(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20231215BHJP
【FI】
H01L31/04 570
(21)【出願番号】P 2020025534
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧 賢一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 治寿
(72)【発明者】
【氏名】住友 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】神野 浩
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/002229(WO,A1)
【文献】特開2009-231711(JP,A)
【文献】特開2013-153072(JP,A)
【文献】特開2011-88165(JP,A)
【文献】特開2013-175624(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0200170(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面および裏面に、集電極が並べられた太陽電池セルを準備する工程と、
前記太陽電池セルの受光面に、第1の方向に沿って第1接着領域と第2接着領域とが交互に並ぶように、前記第1接着領域に接着剤を塗布し、前記太陽電池セルの裏面に、前記第1の方向に沿って第3接着領域と第4接着領域とが交互に並ぶように、前記第3接着領域に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤が塗布された前記太陽電池セルの受光面側に、前記第1の方向に沿って受光面側配線材を配置する工程と、
前記接着剤が塗布された前記太陽電池セルの裏面側に、前記第1の方向に沿って裏面側配線材を配置する工程と、
前記受光面側配線材および前記裏面側配線材が配置された前記太陽電池セルを受光面側および裏面側の両側から加熱または押圧して、前記受光面側配線材および前記裏面側配線材を接着する工程と、を備え、
前記受光面側配線材を配置する工程は、保持領域と非保持領域とが前記第1の方向に沿って並んだ前記受光面側配線材の保持領域に第1の保持器具を接触させた状態で、前記第2接着領域と保持領域とが重なるように前記受光面側配線材を前記太陽電池セルの前記第1接着領域および前記第2接着領域に配置し、
前記裏面側配線材を配置する工程は、保持領域と非保持領域とが前記第1の方向に沿って並んだ前記裏面側配線材の保持領域に第2の保持器具を接触させた状態で、前記第4接着領域と保持領域とが重なるように前記裏面側配線材を前記太陽電池セルの前記第3接着領域および前記第4接着領域に配置する、
太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記接着剤を塗布する工程は、
前記第2接着領域に、前記第1接着領域より少ない量の前記接着剤を塗布する工程と、
前記第4接着領域に、前記第3接着領域より少ない量の前記接着剤を塗布する工程と、
を含む、
請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記接着剤を塗布する工程は、前記第2接着領域または前記第4接着領域に、前記接着剤を塗布しない、
請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記受光面側配線材を配置する工程は、外気を吸引する機構を備えた前記第1の保持器具が前記受光面側配線材を吸着した状態で、前記第2接着領域と保持領域とが重なるように前記受光面側配線材を配置し、
前記裏面側配線材を配置する工程は、外気を吸引する機構を備えた前記第2の保持器具が前記裏面側配線材を吸着した状態で、前記第4接着領域と保持領域とが重なるように前記裏面側配線材を配置する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記受光面側配線材および前記裏面側配線材は、断面が略円形である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記接着剤を塗布する工程は、スクリーン印刷、ディスペンサー、スプレー、のいずれかの方法によって行われる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記接着剤を塗布する工程は、前記受光面の複数の前記第1接着領域のそれぞれに、配線材と交差するように配置された複数の前記集電極をまたぐように前記接着剤を塗布し、前記第1の方向に隣り合う前記第1接着領域の前記接着剤の間隔をD1とし、当該2つの前記接着剤間の1つの前記集電極を含む隣り合う前記集電極の間隔をD2としたときに、D1>D2である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記集電極の長手方向について、受光面側の前記配線材の幅をD3とし、前記第1の保持器具の前記受光面側配線材を吸引する吸引孔の最大幅をD4としたときに、D1>D2>D3>D4である、
請求項7に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記受光面側配線材および前記裏面側配線材を接着する工程は、
前記受光面側配線材を配置する工程および前記裏面側配線材を配置する工程の後に、前記配線材が配置された前記太陽電池セルを受光面側および裏面側の両側から加熱または押圧する、第1の接着工程と、
前記第1の接着工程の後に、前記配線材が配置された前記太陽電池セルを受光面側および裏面側の両側から加熱または押圧する、第2の接着工程と、を含み、
前記第2の接着工程の前の、前記太陽電池セルと前記受光面側配線材の接着強度は、前記第2の接着工程の後の前記太陽電池セルと前記受光面側配線材の接着強度より小さい、
請求項1から8のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セル、太陽電池セル同士を接続する配線材、およびこれらを封止する充填材等を備える。配線材は太陽電池の電極上に接着されるが、当該接着には主に半田が用いられてきた。しかし、半田付け時の熱影響により、太陽電池の反りやクラックが発生する場合がある。かかる不具合は、太陽電池の厚みが薄くなるほど顕著に現れる。このため、半田の代わりに樹脂接着剤(以下、単に「接着剤」という)を用いて配線材と太陽電池セルとを接着する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、太陽電池セルの両面に接着剤で配線材を接着する場合に、特許文献1では、太陽電池セルの両面に設けられたバスバー電極の長手方向に沿って当該バスバー電極上に接着剤が塗布され、その塗布工程の後に、接着剤が塗布された太陽電池セルに配線材が熱圧着される。このとき、外気を吸引する吸引機構を有する保持器具で配線材を保持して太陽電池セルに移動させる場合が考えられる。しかしながら、接着剤の硬化前の流動性が高く、かつ、配線材が細い場合に、太陽電池セルに接着剤を介して配線材を配置する工程で、太陽電池セルと配線材との間からはみ出した接着剤が、配線材を保持器具の側に回り込んで吸引孔内に付着する可能性がある。これにより保持器具の吸引孔の汚れが発生し、保持器具を洗浄する頻度が増えたり、保持器具の吸引力が低下して配線材の落下が生じやすくなる。したがって、太陽電池モジュールの製造方法において、配線材を保持する保持器具における接着剤の付着を抑制することは重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、受光面および裏面に、集電極が並べられた太陽電池セルを準備する工程と、太陽電池セルの受光面に、第1の方向に沿って第1接着領域と第2接着領域とが交互に並ぶように、第1接着領域に接着剤を塗布し、太陽電池セルの裏面に、第1の方向に沿って第3接着領域と第4接着領域とが交互に並ぶように、第3接着領域に接着剤を塗布する工程と、接着剤が塗布された太陽電池セルの受光面側に、第1の方向に沿って受光面側配線材を配置する工程と、接着剤が塗布された太陽電池セルの裏面側に、第1の方向に沿って裏面側配線材を配置する工程と、受光面側配線材および裏面側配線材が配置された太陽電池セルを受光面側および裏面側の両側から加熱または押圧して、受光面側配線材および裏面側配線材を接着する工程と、を備え、受光面側配線材を配置する工程は、保持領域と非保持領域とが第1の方向に沿って並んだ受光面側配線材の保持領域に第1の保持器具を接触させた状態で、第2接着領域と保持領域とが重なるように受光面側配線材を太陽電池セルの第1接着領域および第2接着領域の上に配置し、裏面側配線材を配置する工程は、保持領域と非保持領域とが第1の方向に沿って並んだ裏面側配線材の保持領域に第2の保持器具を接触させた状態で、第4接着領域と保持領域とが重なるように裏面側配線材を太陽電池セルの第3接着領域および第4接着領域の上に配置する、太陽電池モジュールの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、接着剤の塗布状態を適正化できるので、配線材を保持する保持器具における接着剤の付着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態の一例の製造方法で得られる太陽電池モジュールの断面図である。
【
図2A】
図1の太陽電池モジュールを構成する太陽電池セルを受光面側から見た図(正面図)である。
【
図2B】
図1の太陽電池モジュールを構成する太陽電池セルを裏面側から見た図(背面図)である。
【
図3】本発明の実施形態の一例である太陽電池モジュールの製造方法において、接着剤塗布工程および配線材固定工程を示すフローチャートである。
【
図4】
図3に示す接着剤塗布工程および配線材固定工程を含む製造方法において、配線材固定工程の一部である配線材配置工程を示す図である。
【
図5】
図3の接着剤塗布工程において接着剤が塗布された太陽電池セルを受光面側から見た図(a)と、(a)のA部拡大図(b)と、(b)のB部拡大図(c)である。
【
図6】
図3の配線材固定工程において、接着剤が塗布された太陽電池セルの両面に配線材を仮圧着する方法を示している
図5(b)のC-C断面に対応する図である。
【
図7】
図3の配線材固定工程において、接着剤が塗布された太陽電池セルの両面に配線材を仮圧着する方法を示している
図5(b)のD-D断面に対応する図である。
【
図8】
図3の第1の接着工程および第2の接着工程において、第1および第2の加熱押圧装置により2つの太陽電池セルの両側から加熱と押圧とを行う直前の状態を示す模式図である。
【
図10】
図3の第1の接着工程および第2の接着工程において、第1および第2の加熱押圧装置により2つの太陽電池セルの両側から加熱と押圧とを行っている状態を示す模式図である。
【
図11】本発明の実施形態の効果を説明するための図であって、太陽電池セルに対する隣り合う第1接着領域の接着剤の間隔D1を、隣り合う集電極であるフィンガー電極の間隔D2より小さくした参考例(a)と、間隔D1を間隔D2より大きくした実施形態(b)とを示している、
図5(b)のC-C断面に対応する模式図である。
【
図12】比較例の太陽電池モジュールの製造方法において、
図5(b)に対応する図である。
【
図13】比較例の太陽電池モジュールの製造方法において、
図6に対応する図である。
【
図14】比較例の太陽電池モジュールの製造方法において、
図7に対応する図である。
【
図15】本発明の実施形態の別例の4例において、太陽電池セルの受光面に対する接着剤の塗布状態を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態の別例の4例において、太陽電池セルの受光面に対する配線材の固定状態を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態の別例の2例において、太陽電池セルの受光面に対する接着剤の塗布状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0009】
本明細書において、「受光面」とは、太陽電池の外部から太陽光が主に入射する面を意味する。「裏面」とは、受光面と反対側の面を意味する。より詳しくは、太陽電池に入射する太陽光のうち50%超過~100%が受光面側から入射する。また、「上方」とは、特に断らない限り鉛直上方を意味する。また、「略**」とは、「略同一」を例に挙げて説明すると、全く同一はもとより、実質的に同一と認められるものを含む意図である。
【0010】
図1は、本発明の実施形態の一例である太陽電池モジュール10の断面図である。
図2A、
図2Bは、太陽電池モジュール10を構成する太陽電池セル11を受光面側および裏面側からそれぞれ見た図である(配線材15を二点鎖線で示す)。以下、
図1および
図2A、
図2Bを用いて説明する太陽電池モジュール10は、後述の製造方法による製造物の一例である。なお、以下の説明では、太陽電池セル11の両側面にバスバー電極が配置されない場合を説明するが、太陽電池セル11の両側面に、フィンガー電極22a、22bに略直角に交差するようにバスバー電極が配置されてもよい。バスバー電極は、フィンガー電極22a、22bからキャリアを収集する電極である。その場合、後述する配線材15を太陽電池セル11に固定するための接着剤が、太陽電池セル11の両側面のバスバー電極が配置される部分に塗布され、配線材15がバスバー電極に固定されてもよい。
【0011】
図1に示すように、太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池セル11と、太陽電池セル11の受光面側に配置される第1の保護部材12と、太陽電池セル11の裏面側に配置される第2の保護部材13とを備える。複数の太陽電池セル11は、保護部材12,13により挟持されると共に、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等の充填材14により封止されている。保護部材12,13には、例えば、ガラス基板や樹脂基板、樹脂フィルム等の透光性を有する部材を用いることができる。なお、裏面側からの光の入射を想定しない場合には、保護部材13に透光性を有さない部材を用いてもよい。太陽電池モジュール10は、さらに、太陽電池セル11同士を電気的に接続する配線材15、図示しないフレームや端子ボックス等を備える。
【0012】
太陽電池セル11は、太陽光を受光することでキャリアを生成する光電変換部20を備える。光電変換部20は、例えば、結晶系シリコン(c-Si)、ガリウム砒素(GaAs)、インジウム燐(InP)等の半導体基板と、基板上に形成された非晶質半導体層とを有する。また、光電変換部20は、非晶質半導体層上に形成される透明導電層21a,21bを有することが好適である。具体例としては、n型単結晶シリコン基板の受光面上にi型非晶質シリコン層、p型非晶質シリコン層、および透明導電層21aを順に形成し、裏面上にi型非晶質シリコン層、n型非晶質シリコン層、および透明導電層21bを順に形成した構造が挙げられる。透明導電層21a,21bは、酸化インジウム(In2O3)や酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物に、錫(Sn)やアンチモン(Sb)等をドープした透明導電性酸化物から構成されることが好ましい。
【0013】
図2A、
図2Bに示すように、光電変換部20上には、受光面側の集電極としてフィンガー電極22aを、裏面側の集電極としてフィンガー電極22bをそれぞれ設けることが好適である。フィンガー電極22a,22bは、それぞれ透明導電層21a,21b上の広範囲に形成される細線状の電極である。
【0014】
本実施形態では、直線状に形成される多数のフィンガー電極22a,22bが所定間隔をあけて配置されている。裏面側の集電極も受光面側の集電極と同様の電極配置を有するが、裏面では受光面と比べて光電変換特性に対する遮光ロスの影響が少ないため、裏面側の集電極は受光面側の集電極よりも大面積に形成できる。裏面側の集電極は、例えば、受光面側の集電極の2倍~6倍程度の電極面積を有し、フィンガー電極22bの本数をフィンガー電極22aの本数よりも増やすことができる。即ち、「受光面」は電極面積が小さい方の面であり、「裏面」は電極面積が大きい方の面であるといえる。
【0015】
集電極は、例えば、バインダ樹脂中に銀(Ag)等の導電性フィラーが分散した構造を有する。当該構造の集電極は、例えばスクリーン印刷により形成できる。
【0016】
配線材15は、隣接配置される太陽電池セル11同士を接続する細長い部材である。配線材15は、断面が略円形である。配線材15は、断面を略矩形としてもよい。一方、太陽電池セル11の表面で配線材15により影となる部分を少なくして太陽電池モジュール10の出力を高くする面からは、配線材15を断面略円形とすることが好ましい。一方、配線材15の断面を略円形とする場合には、後述のように配線材15を太陽電池セル11に接着する場合に、太陽電池セル11と配線材15との間からはみ出した接着剤が、配線材15の仮圧着時に、吸引孔を通じて外気を吸引することで配線材15を保持する保持器具に向かって回り込みやすくなる。これにより、保持器具の吸引孔の汚れを抑制する面からは不利となる。本実施形態は、このような構成でも後述のように吸引孔の汚れを抑制できるので、断面略円形の配線材15を用いる場合には上記の汚れを抑制できる効果が顕著になる。
【0017】
配線材15の一端側は、隣接配置される太陽電池セル11のうち、一方の太陽電池セル11の受光面側に接着剤により取り付けられる。配線材15の他端側は、他方の太陽電池セル11の裏面側に接着剤により取り付けられる。即ち、配線材15は、隣接配置される太陽電池セル11の間で太陽電池モジュール10の厚み方向に曲がり、当該太陽電池セル11同士を直列に接続する。配線材15は、隣接配置される太陽電池セル11の複数のフィンガー電極22a,22bに交差して接触するように接着される。
【0018】
接着剤30(
図5)には、熱可塑性接着剤や熱硬化型接着剤、常温硬化型接着剤(湿気硬化型、2液硬化型)、エネルギー線硬化型接着剤(紫外線硬化型)を用いることができる。これらのうち、硬化型接着剤が好ましく、熱硬化型接着剤が特に好ましい。熱硬化型接着剤としては、例えば、ユリア系接着剤、レゾルシノール系接着剤、メラミン系接着剤、フェノール系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリイミド系接着剤、アクリル系接着剤等が例示できる。
【0019】
接着剤30は、Ag粒子等の導電性フィラーが含有されていてもよいが、製造コストや遮光ロス低減等の観点から、好ましくは導電性フィラーを含有しない非導電性の熱硬化型接着剤が用いられる。硬化前の接着剤30は、液状である。「液状」とは、常温(25℃)で流動性を有する状態であって、ペースト状と呼ばれる状態を含む意図である。接着剤30の粘度は、1Pa・s~50Pa・s程度である。後述する製造方法は、例えば、接着剤30の粘度が低く流動性が高い場合に特に好適である。
【0020】
接着剤30は、それぞれ配線材15と受光面との間、配線材15と裏面との間のみに存在するように塗布することが好適である。即ち、接着剤30は、配線材15と受光面および裏面との間からはみ出さない幅で塗布することが好適である。特に本実施形態では、接着剤30の塗布状態を適正化できるので、太陽電池セル11への配線材15の固定を行うために配線材15を保持して移動させる保持器具において、配線材15からはみ出した接着剤30の付着を抑制できる。
【0021】
以下、
図3~
図10を用いて、本発明の実施形態の一例である太陽電池モジュール10の製造方法について詳説する。
図3は、実施形態の太陽電池モジュール10の製造方法において、接着剤塗布工程および配線材固定工程を示すフローチャートである。
【0022】
図3に示すように、実施形態の製造方法は、太陽電池セル準備工程S1、接着剤塗布工程Sa、および配線材固定工程Sbを含む。太陽電池セル準備工程S1は、太陽電池モジュール10を構成する後述のストリング90(
図8)を形成する複数の太陽電池セル11を準備する工程である。これら複数の太陽電池セル11のそれぞれは、
図2A、
図2Bに示したように、受光面および裏面に、集電極であるフィンガー電極22a、22bが並べられている。このとき、複数の太陽電池セル11のそれぞれは、受光面および裏面に、別の集電極であるバスバー電極が、フィンガー電極22a、22bと交差するように並べられていてもよい。このとき、フィンガー電極22a、22bの外側にバスバー電極が配置される。
【0023】
接着剤塗布工程Saは、第1第2領域接着剤塗布工程S2および第3第4領域接着剤塗布工程S3を有する。第1第2領域接着剤塗布工程S2は、後述のように太陽電池セル11の受光面において、配線材15が延びる方向である第1の方向に沿って交互に配置された第1接着領域と第2接着領域とに接着剤30(
図5)を塗布する工程である。第3第4領域接着剤塗布工程S3は、後述のように太陽電池セル11の裏面において、第1の配置方向に沿って交互に配置された第3接着領域と第4接着領域とに接着剤30を塗布する工程である。
【0024】
配線材固定工程Sbは、裏面側配線材配置工程S4、受光面側配線材配置工程S5、第1の接着工程S6、および第2の接着工程S7を含んでいる。裏面側配線材配置工程S4は、太陽電池セル11の裏面面に配線材15を、接着剤30を介して配置する工程である。受光面側配線材配置工程S5は、太陽電池セル11の受光面に配線材15を、接着剤30を介して配置する工程である。第1の接着工程S6は、配線材15が配置された太陽電池セル11を受光面側および裏面側の両側から加熱および押圧して、太陽電池セル11への配線材15の接着強度を高くする工程である。第2の接着工程S7は、第1の接着工程S6の後に、配線材15が配置された太陽電池セル11を受光面側および裏面側の両側から加熱および押圧して、太陽電池セル11への配線材15の接着強度をさらに高くする工程である。このとき、第2の接着工程S7の前の、太陽電池セル11と受光面側の配線材15の接着強度は、第2の接着工程S7の後の太陽電池セル11と受光面側の配線材15の接着強度より小さい。次に、上記の各工程のうち、特に、接着剤塗布工程Saと配線材固定工程Sbとを詳述する。
【0025】
太陽電池モジュール10は、配線材接続システム40(
図4)を備える製造ラインにより製造することができる。配線材接続システム40は、太陽電池モジュール10の製造ラインの一部を構成するシステムであって、太陽電池セル11の裏面上および受光面上に接着剤30(
図5)を介して配線材15を配置する。配線材接続システム40で接着剤30が塗布された太陽電池セル11には配線材15が取り付けられ、複数の太陽電池セル11が配線材15で接続されたストリング90(
図8,10参照)が作製される。そして、当該ストリング90は、例えばラミネート装置(図示せず)に搬送され、後述のラミネート工程を経て太陽電池モジュール10が製造される。
【0026】
図4は、
図3に示す接着剤塗布工程Saおよび配線材固定工程Sbを含む製造方法において、配線材固定工程Sbの一部である配線材配置工程S4,S5を示す図である。配線材接続システム40は、太陽電池セル11と裏面側(
図4(c)(d)の下側)の配線材15とを載置する下側ステージ41を含む。下側ステージ41は、第2の保持器具に相当する。下側ステージ41は、太陽電池セル11の裏面側に配置する配線材15の長手方向Yに延びた複数の板部42を有し、複数の板部42は、裏面側の配線材15と同数が、配線材15の配列方向Xに間隔をあけて並んで配置される。
図4では、複数の板部42の厚み方向をXで示し、長手方向をYで示し、X、Yに直交する上下方向をZで示している。複数の板部42には上下方向Zに貫通する複数の吸引孔43(
図4(a))が、長手方向Yに所定間隔をあけて配置される。下側ステージ41は、吸引孔43に接続された第1吸引装置(図示せず)を含む。第1吸引装置は、吸引孔43から外気を吸引する機構であり、エア排出部等を用いる。これにより、下側ステージ41は、上側に載置された配線材15を複数の吸引孔43で吸引して下側ステージ41に保持する。
【0027】
配線材接続システム40は、さらに、受光面側(
図4(d)の上側)の配線材15を保持する上側ステージ44を含む。上側ステージ44は、第1の保持器具に相当する。上側ステージ44は、太陽電池セル11の受光面側に配置する配線材15の長手方向Yに延びた複数の板部45を有する。複数の板部45は、受光面側の配線材15と同数が、配線材15の配列方向Xに間隔をあけて並んで配置される。裏面側と受光面側との板部42,45は、厚み方向Xについて同じ位置に配置される。複数の受光面側の板部45には、裏面側の板部42と同様に、上下方向Zに貫通する複数の吸引孔46が、長手方向Yに所定間隔をあけて配置される。上側ステージ44は、吸引孔46に接続された第2吸引装置(図示せず)を含む。第2吸引装置は、吸引孔46から外気を吸引する機構であり、エア排出部等を用いる。これにより、上側ステージ44は、下側に位置する配線材15を複数の吸引孔46で吸引して上側ステージ44に保持する。なお、第1吸引装置及び第2吸引装置として共通の吸引装置を用いてもよい。上側ステージ44の複数の板部45は、移動装置(図示せず)によって上下方向に移動される。
【0028】
裏面側配線材配置工程S4(
図3)の前に、
図4(a)(b)に示すように、下側ステージ41の各板部42に配線材15が載置され吸引されて保持される。
図4(b)では、配線材15のうち、板部42上に配置される部分のみを図示している。第1第2領域接着剤塗布工程S2は、
図4(c)の前に行われる。具体的には、
図4(c)のように裏面側の配線材15の上に太陽電池セル11を載置する前に、太陽電池セル11の受光面側に接着剤30(
図5)を塗布する第1第2領域接着剤塗布工程を行い、太陽電池セル11の裏面側に接着剤30を塗布する第3第4領域接着剤塗布工程を行う。
図3では、第1第2領域接着剤塗布工程S2の後に第3第4領域接着剤塗布工程S3を行っているが、第1第2領域接着剤塗布工程の前に第3第4領域接着剤塗布工程を行ってもよい。
【0029】
図5は、
図3の接着剤塗布工程Saにおいて接着剤30が塗布された太陽電池セル11を受光面側から見た図(a)と、(a)のA部拡大図(b)と、(b)のB部拡大図(c)である。第1第2領域接着剤塗布工程S2は、太陽電池セル11の受光面に、第1の方向(
図5(a)~(c)の上下方向)に沿って第1接着領域31と第2接着領域33とが交互に並ぶように、第1接着領域31および第2接着領域33に接着剤30を塗布する。第1の方向は、太陽電池セル11の面方向に沿っており、フィンガー電極22aと略直角に交差する方向である。第1接着領域31は、第2接着領域33より接着剤30を塗布可能な接着許容領域の第2の方向(
図5(a)~(c)の左右方向)における幅が大きい。第2の方向は、太陽電池セル11の面方向に沿っており、第1の方向と直交する方向である。第1接着領域31および第2接着領域33のいずれも、受光面に対し直交する方向から見た場合の形状が、第1の方向に長い略矩形である。本例の場合には、第1接着領域31および第2接着領域33のそれぞれで、接着許容領域の全部に接着剤30が塗布される。このため、第1接着領域31および第2接着領域33では、第1の方向に沿って、接着剤30の第2の方向の幅が大きい第1接着領域31の接着剤と、第2の方向の幅が小さい第2接着領域33の接着剤30とが交互に配置される。なお、本明細書で「接着領域」とは、接着剤30の接着許容領域を意味する。また、「接着領域」のそれぞれでは、第1の方向の中間の少なくとも1つ以上の位置で、第1の方向に分離して接着剤が配置されてもよい。
【0030】
さらに、第1第2領域接着剤塗布工程S2は、太陽電池セル11の受光面の複数の第1接着領域31および複数の第2接着領域33のそれぞれに、複数のフィンガー電極22aをまたぐように接着剤30を塗布する。このとき、
図5(c)に示すように、第1の方向に隣り合う第1接着領域31の接着剤30の間隔をD1とし、当該2つの接着剤30間の少なくとも1つのフィンガー電極22aを含む隣り合うフィンガー電極22aの間隔をD2としたときに、D1>D2である。さらに、フィンガー電極22aの長手方向について、受光面側の配線材15の幅をD3とし、上側ステージ44の受光面側の配線材15を吸引する吸引孔46の最大幅である長径(吸引孔46の断面が真円の場合の直径)をD4としたときに、D1>D2>D3>D4である。
【0031】
第3第4領域接着剤塗布工程S3(
図3)は、太陽電池セル11の裏面(
図6の下面)に、第1の方向(
図6の左右方向)に沿って第3接着領域35と第4接着領域37とが交互に並ぶように、第3接着領域35および第4接着領域37に接着剤30を塗布する。後述の
図6では、黒地部分が第1接着領域31および第3接着領域35を示し、砂地部分が第2接着領域33および第4接着領域37を示す。第3接着領域35は、第4接着領域37より接着剤30を塗布可能な接着許容領域の第2の方向(
図6の紙面の表裏方向)に沿う幅が大きい。第3接着領域35および第4接着領域37のいずれも、裏面に対し直交する方向から見た場合の形状が、
図5(b)の受光面側の接着剤30と同様に第1の方向に長い略矩形である。本例の場合には、第3接着領域35および第4接着領域37のそれぞれで、接着許容領域の全部に接着剤30が塗布される。
【0032】
さらに、第3第4領域接着剤塗布工程S3は、太陽電池セル11の裏面の複数の第3接着領域35および第4接着領域37のそれぞれに、複数のフィンガー電極22b(
図2B)をまたぐように接着剤30を塗布する。このとき、第1の方向(
図6の左右方向)に隣り合う第3接着領域35の接着剤30の間隔をD1aとし、当該2つの接着剤30間の少なくとも1つのフィンガー電極22bを含む隣り合うフィンガー電極22bの間隔をD2aとしたときに、D1a>D2aである。さらに、フィンガー電極22bの長手方向について、裏面側の配線材15の幅をD3aとし、下側ステージ41(
図4、
図6)の裏面側の配線材15を吸引する吸引孔43の最大幅である長径(吸引孔の断面が真円の場合の直径)をD4aとしたときに、D1a>D2a>D3a>D4aである。
【0033】
第1第2領域接着剤塗布工程S2および第3第4領域接着剤塗布工程S3において、接着剤30の塗布は、スクリーン印刷、ディスペンサー、及びスプレーのいずれかの方法によって行うことができる。例えば、スクリーン印刷装置には、スクリーン版、スキージ等を有する一般的な装置を適用できる。スクリーン版は、接着剤を透過するメッシュと、メッシュに設けられたマスク材とを有する。マスク材は、例えば、感光性の乳剤で構成され、接着剤の塗布パターンに応じた開口部を残して設けられる。スクリーン印刷では、スクリーン版上に接着剤を載せ、当該版上でスキージを摺動させることにより、開口部から接着剤を吐出させて接着剤を受光面上または裏面上の目的とする位置に印刷する。また、太陽電池セル11の一方の面を上にした状態で一方の面への接着剤の塗布が終了すると、反転装置を用いて太陽電池セル11を裏返して、他方の面を上にした状態で他方の面への接着剤の塗布を行うこともできる。
【0034】
次に、裏面側配線材配置工程S4(
図3)は、
図4(c)に示すように、接着剤30(
図5)が塗布された太陽電池セル11の裏面側(
図4(c)の下側)に、第1の方向Yに沿って裏面側の配線材15を配置する。このとき、
図4(b)では下側ステージ41の複数の板部42の上に複数の配線材15が吸着されて並んで配置されている。
図4(c)では、太陽電池セル11の下側面となる裏面において複数の第3接着領域35(
図6)および第4接着領域37(
図6)のそれぞれに裏面側の配線材15が重なるように、複数の裏面側の配線材15の上に太陽電池セル11が載置される。太陽電池セル11と配線材15とを接着する前に、配線材15の表面の洗浄処理や改質処理を行うことができる。洗浄処理や改質処理は、例えば、オゾン洗浄処理や、プラズマ処理を用いることができる。
【0035】
次に、受光面側配線材配置工程S5(
図3)は、
図4(d)に示すように、接着剤30(
図5)が塗布された太陽電池セル11の受光面側に、第1の方向Yに沿って受光面側(
図4(d)の上側)の配線材15を配置する。このとき、
図4(d)では、上側ステージ44の複数の板部45の下に複数の配線材15が吸着されて並んで配置されている。太陽電池セル11の受光面において複数の第1接着領域31(
図5、
図6)および第2接着領域33(
図5、
図6)のそれぞれに受光面側の配線材15が重なるように、太陽電池セル11の上に複数の受光面側の配線材15が載置される。この状態で、下側ステージ41と上側ステージ44とで、太陽電池セル11と裏面側および受光面側の配線材15が挟まれて、太陽電池セル11に裏面側および受光面側の配線材15が仮圧着される。
【0036】
図6は、
図3の配線材固定工程において、接着剤30が塗布された太陽電池セル11の両面に配線材15を配置する方法を示している
図5(b)のC-C断面に対応する図である。
図7は、
図3の配線材固定工程において、接着剤30が塗布された太陽電池セル11の両面に配線材15を配置する方法を示している
図5(b)のD-D断面に対応する図である。
【0037】
図6では、他の構成要素との関係で配線材15の直径が実際より大きくなるように誇張して示している。また、
図7では、上側ステージ44の吸引孔46と下側ステージ41の吸引孔43との配線材15の長手方向における位置が一致しているように示しているが、実際には
図6(b)のように上側ステージ44の吸引孔46と下側ステージ41の吸引孔43との配線材15の長手方向における位置は異なっている。なお、上側ステージ44の吸引孔46と下側ステージ41の吸引孔43との配線材15の長手方向における位置を一致させてもよい。
【0038】
図6(b)のように上側ステージ44と下側ステージ41で、太陽電池セル11および受光面側、裏面側の両側の配線材15を挟んだ状態で、P1で示す配線材15の保持領域である、上側ステージ44の吸引孔46と一致する部分と、P2で示す配線材15の非保持領域である、上側ステージ44の吸引孔46と異なる部分とは、第1の方向である配線材15の長手方向に沿って交互に並んでいる。また、P3で示す配線材15の保持領域である、下側ステージ41の吸引孔43と一致する部分と、P4で示す配線材15の非保持領域である、下側ステージ41の吸引孔43と異なる部分とは、第1の方向である配線材15の長手方向に沿って交互に並んでいる。そして、裏面側配線材配置工程S4(
図3)は、下側ステージ41が配線材15を吸着し、配線材15の保持領域P3に下側ステージ41を接触させた状態、すなわち吸引孔43の開口端の内側部分を保持領域P3に接触させた状態で、接着剤30の第4接着領域37と保持領域P3とが、配線材15の長手方向に対し直交する方向(
図6の上下方向)に重なるように、裏面側の配線材15を太陽電池セル11の第3接着領域35および第4接着領域37に配置する。
【0039】
さらに、受光面側配線材配置工程S5(
図3)は、上側ステージ44が配線材15を吸着し、配線材15の保持領域P1に上側ステージ44を接触させた状態、すなわち吸引孔46の開口端の内側部分を保持領域P1に接触させた状態で、接着剤30の第2接着領域33と保持領域P1とが、配線材15の長手方向に対し直交する方向(
図6の上下方向)に重なるように、受光面側の配線材15を太陽電池セル11の第1接着領域31および第2接着領域33に配置する。
【0040】
これにより、
図7(a)(b)のように、接着剤30の第2接着領域33および受光面側(
図7の上側)の配線材15の保持領域P1が重なり、接着剤30の第4接着領域37および裏面側(
図7の下側)の配線材15の保持領域P3が重なるように、受光面側の配線材15が第1、第2接着領域31,33に配置され、裏面側の配線材15が第3、第4接着領域35,37に配置される。一方、第2接着領域33および第4接着領域37は、それぞれ第1接着領域31および第3接着領域35より接着剤30の量が少ない。このため、受光面側および裏面側の配線材15で接着剤30が押されて広がった場合でもその接着剤30が配線材15の保持器具側である上側や下側に回り込んで、上側ステージ44および下側ステージ41の吸引孔46,43に達することを抑制できる。したがって、各ステージ44,41の汚れの発生を抑制でき、製造装置の洗浄頻度を少なくできると共に、各ステージ41,44の吸引力の低下を抑制して配線材15の落下が生じにくくなる。
【0041】
上記では、1つの太陽電池セル11の両側面に配線材15を仮圧着する場合を説明したが、この仮圧着の工程を、隣り合う複数の太陽電池セル11で繰り返す。このとき、前の配線材配置工程で仮圧着した受光面側の配線材15の一端部を、次に仮圧着する太陽電池セル11の裏面に仮圧着し、その太陽電池セル11の受光面に受光面側の配線材15を仮圧着し、その工程を繰り返す。これにより、複数の太陽電池セル11が配線材15で連結されたストリング90(
図8)が作製される。
【0042】
次に、
図8~
図10を用いて、第1の接着工程S6(
図3)および第2の接着工程S7(
図3)を説明する。
図8は、
図3の第1の接着工程S6および第2の接着工程S7において、第1および第2の加熱押圧装置50,56により2つの太陽電池セル11の両側から加熱と押圧とを行う直前の状態を示す模式図である。
図9は、
図8のE部における拡大斜視図である。
図10は、
図3の第1の接着工程S6および第2の接着工程S7において、第1および第2の加熱押圧装置50,56により2つの太陽電池セル11の両側から加熱と押圧とを行っている状態を示す模式図である。
【0043】
図8~
図10に示すように、第1の接着工程S6は、第1の加熱押圧装置50で行い、第2の接着工程S7は、第2の加熱押圧装置56で行う。このとき、配線材配置工程で作製したストリング90の1つの太陽電池セル11部分を、第1の加熱押圧装置50に移動させ、その後、その1つの太陽電池セル11部分を第2の加熱押圧装置56に移動させるように、ストリング90を長手方向に移動させる。
【0044】
図9に示すように、第1の加熱押圧装置50は、基本的には、
図4(d)で示した下側ステージ41、上側ステージ44、および上側ステージ44の板部45を移動させる移動装置を備える構成において、吸引装置がない構成と同様である。具体的には、第1の加熱押圧装置50は、厚み方向Xに間隔をあけて並んだ複数の板部52を有する上側ステージ51と、厚み方向Xに間隔をあけて並んだ複数の板部54を有する下側ステージ53と、上側ステージ51および下側ステージ53の複数の板部52、54を上下方向に移動させる移動装置(図示せず)とを含む。上側ステージ51および下側ステージ53の板部52,54は、太陽電池セル11と受光面側および裏面側の配線材15とを挟んで加熱および押圧の両方を行う。例えば、複数の板部52,54は、ヒータが内蔵され高温の所定温度に加熱されている。第1の接着工程S6は、
図8のように、上側ステージ51および下側ステージ53の板部52,54で、配線材15が仮圧着された太陽電池セル11を上下両側から挟んで所定時間および所定温度で加熱および押圧する。所定温度は接着剤が硬化する温度に設定される。その後、第1の加熱押圧装置50の上側ステージ51および下側ステージ53の間から当該太陽電池セル11を、第2の加熱押圧装置56側に移動させる。
【0045】
第2の加熱押圧装置56の構成は、第1の加熱押圧装置50と同様に、上側ステージ57および下側ステージ58と移動装置とを有する。第2の接着工程S7も、第1の接着工程S6と同様に、上側ステージ57および下側ステージ58の複数の板部で、太陽電池セル11と受光面側および裏面側の配線材15とを挟んで所定時間および所定温度で加熱および押圧の両方を行う。
【0046】
これにより、第2の接着工程の前の、太陽電池セル11と受光面側の配線材15の接着強度を、第2の接着工程の後の太陽電池セル11と受光面側の配線材15の接着強度より小さくする。さらに、第2の接着工程の前の、太陽電池セル11と裏面側の配線材15の接着強度を、第2の接着工程の後の太陽電池セル11と裏面側の配線材15の接着強度より小さくする。第1の接着工程および第2の接着工程における太陽電池セル11と両側の配線材15とを挟んで加熱および押圧するときの所定時間は同じとしてもよい。この場合でも、全体の押圧時間が第1の接着工程での押圧時間と第2の接着工程での押圧時間との積算になるので、第2の接着工程後の受光面側の配線材15の接着強度は、第1の接着工程後、第2の接着工程前の受光面側の配線材15の接着強度より高くなる。さらに、第2の接着工程後の裏面側の配線材15の接着強度は、第1の接着工程後、第2の接着工程前の裏面側の配線材15の接着強度より高くなる。なお、上記では、第1の接着工程および第2の接着工程で、上側ステージおよび下側ステージで太陽電池セル11と受光面側および裏面側の配線材15とを挟んで加熱および押圧の両方を行う場合を説明したが、各接着工程において、受光面と裏面との両側に配線材15が配置された太陽電池セル11の両側から加熱および押圧の一方のみを行ってもよい。
【0047】
上記の接着剤塗布工程および配線材固定工程は、制御装置(図示せず)を用いて、太陽電池モジュール10の製造装置の各構成要素の動作を統合的に制御して、実現してもよい。制御装置の機能は複数のハードウェアに分散して存在していてもよい。また、制御装置の機能により接着剤の塗布工程の全てが自動的に行われてもよいし、工程の一部が人の動作によって行われてもよい。
【0048】
上記の配線材固定工程を行った後には、上記ストリング90を含む太陽電池モジュール10の各構成部材を積層して熱圧着する。この工程は、ラミネート工程と呼ばれる。ラミネート工程では、保護部材12上に充填材14を構成する第1の樹脂フィルムを積層し、第1の樹脂フィルム上にストリング90を積層する。さらに、ストリング90上に充填材14を構成する第2の樹脂フィルムを積層し、その上に保護部材13を積層する。そして、各樹脂フィルムが溶融する温度で加熱しながら圧力を加えてラミネートする。こうして、ストリング90が充填材14で封止された構造が得られる。最後に、フレームや端子ボックス等を取り付けて、太陽電池モジュール10が製造される。
【0049】
本製造方法によれば、接着剤47の塗布状態を適正化できるので、配線材15を保持する保持器具における接着剤30の付着を抑制できる。これにより、保持器具の汚れの発生を抑制でき、製造装置の洗浄頻度を少なくできると共に、保持器具の吸引力の低下を抑制して配線材15の落下が生じにくくなる。
【0050】
さらに、接着剤塗布工程は、受光面の複数の第1接着領域31のそれぞれに、複数のフィンガー電極22aをまたぐように接着剤30を塗布し、隣り合う第1接着領域31の接着剤30の間隔をD1とし、当該2つの接着剤30間の1つのフィンガー電極22aを含む隣り合うフィンガー電極22aの間隔をD2としたときに、D1>D2としている。これにより、接着剤30が、保持器具である下側ステージ41の吸引孔43に付着することをより抑制できる。これについて、
図11を用いて説明する。
【0051】
図11は、実施形態の効果を説明するための図であって、太陽電池セル11に対する隣り合う第1接着領域31の接着剤30の間隔D1を、隣り合うフィンガー電極22aの間隔D2より小さくした参考例(a)と、間隔D1を間隔D2より大きくした実施形態(b)とを示している、
図5(b)のC-C断面に対応する模式図である。
図11(a)(b)では、第2接着領域33の接着剤30の図示を省略している。
【0052】
図11(a)に示す参考例の場合には、フィンガー電極22aの間隔D2が隣り合う第1接着領域31の接着剤30の間隔D1より大きい。この参考例の場合には、上側ステージ44から太陽電池セル11側に仮圧着のための力が配線材15に、
図11(a)の下側に加わった場合に、第1接着領域31の接着剤30の間で配線材15を支持する力が小さい。これにより、配線材15がこの間部分で太陽電池セル11側(
図11(a)の下側)に撓むことで、第1接着領域31および第2接着領域の接着剤30が配線材15を回り込んで上側ステージ44の吸引孔に接着剤30が付着することを抑制する効果が低くなる可能性がある。
【0053】
一方、
図5(c)、
図11(b)に示す実施形態の場合には、フィンガー電極22aの間隔D2が、隣り合う第1接着領域31の接着剤30の間隔D1より小さい。これにより、上側ステージ44から太陽電池セル11側に仮圧着のための力が配線材15に、
図11(b)の下側に加わった場合でも、第1接着領域31の接着剤30の間で配線材15をフィンガー電極22aが支えるので、配線材15がこの間部分で太陽電池セル11側(
図11(b)の下側)に撓むことを抑制できる。このため、第1接着領域31および第2接着領域の接着剤30が配線材15を回り込んで上側ステージ44の吸引孔に接着剤30が付着することを抑制する効果が高くなる。
【0054】
さらに、実施形態の場合には、
図5(c)を参照して、フィンガー電極22aの長手方向について、受光面側の配線材15の幅をD3とし、上側ステージ44の受光面側の配線材15を吸引する吸引孔46の最大幅である長径(吸引孔46の断面が真円の場合の直径)をD4としたときに、D1>D2>D3>D4としている。これにより、配線材15の幅D3が吸引孔46の長径D4より小さい場合に比べて、接着剤30が配線材15を吸引孔46側に回り込んで吸引孔46に付着することを抑制する効果がより高くなる。
【0055】
図12は、比較例の太陽電池モジュールの製造方法において、
図5(b)に対応する図である。
図13は、比較例の太陽電池モジュールの製造方法において、
図6に対応する図である。
図14は、比較例の太陽電池モジュールの製造方法において、
図7に対応する図である。
【0056】
図12に示すように、比較例では、実施形態の第1第2領域接着剤塗布工程と、第3第4領域接着剤塗布工程の代わりに、受光面接着剤塗布工程と、裏面接着剤塗布工程とを有する。受光面接着剤塗布工程は、太陽電池セル11の受光面に、フィンガー電極22aと略直角に交差する第1の方向(
図12の上下方向)に沿って接着剤30を均一に直線状に塗布することで、受光面側塗布部61を形成する。受光面接着剤塗布工程は、複数の受光面側塗布部61を、第1の方向に対し直交する第2の方向(
図12の左右方向)に間隔をあけて平行に並んで形成する。受光面側塗布部61の第2の方向における幅は、
図5(b)で示した実施形態の第1接着領域31に塗布した接着剤30の第2の方向(
図5(b)の左右方向)の幅と同じである。受光面側配線材配置工程では、複数の受光面側の配線材を、複数の受光面側塗布部61に沿って配置し、受光面側塗布部61により太陽電池セル11の受光面に仮圧着する。
【0057】
裏面接着剤塗布工程は、受光面接着剤塗布工程と同様に、太陽電池セル11の裏面に、フィンガー電極と略直角に交差する第1の方向に沿って接着剤を均一に直線状に塗布する裏面側塗布部(図示せず)を形成する。裏面接着剤塗布工程は、複数の裏面側塗布部を、第1の方向に対し直交する第2の方向に間隔をあけて平行に並んで形成する。裏面側塗布部の第2の方向における幅は、実施形態の第3接着領域35に塗布した接着剤30の第2の方向の幅と同じである。裏面側配線材配置工程では、複数の裏面側の配線材を、複数の裏面側塗布部に沿って配置し、裏面側塗布部により太陽電池セル11の裏面に仮圧着する。
【0058】
このような比較例では、
図13、
図14に示すように、下側ステージ41及び上側ステージ44により配線材15を保持して太陽電池セル11の両側面に仮圧着させる。このとき、比較例では、
図6、
図7等に示した実施形態と異なり、各ステージ41,44の吸引孔43,46と、配線材15の長手方向に対し直交する方向(
図13の上下方向)に重なる部分に多くの接着剤30が塗布されている。これにより、
図13(b)、
図14(b)のように配線材15が接着剤30に押し付けられた場合に、接着剤30が配線材15を各ステージ41,44の側に回り込んで各ステージ41,44の吸引孔43,46に入り込んで付着する可能性がある。一方、
図1~
図10に示した実施形態の場合には、各ステージ41,44の吸引孔43,46と重なる部分には接着剤30として第1接着領域31より少ない第2接着領域33と、第3接着領域35より少ない第4接着領域37とが配置される。これにより、
図6(b)、
図7(b)に示したように、配線材15が接着剤30に押し付けられた場合でも、接着剤30が配線材15を各ステージ41,44の側に回り込むことを抑制して、各ステージ41,44の吸引孔43,46に接着剤30が付着することを抑制できる。これにより、実施形態によれば比較例で生じる不都合を防止できる。
【0059】
図15は、本発明の実施形態の別例の4例において、太陽電池セル11の受光面に対する接着剤30の塗布状態を示す図である。
図16は、本発明の実施形態の別例の4例において、太陽電池セル11の受光面に対する配線材15の固定状態を示す図である。本開示では、太陽電池セル11の受光面および裏面における接着剤の塗布状態は、
図5(b)に示した例に限定するものではなく、例えば、
図15(a)~(d)、
図16(a)~(d)の別例の4例の塗布状態を採用することもできる。
図15(a)、
図16(a)は、
図5(b)の場合に比べて受光面側の各第1接着領域31の長さを短くしている。
図15(a)、
図16(a)の塗布状態を採用する場合に、裏面側の各第3接着領域35の長さも、各第1接着領域31と同様に短くしてもよい。
【0060】
図15(b)、
図16(b)は、
図5(b)の場合と異なり、受光面側の各第2接着領域33に接着剤を塗布しない。
図15(b)、
図16(b)の塗布状態を採用する場合には、裏面側の各第4接着領域37にも、接着剤を塗布しない。このとき、接着剤塗布工程は、第1第2領域接着剤塗布工程の代わりに、第1接着領域31に接着剤を塗布するが、第2接着領域33には接着剤を塗布しない第1接着剤塗布工程を行い、第3第4領域接着剤塗布工程の代わりに、第3接着領域35に接着剤を塗布するが、第4接着領域37には接着剤を塗布しない第3接着剤塗布工程を行う。なお、各第2接着領域33および各第4接着領域37の一方のみで、接着剤を塗布しない構成としてもよい。このような構成によれば、配線材15が接着剤30に押し付けられた場合に、接着剤30が配線材15を保持器具の側に回り込むことをさらに抑制して、保持器具の吸引孔に接着剤30が付着することをさらに抑制できる。
【0061】
図15(c)、
図16(c)は、受光面側の第1接着領域31における、受光面に対し直交する方向から見た場合の形状が、蛇行した曲線状である。
図15(c)、
図16(c)の場合も、
図15(b)、
図16(b)と同様に、第2接着領域33には接着剤を塗布しない。裏面側の第3接着領域35および第4接着領域37も、
図15(c)、
図16(c)と同様である。
【0062】
図15(d)、
図16(d)は、受光面側の第1接着領域31において、複数の円形のドット状の接着剤30が、第1の方向(
図15(d)、
図16(d)の上下方向)に、隣り合う第1接着領域31の間隔よりも小さい微小隙間を介して離れている。
図15(d)、
図16(d)の場合も、
図15(b)、
図16(b)と同様に、第2接着領域33には接着剤を塗布しない。裏面側の第3接着領域35および第4接着領域37も、
図15(d)、
図16(d)と同様である。このように第1接着領域31および第3接着領域35では、第1の方向において接着剤30が間欠的に塗布されていてもよい。なお、図示は省略するが、第2接着領域33および第4接着領域37でも、第1の方向において接着剤が間欠的に塗布されていてもよい。また、図示は省略するが、
図5(b)、
図15(a)(b)の各第1接着領域31において、接着剤の第2の方向における幅が、第1の方向の2つ以上の位置で異なっていてもよい。
【0063】
図17は、本発明の実施形態の別例の2例において、太陽電池セル11の受光面に対する接着剤30の塗布状態を示す図である。太陽電池セル11の受光面および裏面における接着剤30の塗布状態として、
図17(a)または
図17(b)を採用してもよい。
図17(a)は、受光面側の第1接着領域31において、第2の方向(
図17(a)の左右方向)に離れた平行な2本の直線状に接着剤30を塗布する。第2接着領域33には、第1接着領域31の2本の直線状の接着剤30の間に1本の直線状に接着剤30を塗布する。裏面側の第3接着領域35および第4接着領域37も、
図17(a)と同様である。
【0064】
図17(b)は、
図17(a)の接着状態において、第2接着領域33に接着剤を塗布しない。裏面側の第3接着領域35および第4接着領域37も、
図17(b)と同様である。
【0065】
なお、
図8、
図10に示した配線材固定工程において、第1の接着工程及び第2の接着工程に加えて、さらに、
図8、
図10にかっこ内で示すように、上側ステージ71および下側ステージ72で太陽電池セル11および配線材15を加熱及び押圧する第3の接着工程を備えてもよい。
【0066】
さらに、
図3に示した製造方法において、裏面側配線材配置工程の前に、受光面側配線材配置工程を行ってもよい。また、本開示の製造方法において、太陽電池セル11への配線材15の仮圧着を行わない等の場合に、接着工程を1回のみとしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 太陽電池モジュール、11 太陽電池セル、12,13 保護部材、14 充填材、15 配線材、20 光電変換部、21a,21b 透明導電層、22a,22b フィンガー電極、30 接着剤、31 第1接着領域、33 第2接着領域、35 第3接着領域、37 第4接着領域、40 配線材接続システム、41 下側ステージ、42 板部、43 吸引孔、44 上側ステージ、45 板部、46 吸引孔、50 第1の加熱押圧装置、56 第2の加熱押圧装置、61 受光面側塗布部。