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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】光デバイス、及びこれを用いた光源装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/125 20060101AFI20231215BHJP
   H01S 5/0239 20210101ALI20231215BHJP
【FI】
G02B6/125
H01S5/0239
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020030837
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021135367
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】岡 徹
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-281350(JP,A)
【文献】特開2004-319750(JP,A)
【文献】特開2019-087572(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133344(WO,A1)
【文献】特開2010-044350(JP,A)
【文献】特開2009-278015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0139264(US,A1)
【文献】御手洗 拓矢 et al.,Si光回路におけるループミラーの波長依存性低減の検討,第79回 応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集,日本,公益社団法人応用物理学会,2018年,18a-212A-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 - 6/14
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成される第1の光導波路と、
前記基板の上で、前記第1の光導波路と並列に配置される第2の光導波路と、
前記基板の上で、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路を連続的に接続するループ導波路と、
を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路の少なくとも一方は、前記ループ導波路と反対側の第1位置と前記ループ導波路に接続される第2位置の間で光軸方向に連続的に幅を変化させ、
前記第1位置で前記第1の光導波路と前記第2の光導波路の断面形状は合同でなく、前記第2位置で前記第1の光導波路の断面形状と前記第2の光導波路の断面形状は合同であり、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路のうちの一方の光導波路から入射した第1導波モードの光は、前記第2位置で分岐された分岐光となって前記ループ導波路を互いに逆方向に周回して前記一方の光導波路から出力され、前記第1導波モードと異なる第2導波モードの光は、前記ループ導波路を周回した後の戻り経路の前記第1位置で前記第1の光導波路と前記第2の光導波路のうちの他方の光導波路に局在する、
光デバイス。
【請求項2】
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路は、前記光デバイスへの入射方向で、前記第1位置の手前から前記第1位置に向かって徐々に接近する、
請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記第1の光導波路は前記一方の光導波路であり、前記第2の光導波路は前記他方の導波路であり、前記第1位置で、前記第1の光導波路は、前記第1導波モードの光を前記光デバイスに入力する直線状の光導波路に接続され、
前記第1位置で、前記第2の光導波路は、前記直線状の光導波路に徐々に接近する湾曲導波路に接続される、
請求項1または2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記第1の光導波路は前記他方の光導波路であり、前記第2の光導波路は前記一方の導波路であり、前記第1位置で、前記第2の光導波路は、前記第2導波モードの光を前記光デバイスに入力する直線状の光導波路に接続され、
前記第1位置で、前記第1の光導波路は、前記直線状の光導波路に徐々に接近する湾曲導波路に接続される、
請求項1または2に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記第1位置で、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路の前記一方の光導波路は、光軸に沿って導波路幅が変化するテーパ導波路に接続される。
請求項1に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路の前記一方の光導波路は、前記光デバイスへ光を入出力する入出力導波路に接続され、前記他方の光導波路は終端されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路の前記第1位置と前記第2位置の間の長さは70μm以上、120μm以下である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記第1の光導波路または前記第2の光導波路は、前記第1位置で入力される光の導波モードを変えずに、前記第2位置で2分岐する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の光デバイス。
【請求項9】
増幅媒質と、
前記増幅媒質に接続されるチューナブルフィルタと、
前記チューナブルフィルタに接続される請求項1~8のいずれか1項に記載の光デバイスと、
を備える光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、及びこれを用いた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信では、伝送される情報量を増やすために、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)方式が採用されている。WDMでは、複数の光波長に個別の情報を割り当てて、光ファイバで同時に通信する。WDMを行うために、送信側で、発振波長が制御可能なチューナブルレーザダイオード(TLD:Tunable Laser Diode)が用いられている。
【0003】
TLDでは、小型化と低消費電力化のために、チューナブルフィルタ、反射器などの光デバイスと、増幅媒質が、基板上に集積されている。TLDは、動作波長帯域にわたって反射損失が小さく、かつ波長依存性が小さいことが望ましい。TLDで用いられる光デバイスにも、同様の性質が求められる。
【0004】
反射器の一つに、ループミラーがある。ループミラーは、一般的に、2分岐導波路と、この2分岐導波路に接続されるループ導波路とで形成される。2分岐導波路は、方向性結合器、マルチモード干渉計(MMI:multimode interferometer)などで実現される。
【0005】
光ファイバで方向性結合器とループ導波路を形成したファイバループミラーが知られている(たとえば、非特許文献1参照)。一方、シリコンフォトニクス技術で基板に形成される基板型のループミラーで、2分岐導波路として、1×2(1入力2出力)のMMIを用いる構成が知られている(たとえば、非特許文献2参照)。
【0006】
方向性結合器の平行結合領域にテーパ形状の光導波路を用いて2つのモードの干渉を使用した導波型光分岐素子が知られている(たとえば、特許文献1~3参照)。1つのモードの断熱変換を利用した3dBカプラが知られている(たとえば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平4-212108号
【文献】特開平4-212109号
【文献】米国特許第5165001号
【非特許文献】
【0008】
【文献】David B. Mortimore, "Fiber Loop Reflectors," Journal of Lightwave Technology, Vol. 6, No. 7, July 1988
【文献】Qing Fang, et al., "Folded Silicon-Photonics Arrayed Waveguide Grating Integrated With Loop-Mirror Reflectors, " IEEE Photonics Journal, Vol. 10, No. 4, Aug. 2018
【文献】Luhua Xu, et al., "Compact high-performance adiabatic 3-dB coupler enabled by subwavelength grating slot in the silicon-on-insulator platform," Optics Express, Vol. 26, No.23, p.p. 29873 (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
方向性結合器は、偶モードと奇モードの干渉を用いて合分波する。MMIは2つ以上の導波モードの干渉を用いて合分波する。方向性結合器やMMIで2分岐するループミラーは光の干渉を利用するため、波長が変わったときに干渉が変化し、損失が大きくなる。
【0010】
本発明は、基板上に光導波路で形成された光デバイスにおいて、使用波長帯域にわたって反射損失と波長依存性を低減することのできる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示の一つの態様では、光デバイスは、
基板に形成される第1の光導波路と、
前記基板の上で、前記第1の光導波路と並列に配置される第2の光導波路と、
前記基板の上で、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路を連続的に接続するループ導波路と、を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路の少なくとも一方は、前記ループ導波路と反対側の第1位置と前記ループ導波路に接続される第2位置の間で光軸方向に連続的に幅を変化させ、
前記第1位置で、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路の断面形状は合同でなく、前記第2位置での前記第1の光導波路の断面形状と前記第2の光導波路の断面形状は合同である。
【発明の効果】
【0012】
基板上の光導波路で形成された光デバイスにおいて、使用波長帯域にわたって反射損失と波長依存性が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ファイバループミラーを基板上の光導波路で再構成するときに生じる問題を説明する図である。
図2図1のループミラーの反射損失の波長依存性を示す図である。
図3】実施形態の光デバイスの構成例を示す図である。
図4図3の光デバイスの動作原理を説明する図である。
図5図3の断熱結合器における電界分布のシミュレーション結果である。
図6】TE1モードの光を扱うときの動作例である。
図7図6の断熱結合器における電界分布のシミュレーション結果である。
図8】光デバイスで用いられる断熱結合器の好適な長さ範囲を示す図である。
図9】実施形態の構成の効果を示す図である。
図10】実施形態の光デバイスの変形例である。
図11図10の構成でTE1モードの光を扱うときの動作例である。
図12】実施形態の光デバイスのさらに別の変形例である。
図13】実施形態の光デバイスのさらに別の変形例である。
図14図13の光デバイスの光終端の構成例である。
図15】実施形態の光デバイスを用いた光源装置の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態の光デバイスの詳細を説明する前に、公知のファイバループミラーを、基板上の光導波路で再構成するときに生じる問題を説明する。
【0015】
図1は、方向性結合器を用いたファイバループミラーを、基板上の光導波路に置き換えた構成を示す。図1の構成は、公知のファイバループミラーと同様に、方向性結合器と、方向性結合器から連続するループ導波路で形成されている。方向性結合器では、光導波路WG1とWG2が、所定の長さ(L)にわたって近接して並列配置されている。WG1とWG2を含む光導波路WGは、一般的なファイバコアと同様に、ループミラーの全体にわたって、同じ高さ、同じ幅W0で形成されている。
【0016】
光導波路WGは、シリコン(Si)等の高屈折率材料で形成されており、周囲を屈折率の低いクラッドで囲まれている。光は、界面で全反射しながら光導波路WGの内部を伝搬する。方向性結合器では、クラッドへの光の染み出しを利用したエバネッセント結合により、一方の光導波路WG1から他方の光導波路WG2へ光が結合する。光導波路WG1とWG2の間の間隔Gは、エバネッセント結合が可能な距離に設定されている。
【0017】
方向性結合器では、入力部(図1では、方向性結合器の左端)で生じる2つのモード、すなわち偶モードと奇モードの干渉を用いて合分波を行う。偶モードと奇モードはそれぞれ異なる伝搬定数で伝搬し、伝搬につれて位相が変化する。光導波路WG1とWG2の結合長Lは、一方の光導波路WG1から他方の光導波路WG2へ、光のパワーの50%が移るように設計される。50%の光は、ループ導波路を時計回りに回って、光導波路WG2に出力される。残りの50%の光は、ループ導波路を反時計回りに回って、光導波路WG1に出力される。WG1、WG2に出力された光は、方向性結合器を入力からループ導波路へ伝搬した際とは逆の経路をたどることで、最終的にWG1から出力される。
【0018】
光の波長が変わると、偶モードと奇モードが伝搬する光導波路WG1及びWG2の実効光路長が変化し、ループミラー通過後の光について、入力部において一部の光パワーがWG2に残存するため、損失が変化する。このため、広い波長帯域にわたって低損失、かつ低い波長依存性を持たせることが困難である。
【0019】
図2は、図1の構成における反射損失の波長依存性を示す。反射損失とは、入射光パワーに対する反射光パワーの比率(反射光パワー/入射光パワー)である。ここでは、SiコアをSiO2のクラッドで取り囲んだ構成で、コア(すなわち光導波路WG)の高さを220nm、幅を400nm、コア間の間隔Gを200nm、方向性結合器の光軸方向の長さLを12.55μmとして計算している。横軸の波長は、基幹網のWDMで使用されるCバンドとLバンドを含む1520~1630nmの範囲をカバーする。
【0020】
波長の変化により、最大反射損失は0.61dBになる。損失の波長依存性、すなわち最大損失と最小損失の比は、0.60dBである。従来のファイバループミラーをそのまま基板上の光導波路で実現すると、反射損失と波長依存性が大きくなることがわかる。
【0021】
この反射損失と波長依存性は、多モードの干渉を利用するMMIで2分岐する場合にも生じる。
【0022】
<実施形態の光デバイス>
図3は、実施形態の光デバイス100の構成例を示す。図3の(A)は平面図、図3の(B)は、(A)のI-I'断面図である。
【0023】
光デバイス100は、基板110の上に光導波路で形成されるループミラーである。光導波路は、クラッド120で囲まれたコア130として形成される。コア130とクラッド120を形成する材料は、使用波長の光を効率的に閉じ込めることのできる屈折率差があれば、特に限定されない。一例として、Siでコア130を形成し、SiO2でクラッド120を形成する。この組み合わせは屈折率の差が大きく、光の閉じ込めが強いので、デバイスの小型化が可能である。
【0024】
クラッド120のうち、基板110に近い下側クラッド121は、SOIウェーハにあらかじめ形成されているシリコン酸化膜であってもよい。上側クラッド122は、SiO2に替えて、空気層であってもよい。
【0025】
光デバイス100は、断熱結合器10と、この断熱結合器10に接続されるループ20を有する。断熱結合器10は、従来の2つのモードの干渉を利用した方向性結合器と異なり、1つのモードの断熱変換を利用した結合器であるため、便宜上、「断熱結合器10」と呼ぶ。断熱変換とは、後述するように、一つの導波モードのパワーまたはエネルギーを増減させずに同じ導波モードを維持して状態を遷移させることをいう。断熱結合器10は、ループ20と反対側で、光導波路101によって他の光回路デバイスと接続されていてもよい。
【0026】
断熱結合器10は、光導波路102と、光導波路102に並列する光導波路105で形成されている。この例では、光導波路102は、光軸方向に連続的に幅が変化するテーパ型の導波路である。もう一方の光導波路105は、たとえば、一定の幅W3を有する光導波路である。光導波路102と光導波路105は、これらの導波路の少なくとも一方が、ループ20に接続される位置まで幅を変化させながら連続するのであれば、任意のテーパ形状をとることができる。光導波路102と光導波路105は、間隔G1で互いに近接して配置される。
【0027】
ループ20は、光導波路102と光導波路105を連続するループ導波路103で形成されている。ループ導波路103は、一定の幅W3を有し、所定の曲率半径Rで湾曲している。
【0028】
断熱結合器10は、ループ20に接続される断面Bで、入射光の導波モードのパワーがほぼ1:1に分割されるように設計されている。具体的には、光導波路102の幅は、光軸方向(または光の伝搬方向)に沿って連続的に緩やかに変化し、テーパ型の光導波路が形成されている。
【0029】
断熱結合器10の入出力端の断面Aで、光導波路102と光導波路105のコア断面形状は異なり、ループ20に接続される断面Bで、2つの光導波路のコア断面形状は等しくなる。断面Aから断面Bに至る途中のI-I'断面でも、光導波路102と光導波路105のコア形状は異なるが、断面Aと比べて、隣接する2つの光導波路間の断面積の差は小さい。
【0030】
光デバイス100を形成する光導波路コアの高さhが一定であるとする。断面Aでの光導波路102の幅はW1である。I-I'断面で、光導波路102の幅はW2である(W2<W1)。断面Bで、光導波路102の幅はW3となり(W3<W2)、光導波路105の幅W3と同じになる。
【0031】
断面Aから断面Bまでの断熱結合器10の物理長Ltpは、光デバイス100に入力された光の導波モードが、他のモードに変換されることなく断熱的に遷移して、断面Bでのパワー比が1:1になるように、十分に長く設定されている。
【0032】
図3の例では、TE0モードの光がテーパ型の光導波路102に入力され、TE0モードを維持したまま、断面BでのTE0の電界分布が1:1となるように状態遷移する。換言すると、光導波路102に入力されたTE0モードのパワーの半分が、断熱結合器10を伝搬する間に、断熱的に光導波路105に移る。「断熱的な遷移」とは、非常に緩やかに変化する光導波路102を通る光が、同一の導波モードのパワーまたはエネルギーを増減させずに、同じ導波モードを維持したまま断面Bでの状態へ遷移することをいう。
【0033】
断面Bでは、光導波路102のコア形状と、光導波路105のコア形状が等しく、かつ両導波路に現れる光のパワーが等しい。光導波路105に移行した光は、ループ導波路103を半時計回りに伝搬して断面Bに戻り、光導波路102に入射する。光導波路102に残る光は、ループ導波路103を時計回りに伝搬して断面Bに戻り、光導波路105に入射する。
【0034】
断面Bで50%ずつに分岐されたTE0モードの光は、同じループ導波路103を互いに逆方向にたどるので、周回後の断面Bでも同相に保たれている。また、ループ導波路103を周回した後の断面Bでの電界分布は、ループ導波路103に入射したときの電界分布と同じである。
【0035】
戻り経路で、断熱結合器10を逆方向にたどるTE0の光は、断熱的に断面AでのTE0の状態に遷移する。TE0モードの光は、光デバイス100への入射時とほぼ同じパワーで、断面Aから光導波路101に出力される。これにより、光デバイス100での反射損失は最小限となる。
【0036】
断熱結合器10の断面Aと断面Bの間の状態遷移は、異なるモードへの変換をほとんど伴わない断熱的な遷移であり、他のモードへ流出するパワーの損失を抑制することができる。また、波長が変わっても、使用するモードは1つだけであるため、非特許文献1,2のように実効光路長の変化による干渉の変化の影響は受けず、また、同じループ導波路103を互いに逆方向に回って断面Bに戻る2つの光の位相は整合するため、損失の波長依存性を抑制することができる。
【0037】
図4は、実施形態の光デバイス100の動作原理を説明する別の図である。図4では、断熱結合器10の位置P0(図3の断面Aに対応)から位置P8(図3の断面Bに対応)まで、各モードの実効屈折率曲線を示している。実線は、TE0モードの実効屈折率曲線である。破線は、参考として、TE1モードの実効屈折率曲線を示す。
【0038】
TE0モードとTE1モードは、電界の主成分が基板と水平方向(または導波路コアの幅方向)に振動する導波モードのうち、実効屈折率が最も高いモードと、2番目に高いモードである。
【0039】
断熱結合器10の実効屈折率曲線の計算のパラメータは以下のとおりである。Siコアの光導波路の高さhは220nm、位置P0での光導波路102の幅W1は480nm、位置P8での光導波路102の幅W3は400nm、光導波路105とループ導波路103の幅W3は400nmである。ループ導波路103の曲率半径Rは5μm、光導波路102と105の間隔G1は200nm、断熱結合器10の光軸方向の長さは12.55μmである。
【0040】
一般に、光導波路では、十分に穏やかに導波路構造が変化すると、入力された導波モードは、連続する実効屈折率曲線に沿って同一モードを維持したまま遷移する(断熱的遷移)。断熱結合器10の位置P0で、光導波路101から、TE0モードの光が光導波路102に入射すると、光はTE0モードを維持したまま、ほぼ一定かつ連続する実効屈折率曲線に沿って、位置P8でのTE0に遷移可能となる。このとき、他モードへのパワーの流出はほとんどない。
【0041】
ループ導波路103を経た後に、再度位置P8に現れるTE0モードの電界分布は、実線の実効屈折率曲線を逆にたどって、位置P0のTE0の電界分布に遷移する。これにより、入力時とほぼ同じパワーのTE0モードの光が、光導波路101に出力される。
【0042】
断熱結合器10に入射する光にわずかにTE1モードが含まれているとしても、以下の理由で無視し得る。TE1モードは、TE0よりも実効屈折率が低いため、導波路の断面サイズの小さい光導波路105にTE1の電界が局在する。TE1モードの光がループ導波路103を通って断面Bに現れた場合でも、断面Bから断面Aへの戻りパスで、TE1の電界は光導波路105に局在し、断面AのTE0分布へと遷移するTE0の光と抵触しない。
【0043】
図5は、断熱結合器10における電界分布のシミュレーション結果である。シミュレーションのパラメータは、図4を参照して説明したものと同じである。図5の(A)~(C)の断熱結合器10への入射側から見た断面で、左側の矩形はテーパ型の光導波路102のコア断面、右側の矩形は、一定幅の光導波路105のコア断面である。
【0044】
図5の(A)の位置P0で、光導波路102のコア断面の方が、光導波路105のコア断面よりも大きく、実効屈折率の高いTE0の電界が光導波路102に局在する。
【0045】
図5の(B)の位置P6で、光導波路102の導波路幅は、徐々に光導波路105の導波路幅に近づき、光導波路102から染み出したTE0のエバネッセント光が、光導波路105に結合する。
【0046】
図5の(C)の位置P8で、光導波路102と光導波路105のコア形状と断面サイズは同じになる。TE0の電界は光導波路102と光導波路105に均等に存在し、かつ、2つの導波路間で位相整合が成り立つ。これにより、同じ導波モード、かつ同相での2分岐が可能となる。
【0047】
一般に、損失の波長依存性が問題となる光デバイスの2分岐部に、非特許文献3に記載されるようなテーパ型の断熱性の結合器を用いることは、以下の理由で好ましくない。
【0048】
断熱性の結合器の分岐位置(本発明のループミラーの断面Bに対応する位置)でのTE0とTE1の電界ベクトルをETE0、ETE1とし、2つの光導波路のそれぞれに局在する電界分布をe、eとする。電界ベクトルETE0、及びETE1は、電界分布e、eを用いて、式(1)で表される。
【0049】
【数1】
【0050】
断熱性の結合器の開始位置(本発明のループミラーの断面Aに対応する位置)に入射したTE0のパワーの一部が、伝搬中にηの割合だけTE1に変換したとき、TE0とTE1の位相差をθとすると、断面Bでの電界は、式(2)で表される。
【0051】
【数2】
【0052】
断面Bでは、e、eとして2分岐されるので、それぞれのパワーの割合は、式(3)で表される。
【0053】
【数3】
【0054】
たとえば、ηが1%とすると、これによるTE0のパワーの減少自体は0.044dBであり、無視し得る程度に小さい。しかし、断面Bの2分岐部では、その分岐比が50±10%となり、大きな変動を生じる。これはTE0とTE1が干渉して、パワー比ηの平方根の変動を生じさせるためである。モード間の位相差θは波長依存性をもつため、2分岐部のパワー比は、同じく±10%の範囲で波長に依存して変動する。
【0055】
これに対し、実施形態の光デバイス100では、断熱結合器10単体で考えるのではなく、ループ導波路103を含めた往復のパス全体で導波モードの状態を考える。
【0056】
実施形態の断熱結合器10でTE0の伝搬過程で導波路製造時に生じる導波路構造の摂動の影響や屈折率の揺らぎの影響でTE1モードが発生した場合、このTE1モードは図6のTE1の実効屈折率曲線を断熱的にたどり、断面Bでループ20に入る。ループ20を周回したTE1モードは、断面Bに戻って、同様に逆方向に図6のTE1の実効屈折率曲線を断熱的にたどるため、p0において光導波路105に局在する。
【0057】
一方、TE0モードの光は、戻り経路で断熱結合器10の実効屈折率曲線を逆にたどって、断熱的に断面AでのTE0に遷移し、光導波路102に局在する。このように、製造誤差等により意図せぬTE1が発生したとしても、ループ導波路経由後の断面Aにおける状態は、TE0は導波路102側、TE1は導波路105側となり干渉することはないことがわかる。したがって、光導波路105に局在するTE1の電界ベクトルETE1は、ループ20で反射された後のTE0の出力に干渉しないので、一般的なテーパ型の断熱性の結合器で生じる上記の問題を回避することができる。
【0058】
このように、実施形態の光デバイス100の動作は、非特許文献3で問題となり得る上記の問題を克服して、一つのモードでの断熱的な遷移を維持することができる。なお、実施形態の光デバイス10の動作は、2つ以上のモードの干渉を使用する特許文献1~3の方向結合器の動作とは、根本的に異なる。
【0059】
図3図5では、TE0モードの光の入射と反射を説明したが、他の導波モード、たとえば、TEモードの高次モード、TMモードの基本モード、TMモードの高次モード等を光デバイス100に入射する場合も、同様に考えることができる。
【0060】
図6は、TE1モードの光を扱うときの動作例である。同じ媒質に対する実効屈折率がTE0よりも小さいTE1では、入射光は、コア断面積の小さい光導波路105から入力される。断熱結合器10に入力されたTE1モードは、破線のTE1の実効屈折率曲線に沿って、位置P0からP8へ遷移する。光導波路105と並列に配置された光導波路102の幅は、緩やかに光導波路105の幅W3に近づくため、TE1モードの一部が徐々に光導波路102に結合する。位置P8では、同じ断面形状の光導波路105と光導波路102に、TE1モードが同じ割合で存在する。
【0061】
TE0と異なり、TE1は導波路間の水平方向(または導波路の幅方向)に反対称な電界分布を持つので、位置P8で、光導波路102と105の電界分布の位相は、πだけシフトする。この場合、ループ導波路103を通った後の断面Bでの電界分布は、ループ20への入射時の電界分布と反転しているが、同じ振幅でTE1モードとなる。
【0062】
戻り経路で、TE1モードは断熱結合器10を逆にたどり、位置P0で、光導波路105にTE1の電界が局在する。したがって、光導波路105から入力されたTE1の反射光は、同じ光導波路105から出力される。
【0063】
図7は、断熱結合器10にTE1モードを入力したときの電界分布のシミュレーション結果である。図7の(A)~(C)の断熱結合器10への入射側から見た断面で、左側の矩形はテーパ型の光導波路102のコア断面、右側の矩形は、一定幅の光導波路105のコア断面である。
【0064】
図7の(A)の位置P0で、TE1が、コア断面形状の小さい光導波路105に入力される。TE1の電界は、光導波路105に局在する。
【0065】
図7の(B)の位置P6で、光導波路102の導波路幅は、徐々に光導波路105の導波路幅に近づき、光導波路105から染み出したTE1のエバネッセント光が、光導波路102に結合する。
【0066】
図7の(C)の位置P8で、光導波路102と光導波路105のコア形状と断面サイズは同じになる。TE1の電界は、光導波路102と105に均等に存在する。TE1モードは奇モードであり、2つの導波路間で、振幅は同じであるが、光の位相はπだけシフトしている。このため、図7の(C)の光導波路102での電界分布がマイナス側に反転して暗く表示されている。この場合も、ループ導波路103を通過した後の戻り経路で、入力時の光パワーまたはエネルギーは保存されており、TE1モードは断熱結合器10を通過して、光導波路105から出力される。
【0067】
図8は、光デバイス100で用いられる断熱結合器10の好適な長さ範囲を示す。図8の横軸は断熱結合器10の物理長Ltp(μm)、縦軸は反射損失(dB)である。断熱結合器10の実効的な長さは、短波長側で長くなるため、光通信帯域のうち、波長が1520nmの光に対する反射損失を計算する。
【0068】
図2の反射損失では、波長1520nmのときの反射損失は0.6dBである。この反射損失よりも低い損失を達成するには、Ltpは70μm以上、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上である。Ltpが80μmの場合、光通信の使用波長の帯域にわたって、損失は0.40dB以下になる。Ltpが100μmの場合、光通信の使用波長の帯域にわたって、損失は0.34dB以下になり、光デバイス100の反射損失を十分に低減することができる。
【0069】
断熱結合器10の物理長Ltpが長くなりすぎると、光デバイス100の小型化の妨げとなる。また、図8の反射損失の変化の傾向から、Ltpがある程度の長さになると、反射損失の低減効果は飽和すると考えられる。したがって、Ltpの好ましい範囲は、70μm以上、120μm以下、より好ましくは、80μm以上、100μm以下である。
【0070】
図9は、実施形態の構成の効果を示す。断熱結合器10の物理長Ltpを100μmとしたときの反跳損失の波長依存性の計算結果である。CバンドとLバンドを含む1520nm~1630nmの広い波長範囲において、反射損失は0.34dB以下になり、低損失の光デバイス100が実現される。
【0071】
図1の構成での反射損失を示す図2では、波長の変化に対する反射損失の変化の割合が大きく、最大の反射損失は0.61dBである。最大と最小の間で、反射損失に0.60dBもの変動がある。
【0072】
これに対し、実施形態の光デバイス100で、Ltpを100μmにしたときの反射損失の変動幅は、0.19dBであり、損失の波長依存性が大きく改善されている。
【0073】
<変形例>
図10は、光デバイス100の変形例の光デバイス100Aの模式図である。光デバイス100Aは、TE0の光を入力し反射する構成であり、ループ20と反対側に入出力構成140Aを有する。
【0074】
入出力構成140Aの光導波路101は、断熱結合器10の光導波路102にTE0モードを入力し、光導波路102からTE0の反射光を出力する。
【0075】
入出力構成140Aは、断面Aで光導波路102と連続する直線状の光導波路101と、断面Aで光導波路105と連続する湾曲導波路106を有する。湾曲導波路106の幅はW3である。
【0076】
光デバイス100Aへの光入力方向でみると、直線の光導波路101と、湾曲導波路106は、断面Aに向かって徐々に接近する。より具体的には、湾曲導波路106が直線の光導波路101に徐々に接近するように、湾曲して配置されている。
【0077】
湾曲導波路106を設けることで、光の伝搬方向に対する並列導波路の断面形状の変化の不連続性が緩和され、TE1の発生確率を低減することができる。
【0078】
一般に、導波路を曲げると損失の発生原因となるが、TE0の入出力に用いられる光導波路101と、光導波路101から連続する光導波路102は、直線状に維持される。一方、光導波路105に連続する湾曲導波路106を湾曲させて、徐々に光導波路101に近づけることで、隣接する2つの光導波路の断面配置が断面Aで途切れることを防止できる。
【0079】
図11は、光デバイス100の別の変形例の光デバイス100Bの模式図である。光デバイス100Bは、TE1の光を入力し反射する構成であり、ループ20と反対側に、入出力構成140Bを有する。
【0080】
入出力構成140Bは、断面Aで光導波路105と連続する直線状の光導波路105exと、断面Aで光導波路102と連続する湾曲導波路108を有する。湾曲導波路106の幅は、断面Aでの光導波路102の幅と等しく、W1である。
【0081】
光デバイス100Bへの光入力方向でみると、直線状の光導波路105exと、湾曲導波路106は、断面Aに向かって徐々に接近する。より具体的には、湾曲導波路108が直線状の光導波路105exに徐々に接近するように、湾曲して配置されている。
【0082】
湾曲導波路108を設けることで、光の伝搬方向に対する並列導波路の断面形状の変化の不連続性が緩和され、TE1の伝搬過程でTE0の発生確率を低減することができる。
【0083】
図12は、光デバイス100の変形例の光デバイス100Cの模式図である。光デバイス100Cは、TE0の光を入射し反射する構成であり、ループ20と反対側に入出力構成140Cを有する。
【0084】
入出力構成140Cは、断熱結合器10の光導波路102から連続して延びるテーパ導波路109を含む。テーパ導波路109は、TE0モードの光を光導波路102との間で入出力する。テーパ導波路109の幅は、光軸方向に沿って、光導波路102と異なる割合で変化する。断面Aでのテーパ導波路109の幅はW1であり、断面Aと反対側で、テーパ導波路109の幅はW4(W4>W1)になる。
【0085】
テーパ導波路109を設けることで、基板110上に設けられる光デバイス100C以外の光回路素子や、基板外の光導波路と、低損失な接続が可能になる。
【0086】
図12の構成を図11に適用する場合は、TE1が入出力される光導波路105exに、テーパ導波路109を接続してもよい。この場合も、別の光回路素子や光導波路と光デバイス100Cを、低損失で接続することができる。
【0087】
図13は、光デバイス100の変形例の光デバイス100Dの模式図である。光デバイス100Dは、ループ20と反対側に終端構成160を有する。光デバイス100Dは、TE0の光を入力して反射する構成であり、図11の光デバイス100Aの湾曲導波路106に光終端150を接続する。
【0088】
TE0モードを入力に使用する場合、TE1が局在する光導波路105側に終端構成160を設けるのが好ましい。その理由は次のとおりである。
【0089】
製造時における導波路構造の摂動やコア・クラッドの材料屈折率のゆらぎ等で発生したTE1は、断面Aでは光導波路105に局在するが、この部分で光終端構造が無い場合、さらに反射して、断面Aからテーパ光導波路に入力される。入力されたTE1はループ導波路を経て、ふたたび断面Aの光導波路105に戻り、結果として、反射器内部をループして残存してしまう。残存したTE1は、摂動等の影響でTE0に成り得るため、本来の信号と干渉し、反射損失の波長依存性が劣化する、といった反射器の性能を劣化させてしまう。そこで、光終端150で不要なTE1を除去して、光デバイス100Dの特性を維持する。
【0090】
光入出力部となる光導波路102への影響を低減するために、光終端150を光導波路102から離して配置するのが望ましい。そのため、湾曲導波路106に光終端150を接続する。TE1を入力し反射する構成を採用する場合は、図11の湾曲導波路108に光終端を接続すればよい。
【0091】
図14は、光終端150の具体例を示す。図14の(A)は、テーパ構造150aで光終端を実現する。この場合、湾曲導波路106の先端をテーパ導波路107とする。テーパ導波路107を徐々に細くすることで、不要なTE1を放射する。また、テーパ形状により好ましくない反射を抑制することができる。図14では、図示の便宜上、湾曲導波路106の接続端を直線状に描いているが、実際は、図13のように、湾曲導波路106は断面Aに向かって湾曲する。
【0092】
図14の(B)は、高ドープ領域150bで光終端を実現する。この場合、湾曲導波路
106の先端に、光吸収が生じる物質をドープする。光導波路105に局在するTE1モードの光は、光終端150bで吸収される。
【0093】
図14の(C)は、フォトダイオード(PD)150cで光終端を実現する。不要なTE1モードの光で光電流に変換することで、TE1モードを除去する。光終端は、光パワーが反射器内部に戻らない構造であれば、上記に限定されない。
【0094】
上述した実施例及び変形例で、光導波路を形成する材料はSiコアとSiO2クラッドに限定されない。石英で形成されるプレーナ光波回路(PLC:Planer Lightwave Circuit)技術で形成される光デバイスや、InP,GaAs等の半導体材料で形成される光導波路の光デバイスにも適用可能である。
【0095】
光導波路の形状として、実施例のSiコアのような矩形導波路に限定されない。リブ導波路や、リッジ導波路等の光導波路を用いてもよい。
【0096】
図10図13の変形例は、適宜組み合わせ可能である。たとえば、図10の断面Aで入出力用の光導波路101に替えて、図12のテーパ導波路109を光導波路102に接続してもよい。図11の断面Aで、光導波路105exに替えて、図12のテーパ導波路109を光導波路105に接続してもよい。
<光源装置への適用例>
図15は、実施形態の光デバイス100を用いた光源装置200の構成例である。光デバイス100に替えて変形例の光デバイス100A~100Dのいずれを用いてもよい。
【0097】
光源装置200は、チューナブルレーザダイオードであり、増幅媒質201と、チューナブルフィルタ202と、反射器203を有する。光デバイス100は、反射器203として用いられる。
【0098】
増幅媒質201は、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)、レーザ媒質など、誘導放出による反転分布を生成することのできる任意の媒質である。活性層に、化合物半導体を用いた単層または多層の量子井戸、量子ドット等を用いる場合は、シリコンフォトニクス基板やPLC基板に増幅媒質201を実装して、チューナブルフィルタ202と光学的に接続する。
【0099】
チューナブルフィルタ202は、一例として、基板110(図3参照)に形成されるSi導波路で形成されてもよい。Si導波路で形成されるリング共振器と、リング共振器の共振ピーク波長を目的の波長に制御する制御ヒータ等で形成されてもよい。
【0100】
反射器203は、チューナブルフィルタ202に接続されて、外部共振器の反射端として機能する。反射器203に実施形態の光デバイス100を用いる場合、チューナブルフィルタ202から出力される、たとえばTE0モードの光が、光デバイス100の入力側の断面Aで、光導波路102に入力される。入力されたTE0モードは、断熱結合器10を通って、断熱的に断面BのTE0モードの状態に遷移し、ループ導波路103を周回して断面Bに戻る。その後、断熱結合器10を逆方向にたどって、光導波路102からチューナブルフィルタ202に出力される。
【0101】
反射器203では、光通信で用いられる広い波長範囲にわたって反射損失と波長依存性が低減されているので、光源装置200はエネルギー効率が高く、目的の波長で安定して発振することができる。
【0102】
本発明は上述した導波路構成に限定されるものではない。並列する2つの光導波路の少なくとも一方が、光軸方向に連続的に幅または断面形状が変化するように形成されてもよい。断熱結合器10の位置P0で並列する2つの光導波路の断面形状が異なり(または合同でなく)、ループ導波路に接続される位置P8で2つの光導波路の断面形状が合同になるならば、必ずしもループ20に向かって幅が細くなるテーパ形状でなくてもよい。ループ20に向かって徐々に幅が広くなってもよいし、幅が一定程度広がったあとに、連続して幅が狭くなる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 断熱結合器
20 ループ
100、100A~100D 光デバイス
101 入出力用の光導波路
102 光導波路(第1の光導波路)
103 ループ導波路
105 光導波路(第2の光導波路)
105ex 光導波路
106、108 湾曲導波路
109 テーパ導波路
110 基板
140A~140C 入出力構成
150 光終端
160 終端構成
200 光源装置
201 増幅媒質
202 チューナブルフィルタ
203 反射器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15