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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】変圧器過負荷保護装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20231215BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20231215BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20231215BHJP
   H02J 3/12 20060101ALI20231215BHJP
   H02J 3/18 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H02J3/46
H01F27/00 J
H01F41/00 F
H02J3/12
H02J3/18 178
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020008606
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021118561
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】安部 晃平
(72)【発明者】
【氏名】堀 和彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 重典
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-201177(JP,A)
【文献】特開昭55-103045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H01F 27/00
H01F 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備機としての変圧器を含む複数の変圧器が設けられる変電所において、前記変圧器を過負荷から保護する装置である変圧器過負荷保護装置であって、
前記変圧器を過負荷から保護するための制御を行う制御手段を備えており、
前記制御手段は、
前記予備機としての変圧器の変圧器保護リレーが動作していること、
前記予備機としての変圧器に係る母線保護継電器が動作していること、
又は、変電所における前記予備機としての変圧器を含む複数の前記変圧器についてタップずれ検知器によりタップずれが検出されたこと、
の少なくとも何れかが生起した場合、
前記予備機を投入する指令である予備機投入指令を発しないようにする
ことを特徴とする変圧器過負荷保護装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記予備機としての変圧器の変圧器保護リレーが動作していること、
前記予備機としての変圧器に係る母線保護継電器が動作していること、
又は、変電所における前記予備機としての変圧器を含む複数の前記変圧器についてタップずれ検知器によりタップずれが検出されたこと、
の少なくとも何れかが生起した場合、
全体的なオンオフを切り替える活殺スイッチを自動的に除外する活殺スイッチ自動除外指令を発する
ことを特徴とする請求項1に記載の変圧器過負荷保護装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記変電所における前記予備機としての変圧器以外の複数の前記変圧器の少なくとも何れかの負荷率が所定値以上となると、前記変圧器に係るタップ切替をロックする
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変圧器過負荷保護装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記変電所における前記予備機としての変圧器以外の複数の前記変圧器の少なくとも何れかの負荷率が特定値以上となると、前記予備機としての変圧器の一次母線側の遮断器の投入指令を送出し、次いで、所定時間の経過後に、前記予備機としての変圧器の二次母線側の遮断器の投入指令を送出する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の変圧器過負荷保護装置。
【請求項5】
予備機としての変圧器を含む複数の変圧器が設けられる変電所において、前記変圧器を過負荷から保護する方法である変圧器過負荷保護方法であって、
前記変圧器を過負荷から保護するための制御を行う制御手段によって実行され、
前記制御手段は、
前記予備機としての変圧器の変圧器保護リレーが動作していること、
前記予備機としての変圧器に係る母線保護継電器が動作していること、
又は、変電所における前記予備機としての変圧器を含む複数の前記変圧器についてタップずれ検知器によりタップずれが検出されたこと、
の少なくとも何れかが生起した場合、
前記予備機を投入する指令である予備機投入指令を発しないようにする
ことを特徴とする変圧器過負荷保護方法。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記予備機としての変圧器の変圧器保護リレーが動作していること、
前記予備機としての変圧器に係る母線保護継電器が動作していること、
又は、変電所における前記予備機としての変圧器を含む複数の前記変圧器についてタップずれ検知器によりタップずれが検出されたこと、
の少なくとも何れかが生起した場合、
全体的なオンオフを切り替える活殺スイッチを自動的に除外する活殺スイッチ自動除外指令を発する
ことを特徴とする請求項5に記載の変圧器過負荷保護方法。
【請求項7】
前記制御手段により、前記変電所における前記予備機としての変圧器以外の複数の前記変圧器の少なくとも何れかの負荷率が所定値以上となると、前記変圧器に係るタップ切替がロックされる
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の変圧器過負荷保護方法。
【請求項8】
前記制御手段により、前記変電所における前記予備機としての変圧器以外の複数の前記変圧器の少なくとも何れかの負荷率が特定値以上となると、前記予備機としての変圧器の一次母線側の遮断器の投入指令が送出され、次いで、所定時間の経過後に、前記予備機としての変圧器の二次母線側の遮断器の投入指令が送出される
ことを特徴とする請求項5ないし請求項7の何れかに記載の変圧器過負荷保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所の変圧器を過負荷から保護する装置である変圧器過負荷保護装置、及び当該装置において実行可能な変圧器過負荷保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-201177号公報(特許文献1)には、変電所における変圧器のタップ切換制御装置が開示されている。
この装置では、複数の負荷時タップ切換変圧器を有する変電所において、1台を予備機として不使用であって、運転中の変圧器及び母線の少なくとも一方に故障が発生して系統から切り離された際に、健全変圧器が過負荷となった場合に、予備機を系統に接続して過負荷が解消される。
そしてこの装置では、二次母線と遮断されている予備の負荷時タップ切換変圧器は並列運転判定手段により通常は並列運転中とは見なされないが、この予備の負荷時タップ切換変圧器が二次母線と接続されて運転中の負荷時タップ切換変圧器と並列運転されているように見せかける手段が設けられている。よって、予備の負荷時タップ切換変圧器も運転中の負荷時タップ切換変圧器と同時にタップ操作され、タップ位置が常に同じとなる。従って、予備の負荷時タップ切換変圧器の二次側遮断器を投入した際に横流が発生せず、過負荷が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-201177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の装置では、予備機のタップ位置が運転中のタップ切換変圧器と同時にタップ操作されることで、過負荷解消のための予備機の投入が、横流の防止された状態でなされる。
しかし、どのような場合にどのような手順で予備機が投入されるかについては、明らかにされていない。
そこで、本発明の主な目的の一つは、予備機が不具合発生を防止した状態で確実に投入される変圧器過負荷保護装置,変圧器過負荷保護方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、予備機としての変圧器を含む複数の変圧器が設けられる変電所において、前記変圧器を過負荷から保護する装置である変圧器過負荷保護装置であって、前記変圧器を過負荷から保護するための制御を行う制御手段を備えており、前記制御手段は、前記予備機としての変圧器の変圧器保護リレーが動作していること、前記予備機としての変圧器に係る母線保護継電器が動作していること、又は、変電所における前記予備機としての変圧器を含む複数の前記変圧器についてタップずれ検知器によりタップずれが検出されたこと、の少なくとも何れかが生起した場合、前記予備機を投入する指令である予備機投入指令を発しないようにすることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記制御手段は、前記予備機としての変圧器の変圧器保護リレーが動作していること、前記予備機としての変圧器に係る母線保護継電器が動作していること、又は、変電所における前記予備機としての変圧器を含む複数の前記変圧器についてタップずれ検知器によりタップずれが検出されたこと、の少なくとも何れかが生起した場合、全体的なオンオフを切り替える活殺スイッチを自動的に除外する活殺スイッチ自動除外指令を発することを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記制御手段は、前記変電所における前記予備機としての変圧器以外の複数の前記変圧器の少なくとも何れかの負荷率が所定値以上となると、前記変圧器に係るタップ切替をロックすることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、前記制御手段は、前記変電所における前記予備機としての変圧器以外の複数の前記変圧器の少なくとも何れかの負荷率が特定値以上となると、前記予備機としての変圧器の一次母線側の遮断器の投入指令を送出し、次いで、所定時間の経過後に、前記予備機としての変圧器の二次母線側の遮断器の投入指令を送出することを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、予備機としての変圧器を含む複数の変圧器が設けられる変電所において、前記変圧器を過負荷から保護する方法である変圧器過負荷保護方法であって、前記変圧器を過負荷から保護するための制御を行う制御手段によって実行され、前記制御手段は、前記予備機としての変圧器の変圧器保護リレーが動作していること、前記予備機としての変圧器に係る母線保護継電器が動作していること、又は、変電所における前記予備機としての変圧器を含む複数の前記変圧器についてタップずれ検知器によりタップずれが検出されたこと、の少なくとも何れかが生起した場合、前記予備機を投入する指令である予備機投入指令を発しないようにすることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、上記発明において、前記制御手段は、前記予備機としての変圧器の変圧器保護リレーが動作していること、前記予備機としての変圧器に係る母線保護継電器が動作していること、又は、変電所における前記予備機としての変圧器を含む複数の前記変圧器についてタップずれ検知器によりタップずれが検出されたこと、の少なくとも何れかが生起した場合、全体的なオンオフを切り替える活殺スイッチを自動的に除外する活殺スイッチ自動除外指令を発することを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、上記発明において、前記制御手段により、前記変電所における前記予備機としての変圧器以外の複数の前記変圧器の少なくとも何れかの負荷率が所定値以上となると、前記変圧器に係るタップ切替がロックされることを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、上記発明において、前記制御手段により、前記変電所における前記予備機としての変圧器以外の複数の前記変圧器の少なくとも何れかの負荷率が特定値以上となると、前記予備機としての変圧器の一次母線側の遮断器の投入指令が送出され、次いで、所定時間の経過後に、前記予備機としての変圧器の二次母線側の遮断器の投入指令が送出されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の主な効果の一つは、予備機が不具合発生を防止した状態で確実に投入される変圧器過負荷保護装置,変圧器過負荷保護方法が提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の変圧器過負荷保護装置に関連する事項である変電所の短絡容量抑制システムを含む系統構成図である。
図2図1に係る新規発電機連系前の系統構成図である。
図3図1の短絡容量抑制システムに対する比較例に係る系統構成図である。
図4】本発明の変圧器過負荷保護装置を含む系統構成図である。
図5図4の変圧器過負荷保護時の系統構成図である。
図6図4の変圧器過負荷保護装置に対する比較例1(負荷制御ケース)に係る系統構成図である。
図7図4の変圧器過負荷保護装置に対する比較例2(電源制御ケース)に係る系統構成図である。
図8図4の変圧器過負荷保護装置を含むより詳細な系統構成図である。
図9図4の変圧器過負荷保護装置の制御に係るブロック図である。
図10図8の変圧器過負荷保護時の系統構成図である。
図11図8の変圧器過負荷保護時における時間(横軸)と設定許容負荷率(縦軸)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。本発明は、下記の形態及び変更例に限定されない。
【0009】
[変電所の短絡容量抑制]
変圧器過負荷保護装置に関連する事項である、変電所の短絡容量抑制方法が、まず説明される。
【0010】
図1は、短絡容量抑制方法を実行可能な短絡容量抑制システムSSを含む系統構成図である。図2は、図1に係る新規発電機連系前の系統構成図である。図3は、比較例に係る系統構成図である。
図2の新規発電機連系前の系統において、変電所Aと、発電所B,Cとが設けられている。
変電所Aは、複数(4台)の変圧器1B~4Bを有している。各変圧器1B~4Bは、一次母線1と二次母線2との間に設けられる。一次母線1は275kV(キロボルト)母線であり、二次母線2は154kV母線である。尚、一次母線1の電圧は、275kVから変更されても良い。又、二次母線2の電圧は、154kVから変更されても良い。
発電所Bは、二次母線2に対し、遮断器CBA1を介して接続されている。発電所Bは、発電機GBと、負荷LBとを有している。遮断器CBA1は、変電所Aに設けられる。尚、変電所Aの二次母線2側には、遮断器CBA2を介して、別の負荷が接続されている。又、二次母線2側には、例えば光電池(太陽光発電装置)といった小規模の発電機GGが適宜接続される。
発電所Cは、遮断器CBGを介して一次母線1に接続されている。発電所Cは、発電機GC1と、負荷LCとを有している。
【0011】
発電所C(発電機GC1)等からは、短絡電流SIが流れ得る。短絡電流SIは、例えば二次母線2側で短絡故障(故障点F)が生起した場合に発生する。短絡電流SIと回路電圧との積で表される短絡容量は、主に系統に連系する発電機の量が多いほど大きくなる。図2の系統において、短絡電流SIは、31.0kA(キロアンペア)とする。
遮断器CBA2は、短絡事故時に過大な短絡電流SIが流れ続けることを防止するために設けられ、故障点Fと二次母線2との間の電流を遮断する。遮断器CBA2が遮断可能な最大の短絡容量は、遮断器CBA2の処理可能な能力として決まっており、ここでは電流値において31.5kAである。よって、31.0kAの短絡電流SIは、遮断器CBA2によって遮断可能である。
又、同様に、遮断器CBA1は、発電所B側での短絡事故時に発電所B側で過大な短絡電流が流れ続けることを防止するために設けられ、その故障点と二次母線2との間の電流を遮断する。遮断器CBA1が遮断可能な最大の短絡容量は、遮断器CBA2と同様に31.5kAである。
【0012】
かような図2の系統において、発電所Cに新規の発電機GC2が単に連系される場合、図3に示されるように、発電機GC2の分だけ短絡電流SIが増加して、32.0kAとなる。短絡電流SIが32.0kAの大きさとなると、遮断器CBA2の最大遮断短絡容量に係る電流である31.5kAを超えているため、遮断器CBA2が容量不足となる。
同様に、発電所B側においても短絡電流が増加し得て、遮断器CBA1が容量不足となる。
よって、発電機GC2の増設に伴い、変電所Aにおける全ての遮断容量不足の遮断器CBA1,CBA2を取り替えることで変電所Aを改修する必要があり、改修の規模が増大して、発電機GC2の増設時の改修が高コストになる。
【0013】
これに対し、短絡容量抑制システムSSを含む図1の系統では、発電機GC2の増設に当たり、変圧器1B~4Bの1台(何れでも良いが変圧器1Bとする)が停止される(図1の二重“×”印SD)。かような停止は、短絡容量抑制方法,短絡容量抑制システムSSに相当する。そして、停止された変圧器1Bは、予備機とされる。
変圧器1Bの停止により、故障点Fにおける短絡容量が小さくなり、発電機GC2が増設されても、短絡電流SIがより流れ難くなり、変圧器1Bを停止しない場合(上述の図3)の32.0kAに対し30.5kAとなる。よって、短絡電流SIが遮断器CBA1,CBA2の最大遮断容量を下回り、遮断器CBA1,CBA2を取り替える必要がなくなって、発電機GC2の増設に低コストで対応可能である。
又、停止された変圧器1Bの予備機化により、変圧器2B~4Bに過負荷が生じ得る所定の場合に変圧器1Bを投入することで、当該過負荷からの保護がなされる(変圧器過負荷保護装置,変圧器過負荷保護方法)。この点が以下に説明される。
【0014】
[変電所の変圧器過負荷保護]
図4は、変圧器過負荷保護装置TSを含む系統構成図である。図5は、変圧器過負荷保護時の系統構成図である。図6は、比較例1に係る系統構成図である。図7は、比較例2に係る系統構成図である。
図6の比較例1の系統において、上述の図3の系統と同様に、変電所Aと、発電所Bとが設けられている。又、発電所Bと同様に二次母線2に接続された発電所C’が設けられている。変電所Aには、過負荷保護装置OPが設けられている。又、同系統において、一次母線1は一次甲母線1αと一次乙母線1βとに詳述され、二次母線2は二次甲母線2αと二次乙母線2βとに詳述される。
変電所Aの変圧器1B,3Bは、一次甲母線1αと二次甲母線2αとに接続され、変圧器2B,4Bは、一次乙母線1βと二次乙母線2βとに接続される。又、変圧器1Bは停止されている(図6の二重“×”印SD1)。
各変圧器2B,4Bは、一次乙母線1β側及び二次乙母線2βにおいてそれぞれ遮断器CB2B,CB4Bを有している。
一次母線1は、一次甲母線1αと一次乙母線1βとの間において遮断器CB11を有しており、二次母線2は、二次甲母線2αと二次乙母線2βとの間において遮断器CB12を有している。
【0015】
図6において、二次乙母線2βに故障F1が発生した場合、比較例1では、二次乙母線2βにつながる変圧器2B,4Bの遮断器CB2B,CB4Bと、二次母線2の遮断器CB12とが切れて、変圧器2B,4Bが停止される(図6の“×”印SDCB2,SDCB4,SD12)。
すると、変圧器3Bの負荷が増大し、変圧器3Bに過負荷OLが発生する。この変圧器3Bの過負荷は、過負荷保護装置OPにより検出される。
過負荷保護装置OPは、変電所Aから発電所C’へ接続される送電線PLAC’における送電を、変電所Aにおいて自動で遮断する(図6の“×”印SDAC’)。
この遮断により、発電所C’の発電機GC’1が変電所Aに対して切り離され、負荷の減少により変圧器3Bの過負荷OLが解消される。即ち、変圧器3Bにおける負荷が制御されて、変圧器3Bの過負荷が解消される(負荷制御ケース)。
【0016】
又、図7の比較例2の系統は、上述の比較例1の系統と同様に成る。比較例2の系統において、二次乙母線2βに故障F2が発生した場合、上述の比較例1と同様に、変圧器2B,4Bの遮断器CB2B,CB4Bと、二次母線2の遮断器CB12とが切れて(図7の“×”印SDCB2,SDCB4,SD12)、変圧器3Bの過負荷OLが過負荷保護装置OPにより検出される。
すると、過負荷保護装置OPは、発電所C’の発電機GC’1に対し、転送遮断指令FSDを発信する。転送遮断指令FSDは、変電所Aと発電所C’との間に設けられた広域の通信路(信号伝送路)により伝達される。
発電所C’において転送遮断指令FSDを受信すると、発電機GC’1は系統から遮断され(図7の“×”印SDC’)、変圧器3Bの過負荷OLが解消される。即ち、電源としての発電機GC’1が変電所Aからの通信により制御されて、変圧器3Bの過負荷が解消される(電源制御ケース)。
【0017】
この比較例1のケースでは、負荷遮断により変圧器3Bの過負荷OLが解消されるものの、発電機GC1が停止されるため、電力の供給支障が発生してしまう。
又、比較例2のケースでは、発電に支障が生じてしまう。
【0018】
これら比較例1,2に対し、本発明に係る図4の変圧器過負荷保護装置TSでは、図5に示される通り、故障F3の発生時に予備機としての変圧器1Bを投入する。
即ち、二次乙母線2βに故障F3が発生した場合、上述の比較例1と同様に、変圧器2B,4Bの遮断器CB2B,CB4Bと、二次母線2の遮断器CB12とが切れて(図5の“×”印SDCB2,SDCB4,SD12)、変圧器3Bの過負荷が過負荷保護装置OPにより検出される。
すると、過負荷保護装置OPは、変圧器1Bに対し投入指令ONを発信し、停止されている変圧器1Bの投入を指令する。投入指令ONは、過負荷保護装置OPと変圧器1Bとの間に設けられたローカルな通信路(信号伝送路)により伝達される。
投入指令ONの受信に基づき、変圧器1B用の遮断器が遮断状態から投入状態に切り替えられて、変圧器1Bが投入される。
変圧器1Bの投入により、負荷は変圧器1B,3Bで賄われるようになる(図5の矢印L1,L3)。よって、変圧器過負荷保護装置TSでは、故障F3の発生時において、変圧器3Bの過負荷が解消される。又、変圧器過負荷保護装置TSでは、故障F3の発生時において、発電機GC’1が切り離されず、電力の供給支障あるいは発電支障の発生が防止される。
【0019】
[変電所の変圧器過負荷保護の詳細]
図8は、変圧器過負荷保護装置TSを含むより詳細な系統構成図(単線結線図)である。
変圧器過負荷保護装置TSは、上述の比較例あるいは比較例1,2のような既設の変圧器過負荷保護装置に1以上の電子回路基板(制御手段)を付加することで構成可能である。制御手段は、変圧器1B~4Bを過負荷から保護するための制御を行う。変圧器過負荷保護装置TS(制御手段)により、変圧器過負荷保護方法が実行される。
【0020】
変電所Aには、図1の系統のように、二次母線2側に発電所Bが接続され、一次母線1側に発電所Cが接続されている。
より詳しくは、変電所Aの一次母線1には、一対の送電線PLAC1,PLAC2及び断路器LSG1~LSG4を介して、発電所Cの発電機GC1が接続されている。送電線PLAC1は、断路器LSG1を介して一次甲母線1αに接続されると共に、断路器LSG2を介して一次乙母線1βに接続される。送電線PLAC2は、断路器LSG3を介して一次甲母線1αに接続されると共に、断路器LSG4を介して一次乙母線1βに接続される。
送電線PLAC1には、275kVの母線保護継電器BPG1及び遮断器CBG1が設けられ、送電線PLAC2には、275kVの母線保護継電器BPG2及び遮断器CBG2が設けられる。母線保護継電器BPG1と送電線PLAC1との間には、各種の保護継電器等(ここでは母線保護継電器BPG1)へ電流を入力可能な変流器ECG1が介装され、母線保護継電器BPG2と送電線PLAC2との間には、同様に変流器ECG2が介装される。
【0021】
又、変電所Aにおいて、一次甲母線1αと一次乙母線1βとの間には、断路器LS1α,LS1β、並びに、一対の変流器EC1α,EC1β及び275kVの母線保護継電器BP1α,BP1βが設けられる。母線保護継電器BP1αに変流器EC1αが接続され、母線保護継電器BP1βに変流器EC1βが接続される。
母線保護継電器BP1α,BP1βの間には、遮断器CB11が設けられる。
母線保護継電器BPG1,BPG2,BPB11,BPB21,BPB31,BPB41,BP1α,BP1β(以下「275kVBP」とも言う)は、一次母線1側の故障が判定されると、その故障が一次甲母線1α側であるかあるいは一次乙母線1β側であるかを判定し、遮断器CBG1,CBG2,CBB11,CBB21,CBB31,CBB41のうち故障した側に電気的に接続されるもの及び遮断器CB11により、一次甲母線1α及び一次乙母線1βのうち故障した側のものについて遮断する。
同様に、二次甲母線2αと二次乙母線2βとの間には、断路器LS2α,LS2β、並びに、一対の変流器EC2α,EC2β及び154kVの母線保護継電器BP2α,BP2βが設けられる。母線保護継電器BP2αに変流器EC2αが接続され、母線保護継電器BP2βに変流器EC2βが接続される。
母線保護継電器BP2α,BP2βの間には、遮断器CB12が設けられる。
【0022】
変電所Aの二次母線2には、一対の送電線PLAB1,PLAB2及び断路器LSL1~LSL4を介して、発電所Bの発電機GB又は負荷LBが接続されている。送電線PLAB1は、断路器LSL1を介して二次甲母線2αに接続されると共に、断路器LSL2を介して二次乙母線2βに接続される。送電線PLAB2は、断路器LSL3を介して二次甲母線2αに接続されると共に、断路器LSL4を介して二次乙母線2βに接続される。
発電機GBにつながる送電線PLAB1には、154kVの母線保護継電器BPL1及び遮断器CBL1が設けられ、負荷LBにつながる送電線PLAB2には、同様に母線保護継電器BPL2及び遮断器CBL2が設けられる。母線保護継電器BPL1と送電線PLAB1との間には、変流器ECL1が介装され、母線保護継電器BPL2と送電線PLAB2との間には、変流器ECL2が介装される。
母線保護継電器BPL1,BPL2,BPB12,BPB22,BPB32,BPB42,BP2α,BP2β(以下「154kVBP」とも言う)は、二次母線2側の故障が判定されると、その故障が二次甲母線2α側であるかあるいは二次乙母線2βであるかを判定し、遮断器CBL1,CBL2,CBB12,CBB22,CBB32,CBB42のうち故障した側に電気的に接続されるもの及び遮断器CB12により、二次甲母線2α及び二次乙母線2βのうち故障した側のものについて遮断する。
【0023】
変電所Aにおける一次母線1と二次母線2との間の変圧器1Bは、運転状態に合わせて切換られるタップ(略称「43SP」)を有している。運転状態は、並列状態と、単独状態とを含む。並列状態に切り替えられることで、全変圧器1B~4BのLR(負荷時タップ切替)が同時に制御され、変圧器1B~4B間の横流の発生が防止される。他方、単独状態に切り替えられると、変圧器1B~4Bの各自でLRが制御される。「43SP並列」は、タップを具備し、並列状態に切り替えていることを示す。変圧器1Bは、LRT、即ち負荷時タップ切替付き変圧器1Bとも言える。LRは、タップ切替装置によりなされる。
変圧器1Bは、一次側接続線PLB11及び断路器LSB11,LSB12を介して、一次母線1に接続されている。断路器LSB11は、一次甲母線1α側に配置され、断路器LSB12は、一次乙母線1β側に配置される。
又、変圧器1Bは、二次側接続線PLB12及び断路器LSB13,LSB14を介して、二次母線2に接続されている。断路器LSB13は、二次甲母線2α側に配置され、断路器LSB14は、二次乙母線2β側に配置される。
一次側接続線PLB11には、275kVの母線保護継電器BPB11及び遮断器CBB11並びに変圧器保護継電器TPB11が設けられ、二次側接続線PLB12には、154kVの母線保護継電器BPB12及び遮断器CBB12並びに変圧器保護継電器TPB12が設けられる。母線保護継電器BPB11と一次側接続線PLB11との間には、変流器ECB11が介装される。変圧器保護継電器TPB11と一次側接続線PLB11との間には、変流器ECB12が介装される。母線保護継電器BPB12と二次側接続線PLB12との間には、変流器ECB13が介装される。変圧器保護継電器TPB12と二次側接続線PLB12との間には、変流器ECB14が介装される。
【0024】
変圧器2Bは、二次母線2側の母線保護継電器の接続態様を除き、変圧器1Bと同様に設けられる。
即ち、変圧器2Bは、一次側接続線PLB21及び断路器LSB21,LSB22を介して、一次母線1に接続されている。変圧器2Bは、二次側接続線PLB22及び断路器LSB23,LSB24を介して、二次母線2に接続されている。一次側接続線PLB21には、275kVの母線保護継電器BPB21及び遮断器CBB21並びに変圧器保護継電器TPB21が設けられ、二次側接続線PLB22には、154kVの母線保護継電器BPB22及び遮断器CBB22並びに変圧器保護継電器TPB22が設けられる。母線保護継電器BPB21と一次側接続線PLB21との間には、変流器ECB21が介装される。母線保護継電器BPB22と二次側接続線PLB22との間には、母線保護継電器BPB22側から順に、過電流継電器51H2,512,51F2、及び変流器ECB23が介装される。変圧器保護継電器TPB21と一次側接続線PLB21との間には、変流器ECB22が介装される。変圧器保護継電器TPB22と二次側接続線PLB22との間には、変流器ECB24が介装される。
過電流継電器51H2は、過電流を検出可能であり、過電流検出時にLRの動作をロックする。過電流継電器51H2は、変圧器2Bにおける負荷率150%以上の運転時(150%以上過負荷運転時)に、LRの動作をロックするためのLRロック信号を瞬時に送出する。尚、当該負荷率の閾値(所定値)は、150%以外の値を採用することができ、例えば120%以上270%以下の範囲内の値を採用することができる。
過電流継電器512は、過電流を検出可能であり、過電流検出時に予備の変圧器1Bの投入を指令する。過電流継電器512は、変圧器2Bにおける負荷率100%以上の運転時に、予備の変圧器1Bを投入するための信号(後述の1B一次CB投入指令CB1ON及び1B二次CB投入指令CB2ON)を瞬時に送出する。
過電流継電器51F2は、過電流継電器512と同様に成る。過電流継電器51F2,512が二重で設けられることで、予備の変圧器1Bの投入についての信頼度が向上する。
【0025】
変圧器3Bは、変圧器2Bと同様に設けられる。
即ち、変圧器3Bは、一次側接続線PLB31及び断路器LSB31,LSB32を介して、一次母線1に接続されている。変圧器3Bは、二次側接続線PLB32及び断路器LSB33,LSB34を介して、二次母線2に接続されている。一次側接続線PLB31には、275kVの母線保護継電器BPB31及び遮断器CBB31並びに変圧器保護継電器TPB31が設けられ、二次側接続線PLB32には、154kVの母線保護継電器BPB32及び遮断器CBB32並びに変圧器保護継電器TPB32が設けられる。母線保護継電器BPB31と一次側接続線PLB31との間には、変流器ECB31が介装される。母線保護継電器BPB32と二次側接続線PLB32との間には、母線保護継電器BPB32側から順に、過電流継電器51H3,513,51F3、及び変流器ECB33が介装される。変圧器保護継電器TPB31と一次側接続線PLB31との間には、変流器ECB32が介装される。変圧器保護継電器TPB32と二次側接続線PLB32との間には、変流器ECB34が介装される。
【0026】
変圧器4Bは、変圧器2Bと同様に設けられる。
即ち、変圧器4Bは、一次側接続線PLB41及び断路器LSB41,LSB42を介して、一次母線1に接続されている。変圧器4Bは、二次側接続線PLB42及び断路器LSB43,LSB44を介して、二次母線2に接続されている。一次側接続線PLB41には、275kVの母線保護継電器BPB41及び遮断器CBB41並びに変圧器保護継電器TPB41が設けられ、二次側接続線PLB42には、154kVの母線保護継電器BPB42及び遮断器CBB42並びに変圧器保護継電器TPB42が設けられる。母線保護継電器BPB41と一次側接続線PLB41との間には、変流器ECB41が介装される。母線保護継電器BPB42と二次側接続線PLB42との間には、母線保護継電器BPB42側から順に、過電流継電器51H4,514,51F4、及び変流器ECB43が介装される。変圧器保護継電器TPB41と一次側接続線PLB41との間には、変流器ECB42が介装される。変圧器保護継電器TPB42と二次側接続線PLB42との間には、変流器ECB44が介装される。
【0027】
又、変圧器過負荷保護装置TSは、変圧器1B~4Bにおける各タップの切替状態が揃っているかあるいはずれているかを検知するタップずれ検知器TOと、変圧器過負荷保護装置TSの全体的なオン(使用)、オフ(不使用)を切り替える(変圧器投入機能の使用あるいは不使用を切り替える)活殺スイッチ43TrCと、を有している。
【0028】
変圧器過負荷保護装置TS(制御手段)において、例えば図9に示されるような制御がなされる。
即ち、まず図9最上部のLRロック指令LRLに関し、変圧器2B,3B,4Bの過電流継電器51H2,51H3,51H4の少なくとも何れかが150%以上過負荷運転を検知した場合(非検知時0,検知時1)、OR回路S1の出力が1となる。
OR回路S1の出力側には、可変タイマーT1、及び引き延ばし回路S2が配置されている。
可変タイマーT1は、入力があった場合に、任意に設定された時間だけ遅延させて出力するものであり、LRロックに係る変電所Aの特性に合わせた調整のために設けられる。ここでは、設定可能時間が0.00s(秒)以上4.00s以下とされ、設定可能幅が0.01sとされている。可変タイマーT1の設定時間は、通常、0.00sあるいはこれに近い値に設定される。
引き延ばし回路S2は、パルス状の入力があった場合において、出力を所定時間継続させる(パルスを引き延ばす)。ここでは、所定時間は1.5sとされる。即ち、引き延ばし回路S2は、1.5s以下の入力について、1.5sに引き延ばして出力する。引き延ばし回路S2により、LRロック指令LRLについて確実な動作がもたらされる。
よって、過電流継電器51H2,51H3,51H4の少なくとも何れかが150%以上過負荷運転を検知した場合、LRロック指令LRLが発せられる。この指令により、LR盤にて昇降回路が自動でロックされる。
【0029】
次に、予備機である変圧器1Bの投入に関し、変圧器1Bは、一次母線1側の遮断器CBB11の投入(遮断解除)である1B一次CB投入指令CB1ONと、二次母線2側の遮断器CBB12の投入である1B二次CB投入指令CB2ONとにより投入される。
1B一次CB投入指令CB1ONは、AND回路S3の出力によって発せられる。AND回路S3の入力は、4つ存在し、AND回路S3の入力側には、4つのブロックあるいは回路が配置されている。
【0030】
即ち、AND回路S3の入力側には、43SP並列ブロックS4が接続されている。43SP並列ブロックS4は、変圧器1B~4Bのタップが並列状態に切り替えられているか否かを示し、並列状態である場合に1を出力する。
【0031】
又、AND回路S3の入力側には、43TrC使用ブロックS5が接続されている。43TrC使用ブロックS5は、活殺スイッチ43TrCがオンである場合に1を出力する。
【0032】
更に、AND回路S3の入力側には、OR回路S6が接続されている。
OR回路S6は、過電流継電器51F2,51F3,51F4と接続されている。
OR回路S6は、OR回路S1と同様に、変圧器2B,3B,4Bの過電流継電器51F2,51F3,51F4の少なくとも何れかが100%(特定値)以上過負荷運転を検知した場合、OR回路S6の出力が1となる。過電流継電器51F2,51F3,51F4はR相に係るものであり、過電流継電器512,513,514はB相に係るものである。B相に加え、R相において100%以上過負荷運転の発生が判定されるため、100%以上過負荷運転に係る動作がより一層確実なものとなる。
尚、OR回路S6とAND回路S3との間に、タイマー及び引き延ばし回路は介装されていない。又、過負荷運転に係る特定値は、100%以外の値とされても良く、LRロックに係る所定値と同じ値とされても良い。
【0033】
加えて、AND回路S3の入力側には、可変タイマー51C1が接続されている。
可変タイマー51C1は、可変タイマーT1と同様に成る。可変タイマー51C1の設定可能時間は、0.0s(秒)以上10.0s以下とされ、設定可能幅は、0.1sとされている。
【0034】
可変タイマー51C1の入力側には、AND回路S10が接続されている。
AND回路S10は、2つの入力を受ける。
AND回路S10の第1の入力は、変圧器2B,3B,4Bの過電流継電器512,513,514に関するものである。即ち、過電流継電器512,513,514は、過電流継電器51H2,51H3,51H4と同様に、OR回路S11により、少なくとも何れかにおいて100%以上過負荷運転を検知した場合、可変タイマーT2及び引き延ばし回路S12を介して、AND回路S10への1の出力をなす。可変タイマーT2は、可変タイマーT1と同様に成る。引き延ばし回路S12は、引き延ばし回路S2と同様に成る。
【0035】
AND回路S10の第2の入力は、予備機である変圧器1Bの条件に関するものである(1B全体条件C1B)。
1B全体条件C1Bは、変圧器1Bの二次母線2側の遮断器CBB12がオンとなっており遮断しているか否かについての1B二次CB入ブロックS20と、1B条件と、を含む。
【0036】
1B二次CB入ブロックS20は、遮断器CBB12がオンとなっており投入されていれば1を出力する。1B二次CB入ブロックS20は、OR回路S21及びNOT回路S22からなるNOR回路S23を介して、AND回路S10の入力側に接続されている。
【0037】
1B条件は、1B・TP動作ブロックS30を含む。
1B・TP動作ブロックS30は、変圧器1Bの変圧器保護継電器TPB11,TPB12(以下「1BTP」とも言う)が動作している場合に1を出力する。変圧器保護継電器1BTPは、変圧器1Bの投入後に動作する。
1B・TP動作ブロックS30は、OR回路S31及び引き延ばし回路S32を介して、NOR回路S23の入力側に接続されている。引き延ばし回路S32は、引き延ばし回路S2と同様に成る。
【0038】
又、1B条件は、275kVの母線保護継電器275kVBP又は154kVの母線保護継電器154kVBPに関するブロックS40,S43,S50,S53,S56、及び予備の変圧器1Bの断路器LSB11~LSB14の投入の把握に関するブロックS41,S43,S51,S54,S57を含む。
これらのORブロックS43につながる各ブロックが、以下順に説明される。
【0039】
即ち、275BP甲動作ブロックS40及び1B一次甲LS入ブロックS41は、それぞれAND回路S42の入力側に接続されている。
275BP甲動作ブロックS40は、一次甲母線1α側において275kVの母線保護継電器275kVBPがオンであれば、1を出力する。
1B一次甲LS入ブロックS41は、一次甲母線1α側の断路器LSB11がオンであれば、1を出力する。
AND回路S42は、OR回路S43の入力側に接続されている。
OR回路S43は、OR回路S31の入力側に接続されている。
【0040】
又、275BP乙動作ブロックS50及び1B一次乙LS入ブロックS51は、それぞれAND回路S52の入力側に接続されている。
275BP乙動作ブロックS50は、一次乙母線1β側において275kVの母線保護継電器275kVBPがオンであれば、1を出力する。
1B一次乙LS入ブロックS51は、一次乙母線1β側の断路器LSB12がオンであれば、1を出力する。
AND回路S52は、OR回路S43の入力側に接続されている。
【0041】
更に、154BP甲動作ブロックS53及び1B二次甲LS入ブロックS54は、それぞれAND回路S55の入力側に接続されている。
154BP甲動作ブロックS53は、二次甲母線2α側において154kVの母線保護継電器154kVBPがオンであれば、1を出力する。
1B二次甲LS入ブロックS54は、二次甲母線2α側の断路器LSB13がオンであれば、1を出力する。
AND回路S55は、OR回路S43の入力側に接続されている。
【0042】
加えて、154BP乙動作ブロックS56及び1B二次乙LS入ブロックS57は、それぞれAND回路S58の入力側に接続されている。
154BP乙動作ブロックS56は、二次乙母線2β側において154kVの母線保護継電器154kVBPがオンであれば、1を出力する。
1B二次乙LS入ブロックS57は、二次乙母線2β側の断路器LSB14がオンであれば、1を出力する。
AND回路S58は、OR回路S43の入力側に接続されている。
尚、1B・TP動作ブロックS30以外の1B条件において、1B一次甲LS入ブロックS41等及びAND回路S42等が省略されても良い。
【0043】
又、1B条件は、活殺スイッチ43TrCを自動的に除外してその切替を無効とする43TrC自動除外指令E43TrCにも関わっている。
即ち、43TrC自動除外指令E43TrCは、OR回路S60における1の出力をもってなされるところ、OR回路S60の入力側には、1B・TP動作ブロックS30と、OR回路S43とが接続される。
又、OR回路S60の入力側には、タップずれ検知器TOによるタップずれの検出がなされると1を出力するタップずれ検出ブロックTO1が接続されている。
よって、変圧器1Bの変圧器保護継電器1BTPが動作している場合、43TrC自動除外指令E43TrCが発令される。
又、275kVBPがオンで断路器LSB11,LSB12がオンであるか、154kVBPがオンで断路器LSB13,LSB14がオンである場合に、43TrC自動除外指令E43TrCが発令される。この場合を詳述すると、一次甲母線1α側において275kVの母線保護継電器275kVBPがオンで且つ断路器LSB11がオンであるか、一次乙母線1β側において275kVの母線保護継電器275kVBPがオンで且つ断路器LSB12がオンであるか、二次甲母線2α側において154kVの母線保護継電器154kVBPがオンで且つ断路器LSB13がオンであるか、若しくは二次乙母線2β側において154kVの母線保護継電器154kVBPがオンで且つ断路器LSB14がオンである場合となる。
更に、タップずれが検出された場合に、43TrC自動除外指令E43TrCが発令される。
尚、43TrC自動除外指令E43TrCと1B一次CB投入指令CB1ONとで、条件が異なるものとされても良い。
【0044】
以上により、1B全体条件C1Bは、予備の変圧器1Bが投入されておらず(S20,S23)、且つ、1B条件が成立しない(S31,S32,S23)場合に成立する。
1B条件は、変圧器保護継電器1BTPが動作している(S30)か、又は、275kV母線保護継電器275kVBPがオンで断路器LSB11,LSB12がオンであるか、154kV母線保護継電器154kVBPがオンで断路器LSB13,LSB14がオンである場合に成立する。
【0045】
1B全体条件C1Bが成立し、且つ過電流継電器512,513,514の少なくとも何れかがオンとなって所定時間が経過すると(S11,T2,S12)、AND回路S10で1が出力され、可変タイマー51C1に係る設定時間の経過後に1B一次CB投入指令CB1ONが発令され、遮断器CBB11による遮断が解除されて、予備機である変圧器1Bが一次母線1側で投入される。
但し、43SPが「並列」であり(S4)、43TrCが「使用」であり(S5)、且つR相の過電流継電器51F2,51F3,51F4の少なくとも何れかが動作している(S6)ことが必要とされる(S3)。
【0046】
1B二次CB投入指令CB2ONの発令は、1B一次CB投入指令CB1ONの発令と同様であり、43SPが「並列」であり(S4)、43TrCが「使用」であり(S5)、且つR相の過電流継電器51F2,51F3,51F4の少なくとも何れかが動作している(S6)ことが必要とされる(S70)。
但し、AND回路S10の出力側にAND回路S72が設けられる。AND回路S72のもう一つの入力は、1B一次CB入りブロックS71からのものである。1B一次CB入りブロックS71は、変圧器1Bの一次母線1側において遮断器CBB11が投入された場合に1を出力する。よって、1B二次CB投入指令CB2ONの発令には、遮断器CBB11の投入が必要である。
又、AND回路S72,S70の間には、可変タイマー51C2が介装されている。可変タイマー51C2は、可変タイマー51C1と同様に成る。可変タイマー51C2の介装により、1B一次CB投入指令CB1ONの発令から可変タイマー51C2に係る設定時間後に、1B二次CB投入指令CB2ONの発令がなされる。
【0047】
変圧器過負荷保護装置TSは、例えば図10図11に示される通りに作動する。図11は、時間と設定許容負荷率との関係を示すグラフである。設定許容負荷率は、負荷率が(時間経過との関係で)その値以上であれば確実に作動するものとして設定されるものである。尚、ここでは、可変タイマー51C1,51C2は、順に0.0s,1.0sに設定され、可変タイマーT1,T2は、順に0.00s,0.50sに設定される。
即ち、故障F1により短絡電流SIが発生し、変圧器3Bの負荷率が故障F1発生前の90%から変圧器3Bへの潮流により150%(図11のラインLH1参照)以上(ここでは270%)に上昇する。故障F1発生前において、変圧器3Bの負荷は384MW(メガワット)、電流は1515A(アンペア)である。又、故障F1発生後において、変圧器3Bの負荷は427MW×2.70=1152.9MW、電流は1152.9MW/(31/2×154kV×0.95)=4549Aである。
変圧器過負荷保護装置TSは、変圧器3Bの負荷率が100%(図11のラインLH2)以上となると、まず1B一次CB投入指令CB1ONを発令し、次いで1B二次CB投入指令CB2ONを発令して、予備機としての変圧器1Bの投入を指令する(C1B,513,S11,T2,S12,S10,51C1,S3,51C2,S70,S4~S6)。この指令に基づき、変圧器1Bが投入される。過電流継電器513の整定値は、427MW×1.0/(31/2×154kV×0.95×400)=4.212(A)で、4.2(A)(1680A)とされる。整定計算における400は、CT比(2000/5A)である。
又、変圧器3Bの負荷率が150%(図11のラインLH1)以上となると、LRロック指令LRLを瞬時に発令し、LRをロックする(51H3,S1,T1,S2)。過電流継電器51H3の整定値は、427MW×1.5/(31/2×154kV×0.95×400)=6.319(A)で、6.3(A)(2520A)とされる。
これらの変圧器1Bの投入及びLRロックにより、負荷率(の遷移)が図11の設定許容負荷率以内(グラフの線の下側)となる。即ち、最大で2秒間(図11の時間TH1)程度で、変圧器3Bの負荷率が140%に低下し、更に10分間(図11の時間TH2)経過時までには120%に低下し、もう20分間(図11の時間TH3)の経過時までには105%に低下する。そして、故障F1の復旧まで(図11の時間TH4)、負荷率は105%以下となる。
【0048】
他方、各変圧器2B,4Bにおいても、上述の変圧器3Bと同様に動作する。
【0049】
[変電所の変圧器過負荷保護の発明に係る作用効果等]
以上の変圧器過負荷保護装置TS(ないしこれにより実行可能な変圧器過負荷保護方法)は、予備機としての変圧器1Bを含む複数の変圧器1B~4Bが設けられる変電所Aにおいて、変圧器1B~4Bを過負荷から保護するものであって、変圧器1B~4Bを過負荷から保護するための制御を行う制御手段を備えており、この制御手段は、予備機としての変圧器1Bの変圧器保護継電器1BTPが動作していること(S30)、予備機としての変圧器1Bに係る母線保護継電器275kVBP,154kVBPが動作していること(1B条件,S40~S58)、又は、変電所Aにおける予備機としての変圧器1Bを含む複数の変圧器1B~4Bについてタップずれ検知器TOによりタップずれが検出されたこと(TO1)、の少なくとも何れかが生起した場合(S60)、予備機としての変圧器1Bを投入する指令である1B一次CB投入指令CB1ON及び1B二次CB投入指令CB2ONを発しないようにする。
よって、予備機としての変圧器1Bが投入されると自身の故障を生じ得るときのように予備機としての変圧器1Bが投入されるべきでない場合に、変圧器1Bの投入動作がなされないこととなる。従って、人為的に変圧器1Bの投入を判断する際に起こり得る誤った判断が防止され、予備機が不具合発生を防止した状態で確実に投入されて、変圧器1Bを始めとする系統が保護される。又、正常に作動する変圧器1Bの投入が、過負荷の発生に即応してなされる。
【0050】
更に、変圧器過負荷保護装置TS(ないしこれにより実行可能な変圧器過負荷保護方法)は、予備機としての変圧器1Bを含む複数の変圧器1B~4Bが設けられる変電所Aにおいて、変圧器1B~4Bを過負荷から保護するものであって、変圧器1B~4Bを過負荷から保護するための制御を行う制御手段を備えており、この制御手段は、予備機としての変圧器1Bの変圧器保護継電器1BTPが動作していること(S30)、予備機としての変圧器1Bに係る母線保護継電器275kVBP,154kVBPが動作していること(1B条件,S40~S58)、又は、変電所Aにおける予備機としての変圧器1Bを含む複数の変圧器1B~4Bについてタップずれ検知器TOによりタップずれが検出されたこと(TO1)、の少なくとも何れかが生起した場合(S60)、全体的なオンオフを切り替える活殺スイッチ43TrCを自動的に除外する43TrC自動除外指令E43TrC(活殺スイッチ自動除外指令)を発する。
よって、予備機としての変圧器1Bが投入されると自身の故障を生じ得るときのように予備機としての変圧器1Bが投入されるべきでない場合に、変圧器過負荷保護装置TSが自動的にオフとされて、変圧器1Bの投入動作がなされないこととなる。従って、人為的に変圧器1Bの投入を判断する際に起こり得る誤った判断が防止され、予備機が不具合発生を防止した状態で確実に投入されて、変圧器1Bを始めとする系統が保護される。又、正常に作動する変圧器1Bの投入が、過負荷の発生に即応してなされる。
【0051】
又、変圧器過負荷保護装置TS(ないしこれにより実行可能な変圧器過負荷保護方法)では、前記制御手段は、変電所Aにおける変圧器1B以外の複数の変圧器2B~4Bの少なくとも何れかの負荷率が150%(所定値)以上となると、変圧器1B~4Bに係るタップ切替LRをロックする(51H2~51H4,S1,LRL)。
よって、故障F1による比較的に大きな過負荷の発生に対して(特に過負荷発生の初期段階において)適切に対応することができる。
【0052】
更に、変圧器過負荷保護装置TS(ないしこれにより実行可能な変圧器過負荷保護方法)では、前記制御手段は、変電所Aにおける予備機としての変圧器1B以外の複数の変圧器2B~4Bの少なくとも何れかの負荷率が100%(特定値)以上となると、予備機としての変圧器1Bの一次母線1側の遮断器CBB11の投入指令(1B一次CB投入指令CB1ON,予備機一次母線側遮断器投入指令)を送出し、次いで、特定時間(可変タイマー51C2の設定時間)の経過後に、予備機としての変圧器1Bの二次母線2側の遮断器CBB12の投入指令(1B二次CB投入指令CB2ON,予備機二次母線側遮断器投入指令)を送出する。
よって、故障F1による過負荷の発生に対して適切に予備機としての変圧器1Bが投入される。
【0053】
[変更例等]
尚、本発明の形態は、上記の形態及び変更例に限定されず、次に示すような更なる変更例を適宜有する。
系統の構成、並びに制御に係る回路及び指令等のうちの少なくとも何れかは、論理的に同等な他のものに変えられても良い。
変圧器過負荷保護制御を行う制御手段は、複数の電子回路基板に分散されて設けられても良い。制御手段は、後付けの電子回路基板に代えて、あるいは後付けの電子回路基板と共に、変圧器等の系統に属する機器の制御手段に組み込まれていても良い。
【符号の説明】
【0054】
TS・・変圧器過負荷保護装置、1・・一次母線、154kVBP,275kVBP・・母線保護継電器、1B・・変圧器(予備機)、1BTP・・変圧器保護継電器、2・・二次母線、2B,3B,4B・・変圧器、43TrC・・活殺スイッチ、A・・変電所、CB1ON・・1B一次CB投入指令(予備機投入指令,予備機一次母線側遮断器投入指令)、CB2ON・・1B二次CB投入指令(予備機投入指令,予備機二次母線側遮断器投入指令)、CBB11,CBB12・・遮断器、E43TrC・・43TrC自動除外指令(活殺スイッチ自動除外指令)、F1・・故障、TO・・タップずれ検知器。
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