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特許7403284作業支援システム、作業支援方法及び作業支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】作業支援システム、作業支援方法及び作業支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0631 20230101AFI20231215BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20231215BHJP
【FI】
G06Q10/0631
G06Q50/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019202186
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021077004
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】関根 奏
(72)【発明者】
【氏名】太田 督
(72)【発明者】
【氏名】樋口 覚
(72)【発明者】
【氏名】桑原 淳一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 良介
(72)【発明者】
【氏名】加納 豊
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 知之
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-126898(JP,A)
【文献】特開2015-088003(JP,A)
【文献】特開2011-014074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの支援対象作業を、複数の作業員を含む作業員ユニットに対応する単位作業量を有する複数の分割タスクに分割し、前記作業員ユニットを前記複数の分割タスクに分配して作成される作業スケジュールを用いて作業支援を行う作業支援システムであって、
前記複数の分割タスクのいずれかで中断事象が生じた旨を示す中断情報を取得するように構成された中断情報取得部と、
前記中断情報取得部で前記中断情報が取得された場合、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに対して、前記中断事象が生じた前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを除く残りの前記作業員ユニットを再分配することにより、前記作業スケジュールを修正するように構成された作業スケジュール修正部と、
を備える、作業支援システム。
【請求項2】
前記作業スケジュール修正部は、前記中断事象が生じた前記分割タスクとは異なるクリティカルパスに含まれ、且つ、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに対して、前記中断事象が生じた前記分割タスクが属するクリティカルパスに含まれ、且つ、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを分配するように前記作業スケジュールを修正する、請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
前記複数の分割タスクのいずれかが完了したことを示す分割タスク完了情報を取得する分割タスク完了情報取得部を更に備え、
前記作業スケジュール修正部は、前記分割タスク完了情報取得部によって前記分割タスク完了情報を取得した場合、残りの前記分割タスクに対して前記作業員ユニットを再分配することにより、前記作業スケジュールを修正するように構成された、請求項1又は2に記載の作業支援システム。
【請求項4】
前記少なくともつの支援対象作業は、互いに独立した複数の支援対象作業を含み、
前記作業スケジュール修正部は、前記複数の支援対象作業に対応する複数の前記作業スケジュールをそれぞれ修正するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の作業支援システム。
【請求項5】
前記作業スケジュールに基づいて前記分割タスクに関する作業支援情報を出力するように構成された出力部を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の作業支援システム。
【請求項6】
前記作業支援情報は、前記分割タスクにおける使用工具、前記作業員ユニット、及び、作業注意点の少なくとも一つに関する情報を含む、請求項5に記載の作業支援システム。
【請求項7】
前記分割タスクは、一対の配管部材の間に前記一対の配管部材の内部を流れる流体の向きに対応して設けられるオリフィスの設置作業を含み、
前記作業注意点は、前記オリフィスの設置向きに関する情報を含む、請求項6に記載の作業支援システム。
【請求項8】
前記作業員を識別するための作業員識別情報を取得するように構成された作業員識別情報取得部を更に備え、
前記出力部は、前記作業支援情報に対応する前記作業員ユニットに対応する前記作業員識別情報が前記作業員識別情報取得部で検出された場合、前記作業支援情報を出力するように構成された、請求項5から7のいずれか一項に記載の作業支援システム。
【請求項9】
前記使用工具に関する情報は、前記分割タスクで使用される複数の工具がそれぞれ収納された複数の収納棚間を通る最短ルートに関する情報を含む、請求項6又は7に記載の作業支援システム。
【請求項10】
作業支援システムを用いて、少なくとも一つの支援対象作業を、複数の作業員を含む作業員ユニットに対応する単位作業量を有する複数の分割タスクに分割し、前記作業員ユニットを前記複数の分割タスクに分配して作成される作業スケジュールを用いて作業支援を行う作業支援方法であって、
前記作業支援システムが備える中断情報取得部によって前記複数の分割タスクのいずれかで中断事象が生じた旨を示す中断情報を取得するステップと、
前記中断情報取得部で前記中断情報が取得された場合、前記作業支援システムが備える作業スケジュール修正部によって、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに対して、前記中断事象が生じた前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを除く残りの前記作業員ユニットを再分配することにより、前記作業スケジュール修正されるステップと、
を備える、作業支援方法。
【請求項11】
少なくとも一つの支援対象作業を、複数の作業員を含む作業員ユニットに対応する単位作業量を有する複数の分割タスクに分割し、前記作業員ユニットを前記複数の分割タスクに分配して作成される作業スケジュールを用いて作業支援を行うためにコンピュータを、
前記複数の分割タスクのいずれかで中断事象が生じた旨を示す中断情報を取得する手段と、
前記中断情報が取得された場合、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに対して、前記中断事象が生じた前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを除く残りの前記作業員ユニットを再分配することにより、前記作業スケジュールを修正する手段と、
として機能させるための作業支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業支援を行う作業支援システム、作業支援方法及び作業支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラント設備の定検工事のような複数の作業員によって実施される保守作業は、作業品質を確保しながら、限られた作業期間内に膨大な作業をこなす必要がある。このような保守作業では、作業品質が作業員の熟練度によって左右されやすいが、近年、熟練した作業員の確保が難しくなりつつある。また保守期間(インターバル)の長期化や、作業期間短縮によるコストカット要求が増えており、これらに対応することが求められている。
【0003】
これらの要求に対応するため、コンピュータのような電子演算装置による演算処理を用いて、保守作業に含まれる膨大な作業をスケジュール管理することで、作業支援を行うことが提案されている。例えば特許文献1では、保守作業の手順を示す保守作業手順情報を予定作業日程情報に基づいて端末に表示することで、保守作業に関わる各作業員が、それぞれに分配された作業内容に関する情報を適切なタイミングで取得するように作業支援を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-233419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1のような保守作業に関する作業スケジュールを遂行する過程では、各作業員に分配された作業内容で中断事象が生じることがある。このように一部の作業に中断事象が生じると、当該作業を前提とする他の作業(例えば共通のクリティカルパスに属し、時系列的に後に実施される作業)の実施が困難となってしまう。この場合、他の作業に分配された作業員は中断事象が生じた作業が復旧するまで待機せざるを得ず、無駄が生じてしまう。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みてなされたものであり、作業途中で中断事象が生じた場合においても効率的な作業支援を実施可能な作業支援システム、作業支援方法及び作業支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る作業支援システムは、
少なくとも一つの支援対象作業を、複数の作業員を含む作業員ユニットに対応する単位作業量を有する複数の分割タスクに分割し、前記作業員ユニットを前記複数の分割タスクに分配して作成される作業スケジュールを用いて作業支援を行う作業支援システムであって、
前記複数の分割タスクのいずれかで中断事象が生じた旨を示す中断情報を取得するように構成された中断情報取得部と、
前記中断情報取得部で前記中断情報が取得された場合、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに対して、前記中断事象が生じた前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを除く残りの前記作業員ユニットを再分配することにより、前記作業スケジュールを修正するように構成された作業スケジュール修正部と、
を備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る作業支援方法は、
少なくとも一つの支援対象作業を、複数の作業員を含む作業員ユニットに対応する単位作業量を有する複数の分割タスクに分割し、前記作業員ユニットを前記複数の分割タスクに分配して作成される作業スケジュールを用いて作業支援を行う作業支援方法であって、
中断情報取得部によって前記複数の分割タスクのいずれかで中断事象が生じた旨を示す中断情報を取得するステップと、
前記中断情報取得部で前記中断情報が取得された場合、作業スケジュール修正部によって、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに対して、前記中断事象が生じた前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを除く残りの前記作業員ユニットを再分配することにより、前記作業スケジュールを修正するステップと、
を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る作業支援プログラムは、
少なくとも一つの支援対象作業を、複数の作業員を含む作業員ユニットに対応する単位作業量を有する複数の分割タスクに分割し、前記作業員ユニットを前記複数の分割タスクに分配して作成される作業スケジュールを用いて作業支援を行うためにコンピュータを、
前記複数の分割タスクのいずれかで中断事象が生じた旨を示す中断情報を取得する手段と、
前記中断情報が取得された場合、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに対して、前記中断事象が生じた前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを除く残りの前記作業員ユニットを再分配することにより、前記作業スケジュールを修正する手段と、
として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、作業途中で中断事象が生じた場合においても効率的な作業支援を実施可能な作業支援システム、作業支援方法及び作業支援プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る作業支援システムの全体構成を示す模式図である。
図2図1のメインサーバの内部構成を周辺構成と共に示す機能ブロック図である。
図3】作業員ユニットデータベースに格納される作業員ユニットに関する情報に対応する組織構成図である。
図4】各作業員ユニットのユニットリーダーを集合させてフォアマンFが指示伝達を行っている様子を示す模式図である。
図5A】3人の作業員間におけるコミュニケーションルートを示す模式図である。
図5B】4人の作業員間におけるコミュニケーションルートを示す模式図である。
図6】作業スケジュール作成部によって作成される作業スケジュールの一例を示すガントチャートである。
図7】作業スケジュールの修正制御を工程毎に示すフローチャートである。
図8】修正後の作業スケジュールを示すガントチャートである。
図9】ユーザ端末による作業支援情報の表示例である。
図10】ユーザ端末による作業支援情報の表示例である。
図11】配管の組み立て作業の説明図である。
図12】作業で使用される工具、及び、工具が収納される収納棚を示す模式図である。
図13図12の収納棚の配置を上方から概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
図1は本開示の一実施形態に係る作業支援システム1の全体構成を示す模式図である。作業支援システム1は、支援対象作業の実施主体である複数の作業員に対して作業支援情報を提供することにより作業支援を行うシステムである。以下の説明では、支援対象作業として、プラント設備に関する保守作業(具体的には原子力発電プラント、火力発電プラント又は化学プラントのようなプラント設備の定検作業)について説明するが、支援対象作業の内容は任意でよい。
【0014】
作業支援システム1は、図1に示すように、通信ネットワーク2で互いに接続されたメインサーバ4、データサーバ6、入力端末8、ユーザ端末10a及び10bを備える。通信ネットワーク2は作業支援システム1の構成要素間において各種データを送受信可能なネットワークであり、有線及び無線を問わない。
【0015】
メインサーバ4は、作業支援システム1における主要な情報処理を行うサーバである。メインサーバ4は、データサーバ6、入力端末8、ユーザ端末10a及び10bから取得した情報を用いて、所定の情報処理を実施することで作業支援情報を作成し、作業支援情報をユーザ端末10a及び10bに提供することにより、ユーザ端末10a及び10bを利用する作業員に対して作業支援を行う。
【0016】
データサーバ6は、作業支援システム1の動作に関する各種データを格納するデータベースを含むサーバである。データサーバ6は、通信ネットワーク2を介して、他のシステム構成要素からアクセスすることにより、各種情報の格納、及び、読み出しが可能に構成される。データサーバ6は、情報の種類に対応する複数のデータベースを備えており、図1では、作業員ユニットデータベース6a、分割タスクデータベース6b、及び、作業スケジュールデータベース6cが示されている。尚、データサーバ6を構成する各データベースの詳細については後述する。
【0017】
入力端末8は、作業支援システム1の動作に関する各種情報を入力するための入力インターフェイスである。入力端末8は、作業員のようなオペレータによって手動入力可能なヒューマンインターフェイスであってもよいし、他の情報処理装置からデータを入力可能な装置間インターフェイスであってもよい。
【0018】
ユーザ端末10a及び10bは、支援対象作業の実施主体である作業員が使用可能なデバイスである。ユーザ端末10a及び10bには、メインサーバ4で作成された作業支援情報が出力され、当該作業支援情報を作業員が利用可能に構成される。本実施形態では、作業支援情報をユーザ端末10a及び10bのディスプレイ上に表示することにより作業員が利用可能に構成されているが、ユーザ端末10a及び10bにおける作業支援情報の出力形態はこれに限定されない。またユーザ端末10a及び10bは、作業支援情報を出力する他、作業員が必要に応じてメインサーバ4の演算結果や、データサーバ6に格納された各種情報を閲覧可能に構成されてもよい。
【0019】
尚、ユーザ端末10a、10bは作業員に対する作業支援情報等の提供手段としてだけでなく、必要に応じて作業員が作業支援システム1に対して各種情報を入力するための入力インターフェイスとして機能するように構成されてもよい。この場合、ユーザ端末10a、10bから入力された情報は、ユーザ端末10a、10b自体で処理されてもよいし、通信ネットワーク2を介して、メインサーバ4に送られて処理されてもよいし、データサーバ6に格納されてもよい。
【0020】
図1ではユーザ端末の一例として、特定の地点に固定的に設置される定置型端末としてのユーザ端末10aと、作業員個人が所持可能なポータブル型端末としてのユーザ端末10bとが示されている。ユーザ端末10aは、例えば大型ディスプレイのように特定の地点に固定された定置型端末であり、当該端末にアクセス可能な複数の作業員に対して作業支援情報が提供可能である。一方のユーザ端末10bは、例えばスマートフォン、タブレット又はノートパソコンのように作業員個人が所持可能なポータブル端末であり、主に、作業員個人に対して作業支援情報が提供可能である。
【0021】
図2図1のメインサーバ4の内部構成を周辺構成と共に示す機能ブロック図である。図2では、メインサーバ4とともに、メインサーバ4の各ブロックと関連性が高いデータサーバ6、ユーザ端末10a又は10bの構成を機能ブロックとして併せて示している(尚、図示がわかりやすくなるように、通信ネットワーク2を含む他の構成は、適宜、省略されている)。
【0022】
メインサーバ4は、例えばコンピュータのような電子演算装置からなるハードウェア構成を有し、これに本開示の少なくとも一実施形態に係る作業支援プログラムがインストールされて構成される。これにより、メインサーバ4は、本開示の少なくとも一実施形態に係る作業支援方法の実施が可能となっている。メインサーバ4は、作業スケジュール作成部12と、作業スケジュール修正部14、分割タスク完了情報取得部16と、中断情報取得部18と、作業支援情報作成部20と、作業員識別情報取得部22と、出力部24と、を備える。これらメインサーバ4を構成する各ブロックは、互いに統合されていてもよいし、更に細分化されていてもよい。
【0023】
作業スケジュール作成部12は、データサーバ6に格納された各種情報に基づいて作業スケジュールWSを作成する。具体的には、作業スケジュール作成部12は、作業員ユニットデータベース6aから作業員ユニットに関する情報を取得するとともに、分割タスクデータベース6bから分割タスクに関する情報を取得し、これらの情報に基づいて作業スケジュールWSを作成する。
【0024】
作業員ユニットデータベース6aには、支援対象作業の実施主体である作業員から構成される作業員ユニットに関する情報が格納されている。作業員ユニットは、支援対象作業が分割されてなる各分割タスクの単位作業量に対応する人数の作業員から構成される。本実施形態では、支援対象作業に携わる作業員ユニットの数、及び、各作業員ユニットに含まれる作業員の数が適正化されており、これにより、作業品質の確保及び作業期間の短縮に貢献することができる。
【0025】
ここで図3は作業員ユニットデータベース6aに格納される作業員ユニットに関する情報に対応する組織構成図である。この組織構成図では、組織構成のトップに支援対象作業の全体を総合的に指揮するフォアマンF(Foreman)がおり、その指揮下に、複数の作業員ユニットUが配置される。
【0026】
一人のフォアマンFの指揮下にある作業員ユニットUの数は任意に設定してよい。本実施形態では、以下の理由から、5つの作業員ユニットA~Eが配置された場合を例示している。尚、支援対象作業の規模に応じて、複数のフォアマンFを配置して、各フォアマンFの指揮下に複数の作業員ユニットUを配置するように組織構成を行ってもよい。
【0027】
図4は、各作業員ユニットA~EのユニットリーダーUL(A)~UL(E)を集合させてフォアマンFが指示伝達を行っている様子を示す模式図である。この図では、指示伝達時の効率的な形態として、フォアマンFを中心として円弧状に各作業員ユニットA~EのユニットリーダーUL(A)~UL(E)が並んでいる。ここでフォアマンFと各ユニットリーダーUL(A)~UL(E)との間の距離L1を人間同士の明確な意思疎通に適切な距離である2m、フォアマンFの視野θを左右45度、各ユニットリーダーUL(A)~UL(E)が占める領域幅L2を0.5m、各ユニットリーダーUL(A)~UL(E)同士の間隔L3を0.1mと仮定すると、図4に示すように、作業員ユニットUの最適数は「5」であることが導かれる。
【0028】
図3に戻って、各作業員ユニットA~Eには、1人のユニットリーダーULと、2人のユニットメンバーUM1、UM2とが含まれる。ユニットリーダーULは、作業員ユニットにおける上席作業員であり、前述のようにフォアマンFから指示を受けるとともに、2人のユニットメンバーUM1、UM2に更に指示を行うことによって、作業員ユニットが担当する作業を遂行する。ユニットメンバーUM1、UM2は、ユニットリーダーULから指示を受けて作業を行う一般作業員である。これらユニットリーダーUL及びユニットメンバーUM1、UMは、作業遂行にあたって互いにコミュニケーションを伴う作業員である。
【0029】
本実施形態では以下の理由に基づいて、このように各作業員ユニットにおいて作業遂行にあたって互いにコミュニケーションを伴う作業員の数を「3」に設定することで、ミスコミュニケーションの発生を防止した、良好な意思伝達系統を構築している。図5Aは3人の作業員間におけるコミュニケーションルートを示す模式図であり、図5Bは4人の作業員間におけるコミュニケーションルートを示す模式図である。
【0030】
図5Aに示すように、3人の作業員からなる作業員ユニットでは、3パターンのコミュニケーションルートR1~R3が存在する。R1はユニットリーダーULと一方のユニットメンバーUM1との間に形成されるコミュニケーションルートであり、R2はユニットリーダーULと他方のユニットメンバーUM2との間に形成されるコミュニケーションルートであり、R3は一方のユニットメンバーUM1と他方のユニットメンバーUM2との間に形成されるコミュニケーションルートである。一方で、図5B示すように、仮に作業員ユニット内に4人の作業員(1人のユニットリーダーULと、3人のユニットメンバーUM1,UM2,UM3)が存在すると、作業員間に形成可能なコミュニケーションルートの数が増加してしまい(図5BではR1~R5のコミュニケーションが存在する)、作業員ユニット内における良質なコミュニケーションが困難になってしまう。このような理由から、作業員ユニットを構成する作業員の数は、「3」に設定することが好ましい。
【0031】
尚、作業員ユニットには、前述の3人の作業員(ユニットリーダーUL及びユニットメンバーUM1、UM2)に加えて、これらの作業員の手足として行動可能なヘルパーHが含まれてもよい。ヘルパーHは作業員からの一方的な指示によって行動する役割を有しており、前述の3人の作業員のように、作業遂行にあたって互いのコミュニケーションを必要としない。図3の例では、2人のユニットメンバーUMに対して、それぞれ一人ずつ(計2名)のヘルパーHが配置されている。これにより、2人のユニットメンバーUMは、作業を行う際にヘルパーHに指示することで作業を補助してもらうことができる。このようなヘルパーHは、専らユニットメンバーUMによる指示に基づいて行動を行うため、作業員ユニットUに加えたとしても作業員間のコミュニケーションに寄与しないため、コミュニケーションルートを複雑化することなく、作業効率の向上を図ることができる。
【0032】
尚、作業現場では作業員ユニットを階層的に構成するユニットリーダーUL、ユニットメンバーUM1、UM2及びヘルパーHが混在して作業が行われる。そのため、作業現場では、各階層(レベル)が判別可能なように各人にレベル判別用のビブスを着用させてもよい。ビブスは、例えばレベルに応じて色分けするなど、視覚上明瞭な物を用いることができる。
【0033】
このような作業員ユニットに関する情報は、予め人為的に作成されてもよいし、コンピュータによる演算により作成されてもよい。後者の場合、例えばコンピュータのような演算装置に基本的な作業員リストを入力し、所定の条件に基づいて各作業員ユニットに分類することで作成することができる。そして、これらの作業員ユニットに関する情報は、予め作業員ユニットデータベース6aに格納して用意しておいてもよいし、入力端末8を用いて入力されてもよい。
【0034】
続いて分割タスクデータベース6bには、支援対象作業を分割して作成される分割タスクに関する情報が格納される。分割タスクは、作業員ユニットの単位作業量に対応するように支援対象作業を分割することで作成される。分割タスクに関する情報には、このように作成された複数の分割タスクと、複数の分割タスク間のリレーション情報とが含まれる。前者は各分割タスクにおける具体的な作業内容に関する情報であり、例えば、作業手順、各作業手順における注意点、各作業手順で使用される工具に関する情報などが含まれる。また後者は、各分割タスクの相対的関係に関する情報であり、例えば各分割タスクの間における主従関係やクリティカルパスに関する情報が含まれる。
【0035】
作業スケジュール作成部12は、上述の作業員ユニットに関する情報、及び、分割タスクに関する情報に基づいて、作業スケジュールWSを作成する。ここで図6は作業スケジュール作成部12によって作成される作業スケジュールWSの一例を示すガントチャートである。図6では、ある支援対象作業を、単位作業量を有する複数の分割タスクT1、T2、・・・に分割し、各分割タスクT1、T2、・・・に対して作業員ユニットA~Eが分配された作業スケジュールWSが示されている(図6では分割タスクT1~T7のみが示されているが、分割タスクT8以降も存在する)。
【0036】
これら一連の分割タスクT1、T2、・・・は、分割タスクに関する情報に基づいて特定される。具体的には、各分割タスクT1、T2、・・・の主従関係やクリティカルパスは、前述のリレーション情報に基づいて規定される。図6では、破線矢印で示されるように、分割タスクT1~T4は第1クリティカルパスC1に含まれ、分割タスクT5~T6は第2クリティカルパスC2に含まれる(第1クリティカルパスC1及び第2クリティカルパスC2は互いに独立している)。
【0037】
これら分割タスクT1、T2、・・・には、それぞれ複数の作業員ユニットA~Eが分配される。作業員ユニットA~Eは互いに同等であり、分割タスクT1、T2、・・・に予め設定された優先度に応じて順に分配される。尚、各分割タスクT1、T2、・・・に設定される優先度は、例えば、予め分割タスクデータベース6bに格納しておいてもよい。
【0038】
このように作業スケジュールWSは、複数の分割タスクT1、T2、・・・に対して複数の作業員ユニットA~Eが分配されて作成される。そして作業スケジュール作成部12で作成された作業スケジュールWSは、例えば、通信ネットワーク2を介してデータサーバ6の作業スケジュールデータベース6cに格納される。
【0039】
尚、本実施形態では基本的に1つの支援対象作業を取り扱うが、複数の支援対象作業を取り扱う場合には、作業スケジュールWSもまた、複数の支援対象作業に対応するように複数作成されてもよい。この場合、データサーバ6に含まれる分割タスクや作業員ユニットに関する情報もまた、各各支援対象作業に対応付けて管理される。
【0040】
作業スケジュール修正部14は、作業スケジュールWSを修正可能に構成される。作業スケジュール修正部14は、例えば、所定の信号が入力されたことをトリガ―として作業スケジュールデータベース6cにアクセスし、作業スケジュールデータベース6cに格納されている作業スケジュールWSを修正する。本実施形態では、分割タスク完了情報取得部16で分割タスク完了情報が取得された場合、又は、中断情報取得部18で中断情報が取得された場合に、作業スケジュールWSの修正が行われるように構成される。
【0041】
分割タスク完了情報取得部16は、分割タスク完了情報を取得する。分割タスク完了情報は、複数の分割タスクT1、T2、・・・のいずれかが完了した場合に、その旨を示す信号としてメインサーバ4に対して入力される。分割タスク完了情報は、例えば、特定の分割タスクが完了された場合に、ユーザ端末10a又は10bを操作することにより作成され、通信ネットワーク2を介してメインサーバ4に入力される。そして作業スケジュール修正部14は、分割タスク完了情報から特定される分割タスクを除く残りの分割タスクに対して作業員ユニットを再分配することにより、作業スケジュールWSを修正する。これにより、各分割タスクが完了されるごとに作業スケジュールWSが更新され、作業の進行度に応じた効率的な作業スケジュール管理が可能となる。
【0042】
尚、分割タスク完了情報には、完了した分割タスクに関する作業履歴情報が含まれていてもよい。この場合、作業履歴情報はデータサーバ6に蓄積することで作業履歴として保存し、作業の評価などの用途に利用することができる。
【0043】
中断情報取得部18は、複数の分割タスクT1、T2、・・・のいずれかにおいて中断事象Yが発生した場合に、その旨を示す信号としてメインサーバ4に対して入力される。中断事象Yとは、作業員ユニットが分割タスクを遂行する際に、その遂行を中断せざるを得ない事由を広く含み、例えば、分割タスクを完了するために予め想定される作業時間内に完了が困難となる事象を意味する。具体例を挙げると、ある部品の点検を行うために部品を固定するボルトを取り外す工程を含む分割タスクがある場合、ボルトが固着していたため通常の手順では取り外しが困難になってしまった場合、中断事象Yに該当する。
【0044】
このような中断情報は、例えば、中断事象Yが発生した際に、作業員がユーザ端末10a又は10bを操作することにより作成され、通信ネットワーク2を介してメインサーバ4に送られることで、中断情報取得部18によって取得される。
【0045】
ここで図7を参照して、中断情報を取得した場合における作業スケジュールWSの修正制御について具体的に説明する。図7は作業スケジュールWSの修正制御を工程毎に示すフローチャートであり、図8は修正後の作業スケジュールWS´を示すガントチャートである(すなわち図6に示す作業スケジュールWS´の修正例である)。
【0046】
まず作業スケジュール修正部14は、中断情報取得部18によって中断情報が取得されたか否かを判定する(ステップS100)。ステップS100の判定は繰り返し実施されることにより、中断事象Yの発生が監視される。本実施形態では図6に示すように、分割タスクT2の途中で中断事象Yが発生した場合を例に説明する。この例では、中断事象Yが発生した分割タスクT2は第1クリティカルパスC1に含まれるため、中断事象Yが解消するまで、続く分割タスクT3を開始することができず、分割タスクT3に分配された作業員ユニットCは、中断事象が解消されるまで待機しなければならない。このような事態は、一部の作業員ユニットが無駄に待機することを意味し、ヒューマンリソースの活用の観点から効率的でない。そこで作業スケジュール修正部14は、中断事象が発生した場合には、作業スケジュールWSを修正することにより効率化を図る。
【0047】
中断情報取得部18によって中断情報が取得された場合(ステップS100:YES)、作業スケジュール修正部14はデータサーバ6の作業スケジュールデータベース6cにアクセスし、現在の作業スケジュールWS(図6を参照)を取得する(ステップS101)。
【0048】
続いて作業スケジュール修正部14は、中断事象より後に開始される分割タスクに対して、作業員ユニットを再分配することにより作業スケジュールWSを修正する(ステップS102)。ステップS102における作業スケジュールWSの修正は、中断事象より後に開始される分割タスクに対して、中断事象が生じた分割タスクに分配された作業員ユニットを除く残りの作業員ユニットを再分配することにより行われる。図8の例では、分割タスクT2で中断事象Yが発生しているため、分割タスクT2より後に開始される分割タスクT7に対して、作業員ユニットBを除く他の作業員ユニットCが再分配されることで、作業スケジュールWSが修正されている。
【0049】
図8に示す修正後の作業スケジュールWS´では、中断事象Yが発生した分割タスクT2に分配された作業員ユニットBは、引き続き分割タスクT2において中断事象Yの解消のために作業継続しつつ、修正前の作業スケジュールWSにおいて作業員ユニットBが2回目以降に分配されていた分割タスクT7に対して、新たに作業員ユニットCが分配されている。このように、一部の分割タスクで中断事象Yが発生した場合においても、他の分割タスクに分配された作業員ユニットを効率的に活用した作業スケジュールWSの構築が可能となる。
【0050】
またステップS102における作業スケジュールWSの修正は、中断事象Yが生じた分割タスクとは異なるクリティカルパスに含まれ、且つ、中断事象より後に開始される分割タスクに対して、中断事象が生じた分割タスクが属するクリティカルパスに含まれ、且つ、中断事象より後に開始される前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを分配することにより行われてもよい。図8の例では、第1クリティカルパスC1に含まれる分割タスクT2において中断事象Yが発生しているため、第1クリティカルパスC1とは異なる第2クリティカルパスC2に含まれる分割タスクT7に対して、中断事象Yが生じた分割タスクT2が属する第1クリティカルパスC1に含まれ、且つ、中断事象Yより後に開始される分割タスクT3に分配された作業員ユニットCが分配されている。
【0051】
図6に示す修正前の作業スケジュールWSでは、作業員ユニットCは、第1クリティカルパスC1において、中断事象Yが発生した分割タスクT2より後に開始する分割タスクT3に分配されているため、修正前の作業スケジュールWSでは中断事象Yが解消されるまで待機しなければならない。一方で図8に示す修正後の作業スケジュールWS´では、分割タスクT3に分配されていた作業員ユニットCを、異なるクリティカルパスに属する分割タスクT7に再分配することで、作業員ユニットCの待機時間を有効活用することが可能となる。このように中断事象Yの影響を受けない分割タスクT7に対して、中断事象Yの影響を受ける分割タスクT3に分配されていた作業員ユニットCを再分配することで、効率的なヒューマンリソースの活用が可能な作業スケジュールを構築できる。
【0052】
尚、作業員ユニットの再分配が行われる分割タスクは、当該作業員ユニットが有する時間的余裕に応じて、前倒しで実施されてもよい。図8の例では、作業員ユニットCが再分配される分割タスクT7が、図6に示す修正前の作業スケジュールWSに比べて早いタイミングで実施されるように修正されている。
【0053】
続いて作業スケジュール修正部14は、修正後の作業スケジュールWS´を作業スケジュールデータベース6cに格納する(ステップS103)。これにより、作業スケジュールデータベース6cに格納されている作業スケジュールWSが最新の状態に更新される。
【0054】
尚、前述のように作業支援システム1が複数の支援対象作業を取り扱う場合には、作業スケジュール修正部14は、各支援対象作業に対応する複数の作業スケジュールをそれぞれ修正してもよい。この場合、分割タスクに対する作業員ユニットの再分配は、複数の作業スケジュールにわたって行われてもよい。これにより、いずれかの分割タスクにおいて中断事象が発生した場合には、各作業スケジュールにおける分割タスクに対して作業員ユニットを再分配することで、各作業スケジュールを修正し、ヒューマンリソースのより一層の有効活用が可能となる。
【0055】
再び図2に戻って、作業支援情報作成部20はデータサーバ6に格納されたデータに基づいて作業支援情報を作成する。例えば、作業支援情報には、分割タスクT1、T2、・・・における使用工具、作業員ユニット、及び、作業注意点の少なくとも一つに関する情報が含まれる。このような作業支援情報作成部20による作業支援情報の作成は、自動的に行われてもよいし、作業員が使用するユーザ端末10a及び10bからの要求に応じて行われてもよい。
【0056】
作業支援情報作成部20は、作業員識別情報取得部22によって取得された作業員識別情報に基づいて特定される作業員に対して有用な作業支援情報を作成してもよい。作業員識別情報取得部22は、作業員を識別するための作業員識別情報を取得する。例えば、各作業員は個人を特定するための作業員識別情報を出力可能な作業員識別デバイスを所有しており、作業員識別情報取得部22は、当該デバイスから出力される作業員識別情報を通信ネットワーク2を介して取得する。作業員識別デバイスは、例えば、各作業員によって所有され、作業員識別情報を発信可能なRFIDタグや、作業員識別情報を読み取り可能なバーコードなどが付されたIDカードが利用可能である。ユーザ端末10a又は10bは、これらのデバイスから作業員識別情報を取得し、通信ネットワーク2を介してメインサーバ4に送る。
【0057】
作業支援情報作成部20は、このように取得した作業員識別情報に基づいて作業支援情報の提供先となる作業員を特定し、当該作業員に向けた作業支援情報を作成する。これにより、各作業員にカスタマイズされた作業支援情報の提供が可能となる。また作業員はユーザ端末10a及び10bを操作することにより、他の作業員に向けた作業支援情報や、データサーバ6に格納された各種情報をユーザ端末10a及び10bを介して参照可能に構成されてもよい。
【0058】
出力部24は、作業支援情報作成部20で作成された作業支援情報をユーザ端末10a及び10bに対して出力する。これにより、作業スケジュールデータベース6cに格納された作業スケジュールWSに基づいて各分割タスクに関する作業支援情報が各作業員に対して出力される。
【0059】
出力部24による作業支援情報の出力は、特定の作業員識別情報が作業員識別情報取得部で検出されたことを条件として行われてもよい。例えば、作業員ユニットAに対する作業支援情報の出力は、作業員ユニットAを構成する各作業員に対応する作業員識別情報が取得されることを条件として行われる。これにより、作業支援情報が提供される作業員を認識した上で作業支援情報の出力が行われるため、作業員が作業支援情報を見逃すような事態をシステム的に回避し、作業品質を効果的に向上できる。
【0060】
続いて作業支援情報の具体例について幾つか説明する。図9及び図10はユーザ端末10aによる作業支援情報の表示例である。ユーザ端末10aは、前述のように、作業現場における複数の作業員を利用対象とした定置型端末であり、作業支援情報を表示するためのディスプレイを備えている。
【0061】
図9の例では、ユーザ端末10aディスプレイ上には、作業支援情報として、作業名M1、作業対象物M2、作業名M1で必要な工具又は冶具M3(これらを選択するためのプッシュボタンPBも表示)、作業名M1に携わる作業員を選択・確認するための表示M4、作業名M1を行うために必要な不随する工具M5(工具M5を取りに行くためのシステム(図13を参照)に転送するためのプッシュボタンPBも表示)が表示されている。
【0062】
また図10の例では、ユーザ端末10aディスプレイ上には、作業支援情報として、作業手順M6、注意ポイントM7、作業員認識画面M8が表示されている。作業手順M6及び注意ポイントM7は、作業支援情報に含まれる分割タスクにおける具体的手順や、各作業手順を実施する際の注意ポイントが、例えば動画などの形式で表示される。これにより、作業員の熟練度に関わらず分割タスクを遂行する際に必要な理解を容易に得ることができる。
【0063】
ここで作業支援情報に含まれる注意ポイントM7の具体例について説明する。ここでは分割タスクの一例として、内部を一定方向に流体が流れる配管30の組み立て作業を説明する。図11に示すように、配管30は、互いの端部に設けられたフランジ部が対向するように配置される一対の配管部材32、34と、一対の配管部材32、34の間に介在するオリフィス36と、を含んで構成される。オリフィス36は、配管30の内部を流れる流体の向きNに対応するように設置される。そのため作業員は、配管30を組み当たれる際に、配管30の内部を流れる流体の向きNを把握し、正確な向きでオリフィス36を組み込む必要がある。
【0064】
そこで作業支援情報は、注意ポイントM7として、作業対象である配管30における流体の向きNをユーザ端末10bのディスプレイ上に表示する。これにより、作業員がディスプレイを確認することで、配管30における流体の向きNを容易且つ正確に把握することができ、例えばオリフィス36の向きを間違うような作業ミスを効果的に防止することができる。
【0065】
また図10に戻って、作業員認識画面M8では、作業員氏名M8aと、作業員の認識を示すインジケータM8bと、確認ボタンM8cとが表示されている。インジケータM8bは、前述したように、作業員氏名M8aに対応する作業員識別情報をユーザ端末10aが検出したか否かに応じて点灯する。確認ボタンM8cは、インジケータM8bが点灯した場合にタッチ操作が可能になり、タッチ操作によって作業員の認証を完了するためのボタンである。図10では、作業員認識画面M8上に3人の作業員に対応するインジケータM8b及び確認ボタンM8cが設けられており、3人の作業員全てについて認証がなされたことを条件に、作業支援情報の詳細表示がなされるように構成されている。これにより、分割タスクに携わる作業員が全員揃っている状態を確認した上で作業支援情報を表示し、的確な作業支援が可能になっている。
【0066】
また作業支援情報には、分割タスクにおいて使用される工具に関する情報が含まれていてもよい。図12は作業で使用される工具、及び、工具が収納される収納棚40を示す模式図であり、図13図12の収納棚40の配置を上方から概略的に示す模式図である。各収納棚40は複数の棚40aを有しており、各棚40aにはそれぞれ工具42が収納されている。これらの工具42には、工具識別情報を含むバーコードタグ44が付されており、例えば、ポータブル端末であるユーザ端末10bを用いてバーコードタグ44を読み取ることで、工具識別情報を取得可能に構成される。工具識別情報は、例えば、予めデータサーバ6に格納された工具に関する情報と照合することによって、各作業で使用すべき工具であるか否かを照合するために用いられる。
【0067】
尚、収納棚40の各棚40aには、収納されている工具42が判別可能なように、各棚40aの表面に、例えば工具42の写真や名称などの表示46を付してもよい。
【0068】
このように各工具42が収納される収納棚40は、図13に示すように、基準位置Oを中心として扇状に複数配置されてもよい。これにより、作業員は基準位置Oを起点として各収納棚40に効率的にアクセスすることができる。
【0069】
またどの収納棚40にどの工具42を収納するかについては、各工具42の使用頻度や重量に応じて決定してもよい。例えば使用頻度が高い工具42や、重量が大きいため搬送に伴う労力が大きな工具42は、作業員の基準位置Oから近い位置にある収納棚40に収納するようにしてもよい。
【0070】
また各工具42から工具識別情報を出力するデバイスとして、工具識別情報に関する信号を発信可能なRFIDタグを利用してもよい。この場合、RFIDタグを各工具42に取り付け、各工具42から発信される工具識別情報を取得することで、どの収納棚40にどの工具42が収納されているのかを管理してもよい。更に、各収納棚40における工具42の収納状態に基づいて、作業員ユニットが分配された各分割タスクT1、T2、・・・において必要となる各工具42を効率的に収集するための工具収集ルートTRを作業支援情報に含めてもよい。図13では、ある分割タスクで必要となる各工具42が収納される幾つかの収納棚40を最短ルートで巡回可能な工具収集ルートTRが例示されている。これによって、工具収集を少ない労力で行うことができるため、限られたヒューマンリソースを効果的に利用するための作業支援が可能となる。
【0071】
以上説明したように上述の実施形態によれば、作業実施の途中で中断事象が生じた場合においても限られたリソースを有効活用することで効率的な作業支援を実施可能な作業支援システム、作業支援方法及び作業支援プログラムを提供することができる。
【0072】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0073】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0074】
(1)本開示の一実施形態に係る作業支援システム(1)は、
少なくとも一つの支援対象作業を、複数の作業員を含む作業員ユニット(例えば上記実施形態の作業員ユニットA~E)に対応する単位作業量を有する複数の分割タスク(例えば上記実施形態の分割タスクT1、T2、・・・)に分割し、前記作業員ユニットを前記複数の分割タスクに分配して作成される作業スケジュール(例えば上記実施形態の作業スケジュールWS)を用いて作業支援を行う作業支援システムであって、
前記複数の分割タスクのいずれかで中断事象(例えば上記実施形態の中断事象Y)が生じた旨を示す中断情報を取得するように構成された中断情報取得部(例えば上記実施形態の中断情報取得部18)と、
前記中断情報取得部で前記中断情報が取得された場合、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに対して、前記中断事象が生じた前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを除く残りの前記作業員ユニットを再分配することにより、前記作業スケジュールを修正するように構成された作業スケジュール修正部(例えば上記実施形態の作業スケジュール修正部14)と、
を備える。
【0075】
上記(1)の構成によれば、支援対象作業を単位作業量を有する複数の分割タスクに分割し、複数の分割タスクの各々に対して作業員ユニットを分配することで作業スケジュールが作成される。このような作業スケジュールにおいて、いずれかの分割タスクで中断事象が発生した場合には、中断事象より後に開始される分割タスクに対して、中断事象が生じた分割タスクに分配された作業員ユニットを除く残りの作業員ユニットを再分配することにより、作業スケジュールの修正が行われる。これにより、一部の分割タスクで中断事象が発生した場合においても、他の分割タスクに分配された作業員ユニットを効率的に活用した作業スケジュールの構築が可能となる。
【0076】
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の構成において、
前記作業スケジュール修正部は、前記中断事象が生じた前記分割タスクとは異なるクリティカルパスに含まれ、且つ、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに対して、前記中断事象が生じた前記分割タスクが属するクリティカルパスに含まれ、且つ、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを分配するように前記作業スケジュールを修正する。
【0077】
上記(2)の構成によれば、中断事象が生じることで開始が困難となる分割タスクに分配されていた作業員ユニットが、中断事象が生じた分割タスクとは異なるクリティカルパスに属する分割タスクに再分配される。これにより、中断事象の発生によって無駄な待機時間が生じる可能性がある作業員ユニットを、中断事象の影響を受けない分割タスクに割り当てることができ、効率的なヒューマンリソースの活用が可能な作業スケジュールを再構築できる。
【0078】
(3)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の構成において、
前記複数の分割タスクのいずれかが完了したことを示す分割タスク完了情報を取得する分割タスク完了情報取得部(例えば上記実施形態の分割タスク完了情報取得部16)を更に備え、
前記作業スケジュール修正部は、前記分割タスク完了情報取得部によって前記分割タスク完了情報を取得した場合、残りの前記分割タスクに対して前記作業員ユニットを再分配することにより、前記作業スケジュールを修正するように構成される。
【0079】
上記(3)の構成によれば、一部の分割タスクが完了した場合には、未完了の分割タスクに対して作業員ユニットが再分配される。これにより、各分割タスクが完了されるごとに作業スケジュールが更新され、作業の進行度に応じた効率的な作業スケジュール管理が可能となる。
【0080】
(4)幾つかの実施形態では上記(1)から(3)のいずれか一構成において、
前記少なくとも1つの支援対象作業は、互いに独立した複数の支援対象作業を含み、
前記作業スケジュール修正部は、前記複数の支援対象作業に対応する複数の前記作業スケジュールをそれぞれ修正するように構成される。
【0081】
上記(4)の構成によれば、支援対象作業が複数ある場合には、複数の支援対象作業がそれぞれ分割された分割タスクに対して作業員ユニットを分配することで、支援対象作業毎に作業スケジュールが作成される。そして、いずれかの分割タスクにおいて中断事象が発生した場合には、各作業スケジュールにおける分割タスクに対して作業員ユニットを再分配することで、各作業スケジュールを修正し、ヒューマンリソースのより一層の有効活用が可能となる。
【0082】
(5)幾つかの実施形態では上記(1)から(4)のいずれか一構成において、
前記作業スケジュールに基づいて前記分割タスクに関する作業支援情報を出力するように構成された出力部(例えば上記実施形態の出力部24)を更に備える。
【0083】
上記(5)の構成によれば、作業スケジュールに基づく作業支援情報を出力することで、作業スケジュールに従って作業を実施する各作業員に対して効率的な作業支援を行うことができる。
【0084】
(6)幾つかの実施形態では上記(5)の構成において、
前記作業支援情報は、前記分割タスクにおける使用工具、前記作業員ユニット、及び、作業注意点の少なくとも一つに関する情報を含む。
【0085】
上記(6)の構成によれば、これらの情報を作業支援情報に含めることで、効果的な作業支援が可能となる。
【0086】
(7)幾つかの実施形態では上記(6)の構成において、
前記分割タスクは、一対の配管部材(例えば上記実施形態の配管部材32、34)の間に前記一対の配管部材の内部を流れる流体の向き(例えば上記実施形態の流体の向きN)に対応して設けられるオリフィス(例えば上記実施形態のオリフィス36)の設置作業を含み、
前記作業注意点は、前記オリフィスの設置向きに関する情報を含む。
【0087】
上記(7)の構成によれば、作業支援情報に含まれる作業注意点にオリフィスの設置向きに関する情報を含めることで、オリフィス設置作業におけるオリフィスの設置向きを作業員がミスすることを効果的に防止できる。
【0088】
(8)幾つかの実施形態では上記(5)から(7)のいずれか一構成において、
前記作業員を識別するための作業員識別情報を取得するように構成された作業員識別情報取得部(例えば上記実施形態の作業員識別情報取得部22)を更に備え、
前記出力部は、前記作業支援情報に対応する前記作業員ユニットに対応する前記作業員識別情報が前記作業員識別情報取得部で検出された場合、前記作業支援情報を出力するように構成される。
【0089】
上記(8)の構成によれば、特定の作業員に対応する作業員識別情報が取得されることを条件に、作業支援情報の出力が行われる。これにより、特定の作業員に対して作業支援情報を的確に提供することができるため、より品質の高い作業支援が可能となる。
【0090】
(9)幾つかの実施形態では上記(5)から(8)のいずれか一構成において、
前記使用工具に関する情報は、前記分割タスクで使用される複数の工具(例えば上記実施形態の工具42)がそれぞれ収納された複数の収納棚(例えば上記実施形態の収納棚40)間を通る最短ルート(TR)に関する情報を含む。
【0091】
上記(9)の構成によれば、作業支援情報には、分割タスクで必要となる工具を収集するためのルートが含まれる。複数の工具が複数の収納棚に収納されている場合には、例えば、これら複数の収納棚を通る最短ルートが作業支援情報として提供されることで、作業員は最も効率がよいルートで工具の収集が可能となる。
【0092】
(10)本開示の一実施形態に係る作業支援方法は、
少なくとも一つの支援対象作業を、複数の作業員を含む作業員ユニット(例えば上記実施形態の作業員ユニットA~E)に対応する単位作業量を有する複数の分割タスク(例えば上記実施形態の分割タスクT1、T2、・・・)に分割し、前記作業員ユニットを前記複数の分割タスクに分配して作成される作業スケジュール(例えば上記実施形態の作業スケジュールWS)を用いて作業支援を行う作業支援方法であって、
中断情報取得部(例えば上記実施形態の中断情報取得部18)によって前記複数の分割タスクのいずれかで中断事象(例えば上記実施形態の中断事象Y)が生じた旨を示す中断情報を取得するステップ(例えば上記実施形態のステップS100)と、
前記中断情報取得部で前記中断情報が取得された場合、作業スケジュール修正部(例えば上記実施形態の作業スケジュール修正部14)によって、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに対して、前記中断事象が生じた前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを除く残りの前記作業員ユニットを再分配することにより、前記作業スケジュールを修正するステップ(例えば上記実施形態のステップS102)と、
を備える。
【0093】
上記(10)の方法によれば、支援対象作業を単位作業量を有する複数の分割タスクに分割し、複数の分割タスクの各々に対して作業員ユニットを分配することで作業スケジュールが作成される。このような作業スケジュールにおいて、いずれかの分割タスクで中断事象が発生した場合には、中断事象より後に開始される分割タスクに対して、中断事象が生じた分割タスクに分配された作業員ユニットを除く残りの作業員ユニットを再分配することにより、作業スケジュールの修正が行われる。これにより、一部の分割タスクで中断事象が発生した場合においても、他の分割タスクに分配された作業員ユニットを効率的に活用した作業スケジュールの構築が可能となる。
【0094】
(11)本開示の一実施形態に係る作業支援プログラムは、
少なくとも一つの支援対象作業を、複数の作業員を含む作業員ユニット(例えば上記実施形態の作業員ユニットA~E)に対応する単位作業量を有する複数の分割タスク(例えば上記実施形態の分割タスクT1、T2、・・・)に分割し、前記作業員ユニットを前記複数の分割タスクに分配して作成される作業スケジュール(例えば上記実施形態の作業スケジュールWS)を用いて作業支援を行うためにコンピュータを、
前記複数の分割タスクのいずれかで中断事象が生じた旨を示す中断情報を取得する手段(例えば上記実施形態の中断情報取得部18)と、
前記中断情報が取得された場合、前記中断事象より後に開始される前記分割タスクに対して、前記中断事象が生じた前記分割タスクに分配された前記作業員ユニットを除く残りの前記作業員ユニットを再分配することにより、前記作業スケジュールを修正する手段(例えば上記実施形態の作業スケジュール修正部14)と、
として機能させる。
【0095】
上記(11)のプログラムによれば、支援対象作業を単位作業量を有する複数の分割タスクに分割し、複数の分割タスクの各々に対して作業員ユニットを分配することで作業スケジュールが作成される。このような作業スケジュールにおいて、いずれかの分割タスクで中断事象が発生した場合には、中断事象より後に開始される分割タスクに対して、中断事象が生じた分割タスクに分配された作業員ユニットを除く残りの作業員ユニットを再分配することにより、作業スケジュールの修正が行われる。これにより、一部の分割タスクで中断事象が発生した場合においても、他の分割タスクに分配された作業員ユニットを効率的に活用した作業スケジュールの構築が可能となる。
【符号の説明】
【0096】
1 作業支援システム
2 通信ネットワーク
4 メインサーバ
6 データサーバ
6a 作業員ユニットデータベース
6b 分割タスクデータベース
6c 作業スケジュールデータベース
8 入力端末
10a、10b ユーザ端末
12 作業スケジュール作成部
14 作業スケジュール修正部
16 分割タスク完了情報取得部
18 中断情報取得部
20 作業支援情報作成部
22 作業員識別情報取得部
24 出力部
30 配管
32、34 配管部材
36 オリフィス
40 収納棚
40a 棚
42 工具
44 バーコードタグ
C1 第1クリティカルパス
C2 第2クリティカルパス
F フォアマン
H ヘルパー
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13