(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】インプリント方法、インプリント装置、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20231215BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 502M
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020007019
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 達哉
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-241396(JP,A)
【文献】特開2016-058735(JP,A)
【文献】特開2019-125656(JP,A)
【文献】特開2019-212690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成するインプリント方法であって、
前記モールドと前記基板上のインプリント材とが接触している状態で、前記モールドと前記基板との位置合わせを行う位置合わせ工程と、
前記位置合わせ工程と並行して又は前記位置合わせ工程の前において、前記インプリント材に光を照射して前記インプリント材を第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程と、
前記位置合わせ工程の後において、前記インプリント材に硬化光を照射して前記インプリント材を前記第1目標硬度より高い第2目標硬度に硬化させる本硬化工程と、
を含み、
前記予備硬化工程は、前記インプリント材が第1反応感度を示す第1光を前記インプリント材に照射する第1処理と、前記インプリント材が前記第1反応感度より低い第2反応感度を示す第2光を前記インプリント材に照射する第2処理とを含み、前記第2処理の終了タイミングが前記第1処理の終了タイミングより遅くなるように制御され
、
前記予備硬化工程において、
前記第1処理は、前記インプリント材が前記第1目標硬度に硬化される前に終了するように制御され、
前記第2処理は、前記第1処理の終了後、前記第2光を前記インプリント材に照射することで前記インプリント材が前記第1目標硬度に硬化されるように制御される、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項2】
前記位置合わせ工程では、前記モールドのマークと前記基板のマークとが目標位置関係になるように、前記モールドと前記基板との相対位置が制御され、
前記本硬化工程では、前記位置合わせ工程で得られた前記モールドと前記基板との相対位置が目標相対位置として設定され、当該目標相対位置が維持されるように、前記モールドと前記基板との相対位置が制御される、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項3】
前記モールドのパターンに前記インプリント材が充填されるまで待機する充填工程を更に含み、
前記予備硬化工程は、前記充填工程の後に行われる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント方法。
【請求項4】
前記第2処理は、前記第1処理の終了後に開始される、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項5】
前記第2処理は、前記第2処理の少なくとも一部が前記第1処理と重なるように開始される、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項6】
前記第1処理では、前記インプリント材への前記第1光の照射が断続的に行われ、前記第2処理では、前記インプリント材への前記第2光の照射が断続的に行われる、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項7】
前記第1光および前記第2光は、互いに異なる光源から射出される、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項8】
前記第1光は、前記硬化光を射出する光源から射出される、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項9】
モールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成するインプリント方法であって、
前記モールドと前記基板上のインプリント材とが接触している状態で、前記モールドと前記基板との位置合わせを行う位置合わせ工程と、
前記位置合わせ工程と並行して又は前記位置合わせ工程の前において、前記インプリント材に光を照射して前記インプリント材を第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程と、
前記位置合わせ工程の後において、前記インプリント材に硬化光を照射して前記インプリント材を前記第1目標硬度より高い第2目標硬度に硬化させる本硬化工程と、
を含み、
前記予備硬化工程は、前記インプリント材が第1反応感度を示す第1光を前記インプリント材に照射する第1処理と、前記インプリント材が前記第1反応感度より低い第2反応感度を示す第2光を前記インプリント材に照射する第2処理とを含み、前記第2処理の終了タイミングが前記第1処理の終了タイミングより遅くなるように制御され、
前記第1処理では、前記インプリント材への前記第1光の照射が断続的に行われ、前記第2処理では、前記インプリント材への前記第2光の照射が断続的に行われる、ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインプリント方法を用いて基板上にパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程でパターンが形成された前記基板を加工する加工工程と、を含み、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項11】
モールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置であって、
光を照射して前記インプリント材を硬化させる硬化部と、
前記インプリント処理を制御する制御部と、を含み
前記インプリント処理は、
前記モールドと前記基板上のインプリント材とが接触している状態で、前記モールドと前記基板との位置合わせを行う位置合わせ工程と、
前記位置合わせ工程と並行して又は前記位置合わせ工程の前において、前記硬化部により前記インプリント材に光を照射して前記インプリント材を第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程と、
前記位置合わせ工程の後において、前記硬化部により前記インプリント材に硬化光を照射して前記インプリント材を前記第1目標硬度より高い第2目標硬度に硬化させる本硬化工程と、を含み、
前記予備硬化工程は、前記インプリント材が第1反応感度を示す第1光を前記インプリント材に照射する第1処理と、前記インプリント材が前記第1反応感度より低い第2反応感度を示す第2光を前記インプリント材に照射する第2処理とを含み、
前記制御部は、前記第2処理の終了タイミングが前記第1処理の終了タイミングより遅くなるように前記予備硬化工程を制御する
とともに、前記予備硬化工程において、前記インプリント材が前記第1目標硬度に硬化される前に終了するように前記第1処理を制御し、前記第1処理の終了後、前記第2光を前記インプリント材に照射することで前記インプリント材が前記第1目標硬度に硬化されるように前記第2処理を制御する、ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項12】
モールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置であって、
光を照射して前記インプリント材を硬化させる硬化部と、
前記インプリント処理を制御する制御部と、を含み
前記インプリント処理は、
前記モールドと前記基板上のインプリント材とが接触している状態で、前記モールドと前記基板との位置合わせを行う位置合わせ工程と、
前記位置合わせ工程と並行して又は前記位置合わせ工程の前において、前記硬化部により前記インプリント材に光を照射して前記インプリント材を第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程と、
前記位置合わせ工程の後において、前記硬化部により前記インプリント材に硬化光を照射して前記インプリント材を前記第1目標硬度より高い第2目標硬度に硬化させる本硬化工程と、を含み、
前記予備硬化工程は、前記インプリント材が第1反応感度を示す第1光を前記インプリント材に照射する第1処理と、前記インプリント材が前記第1反応感度より低い第2反応感度を示す第2光を前記インプリント材に照射する第2処理とを含み、
前記制御部は、前記第2処理の終了タイミングが前記第1処理の終了タイミングより遅くなるように前記予備硬化工程を制御し、
前記第1処理では、前記インプリント材への前記第1光の照射が断続的に行われ、前記第2処理では、前記インプリント材への前記第2光の照射が断続的に行われる、ことを特徴とするインプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント方法、インプリント装置、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどを製造するためのリソグラフィ装置として、モールド(型)を用いて基板上のインプリント材を成形するインプリント装置が知られている。インプリント装置では、基板上に液状のインプリント材を供給し、モールドと基板上のインプリント材とを接触させた後、その状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを剥離する。これにより、基板上にインプリント材のパターンを形成することができる。
【0003】
インプリント技術では、インプリント材を硬化させる前に、モールドと基板上のインプリント材とを接触させた状態でモールドと基板との位置合わせが行われる。当該位置合わせでは、インプリント装置が設置されている床からの振動等の外乱の影響により、モールドと基板との位置合わせ精度が低下しうる。特許文献1には、モールドと基板上のインプリント材とを接触させた状態でのモールドと基板との位置合わせにおいて、インプリント材に光を照射してインプリント材の粘性を増加させることで位置合わせ精度を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モールドと基板との位置合わせにおいて、基板上のインプリント材の粘度を精度よく制御するためには、例えば、インプリント材の感度が低い波長の光を用いてインプリント材の粘度を徐々に増加させることが好ましい。しかしながら、このような光を用いると、基板上のインプリント材の粘度を増加させるのに長時間を要し、スループットの点で不利になりうる。
【0006】
そこで、モールドと基板との位置合わせ精度およびスループットを両立させるために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント方法は、モールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成するインプリント方法であって、前記モールドと前記基板上のインプリント材とが接触している状態で、前記モールドと前記基板との位置合わせを行う位置合わせ工程と、前記位置合わせ工程と並行して又は前記位置合わせ工程の前において、前記インプリント材に光を照射して前記インプリント材を第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程と、前記位置合わせ工程の後において、前記インプリント材に硬化光を照射して前記インプリント材を前記第1目標硬度より高い第2目標硬度に硬化させる本硬化工程と、を含み、前記予備硬化工程は、前記インプリント材が第1反応感度を示す第1光を前記インプリント材に照射する第1処理と、前記インプリント材が前記第1反応感度より低い第2反応感度を示す第2光を前記インプリント材に照射する第2処理とを含み、前記第2処理の終了タイミングが前記第1処理の終了タイミングより遅くなるように制御され、前記予備硬化工程において、前記第1処理は、前記インプリント材が前記第1目標硬度に硬化される前に終了するように制御され、前記第2処理は、前記第1処理の終了後、前記第2光を前記インプリント材に照射することで前記インプリント材が前記第1目標硬度に硬化されるように制御される、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、モールドと基板との位置合わせ精度およびスループットを両立させるために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】モールドと基板との相対位置の制御例を示すブロック線図
【
図4】位置合わせ工程における外乱の影響を説明するための図
【
図5】光の波長とインプリント材の反応感度との関係を示す図
【
図6】第1実施形態に係る硬化部の構成例を示す概略図
【
図7】インプリント材における有効光量と粘度との関係を示す図
【
図8】第1実施形態に係るインプリント処理中における予備硬化工程(第1処理、第2処理)のタイミングチャート
【
図9】第2実施形態に係るインプリント処理中における予備硬化工程(第1処理、第2処理)のタイミングチャート
【
図10】第3実施形態に係る硬化部の構成例を示す概略図
【
図11】第3実施形態に係る硬化部の構成の変形例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。以下の実施形態では、基板の面と平行な面方向(基板の面に沿った方向)において互いに直交する2つの方向をX方向およびY方向とし、基板の面に垂直な方向(基板に入射する光の光軸に沿った方向)をZ方向とする。
【0012】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態について説明する。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。例えば、インプリント装置は、基板上に液状のインプリント材を供給し、凹凸のパターンが形成されたモールド(型)を基板上のインプリント材に接触させた状態で当該インプリント材を硬化させる。そして、モールドと基板との間隔を広げて、硬化したインプリント材からモールドを剥離(離型)することで、基板上のインプリント材にモールドのパターンを転写することができる。このような一連の処理は「インプリント処理」と呼ばれ、基板における複数のショット領域の各々について行われる。
【0013】
インプリント材には、硬化用のエネルギが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギとしては、電磁波、熱等が用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光である。
【0014】
硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物である。このうち、光により硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始材とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマ成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0015】
インプリント材は、スピンコータやスリットコータにより基板上に膜状に付与される。あるいは、液体噴射ヘッドにより、液滴状、あるいは複数の液滴が繋がってできた島状または膜状となって基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0016】
[インプリント装置の構成]
図1は、本実施形態のインプリント装置100の構成を示す概略図である。本実施形態のインプリント装置100は、例えば、インプリントヘッド10(モールド保持部)と、基板ステージ20と、供給部30と、硬化部40と、計測部50と、検出部60と、制御部70とを含みうる。制御部70は、CPUやメモリなどを有するコンピュータによって構成されており、インプリント装置100の各部に回線を介して接続され、プログラムなどに従ってインプリント装置100の各部を制御する(インプリント処理を制御する)。ここで、インプリントヘッド10は、除振器81と支柱82を介してベース定盤83によって支持されたブリッジ定盤84に固定されており、基板ステージ20は、ベース定盤83の上を移動可能に構成されている。除振器81は、例えばインプリント装置100が設置されている床からブリッジ定盤84に伝わる振動を低減するための機構である。
【0017】
モールドMは、通常、石英など紫外線を透過させることが可能な材料で作製されており、基板側の面において基板側に突出した一部の領域(パターン領域Ma)には、基板上のインプリント材Rに転写されるべき凹凸のパターンが形成されている。また、基板Wとしては、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。基板Wとしては、具体的に、シリコンウェハ、化合物半導体ウェハ、石英ガラスなどである。また、インプリント材の付与前に、必要に応じて、インプリント材と基板との密着性を向上させるために密着層を設けてもよい。
【0018】
インプリントヘッド10は、例えば真空力などによりモールドMを保持するモールドチャック11と、モールドMと基板Wとの間隔を変更するようにモールドMをZ方向に駆動するモールド駆動部12とを含みうる。インプリントヘッド10によりモールドMをZ方向に駆動することで、モールドMと基板上のインプリント材Rとを接触させる接触処理、および、硬化したインプリント材RからモールドMを剥離する離型処理を行うことができる。また、インプリントヘッド10は、Z方向に限られず、XY方向およびθ方向(Z軸周りの回転方向)にモールドMを駆動するように構成されてもよい。
【0019】
本実施形態のインプリントヘッド10には、硬化部40から射出された光が通過する空間13が設けられる。この空間13は、光透過部材14によって区切られており、モールドMがインプリントヘッド10(モールドチャック11)によって保持されたときに略密閉された空間となる。そのため、接触処理や離型処理の際に、不図示の圧力調整部によって空間13の内部圧力を調整することで、モールドM(パターン領域Ma)を基板Wに向かって撓んだ凸形状に変形することができる。例えば、接触工程においてモールドMを凸形状に変形することにより、パターン領域Maをインプリント材Rに徐々に接触させ、モールドMに形成されたパターンの凹部における気体の閉じ込めを低減することができる。
【0020】
基板ステージ20は、例えば真空力などにより基板を保持する基板チャック21と、ベース定盤83の上をXY方向に移動可能な移動部22とを含みうる。基板ステージ20(移動部22)をXY方向に移動させることで基板WをXY方向に駆動し、モールドMと基板Wとの位置決め(相対的な位置)、および供給部30と基板Wとの位置決めを行うことができる。また、基板ステージ20は、XY方向に限られず、Z方向やθ方向に基板Wを駆動するように構成されてもよい。
【0021】
供給部30(吐出部、ディスペンサ)は、基板ステージ20によって下方に配置された基板上にインプリント材Rを供給する。本実施形態では、光の照射によって重合反応する樹脂がインプリント材Rとして用いられる。例えば、供給部30は、基板ステージ20により基板Wが供給部30に対して相対的に移動している状態で、インプリント材Rを複数の液滴として吐出することにより、基板W(対象ショット領域S)上にインプリント材Rを供給することができる。
【0022】
硬化部40(光照射部)は、インプリント材を重合反応させるための光を基板W上のインプリント材Rに照射してインプリント材を硬化させる。本実施形態の硬化部40は、例えば、予備硬化部41と本硬化部42とを含みうる。予備硬化部41は、後述する予備硬化工程においてインプリント材Rを第1目標硬度に硬化させるための光(事前光Lp)を射出する。本実施形態の場合、予備硬化部41から射出された事前光Lpは、ハーフミラー43を透過して基板上のインプリント材Rに照射される。また、本硬化部42は、後述する本硬化工程においてインプリント材を第2目標硬度に硬化させる硬化光Lcを射出する。本実施形態の場合、本硬化部42から射出された硬化光Lpは、ハーフミラー43で反射されて基板上のインプリント材Rに照射される。ハーフミラー43は、事前光Lpを透過して硬化光Lcを反射するダイクロイックミラーなどによって構成されうる。
【0023】
ここで、インプリント材Rの第2目標硬度(本硬化)は、インプリント材Rを固化させることができる硬化の程度として定義されうる。例えば、第2目標硬度は、離型工程でモールドMをインプリント材Rから剥離した後においても、モールドMの凹凸パターンを転写することで得られたインプリント材Rのパターン形状を維持することができるインプリント材Rの硬化の程度として定義される。
【0024】
また、インプリント材Rの第1目標硬度は、供給部30から基板上への供給時におけるインプリント材Rより硬度(粘度)が高いが、第2目標硬度より硬度(粘度)が低いインプリント材Rの硬化の程度として定義されうる。つまり、第1目標硬度は、第2目標硬度より高い流動性を有しているが、供給部30から基板上への供給時におけるインプリント材Rより低い流動性を有しているインプリント材Rの硬化の程度として定義されうる。第1目標硬度は、モールドMと基板上のインプリント材Rとを接触させた状態でモールドMと基板Wとを相対駆動することができるのであれば、基板上への供給時におけるインプリント材Rの硬度より高く且つ第2目標硬度より低い範囲内で任意に設定される。例えば、第1目標硬度は、第2目標硬度の20%~80%の範囲内の所定値、好ましくは第2目標硬度の40%~60%の範囲内の所定値に設定されうる。
【0025】
計測部50は、例えば、モールドMに設けられたマークと基板Wに設けられたマークとを検出するTTM(Through The Mold)スコープを含み、モールドMのマークと基板Wのマークとの位置関係を計測する。これにより、制御部70は、計測部50で計測されたモールドMのマークと基板Wのマークとの位置関係に基づいて、モールドMと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を行うことができる。
【0026】
検出部60は、XY方向におけるモールドMと基板Wとの相対位置を検出する。例えば、検出部60は、レーザ干渉計を含み、基板ステージ20に設けられた反射板23にレーザ光を照射し、反射板23で反射されたレーザ光によって基板ステージ20の位置を検出する。本実施形態の場合、検出部60は、インプリントヘッド10(モールドM)が固定されているブリッジ定盤84に固定されている。そのため、検出部60は、基板ステージ20(基板W)の位置に基づいて、インプリントヘッド10(モールドM)と基板ステージ20(基板W)の相対位置を検出することができる。また、計測部50は、インプリント装置に設けられたリレー光学系を介して、モールドに形成されたマークと基板に形成されたマークとを検出することによって位置関係を計測するように構成されていてもよい。これにより、制御部70は、検出部60の検出結果に基づいて、インプリントヘッド10(モールドM)と基板ステージ20(基板W)との相対位置を制御することができる。
【0027】
[インプリント処理]
次に、本実施形態のインプリント装置100で行われるインプリント処理について説明する。
図2は、本実施形態のインプリント装置100で行われるインプリント処理を示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートの各工程は、制御部70によって制御されうる。また、
図2に示すフローチャートは、モールドMがインプリントヘッド10によって保持され、且つ、基板Wが基板ステージ20によって保持された状態において開始される。
【0028】
S11では、制御部70は、基板ステージ20により供給部30と基板Wとを相対的に移動させながら供給部30にインプリント材Rを吐出させることにより、基板Wの対象ショット領域S上にインプリント材Rを供給する(供給工程)。供給工程が終了したら、制御部70は、モールドM(パターン領域Ma)の下方に対象ショット領域Sが配置されるように、基板ステージ20により基板Wを駆動する。S12では、制御部70は、インプリントヘッド10によりモールドMを-Z方向に駆動してモールドMと基板Wとの間隔を狭めることで、モールドMと基板上のインプリント材Rとを接触させる(接触工程)。S13では、制御部70は、モールドMのパターン凹部にインプリント材Rが充填されるように、所定の時間が経過するまで待機する(充填工程)。
【0029】
S14では、制御部70は、モールドMと基板上のインプリント材Rとが接触している状態で、モールドMと基板Wとの位置合わせを行う(位置合わせ工程)。位置合わせ工程では、モールドMのマークと基板Wのマークとの位置関係を計測部50に計測させ、その計測結果に基づいて、モールドMのマークと基板Wのマークとが目標位置関係になるように、モールドMと基板Wとの相対位置が制御されうる。
【0030】
図3(a)は、位置合わせ工程におけるモールドMと基板Wとの相対位置の制御例を示すブロック線図である。
図3(a)において、減算器71および補償器72は制御部70の構成要素である。減算器71は、計測部50で計測されたモールドMのマークと基板Wのマークとの位置関係の情報を取得し、当該位置関係と目標位置関係との偏差e
1を算出して補償器72に出力する。補償器72は、例えばPID補償器を含み、減算器71で算出された偏差e
1が低減されるように(例えば零になるように)基板ステージ20を駆動するための操作指令値(操作量)を決定し、決定した操作指令値を基板ステージ20に与える。これにより、モールドMのマークと基板Wのマークとが目標位置関係になるように、モールドMと基板Wとの相対位置を制御することができる。
【0031】
S15では、制御部70は、モールドMと基板上のインプリント材Rとが接触している状態で、硬化部40(本硬化部42)によりインプリント材Rに硬化光Lcを照射することにより、当該インプリント材Rを第2目標硬度に硬化させる(本硬化工程)。本硬化工程では、位置合わせ工程で最終的に得られたモールドMと基板Wとの相対位置が目標相対位置として設定され、当該目標相対位置が維持されるようにモールドMと基板Wとの相対位置が制御されうる。相対位置の制御は、モールドMおよび基板Wの少なくとも一方の位置を制御することによって行われてもよい。例えば、基板Wを保持する基板ステージ20の位置を一定にすることによって、モールドMと基板Wとの目標相対位置を維持してもよい。即ち、モールドMと基板Wとの相対位置の制御モードが、位置合わせ工程と本硬化工程とで切り替えられる。
【0032】
図3(b)は、本硬化工程におけるモールドMと基板Wとの相対位置の制御例を示すブロック線図である。
図3(b)において、減算器73および補償器74は制御部70の構成要素である。まず、制御部70は、位置合わせ工程で最終的に得られたモールドMと基板Wとの相対位置の情報を取得し、その相対位置を目標相対位置として設定する。減算器73は、検出部60で検出されたモールドMと基板Wとの相対位置の情報を取得し、当該相対位置と目標相対位置との偏差e
2を算出して補償器74に出力する。補償器74は、例えばPID補償器を含み、減算器73で算出された偏差e
2が低減されるように(例えば零になるように)基板ステージ20を駆動するための操作指令値(操作量)を決定し、決定した走査指令値を基板ステージ20に与える。これにより、位置合わせ工程で最終的に得られたモールドMと基板Wとの相対位置が維持するように、モールドMと基板Wとの相対位置を制御することができる。
【0033】
S16では、制御部70は、インプリントヘッド10によりモールドMを+Z方向に駆動してモールドMと基板Wとの間隔を広げることで、第2目標硬度に硬化したインプリント材RからモールドMを剥離する(離型工程)。S17では、制御部70は、次にインプリント処理を行うべきショット領域(次のショット領域)が基板上にあるか否かを判断する。次のショット領域がある場合にはS11に進み、次のショット領域がない場合には終了する。
【0034】
[予備硬化工程について]
モールドMと基板上のインプリント材Rとの接触工程(S12)では、基板上でインプリント材Rを拡がり易い方がよいため、インプリント材Rの粘度が低い(即ち、流動性が高い)方が好ましい。一方、モールドMと基板Wとの位置合わせ工程(S14)では、床からの振動等の外乱の影響によりモールドMと基板Wとの位置合わせ精度が低下しうるため、インプリント材Rの粘度を高めて、当該外乱の影響を低減させることが好ましい。本実施形態のインプリント装置100では、位置合わせ工程と並行して又は位置合わせ工程の前において、基板上のインプリント材Rに事前光Lpを照射することで、当該インプリント材Rを第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程を行う。これにより、位置合わせ工程におけるモールドMと基板Wとの相対位置を変動しづらくし、モールドMと基板Wとの位置合わせ精度を向上させることができる。
【0035】
しかしながら、予備硬化工程において、硬化光Lcのようにインプリント材Rの反応感度が比較的高い光のみを用いると、インプリント材Rの硬化速度が高く、インプリント材Rの硬度を精度よく制御することが困難になりうる。この場合、例えば
図4(a)に示すように、外乱(振動等)の影響により、モールドMと基板Wとの相対位置にオフセット(位置ずれ、定常偏差と呼ぶこともある)が生じた状態でインプリント材Rが第1目標硬度に硬化することがある。このように第1目標硬度にインプリント材Rを硬化した状態では、モールドMと基板Wとの相対位置を変動しづらいため、当該オフセットを低減することが困難になりうる。一方、予備硬化工程において、インプリント材Rの反応感度が比較的低い光のみを用いると、インプリント材Rの硬度を精度よく制御することはできるが、
図4(b)に示すように、インプリント材Rの硬化速度が遅く、スループットの点で不利になりうる。
【0036】
そこで、本実施形態の予備硬化工程は、事前光Lpとして第1光L
1をインプリント材Rに照射する第1処理と、事前光Lpとして第2光L
2をインプリント材に照射する第2処理とを含む。そして、予備硬化工程は、第2処理の終了タイミングが第1処理の終了タイミングより遅くなるように制御される。
図5に示すように、第1光L
1は、インプリント材Rが第1反応感度を示す第1波長(例えば360nm)を有する光であり、第2光L
2は、インプリント材Rが第1反応感度より低い第2反応感度を示す第2波長(例えば405nm)を有する光である。
図5は、光の波長とインプリント材Rの反応感度との関係を示す図である。このように第1光L
1および第2光L
2を用いて予備硬化工程を制御することにより、
図4(c)に示すように、モールドMと基板との位置合わせ精度およびスループットを両立させることができる。ここで、第1光L
1は、インプリント材Rの反応感度が硬化光Lcと同じ光であってもよいし、当該反応感度が硬化光Lcより低い光であってもよい。また、第1光L
1は、硬化光Lcと同じ波長であってもよい。
【0037】
次に、予備硬化部41の構成について説明する。
図6は、硬化部40(予備硬化部41、本硬化部42)の構成例を示す概略図である。本実施形態の予備硬化部41は、第1光L
1を射出する第1光源41aと、第2光L
2を射出する第2光源41bと、ミラー41cと、ハーフミラー41dとを含みうる。第1光源41aおよび第2光源41bはそれぞれ、水銀ランプやLEDなどによって構成されうる。ハーフミラー41dは、例えば、第1光L
1を反射して第2光L
2を透過するダイクロイックミラーなどによって構成されうる。第1光源41aから射出された第1光L
1は、ハーフミラー41dで反射されて、事前光Lpとして予備硬化部41から射出される。一方、第2光源41bから射出された第2光L
2は、ミラー41cで反射された後、ハーフミラー41dを透過して、事前光Lpとして予備硬化部41から射出される。
【0038】
また、予備硬化部41は、制御部70の指示に従って第1光源41aを駆動する第1駆動部41eと、制御部70の指示に従って第2光源41bを駆動する第2駆動部41fとを含みうる。制御部70は、第1駆動部41eおよび第2駆動部41fに対し、各光源の駆動電流値を指令値として入力してもよいし、各光源から射出される光の目標強度を指令値として入力してもよい。駆動電流値を指令値として入力する場合では、第1駆動部41eおよび第2駆動部41fのそれぞれに、各光源の駆動電流を指令値どおりに調整するための定電流回路を設けるとよい。一方、光の目標強度を指令値として入力する場合、第1駆動部41eおよび第2駆動部41fのそれぞれは、各光源から射出された光の強度をセンサ(例えばフォトダイオード)で検知し、その検知結果に基づいて各光源の駆動電流を調整するとよい。本実施形態の構成により、第1光源41aおよび第2光源41bを独立して制御する(動作させる)ことができるため、それらの光源を同時点灯させたり同時消灯させたりすることや、どちらか一方の光源のみを点灯させることができる。
【0039】
次に、予備硬化工程における事前光Lpの制御方法について説明する。
図7は、インプリント材Rにおける有効光量と粘度との関係(インプリント材Rの特性)を示す図である。有効光量Doseとは、インプリント材Rの反応に寄与する光の積算露光量のことである。インプリント材Rの特性は、
図7に示すように、有効光量の増加に応じて3つの段階を有する。第1段階は、「不感領域」とも呼ばれ、有効光量に対して粘度が殆ど変化しない段階であり、有効光量が閾値Thに達したときに第2段階に移行する。第2段階は、有効光量の増加に応じて粘度が増加する段階であり、第1段階に比べて、有効光量の変化に対する粘度の変化率が5倍以上(インプリント材によっては10倍以上)になる段階である。本実施形態の場合、第2段階では、有効光量の増加に応じてインプリント材Rの粘度が線形的に増加しうる。また、第3段階は、インプリント材Rが第2目標硬度に到達して本硬化した段階である。ここで、有効光量Doseは、以下の式に示すように、インプリント材Rに照射される光の強度iと、当該光に対するインプリント材Rの反応感度rと、インプリント材Rへの当該光の照射時間tとによって求められうる。
有効光量Dose = 光強度i × 反応感度r × 照射時間t
【0040】
このようなインプリント材Rの特性における第1段階では、インプリント材Rの感度が比較的高い第1光L1を用いて、光の照射時間をできるだけ短くしてスループットを向上させることが好ましい。一方、第2段階において第1光L1を用いると、インプリント材Rの粘度の増加速度が速く、インプリント材Rの硬度を第1目標硬度に精度よく制御することが困難になる。そのため、第2段階では、インプリント材Rの感度が比較的低い第2光L2を用いて、インプリント材Rの硬度を制御(調整)することが好ましい。
【0041】
したがって、本実施形態の予備硬化工程では、第1光L1の照射前(例えば供給工程)におけるインプリント材Rの粘度を基準として、第1光L1の照射によるインプリント材Rの粘度の増加が3%~20%の範囲内に収まるように第1処理を制御しうる。例えば、第1光L1による有効光量が閾値Thに達したときに第1処理が終了するように、第1処理を制御してもよい。そして、第1処理の終了後では、第2光L2のみを用いて、インプリント材Rの硬度を第1目標硬度に制御する。このように予備硬化工程を制御することにより、モールドMと基板との位置合わせ精度およびスループットを両立させることができる。
【0042】
[第1処理および第2処理の制御例]
予備硬化工程における第1処理および第2処理の制御例について説明する。
図8は、インプリント処理中における予備硬化工程(第1処理、第2処理)の実施タイミングを示すタイミングチャートであり、
図2に示すフローチャートにおける一部の工程の実施タイミングが示されている。また、
図4に示す例では、充填工程と位置合わせ工程とが「充填&位置合わせ工程」として示されており、その「充填&位置合わせ工程」の時間が、インプリント材Rの硬度を第1目標硬度にするための有効光量を得る時間に対して十分に長い場合を表している。
【0043】
図8(a)~(b)は、第1処理を終了した後に、第2処理を開始する制御例を示している。
図8(a)では、第1処理を終了した後に、所定の時間間隔をあけて第2処理を開始している。第1処理が終了してから第2処理が開始するまでの期間においては、インプリント材Rに事前光Lpが照射されないが、インプリント材Rの反応が進み、インプリント材Rの粘度が過渡応答的に増加することがある。また、
図8(b)では、第1処理を終了した後、時間間隔をあけずに第2処理を開始している。この場合、
図8(a)の制御例と比べて、予備硬化工程に要するトータル時間を短縮することができるとともに、過渡応答によるインプリント材Rの粘度の増加を回避することができるため、インプリント材Rの粘度(硬度)を精度よく制御することができる。
図8(a)および
図8(b)のいずれの場合においても、第2処理の終了タイミングが第1処理の終了タイミングより遅くなるように予備硬化工程が制御されうる。
【0044】
図8(c)~(d)は、第2処理の少なくとも一部の期間が第1処理に重なるように第2処理を開始する制御例を示している。
図8(c)では、第1処理の途中で第2処理を開始しており、
図8(d)では、第1処理を開始する前に第2処理を開始している。これらの制御例は、予備硬化部41において、第1光L
1を射出する第1光源41aと第2光L
2を射出する第2光源41bとを独立に設けたために行うことができるものであり、予備硬化工程に要するトータル時間の短縮に有利となる。これらの制御例では、制御部70は、
図7に示すようなインプリント材Rの特性情報と第1光L
1による有効光量とに基づいて、第1処理によるインプリント材Rの粘度の変化を推定し、その推定結果に基づいて第2処理を制御することが好ましい。
図8(c)~(d)のいずれの制御例においても、第2処理の終了タイミングが第1処理の終了タイミングより遅くなるように予備硬化工程が制御されうる。
【0045】
図8(e)は、第1処理においてインプリント材Rへの第1光L
1の照射を断続的に行うとともに、第2処理においてもインプリント材Rへの第2光L
2の照射を断続的に行う制御例を示している。この制御例では、第1処理および第2処理のそれぞれについての開始タイミングは制限されないが、第2処理の終了タイミングが第1処理の終了タイミングより遅くなるように予備硬化工程が制御されうる。また、この制御例では、第1光L
1の照射と第2光の照射L
2とが交互に行われてもよく、一例として、第1光L
1の照射と第2光L
2の照射とを1サイクルとして繰り返し行ってもよい。この場合において、インプリント材Rの粘度をサイクルごとに計測し、その計測結果に基づいて第1光L
1の照射および第2光L
2の照射を制御してもよい。インプリント材Rの粘度の計測は、例えば、基板ステージ20でモールドMと基板Wとを相対的に変動させたときの力を検出したり、基板ステージ20を所定の力で駆動したときのモールドMと基板Wとの相対的な変動量を検出したりすることにより行われうる。
【0046】
上述したように、本実施形態のインプリント装置100は、位置合わせ工程と並行して又は位置合わせ工程の前において、インプリント材Rを第1目標硬度に硬化させる予備硬化工程を行う。予備硬化工程は、インプリント材Rが第1反応感度を示す第1光L1をインプリント材Rに照射する第1処理と、インプリント材Rが第1反応感度より低い第2反応感度を示す第2光L2をインプリント材Rに照射する第2処理とを含む。そして、予備硬化工程は、第2処理の終了タイミングが第1処理の終了タイミングより遅くなるように制御される。このように第1光L1および第2光L2を用いて予備硬化工程を制御することにより、モールドMと基板との位置合わせ精度およびスループットを両立させることができる。
【0047】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態について説明する。充填工程(S13)では、モールドMのパターン凹部にインプリント材Rを迅速に充填するため、インプリント材Rの粘度はできるだけ低いことが好ましい。そのため、インプリント材Rの粘度を増加させる予備硬化工程は、充填工程の後に行われることが好ましい。そこで、本実施形態では、予備硬化工程が、充填工程(S13)の後において、位置合わせ工程(S14)と並行して又は位置合わせ工程(S14)の前に行われる。なお、本実施形態は、第1実施形態を基本的に引き継ぐものであり、インプリント装置100の構成やインプリント処理の基本的な内容については第1実施形態で説明したとおりである。
【0048】
図9は、インプリント処理中における予備硬化工程(第1処理、第2処理)の実施タイミングを示すタイミングチャートである。
図9に示す例では、予備硬化工程(第1処理、第2処理)が、充填工程(S13)の後において、位置合わせ工程(S14)と並行して行われている。また、
図9に示す例では、第1処理が終了した後に第2処理が行われているが、それに限られず、
図8(a)~(e)に示す例のように第1処理および第2処理を制御してもよい。例えば、予備硬化工程に要するトータル時間を短縮するため、充填工程が終了したタイミングで第1処理および第2処理の双方を開始してもよい。この場合においても、第2処理の終了タイミングが第1処理の終了タイミングより遅くなるように予備硬化工程が制御されうる。
【0049】
ここで、充填工程に必要な時間は、実験やシミュレーションなどによって事前に決定されうる。例えば、充填工程の時間が互いに異なる複数の条件の各々について、本硬化されたインプリント材Rに生じる欠陥数を計測し、当該欠陥数が閾値以下となる(好ましくは最も少なくなる)条件に基づいて「充填工程に必要な時間」を決定してもよい。また、モールドMのパターン凹部にインプリント材Rが充填している様子を観察するためのカメラ(スプレッドカメラ)を設け、そのカメラで得られた画像に基づいて充填工程を終了してもよい。
【0050】
上述した本実施形態によれば、事前光Lpが照射される前においてインプリント材Rの粘度が低い状態で充填工程(S13)が行われる。そのため、モールドMのパターン凹部へのインプリント材Rの充填を迅速に行うことができ、スループット点で更に有利になりうる。
【0051】
<第3実施形態>
本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態では、事前光Lpとして第1光L1をインプリント材Rに照射する第1処理を、予備硬化部41の第1光源41aの代わりに本硬化部42を用いて行う例について説明する。つまり、本実施形態では、第1光L1と硬化光Lcとで同じ光源、即ち同じ波長の光が使用される。なお、本実施形態は、第1~第2実施形態を基本的に引き継ぐものであり、インプリント装置100の構成やインプリント処理の基本的な内容については上述したとおりである。
【0052】
図10は、硬化部40の構成例を示す概略図である。本実施形態の予備硬化部41には、第1光源41a、第1駆動部41eおよびハーフミラー41dが設けられておらず、第1光L
1の射出は本硬化部42によって行われうる。例えば、本硬化部42から射出される光の強度が高すぎる場合には、NDフィルタなど光強度を調整(減衰)するフィルタ42aを本硬化部42に設け、当該フィルタ42aにより第1光L
1を生成してもよい。具体的には、予備硬化工程の第1処理を行う際には、駆動機構42bによりフィルタ42aを光路上に配置することで、事前光Lpとしての第1光L
1を本硬化部42から射出させることができる。一方、本硬化工程(S15)を行う際には、駆動機構42bによりフィルタ42aを光路上から外すことで、硬化光Lcを本硬化部42から射出させることができる。
【0053】
また、第2光源41bから射出された第2光L
2に対し、基板上での照度分布を空間的かつ時間的に制御する分布制御機構44(空間光変調器)を予備硬化部41に設けてもよい。分布制御機構44としては、例えば、DMD(Digital Micro-mirror Device)やLCD(Liquid Crystal Display)などの光学素子が用いられうる。分布制御機構44としてDMDを用いる場合、
図11に示すように、分布制御機構44(DMD)がミラー41cの代わりに配置される。分布制御機構44(DMD)を用いて第2光源41bからの第2光L
2の時間的・空間的な制御を行う場合、第2駆動部41fで第2光源41bの電流制御を行う場合と比較して、第2光L
2のON/OFF制御を高速に行うことができる。一例として、第2光源41bの過渡応答速度は数100μ秒であるのに対し、DMDでのパターン切り替え制御は第2光源41bの過渡応答に対して十分早く、数10μ秒で切り替えが終了するため、スループットの点で有利になりうる。
【0054】
また、分布制御機構44(DMD)を用いた第2処理は、第2光L2の照度分布を時間的・空間的に制御することができるため、インプリント材Rの粘度を増加させたい箇所に対して部分的に第2光L2を照射することができる。また、インプリント材Rの粘度を増加させたい箇所とそれ以外の箇所とで第2光L2の照度を異ならせることもできる。一例として、モールドMのパターン領域Maのうち、インプリント材Rの充填が容易な箇所と困難な箇所とで第2光L2の照度を異ならせることができる。また、モールドMと基板Wとの位置合わせに影響する振動の低減に大きく寄与可能な領域に対して、効率よく第2光L2を照射することができる。さらに、対象ショット領域Sの周縁部に対して部分的に第2光L2を照射することで、対象ショット領域Sからのインプリント材Rのはみ出し(浸み出し)を低減することができる。
【0055】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、基板に供給(塗布)されたインプリント材に上記のインプリント装置(インプリント方法)を用いてパターンを形成する工程と、かかる工程でパターンが形成された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0056】
インプリント装置を用いて成形した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0057】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0058】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。
図12(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウェハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0059】
図12(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図12(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギとして光を型4zを通して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0060】
図12(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0061】
図12(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図12(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0062】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0063】
10:インプリントヘッド、20:基板ステージ、30:供給部、40:硬化部、41:予備硬化部、42:本硬化部、50:計測部、60:検出部、70:制御部、100:インプリント装置