(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】通信ポイント決定装置、通信ポイント決定方法およびプログラム、並びに点検システム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/18 20090101AFI20231215BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20231215BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20231215BHJP
G01S 5/02 20100101ALI20231215BHJP
【FI】
H04W16/18 110
H04W84/10 110
H04W64/00 110
G01S5/02 Z
(21)【出願番号】P 2020031433
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂下 元
(72)【発明者】
【氏名】本田 雅幹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍
【審査官】三枝 保裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-054409(JP,A)
【文献】国際公開第2019/004243(WO,A1)
【文献】特開2013-052462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
G01S 5/02
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の伝搬を障害する障害物を含む対象エリア内に設置された無線器に対して近距離無線通信を行う移動体の位置である通信位置を含む通信ポイントを決定する通信ポイント決定装置であって、
前記対象エリア内に存在する前記障害物の外形に基づいて作成された前記対象エリアのエリア形状情報、前記対象エリア内における前記無線器の設置位置情報、および前記無線器の電波の送信または応答に関する電波情報に基づく数値解析により得られる、前記対象エリア内での電波強度の分布を示す電波強度マップを取得するよう構成された第1取得部と、
前記電波強度マップに基づいて前記通信ポイントを決定するよう構成された決定部と、を備え
、
前記通信ポイントでの前記近距離無線通信の失敗時における、該通信ポイントの周囲の少なくとも一部の方向に含まれる前記障害物の検出結果を取得するよう構成された第2取得部と、
前記障害物の検出結果に基づいて、検出された前記周囲の形状の、前記エリア形状情報が示す前記周囲の形状からの形状変更の有無を判定するよう構成された形状変更判定部と、をさらに備え、
前記決定部は、前記形状変更が有ると判定された場合には、前記近距離無線通信が失敗した前記通信ポイントに代わる新たな前記通信ポイントを決定するよう構成されている
通信ポイント決定装置。
【請求項2】
前記障害物の検出結果に基づいて前記エリア形状情報を更新するよう構成された更新部をさらに備え、
前記決定部は、前記形状変更が有ると判定された場合には、更新後の前記エリア形状情報を用いた前記数値解析により得られる新たな前記電波強度マップに基づいて、前記新たな通信ポイントを決定するよう構成されている請求項
1に記載の通信ポイント決定装置。
【請求項3】
前記決定部は、
前記電波強度マップに基づいて、前記無線器に対する複数の候補ポイントを選定するよう構成された選定部と、
前記複数の候補ポイントの1つを前記通信ポイントとして選択するよう構成された選択部と、を有し、
前記選択部は、前記形状変更判定部によって前記形状変更が無いと判定された場合には、前記複数の候補ポイントのうちから前記新たな通信ポイントを選択するよう構成されている請求項
1または
2に記載の通信ポイント決定装置。
【請求項4】
前記通信ポイントでの前記近距離無線通信が成功した前記通信ポイントを含む通信実績情報を記憶する記憶部を、さらに備え、
前記選択部は、前記通信実績情報に基づいて、前記通信ポイントを選択するよう構成されている請求項
3に記載の通信ポイント決定装置。
【請求項5】
前記通信ポイントは、前記対象エリアにおける前記通信位置と、前記無線器と前記近距離無線通信を行う前記移動体の姿勢、前記移動体における前記無線器との前記近距離無線通信を実行するための搭載無線器の位置、前記搭載無線器が有するアンテナの姿勢または前記アンテナの指向性の少なくとも1つの情報と、で規定される請求項1~
4のいずれか1項に記載の通信ポイント決定装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の、電波の伝搬を障害する障害物を含む対象エリア内に設置された無線器に対して近距離無線通信を行う移動体の位置である通信位置を含む通信ポイントを決定するよう構成された通信ポイント決定装置と、
前記無線器との前記近距離無線通信を実行するための搭載無線器を有し、決定された前記通信位置を通る巡回ルートに沿って移動する前記移動体と、を備える点検システム。
【請求項7】
前記点検システムは、前記移動体を制御するよう構成された制御装置をさらに備え、
前記移動体は、前記通信ポイントにおける前記近距離無線通信が失敗した場合に、該通信ポイントの周囲の少なくとも一部の方向に含まれる前記障害物を検出すると共に、前記障害物の検出結果を前記通信ポイント決定装置に送信し、
前記制御装置は、前記通信ポイント決定装置が前記障害物の検出結果の受信に応じて新たな前記通信ポイントを決定した場合には、前記新たな通信ポイントに前記移動体を制御するよう構成されている請求項
6に記載の点検システム。
【請求項8】
同一の前記無線器に対する前記近距離無線通信の失敗回数が規定回数以上になった場合に、前記搭載無線器の異常診断を実行するよう構成された診断装置を、さらに備え、
前記移動体は、前記異常診断の結果、前記搭載無線器に異常がある場合には、前記通信ポイント以外の予め定めた位置に移動するよう構成されている請求項
6または
7に記載の点検システム。
【請求項9】
電波の伝搬を障害する障害物を含む対象エリア内に設置された無線器に対して近距離無線通信を行う移動体の位置である通信位置を含む通信ポイントを決定する通信ポイント決定方法であって、
前記対象エリア内に存在する前記障害物の外形に基づいて作成された前記対象エリアのエリア形状情報、前記対象エリア内における前記無線器の設置位置情報、および前記無線器の電波の送信または応答に関する電波情報に基づく数値解析により得られる、前記対象エリア内での電波強度の分布を示す電波強度マップを取得するステップと、
前記電波強度マップに基づいて前記通信ポイントを決定するステップと、を備え
、
前記通信ポイントでの前記近距離無線通信の失敗時における、該通信ポイントの周囲の少なくとも一部の方向に含まれる前記障害物の検出結果を取得するステップと、
前記障害物の検出結果に基づいて、検出された前記周囲の形状の、前記エリア形状情報が示す前記周囲の形状からの形状変更の有無を判定するステップと、をさらに備え、
前記通信ポイントを決定するステップでは、前記形状変更が有ると判定された場合には、前記近距離無線通信が失敗した前記通信ポイントに代わる新たな前記通信ポイントを決定する
る通信ポイント決定方法。
【請求項10】
電波の伝搬を障害する障害物を含む対象エリア内に設置された無線器に対して近距離無線通信を行う移動体の位置である通信位置を含む通信ポイントを決定するプログラムであって、
コンピュータに、
前記対象エリア内に存在する前記障害物の外形に基づいて作成された前記対象エリアのエリア形状情報、前記対象エリア内における前記無線器の設置位置情報、および前記無線器の電波の送信または応答に関する電波情報に基づく数値解析により得られる、前記対象エリア内での電波強度の分布を示す電波強度マップを取得するよう構成された第1取得部と、
前記電波強度マップに基づいて前記通信ポイントを決定するよう構成された決定部と
、
前記通信ポイントでの前記近距離無線通信の失敗時における、該通信ポイントの周囲の少なくとも一部の方向に含まれる前記障害物の検出結果を取得するよう構成された第2取得部と、
前記障害物の検出結果に基づいて、検出された前記周囲の形状の、前記エリア形状情報が示す前記周囲の形状からの形状変更の有無を判定するよう構成された形状変更判定部と、を実現させるとともに、
前記決定部は、前記形状変更が有ると判定された場合には、前記近距離無線通信が失敗した前記通信ポイントに代わる新たな前記通信ポイントを決定するよう構成されている
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設置された無線器との近距離無線通信のための通信ポイントの決定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば火力プラント等のプラントの巡回点検には、触診作業や、アナログメータなどのメータの読み取り作業、異音検知、蒸気漏洩確認などの様々な作業がある。これらの作業は日々数回交代シフトで行う必要がある場合があり、巡回員(人)が行う場合には、点検コストの増大や成り手不足等の課題がある。このため、従来から、巡回員の代わりに、点検や監視用のセンサを搭載した遠隔操作型の移動台車などを用いて、プラント設備の異常有無を点検する手法が提案されている。例えば特許文献1には、複数種類の点検・監視用のセンサや、バッテリ、無線伝送機を搭載し、遠隔制御により点検対象物まで移動して点検を行う移動ロボットが開示されている。特許文献2には、プラントの保守点検作業ルートに沿って配置されたICタグの情報を読み込み、これにより得られる作業指示に従って行動する2足歩行型ないしビークル型の保守点検ロボットが開示されている。
【0003】
また、特許文献3には、工場など固定して設置され、温度、湿度、照度などの環境情報を計測する固定センサ端末と、空間内を移動して上記の環境情報や固定センサ端末の計測できない環境の環境情報を計測する自走センサ端末と、を備えるシステムが開示されている。これによって、他の計測点より高い時間周期で計測することが求められる位置に固定センサ端末を設置し、高い時間周期が必要とされない計測点を自走センサ端末により計測することで、すべての位置に固定のセンサを設置することなく、少ない端末数で効率的に環境計測を行うことが可能になるとされる。また、無線通信の電波が直接到達しない場合に、中間に位置する、自走センサ端末や固定センサ端末が中継して通信することで、電波の到達範囲より広いエリアでセンサ端末間の通信を確実に行うことが可能となることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-198586号公報
【文献】特許第3764713号公報
【文献】特開2010-169422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば特許文献1~2のような地上走行型のロボットで巡回点検を代替する場合には、次のような課題が存在する。すなわち、例えば高所や配管の上面等、地上走行ロボットでは届かない、あるいは死角になるような位置の点検は困難である。触診作業をロボットで代替する場合、高性能のマニュピレータの搭載が必要となるためロボットのコストが高額になると共に、マニュピレータで点検できる範囲には限りがある。メータ読み取り作業をロボットで代替する場合、ロボットに搭載したカメラでメータを撮影する必要があるが、ロボット及びカメラの正確な位置合わせが必要であり、これらの制御は容易ではない。また、ロボットの位置情報に基づいて点検ポイントを識別し、点検ポイントと点検結果とを紐づけて管理する場合、複数の点検ポイントが近接(
図1参照)していると、ロボットの位置推定精度によっては、点検結果に対する点検ポイントを誤識別するリスクがある。
【0006】
このような課題に対して、特許文献3のように無線通信技術を適用することが考えらえる。この際、計測する物理量によって計測に時間を要する場合や、計測が困難な場合があり得ると共に、既にセンサが設置されている場合などには、そのセンサを活用したシステムが望ましい場合がある。このような場合には、固定型のセンサの計測結果を移動体が移動して収集するシステムが考えられる。しかしながら、通常、プラントなど巡回の対象となるエリアには、建物や装置、一時的に設置された荷物といった電波の伝搬を障害する障害物が存在する。また、移動体が搭載するバッテリの電力は限りがある。このため、上記の障害物に妨害されることなく、固定型のセンサと通信可能な位置(通信ポイント)を移動体が移動しながら探すというのでは、巡回点検の長時間化する虞がある。また、移動中にバッテリ切れなどが生じると点検員などが現場に出向く必要があるため、コストの上昇を招く。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、プラントなどの対象エリア内の移動体による巡回点検をより効率良く行うことが可能な通信ポイント決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る通信ポイント決定装置は、
電波の伝搬を障害する障害物を含む対象エリア内に設置された無線器に対して近距離無線通信を行う移動体の位置である通信位置を含む通信ポイントを決定する通信ポイント決定装置であって、
前記対象エリア内に存在する前記障害物の外形に基づいて作成された前記対象エリアのエリア形状情報、前記対象エリア内における前記無線器の設置位置情報、および前記無線器の電波の送信または応答に関する電波情報に基づく数値解析により得られる、前記対象エリア内での電波強度の分布を示す電波強度マップを取得するよう構成された第1取得部と、
前記電波強度マップに基づいて前記通信ポイントを決定するよう構成された決定部と、を備える。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係る点検システムは、
上記の通信ポイント決定装置と、
前記無線器との前記近距離無線通信を実行するための搭載無線器を有し、決定された前記通信位置を通る巡回ルートに沿って移動する移動体と、を備える。
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態に係る通信ポイント決定方法は、
電波の伝搬を障害する障害物を含む対象エリア内に設置された無線器に対して近距離無線通信を行う移動体の位置である通信位置を含む通信ポイントを決定する通信ポイント決定方法であって、
前記対象エリア内に存在する前記障害物の外形に基づいて作成された前記対象エリアのエリア形状情報、前記対象エリア内における前記無線器の設置位置情報、および前記無線器の電波の送信または応答に関する電波情報に基づく数値解析により得られる、前記対象エリア内での電波強度の分布を示す電波強度マップを取得するステップと、
前記電波強度マップに基づいて前記通信ポイントを決定するステップと、を備える。
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態に係る通信ポイント決定プログラムは、
電波の伝搬を障害する障害物を含む対象エリア内に設置された無線器に対して近距離無線通信を行う移動体の位置である通信位置を含む通信ポイントを決定するプログラムであって、
コンピュータに、
前記対象エリア内に存在する前記障害物の外形に基づいて作成された前記対象エリアのエリア形状情報、前記対象エリア内における前記無線器の設置位置情報、および前記無線器の電波の送信または応答に関する電波情報に基づく数値解析により得られる、前記対象エリア内での電波強度の分布を示す電波強度マップを取得するよう構成された第1取得部と、
前記電波強度マップに基づいて前記通信ポイントを決定するよう構成された決定部と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、プラントなどの対象エリア内の移動体による巡回点検をより効率良く行うことが可能な通信ポイント決定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る点検システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る通信ポイント決定装置の機能を概略的に示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る対象エリアの電波強度マップのイメージを例示する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る通信ポイント決定装置の機能を概略的に示すブロック図であり、第2取得部、形状変更判定部および更新部をさらに備える。
【
図5】本発明の一実施形態に係る通信ポイント決定方法を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る点検方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0015】
(点検システムの説明)
図1は、本発明の一実施形態に係る点検システム6の構成を概略的に示す図である。
図1に示すように、点検システム6は、例えばプラントなどの点検対象となる任意のエリア(以下、対象エリア)内の点検(巡回点検)を行うためのシステムである。そして、点検システム6は、電波の伝搬を障害する障害物Bを含む対象エリア内に設置された無線器7に対して近距離無線通信を行う(接続を試みる)移動体の位置(地点)である通信位置Piを含む通信ポイントPを決定する通信ポイント決定装置1と、上記の無線器7との近距離無線通信を実行するための無線器(以下、搭載無線器81)を有し、決定された通信位置Piを通る巡回ルートRに沿って移動する移動体8と、を備える。
【0016】
上記の無線器7は、対象エリア内に固定的に設置された機器に接続され、その機器から得られる通信データVを外部へ通信するための機器である。
図1に示す実施形態では、無線器7は、所望の物理量を検出(計測)可能な各種のセンサ9に接続され、センサ9の検出結果を通信データVとして外部へ送信可能になっている。通常、プラント内には、例えば配管などの対象設備における温度や振動、流量、異音などの物理量を得るために様々な種類のセンサ9が必要な場所に設置されており、複数のセンサ9が対象エリア内に分散して設置されている。よって、複数の無線器7が、複数のセンサ9の各々の設置位置に合わせて設置される。例えば1つのセンサ9に対して1台の無線器7が設けられても良いし、例えば近接するような複数のセンサ9に対して1台の無線器7が設置されても良い。
図1に示すセンサ9はアナログメータであるが、本実施形態では、無線器7は、センサ9が検出したアナログ値に対応したデータを出力可能な変換器92を介してセンサ9に接続されている。なお、センサ9は、例えばメータの表示部の画像や、熱画像などを撮影するために設置されたカメラであっても良い。無線器7は、センサ9に内蔵されていても良い。
【0017】
また、無線器7と搭載無線器81との間で行われる上記の近距離無線通信は、例えばRFID(Radio Frequency Identifier)、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)あるいは無線LAN(WiFi)であっても良い。
図1に示す実施形態では、無線器7は、RFIDの通信原理を用いて通信を行うことが可能な例えばICタグなどのRFIDタグ(以下、無線タグ7t)である。上記の搭載無線器81はRFIDリーダライタである。そして、無線タグ7tは、内蔵するアンテナで受信した搭載無線器81からの電波または磁界(以下、電波等)に基づいて電力を発生させ、発生した電力により動作(起動)すると共に、この動作の結果として得られた上記の通信データVを、上記のアンテナなどから搭載無線器81に返信するようになっている。また、無線タグ7tは、1つのセンサ9にのみ接続されており、そのセンサ9の筐体やその付近の設備に貼り付けられることで、そのセンサ9の近傍に設置されている。
【0018】
なお、無線器7が有する自機器の識別情報(無線タグ7tのタグIDなど)が無線器7から送信される通信データVに含まれていても良い。これによって、通信データVと無線器7とを予め紐づけることができるので、複数の無線器7が近接(
図1参照)して設置されている場合であっても、通信データVが他の無線器7のものと誤識別されることの防止を図ることが可能となる。
【0019】
上記の移動体8は、上述した無線器7から通信データVを収集するために、巡回ルートRに沿っての移動が可能に構成される。巡回ルートRから、通信ポイントPと共にその巡回順序が把握可能になっている。巡回ルートR上には、1以上の通信ポイントPが有れば良いが、プラントでは複数となるのが通常である。移動体8は、例えば無人走行車(UGV:Unmanned Grand Vehicle)などの地上走行型の保守点検ロボットでも良いし(
図1参照)、例えばドローンといった無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの飛行型の保守点検ロボットであっても良い。あるいは、移動体8は人や、人を運ぶ車両であっても良い。
【0020】
より詳細には、移動体8は、移動体8あるいは移動体8の外部に設置された制御装置61の移動制御によって巡回ルートR上を移動する。この制御装置61は、移動体8から送られた通信データVの蓄積や管理をするように構成されても良い。具体的には、上記の移動制御は、幾つかの実施形態では、巡回ルートRが把握可能な地図情報と、移動体8に搭載された自己位置推定手段を用いて得られる移動体8の現在位置とに基づいて、自動で行うものであっても良い。他の幾つかの実施形態では、上記の移動制御は、操作員などに遠隔操作に応じて、進行方向や速度などを移動体8に指令するものであっても良い。この場合には、移動体8には、深度カメラやLiDAR(Light Detecting And Ranging)などの測距センサや可視光カメラなどが搭載されることで、周囲の状況を制御装置61などに送信するようになっていても良く、操作員は遠隔地でモニタを通して移動体8の周囲の状況を見ながら、上記の現在位置や地図情報を参照するなどしながら、移動体8を操縦しても良い。その他の幾つかの実施形態では、上述した実施形態を組み合せも良く、自動操縦と手動操縦の切替えが可能であっても良い。
【0021】
なお、上記の自己位置推定手段は周知な手段で良い。例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)、移動体8に搭載したセンサで検出した方位および距離に基づく自律航法装置、あるいは、LiDARなどであっても良い。また、上記の地図情報は、LiDARなどを利用したSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)により、対象エリア内で移動体8を移動させることで生成しても良い。
【0022】
また、上記の通信ポイントPは、少なくとも対象エリアにおける位置(座標)である通信位置Piによって規定される。通信ポイントPは、さらに、上記の搭載無線器81の向く方向(電波等の送受信方向)とで規定されても良い。具体的には、通信ポイントPは、移動体8の姿勢、移動体8における搭載無線器81の位置やアンテナの向きおよび指向性、その搭載無線器81が有するアンテナの姿勢またはそのアンテナの指向性の少なくとも1つの情報をさらに含んでも良い。上記の移動体8およびアンテナの姿勢は、ピッチや、ロール、ヨーなどで規定(特定)されても良い。また、指向性は、水平角や垂直角で規定(特定)されても良い。各通信ポイントPは、それに含まれる情報のうちの1つが異なれば、他の通信ポイントPになる。移動体8は、上記の通信ポイントPを特定する各情報に基づいて状態を制御できる機構を有することで、決定された通信ポイントPで近距離無線通信を行うことが可能である。なお、移動体8には複数のアンテナが取り付けてあっても良く、その場合には各アンテナの指向性が独立して調整することが可能に構成されても良い。
【0023】
図1に示す実施形態では、制御装置61は、LANやWANなどの通信ネットワークNに接続され、基地局9bを介して移動体8と通信するよう構成されたコンピュータ装置であり、移動体8の外部に設けられている。上記の基地局9bは、例えば無線LAN(WiFi)の無線親機(無線AP)であるが、移動体通信システム(4G、5Gなど)の基地局9bなどであっても良い。つまり、移動体8が対象エリア内の移動中に基地局9bを介した制御装置61との無線通信が可能であり、かつ、搭載無線器81と無線器7との間で行われる近距離無線通信よりも通信距離が長ければ良い。
【0024】
また、
図1に示す実施形態では、移動体8は、車載バッテリの電力により走行するUGV8vであり、現在位置を周期的に制御装置61に送信するようになっている。また、制御装置61は上記の地図情報を備えており、受信した現在位置が巡回ルートRに沿っているかをチェックしながら、移動体8の移動を制御するようになっている。具体的には、制御装置61は次の移動先(通信位置やその途中の位置)を移動体8に送信(命令)した後、送信した移動先に向かって移動する移動体8の現在位置を追跡しても良い。これを繰り返すことで、巡回ルートRに沿った移動体8の移動が可能となる。また、移動体8は、各通信ポイントPで取得した点検結果を制御装置61に送信するようになっており、制御装置61は受信した点検結果を蓄積するようになっている。
【0025】
ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、移動体8が、移動体8に搭載された記憶装置に地図情報を記憶しているなど、移動体8側に地図情報が配置されることで、移動体8が自律的に移動しても良い。この場合、移動体8の外部にも制御装置61の機能が分散配置されていても良く、通信された移動体8の現在位置を監視し、必要な場合に遠隔操作に切替えることが可能になっていても良い。その他の幾つかの実施形態では、点検システム6は、制御装置61を備えていなくても良い。この場合には、移動体8は自律的に移動すると共に、移動体8が全ての点検結果を蓄積(記憶)し、格納庫(不図示)などの所定の場所で蓄積した点検結果を点検員などに回収されるようになっていても良い。
【0026】
すなわち、上述した点検システム6においては、移動体8と共に移動する搭載無線器81からの近距離無線通信のための電波等が無線器7で受信可能な範囲内に移動体8に入っている時だけ、無線器7の通信データVが外部に送信される。また、この送信には近距離無線通信が用いられるため、無線傍受によるデータ漏洩リスクや、無線器7同士の電波等の干渉のリスクを低減できる。そして、これらのリスクは、無線通信が可能な距離が短い技術(規格)であるほど低減される。
【0027】
ここで、上述したような点検システム6においては、移動体8は、対象エリアに固定的に設置された1以上(
図1では複数)の無線器7からその通信データV(
図1ではセンサの検出結果)を収集するために、近距離無線通信が可能な距離まで各無線器7に近づく必要がある。ところが、対象エリア内に建物や装置などの定着物や一時的に設置された荷物など、近距離無線通信のための電波等の伝搬を障害(妨害)する障害物Bが存在すると、通信距離の上では通信できるはずが、実際には通信ができない場合が生じ得る。特に荷物などは、ある時点から突然出現する場合があるため、以前は無線器7との通信の成功実績のある通信位置Piであっても、通信できなくなる場合があり得る。
【0028】
このような状況に遭遇すると、その無線器7との通信可能な新たな通信ポイントPを探すために、移動体8を移動させながら通信の試行を繰り返すか、あるいは、その無線器7からの通信データの収集を断念せざるを得なくなる。また、例えば、前者では、移動体8が移動を繰り返しながら新たな通信位置Piを探すことになるので、点検が長時間化する虞があると共に、このために移動体8のバッテリを消耗することで、巡回ルートRの移動中にバッテリ切れが生じる可能性が高まる。
そこで、上記の通信ポイント決定装置1を用いて、各無線器7との通信ポイントPを、対象エリアに存在する障害物Bを考慮して事前に決定する。
【0029】
以下、通信ポイント決定装置1について、
図2~
図4を用いて詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る通信ポイント決定装置1の機能を概略的に示すブロック図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る対象エリアの電波強度マップMのイメージを例示する図である。
【0030】
通信ポイント決定装置1は、上述した障害物Bを含む対象エリア内に設置された無線器7に対する通信ポイントPを決定するよう構成された装置であり、対象エリア内に複数の無線器7が設置されている場合にはその各々と無線通信するための通信ポイントPをそれぞれ決定する。そして、
図2に示すように、通信ポイント決定装置1は、第1取得部2と、決定部3と、を備える。これらの機能部について、対象エリアがプラントの少なくとも一部の領域であり、無線器7がセンサ9に接続されている場合を例に説明する。
【0031】
なお、通信ポイント決定装置1は、コンピュータで構成されても良い。すなわち、図示しないプロセッサ1p(例えばCPU)や、ROMやRAMなどの記憶部1mを備えており、メモリ(主記憶装置)にロードされたプログラム(通信ポイント決定プログラム10)の命令に従ってプロセッサが動作(データの演算など)することで、上記の各機能部を実現する。換言すれば、上記のプログラムは、コンピュータに後述する各機能部を実現させるためのソフトウェアであり、コンピュータによる読み込みが可能な記憶媒体に記憶されても良い。
【0032】
第1取得部2は、対象エリア内での電波強度の分布を示す電波強度マップMを取得するよう構成された機能部である。この電波強度マップMは、障害物Bの外形に基づいて作成された対象エリアの2次元あるいは3次元などの形状を表すエリア形状情報Fと、対象エリア内における無線器7の設置位置の情報(以下、設置位置情報C)と、無線器7の電波の送信または応答に関する情報(以下、電波情報W)に基づく数値解析により得られる。なお、対象エリア内には少なくとも1つの無線機7が設置されているが、複数の無線器7が設置されている場合には、電波強度マップMは、全ての無線器7の設置位置および電波情報Wに基づいて算出される。
【0033】
より詳細には、上記のエリア形状情報F(例えば3次元地図など)は、対象エリア内の地面の上に定着している建物などの基本的には移動されない定着物を示す地図や建物の図面などに基づいて作成しても良い。あるいは、測距センサを用いて、対象エリア内を実際に移動しながら周囲の障害物Bを検出(計測)することで得られる情報に基づいて、作成しても良い。
【0034】
上記の設置位置情報Cは、対象エリア内のどの位置に無線器7が設置されているかを示す情報であるが、各無線器7の設置位置の座標の集合であっても良い。この座標は、緯度および経度、あるいは緯度、経度および高度で特定されても良いし、対象エリア内に任意に定めた基準位置からの2次元または3次元上の位置であっても良い。なお、センサ9の設置位置を無線器7の設置位置とみなして扱っても良く、無線器7がセンサ9に近接しているほど、電波強度マップMの精度が向上する。
【0035】
また、上記の電波情報Wは、障害物Bがない場合における各無線器7の電波の到達範囲や、その範囲内における電波強度の分布を推定するための情報であり、例えば各無線器7の電波送信出力が含まれても良いし、これに加えて、指向性の有無やどの方向にどの程度の通信利得があるかなどのアンテナ偏波特性などが含まれても良い。
【0036】
そして、電波強度マップMは、上述した対象エリアのエリア形状情報F、各無線器7の設置位置情報C、および各無線器7の電波情報Wに基づいて、電波伝搬特性シミュレーションを実行することにより得られる。この電波伝搬特性シミュレーションは、例えばレイトレース法など周知なもので良い。
【0037】
この結果、
図3に例示するよう情報が把握可能な電波強度マップMが得られる。
図3に示す電波強度マップMは、対象エリアを上から見た2次元マップであるが、垂直方向(重力方向)の位置は、例えば移動体8における搭載無線器81の垂直位置(高さ)のものである。この電波強度マップMに対応する対象エリアの部分領域には、障害物Bが合計で4つあり、そのうちの3つの障害物Bの各々の付近にそれぞれ無線器7が設置されている(無線器7は合計で3個)。そして、
図3において破線や一点鎖線で示すのは、電波伝搬特性シミュレーションによって得られた解析結果であり、電波強度が同じとなる位置をつないだ線(等高線)である。この電波強度マップMを参照すれば、対象エリア内の任意の位置において搭載無線器81が受信する電波等がどの無線器7のものであり、その時の受信信号強度(RSSI)がどの程度であるかが推定可能である。なお、電波強度の等高線は、各無線器7から径方向に遠ざかるほど小さくなるが、各無線器7を囲む等高線のうち最も外側に位置するものは、その無線器7と無線通信することが可能な限界の電波強度に対応しており、以下ではこの線を通信限界ラインLと呼ぶ。
【0038】
決定部3は、上述した第1取得部2によって取得された上記の電波強度マップMに基づいて、上記の通信ポイントPを決定するよう構成された機能部である。通信ポイントPを規定する通信位置Piについては、電波強度マップMにおける通信限界ラインLの内側(無線器7側)の位置であれば、通信位置Piとしてはどの位置が決定されても良いが、幾つかの実施形態では、決定部3は、電波強度マップMと、他の情報とに基づいて、所定のロジックに基づいて通信位置Piを決定しても良い。具体的には、上記の他の情報は、移動体8の移動時の障害物Bとの距離や、巡回ルートRの走行距離などであっても良い。より具体的には、電波強度が閾値以上で、かつ、障害物Bとの距離が最大、あるいは、巡回ルートRの走行距離が最小といった条件の下で、通信位置Piを決定しても良い。複数の無線器7の各々の通信限界ラインLの内側であって、これらの電波が重なる領域を優先的に通信位置Piとして選ぶようにしても良い。そして、巡回ルートRは、決定された通信位置Piを全て通過するように定められる。
【0039】
また、例えば、通信ポイントPを規定するのに、通信位置Piに加えて、上記の電波等の送受信方向を考慮する場合には、その送受信方向を規定する情報セットの値の組み合わせに応じた電波強度マップMを取得し、これらの複数の電波強度マップMを比較することで、通信ポイントPを決定しても良い。より具体的には、まずは、所定の電波強度マップMを用いて優先的に通信位置Piを決定し、その後、複数の電波強度マップMに基づいて、決定された通信位置Piにおける最も適した搭載無線器81の姿勢やアンテナの姿勢や指向性などの通信ポイントPを規定する他の情報を決定しても良いし、複数の電波強度マップMから最も適した通信ポイントPを決定しても良い。
【0040】
図2に示す実施形態について説明すると、通信ポイント決定装置1は、例えば制御装置61が備えるなど、移動体8の外部に設けられている。そして、上述した第1取得部2が、取得した電波強度マップMを決定部3に入力すると、決定部3は、入力された電波強度マップMに基づいて、対象エリアに設置された全ての無線器7の各々に対する通信ポイントPを決定するようになっている。
【0041】
より詳細には、通信ポイント決定装置1は、通信ポイント決定装置1は、上記の電波強度マップMを生成するマップ生成部12と、決定部3によって決定された全ての通信ポイントPを順番に辿ることが可能な巡回ルートRを決定するルート決定部4と、をさらに備えている。このルート決定部4は、決定部3によって決定された各無線器7に対する通信位置Piを通る順番を決定する。マップ生成部12は、エリア形状情報F、設置位置情報C、および電波情報Wがそれぞれ入力されると電波強度マップMを生成し、記憶部1mに格納するようになっている。そして、制御装置61は、ルート決定部4によって決定された巡回ルートRに基づいて移動体8の移動を自動で制御するようになっている。
【0042】
上記の構成によれば、例えばプラントなどの対象エリア内に設置された複数のセンサ9などの設置機器は、その検出結果などの通信データVを外部へ送信可能な無線器7にそれぞれ接続されている。そして、通信ポイント決定装置1は、各無線器7と近距離無線通信を行う通信位置Piを含む通信ポイントPを、対象エリア内に存在している障害物Bの存在を考慮して作成された、各無線器7からの電波の強度の分布を示す電波強度マップMに基づいて決定する。これによって、対象エリア内における各無線器7との近距離無線通信を行うに際して、その無線器7の周辺の障害物Bによる電波遮蔽や反射、回折の影響を考慮して、各無線器7との良好な通信が可能な通信ポイントPを決定することができる。このように、各無線器7との適切な通信ポイントPを予め求めておくことによって、無線器7と安定した通信を迅速に行うことができる。よって、例えばプラントに設置された複数のセンサ9の検出結果を、近距離無線通信が可能な範囲内に移動体8などを移動させて通信により収集する場合に、効率良く収集することができる。また、適切な通信ポイントPを見つけられずにセンサ9から検出結果を収集できないような事態を防止することができる。
【0043】
次に、上述した決定部3に関する幾つかの実施形態について、
図2を用いて説明する。
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、上述した決定部3は、電波強度マップMに基づいて、無線器7に対する2以上の複数の候補ポイントPcを選定するよう構成された選定部31と、複数の候補ポイントPcのうちの1つを通信ポイントPとして選択するよう構成された選択部32と、を有しても良い。上記の複数の候補ポイントPcは、通信位置Piが互いに異なっていても良いし、通信位置Pi以外が互いに異なっていても良いし、通信ポイントPに含まれる情報の少なくとも一部が互いに異なっていても良い。
【0044】
例えば、選定部31は、各無線器7について、電波強度マップMにおける通信限界ラインLの内側(無線器7側)の位置にある全ての位置あるいは一部の位置をそれぞれ候補ポイントPcとして選定しても良い。候補ポイントPcとして選定し得る各無線器7の通信限界ラインLの内側(無線器7側)の位置は、電波強度マップMに基づいて、各無線器7の電波強度が閾値以上の位置を求めると共に、例えばそのうちの障害物Bと重なっていない位置など、移動体8が移動可能な位置を抽出することで得ることが可能である。また、上記の一部の位置は、候補ポイントPcとして選定し得る各無線器7の通信限界ラインLの内側(無線器7側)の位置のうちから例えばランダムに抽出しても良いし、その無線器7からの距離が距離閾値以上の位置を抽出しても良い。
【0045】
また、選択部32は、選定部31によって選定された全ての候補ポイントPcのうちから、例えば上述したような所定のロジックにより最も望ましい位置を通信ポイントPとするとともに、その通信ポイントPに近い位置にあるほど優先度が高い位置としても良い。
【0046】
あるいは、通信ポイント決定装置1は、
図2に示すように、通信対象の無線器7との近距離無線通信が成功した通信ポイントPを含む通信実績情報Hを記憶するよう構成された実績記憶部33を、さらに備えており、選択部32は、この通信実績情報Hに基づいて、通信ポイントPを選択するよう構成されても良い。具体的には、この通信実績情報Hは、各無線器7に対して近距離無線通信が成功した通信ポイントPが紐づけられた情報であっても良いし、さらに、通信ポイントP毎の紐づけられた無線器7(通信対象の無線器7)との成功回数も紐づけられた情報であっても良い。そして、ある無線器7の通信ポイントPとして2以上の最も望ましい通信ポイントPが抽出された場合に、選択部32は、通信実績情報Hにおける成功回数を優先度として、成功回数が最も高い通信ポイントPを選択するなどしても良い。あるいは、選択部32は、選定部31が選定した複数の候補ポイントPcの成功回数をそのまま優先度として用いることで、成功回数が高い候補ポイントPcを選択しても良い。
【0047】
このように、通信対象の無線器7との通信の成功実績を考慮して通信ポイントPを選択することで、近距離無線通信の成功確率の向上を図ることが可能となる。
なお、通信実績情報Hは、通信対象の無線器7との近距離無線通信が失敗した通信ポイントPや失敗回数を含んでも良く、失敗回数を、優先度を下げる要素として用いるなど、この情報も考慮して通信ポイントPを決定しても良い。
【0048】
図2に示す実施形態では、選定部31と選択部32とが接続されており、選定部31が所定のロジックによって選定した複数の候補ポイントPcが選択部32に入力されるようになっている。また、選択部32は、複数の候補ポイントPcに対する選択の優先順位を最初に通信ポイントPを決定する際に定めておくなどして、その選択の優先順位に従って、新たな通信ポイントPを選択するようなっている。また、本実施形態では、選定部31が、複数の候補ポイントPcの選定にあたって、通信ポイントPとして決定すべき優先度も決めており、複数の候補ポイントPcをその優先度と共に選択部32に入力する。そして、選択部32は、優先度に基づいて、通信ポイントPを選択し、出力するようになっている。
【0049】
上記の構成によれば、各無線器7と通信するための通信ポイントの候補として複数の通信ポイントP(候補ポイントPc)が予め定められており、対象エリア内に設置された無線器7と移動体8側の搭載無線器81の通信の失敗時には、複数の候補ポイントPcのうちから新たな通信ポイントPを選択する。これによって、新たな通信ポイントPを迅速に決定することができる。
【0050】
次に、通信ポイント決定装置1に関する幾つかの実施形態について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る通信ポイント決定装置1の機能を概略的に示すブロック図であり、第2取得部51、形状変更判定部52および更新部53をさらに備える。
なお、
図4を用いて説明する移動体8は、上述した測距センサを搭載していることで、移動体8が移動中に周囲の障害物Bを検出することが可能となっているものとする。
【0051】
例えば移動体8が、上述したように決定された通信ポイントPに実際に行き、通信ポイントPにおいてセンサ9に接続された無線器7と通信を行ったとしても、例えば電波強度マップMの作成時にはなかった障害物Bが新たに存在していた場合など、近距離無線通信が成功しないような場合が想定される。
【0052】
そこで、幾つかの実施形態では、各通信ポイントPでの通信の対象(宛先)となる無線器7(通信対象の無線器7)との近距離無線通信が失敗した時には、移動体8に搭載されている上記の測距センサを用いて、この通信ポイントPの周囲の少なくとも一部の方向に含まれる障害物Bの検出動作が行われても良い。すなわち、移動体8は、通信ポイントPにおける通信対象の無線器7との近距離無線通信が失敗した場合に、その失敗時において、この通信ポイントPの周囲の少なくとも一部の方向に含まれる障害物Bを検出すると共に、この障害物Bの検出結果D(周辺物体形状情報)を通信ポイント決定装置1に送信するよう構成されている。
【0053】
そして、
図4に示すように、上述した通信ポイント決定装置1は、この移動体8側の検出動作で得られる障害物Bの検出結果Dを取得するよう構成された第2取得部51と、この障害物Bの検出結果Dに基づいて、検出された周囲の形状の、上記の通信が失敗した通信ポイントP(以下、失敗ポイントPf)の決定の際に用いたエリア形状情報Fが示す周囲の形状からの形状変更の有無を判定するよう構成された形状変更判定部52と、をさらに備えても良い。この場合において、上記の決定部3は、この判定によって形状変更が有ると判定された場合には、上記の失敗ポイントPfに代わる新たな通信ポイントP(新ポイントPn)を決定するよう構成されている。
【0054】
上記の障害物Bの検出動作は、移動体8が自律的に行っても良いし、移動体8から制御装置61に対して通信の失敗通知がなされた後、制御装置61からの命令に従って行っても良い。また、上記の形状変更は、例えば両者の一致度を算出し、この一致度が予め定められている規定閾値以上の場合には形状変更は無いと判定し、この規定閾値よりも小さい場合には形状変更が有ると判定しても良い。この規定閾値を適切に設定することで、歩行者や走行車両など一時的な物体の影響により形状変更が有ると判定されるのを防止することが可能となる。
【0055】
つまり、予め設定されていた通信ポイントPが失敗ポイントPfとなった場合には、新たな障害物Bが出現したなど、失敗ポイントPfと通信対象の無線器7との間やその無線器7の周辺で形状変化が生じた可能性があるため、移動体8の周辺の障害物Bをスキャンする。そして、このスキャンの結果、新たな障害物Bが出現している場合など上記の形状変更が生じている場合には、新たな通信ポイントPを決定する。
【0056】
より詳細には、形状変更が有ると判定された場合には、
図4に示すように、通信ポイント決定装置1は、上記の検出動作によって検出された障害物Bの検出結果Dに基づいて既存のエリア形状情報Fを更新(修正)するよう構成された更新部53をさらに備えても良い。そして、形状変更判定部52によって、上記の形状変更が有ると判定された場合には、上述した第1取得部2は、更新部53によって更新された更新後のエリア形状情報F´と、上記の設置位置情報Cと、上記の電波情報Wとに基づく上記の数値解析により得られる新たな電波強度マップMを取得する(
図2参照)。そして、決定部3は、この新たな電波強度マップMに基づいて、新たな通信ポイントPを決定し、制御装置61に送信する(
図2参照)。これによって、通信位置Piが変われば、移動体8は新たな通信ポイントPに移動する。移動体8は、移動しなくても通信可能な通信ポイントPがあれば、それに合わせて状態(上記の姿勢など)を変えても良い。
【0057】
他方、形状変更判定部52によって上記の形状変更が無いと判定され場合には、この場合において、上記の選択部32は、上述した形状変更判定部52によって形状変更が無いと判定された場合には、決定部3によって予め決定されている複数の候補ポイントPcのうちから新たな通信ポイントPを選択するよう構成されていても良い。これによって、通信の失敗時において、既存の電波強度マップMの生成に用いたエリア形状情報に変更が無いと判定された場合には、既存の電波強度マップMに基づいて予め選定されている複数の候補ポイントPcのうちから新たな通信ポイントPを選択することで、新たな通信ポイントPを迅速に決定することが可能となる。
【0058】
具体的には、失敗ポイントPfの通信位置Piを中心に通信可能な他の通信位置Piを試行錯誤により探しても良いし、各無線器7について、それぞれ、互いに通信位置Piが異なる複数の候補となる通信ポイントP(候補ポイントPc)を予め選定しておき、その中から選択した候補ポイントPcの通信位置Piに移動しても良い。
あるいは、失敗ポイントPfに含まれる他の情報(上述した姿勢など)を変更することで得られる新たな通信ポイントPに合わせて移動体8で状態を変化させて、通信を試行しても良い。この場合については、互いに通信位置Pi以外の情報が異なる複数の候補ポイントPcを予め選定しておき、その中から選択しても良い。また、この場合は、例えば移動体8側で検出動作を行う前など、形状変更判定部52によって上記の形状変更の有無を判定する前に行っても良い。
または、失敗ポイントPfでの通信対象の無線器7との通信を断念して、次の無線器7との通信を行うための通信ポイントPに向けて移動しても良い。
【0059】
図4に示す実施形態では、移動体8はLiDARを搭載しており、通信が失敗した場合には、このLiDARを用いて、無線器7が設置されている方向を含む周囲の一部あるいは全部をスキャンすることで、周囲の3次元の形状を示す点群データ(障害物Bの検出結果D)を生成するようになっている。また、更新部53は、点群データが入力されると、この点群データに基づいて、既存のエリア形状情報Fにおける形状変更の有った部分(データ)を更新する。つまり、更新部53は、既存のエリア形状情報Fに点群データ(形状変更)を反映することで、新たなエリア形状情報F´を生成する。
【0060】
より詳細には、第2取得部51は、形状変更判定部52に接続されており、移動体8と通信することにより点群データを取得すると、形状変更判定部52に入力する。形状変更判定部52は、更新部53に接続されており、点群データが入力されると、記憶部1mに記憶されている既存のエリア形状情報Fと比較して形状変更の有無を判定する。その結果、形状変更が有ると判定した場合には、点群データを更新部53に入力する。更新部53では、点群データが入力されると、この点群データ及び既存のエリア形状情報Fに基づいて生成した新たなエリア形状情報F´で、記憶部1m既存のエリア形状情報Fを上書きするようになっている。これを契機に、既に説明したマップ生成部12が、新たなエリア形状情報F´を用いて上記の数値解析により新たな電波強度マップMを生成し、第1取得部2が取得した新たな電波強度マップMが決定部3に入力されることで、新たな通信ポイントPが決定される。
【0061】
そして、新たな通信ポイントPが決定された場合には、移動体8は、その新たな通信ポイントPに合わせて制御される。具体的には、通信位置Piが変化すれば移動し、姿勢等の状態が変化すれば、新たな通信ポイントPに合わせて状態を変化させるように制御される。その後、新たな通信ポイントPにて、通信が失敗した状態にある無線器7との近距離無線通信が試行される。
【0062】
また、上述した通信ポイントPでの近距離無線通信の実行から新たな通信ポイントPでの通信の実行までを規定回数Tだけ繰り返すなど、同一の通信対象の無線器7との通信が規定回数Tだけ成功しない場合には、この通信が失敗している無線器7との通信を断念して、次の無線器7との通信するために次の通信ポイントPに移動しても良い。あるいは、後述するように診断装置63による搭載無線器81の異常診断を実行し、その結果に応じて移動体8を制御しても良い。
【0063】
上記の構成によれば、例えば通信ポイントPに実際に移動した移動体8と、その通信ポイントPでの通信対象の無線器7との通信が失敗した場合には、既存のエリア形状情報F(電波強度マップM)に変更がないかをその通信失敗時における周囲の障害物Bの検出を通して判定すると共に、形状変更が有ると判定された場合には新たな通信ポイントPを決定する。これによって、通信の失敗時に、実際に移動体8などを移動させつつ通信を試行するなどの試行錯誤をすることなく、通信が成功する可能性が高い新たな通信ポイントPを迅速に提供することができる。よって、各無線器7との通信を通して、センサ9の検出結果などの通信データVの収集が迅速に確実に行えるように図ることができる。
【0064】
上述した実施形態では、通信の失敗時には新たな通信ポイントPを決定したが、他の幾つかの実施形態では、移動体8が有する搭載無線器81に異常が生じていないかの診断を実行し、その異常がないと判定した場合に、上述した障害物Bの検出動作以降の処理や、次の無線器7と通信するために次の通信ポイントPへの移動を行っても良い。
【0065】
すなわち、幾つかの実施形態では、
図1に示すように、点検システム6は、同一の無線器7に対する近距離無線通信の失敗回数が上記の規定回数T以上になった場合に、搭載無線器81の異常診断を実行するよう構成された診断装置63を、さらに備えても良い。そして、移動体8は、上記の診断装置63による異常診断の結果、搭載無線器81に異常がある場合には、通信ポイントP以外の予め定めた例えば格納庫などの位置に移動するように制御されても良い。
【0066】
図1に示す実施形態では、診断装置63は制御装置61に搭載されている。より具体的には、診断装置63は、搭載無線器81の診断をコンピュータに実現させるための診断プログラムである。そして、例えば搭載無線器81は自己診断機能を有しているなど、移動体8には診断実行機能が搭載されており、診断装置63からの指示に従って自己診断を行うと共に、その診断結果を診断装置63に送信するようになっている。ただし、本実施形態に本発明は限定されない。搭載無線器81の診断ができれば良く、これが可能な周知な方法のいずれを適用しても良いし、診断装置63は移動体8側に搭載されても良い。
【0067】
上記の構成によれば、移動体8が有する搭載無線器81の異常によって通信不能となっている場合に、対象エリアの点検を継続するような無駄を防止することができる。
【0068】
また、他の幾つかの実施形態では、通信の失敗時には、上述した障害物Bの検出動作以降の処理を行う前に、上述した通信ポイントPに含むことが可能な移動体8の姿勢、移動体8における搭載無線器81の位置、搭載無線器81が有するアンテナの姿勢を変えても良い。そして、通信位置Pi以外を変更して通信を試行しても、通信が成功しない場合に、上述した障害物Bの検出動作以降の処理や、次の無線器7と通信するために次の通信位置Piへの移動を行っても良い。
【0069】
以下、上述した通信ポイント決定装置1の処理に対応する通信ポイント決定方法を、
図5~
図6を用いて説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る通信ポイント決定方法を示す図である。また、
図6は、本発明の一実施形態に係る点検方法を示す図である。点検方法は、通信ポイント決定方法により決定された通信ポイントPに基づく巡回ルートRを前提としたものであり、新たな通信ポイントPを決定する必要がある場合に行うも用いられる。
【0070】
通信ポイント決定方法は、障害物Bを含む対象エリア内に設置された無線器7に対する上述した通信ポイントPを決定するための方法である。
図5に示すように(
図6も同様)、通信ポイント決定方法は、対象エリアに対応した上述した電波強度マップMを取得する第1取得ステップ(
図5のS2、
図6のS7、S8)と、上記の電波強度マップMに基づいて、対象エリア内に設置された上述した無線器7に対する通信ポイントPを決定する決定ステップ(
図5のS3、
図6のS7)と、を備える。
【0071】
上記の決定ステップは、電波強度マップMに基づいて、各無線器7に対する複数の候補ポイントPcを選定する選定ステップと、これらの選定された複数の候補ポイントPcの1つを通信ポイントPとして選択する選択ステップと、を有しても良い。
【0072】
第1取得ステップおよび決定ステップは、それぞれ、既に説明した第1取得部2および決定部3がそれぞれ実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。なお、
図6に示すように、例えば予め実行された選定ステップ(
図6のS0など)によって複数の候補ポイントPcを定めておき、後述するステップS8において、この複数の候補ポイントPcのうちから新たな通信ポイントPを決定しても良い。
【0073】
また、幾つかの実施形態では、
図5に示すように(
図6も同様)、通信ポイント決定方法は、上記の電波強度マップMを生成するマップ生成ステップ(
図5のS1、
図6のS7)をさらに備えても良い。他の幾つかの実施形態では、通信ポイント決定方法は、上記の決定ステップで決定された全ての通信ポイントPを順番に通ることが可能な巡回ルートRを決定するルート決定ステップ(
図5のS4)をさらに備えても良い。マップ生成ステップおよびルート決定ステップは、それぞれ、既に説明したマップ生成部12、ルート決定部4がそれぞれ実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0074】
図5に示す実施形態では、ステップS1においてマップ生成ステップを実行し、電波強度マップMを生成する。ステップS2において第1取得ステップを実行し、マップ生成ステップで生成した電波強度マップMを取得する。そして、ステップS3において決定ステップを実行し、上記の第1取得ステップで取得された電波強度マップMを用いて、各無線器7との通信ポイントPを決定する。その後、ステップS4においてルート決定ステップを実行し、上記の巡回ルートRを決定する。また、ステップS5において、決定した巡回ルートRを移動体8の制御装置61に送信するステップを実行している。このステップS5は、制御装置61が利用可能なように制御装置61の記憶部に記憶するステップであっても良い。
【0075】
次に、
図6を用いて、通信ポイント決定方法ないし点検方法を説明する。
点検方法は、任意のタイミングで実行されるが、プラントの巡回点検では、日に数回など定期的に実行される。
【0076】
幾つかの実施形態では、
図6に示すように、通信ポイント決定方法は、通信ポイントPでの通信対象の無線器7との近距離無線通信の失敗時における、その通信ポイントPの周囲の少なくとも一部の方向に含まれ障害物Bの検出結果Dを取得する第2取得ステップ(
図6のS4)と、第2取得ステップで取得された障害物Bの検出結果Dに基づいて、検出された周囲の形状の、エリア形状情報Fが示す周囲の形状からの形状変更の有無を判定する形状変更判定ステップ(同図のS4)と、をさらに備えても良い。この場合、上記の決定ステップ(
図6のS7、S8)は、上記の形状変更が有ると判定された場合には、この失敗ポイントPfに代わる新たな通信ポイントPを決定する。第2取得ステップおよび形状変更判定ステップは、それぞれ、既に説明した第2取得部51、形状変更判定部52がそれぞれ実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0077】
また、幾つかの実施形態では、
図6に示すように、通信ポイント決定方法は、上記の障害物Bの検出結果Dに基づいてエリア形状情報Fを更新する更新ステップ(
図6のS6)をさらに備えても良い。この場合、決定ステップ(
図6のS7)は、上記の形状変更が有ると判定された場合には、更新後のエリア形状情報F´を用いた数値解析により得られる新たな電波強度マップMに基づいて、上記の新たな通信ポイントPを決定しても良い。更新ステップは、既に説明した更新部53が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0078】
この際、幾つかの実施形態では、
図6に示すように、選択ステップ(
図6のS8)は、形状変更判定ステップによって上記の形状変更が無いと判定された場合には、その通信の失敗ポイントPfに対して予め選定されている複数の候補ポイントPcのうちから新たな通信ポイントPを選択(決定)しても良い。
【0079】
また、幾つかの実施形態では、
図6に示すように、点検方法は、同一の無線器7に対する近距離無線通信の失敗回数が規定回数T以上になった場合(S3でYES)に、搭載無線器81の異常診断を実行する診断ステップ(S31)をさらに備えても良い。この場合、移動体8は、異常診断の結果、搭載無線器81に異常がある場合(S32でYES)には、通信ポイントP以外の予め定めた位置に移動する移動ステップ(S9)をさらに備えても良い。診断ステップは、既に説明した診断装置63が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0080】
図6に示す実施形態では、対象エリアには合計でN台の無線タグ7t(無線器7)が設置されている。そして、各無線器7をi番目(i=1、2、…、N)の無線器7として示すとすると、
図6では、少なくともリード機能を有するRFIDリーダライタ(搭載無線器81。以下、単に、リーダ8r)として搭載したUGV8v(移動体8)が、巡回ルートRに沿って移動することで、1番目(i=1)からN番目まで無線器7を順番に巡回する場合に対応する。よって、近距離無線通信はRFIDによるものであり、リーダ8rを用いた読取操作を実行することで、行われる。また、UGV8vは測距センサとしてLiDARを搭載しているものとする。なお、これらの前提は一例であり、
図6では、所望の移動体8、搭載無線器81および測距センサの種類で読み替え適用しても良い。
【0081】
ステップS0において、通信ポイント決定方法(
図5)によって決定された、対象エリア内に設置された全て(N台)の無線タグ7tに対する通信位置Pi(通信ポイントP)を通る巡回ルートRを取得する。次のステップS1では、ステップS0で決定された各通信ポイントPの通信位置PiにUGV8vを順番に移動させる。ステップS2において、その通信ポイントPでの通信対象となるi番目の無線タグ7tと通信するために、リーダ8rを用いた近距離無線通信を行う。
【0082】
そして、ステップS2を実行した結果、i番目の無線タグ7tとの通信が成功した場合には、ステップS21において、次(i+1番目)の無線タグ7tの有無を確認する。具体的にはi+1≦Nであるかを確認しても良い。その結果、i+1番目の無線タグ7tが有る場合には、ステップS22において、i+1番目の無線タグ7tとの通信位置Piを目標位置に設定し、ステップS1に戻る。逆に、ステップS22において、i+1番目の無線タグ7tが無い場合(i+1>N)には、ステップS9に移り、移動体8を例えば格納庫などに帰還させた後、フローを終了する。
【0083】
他方、ステップS2において通信が成功しない場合(失敗時)には、ステップS3において、i番目の無線タグ7tに対する通信失敗回数が規定回数Tより小さいか否かを確認する。そして、通信失敗回数≧Tである場合には、ステップS31においてリーダ8rの異常診断を実行する。その結果、リーダ8rに異常がない場合には、上述したステップS21に移る。つまり、i番目の無線タグ7tとの通信を断念し、次の無線タグ7tとの通信のための制御を行う。逆にリーダ8rに異常が有ると判定された場合には、上述したステップS9を実行した後、フローを終了する。また、ステップS3において、通信失敗回数<Tである場合にはステップS4に移る。
【0084】
このステップS4では、UGV8vに搭載されたLiDARを用いて、その場から移動せずに、既に説明した障害物Bの検出動作を実行すると共に、これよって得られる障害物Bの検出結果(周辺物体形状情報)を取得し(第2取得ステップ)、現在有しているエリア形状情報Fと比較することで、現在の通信位置Piと通信対象の無線タグ7tとの間やその無線タグ7tの周辺での形状変化の有無を判定する(形状変更判定ステップ)。
【0085】
この結果、形状変更がある場合には、ステップS5において、障害物Bの検出結果における形状変化の部分の詳細探索や解析を実施するなどして、既存のエリア形状情報Fを更新し、新たなエリア形状情報F(更新後のエリア形状情報F´)を得る。ステップS6において、更新後のエリア形状情報F´と、各無線タグ7tの設置位置情報Cと、各無線タグ7tの電波情報Wとに基づいて電波伝搬特性シミュレーションを実行し、新たな電波強度マップMを生成(更新)する(マップ生成ステップ)。ステップS7において、この新たな電波強度マップMを用いて新たな通信ポイントPを決定し(取得ステップ、決定ステップ)、次の通信ポイントP(通信位置Pi以外が変更)として設定した後、ステップS2に戻る。この場合の新たな通信ポイントPは、通信位置Pi以外が変更されたものであり、この新たな通信ポイントPでリーダ8rによる読取操作を実行する。逆に、ステップS4の結果、形状変更が無い場合には、ステップS8においてi番目の無線タグ7tに関する候補ポイントPcを次の通信ポイントPに設定し、ステップS2に戻る。この場合には、候補ポイントPcに応じて通信位置Piが変更する場合もあれば、変更しない場合もある。変更する場合にはUGV8vは新たな通信位置Piに移動したのち、ステップS2を実行する。なお、ステップS8において、上述した候補ポイントPcが予め決定されていない場合には、任意のロジックで新たな通信ポイントPを決めても良い。
【0086】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0087】
(付記)
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る通信ポイント決定装置(1)は、
電波の伝搬を障害する障害物(B)を含む対象エリア内に設置された無線器(7)に対して近距離無線通信を行う移動体(8)の位置である通信位置(Pi)を含む通信ポイント(P)を決定する通信ポイント決定装置(1)であって、
前記対象エリア内に存在する前記障害物(B)の外形に基づいて作成された前記対象エリアのエリア形状情報(F)、前記対象エリア内における前記無線器(7)の設置位置情報(C)、および前記無線器(7)の電波の送信または応答に関する電波情報(W)に基づく数値解析により得られる、前記対象エリア内での電波強度の分布を示す電波強度マップ(M)を取得するよう構成された第1取得部(2)と、
前記電波強度マップ(M)に基づいて前記通信ポイント(P)を決定するよう構成された決定部(3)と、を備える。
【0088】
上記(1)の構成によれば、例えばプラントなどの対象エリア内に設置された複数のセンサ(9)などの設置機器は、その検出結果(D)などの通信データ(V)を外部へ送信可能な無線器(7)にそれぞれ接続されている。そして、通信ポイント決定装置(1)は、各無線器(7)と近距離無線通信を行う通信位置(Pi)を含む通信ポイント(P)を、対象エリア内に存在している障害物(B)の存在を考慮して作成された、各無線器(7)からの電波の強度の分布を示す電波強度マップ(M)に基づいて決定する。これによって、対象エリア内における各無線器(7)との近距離無線通信を行うに際して、その無線器(7)の周辺の障害物(B)による電波遮蔽や反射、回折の影響を考慮して、各無線器(7)との良好な通信が可能な通信ポイント(P)を決定することができる。このように、各無線器(7)との適切な通信ポイント(P)を予め求めておくことによって、無線器(7)と安定した通信を迅速に行うことができる。よって、例えばプラントに設置された複数のセンサ(9)の検出結果(D)を、近距離無線通信が可能な範囲内に移動体(8)などを移動させて通信により収集する場合に、効率良く収集することができる。また、適切な通信ポイント(P)を見つけられずにセンサ(9)から検出結果(D)を収集できないような事態を防止することができる。
【0089】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記通信ポイント(P)での前記近距離無線通信の失敗時における、該通信ポイント(P)の周囲の少なくとも一部の方向に含まれる前記障害物(B)の検出結果(D)を取得するよう構成された第2取得部(51)と、
前記障害物(B)の検出結果(D)に基づいて、検出された前記周囲の形状の、前記エリア形状情報(F)が示す前記周囲の形状からの形状変更の有無を判定するよう構成された形状変更判定部(52)と、をさらに備え、
前記決定部(3)は、前記形状変更が有ると判定された場合には、前記近距離無線通信が失敗した前記通信ポイント(P)に代わる新たな前記通信ポイント(P)を決定するよう構成されている。
【0090】
上記(2)の構成によれば、例えば通信ポイント(P)に実際に移動した移動体(8)と、その通信ポイント(P)での通信対象の無線器(7)との通信が失敗した場合には、既存のエリア形状情報(F)(電波強度マップ(M))に変更がないかをその通信失敗時における周囲の障害物(B)の検出を通して判定すると共に、形状変更が有ると判定された場合には新たな通信ポイント(P)を決定する。これによって、通信の失敗時に、実際に移動体(8)などを移動させつつ通信を試行するなどの試行錯誤をすることなく、通信が成功する可能性が高い新たな通信ポイント(P)を迅速に提供することができる。よって、各無線器(7)との通信を通して、センサ(9)の検出結果(D)などの通信データ(V)の収集が迅速に確実に行えるように図ることができる。
【0091】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記障害物(B)の検出結果(D)に基づいて前記エリア形状情報(F)を更新するよう構成された更新部(53)をさらに備え、
前記決定部(3)は、前記形状変更が有ると判定された場合には、更新後の前記エリア形状情報(F)を用いた前記数値解析により得られる新たな前記電波強度マップ(M)に基づいて、前記新たな通信ポイント(P)を決定するよう構成されている。
【0092】
上記(3)の構成によれば、通信の失敗時において、電波強度マップ(M)の生成に用いたエリア形状情報(F)が有効ではないと判定された場合には、通信の失敗時における周辺の障害物(B)の検出結果(D)に基づいてエリア形状情報(F)を更新すると共に、更新されたエリア形状情報(F)を用いて電波強度マップ(M)を再作成することで得られた新たな電波強度マップ(M)に基づいて、新たな通信ポイント(P)を決定する。これによって、通信対象の無線器(7)との通信が可能な新たな通信ポイント(P)を、実際に移動体(8)などを移動させつつ通信を試行するなどの試行錯誤をして探すようなことをすることなく、提供することができる。
【0093】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)~(3)の構成において、
前記決定部(3)は、
前記電波強度マップ(M)に基づいて、前記無線器(7)に対する複数の候補ポイント(Pc)を選定するよう構成された選定部(31)と、
前記複数の候補ポイント(Pc)の1つを前記通信ポイント(P)として選択するよう構成された選択部(32)と、を有し、
前記選択部(32)は、前記形状変更判定部(52)によって前記形状変更が無いと判定された場合には、前記複数の候補ポイント(Pc)のうちから前記新たな通信ポイント(P)を選択するよう構成されている。
【0094】
上記(4)の構成によれば、通信の失敗時において、既存の電波強度マップ(M)の生成に用いたエリア形状情報(F)に変更が無いと判定された場合には、既存の電波強度マップ(M)に基づいて予め選定されている複数の候補ポイント(Pc)のうちから新たな通信ポイント(P)を選択する。これによって、新たな通信ポイント(P)を迅速に決定することができる。
【0095】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記通信ポイント(P)での前記近距離無線通信が成功した前記通信ポイント(P)を含む通信実績情報(H)を記憶する記憶部(1m)を、さらに備え、
前記選択部(32)は、前記通信実績情報(H)に基づいて、前記通信ポイント(P)を選択するよう構成されている。
【0096】
上記(5)の構成によれば、通信対象の無線器(7)との通信の成功実績を考慮して通信ポイント(P)を選択することで、近距離無線通信の成功確率の向上を図ることができる。
【0097】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)~(5)の構成において、
前記通信ポイント(P)は、前記対象エリアにおける前記通信位置(Pi)と、前記無線器(7)と前記近距離無線通信を行う前記移動体(8)の姿勢、前記移動体(8)における前記無線器(7)との前記近距離無線通信を実行するための搭載無線器(81)の位置、前記搭載無線器(81)が有するアンテナの姿勢または前記アンテナの指向性の少なくとも1つの情報と、で規定される。
【0098】
上記(6)の構成によれば、通信ポイント(P)は、位置情報の他に、無線器(7)との無線通信の品質に影響を与える他の情報とで規定(特定)される。これによって、通信を実行する位置を変えることなく、通信ポイント(P)を変えることができる。
【0099】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る点検システム(6)は、
上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の、電波の伝搬を障害する障害物(B)を含む対象エリア内に設置された無線器(7)に対して近距離無線通信を行う移動体(8)の位置である通信位置(Pi)を含む通信ポイント(P)を決定するよう構成された通信ポイント決定装置(1)と、
前記無線器(7)との前記近距離無線通信を実行するための搭載無線器(81)を有し、決定された前記通信位置(Pi)を通る巡回ルート(R)に沿って移動する前記移動体(8)と、を備える。
【0100】
上記(7)の構成によれば、例えばプラントなどの対象エリア内に設置された複数のセンサ(9)は、その検出結果(D)を外部へ送信可能な無線器(7)にそれぞれ接続されている。そして、点検システム(6)において、移動体(8)は、各無線器(7)と近距離無線通信を行うことが可能な通信ポイント(P)を順番に巡回しつつ、各無線器(7)と近距離無線通信を行うことで、各センサ(9)の検出結果(D)を収集する。上記の通信ポイント(P)は、上述したように対象エリア内の電波の伝搬を障害する障害物(B)の影響を考慮して事前に決定されたものであり、上記の(1)~(5)と同様の効果を奏する。
【0101】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、
前記点検システム(6)は、前記移動体(8)を制御するよう構成された制御装置(61)をさらに備え、
前記移動体(8)は、前記通信ポイント(P)における前記近距離無線通信が失敗した場合に、該通信ポイント(P)の周囲の少なくとも一部の方向に含まれる前記障害物(B)を検出すると共に、前記障害物(B)の検出結果(D)を前記通信ポイント決定装置(1)に送信し、
前記制御装置(61)は、前記通信ポイント決定装置(1)が前記障害物(B)の検出結果(D)の受信に応じて新たな前記通信ポイント(P)を決定した場合には、前記新たな通信ポイント(P)に前記移動体(8)を制御するよう構成されている。
【0102】
上記(8)の構成によれば、通信ポイント(P)での通信の失敗時には、その通信ポイント(P)の周囲の障害物(B)を検出し、その結果を通信ポイント決定装置(1)に送信する。これによって、通信の失敗時に、実際に移動体(8)などを移動させつつ通信を試行するなどの試行錯誤をすることなく、通信が成功する可能性が高い新たな通信ポイント(P)を迅速に提供することができる。よって、上記(2)と同様に、各無線器(7)との通信を通して、センサ(9)の検出結果(D)などの通信データ(V)の収集が迅速に確実に行えるように図ることができる。
【0103】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)~(8)の構成において、
同一の前記無線器(7)に対する前記近距離無線通信の失敗回数が規定回数(T)以上になった場合に、前記搭載無線器(81)の異常診断を実行するよう構成された診断装置(63)を、さらに備え、
前記移動体(8)は、前記異常診断の結果、前記搭載無線器(81)に異常がある場合には、前記通信ポイント(P)以外の予め定めた位置に移動するよう構成されている。
【0104】
上記(9)の構成によれば、同一の無線器(7)に対する通信の失敗が規定回数(T)以上になった場合には、移動体(8)に搭載している搭載無線器(81)の異常を診断し、異常がある場合には例えば移動体(8)の格納庫などに移動体(8)を帰還させるなどする。これによって、移動体(8)が有する搭載無線器(81)の異常によって通信不能となっている場合に、対象エリアの点検を継続するような無駄を防止することができる。
【0105】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る通信ポイント決定方法は、
電波の伝搬を障害する障害物(B)を含む対象エリア内に設置された無線器(7)に対して近距離無線通信を行う移動体(8)の位置である通信位置(Pi)を含む通信ポイント(P)を決定する通信ポイント決定方法であって、
前記対象エリア内に存在する前記障害物(B)の外形に基づいて作成された前記対象エリアのエリア形状情報(F)、前記対象エリア内における前記無線器(7)の設置位置情報(C)、および前記無線器(7)の電波の送信または応答に関する電波情報(W)に基づく数値解析により得られる、前記対象エリア内での電波強度の分布を示す電波強度マップ(M)を取得するステップと、
前記電波強度マップ(M)に基づいて前記通信ポイント(P)を決定するステップと、を備える。
上記(10)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【0106】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る通信ポイント決定プログラム(10)は、
電波の伝搬を障害する障害物(B)を含む対象エリア内に設置された無線器(7)に対して近距離無線通信を行う移動体(8)の位置である通信位置(Pi)を含む通信ポイント(P)を決定するプログラムであって、
コンピュータに、
前記対象エリア内に存在する前記障害物(B)の外形に基づいて作成された前記対象エリアのエリア形状情報(F)、前記対象エリア内における前記無線器(7)の設置位置情報(C)、および前記無線器(7)の電波の送信または応答に関する電波情報(W)に基づく数値解析により得られる、前記対象エリア内での電波強度の分布を示す電波強度マップ(M)を取得するよう構成された第1取得部(2)と、
前記電波強度マップ(M)に基づいて前記通信ポイント(P)を決定するよう構成された決定部(3)と、を実現させるためのプログラムである。
上記(11)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0107】
1 通信ポイント決定装置
1p プロセッサ
1m 記憶部
10 通信ポイント決定プログラム
12 マップ生成部
2 第1取得部
3 決定部
31 選定部
32 選択部
33 実績記憶部
4 ルート決定部
51 第2取得部
52 形状変更判定部
53 更新部
6 点検システム
61 制御装置
63 診断装置
7 無線器
7t 無線タグ
8 移動体
8v UGV
81 搭載無線器
8r リーダ(RFIDリーダライタ)
9 センサ
9b 基地局(無線親機)
92 変換器
B 障害物
C 設置位置情報
D 検出結果
F エリア形状情報
F´ 更新後のエリア形状情報
H 通信実績情報
L 通信限界ライン
M 電波強度マップ
N 通信ネットワーク
P 通信ポイント
Pc 候補ポイント
Pf 失敗ポイント
Pi 通信位置
R 巡回ルート
T 規定回数
V 通信データ
W 電波情報