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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20231215BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231215BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/304 646
H01L21/304 643A
H01L21/304 648A
H01L21/304 648G
H01L21/304 647Z
H01L21/304 651B
H01L21/68 N
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020055992
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158188
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】澤崎 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】脇田 明日香
(72)【発明者】
【氏名】太田 喬
(72)【発明者】
【氏名】林 昌之
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046062(JP,A)
【文献】特開2015-119128(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044548(WO,A1)
【文献】特開2020-102567(JP,A)
【文献】特開2008-016660(JP,A)
【文献】特開2017-183389(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017489(WO,A1)
【文献】特開2015-032781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャックピンで基板の周縁を保持する保持工程と、
前記基板の表面電位を測定する電位測定工程と、
前記チャックピンによって保持された前記基板の主面に垂直な回転軸のまわりで、前記基板を回転させる回転工程と、
回転中の前記基板の前記主面に薬液を供給する薬液工程と、
前記薬液工程の後に、前記チャックピンによって保持された前記基板と接地との間の導通経路の抵抗値を低減させる抵抗値変更工程と、
前記導通経路の抵抗値が低減した状態で、回転中の前記基板の前記主面にリンス液を供給するリンス工程と
を備える、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記電位測定工程において測定された前記表面電位が基準値以上であるときに実行され、回転中の前記基板の前記主面に除電液を供給する除電工程をさらに備える、基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記薬液は、SPMまたはフッ酸を含む、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記薬液工程では、前記チャックピンのうち複数の第1チャックピンで前記基板を保持し、
前記抵抗値変更工程では、前記基板を保持する前記チャックピンを、前記第1チャックピンから、前記第1チャックピンよりも抵抗値の小さい複数の第2チャックピンに切り替える、基板処理方法。
【請求項5】
請求項に記載の基板処理方法であって、
前記第1チャックピンの抵抗値は1MΩ以上であり、前記第2チャックピンの抵抗値は10Ω以下である、基板処理方法。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記薬液工程では、前記チャックピンと接地との間の可変抵抗の抵抗値を第1抵抗値とし、
前記抵抗値変更工程では、前記可変抵抗の抵抗値を前記第1抵抗値よりも小さい第2抵抗値に低減する、基板処理方法。
【請求項7】
複数のチャックピンで基板の周縁を保持する保持工程と、
前記チャックピンによって保持された前記基板の主面に垂直な回転軸のまわりで、前記基板を回転させる回転工程と、
回転中の前記基板の前記主面に薬液を供給する薬液工程と、
前記薬液工程の後に、前記チャックピンによって保持された前記基板と接地との間の導通経路の抵抗値を低減させる抵抗値変更工程と、
前記導通経路の抵抗値が低減した状態で、回転中の前記基板の前記主面にリンス液を供給するリンス工程と
を備え、
前記薬液工程よりも前に、前記チャックピンによって保持された前記基板に除電液を供給する除電工程をさらに備える、基板処理方法。
【請求項8】
請求項に記載の基板処理方法であって、
前記導通経路の抵抗値を前記リンス工程での前記導通経路の抵抗値よりも高くした状態で、前記除電工程を開始する、基板処理方法。
【請求項9】
請求項に記載の基板処理方法であって、
前記除電工程の途中で、前記導通経路の抵抗値を低減する、基板処理方法。
【請求項10】
請求項に記載の基板処理方法であって、
前記除電工程と並行して実行され、前記導通経路を流れる電流を測定する電流測定工程をさらに備え、
前記除電工程において、前記電流が第2電流基準値を下回ったときに、前記導通経路の抵抗値を低減する、基板処理方法。
【請求項11】
請求項から請求項のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記除電工程よりも前に、前記基板の表面電位を測定する電位測定工程をさらに備え、
前記表面電位が電位基準値よりも大きいときに、前記除電工程における前記導通経路の抵抗値を第3抵抗値に決定し、前記表面電位が前記電位基準値よりも小さいときに、前記除電工程における前記導通経路の抵抗値を前記第3抵抗値よりも低い第4抵抗値に決定する工程
をさらに備える、基板処理方法。
【請求項12】
請求項から請求項のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記除電工程よりも前に、前記基板の表面電位を測定する電位測定工程をさらに備え、
前記表面電位が電位基準値よりも大きいときに、前記除電工程において前記除電液として、第1除電液を供給し、前記表面電位が前記電位基準値よりも小さいときに、前記除電工程において前記除電液として、前記第1除電液よりも比抵抗値の低い第2除電液を供給する工程
をさらに備える、基板処理方法。
【請求項13】
請求項から請求項および請求項11のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記除電工程において、前記除電液として第1除電液を供給した後に、前記除電液として前記第1除電液よりも比抵抗値の低い第2除電液を前記基板に供給する、基板処理方法。
【請求項14】
請求項13に記載の基板処理方法であって、
前記除電工程と並行して実行され、前記導通経路を流れる電流を測定する電流測定工程をさらに備え、
前記除電工程において、前記電流が電流基準値を下回ったときに、前記第1除電液の供給を停止し、前記第2除電液の供給を開始する、基板処理方法。
【請求項15】
請求項から請求項、請求項11から請求項13のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記除電工程と並行して実行され、前記導通経路を流れる電流を測定する電流測定工程をさらに備え、
前記除電工程において、前記電流が電流基準値を下回ったときに、前記除電液の供給を終了する、基板処理方法。
【請求項16】
請求項から請求項15のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記除電工程の前に、前記基板に対してドライエッチングを行うドライ工程をさらに備える、基板処理方法。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記基板の主面ではシリコンが露出している、基板処理方法。
【請求項18】
基板処理装置であって、
基板の周縁に当接して前記基板を保持する保持位置、および、前記基板の周縁から離れて前記基板の保持を解除する解除位置の間を移動する複数の第1チャックピンと、前記第1チャックピンよりも小さい抵抗値を有し、前記基板の周縁に当接して前記基板を保持する保持位置、および、前記基板の周縁から離れて前記基板の保持を解除する解除位置の間を移動する複数の第2チャックピンとを含む基板保持部と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に垂直な回転軸のまわりで前記基板保持部を回転させる回転機構と、
前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンを独立して駆動するチャック駆動部と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に薬液を供給する薬液ノズルと、
前記基板保持部によって保持された前記基板の主面にリンス液を供給するリンスノズルと
前記基板の表面電位を計測する表面電位センサと、
前記基板の前記主面に除電液を供給するか否かを、前記表面電位センサによって測定された前記表面電位に基づいて、判断する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記第1チャックピンで前記基板を保持した状態で前記薬液ノズルから前記基板の前記主面に前記薬液を供給させ、前記第2チャックピンで前記基板を保持した状態で前記リンスノズルから前記リンス液を前記基板の前記主面に供給させる、基板処理装置。
【請求項19】
請求項18に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に除電液を供給する除電ノズルと、
前記基板保持部と接地との間の導通経路を流れる電流を測定する電流センサと
をさらに備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板に処理液を供給して、当該処理液に基づいた処理を基板に対して行う基板処理装置が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、基板処理装置は、保持部と、導通経路部と、接地部と、可変抵抗部と、供給部とを含む。保持部は導電し得を有しており、基板を保持する。導通経路部は保持部と接地部との間に設けられ、これらと接触する。可変抵抗部は接地部に設けられる。供給部は、保持部によって保持された基板に対して処理液を供給する。
【0003】
特許文献1では、処理液が帯電している場合に処理液と基板との間に大きな電流が流れることを問題としている。具体的には、当該処理液が基板に着液した瞬間に、処理液から基板および導通経路部をこの順に経由して接地部に大電流が流れて、基板に放電が生じることを問題としている。
【0004】
この問題を解決すべく、特許文献1では、基板に対して処理液の供給が開始されてからの所定期間、可変抵抗部の抵抗値を、その後の他の期間よりも高くする。これにより、所定期間において、処理液から基板および導通経路部を介して接地部に電流を流れにくくし、放電の発生を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-183389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1は、基板および接地部の間の経路の抵抗値と、帯電した処理液から基板に流れる電流との関係について考察し、所定期間における当該抵抗値を高めることで、当該電流を低減している。しかしながら、特許文献1では、当該抵抗値と、処理液による基板の面内ばらつきとの関係についてはなんら考察していない。
【0007】
基板に対する処理は種々の処理があり、その一例として、基板の酸化膜をエッチングするエッチング処理が挙げられる。酸化膜をエッチングする薬液としては、例えば、希フッ酸を採用することができる。この希フッ酸を基板の主面に供給することにより、基板の主面に形成された酸化膜をエッチングすることができる。
【0008】
ここで、基板を、複数のチャックピンによって保持することを想定する。複数のチャックピンは、基板の周縁に沿って等間隔に配列されており、基板の周縁に当接して当該基板を保持する。複数のチャックピンは低抵抗材料で構成されており、複数のチャックピンによって保持された基板と、接地部との間の経路の抵抗値は高い。具体的には、当該導通経路の抵抗値は、チャックピンが高抵抗材料で構成される場合に比べて、低くなる。
【0009】
この場合、基板の主面のうちチャックピン付近の第1領域と、チャックピンから離れた第2領域(例えば基板の中央領域)との間で、エッチング速度の差が見受けられた。具体的には、第1領域におけるエッチング速度が第2領域におけるエッチング速度よりも高くなった。つまり、基板の主面に対するエッチングの面内ばらつきが大きくなった。
【0010】
また、基板に対する処理の一例として、シリコン基板に化学的酸化膜を形成する処理も挙げられる。シリコンに化学的酸化膜をつける薬液として、硫酸および過酸化水素水の混合液(SPM)を採用する場合もある。この場合、当該経路の抵抗値が低いと、基板の主面の第1領域と第2領域との間で、酸化膜の形成速度に差異が生じ得る。具体的には、第1領域の酸化膜の形成速度が第2領域の酸化膜の形成速度よりも高く、第1領域の酸化膜の膜厚が第2領域の酸化膜の膜厚に比べて厚くなる。つまり、基板の主面に対する膜厚の面内ばらつきが大きくなった。
【0011】
以上のように、当該経路の抵抗値が低いと、基板の主面に対する処理の程度の面内ばらつきが大きくなった。なお、当該経路の抵抗値が低いことに起因した処理の面内ばらつきは、上述の薬液に限らず、他の薬液でも生じ得る。
【0012】
また、薬液処理の後には、薬液を洗い流すリンス処理が行われる。リンス処理では、リンス液を基板の主面に供給して、基板の主面上の薬液をリンス液で洗い流す。その後、基板を乾燥させる。当該経路の抵抗値が高い場合、リンス処理において、リンス液と基板との摩擦等により、基板が帯電する可能性がある。基板が帯電すると、基板の乾燥後の種々の工程で不具合を生じさせる可能性があった。
【0013】
そこで、本願では、高い面内均一性で薬液工程を行いつつ、その後のリンス工程での基板の帯電を低減できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
基板処理方法の第1の態様は、複数のチャックピンで基板の周縁を保持する保持工程と、前記基板の表面電位を測定する電位測定工程と、前記チャックピンによって保持された前記基板の主面に垂直な回転軸のまわりで、前記基板を回転させる回転工程と、回転中の前記基板の前記主面に薬液を供給する薬液工程と、前記薬液工程の後に、前記チャックピンによって保持された前記基板と接地との間の導通経路の抵抗値を低減させる抵抗値変更工程と、前記導通経路の抵抗値が低減した状態で、回転中の前記基板の前記主面にリンス液を供給するリンス工程とを備える。
基板処理方法の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記電位測定工程において測定された前記表面電位が基準値以上であるときに実行され、回転中の前記基板の前記主面に除電液を供給する除電工程をさらに備える。
【0015】
基板処理方法の第の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記薬液は、SPMまたはフッ酸を含む。
【0016】
基板処理方法の第の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記薬液工程では、前記チャックピンのうち複数の第1チャックピンで前記基板を保持し、前記抵抗値変更工程では、前記基板を保持する前記チャックピンを、前記第1チャックピンから、前記第1チャックピンよりも抵抗値の小さい複数の第2チャックピンに切り替える。
【0017】
基板処理方法の第の態様は、第の態様にかかる基板処理方法であって、前記第1チャックピンの抵抗値は1MΩ以上であり、前記第2チャックピンの抵抗値は10Ω以下である。
【0018】
基板処理方法の第の態様は、第1から第のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記薬液工程では、前記チャックピンと接地との間の可変抵抗の抵抗値を第1抵抗値とし、前記抵抗値変更工程では、前記可変抵抗の抵抗値を前記第1抵抗値よりも小さい第2抵抗値に低減する。
【0019】
基板処理方法の第の態様は、複数のチャックピンで基板の周縁を保持する保持工程と、前記チャックピンによって保持された前記基板の主面に垂直な回転軸のまわりで、前記基板を回転させる回転工程と、回転中の前記基板の前記主面に薬液を供給する薬液工程と、前記薬液工程の後に、前記チャックピンによって保持された前記基板と接地との間の導通経路の抵抗値を低減させる抵抗値変更工程と、前記導通経路の抵抗値が低減した状態で、回転中の前記基板の前記主面にリンス液を供給するリンス工程とを備え、前記薬液工程よりも前に、前記チャックピンによって保持された前記基板に除電液を供給する除電工程をさらに備える。
【0020】
基板処理方法の第の態様は、第の態様にかかる基板処理方法であって、前記導通経路の抵抗値を前記リンス工程での前記導通経路の抵抗値よりも高くした状態で、前記除電工程を開始する。
【0021】
基板処理方法の第の態様は、第の態様にかかる基板処理方法であって、前記除電工程の途中で、前記導通経路の抵抗値を低減する。
【0022】
基板処理方法の第10の態様は、第の態様にかかる基板処理方法であって、前記除電工程と並行して実行され、前記導通経路を流れる電流を測定する電流測定工程をさらに備え、前記除電工程において、前記電流が第2電流基準値を下回ったときに、前記導通経路の抵抗値を低減する。
【0023】
基板処理方法の第11の態様は、第から第のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記除電工程よりも前に、前記基板の表面電位を測定する電位測定工程をさらに備え、前記表面電位が電位基準値よりも大きいときに、前記除電工程における前記導通経路の抵抗値を第3抵抗値に決定し、前記表面電位が前記電位基準値よりも小さいときに、前記除電工程における前記導通経路の抵抗値を前記第3抵抗値よりも低い第4抵抗値に決定する工程をさらに備える。
【0024】
基板処理方法の第12の態様は、第から第のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記除電工程よりも前に、前記基板の表面電位を測定する電位測定工程をさらに備え、前記表面電位が電位基準値よりも大きいときに、前記除電工程において前記除電液として、第1除電液を供給し、前記表面電位が前記電位基準値よりも小さいときに、前記除電工程において前記除電液として、前記第1除電液よりも比抵抗値の低い第2除電液を供給する工程をさらに備える。
【0025】
基板処理方法の第13の態様は、第から第および第11のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記除電工程において、前記除電液として第1除電液を供給した後に、前記除電液として前記第1除電液よりも比抵抗値の低い第2除電液を前記基板に供給する。
【0026】
基板処理方法の第14の態様は、第13の態様にかかる基板処理方法であって、前記除電工程と並行して実行され、前記導通経路を流れる電流を測定する電流測定工程をさらに備え、前記除電工程において、前記電流が電流基準値を下回ったときに、前記第1除電液の供給を停止し、前記第2除電液の供給を開始する。
【0027】
基板処理方法の第15の態様は、第から第、第11から第13のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記除電工程と並行して実行され、前記導通経路を流れる電流を測定する電流測定工程をさらに備え、前記除電工程において、前記電流が電流基準値を下回ったときに、前記除電液の供給を終了する。
【0028】
基板処理方法の第16の態様は、第から第15のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記除電工程の前に、前記基板に対してドライエッチングを行うドライ工程をさらに備える。
【0029】
基板処理方法の第17の態様は、第1から第16のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記基板の主面ではシリコンが露出している。
【0030】
基板処理装置の第1の態様は、基板処理装置であって、基板の周縁に当接して前記基板を保持する保持位置、および、前記基板の周縁から離れて前記基板の保持を解除する解除位置の間を移動する複数の第1チャックピンと、前記第1チャックピンよりも小さい抵抗値を有し、前記基板の周縁に当接して前記基板を保持する保持位置、および、前記基板の周縁から離れて前記基板の保持を解除する解除位置の間を移動する複数の第2チャックピンとを含む基板保持部と、前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に垂直な回転軸のまわりで前記基板保持部を回転させる回転機構と、前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンを独立して駆動するチャック駆動部と、前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に薬液を供給する薬液ノズルと、前記基板保持部によって保持された前記基板の主面にリンス液を供給するリンスノズルと、前記基板の表面電位を計測する表面電位センサと、前記基板の前記主面に除電液を供給するか否かを、前記表面電位センサによって測定された前記表面電位に基づいて、判断する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1チャックピンで前記基板を保持した状態で前記薬液ノズルから前記基板の前記主面に前記薬液を供給させ、前記第2チャックピンで前記基板を保持した状態で前記リンスノズルから前記リンス液を前記基板の前記主面に供給させる
【0031】
基板処理装置の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理装置であって、前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に除電液を供給する除電ノズルと、前記基板保持部と接地との間の導通経路を流れる電流を測定する電流センサとをさらに備える。
【発明の効果】
【0032】
基板処理方法の第1から第3の態様および第17の態様によれば、導通経路の抵抗値が高い状態で、基板の主面に薬液を供給する。よって、導通経路の抵抗値が低いことに起因した薬液工程の面内ばらつきを低減できる。また、導通経路の抵抗値が低い状態で、基板の主面にリンス液を供給する。よって、基板とリンス液との摩擦等による基板の帯電を低減できる。
【0033】
基板処理方法の第および第の態様によれば、簡単な構成で、基板保持部と接地との間の抵抗値を変更できる。
【0034】
基板処理方法の第の態様によれば、可変抵抗を用いているので、導通経路の抵抗値を細かく調整できる。
【0035】
基板処理方法の第の態様によれば、薬液を供給する前に基板を除電できる。よって、基板の帯電に起因した薬液と基板との間の大電流を低減または回避できる。
【0036】
基板処理方法の第の態様によれば、基板の帯電量が大きくても、除電液と基板との間の電流を低減しつつ、基板を除電できる。
【0037】
基板処理方法の第の態様によれば、除電工程の初期では、導通経路の抵抗値は高い。よって、基板と導通経路との間の大電流を低減または回避しつつ、基板を徐々に除電できる。一方で、基板がある程度除電された除電工程の後期では、導通経路の抵抗値を低減しても、初期ほど大電流は流れない。よって、除電工程の後期では、導通経路の抵抗値を低減する。これにより、基板の除電速度を向上できる。
【0038】
基板処理方法の第10の態様によれば、基板の帯電量を反映する電流に基づいて、導通経路の抵抗値を低減するタイミングが決定される。よって、より確実に、導通経路の抵抗値を低減しても大電流が流れない程度まで帯電量が小さくなった状態で、導通経路の抵抗値を低減できる。
【0039】
基板処理方法の第11の態様によれば、基板の薬液工程前に基板の帯電量を測定し、その帯電量に応じて、除電工程での導通経路の抵抗値を決定している。これによれば、帯電量が大きいときには、導通経路の抵抗値が高い状態で基板を除電でき、より確実に基板のダメージを低減または回避できる。一方で、帯電量が小さいときには、導通経路の抵抗値が低い状態で基板を除電でき、より確実に基板のダメージを低減または回避しつつ、より速やかに基板を除電できる。
【0040】
基板処理方法の第12の態様によれば、基板の薬液工程前に基板の帯電量を測定し、その帯電量に応じて、除電工程での除電液を決定している。これによれば、帯電量が大きいときには、比抵抗値が高い第1除電液で基板を除電でき、より確実に基板のダメージを低減または回避できる。一方で、帯電量が小さいときには、比抵抗値が低い第2除電液で基板を除電でき、より確実に基板のダメージを低減または回避しつつ、より速やかに基板を除電できる。
【0041】
基板処理方法の第13の態様によれば、除電工程の初期では、比抵抗値の高い第1除電液が供給される。よって、処理液と基板と間の大電流を低減または回避しつつ、基板を徐々に除電できる。一方で、基板がある程度除電された除電工程の後期では、比抵抗値の低い第2除電液を供給しても、初期ほど大電流は流れない。よって、除電工程の後期では、第2除電液を供給する。これにより、基板の除電速度を向上できる。
【0042】
基板処理方法の第14の態様によれば、基板の帯電量を反映する電流に基づいて、除電液を切り替えるタイミングが決定される。よって、より確実に、比抵抗値の小さい第2除電液を供給しても大電流が生じない程度まで帯電量が小さくなった状態で、除電液を第2除電液に切り替えることができる。
【0043】
基板処理方法の第15の態様によれば、基板の帯電量を反映する電流に基づいて、除電工程を終了するタイミングが決定される。よって、より確実に、帯電量が小さくなった状態で除電工程を終了できる。
【0044】
基板処理方法の第16の態様によれば、基板が帯電する。
【0045】
基板処理装置の第1の態様によれば、基板を保持するチャックピンと接地との間の抵抗値を切り替えることができる。
【0046】
基板処理装置の第2の態様によれば、電流測定により、間接的に基板の帯電量を測定することができる。
【0047】
本願明細書に開示される技術に関する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】基板処理システムの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図2】基板処理装置の構成の一例を概略的に示す図である。
図3】基板保持部の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図4】基板保持部の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図5】制御部の構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
図6】基板処理装置の動作の一例(第1基板処理)を示すフローチャートである。
図7】各工程に応じた導通経路の抵抗値の一例を示すグラフである。
図8】基板処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。
図9】基板処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。
図10】基板処理装置の動作の他の一例(第2基板処理)を示すフローチャートである。
図11】各工程に応じた導通経路の抵抗値の一例を示すグラフである。
図12】基板処理装置の動作の他の一例(第3基板処理)を示すフローチャートである。
図13】各工程に応じた導通経路の抵抗値の一例を示すグラフである。
図14】基板処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。
図15】除電工程の一例を概略的に示すフローチャートである。
図16】基板処理装置の動作の他の一例を示すフローチャートである。
図17】第4基板処理の動作の他の一例を示すフローチャートである。
図18】各工程に応じた導通経路の抵抗値の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0050】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0051】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0052】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCのすべてを含む。
【0053】
<基板処理システムの概略構成>
図1は、基板洗浄装置として機能する基板処理システム100の構成の一例を概略的に示す平面図である。図1で示されるように、基板処理システム100は、例えば、基板の一例としての半導体基板(ウエハ)9の表面に付着した有機系のゴミを除去する処理に用いることができる枚葉式の装置である。有機系のゴミとしては、例えば、基板9の表面に不純物を注入するイオン注入処理等の後において基板9の表面に残っている不要になったレジスト、あるいは基板9の表面のうちの外周部の近傍に付着しているレジスト等に由来する有機系のゴミ等、が含まれる。
【0054】
基板処理システム100は、収容器としての複数のキャリアCを保持する収容器保持機構としてのロードポートLPと、基板9を処理する複数(この実施の形態では、12台)の処理ユニット110とを含む。具体的には、例えば、平面的に配置されている4台の処理ユニット110でそれぞれ構成されている3組の処理ユニット110が、鉛直方向に積層するように配置されている。
【0055】
基板処理システム100は、さらに、例えば、インデクサロボットIRと、センターロボットCRと、制御部6とを含む。インデクサロボットIRは、例えば、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板9を搬送することができる。センターロボットCRは、例えば、インデクサロボットIRと各処理ユニット110との間で基板9を搬送することができる。制御部6は、例えば、基板処理システム100に備えられた各部の動作およびバルブの開閉等を制御することができる。
【0056】
ここでは、図1で示されるように、ロードポートLPと各処理ユニット110とは、水平方向に間隔を空けて配置されている。ロードポートLPにおいて、複数枚の基板9を収容する複数のキャリアCは、平面視したときに水平な配列方向Dに沿って配列されている。ロードポートLPは、基板9を搬入する搬入部として機能する。ここで、インデクサロボットIRは、例えば、キャリアCから基板載置部PASSに複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができるとともに、基板載置部PASSからキャリアCに複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができる。基板載置部PASSは、基板9を載置する載置台を含む。
【0057】
センターロボットCRは、例えば、基板載置部PASSから各処理ユニット110に複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができるとともに、各処理ユニット110から基板載置部PASSに複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができる。また、例えば、センターロボットCRは、必要に応じて複数の処理ユニット110の間において基板9を搬送することができる。インデクサロボットIR、基板載置部PASSおよびセンターロボットCRは、基板9を搬入部(ロードポートLP)から受け取り、処理ユニット110に受け渡す基板受渡部として機能する。
【0058】
図1の例では、インデクサロボットIRは、平面視U字状のハンドHを有している。ここでは、インデクサロボットIRは2つのハンドHを有する。2つのハンドHは、互いに異なる高さに配置される。各ハンドHは基板9を水平な姿勢で支持することができる。インデクサロボットIRはハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させることができる。さらに、インデクサロボットIRは、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することで、ハンドHの向きを変更することができる。インデクサロボットIRは、受渡位置(図1でインデクサロボットIRが描かれている位置)を通る経路において配列方向Dに沿って移動する。受渡位置は、平面視したときにインデクサロボットIRと基板載置部PASSとが配列方向Dに直交する方向において対向する位置である。インデクサロボットIRは、任意のキャリアCおよび基板載置部PASSにそれぞれハンドHを対向させることができる。ここで、例えば、インデクサロボットIRはハンドHを移動させることにより、キャリアCに基板9を搬入する搬入動作と、キャリアCから基板9を搬出する搬出動作とを行うことができる。また、例えば、インデクサロボットIRは受渡位置においてハンドHを移動させることにより、基板載置部PASSに基板9を搬入する搬入動作と、基板載置部PASSら基板9を搬出する搬出動作とを行うことができる。
【0059】
図1の例では、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと同様に、平面視U字状のハンドHを有している。ここでは、センターロボットCRは2つのハンドHを有する。2つのハンドHは、互いに異なる高さに配置される。各ハンドHは基板9を水平な姿勢で支持することができる。センターロボットCRは各ハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させることができる。さらに、センターロボットCRは、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することで、ハンドHの向きを変更することができる。センターロボットCRは、平面視したときに、複数台の処理ユニット110に取り囲まれている。センターロボットCRは、任意の処理ユニット110および基板載置部PASSのいずれかにハンドHを対向させることができる。ここで、例えば、センターロボットCRはハンドHを移動させることにより、各処理ユニット110に基板9を搬入する搬入動作と、各処理ユニット110から基板9を搬出する搬出動作とを行うことができる。また、例えば、センターロボットCRはハンドHを移動させることにより、基板載置部PASSに基板9を搬入する搬入動作と、基板載置部PASSら基板9を搬出する搬出動作とを行うことができる。
【0060】
未処理の基板9はキャリアCからインデクサロボットIRによって取り出され、基板載置部PASSを経由してセンターロボットCRに受け渡される。センターロボットCRはこの未処理の基板9を処理ユニット110に搬入する。処理ユニット110は基板9に対して処理を行う。処理済みの基板9はセンターロボットCRによって処理ユニット110から取り出され、必要に応じて他の処理ユニット110を経由した上で、基板載置部PASSを介してインデクサロボットIRに受け渡される。インデクサロボットIRは処理済みの基板9をキャリアCに搬入する。以上により、基板9に対する処理が行われる。
【0061】
<第1の実施の形態>
<基板処理装置>
図2は、上記処理ユニット110の一つに相当する基板処理装置1の構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1は、基板9を一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板9は、例えば、シリコン基板であり、円板形状を有している。基板処理装置1は、基板9を保持し、基板9に対して種々の処理液を順次に供給して、当該処理液に応じた処理を基板9に対して行う。
【0062】
基板処理装置1は、基板保持部2と、基板回転機構3と、処理液供給部4と、抵抗値変更機構5とを含む。基板保持部2、基板回転機構3および抵抗値変更機構5は、箱状のチャンバ内に収容される。当該チャンバは、およそ密閉された内部空間を形成する。
【0063】
基板保持部2は基板9を水平姿勢で保持する。ここでいう水平姿勢とは、基板9の厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。以下では、基板9の両主面のうち、基板保持部2によって保持された状態で上側を向く主面を上面とも呼び、下側を向く主面を下面とも呼ぶ。
【0064】
基板回転機構3は回転軸J1のまわりで基板保持部2を回転させる。回転軸J1は、基板保持部2によって保持された基板9の中央部を通り、鉛直方向に沿って延在する軸である。基板回転機構3が基板保持部2を回転させることにより、基板保持部2によって保持された基板9も回転軸J1のまわりで回転する。
【0065】
処理液供給部4は、回転中の基板9の主面に処理液を供給する。例えば処理液供給部4は基板9の中央部に向かって処理液を供給する。基板9の中央部に着液した処理液は、基板9の回転に伴う遠心力を受けて、基板9の当該主面の全面に広がって基板9の周縁から外側に飛散する。これにより、処理液が基板9の主面に作用し、処理液の種類に基づく処理を基板9に対して行うことができる。例えば、処理液が除電液である場合には、基板9を除電することができ、処理液がエッチング液である場合には、基板9の主面をエッチングすることができる。
【0066】
抵抗値変更機構5は、基板保持部2と接地部材(不図示)との間の電気的な抵抗値を変更する機構である。当該抵抗値が低い場合には、基板9に生じた電荷は基板保持部2を介して接地部材と流れやすい。一方で、当該抵抗値が高い場合には、基板9に生じた電荷は接地部材に流れにくい。
【0067】
<基板保持部2>
基板保持部2は複数のチャックピン22を含んでいる。複数のチャックピン22は平面視において、基板9の周縁に沿って配列されており、例えば等間隔に配置される。各チャックピン22は、基板9の周縁に当接する保持位置と、基板9の周縁から離れた解除位置との間で移動する。複数のチャックピン22は、それぞれの保持位置で停止することにより、基板9の周縁を水平姿勢で保持する。複数のチャックピン22は、それぞれの保持位置から解除位置へ移動することにより、基板9の保持を解除する。
【0068】
図2の例では、基板保持部2は対向板部21を含んでいる。対向板部21は、例えば、回転軸J1を中心とする円板形状を有する。基板保持部2は対向板部21よりも上側において基板9を保持しており、対向板部21の上側を向く面は、基板9の下面に対向する対向面211である。対向面211は回転軸J1に垂直な方向に広がる。対向面211の外周縁は基板9よりも外側に位置している。言い換えれば、対向面211の径は基板9の径よりも大きい。
【0069】
複数のチャックピン22は、基板9の周縁に沿って並んで配列される。具体的には、複数のチャックピン22が、基板9よりも僅かに大きな径を有する基準円に沿って略等間隔で配列されている。例えば、6つのチャックピン22が60度間隔で配列される。
【0070】
対向面211には、複数の穴部213が設けられる。鉛直方向に垂直な穴部213の断面形状は、円形である。具体的な一例として、6つの穴部213が60度間隔で配列される。複数のチャックピン22は複数の穴部213にそれぞれ挿入される。穴部213にはベアリング214が設けられており、穴部213の回動軸J2を中心として、チャックピン22がベアリング214によって、対向板部21に対して回動可能に支持される。以下の説明では、回動軸J2を「チャック回動軸J2」という。基板保持部2の一例では、穴部213に設けられる図示省略の係止部材により、チャックピン22が回動可能な範囲が、所定の角度範囲(後述の保持位置と解除位置とを含む角度範囲)に制限されている。
【0071】
各チャックピン22は、突出部221と、支持体222とを含んでいる。支持体222は穴部213の内部においてベアリング214に連結される。具体的には、支持体222がベアリング214の内輪に固定され、ベアリング214の外輪が穴部213の内部で対向板部21に固定される。突出部221は支持体222の上面に設けられており、上側に突出する。突出部221は平面視において、チャック回動軸J2からずれた位置に配置される。よって、チャックピン22がチャック回動軸J2のまわりで回動することにより、突出部221は、チャック回動軸J2を中心とした周方向に沿って移動する。突出部221はチャックピン22が回動することにより、基板9の周縁に当接する保持位置と基板9の周縁から離れた解除位置との間で往復移動する。
【0072】
突出部221はチャック当接面を有しており、当該チャック当接面が基板9の周縁に当接する。チャック当接面は例えばV字形状を有しており、基板9をその厚み方向に挟んで把持することができる。
【0073】
基板保持部2には、チャック駆動部23が設けられている。チャック駆動部23はチャックピン22を駆動して、チャックピン22を保持位置と解除位置との間で回動させる。言い換えれば、チャック駆動部23はチャックピン22を回動させる駆動力を、チャックピン22に作用させる。チャック駆動部23は例えばモータを含んでいてもよい。
【0074】
あるいは、チャック駆動部23は、チャックピン22の支持体222の下端に連結された第1磁石と、第2磁石と、第1磁石および第2磁石の間の距離を変化させる移動機構とを含んでいてもよい。移動機構は、例えば、ボールねじ機構またはエアシリンダーを含み、第2磁石を鉛直方向に沿って移動させる。移動機構が第2磁石を第1磁石に近づけることにより、第1磁石および第2磁石の間の磁気作用により、チャックピン22を保持位置および解除位置の一方まで回動させることができる。逆に移動機構が第2磁石を第1磁石から遠ざけることにより、第1磁石および第2磁石の間の磁気作用が消失し、チャックピン22を保持位置および解除位置の他方まで回動させることができる。
【0075】
<基板回転機構>
基板回転機構3は回転軸J1のまわりで基板保持部2を回転させる。図2の例では、基板回転機構3は、シャフト部31と、モータ32とを含んでいる。シャフト部31は、回転軸J1を中心とする円筒状の形状を有しており、その上端が基板保持部2の下面(具体的には、対向板部21の下面212)の中央部に固定される。シャフト部31は回転可能にモータ32に連結されている。モータ32はシャフト部31を回転させて、基板保持部2を回転軸J1のまわりで回転させる。これにより、基板保持部2によって保持された基板9も回転軸J1のまわりで回転する。
【0076】
図2の例では、モータ32は固定部材33を介してチャンバの床部材10に固定されている。固定部材33は、チャンバの床部材10から鉛直上側に延在している。図2の例では、固定部材33はモータ32のモータケースに固定されて、モータ32を床部材10から離れた状態で支持する。
【0077】
<処理液供給部>
処理液供給部4は、基板保持部2によって保持された基板9の主面に処理液(薬液およびリンス液を含む)を供給する。処理液供給部4は薬液供給部41を含んでいる。薬液供給部41は、基板保持部2によって保持された基板9の主面に薬液を供給する。薬液としては、例えば、フッ酸を含む薬液、または、硫酸および過酸化水素水の混合液(SPM)などの薬液を採用できる。フッ酸を含む薬液としては、例えば希フッ酸(DHF)を採用できる。
【0078】
薬液供給部41は、薬液ノズル411と、供給管412と、バルブ413と、薬液供給源415とを含んでいる。薬液ノズル411はチャンバ内においてノズルアーム414により支持される。ノズルアーム414は図示省略のノズル移動機構に接続される。ノズル移動機構は薬液ノズル411を吐出位置と待機位置との間で移動させる。吐出位置は、例えば、鉛直方向において基板9の上面の中央部と対向する位置であり、待機位置は、例えば、鉛直方向において基板9と対向しない位置である。薬液ノズル411は供給管412を介して薬液供給源415に接続される。薬液供給源415から供給管412を介して薬液ノズル411に薬液が供給されることにより、薬液ノズル411から基板9の上面の中央部に向けて当該薬液が吐出される。
【0079】
薬液供給部41は回転中の基板9の上面に薬液を供給する。これにより、基板9の上面に着液した薬液は、基板9の回転に伴う遠心力を受けて基板9の周縁側に流れ、基板9の周縁から外側に飛散する。薬液が基板9の上面に作用することにより、薬液の種類に応じた処理を基板9に対して行うことができる。
【0080】
処理液供給部4はリンス液供給部42も含んでいる。リンス液供給部42は、基板保持部2によって保持された基板9の主面にリンス液を供給する。リンス液としては、例えば、純水(DIW)を採用できる。
【0081】
リンス液供給部42は、リンスノズル421と、供給管422と、バルブ423と、リンス液供給源425とを含んでいる。リンスノズル421はチャンバ内においてノズルアーム424により支持される。ノズルアーム424は図示省略のノズル移動機構に接続される。ノズル移動機構はリンスノズル421を吐出位置と待機位置との間で移動させる。吐出位置は、例えば、鉛直方向において基板9の上面の中央部と対向する位置であり、待機位置は、例えば、鉛直方向において基板9と対向しない位置である。リンスノズル421は供給管422を介してリンス液供給源425に接続される。リンス液供給源425から供給管422を介してリンスノズル421にリンス液が供給されることにより、リンスノズル421から基板9の上面の中央部に向けて当該リンス液が吐出される。
【0082】
なお、上述の例では、薬液ノズル411およびリンスノズル421は異なるノズルアーム414,424にそれぞれ連結されて、互いに独立して移動するものの、必ずしもこれに限らない。例えば、薬液ノズル411およびリンスノズル421が同一のノズルアームに連結されて、一体に移動しても構わない。また、薬液ノズル411およびリンスノズル421が一つのノズルで兼用されても構わない。
【0083】
リンス液供給部42は回転中の基板9の上面にリンス液を供給する。これにより、基板9の上面に着液したリンス液は、基板9の回転に伴う遠心力を受けて基板9の周縁側に流れ、基板9の周縁から外側に飛散する。リンス液は基板9の上面の薬液を洗い流すことができる。
【0084】
<カップ部>
図2の例では、カップ部7が設けられている。カップ部7は筒状の形状を有し、基板保持部2を取り囲む。カップ部7の上端は、基板保持部2によって保持された基板9の上面よりも上側に位置している。回転中の基板9の上面に供給されて基板9の周縁から飛散する処理液はカップ部7の内周面に当接し、不図示の回収機構に回収される。
【0085】
<抵抗値変更機構>
抵抗値変更機構5は、基板9が基板保持部2によって保持された状態で、基板9と接地部材との間の導通経路R1の抵抗値を変更する。以下では、まず、導通経路R1の一例について説明する。導通経路R1は、例えば、基板9を保持するチャックピン22から、ベアリング214、対向板部21、シャフト部31、モータ32、固定部材33およびチャンバの床部材10をこの順に介して接地部材(不図示)に至る経路である。接地部材には接地電位が印加される。
【0086】
ベアリング214、対向板部21、シャフト部31、固定部材33および床部材10は導電性を有しており、それぞれ、例えば金属によって形成される。例えばベアリング214の内輪、外輪およびこれらの間の転動体は金属によって形成される。シャフト部31は例えば金属によって形成され、ベアリング(不図示)を介してモータ32に連結される。当該ベアリングも導電性を有しており、例えば金属によって形成される。当該ベアリングはモータ32の固定子(モータケースを含む)に連結される。当該固定子も導電性を有しており、例えば金属によって形成される。固定部材33はモータ32の固定子に連結されており、また、チャンバの床部材10にも連結される。固定部材33および床部材10も例えば金属によって形成される。チャンバの床部材10は接地部材に電気的に接続されている。
【0087】
なお、導通経路R1を構成する各種部材は、必ずしも導電性部材のみによって構成される必要はない。導通経路R1を阻害しない限りにおいて、各種部材が絶縁部材を含んでいてもよい。例えば各種部材のうち導通経路R1を構成する箇所とは別の箇所が絶縁部材で構成されてもよい。
【0088】
導通経路R1の抵抗値の変更は、例えば、次のようにして実現することができる。例えば、チャックピン22を、比抵抗値の高い高抵抗材料で構成された第1チャックピン群と、第1チャックピン群よりも比抵抗値の低い低抵抗材料で構成された第2チャックピン群とで構成し、基板9を保持するチャックピン22を第1チャックピン群および第2チャックピン群との間で切り替える。これにより、導通経路R1の抵抗値を変更することができる。
【0089】
図3および図4は、基板保持部2の構成の一例を概略的に示す平面図である。図3および図4の例では、簡単のために、チャックピン22の形状を簡略化して示している。図3および図4の例では、6つのチャックピン22が示されており、これらが3つのチャックピン22aおよび3つのチャックピン22bに分類されている。
【0090】
3つのチャックピン22aは基板9の周縁に沿って等間隔に配列されており、具体的には、120度間隔で配列されている。3つのチャックピン22bも基板9の周縁に沿って等間隔に配列されており、具体的には、120度間隔で配列されている。チャックピン22a,22bは、回転軸J1を中心とした1つの仮想円上に配列される。なお、第1チャックピン群を構成するチャックピン22aの個数および第2チャックピン群を構成するチャックピン22bの個数は適宜に変更し得る。チャックピン22aおよびチャックピン22bの個数は互いに相違していてもよい。
【0091】
チャックピン22のすべてが同一の材料で構成される必要はなく、チャックピン22が、材料の異なる複数の部材が組み合わせて構成されてもよい。要するに、チャック当接面からベアリング214に至る経路の抵抗値が、チャックピン22aにおいて高く、チャックピン22bにおいて低ければよい。
【0092】
また、チャックピン22a,22bが複合材料によって構成されてもよい。複合材料は例えば導電性材料と合成樹脂とを含む材料である。導電性材料は合成樹脂の内部に分散しており、複合材料は、導電性材料の量に応じた導電性を有する。この複合材料に含まれる導電性材料の割合を調整することにより、複合材料の比抵抗値を調整することができる。具体的には、導電性材料の割合を高くした複合材料(高抵抗材料)でチャックピン22aを構成し、導電性材料の割合を低くした複合材料(低抵抗材料)でチャックピン22bを構成する。
【0093】
導電性材料は、例えば、炭素繊維、炭素の粉末および粒子の少なくともいずれか一つを含む。導電性材料として、カーボンナノチューブ、フラーレンおよびグラフェンなどのナノ炭素材料を採用してもよい。合成樹脂は例えばPFA(tetrafluoro ethylene-perfluoro alkylvinyl ether copolymer)、PCTFE(Poly Chloro Tri Furuoro Ethylene)およびPTFE(polytetrafluoroethylene)、PEEK(polyetheretherketone)の少なくともいずれか一つを含む。
【0094】
チャック駆動部23は第1チャックピン群および第2チャックピン群を互いに独立に駆動する。チャック駆動部23は、基板9を保持するチャックピン22を第1チャックピン群および第2チャックピン群の間で切り替える。図3および図4では、突出部221が長方形で示されている。図3および図4では、回転軸J1を中心とした径方向に平行な長軸を有する突出部221は、そのチャックピン22が保持位置で停止していることを示しており、回転軸J1を中心とした周方向と平行な長軸を有する突出部221は、そのチャックピン22が解除位置で停止していることを示している。
【0095】
チャック駆動部23は、チャックピン22aをそれぞれの保持位置に移動させ、チャックピン22bをそれぞれの解除位置に移動させることにより、複数のチャックピン22aで基板9の周縁を保持させる(図3)。これにより、高抵抗材料で構成されたチャックピン22aが基板9を保持する。よって、導通経路R1の抵抗値を高くすることができる。
【0096】
一方で、チャック駆動部23は、チャックピン22aをそれぞれの解除位置に移動させ、チャックピン22bをそれぞれの保持位置に移動させることにより、複数のチャックピン22bで基板9の周縁を保持させる(図4)。これにより、低抵抗材料で構成されたチャックピン22bが基板9を保持する。よって、導通経路R1の抵抗値を低くすることができる。
【0097】
このような構成によれば、抵抗値変更機構5は、第1チャックピン群、第2チャックピン群およびチャック駆動部23を含む基板保持部2によって構成される。
【0098】
<制御部>
制御部6は、例えば、基板処理システム100に含まれた各部の動作を制御することができる。図5は、基板処理システム100の電気的な構成の一例を概略的に示す図である。制御部6は電子回路であって、例えばデータ処理装置61および記憶媒体62を有していてもよい。図5の例では、データ処理装置61と記憶媒体62とはバス63を介して相互に接続されている。データ処理装置61は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体62は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)621および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))622を有していてもよい。非一時的な記憶媒体621には、例えば制御部6が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理装置61がこのプログラムを実行することにより、制御部6が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部6が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
【0099】
図5では、インデクサロボットIR、センターロボットCR、基板保持部2、基板回転機構3、処理液供給部4および抵抗値変更機構5がバス63に接続された態様が一例として概略的に示されている。
【0100】
<基板処理装置の処理の流れ>
図6は、基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、基板9の上面には、エッチング対象膜の一例である酸化膜が形成されているものとし、基板処理において基板9の上面に薬液の一例である希フッ酸を供給し、酸化膜をエッチング除去する。酸化膜は基板9の上面の一部で露出していてもよく、あるいは、基板9の上面の全面に露出していてもよい。
【0101】
まず、センターロボットCRが未処理の基板9を基板処理装置1に搬入し、基板保持部2が基板9を水平姿勢で保持する(ステップS1:保持工程)。
【0102】
図7は、各工程に応じた導通経路R1の抵抗値の一例を示すグラフである。図7の例では、基板保持部2は、導通経路R1の抵抗値が高くなる状態で基板9を保持する。具体的な一例として、チャック駆動部23は第1チャックピン群を保持位置に移動させ、第2チャックピン群を解除位置に移動させる。これにより、複数のチャックピン22aによって基板9が保持される。複数のチャックピン22aは高抵抗材料によって形成されるので、導通経路R1の抵抗値は高くなる。
【0103】
次に、基板回転機構3が基板9を回転させる(ステップS2:回転工程)。具体的には、モータ32がシャフト部31および基板保持部2を回転させる。これにより、基板保持部2によって保持された基板9が回転軸J1まわりで回転する。
【0104】
次に、薬液供給部41は、回転中の基板9の上面に薬液(希フッ酸)を供給する(ステップS3:薬液工程)。具体的には、ノズル移動機構が薬液ノズル411を吐出位置に移動させ、バルブ413が供給管412の内部流路を開く。これにより、薬液供給源415からの薬液が供給管412の内部流路を薬液ノズル411へ向かって流れ、薬液ノズル411の吐出口から基板9の上面の中央部に向かって吐出される。
【0105】
基板9の中央部に着液した薬液は、基板9の回転に伴う遠心力を受けて、基板9の上面の全面に広がり、基板9の周縁から外側に飛散する。これにより、薬液が基板9の上面のエッチング対象膜に作用し、エッチング対象膜をエッチングする。
【0106】
例えば、薬液の供給開始から薬液処理時間が経過すると、バルブ413が供給管412の内部流路を閉じる。これにより、薬液ノズル411からの薬液の吐出が停止する。薬液処理時間は、基板9に対する処理が完了する時間であり、例えば予め設定される。ノズル移動機構は薬液ノズル411を待機位置に移動させる。
【0107】
次に、抵抗値変更機構5は導通経路R1の抵抗値を低減させる(ステップS4:抵抗値変更工程)。具体的には、チャック駆動部23は、基板9を保持するチャックピン22を第1チャックピン群から第2チャックピン群に切り替える。例えば、チャック駆動部23は第2チャックピン群を保持位置に移動させてから、第1チャックピン群を解除位置に移動させる。これにより、複数のチャックピン22bが基板9の周縁を保持する。チャックピン22bは低抵抗材料によって形成されているので、導通経路R1の抵抗値が低減する(図7も参照)。
【0108】
次に、リンス液供給部42は、回転中の基板9の上面にリンス液を供給する(ステップS5:リンス工程)。具体的には、ノズル移動機構がリンスノズル421を吐出位置に移動させ、バルブ423が供給管422の内部流路を開く。これにより、リンス液供給源425からのリンス液(例えば純水)が供給管422の内部流路をリンスノズル421へ向かって流れ、リンスノズル421の吐出口から基板9の上面の中央部に向かって吐出される。
【0109】
基板9の中央部に着液したリンス液は、基板9の回転に伴う遠心力を受けて、基板9の上面の全面に広がり、基板9の周縁から外側に飛散する。これにより、基板9の上面に残留した薬液がリンス液によって洗い流される。言い換えれば、基板9の上面の薬液がリンス液に置換される。
【0110】
例えば、リンス液の供給開始からリンス処理時間が経過すると、バルブ423が供給管422の内部流路を閉じる。これにより、リンスノズル421からのリンス液の吐出が停止する。リンス処理時間は、薬液からリンス液への置換を完了するのに十分な時間であり、例えば予め設定される。ノズル移動機構はリンスノズル421を待機位置に移動させる。
【0111】
次に、基板9を乾燥させる(ステップS6:乾燥工程)。例えば基板回転機構3は基板9の回転速度を増加させる(いわゆるスピンドライ)。これにより、基板9が乾燥する。基板9が十分に乾燥すると、基板回転機構3は基板9の回転を停止させる。
【0112】
次に、センターロボットCRが処理済みの基板9を基板処理装置1から搬出する(ステップS7)。
【0113】
以上のようにして、基板9に対する処理(上述の例ではエッチング処理)を行うことができる。
【0114】
しかも、上述の例では、薬液工程(ステップS3)では、導通経路R1の抵抗値が高い状態で、基板9の上面に希フッ酸が供給される。比較のために、導通経路R1の抵抗値が低い状態で、基板9の上面に希フッ酸が供給される場合について述べる。この場合、基板9の上面のうちチャックピン22の付近の第1領域では、チャックピン22から離れた領域(例えば中央領域)に比べて、エッチング速度が高くなる。これにより、基板9の上面の第1領域では、第2領域に比べて、酸化膜が大きくエッチングされてしまい、エッチングの面内ばらつきが大きくなる。
【0115】
これに対して、上述の例では、導通経路R1の抵抗値が高い状態で、基板9の上面に希フッ酸が供給される。よって、導通経路R1の抵抗値が低いことに起因したエッチングの面内ばらつきを低減することができる。
【0116】
一方で、リンス工程(ステップS5)では、導通経路R1の抵抗値が小さい状態で、基板9の上面にリンス液が供給される。このリンス液の比抵抗値は薬液(希フッ酸)の比抵抗値よりも高い。よって、リンス液と基板9との間の摩擦等により、基板9に電荷が生じやすい。言い換えれば、基板9が帯電しやすい。もし基板9が帯電すると、その後の工程(例えば乾燥工程、搬出工程、または、基板処理装置1よりも後の工程)で不具合が生じ得る。しかしながら、リンス工程では、導通経路R1の抵抗値は小さい。したがって、基板9に生じた電荷はチャックピン22bから導通経路R1を介して接地部材へと流れやすい。したがって、リンス工程において基板9に生じる帯電を低減または回避することができる。ひいては、その後の工程における不具合の発生を低減または回避できる。
【0117】
<薬液の種類>
上述の例では、基板9の酸化膜をエッチングする場合について述べた。しかしながら、本実施の形態は必ずしもエッチング処理に限定されない。例えば、基板9の主面にシリコンが露出している場合、当該基板9の主面に対して、硫酸および過酸化水素水の混合液(SPM)を供給すると、基板9のシリコンの上に化学的酸化膜を形成することができる。
【0118】
この場合、導通経路R1の抵抗値が高いと、基板9の上面のうちチャックピン22の付近の第1領域では、第2領域に比べて、酸化膜の形成速度が高くなる。これにより、基板9の上面の第1領域では、第2領域に比べて、酸化膜の膜厚が大きくなる。つまり、酸化膜の膜厚の面内ばらつきが大きくなる。
【0119】
そこで、薬液工程において供給する薬液としてSPMを採用する場合も、図6と同様の処理を実行するとよい。ただし、基板9の上面は例えばシリコンが露出している。また、薬液工程(ステップS3)では、薬液供給部41は薬液としてSPMを基板9の上面に供給する。これにより、基板9の上面に化学的酸化膜(シリコン酸化膜)を形成することができる。なお、薬液供給部41は、薬液ノズル411内またはその直前で硫酸と過酸化水素水とを混合してSPMを生成し、薬液ノズル411の吐出口からSPMを吐出するとよい。SPMの生成から短時間しかSPMの活性力を確保できないからである。
【0120】
この基板処理においても、薬液工程(ステップS3)において、導通経路R1の抵抗値が高い状態で、基板9の上面にSPMが供給される。よって、導通経路R1の抵抗値が低いことに起因した酸化膜の膜厚の面内ばらつきを低減することができる。
【0121】
なお、薬液は、フッ酸を含む薬液およびSPMに限定されない。要するに、基板9と接地部材との間の導通経路R1の抵抗値が小さいことに起因して処理の面内ばらつきを生じさせる薬液であれば、本実施の形態の基板処理方法を適用できる。薬液の他の例として、オゾン水などが挙げられる。なお、以下では、代表的に薬液として希フッ酸を採用する場合について述べる。
【0122】
<抵抗値変更機構の他の例>
図8は、基板処理装置1Aの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1Aは、抵抗値変更機構5の構成を除いて、基板処理装置1と同様の構成を有している。
【0123】
抵抗値変更機構5は可変抵抗51を含んでいる。この可変抵抗51は導通経路R1上に設けられる。可変抵抗51は、例えば、導通経路R1を構成する他の部材に対して直列に接続されてもよい。より具体的な一例として、可変抵抗51はモータ32のモータケースと固定部材33との間に設けられてもよい。可変抵抗51の抵抗値は制御部6によって制御される。制御部6が可変抵抗51の抵抗値を変更することにより、導通経路R1の抵抗値を変更することができる。
【0124】
基板処理装置1Aにおいては、可変抵抗51によって導通経路R1の抵抗値を変更することができるので、すべてのチャックピン22の抵抗値は実質的に互いに同一であってもよい。この場合、チャック駆動部23はすべてのチャックピン22を一体に駆動してもよい。
【0125】
基板処理装置1Aの基板処理の流れは図6と同様である。ただし、導通経路R1の抵抗値を変更するために基板9を保持するチャックピン22を切り替える必要はなく、導通経路R1の抵抗値は可変抵抗51のみによって変更されてもよい。あるいは、可変抵抗51の変更とともに、チャックピン22a,22bの切り替えを行ってもよい。以下では、可変抵抗51によって導通経路R1の抵抗値を変更する例について述べる。制御部6は、導通経路R1の抵抗値が薬液工程(ステップS3)において高い状態となるように、例えば薬液工程の直前から可変抵抗51の抵抗値を高抵抗値とする。これにより、導通経路R1の抵抗値が高い状態で、薬液工程を行うことができる。また、抵抗値変更工程(ステップS4)では、制御部6は可変抵抗51の抵抗値を高抵抗値から低抵抗値に低減させる。これにより、導通経路R1の抵抗値が低い状態で、リンス工程(ステップS5)を行うことができる。
【0126】
これによっても、エッチングの面内ばらつきを低減しつつ、リンス工程による基板9の帯電も低減することができる。また、可変抵抗51を用いることで、導通経路R1の抵抗値をより細かく調整することができる。一方で、抵抗値の異なるチャックピン22a,22bを用いることで、簡易な構成で導通経路R1の抵抗値を変更することができる。
【0127】
なお、以下では、代表的に、抵抗値変更機構5として、第1チャックピン群および第2チャックピン群を含む基板保持部2を採用する場合について述べる。
【0128】
<第2の実施の形態>
帯電した基板9に対して、比抵抗値の低い処理液を供給すると、基板9から処理液へと大きな電流が流れ、基板9にダメージが生じ得る。そこで、第2の実施の形態では、基板9を除電できる技術について述べる。
【0129】
図9は、基板処理装置1Bの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1Bは処理液供給部4の構成を除いて、基板処理装置1と同様の構成を有している。第2の実施の形態では、処理液供給部4は除電液供給部43をさらに含んでいる。除電液供給部43は除電液を基板9の主面に供給することができる。回転中の基板9の主面に除電液を供給することにより、除電液が基板9を除電することができる。除電液としては、例えば純水または炭素水(CO水)を採用できる。
【0130】
除電液供給部43は、除電ノズル431と、供給管432と、バルブ433と、除電液供給源435とを含んでいる。除電ノズル431はチャンバ内においてノズルアーム434により支持される。ノズルアーム434は図示省略のノズル移動機構に接続される。ノズル移動機構は除電ノズル431を吐出位置と待機位置との間で移動させる。吐出位置は、例えば、鉛直方向において基板9の上面の中央部と対向する位置であり、待機位置は、例えば、鉛直方向において基板9と対向しない位置である。除電ノズル431は供給管432を介して除電液供給源435に接続される。除電液供給源435から供給管432を介して除電ノズル431に除電液が供給されることにより、除電ノズル431から基板9の上面の中央部に向けて当該除電液が吐出される。
【0131】
なお、除電ノズル431は、薬液ノズル411およびリンスノズル421の少なくともいずれかに連結されたノズルアームに連結されて、少なくともいずれか一方と一体に移動しても構わない。また、除電ノズル431は、薬液ノズル411およびリンスノズル421の少なくともいずれか一方と兼用されても構わない。
【0132】
また、リンス液および除電液の両方として純水を採用する場合、除電液供給部43はリンス液供給部42と兼用される。この場合、除電ノズル431と、供給管432と、バルブ433と、除電液供給源435は設けられず、リンスノズル421は除電ノズルとして機能する。
【0133】
<基板処理の流れ>
図10は、基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、センターロボットCRは基板9を基板処理装置1に搬入し、基板保持部2が基板9を保持する(ステップS11:保持工程)。なお、ここでは、基板9は基板処理装置1の搬入前の前工程によって帯電している。例えば、前工程において、基板9に対してドライエッチング(例えばイオンエッチング)等のドライ工程が行われる。基板9にドライエッチングが行われると、基板9は大きく帯電する。基板9の帯電量を示す指標として、基板9の表面電位を採用できる。ここでいう基板9の表面電位は、例えば、接地部材の接地電位を基準とした電位である。表面電位の絶対値が大きいほど、帯電量は大きい。
【0134】
図11は、各工程に応じた導通経路R1の抵抗値の一例を示すグラフである。ステップS1では、基板保持部2は、導通経路R1の抵抗値が高くなる状態で基板9を保持する。具体的な一例として、チャック駆動部23は、高抵抗材料によって形成された第1チャックピン群を保持位置に移動させ、第2チャックピン群を解除位置に移動させる。これにより、導通経路R1の抵抗値を高くできる。これによれば、基板9が帯電していたとしても、基板9からチャックピン22bへ流れる電流を低減でき、基板9へのダメージを低減または回避できる。
【0135】
次に、基板回転機構3が基板9を回転させる(ステップS12:回転工程)。具体的には、モータ32がシャフト部31および基板保持部2を回転軸J1のまわりで回転させる。これにより、基板保持部2によって保持された基板9が回転軸J1まわりで回転する。
【0136】
次に、除電液供給部43は回転中の基板9の上面に除電液を供給する(ステップS13:除電工程)。具体的には、ノズル移動機構が除電ノズル431を吐出位置に移動させ、バルブ433が供給管432の内部流路を開く。これにより、除電液供給源435からの除電液が供給管432の内部流路を除電ノズル431へ向かって流れ、除電ノズル431の吐出口から基板9の上面の中央部に向かって吐出される。
【0137】
基板9の中央部に着液した除電液は、基板9の回転に伴う遠心力を受けて、基板9の上面の全面に広がり、基板9の周縁から外側に飛散する。この除電液の比抵抗値は、薬液の比抵抗値よりも大きい。除電液は例えば純水であり、その比抵抗値は例えば数MΩ・cm以上である。したがって、除電液の吐出開始時に、除電ノズル431の吐出口から除電液が吐出され始め、その除電液の液柱状の先端が下降して、帯電した基板9に近づいても、除電液の先端と基板9との間で大電流(放電)は生じにくい。
【0138】
また、除電液の比抵抗値は比較的に高いので、除電液は基板9を時間の経過とともに徐々に除電する。つまり、基板9から除電液へ移動する電荷の単位時間当たりの量(電流)はさほど大きくなく、基板9は比較的に長い時間をかけて除電される。したがって、基板9から除電液へと大電流が流れることに起因した基板9へのダメージを低減または回避することもできる。
【0139】
また、除電工程(ステップS13)において基板9は第1チャックピン群によって保持されており、導通経路R1の抵抗値は高い(図11も参照)。よって、基板9の電荷が導通経路R1を介して接地部材へと流れにくい。したがって、基板9から第1チャックピン群に大電流が流れることに起因した基板9へのダメージも低減または回避することができる。
【0140】
例えば、除電液の供給開始から除電処理時間が経過すると、バルブ433が供給管432の内部流路を閉じる。除電処理時間は、基板9の除電が十分に行われるのに要する時間であって、例えば予め設定される。これにより、除電ノズル431からの除電液の吐出が停止する。ノズル移動機構は除電ノズル431を待機位置に移動させる。
【0141】
次に、薬液供給部41は、回転中の基板9の上面に薬液(希フッ酸)を供給する(ステップS14:薬液工程)。これにより、薬液が基板9の上面のエッチング対象膜に作用し、エッチング対象膜をエッチングする。この薬液工程でも、導通経路R1の抵抗値は高い(図11も参照)ので、エッチングの面内ばらつきを低減できる。
【0142】
例えば、薬液の供給開始から薬液処理時間が経過すると、バルブ413が供給管412の内部流路を閉じる。これにより、薬液ノズル411からの薬液の吐出が停止する。
【0143】
次に、抵抗値変更機構5は導通経路R1の抵抗値を低減させる(ステップS15:抵抗値変更工程)。具体的には、チャック駆動部23は、基板9を保持するチャックピン22を第1チャックピン群から第2チャックピン群に切り替える。これにより、導通経路R1の抵抗値が低減する。
【0144】
次に、リンス液供給部42は、回転中の基板9の上面にリンス液を供給する(ステップS16:リンス工程)。これにより、基板9の上面の薬液がリンス液に置換される。このリンス工程では、導通経路R1の抵抗値は低い(図11も参照)ので、リンス液と基板9との摩擦等に起因した基板9の帯電を低減できる。
【0145】
例えば、リンス液の供給開始からリンス処理時間が経過すると、バルブ423が供給管422の内部流路を閉じる。これにより、リンスノズル421からのリンス液の吐出が停止する。
【0146】
次に、基板9に対する乾燥工程が行われ(ステップS17)、センターロボットCRが処理済みの基板9を基板処理装置1から搬出する(ステップS18)。
【0147】
以上のように、基板処理装置1Bによれば、導通経路R1の抵抗値が高い状態で、基板9に対して比抵抗値の高い除電液を供給する。よって、基板9をゆっくりと徐々に除電することができる。言い換えれば、基板9に生じる大電流を回避して、基板9へのダメージを低減または回避しつつ、基板9を除電することができる。
【0148】
また、基板処理装置1Bによれば、基板9を除電してから薬液工程が行われる。よって、この薬液工程において、比抵抗値の低い薬液を基板9に供給しても、帯電に起因した薬液と基板9との間の大電流を低減または回避できる。よって、薬液工程での基板9のダメージも低減または回避できる。
【0149】
なお、薬液工程において、薬液としてSPMを採用して酸化膜を形成する場合、例えば前工程のドライエッチングにより、基板9の主面にシリコンが露出する。薬液工程では、このシリコンに酸化膜が形成される。
【0150】
<複数の除電液>
上述の例では、ドライエッチング等の前工程によって基板9が帯電し、帯電した状態で基板処理装置1に搬入される。ドライエッチングで生じる基板9の帯電量は比較的に大きいので、基板処理装置1は比抵抗値の大きい除電液で基板9を除電している。これにより、基板9へのダメージを低減または回避しつつ、基板9の帯電量を徐々に小さくすることができる。しかしながら、比抵抗値の大きい除電液による除電では、基板9を帯電しきれない場合がある。なぜなら、比抵抗値の大きい除電液を基板9に供給すると、ドライエッチングほどではないものの、除電液と基板9との摩擦等により、基板9が帯電するからである。また、比抵抗値の大きい除電液による除電工程では、除電に要する時間も長くなる。
【0151】
そこで、除電液供給部43は、第1除電液、および、第1除電液よりも比抵抗値の小さい第2除電液を順次に基板9に供給してもよい。つまり、第1除電液により基板9をゆっくりと除電して、ある程度の帯電量まで除電した後に、第2除電液により、基板9をより速やかに、かつ、より小さい帯電量まで除電する。
【0152】
第1除電液としては、例えば純水を採用することができる。第2除電液としては、例えばCO水を採用することができる。除電液供給部43は第1除電液用のノズルおよび第2除電液用のノズルを含んでいてもよく、あるいは、除電ノズル431が第1除電液および第2除電液で兼用されてもよい。また、リンス液供給部42がリンス液として純水を供給する場合には、リンス液供給部42が第1除電液(純水)を供給する除電液供給部43として機能してもよい。以下では、第1除電液およびリンス液として純水を採用する場合を例に挙げて説明する。
【0153】
<基板処理の流れ>
図12は、基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、センターロボットCRは基板9を基板処理装置1に搬入し、基板保持部2が基板9を保持する(ステップS21)。なお、ここでは、基板9は前工程によって帯電している。
【0154】
図13は、各工程に応じた導通経路R1の抵抗値の一例を示すグラフである。図13の例では、基板保持部2は、導通経路R1の抵抗値が高くなる状態で基板9を保持する。具体的な一例として、チャック駆動部23は第1チャックピン群を保持位置に移動させ、第2チャックピン群を解除位置に移動させる。
【0155】
次に、基板回転機構3が基板9を回転させる(ステップS22:回転工程)。具体的には、モータ32がシャフト部31および基板保持部2を回転軸J1のまわりで回転させる。これにより、基板保持部2によって保持された基板9が回転軸J1まわりで回転する。
【0156】
次に、除電液供給部43(リンス液供給部42)は回転中の基板9の上面に第1除電液(純水)を供給する(ステップS23:第1除電工程)。具体的には、バルブ423が供給管422の内部流路を開くことにより、リンスノズル421から第1除電液(純水)が基板9の上面の中央部に向かって吐出される。基板9の中央部に着液した第1除電液は、基板9の回転に伴う遠心力を受けて、基板9の上面の全面に広がり、基板9の周縁から外側に飛散する。これにより、第1除電液によって基板9はゆっくりと除電される。よって、基板9の帯電量は時間の経過とともにゆっくりと低減する。
【0157】
また、第1除電工程(ステップS23)において基板9は第1チャックピン群によって保持されており、導通経路R1の抵抗値は高い(図13も参照)。よって、基板9の電荷が導通経路R1を介して接地部材へと流れにくい。したがって、基板9から第1チャックピン群に大電流が流れることに起因した基板9へのダメージも低減または回避することができる。
【0158】
例えば、第1除電液の供給開始から第1除電処理時間が経過すると、抵抗値変更機構5は導通経路R1の抵抗値を低減する(ステップS24:抵抗値変更工程)。具体的な一例として、チャック駆動部23は、基板9を保持するチャックピン22を第1チャックピン群から第2チャックピン群に切り替える。これにより、導通経路R1の抵抗値が低減する。
【0159】
また、除電液供給部43(リンス液供給部42)は第1除電液の供給を停止するとともに、回転中の基板9の上面に第2除電液(例えばCO水)を供給する(ステップS25:第2除電工程)。具体的には、バルブ423が供給管422の内部流路を閉じるとともに、バルブ433が供給管432の内部流路を開く。これにより、除電ノズル431から第2除電液(例えばCO水)が基板9の上面の中央部に吐出される。基板9の中央部に着液した第2除電液は、基板9の回転に伴う遠心力を受けて、基板9の上面の全面に広がり、基板9の周縁から外側に飛散する。これにより、第2除電液によって基板9は除電される。
【0160】
なお、第1除電処理時間は、第2チャックピン群によって基板9を保持しても基板9から第2チャックピン群に大電流が流れず、かつ、第2除電液を基板9に供給しても基板9から第2除電液に大電流が流れない程度まで、基板9が除電されるのに十分な時間であり、例えば予め設定される。
【0161】
基板9を保持するチャックピン22を抵抗値の小さいチャックピン22bに切り替えるので、導通経路R1の抵抗値は低減する(図13も参照)。よって、基板9の電荷は導通経路R1を介して接地部材に流れやすく、基板9をより速やかに除電できる。また、基板9に供給する除電液を比抵抗値の小さい第2除電液に切り替えるので、基板9の電荷は第2除電液に移動しやすく、基板9をより速やかに除電することができる。
【0162】
しかも、第2除電液の比抵抗値は小さいので、第2除電液と基板9との摩擦によっても基板9はほとんど帯電せず、基板9の帯電量(表面電位)をさらに小さくすることができる。
【0163】
例えば、第2除電液の供給開始から第2除電処理時間が経過すると、バルブ433が供給管432の内部流路を閉じる。これにより、第2除電液の供給が停止する。
【0164】
次に、抵抗値変更機構5は導通経路R1の抵抗値を再び増加させる(ステップS26:抵抗値変更工程)。具体的な一例として、チャック駆動部23は、基板9を保持するチャックピン22を第2チャックピン群から第1チャックピン群に切り替える。
【0165】
次に、薬液供給部41は、回転中の基板9の上面に薬液(希フッ酸)を供給する(ステップS27:薬液工程)。これにより、薬液が基板9の上面のエッチング対象膜に作用し、エッチング対象膜をエッチングする。この薬液工程では、導通経路R1の抵抗値は高い(図13も参照)ので、エッチングの面内ばらつきを低減できる。
【0166】
例えば、薬液の供給開始から薬液処理時間が経過すると、バルブ413が供給管412の内部流路を閉じる。これにより、薬液ノズル411からの薬液の吐出が停止する。
【0167】
次に、抵抗値変更機構5は導通経路R1の抵抗値を再び低減させる(ステップS28:抵抗値変更工程)。具体的な一例として、チャック駆動部23は、基板9を保持するチャックピン22を第1チャックピン群から第2チャックピン群に切り替える。
【0168】
次に、リンス液供給部42は、回転中の基板9の主面にリンス液(純水)を供給する(ステップS29:リンス工程)。これにより、基板9の上面の薬液がリンス液に置換される。このリンス工程では、導通経路R1の抵抗値は低い(図13も参照)ので、リンス液と基板9との摩擦等に起因した基板9の帯電を低減できる。
【0169】
例えば、リンス液の供給開始からリンス処理時間が経過すると、バルブ423が供給管422の内部流路を閉じる。これにより、リンスノズル421からのリンス液の吐出が停止する。
【0170】
次に、基板9に対する乾燥工程が行われ(ステップS30)、センターロボットCRが処理済みの基板9を基板処理装置1から搬出する(ステップS31)。
【0171】
この動作によれば、基板9は、除電工程の初期(第1除電工程)では、導通経路R1の抵抗値が高い状態で、比抵抗値の高い第1除電液によって除電される(図13も参照)。つまり、基板9の帯電量が大きい初期では、大電流による基板9のダメージを低減すべく徐々に基板9を除電する。そして、除電工程の途中で、導通経路R1の抵抗値を低減し、さらに除電液を比抵抗値の低い第2除電液に切り替える(図13も参照)。つまり、基板9がある程度除電された後の除電工程の後期(第2除電工程)では、導通経路R1の抵抗値および除電液の比抵抗値を低くしても、大電流が流れないので、導通経路R1の抵抗値を低くするとともに、第2除電液を採用して、速やかに基板9を除電する(ステップS24,S25)。これにより、除電に要する時間を短縮することができる。また、基板9の帯電量をさらに小さくすることもできる。
【0172】
なお、上述の例では、第1除電液の供給開始から第1除電処理時間が経過したときに、基板9に供給する除電液を第1除電液から第2除電液に切り替えるとともに、導通経路R1の抵抗値を高抵抗値から低抵抗値に低減させた。しかしながら、これらのいずれか一方のみを行ってもよい。具体的には、第2除電工程でも、導通経路R1の抵抗値を高抵抗値に維持してもよい。比抵抗値の小さい第2除電液を用いることで、より速やかに基板9を除電でき、また基板9の帯電量をより小さくできる。あるいは、導通経路R1の抵抗値を低抵抗値にした状態で、第1除電液を供給し続けてもよい。言い換えれば、第2除電液を使用しなくてもよい。導通経路R1を低抵抗値にすることによって、基板9をより速やかに除電することができ、また基板9の帯電量をより小さくできる。
【0173】
また、上述の例では、除電液の切り替えおよび導通経路R1の抵抗値の切り替えをほぼ同時に行っているものの、これらを異なるタイミングで行ってもよい。
【0174】
<電流測定>
図14は、基板処理装置1Cの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1Cは、電流センサ8の有無を除いて、基板処理装置1Bと同様の構成を有している。電流センサ8は、導通経路R1を流れる電流値を測定し、その測定結果を示す電気信号を制御部6に出力する。
【0175】
上述のように、基板9が帯電している場合には、基板9の電荷が導通経路R1を介して接地電位へ移動する。つまり、導通経路R1には電流iが流れる。基板9の帯電量が小さくなるにつれて、導通経路R1に流れる電流iが小さくなると考えられる。
【0176】
そこで、制御部6は、電流センサ8によって測定された電流iに基づいて、除電液の供給を停止するタイミングを決定する。具体的には、制御部6は、電流iが電流基準値iref未満であるか否かを例えば所定時間ごとに判断する。制御部6は、電流iが電流基準値irefを下回ったときに、除電液供給部43に除電液の供給を終了させる。
【0177】
図15は、除電工程の一例を示すフローチャートである。このフローは、例えばステップS13の除電工程の具体的な一例に相当する。まず、除電液供給部43は回転中の基板9への除電液の供給を開始する(ステップS131)。次に、電流センサ8が電流iを測定し、その測定結果を示す電気信号を制御部6に出力する(ステップS132:電流測定工程)。このように、電流センサ8による測定工程は除電工程と並行して実行される。
【0178】
次に、制御部6は、電流センサ8によって測定された電流iが電流基準値iref未満であるか否かを判断する(ステップS133)。電流基準値irefは、基板9の帯電量が十分に小さくなったといえるときの電流値であり、例えば予め設定される。
【0179】
電流iが電流基準値iref以上であるときには、再びステップS132が実行される。電流iが電流基準値iref未満であるときには、除電液供給部43は除電液の供給を終了する(ステップS134)。
【0180】
これによれば、基板9の帯電量を電流iで間接的に測定するので、より確実に基板9の帯電量を十分に小さくした状態で、除電工程を終了できる。
【0181】
なお、第1除電液および第2除電液をこの順で供給する場合には、第1除電液から第2除電液への切り替えのタイミング、および、第2除電液の供給を終了するタイミングも、電流iに基づいて決定してもよい。具体的には、第1電流基準値と、第1電流基準値よりも小さい第2電流基準値を設定し、電流iが第1電流基準値を下回ったときに、第1除電液の供給を終了して第2除電液の供給を開始し、電流iが第2電流基準値を下回ったときに、第2除電液の供給を終了してもよい。
【0182】
これによれば、基板9の帯電量を電流iで間接的に測定して、第1除電液の供給の終了タイミングおよび第2除電液の供給の開始タイミングを決定している。つまり、基板9の帯電量に基づいて除電液の切り替えのタイミングを決定している。よって、より確実に、第2除電液を供給しても大電流が生じない程度まで基板9の帯電量が低減した状態で、除電液を第2除電液に切り替えることができる。したがって、基板9で生じる大電流をより確実に回避することができる。
【0183】
除電中の導通経路R1の抵抗値の切り替え(ステップS24)のタイミングとして、除電液の切り替え(ステップS25の開始)のタイミングと異なるタイミングを採用する場合にも、電流iに基づいて、抵抗値の切り替えタイミングを決定してもよい。より具体的には、第2電流基準値よりも大きい第3電流基準値を設定し、電流iが第3電流基準値を下回ったときに、導通経路R1の抵抗値を高抵抗値から低抵抗値に低減してもよい。これによれば、より確実に、導通経路R1の抵抗値を低くしても大電流が生じない程度まで基板9の帯電量が低減した状態で、導通経路R1の抵抗値を低減することができる。したがって、基板9で生じる大電流をより確実に回避することができる。
【0184】
<持ち込み帯電量の測定>
図1の例では、基板処理システム100には、表面電位センサ52が設けられている。この表面電位センサ52は、基板処理装置1に基板9を搬入する前に基板9の表面電位を測定する。図1の例では、表面電位センサ52は基板載置部PASSに設けられている。表面電位センサ52は、基板載置部PASSに載置された基板9の主面と対向する位置に設けられる。表面電位センサ52は、基板9の表面電位を測定し、その測定結果を示す電気信号を制御部6に出力する。なお、表面電位センサ52は、インデクサロボットIRまたはセンターロボットCRに設けられていてもよい。
【0185】
表面電位センサ52は、基板9の主面内の1箇所における表面電位を測定してもよい。あるいは、表面電位センサ52は、基板9の主面内の複数箇所における表面電位を測定してもよい。具体的には、表面電位センサ52と基板9との相対的な位置関係を変更する変位機構が設けられ、表面電位センサ52が基板9に対して移動することにより、基板9の主面内の複数箇所での表面電位を測定することができる。
【0186】
制御部6は、表面電位センサ52によって測定された表面電位に基づいて、除電工程の要否を判定する。なお、表面電位センサ52が複数箇所で表面電位を測定する場合には、その統計値(最大値、最小値または平均値など)に基づいて除電工程の要否を判定してもよい。具体的な一例として、制御部6は、表面電位(例えば最大値)が第1電位基準値Vref1未満であるか否かを判断する。第1電位基準値Vref1は非常に小さい値であり、例えば予め設定される。制御部6は、表面電位が第1電位基準値Vref1未満であるときに、除電工程が不要であると判断し、表面電位が第1電位基準値Vref1以上であるときに、除電工程が必要であると判断してもよい。
【0187】
あるいはさらに、制御部6は除電工程が必要であると判定したときには、その表面電位に基づいて、除電工程で用いる除電液の種類、および、除電工程での導通経路R1の抵抗値を決定してもよい。例えば制御部6は、表面電位が第2電位基準値Vref2未満であるか否かを判断する。第2電位基準値Vref2は第1電位基準値Vref1よりも大きく設定される。より具体的には、第2電位基準値Vref2は、表面電位が第2電位基準値Vref2未満であるときに、比抵抗値の小さい第2除電液を基板9に供給しても、導通経路R1が低抵抗値であっても、基板9に大電流が生じないように、例えば予め設定される。
【0188】
制御部6は、表面電位が第2電位基準値Vref2以上であるときに、除電工程では、比抵抗値の高い第1除電液を用いつつ、導通経路R1の抵抗値を高抵抗値とすることに決定する。一方で、制御部6は、表面電位が第2電位基準値Vref2未満であるときに、除電工程では、比抵抗値の低い第2除電液を用いつつ、導通経路R1の抵抗値を低抵抗値とすることに決定する。
【0189】
図16は、上記処理の一例を概略的に示すフローチャートである。まず、表面電位センサ52が基板9の表面電位Vを測定する(ステップS41:電位測定工程)。例えば、基板9がインデクサロボットIRによって基板載置部PASSに搬送される。表面電位センサ52は、基板載置部PASSに搬入された基板9の表面電位Vを測定し、その測定結果を示す電気信号を制御部6に出力する。測定後の基板9はセンターロボットCRによって基板載置部PASSから搬出される。
【0190】
次に、制御部6は、表面電位センサ52によって測定された表面電位V(例えば最大値)が第1電位基準値Vref1未満であるか否かを判断する(ステップS42)。表面電位Vが第1電位基準値Vref1未満であるときには、制御部6は、図6に示した第1基板処理を実行する(ステップS43)。つまり、表面電位Vが第1電位基準値Vref1未満であるときには、基板9はほとんど帯電していないので、制御部6は、除電工程が不要であると判断し、第1基板処理を実行する。第1基板処理では、基板9に対する除電工程は行われず、導通経路R1の抵抗値が高い状態での薬液工程(ステップS3)および導通経路R1の抵抗値が低い状態でのリンス工程(ステップS5)がこの順で行われる。
【0191】
表面電位Vが第1電位基準値Vref1以上であるときには、制御部6は表面電位が第2電位基準値Vref2未満であるか否かを判断する。表面電位Vが第2電位基準値Vref2以上であるときには、制御部6は、基板9が比較的大きな帯電量で帯電していると判断し、図10の第2基板処理または図12の第3基板処理を実行する(ステップS45)。第2基板処理および第3基板処理のいずれにおいても、基板保持部2は、導通経路R1の抵抗値が高い状態で、センターロボットCRから基板9を受け取り(ステップS11,S21)、除電液供給部43は比抵抗値の高い除電液(第1除電液)を基板9に供給して除電工程(第1除電工程)を行う(ステップS13,S23)。これにより、基板9に生じる大電流を低減または回避しつつ、基板9をゆっくりと除電できる。
【0192】
第3基板処理を行う場合(図12)には、第1除電工程(ステップS23)の後に、導通経路R1の抵抗値を低減し(ステップS24)、比抵抗値の小さい第2除電液での第2除電工程(ステップS25)が行われる。これにより、より速やかに基板9を除電しつつ、帯電量をさらに低減できる。
【0193】
除電工程の後には、第2基板処理および第3基板処理のいずれにおいても、導通経路R1の抵抗値が高い状態での薬液工程(ステップS14,S27)および導通経路R1の抵抗値が低い状態でのリンス工程(ステップS16,S29)がこの順で行われる。
【0194】
再び図16を参照して、表面電位Vが第2電位基準値Vref2未満であるときには、制御部6は、基板9が比較的小さな帯電量で帯電していると判断し、第4基板処理工程を行う(ステップS46)。図17は、第4基板処理工程の一例を概略的に示すフローチャートである。まず、センターロボットCRは基板9を基板処理装置1に搬入し、基板保持部2が基板9を保持する(ステップS51:保持工程)。なお、ここでは、基板9は基板処理装置1の搬入前の前工程によって小さい帯電量で帯電している。
【0195】
図18は、各工程に応じた導通経路R1の抵抗値の一例を示すグラフである。図18の例では、基板保持部2は、導通経路R1の抵抗値が低くなる状態で基板9を保持する。具体的な一例として、チャック駆動部23は、低抵抗材料によって形成された第1チャックピン群を解除位置に移動させ、第2チャックピン群を保持位置に移動させる。これにより、導通経路R1の抵抗値を低くできる。ここでは、基板9の帯電量は小さいので、導通経路R1の抵抗値を低くしても、基板9からチャックピン22bへ大電流は生じない。
【0196】
次に、基板回転機構3が基板9を回転させる(ステップS52:回転工程)。具体的には、モータ32がシャフト部31および基板保持部2を回転軸J1のまわりで回転させる。これにより、基板保持部2によって保持された基板9が回転軸J1まわりで回転する。
【0197】
次に、除電液供給部43は回転中の基板9の上面に、比抵抗値の低い第2除電液(例えばCO水)を供給する(ステップS53:除電工程)。これにより、基板9をより速やかに、かつ、より小さい帯電量まで除電することができる。
【0198】
例えば、除電液の供給開始から除電処理時間が経過すると、バルブ433が供給管432の内部流路を閉じる。これにより、除電ノズル431からの除電液の吐出が停止する。
【0199】
次に、抵抗値変更機構5は導通経路R1の抵抗値を増加させる(ステップS54:抵抗値変更工程)。具体的には、チャック駆動部23は、基板9を保持するチャックピン22を第2チャックピン群から第1チャックピン群に切り替える。これにより、導通経路R1の抵抗値が増加する。
【0200】
次に、薬液供給部41は、回転中の基板9の上面に薬液(希フッ酸)を供給する(ステップS55:薬液工程)。これにより、薬液が基板9の上面のエッチング対象膜に作用し、エッチング対象膜をエッチングする。この薬液工程でも、導通経路R1の抵抗値は高い(図18も参照)ので、エッチングの面内ばらつきを低減できる。
【0201】
例えば、薬液の供給開始から薬液処理時間が経過すると、バルブ413が供給管412の内部流路を閉じる。これにより、薬液ノズル411からの薬液の吐出が停止する。
【0202】
次に、抵抗値変更機構5は導通経路R1の抵抗値を低減させる(ステップS56:抵抗値変更工程)。具体的には、チャック駆動部23は、基板9を保持するチャックピン22を第1チャックピン群から第2チャックピン群に切り替える。これにより、導通経路R1の抵抗値が低減する。
【0203】
次に、リンス液供給部42は、回転中の基板9の上面にリンス液を供給する(ステップS57:リンス工程)。これにより、基板9の上面の薬液がリンス液に置換される。このリンス工程では、導通経路R1の抵抗値は低い(図18も参照)ので、リンス液と基板9との摩擦等に起因した基板9の帯電を低減できる。
【0204】
例えば、リンス液の供給開始からリンス処理時間が経過すると、バルブ423が供給管422の内部流路を閉じる。これにより、リンスノズル421からのリンス液の吐出が停止する。
【0205】
次に、基板9に対する乾燥工程が行われ(ステップS58)、センターロボットCRが処理済みの基板9を基板処理装置1から搬出する(ステップS59)。
【0206】
この動作によれば、基板9の帯電量が小さいので、除電工程(ステップS53)において、比抵抗値の小さい第2除電液を用いつつ、導通経路R1の抵抗値を低抵抗値としている。よって、基板9をより速やかに、かつ、より小さい帯電量まで除電できる。
【0207】
なお、除電工程(ステップS53)では、比抵抗値の小さい除電液を用いるとともに、導通経路R1の抵抗値を低抵抗値とした。しかしながら、これらのいずれか一方のみを行ってもよい。具体的には、除電工程(ステップS53)でも、導通経路R1の抵抗値を高抵抗値に維持してもよい。比抵抗値の小さい第2除電液を用いることで、より速やかに基板9を除電でき、また基板9の帯電量をより小さくできる。あるいは、除電工程(においてステップS53)において、導通経路R1の抵抗値を低抵抗値にした状態で、比抵抗値の大きい第1除電液を供給してもよい。これによっても、導通経路R1を低抵抗値にすることによって基板9をより速やかに除電することができ、また基板9の帯電量をより小さくできる。
【0208】
以上のように、基板処理装置1,1A~1Cは詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この基板処理装置がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施の形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【0209】
例えば、上述の例では、処理液供給部4は処理液(除電液、薬液およびリンス液を含む)を基板9の上面に供給しているものの、基板9の下面に供給してもよい。また、上述の例では、処理液供給部4は基板9の中央部に処理液を供給しているものの、基板9の周縁部のみに処理液を供給してもよい。
【0210】
また、上述の例では、搬入前の基板9の帯電量を表面電位センサ52によって検出しているものの、必ずしもこれに限らない。制御部6が、基板9の帯電量を反映した情報を取得すればよい。取得先は、例えば上流側の処理装置であってもよく、あるいは、集中管理センタであってもよい。あるいは、作業員が不図示の入力デバイスに当該情報を入力し、当該入力デバイスが制御部6に当該情報を出力してもよい。
【符号の説明】
【0211】
1,1A~1C 基板処理装置
2 基板保持部
22 チャックピン
22a 第1チャックピン(チャックピン)
22b 第2チャックピン(チャックピン)
23 チャック駆動部
3 回転機構(基板回転機構)
411 薬液ノズル
421 リンスノズル
431 除電ノズル
8 電流センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18