(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】圧縮機、冷凍冷蔵機器および空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20231215BHJP
F04B 39/02 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
F04C29/02 311B
F04B39/02 G
(21)【出願番号】P 2019226630
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】野々口 瑛士
(72)【発明者】
【氏名】小野口 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】秋山 智仁
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-062858(JP,A)
【文献】特開平05-126072(JP,A)
【文献】実開平01-071190(JP,U)
【文献】特開2008-291797(JP,A)
【文献】特開2016-217273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/02
F04B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮機であって、
容器と、
前記容器内に収納され、前記流体を圧縮する圧縮機構と、
前記容器内を第1の空間と第2の空間とに仕切る仕切板と
を含み、
前記圧縮機構は、前記第1の空間内に配置され、圧縮した流体を前記第1の空間内へ吐出し、
前記仕切板は、前記圧縮した流体を前記第1の空間から前記第2の空間を介して外部へ排出するための第1の通路と、前記圧縮機構へ供給する油を、前記第1の空間と前記第2の空間との間で移動可能にする第2の通路と、前記第1の通路の面積を、該第1の通路の閉鎖割合を変えることにより
調整した閉鎖部とを有
し、
前記閉鎖部は、前記仕切板に2本以上の切り込みを入れて片持ち梁状に形成され、
前記第1の通路は、前記閉鎖部を前記第1の空間側または前記第2の空間側に曲げることにより形成され、
前記第1の通路の面積は、前記閉鎖部の曲げる位置もしくは角度またはその両方を変えることにより調整される、圧縮機。
【請求項2】
請求項
1に記載の圧縮機を含む、冷凍冷蔵機器。
【請求項3】
請求項
1に記載の圧縮機を含む、空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を圧縮する圧縮機、冷凍冷蔵機器および空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍冷蔵機器では、上部の冷凍・冷蔵室の空間を大きくとるために、下部に設置される圧縮機に横型(横置き)のロータリ圧縮機やスクロール圧縮機が使用されている。これらの圧縮機は、摺動部や軸受等を有することから、動作時の摩擦を低減させるべく冷凍機油が供給されている。
【0003】
横型の圧縮機には、密閉容器内を仕切板によって圧縮機構や電動機を有する第1の空間と冷凍機油が貯留される第2の空間とに分け、仕切板の下部に冷凍機油の通路が設けられ、上部に冷媒ガスの通路が設けられた圧縮機がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような圧縮機では、冷媒ガスの通路によって第1の空間と第2の空間との間に差圧を生じさせ、冷凍機油を第1の空間から第2の空間へ油の通路を通して流すことで、第1の空間と第2の空間との間に油面差を生じさせ、冷凍機油の貯留量を低減しつつ、適切に圧縮機構等へ供給できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、冷媒ガスの通路となる穴は、一定の大きさや数として形成されるため、押除量や冷媒の違い等により冷媒の循環量が異なる場合、異なる大きさや数の穴を有する仕切板を使用しなければ、適切に油面を調整することができないという問題があった。
【0007】
そこで、異なる大きさや数の穴を有する仕切板を使用しなくても、容易に冷凍機油の油面の高さを調整することが可能な圧縮機、冷凍冷蔵機器および空気調和装置の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、流体を圧縮する圧縮機であって、
容器と、
容器内に収納され、流体を圧縮する圧縮機構と、
容器内を第1の空間と第2の空間とに仕切る仕切板と
を含み、
圧縮機構は、第1の空間内に配置され、圧縮した流体を第1の空間内へ排出し、
仕切板は、圧縮した流体を第1の空間から第2の空間を介して外部へ排出するための第1の通路と、圧縮機構へ供給する油を、第1の空間と第2の空間との間で移動可能にする第2の通路と、第1の通路の面積を、該第1の通路の閉鎖割合を変えることにより調整可能な閉鎖部とを有する、圧縮機が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異なる大きさや数の穴を有する仕切板を使用しなくても、容易に冷凍機油の油面の高さを調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】本実施形態に係る圧縮機に用いられる仕切板の第1の例を示した図。
【
図8】本実施形態に係る圧縮機に用いられる仕切板の第2の例を示した図。
【
図9】本実施形態に係る圧縮機に用いられる仕切板の第3の例を示した図。
【
図10】本実施形態に係る圧縮機に用いられる仕切板の第4の例を示した図。
【
図11】本実施形態に係る圧縮機に用いられる仕切板の第5の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る圧縮機は、流体を圧縮する装置として、単体で使用し、また、いかなる装置やシステムにも搭載することができるが、ここでは、冷凍冷蔵機器内に搭載するものとして説明する。したがって、この圧縮機は、空気調和装置の室外機等に搭載されていてもよい。
【0012】
図1は、冷凍冷蔵機器の構成例を示した図である。
図1(a)は、冷凍冷蔵機器の外観を示した図で、
図1(b)は、その断面図である。冷凍冷蔵機器は、業務用の冷凍冷蔵庫であり、商品が収容される冷凍冷蔵室10と、圧縮機等の機械が収容される機械室11とを有する。冷凍冷蔵室10には、冷凍・冷蔵を要する商品が載置される複数の棚12が設けられ、天井には、ファン13および熱交換器である蒸発器14が設けられている。ここでは、ファン13および蒸発器14が天井に設けられているが、天井に限定されるものではない。また、冷凍冷蔵室10には、冷凍冷蔵室10内の温度を計測する温度センサ15が設けられている。冷凍冷蔵室10は、前面が開閉式のガラス戸等で覆われていてもよい。
【0013】
機械室11には、圧縮機16と、膨張器17と、熱交換器である凝縮器18と、ファン19とが設置される。圧縮機16は、商品を多く配置するために、機械室11の高さを低くし、冷凍冷蔵室10を大きくとるべく、横型の圧縮機が採用される。圧縮機16としては、部品数が少ないロータリ圧縮機やスクロール圧縮機が用いられる。膨張器17としては、例えば膨張弁が用いられる。
【0014】
機械室11には、ファン13、19や圧縮機16の運転を制御するための制御装置と、圧縮機16から出る冷媒の温度等を計測する各種センサとが設置される。制御装置は、温度センサ15により計測される温度が設定温度になるように圧縮機16の吐出側の温度や流量等を制御する。
【0015】
図2は、冷凍冷蔵機器が備える冷凍サイクルについて説明する図である。冷凍サイクルは、蒸発器14と、圧縮機16と、膨張器17と、凝縮器18と、アキュムレータ20とを冷媒配管21により接続し、冷媒が循環する1つの系として構成される。ファン13は、蒸発器14に近隣して設置され、冷凍冷蔵室10内の空気を吸い込み、蒸発器14へ供給する。蒸発器14は、ファン13により吸い込まれた空気と冷媒との間で熱交換を行い、空気を冷却する。
【0016】
ファン19は、凝縮器18に近隣して設置され、冷凍冷蔵機器の外部の空気を吸い込み、凝縮器18へ供給する。凝縮器18は、ファン19により吸い込まれた空気と冷媒との間で熱交換を行い、冷媒を冷却する。
【0017】
冷媒は、R134a(CH2FCF3)、R404A、R410A等を使用することができる。R404Aは、R125(C2HF3)、R134a、R143a(CF3CH3)の3成分からなる混合溶媒で、R410Aは、R32(CH2F2)、R125の2成分からなる混合溶媒である。なお、これらの冷媒は一例であるので、これらに限定されるものではない。
【0018】
冷凍冷蔵機器の電源が投入され、機器の運転が開始されると、圧縮機16が起動し、冷媒の循環が開始される。
【0019】
圧縮機16は、ガス状態の冷媒を吸い込み、断熱圧縮して高温、高圧にして吐出する。圧縮機16から吐出された冷媒は、凝縮器18へ送られる。凝縮器18は、ファン19により吸い込まれた空気により冷媒を冷却する。このとき、冷媒の少なくとも一部は凝縮する。凝縮器18により冷却された冷媒は、膨張器17へ送られる。膨張器17は、圧縮された冷媒を膨張させる。これにより、冷媒はさらに冷却される。このようにして冷却された冷媒は、蒸発器14へと送られる。
【0020】
蒸発器14は、ファン13により吸い込まれた空気の熱を、凝縮した冷媒を蒸発させることにより奪い、空気を冷却する。蒸発器14から排出された冷媒は、アキュムレータ20へ送られる。アキュムレータ20では、液状態の冷媒を除去し、ガス状態の冷媒のみを圧縮機16へ供給する。この動作を繰り返し、冷凍冷蔵室10内を設定温度になるように冷却する。
【0021】
図3は、圧縮機16の構成例を示した図である。圧縮機16は、スクロール圧縮機であり、密閉容器30と、回転軸31と、電動機32と、圧縮機構33とを含んで構成される。ここでは、スクロール圧縮機を例に挙げて説明するが、圧縮機は、同じ密閉容器や回転軸等を含むロータリ圧縮機であってもよい。
【0022】
密閉容器30は、回転軸31と、電動機32と、圧縮機構33とを内部に収容し、容器内には、冷凍機油34が貯留される。密閉容器30内には、第1の空間と第2の空間の2つの空間に仕切る仕切板35が設けられ、第1の空間に、回転軸31、電動機32、圧縮機構33が配置される。第1の空間は、電動機32が配置されるモータ室36と、圧縮機構33が配置されるポンプ室37とに区分される。第2の空間は、圧縮機構33が備える摺動部や軸受等に供給する冷凍機油34を貯留する油貯留室38とされる。
【0023】
密閉容器30は、冷媒を吸い込み、圧縮機構33へ供給するための吸込パイプ39と、圧縮した冷媒を吐出するための吐出パイプ40とを有している。密閉容器30は、中空円筒状の容器本体と、容器本体の両端を閉鎖する2つのチャンバとから構成されており、一方のチャンバ(第1のチャンバ)に吸込パイプ39が設けられ、他方のチャンバ(第2のチャンバ)に吐出パイプ40が設けられている。容器本体と2つのチャンバは、内部に回転軸31や電動機32等を配置した後、所定箇所を溶接する等して組み立てられる。
【0024】
回転軸31は、水平方向に長くされた密閉容器30の断面の中央部に配置される。回転軸31は、内部が中空とされ、一端が圧縮機構33に、他端が仕切板35により回転可能に支持される。回転軸31を回転可能に支持するために、圧縮機構33は、メイン軸受50を有し、仕切板35には、サブ軸受41が設けられる。
【0025】
回転軸31は、他端の開口部がキャップ部材42で覆われ、キャップ部材42には、冷凍機油を給油するための給油パイプ43が取り付けられている。給油パイプ43は、密閉容器30内の下方に貯留される冷凍機油を吸い上げるため、下方に向けて延びている。
【0026】
電動機32は、圧縮機構33を、回転軸31を介して回転駆動させるように構成されている。電動機32は、固定子32aと、回転子32bとを含んで構成される。固定子32aは、鉄心やコイル等で構成され、回転子32bは、永久磁石を含んで構成される。電動機32は、固定子32aのコイルに電流を流すことで電磁石を形成し、電流の向きを変えることで回転子32bを回転させる。なお、電動機32は、固定子32aが永久磁石を含み、回転子32bが鉄心やコイル等で構成されたものであってもよい。
【0027】
圧縮機構33は、メイン軸受50のほか、渦巻き状の羽根から構成される旋回スクロール51と、渦巻き状の羽根から構成される固定スクロール52とを含む。固定スクロール52に対して旋回スクロール51が旋回運動を行うことで冷媒を圧縮する。
【0028】
ここで、
図4を参照して、旋回スクロール51と、固定スクロール52とによる冷媒の圧縮の原理について簡単に説明する。固定スクロール52は、静止した状態で固定され、回転軸31の回転によって旋回スクロール51のみが旋回する。
図4(a)は、圧縮を開始した状態を示した図である。冷媒は、径方向の中心から離れた縁部(斜線に示す部分)から取り込まれ、中心の吐出口54から吐出される。斜線に示す部分が、圧縮室53を構成する。
【0029】
図4(b)は、旋回スクロール51が90°旋回した状態を、
図4(c)は、180°旋回した状態を、
図4(d)は、270°旋回した状態をそれぞれ示した図である。旋回スクロール51が旋回するたびに、圧縮室53が中心へ向けて移動し、その容積も小さくなっていく。このため、圧縮室53内の冷媒の体積も小さくなり、冷媒が圧縮される。
【0030】
再び
図3を参照して、冷媒は、黒の矢線で示すように、圧縮機構33から第1のチャンバと圧縮機構33とにより形成される空間(吐出空間)60へ吐出される。吐出空間60へ吐出された冷媒は、圧縮機構33に設けられる冷媒通路を通して電動機32と圧縮機構33との間の一次空間61へ送られ、電動機32に設けられる冷媒通路62と仕切板35を通して、油貯留室38となる二次空間63へ送られる。
【0031】
冷凍機油34は、回転軸31とメイン軸受50およびサブ軸受41、旋回スクロール51と固定スクロール52のような2つの部材が摺動する箇所の摩擦を低減し、その部分のシール性を向上させる潤滑油として使用される。そのため、給油パイプ43を通してくみ上げられ、薄く太い矢線で示すように、一部が回転軸31とサブ軸受41との間に供給され、残りが回転軸31の中空の内部を通して回転軸31とメイン軸受50との間や旋回スクロール51と固定スクロール52との間に供給される。余剰の冷凍機油34は、重力によって底に貯留される油溜りに落下する。
【0032】
仕切板35は、冷媒を第1の空間から第2の空間を介して外部へ排出するための第1の通路35aと、圧縮機構33へ供給する冷凍機油34を、第1の空間と第2の空間との間で移動可能にする第2の通路35bとを有する。
【0033】
圧縮機16が停止しているときは、第1の空間と第2の空間における冷凍機油34の油面が同じ高さになる。第1の空間と第2の空間とに差圧が生じていないからである。
【0034】
圧縮機16を起動させた後は、第1の通路35aにより冷媒に圧力損失が発生し、第1の空間と第2の空間との間に差圧を生じる。すると、冷凍機油34の油面は、圧力が高い側である第1の空間では低くなり、圧力が低い側である第2の空間では高くなる。第2の空間での油面を高くすることで、冷凍機油34の貯留量を減らしても、圧縮機構33へ適切に冷凍機油34を供給することができる。
【0035】
冷凍機油34は、潤滑油としての機能のほか、長時間使用されるため、析出物を発生させない等の安定性を有し、冷媒とともに系内に循環されるため、凝縮器18等の管壁へ付着せずに圧縮機16へ戻る冷媒溶解性を有する等、多くの性状が求められる。このため、冷凍機油34は、コストがかかる部品の一つである。しかしながら、この圧縮機16では、冷凍機油34の貯留量を減らすことができるので、コストを低減させることができる。
【0036】
圧縮機16は、起動中、回転軸31の周りに設けられる電動機32の回転子32bが回転する。このため、圧縮機16の起動中は、冷凍機油34の油面が回転子32bに接触しない高さであることが望ましい。
【0037】
回転軸31の内部の圧力は、第2の空間の圧力と圧縮機構33の吸込み圧力との間の圧力であり、第2の空間の圧力より低い。このため、回転軸31の内部へは、給油パイプ43を通して冷凍機油34が吸い込まれる。このため、第2の空間内の油面は、下方に延びる給油パイプ43の先端の給油口の高さより高くなければならない。また、冷媒が仕切板35の第1の通路35aを通して流れるように、第1の通路35aの高さより低くなければならない。
【0038】
図5は、油面差について説明する図である。第1の空間および第2の空間における油面の高さの差(油面差)Δhは、下記式(1)により算出することができ、冷媒ガスの通路面積Aと冷媒ガスの流量Gによって変動する。
【0039】
【0040】
上記式1中、Nは回転数、ζは抵抗係数、gは重力加速度、Psは吸入圧力、Pdは吐出圧力、ρは吸入ガス密度、nはポリトロープ指数(断熱指数)を示す。流量Gは、回転軸31が一回転するときの冷媒循環量である。
【0041】
冷媒ガスの通路面積Aは、仕切板35に設けられた第1の通路35aの断面積に依存し、流量Gは、押除量の影響を受ける。したがって、押除量ごとに第1の通路35aの断面積を所望の大きさとすることで、適切な油面差Δhに調整することができる。押除量は、旋回スクロール51および固定スクロール52が冷媒を単位時間に排除する量である。
【0042】
流量Gは、押除量のほか、冷媒の種類等によっても変わる。ちなみに、圧縮機構33が吐出する冷媒の量は、押除量に容積効率を乗算したものである。多様な押除量や冷媒の種類に合わせる場合、多種多様な仕切板35が必要となる。
【0043】
そこで、第1の通路35aの面積を、第1の通路35aを閉鎖する閉鎖部による閉鎖割合により調整する。具体的な例を挙げて説明する前に、
図6を参照して、従来の圧縮機に使用される仕切板について簡単に説明しておく。仕切板100は、中央部に回転軸が通される円形の軸穴101を有し、軸穴101の上側であって、円弧状の外縁部に第1の通路となる2つのガス穴102を備えている。また、仕切板100は、軸穴101の下側に第2の通路となる液穴103を備えている。
【0044】
液穴103は、仕切板100を介して第1の空間と第2の空間との間で冷凍機油が充分に移動可能な大きさとされている。ガス穴102は、圧縮機の起動中に第2の空間における冷凍機油の油面が所定範囲の高さになるように、その大きさや穴の数等が決められている。
【0045】
圧縮機は、顧客のニーズに合わせて押除量や冷媒の種類の違いにより多くの機種が存在している。押除量や冷媒の種類が異なると、冷媒の循環量が変わり、第1の空間と第2の空間の差圧を一定の値にしようとすると、循環量に応じてガス穴102の大きさや穴の数等を変更しなければならない。多種多様な仕切板を用意することは可能であるが、その都度穴の大きさや穴の数等を変更しなければならず、多大な製造コストがかかる。このため、ガス穴については、多様にはなっておらず、共用化している。
【0046】
図7は、第1の通路35aの面積を、第1の通路35aの閉鎖割合を変えることにより調整可能な閉鎖部を有する仕切板35の第1の例を示した図である。仕切板35は、従来の仕切板100と同様、中央部に軸穴70を有し、軸穴70の下側に第2の通路35bとなる液穴71と有している。軸穴70には、回転軸31に加え、サブ軸受41の一部が通される。液穴71は、充分な量の冷凍機油34が第1の空間と第2の空間との間で移動可能な大きさとされる。
【0047】
第1の通路35aとなるガス穴72は、円形の仕切板35の外周部から中心に向けて2本の切り込みを入れ、片持ち梁状に形成された閉鎖部73に対し、第1の空間側または第2の空間側へ曲げ加工を施すことにより形成される。このような構成では、ガス穴72の面積を閉鎖部73による閉鎖割合、すなわち閉鎖部73の曲げの角度を変えることにより調整することができる。
【0048】
2本の切り込みは、円形の仕切板35の頂部(最上部)を中央とし、円弧方向の両側へ一定の距離だけ移動した位置のそれぞれから、仕切板35の中心(円の中心)に向けて所定の長さほど切断することにより形成される。ここでは、頂部を中央とし、円弧方向の両側へ一定の距離だけ移動した位置のそれぞれから径方向へ切り込みを入れているが、これに限られるものではなく、2本の切り込みは、冷凍機油34の油面より高い位置であればどの位置に形成されてもよい。
【0049】
このように、その都度穴の大きさや穴の数を変更することなく、閉鎖部73の曲げの角度を変えるのみでガス穴72の面積を調整することができるので、多種多様な仕切板を用意する必要がなくなり、製造コストを低減させることができる。
【0050】
図7に示す例では、閉鎖部73を、第2の空間側へ根元から略90度折り曲げてガス穴72を形成している。閉鎖部73を曲げる角度は、仕切板35の第1の空間側または第2の空間側の面に対する角度であり、90度以上折り曲げることで、ガス穴72が最も大きい面積となる。一方、角度は、0度に近づくほど、ガス穴72の面積が小さくなる。
【0051】
閉鎖部73の折り曲げる方向は、第1の空間側であっても、第2の空間側であってもよいが、角度が90度未満である場合、第2の空間側の方が好ましい。角度が90度未満である場合、閉鎖部73が上側を向いた状態となり、冷媒に同伴して流れてくる冷凍機油34が、閉鎖部73に沿って上側の密閉容器30の内側に衝突し、液滴となって落下し、下側の油溜りに戻るからである。これにより、冷凍サイクルを循環する冷凍機油34の量(オイルレート)を減少させることができる。
【0052】
図8は、仕切板35の第2の例を示した図である。仕切板35は、
図6に示した仕切板35と同様、中央部に軸穴70を有し、軸穴70の下側に第2の通路35bとなる液穴71と有している。軸穴70には、回転軸31に加え、サブ軸受41の一部が通され、液穴71は、充分な量の冷凍機油34が第1の空間と第2の空間との間で移動可能な大きさとされている。
【0053】
図8に示す例では、閉鎖部73を、その根元ではなく、径方向の途中の位置で第2の空間側へ略45度折り曲げてガス穴72を形成している。したがって、閉鎖部73は、曲げる角度だけでなく、曲げる位置を変えることにより、ガス穴72の面積を調整することができる。なお、角度と位置は、いずれか一方のみを変えてもよいが、その両方を変えることにより、ガス穴72の面積を細かく調整することができる。
【0054】
図9は、仕切板35の第3の例を示した図である。閉鎖部73が1つのみでは、2本の切り込みを離して設けておくことで、ガス穴72の面積を大きくしたい場合にも対応が可能である。しかしながら、2本の切り込みの位置が離れるほど、閉鎖部73が円弧方向に幅広となり、曲げ加工が施しにくくなる。
【0055】
そこで、円弧方向に一定の間隔で3本以上の切り込みを入れ、閉鎖部73を2以上形成する。これにより、曲げ加工も容易で、ガス穴72の面積を大きい方向へも、小さい方向へも調整することができ、また、径方向の途中から折り曲げることで、微調整も可能となる。
【0056】
図10は、仕切板35の第4の例を示した図である。
図9に示す例では、予め所定の位置に、一定の大きさの穴74を有する仕切板35を用い、閉鎖部として閉鎖板75を用いて穴74を閉鎖する割合を変更するようにしている。ここでは、穴74が2つ設けられているが、穴74は、2つに限られるものではなく、1つであってもよいし、3以上であってもよい。
【0057】
閉鎖板75は、仕切板35の外周および軸穴70の形状に合わせて円弧形状とされている。閉鎖板75は、金属やプラスチック樹脂等からなる板で、穴74の一部を覆うように取り付けられる。閉鎖板75は、仕切板35の第1の空間側または第2の空間側の面に接着もしくは溶接により、またはボルト等の連結手段を用いて取り付けることができる。
【0058】
図11は、仕切板35の第5の例を示した図である。
図11に示す例は、
図10に示した閉鎖板75を用いるものであるが、閉鎖板75が、仕切板35に設けた穴と同じ形状および大きさの穴76を有している。閉鎖割合は、穴74と穴76の位置のずれ量を変えることにより調整することができる。穴74の中心位置と穴76の中心位置とを合わせた状態、すなわちずれ量が0のときが、全開の状態である。閉鎖割合は、ずれ量が大きくなるにつれて、閉鎖板75の穴76以外の部分が仕切板35の穴74を覆っていくため、増加していく。
【0059】
閉鎖板75は、仕切板35の第1の空間側または第2の空間側の面に接着もしくは溶接により、またはボルト等の連結手段を用いて取り付けることができる。この場合も、穴74は、1つに限られるものではなく、2以上設けられていてもよい。閉鎖板75も、これに対応して、穴76が2以上設けられていてもよい。
【0060】
穴74、76がそれぞれ周方向に2以上設けられる場合、閉鎖板75は、周方向に対して垂直な方向である径方向にずらし、穴74と穴76の位置のずれ量を変えてもよい。これにより、穴74を閉鎖板75の穴76以外の部分で確実に覆い、閉鎖割合を調整することができる。
【0061】
これまで本発明の圧縮機、冷凍冷蔵機器および空気調和装置について上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
10…冷凍冷蔵室
11…機械室
12…棚
13…ファン
14…蒸発器
15…温度センサ
16…圧縮機
17…膨張器
18…凝縮器
19…ファン
20…アキュムレータ
21…冷媒配管
30…密閉容器
31…回転軸
32…電動機
32a…固定子
32b…回転子
33…圧縮機構
34…冷凍機油
35…仕切板
35a…第1の通路
35b…第2の通路
36…モータ室
37…ポンプ室
38…油貯留室
39…吸込パイプ
40…吐出パイプ
41…サブ軸受
42…キャップ部材
43…給油パイプ
50…メイン軸受
51…旋回スクロール
52…固定スクロール
53…圧縮室
54…吐出口
60…吐出空間
61…一次空間
62…冷媒通路
63…二次空間
70…軸穴
71…液穴
72…ガス穴
73…閉鎖部
74…穴
75…閉鎖板
76…穴
100…仕切板
101…軸穴
102…ガス穴
103…液穴