(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】燃焼設備、演算方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
F23G5/50 C ZAB
F23G5/50 G
F23G5/50 H
F23G5/50 M
(21)【出願番号】P 2019217297
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大丸 卓一郎
(72)【発明者】
【氏名】今田 潤司
(72)【発明者】
【氏名】岩下 信治
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】西宮 立享
(72)【発明者】
【氏名】新家谷 英之
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-194219(JP,A)
【文献】特許第3618668(JP,B2)
【文献】特許第3916450(JP,B2)
【文献】特許第4845451(JP,B2)
【文献】特許第5755171(JP,B2)
【文献】特許第6696816(JP,B2)
【文献】特開平06-331120(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073852(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に配列された乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段を有し、前記搬送方向に被焼却物を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間を画成する炉本体
と、
前記処理空間を撮影可能に設置されたカメラと、
前記乾燥段に前記被焼却物を供給するフィーダと、
を備える燃焼設備において、
前記カメラによって撮影された画像データを用いて、前記燃焼による火炎の前記搬送方向段側の端である燃え切り点の近傍における前記被焼却物の温度を測定する温度測定部と、
前記カメラによって撮影された画像データを用いて、前記フィーダと前記乾燥段との境界から前記燃え切り点までの長さである燃え切り長さを測定する長さ測定部と、
前記カメラによって撮影された画像データを用いて、前記燃え切り点の近傍での前記被焼却物の表面の高さを測定する高さ測定部と、
前記被焼却物の温度の測定結果、前記被焼却物の燃え切り長さの測定結果、および、前記被焼却物の表面の高さの測定結果に基づいて前記後燃焼の後における前記被焼却物の未燃分の割合を演算する演算部と、
を備える燃焼設備。
【請求項2】
前記未燃分の割合が、予め設定された範囲内となるように前記燃焼設備を制御する制御部と、
を備える請求項1に記載の燃焼設備。
【請求項3】
前記炉本体は、前記被焼却物を前記後燃焼段から移動させるクリンカローラと、前記乾燥段、前記燃焼段及び前記後燃焼段のそれぞれに空気を投入する風箱と、前記被焼却物を前記搬送方向に搬送させる火格子と、を有し、
前記制御部は、前記クリンカローラの作動間隔と、前記乾燥段、前記燃焼段及び前記後燃焼段に投入される空気のうち前記後燃焼段に投入される空気の割合と、前記火格子の作動速度と、前記風箱に投入される空気量と、のうち、少なくとも1つを制御する
請求項2に記載の燃焼設備。
【請求項4】
前記演算部は、基準温度の値から測定した前記温度の値を減算して得られた温度差と、基準燃え切り長さから前記燃え切り長さを減算して得られた値とに基づいて、前記未燃分の割合を演算する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の燃焼設備。
【請求項5】
前記演算部は、基準温度の値から測定した前記温度の値を減算して得られた温度差と、基準燃え切り長さから前記燃え切り長さを減算して得られた値と、基準高さから前記高さを減算して得られた値とに基づいて、前記未燃分の割合を演算する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の燃焼設備。
【請求項6】
搬送方向に配列された乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段を有し、前記搬送方向に被焼却物を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間を画成する炉本体
と、
前記処理空間を撮影可能に設置されたカメラと、
前記乾燥段に前記被焼却物を供給するフィーダと、
を備える燃焼設備において、
前記カメラによって撮影された画像データを用いて、前記燃焼による火炎の前記搬送方向段側の端である燃え切り点の近傍における前記被焼却物の温度を測定するステップと、
前記カメラによって撮影された画像データを用いて、前記フィーダと前記乾燥段との境界から前記燃え切り点までの長さである燃え切り長さを測定するステップと、
前記カメラによって撮影された画像データを用いて、前記燃え切り点の近傍での前記被焼却物の表面の高さを測定するステップと、
前記被焼却物の温度の測定結果、前記被焼却物の燃え切り長さの測定結果、および、前記被焼却物の表面の高さの測定結果に基づいて前記後燃焼の後における前記被焼却物の未燃分の割合を演算するステップと、
を備える演算方法。
【請求項7】
搬送方向に配列された乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段を有し、前記搬送方向に被焼却物を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間を画成する炉本体
と、
前記処理空間を撮影可能に設置されたカメラと、
前記乾燥段に前記被焼却物を供給するフィーダと、
を備える燃焼設備のコンピュータに、
前記カメラによって撮影された画像データを用いて、前記燃焼による火炎の前記搬送方向段側の端である燃え切り点の近傍における前記被焼却物の温度を測定するステップと、
前記カメラによって撮影された画像データを用いて、前記フィーダと前記乾燥段との境界から前記燃え切り点までの長さである燃え切り長さを測定するステップと、
前記カメラによって撮影された画像データを用いて、前記燃え切り点の近傍での前記被焼却物の表面の高さを測定するステップと、
前記被焼却物の温度の測定結果、前記被焼却物の燃え切り長さの測定結果、および、前記被焼却物の表面の高さの測定結果に基づいて前記後燃焼の後における前記被焼却物の未燃分の割合を演算するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼設備、演算方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃焼ストーカ上の層厚さ及び燃え切り点と後燃焼ストーカ上のおき燃焼完結点により、燃焼ストーカ及び後燃焼ストーカの下方へ供給する燃焼空気の酸素含有率を制御することにより、安定した廃棄物の焼却処理を行なえる技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、後燃焼帯の一部又は全部で発生する特定成分の排ガス濃度を検出して、検出された排ガス濃度からゴミの燃焼速度を導出し、導出された燃焼速度とそのときに供給された燃焼用空気量から未燃ゴミ量を求める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3618668号公報
【文献】特開平6-288529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃焼設備に投入する廃棄物やバイオマスなどの固体燃料は、その種類、成分、発熱量、成分、固定炭素割合などが変動した時に未燃分が変動する。燃焼設備を効率よく運転するために、固体燃料が燃焼設備の後燃焼段の最後で燃え切るよう制御することが望まれている。しかし、固体燃料の未燃分を直接リアルタイムに計測することは難しい。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、燃焼設備、演算方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る燃焼設備は、搬送方向に配列された乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段を有し、搬送方向に被焼却物を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間を画成する炉本体と、を備える燃焼設備において、燃焼による火炎の搬送方向段側の端である燃え切り点の近傍における被焼却物の温度を測定する温度測定部と、予め設定された基準温度の値から測定した温度の値を減算して得られた温度差に基づいて、後燃焼の後における被焼却物の未燃分の割合を演算する演算部と、を備える。
【0007】
本開示に係る演算方法は、搬送方向に配列された乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段を有し、搬送方向に被焼却物を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間を画成する炉本体と、を備える燃焼設備において、燃焼による火炎の搬送方向段側の端である燃え切り点の近傍における被焼却物の温度を測定するステップと、予め設定された基準温度の値から測定した温度の値を減算して得られた温度差に基づいて、後燃焼の後における被焼却物の未燃分の割合を演算するステップと、を有する。
【0008】
本開示に係るプログラムは、搬送方向に配列された乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段を有し、搬送方向に被焼却物を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間を画成する炉本体と、を備える燃焼設備の、コンピュータに、燃焼による火炎の搬送方向段側の端である燃え切り点の近傍における被焼却物の温度を測定するステップと、予め設定された基準温度の値から測定した温度の値を減算して得られた温度差に基づいて、後燃焼の後における被焼却物の未燃分の割合を演算するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の燃焼設備、演算方法およびプログラムによれば、燃焼設備で焼却する被焼却物の未燃分の割合を適切に維持させて安定的な燃焼を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る燃焼設備の構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る燃焼設備の動作を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の実施形態に係る燃焼設備の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図6】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈第1の実施形態〉
《燃焼装置の構成》
以下、第1の実施形態に係る燃焼設備100の構成について説明する。第1の実施形態に係る燃焼設備100は、被焼却物400としての廃棄物を焼却処理するための設備である。燃焼設備100の例としては、ごみ焼却ストーカ炉と、バイオマス流動床ボイラと、が挙げられる。第1の実施形態に係る燃焼設備100は、ごみ焼却ストーカ炉である。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係る燃焼設備100の構成を示す図である。燃焼設備100は、ストーカ炉1と、排熱回収ボイラ8と、減温塔9と、集塵装置11と、煙突12と、制御装置300と、を備える。
【0013】
ストーカ炉1は、被焼却物400を搬送しながら燃焼させる炉である。上記被焼却物400の例としては、廃棄物と、バイオマスと、が挙げられる。
図1における被焼却物400は廃棄物である。ストーカ炉1による被焼却物400の燃焼に伴って、当該ストーカ炉1からは排ガスが発生する。この排ガスは、ストーカ炉1の上部に設けられた排熱回収ボイラ8に送られる。
【0014】
排熱回収ボイラ8は、排ガスと水との間で熱交換を行うことで水を加熱して蒸気を発生させる。この蒸気は、図示しない外部の機器で利用される。排熱回収ボイラ8を通過した排ガスは、減温塔9で冷却された後、集塵装置11に送られる。集塵装置11でススや塵埃が除去された後、排ガスは煙突12を通じて大気中に放散される。
【0015】
次いで、ストーカ炉1の構成について説明する。
図1に示すように、ストーカ炉1は、炉本体10と、炉本体10から上方に延びる火炉7と、被焼却物400を一時的に貯留するホッパ3と、ホッパ3から炉本体10内に被焼却物400を供給するフィーダ31と、炉本体10の底部に設けられたストーカ6と、を有する。また、ストーカ炉1は、焼却された被焼却物400を外部に排出する排出シュート13と、ストーカ6の下方に設けられた風箱2と、被焼却物400を排出シュート13に移動させるクリンカローラ210と、炉本体10の収納空間Vの画像を撮影するカメラ220と、を有する。また、ストーカ炉1は、一次空気ラインL1及び二次空気ラインL2に空気を送り込む送風機B1と、風箱2に空気を供給する一次空気ラインL1と、火炉7に空気を供給する二次空気ラインL2と、を有する。
【0016】
ストーカ6は複数の火格子61により構成させる。火格子61には、固定火格子61Aと、可動火格子61Bとがある。固定火格子61Aは、固定されている火格子61である。可動火格子61Bは、一定の速度で搬送方向Daと-Da方向への作動により、当該火格子61の上にある被焼却物400を攪拌させる火格子61である。上記の-Da方向とは搬送方向Daの逆向きの方向である。
【0017】
炉本体10の内部には、被焼却物400を燃焼させるための処理空間Vが形成されている。この処理空間V内では、ストーカ6によって被焼却物400がフィーダ31から排出シュート13へ向かう搬送方向Daに搬送される。燃焼した被焼却物400は、排出シュート13を通じて外部に排出される。本実施形態ではストーカ6は水平に設けられている。一方で、他の実施形態に係るストーカ6は、水平面に対して傾斜して設けられてもよい。
【0018】
炉本体10は、搬送方向Daの上流側から順に、乾燥段21、燃焼段22及び後燃焼段23に分けて設計される。乾燥段21は、ホッパ3から供給された被焼却物400を、燃焼に先立って乾燥させるための区画である。燃焼段22及び後燃焼段23では、乾燥した状態の被焼却物400を燃焼させるための区画である。燃焼段22においては、被焼却物400から発生する熱分解ガスにより火炎Fが生じる。後燃焼段23においては、被焼却物400の固定炭素の燃焼がなされるため、火炎Fが生じない。つまり、燃焼に伴う火炎Fは、主として燃焼段22の上方に形成される。
【0019】
火炉7は、炉本体10の上部から上方に向かって延びている。火炉7を通じて、処理空間V内の排ガスが排熱回収ボイラ8に送られる。一次空気ラインL1は、送風機B1と風箱2とを接続している。送風機B1を駆動することで、一次空気ラインL1を通じて空気が風箱2に供給される。風箱2は、処理空間V内に空気を供給する。二次空気ラインL2は、送風機B1と火炉7内とを接続している。二次空気ラインL2を通じて、燃焼用の空気が火炉7内に供給される。風箱2は、処理空間Vの底面を形成している。風箱2は、搬送方向Daに複数配列されている。
【0020】
クリンカローラ210は、回転することにより被焼却物400を後燃焼段23から排出シュート13に移動させる。クリンカローラ210は、制御装置300により設定された時間ごとに回転する。カメラ220は、後燃焼段23の前半付近での被焼却物400と、当該被焼却物400の周辺を撮影する。後燃焼段23の前半の例としては、後燃焼段23のうち前の半分の域である。すなわち、後燃焼段23に係る2つの風箱2のうち、前の1つの風箱2に係る域が後燃焼段23の前半の一例である。
【0021】
なお、上述した通り、燃焼に伴う火炎Fは、燃焼段22の上方に形成され、後燃焼段23において生じないため、後燃焼段23の前半は、火炎Fの搬送方向段側の端の近傍であるといえる。以下、火炎Fの搬送方向段側の端を燃え切り点Zともいう。燃え切り点Zは、被焼却物400の加熱による熱分解ガスの発生が完了した点であるともいえる。燃焼設備100が置かれた環境や被焼却物400の燃焼状況により燃え切り点Zは変わり得る。そのため、燃え切り点Zは、燃焼段22と後燃焼段23との境界点を含む所定の範囲又は火炎Fの搬送方向段側の端を含む所定の範囲に設定される。カメラ220が被焼却物400の周辺を撮影することで、カメラ220が生成する画像データには、処理空間Vを画成する炉本体10の壁面と、被焼却物400から発生する輝炎と、が写る。カメラ220の例としては、可視カメラと赤外カメラを備えるカメラ、が挙げられる。カメラ220は、赤外カメラの変わりにハイパースペクトルカメラを備えても良い。
【0022】
制御装置300は、ストーカ6、送風機B1、およびクリンカローラ210を制御する。
図2は、制御装置300の構成を示す概略ブロック図である。制御装置300は、取得部305と、温度測定部310と、長さ測定部320と、高さ測定部330と、演算部340と、制御部350と、を備える。制御装置300は、有線または無線で燃焼設備100と接続される。
【0023】
取得部305は、カメラ220から画像データを取得する。
温度測定部310は、取得部305が取得した画像データに基づいて後燃焼段23の前段付近での被焼却物400の温度を測定する。上記の前段付近の例としては、燃焼設備100を用いて被焼却物400を焼却した場合、被焼却物400の燃え切り点Zとなる場所の付近が挙げられる。すなわち、上記の前段付近での被焼却物400の温度の例としては、燃焼段22と後燃焼段23との境界点を含む所定の範囲又は火炎Fの搬送方向段側の端を含む所定の範囲における被焼却物400の温度が挙げられる。また、上記の前段付近での被焼却物400の温度の例として、後燃焼段23の前段における被焼却物400の平均温度、も挙げられる。具体的には、温度測定部310は、以下の動作を行って温度を測定する。
【0024】
温度測定部310は、取得部305がカメラ220の赤外カメラ若しくはハイパースペクトルカメラから取得した画像データを受け入れる。温度測定部310は、受け入れた画像データにおいて、燃え切り点Z付近の領域である後燃焼段23の前半付近の領域のうち、予め設定された部分を区域ごとに分割して当該区域ごとの輝度を正規化する。その後、温度測定部310は、区域ごとの輝度と、輝度と温度とが関連付けられた温度情報とを照らし合わせて、区域ごとの温度を特定する。温度測定部310は、区域ごとの温度のうちの最高温度若しくは区域ごとの温度の平均温度で、被焼却物400の温度と特定し、当該被焼却物400の温度を測定する。
【0025】
長さ測定部320は、取得部305が取得した画像データに基づいて燃え切り長さを測定する。燃え切り長さとは、フィーダ31と乾燥段21との境界から燃え切り点Zまでの長さである。燃え切り点Zを境に被焼却物400は気体燃焼から固体燃焼に変わる。具体的には、長さ測定部320は、以下の動作で燃え切り長さを測定する。
【0026】
長さ測定部320は、取得部305がカメラ220から取得した画像データを受け入れる。その後、長さ測定部320は、受け入れた画像データの輝度を予め設定された閾値で二値化する。長さ測定部320は、二値化された画像データの値を、搬送方向Daの順に値を並べた場合、値が変化する点を火炎Fの輝炎の境界に係る点と特定する。長さ測定部320は、火炎Fの輝炎の境界に係る点の平均値を演算して、燃え切り点Zと特定する。長さ測定部320は、フィーダ31及び乾燥段21が接する点から燃え切り点Zまでの長さを演算して、燃え切り長さを測定する。
【0027】
高さ測定部330は、カメラ220から画像データを取得して後燃焼段23の前半付近での被焼却物400の表面の高さを測定する。上記高さとは、処理空間Vを画成する炉本体10の壁面を基準とした被焼却物400の表面の相対的な高さである。具体的には、高さ測定部330は、以下の動作で被焼却物400の表面の高さを測定する。
【0028】
高さ測定部330は、取得部305がカメラ220の赤外カメラ又はハイパースペクトルカメラから取得した画像データを受け入れる。高さ測定部330は、受け入れた画像データのうち、予め設定された閾値により特定した被焼却物400の表面と、処理空間Vの壁面の基準を照らし合わせることで、当該表面の高さを測定する。
【0029】
演算部340は、後燃焼の後における被焼却物400の未燃分の割合を演算する。上記未燃分の割合とは、後燃焼の後における被焼却物400が含むチャー(固定炭素)の重量を、後燃焼の後における被焼却物400が含むチャーの重量と被焼却物400が含む炭分の重量を加算した値で除算した値をいう。具体的には、演算部340は、以下に示す式(1)に、温度測定部310と、長さ測定部320と、高さ測定部330から取得したデータを代入して、未燃分の割合を演算する。
【0030】
未燃分の割合=C+αX1-βX2+γX3 ・・・ (1)
【0031】
上記の数式1において、基準値Cは、予め設定された基準の値である。係数αと、係数βと、係数γとは、予め設定された係数の値である。基準値Cと、係数αと、係数βと、係数γとは、燃焼設備を使用する前に、被焼却物400の未燃分の割合の実測などを行い、予め設定される。また、基準値Cと、係数αと、係数βと、係数γとは、燃焼設備100の周囲の環境や、被焼却物400の成分などにより変わり得る。
【0032】
X1は、予め設定された基準燃え切り長さから長さ測定部320が測定した燃え切り長さを減算して得られた値である。X2は、予め設定された基準高さから高さ測定部330が測定した高さを減算して得られた値である。X3は予め設定された基準温度の値から温度測定部310が測定した温度を減算して得られた値である。
【0033】
制御部350は、演算部340が演算した未燃分の割合が、予め設定された範囲内となるように燃焼設備100を制御する。予め設定された範囲内の例としては、燃焼設備100を安定的に運用するために最適であると特定された未燃分の割合である目標未燃分割合に、燃焼設備100の運用上の変動を考慮して燃焼設備100のユーザが特定した変動値を加算して上限値とし、燃焼設備100を安定的に運用するために最適であると燃焼設備100のユーザが特定した未燃分の割合である目標未燃分割合から、燃焼設備100の運用上の変動を考慮して燃焼設備100のユーザが特定した変動値を減算して下限値とする範囲である。上記目標未燃分割合の例としては、被焼却物400が後燃焼段23の最後端に到達するときに被焼却物400の中の固定炭素を燃え切らせるための割合などが挙げられる。
【0034】
具体的には、制御部350は、クリンカローラ210の作動間隔と、乾燥段21、燃焼段22および後燃焼段23に投入される空気のうち後燃焼段23に投入される空気の割合と、火格子61の作動速度と、風箱2に投入される空気量と、が変化するように、クリンカローラ210と、送付機B1と、火格子61と、風箱2と、を制御する。
【0035】
クリンカローラ210の作動間隔を増加させると、被焼却物400の炉本体10における滞留時間が増加する。これにより、被焼却物400の燃焼時間が長くなるため、被焼却物400の未燃分の割合は下がる。クリンカローラ210の作動間隔を減少させると、被焼却物400の炉本体における滞留時間が減少する。これにより、被焼却物400の燃焼時間が短くなるため、被焼却物400の未燃分の割合は上がる。
【0036】
また、乾燥段21、燃焼段22および後燃焼段23に投入される空気のうち後燃焼段23に投入される空気の割合を上げると、被焼却物400の固定炭素を無くすための後燃焼が、多くの空気量に基づいてより強く行われるため、被焼却物400の未燃分の割合は下がる。乾燥段21、燃焼段22および後燃焼段23に投入される空気のうち後燃焼段23に投入される空気の割合を下げると、被焼却物400の固定炭素を無くすための後燃焼が、少ない空気量に基づいてより弱く行われるため、被焼却物400の未燃分の割合は上がる。
【0037】
また、火格子61のうち可動火格子61Bの作動速度を上げると、被焼却物400の攪拌がより強く行われるため、被焼却物400の未燃分の割合は下がる。火格子61のうち可動火格子61Bの作動速度を下げると、被焼却物400の攪拌がより弱く行われるため、被焼却物400の未燃分の割合は上がる。
【0038】
また、乾燥段21と燃焼段22と後燃焼段23とに係る風箱2に投入される空気量を上げると、より多くの空気量に基づいて被焼却物400の焼却がより強く行われるため、被焼却物400の未燃分の割合は下がる。乾燥段21と燃焼段22と後燃焼段23とに係る風箱2に投入される空気量を下げると、より少ない空気量に基づいて被焼却物400の焼却がより弱く行われるため、被焼却物400の未燃分の割合は上がる。
【0039】
《燃焼設備の未燃分の割合の演算の動作》
以下、燃焼設備100の未燃分の割合の演算の動作について説明する。
図3は、第1の実施形態に係る燃焼設備100の未燃分の割合の演算の動作を示すフローチャートである。
【0040】
カメラ220が処理空間Vを撮影することにより、被焼却物400と、当該被焼却物400の周辺との画像データを取得する(ステップS1)。具体的には、カメラ220の可視カメラ及び赤外カメラは、被焼却物400及び処理空間Vを画成する壁面を撮影する。
取得部305は、ステップS1でカメラ220が撮影した画像データを取得する。
【0041】
温度測定部310は、ステップS2で取得部305が取得した画像データに基づいて、被焼却物400の温度を測定する(ステップS3)。例えば、温度測定部310は、取得部305がステップS2で取得した画像データを受け入れる。温度測定部310は、受け入れた画像データにおいて、燃え切り点Z付近の領域である後燃焼段23の前半付近の領域のうち、予め設定された部分を区域ごとに分割して当該区域ごとの輝度を正規化する。その後、温度測定部310は、区域ごとの輝度と、輝度と温度とが関連付けられた温度情報とを照らし合わせて、区域ごとの温度を特定する。温度測定部310は、区域ごとの温度のうちの最高温度若しくは区域ごとの温度の平均温度で、被焼却物400の温度と特定し、当該被焼却物400の温度を測定する。
【0042】
長さ測定部320は、ステップS2で取得部305が取得した画像データに基づいて燃え切り長さを測定する(ステップS4)。例えば、長さ測定部320は、取得部305がステップS2で取得した画像データを受け入れる。その後、長さ測定部320は、受け入れた画像データの輝度を予め設定された閾値で二値化する。長さ測定部320は、二値化された画像データの値を、搬送方向Daの順に値を並べた場合、値が変化する点を火炎Fの輝炎の境界に係る点と特定する。長さ測定部320は、火炎Fの輝炎の境界に係る点の平均値を演算して、燃え切り点Zと特定する。長さ測定部320は、フィーダ31及び乾燥段21が接する点から燃え切り点Zまでの長さを演算して、燃え切り長さを測定する。
【0043】
高さ測定部330は、ステップS2で取得部305が取得した画像データに基づいて被焼却物400の表面の高さを測定する(ステップS5)。例えば、高さ測定部330は、取得部305がカメラ220の赤外カメラ又はハイパースペクトルカメラから取得した画像データを受け入れる。高さ測定部330は、受け入れた画像データのうち、予め設定された閾値により特定した被焼却物400の表面と、処理空間Vの壁面の基準を照らし合わせることで、当該表面の高さを測定する。
【0044】
演算部340は、ステップS2で測定された温度と、ステップS3で測定された燃え切り長さと、ステップS4で測定された高さと、に基づいて、未燃分の割合を演算する(ステップS6)。
【0045】
上記の動作により、燃焼設備100は被焼却物400の後燃焼の後における未燃分の割合を演算することができる。これにより、燃焼設備100のユーザは、燃焼設備100で焼却する被焼却物400の未燃分の割合をリアルタイムで把握することができる。
【0046】
《燃焼設備の制御の動作》
以下、燃焼設備100の制御の動作について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る燃焼設備100の制御の動作を示すフローチャートである。
【0047】
燃焼設備100は、上記で説明したステップS1からステップS5までの動作により未燃分の割合を演算する。演算された未燃分の割合が予め設定された範囲内である場合(ステップS11:YES)は、燃焼設備100の制御に係る動作は終了する。他方、演算された未燃分の割合が予め設定された範囲内でない場合(ステップS11:NO)は、制御部350は、クリンカローラ210の作動間隔が変化するように制御する(ステップS12)。すなわち、制御部350は、クリンカローラ210に信号を送り、クリンカローラ210の作動間隔を変化させる。例えば、未燃分の割合が予め設定された範囲の上限値以上である場合、制御部350は、クリンカローラ210の作動間隔を増加させるように制御する。未燃分の割合が予め設定された範囲の下限値以下である場合、制御部350は、クリンカローラ210の作動間隔を減少させるように制御する。
【0048】
ステップS12の後、燃焼設備100は、再度ステップS1からステップS5までの動作を繰り返して未燃分の割合を演算する。その後、演算された未燃分の割合が予め設定された範囲内である場合(ステップS13:YES)は、燃焼設備100の制御に係る動作は終了する。他方、演算された未燃分の割合が予め設定された範囲内でない場合(ステップS13:NO)は、制御部350は、後燃焼段23に投入される空気の割合を制御する(ステップS14)。すなわち、制御部350は、送風機B1に信号を送ることにより、一次空気ラインL1により後燃焼段23に投入される空気の割合を制御する。例えば、未燃分の割合が予め設定された範囲の上限値以上である場合、制御部350は、後燃焼段23に投入される空気の割合が上がるように制御する。他方、未燃分の割合が予め設定された範囲の下限値以下である場合、制御部350は、後燃焼段23に投入される空気の割合が下がるように制御する。
【0049】
ステップS14の後、燃焼設備100は、再度ステップS1からステップS5までの動作を繰り返して未燃分の割合を演算する。その後、演算された未燃分の割合が予め設定された範囲内である場合(ステップS15:YES)は、燃焼設備100の制御に係る動作は終了する。他方、演算された未燃分の割合が予め設定された範囲内でない場合(ステップS15:NO)は、制御部350は、火格子61の作動速度を制御する(ステップS16)。すなわち、制御部350は、可動火格子61Bを作動させるアクチュエータに信号を送り、可動火格子61Bの作動速度を制御する。例えば、未燃分の割合が予め設定された範囲の上限値以上である場合、制御部350は、可動火格子61Bの作動速度が上がるように制御する。他方、未燃分の割合が予め設定された範囲の下限値以下である場合、制御部350は、可動火格子61Bの作動速度が下がるように制御する。
【0050】
ステップS16の後、燃焼設備100は、再度ステップS1からステップS5までの動作を繰り返して未燃分の割合を演算する。その後、演算された未燃分の割合が予め設定された範囲内である場合(ステップS17:YES)は、燃焼設備100の制御に係る動作は終了する。他方、演算された未燃分の割合が予め設定された範囲内でない場合(ステップS17:NO)は、制御部350は、風箱2に投入する空気量を制御する(ステップS18)。すなわち、制御部350は、送風機B1に信号を送り、風箱2に投入する空気量を制御する。例えば、未燃分の割合が予め設定された範囲の上限値以上である場合、制御部350は、風箱2に投入する空気量が上がるように制御する。他方、未燃分の割合が予め設定された範囲の下限値以下である場合、制御部350は、風箱2に投入する空気量が下がるように制御する。
【0051】
ステップS18の後、燃焼設備100は、再度ステップS1からステップS5までの動作を繰り返して未燃分の割合を演算する。その後、演算された未燃分の割合が予め設定された範囲内である場合(ステップS19:YES)は、燃焼設備100の制御に係る動作は終了する。他方、演算された未燃分の割合が予め設定された範囲内でない場合(ステップS19:NO)は、再度ステップS12に戻り、制御部350は、クリンカローラ210の作動間隔が変化するように制御する(ステップS12)。
【0052】
上記の動作により、燃焼設備100が、演算された未燃分の割合に基づいて、燃焼設備100を制御して未燃分の割合が予め設定された範囲内となるようにするため、燃焼設備100のユーザは、被焼却物400の未燃分の割合を適切に維持させて安定的な燃焼ができる。
【0053】
なお、燃焼設備100の制御の動作は上記の動作に限るものではない。例えば、クリンカローラ210の制御と、空気の割合の制御と、火格子61の作動速度の制御と、空気量の制御との順番は、上記の動作における順番に限るものでなく、異なる順番に係る動作であっても良い。また、クリンカローラ210の制御と、空気の割合の制御と、火格子61の作動速度の制御と、空気量の制御のうち、複数の制御が同時に行われるようにしても良い。また、クリンカローラ210の制御と、空気の割合の制御と、火格子61の作動速度の制御と、空気量の制御のうち、1つの制御に係る動作だけを複数回行われるようにしても良い。また、クリンカローラ210の制御と、空気の割合の制御と、火格子61の作動速度の制御と、空気量の制御のうち、1つの制御だけが行われるようにしても良い。
【0054】
《作用・効果》
本開示に係る燃焼設備100は、搬送方向に配列された乾燥段21、燃焼段22、及び後燃焼段23を有し、搬送方向Daに被焼却物400を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間Vを画成する炉本体10と、を備える燃焼設備100において、燃焼による火炎の搬送方向Da段側の端である燃え切り点Zの近傍における被焼却物400の温度を測定する温度測定部310と、予め設定された基準温度の値から測定した温度の値を減算して得られた温度差に基づいて、後燃焼の後における被焼却物400の未燃分の割合を演算する演算部340と、を備える。
【0055】
これにより、燃焼設備100が被焼却物400の後燃焼の後における未燃分の割合を演算することができ、燃焼設備100のユーザは、燃焼設備100で焼却する被焼却物400の未燃分の割合をリアルタイムで把握することができる。
【0056】
また、燃焼設備100は、未燃分の割合が、予め設定された範囲内となるように燃焼設備100を制御する制御部350と、を備える。
【0057】
これにより、燃焼設備100が、演算された未燃分の割合に基づいて、燃焼設備100を制御して未燃分の割合が予め設定された範囲内となるようにするため、燃焼設備100のユーザは、被焼却物400の未燃分の割合を適切に維持させて安定的な燃焼ができる。
【0058】
また、燃焼設備100の炉本体10は、被焼却物400を後燃焼段23から移動させるクリンカローラ210と、乾燥段21、燃焼段22及び後燃焼段23のそれぞれに空気を投入する風箱2と、被焼却物400を搬送方向Daに搬送させる火格子61と、を有し、制御部350は、クリンカローラ210の作動間隔と、乾燥段21、燃焼段22及び後燃焼段23に投入される空気のうち後燃焼段23に投入される空気の割合と、火格子61の作動速度と、風箱2に投入される空気量と、のうち、少なくとも1つを制御する。
【0059】
これにより、燃焼設備100は、クリンカローラ210や風箱2に投入される空気量や空気の配分、火格子61の作動速度を制御することにより、燃焼設備100が焼却する被焼却物400の未燃分の割合を一定の範囲内にすることができる。そのため、燃焼設備100のユーザは、被焼却物400の未燃分の割合を適切に維持させて安定的な燃焼ができる。
【0060】
また、燃焼設備100は、乾燥段21に被焼却物400を供給するフィーダ31と、フィーダ31と乾燥段21とが接する点から被焼却物400の燃え切り点Zまでの長さである燃え切り長さを測定する長さ測定部320と、を備え、演算部340は、基準温度の値から測定した温度の値を減算して得られた温度差と、基準燃え切り長さから燃え切り長さを減算して得られた値とに基づいて、未燃分の割合を演算する。
【0061】
これにより、燃焼設備100が燃え切り長さを測定することで、被焼却物400の後燃焼の後における未燃分の割合を演算することができ、燃焼設備100のユーザは、燃焼設備100で焼却する被焼却物400の未燃分の割合をリアルタイムで把握することができる。
【0062】
また、燃焼設備100は、後燃焼段23の前半付近での被焼却物400の表面の高さを測定する高さ測定部330と、を備え、演算部340は、基準温度の値から測定した温度の値を減算して得られた温度差と、基準燃え切り長さから燃え切り長さを減算して得られた値と、基準高さから高さを減算して得られた値とに基づいて、未燃分の割合を演算する。
【0063】
これにより、燃焼設備100が被焼却物400の表面の高さを測定することで、被焼却物400の後燃焼の後における未燃分の割合を演算することができ、燃焼設備100のユーザは、燃焼設備100で焼却する被焼却物400の未燃分の割合をリアルタイムで把握することができる。
【0064】
〈第2の実施形態〉
以下、第2の実施形態に係る燃焼設備100について説明する。第2の実施形態に係る燃焼設備100の構成は、第1の実施形態に係る燃焼設備100と同様である。第2の実施形態に係る演算部340は、第1の実施形態に係る演算部340と異なり、数式を用いて未燃分の割合を演算することなく、事前に計算された未燃分の割合に基づいて、未燃分の割合を演算する。
【0065】
例えば、演算部340は、燃え切り長さと、高さと、温度と、未燃分の割合とが関連付けられたテーブルに、長さ測定部320が測定した燃え切り長さと、高さ測定部330が測定した高さと、温度測定部310が測定した温度と、を照らし合わせて、未燃分の割合を演算する。
【0066】
これにより、演算部340が、予め計算された未燃分の割合を用いて、被焼却物400の未燃分の割合を演算するため、燃焼設備100が焼却する被焼却物400の未燃分の割合を演算することができ、燃焼設備100のユーザは、リアルタイムで未燃分の割合を把握することができる。
【0067】
〈第3の実施形態〉
以下、第3の実施形態に係る燃焼設備100について説明する。第3の実施形態に係る燃焼設備100の制御装置300の構成は、第1の実施形態に係る燃焼設備100の制御装置300の構成のうち、長さ測定部320と、高さ測定部330と、演算部340を備えない構成である。第3の実施形態に係る燃焼設備100の制御装置300は、被焼却物400の未燃分の割合を演算することなく、温度測定部310などが測定した値を用いて、燃焼設備100を制御する。
【0068】
図5は、第3の実施形態に係る制御装置300の構成を示す概略ブロック図である。制御装置300は、温度測定部310と、制御部350と、を備える。
第3の実施形態に係る燃焼設備100が備えるカメラ220は可視カメラを備えても良い。
【0069】
制御部350は、温度測定部310が測定した温度の値が、予め設定された範囲内となるように燃焼設備100を制御する。例えば、温度測定部310が測定した温度の値が、予め設定された範囲の上限値より高い場合は、制御部350は、クリンカローラ210の作動間隔の増加、または後燃焼段23に投入される空気の割合の増加、または火格子61の作動速度の増加、または風箱2に投入される空気量の増加が行われるように制御する。
【0070】
また、温度測定部310が測定した温度の値が、予め設定された範囲の下限値より低い場合は、制御部350は、クリンカローラ210の作動間隔の減少、または後燃焼段23に投入される空気の割合の減少、または火格子61の作動速度の減少、または風箱2に投入される空気量の減少が行われるように制御する。すなわち、第1の実施形態に係る制御装置は、未燃分の割合を求め、当該未燃分の割合に基づいて制御部350が燃焼設備100を制御するが、第3の実施形態に係る燃焼設備100は、未燃分の割合の計算を省略し、温度測定部310が測定した温度に基づいて制御する。
【0071】
《作用・効果》
本開示に係る燃焼設備100は、搬送方向Daに配列された乾燥段21、燃焼段22、及び後燃焼段23を有し、搬送方向Daに被焼却物400を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間Vを画成する炉本体10と、を備える燃焼設備100において、燃焼による火炎の搬送方向Da段側の端である燃え切り点Zの近傍における被焼却物400の温度を測定する温度測定部310と、温度の値が予め設定された範囲内となるように燃焼設備100を制御する制御部350と、を備える。
【0072】
これにより、燃焼設備100は、測定した被焼却物400の温度を用いて、燃焼設備100を制御する。そのため、燃焼設備100のユーザは、被焼却物400の未燃分の割合を適切に維持させて安定的な燃焼ができる。
【0073】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
【0074】
燃焼設備100は、長さ測定部320が燃え切り長さを測定する代わりに、被焼却物400の熱分解ガスの濃度を直接測定しても良い。この場合、演算部340は、測定された濃度を用いて未燃分の割合を演算する。温度も、熱電対を使って直接測定して良い。
【0075】
また、制御部350は、上記の第1の実施形態で説明した例以外にも、燃焼設備100が備える装置を制御することにより、被焼却物400の未燃分の割合が変化するように制御しても良い。
【0076】
予め規定された後燃焼段23の前半部分の位置における被焼却物400の温度、高さに基づいて制御したが、これに限られず、燃え切り点を特定した後に、その近傍に存在する被焼却物400の温度、高さを特定し、これらに基づいて制御しても良い。
【0077】
図6は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ1100は、プロセッサ1110、メインメモリ1120、ストレージ1130、インタフェース1140を備える。
上述の制御装置300は、コンピュータ1100に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ1130に記憶されている。プロセッサ1110は、プログラムをストレージ1130から読み出してメインメモリ1120に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ1110は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ1120に確保する。
【0078】
プログラムは、コンピュータ1100に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ1100は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1110によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0079】
ストレージ1130の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ1130は、コンピュータ1100のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1140または通信回線を介してコンピュータに接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1100が当該プログラムをメインメモリ1120に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ1130は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0080】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0081】
〈付記〉
(1)第1実施形態に係る燃焼設備100は、搬送方向に配列された乾燥段21、燃焼段22、及び後燃焼段23を有し、搬送方向Daに被焼却物400を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間Vを画成する炉本体10と、を備える燃焼設備100において、燃焼による火炎の搬送方向Da段側の端である燃え切り点Zの近傍における被焼却物400の温度を測定する温度測定部310と、予め設定された基準温度の値から測定した温度の値を減算して得られた温度差に基づいて、後燃焼の後における被焼却物400の未燃分の割合を演算する演算部340と、を備える。
【0082】
これにより、燃焼設備100が被焼却物400の後燃焼の後における未燃分の割合を演算することができ、燃焼設備100のユーザは、燃焼設備100で焼却する被焼却物400の未燃分の割合をリアルタイムで把握することができる。
【0083】
(2)また、燃焼設備100は、未燃分の割合が、予め設定された範囲内となるように燃焼設備100を制御する制御部350と、を備える。
【0084】
これにより、燃焼設備100が、演算された未燃分の割合に基づいて、燃焼設備100を制御して未燃分の割合が予め設定された範囲内となるようにするため、燃焼設備100のユーザは、被焼却物400の未燃分の割合を適切に維持させて安定的な燃焼ができる。
【0085】
(3)また、燃焼設備100の炉本体10は、被焼却物400を後燃焼段23から移動させるクリンカローラ210と、乾燥段21、燃焼段22及び後燃焼段23のそれぞれに空気を投入する風箱2と、被焼却物400を搬送方向Daに搬送させる火格子61と、を有し、制御部350は、クリンカローラ210の作動間隔と、乾燥段21、燃焼段22及び後燃焼段23に投入される空気のうち後燃焼段23に投入される空気の割合と、火格子61の作動速度と、風箱2に投入される空気量と、のうち、少なくとも1つを制御する。
【0086】
これにより、燃焼設備100は、クリンカローラ210や風箱2に投入される空気量や空気の配分、火格子61の作動速度を制御することにより、燃焼設備100が焼却する被焼却物400の未燃分の割合を一定の範囲内にすることができる。そのため、燃焼設備100のユーザは、被焼却物400の未燃分の割合を適切に維持させて安定的な燃焼ができる。
【0087】
(4)また、燃焼設備100は、乾燥段21に被焼却物400を供給するフィーダ31と、フィーダ31と乾燥段21とが接する点から被焼却物400の燃え切り点Zまでの長さである燃え切り長さを測定する長さ測定部320と、を備え、演算部340は、基準温度の値から測定した温度の値を減算して得られた温度差と、基準燃え切り長さから燃え切り長さを減算して得られた値とに基づいて、未燃分の割合を演算する。
【0088】
これにより、燃焼設備100が燃え切り長さを測定することで、被焼却物400の後燃焼の後における未燃分の割合を演算することができ、燃焼設備100のユーザは、燃焼設備100で焼却する被焼却物400の未燃分の割合をリアルタイムで把握することができる。
【0089】
(5)また、燃焼設備100は、後燃焼段23の前半付近での被焼却物400の表面の高さを測定する高さ測定部330と、を備え、演算部340は、基準温度の値から測定した温度の値を減算して得られた温度差と、基準燃え切り長さから燃え切り長さを減算して得られた値と、基準高さから高さを減算して得られた値とに基づいて、未燃分の割合を演算する。
【0090】
これにより、燃焼設備100が被焼却物400の表面の高さを測定することで、被焼却物400の後燃焼の後における未燃分の割合を演算することができ、燃焼設備100のユーザは、燃焼設備100で焼却する被焼却物400の未燃分の割合をリアルタイムで把握することができる。
【0091】
(6)第3の実施形態に係る燃焼設備100は、搬送方向Daに配列された乾燥段21、燃焼段22、及び後燃焼段23を有し、搬送方向Daに被焼却物400を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間Vを画成する炉本体10と、を備える燃焼設備100において、燃焼による火炎の搬送方向Da段側の端である燃え切り点Zの近傍における被焼却物400の温度を測定する温度測定部310と、温度の値が予め設定された範囲内となるように燃焼設備100を制御する制御部350と、を備える。
【0092】
これにより、燃焼設備100は、測定した被焼却物400の温度を用いて、燃焼設備100を制御する。そのため、燃焼設備100のユーザは、被焼却物400の未燃分の割合を適切に維持させて安定的な燃焼ができる。
【0093】
(7)本開示に係る演算方法は、搬送方向Daに配列された乾燥段21、燃焼段22、及び後燃焼段23を有し、搬送方向Daに被焼却物400を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間Vを画成する炉本体10と、を備える燃焼設備100において、燃焼による火炎の搬送方向Da段側の端である燃え切り点Zの近傍における被焼却物400の温度を測定するステップと、予め設定された基準温度の値から測定した温度の値を減算して得られた温度差に基づいて、後燃焼の後における被焼却物400の未燃分の割合を演算するステップと、を有する。
【0094】
これにより、燃焼設備100が被焼却物400の後燃焼の後における未燃分の割合を演算することができ、演算方法のユーザは、燃焼設備100で焼却する被焼却物400の未燃分の割合をリアルタイムで把握することができる。
【0095】
(8)本開示に係るプログラムは、搬送方向Daに配列された乾燥段21、燃焼段22、及び後燃焼段23を有し、搬送方向Daに被焼却物400を搬送することで、乾燥、燃焼、及び後燃焼をそれぞれ行う処理空間Vを画成する炉本体10と、を備える燃焼設備100の、コンピュータに、燃焼による火炎Fの搬送方向段側の端である燃え切り点Zの近傍における被焼却物400の温度を測定するステップと、予め設定された基準温度の値から測定した温度の値を減算して得られた温度差に基づいて、後燃焼の後における被焼却物400の未燃分の割合を演算するステップと、を実行させる。
【0096】
これにより、燃焼設備100が被焼却物400の後燃焼の後における未燃分の割合を演算することができ、プログラムのユーザは、燃焼設備100で焼却する被焼却物400の未燃分の割合をリアルタイムで把握することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 ストーカ炉
2 風箱
3 ホッパ
4 ガス循環部
6 ストーカ
7 火炉
8 排熱回収ボイラ
9 減温塔
10 炉本体
11 集塵装置
12 煙突
13 排出シュート
21 乾燥段
22 燃焼段
23 後燃焼段
31 フィーダ
61 火格子
61A 固定火格子
61B 可動火格子
100 燃焼設備
210 クリンカローラ
220 カメラ
300 制御装置
305 取得部
310 温度測定部
320 長さ測定部
330 高さ測定部
340 演算部
350 制御部
400 被焼却物
1100 コンピュータ
1110 プロセッサ
1120 メインメモリ
1130 ストレージ
1140 インタフェース
L1 一次空気ライン
L2 二次空気ライン
B1 送風機
F 火炎
Z 燃え切り点