IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】溶融加工性フルオロポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/26 20060101AFI20231215BHJP
   C08F 214/22 20060101ALI20231215BHJP
   C08F 216/14 20060101ALI20231215BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20231215BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20231215BHJP
   F16L 9/12 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
C08F214/26
C08F214/22
C08F216/14
C08L27/18
F16L11/04
F16L9/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019555130
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2018059000
(87)【国際公開番号】W WO2018189091
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】17165867.7
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バッシ, マッティア
(72)【発明者】
【氏名】マラーニ, アレッシオ
(72)【発明者】
【氏名】カペリュシュコ, ヴァレーリー
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/028582(WO,A1)
【文献】特表2004-501991(JP,A)
【文献】特開平11-171934(JP,A)
【文献】特表2005-528244(JP,A)
【文献】米国特許第04546141(US,A)
【文献】西独国特許出願公開第03832828(DE,A1)
【文献】特開2017-020013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-299/08
C08L 1/00-101/16
F16L 9/00- 11/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー[ポリマー(F)]であって、
-60モル%~80モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
-15モル%~35モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
-1モル%~5モル%の、式CF=CF-O-Cのペルフルオロプロピルビニルエーテルに由来する繰り返し単位
からなり、
前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものである、フルオロポリマー[ポリマー(F)]。
【請求項2】
前記ポリマー(F)は、170℃~300℃融点(T)を有する、請求項1に記載のポリマー(F)。
【請求項3】
前記ポリマーは、ASTM D 1238[MFI(300℃/5kg)]に従い、300℃にて5kg荷重で測定すると、少なくとも0.2g/10分、かつ/又は最大20g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する、請求項1又は2に記載のポリマー(F)。
【請求項4】
前記ポリマーは、ASTM D 3307の標準的な方法に従い200℃にて測定すると、350%を超える破断点伸びを有し、かつ/又は、以下の方程式:
SHI=[σ(200%ひずみ)-σ(100%ひずみ)]/[ε(200%ひずみ)-ε(100%ひずみ)]
[式中、σは材料に加えられた応力を表し、εはひずみを表し、応力及びひずみは、ASTM D 3307の標準的な方法に従い測定された]
に従い測定すると、23℃の温度にて少なくとも2.5MPaのひずみ硬化インデックス(SHI)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー(F)。
【請求項5】
なくとも1種の請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー(F)を含む、水性ラテックス。
【請求項6】
前記水性ラテックスが、少なくとも1種の界面活性剤[界面活性剤(S)]を更に含む、請求項5に記載の水性ラテックス。
【請求項7】
前記界面活性剤(S)は、
-含水素界面活性剤[界面活性剤(H)]、
-フッ素化界面活性剤[界面活性剤(F)]、及び
-それらの混合物
からなる群から選択される、請求項6に記載の水性ラテックス。
【請求項8】
なくとも1種の請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー(F)を含む組成物[組成物(C)]。
【請求項9】
なくとも1種の請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー(F)、又は請求項8に記載の組成物(C)を含む物品。
【請求項10】
なくとも1種の請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー(F)、又は請求項8に記載の組成物(C)を含むパイプ。
【請求項11】
石油及びガス用途における、請求項10に記載のパイプの使用。
【請求項12】
自動車用途における、請求項10に記載のパイプの使用。
【請求項13】
前記パイプがフレキシブルライザーである、請求項10に記載のパイプ。
【請求項14】
前記フレキシブルライザーが非接着フレキシブルライザーである、請求項13に記載のパイプ。
【請求項15】
前記フレキシブルライザーが接着フレキシブルライザーである、請求項13に記載のパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融加工性フルオロポリマー、前記溶融加工性フルオロポリマーを含む組成物、前記溶融加工性フルオロポリマーを製造するための方法、及び、様々な用途における前記溶融加工性フルオロポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高い機械的耐性及び高い耐化学性の両方を有しながら、高温にて低い透過性を示すフルオロポリマーから作製した、深海油田で使用するのに好適なパイプが、当技術分野において既知である。
【0003】
例えば、米国特許第8997797号明細書(ダイキン工業株式会社)(2015年7月4日公開)は、ライザーパイプの製造に好適な、170℃にて高い結晶性及び高い貯蔵弾性率を有するフルオロポリマーであって、前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、並びにテトラフルオロエチレン及びフッ化ビニリデン以外のエチレン系不飽和モノマーに由来する共重合単位からなる、フルオロポリマーについて開示している。これらのターポリマーの中でも、特に、(j)(ペル)フルオロアルキルエチレンモノマー(例えば、CH=CH-C;CH=CH-C13)に由来する繰り返し単位を0.1~5.0モル%有する、TFE及びVDFのターポリマー、並びに、(jj)式CF=CF-OR [式中、R はC1~3フルオロアルキル基のC1~3アルキル基である]の(ペル)(フルオロ)アルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を0.1~0.8モル%有する、TFE及びVDFのターポリマーについて言及がなされている。
【0004】
それにもかかわらず、高い値の貯蔵弾性率、及び/又は高温にて高い値の引張弾性率を有するフルオロポリマーは不利なことに、破断点伸びが非常に低く、不十分な熱応力亀裂耐性を有し、かつ硬質である。
【0005】
それ故、様々な用途で使用するのに好適なパイプに容易に加工可能であり、かつ、優れた破断点伸び及びひずみ硬化、並びに改善された応力亀裂耐性(即ち、化学的に過酷な環境に暴露された際のストレスに対する耐性)を有する、高温にて良好な/許容可能な機械的特性を有する溶融加工性フルオロポリマーが当該技術分野において依然として、必要とされている。
【0006】
偶然にも、特開第2004219579号公報(三菱ケミカル株式会社)(2004年5月8日公開)は、コアと、コアの外側周辺に形成されたクラッドの1つ以上の層とを有する、プラスチック光ファイバーであって、クラッドが、1~30質量%のフッ化ビニリデン単位、30~85質量%のテトラフルオロエチレン単位、及び、3~40質量%の、一般式CF=CF-(OCFCF(CF))O-R [式中、R は場合によりフルオロアルキル基であり、aは0又は整数である]により表される、フルオロビニル化合物単位を含有するターポリマーで形成される、プラスチック光ファイバーについて開示している。これらの例示的実施形態は例えば、VDF/TFEペルフルオロエチルビニルエーテル(EVE)ターポリマー(EVEの量は6又は15重量%であり、それぞれ約6.7及び2.7のモル量に対応する)、VDF/TFE/ペルフルオロメチルビニルエーテル(MVE)ターポリマー(MVEの量は9又は10重量%であり、それぞれ約5.3及び5.6のモル量に対応する)である。この文書では、クラッドに使用されるフルオロポリマーの機械的性能については明記されていない。
【発明の概要】
【0007】
驚くべきことに、以下に詳述する組成物を特異的に有するフルオロポリマーが有利には、石油及びガス用途のパイプ製造を含む様々な用途で使用するのに好適な、許容可能な引張り強度(例えば、高温(例えば200℃)にて約10MPa又はそれを超える引張弾性率)を示すことが発見されている。更に、出願者は、前記フルオロポリマーは、驚くべきことに、熱応力亀裂現象を生じることなく、塑性変形時に著しい応力硬化を受ける高圧かつ高温条件に耐えつつ、過酷な環境にて高い耐化学性を有利に保持することを発見した。
【0008】
また、出願者は、本発明のフルオロポリマーは驚くべきことに、塑性変形により高いひずみ硬化速度を示すことを見出した。
【0009】
本発明の目的に関して、「塑性変形」という用語は、フルオロポリマーの永久的及び不可逆的な変形を意味することが本明細書によって意図される。
【0010】
本発明の目的に関して、弾性変形は塑性変形とは区別される。用語「弾性変形」とは本明細書において、フルオロポリマーの一時的かつ可逆的な変形を意味することが意図される。
【0011】
第1の例において、本発明は、フルオロポリマー[ポリマー(F)]であって、
-60モル%~80モル%、好ましくは65モル%~78モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
-15モル%~35モル%、好ましくは20モル%~30モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
-1モル%~5モル%、好ましくは1.5モル%~3.5モル%の、式:
CF=CF-O-C
のペルフルオロプロピルビニルエーテルに由来する繰り返し単位
を含む、好ましくはこれらからなり、
前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものである、フルオロポリマー[ポリマー(F)]に関する。
【0012】
本発明のポリマー(F)は有利には、溶融加工性である。用語「溶融加工性」とは本明細書において、従来の溶融加工技術により加工可能なフルオロポリマーを意味することが意図される。
【0013】
本発明のポリマー(F)は典型的には、170℃~300℃、好ましくは190℃~270℃、更により好ましくは200~225℃を占める融点(T)を有する。
【0014】
本発明のポリマー(F)は有利には、ASTM D 1238[MFI(300℃/5kg)]に従い、300℃にて、5kgの荷重で測定した際に、少なくとも0.2g/10分、好ましくは少なくとも0.5g/10分、かつ/又は最大20g/10分、好ましくは最大15g/10分、より好ましくは最大10g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する。0.8~8g/10分、より好ましくは1~6g/10分の範囲のMFI(300℃/5kg)を有するポリマー(F)において、優れた結果が得られた。
【0015】
本発明のポリマー(F)は有利には、ASTM D 3307の標準的な方法に従い200℃にて測定すると、350%を超える破断点伸びを有する。
【0016】
破断点伸びは典型的には、ひびを形成することなく形状が変化することに対しての、ポリマー(F)の耐性の尺度である。破断点伸びは典型的には、試験片の破断後における、変化した長さと初期の長さとの比率を表す。
【0017】
本発明のポリマー(F)は有利には、以下の方程式:
SHI=[σ(200%ひずみ)-σ(100%ひずみ)]/[ε(200%ひずみ)-ε(100%ひずみ)]
[式中、σは材料に加えられた応力を表し、εはひずみを表し、応力及びひずみは、ASTM D 3307の標準的な方法に従い測定された]
に従い測定すると、23℃の温度にて少なくとも2.5MPa、好ましくは少なくとも3MPaのひずみ硬化インデックス(SHI)を有する。
【0018】
ひずみ硬化速度は、応力下における塑性変形の結果として、材料により生じた硬化の尺度である。
【0019】
第2の例において、本発明は、本発明のポリマー(F)を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、典型的には水性重合媒体中において、懸濁重合又は乳化重合のいずれかにより実施される、プロセスに関する。
【0020】
本発明のポリマー(F)は好ましくは、水性重合媒体中における乳化重合により得ることができる。
【0021】
本発明のポリマー(F)は典型的には、水性重合媒体中における乳化重合により得ることができる、水性ラテックスから回収される。
【0022】
第3の例において、本発明は、本発明の少なくとも1種のポリマー(F)を含む水性ラテックスであって、前記ポリマー(F)が、
-60モル%~80モル%、好ましくは65モル%~78モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
-15モル%~35モル%、好ましくは20モル%~30モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
-1モル%~5モル%、好ましくは1.5モル%~3.5モル%の、式:
CF=CF-O-C
のペルフルオロプロピルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含む、好ましくはこれらからなり、
前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものであり、
水性ラテックス中のポリマー(F)は、ISO 13321に従い測定すると、1.00μm未満の平均一次粒径を有する一次粒子の形態である、
水性ラテックスに関する。
【0023】
乳化重合は、
-少なくとも1種の界面活性剤[界面活性剤(S)]と、
-少なくとも1種のラジカル開始剤と、
-任意選択的に、少なくとも1種の非官能性パーフルオロポリエーテル(PFPE)オイルと、
-任意選択的に、少なくとも1種の連鎖移動剤と
を含む水性重合媒体中において実施される。
【0024】
本発明のポリマー(F)が乳化重合により製造されるとき、少なくとも1種の界面活性剤(S)の存在下で乳化重合を実施することが必須である。
【0025】
水性ラテックスは典型的には、少なくとも1種の界面活性剤[界面活性剤(S)]を更に含む。
【0026】
本発明の目的に関して、「界面活性剤[界面活性剤(S)]」とは、疎水基と親水性基の両方を含有する両親媒性有機化合物を意味することを意図する。
【0027】
界面活性剤(S)は典型的には、
-含水素界面活性剤[界面活性剤(H)]、
-フッ素化界面活性剤[界面活性剤(F)]、及び
-それらの混合物
からなる群から選択される。
【0028】
界面活性剤(H)は、イオン性含水素界面活性剤[界面活性剤(IS)]、又は非イオン性含水素界面活性剤[界面活性剤(NS)]であってよい。
【0029】
好適な界面活性剤(IS)の非限定例としては特に、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸塩、ポリビニルホスホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリビニルスルホン酸塩、及びアルキルホスホネートが挙げられる。
【0030】
界面活性剤(H)は、界面活性剤(NS)であることが好ましい。
【0031】
好適な界面活性剤(NS)の非限定例としては特に、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドに由来する繰り返し単位を含む、オクチルフェノールエトキシレート及び脂肪族アルコールポリエーテルが挙げられる。
【0032】
界面活性剤(NS)は通常、EN 1890規格(方法A:1重量%の水溶液)に従い測定すると、有利には50℃以上、好ましくは55℃以上の曇点を有する。
【0033】
界面活性剤(NS)は好ましくは、商標名TRIXON(登録商標)X及びPLURONIC(登録商標)で商業的に入手可能な非イオン性含水素界面活性剤からなる群から選択される。
【0034】
本発明の第1の実施形態に従うと、界面活性剤(F)は、式(II):
[式中、X、X、及びXは互いに等しいか又は異なり、H、F、及び、任意選択的に1つ以上のカテナリー又は非カテナリー酸素原子を含むC~C(ペル)フルオロアルキル基からなる群から独立して選択され、Lは結合又は二価の基であり、Rは二価のフッ素化C~C架橋基であり、Yはアニオン性官能基である]
の環式フルオロ化合物であることができる。
【0035】
式(II)において、アニオン性官能基Yは、式:
[式中、XはH、一価の金属(好ましくはアルカリ金属)、又は式-N(R’[式中、R’はそれぞれの出現において等しいか又は異なり、水素原子又はC~C炭化水素基(好ましくはアルキル基)である]のアンモニウム基である]
のものからなる群から選択されるのが好ましい。
【0036】
アニオン性官能基Yは、上述したように式(3”)のカルボキシレートであることが最も好ましい。
【0037】
本発明のこの第1の実施形態の第1の変形に従うと、界面活性剤(F)は、式(III):
[式中、X、X、X、R、及びYは上述のものと同じ意味を有する]
の環式フルオロ化合物である。
【0038】
より好ましくは、本発明のこの第1の実施形態のこの第1の変形の環式フルオロ化合物は、式(IV):
[式中、X、X、X、R、及びXは、上述したものと同じ意味を有する]
のものである。
【0039】
本発明のこの第1の実施形態の第2の変形に従うと、界面活性剤(F)は、式(V):
[式中、R及びXは、上述したものと同じ意味を有し、X 、X は互いに等しいか又は異なり、独立してフッ素原子、-R’、又は-OR’[式中、R’はC~Cペルフルオロアルキル基であり、R はF又はCFである]であり、kは1~3の整数である]
の環式フルオロ化合物である。
【0040】
本発明のこの第1の実施形態の界面活性剤(F)は、式(VI):
[式中、Xは上述したものと同じ意味を有し、特にXはNHである]
の環式フルオロ化合物であることがより好ましい。
【0041】
本発明の第2の実施形態に従うと、界面活性剤(F)は式(VII):
f§(X(M (VII)
[式中、
-Rf§は、任意選択的に1つ以上のカテナリー又は非カテナリー酸素原子を含むC~C16(ペル)フルオロアルキル鎖、及び(ペル)フルオロポリオキシアルキル鎖から選択され、
-Xは、-COO、-PO 及び-SO から選択され、
-Mは、NH 及びアルカリ金属イオンから選択され、かつ、
-kは1又は2である]
のフッ素化界面活性剤であることができる。
【0042】
水性重合媒体中での乳化重合に使用するのに好適な、本発明のこの第2の実施形態に従った界面活性剤(F)の非限定例としては特に、以下が挙げられる:
(a’)CF(CFn0COOM’[式中、nは4~10、好ましくは5~7の範囲の整数であり、好ましくはnは6に等しく、M’はNH、Na、Li、又はK、好ましくはNHを表す];
(b’)T-(CO)n1(CFYO)m1CFCOOM”[式中、TはCl原子、又は式C2x+1-x’Clx’O[式中、xは1~3の範囲の整数であり、x’は0又は1である]のペルフルオロアルコキシド基を表し、nは1~6の範囲の整数であり、mは0又は1~6の範囲の整数であり、M”はNH、Na、Li、又はKを表し、YはF又は-CFを表す];
(c’)F-(CFCF)n-CH-CH-XM”’[式中、Xはリン原子又は硫黄原子であり、好ましくはXは硫黄原子であり、M”’はNH、Na、Li、又はKを表し、nは2~5の範囲の整数であり、好ましくはnは3に等しい];
(d’)A-Rbf-B二官能性フッ素化界面活性剤[式中、A及びBは互いに等しいか又は異なり、式-(O)CFY”-COOM[式中、MはNH、Na、Li、又はKを表し、好ましくはMはNHを表し、Y”はF又は-CFであり、pは0又は1である]を有し、Rbfは、A-Rbf-Bの数平均分子量が、300~1800の範囲となるような、二価の(ペル)フルオロアルキル鎖又は(ペル)フルオロポリエーテル鎖である];並びに、
(e’)それらの混合物。
【0043】
本発明の水性ラテックスは、ISO 13321に従い測定すると、50nm~450nm、好ましくは250nm~300nmを占める平均一次粒径を有する一次粒子の形態の、少なくとも1種のポリマー(F)を含むのが好ましい。
【0044】
本発明の目的に関して、「平均一次粒径」とは、乳化重合により得られるポリマー(F)の一次粒子の平均サイズを意味することを意図する。
【0045】
本発明の目的に関して、ポリマー(F)の「一次粒子」は、一次粒子のアグロメレートとは区別可能であることが意図されるべきである。ポリマー(F)の一次粒子を含む水性ラテックスは有利には、水性重合媒体中における乳化重合により得ることができる。ポリマー(F)の一次粒子のアグロメレートは典型的には、水性ポリマー(F)ラテックスの濃縮及び/又は凝固、並びにその後の乾燥及び均質化などの、それによってポリマー(F)粉末を提供するポリマー(F)製造の回収及びコンディショニング工程によって得られる。
【0046】
本発明の水性ラテックスはそれ故、水性媒体中にポリマー(F)粉末を分散させることにより調製される水性スラリーとは区別可能であると意図されるべきである。水性スラリーに分散したポリマー(F)粉末の平均粒径は典型的には、ISO 13321に従って測定されるように、1μmよりも大きい。
【0047】
本発明の水性ラテックスは有利には、ISO 13321に従い測定すると、50nm~450nm、好ましくは250~300nmを占める平均一次粒径を有する少なくとも1種のポリマー(F)の一次粒子に均一に分散している。
【0048】
乳化重合は典型的には、10バール~35バール、好ましくは11バール~25バールを占める圧力にて実施される。
【0049】
当業者は、とりわけ使用されるラジカル開始剤を考慮して重合温度を選ぶことになろう。水性乳化重合温度は、典型的には50℃~135℃の間、好ましくは55℃~130℃の間に含まれる温度で行われる。
【0050】
ラジカル開始剤の選択は特に限定されないが、水性乳化重合に好適な水溶性ラジカル開始剤は、重合プロセスを開始させる、及び/又は加速させることができる化合物から選択されると理解される。
【0051】
無機ラジカル開始剤が用いられてもよく、それらには、限定されるものではないが、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩が含まれてもよい。
【0052】
また、有機ラジカル開始剤が使用されることができ、これらに限定されるものではないが、以下のもの:アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド;ジアセチルペルオキシジカーボネート;ジエチルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネートなどのジアルキルペルオキシジカーボネート;tert-ブチルペルネオデカノエート;2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル;tert-ブチルペルピバレート;ジオクタノイルペルオキシド;ジラウロイル-ペルオキシド;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル);tert-ブチルアゾ-2-シアノブタン;ジベンゾイルペルオキシド;tert-ブチル-ペル-2エチルヘキサノエート;tert-ブチルペルマレエート;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル);ビス(tert-ブチル-ペルオキシ)シクロヘキサン;tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート;tert-ブチルペルアセテート;2,2’-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン;ジクミルペルオキシド;ジ-tert-アミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP);p-メタンヒドロペルオキシド;ピナンヒドロペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド;及びtert-ブチルヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0053】
他の適したラジカル開始剤にはとりわけ、ハロゲン化フリーラジカル開始剤があり、例えばクロロカーボン系及びフルオロカーボン系アシルペルオキシド、例えばトリクロロアセチルペルオキシド、ビス(ペルフルオロ-2-プロポキシプロピオニル)ペルオキシド、[CFCFCFOCF(CF)COO]、ペルフルオロプロピオニルペルオキシド、(CFCFCFCOO)、(CFCFCOO)、{(CFCFCF)-[CF(CF)CFO]-CF(CF)-COO}(式中、m=0~8である)、[ClCF(CFCOO]、及び[HCF(CFCOO][式中、n=0~8である]、ペルフルオロアルキルアゾ化合物、例えばペルフルオロアゾイソプロパン、[(CFCFN=]
[式中、
が、1~8個の炭素を有する直鎖又は分岐状ペルフルオロカーボン基である]、安定な又はヒンダードペルフルオロアルカンラジカル、例えばヘキサフルオロプロピレン三量体ラジカル、[(CFCF](CFCF)Cラジカル及びペルフルオロアルカンなどが含まれる。
【0054】
ジメチルアニリン-ベンゾイルペルオキシド、ジエチルアニリン-ベンゾイルペルオキシド及びジフェニルアミン-ベンゾイルペルオキシドなどの、レドックス対を形成する少なくとも2つの成分を含むレドックス系がまた、重合プロセスを開始させるためのラジカル開始剤として使用されてもよい。
【0055】
無機ラジカル開始剤の中では、過硫酸アンモニウムが特に好ましい。
【0056】
有機ラジカル開始剤の中では、50℃よりも高い自己加速分解温度(SADT)を有するペルオキシド、例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP)、ジ-tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチル(2-エチル-ヘキシル)ペルオキシカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエートなどが特に好ましい。
【0057】
上述の1種以上のラジカル開始剤を、水性重合媒体の重量を基準にして、有利には0.001重量%~20重量%の範囲の量で、乳化重合プロセスの水性重合媒体に添加してよい。
【0058】
「非官能性ペルフルオロポリエーテル(PFPE)油」とは、(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R)]及び非官能性末端基を含むペルフルオロポリエーテル(PFPE)油を意味することが本明細書により意図される。
【0059】
非官能性PFPEオイルの非官能性末端基は一般に、フッ素とは異なる1つ若しくは複数のハロゲン原子又は水素原子を任意選択的に含む、1~3個の炭素原子を有するフルオロ(ハロ)アルキル基、例えばCF-、C-、C-、ClCFCF(CF)-、CFCFClCF-、ClCFCF-、ClCF-から選択される。
【0060】
非官能性PFPE油は典型的には、400~3000、好ましくは600~1500を占める数平均分子量を有する。
【0061】
非官能性PFPE油は、好ましくは、以下からなる群から選択される。
(1’)GALDEN(登録商標)及びFOMBLIN(登録商標)という商標名の下でSolvay Solexis S.p.A.から市販されている非官能性PFPE油であって、前記PFPE油は、一般に以下の式:
CF-[(OCFCF-(OCF]-OCF
m+n=40~180;m/n=0.5~2
CF-[(OCF(CF)CF-(OCF]-OCF
p+q=8~45;p/q=20~1000
のいずれかに従う少なくとも1種のPFPE油を含む、非官能性PFPE油
(2’)DEMNUM(登録商標)という商標名の下でDaikinから市販されている非官能性PFPE油であって、前記PFPEは、一般にここで以下の式:
F-(CFCFCFO)-(CFCFCHO)-CFCF
j=0又は>0の整数;n+j=10~150
に従う少なくとも1種のPFPEを含む、非官能性PFPE油
(3’)KRYTOX(登録商標)という商標名の下でDu Pont de Nemoursから市販されている非官能性PFPE油であって、前記PFPEは、一般に以下の式:
F-(CF(CF)CFO)-CFCF
n=10~60
に従うヘキサフルオロプロピレンエポキシドの少なくとも1種の低分子量のフッ素末端封止ホモポリマーを含む、非官能性PFPE油
【0062】
非官能性PFPE油は、上述した式(1’)を有するものから更により好ましくは選択される。
【0063】
連鎖移動剤は、存在する場合、例えば、エタンなどのフッ素化モノマー、ケトン、エステル、エーテル、又は3~10の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えばアセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、イソプロピルアルコール;例えば、クロロホルム、トリクロロフルオロメタンなどの、1~6の炭素原子を有する、任意選択的に水素を含有する、クロロ(フルオロ)カーボン;例えば、ビス(エチル)カーボネート、ビス(イソブチル)カーボネートなどの、アルキルが1~5の炭素原子を有するビス(アルキル)カーボネートの重合において公知のものから一般的に選択される。
【0064】
連鎖移動剤は、存在する場合、開始時に、重合中に連続的に又は個別的な量で(段階的に)水性重合媒体に供給されることができ、連続的又は段階的供給が好ましい。
【0065】
上で詳述した水性乳化重合プロセスは、当該技術分野において説明されてきた(例えば、米国特許第4990283号明細書(AUSIMONT S.P.A.)(1991年2月5日公開)、同第5498680号明細書(AUSIMONT S.P.A.)(1996年3月12日公開)、及び同第6103843号明細書(AUSIMONT S.P.A.)(2000年8月15日公開)を参照)。
【0066】
本発明の水性ラテックスは、20重量%~30重量%の少なくとも1種のポリマー(F)を含むのが好ましい。
【0067】
水性ラテックスは、当技術分野で公知の任意の技術に従って濃縮されてもよい。
【0068】
第4の例において、本発明は、本発明の少なくとも1種のポリマー(F)を含む組成物[組成物(C)]に関する。
【0069】
本発明の組成物(C)は、充填剤、可塑剤、加工助剤、及び顔料などの1種以上の添加剤を更に含むことができる。
【0070】
第5の例において、本発明は、本発明の少なくとも1個のポリマー(F)又は組成物(C)を含む物品に関する。
【0071】
特に、本発明は、本発明の少なくとも1種のポリマー(F)又は組成物(C)を含むパイプに関する。
【0072】
用語「パイプ」は、本明細書において、上述した少なくとも1種のポリマー(F)からなる、又は少なくともこれを含む連続したチューブ状パイプ、あるいは、内側表面又は外側表面が、上述した少なくとも1種のポリマー(F)からなる、又は少なくともこれを含むチューブ状層でコーディングされた、連続したチューブ状パイプを意味することが意図される。
【0073】
本発明のパイプは、単層パイプ又は複数層パイプであってもよい。
【0074】
用語「単層パイプ」は本明細書において、少なくとも1種のポリマー(F)からなる、又は少なくともこれを含む1つのチューブ状層からなるパイプを意味することが意図される。
【0075】
用語「複数層パイプ」とは本明細書において、少なくとも2つの、互いに隣接した同心層を含み、少なくとも内層が、少なくとも1種のポリマー(F)を含む、又は好ましくはこれからなる、同心層を含むパイプを意味することが意図される。
【0076】
本発明のポリマー(F)は有利には、押出成型又は射出成型などの溶融加工技術により、パイプ又はその部品などの物品に加工することができる。
【0077】
本発明のポリマー(F)は有利には、少なくとも250℃、好ましくは少なくとも300℃の温度にて、溶融加工技術により加工されることができる。
【0078】
第6の例において、本発明は、石油及びガス用途、並びに自動車用途などの、様々な用途における本発明のパイプの使用に関する。
【0079】
本発明の実施形態に従うと、本発明のパイプはフレキシブルライザーであることができる。
【0080】
本発明のフレキシブルライザーは特に、石油及びガス用途で使用するのに好適である。
【0081】
特に、本発明のフレキシブルライザーは特に、炭化水素をボトムプラットフォームから浮遊沖合装置まで搬送するためのアップストリーム用途で使用するのに好適である。
【0082】
本発明の目的に関して、用語「フレキシブルライザー」は、金属ワイヤ若しくは金属片、又は、高い内圧及び外圧下において、機械的耐性を付与する複合材料から作製した様々なテープ若しくはセクションの巻線から作製した、外側環境に対する密封、及び強化をもたらすポリマー同心層を含む可撓性チューブ状パイプを意味することを意図する。
【0083】
本発明のフレキシブルライザーは、非接着フレキシブルライザー又は接着フレキシブルライザーであってもよい。
【0084】
用語「接着フレキシブルライザー」は、本明細書において、2つ以上の同心層同士が付着されるフレキシブルライザーを意味することが意図される。
【0085】
用語「非接着フレキシブルライザー」は、本明細書において、2つ以上の重ねられた同心層を含み、これらの層が互いに相対移動する特定の自由な状態を有するフレキシブルライザーを意味することが意図される。
【0086】
本発明のパイプがフレキシブルライザーである場合、それは好ましくは接着フレキシブルライザーである。
【0087】
本発明のこの実施形態の第1の変形に従うと、フレキシブルライザーは粗腔フレキシブルライザーである。用語「粗腔フレキシブルライザー(rough-bore flexible riser)」は、フレキシブルライザーにおいて、最内側要素が、それを屈曲させることを可能にするカーカスの湾曲部の間の間隙のために粗腔を形成する内側カーカスであるフレキシブルライザーを意味することが意図される。
【0088】
本発明のこの実施形態のこの第1の変形における粗腔フレキシブルライザーは典型的には、内側から外側に向かって、
-湾曲部が共に切り取られた、らせん状に巻回した特徴の部材により形成された、内側カーカスと呼ばれる内側可撓性金属チューブ、
-内側ポリマーシース、
-内部ポリマーシースの周りに巻回した、1つ以上のアーマープライヤー、及び
-外側ポリマーシース
を含み、内部ポリマーシース及び/又は外側ポリマーシースは、上述した少なくとも1種のポリマー(F)又は組成物(C)を含む、好ましくはこれらからなる。
【0089】
内部ポリマーシースは典型的には、粗腔フレキシブルライザーの内側カーカス上にコーティングされることにより、上述した少なくとも1種のポリマー(F)又は組成物(C)を含む、好ましくはこれらからなる連続したチューブ状層が得られる。
【0090】
内側ポリマーシースは好ましくは、従来の溶融加工技術によって粗腔フレキシブルライザーの内側カーカスの上に押出される。
【0091】
本発明のこの実施形態の第2の変形に従うと、フレキシブルライザーは滑腔フレキシブルライザーである。用語「滑腔フレキシブルライザー」は本明細書において、内側カーカスを含有せず、最内側要素が、平滑壁を有する不浸透性ポリマーパイプであるフレキシブルライザーを意味することが意図される。
【0092】
本発明は、以下の実施例を参照してこれからより詳細に説明されるが、実施例の目的は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0093】
原材料
国際公開第2010/003929号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY SPA)に詳述した手順に従い、X=NHの、式(VI)の環式界面活性剤を製造した。
【0094】
ポリマー組成物の測定
376.62MHzにて稼働するAgilent DirectDrive2 400 MHz NB分光計を使用した固体19Fマジック角回転(MAS)NMRにより得たNMRスペクトルをデコンボリューションすることにより、ポリマー中のモノマーのモル量を測定した。
【0095】
第2の溶融温度の測定
ASTM D 3418の標準的な方法に従い、示差走査熱量計(DSC)により融点を測定した。第2の加熱期間中に観察した吸熱ピークとして定義される第2の溶融温度を記録し、本明細書においてはポリマーの融点(T)と呼ぶ。
【0096】
メルトフローインデックス(MFI)の測定
300℃にて5Kgの重量を適用することにより、ASTM D 1238の標準的な方法に従いメルトフローインデックスを測定した。
【0097】
引張特性の測定
320℃にてポリマーを圧縮成型することにより得た1.5mm厚のフィルム上にて、ASTM D 3307に従い、引張特性を測定した。全試験の間、1mm/分の一定のクロスヘッド速度にて得たフィルムを引っ張ることにより、200℃における破断点伸びを測定した。引張弾性率を、特定の温度にて1mm/分のクロスヘッド速度で、0.2%~1%の伸長率で得た引張曲線の傾斜として測定した。ネッキング前の引張曲線の局所最大値として、引張降伏応力を測定した。
【0098】
ひずみ硬化インデックス(SHI)の測定
以下の方程式:
SHI=[σ(200%ひずみ)-σ(100%ひずみ)]/[ε(200%ひずみ)-ε(100%ひずみ)]
[式中、σは材料に加えられた応力を表し、εはひずみを表し、応力及びひずみは、ASTM D 3307の標準的な方法に従い測定された]
に従い、ポリマーフィルムのSHIを測定した。SHIの値が高ければ高いほど塑性変形によるひずみ硬化速度も大きくなり、それ故特定の温度における高分子フィルムの安定性も高くなる。
【0099】
環境ストレス耐性(ESR)の測定
ISO 22088-2に記載されている定荷重引張装置を使用して、環境ストレス耐性を試験した。室温にてM15燃料に浸漬したサンプル棒での降伏を観察するのに必要であり、同一温度での空気中における引張降伏応力の70%に等しい引張応力に通した時間として耐性を評価した。0.3mm厚のASTM D638V型試験片を使用した。M15(又は、ASTM D471では燃料Iと呼ばれる)は、85体積%の燃料C(高芳香性プレミアム等級の自動車用ガソリンの膨張をシミュレートした、50/50体積%のトルエン/イソオクタンのブレンド)と、15体積%のメタノールとを含有する、燃料-アルコールブレンド(ガソホール(gasohol))である。
【0100】
実施例1
バッフル及び570rpmで稼働する撹拌機を装着したAISI 316鋼の縦型オートクレーブに、3.5リットルの脱塩水を導入した。次に、温度を80℃の反応温度にし、選択量の、上述した、X=NHの式(VI)の環式界面活性剤の34%w/w水溶液を添加した。VDF及びエタンを、表1に報告する選択圧力のバリエーションに導入した。表1に報告する名目モル比のTFE-VDFのガス状混合物を次に、圧縮機を介して、20バールの圧力に達するまで添加した。次に、選択量の3重量%の過硫酸ナトリウム(NaPS)水溶液を開始剤として供給した。表1に示す総量に達するまで、規則的な間隔でパーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVEモノマーを添加しながら、上記TFE-VDFを供給することにより、重合圧力を一定に維持した。1000gの混合物を添加した際、反応器を室温で冷却し、ラテックスを排出し、48時間凍結させ、解凍したら凝固したポリマーを脱塩水で洗浄し、160℃にて24時間乾燥させた。NMRにより測定すると、得たポリマーF-1の組成は、融点T=218℃であり、かつMFI=5g/10’である、ポリマー(F-1)(693/99):TFE(69.6モル%)-VDF(27.3モル%)-PPVE(2.1モル%)であった。
【0101】
実施例2
表1の2番目の縦列に示す成分の量を導入して、実施例1の手順を繰り返した。
【0102】
NMRにより測定すると、得たポリマーF-2の組成は、融点T=219℃、及びMFI=1.5g/10’である、ポリマー(F-)(693/100):TFE(68モル%)-VDF(29.8モル%)-PPVE(2.2モル%)であった。
【0103】
比較例1
表1の3番目の縦列に示す成分の量を導入して、実施例1の手順を繰り返した。NMRにより測定すると、得たポリマー-1の組成は、融点Tm=249℃、及びMFI=5g/10’である、ポリマー(C-1)(693/67):TFE(71モル%)-VDF(28.5モル%)-PPVE(0.5モル%)であった。
【0104】
比較例2
42rpmで稼働する撹拌機を装着した、AISI 316鋼の横型反応器に、56リットルの脱塩水を導入した。次に、温度を65℃の反応温度にし、選択量の、上述した、X=NHの式(VI)の環式界面活性剤の40%w/w水溶液を添加した。VDF及びエタンを、表1に報告する選択圧力のバリエーションに導入した。表1に報告する名目モル比のTFE-VDFのガス状混合物を次に、圧縮機を介して、20バールの圧力に達するまで添加した。次に、選択量の0.25重量%の過硫酸ナトリウム(NaPS)水溶液を開始剤として供給した。表1に示す総量に達するまで、規則的な間隔でPPVEモノマーを添加しながら、上記TFE-VDFを供給することにより、重合圧力を一定に維持した。16000gの混合物を供給した際、反応器を室温で冷却し、ラテックスを排出し、48時間凍結させ、解凍したら凝固したポリマーを脱塩水で洗浄し、160℃にて24時間乾燥させた。NMRにより測定すると、得たポリマーC-2の組成は、融点T=232℃及びMFI=8g/10’である、ポリマー(C-2)(SA1100):TFE(70.4モル%)-VDF(29.2モル%)-PPVE(0.4モル%)であった。
【0105】
比較例3
以下の変化を加えて、比較例2の手順を繰り返した:
-反応器に導入した脱塩水:66リットル;
-80℃の重合温度
-重合圧力:-12絶対バール
-6重量%の開始剤溶液濃度
-表1に示す量でMVEを導入
-反応器に供給したモノマー混合物の総量:10000g、表1にて示したTFE/VDFのモル比で。
【0106】
成分の全ての量を、表1の5番目の縦列に示す。NMRにより測定すると、得たポリマー(C-3)の組成は、融点T=226℃及びMFI=8g/10’である、ポリマー(C-3)(693/22):TFE(72.1モル%)-VDF(26モル%)-MVE(1.9モル%)であった。
【0107】
【0108】
本発明のポリマー(F-1)、(F-2)、並びに比較(C-1)、(C-2)、及び(C-3)に関する結果を、ここで下表2に記載する。
【0109】

【0110】
特には、ポリマー(F-1)、(F-2)により特に表される本発明のポリマー(F)は驚くべきことに、先行技術のポリマー(C-1)及び(C-2)と比較して、200℃にてより高い破断点伸びを示す。
【0111】
また、ポリマー(F-1)、(F-2)により特に示される本発明のポリマー(F)は、様々な使用分野では完全に許容可能な範囲として残っているより低い引張弾性率にもかかわらず、驚くべきことに、先行技術のポリマー(C-1)及び(C-2)と比較して、塑性変形でより大きいひずみ硬化速度を示す。
【0112】
最終的に、ポリマー(F-1)及び(F-2)により特に示される本発明のポリマー(F)は驚くべきことに、先行技術のポリマー(C-1)及び(C-2)と比較して、燃料に浸漬されたときにより高い環境ストレス耐性を示す。
【0113】
更に、本発明に従ったポリマー(F)を、ペルフルオロメチルビニルエーテル(FMVE)を改質モノマーとして含むポリマー(C-3)の性能と比較すると、ペルフルオロプロピルビニルエーテルの選択の重要性が示される:実際、FMVEでは、同様のモノマー量で、高すぎる剛性を有し、それ故低い破断点伸びを有して、例えば石油及びガス用途で使用するには不適なコポリマーが作製されることが示されている。