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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】架橋発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20231215BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
C08J3/24 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019193385
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021066813
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 祐介
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】有野 恭巨
(72)【発明者】
【氏名】菊地 義治
(72)【発明者】
【氏名】大久保 太一
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-051670(JP,A)
【文献】特表平11-512357(JP,A)
【文献】特開2002-292729(JP,A)
【文献】特開2020-139008(JP,A)
【文献】特開2014-114379(JP,A)
【文献】特開2017-043784(JP,A)
【文献】国際公開第2013/147104(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/032697(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0192289(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0035407(US,A1)
【文献】特開2018-131527(JP,A)
【文献】特開2004-051669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C44/00-44/60
48/00-48/96
67/20
C08J9/00-9/42
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、式(I)および(II)から選ばれる少なくとも1種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有し、下記(i)および(ii)の要件を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)と、
ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物(Y)と、
白金系触媒(Z)と、
発泡剤と
を含有し、前記発泡剤を前記共重合体(S)100質量部に対して1~30質量部含有する組成物(ただし、二酸化炭素および/または窒素を発泡剤として含有する組成物を除く)を、押出機にて押し出し、縦型遠赤外線架橋装置にて架橋させる工程を有する、
架橋発泡体の製造方法。
【化1】
(i)モル比(エチレン(A)由来の構成単位/炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位)が、40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)由来の構成単位の含有割合が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)100質量%中、0.07~10質量%である。
【請求項2】
前記共重合体(S)の、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が1.0~4.0dL/gである、請求項1に記載の架橋発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記組成物が、前記化合物(Y)を前記共重合体(S)100質量部に対して0.1~100質量部含有する、請求項1または2に記載の架橋発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記組成物が、前記発泡剤として重曹を含有し、発泡助剤としてクエン酸を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の架橋発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体をヒドロシリル架橋して得られる成形体(例えば特許文献1参照)は、イオウ加硫および過酸化物架橋と比較して機械的強度、耐熱老化性などに優れることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-290917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含有する組成物を押出成形して架橋する場合、一般に広く用いられている熱風架橋装置や熱水蒸気架橋装置を用いて架橋することが可能であるが、熱効率が悪く、また短時間での架橋が困難である。
【0005】
本発明の一態様に係る課題は、短時間での架橋が可能で、形状保持性に優れる架橋発泡体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討した結果、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体に対して、ヒドロシリル系架橋剤および縦型遠赤外線架橋装置を用いた架橋を行うことにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
本発明は、例えば以下の[1]~[4]に関する。
[1]エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、式(I)および(II)から選ばれる少なくとも1種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有し、下記(i)および(ii)の要件を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)と、
ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物(Y)と、
白金系触媒(Z)と、
発泡剤と
を含有し、前記発泡剤を前記共重合体(S)100質量部に対して1~30質量部含有する組成物を、押出機にて押し出し、縦型遠赤外線架橋装置にて架橋させる工程を有する、架橋発泡体の製造方法。
【0008】
【化1】
【0009】
(i)モル比(エチレン(A)由来の構成単位/炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位)が、40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)由来の構成単位の含有割合が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)100質量%中、0.07~10質量%である。
【0010】
[2]前記共重合体(S)の、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が1.0~4.0dL/gである、前記[1]に記載の架橋発泡体の製造方法。
[3]前記組成物が、前記化合物(Y)を前記共重合体(S)100質量部に対して0.1~100質量部含有する、前記[1]または[2]に記載の架橋発泡体の製造方法。
【0011】
[4]前記組成物が、前記発泡剤として重曹を含有し、発泡助剤としてクエン酸を含有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の架橋発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、短時間での架橋が可能で、形状保持性に優れる架橋発泡体を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について説明する。
[架橋発泡体の製造方法]
本発明の架橋発泡体の製造方法の一実施形態(以下「本実施形態の製造方法」ともいう)は、特定の組成物を押出機にて押し出し、縦型遠赤外線架橋装置にて架橋させる工程を有する。
【0014】
以下、本実施形態の製造方法で用いる組成物(以下「本実施形態の組成物」ともいう)について説明する。
本実施形態の組成物は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)と、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物(Y)と、白金系触媒(Z)と、発泡剤とを含有し、前記発泡剤を前記共重合体(S)100質量部に対して1~30質量部含有する。
【0015】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)>
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)(以下「共重合体(S)」ともいう)は、エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、非共役ポリエン(C)由来の構成単位とを有する。
【0016】
前記非共役ポリエン(C)は、式(I)および(II)から選ばれる少なくとも1種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む。前記非共役ポリエン(C)は、高速架橋性の観点から、式(II)の部分構造を少なくとも有することが好ましい。
【0017】
【化2】
【0018】
炭素数3~20のα-オレフィン(B)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンが挙げられる。これらの中でも、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等の炭素数3~8のα-オレフィンが好ましく、プロピレンがより好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られる共重合体(S)が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った成形体を得ることができるため好ましい。
【0019】
共重合体(S)は、少なくとも1種の炭素数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでおり、2種以上の炭素数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0020】
非共役ポリエン(C)としては、例えば、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンが挙げられる。これらの中でも、入手容易性が高く、ヒドロシリル架橋が良好で、組成物の耐熱性が向上しやすいことから、非共役ポリエン(C)がVNBを含むことが好ましく、非共役ポリエン(C)がVNBであることがより好ましい。
【0021】
共重合体(S)は、少なくとも1種の非共役ポリエン(C)に由来する構成単位を含んでおり、2種以上の非共役ポリエン(C)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
共重合体(S)は、式(I)および(II)から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)由来の構成単位をさらに有することができる。
【0022】
非共役ポリエン(D)としては、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンが挙げられる。これらの中でも、入手容易性が高く、ヒドロシリル架橋時の架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことから、ENBが好ましい。
共重合体(S)は、少なくとも1種の非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を含むことができ、2種以上の非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0023】
要件(i)として、共重合体(S)において、モル比(エチレン(A)由来の構成単位/炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位)は、40/60~99.9/0.1、好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは55/45~78/22である。このような共重合体(S)は、ヒドロシリル架橋して得られる架橋発泡体が優れたゴム弾性を示し、機械的強度および柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
【0024】
要件(ii)として、共重合体(S)100質量%中(すなわち全構成単位の含有割合の合計100質量%中)、非共役ポリエン(C)由来の構成単位の含有割合は、0.07~10質量%、好ましくは0.1~8.0質量%、より好ましくは0.5~5.0質量%である。このような共重合体(S)は、本実施形態の組成物から得られる架橋発泡体が充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなるため好ましく、ヒドロシリル架橋した場合には、早い架橋速度を示すものとなり、共重合体(S)が架橋発泡体の製造に好適なものとなるため好ましい。
【0025】
共重合体(S)100質量%中、非共役ポリエン(D)由来の構成単位の含有割合は、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~8質量%である。
共重合体(S)中のエチレン(A)、α-オレフィン(B)、非共役ポリエン(C)、および非共役ポリエン(D)由来の構成単位の含有割合は、13C-NMRにより求めることができる。
【0026】
共重合体(S)の125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)は、好ましくは5~100、より好ましくは20~95、さらに好ましくは50~90である。ムーニー粘度が上記範囲にある共重合体(S)は、加工性および流動性が良好であり、優れたゴム物性を示し、また良好な後処理品質(リボンハンドリング性)を示す傾向にある。
ムーニー粘度は、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定する。
【0027】
共重合体(S)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、好ましくは1.0~4.0dL/g、より好ましくは1.2~3.8dL/g、さらに好ましくは1.5~3.5dL/gである。[η]が上記範囲にある共重合体(S)は、成形加工性に優れる傾向にある。
【0028】
[η]は、例えば、以下のように測定する。共重合体(S)約20mgをデカリン15mLに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値を極限粘度として採用する。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0029】
共重合体(S)は、エチレン(A)、炭素数3~20のα-オレフィン(B)、非共役ポリエン(C)、および必要に応じて非共役ポリエン(D)を含むモノマーを共重合して得られる。共重合体(S)は、どのような製法で調製されてもよいが、メタロセン化合物の存在下に前記モノマーを共重合して得られたものであることが好ましく、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下に前記モノマーを共重合して得られたものであることがより好ましい。共重合体(S)は、具体的には、例えば、国際公開第2015/122495号記載のメタロセン触媒に記載の方法を採用することにより製造することができる。
共重合体(S)は1種または2種以上用いることができる。
【0030】
<ヒドロシリル基含有化合物(Y)>
ヒドロシリル基含有化合物(Y)は、共重合体(S)と反応する架橋剤として作用する。ヒドロシリル基含有化合物(Y)と白金系触媒(Z)とを用いて行うヒドロシリル架橋は、特に共重合体(S)との組み合わせで低温高速架橋に優れる傾向にある。
【0031】
ヒドロシリル基含有化合物(Y)は、従来から製造・市販されている、例えば、線状、環状、分岐状の各構造あるいは三次元網目状構造の樹脂状物など、その構造においていずれでも使用可能である。
【0032】
ヒドロシリル基含有化合物(Y)は、1分子中に少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のヒドロシリル基(SiH基)を含む。ヒドロシリル基含有化合物(Y)としては、例えば、下記式(Y-1)で表される化合物が挙げられる。
【0033】
(Y-1):RbcSiO(4-b-c)/2
上記式において、Rは、脂肪族不飽和結合を除く、炭素数1~10、特に炭素数1~8の置換または非置換の1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基;トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。
【0034】
上記式において、bは、1≦b<3、好ましくは1≦b<2.2、特に好ましくは1.5≦b≦2であり、cは、0.6≦c≦3、好ましくは0.6≦c<2であり、かつ、b+cは、b+c≦3、好ましくはb+c≦2.7である。
【0035】
ヒドロシリル基含有化合物(Y)は、例えば、1分子中のケイ素原子数が好ましくは2~1000個、より好ましくは2~300個、さらに好ましくは4~200個であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、具体的には、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8-ペンタメチルペンタシクロシロキサン等のシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、R2(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、任意にR3SiO1/2 単位、R2SiO2/2 単位、R(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2 またはRSiO3/2単位を含み得るシリコーンレジンが挙げられる。Rは式(Y-1)で説明したとおりである。
【0036】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物が挙げられる。
(CH33SiO-(-SiH(CH3)-O-)d-Si(CH33
式中のdは2以上の整数である。
【0037】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、例えば、下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物が挙げられる。
(CH33SiO-(-Si(CH32-O-)e-(-SiH(CH3)-O-)f-Si(CH33
式中のeは1以上の整数であり、fは2以上の整数である。
【0038】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンとしては、例えば、下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物が挙げられる。
HSi(CH32O-(-Si(CH32-O-)e-Si(CH32
式中のeは1以上の整数である。
【0039】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物が挙げられる。
HSi(CH32O-(-SiH(CH3)-O-)e-Si(CH32
式中のeは1以上の整数である。
【0040】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、例えば、下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物が挙げられる。
HSi(CH32O-(-Si(CH32-O-)e-(-SiH(CH3)-O-)h-Si(CH32
式中のeおよびhは、それぞれ1以上の整数である。
【0041】
分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物が挙げられる。
HOSi(CH32O-(-SiH(CH3)-O-)2-Si(CH32OH
【0042】
分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、例えば、下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物が挙げられる。
HOSi(CH32O-(-Si(CH32-O-)e-(-SiH(CH3)-O-)f-Si(CH32OH
式中のeは1以上の整数であり、fは2以上の整数である。
【0043】
以上の化合物は、公知の方法により製造することができ、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはテトラメチルシクロテトラシロキサンと、末端基となり得るヘキサメチルジシロキサンあるいは1,3-ジハイドロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンなどの、トリオルガノシリル基あるいはジオルガノハイドロジェンシロキシ基を含む化合物とを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に、-10℃~+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
【0044】
前記化合物(Y)は1種または2種以上用いることができる。
本実施形態の組成物におけるヒドロシリル基含有化合物(Y)の含有量は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.1~100質量部、より好ましくは0.1~75質量部、さらに好ましくは0.1~50質量部、よりさらに好ましくは、0.2~30質量部、0.2~20質量部、0.5~10質量部、または0.5~5質量部である。このような態様であると、耐圧縮永久歪み性に優れるとともに、架橋密度が適度で強度特性および伸び特性に優れた架橋発泡体を形成できる組成物が得られる傾向にある。
【0045】
<白金系触媒(Z)>
ヒドロシリル架橋用の白金系触媒(Z)は、付加反応触媒であり、例えばアルケニル基とヒドロシリル基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば、特に制限はなく使用することができる。
【0046】
具体的な白金系触媒は、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものでよく、例えば米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号明細書および米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物が挙げられる。
【0047】
より具体的には、白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたものが挙げられる。
前記触媒(Z)は1種または2種以上用いることができる。
【0048】
本実施形態の組成物における白金系触媒(Z)の含有量は、好ましくは0.1~100000重量ppm、より好ましくは0.1~10000重量ppm、さらに好ましくは1~5000重量ppm、よりさらに好ましくは5~1000重量ppmである。上記範囲内の割合で白金系触媒(Z)を用いると、架橋密度が適度で強度特性および伸び特性に優れる架橋発泡体を形成できる組成物が得られる。
【0049】
<発泡剤>
発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物が挙げられる。
発泡剤は1種または2種以上用いることができる。
【0050】
本実施形態の組成物における発泡剤の含有量は、共重合体(S)100質量部に対して、1~30質量部であり、好ましくは5~20質量部、より好ましくは10~20質量部である。このような態様であると、適切な発泡および架橋速度が得られる点で好ましい。発泡剤の含有量が1質量部を下回ると発泡が良好に進行しない傾向にあり、30質量部を上回ると架橋が良好に進行しない傾向にある。上記量で発泡剤を用いると、比重0.03~0.8g/cm3程度の発泡体を製造することができるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0051】
また、必要に応じて、発泡剤と併用して、発泡助剤を使用してもよい。発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用をする。発泡助剤としては、例えば、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸やその塩、尿素またはその誘導体が挙げられる。一実施態様では、発泡剤として重曹を用い、発泡助剤としてクエン酸を用いることができる。
発泡助剤は1種または2種以上用いることができる。
【0052】
発泡助剤を用いる場合は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部用いることができるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0053】
<反応抑制剤(D)>
本実施形態の組成物は、反応抑制剤(D)をさらに含有することが好ましい。
反応抑制剤(D)は、アルケニル基とヒドロシリル基との架橋反応(アルケンへのヒドロシリル化付加反応)を抑制する機能を有する化合物である。共重合体(S)とヒドロシリル基含有化合物(Y)とを用いる組成物の場合、熱がかかる混練の初期段階からヒドロシリル架橋反応が既に開始されるため、混練途中での加工性が徐々に低下することがある。前記組成物に反応抑制剤(D)を配合すると、組成物の混練時および成形時での加工性が安定する点で好ましい。
【0054】
反応抑制剤(D)としては、例えば、ベンゾトリアゾール;1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、1-エチニルシクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレンアルコール類;アクリロニトリル;N,N-ジアリルアセトアミド、N,N-ジアリルベンズアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-o-フタル酸ジアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-m-フタル酸ジアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-p-フタル酸ジアミド等のアミド化合物;その他、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。これらの中でも、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールが好ましい。
反応抑制剤(D)は1種または2種以上用いることができる。
【0055】
本実施形態の組成物における反応抑制剤(D)の含有量は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0~50質量部、より好ましくは0.0001~50質量部、さらに好ましくは0.0001~30質量部、よりさらに好ましくは、0.0001~20質量部、0.0001~10質量部、または0.0001~5質量部である。このような態様であると、適切な架橋速度が得られる点で好ましい。
【0056】
<補強剤>
本実施形態の組成物は、1種または2種以上の補強剤をさらに含有することが好ましい。補強剤は、ゴム組成物に配合される公知のゴム補強剤であり、例えば、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラック、カーボンブラックをシランカップリング剤で表面処理した表面処理カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、活性化炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、微粉タルク、タルク、微分ケイ酸、クレーなどの無機充填剤が挙げられる。
【0057】
本実施形態の組成物における補強剤の含有量は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは10~200質量部、より好ましくは50~180質量部、さらに好ましくは70~150質量部である。
【0058】
<軟化剤(可塑剤)>
本実施形態の組成物は、1種または2種以上の軟化剤(可塑剤)をさらに含有することが好ましい。軟化剤(可塑剤)は、ゴム組成物に配合される公知の成分であり、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられ、これらの中でも、石油系軟化剤が好ましく、プロセスオイルがより好ましい。
【0059】
本実施形態の組成物における軟化剤(可塑剤)の含有量は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは10~200質量部、より好ましくは30~180質量部、さらに好ましくは50~150質量部である。
【0060】
<脱泡剤>
本実施形態の組成物は、1種または2種以上の脱泡剤をさらに含有してもよい。前記組成物を架橋するときに、内包される水分により気泡ができたり、発泡度が異なったりすることがあるので、脱泡剤を添加することでこれらを防止することができる。
【0061】
脱泡剤としては、例えば、酸化カルシウムが挙げられる。
本実施形態の組成物における脱泡剤の含有量は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0062】
<その他の成分>
本実施形態の組成物は、上記成分に加え、本発明の目的が損なわれない限り、ゴム配合剤、例えば、有機過酸化物、α,β-不飽和有機酸の金属塩、老化防止剤、架橋助剤、架橋促進剤、充填剤、加工助剤、活性剤、酸化防止剤、粘着付与剤等を適宜含有することができる。
【0063】
また、本実施形態の組成物は、共重合体(S)以外の、ゴムおよび樹脂などを他の成分として含有することができる。ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、エチレン・プロピレンランダム共重合体ゴム(EPR)、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用樹脂が挙げられる。
【0064】
本実施形態の組成物は、混練および成形加工する際の例えば40~130℃の比較的低い温度では、架橋反応が抑制されるので、押出成形性およびロール加工性等の加工性に優れており、しかも、架橋温度である例えば150~280℃では、短時間で架橋し得るという架橋特性にも優れている。
【0065】
[組成物の架橋成形]
本実施形態の製造方法は、本実施形態の組成物を、押出機にて押し出し、縦型遠赤外線架橋装置にて架橋させる工程を有する。本実施形態の組成物を押出機にて連続的に押し出して得られた未架橋の押出成形体を、縦型遠赤外線架橋装置内で連続的に架橋させることが好ましい。
【0066】
ここで縦型遠赤外線架橋装置は、鉛直方向に略直線状の遠赤外線架橋槽を少なくとも有する。遠赤外線架橋槽は、例えば、架橋槽内に遠赤外線ヒータを備える。前記押出成形体が遠赤外線架橋槽を連続的に通過する間に、遠赤外線を前記押出成形体に照射することで、押出成形体を架橋、発泡させることができる。なお、遠赤外線の波長は特に限定されず、例えば3~1000μm、好ましくは3~100μmである。
【0067】
例えば、横型架橋装置を用いる場合、長尺状の未架橋の押出成形体は水平方向に前記装置内に供給されるため、未架橋の押出成形体が自重によって変形することがある。本実施形態では、縦型架橋装置を用いることから、未架橋の押出成形体が自重によって変形することを防ぐことができる。さらに、本実施形態におけるヒドロシリル架橋は架橋速度が速いので、架橋後は変形が抑制される。したがって、形状保持性に優れる架橋発泡体を得ることができる。また、押出成形体が硬化するまで無接触状態を保持しながら架橋することができるため、押出肌に優れた架橋発泡体を得ることができる。さらに、本実施形態の組成物を用いることにより、ゴム弾性に優れた架橋発泡体を成形することができる。また、縦型架橋装置では、横型架橋装置に比べて、押出成形体の加熱および架橋をより均一に行うことができる。なお、本段落の以上の説明は何ら本発明を限定するものではない。
【0068】
以上のとおり、本実施形態の製造方法によれば、形状保持性、耐圧縮永久歪み性、および押出肌に優れる架橋発泡体を得ることができる。また、本実施形態の組成物を縦型遠赤外線架橋装置を用いて架橋させることにより、比較的低温かつ短時間で架橋を行うことができる。
【0069】
以下、前記製造方法を具体的に説明する。
まず、本実施形態の未架橋の組成物を調製する。例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー類を用いて、共重合体(S)および必要に応じて他の成分(例:補強剤、可塑剤)を好ましくは80~190℃、より好ましくは80~170℃の温度で、好ましくは2~20分間、より好ましくは3~10分間混練した後、ヒドロシリル基含有化合物(Y)、白金系触媒(Z)、発泡剤、および必要に応じて他の配合剤(例:反応抑制剤(D)、脱泡剤)や他のゴムや樹脂などを加えて、オープンロールなどのロール類あるいはニーダーを用いて、好ましくはロール温度40~130℃で5~30分間混練した後、分出しする。このようにして、通常はリボン状またはシート状の組成物が得られる。なお、組成物の調製方法は以上の方法に限られるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。
【0070】
得られた組成物を押出成形機により、鉛直方向上向きで、縦型遠赤外線架橋装置内部にその下方から連続的に押出成形して、未架橋の押出成形体を導入する。遠赤外線による架橋条件は特に限定されないが、好ましくは150~280℃、より好ましくは170~250℃である。なお、遠赤外線架橋槽内の上部および下部における温度条件を異なるものとしてもよい。
【0071】
また、押出成形体を連続架橋する際の、前記架橋装置内部における押出成形体の移送速度は、好ましくは0.5~20m/分、より好ましくは1~10m/分である。また、架橋時間は、好ましくは15分以下、より好ましくは0.2~7.0分、さらに好ましくは0.6~2.0分とすることができる。
【0072】
以下、本実施形態で好適に用いられる縦型遠赤外線架橋装置(以下「架橋装置」ともいう)について説明する。架橋装置は、本実施形態の組成物の押出成形体を熱架橋するための、鉛直方向に略直線状の遠赤外線架橋槽を有する。
【0073】
未架橋の押出成形体は、上向き方向に連続して遠赤外線架橋槽内部に送られることが好ましい。未架橋の押出成形体の前記遠赤外線架橋槽内部への移送は、熱効率の観点から、押出機による前記架橋槽への直接押出しで行うことが好ましい。すなわち、押出機の押出ヘッドが架橋槽の底部に直結されており、未架橋の押出成形体を架橋槽内へ直接、連続的に押し出すことが好ましい。ここで、上向き方向とは、鉛直上向き方向を意味し、下向き方向とは、鉛直下向き方向を意味する。
【0074】
未架橋の押出成形体の架橋は、遠赤外線架橋槽内部の上昇中に実質的に完了することが好ましい。なお、実質的な架橋の完了には、架橋が完全に完了している場合の他、架橋が完全には完了していないが、押出成形体が案内ローラ等と接触しても押出成形体の形状が変形しない程度に架橋が進行している場合も含まれる。
【0075】
架橋装置の形状は特に限定されず、例えば、縦型の直線状の架橋装置(遠赤外線架橋槽)、縦型の略逆U字状の架橋装置が挙げられる。ここで略逆U字状の架橋装置は、上向き方向へ押出成形体が送られる第1の領域と、ターン領域と、下向き方向へ押出成形体が送られる第2の領域とを有する。押出成形体は、第1の領域、ターン領域および第2の領域の順に架橋装置内を通過する。
【0076】
架橋装置の導入口は、押出機の押出ヘッドに接続されていることが好ましい。押出ヘッドは、例えば、気密状態で架橋装置の導入口に接続されており、導入口から架橋装置内部への空気(酸素)の侵入を防止する構造となっていてもよい。押出機の押出ヘッドから、長尺状の未架橋の押出成形体が上向き方向に連続して押し出され、押し出された未架橋の押出成形体は、架橋装置の第1の領域へ導入される。
【0077】
第1の領域は、上向き方向へ押出成形体が送られる直線状の領域であり、上述した遠赤外線架橋槽に相当する。具体的には、第1の領域は、未架橋の押出成形体を架橋装置内部へ導入する導入口からターン領域の上流側端部までの領域である。第1の領域には、その長さ方向において、未架橋の押出成形体を架橋するために遠赤外線照射部(遠赤外線ヒータ)が設けられている。遠赤外線照射部の大きさ、位置等は特に限定されない。
【0078】
一実施形態において、第1の領域の長さは、好ましくは0.7~1.4m、より好ましくは1.0~1.2mである。また、遠赤外線架橋槽内の直径は、好ましくは0.4~1.5m、より好ましくは0.7~1.0mである。
【0079】
押出成形体の自重による変形を防止するため、第1の領域を通過するまでに、すなわち押出成形体がターン領域に進入する前に、架橋を実質的に完了させることが好ましい。
押出成形体の架橋が実質的に完了する前に押出成形体が案内ローラに接触すると、押出成形体が変形することがあるため、第1の領域内には、押出成形体を移送するための案内ローラを配置しないことが好ましい。
【0080】
ターン領域は、押出成形体が送られる方向を上向き方向から下向き方向へ反転させる領域であり、架橋装置の頂部に設けられており、通常は上に凸の円弧状である。ターン領域内には、通常、押出成形体が送られる方向を前記反転させるための案内ローラが設けられている。一実施形態において、ターン領域の経路長は、好ましくは0.5~1.5m、より好ましくは1.0~1.3mである。
【0081】
第2の領域は、下向き方向へ押出成形体が送られる直線状の領域である。具体的には、第2の領域は、ターン領域の下流側端部から架橋後の押出成形体(架橋発泡体)を架橋装置外部へ導出する導出口までの領域である。第2の領域は、導出口からターン領域への外気(空気)の侵入を防止できる長さとなっていてもよい。一実施形態において、第2の領域の長さは、好ましくは0.2~2.0m、より好ましくは0.7~1.5mである。
【0082】
架橋装置から導出された押出成形体(架橋発泡体)は、例えば、架橋装置の外部に設けられた引取機によって連続的に引き取られる。得られた長尺状の架橋発泡体は、必要に応じて、長さ方向で所定の位置毎に切断される。
【0083】
[架橋発泡体]
本実施形態の製造方法で得られる架橋発泡体は、様々な用途に用いることができる。
前記架橋発泡体は、例えば、自動車用ホースなどのホース(例えば、ターボチャージャーホース、ウォーターホース、ブレーキリザーバーホース、ラジエターホース、エアーホース);高発泡シール材、自動車用シール材、土木・建築用シール材、各種産業用シール材などのシール材;断熱ベルト、複写機ベルト、搬送ベルトなどのベルト;として有用である。
【実施例
【0084】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の物性測定法を以下に示す。
【0085】
<組成>
各構成単位の含有割合(質量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
【0086】
<極限粘度>
極限粘度[η]は、(株)離合社製 全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
【0087】
<分子量分布曲線>
分子量分布曲線は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。測定装置および条件は、以下のとおりである。
装置:ゲル透過クロマトグラフ Alliance GP2000型
(Waters社製)
解析装置:Empower2(Waters社製)
カラム:TSKgel GMH6-HT×2+TSKgel GMH6-HTL×2
(7.5mmI.D.×30cm、東ソー社製)
カラム温度:140℃
移動相:o-ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
検出器:示差屈折計(RI)
流速:1.0mL/min
注入量:400μL
サンプリング時間間隔:1s
カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)
分子量換算:旧法EPR換算/粘度を考慮した較正法
【0088】
<ムーニー粘度[ML 1+4 (125℃)>
ムーニー粘度[ML1+4(125℃)]は、JIS K6300に準拠して、125℃の条件下で、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて測定した。
【0089】
[製造例1]エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の製造
連続重合装置を用いて、以下のようにしてエチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)共重合体(S-1)の製造を行った。
【0090】
容積300リットルの重合反応器に、ライン1より脱水精製したヘキサン溶媒を58.3L/hr、ライン2よりトリイソブチルアルミニウム(TiBA)を4.5mmol/hr、(C65)3CB(C65)4を0.150mmol/hr、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.030mmol/hrで連続的に供給した。同時に前記重合反応器内に、エチレンを6.6kg/hr、プロピレンを9.3kg/hr、水素を18リットル/hr、VNBを340g/hrで、各々別ラインより連続供給し、重合温度87℃、全圧1.6MPaG、滞留時間1.0時間の条件下で共重合を行なった。
【0091】
前記重合反応器で生成したエチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、流量88.0リットル/hrで連続的に排出して温度170℃に昇温(圧力は4.1MPaGに上昇)して相分離器に供給した。このとき、排出ラインには重合禁止剤であるエタノールを、前記重合反応器から抜き出した液体成分中のTiBAに対して0.1mol倍の量で連続的に導入した。
【0092】
前記相分離器において、エチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、大部分のエチレン・プロピレン・VNB共重合体を含む濃厚相(下相部)と少量のポリマーを含む希薄相(上相部)とに分離した。
【0093】
分離された濃厚相を85.4リットル/hrで熱交換器Kに導き、さらにホッパー内に導いて、ここで溶媒を蒸発分離し、エチレン・プロピレン・VNB共重合体を7.8kg/hrの量で得た。
【0094】
得られた共重合体(S-1)の物性を前記記載の方法で測定した。共重合体(S-1)のムーニー粘度ML(1+4)125℃は69であり、モル比(エチレン単位/プロピレン単位)は70/30であり、VNB単位の含有割合は1.4質量%であり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.8dL/gであった。なお、得られた共重合体(S-1)の分子量分布は二峰性を示した。
【0095】
[実施例1~3]
第一段階として、BB-4型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、製造例1で得たエチレン・プロピレン・VNB共重合体(S-1)の油展品115部(ML(1+4)125℃=44.6;油展用成分=パラフィン系プロセスオイル15部)を30秒間素練りし、次いでこれに、カーボンブラック(旭#50HG、旭カーボン(株)製)120部、パラフィン系プロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPS-430、出光興産(株)製)75部を加え、140℃で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で排出し、コンパウンドAを得た。
【0096】
次に、第二段階として、コンパウンドAを、8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、これに、特殊処理酸化カルシウム(VESTA-PP、井上石灰工業(株)製])5部、ハイドロセロールCF(日本ベーリンガーインエルハイム(株)製)15部、ヒドロシリル基含有化合物(信越化学工業(株)製:X-93-1346、(CH3)3SiO-(SiH(CH3)-O-)6-Si(CH3)2-O-Si(C6H5)2-O-Si(CH3)3)4部、白金系触媒(信越化学工業(株)製:X-93-1410、塩化白金酸+[CH2=CH(Me)SiO]4錯体)0.2部、および反応抑制剤(信越化学工業(株)製:X-93-1036、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール)0.72部を加え10分間混練して、未架橋の組成物を得た。
【0097】
次いで、この未架橋の組成物を用いて、以下の条件により縦型架橋装置を用いて成形を行った。押出機(シリンダ径30mmφ、圧縮比1.5)を使用して、チューブ状(内径:高さ13mm×横幅13mm、肉厚:1.5mm)に押出後(押出速度1m/min)、縦型加硫装置(株式会社イーエム技研製遠赤外線炉)を用いて、表1に記載の架橋温度および架橋時間の条件で架橋し、その押出物を150mmの長さに裁断して各試験片(架橋発泡体)を調製した。
【0098】
[比較例1~3]
上記実施例で得られた未架橋の組成物を用いて、以下の条件により横型架橋装置を用いて成形を行った。押出機(シリンダ径30mmφ、圧縮比1.5)を使用して、チューブ状(内径:高さ13mm×横幅13mm、肉厚:1.5mm)に押出後(押出速度1m/min)、横型加硫装置(遠赤外線コンベア炉、株式会社八光電機製作所製)を用いて、表1に記載の架橋温度および架橋時間の条件で架橋し、その押出物を150mmの長さに裁断して各試験片(架橋発泡体)を調製した。架橋温度が200℃または300℃の場合は、架橋時間1分では架橋が完了しなかった。
【0099】
[評価]
<ムーニー粘度[ML 1+4 (125℃)>
ムーニー粘度[ML1+4(125℃)]は、JIS K6300に準拠して、125℃の条件下で、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて測定した。
【0100】
<加硫速度>
MDR2000(アルファテクノロジーズ製)を用い、加硫曲線を測定し、当該加硫曲線から得られるトルクの最低値S'min[dNm]と最高値S'max[dNm]、トルクの最低値S'minを0%、最高値S'maxを100%として、測定試料のトルクが10%に到達したときの時間[min]:tc10、測定試料のトルクが90%に到達したときの時間[min]:tc90を求めた。測定条件は、温度170℃、時間15分とした。このtc90が小さいほど、加硫速度が速いことを示す。
【0101】
<比重>
架橋発泡体の比重は、水中置換法(JIS K6268)に準じて測定した。
【0102】
<圧縮永久歪み(CS)>
得られたチューブ状架橋発泡体を長さ方向に30mm切断し、得られた試験片を圧縮永久歪み測定金型に取り付けた。試験片の高さが荷重をかける前の高さ1/2になるように圧縮し、金型ごと70℃のギアーオーブン中にセットして22時間熱処理した。次いで試験片を取出し、30分間放冷後、試験片の高さを測定し以下の計算式で圧縮永久歪み(%)を算出した。
圧縮永久歪み(%)={(t0-t1)/(t0-t2)}×100
t0:試験片の試験前の高さ
t1:試験片を熱処理し30分間放冷した後の高さ
t2:試験片の測定金型に取り付けた状態での高さ
【0103】
<押出肌>
得られた架橋発泡体を指で擦って下記基準により官能評価を行った。
5:凹凸がなく滑らか
4:5よりも凹凸があるが滑らか
3:4よりも凹凸があり、抵抗を感じる。
2:3よりも凹凸が多く、ざらざらしている。
1:2よりも凹凸が多く、ざらざらしている。
【0104】
<形状保持率>
内径:高さ13mm×横幅13mm、肉厚:1.5mmのチューブ状ダイスを用いて、チューブ状に成形したゴム組成物の高さおよび水平方向長さ(横幅)と、実施例および比較例で得られた試験片の高さおよび水平方向長さ(横幅)との比を測定し、形状保持率(%)とした。
形状保持率(%)=(L/D)/(L0/D0)×100
(式中、L0は、チューブ状に成形したゴム組成物の高さ;D0は、チューブ状に成形したゴム組成物の横幅;Lは、チューブ状スポンジの高さ;Dは、チューブ状スポンジの横幅を表す。)
【0105】
【表1】