(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】コンパクト容器
(51)【国際特許分類】
A45D 33/00 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
A45D33/00 630Z
(21)【出願番号】P 2020057707
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-136629(JP,A)
【文献】特開2003-135141(JP,A)
【文献】特開2001-002100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00-34/00
B65D 43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、当該容器本体の上面を覆う蓋体と、
前記蓋体を前記容器本体に回動可能に支持する樹脂製の回動ピンと、前記容器本体の一側部側に設けられ、前記容器本体に対して前記蓋体を回動可能に支持する回動機構とが設けられたコンパクト容器であって、
前記蓋体の回動角が所定の範囲内のときに前記蓋体を任意の回動角で支持するフリーストップ機構が設けられ、
当該フリーストップ機構は、
前記容器本体の前記一側部に沿って設けられる側壁部と、前記側壁部の上方において外側に突出して設けられる上壁部とを有し、弾性材料から構成される押圧枠と、
前記蓋体において前記一側部側に設けられ、前記蓋体の回動角が前記所定の範囲内のときに前記側壁部及び前記上壁部との接点を有する摺動面を有する回動壁面部と、
を備え、
前記蓋体を前記回動機構により回動させたとき、前記摺動面が円弧状の軌跡を描きながら前記側壁部及び前記上壁部と前記接点で摺動
し、
前記側壁部は、前記接点において前記摺動面に接触する凸部を備え、前記上壁部は、前記接点において前記摺動面に接触する凸部を備え、
前記蓋体を前記回動機構により回動させていくと、前記側壁部の前記凸部が前記摺動面に接触し、さらに前記蓋体が回動すると、前記側壁部の前記凸部及び前記上壁部の前記凸部の両方が前記摺動面に接触し、
2つの前記凸部の内の前記側壁部の前記凸部のみが前記摺動面に接触する状態では、前記蓋体の回動操作を止めたときにそのときの角度で前記蓋体を保持するフリーストップの機能は働かず、
前記側壁部の前記凸部及び前記上壁部の前記凸部の両方が前記摺動面に接触する状態では、2つの前記凸部と前記摺動面との摩擦によって前記フリーストップの機能が働くコンパクト容器。
【請求項2】
前記蓋体が閉状態にあるとき、前記摺動面と前記押圧枠とは非接触状態にある請求項
1に記載のコンパクト容器。
【請求項3】
前記回動機構は、前記蓋体と一体に成形された
前記回動ピンと、前記容器本体側に設けられ前記回動ピンを回動可能に支持するピン受けとを有し、
前記回動壁面部において前記摺動面が前記側壁部と前記上壁部とにより押圧されると、前記回動ピンが前記ピン受けに押圧される請求項1~請求項
2のいずれか一項に記載のコンパクト容器。
【請求項4】
前記蓋体の前記容器本体側の面には樹脂製鏡が設けられる請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載のコンパクト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に蓋体が回動機構により開閉可能に設けられたコンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
パウダリーファンデーション、チーク等の化粧料を収納する容器本体に蓋体を開閉可能に設けたコンパクト容器が知られている。容器本体に蓋体を開閉可能に連結するために、例えば、容器本体及び蓋体のそれぞれに蝶番片を設け、各蝶番片に軸孔を形成し、軸孔にヒンジピンを挿入することで、容器本体に対して蓋体を回動可能に連結した蝶番構造を採用したものが知られている。
【0003】
このような蝶番構造では、従来、主に金属製ピンが用いられてきたが、例えば、特許文献1に開示されるように樹脂製ピンを採用することも行われている。樹脂製ピンを採用することで、廃棄時の分別の手間を省力化することができるため、樹脂製品のリサイクルを進める上でも優れている。また、樹脂製ピンを採用することでコンパクト容器の軽量化及び低コスト化を図ることができ、価格帯の低いいわゆるプチプラコスメ等の容器としても好適である。
【0004】
ところで、コンパクト容器の中には、スプリングピンを挿通孔に挿通し、スプリングピンと挿通孔との間に生じる摩擦力によりフリーストップ機構を実現したものがある。フリーストップ機構とは、蓋体の回動操作を止めたときに、そのときの角度で蓋体を保持可能とする機構である。フリーストップ機構によれば、容器本体に対して蓋体を傾斜させた状態で保持することができるため、利用者が鏡を確認しやすい角度に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般に、スプリングピンは金属製である。スプリングピンを樹脂製のピンに代替しても、鏡が設けられた蓋体を容器本体に対して傾斜させた状態で保持するために十分な摩擦力を得ることが困難である。そのため、樹脂製ピンではフリーストップ機構を実現することは困難であった。また、フリーストップ機構を実現することができたとしても、長期間にわたってフリーストップ機能を維持することは困難であった。
【0007】
そこで、本発明の課題は金属製部品を用いずに蓋体を利用者の利用しやすい角度で容器本体に保持することができるフリーストップ機構を備えたコンパクト容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は容器本体と、当該容器本体の上面を覆う蓋体と、前記蓋体を前記容器本体に回動可能に支持する樹脂製の回動ピンと、前記容器本体の一側部側に設けられ、前記容器本体に対して前記蓋体を回動可能に支持する回動機構とが設けられたコンパクト容器であって、前記蓋体の回動角が所定の範囲内のときに前記蓋体を任意の回動角で支持するフリーストップ機構が設けられ、当該フリーストップ機構は、前記容器本体の前記一側部に沿って設けられる側壁部と、前記側壁部の上方において外側に突出して設けられる上壁部とを有し、弾性材料から構成される押圧枠と、前記蓋体において前記一側部側に設けられ、前記蓋体の回動角が前記所定の範囲内のときに前記側壁部及び前記上壁部との接点を有する摺動面を有する回動壁面部と、を備え、前記蓋体を前記回動機構により回動させたとき、前記摺動面が円弧状の軌跡を描きながら前記側壁部及び前記上壁部と前記接点で摺動し、前記側壁部は、前記接点において前記摺動面に接触する凸部を備え、前記上壁部は、前記接点において前記摺動面に接触する凸部を備え、前記蓋体を前記回動機構により回動させていくと、前記側壁部の前記凸部が前記摺動面に接触し、さらに前記蓋体が回動すると、前記側壁部の前記凸部及び前記上壁部の前記凸部の両方が前記摺動面に接触し、2つの前記凸部の内の前記側壁部の前記凸部のみが前記摺動面に接触する状態では、前記蓋体の回動操作を止めたときにそのときの角度で前記蓋体を保持するフリーストップの機能は働かず、前記側壁部の前記凸部及び前記上壁部の前記凸部の両方が前記摺動面に接触する状態では、2つの前記凸部と前記摺動面との摩擦によって前記フリーストップの機能が働くコンパクト容器である。
【0011】
本発明のコンパクト容器において、前記蓋体が閉状態にあるとき、前記摺動面と前記押圧枠とは非接触状態にあることが好ましい。
【0012】
本発明のコンパクト容器において、前記回動機構は、前記蓋体と一体に成形された前記回動ピンと、前記容器本体側に設けられ前記回動ピンを回動可能に支持するピン受けとを有し、前記回動壁面部において前記摺動面が前記側壁部と前記上壁部とにより押圧されると、前記回動ピンが前記ピン受けに押圧されることが好ましい。
【0013】
本発明のコンパクト容器において、前記蓋体の前記容器本体側の面には樹脂製鏡が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコンパクト容器では、容器本体の一側部に設けられた回動機構により容器本体に対して蓋体が回動可能に支持される。また、当該コンパクト容器は、容器本体の一側部に沿って設けられる側壁部と、この側壁部の上方において外側に突出して設けられる上壁部とを有し、弾性材料から構成される押圧枠と、蓋体において一側部側に設けられ、蓋体の回動角が所定の範囲内のときに側壁部及び上壁部との接点を有する摺動面を有する回動壁面部とを備えるフリーストップ機構を備える。当該フリーストップ機構によれば、蓋体を回動機構により回動させたとき、回動壁面部の摺動面が円弧状の軌跡を描きながら押圧枠により押圧されながら側壁部及び上壁部に対して摺動する。その際、回動壁面部には側壁部側から受ける押圧力と上壁部側から受ける押圧力を受ける。押圧枠は弾性材料により形成されているため摺動面に密着して弾性押圧力を与え、蓋体の回動動作を規制するブレーキとして作用する。そのため、蓋体の回動操作を止めると、蓋体はそれ以上回動せず、そのときの角度で容器本体に保持される。例えば、ゴムやエラストマーなどの弾性材料による弾性力により押圧枠を構成することができるため、従来のようにスプリングピン等の金属製部品を用いずに蓋体を利用者の利用しやすい角度で容器本体に保持することのできるフリーストップ機構を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態のコンパクト容器を示す平面図であり、蓋体が全開された状態を示す。
【
図2】
図1に示すコンパクト容器を示す図であり、(a)は蓋体が閉じられた状態を示す断面図であり、(b)は蓋体が全開された状態における
図1のA-A矢視断面図である。
【
図3】
図1に示すコンパクト容器の蓋体を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は(c)のB-B矢視側断面図であり、(c)は蓋体の裏面側を示す図である。
【
図4】
図1に示すコンパクト容器の中枠体を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC-C矢視断面図であり、(c)は(a)のD-D矢視断面図である。
【
図5】
図1に示すコンパクト容器の一側部付近の断面図であり、(a)は蓋体が閉じられた状態を示し、(b)は蓋体の回動角θが第一の所定の角度(θa)である状態を示し、(c)は蓋体の回動角θが第二の所定の角度(θb)である状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係るコンパクト容器の実施の形態を説明する。
図1及び
図2に本実施の形態のコンパクト容器100を示す。当該コンパクト容器100は、内容物が収容される容器本体10と、蓋体20とを備え、容器本体10の一側部側に設けられた回動機構30により容器本体10に対して蓋体20を回動させることで、容器本体10に対して蓋体20を開閉することができる。ここで、蓋体20を開閉する際の蓋体20の回動角をθとする。蓋体20が閉状態にあるとき(
図2(a))の蓋体20の回動角θを0°とする。また、蓋体20を全開状態にしたとき(
図1、
図2(b))の蓋体20の回動角θを180°とする。すなわち蓋体20の最大回動角θmaxを180°とする。
【0017】
当該コンパクト容器100には、粉体のファンデーション、チーク、アイシャドー、アイブロー、口紅等の化粧料を固形化又は半固形化した化粧料を皿状部材に収容するパレット(中皿)Pと、化粧料を塗布するためのパフ等の塗布具(図示略)とを収容することができる。蓋体20の裏面23には鏡Mが設けられている。当該コンパクト容器100は、蓋体20の回動操作を止めたときにそのときの回動角θで支持するフリーストップ機構40を備えている。そのため、利用者は蓋体20を回動させて、鏡Mを確認しやすい位置で回動操作を止めると、容器本体10に対して蓋体20をそのときの回動角θで保持することができるようになっている。
【0018】
以下、各構成要素について説明する。なお、本明細書等において、「上」、「下」は相対的な位置関係を示すものである。
図2(a)、(b)に示すように容器本体10の底面部10aが水平面に載置される状態で、容器本体10の底面部10aが位置する側を「下」、容器本体10の開口面(以下、上面10b)、すなわち蓋体20により覆われる面が位置する側を「上」と称する。また、容器本体10の一側部10c側に回動機構30及びフリーストップ機構40の構成要素が配置される。
図1では、一側部10cが図面に向かって右側に配置された状態を示している。当該コンパクト容器100を使用する際、容器本体10の一側部10c側を奥側に配置し、その反対側(以下、他側部10d側)を手前にして使用する。
【0019】
まず、容器本体10について説明する。
図1及び
図2に示すように容器本体10は、外枠体11と、外枠体11に嵌め込まれる中枠体12とを備えている。容器本体10の他側部10d側には、容器本体10に蓋体20を係止するためのロック部13が設けられている。
【0020】
図2(a)に示すように外枠体11は容器本体10の底面部10aを成す底壁部11aと、底壁部11aの周囲に立設された外枠壁部11bとを備えている。但し、外枠壁部11bは一側部10cを除いて設けられる。中枠体12が外枠体11に嵌め込まれたときに容器本体10の上面10b側に設けられる上面部12a(
図1参照)と、一側部10cにおいて上面部12aから垂設される中枠壁部12bとを備えている(
図2(a)参照)。外枠体11の底壁部11a、外枠壁部11b及び中枠壁部12bによって、容器本体10の外殻が形成される。また、
図1に示すように中枠体12の上面部12aには平面視において略矩形の凹部12c、12dが2つ形成されている(
図1参照)。一方の凹部12cには、化粧料が収容されるパレットPを嵌め込むための係止部12eが設けられている(
図1及び
図4参照)。また、他方の凹部12dにはパフが収容される。
【0021】
図1に示すように、外枠体11に中枠体12を嵌め込んだ状態で容器本体10の他側部10d側には上記ロック部13と共にこれを解除するためのロック解除部14が設けられている。ロック部13は他側部10dにおいて平面視で略中央に設けられる。ロック部13は、
図2(a)に示すように、蓋体20側に設けられた蓋体側係合爪23aが係合される容器本体側係合爪13aと、当該容器本体側係合爪13aの下方に設けられる傾斜部材13bとを備えている。傾斜部材13bは下方に向かって一側部10c側から他側部10d側に傾斜している。当該ロック部13は、
図4(c)に示すように中枠体12と一体に設けられる。
【0022】
ロック解除部14は、
図1及び
図2(a)に示すように、傾斜部材13bの下部に当接するように設けられるロック解除部材14aと、このロック解除部材14aを一側部10c側にスライド移動させるための操作部14bとを備えている。操作部14bは容器本体10の外側からプッシュ操作可能に設けられている。
【0023】
容器本体10を構成する外枠体11、中枠体12はそれぞれ熱可塑性樹脂材料を用いて、例えば、射出成形等により成形される。熱可塑性樹脂材料として、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)等の硬度が高く、耐衝撃性や剛性に優れた材料を用いることが好ましい。外枠体11と中枠体12とは別体に構成され、互いに組み付けられることで容器本体10を構成することができる。
【0024】
次に、蓋体20の構成を説明する。
図1及び
図2に示すように蓋体20は容器本体10の上面10bを覆う天壁部21と、天壁部21の周囲から垂設される垂壁部22(
図2(a)参照)とを備えている。また、蓋体20の裏面23には上述した蓋体側係合爪23aが設けられている。蓋体20は、容器本体10と同様の熱可塑性樹脂材料を用いて、例えば、射出成形等により成形される。
【0025】
また蓋体20の天壁部21の裏面23には鏡Mが設けられている。本実施の形態において上記鏡Mは樹脂製鏡であることが好ましい。樹脂製鏡とは、アクリル樹脂、カーボネート樹脂等の有機硝子等とも称されるような透明性の高い樹脂基板にアルミニウムや銀などの金属を真空蒸着法により蒸着したものや、これらの樹脂基板にミラーフィルムを貼着したものをいう。硝材製機材の表面に金属を蒸着等することにより得た硝材製鏡と比較すると樹脂製鏡は軽量であり、且つ、安価である。
【0026】
蓋体20には、回動機構30及びフリーストップ機構40を構成する要素が設けられる。回動機構30を構成する要素として、蓋体20の一側部20a側には回動ピン31が設けられる(
図2(a)、(b)参照)。また、フリーストップ機構40を構成する要素として、蓋体20の一側部20aには回動壁面部41が設けられている。なお、蓋体20の一側部20a側は容器本体10の一側部10cと回動機構30を介して連結される側をいう。
【0027】
これらの構成を
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3(a)、(b)は一側部20aが図面に向かって右側に配置されるように示した蓋体20の側面図及び断面図である。
図3(b)に示す断面図は、
図3(c)に示す蓋体20を裏面23からみた図におけるD-D矢視断面図である。
【0028】
図3(a)、(b)に示すように、回動壁面部41は蓋体20の垂壁部22の下方に垂下するように連設された連設部42を介して蓋体20の一側部20aに設けられている。回動壁面部41は蓋体20の一側部20aの長手方向に沿って長尺な半円柱形状とされており、断面が略半円形状の摺動面41aを備え、後述する押圧枠45内に摺動面41aが上記回動ピン31の中心軸Oを回動中心として回動可能に挿入される。また、回動壁面部41の長手方向の長さL1は蓋体20の一側部20aの長さL2に対して70%程度とされている。
【0029】
また、回動壁面部41及び連設部42の両端は略円形の端面部43により閉塞されている(
図3(a)参照)。各端面部43には回動ピン31が設けられる。回動ピン31は各端面部43から外側に突出するように設けられた短尺のピンであり、その軸方向は蓋体20の一側部20aの長手方向と平行とされている。
【0030】
蓋体20と、回動壁面部41、連設部42、端面部43及び回動ピン31とは上記熱可塑性樹脂材料により射出成形等により一体に成形されて成る。
【0031】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、容器本体側に設けられる回動機構30及びフリーストップ機構40の構成要素について説明する。
図4は中枠体12の平面図(a)、B-B矢視断面図(b)、C-C矢視断面図(c)である。
図5(a)~(c)は容器本体10と蓋体20とが回動機構30を介して連結されたときの一側部10c側の構成を示す拡大図である。
【0032】
図5(a)~(c)に示すように容器本体10には回動機構30の構成要素としてのピン受け32とフリーストップ機構40の構成要素としての押圧枠45とが設けられる。ピン受け32は回動ピン31を回動可能に支持する軸孔であり、ピン受け32内に回動ピン31が挿入される。本実施の形態では、ピン受け32は、上方が開口する半円筒状の下部部材32aと、下方が開口する半円筒状の上部部材32bとを備えている。下部部材32aは外枠体11の底壁部11aに設けられ、上部部材32bは中枠体12に設けられる。
【0033】
図4(b)に示すように上部部材32bは中枠体12に連設されている。外枠体11に中枠体12を嵌め込むと上部部材32bと下部部材32aとが組み合わされて軸孔としてのピン受け32が構成される(
図5参照)。また、
図4(a)に示すように、ピン受け32は容器本体10の一側部10cにおいてその両端部に設けられている。
図5(a)~(c)に示すように、ピン受け32の内径は回動ピン31の外径に対して僅かに大きく、ピン受け32内に回動ピン31を圧入することなく、挿入可能な大きさとされる。
【0034】
次に、フリーストップ機構40の構成要素である押圧枠45について説明する。
図4(c)及び
図5(a)~(c)に示すように、押圧枠45は、第一押圧枠46と第二押圧枠47とを備えている。第一押圧枠46は、中枠体12の中枠壁部12bからなる第一側壁部46aと、第一側壁部46aの上方において外側に突出して設けられる第一上壁部46bとを備えている。第二押圧枠47は、上記第一側壁部46aに沿って設けられる第二側壁部47aと、第二側壁部47aの上方から外側に突出すると共に上記第一上壁部46bに沿って設けられる第二上壁部47bとを備えている。
図4(b)及び
図5(a)~(c)に示す状態で、押圧枠45は第一側壁部46a及び第二側壁部47aと、第一上壁部46b及び第二上壁部47bとによって、Lの文字を上下に反転させたような逆L字状を呈する。
【0035】
押圧枠45は、
図4(a)に示すように容器本体10の一側部10cの長手方向に沿って長尺であり、その長さL3は、回動壁面部41の長さL1よりも短く構成されており、蓋体20が回動する際に押圧枠45に回動壁面部41の端面部43が干渉しないようにされている。
【0036】
また、第二押圧枠47において第二側壁部47aと第二上壁部47bとにはそれぞれ各壁面から突出する凸部48a、48bが設けられている。当該凸部48a、48bは,回動壁面部41の摺動面41aが押圧枠45内に挿入されたときに、第二押圧枠47に対して摺動面41aが接する接点に設けられる(
図5(a)、(b)参照)。なお、蓋体20が閉状態であるとき、回動壁面部41は押圧枠45の外側に退避されており、摺動面41aと押圧枠45とは非接触状態に維持される(
図5(a)参照)。
【0037】
本実施の形態において、第一押圧枠46は中枠体12と同じ熱可塑性樹脂材料を用いて中枠体12と一体に成形することができる。一方、第二押圧枠47は弾性材料から構成される。ここで、第二押圧枠47を構成する弾性材料はゴム、熱可塑性樹脂系エラストマー、熱硬化性樹脂系エラストマー等の力が負荷されたときに容易に弾性変形可能な材料が挙げられる。
【0038】
第一押圧枠46及び第二押圧枠47は、いわゆる二色成形により第一押圧枠46を含む中枠体12を金型の一部として第二押圧枠47が成形されることにより、第一押圧枠46と第二押圧枠47とが一体化されたものであることが好ましい。
【0039】
次に
図2及び
図5を参照しながら、当該コンパクト容器100における蓋体20の開閉動作について説明する。蓋体20が閉状態(
図2(a)及び
図5(a)参照)にあるとき、蓋体側係合爪23aと、容器本体側係合爪13aとが係合されており、このロック部13により蓋体20が閉じられた状態が維持されている。
【0040】
容器本体10の外側から操作部14bがプッシュ操作されると、ロック解除部材14aが容器本体10の一側部10c側に移動し、傾斜部材13bの下部を一側部10c側に押し込む。それに伴い、傾斜部材13bの上部に設けられた容器本体側係合爪13aから蓋体側係合爪23aが外れる。そして、操作部14bのプッシュ操作が解除されると、傾斜部材13bの下部が元の位置に戻り、容器本体側係合爪13aにより蓋体側係合爪23aが上方に押し上げられる。その結果、他側部10dにおいて容器本体10と蓋体20との間に隙間が形成されて、蓋体20が開く。
【0041】
そして蓋体20の他側部10dが持ち上げられると、蓋体20は回動機構30により回動ピン31の中心軸Oを回動中心として回動する。この蓋体20の回動操作に伴い、回動壁面部41が押圧枠45の内側に挿入され、摺動面41aも円弧状の軌跡を描きながら回動開始する。蓋体20の回動角θが第一の所定の角度(θa)に達すると、摺動面41aの摺動先端部41bが第二側壁部47aの凸部48aに接する。この状態が
図5(b)に示す状態である。
【0042】
さらに蓋体20を回動させると、摺動面41aの摺動先端部41bが回動ピン31の中心軸Oを回動中心として円弧状の軌跡を描きながら回動する。その際、摺動面41aは第二側壁部47aの凸部48aに押圧されながら摺動する。このとき、回動壁面部41は第二側壁部47a側から押圧されて、
図5(b)において矢印で示す方向の弾性押圧力が負荷される。
【0043】
蓋体20の回動角θが第二の所定の角度θbに達すると摺動面41aの摺動先端部41bが第二上壁部47bに設けられた凸部48bに接する。この状態が
図5(c)に示す状態である。
【0044】
蓋体20の回動角θが第二の所定の角度θb以上になると、つまり、
図5(c)に示す状態からさらに蓋体20を回動させると、摺動面41aは第二側壁部47aの凸部48bと、第二上壁部47bの凸部48bとに押圧されながら摺動する。このとき、回動壁面部41は第二側壁部47a側及び第二上壁部47b側から押圧される。そのため、回動壁面部41には
図5(c)において矢印で示す斜め下方に向かう方向の押圧力が負荷される。このとき、回動ピン31にも斜め下方に向かう方向の押圧力が負荷されてピン受け32の内壁面に押しつけられる。また第二押圧枠47は弾性材料により形成されているため、凸部48a、48bに対して摺動面41aが摺動すると、凸部48a、48bは弾性変形し、摺動面41aと密着する。これらの斜め下方に向かう押圧力と摺動面41aと凸部48a、48との間に働く摩擦力とによって蓋体20の回動動作を規制するブレーキとして作用する。そのため、蓋体20の回動操作を止めると、蓋体20はそれ以上回動せず、そのときの角度で容器本体10に保持される。
【0045】
以上説明した本実施の形態のコンパクト容器100によれば、スプリングピン等の金属製部品を用いずにフリーストップ機構40を実現することができ、蓋体20の開閉時に利用者が利用しやすい任意の角度で蓋体20を容器本体10に保持させることができる。
【0046】
また、本実施の形態のコンパクト容器100によれば、押圧枠45を逆L字状とし弾性材料により構成すると共に、摺動面41aを第二側壁部47a及び第二上壁部47bにそれぞれ接点を有する断面が半円状(円弧状)の曲面とすることで、摺動面41aと第二押圧枠47とを接点で接触させるという簡易な構成でフリーストップ機構40を実現することができる。
【0047】
ここで、例えば、
図3(b)に示すように第二側壁部47aにのみ摺動面41aを当接させ、第二側壁部47a側からのみ摺動面41aを押圧させた場合、回動ピン31はピン受け32よりも小径であるため、回動ピン31がピン受け32内で上方又は下方に移動し、蓋体20の回動を規制することは困難である。これに対して、本実施の形態のコンパクト容器100では上記のように第二側壁部47aだけでなく、第二上壁部47bにおいて二つの接点により摺動面41aを押圧するため、回動壁面部41を押圧枠45により斜め下方に押圧することができる。そのため、回動ピン31がピン受け32内で移動することを抑制し、回動操作を止めたときに蓋体20を安定にそのときの回動角θで保持することができる。さらに、本実施の形態では第二側壁部47a及び第二上壁部47bにそれぞれ凸部48a、48bを設けているため、摺動面41aにより効率よく弾性押圧力を作用させることができる。
【0048】
さらに、本実施の形態のコンパクト容器100では、蓋体20の回動角θが所定の範囲内(θb≦θ≦θmax)にあるときにのみ二つの凸部48a、48bに接し、これらの凸部48a、48bに対して摺動させるようにしている。また、蓋体20が閉状態にあるときは、摺動面41aと第二押圧枠47とは非接触状体に維持される。そのため、第二押圧枠47に常に摺動面41aが押圧されることで、弾性材料が疲労して弾性率が低下するなどの経時劣化を抑制することができる。そのため、当該コンパクト容器100によれば長期間にわたってフリーストップ機構40の機能を維持することができる。
【0049】
さらに、上記コンパクト容器100によれば、回動ピン31、連設部42及び回動壁面部41は蓋体20と共に一体に成形することができる。また、第一押圧枠46は容器本体10側の中枠体12と同じ材料を用いて一体に成形することができ、弾性材料からなる第二押圧枠47についても二色成形等により中枠体12と一体化することができる。そのため、上記実施の形態の回動機構30及びフリーストップ機構40を採用することで、従来のようにスプリングピンを軸孔に圧入させる等の工程が不要になり、各部材の組み付けが容易になり、低コスト化を図ることもできる。
【0050】
さらに、本実施の形態のコンパクト容器100では蓋体20の裏面23に硝子製鏡ではなく、樹脂製鏡を設けたため蓋体20側を軽量化することができ、フリーストップ機構40に加わる負荷を小さくすることができる。また鏡Mを安価にコンパクト容器100に設けることができる。
【0051】
以上、本発明に係るコンパクト容器の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態のコンパクト容器100に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であるのは勿論である。例えば、上記実施の形態では、容器本体10は外枠体11と中枠体12とを備え、外枠体11に中枠体12を嵌め込むものとしたが、容器本体10の具体的な構成や形状は図示例に限定されるものではない。例えば、本実施の形態では容器本体10は平面視において矩形のものを示したが、容器本体10の形状は例えば円形、楕円形等であってもよい。
【0052】
また、回動壁面部41の長手方向の長さL1を蓋体20の一側部20aの長さL2の70%程度としたが、回動壁面部41の長さL1は適宜変更することができる。フリーストップ機構40の機能を十分に担保すべく、蓋体20を容器本体10に上記所定の範囲内の任意の回動角θで保持するために十分な長さであればよい。回動壁面部41の長さL1は、例えば、蓋体20の一側部20aの長さL2の30%以上90%以下の範囲内で適宜調整することができ、50%以上85%以下の範囲内で適宜調整することがより好ましい。このとき回動ピン31の長さも適宜調整可能であることは勿論である。
【0053】
さらに、上記コンパクト容器100では、押圧枠45を第一押圧枠46と第二押圧枠47の二重構造とし、第一押圧枠46の第一側壁部46aを中枠体12の中枠壁部12bにより構成したが、これらの具体的な構成例についても特に限定されるものではない。
また、上記コンパクト容器100では、回動壁面部41を半円柱状形状としたが、例えば、半円筒形状としてもよいし、半円柱状、半円筒形状に限らず、円柱状或いは円筒状としてもよいし、円柱状又は円筒状の一部を切り欠いたような形状としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 :容器本体
10a :底面部
10b :上面
10c :一側部
10d :他側部
11 :外枠体
11a :底壁部
11b :外枠壁部
12 :中枠体
12a :上面部
12b :中枠壁部
12c :凹部
12d :凹部
12e :係止部
13 :ロック部
13a :容器本体側係合爪
13b :傾斜部材
14 :ロック解除部
14a :ロック解除部材
14b :操作部
20 :蓋体
20a :一側部
21 :天壁部
22 :垂壁部
23 :裏面
23a :蓋体側係合爪
30 :回動機構
31 :回動ピン
32 :ピン受け
32a :下部部材
32b :上部部材
40 :フリーストップ機構
41 :回動壁面部
41a :摺動面
41b :摺動先端部
42 :連設部
43 :端面部
45 :押圧枠
46 :第一押圧枠
46a :第一側壁部
46b :第一上壁部
47 :第二押圧枠
47a :第二側壁部
47b :第二上壁部
48a :凸部
48b :凸部
100 :コンパクト容器
M :鏡
O :中心軸(回動中心軸)
P :パレット(中皿)
θ :回動角