(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】自動麺ゆで装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
A47J27/14 F
(21)【出願番号】P 2020024424
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】500178588
【氏名又は名称】株式会社JR東日本クロスステーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】刑部 秀章
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-137887(JP,U)
【文献】特開2009-72379(JP,A)
【文献】特開2004-261491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0193901(US,A1)
【文献】特開2017-136281(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102248530(CN,A)
【文献】特開2006-247057(JP,A)
【文献】特開2019-24891(JP,A)
【文献】実開昭57-7421(JP,U)
【文献】特開2010-99349(JP,A)
【文献】実開昭57-15320(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
A23L 7/109
B23Q 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯を溜めて麺をゆでるための湯槽と、
水を溜めて麺を水で洗浄するための洗浄槽と、
冷却水を溜めて麺を冷却するための冷却槽と、
ロボットアームと、
を備え、
複数個の麺かごを収容する
ための麺かご用開口が設けられた底板と、前記底板の上部に設けられ、前記ロボットアームに保持される被保持部と、前記湯槽に掛けるために前記底板に設けられたつばと、を備えたユニットを使用して、
前記ロボットアームは、前記麺かごに麺が入った前記ユニットを保持した状態で、前記湯槽への前記ユニットの移動と、前記湯槽から前記洗浄槽への前記ユニットの移動と、前記洗浄槽から前記冷却槽への前記ユニットの移動と、前記冷却槽からの前記ユニットの移動とを、それぞれ行い、
麺をゆでる過程、麺を洗浄する過程、麺を冷却する過程、のそれぞれの過程を自動で行う
自動麺ゆで装置。
【請求項2】
前記湯槽から前記洗浄槽への前記ユニットの移動と、前記洗浄槽から前記冷却槽への前記ユニットの移動と、前記冷却槽からの前記ユニットの移動の、それぞれの移動の前に、前記ロボットアームがユニットを斜めに傾けた状態で保持して、麺の水切りを行う請求項1に記載の自動麺ゆで装置。
【請求項3】
前記湯槽は、前記麺かごの中心部からずらした位置に、気泡又は湯を噴出させる噴出口が設けられている請求項1又は2に記載の自動麺ゆで装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺を自動でゆでる、自動麺ゆで装置に関する。
【背景技術】
【0002】
麺をゆでる動作と、ゆで上がった麺を移動させる動作とを自動的に行う、自動麺ゆで装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-261491号公報
【文献】特開2017-136281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構成では、ゆでかごと洗浄かごを連結するリンク機構と、洗浄カゴと冷却槽中の取出しかごを連結するリンク機構とを設けている。
【0005】
特許文献2に記載された構成では、麺を湯槽内で回動させて搬送する搬送装置と、ゆで上がった麺の湯槽からの取り出しと水切りとカップへの移動を行う麺かご操作装置とを設けている。
【0006】
しかしながら、これらの特許文献に記載された構成では、構成が異なる2つのリンク機構や、搬送装置と麺かご操作装置のように、構成や動作が異なる複数の機構を用いており、複数の機構の制御が必要となることから、制御が複雑になる。
【0007】
上述した問題の解決のために、本発明においては、麺をゆでる動作や麺を移動させる動作を自動的に行うことができ、かつ従来の装置よりも容易に動作の制御を行うことができる自動麺ゆで装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動麺ゆで装置は、湯を溜めて麺をゆでるための湯槽と、水を溜めて麺を水で洗浄するための洗浄槽と、冷却水を溜めて麺を冷却するための冷却槽と、ロボットアームと、を備え、複数個の麺かごを収容するための麺かご用開口が設けられた底板と、底板の上部に設けられ、ロボットアームに保持される被保持部と、湯槽に掛けるために底板に設けられたつばと、を備えたユニットを使用する。
そして、本発明の自動麺ゆで装置は、ロボットアームが、麺かごに麺が入ったユニットを保持した状態で、湯槽へのユニットの移動と、湯槽から洗浄槽へのユニットの移動と、洗浄槽から冷却槽へのユニットの移動と、冷却槽からのユニットの移動とを、それぞれ行い、麺をゆでる過程、麺を洗浄する過程、麺を冷却する過程、のそれぞれの過程を自動で行う。
【0009】
上記の本発明の自動麺ゆで装置において、さらに、湯槽から洗浄槽へのユニットの移動と、洗浄槽から冷却槽へのユニットの移動と、冷却槽からのユニットの移動の、それぞれの移動の前に、ロボットアームがユニットを斜めに傾けた状態で保持して、麺の水切りを行う構成とすることが可能である。
【0010】
上記の本発明の自動麺ゆで装置において、さらに、湯槽は、麺かごの中心部からずらした位置に、気泡又は湯を噴出させる噴出口が設けられている構成とすることが可能である。
【発明の効果】
【0011】
上述の本発明によれば、ロボットアームによって、ユニットの移動やそれぞれの過程を行うので、ロボットアームだけで、移動と一連の過程を行うことができる。
これにより、複数の機構を使用する場合と比較して、制御を容易に行うことができる。
さらに、ロボットアームは、ロボットアームの先端部の位置や動作を容易に変更することができるので、複数の機構を使用する場合と比較して、設計の自由度が大きくなり、変更や動作の追加が容易にできる。
【0012】
また、本発明によれば、複数個の麺かごを収容するユニットを使用するので、一度に複数個の麺かごを移動させて、麺かご内の麺をゆでて、洗浄して、冷却することができる。
これにより、一連の過程(麺をゆでる過程、洗浄する過程、冷却する過程)の作業を効率良く行うことができる。そして、作業者の手で1つの麺かごを持って麺かごを移動させる場合や、ロボットアームが1つの麺かごを保持して移動させる場合と比較して、一連の過程の作業の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態の自動麺ゆで装置の概略構成図(斜視図)である。
【
図2】
図1の自動麺ゆで装置で使用するユニットの一形態の概略構成図(斜視図)である。
【
図3】
図2のユニットに使用する麺かごの一形態の概略構成図(斜視図)である。
【
図4】噴出口の位置と麺かごの位置との関係を示す図である。
【
図5】ユニットを傾斜させて水切りする状態を示す図である。
【
図6】
図1の自動麺ゆで装置における、ロボットアームによるユニットの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態の自動麺ゆで装置の概略構成図(斜視図)を、
図1に示す。
図1に示す自動麺ゆで装置1は、麺を自動でゆでるための自動麺ゆで装置であり、各種の麺(そば、うどん、ラーメン、パスタ等)に適用可能である。
そして、この自動麺ゆで装置1は、湯槽2と、洗浄槽3と、冷却槽4と、ユニット置き場5とが連結され、さらに、各槽2,3,4の上方にロボットアーム11を設けて、構成されている。
【0015】
また、
図1の自動麺ゆで装置1では、複数個の麺かごを収容するユニットを使用して、麺を入れた麺かごをユニットに収容した状態で、ロボットアーム11でユニットを移動させて、麺かごの中の麺をゆでる。
【0016】
湯槽2は、湯を溜めて麺をゆでるための槽である。
湯槽2には、湯を加熱するヒーター、麺を攪拌するために気泡又は湯を噴出させる噴出口、湯の温度を制御するための温度センサ、等が必要に応じて設けられる。
図1の自動麺ゆで装置1では、湯槽2が、前後方向よりも左右方向がやや長い構成となっている。
【0017】
洗浄槽3は、水を溜めて麺を水で洗浄するための槽である。
洗浄槽3には、洗浄用の水を供給する供給部(供給口又は供給管)、洗浄後の水を排出する排出口、等が設けられる。
洗浄槽3において、ゆでた麺を水で洗浄することにより、あら熱を取り、ぬめりを除去することができる。
図1の自動麺ゆで装置1では、洗浄槽3が、前後方向に長い構成となっている。
【0018】
冷却槽4は、冷却水を溜めて麺を冷却するための槽である。
冷却槽4には、冷却水を供給する供給部(供給口又は供給管)、水を排出する排出口、等が設けられる。
冷却槽4において、麺を冷却することにより、ゆでた麺をしめることができる。
図1の自動麺ゆで装置1では、冷却槽4が、前後方向に長い構成となっている。
【0019】
ユニット置き場5は、ユニットを置く場所である。
図1の自動麺ゆで装置1では、ユニット置き場5は、自動麺ゆで装置1の左右方向に長いレーンが並行して複数本設けられた構成となっている。
それぞれのレーンは、棒状のレールで仕切られており、前後2本のレールの間にユニットを置く。
【0020】
ロボットアーム11は、洗浄槽3と冷却槽4の奥にある壁部に取り付けられている。
図1の装置に使用しているロボットアーム11は、数個の回動が可能な関節部によって、腕部が連結されて構成されている。
図1に示すロボットアーム11は、まっすぐで短い腕部、ほぼまっすぐな腕部、根元側が屈曲していて長い腕部、を有している。
ロボットアーム11の先端部には、ユニットを保持するための保持部12を有する。
【0021】
ロボットアーム11の保持部12は、ユニットの被保持部を保持して、ユニットの移動や揺動、ユニットを傾斜させる動作、傾斜したユニットを垂直な状態に復元する動作、等の必要な動作を行えるようにする。
保持部12の構成は、ユニットを保持することが可能であれば、特に限定されず、従来公知の構成を含む各種の構成を採用することができる。
保持部12の構成として、例えば、2つの部材でユニットの被保持部を挟む構成、ユニットの被保持部と嵌めこむ構成(孔と突起、凹部と凸部、等)、ユニットの被保持部を吸着させる構成(吸引等)が考えられる。
【0022】
また、自動麺ゆで装置1の安定した動作のためには、ロボットアーム11の保持部12が、毎回、ユニットの被保持部の所定の位置において被保持部を保持する必要がある。
そのためには、ロボットアーム11の保持部12が、ユニットの被保持部の所定の位置で保持できるように、位置決めを行う。例えば、ユニット置き場5のレーンや湯槽2において、ユニットを置く位置を常に同じ位置に位置決めすることが考えられる。また例えば、ユニットの所定の位置に目印を設けておいて、ロボットアーム11側でユニットの目印を検知して、保持部12の位置を調整することが考えられる。
【0023】
ロボットアーム11は、図示しない制御部と接続され、制御部の制御によって、所定の動作を行う。
制御部は、CPU(Central Processing Unit)等を有して構成され、コンピュータプログラムの実行により、ロボットアーム11の動作を制御する。
【0024】
次に、
図1の自動麺ゆで装置で使用するユニットの一形態の概略構成図(斜視図)を、
図2に示す。
図2に示すユニット21は、底板22と側板26と天板27とが組み立てられて、構成されている。底板22と側板26と天板27は、例えば、ステンレス製の薄板で作製することができる。
【0025】
底板22は、矩形状の平板部に円形の麺かご用開口23が3個設けられ、平板部の前後左右の端部に平板部に垂直な側面が設けられ、側面の上に平板部に平行な部分(つば24とつば25)を有する。
底板22の左右のつば24を、例えば、湯槽2の縁に掛けることにより、湯槽2にユニット21を置くことができる。
底板22の前後のつば25を、例えば、ユニット置き場5のレールに掛けることにより、ユニット置き場5のレーンに置くことができる。
【0026】
側板26は2枚設けられ、それぞれの側板26が、底板22の麺かご用開口23の間の部分に取り付けられている。
図2に示す側板26は、略台形状であり、下部に開口を有し、開口の両側で底板22に取り付けられている。
【0027】
天板27は、2枚の側板26の上部に取り付けられている。
この天板27は、ユニット21がロボットアーム11の保持部12に保持される、被保持部となる。
ユニット21の被保持部を、前述したようにロボットアーム11の保持部12と嵌め込む構成とする場合には、例えば、天板27の所定の位置に孔又は凹部を設けて、ロボットアーム11の保持部12に孔に対応した突起又は凹部に対応した凸部を設ける。
また、例えば、前述したようにユニットに目印を設けた構成とする場合には、例えば、天板27の所定の位置に、検知可能な目印(孔、突起、着色部、等)を設ける。
【0028】
このユニット21では、底板22に麺かご用開口23が3個設けられているので、3個の麺かごを収容することができる。
ユニット21に使用する麺かごとしては、水平断面が円形の麺かごを使用することができる。
ここで、
図2のユニット21に使用する麺かごの一形態の概略構成図を、
図3に示す。
図3に示す麺かご31は、金属製の麺かごに、手持ち用の柄32が取り付けられた構成である。
作業者が、麺かご31に麺を入れて、麺を入れた麺かご31をユニット21に収容することにより、
図1の自動麺ゆで装置1において麺かご31内の麺をゆでることが可能になる。
【0029】
本実施の形態の自動麺ゆで装置1において、より好ましくは、麺を攪拌するために気泡又は湯を噴出させる噴出口を湯槽2に設けて、さらに噴出口を麺かご31の中心部の位置からずらして配置する。
この場合の噴出口の位置と麺かご31の位置との関係を、
図4に示す。
図4は、麺かご31と噴出口35を上から見た図である。
図4に示すように、断面円形の麺かご31の中心部から図中上にずらした位置に、噴出口35を設ける。これにより、麺かご31の中心部の真下に噴出口35を設けた構成と比較して、麺を回転させてよくほぐすことができる。
なお、
図4では、麺かご31の円周と中心の間の半分の位置に噴出口35を設けているが、麺かご31の中心から噴出口35をずらす量は、
図4の半分には限定されない。
【0030】
また、本実施の形態の自動麺ゆで装置1では、湯槽2から洗浄槽3へのユニット21の移動と、洗浄槽3から冷却槽4へのユニット21の移動と、冷却槽4からのユニット21の移動の、それぞれの移動の前に、麺の水切りを行う。
そして、本実施の形態の自動麺ゆで装置1において、より好ましくは、麺の水切りの際に、ロボットアーム11がユニット21を斜めに傾けた状態で保持して、水切りを行う。
【0031】
ユニット21を傾斜させて水切りする状態を、
図5に示す。なお、
図5では、ロボットアームの図示を省略している。
図5に示すように、ユニット21を傾斜させた状態で図示しないロボットアームによって保持して、麺かご31内の麺の水切りを行う。
ユニット21を傾斜させることにより、ユニット21に収容された麺かご31も傾斜する。麺かご31は、中心部が窪んでいるので、中心部に麺が集まり、中心部では麺の密度が大きくなる。そのため、麺かご31を垂直に立てた状態よりも、麺かご31を傾斜させた状態の方が、中心部よりも麺の密度が小さい部分に水が集まるので、水切りがしやすくなる。
【0032】
本実施の形態の自動麺ゆで装置1において、作業者は、例えば以下に述べるように、作業を行うことができる。
【0033】
まず、作業者は、自動麺ゆで装置1の電源を入れる。
そして、湯槽2内の水が加熱されて、麺をゆでる温度(例えば、97℃~99℃)になってから、作業者は、麺をゆでる作業を開始する。
【0034】
作業者は、ゆでる前の麺(生麺)を入れた麺かご31を、ユニット置き場5に置かれたユニット21に収容する。
また、作業者は、麺を冷却する過程が終わりユニット置き場5に置かれたユニット21から、麺かご31を取り出す。そして、作業者は、麺かご31の中の麺を、麺かご31から取り出して、食器(丼など)又は容器(食器に入れる前に一時的に麺を保持する容器)に入れる。
さらに、作業者は、麺を取り出して空になった麺かご31を洗浄する。
その後、作業者は、洗浄した麺かご31に、ゆでる前の麺(生麺)を入れて、ユニット置き場5に置かれたユニット21に収容する。
以降、これらの作業を繰り返す。
【0035】
次に、
図1に示す自動麺ゆで装置1におけるロボットアーム11の動作を、
図6を参照して説明する。
図6では、自動麺ゆで装置1の左右方向であるX方向の矢印と、自動麺ゆで装置1の前後方向であるY方向の矢印とを、
図1に付与している。なお、
図6では、ユニット21の図示を省略している。
【0036】
ユニット置き場5では、ユニット21の長手方向が
図6のX方向(左右方向)となるように、ユニット21を置く。
ロボットアーム11は、麺を入れた麺かご31を収容したユニット21がユニット置き場5に置かれたことを検知して、動作を開始する。
【0037】
そして、ロボットアーム11は、ユニット置き場5からユニット21を持ち上げて、ユニット21をユニット置き場5から湯槽2に移動させる。湯槽2では、ユニット21の長手方向を、ユニット置き場5と同様に、
図6のX方向(左右方向)とする。
次に、ロボットアーム11は、ユニット21に収容された麺かご31が湯槽2の湯に浸かるように、ユニット21を湯槽2に下げる。この状態で、
図6のY方向(前後方向)にユニット21を揺動させる。揺動は、所定の回数(例えば、2往復)行う。ユニット21を揺動させることにより、棒などを使わなくても、麺をほぐして麺に湯を入りやすくすることができる。
ユニット21を揺動させた後に、ロボットアーム11は、ユニット21のつば24が湯槽2に掛かるように、ユニット21を湯槽2に置く。これにより、ユニット21に収容された麺かご31の中の麺をゆでることができる。そして、麺を、所定の時間(例えば、100秒)ゆでる。
【0038】
ユニット21を湯槽2に置いてから、ユニット21を湯槽2から取り出して移動させるまでの期間は、ロボットアーム11を待機させるか、ロボットアーム11に他の作業(別のユニット21の移動等)を行わせる。
【0039】
麺を所定の時間ゆでた後に、ロボットアーム11は、ユニット21を持ち上げて、ユニット21に収容された麺かご31を湯槽2の湯から取り出し、湯槽2の上で水切り(湯切り)を行う。
すなわち、ロボットアーム11は、
図6に示したように、ユニット21を所定の角度(例えば、40度)傾斜させた状態として、所定の時間(例えば、4秒)水切りを行う。
また、洗浄槽3がY方向(前後方向)に長い形状であるため、ロボットアーム11は、湯槽2では長手方向を
図6のX方向としていたユニット21を90度回転させて、ユニット21の長手方向を
図6のY方向としてから、洗浄槽3に移動させる。
なお、
図1に示す自動麺ゆで装置1では、湯槽2の上における水切りと、ユニット21の90度回転とは、どちらを先に行うことも可能である。そして、ロボットアーム11は、水切りと、ユニット21の90度回転とを、決めた順序で実行する。
【0040】
ここで、水切りのためにユニット21を傾斜させる動作は、90度回転させた後に水切りする場合の90度回転させる動作と、同時に行うことが可能である。
また、傾斜させたユニット21を垂直な状態に復元する動作は、ユニット21を移動する動作や、水切り後に90度回転させる場合の90度回転させる動作と、同時に行うことが可能である。
このように、ユニット21の傾斜や復元を、ユニット21の回転や移動と同時に行うことにより、別々に行う場合と比較して、所要時間を短縮することができる。
【0041】
ロボットアーム11は、ユニット21を洗浄槽3の上に移動させた後、ユニット21に収容された麺かご31が洗浄槽3の洗浄水に浸かるように、ユニット21を洗浄槽3に下げる。この状態で、
図6のX方向(左右方向)にユニット21を揺動させて、洗浄水で麺を洗浄することにより、あら熱を取り、ぬめりを除去する。揺動は、所定の時間(例えば、10秒間)行う。
その後、ロボットアーム11は、ユニット21を持ち上げて、ユニット21に収容された麺かご31を洗浄槽3の洗浄水から取り出し、洗浄槽3の上で水切りを行う。すなわち、ロボットアーム11は、
図5に示したように、ユニット21を所定の角度(例えば、40度)傾斜させた状態として、所定の時間(例えば、2秒)水切りを行う。
水切りの後に、ロボットアーム11は、傾斜させたユニット21を垂直な状態に復元すると共に、ユニット21を洗浄槽3の上から冷却槽4の上に移動させる。
【0042】
ロボットアーム11は、ユニット21を冷却槽4の上に移動させた後、ユニット21に収容された麺かご31が冷却槽4の冷却水に浸かるように、ユニット21を冷却槽4に下げる。この状態で、
図6のX方向(左右方向)にユニット21を揺動させて、冷却水で麺を冷却することにより、麺をしめる。揺動は、所定の時間(例えば、10秒間)行う。
その後、ロボットアーム11は、ユニット21を持ち上げて、ユニット21に収容された麺かご31を冷却槽4の冷却水から取り出し、水切りを行う。すなわち、ロボットアーム11は、
図5に示したように、ユニット21を所定の角度(例えば、40度)傾斜させた状態として、所定の時間(例えば、2秒)水切りを行う。
【0043】
水切りの後に、ロボットアーム11は、傾斜させたユニット21を垂直な状態に復元する。
なお、このユニット21を復元する際には、単純にユニット21だけを回転させて垂直な状態に復元するよりも、ロボットアーム11の保持部12の位置を右側(湯槽2側)に戻しながらユニット21を垂直な状態に復元する方が望ましい。このように保持部12の位置を右側に戻しながらユニット21を垂直な状態に復元することにより、ユニット置き場5に置かれている他のユニット21の麺に、麺かご31から水がかからない。
そして、ロボットアーム11は、冷却槽42では長手方向を
図6のY方向としていたユニット21を90度回転させて、ユニット21の長手方向を
図6のX方向とする。
その後、ロボットアーム11は、ユニット21を、冷却槽4の上からユニット置き場5の所定の位置に移動させる。
以上述べたように、ロボットアーム11を動作させることにより、ユニット21に収容された麺かご31内の麺に、麺をゆでる過程、洗浄する過程、冷却する過程を自動的に行うことができる。
【0044】
なお、湯槽2と洗浄槽3と冷却槽4の横幅や隣の槽との間隔、ユニット21の側板の高さ、ロボットアーム11の保持部12等の寸法、水切り時のユニット21の傾斜の角度等を、それぞれ選定することにより、湯槽2や洗浄槽3の上での水切りの動作の際に、ロボットアーム11の位置を次の槽の上に移動させておくことが可能になる。このように選定すれば、水切りの動作の後に、直ちにユニット21の復元と次の槽の上への移動とを同時に行うことができ、所要時間を短縮できる。
【0045】
また、前述したように、湯槽2で1つのユニット21の麺かご31内の麺をゆでている間に、ロボットアーム11が麺かごを収容した別のユニット21を移動させることが可能である。
第1のユニットと第2のユニットを使用する場合に、例えば、第1のユニットを湯槽2に置いて麺をゆでている間に、第2のユニットをユニット置き場5から湯槽2に運んで湯槽2に置くことが可能である。そして、第2のユニットを湯槽2に置いて麺をゆでている間に、第1のユニットを湯槽2から洗浄槽3と冷却槽4を経てユニット置き場5まで運ぶことが可能である。
さらに第3のユニットを使用して、第3のユニットに麺を入れた麺かごを収容し、第1のユニットがユニット置き場5に戻ってくるまでに、第3のユニットをユニット置き場5に置くようにすれば、複数のユニットを並行して動作させることを繰り返すことが可能である。
【0046】
上述の本実施の形態の自動麺ゆで装置1は、湯槽2と洗浄槽3と冷却槽4とロボットアーム11とロボットアーム11を制御する制御部を備えている。
また、本実施の形態の自動麺ゆで装置1は、複数個の麺かご31を収容するユニット21を使用する。
そして、ロボットアーム11が、麺かご31に麺が入ったユニット21を保持した状態で、湯槽2への移動と、湯槽2から洗浄槽3への移動と、洗浄槽3から冷却槽4への移動と、冷却槽4からの移動とを、それぞれ行って、麺をゆでる過程、麺を洗浄する過程、麺を冷却する過程、のそれぞれの過程を自動で行う。
【0047】
したがって、本実施の形態の自動麺ゆで装置1によれば、制御部で制御されるロボットアーム11によって、ユニット21の移動やそれぞれの過程を行うので、ロボットアーム11だけで、移動と一連の過程を行うことができる。
これにより、特許文献1や特許文献2のように複数の機構を使用する場合と比較して、制御を容易に行うことができる。すなわち、
図1に示すロボットアーム11は、各関節部の回動の量と回動速度を設定することにより、先端部の位置や動作の速度を設定することができるので、容易に動作を制御することができる。
さらに、ロボットアーム11は、制御部の制御プログラム等の変更により、ロボットアーム11の先端部の位置や動作を容易に変更することができるので、複数の機構を使用する場合と比較して、設計の自由度が大きくなり、変更や動作の追加が容易にできる。
【0048】
また、複数個の麺かご31を収容するユニット21を使用するので、一度に複数個の麺かご31を移動させて、麺かご31内の麺をゆでて、洗浄して、冷却することができる。
これにより、一連の過程(麺をゆでる過程、洗浄する過程、冷却する過程)の作業を効率良く行うことができる。そして、作業者の手で1つの麺かご31を持って麺かご31を移動させる場合や、ロボットアームが1つの麺かご31を保持して移動させる場合と比較して、一連の過程の作業の効率を向上することができる。
【0049】
さらに、ロボットアーム11によって、一連の過程(麺をゆでる過程、洗浄する過程、冷却する過程)を自動で行うので、作業者が行う作業を減らして省力化することができる。また、作業者が作業する場合には、扱う作業者の技能や疲労度により、作業の時間や作業の質にばらつきが生じることがあるが、ロボットアーム11が自動で行うのでばらつきが生じない。
【0050】
また、本実施の形態では、湯槽2から洗浄槽3への移動と、洗浄槽3から冷却槽4への移動と、冷却槽4からユニット置き場5への移動の、それぞれのユニット21の移動の前に、ロボットアーム11がユニット21を斜めに傾けた状態で保持して、麺の水切りを行う。これにより、麺かご31が斜めに傾斜するので、麺かご31を垂直に立てた状態よりも、水切りがしやすくなる。そして、例えば、麺かご31を垂直に立てた状態で水切りする場合と比較して、水切りの時間を短縮することや、水切り後の麺に残る水の量を低減することが可能になる。
作業者が麺かごやユニットを持って水切りした場合、傾斜角度や保持時間にばらつきが生じることがありうるが、ロボットアーム11を使用しているので、傾斜角度や保持時間を一定にして水切りを行うことができる。
【0051】
上述した実施の形態では、ユニット21が3個の麺かごを収容できる構成であったが、ユニットに収容できる麺かごの数は、3個に限定されず、複数個(2個以上)であれば良い。
ただし、ユニットに収容できる麺かごの数を多くすると、麺かごを収容した状態のユニットの重量が増大してロボットアームへの負荷が大きくなることや、ユニットの長さが大きくなって各槽やユニット置き場に広い面積が必要となる。
これらのことを考慮して、ユニットに収容できる麺かごの数は、2個~4個の範囲が好ましい。
【0052】
上述した実施の形態では、ユニット21の底板22が矩形状の平板部を有し、平板部の麺かご用開口23が円形であった。
ユニット21の底板22の平板部が矩形状であると、他の形状(例えば円形状)と比較して、自動麺ゆで装置の設計やユニットの移動の動作が容易である。
ユニット21の麺かご用開口23の形状を円形とすれば、
図3に示したような、一般的な断面円形の麺かご31をそのまま使用することができる。
しかし、ユニットの底板の形状や麺かご用開口の形状は、
図2のユニット21のそれぞれの形状には限定されず、他の形状を採用することも可能である。
また、ユニットの側板や天板等の形状も、
図2に示したユニット21のそれぞれの形状には限定されず、ユニットの動作、麺かごの収容や麺かごの取り出しに支障がなければ、他の形状を採用することもできる。
そして、ユニットの被保持部は
図2のユニット21の天板27に限らず、他の形状のユニットを使用する場合には、天板以外の位置を被保持部とすることが可能である。
【0053】
ロボットアームの数は、
図1の自動麺ゆで装置1の1個に限定されず、複数個のロボットアームを設けることも可能である。
例えば、自動麺ゆで装置の両側にロボットアームを設けて、それぞれのロボットアームの動作に支障がないように動作させることにより、2個のユニットをそれぞれ独立して移動させることが可能である。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施の形態で説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明の構成を逸脱しない範囲において、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 自動麺ゆで装置、2 湯槽、3 洗浄槽、4 冷却槽、5 ユニット置き場、11 ロボットアーム、12 保持部、21 ユニット、22 底板、23 麺かご用開口、24,25 つば、26 側板、27 天板(被保持部)、31 麺かご、32 柄、35 噴出口