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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】処理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20231215BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20231215BHJP
   G01C 21/32 20060101ALI20231215BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20231215BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/0968
G01C21/32
G01C21/34
G09B29/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020016119
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021124812
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】597151563
【氏名又は名称】株式会社ゼンリン
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】島 実里
(72)【発明者】
【氏名】大原 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】森 陽一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 重太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】小田原 圭吾
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-258488(JP,A)
【文献】特開2010-038625(JP,A)
【文献】特開2019-148856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G09B 23/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動に影響を与える可能性のある路面電車に関連した地物に係る領域を特定する領域特定情報と、前記領域特定情報により特定される領域が前記移動体の移動に与え得る影響に係る影響情報と、を含む路面電車領域情報を記憶する記憶部と、
前記移動体の位置に対応した前記路面電車領域情報に基づいて、前記移動体の移動に係る制御内容を決定する制御部と、
前記移動体の周辺情報を取得する周辺情報取得部と、
を有し、
前記領域特定情報は、地図データ上での前記地物に関係した形状を指定する情報を含み、
前記影響情報は、前記地物の種類を示す第1情報と、前記移動体による前記領域の通行可否に関する第2情報と、を含み、
前記制御部は、
緊急時でなく、前記移動体の経路上の前記路面電車領域情報において、前記第1情報が軌道敷を示し、前記第2情報が通行不可を示す場合、前記軌道敷を避けて走行するように前記制御内容を決定し、
緊急時でなく、前記移動体の経路上の前記路面電車領域情報において、前記第1情報が軌道敷を示し、前記第2情報が通行可を示し、前記周辺情報取得部で路面電車が周辺にいることが取得された場合、前記軌道敷に進入する前に停止し、前記周辺情報取得部で路面電車が周辺にいないことが取得された場合、停止せずに前記軌道敷に進入するように、前記領域特定情報に含まれる前記軌道敷の形状に基づいて、前記制御内容を決定する、
理システム。
【請求項2】
前記制御部は、緊急時であり、前記移動体の経路上の前記路面電車領域情報において、前記第1情報が軌道敷を示し、前記周辺情報取得部で路面電車が周辺にいることが取得された場合、前記軌道敷への退避を不可とし、前記周辺情報取得部で路面電車が周辺にいないことが取得された場合、前記領域特定情報に含まれる前記軌道敷の形状に基づいて、前記軌道敷への退避を可能とするように、前記領域特定情報に含まれる前記軌道敷の形状に基づいて、前記制御内容を決定する、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記制御部は、緊急時でなく、前記移動体の経路上の前記路面電車領域情報において、前記第1情報が前記路面電車の停留所を示し、前記周辺情報取得部で人又は路面電車が周辺にいることが取得された場合、前記領域特定情報に含まれる前記停留所の形状に基づいて、その人又は路面電車に注意しながら走行又は停止するように、前記領域特定情報に含まれる前記停留所の形状に基づいて、前記制御内容を決定する、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項4】
前記影響情報は、前記地物の構造を示す第3情報を含み、
前記制御部は、緊急時でなく、前記移動体の経路上の前記路面電車領域情報において、前記第1情報が前記路面電車の停留所を示し、前記周辺情報取得部で人又は路面電車が周辺にいないことが取得され、前記第3情報が路面ペイントを示す場合、停留所を通行可とし、前記第3情報が路面ペイントを示さない場合、前記停留所を避けて通行するように、前記領域特定情報に含まれる前記停留所の形状に基づいて、前記制御内容を決定する、
請求項3に記載の処理システム。
【請求項5】
前記制御部は、緊急時であり、前記移動体の経路上の前記路面電車領域情報において、前記第1情報が停留所を示し、前記第3情報が路面ペイントを示さない場合、前記停留所への退避を不可とするように、前記領域特定情報に含まれる前記停留所の形状に基づいて、前記制御内容を決定する、
請求項4に記載の処理システム。
【請求項6】
前記制御部は、緊急時であり、前記移動体の経路上の前記路面電車領域情報において、前記第1情報が停留所を示し、前記第3情報が路面ペイントを示し、前記周辺情報取得部で人又は路面電車が周辺にいないことが取得された場合、前記停留所に避難する一方、前記周辺情報取得部で人又は路面電車が周辺にいることが取得された場合、前記停留所への退避を不可とするように、前記領域特定情報に含まれる前記停留所の形状に基づいて、前記制御内容を決定する、
請求項5に記載の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、路面軌道車両が走行する軌道が敷設されている道路に係る情報に基づいて、軌道敷設道路を回避してナビゲーションを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-258488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、移動体の制御に有用な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る処理システムは、移動体の移動に影響を与える可能性のある路面電車に関連した地物に係る領域を特定する領域特定情報と、領域特定情報により特定される領域が移動体の移動に与え得る影響に係る影響情報と、を含む路面電車領域情報を記憶する記憶部と、移動体の位置に対応した路面電車領域情報に基づいて、移動体の移動に係る制御内容を決定する制御部と、移動体の周辺情報を取得する周辺情報取得部と、を有し、領域特定情報は、地図データ上での地物に関係した形状を指定する情報を含み、影響情報は、地物の種類を示す第1情報と、移動体による領域の通行可否に関する第2情報と、を含み、制御部は、緊急時でなく、移動体の経路上の路面電車領域情報において、第1情報が軌道敷を示し、第2情報が通行不可を示す場合、軌道敷を避けて走行するように制御内容を決定し、緊急時でなく、移動体の経路上の路面電車領域情報において、第1情報が軌道敷を示し、第2情報が通行可を示し、周辺情報取得部で路面電車が周辺にいることが取得された場合、軌道敷に進入する前に停止し、周辺情報取得部で路面電車が周辺にいないことが取得された場合、停止せずに軌道敷に進入するように、領域特定情報に含まれる軌道敷の形状に基づいて、制御内容を決定する
【0007】
制御部は、緊急時であり、移動体の経路上の路面電車領域情報において、第1情報が軌道敷を示し、周辺情報取得部で路面電車が周辺にいることが取得された場合、軌道敷への退避を不可とし、周辺情報取得部で路面電車が周辺にいないことが取得された場合、軌道敷への退避を可能とするように、領域特定情報に含まれる軌道敷の形状に基づいて、制御内容を決定する、
こととしてもよい。
【0008】
制御部は、緊急時でなく、移動体の経路上の路面電車領域情報において、第1情報が路面電車の停留所を示し、周辺情報取得部で人又は路面電車が周辺にいることが取得された場合、その人又は路面電車に注意しながら走行又は停止するように、領域特定情報に含まれる停留所の形状に基づいて、制御内容を決定する、
こととしてもよい。
【0009】
影響情報は、地物の構造を示す第3情報を含み、制御部は、緊急時でなく、移動体の経路上の路面電車領域情報において、第1情報が路面電車の停留所を示し、周辺情報取得部で人又は路面電車が周辺にいないことが取得され、第3情報が路面ペイントを示す場合、停留所を通行可とし、第3情報が路面ペイントを示さない場合、停留所を避けて通行するように、領域特定情報に含まれる停留所の形状に基づいて、制御内容を決定する、
こととしてもよい。
【0010】
制御部は、緊急時であり、移動体の経路上の路面電車領域情報において、第1情報が停留所を示し、第3情報が路面ペイントを示さない場合、停留所への退避を不可とするように、領域特定情報に含まれる停留所の形状に基づいて、制御内容を決定する、
こととしてもよい。
【0011】
制御部は、緊急時であり、移動体の経路上の路面電車領域情報において、第1情報が停留所を示し、第3情報が路面ペイントを示し、周辺情報取得部で人又は路面電車が周辺にいないことが取得された場合、停留所に避難する一方、周辺情報取得部で人又は路面電車が周辺にいることが取得された場合、停留所への退避を不可とするように、領域特定情報に含まれる停留所の形状に基づいて、制御内容を決定する、
ことしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、移動体の制御に有用な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係る運転支援システムの一例に係る概略構成図である。
図2図2は、運転支援システムが取り扱うレーンネットワークデータの一例を示す図である。
図3図3は、路面電車の軌道敷の配置の一例を示す図である。
図4図4は、地物データの一例を示す図である。
図5図5は、交差点における路面電車の軌道敷の配置の他の例を示す図である。
図6図6は、路面電車の軌道敷の配置の他の例を示す図である。
図7図7は、地物データの一例を示す図である。
図8図8は、路面電車の停留所の配置の一例を示す図である。
図9図9は、地物データの一例を示す図である。
図10図10は、路面電車の停留所の配置の他の例を示す図である。
図11図11は、属性データの一例を示す図である。
図12図12は、運転支援システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図13図13は、運転支援システムによる運転支援の実行手順の一例を説明するフロー図である。
図14図14は、運転支援システムによる運転支援の実行手順の一例を説明するフロー図である。
図15図15は、変形例に係る運転支援システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[運転支援システムの構成]
本開示の一実施形態に係る処理システムの一例である運転支援システム1は、車両の現在地から目的地までの経路を導出し、車両の運転者又は車両の運転システムに出力するシステムである。なお、以下の実施形態では、特定の車線を走行する車両の運転を支援する運転支援システム1について説明するが、以下の実施形態で説明する制御システムは、レーンに沿って移動する種々の移動体に適用することができる。
【0016】
運転支援システム1は、例えば、移動体である車両2に搭載される。運転支援システム1は、入力部3、位置取得部4、車速情報取得部5、周辺情報取得部6、車両制御部7、情報制御部10(制御部)及び記憶部20を備えて構成されている。
【0017】
入力部3は、利用者から経路設定や車両誘導のための指示入力を受付ける。位置取得部4は、例えば、GPS(Global Positioning System)を構成する人工衛星から受信した電波や、車両2に備えられたジャイロからの信号に基づいて、緯度及び経度を含む車両の位置に関する位置情報を取得する。車速情報取得部5は、車速センサから取得したパルス信号に基づいて、車両2の速度に関する情報を取得する。周辺情報取得部6は、車両周辺の標識や道路標示等の被写体の画像情報である車両2の周辺情報を取得する。また、車両制御部7は、後述の誘導部15から取得した情報に基づいて、車両2の速度制御や操舵制御などを実行する。
【0018】
情報制御部10は、地図データ取得部11、経路探索部12、位置特定部13、経路特定部14及び誘導部15等の所定の機能を実現する機能部を含む。情報制御部10は、図示していないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を備える。情報制御部のCPUは、ROMに格納された各種プログラムを読み出して、RAMに展開して実行することで、各種プログラムに関する機能を実現する。地図データ取得部11、経路探索部12、位置特定部13、経路特定部14及び誘導部15等の機能部はプログラムによって実現され得る機能である。
【0019】
記憶部20は、ハードディスクやSD-RAM等の大容量記憶媒体で構成されている。
記憶部20には、経路探索処理、車両2の位置特定処理、車両誘導制御処理等に用いられる地図データ30が記憶されている。地図データ30は、道路ネットワークデータ31、レーンネットワークデータ32、地物データ33、及び属性データ34を含む。
【0020】
道路ネットワークデータ31には、道路の交差点や分岐地点を含む複数の地点情報及び道路の所定区間に関する情報を含む複数の道路区間情報が含まれる。道路ネットワークデータ31は、複数の地点情報及び複数の道路区間情報により道路の繋がりを表す情報である。
【0021】
レーンネットワークデータ32には、車線ごとに車線(レーン)の略中心線の形状及び任意の区間で車線を表す複数の車線区間情報(レーン情報)が含まれる。レーンネットワークデータ32には、さらに、車線区間情報を識別するための識別情報、車線の略中心線の座標点列を表す座標情報などが含まる。
【0022】
図2にレーンネットワークデータ32の一例を示す。図2に示すように、レーンネットワークデータ32は、車線区間をデータとして表現した車線区間情報を含む。車線区間情報は、例えば、識別情報、座標情報、進入側識別情報、退出側識別情報を含み得る。識別情報は、情報制御部10が車線区間に対応する車線区間情報を識別するための情報である。座標情報は、車線区間の中心線の座標点列(緯度、経度、高さ)であり、複数の点列からなる。座標情報は、位置特定部13が車両2の走行する車線区間を特定するための情報である。
【0023】
進入側識別情報は、進入側(進行方向に沿って当該車線区間よりも前段側)の車線区間に対応する車線区間情報である。退出側識別情報は、退出側(進行方向に沿って当該車線区間よりも後段側)の車線区間に対応する車線区間情報である。進入側識別情報及び退出側識別情報は車線区間の前後に接続する車線区間を特定するために用いられる。例えば、識別情報L001で特定される車線区間に係る車線区間情報では、進入側識別情報として識別情報L002が記載されている。情報制御部10は、この進入側識別情報を参照することによって、識別情報L001で特定される車線区間が識別情報L002で特定される車線区間と接続していることを把握することができる。このように、レーンネットワークデータ32を参照することで、車線区間同士の対応関係を把握することができる。したがって、情報制御部10はこの情報に基づいて車両2の走行する車線区間及びその経路を特定することができる。
【0024】
地物データ33には、車両2の通行に影響を及ぼす地物それぞれについての詳細な情報が含まれる。地物毎の情報を地物詳細情報という場合がある。地物データ33に含まれる地物とは、例えば、道路標示、道路標識、区画線等が挙げられる。これらの地物は、車線を移動する車両2の移動を規制するものである。
【0025】
本実施形態に係る運転支援システム1では、地物データ33として、路面電車領域を特定する路面電車領域情報を取り扱うことを特徴とする。この点について説明する。
【0026】
路面電車領域とは、車両2が通行する車道内に存在する軌道敷、停留所等の車両2の通行に影響を与える可能性のある路面電車に係る構造物及び道路標示等が存在する領域をいう。「車両の通行に影響を与える」程度は、路面電車に係る地物(構造物、道路標示等)の構造及び機能等によって変化する。例えば、路面電車の軌道敷は通常時は車両の通行が制限されているが、緊急時の車両の退避には利用することができる。また、例えば、路面電車の停留所が構造物として設けられている場合には緊急時にも車両の退避には利用できないが、停留所が車道上にペイントで記載されている場合には緊急時の車両の退避に利用することができる。このように、車両2の通行に影響を与える程度は路面電車に係る地物によって変化し得る。そこで、運転支援システム1では、路面電車領域に係るデータを地物毎に作成し、これを地物データ33として管理する。
【0027】
以下、具体例を示す。図3では、車道として機能する2つの単路領域R001,R002の間に軌道敷として機能する路面電車領域F001が設けられている状態を示している。単路領域R001に含まれる車線のうち、最も軌道敷に近い車線(レーン)について、識別情報L011で特定される車線区間情報にて規定されているとする。また、単路領域R002のうち、最も軌道敷に近い車線(レーン)について、識別情報L012で特定される車線区間情報にて規定されているとする。
【0028】
図3に示す状態の場合、車線と軌道敷とは並行しており、車両は原則軌道敷を走行しない。この場合、車両にとっての軌道敷とは、右折が制限されること、軌道敷側に車道からはみ出ると路面電車と接触する可能性があること、緊急時には(路面電車が来ていない場合には)退避可能であること、等の車両の通行に影響を与える可能性のある要素がある。そのため、図4に示すように、路面電車領域情報D1には、地物ID(一の地物に係る路面電車領域を識別するための情報)、領域の種類(軌道敷、停留所等の地物の機能を示す情報)、形状(領域の形状を示す情報)、車両通行可否(通常時の車両通行可否を示す情報)、及び、構造(構造物か否かを示す情報、路面の形状を示す情報等)に係る情報が含まれ得る。
【0029】
上記の各情報のうち、「地物ID」は、地物毎に割り振られる。また、「領域の種類」は、軌道敷と停留所とに区別することができる。ただし、領域の種類はより細かく分類してもよい。また、「形状」は、例えば、地物の周囲(他の車道・地物等との境界)を特定するために境界折れ線を座標点列として表現することができる。なお、形状を表現する方法は、座標点列とは異なる方法としてもよく、例えば、路面電車領域が多角形であるとして、その頂点位置のみを座標情報として取得し、隣接する座標の間を直線で結ぶことで路面電車領域を特定してもよい。また、地物の形状を元にその領域を設定するのではなく、例えば、実際の停留所の中心位置を仮に設定し、そこから半径10mの領域を停留所に相当する路面電車領域と設定することとしてもよい。このように、路面電車領域の形状は、地物の形状に対応して設定されてもよいし、規制内容等に基づいて変更してもよい。
【0030】
また、「車両通行可否」としては、基本的に通常時の車両通行可否を示す情報とすることができるが、例えば、通常時と緊急時とで車両通行可否条件が変わることを特定する情報等を含めてもよい。例えば、図3で示した路面電車領域F001は、上述のように緊急時は車両が入り込むことが可能な領域である。したがって、緊急時は取り扱いを変更してよいことを特定する情報を車両通行可否に含めてもよい。「構造」としては、例えば、軌道敷の場合には、石畳、タイル、アスファルト等の表面の構造が挙げられ、停留所の場合には、構造物停留所であるか、路面ペイントにより指定された停留所であるか等を示す情報が挙げられる。このように、路面電車領域情報D1には、路面電車領域を特徴付けるための情報が含まれる。
【0031】
なお、路面電車領域情報D1に含まれる情報のうち、地物を区別するための「地物ID」と、地物の領域を特定するための「形状」と、が路面電車に関する地物が設けられる領域を特定する領域特定情報に相当する。また、「領域の種類」、「車両通行可否」及び「構造」が、領域特定情報によって特定される領域が車両の移動に与え得る影響に係る影響情報に相当する。
【0032】
図4では、図3に示すように通常時は車両が入らない軌道敷に係る路面電車領域の例を示したが、他の路面電車領域に関して説明する。
【0033】
図5では、交差点領域R003内に軌道敷に係る路面電車領域F002~F007が含まれている状態を示している。図5では、路面電車の進路が三方向となっている。したがって、軌道敷は、一の方向と他の方向とを繋ぐように設けられる。したがって、図5に示すように、例えば、図示左方向へ向かう軌道敷と図示下方向へ向かう軌道敷とが接続されるように曲線状の軌道敷が設けられ、図示右方向へ向かう軌道敷と図示下方向へ向かう軌道敷とが接続されるように曲線状の軌道敷が設けられる。図5の例のように軌道敷が設けられている交差点では、車両は軌道敷上も走行可能とされる。ただし、例えば、右折するために車両が交差点内で待機する場合は、軌道敷以外の領域で待機をすることが求められる。また、直進する場合であっても軌道敷上では基本的に車両は停車せず通過することが求められる。また、車両に対しては、軌道敷上を路面電車が通過することを通知する構成とすることも考えられる。このように、交差点内の軌道敷に対応する路面電車領域F002~F007がある場合、車両に対する運転支援の制御としては、図3に示す路面電車領域F001とは異なる制御を行うことが求められる。したがって、路面電車領域F002~F007に係る路面電車領域情報D1は、例えば、図4に示す例と比較して「車両通行可否」が「可」であるとして管理することができる。なお、図5に示す例のように、1つの交差点領域内の軌道敷を複数の路面電車領域に区画して取り扱ってもよい。図5に示す例では、路面電車領域F002~F004は分岐を含む軌道敷であり、路面電車領域F005~F007は分岐を含まない単路の軌道敷である。このように、路面電車領域の区画の仕方は特に限定されず、形状・特性等に応じて適宜区画して互いに異なる地物(路面電車領域)として取り扱うことができる。
【0034】
図6では、交差点とは異なる車道である単路領域R004内に軌道敷に係る路面電車領域F008が含まれている(単路領域R004と路面電車領域F008とが重なっている)状態を示している。図6では、単路領域R004内に含まれる車線(レーン)を移動する車両は、軌道敷を横断する必要がある。したがって、路面電車領域F002~F007と同様に、車両は軌道敷上も走行可能であるが、通常時において車両は停車せず通過することが求められる。また、車両に対しては、軌道敷上を路面電車が通過することを通知する構成とすることも考えられる。したがって、路面電車領域F008に係る路面電車領域情報D1は、例えば、路面電車領域F002~F007と同様に、図4に示す例と比較して「車両通行可否」が「可」であるとして管理することができる。図6に示すような軌道敷の場合、路面電車領域F008に連続する路面電車領域F009は路面電車領域F001と同様に通常時は車両通行が制限されている。このように、車両通行に係る規制が異なる軌道敷の領域となる路面電車領域F008と路面電車領域F009とは、互いに異なる地物として管理することができる。
【0035】
軌道敷に係る図3,5,6に示す例と異なる例としては、例えば、車線幅が狭い等の事情によって「軌道敷内通行可」として管理されている軌道敷の領域が挙げられる。このような軌道敷の領域では、道路標識によって軌道敷内の通行が認められていることが示されている。また、路面電車領域としては、他の通行不可とされている軌道敷とは区別して管理されることが求められる。このように、軌道敷内通行可とされている領域は、他の軌道敷内の通行が制限されている領域とは区別して管理することができる。
【0036】
なお、図6では、軌道敷に係る路面電車領域とは別に、仮想停止線に係る地物データである仮想停止線領域F101,F102が示されている。仮想停止線とは、路面電車領域F008を含む路線敷を路面電車が通過する場合の車両の停止位置を特定する仮想的に設けられた停止線である。また、仮想停止線が設定される場所においては、軌道敷を通過する路面電車に対応した車両の制御(この場合は、車両の停止)が必要とされる。このように、仮想停止線は、路面電車領域と関連のある情報であるともいえる。なお、「仮想的に設けられた」とは、実際に路面標示として示すものは存在しないがデータ上では路面標示に相当する情報として管理されているものであり、車両2等がデータを読み込むことで、その場所・規制等を特定することができるものである。このように、実際の路面標示は存在しなくても路面電車領域と連動した規制を行うことが求められる場合、仮想停止線のように仮想の路面標示を規定したデータを設けてもよい。
【0037】
図7に、地物データとしての仮想停止線情報D2の一例を示す。仮想停止線情報D2としては、地物ID(一の地物に係る仮想停止線領域を識別するための情報)、及び、位置(仮想停止線の場所を示す情報))に係る情報が含まれ得る。「地物ID」は、地物毎に割り振られる。また、「位置」は、仮想停止線の位置を特定する情報であり、この情報は、すなわち、車両が停止すべき位置を特定する情報になる。「位置」は、例えば、仮想停止線の場所を特定するための座標の集合として表現することができる。なお、仮想停止線は、特定の路面電車領域(ここでは、路面電車領域F008)に対応するものである。したがって、仮想停止線情報D2には、路面電車領域(例えば、路面電車領域F008)との対応関係を示す情報が含まれていてもよい。一例として、図7では、「対象路面電車領域地物ID」として、路面電車領域F008を特定する情報が保持されている。上記の仮想停止線領域F101,F102のように、特定の路面電車領域(ここでは、路面電車領域F008)との関係性があると思われる仮想の路面標示については、路面電車領域との対応関係を示す情報を含めておくことができる。このような構成とすることで、例えば、仮想の路面標示を、関係性がある路面電車領域と一体的に取り扱うことが可能となり、不要なタイミングで仮想の路面標示に基づいた規制を行うことを防ぐことができる。
【0038】
図8は、路面電車の停留所に係る路面電車領域の例を示している。図8は、軌道敷に係る路面電車領域F010,F011の間に停留所に係る路面電車領域F012が設けられている状態を示している。また、図8では、停留所が構造物(例えば、プラットホーム等)により構成されている例を示している。したがって、停留所に係る領域には緊急時であっても車両が入れない。また、停留所では路面電車の利用者の乗降があるため、車両側は人の移動に気を配る必要がある。このような点で、停留所は軌道敷とは別に管理することが望まれる場合がある。図9は、上記の路面電車領域F012に対応する路面電車領域情報D1を示している。図9に示す例では、「領域の種類」が「停留所」とされていて、「構造」が「構造物」とされている。なお、停留所に係る路面電車領域F012は、停留所に係る構造物が設けられる領域と、停留所に停車中の路面電車が存在し得る軌道敷が設けられる領域とを組み合わせたものとしている。このように、停留所に係る路面電車領域F012は、停留所と関連する軌道敷の領域を含んでいてもよい。
【0039】
図10は、停留所が路面ペイントで記載されている例を示している。具体的には、軌道敷に係る路面電車領域F013,F014,F015がこの順に並んでいて、路面電車領域F014を挟んで対向するように路面ペイントによる停留所に係る路面電車領域F016,F017が配置されている状態を示している。このような場合、路面ペイントによる停留所に係る路面電車領域F016,F017では、構造物による停留所と同様に路面電車の利用者の乗降があるため、車両側は人の移動に気を配る必要がある。ただし、構造物による停留所とは異なり、緊急時等の車両の退避には利用することができる。したがって、構造物による停留所とは取り扱い方が変わるため、区別して管理を行うこととすることができる。図10に示す路面電車領域F016の場合、図9に示す路面電車領域F012に対応する路面電車領域情報D1の例と比較して、「構造」を「路面ペイント」とすることで、路面電車領域F012により特定される停留所とは異なる種類の地物として管理をすることができる。なお、路面電車領域F016,F017に挟まれた軌道敷に係る路面電車領域F014については、通常の軌道敷に係る路面電車領域と同様に扱ってもよいし、停留所前の軌道敷に係る路面電車領域として他の軌道敷とは区別して取り扱ってもよい。また、図10に示す例では、路面ペイントによる停留所に係る路面電車領域F016,F017を個別に取り扱い、軌道敷に係る路面電車領域F014を停留所とは別に取り扱っている例を示しているが、これらを一体的に路面ペイントによる停留所に係る路面電車領域として取り扱ってもよい。ただし、軌道敷に係る路面電車領域F014は、路面ペイントによる停留所に係る路面電車領域F016,F017とは独立して取り扱うべき状況である場合が多いので、軌道敷に係る規制等にも考慮してその取り扱いを決定する必要がある。
【0040】
なお、路面ペイントで示された停留所を特定する地物データは、路面標示に係る地物データとして、路面電車領域情報とは異なる種類の地物に係るデータとして取り扱われる場合もある。この場合、路面標示に係る地物データとして記述されている路面ペイントで示された停留所に係る情報と、近隣の軌道敷に係る路面電車領域情報とを対応付ける情報を地図データ30に含めることで、路面電車領域情報と同様に取り扱うことができる。対応付けの手法は特に限定されない。例えば、軌道敷に係る路面電車領域と、路面ペイントで示された停留所に係る情報との対応付けに係る情報を別途保持してもよい。また、後述の属性データ34を用いて、レーンネットワークデータ32の車線区間情報との対応付けを行う際に、路面標示に係る地物データとして記述されている路面ペイントで示された停留所に係る情報を、路面電車領域情報と同様に、路面電車に関連する情報として紐づけることとしてもよい。
【0041】
図1に戻り、属性データ34には、道路ネットワークデータ31の道路区間情報とレーンネットワークデータ32の車線区間情報とを関連付けるための情報が含まれる。また、属性データ34には、レーンネットワークデータ32の車線区間情報と地物データ33とを関連付けるための情報が含まれる。これらの関連付けを行う情報を関連情報という。地物は、基本的に設けられる場所に応じて、車両2の通行に影響を及ぼす範囲が特定される。したがって、車両2が通行する車線に係る車線区間情報と地物データ33との対応関係を属性データ34として保持しておき、特定の車線区間情報を車両2が通過する場合に、属性データ34に基づいて当該車線区間に対応する地物データ33に係る情報に基づいて車両2を制御する。このことは、地物データ33が路面電車に係る情報であっても同様である。
【0042】
図11では、属性データ34の一例であって、車線区間情報と地物データ33のうち路面電車に関連する情報(路面電車領域情報及び仮想停止線情報)との対応関係とを示す情報である路面電車関連情報D3の例を示している。図11では図3で示した軌道敷に最も近い車線(レーン)と軌道敷との対応関係を示している。
【0043】
図11に示す例では、識別情報E01で示される関連情報において、識別情報L011,L012に係る車線区間情報と、識別情報F001で特定される路面電車領域情報とが関連していることが示されている。したがって、路面電車関連情報を参照することで、レーンネットワークデータ32の車線区間情報と、路面電車に関する情報との関連を把握することができ、この情報に基づいて車両の移動に反映させることができる。
【0044】
図1に戻り、地図データ取得部11は、地図データの取得要求に応じて、記憶部20に記憶されている地図データ30を抽出する。経路探索部12は、記憶部20に記憶されている道路ネットワークデータ31を用いて経路探索処理を実行する。具体的には、経路探索部12は、道路ネットワークデータ31に含まれる道路区間情報と地点情報とを用いて出発地から目的地に至る経路探索処理を実行する。そして、経路探索処理により出発地から目的地に至るまでの道順(出発地から目的地までを接続する複数の地点情報と複数の道路区間情報)を示す経路情報が作成される。なお、経路探索の手法としては、ダイクストラ法など周知の方法を採用し、道路区間情報に含まれるコスト情報を用いて出発地から目的地までの最短経路を探索する。
【0045】
位置特定部13は、車両2の位置を特定する機能を有する。具体的には、位置取得部4により取得された位置情報から車両2の位置が道路上のいずれの位置であるかを特定する。また、位置特定部13は、位置取得部4により取得された位置情報に加え、地物データ33及び周辺情報取得部6により取得された周辺情報から車両2の位置が道路上のいずれの位置であるかを特定したりする。
【0046】
経路特定部14は、経路探索部12で作成された経路情報に基づいて、レーンネットワークデータ32上の経路を特定する処理を行う。具体的には、経路特定部14によって、経路探索処理によって特定された経路に含まれる道路区間情報に対して関連付けられた車線区間情報が記憶部20から抽出される。そして、経路特定部14は、抽出した車線区間情報に基づいてレーンネットワークデータ32上で車両2が走行すべき経路を特定する。
【0047】
誘導部15は、車両制御部7が道路の所定の車線に沿って移動するように車両2を制御するための誘導情報を生成し、車両制御部7に出力する。
【0048】
図12は、運転支援システム1のハードウェア構成の一例を示す。例えば、運転支援システム1は、制御回路100を有する。一例では、制御回路100は、一つまたは複数のプロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、通信ポート104と、入出力ポート105とを有する。
【0049】
プロセッサ101はオペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する。具体的には、アプリケーションプログラムとは、運転支援システム1においては、制御部が、領域特定情報を参照して、移動体の位置に対応した路面電車領域情報を取得する処理と、路面電車領域情報に基づいて前記移動体の移動に係る制御内容を決定する処理と、を運転支援システム1に実行させるためのプログラムである。
【0050】
ストレージ103はハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、または取り出し可能な媒体(例えば、磁気ディスク、光ディスクなど)の記憶媒体で構成され、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを記憶する。メモリ102は、ストレージ103からロードされたプログラム、またはプロセッサ101による演算結果を一時的に記憶する。一例では、プロセッサ101は、メモリ102と協働してプログラムを実行することで、上記の各機能モジュールとして機能する。通信ポート104は、プロセッサ101からの指令に従って、通信ネットワークNWを介して他の装置との間でデータ通信を行う。入出力ポート105は、プロセッサ101からの指令に従って、キーボード、マウス、モニタなどの入出力装置(ユーザインタフェース)との間で電気信号の入出力を実行する。
【0051】
運転支援システム1は、一つまたは複数のコンピュータにより構成され得る。複数のコンピュータが用いられる場合には、通信ネットワークを介してこれらのコンピュータが互いに接続されることで論理的に一つの運転支援システム1が構成される。
【0052】
運転支援システム1として機能するコンピュータは限定されない。例えば、運転支援システム1はパーソナルコンピュータや携帯端末(例えばスマートフォン、タブレット端末など)などの小型のコンピュータで構成されてもよいし、その他のコンピュータで構成されていてもよい。
【0053】
[運転支援処理を実行する方法]
上記のように構成される運転支援システム1を用いて運転支援処理を実行する方法について図13を参照しながら説明する。ここでは、路面電車に関する地物データ33である路面電車領域情報及び仮想停止線情報に基づいて、運転支援内容を変更する方法について説明する。また、図13では、通常時の手順について説明する。
【0054】
車両2は、経路探索部12により探索された経路に沿って、レーンネットワークデータ32に含まれる特定の車線を走行しているとする。まず、情報制御部10は、位置取得部4を介して車両2の推定位置情報を取得する。次に、地図データ取得部11が、車両2の推定位置周辺の地図データ30を記憶部20から抽出し、位置特定部13は、周辺情報取得部6が取得した区画線などの周辺画像情報や地図データ取得部11が取得した車両2の推定位置周辺の地図データ30などに基づいて、車両2の詳細な現在地の座標を特定する(ステップS01)。
【0055】
次に、経路特定部14は、マップマッチングを行う(ステップS02)。マップマッチングにおいては、経路特定部14は、位置特定処理で算出された現在地の座標に最も近い座標情報を有する車線区間情報を特定する。次に、地図データ取得部11は、車両2が走行すべき経路前方(例えば、100m前方)における所定区間の車線区間情報及びその車線区間情報に関連する地物データ33を取得する。車線区間情報と地物データ33との関係は、属性データ34から把握することができる。すなわち、地図データ取得部11は、車両2が走行すべき経路前方の車線区間情報の識別情報が特定されると、属性データ34に基づいて識別情報を利用して、車線区間情報に関連する地物データ33を取得する。本実施形態では、ここで取得する地物データ33が路面電車領域に係る情報である路面電車領域情報及び仮想停止線情報である場合について説明する。
【0056】
情報制御部10は、車線区間情報に対応して取得された路面電車領域情報の「領域の種類」が軌道敷であるか否かを判定する(ステップS03)。ここで、路面電車領域情報の「領域の種類」が軌道敷である場合(S03-YES)には、情報制御部10は、当該路面電車領域情報における「車両通行可否」が「可」であるか否かを判定する(ステップS04)。路面電車領域情報における「車両通行可否」が「不可」である場合(S04-NO)には、当該路面電車領域情報に基づいて指定される軌道敷を避けて走行するように車両を制御する。
【0057】
一方、路面電車領域情報における「車両通行可否」が「可」である場合(S04-YES)には、情報制御部10は、周辺に路面電車がいるか否かを判定する(ステップS06)。周辺に路面電車がいるか否かの判定は、例えば、周辺情報取得部6により取得された情報に基づいて行われる。ここで、周辺に路面電車がいると判定される場合(S06-YES)には、情報制御部10は、例えば、当該路面電車領域情報に紐付けられた仮想停止線情報がある場合には仮想停止線で停止するように車両を制御する(ステップS07)。また、仮想停止線がない場合にも路面電車領域情報により特定される領域から所定距離離れた位置で停止する。また、情報制御部10は、路面電車の通行を邪魔しないように、路面電車が車線区間情報により特定される領域から離れたのを確認してから車両の移動を開始する制御を行う。一方、周辺に路面電車がいないと判定される場合(S06-NO)には、情報制御部10は、例えば、当該路面電車領域情報に紐付けられた仮想停止線情報がある場合であっても、仮想停止線で停止せず走行するように、車両を制御する(ステップS08)。
【0058】
路面電車領域情報の「領域の種類」に係る判定(S03)の結果、「領域の種類」が軌道敷ではない(すなわち、停留所である)場合(S03-NO)には、情報制御部10は、停留所及びその周辺に人または路面電車がいないか否かを確認する(ステップS09)。停留所及びその周辺に人または路面電車がいるか否かの判定は、例えば、周辺情報取得部6により取得された情報に基づいて行われる。停留所及びその周辺に人または路面電車がいると判定される場合(S09-NO)には、情報制御部10は、付近の人の移動等に注意しながら走行を継続するように車両を制御する(ステップS10)。なお、情報制御部10は、停留所の手前で一旦停止するように車両を制御してもよい。なお、人または路面電車が去った後に、再び停留所に人または路面電車がいないか否かの判定(S09)を行い、その後の制御を変更してもよい。
【0059】
停留所及びその周辺に人または路面電車がいないと判定される場合(S09-YES)には、情報制御部10は、停留所の「構造」が路面ペイントであるか否かを判定する(ステップS11)。「構造」が路面ペイントであると判定される場合(S11-YES)には、情報制御部10は、停留所に対応する領域も通行可能であるとして、車両を制御する(S12)。なお、図10にも示したように、路面ペイントによる停留所の周囲の軌道敷は、停留所とは別の基準で規制されている場合が多い。したがって、路面ペイントによる停留所と、周囲の軌道敷とは互いに異なる路面電車領域として規定されている場合には、情報制御部10はそれぞれを互いに異なる路面電車領域として区別して取り扱う。一方、「構造」が構造物であると判定される場合(S11-NO)には、情報制御部10は、停留所に対応する路面電車領域(軌道敷も含まれる場合は、軌道敷に対応する領域も)には車両が入らないように、車両を制御する(S13)。このときも、停留所の周囲の軌道敷が停留所とは別の路面電車領域として取り扱われている場合には、路面電車領域ごとに区別して取り扱うこととしてもよい。
【0060】
上記の図13に示す一連の手順によれば、例えば、交差点において車両が右折する際に軌道敷を通過する場合にも車両を適切に制御することができる。例えば、交差点内の軌道敷に対応する路面電車領域は、図5等に示すように交差点外の軌道敷とは区別され、「車両通行可否」が「可」であるとして管理され得る。したがって、図13に示す路面電車領域情報の「領域の種類」に係る判定(S03)では、「領域の種類」が軌道敷である(S03-YES)と判定され、路面電車領域情報における「車両通行可否」が「可」である(S04-YES)と判定される。この結果、周辺の路面電車が存在しない場合(S06-NO)には、車両が軌道敷の上を通過するように制御することができる。
【0061】
上記の路面電車領域に係る一連の処理(S03~S13に係る処理)は、車両の制御に影響を与える可能性のある周辺の路面電車領域のそれぞれについて個別に行われる。したがって、例えば、車両の周辺に複数の路面電車領域で特定される路面電車に関する地物がある場合には、識別情報で区別される路面電車領域のそれぞれについて、上記の判定を行うことになる。なお、上記の一連の処理(S03~S13に係る処理)をどの路面電車領域から行うかは、適宜変更することができ、例えば、車両の進行方向に沿って直近にある路面電車領域から等という基準で決めてもよい。
【0062】
次に、図14を参照しながら、緊急時の運転支援の手順について説明する。緊急時とは、例えば、車線への人の飛び出しや、自車両のすぐ前方で事故が発生した等の事情によって、使用可能とされていた車線(レーン)の使用に支障が生じたことを確認した場合をいう。このような場合、地図データ30に基づいて情報制御部10で作成される誘導情報では、上記の緊急の車線の支障には対応が不可能である。そこで、情報制御部10では、上記の路面電車領域の情報を利用して、誘導情報を更新することによって車両を退避させる。
【0063】
車両2は、経路探索部12により探索された経路に沿って、レーンネットワークデータ32に含まれる特定の車線を走行しているとする。まず、情報制御部10は、位置取得部4を介して車両2の推定位置情報を取得する。次に、地図データ取得部11が、車両2の推定位置周辺の地図データ30を記憶部20から抽出し、位置特定部13は、周辺情報取得部6が取得した区画線などの周辺画像情報や地図データ取得部11が取得した車両2の推定位置周辺の地図データ30などに基づいて、車両2の詳細な現在地の座標を特定する(ステップS21)。
【0064】
次に、経路特定部14は、マップマッチングを行う(ステップS22)。マップマッチングにおいては、経路特定部14は、位置特定処理で算出された現在地の座標に最も近い座標情報を有する車線区間情報を特定する。次に、地図データ取得部11は、車両2が走行すべき経路前方(例えば、100m前方)における所定区間の車線区間情報及びその車線区間情報に関連する地物データ33を取得する。車線区間情報と地物データ33との関係は、属性データ34から把握することができる。すなわち、地図データ取得部11は、車両2が走行すべき経路前方の車線区間情報の識別情報が特定されると、属性データ34に基づいて識別情報を利用して、車線区間情報に関連する地物データ33(路面電車に関連する情報)を取得する。現在位置を特定し、マップマッチングを行って関連する地物データを取得する点は、通常時と同様である。
【0065】
ここで、周辺情報取得部6等が周囲での人の飛び出しや前方での事故等を検出したことに基づいて、車両制御部7が緊急時動作(退避行動)を行うと決定したとする(ステップS23)。この場合、情報制御部10は、路面電車に関連する情報に基づいて退避行動を行うための誘導情報を生成するための退避場所を決定し、退避のための誘導情報を生成する。
【0066】
具体的には、まず、情報制御部10は、車線区間情報に対応して取得された路面電車領域情報の「領域の種類」が軌道敷であるか否かを判定する(ステップS24)。ここで、路面電車領域情報の「領域の種類」が軌道敷である場合(S24-YES)には、情報制御部10は、停留所及びその周辺に路面電車がいるか否かを判定する(ステップS25)。停留所及びその周辺に路面電車がいるか否かの判定は、例えば、周辺情報取得部6により取得された情報に基づいて行われる。ここで、停留所及びその周辺に路面電車がいると判定される場合(S25-YES)には、情報制御部10は、例えば、当該路面電車領域情報により特定される軌道敷への車両の退避は不可能であると判断する(ステップS26)。この場合、情報制御部10は、車両を退避するための他の退避場所を探索することになる。また、情報制御部10は、路面電車の往来に配慮しながら路面電車を当該路面電車領域へ退避するという制御を行うこととしてもよい。また、退避までの時間を確保できるのであれば、路面電車が移動した後に当該領域へ退避するという制御を行うことしてもよい。一方、停留所及びその周辺に路面電車がいないと判定される場合(S25-NO)には、情報制御部10は、例えば、当該路面電車領域情報により特定される軌道敷に対して車両を退避させるように制御する(ステップS27)。
【0067】
路面電車領域情報の「領域の種類」に係る判定(S24)の結果、「領域の種類」が軌道敷ではない(すなわち、停留所である)場合(S24-NO)には、情報制御部10は、停留所の「構造」が路面ペイントであるか否かを判定する(ステップS28)。「構造」が構造物であると判定される場合(S28-NO)には、情報制御部10は、当該路面電車領域への車両の退避は不可能であると判断する(ステップS29)。この場合、情報制御部10は、車両を退避するための他の退避場所を探索することになる。一方、「構造」が路面ペイントであると判定される場合(S28-YES)には、情報制御部10は、停留所に人がいるかどうかを確認する(ステップS30)。停留所に人または路面電車がいるか否かの判定は、例えば、周辺情報取得部6により取得された情報に基づいて行われる。停留所及びその周辺に人または路面電車がいると判定される場合(S30-YES)には、情報制御部10は、例えば、当該路面電車領域情報により特定される軌道敷への車両の退避は不可能であると判断する(ステップS31)。この場合、情報制御部10は、車両を退避するための他の退避場所を探索することになる。また、情報制御部10は、路面電車の往来に配慮しながら路面電車を当該路面電車領域へ退避するという制御を行うこととしてもよい。また、退避までの時間を確保できるのであれば、路面電車が移動した後に当該領域へ退避するという制御を行うことしてもよい。一方、停留所の周辺に人がいないと判定される場合(S30-NO)には、情報制御部10は、停留所または軌道敷に係る路面電車領域へ車両を退避させるように、車両を制御する(ステップS32)。この場合、情報制御部10は、停留所または軌道敷に係る路面電車領域のうちより車両に最も近い領域に退避させるように車両を制御してもよい。
【0068】
上記の退避場所として使用するかを決定するための一連の処理(S24~S32に係る処理)は、車両の退避場所を決定するまで、周辺の路面電車領域のそれぞれについて個別に行われる。したがって、例えば、車両の周辺に複数の路面電車領域で特定される路面電車に関する地物がある場合には、識別情報で区別される路面電車領域のそれぞれについて、上記の判定を行うことになる。なお、上記の一連の処理(S24~S32に係る処理)をどの路面電車領域から行うかは、適宜変更することができ、例えば、車両の現在位置から近い順等で決めてもよい。
【0069】
図13及び図14で示した処理の手順は、上記実施形態で説明した軌道敷及び停留所に係る路面電車領域情報に基づいて判定基準を定めた場合の一例である。路面電車領域情報に含められる情報の種別、種類毎の車両に対する規制の内容等によって、上記の手順は変更される。また、判定の順序も適宜変更することができる。
【0070】
[作用]
本実施形態に係る運転支援システム1及びデータ構造によれば、移動体の移動に影響を与える可能性のある路面電車に関連した地物に係る領域を特定する領域特定情報を含む路面電車領域情報D1が記憶部20に記憶され、制御部として機能する情報制御部10において、移動体の位置に対応した路面電車領域情報に基づいて、移動体の移動に係る制御内容が決定される。したがって、路面電車に係る地物の状況に応じた移動体の制御を行うことが可能となる。すなわち、上述の運転支援システム1及びデータ構造は、移動体の制御に有用な技術を提供することができる。
【0071】
従来から、路面電車の軌道を考慮して移動体の制御を行うことは検討されていた。しかしながら、路面電車に関連する地物の状況として地物に係る領域に着目し、この領域を考慮して制御を行うことは検討されていなかった。これに対して、上記実施形態に係る運転支援システム1では、路面電車に関連した地物に係る領域ごとに、移動体の移動に影響を与える可能性のある路面電車に関連した地物に係る領域を特定する領域特定情報を含む路面電車領域情報D1が保持され、この情報に基づいて、移動体の移動に係る制御内容が決定される。したがって、上記の運転支援システム1では、路面電車に係る地物の状況に応じた移動体の制御を行うことが可能となり、移動体の制御に有用となる。
【0072】
また、上記の運転支援システム1では、領域特定情報は、地図データ上での地物に関係した形状を指定する情報を含むことができる。領域特定情報として地図データにおける地物に関係した形状を指定する情報を含むことで、路面電車領域情報で特定される地物に係る領域と、移動体の移動経路との位置関係を特定することができ、この位置関係を考慮した制御が可能となる。したがって、路面電車に係る地物の状況に応じた移動体の制御をより適切に行うことが可能となる。
【0073】
また、上記の運転支援システム1では、路面電車領域情報は、領域特定情報により特定される領域が移動体の移動に与え得る影響に係る影響情報をさらに含むことができる。この場合、領域特定情報により特定される領域が移動体の移動にどのような影響を与えるかに係る影響情報を含む路面電車領域情報に基づいて、移動体の移動に係る制御内容が決定される。したがって、上記の運転支援システム1では、路面電車に係る地物の移動体への影響を考慮したより適切な移動体の制御を行うことが可能となる。
【0074】
影響情報は、地物の種類を示す情報を含むことができる。影響情報として、地物の種類を示す情報を含むことで、例えば、地物の種類に応じた特性を考慮して、移動体の移動に係る制御内容を決定することができる。したがって、路面電車に係る地物の状況に応じた移動体の制御をより適切に行うことが可能となる。
【0075】
影響情報は、移動体による領域の通行可否に関する情報を含むことができる。影響情報として、移動体による領域の通行可否に関する情報を含むことで、例えば、運転支援システム1において移動体の移動経路を決定する際に、路面電車に係る地物を考慮してより適切な経路を設定することができる。したがって、路面電車に係る地物の状況に応じた移動体の制御をより適切に行うことが可能となる。
【0076】
影響情報は、地物の構造を示す情報を含むことができる。影響情報として、地物の構造を示す情報を含むことで、例えば、緊急時に路面電車領域を通過してよいか等の制御部での判断に利用することができる。したがって、路面電車に係る地物の状況に応じた移動体の制御をより適切に行うことが可能となる。
【0077】
[変形例]
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、本開示に係る運転支援システム1として、車両2に搭載されたシステムについて説明した。しかしながら、運転支援システムとしての機能は、例えば、車両と外部装置とで分散配置されていてもよい。
【0079】
図15は、図1に示す運転支援システム1における記憶部20に相当する機能部が車両2の外部に設けられた構成例を示している。一例として、地図データ30を管理する地図データ管理サーバ40が外部に設けられ、通常は地図データ30が地図データ管理サーバ40に設けられているとする。この場合、運転支援システム1Aは、車両2に搭載された入力部3、位置取得部4、車速情報取得部5、周辺情報取得部6、車両制御部7、情報制御部10(制御部)と、地図データ管理サーバ40と、を含んで構成されることができる。このような運転支援システム1Aの場合、車両2の移動を制御する場合には、情報制御部10は地図データ管理サーバ40から処理に必要な情報を取得して処理を行うことができる。また、地図データ管理サーバ40には、車両2との間で通信を行うことが可能であり、且つ、車両2からのリクエストに応じて適切な地図データ30を選択して車両2に送信することが可能な構成とすることで、車両2の運転を支援することが可能となる。また、運転支援システム1Aにおいても、上記実施形態で説明した運転支援システム1と同様の手順で車両2の運転の支援が可能である。また、運転支援システム1Aにおいても、運転支援システム1と同様に、時間帯に応じた規制に対応した適切な運転支援が可能となる。
【0080】
なお、図15に示すように、車両2とは異なる外部装置において地図データ30を管理する構成とする場合、地図データ管理サーバ40を複数の車両で共用することも可能となる。すなわち、地図データ管理サーバ40は、複数の車両2からのリクエストに応じて、所望のデータを各車両2に対して提供する構成とすることができる。このように、運転支援システムは1台の車両の移動を支援するシステムではなく、複数台の車両の移動を支援するシステムであってもよい。
【0081】
また、上記のデータ構造は一例であって、適宜変更することができる。例えば、路面電車領域情報D1における「車両通行可否」を「通常時」と「緊急時」とに区別して管理する構成としてもよい。また、路面電車領域情報D1と仮想停止線情報D2との対応付けに係る情報等を路面電車領域情報D1または仮想停止線情報D2に含めてもよい。また、上記実施形態で説明したデータ構造に含まれる情報は一例であり、上述した情報以外の情報が含まれていてもよいし、上述の形式とは異なる形式で情報が記述されていてもよい。例えば、上記実施形態では、地図データ30が、道路ネットワークデータ31、レーンネットワークデータ32、地物データ33、及び属性データ34を含む場合について説明したが、これらのデータの区分は一例である。例えば、レーンネットワークデータ32に地物データ33に対応する情報が含まれていてもよいし、地物データ33にレーンネットワークデータ32に対応する情報が含まれていてもよい。また、属性データ34についても、レーンネットワークデータ32に含める構成としてもよい。このように、地図データ30に含まれるデータの区分及び取り扱いは上記実施形態で説明したものに限定されない。
【0082】
以上の実施形態の全部又は一部に記載された態様は、移動体の制御に有用な処理システムの提供、処理速度の向上、処理精度の向上、使い勝手の向上、データを利用した機能の向上又は適切な機能の提供その他の機能向上又は適切な機能の提供、データ及び/又はプログラムの容量の削減、装置及び/又はシステムの小型化等の適切なデータ、プログラム、記録媒体、装置及び/又はシステムの提供、並びにデータ、プログラム、装置又はシステムの制作・製造コストの削減、制作・製造の容易化、制作・製造時間の短縮等のデータ、プログラム、記録媒体、装置及び/又はシステムの制作・製造の適切化のいずれか一つの課題を解決する。
【符号の説明】
【0083】
1,1A…運転支援システム、2…車両、3…入力部、4…位置取得部、5…車速情報取得部、6…周辺情報取得部、7…車両制御部、10…情報制御部、11…地図データ取得部、12…経路探索部、13…位置特定部、14…経路特定部、15…誘導部、20…記憶部、30…地図データ、31…道路ネットワークデータ、32…レーンネットワークデータ、33…地物データ、34…属性データ、40…地図データ管理サーバ。
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