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特許7403290ヘッドアップディスプレイシステムおよび移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイシステムおよび移動体
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20231215BHJP
   G02B 30/26 20200101ALI20231215BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20231215BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20231215BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20231215BHJP
   G03B 35/18 20210101ALI20231215BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B30/26
G02F1/13 505
G02F1/01 F
H04N5/64 521P
G03B35/18
B60K35/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019214688
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021085989
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 隆慶
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】草深 薫
(72)【発明者】
【氏名】村田 充弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-195960(JP,A)
【文献】特開2019-142276(JP,A)
【文献】特開2015-113088(JP,A)
【文献】特開2004-047363(JP,A)
【文献】特開2015-157575(JP,A)
【文献】特開平11-219144(JP,A)
【文献】特開2019-128392(JP,A)
【文献】特開2019-145967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0320291(US,A1)
【文献】特開2008-213763(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025832(WO,A1)
【文献】特開2002-120551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01,30/26
B60K 35/00
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に備わったヘッドアップディスプレイシステムであって、
表示パネルを備え、前記表示パネルに表示される画像を投影するように構成された投影モジュールと、
前記画像を、少なくとも部分的に反射するように構成された反射光学素子と、
前記投影モジュールと前記反射光学素子との間にある、遮光機能を有する光学部材と、
前記光学部材の遮光機能を制御するコントローラと、
前記コントローラによって制御され、前記投影モジュールを冷却する冷却部と、を備え、
前記コントローラは、前記移動体に備わった、エンジンを制御する電子制御ユニットから、前記移動体のイグニッションスイッチのオンまたはオフの信号を取得するに際し、前記オンの信号が前記冷却部を稼働する第1情報であり、前記オフの信号が前記冷却部を稼働しない第2情報であるとして取得し、前記第1情報および前記第2情報によって前記冷却部を稼働するか否かを制御するヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項2】
前記冷却部は、前記表示パネルを冷却する、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記投影モジュールが動作状態の場合に、前記光学部材を透明状態にさせて、
前記投影モジュールが停止状態の場合に、前記光学部材を遮光状態にさせる、請求項1またはに記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記ヘッドアップディスプレイシステムが搭載される移動体のイグニッションスイッチのオンまたはオフを取得し、
前記イグニッションスイッチがオンの場合に、前記光学部材を透明状態にさせて、
前記イグニッションスイッチがオフの場合に、前記光学部材を遮光状態にさせる、請求項1、、およびのいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記イグニッションスイッチがオンの場合に、前記冷却部を稼働させる、請求項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項6】
前記投影モジュールの温度を計測する温度センサを備え、
前記コントローラは、前記温度センサの計測した温度に基づいて、前記冷却部を動作させる、請求項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項7】
前記冷却部は、前記移動体に搭載されるエアコンの風力を利用して前記投影モジュールを冷却する、請求項からのいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項8】
前記表示パネルは、前記移動体にダッシュボードの表面に設けられる、請求項からのいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項9】
前記光学部材は、高分子分散型液晶である請求項1からのいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項10】
前記表示パネルは、前記画像として視差画像を表示可能に構成され、前記投影モジュールは、前記視差画像の視域を実質的に規定することが可能な視差光学素子を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項11】
表示パネルを備え、前記表示パネルに表示される画像を投影するように構成された投影モジュールと、前記画像を、少なくとも部分的に反射するように構成された反射光学素子と、前記投影モジュールと前記反射光学素子との間に、遮光機能を有する光学部材と、前記光学部材の遮光機能を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、エンジンを制御する電子制御ユニットから、イグニッションスイッチのオンまたはオフの信号を取得するに際し、前記オンの信号が前記光学部材を透明状態にする第1情報であり、前記オフの信号が前記光学部材を遮光状態にする第2情報であるとして取得し、前記第1情報および前記第2情報によって前記光学部材を透明状態にするか否かを制御するヘッドアップディスプレイシステムを備える移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイシステムおよび移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者の左右の眼に互いに視差を有する画像を伝播させ、利用者の視野内に奥行きを有する3次元画像として視認される虚像を投影するヘッドアップディスプレイシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-008722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドアップディスプレイシステムは、例えば移動体に搭載されてナビゲーションの用途で利用される。このような用途において、ヘッドアップディスプレイシステムには熱対策が求められていた。
【0005】
したがって、上記点に着目してなされた本開示の目的は、熱対策を施したヘッドアップディスプレイシステムおよび移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムは、移動体に備わったヘッドアップディスプレイシステムである。前記ヘッドアップディスプレイシステムは、表示パネルを備え、前記表示パネルに表示される画像を投影するように構成された投影モジュールと、前記画像を、少なくとも部分的に反射するように構成された反射光学素子と、前記投影モジュールと前記反射光学素子との間にある、遮光機能を有する光学部材と、前記光学部材の遮光機能を制御するコントローラと、前記コントローラによって制御され、前記投影モジュールを冷却する冷却部と、を備え、前記コントローラは、前記移動体に備わった、エンジンを制御する電子制御ユニットから、前記移動体のイグニッションスイッチのオンまたはオフの信号を取得するに際し、前記オンの信号が前記冷却部を稼働する第1情報であり、前記オフの信号が前記冷却部を稼働しない第2情報であるとして取得し、前記第1情報および前記第2情報によって前記冷却部を稼働するか否かを制御する。
【0007】
本開示の一実施形態に係る移動体は、ヘッドアップディスプレイシステムを備える。前記ヘッドアップディスプレイシステムは、表示パネルを備え、前記表示パネルに表示される画像を投影するように構成された投影モジュールと、前記画像を、少なくとも部分的に反射するように構成された反射光学素子と、前記投影モジュールと前記反射光学素子との間に、遮光機能を有する光学部材と、前記光学部材の遮光機能を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、エンジンを制御する電子制御ユニットから、イグニッションスイッチのオンまたはオフの信号を取得するに際し、前記オンの信号が前記光学部材を透明状態にする第1情報であり、前記オフの信号が前記光学部材を遮光状態にする第2情報であるとして取得し、前記第1情報および前記第2情報によって前記光学部材を透明状態にするか否かを制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、熱対策を施したヘッドアップディスプレイシステムおよび移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】移動体に搭載されたヘッドアップディスプレイシステムの一例を示す概略構成図である。
図2図1のヘッドアップディスプレイによる表示の一例を示す図である。
図3】高分子分散型液晶の変化を説明するための図である。
図4】高分子分散型液晶の変化を説明するための図である。
図5図1に示す表示パネルを奥行方向から見た例を示す図である。
図6図1に示す視差光学素子を奥行方向から見た例を示す図である。
図7図1に示す虚像と利用者の眼との関係を説明するための図である。
図8】表示パネルの虚像における左眼から視認可能な領域を示す図である。
図9】表示パネルの虚像における右眼から視認可能な領域を示す図である。
図10】利用者の眼の位置の変化に伴う視差光学素子の切り替えを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態が説明される。以下の説明で用いられる図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0011】
(ヘッドアップディスプレイシステム)
本開示の一実施形態にかかるヘッドアップディスプレイシステム1は、図1に示すように、投影モジュールと、反射光学素子4と、光学部材71と、冷却部72と、コントローラ5と、を備える。本実施形態において、投影モジュールは、第1投影モジュール2と、第2投影モジュール3と、を含む。投影モジュールは、複数のモジュールを含む構成に限定されず、第1投影モジュール2または第2投影モジュール3だけで構成され得る。本実施形態において、表示パネルは、後述する第1表示パネル6と、後述する第2表示パネル11と、を含む。表示パネルは、複数のパネルを含む構成に限定されず、第1表示パネル6または第2表示パネル11だけで構成され得る。
【0012】
ヘッドアップディスプレイシステム1は、以下にHUD(Head Up Display)システム1と表記される。HUDシステム1は、移動体20に搭載されてよい。移動体20に搭載されたHUDシステム1は、移動体20に搭乗する利用者30に対して、画像を表示する。第1投影モジュール2が投影する画像は、第1画像と称される。第2投影モジュール3が投影する画像は、第2画像と称される。
【0013】
移動体20に搭載されたHUDシステム1を示す図1において、利用者30の左眼31lおよび右眼31rを通る直線の方向である眼間方向はx軸方向として表される。利用者30の前後方向はz軸方向として表される。x軸方向およびz軸方向に垂直な高さ方向はy軸方向として表される。
【0014】
本開示における「移動体」には、車両、船舶、航空機を含む。本開示における「車両」には、自動車および産業車両を含むが、これに限られず、鉄道車両および生活車両、滑走路を走行する固定翼機を含めてよい。自動車は、乗用車、トラック、バス、二輪車、およびトロリーバス等を含むがこれに限られず、道路上を走行する他の車両を含んでよい。産業車両は、農業および建設向けの産業車両を含む。産業車両には、フォークリフト、およびゴルフカートを含むがこれに限られない。農業向けの産業車両には、トラクター、耕耘機、移植機、バインダー、コンバイン、および芝刈り機を含むが、これに限られない。建設向けの産業車両には、ブルドーザー、スクレーバー、ショベルカー、クレーン車、ダンプカー、およびロードローラを含むが、これに限られない。車両は、人力で走行するものを含む。車両の分類は、上述に限られない。例えば、自動車には、道路を走行可能な産業車両を含んでよく、複数の分類に同じ車両が含まれてよい。本開示における船舶には、マリンジェット、ボート、タンカーを含む。本開示における航空機には、固定翼機、回転翼機を含む。
【0015】
(第1投影モジュール)
第1投影モジュール2は、第1表示パネル6を備える。第1表示パネル6は、第1表示パネル6に表示される画像を投影するように構成された装置である。第1表示パネル6には、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、電気泳動ディスプレイ、ツイストボールディスプレイ等の種々のフラットパネルディスプレイを採用しうる。
【0016】
本実施形態において、第1表示パネル6は、図1に示すように画像光を直線的に反射光学素子4に投光するように構成される。反射光学素子4により反射された画像光は、利用者30の左眼31lおよび右眼31rに入射する。これにより、利用者30は、反射光学素子4により反射された第1表示パネル6の虚像V1を視認する。
【0017】
第1投影モジュール2は、さらに、第1表示パネル6を搭載可能なステージ7を有してよい。ステージ7は、反射光学素子4に対して第1表示パネル6の位置または向きを動かすことが可能に構成される。これにより、第1投影モジュール2は、反射光学素子4に第1画像を投光する位置を変更することができる。第1表示パネル6は、移動体20のダッシュボードの表面に設けられてよい。
【0018】
(第2投影モジュール)
第2投影モジュール3は、表示装置8と光学系9とを備える。表示装置8は、照射器10と第2表示パネル11とを含む。第2投影モジュール3は、第2表示パネル11に表示される画像を投影するように構成された装置である。
【0019】
表示装置8は、第2表示パネル11に表示される第2画像の画像光を射出する。表示装置8は、第2投影モジュール3が、利用者30に対して3次元の画像と視認される視差画像を投影可能に構成される場合、さらに、視差光学素子12を含んでよい。第2投影モジュール3が、利用者30に対して2次元の画像と視認される画像のみを投影する場合、視差光学素子12は含まれなくてよい。第2投影モジュール3が視差画像を表示可能な場合の構成については、後で詳細に説明する。
【0020】
光学系9は、表示装置8を出射した第2画像の画像光を、反射光学素子4に向けて伝播させる。光学系9は、所定の正の屈折率を有してよい。光学系9が正の屈折率を有することにより、第2表示パネル11の第2画像は、利用者30の視野内に反射光学素子4より遠くに位置する拡大虚像として投影される。光学系9はミラーを含んでよい。光学系9に含まれるミラーは、凹面鏡であってよい。
【0021】
照射器10は、第2表示パネル11を面的に照射するように構成される。照射器10は、光源、導光板、拡散板、拡散シート等を含んでよい。照射器10は、光源により照射される照射光を第2表示パネル11の面方向に均一化するように構成される。照射器10は、導光板、拡散板、拡散シート等により照射光を概ね均一化しうる。照射器10は均一化された光を第2表示パネル11の方に出射するように構成されうる。
【0022】
第2表示パネル11は、例えば透過型の液晶表示パネルなどの表示パネルを採用しうる。第2表示パネル11としては、透過型の液晶パネルに限られず、自発光型の表示パネルを使用しうる。自発光型の表示パネルは、有機EL,無機EL等を使用しうる。第2表示パネル11として、自発光型の表示パネルを使用した場合、表示装置8は照射器10を備えなくてよい。
【0023】
第2投影モジュール3は、さらに、光学系9の少なくとも一部の構成要素の位置および向きの少なくとも何れかを変更可能に構成されてよい。第2投影モジュール3は、光学系9の少なくとも一部の構成要素の位置および向きを変更させるため、駆動部17を有することができる。駆動部17は、例えば、ステッピングモータ等を含んで構成されてよい。例えば、駆動部17は、光学系9に含まれるミラーの傾きを変更可能に構成される。駆動部17は、コントローラ5により制御されてよい。駆動部17は、第2投影モジュール3が反射光学素子4に第2画像を投光する位置を変更することができるように構成される。
【0024】
(反射光学素子)
反射光学素子4は、画像を少なくとも部分的に反射するように構成された部材である。本実施形態において、反射光学素子4で反射される画像は、第1画像と、第2画像と、を含む。反射光学素子4で反射される画像は、複数の画像に限定されず、投影モジュールの構成に応じて第1画像または第2画像だけを含み得る。
【0025】
反射光学素子4は、第1投影モジュール2から射出された第1画像の画像光、および、第2投影モジュール3から射出された第2画像の画像光を、利用者30の視域32に向けて反射させるように構成される。車両である移動体20に搭載されたHUDシステム1は、車両のウインドシールドを反射光学素子4として兼用してよい。
【0026】
第1投影モジュール2および第2投影モジュール3の稼働状態において、反射光学素子4は、図2に示すように、利用者30の視界内に第1画像51および第2画像52を表示することができるように構成される。第1画像51は、第1画像表示領域53上に表示される。第1画像表示領域53は、第1表示パネル6に表示される画像が投光可能な反射光学素子4上の領域である。第2画像52は、第2画像表示領域54上に表示される。第2画像表示領域54は、第2表示パネル11に表示された画像が投光可能な反射光学素子4上の領域である。第1画像表示領域53と第2画像表示領域54とは、境界55を介して隣接してよい。第1画像表示領域53と第2画像表示領域54とは、一部重複することも可能である。第1画像表示領域53と第2画像表示領域54とは、互いに離れて位置してよい。
【0027】
第1投影モジュール2および第2投影モジュール3は、それぞれ、第1表示パネル6上の第1画像および第2表示パネル11上の第2画像を表示する位置を変更可能に構成されてよい。第1表示パネル6上の第1画像および第2表示パネル11上の第2画像を表示する位置が変更されることにより、それぞれ第1画像表示領域53内の第1画像51および第2画像表示領域54内の第2画像52の表示位置が変化する。
【0028】
図2に示すように、反射光学素子4は、入射した光の一部を反射し、他の一部を透過するように構成された第1反射領域4aを含んでよい。第1投影モジュール2は、第1反射領域4aに第1画像51の少なくとも一部を投光するように構成されてよい。第2投影モジュール3は、第1反射領域4aに第2画像の全部を投光するように構成されてよい。これにより、第1画像51の第1反射領域4aに重なる部分および第2画像は、反射光学素子4の利用者30と反対側の背景と重ね合わされて、利用者30の視界内に表示される。
【0029】
反射光学素子4は、入射した光の一部を反射し、他の一部を実質的に遮光するように構成された第2反射領域4bを含んでよい。これによって、第2反射領域4bに投光された第1画像および第2画像は、反射光学素子4の利用者30と反対側の背景と重なること無く、利用者30の視野内に鮮明な画像として表示されることができる。例えば、第1投影モジュール2は、第2反射領域4bに第1画像51の一部を投影するように構成されてよい。これにより、第1画像51には、背景の情報と関連しない情報を独立して表示させることができる。
【0030】
車両である移動体20に搭載されるHUDシステム1において、第2反射領域4bはウインドシールド下部の黒い部分としうる。ウインドシールド下部の黒い部分は、黒セラミックとよばれることがある。移動体20の第2反射領域4bは、従来メーターパネル内に配置されてきたスピードメータ、タコメータおよび方向指示器等の計器類の情報を表示するために使用することができる。第1反射領域4aは、下部の黒い部分以外のウインドシールドの領域としうる。
【0031】
ステージ7を備える第1投影モジュール2は、第1反射領域4aに第1画像51を投影する第1投影姿勢と、第2反射領域4bに第1画像51の少なくとも一部を投影する第2投影姿勢との間で、第1画像51を投影する位置を変更可能に構成される。第1投影姿勢と第2投影姿勢とでは、第1表示パネル6の位置または傾きが異なっている。
【0032】
(光学部材)
本実施形態に係るHUDシステム1は、投影モジュールと反射光学素子4との間に、遮光機能を有する光学部材71を備える。光学部材71は、コントローラ5からの制御信号に応じて光の透過率が変わる部材である。光学部材71は、例えば、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)であり得る。
【0033】
図3および図4は、高分子分散型液晶の変化を説明するための図である。高分子分散型液晶は、透過光の拡散率を電気的に制御できる。つまり、高分子分散型液晶は、透過状態と不透過状態を電気的なスイッチのオンオフで切り替えることが可能である。図3および図4に示すように、光学部材71である高分子分散型液晶は、透明電極で挟まれた分散した液晶を備えている。図3に示すように、コントローラ5がスイッチをオフ状態にした場合、分散した液晶は異なった方向を向いている。このとき、高分子分散型液晶は、入射した光が散乱する不透過の状態、すなわち遮光状態となる。図4に示すように、コントローラ5がスイッチをオン状態にした場合、印加された電界によって液晶は同じ方向を向いている。このとき、高分子分散型液晶は、入射した光が透過する状態、すなわち透明状態となる。
【0034】
光学部材71はコントローラ5によって光の透過率を制御可能に構成される。光学部材71は、遮光状態と透明状態との間で状態を切り替えうる。コントローラ5は、例えば、HUDシステム1に電源が供給されていない場合、光学部材71を遮光状態に制御しうる。具体的には、コントローラ5は、投影モジュールに電源が供給されている動作状態であるか、電源が供給されていない停止状態であるか、に応じて光学部材71の遮光機能を制御しうる。コントローラ5は、投影モジュールが動作状態の場合に、光学部材71を透明状態にさせてよい。このとき、投影モジュールによる画像の投影は、光学部材71によって妨げられない。コントローラ5は、投影モジュールが停止状態の場合に、光学部材71を遮光状態にさせてよい。HUDシステム1は、不使用状態のときに、第1投影モジュール2および第2投影モジュール3に外光が入射して、第1表示パネル6および第2表示パネル11等の光学素子を損傷する虞を低減することができる。光学部材71は、一部にガラスを備え、第1投影モジュール2および第2投影モジュール3を保護するためのカバーとしての機能を兼ねてよい。
【0035】
HUDシステム1は、外部から情報を取得する入力部15を有することができる。HUDシステム1が移動体20に搭載される場合、入力部15は、移動体20のECU(Electronic Control Unit)21から情報を取得することができる。ECU21は、移動体20に搭載される種々の装置を電子制御するコンピュータである。ECU21は、例えばエンジン、ナビゲーション・システムまたは車間距離計測装置等を制御しうる。コントローラ5は、入力部15を介して、ECU21からHUDシステム1が搭載される移動体20のイグニッションスイッチのオンまたはオフを取得してよい。コントローラ5は、イグニッションスイッチがオンの場合に、光学部材71を透明状態にさせてよい。このとき、移動体20の移動中に動作するHUDシステム1の投影モジュールによる画像の投影は、光学部材71によって妨げられない。コントローラ5は、イグニッションスイッチがオフの場合に、光学部材71を遮光状態にさせてよい。移動体20の駐車中に不使用状態のHUDシステム1を外光およびその熱による損傷から保護することができる。
【0036】
(冷却部)
また、HUDシステム1は、図1に示すように、第1投影モジュール2および第2投影モジュール3の両方または何れか1つを冷却する冷却部72を備えてよい。冷却部72は、特に、第1表示パネル6および第2表示パネル11を冷却するために設けられうる。冷却部72は、水冷方式または空冷方式の冷却装置を含んでよい。冷却部72は、例えばファンおよびモータを備える送風機であってよい。冷却部72は、移動体20に搭載されるエアコンの風力を利用して、第1投影モジュール2および第2投影モジュール3の両方または何れか1つを冷却するように構成されてよい。エアコンの冷たい風を利用することによって、冷却部72の冷却機能を高めることができる。冷却部72はコントローラ5によりオンまたはオフが制御されてよい。コントローラ5は、例えば、HUDシステム1に電源が供給された場合、冷却部72を稼働させる。具体的には、コントローラ5は、投影モジュールに電源供給がされている動作状態であるか、電源供給がされていない停止状態であるか、に応じて冷却部72の稼働を制御しうる。コントローラ5は、投影モジュールが動作状態の場合に、冷却部72を稼働させてよい。HUDシステム1は、投影モジュールが動作状態の場合に、光学部材71によって外光を遮ることができないが、冷却部72が稼働することによって熱による損傷を回避することができる。
【0037】
コントローラ5は、入力部15を介してECU21から移動体20のイグニッションスイッチのオンまたはオフを取得し、イグニッションスイッチがオンの場合に、冷却部72を稼働させてよい。HUDシステム1は、移動体20の移動中に光学部材71によって外光を遮ることができないが、冷却部72が稼働することによって熱による損傷を回避することができる。
【0038】
さらに、HUDシステム1は、HUDシステム1の内部の温度を計測する温度センサを備えてよい。コントローラ5は、温度センサの計測した温度に基づいて、冷却部72の動作状態を制御してよい。例えば、コントローラ5は、温度センサの計測した温度が閾値(例えば50℃)を超えた場合に冷却部72を動作させてよい。
【0039】
(コントローラ)
コントローラ5は、HUDシステム1の各構成要素に接続され、各構成要素を制御するように構成される。コントローラ5は、例えばプロセッサとして構成される。コントローラ5は、1以上のプロセッサを含んでよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行するように構成された汎用のプロセッサ、および特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイス(PLD:Programmable Logic Device)を含んでよい。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでよい。コントローラ5は、1つまたは複数のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、およびSiP(System In a Package)のいずれかであってよい。
【0040】
コントローラ5は、メモリを含む。メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)など、任意の記憶デバイスにより構成される。メモリは、種々の処理のためのプログラムおよび情報等を記憶するように構成されうる。例えば、メモリは、第1画像および第2画像として表示する表示コンテンツを含んでよい。表示コンテンツは、文字、図形およびそれらを組み合わせたアニメーション等を含んでよい。
【0041】
図1に示したHUDシステム1では、コントローラ5は、第1投影モジュール2と、第2投影モジュール3とは別個に設けられている。このような構成に代えて、コントローラ5の機能は、第1投影モジュール2と第2投影モジュール3とに分散して設けられてよい。第1投影モジュール2および第2投影モジュール3のそれぞれのコントローラ5は、連携して動作するように構成されてよい。その場合、コントローラ5の機能は、第1投影モジュール2および第2投影モジュール3に含まれてよい。
【0042】
(視差画像)
上記のように、第2表示パネル11は視差画像を表示し、ユーザに3次元画像を視認させることが可能である。図5に示すように、第2表示パネル11は、面状に広がるアクティブエリアA上に複数の区画領域を有する。アクティブエリアAは、視差画像を表示するように構成される。視差画像は、後述する左眼画像と、右眼画像とを含む。右眼画像は、左眼画像に対して視差を有する。図5において複数の区画領域の各々は、u軸方向およびu軸方向に直交するv軸方向に区画された領域である。u軸方向およびv軸方向に直交する方向はw軸方向と称される。u軸方向は水平方向と称されてよい。v軸方向は鉛直方向と称されてよい。w軸方向は奥行方向と称されてよい。u軸方向は、利用者30の視差方向に対応する方向である。
【0043】
複数の区画領域の各々には、1つのサブピクセルが対応する。アクティブエリアAは、u軸方向およびv軸方向に沿って格子状に配列された複数のサブピクセルを備える。各サブピクセルは、R(Red),G(Green),B(Blue)のいずれかの色に対応し、R,G,Bの3つのサブピクセルを一組として1ピクセルを構成することができる。1ピクセルとなる複数のサブピクセルは、3つに限られず、4つを含む他の数であってよい。1ピクセルとなる複数のサブピクセルは、R,G,Bの組み合わせに限られない。1ピクセルは、1画素と称されうる。1ピクセルを構成する複数のサブピクセルは、例えば、水平方向に並びうる。同じ色の複数のサブピクセルは、例えば、鉛直方向に並びうる。
【0044】
アクティブエリアAに配列された複数のサブピクセルは、コントローラ5の制御により、複数のサブピクセル群Pgを構成する。複数のサブピクセル群Pgは、u軸方向に繰り返して配列される。複数のサブピクセル群Pgは、v軸方向に同じ列に配列すること、および、v軸方向にずらして配列することができる。例えば、複数のサブピクセル群Pgは、v軸方向においては、u軸方向に1サブピクセル分ずれた位置に隣接して繰り返して配列することができる。複数のサブピクセル群Pgは、所定の行数および列数の複数のサブピクセルを含む。具体的には、複数のサブピクセル群Pgは、v軸方向にb個(b行)、u軸方向に2×n個(2×n列)、連続して配列された(2×n×b)個のサブピクセルP1~PN(N=2×n×b)を含む。図5に示す例では、n=6、b=1である。図5のアクティブエリアAには、v軸方向に1個、u軸方向に12個、連続して配列された12個のサブピクセルP1~P12を含む複数のサブピクセル群Pgが配置される。図5に示す例では、一部のサブピクセル群Pgにのみ符号を付している。
【0045】
複数のサブピクセル群Pgは、コントローラ5が画像を表示するための制御を行う最小単位である。複数のサブピクセル群Pgに含まれる各サブピクセルは、識別符号P1~PN(N=2×n×b)で識別される。全てのサブピクセル群Pgの同じ識別符号を有する複数のサブピクセルP1~PN(N=2×n×b)は、コントローラ5によって同時期に制御される。同時期は、同時および実質的同時を含む。同時期の制御は、同一の1のクロックの発生に基づく制御、および同じフレームでの制御を含む。例えば、コントローラ5は、複数のサブピクセルP1に表示させる画像を左眼画像から右眼画像に切り替える場合、全てのサブピクセル群Pgにおける複数のサブピクセルP1に表示させる画像を左眼画像から右眼画像に同時期に切り替えるように制御しうる。
【0046】
視差光学素子12は、図1に示すように、第2表示パネル11に沿って配置される。視差光学素子12は、第2表示パネル11のアクティブエリアAからギャップgの距離だけ離れている。視差光学素子12は、第2表示パネル11に対して照射器10の反対側に位置してよい。視差光学素子12は、第2表示パネル11の照射器10側に位置してよい。
【0047】
視差光学素子12は、複数のサブピクセルから射出される画像光の伝播方向を規定しうるように構成される光学素子である。視差光学素子12は、視差画像の視域32を実質的に規定することが可能に構成される。視域32は、利用者30の左眼31lおよび右眼31rが、視差画像を3次元画像として見ることができる、空間的な範囲である。一例として、視差光学素子12は、図6に示すように、液晶シャッタとして構成することができる。液晶シャッタは、第2表示パネル11と類似に複数の画素Pで構成される。液晶シャッタである視差光学素子12は、各画素Pにおける光の透過率を制御可能に構成される。視差光学素子12の各画素Pは、光の透過率の高い状態と光の透過率の低い状態との間で、状態を切り替えることができる。以下において、光の透過率が高い複数の画素Pを、開口した画素とよぶことがある。視差光学素子12の複数の画素Pは、第2表示パネル11の複数のサブピクセルに対応してよい。視差光学素子12の複数の画素Pは、色成分を有していない点で第2表示パネル11とは異なる。
【0048】
視差光学素子12は、コントローラ5の制御により、複数の透光領域12aと複数の減光領域12bとを有する。視差光学素子12が液晶シャッタの場合、透光領域12aは、光の透過率の高い画素Pにより構成される。減光領域12bは、光の透過率の低い画素Pにより構成される。複数の減光領域12bは、視差光学素子12の面内の所定方向に伸びる複数の帯状領域である。複数の減光領域12bは互いに隣接する2つの減光領域12bの間に、透光領域12aを画定する。複数の透光領域12aと複数の減光領域12bとは、アクティブエリアAに沿う所定方向に延び、所定方向と直交する方向に繰り返し交互に配列される。複数の透光領域12aは、複数の減光領域12bに比べて光透過率が高い。複数の透光領域12aの光透過率は、複数の減光領域12bの光透過率の10倍以上、好適には100倍以上、より好適には1000倍以上としうる。複数の減光領域11bは、複数の透光領域12aに比べて光透過率が低い。複数の減光領域12bは、画像光を遮光してよい。
【0049】
複数の透光領域12aおよび複数の減光領域12bの延びる方向は、第2表示パネル11の複数のサブピクセル群Pgの並ぶ方向とすることができる。視差光学素子12は、利用者30の左眼31lおよび右眼31rから見たとき、異なる複数のサブピクセル群Pgの同じ識別符号P1~P12で識別される複数のサブピクセルが、同時に透光および減光されるように制御される。
【0050】
第2表示パネル11のアクティブエリアAから射出された第2画像の画像光の一部は、複数の透光領域12aを透過し、光学系9を介して反射光学素子4に到達する。反射光学素子4に到達した画像光は反射光学素子4に反射されて利用者30の左眼31lおよび右眼31rに到達する。これにより、利用者30の左眼31lおよび右眼31rは、反射光学素子4の前方にアクティブエリアAに表示された画像の虚像である第2虚像V2を認識することができる。本願において前方はz方向である。図7に示すように、利用者30は、見かけ上、視差光学素子12の虚像である第3虚像V3が、第2虚像V2からの画像光の方向を規定しているかのごとく、画像を認識する。
【0051】
このように、利用者30は、見かけ上、第3虚像V3を介して第2虚像V2を視認するかのごとく画像を認識している。実際には視差光学素子12の虚像である第3虚像V3は、視認されない。しかし、以降においては、第3虚像V3は、見かけ上、視差光学素子12の虚像が形成される位置にあり、第2虚像V2からの画像光の伝播方向を規定するとみなされるものとして説明される。以降において、利用者30の左眼31lの位置に伝播する画像光によって利用者30が視認しうる第2虚像V2内の領域は左可視領域VaLと称される。利用者30の右眼31rの位置に伝播する画像光によって利用者30が視認しうる第2虚像V2内の領域は右可視領域VaRと称される。
【0052】
図7に示される虚像バリアピッチVBpおよび虚像ギャップVgは、適視距離Vdを用いた次の式(1)および式(2)が成り立つように規定される。
E:Vd=(n×VHp):Vg 式(1)
Vd:VBp=(Vdv+Vg):(2×n×VHp) 式(2)
虚像バリアピッチVBpは、第3虚像V3として投影された複数の減光領域12bのu軸方向に対応するx軸方向の配置間隔である。虚像ギャップVgは、第3虚像V3と第2虚像V2との間の距離である。適視距離Vdは、利用者30の左眼31lおよび右眼31rそれぞれの位置と視差光学素子12の虚像である第3虚像V3との間の距離である。眼間距離Eは、左眼31lと右眼31rとの間の距離である。眼間距離Eは、例えば、産業技術総合研究所の研究によって算出された値である61.1mm~64.4mmであってよい。VHpは、複数のサブピクセルの虚像の水平方向の長さである。VHpは、第2虚像V2における1つのサブピクセルの虚像の、x軸方向に対応する方向の長さである。
【0053】
図7に示す左可視領域VaLは、上述のように、視差光学素子12の複数の透光領域12aを透過した画像光が利用者30の左眼31lに到達することによって、利用者30の左眼31lが視認する第2虚像V2の領域である。右可視領域VaRは、上述のように、視差光学素子12の複数の透光領域12aを透過した画像光が利用者30の右眼31rに到達することによって、利用者30の右眼31rが視認する第2虚像V2の領域である。
【0054】
一例として、視差光学素子12の開口率が50%の場合、利用者30の左眼31lから見た第2虚像V2の複数のサブピクセルの虚像の配置を図8に示す。第2虚像V2上の複数のサブピクセルの虚像には、図5で示した複数のサブピクセルと同じ識別符号P1からP12を付している。開口率が50%のとき、視差光学素子12の複数の透光領域12aと複数の減光領域12bとは、等しい眼間方向(x軸方向)の幅を有する。第2虚像V2の一部は第3虚像V3により減光され複数の左減光領域VbLとなっている。複数の左減光領域VbLは、視差光学素子12の複数の減光領域12bによって画像光が減光されることによって、利用者30の左眼31lが視認し難い領域である。
【0055】
利用者30の左眼31lからみて左可視領域VaLおよび左減光領域VbLが図8のように位置する場合、利用者30の右眼31rから見た第2虚像V2の複数のサブピクセルの配置を図9に示す。第2虚像V2の一部は第3虚像V3により減光された複数の右減光領域VbRとなっている。複数の右減光領域VbRは、視差光学素子12の複数の減光領域12bによって画像光が減光されることによって、利用者30の右眼31rが視認し難い領域である。
【0056】
視差光学素子12の開口率が50%の場合、複数の左可視領域VaLは複数の右減光領域VbRに一致しうる。複数の右可視領域VaRは複数の左減光領域VbLに一致しうる。視差光学素子12の開口率が50%未満の場合、複数の左可視領域VaLは複数の右減光領域VbRに含まれうる。複数の右可視領域VaRは複数の左減光領域VbLに含まれうる。このため、複数の右可視領域VaRは、左眼31lからは見えづらい。複数の左可視領域VaLは、右眼31rからは見えづらい。
【0057】
図8および図9の例では、左可視領域VaLには、アクティブエリアAに配列された複数のサブピクセルP1からP6の虚像が含まれる。利用者30の左眼31lは、アクティブエリアAに配列された複数のサブピクセルP7からP12の虚像を視認し難い。右可視領域VaRには、アクティブエリアAに配列された複数のサブピクセルP7からP12の虚像が含まれる。利用者30の右眼31rは、アクティブエリアAに配列された複数のサブピクセルP1からP6の虚像を視認し難い。コントローラ5は、複数のサブピクセルP1からP6に左眼画像を表示させることができる。コントローラ5は、複数のサブピクセルP7からP12に右眼画像を表示させることができる。このようにすることによって、利用者30の左眼31lは、複数の左可視領域VaLの左眼画像の虚像を視認する。利用者30の右眼31rは、複数の右可視領域VaRの右眼画像の虚像を視認する。上述したように、右眼画像および左眼画像は互いに視差を有する視差画像である。そのため、利用者30は、右眼画像および左眼画像を3次元画像として視認することができる。
【0058】
利用者30の眼31の位置が変化すると、利用者30の左眼31lおよび右眼31rから虚像を視認することができる複数のサブピクセルP1からP12の範囲は変化する。利用者30の左眼31lおよび右眼31rの位置を検出するために、HUDシステム1は、検出装置13をさらに備えてよい。検出装置13は、検出した利用者30の左眼31lおよび右眼31rの位置をコントローラ5に対して出力する。検出装置13は、撮像装置またはセンサを含んでよい。HUDシステム1が車両である移動体20に搭載される場合、検出装置13は、ルームミラー、インスツルメントパネル、ステアリングホイール、ダッシュボード等種々の場所に取付けられてよい。
【0059】
検出装置13が撮像装置を含む場合、撮像装置は、被写体の像を取得して被写体の画像を生成するように構成される。撮像装置は、撮像素子を含む。撮像素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)撮像素子またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子を含んでよい。撮像装置は、被写体側に利用者30の顔が位置するように配置される。例えば、検出装置13は、所定の位置を原点とし、原点からの眼31の位置の変位方向および変位量を検出するように構成されてよい。検出装置13は、2台以上の撮像装置を用いて、左眼31lおよび右眼31rの少なくとも1つの位置を3次元空間の座標として検出するように構成してよい。
【0060】
検出装置13は、撮像装置を備えず、装置外の撮像装置に接続されていてよい。検出装置13は、装置外の撮像装置からの信号を入力するように構成される入力端子を備えてよい。装置外の撮像装置は、入力端子に直接的に接続されてよい。装置外の撮像装置は、共有のネットワークを介して入力端子に間接的に接続されてよい。
【0061】
検出装置13がセンサを備える場合、センサは、超音波センサまたは光センサ等であってよい。
【0062】
コントローラ5は、取得部14を介して検出装置13から利用者30の左眼31lおよび右眼31rの位置情報を取得してよい。取得部14は、検出装置13によって検出される利用者30の左眼31lおよび右眼31rの位置情報を取得可能に構成される。検出装置13と取得部14との間は、有線および/または無線通信により接続される。移動体20が車両の場合、検出装置13と取得部14との間は、CAN(Control Area Network)等の車両のネットワークを介して接続されてよい。取得部14は、有線通信に対応した、電気コネクタおよび光コネクタ等のコネクタを含みうる。取得部14は、無線通信に対応したアンテナを含みうる。
【0063】
コントローラ5は、利用者30の左眼31lの位置に応じて、左眼画像を表示する複数のサブピクセルP1からP6が、左眼31lから視認されるように、視差光学素子12を制御する。コントローラ5は、利用者30の右眼31rの位置に応じて、右眼画像を表示する複数のサブピクセルP7からP12が、右眼31rから視認されるように、視差光学素子12を制御する。
【0064】
例えば、図8および図9に示すように第2虚像V2を観察している状態において、利用者30の左眼31lおよび右眼31rが相対的に左に移動した場合、視差光学素子12の虚像である第3虚像V3は、見かけ上右へ移動する。図10は、図8の状態から利用者30の左眼31lが左に移動した場合の、第2虚像を示している。利用者30の左眼31lの位置が左に移動することにより、複数の左可視領域VaLおよび複数の左減光領域VbLは、右に移動する。
【0065】
図10の場合、複数のサブピクセルP2からP6の全体と、複数のサブピクセルP1およびP7の一部が、複数の左可視領域VaLに含まれる。複数のサブピクセルP8からP12の全部と複数のサブピクセルP7およびP1の一部が右可視領域VaRに含まれる。コントローラ5は、左眼画像を表示する複数のサブピクセルP1~P6の最も多くの部分が、複数の左可視領域VaLに位置するように、視差光学素子12を制御する。例えば、図10の状態から、利用者30の左眼31lが更に左に移動し、複数のサブピクセルP1より複数のサブピクセルP7の部分がより多く複数の左可視領域VaLに含まれると、コントローラ5は視差光学素子12の開口している画素Pを切り替えてよい。この場合、コントローラ5は、左可視領域VaLの左側に隣接して虚像が位置している視差光学素子12の光の透過率が低い画素を、開口した画素に切り替える。コントローラ5は、左可視領域VaLの左側に隣接して虚像が位置している視差光学素子12の開口した画素を、光の透過率が低い画素に切り替える。コントローラ5は、開口している画素Pを切り替えることにより、左眼画像を表示するサブピクセルP1~P6が、利用者30の左眼31lに最もよく視認される状態を維持する。コントローラ5は、右眼31rに関しても、視差光学素子12に対して同様な制御を行う。
【0066】
本開示に係るHUDシステム1は、上述のように構成されることにより、外光の熱による損傷から保護される。すなわち、本開示によれば、熱対策を施したヘッドアップディスプレイシステム1および移動体20が提供される。
【0067】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は代表的な例として説明されている。本開示の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本開示は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形および変更が可能である。例えば、実施形態および実施例に記載の複数の構成ブロックを1つに組合せたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行される方法、プログラムまたはプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0068】
本開示の実施形態では、第2投影モジュール3の視差光学素子として液晶シャッタを用いた。視差光学素子は、液晶シャッタに限られず、視差画像の視域を実質的に規定することが可能な他の光学素子を使用することができる。例えば、視差光学素子として、複数のスリット状の開口部が平行に配列された板状のパララックスバリアを用いることができる。複数のスリット状の開口部は、視差画像の右眼画像を右眼に向かう光路の方向に透過させ、左眼画像を左眼に向けて透過させる。視差光学素子として、上述のような開口部が固定されたパララックスバリアを使用する場合、コントローラ5は、利用者30の頭の動きに応じて、第2表示パネル11の左眼画像を表示する複数のサブピクセルと右眼画像を表示する複数のサブピクセルを切り替えることができる。そのようにすることにより、コントローラ5は、利用者30の眼の位置の動きに関わらず、利用者30に対して3次元画像を表示し続けることができる。
【0069】
視差光学素子としては、複数のレンチキュラレンズが平行に平面状に配列された部材を用いることができる。複数のレンチキュラレンズは、第2表示パネル上に交互に表示される視差画像の左眼画像と右眼画像とを、それぞれ右眼と左眼とに向かう光路に向けて偏向することができる。
【0070】
第2投影モジュール3は、3次元画像を表示する第1状態と、2次元画像を表示する第2状態とを切り替え可能に構成されてよい。第1状態において、コントローラ5は、第2表示パネル11に視差画像を表示させるとともに、視差光学素子12に画像光の伝播方向を規定する透光領域12aおよび減光領域12bを表示させる。第2状態において、コントローラ5は、第2表示パネル11に2次元の画像を表現する2次元画像を表示させるとともに、視差光学素子12を全体に透光状態として画像光を均一に透過させる。コントローラ5は、第2表示パネル11と視差光学素子12との状態の切り替えを同期させて制御する。これにより、第2投影モジュール3は、利用者30に対して、適宜、2次元画像と3次元画像との何れかを選択して表示することが可能になる。
【符号の説明】
【0071】
1 ヘッドアップディスプレイシステム(HUDシステム)
2 第1投影モジュール
3 第2投影モジュール
4 反射光学素子
4a 第1反射領域
4b 第2反射領域
5 コントローラ
6 第1表示パネル
7 ステージ
8 表示装置
9 光学系
10 照射器
11 第2表示パネル
12 視差光学素子
13 検出装置
14 取得部
15 入力部
17 駆動部
20 移動体
21 ECU
30 利用者
31 眼
31l 左眼
31r 右眼
32 視域
51 第1画像
52 第2画像
53 第1画像表示領域
54 第2画像表示領域
55 境界
71 光学部材
72 冷却部
A アクティブエリア
P 画素
Pg サブピクセル群
V1 第1虚像
V2 第2虚像
V3 第3虚像
VaL 左可視領域
VbL 左減光領域
VaR 右可視領域
VbR 右減光領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10