(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】組成物及びポリマー成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/18 20060101AFI20231215BHJP
C08F 236/02 20060101ALI20231215BHJP
C08K 5/134 20060101ALI20231215BHJP
C08K 5/527 20060101ALI20231215BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
C08L23/18
C08F236/02
C08K5/134
C08K5/527
C08L23/08
(21)【出願番号】P 2019223247
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 文
(72)【発明者】
【氏名】塩野 紗彩
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-037402(JP,A)
【文献】国際公開第2018/194028(WO,A1)
【文献】特開2011-178883(JP,A)
【文献】特開2008-144006(JP,A)
【文献】特開2001-146551(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190072(WO,A1)
【文献】特開2012-126917(JP,A)
【文献】特許第3136479(JP,B2)
【文献】特開2001-106832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00、301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を含有する共重合体を含むポリマー成分と、窒素雰囲気下、20℃/分で加熱したときの1%質量損失温度が200℃以上である化合物(A)とを含有する組成物であって、
前記化合物(A)が、
下記式(3)、(4)又は(5)で表される化合物である、組成物。
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項2】
前記化合物(A)は、窒素雰囲気下、20℃/分で加熱したときの5%質量損失温度が245℃以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記共重合体が、更に、芳香族ビニル単位を含有する請求項
1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマー成分が、更に、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリブチレンテレフタレート、及びポリブチレンナフタレートからなる群より選択される1つ以上の樹脂成分を含有する請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマー成分中の前記共重合体の含有量が、10~100質量%である請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満である請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%で、前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%で、且つ、前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%である請求項
3に記載の組成物。
【請求項8】
前記共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が100,000~9,000,000である請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記共重合体は、前記非共役オレフィン単位が非環状の非共役オレフィン単位である請求項1~
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記共重合体は、前記非環状の非共役オレフィン単位がエチレン単位のみからなる請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
前記共重合体は、前記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含む請求項
3又は
7に記載の組成物。
【請求項12】
前記共重合体は、前記共役ジエン単位が1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位からなる群より選択される少なくとも1つを含む請求
項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の組成物を用いたポリマー成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及びポリマー成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から耐衝撃性、耐薬品性等に優れるオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等を用いて種々の樹脂成形体が製造されている。
例えば、耐衝撃性と両立した耐傷付き性を有することにより、無塗装樹脂成形材料として使用するに適したポリプロピレン系樹脂組成物を得る観点から、ポリプロピレン樹脂75~90重量%と、スチレン含有量が18~42重量%の水素添加スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体エラストマー(A)7~15重量%と、スチレン含有量が12~15重量%の水素添加スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体エラストマー(B)3~10重量%とを含むポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、高い耐衝撃性及び透明性を有する樹脂製品を得る観点から、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する多元共重合体であって、芳香族ビニル単位の含有量が、多元共重合体全体の50mol%以上100mol%未満である多元共重合体を含有する樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-246366号公報
【文献】国際公開第2017/065300号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂組成物を混練、特に、高温で混練した場合、共重合体の特性(破断強度)を十分に発揮するには更なる改善の余地があった。
本発明は、破断強度に優れるポリマー成形体及び混練時に共重合体のゲル化が抑制され、破断強度に優れるポリマー成形体を得ることができる組成物を提供することを目的とし、該目的を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<1> 共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を含有する共重合体を含むポリマー成分と、窒素雰囲気下、20℃/分で加熱したときの1%質量損失温度が200℃以上である化合物(A)とを含有する組成物。
【0006】
<2> 前記化合物(A)は、窒素雰囲気下、20℃/分で加熱したときの5%質量損失温度が245℃以上である<1>に記載の組成物。
<3> 前記化合物(A)が、分岐アルキル基を有するフェニル基を2つ以上含む<1>または<2>に記載の組成物。
<4> 前記分岐アルキル基を有するフェニル基の少なくとも1つは、ヒドロキシ基を有する<3>に記載の組成物。
<5> 前記分岐アルキル基を有するフェニル基が、複数の分岐アルキル基を有する<3>又は<4>に記載の組成物。
【0007】
<6> 前記化合物(A)が、エステル基を有する<3>~<5>のいずれか1つに記載の組成物。
<7> 前記化合物(A)が、リン原子を有する<3>~<5>のいずれか1つに記載の組成物。
【0008】
<8> 前記共重合体が、更に、芳香族ビニル単位を含有する<1>~<7>のいずれか1つに記載の組成物。
【0009】
<9> 前記ポリマー成分が、更に、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリブチレンテレフタレート、及びポリブチレンナフタレートからなる群より選択される1つ以上の樹脂成分を含有する<1>~<8>のいずれか1つに載の組成物。
<10> 前記ポリマー成分中の前記共重合体の含有量が、10~100質量%である<1>~<9>のいずれか1つに記載の組成物。
【0010】
<11> 前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満である<1>~<10>のいずれか1つに記載の組成物。
<12> 前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%で、前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%で、且つ、前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%である<8>~<11>のいずれか1つに記載の組成物。
<13> 前記共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が100,000~9,000,000である<1>~<12>のいずれか1つに記載の組成物。
【0011】
<14> 前記共重合体は、前記非共役オレフィン単位が非環状の非共役オレフィン単位である<1>~<13>のいずれか1つに記載の組成物。
<15> 前記共重合体は、前記非環状の非共役オレフィン単位がエチレン単位のみからなる<14>に記載の組成物。
<16> 前記共重合体は、前記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含む<8>~<15>のいずれか1つに記載の組成物。
<17> 前記共重合体は、前記共役ジエン単位が1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位からなる群より選択される少なくとも1つを含む<1>~<16>のいずれか1つに記載の組成物。
【0012】
<18> <1>~<17>のいずれか1つに記載の組成物を用いたポリマー成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、破断強度に優れるポリマー成形体及び混練時に共重合体のゲル化が抑制され、破断強度に優れるポリマー成形体を得ることができる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<組成物>
本発明の組成物は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を含有する共重合体を含むポリマー成分と、窒素雰囲気下、20℃/分で加熱したときの1%質量損失温度が200℃以上である化合物(A)とを含有する。
以下、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を含有する共重合体を「本発明の共重合体」と称する。
【0015】
1%質量損失温度とは、化合物を、窒素雰囲気下、20℃/分で加熱したときに、質量が1質量%減ずるときの温度を意味し、1%質量損失温度が高いほど、耐熱性に優れることを意味する。5%質量損失温度とは、化合物を、窒素雰囲気下、20℃/分で加熱したときに、質量が5質量%減ずるときの温度を意味する。
つまり、化合物(A)が、窒素雰囲気下、20℃/分で加熱したときの1%質量損失温度が200℃以上であるとは、本発明の組成物を高温(例えば、140℃)となる温度で溶融混練した場合でも、化合物(A)は分解しにくく、耐熱性に優れることを意味する。
【0016】
化合物(A)は、老化防止剤として機能し得る化合物であることが好ましい。
共重合体を溶融混練すると、共重合体がゲル化を生じることがある。特に、混練時の温度が、ゴム成分の加硫温度と同程度(例えば、140℃)の高温である場合、共重合体を混練するとゲル化を生じ易い。一般に、混練によりゲル化が生じると;換言すると、ゲル量が多いと、成形体の破断強度が低下し易い。
しかしながら、本発明の組成物は、本発明の共重合体と共に、化合物(A)を含むことで、本発明の共重合体のゲル化が抑制され、ポリマー成形体の破断強度が向上することがわかった。理由は定かでないが、組成物を、加硫温度と同程度(例えば、140℃)の高温で混練しても、化合物(A)は、耐熱性に優れることから分解しにくく、ゲル化を抑制する老化防止剤としての機能を保ちやすいためと考えられる。
その結果、本発明の共重合体と化合物(A)とを含む組成物を高温で混練しても、本発明の共重合体はゲル化しにくく、本発明の組成物から得られるポリマー成形体は破断強度に優れると考えられる。
以下、本発明の組成物の詳細について説明する。
【0017】
〔化合物(A)〕
化合物(A)は、窒素雰囲気下、20℃/分で加熱したときの1%質量損失温度が200℃以上である。
本発明の組成物が化合物(A)を含むことで、本発明の組成物を溶融混練するときに、本発明の共重合体のゲル化を抑制し、ポリマー成形体の破断強度を向上することができる。
本発明の共重合体のゲル化をより抑制し、ポリマー成形体の破断強度をより向上する観点から、化合物(A)の1%質量損失温度は、210℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましく、225℃以上であることが更に好ましい。
化合物(A)の1%質量損失温度の上限は特に制限されず、通常、320℃以下である。
【0018】
また、本発明の共重合体のゲル化をより抑制し、ポリマー成形体の破断強度をより向上する観点から、化合物(A)の5%質量損失温度は、245℃以上であることが好ましく、255℃以上であることがより好ましく、265℃以上であることが更に好ましい。
化合物(A)の5%質量損失温度の上限は特に制限されず、通常、370℃以下である。
【0019】
化合物(A)は、窒素雰囲気下、20℃/分で加熱したときの1%質量損失温度が200℃以上である化合物であれば特に制限されない。本発明の共重合体のゲル化をより抑制し、ポリマー成形体の破断強度をより向上する観点から、化合物(A)は、分岐アルキル基を有するフェニル基を2つ以上含むことが好ましい。また、同様の観点から、分岐アルキル基を有するフェニル基の少なくとも1つは、ヒドロキシ基を有することが好ましい。
化合物(A)は、また、エステル基を有していてもよい。
より具体的には、化合物(A)は、下記式(1)又は(2)で表される構造を有していることが好ましい。
【0020】
【0021】
【0022】
式(1)及び式(2)において、R1~R8、R11~R18、及び、R21~R24は、水素原子、直鎖アルキル基、環状アルキル基、又は分岐アルキル基であり、R1~R8のうち少なくとも1つ;並びに、R11~R18及びR21~R24のうち少なくとも1つは、分岐アルキル基である。R1~R8、R11~R18、及び、R21~R24は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。R9は、炭化水素基である。A1及びA2は、連結基である。Eは、3価のヘテロ原子である。
【0023】
直鎖アルキル基は、炭素数が1~12であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~5であることが更に好ましく、1~3であることがより更に好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ぺンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。直鎖アルキル基は、ハロゲン原子等の置換基を更に有していてもよい。
直鎖アルキル基は、以上の中でも、無置換の直鎖アルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、又はn-プロピル基がより好ましい。
【0024】
環状アルキル基は、炭素数が5~12であることが好ましく、6~12であることがより好ましく、6~8であることが更に好ましい。具体的には、例えば、シクロぺンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。環状アルキル基は、炭素数1~3のアルキル基、ハロゲン原子等の置換基を更に有していてもよい。
環状アルキル基は、以上の中でも、無置換の環状アルキル基であることが好ましく、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0025】
分岐アルキル基は、炭素数が3~12であることが好ましく、3~8であることがより好ましく、4~8であることが更に好ましく、4~6であることがより更に好ましい。具体的には、例えば、イソプロピル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、2-ヘキシル基、2-ヘプチル基、2-オクチル基、2-ドデシル基等が挙げられる。分岐アルキル基は、ハロゲン原子等の置換基を更に有していてもよい。
分岐アルキル基は、以上の中でも、無置換の分岐アルキル基であることが好ましく、イソプロピル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、又はtert-ペンチル基がより好ましく、tert-ブチル基又はtert-ペンチル基が更に好ましい。
【0026】
R9で表される炭化水素基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、R1~R8等で例示した直鎖アルキル基、環状アルキル基、及び分岐アルキル基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
アルケニル基及びアルキニル基は、炭素数2~8であることが好ましく、例えば、ビニル基等が挙げられる。
【0027】
A1及びA2で表される連結基としては、炭素数1~6の2価の炭化水素基が挙げられ、2価以上のヘテロ原子を含んでもよい。炭化水素基の炭化水素は、飽和炭化水素であっても、不飽和炭化水素であってもよい。中でも、連結基は、飽和炭化水素基であることが好ましく、炭素数は1~5であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。
2価以上のヘテロ原子は、例えば、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
連結基は、更に、ハロゲン原子、メチル基、エチル基等の置換基を有していてもよい。
【0028】
Eで表される3価のヘテロ原子としては、硫黄原子、リン原子等が挙げられ、中でも、リン原子であることが好ましい。
【0029】
化合物(A)は、分岐アルキル基を有するフェニル基を2つ以上含むことが好ましい。具体的には、式(1)においては、R1~R4のうち少なくとも1つ、及び、R5~R8のうち少なくとも1つが、それぞれ、分岐アルキル基を有することが好ましい。また、式(2)においては、R11~R14から選択される基Ra;R15~R18から選択される基Rb;及び、R21~R24から選択される基Rcからなる群より選択される少なくとも2つが、分岐アルキル基を有することが好ましい。
【0030】
更に、分岐アルキル基を有するフェニル基は、複数の分岐アルキル基を有することが好ましい。
中でも、R1~R4のうち少なくとも2つ;R5~R8のうち少なくとも2つ;R11~R14のうち少なくとも2つ;及び、R15~R18のうち少なくとも2つが、分岐アルキル基であることが好ましい。
【0031】
式(1)は次の構造であることが好ましい。
R1及びR8が分岐アルキル基;R2、R4、R5及びR7が水素原子;R3及びR6が分岐アルキル基又は直鎖アルキル基;R9が不飽和炭化水素基;A1が2価の飽和炭化水素基。
式(1)は次の構造であることがより好ましい。
R1及びR8が炭素数3~6の無置換の分岐アルキル基;R2、R4、R5及びR7が水素原子;R3及びR6が炭素数4~5の無置換の分岐アルキル基又は炭素数1~3の無置換の直鎖アルキル基;R9が無置換のビニル基;A1がアルキル基で置換された、もしくは無置換のメチレン基。
【0032】
式(2)は次の構造であることが好ましい。
R11、R13、R16、R18及びR21が分岐アルキル基;R12、R14、R15、R17、R22及びR23が水素原子;R24が直鎖アルキル基;A2が酸素原子を含む2価の飽和炭化水素基;Eが硫黄原子又はリン原子。
式(2)は次の構造であることがより好ましい。
R11、R13、R16、R18及びR21が炭素数3~5の無置換の分岐アルキル基;R12、R14、R15、R17、R22及びR23が水素原子;R24が炭素数1~3の無置換の直鎖アルキル基;A2が炭素数2~5の無置換のアルキレンオキシ基(-OR-において、Rが炭素数2~5の無置換のアルキレン);Eがリン原子。
【0033】
化合物(A)は、分子量が200~1500であることが好ましい。
化合物(A)の分子量が200~1500であることで、本発明の組成物からポリマー成形体を製造した後、ポリマー成形体から化合物(A)が染み出しにくく、本発明の組成物の混練時に共重合体のゲル化を抑制すると考えられる。
化合物(A)の分子量は、300~1200であることが好ましく、400~1000であることがより好ましく、500~800であることが更に好ましい。
【0034】
式(1)で表される構造を有する化合物は、下記式(3)又は(4)で表される構造を有する化合物であることが更に好ましい。
また、式(2)で表される構造を有する化合物は、下記式(5)で表される構造を有する化合物であることが更に好ましい。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
化合物(A)は、以上の中でも、上記式(4)又は(5)で表される構造を有する化合物であることがより更に好ましい。
化合物(A)は、既述の構造の化合物を、1種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
本発明の組成物中の化合物(A)の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、0.1~30質量部であることが好ましい。
化合物(A)の含有量が、ポリマー成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることで、本発明の組成物の混練時に共重合体のゲル化をより抑制し、ポリマーの成形体の破断強度をより向上することができる。
また、本発明の組成物中の化合物(A)の含有量は、ポリマー成形体からの化合物(A)の染み出しを抑制する観点から、ポリマー成分100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましい。
本発明の組成物中の化合物(A)の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、0.5~20質量部であることがより好ましく、1.0~10質量部であることが更に好ましく、1.5~7質量部であることがより更に好ましい。
【0040】
〔ポリマー成分〕
ポリマー成分は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を含有する共重合体(本発明の共重合体)を含む。本発明の組成物が本発明の共重合体を含まないと、破断強度に優れるポリマー成形体を得ることができない。
ポリマー成分は、更に、樹脂成分、ゴム成分等を含んでいてもよい。
【0041】
[本発明の共重合体]
本発明の共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を含有する。
本発明の共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体であってもよいし、更に、芳香族ビニル単位を含む3つの単位からなる三元共重合体であってもよいし、更に、他の単量体単位を含有する多元共重合体であってもよい。
ただし、本発明の共重合体は、ブチレン単位の含有量が0mol%であることが好ましい。例えば、特開2012-246366号公報で用いられている水素添加スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体エラストマーは、ブチレン単位を含む水添スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)が用いられている。本発明の共重合体は、ブチレン単位の含有量が0mol%であることが好ましく、本発明の共重合体にはSEBSは含まれないことが好ましい。
【0042】
(共役ジエン単位)
共役ジエン単位は、単量体としての共役ジエン化合物に由来する構成単位である。
ここで、共役ジエン化合物とは、共役系のジエン化合物を指す。共役ジエン化合物は、炭素数が4~8であることが好ましい。かかる共役ジエン化合物として、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0043】
本発明の共重合体の単量体としての共役ジエン化合物は、ポリマー成形体の破断強度を向上する観点から、1,3-ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、1,3-ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1つのみからなることがより好ましく、1,3-ブタジエンのみからなることがさらに好ましい。
別の言い方をすると、本発明の共重合体における共役ジエン単位は、1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位からなる群より選択される少なくとも1つのみからなることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位のみからなることがさらに好ましい。
【0044】
本発明の共重合体が二元共重合体の場合、共役ジエン単位の含有量は、0mol%を超え50mol%以下であることが好ましい。この場合、伸び及び耐候性に優れる共重合体を得ることができる。同様の観点から、二元共重合体における共役ジエン単位の割合は、40mol%以下であることがより好ましい。
【0045】
二元共重合体において、共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、5%以下であることが好ましい。上記割合が5%以下であると、本発明の共重合体の耐熱性及び耐屈曲疲労性をさらに向上させることができる。同様の観点から、二元共重合体における共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、2.5%以下がより好ましく、1.0%以下が更に好ましい。なお、上記共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、共役ジエン単位全体における割合であって、本発明の共重合体全体における割合ではない。また、上記割合は、共役ジエン単位がブタジエン単位である場合には、1,2-ビニル結合量と同じ意味である。
【0046】
本発明の共重合体が三元共重合体または多元共重合体の場合、共役ジエン単位の含有量は、1mol%以上であることが好ましく、5mol%以上であることがより好ましく、10mol%以上であることが更に好ましく、また、50mol%以下であることが好ましく、40mol%以下であることがより好ましく、30mol%以下であることが更に好ましい。
共役ジエン単位の含有量が、本発明の共重合体全体の1~50mol%であることで、ポリマー成形体の破断強度を向上することができる。
ポリマー成形体の破断強度をより向上する観点から、共役ジエン単位の含有量は、本発明の共重合体全体の1~50mol%の範囲が好ましく、5~40mol%の範囲がより好ましく、10~30mol%の範囲が更に好ましい。
【0047】
(非共役オレフィン単位)
非共役オレフィン単位は、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する構成単位である。
ここで、非共役オレフィン化合物とは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素-炭素二重結合を1個以上有する化合物を指す。非共役オレフィン化合物は、炭素数が2~10であることが好ましい。かかる非共役オレフィン化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、ピバリン酸ビニル、1-フェニルチオエテン、N-ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。非共役オレフィン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0048】
本発明の共重合体の単量体としての非共役オレフィン化合物は、ポリマー成形体の破断強度を向上する観点から、非環状の非共役オレフィン化合物であることが好ましく、また、非環状の非共役オレフィン化合物は、α-オレフィンであることがより好ましく、エチレンを含むα-オレフィンであることがさらに好ましく、エチレンのみからなることが特に好ましい。
別の言い方をすると、本発明の共重合体における非共役オレフィン単位は、非環状の非共役オレフィン単位であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン単位は、α-オレフィン単位であることがより好ましく、エチレン単位を含むα-オレフィン単位であることがさらに好ましく、エチレン単位のみからなることが特に好ましい。
【0049】
本発明の共重合体が二元共重合体の場合、非共役オレフィン単位の含有量は、50mol%以上100mol%未満であることが好ましい。この場合、ポリマー成形体の高温での破壊特性を効果的に向上させることができる。同様の観点から、二元共重合体における非共役オレフィン単位の割合は、60mol%以上であることがより好ましい。
【0050】
本発明の共重合体が三元共重合体または多元共重合体の場合、非共役オレフィン単位の含有量は、40mol%以上であることが好ましく、45mol%以上であることがよりに好ましく、55mol%以上であることが更に好ましく、60mol%以上であることが特に好ましく、また、97mol%以下であることが好ましく、95mol%以下であることがより好ましく、90mol%以下であることが更に好ましい。非共役オレフィン単位の含有量が、本発明の共重合体全体の40~97mol%であることで、ポリマー成形体の破断強度を向上することができる。
ポリマー成形体の破断強度をより向上する観点から、非共役オレフィン単位の含有量は、本発明の共重合体全体の40~97mol%の範囲が好ましく、45~95mol%の範囲がより好ましく、55~90mol%の範囲がより更に好ましく、60~90mol%の範囲が更に好ましい。
【0051】
(芳香族ビニル単位)
本発明の共重合体は、更に、芳香族ビニル単位を含有することが好ましい。
芳香族ビニル単位は、単量体としての芳香族ビニル化合物に由来する構成単位である。
本発明の共重合体が芳香族ビニル単位を含有することで、非共役オレフィン単位由来の過度の結晶化が抑制され、本発明の共重合体の剛性を向上しつつも、弾性を損ねにくく、高い耐亀裂性を得ることができる。
ここで、芳香族ビニル化合物とは、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物を指し、共役ジエン化合物には包含されないものとする。芳香族ビニル化合物は、炭素数が8~10であることが好ましい。かかる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0052】
本発明の共重合体の単量体としての芳香族ビニル化合物は、ポリマー成形体の破断強度を向上する観点から、スチレンを含むことが好ましく、スチレンのみからなることがより好ましい。別の言い方をすると、本発明の共重合体における芳香族ビニル単位は、スチレン単位を含むことが好ましく、スチレン単位のみからなることがより好ましい。
なお、芳香族ビニル単位における芳香族環は、隣接する単位と結合しない限り、本発明の共重合体の主鎖には含まれない。
【0053】
本発明の共重合体が三元共重合体または多元共重合体の場合、芳香族ビニル単位の含有量は、2mol%以上であることが好ましく、3mol%以上であることがより好ましく、また、35mol%以下であることが好ましく、30mol%以下であることがより好ましく、25mol%以下であることが更に好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が、本発明の共重合体全体の2~35mol%であることで、ポリマー成形体の破断強度を向上することができる。
ポリマー成形体の破断強度をより向上する観点から、芳香族ビニル単位の含有量は、本発明の共重合体全体の2~35mol%の範囲が好ましく、3~30mol%の範囲がより好ましく、3~25mol%の範囲が更に好ましい。
【0054】
共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位以外の、その他の構成単位の含有量は、本発明の所望の効果を得る観点から、本発明の共重合体全体の30mol%以下であることが好ましく、20mol%以下であることがより好ましく、10mol%以下であることがさらに好ましく、含有しないこと、即ち、含有量が0mol%であることが特に好ましい。つまり、本発明の共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体であるか、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位の3つの単位からなる三元共重合体であることが好ましい。
【0055】
本発明の共重合体は、ポリマー成形体の破断強度を向上する観点から、単量体として、一種のみの共役ジエン化合物、一種のみの非共役オレフィン化合物、及び一種の芳香族ビニル化合物を少なくとも用いて重合してなる重合体であることが好ましい。
別の言い方をすると、本発明の共重合体は、一種のみの共役ジエン単位、一種のみの非共役オレフィン単位、及び一種のみの芳香族ビニル単位を含有する共重合体であることが好ましく、一種のみの共役ジエン単位、一種のみの非共役オレフィン単位、及び一種のみの芳香族ビニル単位のみからなる三元共重合体であることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位、エチレン単位、及びスチレン単位のみからなる三元共重合体であることがさらに好ましい。ここで、「一種のみの共役ジエン単位」には、異なる結合様式の共役ジエン単位が包含される。
【0056】
本発明の共重合体が二元共重合体である場合、共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満であることが好ましい。
本発明の共重合体が三元共重合体である場合、共役ジエン単位の含有量が1~50mol%で、非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%で、且つ、芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%であることが好ましい。
【0057】
本発明の共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が100,000~9,000,000であることが好ましく、150,000~8,000,000であることがより好まし。本発明の共重合体のMwが100,000以上であることにより、ポリマー成形体の破断強度を十分に確保することができ、また、Mwが9,000,000以下であることにより、組成物の作業性を損ねにくい。
【0058】
本発明の共重合体は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が10,000~10,000,000であることが好ましく、50,000~9,000,000であることがより好ましく、100,000~8,000,000であることが更に好ましい。本発明の共重合体のMnが10,000以上であることにより、ポリマー成形体の破断強度を十分に確保することができ、また、Mnが10,000,000以下であることにより、組成物の作業性を損ねにくい。
【0059】
本発明の共重合体は、分子量分布[Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)]が1.00~4.00であることが好ましく、1.00~3.50であることがより好ましく、1.80~3.00であることがさらに好ましい。本発明の共重合体の分子量分布が4.00以下であれば、本発明の共重合体の物性に十分な均質性をもたらすことができる。
【0060】
なお、本発明の共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。
【0061】
本発明の共重合体は、0~120℃における示差走査熱量計(DSC)で測定した吸熱ピークエネルギーが10~150J/gであることが好ましく、30~120J/gであることがさらに好ましい。本発明の共重合体の吸熱ピークエネルギーが10J/g以上であれば、本発明の共重合体の結晶性が高くなり、ポリマー成形体の耐亀裂性をさらに向上することができる。また、本発明の共重合体の吸熱ピークエネルギーが150J/g以下であれば、組成物の作業性が向上する。
本発明の共重合体の吸熱ピークエネルギーは、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、例えば、10℃/分の昇温速度で-150℃から150℃まで昇温して測定すればよい。
【0062】
本発明の共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が30~130℃であることが好ましく、30~110℃であることがより好ましい。本発明の共重合体の融点が30℃以上であれば、本発明の共重合体の結晶性が高くなり、ポリマー成形体の耐亀裂性をさらに向上することができる。また、本発明の共重合体の融点が130℃以下であれば、組成物の作業性が向上する。
本発明の共重合体の融点は、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定すればよい。
【0063】
本発明の共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることが好ましく、-100~-10℃であることがさらに好ましい。本発明の共重合体のガラス転移温度が0℃以下であれば、ポリマー成形体の破断強度をさらに向上することができる。
本発明の共重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定すればよい。
【0064】
本発明の共重合体は、結晶化度が0.5~50%であることが好ましく、3~45%であることがさらに好ましく、5~45%であることがより一層好ましい。本発明の共重合体の結晶化度が0.5%以上であれば、非共役オレフィン単位に起因する共重合体の結晶性を十分に確保して、ポリマー成形体の破断強度をさらに向上することができる。また、本発明の共重合体の結晶化度が50%以下であれば、組成物の混練の際の作業性、及び押出加工性が向上する。
本発明の共重合体の結晶化度は、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギーと、本発明の共重合体の融解ピークエネルギーを測定し、ポリエチレンと本発明の共重合体とのエネルギー比率から、結晶化度を算出すればよい。また、融解ピークエネルギーは、示差走査熱量計で測定することができる。
【0065】
本発明の共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることが好ましい。これにより、ポリマー成形体の破断強度をさらに向上することができる。
なお、本発明の共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環~五員環については、10~24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。
なお、本発明において、重合体の主鎖とは、それ以外のすべての分子鎖(長分子鎖または短分子鎖、あるいはその両方)が、ペンダントのように連なる線状分子鎖を意味する〔「Glossary of Basic Terms in Polymer Science IUPAC Recommendations 1996」, Pure Appl. Chem., 68, 2287-2311 (1996) のセクション1.34参照〕
また、非環状構造とは、直鎖状構造又は分岐状構造を意味する。
【0066】
本発明の共重合体として、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体を製造する場合、共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物を単量体として用いる重合工程を経て、本発明の共重合体を製造することができる。
本発明の共重合体として、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位の3つの単位からなる三元共重合体を製造する場合、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体として用いる重合工程を経て、本発明の共重合体を製造することができる。
【0067】
本発明の共重合体の製造方法は、さらに、必要に応じ、カップリング工程、洗浄工程、及びその他の工程を経てもよい。
以下、三元共重合体を製造する場合を代表して、本発明の共重合体の製造方法について説明する。
【0068】
重合体の製造においては、重合触媒の存在下で、共役ジエン化合物を添加せずに非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のみを添加し、これらをまず重合させることが好ましい。特に後述の触媒組成物を使用する場合には、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物より共役ジエン化合物の方が、反応性が高いことから、共役ジエン化合物の存在下で非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のいずれか一方または両方を重合させにくい。また、先に共役ジエン化合物を重合させ、後に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を付加的に重合させることも、触媒の特性上困難となり易い。
【0069】
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0070】
重合工程は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。
一段階の重合工程とは、重合させる全ての種類の単量体、即ち、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物、及びその他の単量体、好ましくは、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、及び芳香族ビニル化合物を一斉に反応させて重合させる工程である。
また、多段階の重合工程とは、1種類又は2種類の単量体の一部又は全部を最初に反応させて重合体を形成し(第1重合段階)、次いで、第1重合段階で添加しなかった種類の単量体、第1重合段階で添加した単量体の残部等を添加して重合させる1以上の段階(第2重合段階~最終重合段階)を行って重合させる工程である。特に、本発明の共重合体の製造では、重合工程を多段階で行うことが好ましい。
【0071】
重合工程において、重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。また、上記重合反応の圧力は、共役ジエン化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。
また、重合反応の反応時間も特に制限がなく、例えば、1秒~10日の範囲が好ましいが、重合触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
また、共役ジエン化合物の重合工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0072】
重合工程は、多段階で行うことが好ましい。より好ましくは、少なくとも芳香族ビニル化合物を含む第1単量体原料と、重合触媒とを混合して重合混合物を得る第1工程と、前記重合混合物に対し、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む第2単量体原料を導入する第2工程とを実施することが好ましい。さらに、第1単量体原料が共役ジエン化合物を含まず、且つ第2単量体原料が共役ジエン化合物を含むことがより好ましい。
【0073】
第1工程で用いる第1単量体原料は、芳香族ビニル化合物とともに、非共役オレフィン化合物を含有してもよい。また、第1単量体原料は、使用する芳香族ビニル化合物の全量を含有してもよく、一部のみを含有してもよい。また、非共役オレフィン化合物は、第1単量体原料及び第2単量体原料の少なくともいずれかに含有される。
【0074】
第1工程は、反応器内で、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。第1工程における温度(反応温度)は、特に制限はないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。また、第1工程における圧力は、特に制限はないが、芳香族ビニル化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。また、第1工程に費やす時間(反応時間)は、重合触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができるが、例えば、反応温度を25~80℃とした場合には、5分~500分の範囲が好ましい。
【0075】
第1工程において、重合混合物を得るための重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサノン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0076】
第2工程で用いる第2単量体原料は、共役ジエン化合物のみ、又は、共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物、又は、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物、又は、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物であることが好ましい。
なお、第2単量体原料が、共役ジエン化合物以外に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1つを含む場合には、予めこれらの単量体原料を溶媒等と共に混合した後に重合混合物に導入してもよく、各単量体原料を単独の状態から導入してもよい。また、各単量体原料は、同時に添加してもよく、逐次添加してもよい。
第2工程において、重合混合物に対して第2単量体原料を導入する方法としては、特に制限はないが、各単量体原料の流量を制御して、重合混合物に対して連続的に添加すること(所謂、ミータリング)が好ましい。ここで、重合反応系の条件下で気体である単量体原料(例えば、室温、常圧の条件下における非共役オレフィン化合物としてのエチレン等)を用いる場合には、所定の圧力で重合反応系に導入することができる。
【0077】
第2工程は、反応器内で、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。第2工程における温度(反応温度)は、特に制限はないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、反応温度を上げると、共役ジエン単位におけるシス-1,4結合の選択性が低下することがある。また、第2工程における圧力は、特に制限はないが、共役ジエン化合物等の単量体を十分に重合反応系に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。また、第2工程に費やす時間(反応時間)は、重合触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができるが、例えば、0.1時間~10日の範囲が好ましい。
また、第2工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合反応を停止させてもよい。
【0078】
ここで、上記の共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物の重合工程は、触媒成分として、下記(a)~(f)成分の1種以上の存在下で、各種単量体を重合させる工程を含むことが好ましい。なお、重合工程には、下記(a)~(f)成分を1種以上用いることが好ましいが、下記(a)~(f)成分の2種以上を組み合わせて、触媒組成物として用いることがさらに好ましい。
(a)成分:希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物
(b)成分:有機金属化合物
(c)成分:アルミノキサン
(d)成分:イオン性化合物
(e)成分:ハロゲン化合物
(f)成分:置換又は無置換のシクロペンタジエン(シクロペンタジエニル基を有する化合物)、置換又は無置換のインデン(インデニル基を有する化合物)、及び、置換又は無置換のフルオレン(フルオレニル基を有する化合物)から選択されるシクロペンタジエン骨格含有化合物
上記(a)~(f)成分については、例えば、国際公開第2018/092733等を参照することによって、重合工程に用いることができる。
【0079】
カップリング工程は、重合工程において得られた共重合体の高分子鎖の少なくとも一部(例えば、末端)を変性する反応(カップリング反応)を行う工程である。
カップリング工程において、重合反応が100%に達した際にカップリング反応を行うことが好ましい。
カップリング反応に用いるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)等のスズ含有化合物;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)が、反応効率と低ゲル生成の点で、好ましい。
なお、カップリング反応を行うことにより、共重合体の数平均分子量(Mn)を増加することができる。
【0080】
洗浄工程は、重合工程において得られた共重合体を洗浄する工程である。
なお、洗浄に用いる媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられるが、重合触媒としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸等)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。添加量が15mol%以下であることで、酸が共重合体中に残存しにくく、組成物の混練及び加硫時の反応に悪影響を及ぼしにくい。
この洗浄工程により、共重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
【0081】
ポリマー成分中の本発明の共重合体の含有量は、ポリマー成形体の破断強度の観点から、10~100質量%であることが好ましく、30~100質量%であるであることがより好ましく、51~100質量%であることが更に好ましく、70~100質量%であることがより更に好ましい。
【0082】
[樹脂成分]
ポリマー成分は、更に、樹脂成分を含有していてもよい。
樹脂成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル等が挙げられる。樹脂成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0083】
[ゴム成分]
ポリマー成分は、ジエン系ゴム等のゴム成分を更に含んでいてもよい。
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムが挙げられる。
合成ジエン系ゴムは、具体的には、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル-ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
ジエン系ゴムは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。また、ジエン系ゴムは変性されていてもよい。
ゴム成分は、非ジエン系ゴムを含んでいてもよい。
【0084】
[各種成分]
本発明の組成物には、本発明の共重合体及び化合物(A)以外に、例えば、樹脂分野及びゴム分野で一般に用いられる成分、例えば、繊維;充填剤;老化防止剤;軟化剤;ステアリン酸、亜鉛華、架橋促進剤及び架橋剤を含む架橋パッケージ;樹脂;紫外線吸収剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら各種成分としては、市販品を好適に使用することができる。
【0085】
(繊維)
繊維は特に限定されず、ガラス繊維、セルロース繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、石膏繊維を目的に応じて選択することができる。中でも、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、及びセルロース繊維がより好ましい。
【0086】
(充填剤)
充填剤としては、カーボンブラック及び無機充填剤が挙げられる。
組成物が、ゴム成分を含む場合、充填剤を更に含むことで、加硫ゴムの機械的強度を向上することができ、ポリマー成形体の破断強度を向上することができる。
カーボンブラックの種類は、特に制限されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が挙げられ、HAF、ISAF、及びSAFが好ましい。
無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物が挙げられ、中でもシリカが好ましい。シリカの種類は、特に制限はなく、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ等が挙げられる。充填剤としてシリカを含有する場合、本発明の組成物中でのシリカの分散性を向上させるために、組成物は、更に、シランカップリング剤を含んでもよい。
【0087】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、例えば、アミン-ケトン系化合物、イミダゾール系化合物、アミン系化合物、フェノール系化合物、硫黄系化合物及びリン系化合物等が挙げられる。
【0088】
(軟化剤)
軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、ナフテンオイル、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリンなどのワックス類等が挙げられる。これら軟化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
(架橋剤)
架橋剤は、特に制限はなく、通常、過酸化物、硫黄、オキシム、アミン、紫外線硬化剤等が挙げられる。
本発明の共重合体は、共役ジエン単位を含むことから、硫黄により架橋(加硫)することができる。硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。
【0090】
(架橋促進剤)
本発明の組成物が、ゴム成分を含む場合、ゴム成分の加硫を促進するために、架橋促進剤(加硫促進剤)を含んでいてもよい。
加硫促進剤としては、例えば、グアジニン系、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、アルデヒドアミン系、チオカルバミン酸塩系等が挙げられる。
【0091】
<組成物の製造方法>
本発明の組成物は、本発明の共重合体及び化合物(A)のほか、老化防止剤等の各成分を配合して、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー、単軸押出混練機、2軸押出混練機等の混練機を用いて混練することによって、製造することができる。
本発明の組成物の製造で配合する各成分は、本発明の組成物中の各成分の含有量として示した量を配合量として配合することが好ましい。
各成分の混練は、全一段階で行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0092】
押出混練機により溶融混練して、本発明の組成物を押出した場合、押し出された組成物は、直接切断してペレットにしてもよいし、ストランドを形成した後、ストランドをペレタイザーで切断してペレットにしてもよい。ペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得る。
【0093】
<ポリマー成形体>
本発明のポリマー成形体は、本発明の組成物を用いてなる。
本発明の組成物は、加硫温度と同等の高温(例えば、140℃)で混練しても、共重合体のゲル化が抑制され、ポリマー成形体は破断強度に優れる。
ポリマー成形体は、ポリマー成分中の主成分が樹脂成分である場合、樹脂成形体又は樹脂製品と称することができ;ポリマー成分中の主成分がゴム成分である場合、ゴム成形体又はゴム製品と称することができる。ここで、ポリマー成分中の主成分とは、ポリマー成分中の含有量が最も多い成分を意味し、特に、ポリマー成分中の含有量が50質量%を超える成分を指す。
【0094】
本発明のポリマー成形体は、破断強度に優れることから、種々の製品に適用することができる。例えば、タイヤ及び自動車用部品(自動車用シート、自動車用電池(リチウムイオン電池等)、ウェザーストリップ類、ホースチューブ類、防振ゴム類、ケーブル類、シール材等)に好適である。
その他、本発明のポリマー成形体は、コンベアベルト、クローラー、防振ゴム、ホース、樹脂配管、吸音材、寝具、事務機器用精密部品(OAローラー)、自転車用フレーム、ゴルフボール、テニスラケット、ゴルフシャフト、樹脂添加剤、フィルター、接着剤、粘着剤、インキ、医療器具(医療用チューブ、バック、マイクロニードル、ゴムスリーブ、人工臓器、キャップ、パッキン、注射器ガスケット、薬栓、義足、義肢)、化粧品(UVパウダー、パフ、容器、ワックス、シャンプー、コンディショナー)、洗剤、建築材料(フロア材、制震ゴム、免震ゴム、建築フィルム、吸音材、防水シート、断熱材、目地材、シール材)、包装材、液晶材料、有機EL材料、有機半導体材料、電子材料、電子デバイス、通信機器、航空機部品、機械部品、電子部品、農業用資材、電線、ケーブル、繊維(ウェアラブル基盤)、日用品(歯ブラシ、靴底、眼鏡、疑似餌、双眼鏡、玩具、防塵マスク、ガーデンホース)、ロボット部品、光学部品、道路資材(アスファルト、ガードレール、ポール、標識)、保護具(靴、防弾チョッキ)、電気機器外装部品、OA外装部品、ソール、シール材等に好適である。
なお、上記において、OAはoffice automation、UVはultraviolet、ELはelectro- luminescenceを意味する。
【0095】
本発明のポリマー成形体は、例えば、ペレットにした本発明の組成物を、射出成形、押出し成形等により成形することで製造することができる。
また、本発明の組成物を、既述の架橋剤等を用いて架橋してもよいし、架橋剤を用いずに、電子線架橋、マイクロ波照射等をして架橋して、ポリマー成形体を得てもよい。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0097】
<組成物の調製>
ラボプラストミル(東洋精機社製)に、表2に示す配合で各成分を投入し、250℃で5分間、50rpmで混練し、組成物を調製した。
表2中の成分の詳細は次のとおりである。
共重合体(P):下記製造方法により製造した三元共重合体
化合物(As):式(4)で表される構造の化合物、住友化学社製、商品名「Sumilizer GS」
化合物(Ap):式(5)で表される構造の化合物、住友化学社製、商品名「Sumilizer GP」
化合物(Am):式(3)で表される構造の化合物、住友化学社製、商品名「Sumilizer GM」
老化防止剤 NS-6:2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック NS-6」
老化防止剤 6C:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック 6C」
【0098】
なお、表2に示す1%質量損失温度及び5%質量損失温度は、メーカーのカタログ値である。また、表2中、実施例6の「244/285」は、1%質量損失温度が244℃の化合物と285℃の化合物の2種を用いたことを意味し、「284/339」は5%質量損失温度が284℃の化合物と339℃の化合物の2種を用いたことを意味する。
【0099】
〔共重合体(P)の製造〕
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、82gのスチレンと680gのトルエンを加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、0.037mmolのモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]、0.037mmolのジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]を仕込み、25gのトルエンを加えて触媒溶液とした。その触媒溶液を前記耐圧ステンレス反応器に加え、60℃に加温した。
【0100】
次いで、エチレンを圧力0.7MPaでその耐圧ステンレス反応器に投入し、75℃で計2時間共重合を行った。連続的に2g/min.の速度で、60gの1,3-ブタジエンを含む240gのトルエン溶液を加えた。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)を5質量%含む1mLのイソプロパノール溶液をその耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体(P)を得た。
得られた共重合体(P)は、表1に示す物性を有した。
【0101】
【0102】
共重合体(P)は、13C-NMRスペクトルチャートにおいて、10~24ppmにピークが観測されなかったことから、主鎖が非環状構造のみからなることを確認した。
共重合体(P)の物性は、下記の方法で測定した。
【0103】
〔共重合体(P)の物性測定方法〕
(1)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、ピークトップ分子量(Mp)及び分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC-8121GPC/HT、カラム:東ソー社製GMHHR-H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、共重合体のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は40℃である。
【0104】
(2)ブタジエン単位、エチレン単位、スチレン単位の含有量
共重合体中のエチレン単位、ブタジエン単位、スチレン単位の含有量(mol%)を、1H-NMRスペクトル(100℃、d-テトラクロロエタン標準:6ppm)の各ピークの積分比より求めた。
【0105】
(3)融点
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、共重合体の融点を測定した。
【0106】
(4)結晶化度
共重合体サンプルを、-150℃~150℃まで、10℃/minで昇温し、吸熱ピークエネルギー(ΔH1)を測定した。また、同様にして、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)を測定した。前記ポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)に対する、共重合体の吸熱ピークエネルギー(ΔH1)の比率(ΔH1/ΔH0)から、エチレン単位(非共役オレフィン単位)に由来する結晶化度(%)を算出した。
なお、共重合体サンプルの吸熱ピークエネルギーと、ポリエチレンの結晶融解エネルギーは、示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)で測定した。
【0107】
(5)主鎖構造の確認
合成した共重合体について、13C-NMRスペクトルを測定した。
【0108】
<組成物の評価>
実施例及び比較例の組成物を、それぞれ3mgとり、5mlのトリクロロベンゼンに140℃で溶解し、140℃の高温GPC(東洋精機社製)で測定した。得られたRIの面積値よりサンプルのゲル量を算出した。結果を表2に示す。
【0109】
<ポリマー成形体の製造と評価>
1.破断強度
40t(トン)のプレス機を用いて、実施例及び比較例の組成物を、それぞれ、120℃で加圧し、2mm厚のシート状に成形して、ポリマー成形体とした。
得られたポリマー成形体の破断強度は、引張強さ(Tb;Tensile Strength at break)及び破断伸び(Eb;Elongation at break)の観点から評価した。
【0110】
引張強さ(Tb)は、JIS K 6251(2017年)に基づいて、引張試験装置(インストロン社製)を使用し、ポリマー成形体25℃で100%伸長し、破断させるのに要した最大の引張り力として測定した。
破断伸び(Eb)は、ポリマー成形体を、25℃にて100mm/分の速度で引張り、ポリマー成形体が破断したときの長さを測定し、引っ張る前の長さ(100%)に対する長さとして求めた。
結果を表2に示す。
【0111】
2.HF(靭性)
靭性の簡易的な評価法として、破断強度で得られた引張強さ(Tb)及び破断伸び(Eb)を下記式に当てはめ、HF〔MPa・%〕を算出した。
HF=(Tb×Eb)/2
比較例2で得られたHFの値を100として指数化した。指数が大きいほど、ポリマー成形体は耐熱性に優れる。
【0112】
【0113】
ポリマー成分として共重合体(P)を含み、更に化合物(A)を含む実施例の組成物は、化合物(A)を含まない比較例1~2の組成物に比べ、ゲル量が顕著に少なく、高温での混練で共重合体(P)のゲル化が抑制された。更に、実施例1~6のポリマー成形体の破断強度は、比較例1~2よりも優れた。
このように、本発明の共重合体と化合物(A)とを含む組成物は、共重合体のゲル化が抑制され、また、破断強度の大きなポリマー成形体を製造することができる。