、内側から順に、第一の層と、第二の層と、を含む。その後、図5(b)に示されるように、パリソン23を金型22で両側から挟んでパリソン23をピンチオフすると共に融着し、パリソン23の内部に空気などの圧縮気体を吹き込んで膨張させ、容器の形状に成形する。その後、冷却し、金型22を開いて成形品を取り出す。このようなダイレクトブロー成形による製造方法によると、材料が溶融した状態で多層にするため、本来であれば接着しない材料であっても、材料同士が密着することで、ある程度の接着力を得ることができる。
【0064】
第二の層と第三の層との界面の一部を溶着により接着する場合、ブロー成形時のパリソンの表面温度は、第三の層に含まれる第二の層と接する層を構成する材料(例えば樹脂材料)の融点、及び第二の層に含まれる第三の層と接する層を構成する材料(例えば樹脂材料)の融点以上であることが好ましい。各層を構成する材料にもよるが、例えばブロー成形時のパリソンの表面温度は200℃以上であることが好ましく、205~230℃であることがより好ましい。また、ブロー成形時の圧力は0.3MPa以上であることが好ましく、0.5~0.7MPaであることがより好ましい。
【実施例
【0065】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。各実施例及び比較例において得られた容器における、各層間の剥離強度及び剥離起点強度の測定、並びに剥離評価は以下の方法により行った。
【0066】
[第一の層と第二の層との間の剥離強度(剥離強度S12)の測定]
剥離強度S12を、180度剥離試験により測定した。具体的には、第三の層であるラベルが積層されていない容器部分について、テンシロン万能試験機を用いて30mm/minの条件で、第一の層と第二の層との間の剥離強度S12(N/15mm)を測定した。
【0067】
[第二の層と第三の層との間の剥離強度(剥離強度S23)および剥離起点強度(剥離起点強度S)の測定]
第三の層であるラベルが積層されている容器部分について、該部分を固定治具によって固定し、未接着部における第三の層又は摘み部を第二の層の面に対して垂直方向に引き上げ、テンシロン万能試験機を用いて500mm/minの条件で第二の層と第三の層との間の剥離強度S23(N/15mm)および第二の層が破断したときの剥離起点強度S(N)を測定した。なお、剥離強度S23の方が剥離強度S12よりも大きい場合には、第二の層の破断が生じた後、第一の層と第二の層との間で優先的に剥離が生じる。この場合、第二の層の破断時に剥離起点強度Sは測定可能であるが、剥離強度S23は第二の層の破断のため測定できなかった(すなわち、「剥離不可」であった。)。
【0068】
[剥離評価]
各実施例及び比較例において得られた容器の未接着部における第三の層又は摘み部を、使用者が摘んで引き上げることで酸素バリア層を剥離した際の剥離性を、以下の基準で評価した。なお、評価が「A+」、「A」又は「B」であれば、実用上問題なく酸素バリア層を剥離することができる。
A+:酸素バリア層を特に容易に剥離することができる。
A :酸素バリア層を容易に剥離することができる。
B :酸素バリア層を剥離することができる。
C :酸素バリア層の剥離が困難である。
【0069】
[実施例1]
図6に示されるように、内側から順に、第一の層5(第一のポリオレフィンを含む層8)/第二の層6(酸素バリア層10/第二の接着層11/第二のポリオレフィンを含む層12)/第三の層7(第三のポリオレフィンを含む層13/支持層14/印字層15)の層構成を有する、図1に示される形状を有するスクイズ容器を作製した。
【0070】
酸素バリア層10の材料として、EVOH(商品名:ソアノール DC3203RB、三菱ケミカル(株)製)70質量部、ポリオレフィンとしてのLDPE(商品名:ノバテックLD ZE41K、日本ポリエチレン(株)製)20質量部、及び相容化剤としてのアイオノマー(商品名:ハイミラン1601、三井・ダウポリケミカル(株)製)をEVOHとポリオレフィンとの合計量100質量部当たり10質量部を準備した。第一のポリオレフィンを含む層8及び第二のポリオレフィンを含む層12の材料として、LDPE(商品名:ノバテックLD ZE41K、日本ポリエチレン(株)製)を準備した。第二の接着層11の材料として、酸変性LDPE(商品名:モディックL522、三菱ケミカル(株)製)を準備した。
【0071】
第三の層7として、第三のポリオレフィンを含む層13としての厚さ50μmのLLDPEからなる層と、支持層14としての厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムと、印字層15としての厚さ12μmの延伸PETフィルム層と、がこの順序で積層されたラベルを準備した。該ラベルは、図4(d)に示されるように、幅wが30mmの矩形状のラベルである。後述するように、ラベルの一辺の一部を折り返して溶着することで、未接着部17及び摘み部18を形成した。
【0072】
ブロー成形に用いる金型の内側に、端部を折り返して第三の層7を貼り付けた。次に、第一のポリオレフィンを含む層8、酸素バリア層10、第二の接着層11、及び第二のポリオレフィンを含む層12の材料を押出機にそれぞれ投入した。図5(a)に示されるように、多層多重ダイス24より共押出された溶融状態のチューブ状のパリソン23を、第三の層7が内面に貼り付けられた金型22内に供給した。その後、図5(b)に示されるように、パリソン23を金型22で両側から挟んでパリソン23をピンチオフすると共に融着し、パリソン23の内部に圧縮気体を吹き込んで膨張させ、容器の形状に成形した。ブロー成形時のパリソンの表面温度は205℃、圧力は0.5MPa、ブロー成形の時間は12秒であった。その後、冷却し、金型22を開いて成形品を取り出し、容量500ml、質量20gのスクイズ容器を得た。
【0073】
第一の層5と第二の層6の合計の質量(100質量%)に対する各層の質量割合は、第一のポリオレフィンを含む層8:86.5質量%、酸素バリア層10:3.5質量%、第二の接着層11:1.0質量%、第二のポリオレフィンを含む層12:9.0質量%であった。第二の層全体の厚みは、50μmであった。第三のポリオレフィンを含む層13と第二のポリオレフィンを含む層12との界面において、折り返しにより摘み部18が形成された部分は溶着しておらず(未接着部17)、それ以外の部分は溶着していた(接着部16)。得られた容器について、前記各層間の剥離強度及び剥離起点強度の測定、並びに剥離評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例2~5]
図4(d)におけるwを表1に示されるように変更した以外は、実施例1と同様に容器を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0075】
[比較例1]
ラベルの一辺の一部を折り返さずに溶着することで、第三のポリオレフィンを含む層13と第二のポリオレフィンを含む層12との界面を全て溶着させた(接着部16のみを有し、未接着部17を有さない)以外は、実施例1と同様に容器を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
評価の結果、実施例1~5では、第一の層と第二の層の間は、剥離強度S12が0.4N/15mmと非常に小さな接着力で積層されており、使用時における屈曲にもデラミネーションすることなく追従し得るものであり、外観不良を発生させるおそれがないと言える。これに対し、第二の層と第三の層の間は、ラベルと容器本体がしっかりと溶着されているため剥離強度S23が剥離不可となることで、剥離強度S12よりも大きな剥離強度を有していた。また、第二の層を引き剥がすのに必要な剥離起点強度Sは、ラベルの幅wによって異なり、剥離評価に影響を及ぼすことが分かる。一方、未接着部を設けない比較例1では、ラベルが容器本体と完全に一体となっているため、剥離強度S23及び剥離起点強度Sを測定できず、また剥離評価において剥離することが不可能であった。
【0078】
[実施例6~8]
第三の層7としてのラベルを、図4(a)に示されるラベルに変更した。具体的には、表2に示される幅w、w、w、wの長さを設定し、市販のテフロン(登録商標)テープを貼り付けることで未接着部17を形成した。また、剥離評価では、摘み部を引き剥がす代わりに未接着部17に指を差入れて摘まみ、接着部16の方向に引き上げて剥離した。これら以外は、実施例1と同様に容器を作製し、前記剥離評価を行った。結果を表2に示す。なお、実施例6~8では、第一の層と第二の層との間の剥離強度は、接着部における第二の層と第三の層との間の剥離強度よりも低かった。
【0079】
【表2】
【0080】
表2の結果より、実施例6、7は剥離評価において、容易に第二の層を引き剥がすことができた。実施例8は、実施例5と同程度の評価結果であったが、実施例6、7と比較して第二の層と第三の層の間の剥離の起点となる部分に力が集中されにくいために、剥離起点強度が実施例6、7に比べて大きくなったと考えられる。
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]内側から順に、
第一の層と、
前記第一の層上に前記第一の層と接するように積層された第二の層と、
前記第二の層上に前記第二の層と接するように積層された第三の層と、
を含む容器であって、
前記第二の層が、前記第一の層と接する酸素バリア層を少なくとも含み、
前記第二の層と前記第三の層との界面には、前記第二の層と前記第三の層とが接着する接着部と、前記第二の層と前記第三の層とが接着せず、外部と連通する未接着部と、が存在し、
前記第一の層と前記第二の層との間の剥離強度が、前記接着部における前記第二の層と前記第三の層との間の剥離強度よりも低い容器。
[2]前記接着部が、前記第二の層と前記第三の層とが溶着する溶着部である[1]に記載の容器。
[3]前記第三の層に含まれる前記第二の層と接する層を構成する材料が、前記第二の層に含まれる前記第三の層と接する層を構成する材料と同一種である[2]に記載の容器。
[4]前記第二の層が、内側から順に、前記酸素バリア層と、接着層と、ポリオレフィンを含む層と、からなる[1]から[3]のいずれかに記載の容器。
[5]前記第三の層に含まれる前記第二の層と接する層が、接着層である[1]に記載の容器。
[6]前記第二の層が前記酸素バリア層からなる[5]に記載の容器。
[7]前記第三の層が、支持層を含む[1]から[6]のいずれかに記載の容器。
[8]前記酸素バリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体と、ポリオレフィンと、相容化剤とを含む[1]から[7]のいずれかに記載の容器。
[9]前記第一の層に含まれる前記第二の層と接する層が、ポリオレフィンを含む[1]から[8]のいずれかに記載の容器。
[10]前記未接着部において前記第三の層と接着し、かつ前記第二の層とは接着せず、前記未接着部から外部へ向けて延びる摘み部を有する[1]から[9]のいずれかに記載の容器。
[11]前記第三の層が、前記第二の層の一部の表面上に積層されている[1]から[10]のいずれかに記載の容器。
[12][1]から[11]のいずれかに記載の容器の製造方法であって、
内側から順に、前記第一の層と、前記第二の層と、を含むパリソンを製造する工程と、
金型の内側表面に前記第三の層を配置する工程と、
前記パリソンを、前記金型を用いてブロー成形する工程と、
を含む容器の製造方法。
【符号の説明】
【0081】
1 容器
2 口部
3 胴部
4 底部
5 第一の層
6 第二の層
7 第三の層
8 第一のポリオレフィンを含む層
9 リグラインド層
10 酸素バリア層
11 第二の接着層
12 第二のポリオレフィンを含む層
13 第三のポリオレフィンを含む層
14 支持層
15 印字層
16 接着部
17 未接着部
18 摘み部
19 第三の接着層
20 開口部
21 端部
22 金型
23 パリソン
24 多層多重ダイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6